JP2005194382A - 水性コーティング剤およびその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】 比較的、低温の乾燥でも優れた耐水性、耐溶剤性を有する被膜を形成でき、プライマー、接着剤、塗料やインキのバインダー等に好適な、各種基材との接着性が良好である水性コーティング剤を提供する。
【解決手段】 不飽和カルボン酸単位を0.1〜10質量部含有するポリオレフィン樹脂(A)、非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(B)、および塩基性化合物(C)を含有し、前記不飽和カルボン酸単位の一部が塩基性化合物(C)により中和されていること含有することを特徴とする水性コーティング剤。好ましくは界面活性剤を実質的に含有していない上記水系コーティング剤。また、この水性コーティング剤を含有するプライマー、接着剤、塗料、インキ。さらに、このプライマーを塗布して得たプライマー層を有するインクジェット記録材。
【選択図】 なし

Description

本発明は、100℃程度の比較的、低温の処理においても各種基材との密着性、被膜の耐溶剤性が良好であり、プライマー、接着剤、塗料、インキなどに好適である水性コーティング剤、およびこの水性コーティング剤から得られるプライマー層を有するインクジェット記録材に関するものである。
ポリオレフィン系樹脂を各種溶媒に溶解・分散したコーティング剤は、各種素材への接着性に優れていることから、自動車、電気、包装、日用雑貨を中心に大量に使用されているが、近年では、環境保護、省資源、消防法等による危険物規制、職場環境改善の立場から有機溶剤の使用が制限される傾向にあり、水性(水系)のポリオレフィン樹脂コーティング剤の開発が盛んに行われている。
こうした中、耐水性や耐溶剤性等の被膜性能向上の点から、ポリオレフィン樹脂コーティング剤と架橋剤との組み合わせが検討されている。特許文献1、2には、変性ポリオレフィン樹脂とブロックイソシアネートの組み合わせによって、基材との密着性、接着性を損なうことなく、耐水性、耐溶剤性を改良した技術が記載されている。しかしながら、ブロック型イソシアネートは、一定の加熱によりブロック剤が外れない限り架橋反応が進行しないことから、非ブロック型のイソシアネートに比べて高温・長時間の熱処理が必要であったため、耐熱性が低い基材には適用できなかった。また、特許文献1、2では、ポリオレフィン樹脂やイソシアネートを水性媒体中に分散するために界面活性剤を必須成分として一定量用いているが、こうした界面活性剤は不揮発性であり、乾燥後もポリオレフィン樹脂の被膜中に残存するため、その使用量が多い場合は、被膜の耐水性や基材との密着性が不十分となり、また経時的に性能が変化することがある。さらに、被膜からブリードアウトする恐れがあるため、環境的、衛生的にも好ましいとは言えない。
特許文献3には、界面活性剤等の不揮発性化合物を添加せずに変性ポリオレフィン樹脂を水性分散体とすることが記載されており、さらに、この水性分散体にイソシアネート化合物やメラミン化合物等の架橋剤を添加して耐溶剤性等の被膜物性を向上させることが記載されている。しかしながら、耐熱性が低い基材に対して被膜物性を向上させるための具体的な解決策は示されていなかった。
特許2622804号公報 特許2976841号公報 国際公開第02/055598号パンフレット
以上のように、従来のポリオレフィン樹脂とブロックイソシアネート、メラミン化合物等の架橋剤との混合系は、反応温度、時間に制限を受け、基材によっては使用できない場合があった。また、界面活性剤を用いた場合には、密着性、接着性、耐水性等の被膜物性低下の問題が付きまとっていた。
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定組成のポリオレフィン樹脂と非ブロック型のイソシアネートとの系では、上記問題を解決し、低温の反応温度においても耐溶剤性、耐水性、基材との密着性等の優れた被膜性能を発現することを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)不飽和カルボン酸単位を0.1〜10質量部含有するポリオレフィン樹脂(A)、非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(B)、および塩基性化合物(C)を含有し、前記不飽和カルボン酸単位の一部が塩基性化合物(C)により中和されていることを特徴とする水性コーティング剤。
(2)塩基性化合物(C)の含有量がポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基に対して0.3〜1.5倍当量であることを特徴とする(1)記載の水性コーティング剤。
(3)非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(B)の含有量が、ポリオレフィン樹脂(A)の固形分100質量部に対して0.5〜30質量部であることを特徴とする(1)または(2)記載の水性コーティング剤。
(4)ポリオレフィン樹脂(A)が、下記ポリオレフィン樹脂(a)および/または(b)であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の水性コーティング剤。
ポリオレフィン樹脂(a):
不飽和カルボン酸単位(a1)を0.1〜5質量%、及びエチレン単位(a2)と(メタ)アクリル酸エステル単位(a3)を含有し、(a2)と(a3)の質量比(a2)/(a3)が60/40〜98/2であるポリオレフィン樹脂。
ポリオレフィン樹脂(b):
不飽和カルボン酸単位(b1)を0.1〜10質量%、炭素数3〜6の不飽和炭化水素単位(b2)を50〜98質量%含有するポリオレフィン樹脂。
(5)界面活性剤を実質的に含有していないことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の水性コーティング剤。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の水性コーティング剤を含有する接着剤、塗料、プライマーまたはインキ。
(7)(1)〜(5)のいずれかに記載の水性コーティング剤から水性媒体を除去してなる接着層、プライマー層または被膜。
(8)基材、(7)記載のプライマー層、インク受容層をこの順で積層してなるインクジェット記録材。
(9)基材が合成紙または熱可塑性樹脂フィルムである(8)記載のインクジェット記録材。
本発明の水性コーティング剤は、例えば100℃以下といった比較的、低温の乾燥条件において被膜を形成させた場合においても、耐水性、耐溶剤性、基材との密着性等の被膜物性が優れている。さらに、水性コーティング剤中に界面活性剤成分を用いずに製造することもできるため、このような場合には、前述した従来の問題(性能や衛生面)を解決することができる。また、本発明の水性コーティング剤は、プライマー、接着剤、塗料、インキなどの種々の用途に好適であり、中でも、インクジェット記録材用のプライマーとしての使用に適している。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の水性コーティング剤は、不飽和カルボン酸単位を0.1〜10質量部含有するポリオレフィン樹脂(A)、非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(B)および塩基性化合物(C)を水性媒体中に溶解または分散してなるものである。水性媒体は、水を主成分とする媒体であり、後述する水溶性有機溶剤を含有していてもよい。
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(A)は、不飽和カルボン酸単位を0.1〜10質量%含有している必要がある。不飽和カルボン酸単位が0.1質量%未満の場合、コーティング剤とする際の水性化(液状化)が困難になり、またイソシアネート化合物と反応する際の架橋点が乏しくなり、被膜の耐水性が低下し易い。一方、10質量%を超えると、ポリエステルやポリオレフィン等の極性の低い基材との密着性が低下する。また、イソシアネート化合物との混合安定性が低下する。なお、ポリオレフィン樹脂(A)の不飽和カルボン酸単位は後述する塩基性化合物で一部が中和されている必要がある。
不飽和カルボン酸単位とは、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物であり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。また不飽和カルボン酸単位は、ポリオレフィン樹脂(A)中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。なお、酸無水物を導入した場合には、樹脂の乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した酸無水物構造を形成しているが、特に塩基性化合物を含有する媒体中では、その一部、または全部が開環してカルボン酸、あるいはその塩の構造をとる場合がある。
ポリオレフィン樹脂(A)の主成分であるオレフィン成分(不飽和炭化水素化合物成分)としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のオレフィン化合物が樹脂の入手し易さの点から好ましく、この中でもエチレン、プロピレン、1−ブテンが好ましい。オレフィン成分の含有量は、樹脂構成成分の50質量%以上でないとポリオレフィン樹脂といえず、ポリオレフィン樹脂の被膜性能やポリオレフィン材料との接着性の点から、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。不飽和カルボン酸単位およびオレフィン成分を除く構成成分は、特に限定されず、例えば、ブタジエンやイソプレン等のジエン類、(メタ)アクリル酸エステル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類ならびにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、置換スチレン、一酸化炭素、二酸化硫黄、などが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。
ポリオレフィン樹脂(A)の中でも、各種の被膜性能が良好である点から、下記、ポリオレフィン樹脂(a)、ポリオレフィン樹脂(b)またはこれらの混合物であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂(a)と(b)を混合して用いる場合、(a)/(b)=0/100〜100/0の任意の質量比で混合して使用できる。
ポリオレフィン樹脂(a)は、不飽和カルボン酸単位(a1)を0.1〜5質量%、およびエチレン単位(a2)と(メタ)アクリル酸エステル単位(a3)を含有し、(a2)と(a3)の質量比(a2)/(a3)が60/40〜98/2であるポリオレフィン樹脂である。
ポリオレフィン樹脂(a)においては、不飽和カルボン酸単位(a1)は、ポリオレフィン樹脂(a)中に0.1〜5質量%含有していることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%であり、さらに好ましくは1〜5質量%であり、1〜4質量%が最も好ましい。
さらに、(a2)成分と(a3)成分との質量比(a2)/(a3)は、この2成分の合計量を100質量%とした場合60/40〜98/2の範囲であることが好ましく、様々な基材や後述するインク受容層との良好な接着性を持たせるために、この範囲は65/35〜97/3であることがより好ましく、65/35〜95/5であることがさらに好ましく、70/30〜92/8であることが特に好ましく、75/25〜90/10であることが最も好ましい。(a3)成分の比率が2質量%未満では、様々な基材やインク受容層との接着性が低下する恐れがある。一方、化合物(a3)の含有量が40質量%を超えるとオレフィン由来の樹脂の性質が失われ、ポリオレフィン樹脂基材との接着性が低下する恐れがある。
(メタ)アクリル酸エステル(a3)単位としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜30のアルコールとのエステル化物が挙げられ、中でも入手のし易さの点から、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルコールとのエステル化物が好ましい。そのような化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの混合物を用いてもよい。この中で、基材やインク受容層との接着性の点から、(メタ)アクリル酸メチル(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルがより好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルがより好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。(なお、「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜またはメタクリル酸〜」を意味する。)
ポリオレフィン樹脂(a)の具体例としては、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体が最も好ましい。共重合体の形態はランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれでもよいが、入手が容易という点でランダム共重合体、グラフト共重合体が好ましい。
本発明において、ポリオレフィン樹脂(a)は、分子量の目安となる190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、通常0.01〜10000g/10分、好ましくは0.1〜1000g/10分、より好ましくは1〜500g/10分、さらに好ましくは2〜300g/10分、特に好ましくは2〜200g/10分のものを用いることができる。ポリオレフィン樹脂(a)のメルトフローレートが0.01g/10分未満では、樹脂の水性化が困難になる。一方、ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが10000g/10分を超えると、被膜は硬くてもろくなり、基材との接着性が低下してしまう。
ポリオレフィン樹脂(a)の合成法は特に限定されず、一般的には、ポリオレフィン樹脂を構成するモノマーをラジカル発生剤の存在下、高圧ラジカル共重合して得られる。また、不飽和カルボン酸単位はグラフト共重合(グラフト変性)されていてもよい。
また、ポリオレフィン樹脂(a)は、(a1)〜(a3)成分以外に、既述したその他の成分を全体の10質量%以下程度で含有していてもよい。
ポリオレフィン樹脂(b)は、不飽和カルボン酸単位(b1)を0.1〜10質量%、炭素数3〜6の不飽和炭化水素単位(b2)を50〜98質量%、含有するポリオレフィン樹脂である。
不飽和カルボン酸単位(b1)は、ポリオレフィン樹脂(b)中に0.1〜10質量%含有していることが好ましく、より好ましくは0.1〜8質量%であり、さらに好ましくは0.5〜7質量%であり、1〜5質量%が最も好ましい。
炭素数3〜6の不飽和炭化水素単位(b2)の含有量は、50〜98質量%とすることが好ましく、より好ましくは60〜98質量%、さらに好ましくは70〜98質量%、特に好ましくは75〜98質量%である。炭素数3〜6の不飽和炭化水素の含有量が50質量%未満ではポリプロピレン等のポリオレフィン材料に対する接着性が低下し、98質量%を超えると相対的に後述する不飽和カルボン酸単位の含有量が低下してしまうために、インク受容層との接着性が低下する恐れがある。炭素数3〜6の不飽和炭化水素としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等のアルケン類やブタジエンやイソプレン等のジエン類が挙げられ、樹脂の製造のし易さ、各種材料に対する接着性等の点から、プロピレン成分またはブテン成分(1−ブテン、イソブテンなど)であることが好ましく、両者を併用することもできる。
上記した炭素数3〜6の不飽和炭化水素以外に、各種材料に対する接着性向上の点から、さらにエチレン成分を2〜50質量%含有したものが好ましく、特に、プロピレン成分、ブテン成分、エチレン成分の3成分を含有し、その構成比率が、この3成分の総和を100質量部としたとき、プロピレン成分8〜90質量部、ブテン成分8〜90質量部、エチレン成分2〜50質量部であることが好ましい。
不飽和カルボン酸単位(b1)をポリオレフィン樹脂(b)へ導入する方法は特に限定されないが、例えば、ラジカル発生剤存在下、ポリオレフィン樹脂(b)と不飽和カルボン酸とをポリオレフィン樹脂(b)の融点以上に加熱溶融して反応させる方法や、ポリオレフィン樹脂(b)を有機溶剤に溶解させた後、ラジカル発生剤の存在下で加熱、攪拌して反応させる方法等によりポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸単位をグラフト共重合する方法が挙げられる。操作が簡便である点から前者の方法が好ましい。グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、エチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類やアゾビスイソブチロニトリル等のアゾニトリル類が挙げられる。これらは反応温度によって適宜、選択して使用すればよい。
ポリオレフィン樹脂(b)において、(b2)成分の共重合形態は限定されず、ランダム共重合、ブロック共重合等が挙げられるが、重合のし易さの点から、ランダム共重合されていることが好ましい。また、本発明の構成成分比率となるように2種以上のポリオレフィン樹脂を混合してもよい。
また、(b1)、(b2)以外の他の成分をポリオレフィン樹脂(b)全体の10質量%以下程度、含有していてもよく、他の成分としては、1−オクテン、ノルボルネン類等の炭素数6以上のアルケン類やジエン類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類ならびにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、置換スチレン、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二酸化硫黄、などが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。中でも、基材やインク受容層との接着性、樹脂の水性化し易さの点から、(a3)成分として具体例を挙げたような(メタ)アクリル酸エステル類をポリオレフィン樹脂(b)全体の0.1〜10質量%含有していることがより好ましく、0.5〜10質量%含有していることがさらに好ましく、1〜10質量%含有していることが特に好ましい。
ポリオレフィン樹脂(b)はテトラヒドロフラン、トルエン等の有機溶剤に溶解し易いため、樹脂の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン樹脂を標準として求めることができる。ポリオレフィン樹脂(b)の重量平均分子量は5,000〜150,000であることが好ましく、20,000〜120,000であることがより好ましく、30,000〜100,000であることがさらに好ましく、35,000〜90,000であることが特に好ましく、40,000〜80,000であることが最も好ましい。重量平均分子量が5,000未満の場合は、基材との接着性が低下したり、得られる被膜が硬くてもろくなる傾向がある。重量平均分子量が150,000を超える場合は、インク受容層との接着性が低下したり、樹脂の水性化が困難になったりする。
非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(B)とは、非ブロック型のイソシアネート基を1分子中に2個以上含有する化合物である。ここで「非ブロック型」とは、イソシアネート基がラクタム系やオキシム系の化合物(いわゆるブロック剤)でブロック(または、保護、マスク)されていないことを示す。こうした化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4´−又は4,4´−ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトブタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5−ジイソシアナト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−ジイソシアナトデカン、1,3−又は1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3、3、5−トリメチル−5−イソシアナトメチル−シクロヘキサン、4,4´−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、ヘキサヒドロトルエン2,4−又は2,6−ジイソシアネート、ぺルヒドロ−2,4´−又は4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン1,5−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等のジイソシアネートや、それらの改変生成物として得られる多官能イソシアネートが挙げられる。改変生成物としては、上記のようなイソシアネート化合物を公知の方法で変性することによって、アロファネート基、ビューレット基、カルボジイミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基、イソシアヌレート基等のイソシアネートから誘導される官能基を分子中に有する多官能イソシアネート化合物に変性した化合物や、トリメチロールプロパン等の多官能アルコールで変性したアダクト型の多官能イソシアネート化合物を挙げることができる。これらの中でも、イソシアヌレート基を有する多官能イソシアネート化合物を使用することが、樹脂被膜の耐溶剤性を向上させる点で特に好ましい。なお、多官能イソシアネート化合物には、20質量%以内の範囲でモノイソシアネートが含有されていてもよい。上記した多官能イソシアネート化合物の中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートからなる改変生成物を使用することが樹脂被膜の耐溶剤性を向上させる点で好ましく、その中でも特にイソシアヌレート基を有するものが好ましい。
非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(B)の中でも、水性(水溶性もしくは水分散性)のものが好ましい。また、好ましい水性の多官能イソシアネート化合物は、多官能イソシアネート化合物と一価又は多価のノニオン性ポリアルキレンエーテルアルコールと反応させて得ることができる。そのような水性の多官能イソシアネート化合物の市販品としては、BASF社製のバソナート(BASONAT)PLR8878、バソナートHW−100等、住友バイエルウレタン株式会社製のバイヒジュール(Bayhydur)3100、バイヒジュールVPLS2150/1、SBUイソシアネートL801、デスモジュール(Desmodur)N3400、デスモジュールVPLS2102、デスモジュールVPLS2025/1、SBUイソシアネート0772、デスモジュールDN等、武田薬品工業株式会社製のタケネートWD720、タケネートWD725、タケネートWD730等、旭化成工業株式会社製のデュラネートWB40−100、デュラネートWB40−80D、デュラネートWX−1741等がある。中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートの改変生成物であるバイヒジュール3100、デスモジュールDN、バソナートHW−100が特に好ましい。
イソシアネート化合物(B)の含有量は、ポリオレフィン樹脂(A)の固形分100質量部に対して0.5〜30質量部とすることが好ましく、被膜の耐溶剤性が向上する点から、1〜20質量部であることがより好ましく、2〜10質量部であることがさらに好ましく、2〜8質量部であることが特に好ましい。(B)の含有量が0.5質量部未満では被膜の耐溶剤性向上の効果が小さく、30質量部を超えると水性コーティング剤の貯蔵安定性が著しく低下してしまう。
本発明の水性コーティング剤において、不飽和カルボン酸単位により導入されたポリオレフィン樹脂(A)のカルボキシル基は、塩基性化合物(C)によってその一部が中和されていることが必要である。塩基性化合物によってカルボキシル基または酸無水物基をアニオン化し、アニオンの静電気的反発力によって水性媒体中における樹脂微粒子間の凝集が防がれ、良好な分散化が達成される。塩基性化合物の添加量は、ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基(酸無水物基1モルはカルボキシル基2モルとみなす)に対して0.3〜1.5倍当量であることが好ましく、0.5〜1.2倍当量がより好ましく、0.6〜1.0倍当量が特に好ましい。0.3倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められず、1.5倍当量を超えると被膜や接着層等を形成する際の乾燥時間が長くなったり、イソシアネート化合物(B)を添加した場合の貯蔵安定性や可使時間が短くなったりする。
ここで添加される塩基性化合物(C)としては、沸点が150℃以下であることが好ましい。沸点が150℃以下とすることで比較的、低温の乾燥で架橋反応が進行し、耐溶剤性等の被膜の性能が向上する。沸点が150℃を超える場合、高温での乾燥が必要になり基材にダメージを与える恐れがある。沸点は150℃以下の塩基性化合物としては、アンモニアや沸点が150℃以下の有機アミン化合物を挙げることができ、有機アミン化合物の具体例としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、プロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、アニリン、モルホリン、N−メチルモルホリン等を挙げることができる。中でも、水性コーティング剤の貯蔵安定性や可使時間の点から、アンモニアおよび/または沸点が150℃以下の3級の有機アミン化合物(トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルモルホリン等)が好ましい。
次に、本発明の水性コーティング剤の製造方法を説明する。
本発明の水性コーティング剤を製造する方法は特に限定されないが、まずポリオレフィン樹脂の水性分散体を得て、これにイソシアネート化合物を混合する方法が簡便である。
ポリオレフィン樹脂の水性分散体の製法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、塩基性化合物、水性媒体および必要に応じてその他の成分を、固/液撹拌装置や乳化機として広く当業者に知られている装置を使用して、加熱、攪拌する方法を採用することができる。撹拌の方法、撹拌の回転速度は特に限定されない。装置の槽内に各原料を投入した後、好ましくは40℃以下の温度で攪拌混合しておき、次いで、槽内の温度を50〜200℃で、5〜120分間攪拌を続けることにより樹脂を十分に水性化させ、その後、攪拌下で40℃以下に冷却することにより、水性分散体が得られる。
原料を攪拌する際には、水性化をスムーズに進行させる目的で、水溶性の有機溶剤を添加することが好ましい。有機溶剤を使用することで界面活性剤を添加せずにポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体を得ることができる。こうした有機溶剤としては、20℃における水に対する溶解性が20g/L以上のものが好ましく用いられる。有機溶剤を用いる場合の添加量はポリオレフィン樹脂の水性分散体100質量部に対して1〜40質量部程度がよい。なお、有機溶剤は、常圧または減圧下で水性分散体を攪拌しながら加熱することで、系外へ除去(ストリッピング)することができ、最終的には、水性分散体100質量部中、1質量部以下とすることもできる。使用される有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられ、低温乾燥性の点からエタノール、イソプロパノール、n−プロパノールが特に好ましい。
水性分散体中の樹脂粒子の数平均粒子径(以下、mn)は、イソシアネート化合物(B)との混合安定性および反応性が向上するという観点から、1μm以下が好ましく、被膜の平滑性の観点から0.5μm以下がより好ましく、0.3μm以下がさらに好ましく、0.1μm以下が最も好ましい。さらに、重量平均粒子径(以下、mw)に関しては、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.2μm以下が特に好ましい。粒子径を小さくすることで、被膜の平滑性が向上する。粒子の分散度(mw/mn)は、イソシアネート化合物との混合安定性および反応性、被膜の平滑性の観点から、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が特に好ましい。粒子径の下限は特にないが、通常、mn、mwともに0.01μm程度である。このような粒子径は、例えば上述のような製法を採用することにより達成することができる。
以上のようにして得られるポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体と、非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(B)とを混合・攪拌することで本発明の水性コーティング剤が得られる。
なお、水性コーティング剤における、樹脂含有率は、イソシアネート化合物(B)の量や、成膜条件、目的とする樹脂層の厚さや性能等により適宜調整され、特に限定されるものではないが、コーティング剤の粘性を適度に保ち、かつ良好なプライマー層形成能を発現させる点で、1〜50質量%が好ましく、3〜50質量%がより好ましく、5〜45質量%がさらに好ましく、5〜40質量%が特に好ましい。
水性コーティング剤中の界面活性剤の使用量は、少ないほど被膜の耐水性、基材との密着性が向上し、また衛生面での問題も生じないことから、水性コーティング剤中のポリオレフィン樹脂100質量部に対して10質量部以下とすることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、実質的に含有しないことが最も好ましい。上記したような製造方法を採ることで、本発明の水性コーティング剤における界面活性剤の使用量を減じることができる。なお、「界面活性剤を実質的に含有しない」とは、界面活性剤を製造時(樹脂の分散時)に用いず、得られるコーティング剤が結果的に界面活性剤を含有しないことを意味する。
本発明でいう界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性(非イオン性)界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、反応性界面活性剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、乳化剤類も含まれる。例えば、アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸およびその塩、アルキルベンゼンスルホン酸およびその塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体等のポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のソルビタン誘導体等が挙げられ、両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。反応性界面活性剤としては、アルキルプロペニルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルジアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩等の反応性2重結合を有する化合物が挙げられる。これらを使用する場合には、被膜からのブリードアウトをできるだけ避ける観点から、分子量が5000以上のものを用いることが好ましく、10000以上のものがより好ましく、15000以上のものがさらに好ましい。
本発明の水性コーティング剤には、使用目的に応じて顔料または染料を添加してもよいし、市販の塗料やインキに本発明の水性コーティング剤を添加してもよい。使用する顔料または染料は特に限定されるものではなく、一般的に使用されているものを塗料やインキの種類によって適宜選択すれば良い。顔料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化クロム、硫化カドミウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、黄鉛、酸化鉄、カーボンブラックなどの無機顔料、アゾ系、ジアゾ系、縮合アゾ系、チオインジゴ系、インダンスロン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ベンゾイミダゾール系、ペリレン系、ペリノン系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラピリジン系、ジオキサジン系などの有機顔料が挙げられる。また、染料としては直接染料や反応染料、酸性染料、カチオン染料、バット染料、媒染染料などが挙げられる。上記の顔料または染料は単独もしくは2種類以上が含有されていても差し支えない。
さらに、本発明の水性コーティング剤には、必要に応じて、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤等の各種薬剤を添加することも可能である。また、水性コーティング剤の保存安定性を損なわない範囲で上記以外の有機もしくは無機の化合物を添加することも可能である。
さらに、本発明の水性コーティング剤には、ポリオレフィン樹脂(A)以外に他の樹脂を添加してもよく、そのような樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂系樹脂、ゴム系樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂等、エチレン−酢酸ビニル等の上記したポリオレフィン樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらの添加量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、1〜50質量部程度である。
本発明において、基材との接着性、耐水性、耐溶剤性等の性能をさらに向上させるために、非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(B)以外の架橋剤を添加することもできる。こうした架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、多価の配位座を有する金属イオン等を用いることができ、このうちブロックイソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン基含有化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が好ましい。また、これらの架橋剤を組み合わせて使用してもよい。
本発明の水性コーティング剤は、被膜形成能に優れているので、公知の成膜方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等により各種基材表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥又は乾燥と焼き付けのための加熱処理に供することにより、均一な樹脂被膜を各種基材表面に接着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。また、加熱温度や加熱時間は、被コーティング物である基材の特性や硬化剤の種類、配合量等により適宜選択されるものであり、特に限定されず、例えば、加熱温度50〜250℃程度の範囲で使用できるが、特記すべきは、50〜120℃、好ましくは50〜100℃程度の、従来ブロック型イソシアネートでは架橋反応が進行しにくい条件でも使用することができ、このような範囲で、耐熱性の低い基材に適用可能であるとともに、エネルギー的にも有利である。さらに架橋反応を進行させるために20℃〜60℃程度でエージング処理を行ってもよい。
本発明の水性コーティング剤は、各種材料に対する良好な密着性を有することから、前記のようにして水性コーティング剤から水性媒体を除去することにより、良好な接着層、プライマー層、被膜等を形成することができる。したがって、接着剤、プライマー、塗料、インキなどのバインダーとしての用途に好適である。
本発明のコーティング剤が塗布される基材としては、紙、合成紙、各種熱可塑性樹脂のフィルムや成形体、ガラス、金属、プラスチック等が挙げられ、特に限定されないが、本発明のコーティング剤は、比較的低温の条件で熱処理でも優れた密着性が得られるため、耐熱性の比較的低い基材、例えば、融点が180℃以下の熱可塑性樹脂(PP、PE等)へ適用できる。また、基材の形状としては、合成紙、熱可塑性樹脂フィルムが好ましい。
合成紙としては、ポリオレフィン系合成紙用を用いることが好適である。ここで、ポリオレフィン系とは、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂や、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂を主体とすることを意味する。これらの樹脂は、単独で用いもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中では、ポリプロピレンを用いることが、耐薬品性、耐熱性、コストの面などから最も好ましい。ポリプロピレンの立体構造は特に限定されないが、例えば、アイソタクチック又はシンジオタクチック、及び種々の程度の立体規則性を有するプロピレン単独重合体や、主成分であるプロピレンと、エチレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとの共重合体を挙げることができる。これらの共重合体は、2元以上の多元共重合体であってもよく、ランダム共重合体、ブロック共重合体であってもよい。
合成紙は、フィラーを含有するものが好ましい(一般には75質量%以下)。合成紙に使用するフィラーとしては、無機系では、炭酸カルシウム、クレイ、シリカ、けいそう土、タルク、酸化チタン、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、アルミナ等を挙げることができる。フィラーの平均粒子径は0.01〜15μmのものが好ましい。有機系では、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン12、環状ポリオレフィン等の重合体であって、ポリオレフィン樹脂の融点より高い融点ないしガラス転移温度を有するものを使用することができる。フィラーは無機系のものが好ましい。
合成紙の構造は、特に限定されない。したがって、単層構造であっても多層構造であってもよい。多層構造としては、例えば基材層と表面層の2層構造、基材層と表裏面に表面層が存在する3層構造、基材層と表面層の間に他の樹脂フィルム層が存在する多層構造を例示することができる。また、各層は無機や有機のフィラーを含有していてもよいし、含有していなくてもよい。また、ポリオレフィン系合成紙としては、微細なボイドを多数有する微多孔性合成紙を使用することができる。中でも空孔率が5〜60%、好ましくは8〜40%のものを用いることが好ましい。ポリオレフィン系合成紙の厚みは特に限定されないが、一般に、こうした合成紙の厚みは通常20〜400μm程度である。
市販のポリプロピレン系合成紙としては、例えば、王子油化合成紙株式会社製のユポFPG、ユポFGS、ユポGFG、ユポKPK等を挙げることができ、いずれも良好に使用できる。
基材としての熱可塑性樹脂フィルムは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂またはそれらの混合物よりなるフィルムまたはそれらのフィルムの積層体が挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、製法も限定されるものではない。熱可塑性樹脂フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常5〜500μmの範囲のものを用いる。
熱可塑性樹脂フィルムは、フィラーを含有していてもよい。フィラーとしては、無機系のものが好ましく、炭酸カルシウム、クレイ、シリカ、けいそう土、タルク、酸化チタン、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、アルミナ等を挙げることができる。
本発明の水性コーティング剤からなる被膜は、基材、プライマー層、インク受容層をこの順で積層してなるインクジェット記録材におけるプライマー層としての使用が特に好ましい。基材は前述した合成紙や熱可塑性樹脂フィルムを好適に使用できる。プライマー層の厚みは、特に限定されないが、0.1〜20μmであることが好ましく、0.3〜15μmであることがより好ましく、0.3〜10μmであることがさらに好ましく、0.5〜8μmであることが特に好ましい。厚みが、0.1μm未満ではプライマーとしての効果が小さく、20μmを超えると乾燥時間が長くなる。
上記した、基材、プライマー層、インク受容層を有するインクジェット記録材を製造する方法としては、基材の少なくとも片面に、本発明のコーティング剤を塗布、乾燥し、次にプライマー層を同様の方法で設け、この上にさらにインク受容層を設けることが好ましい。
インク受容層は、公知の方法で形成することができる。インク受容層に用いられる樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコールおよびシラノール基等で変性された誘導体、ポリビニルピロリドン、カゼイン等の蛋白質、澱粉およびその誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの重合体または共重合体等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス、あるいはこれらの各種重合体のカルボキシル化変性物、カチオン性基等の官能基含有変性重合体ラテックス、メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化樹脂等の合成樹脂系の水性接着剤、無水マレイン酸共重合樹脂系、ポリアクリルアミド系 、ポリメチルメタクリレート系、ポリウレタン樹脂系、不飽和ポリエステル樹脂系、飽和ポリエステル樹脂系、ポリビニルブチラール系、アルキッド樹脂系等の合成樹脂系接着剤などの高分子が、接着性が良く、かつ水性インクとの親和性が良いため、吸液性を向上させるので、好ましく用いられる。
インク受容層は、インクの吸収、インク中の顔料や染料の固着、及び顔料や染料の発色に寄与する層であり、インク受容層に用いられる顔料は多孔性でインクの吸収性が高く、且つ鮮明な発色を可能とする顔料を含有することが好ましい。このような顔料としては、微粒子合成シリカ、ゼオライト、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、焼成クレー、カオリンクレー、タルク、ホワイトカーボン、有機顔料(プラスチックピグメント)等や、一般に紙塗工に用いられている顔料が例示できるが、特に微粒子合成シリカを用いることが好ましい。このような顔料の使用比率は限定しないが、受容層の総固形分の10〜90質量%である。10質量%未満ではインク吸収性が不十分となり、90質量%を越えるとインク受容層の強度の低下する恐れがある。
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
なお、各種の特性については以下の方法によって測定または評価した。
1. 樹脂の特性
(1)ポリオレフィン樹脂の構成
1H−NMR分析(バリアン社製、300MHz)より求めた。ポリオレフィン樹脂は、オルトジクロロベンゼン(d4)を溶媒とし、120℃で測定した。ポリオレフィン樹脂中の不飽和カルボン酸含有量は樹脂の酸価をJIS K5407に準じて測定し、その値から不飽和カルボン酸の含有量を求めた。
(2)ポリオレフィン樹脂の水性化後のエステル基残存量
ポリオレフィン樹脂の水性分散体を150℃で乾燥させた後、オルトジクロロベンゼン(d4)中、120℃にて1H−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い、水性化前の(メタ)アクリル酸エステルのエステル基量を100%としてエステル基の残存率(%)を求めた。
(3)ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)
JIS 6730記載(190℃、2160g荷重)の方法で測定した。
(4)ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量
GPC分析(東ソー社製HLC-8020、カラムはTSK-GEL)を用いて、試料をテトラヒドロフランに溶解して40℃で測定し、ポリスチレン標準試料で作成した検量線から重量平均分子量を求めた。
2. ポリオレフィン樹脂水性分散体の特性
(1)水性化収率
水性化後の水性分散体を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)した際に、フィルター上に残存する樹脂質量を測定し、仕込み樹脂質量より収率を算出した。
(2)水性分散体の固形分濃度
水性分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
(3)水性分散体の平均粒子径
日機装株式会社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340、動的光散乱法)を用い、数平均粒子径および重量平均粒子径を求めた。ここで、粒子径算出に用いる樹脂の屈折率は1.50とした。
(4)水性分散体の貯蔵安定性
水性分散体を室温で30日放置した後の水性分散体の外観を次の3段階で評価した。
○:外観に変化なし。
△:増粘がみられる。
×:固化、凝集や沈殿物の発生が見られる。
3. 水性コーティング剤の特性
(1)貯蔵安定性
水性コーティング剤を室温で30日放置した後の水性分散体の外観を次の3段階で評価した。
○:外観に変化なし。
△:増粘がみられる。
×:固化、凝集や沈殿物の発生が見られる。
4.材料特性
以下の評価においては、合成紙としてポリプロピレン系合成紙であるユポ紙(王子油化合成紙社製FGS-95、以下、合成紙)、熱可塑性樹脂フィルムとして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製エンブレットPET12、厚み12μm、以下、PET)、2軸延伸ナイロン6フィルム(ユニチカ社製エンブレム、厚み15μm、以下、Ny)、延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ社製、OP U-1、以下、PP)を用いた。
(1)被膜の耐水性評価方法
2軸延伸PETフィルムの未処理面に水性コーティング剤を乾燥後の被膜の厚が2μmになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、100℃で1分間、乾燥させた。得られたコートフィルムは室温で5日放置後、評価した。コートフィルムを60℃の温水に24時間浸漬し、風乾燥後の被膜の状態を目視で評価した。
○:変化なし、△:被膜がくもる、×:被膜が完全に溶解、または剥離
(2)被膜の耐溶剤性評価方法
2軸延伸PETフィルムの未処理面に水性コーティング剤を乾燥後の被膜の厚が2μmになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、100℃で1分間、乾燥させた。得られたコートフィルムは室温で5日放置後、評価した。コートフィルムの被膜面に1,2−ヘキサンジオール(以下、HD)、2−ピロリドン(以下、2-P)を数滴落し、室温で24時間放置後、溶剤をふき取り、被膜の状態を目視で評価した。
○:変化なし、△:被膜がくもる、×:被膜が完全に溶解、または剥離
(3)ヒートシール強度評価
水性コーティング剤を延伸ポリプロピレン(PP)フィルム上に乾燥後の塗布量が約5μmになるようにメイヤーバーでコートし、100℃で2分間乾燥した。PPフィルムとPPフィルムのコート面が接するようにして、ヒートプレス機(シール圧0.3MPaで5秒間)にて110℃でプレスした。このサンプルを15mm幅で切り出し、1日後、引張り試験機(インテスコ社製精密万能材料試験機2020型)を用い、引張り速度200mm/分、引張り角度180度で被膜の剥離強度を測定することでヒートシール強度を評価した。
(4)長期保存後のヒートシール強度評価
(3)で示した方法で作製したPPフィルム同士をヒートシールしたサンプルを15mm幅で切り出し、40℃、90%RHの条件下で30日間、保存した後、引張り試験機(インテスコ株式会社製のインテスコ精密万能材料試験機2020型)を用い、引張り速度200mm/分、引張り角度180度で被膜の剥離強度を測定することで保存後のヒートシール強度を評価した。
(5)基材/プライマー層の接着性評価(接着性I)
各種基材の未処理面に水性コーティング剤を乾燥後のプライマー層の厚が2μmになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、100℃で1分間、乾燥させた。得られた積層体は室温で1日放置後、評価した。プライマー層表面にセロハンテープ(ニチバン社製TF-12)を貼り付け、テープを一気に剥がした場合の剥がれの程度を目視で評価した。
○:全く剥がれなし、△:一部、剥がれた、×:全て剥がれた
(6)インク受容層のコート適性
(5)の方法で作製した積層体のプライマー層表面に、各種インク受容層を形成するためのコート剤を乾燥後の被膜厚が20μmになるようにマイヤーバーを用いてコートし、コートした後、100℃で10分間、乾燥させた。インク受容層のコート適性を目視で以下のように評価した。
○:はじき、コートむらなし、×:はじき、コートむらあり
(7)基材/プライマー層/受容層の接着性評価(接着性II)
(5)の方法で作製した積層体のプライマー層表面に、各種インク受容層を形成するためのコート剤を乾燥後の被膜厚が20μmになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、100℃で10分間、乾燥させた。得られた積層体(インクジェット記録材)は室温で1日放置後、評価した。インク受容層表面にセロハンテープ(ニチバン社製TF-12)を貼り付け、テープを一気に剥がした場合の剥がれの程度を目視で評価した。
○:全く剥がれなし、△:一部、剥がれた、×:全て剥がれた
(8)印字部(インク)の接着性評価(接着性III)
(7)の方法で作製した積層体のインク受容層面に、インクジェットプリンタ(セイコーエプソン社製 PM-770C、インクはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)で印字を行った(フィルムを用いた場合、紙に貼り付けて印字した)。印字面にセロハンテープ(ニチバン社製TF-12)を貼り付け、テープを一気に剥がした場合の剥がれの程度を目視で評価した。
○:全く剥がれなし、△:一部、剥がれた、×:全て剥がれた
(9)印字性
(7)の方法で作製した積層体のインク受容層面に、インクジェットプリンタ(セイコーエプソン社製 PM-770C、インクはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)で印字を行った。印字部の状態を10倍のルーペで観察した。
○:全てのインクで印字部にむらなし、△:一部のインクで印字部にむらあり、×:全てのインクで印字部にむらあり
(ポリオレフィン樹脂P−1の製造)
プロピレン−ブテン−エチレン三元共重合体(ヒュルスジャパン社製、ベストプラスト708、プロピレン/ブテン/エチレン=65/24/11質量%)100g、トルエン500gを、攪拌機、冷却管、滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を110℃に保って攪拌下、ラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド1.0gのヘプタン20g溶液を1時間かけて加えた後、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸7.0g、アクリル酸ラウリル9.0g、ジクミルパーオキサイド0.5gのヘプタン10g溶液をそれぞれ1時間かけて滴下し、その後30分間反応させた。反応終了後、室温まで冷却した後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応物を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥してポリオレフィン樹脂P-1を得た。P-1の重量平均分子量は50,000、酸価46mgKOH/g、アクリル酸ラウリルの樹脂中の含有量は6質量%であった。
その他のポリオレフィン樹脂は市販のものを使用した。以下の水性分散体の製造において使用したポリオレフィン樹脂の組成を表1に示す。
Figure 2005194382
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂〔ボンダインHX-8290、住友化学工業社製〕、60.0gのイソプロパノール(和光純薬社製)、2.2gのトリエチルアミン(和光純薬社製)および177.8gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体E−1を得た。水性分散体の各種特性を表2に示した。
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−2の製造)
ポリオレフィン樹脂としてボンダインHX8210(住友化学工業社製)を用いた以外はE-1の製造と同様の方法でポリオレフィン樹脂水性分散体E−2を得た。水性分散体の各種特性を表2に示した。
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−3の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂(P-1)、90.0gのn−プロパノール(和光純薬社製)、3.9gのN,N−ジメチルエタノールアミン(和光純薬社製)及び146.1gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白黄色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体E-3を得た。水性分散体の各種特性を表2に示した。
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−4の製造)
樹脂の水性化の際に、ノニオン性界面活性剤(平均分子量15500のエチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、旭電化工業社製アデカプルロニックF-108)をポリオレフィン樹脂の固形分100質量部に対して7質量部となるように添加した以外はE-1の製造と同様の方法でポリオレフィン樹脂水性分散体E-4を得た。水性分散体の各種特性を表2に示した。
(ポリオレフィン樹脂水性分散体H−1の製造)
ポリオレフィン樹脂としてエチレン−アクリル酸共重合体樹脂(プリマコール5980I、アクリル酸20質量%共重合体、ダウケミカル製)を用いた。ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、45.0gのエチレン−アクリル酸共重合体樹脂(プリマコール5980I、ダウケミカル社製)、11.4gのトリエチルアミン、および243.6gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに40分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の水性分散体H-1を得た。水性分散体の各種特性を表2に示した。
Figure 2005194382
(インク受容層A)
ポリウレタン系バインダー(三井武田社製、タケラックW-6010)の固形分100質量部に対し、微粉末シリカ(トクヤマ社製、ファインシール)20質量部を添加し、分散させたものを使用した。
(インク受容層B)
ポリウレタン系バインダー(大日本インキ工業社製、パテラコールIJ-30)とポリビニルアルコール(ユニチカケミカル社製UF100、ケン化度99.4%、平均重合度1000)の水溶液とを固形分質量比が50/50になるように混合した液を使用した。
実施例1
非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(BASF社製、バソナートHW-100、イソシアネート含有率約17%)(以下、HW-100)を水/イソプロパノールが95/5(質量比)の混合溶媒に10質量%になるように希釈しておいた。ポリオレフィン樹脂水性分散体E-1と左記希釈液とを、固形分換算で100質量部のE-1に対しHW-100が5質量部となるように室温で5分間、混合攪拌し、水性コーティング剤W-1を得た。W-1を用いて各種性能評価を行った。
次に、各種評価のうち、耐水性評価、耐溶剤性評価において、乾燥温度を130℃、時間を1分間に変更したが、耐熱性の低い基材であるPPフィルムと合成紙は熱収縮により変形し、この基材においては実用に耐えない温度であることが確認された。
実施例2、3
E-1とHW-100との質量比を表3のように変更した以外は実施例1と同様の方法でW-2、W-3を得た。W-2、W-3を用いて各種性能評価を行った。なお、W-3は液の粘度が高かったため水で半分の濃度に希釈して試験に用いた。
実施例4
非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(住友バイエルウレタン社製、デスモジュールDN、イソシアネート含有率約22%)(以下、DN)を用いた以外は実施例1と同様の方法でW-4を得た。W-4を用いて各種性能評価を行った。
実施例5〜7
ポリオレフィン樹脂水性分散体としてE-2、E-3、E-4を用いた以外は実施例1と同様の方法でW-5、W-6、W-7を得た。W-5(実施例5)、W-6(実施例6)、W-7(実施例7)を用いて各種性能評価を行った。
実施例8
ポリオレフィン樹脂水性分散体E-1とE-3を固形分質量比が50/50になるように混合した液を用いた以外は実施例1と同様の方法でW-8を得た。W-8を用いて各種性能評価を行った。
実施例1〜8の結果を表3に示す。
Figure 2005194382
比較例1
非ブロック型の多官能イソシアネート化合物を添加せずに、ポリオレフィン樹脂水性分散体E-1のみで各種性能評価を行った。
比較例2
ポリオレフィン樹脂水性分散体H-1を用いた以外は実施例1と同様の方法でX-2を得た。X-2を用いて各種性能評価を行った。
比較例3、4
ポリオレフィン樹脂水性分散体E-1と架橋剤としてメラミン化合物(サイメル327、三井サイテック社製)とを、固形分換算で100質量部のE-1に対し架橋剤5質量部(比較例3)または15質量部(比較例4)となるように室温で30分間、混合攪拌し、水性コーティン剤X-3、X-4を得た。X-3、X-4を用いて各種性能評価を行った。
比較例5、6
ポリオレフィン樹脂水性分散体E-1と架橋剤としてブロック型イソシアネート化合物(エラストロンBN-11、第一工業製薬社製、比較例5)またはカルボジイミド化合物(カルボジライトE-01、日清紡社製、比較例6)とを、固形分換算で100質量部のE-1に対し架橋剤5質量部となるように室温で5分間、混合攪拌し、水性コーティング剤X-5、X-6を得た。X-5、X-6を用いて各種性能評価を行った。
比較例1〜6の結果を表4に示す。
Figure 2005194382
表3、表4の結果より、実施例1〜8で得られた水性コーティング剤は、被膜の耐水性や耐溶剤性が良好であり、各種基材との接着性やヒートシール性に優れるものであった。また、これらのコーティング剤をプライマー層とすることにより、インク受容層のコート適性、受容層との接着性、印字部の接着性、印字性等の性能は良好であり、インクジェット記録材として優れた特性を有することが明らかである。イソシアネート化合物の添加量が少ない場合は耐溶剤性の向上効果がやや小さく(実施例2)、多い場合は液の貯蔵安定性が低下する傾向があった(実施例3)。また、コーティング剤中に界面活性剤を含有している場合は(実施例7)、含有していない場合に比べて被膜性能は低下する傾向があったが、十分実用に耐えうるものであった。一方、比較例1のように、イソシアネート化合物を添加しない場合は、被膜の耐溶剤性が悪く、また、比較例2のように、本発明の範囲を外れる組成のポリオレフィン樹脂を用いる場合、各種接着性は劣っていた。比較例3〜6では、架橋剤として本発明の範囲外のものを用いたが、100℃程度の低温乾燥では被膜性能の向上は認められず、むしろ低下する傾向があった。

Claims (9)

  1. 不飽和カルボン酸単位を0.1〜10質量部含有するポリオレフィン樹脂(A)、非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(B)、および塩基性化合物(C)を含有し、前記不飽和カルボン酸単位の一部が塩基性化合物(C)により中和されていることを特徴とする水性コーティング剤。
  2. 塩基性化合物(C)の含有量がポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基に対して0.3〜1.5倍当量であることを特徴とする請求項1記載の水性コーティング剤。
  3. 非ブロック型の多官能イソシアネート化合物(B)の含有量が、ポリオレフィン樹脂(A)の固形分100質量部に対して0.5〜30質量部であることを特徴とする請求項1または2記載の水性コーティング剤。
  4. ポリオレフィン樹脂(A)が、下記ポリオレフィン樹脂(a)および/または(b)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水性コーティング剤。
    ポリオレフィン樹脂(a):
    不飽和カルボン酸単位(a1)を0.1〜5質量%、及びエチレン単位(a2)と(メタ)アクリル酸エステル単位(a3)を含有し、(a2)と(a3)の質量比(a2)/(a3)が60/40〜98/2であるポリオレフィン樹脂。
    ポリオレフィン樹脂(b):
    不飽和カルボン酸単位(b1)を0.1〜10質量%、炭素数3〜6の不飽和炭化水素単位(b2)を50〜98質量%含有するポリオレフィン樹脂。
  5. 界面活性剤を実質的に含有していないことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水性コーティング剤。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の水性コーティング剤を含有する接着剤、塗料、プライマーまたはインキ。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の水性コーティング剤から水性媒体を除去してなる接着層、プライマー層または被膜。
  8. 基材、請求項7記載のプライマー層、インク受容層をこの順で積層してなるインクジェット記録材。
  9. 基材が合成紙または熱可塑性樹脂フィルムである請求項8記載のインクジェット記録材。

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