JP6613589B2 - 高強度、高磁束密度のFe系金属板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、特許文献1、2では、高い磁束密度を確保したうえで、Fe系金属板の高強度化を同時に達成する手段は開示されていない。
特許文献3では、炭素鋼と合金鋼の一方又は両方からなる複数の鋼板が積層され一体化している積層鋼板であって、前記積層鋼板の鋼板面と板厚中心の両方におけるα−Fe相またはγ−Fe相の一方または両方の、鋼板面に対する{222}面集積度が60%以上99%以下で、{200}面集積度が0.01%以上15%以下とすることによって、積層鋼板の{222}面集積度を著しく高くして、積層鋼板の加工性を向上させるとともに、積層鋼板の各層の種類を選択することにより、高強度化、耐肌荒れ性の向上、耐食性の向上を合わせて実現できる技術が開示されている。
しかしこれらの文献でも、高磁束密度を確保するという課題と高強度化という課題を同時に解決するFe系金属板は示されていない。
(1) 板厚方向に組成が異なる複数の領域を層状に有し、Feを70質量%以上含有するFe系金属板において、
板厚方向中心から両側に、Al、Cr、Ga、Ge、Mo、Nb、Sb、Si、Sn、Ti、V、W、Znの少なくとも1種以上のフェライト生成元素が合金化されて濃化した濃化領域を有し、その外側に前記フェライト生成元素が濃化していない非濃化領域を有し、
前記非濃化領域は、金属板全体に対する質量%で、Si:1.5%以上3.5%以下、Al:0.5%以上3.0%以下の1種又は2種と、Mn:2.5%以上6.5%以下、Ni:2.5%以上6.5%以下の1種又は2種で、MnとNiを含有する場合は合計で2.5%以上6.0%以下を含有し、
前記濃化領域のうちの少なくとも板厚方向中心から両側に合計で3/10板厚の領域あるいは前記濃化領域の全部の領域がα−Fe単相成分系の組成で、その外側の領域がα−γ変態を生じ得る成分系の組成であり、
少なくとも板厚方向中心から両側に合計で1/2板厚の領域が、平均結晶粒径が8μm超の粗大粒である領域であり、
前記粗大粒領域における{200}面集積度が30%以上99%以下であり、
前記粗大粒領域の外側の板表面から少なくとも1/10板厚の領域が、平均結晶粒径が8μm以下の細粒組織である
ことを特徴とするFe系金属板。
質量%で、Si:1.5%以上3.5%以下、Al:0.5%以上3.0%以下の1種又は2種と、Mn:2.5%以上6.5%以下、Ni:2.5%以上6.5%以下の1種又は2種で、MnとNiを含有する場合は合計で2.5%以上6.0%以下と、Feを70%以上含有し、常温でα相であるα−γ変態成分系の組成よりなる金属板の少なくとも表層に歪を導入した2枚の金属板素材を準備し、
金属板素材の間にAl、Cr、Ga、Ge、Mo、Nb、Sb、Si、Sn、Ti、V、W、Znの少なくとも1種以上のフェライト生成元素よりなる層を介在させて金属板素材を積層して積層金属板とし、
該積層金属板をα−γ変態点以上の温度で熱処理し、フェライト生成元素を前記金属板素材の内部へ拡散させる
ことを特徴とする上記(1)または(2)に記載のFe系金属板の製造方法。
以下、本発明のFe系金属板について、個々の条件の限定理由及び好ましい条件、製造方法について説明する。
なお、以下の記載において、元素の含有量の%は質量%を意味するものとする。また、本発明で濃化領域や変態挙動を判断するための元素分布は、金属板の板厚方向の断面を、例えばEPMAを用いて線分析やマッピングを行うことで決定できる。
本発明のFe系金属板は、板内部に形成されるフェライト生成元素が層状に濃化した濃化領域と、その外側のフェライト生成元素が濃化していない非濃化領域からなる。
すなわち、板厚方向に(非濃化領域)−(濃化領域)−(非濃化領域)の積層構成となる。
ここで、フェライト生成元素は、Al、Cr、Ga、Ge、Mo、Nb、Sb、Si、Sn、Ti、V、W、Znの少なくとも1種以上の元素を示し、その濃化領域は、フェライト生成元素の濃度が金属板表層部の濃度の1.1倍以上である領域とする。
本発明では、その領域がα−Fe単相の組成であるかα−γ変態系の組成であるかは、その領域に含有される元素量に基づき、下記(1)式を満たす場合をα−Fe単相の組成と判断し、下記(2)式を満たす場合をα−γ変態系の組成と判断する。
45×[Si]+88×[Al]−20×[Mn]−18×[Ni]−75≧0 ・・・(1)式
45×[Si]+88×[Al]−20×[Mn]−18×[Ni]−75<0 ・・・(2)式
ここで、[]付き元素はそれぞれの元素の質量%での含有量を表す。
前記粗大粒である領域は、板厚方向に、単一の結晶粒で形成されている(すなわち、粗大粒の層が板厚方向に1つの結晶粒の層によって1層として構成されている)かあるいは複数の結晶粒によって形成されている(すなわち、粗大結晶粒の層が板厚方向に2以上の結晶粒の層によって構成されている)。
粗大粒である領域が板厚方向に1つの結晶粒によって構成されている場合は、{100}面の方位集積度が高まるため、磁束密度が向上するという効果がある。
Fe系金属板の表層部に存在するフェライト生成元素の非濃化領域は、基本的には、多層構造の本発明のFe系金属板を製造する際に用いた金属板素材の組成であり、常温でα相であるα-γ変態成分系の組成を有する。内部領域の一部には、フェライト生成元素が合金化されて、その濃度が板表層の濃度の1.1倍未満の範囲で濃化された領域を含んでいる。
この非濃化領域の組成はFe系金属板の両方の側で同じであることが好ましいが、それぞれの面で求められる性能が異なるなどの理由で、組成が異なっていてもよい。
特に、表層部のフェライト生成元素の非濃化領域に細粒組織を形成するためには、MnやNiなどのγ安定化元素を含有させ、Fe系金属板全体に対する割合で、Si:1.5%以上3.5%以下、Al:0.5%以上3.0%以下の1種又は2種と、Mn:2.5%以上6.5%以下、Ni:2.5%以上6.5%以下の1種又は2種を含有する常温でα相であるα-γ変態成分系の組成を有するのが好ましい。
Mnの含有率は2.5%以上6.5%以下とする。2.5%未満であると、細粒組織を得ることができない。6.5%超であると、磁束密度が低下する。2.5%以上4.5%以下が好ましい。
Niの含有率は2.5%以上6.5%以下とする。2.5%未満であると、細粒組織を得ることができない。6.5%超であると、磁束密度が低下する。2.5%以上5%以下が好ましい。
Siの含有率は1.5%以上3.5%以下とする。1.5%未満であると、細粒組織を得ることができない。3.5%超であると、α単相成分となり、集合組織を{100}に揃えることが出来ない。2.0%以上3.5%以下が好ましい。
複数種類のγ安定化元素を含有させる場合は、元素の含有率の合計を2.5%以上6.0%以下とするとよい。
Fe系金属板の中心部に存在するフェライト生成元素の濃化領域の組成は、フェライト生成元素の非濃化領域の組成に、フェライト形成元素の組成を加えたものである。
また、この濃化領域の一部の領域あるいは全部の領域がα−Fe単相成分系の組成となる。
α−Fe単相成分系の領域の板厚方向の厚さは、中心部の{100}面に配向した粗大粒の領域を必要な厚さで形成して、板全体の磁束密度を確保するために重要である。
そのため、α−Fe単相成分系の領域の板厚方向の厚さは、金属板素材の組成やフェライト生成元素の濃化の程度により変化するが、少なくとも板中心から両側に合計で板厚の3/10の厚さ(すなわち3/10板厚)の領域とする。この領域の厚さが、3/10板厚未満では必要な粗大粒の領域を確保することが困難になる。
Fe系金属板の厚さは、0.02mm超6mm以下であることが好ましい。厚さが0.02m以下であると、積層させてコアを作製する際に非常に多くのFe系金属板を用いることとなり、積層に伴う空隙の発生頻度が高くなる。この結果、高い磁束密度を得にくくなる。また、厚さが6mmを超えていると、広く合金化領域を形成することが困難になり、α−Fe相(粗大粒領域)の{200}面集積度を十分に向上させることが困難になる。
Fe系金属板は、少なくとも板中心から板厚方向両側に合計で板厚の1/2の厚さ(すなわち1/2板厚)の領域が、平均結晶粒径が8μm超の粗大粒である領域で構成される。また、粗大粒領域は、{200}面集積度が30%以上99%以下である{200}集合組織を有する。
電気抵抗の増加に伴う鉄損の低減を目的として、鋼板にAl及びSiを含有させても、磁歪の影響により、それだけでは鉄損を十分に低減することは困難であるが、粗大粒領域の厚さと{200}面集積度を上記の範囲内とすることで、磁束密度を高めて良好な鉄損を得ることができる。
たとえば、{200}強度比率では、以下の(3)式で表される。
{200}面集積度=[{i(200)/I(200)}/Σ{i(hkl)/I(hkl)}]×100
・・・(3)式
ただし、記号は以下のとおりである。
i(hkl):測定した試料における{hkl}面の実測積分強度
I(hkl):ランダム方位をもつ試料における{hkl}面の理論積分強度
Σ :α−Fe結晶の11の方位面についての和
ここで、ランダム方位を持つ試料の積分強度は、試料を用意して実測して求めてもよい。
この細粒組織で構成される領域の厚さが1/10板厚未満であると、強度向上の効果が得られない。
本発明における平均結晶粒径は板厚方向の粒径を考慮する必要はない。これは、例えば金属板自体が薄かったり、特に製造方法や元素分布設計などにより粗大粒組織である層や細粒組織である層の厚さが薄かったり、製造方法によっては結晶粒の成長方向に偏りがある状況では、板厚方向の結晶粒径は小さくとも金属板表面に平行な断面での結晶粒径さえ粗大化できれば本発明の目的を達成できるからである。
このような状況でも本発明で必要とする結晶粒径を規定するため、本発明では板厚断面観察において板表面と平行な方向のみでの切断法によって平均結晶粒径を決定する。この測定を板厚方向位置について複数実施することで、板厚方向についての平均結晶粒径の変化も把握することができ、上記平均結晶粒径が8μm超の領域や上記平均結晶粒径が8μm以下の領域の厚さも同時に決定できる。
以下に説明する方法では、特許文献1、2に記載された製造方法と同様に、Fe系金属板をA3点以上に加熱後冷却する熱処理を施して、熱処理の過程でフェライト生成元素を金属板内部に拡散させ、フェライト生成元素の濃化したα−Fe単相成分系の領域を形成し、熱処理後に{200}面集積度を高める技術を用いる。
その際、フェライト生成元素を板中心部から表面に向かって拡散させ、熱処理後に板中心部に{200}面集積度を高めた粗大粒の領域を形成するとともに、板表層部のフェライト生成元素が濃化していないα-γ変態成分系の領域では、熱処理の際のγ-α変態を利用して細粒組織を形成する。
以下、金属板素材の準備、該金属板素材の積層一体化、一体とした積層金属板の熱処理の順で説明する。
まず、Feを70質量%以上含有し、常温でα相であるα−γ変態成分系の組成よりなり、少なくとも表層部に歪を導入した2枚の金属板素材を準備する。
金属板素材の組成は、前述のフェライト生成元素の非濃化領域で説明した組成とする。金属板の組成は2枚同じであるほうが好ましいが、異なる組成の金属板を用いることもできる。
導入される歪としては、例えば、転位密度で1×1015m/m3以上1×1017m/m3以下の範囲とすることが好ましい。
このような歪を生じさせる方法は特に限定されないが、例えば、高い圧下率、特に97%以上99.99%以下の圧下率で冷間圧延を施すことが好ましい。また、冷間圧延によって、0.2以上のせん断歪を生じさせてもよい。せん断歪は、たとえば冷間圧延時に上下の圧延ロールを互いに異なる速度で回転させれば生じさせることができる。この場合、上下の圧延ロールの回転速度の差が大きいほど、せん断歪が大きくなる。せん断歪の大きさは、圧延ロールの直径と回転速度の差とから算出することができる。
次いで、2枚の金属板素材を、歪を導入した側が内側になるように配置し、間にAl、Cr、Ga、Ge、Mo、Nb、Sb、Si、Sn、Ti、V、W、Znの少なくとも1種以上のフェライト生成元素よりなる層を介在させて金属板素材を積層して積層金属板を形成する。
積層される金属板素材の間にフェライト生成元素よりなる層を介在させる方法としては、(i)金属板素材の表面にフェライト生成元素を付着させて皮膜を形成する方法と、(ii)フェライト生成元素よりなる薄板や箔を用いる方法がある。
金属板に付着させるフェライト生成元素の付着厚さ(両方の金属板の場合は合計の付着厚さ)は、0.05μm以上であることが望ましい。厚さが0.05μm未満では、後述の熱処理工程において十分な厚さと高い{200}面集積度を有する粗大粒を得ることができない。
フェライト生成元素の皮膜を形成した金属板素材は、金属板素材の間に皮膜が配置されるように積層して一体化し、積層体(積層金属板)とする。
この方法は、フェライト生成元素のうちで、Alなどの加工が容易で、薄板が作成しやすい元素に適している。Siなどの加工が困難な元素は(i)の方法を用いる。
上記のように準備された積層体に熱処理を施し、金属板素材の間に形成されたフェライト生成元素を各金属板内に拡散させると同時に、各金属板の元素も相互に拡散させて、各金属板を一体化する。それと同時に、各金属板の再結晶とα−γ変態を利用して、重ね合わせ面から両側の領域に粗大粒で構成され、かつ{200}面集積度の高い層を形成する。また、粗大粒の外側の領域に微細組織を形成する。
積層体を加熱すると、冷延加工が施されていた金属板素材は再結晶を開始する。金属板が再結晶する際、高い加工歪みが付与されている場合には、再結晶後に{100}に配向した集合組織が形成される。また、昇温につれてAlは金属板内部に拡散して鉄と合金化されるが、合金化した領域ではα−Fe単相成分となり、その領域ではγ相からα相に変態していく。その際、積層体内部に形成された{100}集合組織の配向を引き継いで変態するため、合金化した領域でも{100}に配向した組織が形成される。
この結果、合金化された領域では、α−Fe単相の{200}面集積度が25%以上50%以下となり、それに応じて{222}面集積度が1%以上40%以下となった組織が形成される。
すでにα単相成分となっている領域では再結晶で生じた{100}方位粒はそのまま保存され、その領域の中で{100}方位粒が優先成長して、{200}面集積度が増加する。この時、α単相組成でない領域(元の金属板素材の表層側領域)はα相からγ相に変態する。
この温度域で保持すると、Alの拡散に伴いα−Fe単相組成の領域は金属板素材の表層側に広がっていく。このため元の金属板素材の表層側領域でγ相に変態していた領域は、中心側領域から再びα相に変態していく。その際、すでにα−Fe単相組成となって{100}方位粒が優先成長しているα−Fe相領域の結晶粒がγ相側に柱状に成長する。このためγ相はα単相領域の結晶方位を引き継ぐかたちで変態して平均結晶粒径が8μm超の粗大粒組織が形成される。
しかし、保持温度を高く、又は、保持時間を長くし過ぎると、冷却前にγ相からα相への変態が進行し易くなり、保持後の冷却時に、粗大粒組織の外側に細粒組織が形成されなくなるので、金属板素材の成分組成に応じて、保持温度(A3点未満を含む温度)及び保持時間を調整し、Alの拡散、{100}粒への配向及び{100}粒の粒成長を止める。
この条件を満たすと、{200}面配向の芽の高集積化がより進行し、より確実に冷却後にα−Fe単相の{200}面集積度を30%以上とすることができる。
拡散処理後の冷却の際、冷却速度は、特に限定されてないが、0.1℃/sec以上500℃/sec以下が好ましい。
特に、粗大粒組織を1層の結晶粒で構成させるには、高温で長時間保持し、少なくともA3点以下までの冷却を徐冷とするなどして、高温で中心部の結晶粒を大きく成長させるようにする。
その際の条件は、成分やそれまでの熱履歴に応じた析出物分布状態、加工なども含めた組織形態などに依存するため、一律に決められるものではないが、1層となる現象は、一般的な粒成長および変態挙動の制御に基づくものであり、本金属板での板厚方向の元素濃度変化やそれに起因する冷却時の変態の進行速度の差などを考慮し、さらに数回の試行結果を参考にして必要な条件を設定することは当業者であれば容易なことである。
[実施例1]
金属板素材用として表1のNo.1〜28に示す成分系(残部はFe及び不可避不純物)のFe系金属を用意した。各成分系のA3点を表1に示した。
まず、真空溶解によってそれぞれの組成を有するインゴットを溶製した後に、熱延と冷延によって所定の厚みに加工した。
熱延では1200℃に加熱した厚み250mmのインゴットを厚み56mm〜3mmまで薄肉化した。3mmまで薄肉化した熱延板については、表面からスケールを除去した後に、0.45mmまで冷延してから窒素ガス中で800℃×600秒の熱処理を施して再結晶させて歪を取り除いた。56mm〜5mmの熱延板の表面スケールも除去した。続いて、最終冷延によって、板厚56mm〜0.45mmから板厚0.84mm〜0.011mmまで薄肉化した。
表2に、作製した金属板素材の最終冷延の冷延前板厚、冷延後板厚、および、冷延圧延率を記載した。
表2に、付着厚さ(薄板や箔の厚さ)、フェライト系生成元素の積層方法(皮膜か、薄板によるか)を記載した。
積層体の熱処理にはゴールドイメージ炉を用い、プログラム制御により昇温速度を10℃/分とし、加熱温度およびその温度での保持時間を表2に記載の条件で制御した。昇温、保持の間は10-3Paレベルまで真空引きした雰囲気中で行なった。積層体の冷却時には、Arガスを導入して流量の調整によって100℃/分の冷却速度で冷却した。
また全面が8μm超の領域または全面が8μm以下の組織である場合は、それぞれ細粒組織と粗大粒組織が存在しないのでその厚さの欄は「−」とした。
なお、その際に金属板間の接合状態を組織写真から判定したが、各層間に隙間等が見られなかった。
フェライト生成元素の濃化領域の厚さは、製品板の板厚方向の断面をEPMAを用いて、フェライト生成元素の濃度プロファイルを線分析により求め、金属板表層部の濃度の1.1倍以上である範囲を領域の厚さとした。
引張り強度については、圧延直角方向にJIS Z2201に記載の5号引張試験片を採取し、JIS Z2241に記載の試験方法に従って、引張試験を行い、引張強度を評価した。
本実施例では、フェライト生成元素としてZn、Sn、Si、Ti、Mo、V、Cr、W、Ti、Ge、Sb、Nbのいずれかの元素を用いた場合の例を示す。
表1に示される素材を用い、実施例1と同様に金属板素材を作製した。ただし、最終冷延の圧延率は98%(冷延前板厚:5mm、冷延後板厚:0.1mm)の一定とした。また、一部比較例として、表4に示す板厚の金属板素材も作製した。
作製した金属板素材に、Zn、Sn、Si、Ti、Mo、V、Cr、W、Ti、Ge、Sb、Nb、Niのいずれかの元素を付着させて皮膜を形成した。Sn、Znでは溶融めっき法により皮膜し、その他の金属については、蒸着法で皮膜した。
得られた金属板を用いて積層体を構成し、その積層体を実施例1と同様に熱処理して製品板とした。製造条件を表4に示した。
得られた製品板から種々の試験片を作製して、実施例1と同様に種々の測定を行い、結果を表5に記載した。
Claims (3)
- 板厚方向に組成が異なる複数の領域を層状に有し、Feを70質量%以上含有するFe系金属板において、
板厚方向中心から両側に、Al、Cr、Ga、Ge、Mo、Nb、Sb、Si、Sn、Ti、V、W、Znの少なくとも1種以上のフェライト生成元素が合金化されて濃化した濃化領域を有し、その外側に前記フェライト生成元素が濃化していない非濃化領域を有し、
前記非濃化領域は、金属板全体に対する質量%で、Si:1.5%以上3.5%以下、Al:0.5%以上3.0%以下の1種又は2種と、Mn:2.5%以上6.5%以下、Ni:2.5%以上6.5%以下の1種又は2種で、MnとNiを含有する場合は合計で2.5%以上6.0%以下を含有し、
前記濃化領域のうちの少なくとも板厚方向中心から両側に合計で3/10板厚の領域あるいは前記濃化領域の全部の領域がα−Fe単相成分系の組成で、その外側の領域がα−γ変態を生じ得る成分系の組成であり、
少なくとも板厚方向中心から両側に合計で1/2板厚の領域が、平均結晶粒径が8μm超の粗大粒である領域であり、
前記粗大粒領域における{200}面集積度が30%以上99%以下であり、
前記粗大粒領域の外側の板表面から少なくとも1/10板厚の領域が、平均結晶粒径が8μm以下の細粒組織である
ことを特徴とするFe系金属板。 - 前記少なくとも1/2板厚の領域を占めている結晶粒の表面が、板の表面を形成することなく、板厚方向について一方の板表面側の粒界ともう一方の板表面側の粒界がいずれも前記細粒組織との境界となっていることを特徴とする請求項1に記載のFe系金属板。
- 板厚方向に組成が異なる複数の領域を層状に有し、Feを70質量%以上含有するFe系金属板の製造において、
質量%で、Si:1.5%以上3.5%以下、Al:0.5%以上3.0%以下の1種又は2種と、Mn:2.5%以上6.5%以下、Ni:2.5%以上6.5%以下の1種又は2種で、MnとNiを含有する場合は合計で2.5%以上6.0%以下と、Feを70%以上含有し、常温でα相であるα−γ変態成分系の組成よりなる金属板の少なくとも表層に歪を導入した2枚の金属板素材を準備し、
金属板素材の間にAl、Cr、Ga、Ge、Mo、Nb、Sb、Si、Sn、Ti、V、W、Znの少なくとも1種以上のフェライト生成元素よりなる層を介在させて金属板素材を積層して積層金属板とし、
該積層金属板をα−γ変態点以上1300℃以下の温度で熱処理し、フェライト生成元素を前記金属板素材の内部へ拡散させる
ことを特徴とする請求項1に記載のFe系金属板の製造方法。
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