JP2005181392A - 光学系 - Google Patents
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Abstract
【課題】 色収差を始めとする諸収差を良好に補正すると共に、製造が容易で、耐環境性に優れた光学系を提供すること。
【解決手段】 光学系中に、光入射側と光射出側が共に屈折面であり、アッベ数をνd、部分分散比θgd,θgFとするとき、
νd < 30
θgd < −3.333×10−3・νd+1.40
θgF < −2.615×10−3・νd+0.67
なる条件を満足する固体材料GIT1を設ける。
【選択図】 図1
【解決手段】 光学系中に、光入射側と光射出側が共に屈折面であり、アッベ数をνd、部分分散比θgd,θgFとするとき、
νd < 30
θgd < −3.333×10−3・νd+1.40
θgF < −2.615×10−3・νd+0.67
なる条件を満足する固体材料GIT1を設ける。
【選択図】 図1
Description
本発明は、異常部分分散を持つ光学材料を用いた光学系に関し、例えば、銀塩フィルム用カメラ、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ等に好適な光学系に関するものである。
一般に光学系では、全長を短縮するほど軸上色収差及び倍率色収差などの色収差が悪化し、光学性能が低下する傾向にある。特にテレフォトタイプの光学系では、焦点距離を伸ばすほど色収差が拡大し、全長短縮に伴う色収差の悪化が著しい。
このような色収差の発生を低減する方法として、異常部分分散材料を用いた色消しや回折格子を用いた色消しが一般的によく知られている。
テレフォトタイプの光学系では近軸軸上光線と瞳近軸光線の光軸からの通過位置が比較的に高くなる前方レンズ群に、蛍石等の異常部分分散を持った低分散材料で構成した正レンズと高分散材料で構成した負レンズを用いて色収差の低減を行うのが一般的で、このような望遠レンズが種々提案されている。(特許文献1〜3)
また、異常部分分散材料を用いず、回折光学素子を用いて望遠レンズの色収差の補正を行ったものも、特許文献4及び特許文献5で提案されている。特許文献4や特許文献5には、回折型光学素子と屈折型光学素子とを組み合わせることで、色収差が比較的良好に補正されたFナンバーF2.8程度の望遠レンズが開示されている。
また、異常部分分散材料を用いず、回折光学素子を用いて望遠レンズの色収差の補正を行ったものも、特許文献4及び特許文献5で提案されている。特許文献4や特許文献5には、回折型光学素子と屈折型光学素子とを組み合わせることで、色収差が比較的良好に補正されたFナンバーF2.8程度の望遠レンズが開示されている。
回折光学素子は、アッベ数に相当する数値の絶対値が3.45と小さく、回折によるパワー(焦点距離の逆数)を僅かに変化させるだけで、球面収差、コマ収差、非点収差等にほとんど影響を与えることなく、大きく色収差を変化できる特徴がある。また、回折光であるため、入射光の波長の変化に対してパワーが線形変化し、色収差係数の波長特性は完全な直線となる。したがって、全長短縮に際しては、主に球面収差、コマ収差、非点収差の補正に特化して収差補正を行えば良く、色収差に関しては、悪化した絶対量を気にすることなく色収差係数の波長特性の線形性が得られるように、構成レンズの硝材とパワーを最適化して設計を行いさえすれば、全長が短縮された望遠レンズが得られることになる。
また、回折光学素子に似た色収差補正作用を持つものに、比較的高分散で、かつ比較的異常部分分散な特性を示す液体材料が知られていおり、それを用いた色消し光学系が提案されている。(特許文献6)
特公昭60−49883号公報
特公昭60−55805号公報
特開平11−119092号公報
特開平6−324262号公報
特開平6−331887号公報
米国特許第4913535号明細書
特許文献1〜3に開示されたような蛍石等を使った望遠レンズでは、光学全長を比較的長めに設定した場合は比較的良好に色収差を補正可能であるが、全長短縮に伴う色収差の悪化までは補正することが困難である。これは、この手法が、蛍石等の材料が持つ低分散と異常部分分散を利用して前玉自らで発生する色収差を単に低減するに留まるためである。全長短縮に伴って悪化した色収差を補正しようとすると、例えば、蛍石のようなアッベ数の大きい低分散ガラスを使ったレンズでは、レンズ面のパワーを大きく変化させないと色収差が変化しないため、色収差の補正と、球面収差、コマ収差、非点収差などの諸収差の補正との両立は困難である。
一方、回折光学素子は十分な色収差補正作用があるものの、実際に用いる設計回折次数の回折光以外の不要な回折次数の回折光が色の付いたフレア光となって結像性能を悪化させるという問題がある。複数のブレーズ型回折格子を光軸方向に積層した、所謂、積層型回折光学素子により、設計回折次数へエネルギーを集中させ、不要回折光を大幅に減らしたものもあるが、依然として高輝度な被写体を撮影すると回折フレアが現れてくるという問題は残る。
また、回折光学素子の製造方法として、紫外線硬化樹脂等を金型で成型する方法が知られているが、回折光学素子は回折効率の製造敏感度が極めて高く、非常に高い金型精度や成型精度が要求され、製造コストが高いという問題もある。
特許文献6に開示された材料は、液体であるために、それを封止する構造が必要となり、製造も容易とは言えない。また、温度による屈折率、分散特性などの特性変化の問題もあり、耐環境性が十分とは言えない。更に、アッベ数が比較的大きく、異常部分分散性も比較的小さいことに加え、空気との界面が得られないために十分な色収差補正作用が得難いという欠点もある。
本発明は、これらの従来例の問題点を踏まえてなされたもので、色収差を始めとする諸収差を良好に補正すると共に、製造が容易で、耐環境性に優れた光学系を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の光学系は、光入射側と光射出側が共に屈折面であり、アッベ数をνd、部分分散比θgd,θgFとするとき、
νd < 30
θgd < −3.333×10−3・νd+1.40
θgF < −2.615×10−3・νd+0.67
なる条件を満足する固体材料を有することを特徴としている。
νd < 30
θgd < −3.333×10−3・νd+1.40
θgF < −2.615×10−3・νd+0.67
なる条件を満足する固体材料を有することを特徴としている。
なお、本発明において、アッベ数νd、部分分散比θgd,θgFの定義は一般に用いられるものと同じであり、g線、F線、d線、C線に対する屈折率をそれぞれNg,NF,Nd,NCとするとき、それぞれ次式で表される。
νd =(Nd−1)/(NF−NC)
θgd=(Ng−Nd)/(NF−NC)
θgF=(Ng−NF)/(NF−NC)
また、本発明において固体材料とは、光学系を使用する状態で固体の材料を指し、製造時などの光学系を使用する前での状態を言及したものではない。例えば、製造時には液体材料であっても、それを硬化させて固体材料としたものは、本発明でいう固体材料に該当する。
θgd=(Ng−Nd)/(NF−NC)
θgF=(Ng−NF)/(NF−NC)
また、本発明において固体材料とは、光学系を使用する状態で固体の材料を指し、製造時などの光学系を使用する前での状態を言及したものではない。例えば、製造時には液体材料であっても、それを硬化させて固体材料としたものは、本発明でいう固体材料に該当する。
本発明によれば、製造が容易で、耐環境特性に優れた、高い光学性能を有する光学系が提供できる。
本発明の光学系の実施形態について説明する。本発明の光学系は、高分散で部分分散比の低い固体材料に屈折作用を持たせたことを特徴としている。
まず、高分散光学材料が、光学系の収差補正に及ぼす作用について説明する。
屈折レンズの面のパワー変化をΔψ、アッベ数をν、近軸軸上光線(光学系全系の焦点距離を1に正規化し、光学系に光軸と平行に、光軸からの高さを1として入射させた近軸光線である。物体は光学系の左側にあるものとし、物体側から光学系に入射する光線は左から右へ進むものとする。)及び瞳近軸光線(光学系全系の焦点距離を1に正規化し、光軸に対して−45°で入射する光線の内、光学系の入射瞳と光軸との交点を通過する近軸光線である。光学系への入射角度は、光軸から測って時計回りを正、半時計回りを負とする。また、物体は光学系の左側にあるものとし、物体側から光学系に入射する光線は左から右へ進むものとする。)がレンズ面を通過する光軸からの高さをそれぞれh,Hとすると、そのレンズ面での軸上色収差係数の変化ΔLと倍率色収差係数の変化△Tは、次のように表せる。
ΔL = h2・Δψ/ν …(a)
ΔT = h・H・Δψ/ν …(b)
式(a)及び式(b)から明らかなとおり、レンズ面のパワー変化に対する各収差係数の変化は、アッベ数の絶対値が小さい(すなわち、分散が大きい)ほど大きくなる。したがって、アッベ数の絶対値が小さい高分散材料を用いれば、必要な色収差を得るためのパワー変化量は小さくて済むことになる。このことは収差論上、球面収差、コマ収差や非点収差などに大きな影響を及ぼすことなく色収差をコントロールでき、色収差補正の独立性が高まることを意味する。逆に、低分散材料を用いると、必要な色収差を得るためのパワー変化量は大きくなり、それに伴って球面収差などの諸収差が大きく変化し、色収差補正の独立性が弱まることになる。したがって、光学系を構成するレンズの内、少なくとも1つのレンズ面は、高分散材料で形成された屈折レンズ面であることが収差補正上重要である。
ΔT = h・H・Δψ/ν …(b)
式(a)及び式(b)から明らかなとおり、レンズ面のパワー変化に対する各収差係数の変化は、アッベ数の絶対値が小さい(すなわち、分散が大きい)ほど大きくなる。したがって、アッベ数の絶対値が小さい高分散材料を用いれば、必要な色収差を得るためのパワー変化量は小さくて済むことになる。このことは収差論上、球面収差、コマ収差や非点収差などに大きな影響を及ぼすことなく色収差をコントロールでき、色収差補正の独立性が高まることを意味する。逆に、低分散材料を用いると、必要な色収差を得るためのパワー変化量は大きくなり、それに伴って球面収差などの諸収差が大きく変化し、色収差補正の独立性が弱まることになる。したがって、光学系を構成するレンズの内、少なくとも1つのレンズ面は、高分散材料で形成された屈折レンズ面であることが収差補正上重要である。
次に、高分散であることを踏まえ、低部分分散比の光学材料が、光学系の収差補正に及ぼす作用について説明する。
光学材料の屈折率の波長依存特性(分散特性)において、アッベ数は分散特性曲線の全体の傾きを表し、部分分散比は分散特性曲線の曲がり具合を表すものであることは周知のとおりである。
一般的に光学材料は、短波長側の屈折率が長波長側の屈折率よりも高く(アッベ数が正の値)、分散特性曲線は下に凸(部分分散比が正の値)を描き、短波長側になるほど波長の変化に対する屈折率の変化は大きくなる。そして、アッベ数の小さい高分散な光学材料ほど部分分散比が大きくなり、分散特性曲線は下に凸が強まる傾向にある。
部分分散比が大きな光学材料では、その材料を用いたレンズ面の色収差係数の波長依存特性曲線は、部分分散比が小さな光学材料を用いた場合に比べて短波長側でより大きな曲がりを示す。このとき、色収差をコントロールするためにレンズ面のパワーを変化させると、色収差係数波長特性曲線は、設計基準波長の位置を回転中心として全体の傾きが変化する。この変化は、部分分散比が大きい材料では部分分散比が小さい材料に比べて、特に短波長側の動きが大きくなり、大きく曲がり量を変化させながら全体の傾きが変化することになる。そのため、他の屈折系部分のガラスを変更しても色収差係数波長依存特性曲線において全体の傾きと曲がりの双方でキャンセルする構成とすることが難しくなり、波長域全体で色収差を補正することができなくなってくる。
このことを、高分散材料を用いた屈折光学系部分GITとそれ以外の屈折光学系部分Gから構成される超望遠レンズでの色消しを例にして説明する。
高分散な光学材料を用いた色消しでは、屈折光学系部分GITと屈折系部分Gとの間で、比較的大きな色収差係数同士をキャンセルして全系の色収差を得ている。このため、まず屈折光学系部分Gが部分系としてある程度色収差が補正された状態から、屈折光学系部分Gを構成する正レンズを比較的高分散寄りに選択すると共に、負レンズを比較的低分散よりに選択する。そうすると、屈折光学系部分Gの色収差係数波長依存特性曲線は、もとの状態よりも線形性を増しながら全体の傾きが変化する。
この状態で、屈折光学系部分GITに適当なパワーを与えて、屈折系部分Gの色収差波長依存特性曲線全体の傾きをキャンセルさせる。ところが、屈折光学系部分GITを部分分散比の大きな光学材料で構成している場合、屈折光学系部分GITは、屈折光学系部分Gの収差係数波長依存特性曲線の曲がりよりも逆方向に大きな曲がりを持つため、全体の傾き成分はキャンセルできても、曲がり成分をキャンセルすることができない結果となる。
これに対し、屈折系部分GITを部分分散比の小さな光学材料で構成している場合は、屈折系部分GITの色収差係数波長依存特性曲線が比較的直線性を示すので、色収差をコントロールするためにパワーを変化させても、比較的直線性を維持したまま、設計波長の位置を回転中心として傾きを変化させることができる。したがって、屈折系部分GITと屈折系部分Bとで、比較的容易に色収差係数波長依存特性曲線の傾き成分と曲がり成分を同時にキャンセルすることができる。
つまり、屈折光学系部分GITとしては、高分散であると同時に、部分分散比が小さな光学材料であることも重要であり、本発明で特定する以下に示す条件式(1)、(2)及び(3)は、上で説明した原理に基づいて色収差を良好に補正するためのアッベ数と部分分散比の関係を表したものである。
νd < 30 …(1)
θgd < −3.333×10−3・νd+1.40 …(2)
θgF < −2.615×10−3・νd+0.67 …(3)
ここで、νdは屈折系部分(レンズ又は層)GITのアッベ数であり、d線、F線及びC線に対する屈折率をそれぞれNd,NF,NCとするとき、次式で表される。
θgd < −3.333×10−3・νd+1.40 …(2)
θgF < −2.615×10−3・νd+0.67 …(3)
ここで、νdは屈折系部分(レンズ又は層)GITのアッベ数であり、d線、F線及びC線に対する屈折率をそれぞれNd,NF,NCとするとき、次式で表される。
νd =(Nd−1)/(NF−NC)
また、θgd,θgFは屈折系部分(レンズ又は層)GITの部分分散比であり、g線、F線、d線、C線に対する屈折率をそれぞれNg,NF,Nd,NCとするとき、それぞれ次式で表される。
また、θgd,θgFは屈折系部分(レンズ又は層)GITの部分分散比であり、g線、F線、d線、C線に対する屈折率をそれぞれNg,NF,Nd,NCとするとき、それぞれ次式で表される。
θgd=(Ng−Nd)/(NF−NC)
θgF=(Ng−NF)/(NF−NC)
上記(1)〜(3)で示したいずれかの条件式をはずれても、色収差を良好に補正することが困難となるので良くない。
θgF=(Ng−NF)/(NF−NC)
上記(1)〜(3)で示したいずれかの条件式をはずれても、色収差を良好に補正することが困難となるので良くない。
なお、条件式(1)の数値範囲は、以下に示す範囲とすると、更に色収差の独立補正効果が高まり、良好な光学性能が得られる。
νd < 20 …(1a)
更に望ましくは、以下に示す範囲とするのが良い。
更に望ましくは、以下に示す範囲とするのが良い。
νd < 18 …(1b)
更に望ましくは、以下に示す範囲とするのが良い。
更に望ましくは、以下に示す範囲とするのが良い。
νd < 16 …(1c)
更に望ましくは、以下に示す範囲とするのが良い。
更に望ましくは、以下に示す範囲とするのが良い。
νd < 14 …(1d)
条件式(2)及び(3)の数値範囲は、条件式(1),(1a),(1b),(1c)又は(1d)を満足した上で、以下に示す範囲とすると、更に良好な光学性能が得られる。
条件式(2)及び(3)の数値範囲は、条件式(1),(1a),(1b),(1c)又は(1d)を満足した上で、以下に示す範囲とすると、更に良好な光学性能が得られる。
すなわち、
θgd < −3.333×10−3・νd+1.30 …(2a)
θgF < −2.615×10−3・νd+0.59 …(3a)
更に望ましくは、以下に示す範囲とするのが良い。
θgd < −3.333×10−3・νd+1.30 …(2a)
θgF < −2.615×10−3・νd+0.59 …(3a)
更に望ましくは、以下に示す範囲とするのが良い。
θgd < −3.333×10−3・νd+1.25 …(2b)
θgF < −2.615×10−3・νd+0.56 …(3b)
更に望ましくは、以下に示す範囲とするのが良い。
θgF < −2.615×10−3・νd+0.56 …(3b)
更に望ましくは、以下に示す範囲とするのが良い。
θgd < −3.333×10−3・νd+1.2375 …(2c)
θgF < −2.615×10−3・νd+0.55 …(3c)
更に望ましくは、以下に示す範囲とするのが良い。
θgF < −2.615×10−3・νd+0.55 …(3c)
更に望ましくは、以下に示す範囲とするのが良い。
θgd < 1.1137 …(2d)
θgF < 0.47 …(3d)
また、上記条件式(1)〜(3)を満足する固体の光学材料の具体例としては、下記の無機酸化物微粒子を合成樹脂中に分散させた混合体がある。すなわち、TiO2(nd=2.2652,νd=11.8),Nb2O5(nd=2.367,νd=14.0),ITO(nd=1.8581,νd=5.53),Cr2O3(nd=2.2178,νd=13.4),BaTiO3(nd=2.4362,νd=11.3)等を挙げることができる。
θgF < 0.47 …(3d)
また、上記条件式(1)〜(3)を満足する固体の光学材料の具体例としては、下記の無機酸化物微粒子を合成樹脂中に分散させた混合体がある。すなわち、TiO2(nd=2.2652,νd=11.8),Nb2O5(nd=2.367,νd=14.0),ITO(nd=1.8581,νd=5.53),Cr2O3(nd=2.2178,νd=13.4),BaTiO3(nd=2.4362,νd=11.3)等を挙げることができる。
この中でも、ITO(Indium-Tin Oxide)は他の物質と比較して、特に小さなアッベ数を示すので好ましい。ITOは、通常の物質と異なり導電性によるフリーキャリアが屈折率に影響を与えている。ITOの分散特性(図13(c))は、通常の電子遷移による短波長域での屈折率の変化(図13(a))に、フリーキャリアによる赤外域の屈折率分散(図13(b))が加わって形成される。このことによりアッベ数が5.53という異常に大きな傾きを持った分散特性波長依存性を示す。
また、電子遷移による屈折率分散(図13(a))は、可視域においては短波長側で急激に変化する。それに対し、フリーキャリアによる屈折率分散(図13(b))は、可視域においては長波長側でその変化が急激となる。その二つの影響が組み合わさることにより、部分分散比は通常に較べ小さなものとなる。
なお、透明でフリーキャリアの影響が予想される材料として、SnO2及びATO(アンチモンをドーピングしたSnO2)及びZnO等もその候補として挙げられる。
ITOは透明電極を構成する材料として知られており、通常、液晶表示素子、EL(Electroluminescent)素子等に用いられている。また、他の用途として赤外線遮蔽素子、紫外線遮断素子に用いられている。従来知られたITOの用途では、厚みが50〜500nmの範囲に限られ、微粒子の混合体として光学系の色収差補正に用いた例は存在しない。
ITO微粒子の平均径は、散乱などの影響を考えると2nm〜50nm程度がよく、凝集を抑えるために分散剤などを添加しても良い。
ITOを分散させる媒体材料としては、モノマーが良く、成形型等を用いて光重合成形または熱重合成形することにより高い量産性を得ることができる。
また、モノマーの光学定数の特性としても、アッベ数が比較的小さいモノマーか部分分散比が比較的小さいモノマー、あるいは、両者を満たすモノマーが良く、N−ポリビニルカルバゾール、スチレン、ポリメタクリル酸メチル(アクリル)などが挙げられる。後述する実施例ではITO微粒子を分散させる媒体材料としてアクリルを用いるが、これに限定するものではない。
ナノ微粒子を分散させた混合体の分散特性N(λ)は、良く知られたDrudeの式から導きだされた次式によって簡単に計算することができる。即ち、
N(λ)=[1+V{NITO 2(λ)−1}+(1−V){NP 2(λ)−1}]1/2
…(c)
ここで、λは任意の波長、NITOはITOの屈折率、NPはポリマーの屈折率、Vはポリマー体積に対するITO微粒子の総体積の分率である。
N(λ)=[1+V{NITO 2(λ)−1}+(1−V){NP 2(λ)−1}]1/2
…(c)
ここで、λは任意の波長、NITOはITOの屈折率、NPはポリマーの屈折率、Vはポリマー体積に対するITO微粒子の総体積の分率である。
本実施形態では、条件式(1)〜(3)を満足する材料を光学系中のレンズやレンズ表面に設けられた層に適用することを提案する。そして、この材料で構成された屈折面を非球面とすれば、色の球面収差などの色収差フレアを補正することができる。また、この材料と空気などの雰囲気とで界面を形成したり、比較的低屈折率な材料とで界面を形成したりすれば、界面の僅かな曲率変化で色収差を比較的大きく変化させることができるため好ましい。
(実施例)
条件式(1)〜(3)を満足する材料を具体的な光学系に応用した実施例について説明する。ここでは、条件式(1)〜(3)を満足する材料として、ITO微粒子分散材料を用いている。
条件式(1)〜(3)を満足する材料を具体的な光学系に応用した実施例について説明する。ここでは、条件式(1)〜(3)を満足する材料として、ITO微粒子分散材料を用いている。
図1は数値実施例1の光学系の断面図であり、焦点距離400mmの超望遠レンズにITO微粒子の混合体を用いた例である。図1中、ITOで形成したレンズ(層)をGIT1で示しており、SPは開口絞りである。図2は数値実施例1の光学系の無限遠合焦状態での収差図である。図1において、左側が物体側(前方)、右側が像側(後方)であり、これは他の数値実施例でも同様である。
数値実施例1の光学系では、近軸軸上光線の光軸からの通過位置が比較的高くなる物体側にITOを導入している。そして、ITOで形成されたレンズ(層)GIT1に負の屈折力を与え、主に軸上色収差を補正することにより、望遠比0.595と非常にコンパクトな超望遠レンズを得ている。
図3は数値実施例2の光学系の断面図であり、焦点距離400mmの超望遠レンズにITO微粒子の混合体を用いた例である。図3中、ITOで形成したレンズ(層)をGIT1,GIT2で示しており、SPは開口絞りである。図4は数値実施例2の光学系の無限遠合焦状態での収差図である。
数値実施例1の光学系では、近軸軸上光線の光軸からの通過位置が比較的高くなる物体側(GIT1)と、近軸軸上光線の通過位置が比較的低く、かつ瞳近軸光線の通過位置が比較的高くなる絞りより像側(GIT2)にITOを導入している。そして、ITOで形成されたレンズ(層)GIT1,GIT2にそれぞれ負の屈折力と正の屈折力を与え、軸上色収差と倍率色収差を強力に補正することにより、望遠比0.573と非常にコンパクトな超望遠レンズを得ている。
図5は数値実施例3の光学系の断面図であり、正の屈折力の第1レンズ群L1、負の屈折力の第2レンズ群L2、正の屈折力の第3レンズ群L3、正の屈折力の第4レンズ群L4からなるズーム比4の4群構成のズームレンズにITO微粒子の混合体を用いた例である。図5中、ITOで形成したレンズ(層)をGIT1〜GIT4で示しており、SPは開口絞りである。図6〜8はそれぞれ、数値実施例3の光学系(ズームレンズ)の広角端、中間焦点距離、望遠端における無限遠合焦状態での収差図である。
数値実施例3の光学系では、ズームレンズを構成する各レンズ群L1〜L4に1つずつITOを導入している。そして、各レンズ群のパワーの符号と逆符号のパワーをITOで形成されたレンズ(層)に与え、各レンズ群内の色収差を低減することにより、コンパクト化を達成している。
図9は数値実施例4の光学系の断面図であり、正の屈折力の第1レンズ群L1、負の屈折力の第2レンズ群L2、正の屈折力の第3レンズ群L3、正の屈折力の第4レンズ群L4からなる変倍比6倍の4群構成のズームレンズにITO微粒子の混合体を用いた例である。図9中、ITOで形成したレンズ(層)をGIT1〜GIT4で示しており、SPは開口絞りである。図10〜12はそれぞれ、数値実施例4の光学系(ズームレンズ)の広角端、中間焦点距離、望遠端における無限遠合焦状態での収差図である。
数値実施例4の光学系では、ズームレンズを構成する各レンズ群L1〜L4に1つずつITOを導入している。そして、各レンズ群のパワーの符号と逆符号のパワーをITOで形成されたレンズ(層)に与え、各レンズ群内の色収差を低減することにより、コンパクト化を達成している。
以下、数値実施例1〜4の具体的な数値データを示す。各数値実施例において、iは物体側から数えた順序を示し、Riは第i番目の光学面(第i面)の曲率半径、Diは第i面と第(i+1)面との間の軸上間隔、Ni,νiはそれぞれd線に対する第i番目(ITO微粒子分散材料以外の材料で形成されたレンズ(層)は除く)の光学部材の材料の屈折率、アッベ数を示す。ITOで形成されたレンズGITjのd線に対する屈折率、アッベ数は別途NGITj,νGITj(j=1,2,・・・)で示している。fは焦点距離、FnoはFナンバー、ωは半画角である。
また、非球面形状は、Xを光軸方向の面頂点からの変位量、hを光軸と垂直な方向の光軸からの高さ、rを近軸曲率半径、kを円錐定数、B,C,D,E…を各次数の非球面係数とするとき、
で表す。なお、各非球面係数における「E±XX」は「×10±XX」を意味している。
各数値実施例の最も像側の平面(曲率半径∞の面)は、差込フィルターや、光学的ローパスフィルター、赤外カットフィルター等に相当するものである。
各数値実施例ともITOは、体積分率は20%でアクリル(PMMA)に分散された状態で用いている。ITOとアクリルの混合体の屈折率は、前述の(c)式を用いて計算した値を用いて算出しており、ITO単体とアクリル単体およびアクリルに対するITO微粒子の体積混合比率20%とした混合体のd線、g線、C線及びF線に対する屈折率及びアッベ数、部分分散比を表1に示す。
d d線
g g線
S.C. 正弦条件
△M d線に対するメリディオナル像面
△S d線に対するサジタル像面
g g線
S.C. 正弦条件
△M d線に対するメリディオナル像面
△S d線に対するサジタル像面
Claims (6)
- 光入射側と光射出側が共に屈折面であり、アッベ数をνd、部分分散比θgd,θgFとするとき、
νd < 30
θgd < −3.333×10−3・νd+1.40
θgF < −2.615×10−3・νd+0.67
なる条件を満足する固体材料を有することを特徴とする光学系。 - 前記固体材料は、無機微粒子を透明媒体に分散させた混合体からなることを特徴とする請求項1に記載の光学系。
- 前記無機微粒子は、Indium-Tin Oxide(ITO)微粒子であることを特徴とする請求項2に記載の光学系。
- 前記固体材料は、成形型を用いて光重合成形または熱重合成形されることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の光学系。
- 前記固体材料の2つの屈折面のうち、少なくとも一方の屈折面は非球面であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の光学系。
- 前記固体材料の2つの屈折面のうち、少なくとも一方の屈折面は空気に面することを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の光学系。
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