以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
本発明の第1の実施形態を図1〜図13により説明する。本実施形態は、本発明を読み取りのみ可能な(書き込みは不可の)無線タグの生成システムに適用した場合の実施形態である。
図1は、本実施形態の無線タグ情報通信装置が適用される無線タグ生成システムを表すシステム構成図である。
図1に示すこの無線タグ生成システム1において、本実施形態による無線タグ情報通信装置(読み取り装置)2は、有線あるいは無線による通信回線3を介してルートサーバ4、端末5、汎用コンピュータ6、及び複数の情報サーバ7に接続されている。
図2は、上記無線タグ情報通信装置2の詳細構造を表す概念的構成図である。
図2において、無線タグ情報通信装置2は、複数の無線タグ回路素子10Aを収納するとともに、それらを順次取り出し可能に構成された着脱自在のカートリッジ(無線タグ回路素子収納手段)20と、後述の印刷動作に伴い、搬送ガイド83を通過中の上記タグテープ28に対して、そのタグテープ28に備えられる上記無線タグ回路素子10Aとの間でUHF帯等の高周波を用いて無線通信により信号の授受を行う上記アンテナ(装置側アンテナ)40と、このアンテナ40を介し無線タグ回路素子10AのIC回路部100の情報(無線タグ情報)へアクセスする(この例では読み取りを行う)ための高周波回路51と、無線タグ回路素子10AのIC回路部100から読み出された信号を処理して情報を読み出すとともに無線タグ回路素子10AのIC回路部100へアクセスするためのアクセス情報(第1アクセス情報)を生成するアクセス情報生成手段としても機能する信号処理回路52と、上記カートリッジ駆動回路31、印刷駆動回路42、高周波回路51、信号処理回路52や、後述のソレノイド駆動回路88及び送出ローラ駆動回路90等を介し、無線タグ情報通信装置2全体の動作を制御するための制御回路60と、カートリッジ20の出口部近傍に設けられ、上記無線タグ回路素子10AのIC回路部100からの無線タグ情報読み取り(後述の第2の実施形態においては書き込み、詳細は後述、以下同様)の終了したタグテープ28を所定の長さで切断しラベル状の各無線タグ(無線タグラベル)24に分割するカッタ82と、上記読み取り時において無線タグ回路素子10Aをアンテナ40に対向する所定のアクセスエリア(=読み取り位置、後述の第2の実施形態においては書き込み位置、詳細は後述、以下同様)に設定保持するとともに切断後の各無線タグ10を案内するための一対の搬送ガイド(無線タグ回路素子保持部)83と、案内された無線タグ10を搬出口84へと搬送し送出する送出ローラ85と、搬出口84における無線タグ10の有無を検出するセンサ86とを有している。
制御回路60は、いわゆるマイクロコンピュータであり、詳細な図示を省略するが、中央演算処理装置であるCPU、ROM、及びRAM等から構成され、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うようになっている。また制御回路60は、入出力インターフェイス61により上記通信回線3に接続されており、上記ルートサーバ4、端末5、汎用コンピュータ6、及び情報サーバ7等との間で情報のやりとりが可能となっている。
カッタ82はソレノイド87によって駆動されてその切断動作を行い、ソレノイド87はソレノイド駆動回路88によって制御される。また送出ローラ85は、送出ローラ用モータ89によって駆動され、このモータ89は送出ローラ駆動回路90によって制御される。またセンサ86は、例えば投光器及び受光器からなる透過型の光電センサである。投光器と受光器との間に無線タグ10が存在しない場合には、その投光器から出力された光が受光器に入力される。一方、投光器と受光器との間に無線タグ10が存在する場合には、投光器から出力された光が遮蔽されて受光器からの制御出力が反転させられるようになっている。
図3は、上記カートリッジ20の詳細構造を表す図2中III方向からみた矢視図である。
図3及び前述の図2において、カートリッジ20は、その長手方向に複数の無線タグ回路素子10Aが順次形成された(詳細は後述)帯状の基材テープ(テープ状ラベル素材)21が巻き回された第1ロール(リール部材)22と、上記基材テープ21と略同じ幅である透明なカバーフィルム23が巻回された第2ロール24と、印字用のインクリボン25が巻回されたインクリボンロール26と、印字後のインクリボン25を巻き取るための巻取ローラ27と、上記基材テープ21とカバーフィルム23とを押圧し接着させタグテープ28としつつ矢印で示す方向にテープ送りをする圧着ローラ29とが、それぞれの軸心回りに自転可能に設けられている。またこれらのうち巻き取りローラ27及び圧着ローラ29は、それぞれカートリッジ外に設けた例えばパルスモータであるカートリッジ用モータ30(図2参照)の駆動力によって回転駆動される。このカートリッジ用モータ30の駆動はカートリッジ駆動回路31(図2参照)によって制御される。
基材テープ21は図3に部分拡大して示すように4層構造となっており、後にカバーフィルム23が接着される側(図3中右側)よりその反対側(図3中左側)へ向かって、粘着層32、PET(ポリエチレンテレフタラート)等から成る色付きのベースフィルム33、粘着層34、剥離紙35の順序で積層され構成されている。
ベースフィルム33の裏側(図3中左側)には、IC回路部100が一体的に設けられており、ベースフィルム33の裏側の表面にはアンテナ101が形成されており、これらIC回路部100及びアンテナ101によって無線タグ回路素子10Aが構成されている(後述の図7も参照)。
ベースフィルム33の表側(図3中右側)には、後にカバーフィルム23を接着するための上記粘着層32が形成され、またベースフィルム33の裏側には、上記粘着層34によって上記剥離紙35がベースフィルム33に接着されている。なお、この剥離紙35は、完成した無線タグ10が所定の商品等に貼り付けられる際に、これを剥がすことで粘着層34により当該商品等に接着できるようにしたものである。
インクリボンロール26及び巻取ローラ27は、上記カバーフィルム23の裏面側すなわち上記基材テープ21と接着される側に配置されている。このときカートリッジ20の近傍には、印刷駆動回路42(図2参照)により通電されてカバーフィルム23に印刷(印字)を行うサーマルヘッド41が設けられており、上記インクリボン25がこのサーマルヘッド41に押圧されることで、上記カバーフィルム23の裏面に当接させられるようになっている。
このような構成において、巻取ローラ27と圧着ローラ29とが上記カートリッジ用モータ30の駆動によって矢印で示す方向にそれぞれ同期して自転されるとともに、印刷駆動回路42によりサーマルヘッド41の複数の発熱素子が通電される。これにより、カバーフィルム23の裏面(=粘着層32側の面、後述の図7参照)に所定の文字、記号、バーコード等の印字43(後述の図6(a)参照)が印刷(但し裏面から印刷するので印刷側から見て鏡面対象の文字等を印刷している)される。そしてこの印刷の後、上記圧着ローラ29により上記基材テープ21と接着されてタグテープ28として形成され、搬送ガイド83を経てカートリッジ20外へと巻き出され搬出される。
図4は、上記した無線タグ回路素子10Aの機能的構成を表す機能ブロック図である。
この図4において、無線タグ回路素子10Aは、無線タグ情報通信装置2に備えられたアンテナ40(詳細は後述)とUHF帯等の高周波を用いて非接触で信号の送受信を行う上記アンテナ(タグ側アンテナ)101と、このアンテナ101に接続されたIC回路部100とを有している。
IC回路部100は、アンテナ101により受信された搬送波を整流する整流部111と、この整流部111により整流された搬送波のエネルギを蓄積し駆動電源とするための電源部112と、上記アンテナ101により受信された搬送波からクロック信号を抽出して制御部113(後述)に供給するクロック抽出部114と、所定の情報信号を記憶し得る情報記憶部として機能するメモリ部115と、上記アンテナ101に接続された変復調部116と、上記整流部111、クロック抽出部114、及び変復調部116等を介して上記無線タグ回路素子10Aの作動を制御するための制御部113とを備えている。
変復調部116は、アンテナ101により受信された上記無線タグ情報通信装置2のアンテナ40からの通信信号の復調を行うと共に、上記制御部113からの返信信号に基づき、アンテナ101より受信された搬送波を反射変調する。
制御部113は、上記変復調部116により復調された受信信号を解釈し、上記メモリ部115において記憶された情報信号に基づいて返信信号を生成し、上記変復調部116により返信する制御等の基本的な制御を実行する。本実施形態では、IC回路部100は、制御部113を介しメモリ部115に記憶された情報の読み取りのみ可能(書き込みは不可)に構成されている。
図5は、上記高周波回路51の詳細機能を表す機能ブロック図である。
この図5において、高周波回路51は、アンテナ40を介し無線タグ回路素子10Aに対して信号を送信する送信部53と、アンテナ40により受信された無線タグ回路素子10Aからの反射波を入力する受信部54と、送受分離器55とから構成される。
送信部53は、無線タグ回路素子10AのIC回路部100の無線タグ情報にアクセスする(この例では読み取りを行う)ための搬送波を発生させる搬送波発生部として機能する水晶発振回路56と、上記信号処理回路52から供給される信号に基づいて上記搬送波発生部により発生させられた搬送波を変調(この例では信号処理回路52からの「TX_ASK」信号に基づく振幅変調)する搬送波変調部として機能する第1乗算回路71(但し「TX_ASK信号」の場合は増幅率可変アンプ等を用いてもよい)と、その第1乗算回路71により変調された変調波を増幅(この例では制御回路60からの「TX_PWR」信号によって増幅率を決定される増幅、後述の図9も参照)する変調波増幅部として機能する第1アンプ72とを備えている。そして、上記搬送波発生部により発生される搬送波は、好適には周波数300MHz以上とされ、上記第1アンプ72の出力は、送受分離器55を介してアンテナ40に伝達されて無線タグ回路素子10AのIC回路部100に供給される。
受信部54は、アンテナ40により受信された無線タグ回路素子10Aからの反射波と上記搬送波発生部により発生させられた搬送波とを掛け合わせる第2乗算回路73と、その第2乗算回路73の出力から必要な帯域の信号のみを取り出すための第2バンドパスフィルタ74と、この第2バンドパスフィルタ74の出力を増幅して第1リミッタ75に供給する第2アンプ76と、上記アンテナ40により受信された無線タグ回路素子10Aからの反射波と上記搬送波発生部により発生された後に位相が90°ずらされた搬送波とを掛け合わせる第3乗算回路77と、その第3乗算回路77の出力から必要な帯域の信号のみを取り出すための第1バンドパスフィルタ78と、この第1バンドパスフィルタ78の出力を入力するとともに増幅して第2リミッタ79に供給する第3アンプ80とを備えている。そして、上記第1リミッタ75から出力される信号「RXS−I」及び第2リミッタ79から出力される信号「RXS−Q」は、上記信号処理回路52に入力されて処理される。
また、第2アンプ76及び第3アンプ80の出力は、RSSI(Received Signal Strength Indicator)回路81にも入力され、それらの信号の強度を示す信号「RSSI」が信号処理回路52に入力されるようになっている。このようにして、本実施形態の無線タグ情報通信装置2では、I−Q直交復調によって無線タグ回路素子10Aからの反射波の復調が行われる。
図6(a)及び図6(b)は、上記のようにして情報読み取り(又は書き込み、後述の変形例参照)及び切断が完了して形成された無線タグ10の外観の一例を表す図であり、図6(a)は上面図、図6(b)は下面図である。また図7は、図6中VII‐VII′断面による横断面図である。
これら図6(a)、図6(b)、及び図7において、無線タグ10は、図3に示した4層構造にカバーフィルム23が加わった5層構造となっており、カバーフィルム23側(図7中上側)よりその反対側(図7中下側)へ向かって、カバーフィルム23、粘着層32、ベースフィルム33、粘着層34、剥離紙35で5層を構成している。そして、前述のように ベースフィルム33の裏側に、IC回路部100及びアンテナ101からなる無線タグ回路素子10Aが備えられるとともに、カバーフィルム23の裏面に印字43(この例では無線タグ10の種類を示す「RF−ID」の文字)が印刷されている。
図8は、上述したような無線タグ情報通信装置2による無線タグ回路素子10AのIC回路部100の無線タグ情報へのアクセス(この例では読み取り)に際して、上記した端末5又は汎用コンピュータ6に表示される画面の一例を表す図である。
図8において、この例では、無線タグ回路素子10Aに対応して印刷された印字文字43、その無線タグ回路素子10Aに固有のIDであるアクセス(この例では読み取り)ID、上記情報サーバ7に記憶された物品情報のアドレス、及び上記ルートサーバ4におけるそれらの対応情報の格納先アドレス等が前記端末5又は汎用コンピュータ6に表示可能となっている。そして、その端末5又は汎用コンピュータ6の操作により無線タグ情報通信装置2が作動されて、カバーフィルム23に上記印字文字43が印刷されると共に、IC回路部100に予め記憶された物品情報等の無線タグ情報が読み出される。
ここで、本実施形態の無線タグ情報通信装置2の最も大きな特徴は、上記のようなアクセス(この場合は読み取り)対象の無線タグ回路素子10AのIC回路部100の無線タグ情報の読み取りの際、制御回路60が、高周波回路51の送信部からの送信出力を段階的に増加させつつその都度アクセス可否を判定し、これによって、結果としてアクセス(読み取り)が可能な限りにおいて極力小さい(必要最小限の)送信出力値をもってアクセス(読み取り)を行えるようにしたことである。
図9は、制御回路60によって実行される制御のうち、上記した本実施形態の要部に関わる、無線タグ回路素子10AのIC回路部100からの無線タグ情報の読み取り手順を表すフローチャートである。
この図9において、上記無線タグ情報通信装置2の読み取り操作が行われるとこのフローが開始される。まずステップS101において、送信部53からの送信信号の出力値を定める第1アンプ72(図5参照)での増幅率を決定する「TX_PWR」信号の値を0に初期化する。
そして、ステップS102において、「Scroll All ID」コマンドを信号処理回路52に出力する。信号処理回路52ではこれに基づく「TX_ASK」信号が生成されて第1乗算回路71に出力され、第1乗算回路71で対応する上記振幅変調が行われアクセス情報(第1アクセス情報)としての「Scroll All ID」信号となる。この「Scroll All
ID」信号はさらに、第1アンプ72で制御回路60から入力した「TX_PWR」信号に基づく増幅率(最初は「TX_PWR」=0なので増幅率ゼロ)で信号増幅が行われ、送受分離器55及びアンテナ40を介し送信され、もしアクセス可能範囲にある無線タグ回路素子10Aがあれば、それからの返信を促す。
次に、ステップS103において、アクセス可能範囲の無線タグ回路素子10Aがあれば、上記「Scroll All ID」信号に対応してその無線タグ回路素子10Aから送信された第1返答信号としてのリプライ信号(物品情報等の無線タグ情報)をアンテナ40を介して受信し、受信部54及び信号処理回路52を介し取り込む。
次に、ステップS104において、上記ステップS103で受信したリプライ信号のCRCによって1つの正しいIDが取得できたか否かを判定する。最初は前述したように「TX_PWR」信号がゼロでありリプライ信号もゼロであるから判定が満たされず、ステップ105に移る。ステップS105においては上記ステップS103で受信したリプライ信号のRSSI出力値が所定値以下であるかによって、該リプライ信号のIDが0個であるか否かが判定されるので、この判定が満たされ、ステップ106に移る。
ステップS106では、このときの「TX_PWR」信号の値が、許容される上限として予め定められる所定の上限値(例えば電波法等の法規により定められるもの)以上となったかどうかを判定する。「TX_PWR」信号が小さい間はこの判定が満たされず、ステップ107に移る。
ステップ107では、「TX_PWR」信号の値に、送信部53からの送信出力を段階的に増大させるための所定の加算演算子Pstepを加え、ステップS102に戻り、同様の手順を繰り返す。
このようにして、「TX_PWR」信号値を段階的に増大させ送信部53からの「Scroll All ID」信号の送信出力を段階的に増大させながらステップS102〜ステップS107を繰り返していく。すると、装置側アンテナ40に近い無線タグ回路素子10Aほど小さい出力でアクセス可能であることから、いずれかの段階で最も近い無線タグ回路素子10Aがリプライ信号を返信してくる。このリプライ信号がステップS103で受信されると、ステップS104の判定が満たされ、このフローを終了する。図10は、このときの「Scroll All ID」信号の送信部53からの送信出力が時間とともに段階的に増大される様子を模式的に表した図である。
なお、最も近い無線タグ回路素子10Aが複数あり、ステップS103で2つ以上のリプライ信号が受信された場合には、ステップS104及びステップS105の判定が満たされずステップS108に移り、エラー表示信号を入出力インターフェイス61及び通信回線3を介し上記端末5又は汎用コンピュータ6へ出力し、対応する読み取り失敗(エラー)表示を行わせ、このフローを終了する。
以上により、最も近くにある1つの無線タグ回路素子10AのIC回路部100の無線タグ情報にアクセスし、これを読み出すことができる。
なお、上記のような読み取りの際、生成された無線タグ10のIDとその無線タグ10のIC回路部100から読み出された情報との対応関係は、前述のルートサーバ4に記憶され、必要に応じて参照できるようになっている。
上記において、信号処理回路52及び高周波回路51の送信部53がIC回路部の無線タグ情報にアクセスする第1アクセス情報を生成するアクセス情報生成手段を構成し、さらに送信部53はアクセス情報生成手段で生成した第1アクセス情報を装置側アンテナを介して非接触でタグ側アンテナに送信し、IC回路部の無線タグ情報へのアクセスを行う第1情報送信手段をも構成する。
また、制御回路60(特に図9に示したフローのステップS104)が、アクセス実行後IC回路部へのアクセスが成功したか否かの判定を行う第1判定手段を構成するとともに、(特に図9のステップS105、ステップS106、及びステップS107が)第1判定手段でのアクセス成否の判定結果に応じ、第1情報送信手段からの送信出力の大きさを制御する第1出力制御手段を構成する。
また、高周波回路51の受信部54が、第1情報送信手段による第1アクセス情報の送信後、この送信された第1アクセス情報に応じてIC回路部より送信された第1返答信号(リプライ信号)を、タグ側アンテナを介し非接触で装置側アンテナで受信し、読み込みを行う第1情報受信手段を構成する。
以上説明したように、本実施形態の無線タグ情報通信装置2においては、無線タグ回路素子10Aへのアクセス(この例では読み取り)時における送信出力を必要最小限とするために、制御回路60が、図9に示したフローのステップS104で1つの無線タグ回路素子10Aからのリプライ信号が受信されたと判定されるまで、ステップS105〜ステップS107で「TX_PWR」信号の値を段階的に漸増させつつステップ102に戻って送信部53からの「Scroll All ID」信号の出力値を段階的に増大するように制御する。これにより、アクセス(この例では読み取り)対象である無線タグ回路素子10Aに対し読み取りが可能な限りにおいて極力小さい必要最小限の送信部53からの送信出力でアクセスを実行することができる。この結果、装置側アンテナ40と当該無線タグ回路素子10Aのアンテナ101との相互間以外の外部への漏れ電力を極力抑制することができ、また消費電力を抑制することができる。
なお、上記第1の実施形態においては、制御回路60は、図9に示したように、リプライ信号が0個(応答する無線タグ回路素子10Aがなし)の状態から送信出力を増大させた場合に一挙に複数の無線タグ回路素子10Aがリプライ信号を返してきたときは、制御不能扱いとしてエラー表示を行わせフローを終了させたが、このような場合も対応可能としてもよい。
図11は、そのような変形例において制御回路60が実行する無線タグ情報の読み取り手順を表すフローチャートであり、上記図9に対応する図である。
この図11において、上記無線タグ情報通信装置2の読み取り操作が行われるとこのフローが開始される。まずステップS111において、送信部53からの送信信号の出力値を定める第1アンプ72(図5参照)での増幅率を決定する「TX_PWR」信号の値をP1に初期化する。このP1の値は、これまでに既に送信出力値最小値化制御を行い最適値として記憶されている場合(後述のステップS119参照)は前回制御時(言い換えれば一つ前にカートリッジ20より取り出された無線タグ回路素子10Aの読み取り時)のその記憶値とする。なお、そのような記憶値がない場合には、予め測定により概略好適な値として定めた所定の値とすればよい。
その後、ステップS112、ステップS113、ステップS114、ステップS115は、それぞれ図9のステップS102、ステップS103、ステップS104、ステップS105と同様である。すなわち、ステップS112では、Scroll All ID」コマンドを信号処理回路52に出力して「TX_ASK」信号が生成されて第1乗算回路71に出力され、第1乗算回路71からの「Scroll All ID」信号が第1アンプ72で制御回路60からの「TX_PWR」信号に基づき増幅され送信され、ステップS113でリプライ信号が受信され受信部54及び信号処理回路52を介し取り込まれる。ステップS114では上記ステップS113で受信したリプライ信号のIDが1つであるか否かが判定され、ステップS115ではリプライ信号のIDが0個であるか否かが判定される。
ステップS115の判定が満たされた場合、リプライ信号が0個であることから、ステップS116に移り、図9のステップS107と同様、「TX_PWR」信号の値に、送信部53からの送信出力を段階的に増大させるための所定の加算演算子Pstepを加える。一方、ステップS115の判定が満たされない場合、リプライ信号が2つ以上(複数個)であることから、ステップS117に移り、「TX_PWR」信号の値より、送信部53からの送信出力を段階的に減少させるための所定の減算演算子Pstep′(<Pstep)を減じる。ステップS116又はステップS117が終了したらステップS118に移る。
ステップS118では、図9のステップS106と同様、このときの「TX_PWR」信号の値が、許容される上限として予め定められる所定の上限値(例えば電波法等の法規により定められるもの)より小さく、かつ0より大きいかどうかを判定する。「TX_PWR」信号が小さい間はこの判定が満たされ、ステップ112に戻って同様の手順を繰り返す。
このようにして、リプライ信号が0個である間は「TX_PWR」信号値を段階的に増大させ送信部53からの「Scroll All ID」信号の送信出力を段階的に増大させながらステップS112→ステップS113→ステップS114→ステップS115→ステップS116→ステップS118を繰り返し、いずれかの段階で無線タグ回路素子10Aからのリプライ信号が2個以上に増加してしまった場合は、2個以上である間はステップS115→ステップS117→ステップS118の経路となって「TX_PWR」信号値を段階的に減少させ送信部53からの「Scroll All ID」信号の送信出力を段階的に減少させながらステップS112→ステップS113→ステップS114→ステップS115→ステップS117→ステップS118を繰り返す。これらの繰り返しの間にリプライ信号が1つになりアクセス対象の無線タグ回路素子10Aが1つに特定されるとステップS114の判定が満たされ、ステップS119に移る。ステップS119では、そのときの(必要最小限の)最適な送信値に関わる「TX_PWR」信号の値を次回ステップS111で使用する(言い換えれば、次にカートリッジ20から取り出された無線タグ回路素子10Aの読み取りにおいて使用する、前述を参照)ためにP1として記憶し、このフローを終了する。
なお、前述のステップS112→ステップS113→ステップS114→ステップS115→ステップS116又はステップS117→ステップS118の繰り返しの間に「TX_PWR」信号の値が前述の所定の上限値以上になるかまたは0になった場合、無線タグ回路素子10Aが空であるか、装置の異常であり、ステップS118の判定が満たされずステップS120に移り、エラー表示信号を入出力インターフェイス61及び通信回線3を介し上記端末5又は汎用コンピュータ6へ出力し、対応する読み取り失敗(エラー)表示を行わせ、このフローを終了する。
上記において、制御回路60(特に図11に示したフローのステップS114)が、アクセス実行後IC回路部へのアクセスが成功したか否かの判定を行う第1判定手段を構成するとともに、(特に図11のステップS115、ステップS116、ステップS117、ステップS118が、)第1判定手段でのアクセス成否の判定結果に応じ、第1情報送信手段からの送信出力の大きさを制御する第1出力制御手段を構成する。
本変形例においては、送信部53からの送信出力を段階的に徐々に増加させて行き、認識する無線タグ回路素子10Aの数が0個からいきなり2個以上となった場合であっても、それまでとは逆に、認識する無線タグ回路素子10Aの数が1個と判定されるまで送信出力を増加させたときよりも細かなステップで段階的に減少させる(0個になったらまた最初と同様の制御手順を繰り返す)。このようにすることで、上記第1の実施形態の場合よりもさらに確実に(上記した認識数0個→2個以上の場合のエラー表示を回避しつつ)必要最小限の送信出力で読み取りを行うことが可能となる。
また、ステップS114においてリプライ信号の数が1個と判定され最小限出力値が決定された後、そのときの「TX_PWR」信号の値をP1として記憶学習(これは言い換えれば第1アクセス情報としての「Scroll All ID」信号の最終出力値を記憶学習していることに相当する)する。これにより、次にカートリッジ20から取り出され読み取り対象となる無線タグ回路素子10Aより読み取りを行う際、制御回路60が、ステップS111において当該記憶学習した値P1を読み込み、ステップS116又はステップS117においてこのP1より「TX_PWR」信号の送信出力を段階的に増大又は減少させることができる。このようにして、今回タグ情報読み取り時における記憶学習結果を以降のタグ情報読みだしに反映させるようにすることで、例えば各回ごとに独立して「TX_PWR」信号の送信出力を段階的に増加させる場合に比べ、短い時間で容易に送信出力最小値を決定することができる。
なお、上記変形例においては、ステップS119において記憶学習したP1を用いて次回の読み取り時における出力値制御を開始した(ステップS111)が、これに限られず、P1より小さい値又はP1よりわずかに大きい値を用いてもよいことは言うまでもない。図12は、P1より小さい値を用いる変形例において制御回路60が実行する無線タグ情報の読み取り手順を表すフローチャートであり、上記図9、図11に対応する図である。図12では、図11のステップS111の代わりにステップS111′を設け、送信部53からの送信信号の出力値を定める第1アンプ72(図5参照)での増幅率を決定する「TX_PWR」信号の値をP1でなくそれより小さいP1−Pdに初期化する。その他の手順を図11と同じである。なお、このPdの値は、例えば、予め測定により概略好適な値として定めた所定の値とすれば足りる。
このように前回記憶値のP1でなくそれよりやや小さい値から出力制御を行うようにすることで、比較的短い時間でかつ漏れのない「TX_PWR」信号の出力最小値の決定を行うことができる。
以上のように、前回記憶値のP1そのもの、P1より大きい値、P1より小さい値を今回の出力制御に用いることは、すなわち、前回記憶学習した「TX_PWR」信号の値に対応した値を今回の出力制御の「TX_PWR」の基準値として用い、この基準値から出力を段階的に増加させる(言い換えれば、記憶学習した「Scroll All ID」信号の基準値から最終出力値を段階的に増加させることに相当する)等の制御を行うことに他ならない。
なお、以上説明した記憶学習値を次回制御に用いるのは、図12や図11に示した変形例のみならず、図9を用いて説明した上記本発明の第1実施形態において同様の手法を行ってもよいことは言うまでもない。すなわち、図9において、ステップS104の判定が満たされた場合に直ちにフローを終了するのでなく、図11や図12のステップS119と同様にそのときの「TX_PWR」信号の値をP1として学習記憶しておく。そして、図9のステップS101においてTX_PWR=0とするのでなく図11のステップS111や図12のステップS111′のようにTX_PWR=P1又はP1−Pdとするステップを新たに設け、上記のように学習したものを次回制御時に用いるようにすればよい。
また、上記は前回制御時に記憶したP1を用いて、今回制御時にTX_PWR=P1又はP1−Pdより出力制御を開始する場合を例にとって説明したが、例えば、カートリッジ20が交換された場合には、これら記憶学習値を初期化する(例えばP1=0とする)ことが好ましい。これは、以下の理由による。
すなわち、カートリッジ20が交換された場合は、無線タグ回路素子10Aの種類(アンテナ101の形状、使用周波数、通信プロトコル、IC回路部100の製造方法等)が変わり(異なり)、既に記憶学習した値の妥当性が損なわれる可能性がある。このような場合、例えば本来1つの無線タグ回路素子10Aを特定してアクセスするのに適正な「TX_PWR」信号の値よりも大きい値を用いて送信部53からの送信出力増加を始めてしまい、適正出力値に到達できずエラー終了となる可能性がある。上述のようにカートリッジ20交換時には一律記憶学習値を初期化してしまうようにすれば、上記の弊害を確実に防止することができる。
さらに上記のカートリッジ20の交換に考慮し、そのカートリッジ20におけるP1の値をカートリッジ20に記載しておくようにしてもよい。図13はそのような変形例を表す斜視図である。
図13において、カートリッジ20の側面部に読みとり可能な情報記録部(この例ではバーコード)Rが設けられており、この情報記録部Rには、このカートリッジ20において無線タグ回路素子10Aからの情報読み取りにおいて学習記憶された(あるいは適宜設定された)上記P1の値(あるいはそれに直結する情報)が記録されている。所定の情報読みとり器(この例ではいわゆるバーコードスキャナ)Sでこの情報記録部Rをスキャンすることにより、情報読みとり器Sに接続された制御回路60にこのカートリッジ20に対応した上記P1の値が読み込まれる。この変形例によっても、前述と同様、カートリッジ20時の前述した弊害を防止することができる。
なお、以上の第1実施形態及びその変形例においては、読み取りのみ可能な(書き込みは不可の)無線タグの生成システムに本発明を適用した場合を例にとって説明したが、これに限られず、無線タグ回路素子10AのIC回路部100に無線タグ情報の書き込みを行う無線タグの生成システムに本発明を適用してもよい。
本発明の第2の実施形態を図14〜図17により説明する。本実施形態は、上述したように、無線タグ回路素子10AのIC回路部100に無線タグ情報の書き込みを行う無線タグの生成システムに本発明を適用した場合の実施形態である。第1の実施形態と同等の部分には適宜同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
本実施形態の無線タグ情報通信装置2では、詳細な図示及び説明を省略するが、前述した本発明の第1実施形態による無線タグ情報通信装置2の構成において、高周波回路51はアンテナ40を介し無線タグ回路素子10AのIC回路部100の無線タグ情報へアクセス(書き込み)を行う機能を果たし、その送信部53の水晶発振回路56はIC回路部100の無線タグ情報にアクセス(書き込み)を行うための搬送波を発生させる搬送波発生部として機能する。また、信号処理回路52はIC回路部100へアクセスするための第1アクセス情報(後述する「Program」信号、「Verify」信号等)を生成するアクセス情報生成手段として機能する。
そして、先に図8を用いて説明したように、この場合、前記端末5又は汎用コンピュータ6には、印字文字43、無線タグ回路素子10Aのアクセス(この場合は書き込み)ID、物品情報のアドレス、及び対応情報の格納先アドレス等が表示される。そして、その端末5又は汎用コンピュータ6の操作により無線タグ情報通信装置2が作動されて、カバーフィルム23に上記印字文字43が印刷されると共に、IC回路部100に上記書き込みID及び物品情報等の情報が書き込まれる。
図14は、この第2の実施形態の無線タグ情報通信装置2において制御回路60によって実行される制御のうち、無線タグ回路素子10AのIC回路部100への無線タグ情報の書き込み手順を表すフローチャートである。
図14において、上記無線タグ情報通信装置2の書き込み操作が行われるとこのフローが開始される。なお、このフローは、既に既知の手法を含む何らかの手法で書き込み対象の無線タグ回路素子10Aが(アクセス可能範囲内に存在し)特定されていることを前提としており、その書き込み対象を特定して信号の授受を行うものである。
まずステップS201において、送信部53(先の図5参照、以下同様)からの送信信号の出力値を定める第1アンプ72での増幅率を決定する「TX_PWR」信号の値を0に初期化する。
そして、ステップS202において、「Erase」コマンドを信号処理回路52に出力する。信号処理回路52ではこれに基づく「TX_ASK」信号が生成されて第1乗算回路71に出力され、第1乗算回路71で対応する上記振幅変調が行われ「Erase」信号となる。この「Erase」信号はさらに、第1アンプ72で制御回路60から入力した「TX_PWR」信号に基づく増幅率(最初はステップS201で定めたようにTX_PWR=0であるから増幅率ゼロ、以下同様)で信号増幅が行われ、送受分離器55及びアンテナ40を介し送信され、書き込み対象の無線タグ回路素子10Aに送信され、そのメモリ部115を初期化する。
次に、ステップS203において、「Verify」コマンドを信号処理回路52に出力する。信号処理回路52ではこれに基づく「TX_ASK」信号が生成されて第1乗算回路71に出力され、第1乗算回路71で対応する上記振幅変調が行われ「Verify」信号となる。この「Verify」信号はさらに、第1アンプ72で制御回路60から入力した「TX_PWR」信号に基づく増幅率で信号増幅が行われ、送受分離器55及びアンテナ40を介し書き込み対象の無線タグ回路素子10Aに送信され、返信を促す。
その後ステップS204において、上記「Verify」信号に対応して書き込み対象の無線タグ回路素子10Aから送信されたリプライ信号をアンテナ40を介して受信し、高周波回路51及び信号処理回路52を介し取り込む。
次に、ステップS205において、上記ステップS204で受信したリプライ信号に基づき、当該無線タグ回路素子10Aのメモリ部115内の情報を確認し、メモリ部115が正常に初期化されたか否かを判定する。
判定が満たされない場合はステップS205aに移る。ステップS205aでは、図11や図12のステップS118と同様、このときの「TX_PWR」信号の値が、許容される上限として予め定められる所定の上限値(例えば電波法等の法規により定められるもの)より小さく、かつ0より大きいかどうかを判定する。
「TX_PWR」信号が0でない小さい値の場合、ステップS205aの判定が満たされ、ステップS205bに移り、図9のステップS107や図11、図12のステップS116と同様、「TX_PWR」信号の値に送信部53からの送信出力を段階的に増大させるための所定の加算演算子Pstepを加えた後、ステップS202に戻り同様の手順を繰り返す。
ステップS205aの判定が満たされない場合はステップS206に移り、エラー表示信号を入出力インターフェイス61及び通信回線3を介し上記端末5又は汎用コンピュータ6へ出力し、対応する書き込み失敗(エラー)表示を行わせ、このフローを終了する。
ステップS205の判定が満たされた場合、ステップS207に移り、「Program」コマンドを信号処理回路52に出力する。信号処理回路52ではこれに基づく「TX_ASK」信号が生成されて第1乗算回路71に出力され、第1乗算回路71で対応する上記振幅変調が行われ本来書き込みたいアクセス情報(第1アクセス情報)としての「Program」信号となる。この「Program」信号はさらに、第1アンプ72で制御回路60から入力した「TX_PWR」信号に基づく増幅率で信号増幅が行われ、送受分離器55及びアンテナ40を介し書き込み対象の無線タグ回路素子10Aに送信され、これによってそのメモリ部115に情報が書き込まれる。
その後、ステップS208において、確認指令信号としての「Verify」コマンドを信号処理回路52に出力する。信号処理回路52ではこれに基づく「TX_ASK」信号が生成されて第1乗算回路71に出力され、第1乗算回路71で対応する上記振幅変調が行われアクセス情報(第1アクセス情報)としての「Verify」信号となる。この「Verify」信号はさらに、第1アンプ72で制御回路60から入力した「TX_PWR」信号に基づく増幅率で信号増幅が行われ、送受分離器55及びアンテナ40を介し書き込み対象の無線タグ回路素子10Aに送信され、返信を促す。
そして、ステップS209において、上記「Verify」信号に対応して書き込み対象の無線タグ回路素子10Aから送信された第1返答信号としてのリプライ信号をアンテナ40を介して受信し、高周波回路51及び信号処理回路52を介し取り込む。
次に、ステップS210において、上記ステップS209で受信したリプライ信号に基づき、当該無線タグ回路素子10Aのメモリ部115内に記憶された情報を確認し、前述のステップS207で送信した本来書き込みたい所定の情報がメモリ部115に正常に記憶されたか否かを判定する。
判定が満たされない場合はステップS211に移る。ステップS211では、 図11や図12のステップS118と同様、このときの「TX_PWR」信号の値が、許容される上限として予め定められる所定の上限値(例えば電波法等の法規により定められるもの)より小さく、かつ0より大きいかどうかを判定する。
「TX_PWR」信号が0でない小さい値の場合、ステップS211の判定が満たされ、ステップS212に移り、図9のステップS107や図11、図12のステップS116と同様、「TX_PWR」信号の値に送信部53からの送信出力を段階的に増大させるための所定の加算演算子Pstepを加えた後、ステップS207に戻り同様の手順を繰り返す。
ステップS211において「TX_PWR」信号の値が前述の所定の上限値以上になるかまたは0になった場合、ステップS211の判定が満たされず前述のステップS206に移り、前述の書き込み失敗(エラー)表示を行わせ、このフローを終了する。
ステップS210の判定が満たされた場合、ステップS213に移り、「Lock」コマンドを信号処理回路52に出力する。信号処理回路52ではこれに基づく「TX_ASK」信号が生成されて第1乗算回路71に出力され、第1乗算回路71で対応する上記振幅変調が行われ「Lock」信号となる。この「Lock」信号はさらに、第1アンプ72で制御回路60から入力した「TX_PWR」信号に基づく増幅率で信号増幅が行われ、送受分離器55及びアンテナ40を介し書き込み対象の無線タグ回路素子10Aに送信され、当該無線タグ回路素子10Aへの新たな情報の書き込みが禁止され、このフローを終了する。
上記において、信号処理回路52及び高周波回路51の送信部53がIC回路部の無線タグ情報にアクセスする第1アクセス情報を生成するアクセス情報生成手段を構成し、さらに送信部53はアクセス情報生成手段で生成した第1アクセス情報を装置側アンテナを介して非接触でタグ側アンテナに送信し、IC回路部の無線タグ情報へのアクセスを行う第1情報送信手段をも構成する。
また、信号処理回路52及び高周波回路51の送信部53は、第1情報送信手段による第1アクセス情報の送信後、アクセスの成否を確認するための確認指令信号を、装置側アンテナを介して非接触で前記タグ側アンテナに送信するアクセス確認指令送信手段をも構成する。
さらに、制御回路60(特に図14に示したフローのステップS205)が、アクセス実行後IC回路部へのアクセスが成功したか否かの判定を行う第1判定手段を構成するとともに、(特に図14のステップS211及びステップS212が)第1判定手段でのアクセス成否の判定結果に応じ、第1情報送信手段からの送信出力の大きさを制御する第1出力制御手段を構成する。また制御回路60(特に図14に示したフローのステップS208)が、アクセス確認指令送信手段からの送信出力を制御する指令送信出力制御手段を構成する。
以上のように、本実施形態においては、ステップS205又はステップS210において判定が満たされない間、すなわち送信部53からの「Erase」信号の送信出力が足りず、初期化が十分に行われない間や、「Program」信号の送信出力が足りず書き込みが正常に行われない間は「TX_PWR」信号値を段階的に増大させ送信部53からの「Erase」信号又は「Program」信号の送信出力を段階的に増大させながらステップS202→ステップS203→ステップS204→ステップS205→ステップS205a→ステップS205bあるいはステップS207→ステップS208→ステップS209→ステップS210→ステップS211→ステップS212を繰り返す。図15は、このときの「Erase」信号、「Program」信号及び「Verify」信号の送信部53からの送信出力が時間とともに段階的に増大される様子を模式的に表した図である。これらの繰り返しの間に「Erase」信号や「Program」信号の送信出力がある程度大きくなりアクセス対象の無線タグ回路素子10Aへの書き込みが正常に行われるとステップS210の判定が満たされ、ステップS213を経てフローを終了する。これにより、アクセス(この例では書き込み)対象である無線タグ回路素子10Aに対し書き込みが可能な限りにおいて極力小さい必要最小限の送信部53からの送信出力でアクセスを実行することができる。この結果、上記第1の実施形態と同様、装置側アンテナ40と当該無線タグ回路素子10Aのアンテナ101との相互間以外の外部への漏れ電力を極力抑制することができ、また消費電力を抑制することができる。
また、上記のように「Erase」信号や「Program」信号の送信出力を段階的に増大させる際、図15に示すように「Verify」信号の送信出力も上記「Erase」信号や「Program」信号の送信出力の大きさと略同じとすることにより、別々の値で制御する場合(後述の変形例参照)に比べ、制御の簡略化を図れるという効果もある。
なお、上記第2の実施形態においては、制御回路60は、先に図15及び図14に示したように、「Erase」信号、「Program」信号、及び「Verify」信号を段階的に出力増大させつつ送信する際、各段階において「TX_PWR」信号の値を互いに同一(言い換えれば送信部53からの「Erase」信号、「Program」信号、及び「Verify」信号の値も互いに同一)としたが、これに限られず、「Verify」信号を「Erase」信号や「Program」信号とは異なる値に制御してもよい。
図16は、そのような変形例において制御回路60が実行する無線タグ情報の書き込み手順を表すフローチャートであり、上記図14に対応する図である。
図16において、このフローでは、まず、図14のステップS201に代えてステップS201AとステップS201′とを設けている。ステップS201Aでは、「TX_PWR」信号の基準出力値となる値PBを、PB=PA+Peと定める。ここでPAは例えばPBに比較的近い所定の一定値(例えば第1の実施形態におけるP1に等しい値)であり、Peは、先に述べたPdと同様、例えば、予め測定により概略好適な値として定めた所定の値である。このステップS201Aで定めたPBの値を用い、ステップS201′で、TX_PWR=PBとする。
ステップS201′が終了すると、ステップS202へ移ってTX_PWR=PBとして「Erase」コマンドを送信した後、新たに設けたステップS202Aで「TX_PWR」信号の値を再定義しTX_PWR=PAとしてステップS203で「Verify」コマンドを信号処理回路52に出力した後、ステップS204で書き込み対象の無線タグ回路素子10Aから送信されたリプライ信号を受信する。
正常に初期化されない場合はステップS205の判定が満たされずステップS205a′に移る。ステップS205a′では、図11や図12のステップS118と同様、このときの「TX_PWR」信号の値が、許容される上限として予め定められる所定の上限値(例えば電波法等の法規により定められるもの)より小さく、かつ0より大きいかどうかを判定する。「TX_PWR」信号が0でない小さい値の場合、ステップS205a′の判定が満たされ、ステップS205b′に移り、上記PBの値に送信部53からの送信出力を段階的に増大させるための所定の加算演算子PBstepを加えた後、ステップS201′に戻り同様の手順を繰り返す。ステップS205a′の判定が満たされない場合、ステップS206でエラー表示信号を出力する。
正常に初期化された場合はステップS205より新たに設けたステップS205Aに移って「TX_PWR」信号の値を再定義しTX_PWR=PBとしてステップS207で「Program」コマンドを信号処理回路52に出力する。前述したように信号処理回路52ではこれに基づく「TX_ASK」信号が生成されて第1乗算回路71に出力され、対応する上記振幅変調が行われ「Program」信号となる。この「Program」信号はさらに「TX_PWR」信号(この時点でTX_PWR=PBである)に基づく増幅率で信号増幅が行われた後、書き込み対象の無線タグ回路素子10Aに送信される。
このステップS207が終了すると、新たに設けたステップS207Aに移る。ステップS207Aでは、「TX_PWR」信号の値を再定義し、TX_PWR=PAとする。
このステップS207Aが終了すると、ステップS208へ移る。ステップS208〜ステップS211は図14の上記第2の実施形態と同様であり、すなわちステップS208では、「Verify」コマンドを信号処理回路52に出力する。前述したように信号処理回路52ではこれに基づく「TX_ASK」信号が生成されて第1乗算回路71に出力され、対応する上記振幅変調が行われ「Verify」信号となる。この「Verify」信号はさらに「TX_PWR」信号(先のステップS207Aに示すように、この時点でTX_PWR=PAとなっている)に基づく増幅率で信号増幅が行われた後、書き込み対象の無線タグ回路素子10Aに送信され、返信を促す。
その後ステップS209で書き込み対象の無線タグ回路素子10Aから送信されたリプライ信号を受信し、ステップS210で書き込みが正常に行われたかが判定され、判定が満たされない場合はステップS211で「TX_PWR」信号の値が、許容される上限として予め定められる所定の上限値より小さく、かつ0より大きいかどうかが判定される。
ここで、このフローでは、図14のフローのステップS212に代えてステップS212′が設けられている。すなわち、「TX_PWR」信号が0でない小さい値であってステップS211の判定が満たされると、ステップS212′に移り、「Program」信号送信時に関わる「TX_PWR」信号の値を規定するPBの値に送信部53からの送信出力を段階的に増大させるための所定の加算演算子PBstepを加えた後、ステップS205Aに戻り同様の手順を繰り返す。なおステップS210で判定が満たされない場合に移るステップS213は図14と同様である。
以上のフローにより、図14と同様、ステップS205又はステップS210において判定が満たされない(初期化又は書き込みが正常に行われない)間はPBの値を段階的に増大させながらステップS201′→ステップS202→ステップS202A→ステップS203→ステップS204→ステップS205→ステップS205a′→ステップS205b′あるいはステップS205A→ステップS207→ステップS207A→ステップS208→ステップS209→ステップS210→ステップS211→ステップS212′を繰り返す。このとき、ステップS205b′,ステップS201′又はステップS212′,ステップS205AによってステップS202の「Erase」信号又は「Program」信号ステップS207の「Program」信号の送信時の「TX_PWR」の送信出力値が段階的に増大(言い換えれば「Erase」信号又は「Program」信号の送信出力値が段階的に増大)するのに対し、ステップS202A又はステップS207AによってステップS203又はステップS208の「Verify」信号の送信時の「TX_PWR」の送信出力値は常に一定(言い換えれば「Verify」信号の送信出力値が常に一定)とされる。図17は、このときの「Erase」信号、「Program」信号、及び「Verify」信号の送信部53からの送信出力の様子を模式的に表した図である。これらの繰り返しの間に「Erase」信号や「Program」信号の送信出力がある程度大きくなりアクセス対象の無線タグ回路素子10Aへの初期化や書き込みが正常に行われると、図14と同様、ステップS210の判定が満たされ、ステップS213を経てフローを終了する。
なお、本変形例においては、制御回路60(特に図16に示したフローのステップS207A)が、アクセス確認指令送信手段からの送信出力を制御する指令送信出力制御手段を構成する。
本変形例においても、上記第2の実施形態と同様の効果を得る。また、以下のような別の効果もある。
すなわち、無線タグ回路素子10AのIC回路部100に対して非接触で通信を行って書き込みを行う場合、情報書き込み自体を行うのに必要な「Program」信号の送信出力の大きさ(通信強度)と、その後の「Verify」信号送信時に必要な装置側からの送信出力の大きさは異なり、通常は後者のほうが小さくて足りる。本変形例ではこれに応じて、必要最小限の送信出力で情報の書き込みを実行するために、その値を模索するために前述のように「Program」信号送信時の送信出力を段階的に増大させるが、「Verify」信号送信時の送信出力についてはある所定の値の略一定値とする。これにより、「Verify」信号送信に関する漏れ電力及び消費電力の抑制を併せて図ることができるとともに、処理の高速化を図ることができる。
なお、先に第1の実施形態の変形例において図12及び図11を用いて説明した記憶学習値を次回制御に用いる手法を、上記第2の実施形態の変形例において同様に用いてもよいことは言うまでもない。すなわち、図16において、ステップS213の判定が満たされた場合に直ちにフローを終了するのでなく、図11及び図12のステップS119と同様にそのときのPBの値を例えばPAとして学習記憶しておく。そして、図16のステップS201AにおいてこのPAを用いてPB=PA+Peと定義することで、上記のように学習したものを次回制御時に生かして用いるようにすればよい。
あるいは、上記第2の実施形態の図14のステップS201においてTX_PWR=PAとして用いることも考えられる。この場合、前回記憶値のPAそのものだけでなく、PAより大きい値(図16のステップS201Aも参照)、PAより小さい値を今回の出力制御に用いることも考えられる。これらはすなわち、前回記憶学習した「TX_PWR」信号の値に対応した値を今回の出力制御の「TX_PWR」の基準値として用い、この基準値から出力を段階的に増加させる(言い換えれば、記憶学習した「Program」信号の基準値から最終出力値を段階的に増加させることに相当する)等の制御を行うことに他ならない。
また、上記第2の実施形態では、前回制御時に記憶したPAを用いて、今回制御時の出力制御開始時に利用する場合を例にとって説明したが、さらに、前述したのと同様に、カートリッジ20が交換された場合には、これら記憶学習値を初期化する(例えばPA=0とする)ようにしてもよい。また、先に図13を用いて説明した変形例のように、そのカートリッジ20におけるPAの値をカートリッジ20に記載しておくようにしてもよい。これらの場合も同様の効果を得る。
また、上記第2の実施形態及びその変形例においては、前述したように、書き込み対象の無線タグ回路素子10Aが、既に既知の手法を含む何らかの手法で特定されていることを前提としている。ここで、上記第1の実施形態において説明した読み取り手順は、図9、図11、図12を用いて前述したように、「Scroll All ID」信号に応じたリプライ信号が最終的に1つとなるように出力制御を行うことから、言い換えれば1つの無線タグ回路素子10Aの特定を行っていることと同義である。したがって、この第1の実施形態における制御手順を、上記第2の実施形態の前提となるタグ特定のために用いることも考えられる。以下、そのような実施形態を説明する。
本発明の第3の実施形態を図18〜図20により説明する。本実施形態は、上述したように、第1の実施形態の手法を用いて書き込み対象の無線タグ回路素子10Aの特定を行い、その特定した無線タグ回路素子10AのIC回路部100に対し第2の実施形態の手法により無線タグ情報の書き込みを行う場合の実施形態である。第1又は第2の実施形態と同等の部分には適宜同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
図18は、この第3の実施形態の無線タグ情報通信装置2において制御回路60によって実行される制御のうち、前述した書き込み対象の無線タグ回路素子10Aの特定及びその特定した無線タグ回路素子10AのIC回路部100への無線タグ情報の書き込み手順を表すフローチャートである。
図18において、前述した無線タグ情報通信装置2の書き込み操作が行われるとこのフローが開始される。最初のステップS321より、ステップS322、ステップS323、ステップS324、ステップS325、ステップS326、ステップS327、ステップS328、ステップS329、及びステップS330までは、先に図11の変形例で示したステップS111〜ステップS120とそれぞれ同様である。
すなわち、まずステップS321において、「TX_PWR」信号の値をP1に初期化する。このP1の値は、図11の変形例と同様、これまでに既にタグ特定制御(後述)を行い最適値として記憶されている場合(後述のステップS329参照)は前回制御時(言い換えれば一つ前にカートリッジ20より取り出された無線タグ回路素子10Aの読み取り時)のその記憶値とする。なお、予め測定により概略好適な値として定めた所定の値でもよい。
その後、ステップS322において、「Scroll All ID」コマンドを信号処理回路52に出力し、信号処理回路52からの「TX_ASK」信号に対応して第1乗算回路71で振幅変調が行われ、アクセス情報(第2アクセス情報)としての「Scroll All ID」信号となる。この「Scroll All
ID」信号が「TX_PWR」信号に基づく増幅率(最初はTX_PWR=P1)で信号増幅が行われて送信され、もしアクセス可能範囲にある無線タグ回路素子10Aがあれば、それからの返信を促す。
そして、ステップS323において、アクセス可能範囲の無線タグ回路素子10Aから送信された第2返答信号としてのリプライ信号をアンテナ40を介して受信し、受信部54及び信号処理回路52を介し取り込む。
その後、ステップS324において、上記ステップS323で受信したリプライ信号のCRCによって1つの正しいIDが取得できたか否かを判定する。判定が満たされない場合はステップS325に移り、ステップS323で受信したリプライ信号のRSSI出力値が所定値以下であるかによって、該リプライ信号のIDが0個であるか否かが判定される。
ステップS325の判定が満たされた場合ステップS326に移り、図11のステップS116と同様「TX_PWR」信号の値に所定の加算演算子Pstepを加え、ステップS325の判定が満たされない場合ステップS327に移り、「TX_PWR」信号の値より所定の減算演算子Pstep′(<Pstep)を減じる。
ステップS326又はステップS327が終了したらステップS328に移り、図11のステップS118と同様、このときの「TX_PWR」信号の値が所定の上限値より小さく、かつ0より大きいかどうかを判定する。「TX_PWR」信号が小さい間はこの判定が満たされ、ステップS322に戻って同様の手順を繰り返す。
このようにして、リプライ信号が0個である間は「TX_PWR」信号値をP1より段階的に増大させ送信部53からの「Scroll All ID」信号の送信出力を段階的に増大させながらステップS322〜ステップS325→ステップS326→ステップS328を繰り返し、リプライ信号が2個以上に増加してしまった場合は、2個以上である間は「TX_PWR」信号値を段階的に減少させ送信部53からの「Scroll All ID」信号の送信出力を段階的に減少させながらステップS322〜ステップS325→ステップS327→ステップS328を繰り返す。これらの繰り返しの間にリプライ信号が1つになり書き込み対象が1つに特定されるとステップS324の判定が満たされ、ステップS329に移る。
ステップS329では、そのときのタグ特定(認識)可能な限りにおいて最小の送信値に関わる「TX_PWR」信号の値を、次回ステップS321で使用する(言い換えれば、次にカートリッジ20から取り出された無線タグ回路素子10Aの特定(認識)において使用する、前述を参照)ためにP1として記憶する。このステップS329が終了するとステップS302に移る。
ステップS302より、ステップS303、ステップS304、ステップS305、ステップS306、ステップS307、ステップS308、ステップS309、ステップS310、ステップS311、ステップS312、及びステップS313までは、先に図14の変形例で示したステップS202〜ステップS213とそれぞれ同様である。
すなわち、ステップS302において「Erase」コマンドが信号処理回路52に出力され、これに基づく「TX_ASK」信号に対応する上記振幅変調が第1乗算回路71で行われ「Erase」信号となり、第1アンプ72で「TX_PWR」信号に基づく増幅率(ステップS329において示したようにこのときTX_PWR=P1である。以下同様)で信号増幅が行われ、上記ステップS321〜ステップS329によって特定された(以下同様)書き込み対象の無線タグ回路素子10Aに送信されてメモリ部115を初期化する。
その後ステップS303において「Verify」コマンドが信号処理回路52に出力され、これに基づく「TX_ASK」信号に対応する振幅変調が第1乗算回路71で行われ「Verify」信号となり、第1アンプ72で「TX_PWR」信号に基づく増幅率で信号増幅が行われ、書き込み対象の無線タグ回路素子10Aに送信され、返信を促す。そして、ステップS304において書き込み対象の無線タグ回路素子10Aから送信されたリプライ信号を取り込み、ステップS305において、メモリ部115が正常に初期化されたか否かが判定される。
判定が満たされない場合はステップS305aに移り、このときの「TX_PWR」信号の値が、許容される上限として予め定められる所定の上限値(例えば電波法等の法規により定められるもの)より小さく、かつ0より大きいかどうかを判定する。
「TX_PWR」信号が0でない小さい値の場合、ステップS305aの判定が満たされ、ステップS305bに移り「TX_PWR」信号の値に送信部53からの送信出力を段階的に増大させるための所定の加算演算子Pstepを加えた後、ステップS303に戻り同様の手順を繰り返す。ステップS305aの判定が満たされない場合はステップS306に移りエラー表示を行わせる。
ステップS305の判定が満たされた場合、ステップS307に移り、「Program」コマンドが信号処理回路52に出力され、これに基づく「TX_ASK」信号に対応する振幅変調が第1乗算回路71で行われ第1アクセス情報としての「Program」信号となり、第1アンプ72で「TX_PWR」信号に基づく増幅率で信号増幅が行われ、書き込み対象の無線タグ回路素子10Aに送信され、そのメモリ部115に所定の情報が書き込まれる。
その後、ステップS308において、確認指令信号としての「Verify」コマンドが信号処理回路52に出力され、これに基づく「TX_ASK」信号に対応する振幅変調が第1乗算回路71で行われ第1アクセス情報としての「Verify」信号となり、第1アンプ72で「TX_PWR」信号に基づく増幅率で信号増幅が行われ、書き込み対象の無線タグ回路素子10Aに送信され、返信を促す。
そして、ステップS309において、書き込み対象の無線タグ回路素子10Aから送信された第1返答信号としてのリプライ信号が受信され、取り込まれる。その後、ステップS310において書き込みが正常に行われれたか否かが判定される。判定が満たされない場合はステップS311に移り、このときの「TX_PWR」信号の値が所定の上限値より小さく、かつ0より大きいかどうかが判定される。
「TX_PWR」信号が0でない小さい値の場合、ステップS311の判定が満たされてステップS312に移り「TX_PWR」信号の値に所定の加算演算子Pstepを加え、ステップS307に戻り同様の手順を繰り返す。ステップS311において「TX_PWR」信号の値が前述の所定の上限値以上になるかまたは0になった場合、判定が満たされず前述のステップS306に移り、エラー表示を行わせてこのフローを終了する。
ステップS310の判定が満たされた場合、ステップS313に移って「Lock」コマンドが信号処理回路52に出力され、これに基づく「TX_ASK」に対応する振幅変調が第1乗算回路71で行われ「Lock」信号となり、第1アンプ72で「TX_PWR」信号に基づく増幅率で信号増幅が行われて送信され、当該無線タグ回路素子10Aへの新たな情報の書き込みが禁止され、このフローを終了する。
以上において、ステップS322にて送信する「Scroll All ID」信号が、通信範囲内にアクセス(この例では書き込み)が可能な無線タグ回路素子が存在するかどうかを確認するための第2アクセス情報に相当し、送信部53は、第2アクセス情報を装置側アンテナを介して非接触でタグ側アンテナに送信する第2情報送信手段をも構成し、また受信部54は、第2アクセス情報に応じてIC回路部より送信された第2返答信号を、タグ側アンテナを介し非接触で装置側アンテナで受信し、読み込みを行う第2情報受信手段を構成する。
また、制御回路60(特に図18に示したフローのステップS324)は、第2情報受信手段で読み込んだ返答信号があったかどうかにより、通信範囲内に存在するアクセス可能な無線タグ回路素子の数を判定する第2判定手段を構成し、また(特に図18のステップS325、ステップS326、ステップS327、及びステップS328は)この第2判定手段での判定結果に応じ、第2情報送信手段からの送信出力の大きさを制御する第2出力制御手段を構成する。
以上のように、本実施形態においては、まずタグ特定手順においては、第1の実施形態と同様、リプライ信号が0個である間は「TX_PWR」信号値を段階的に増大させ、リプライ信号が増加して2個以上となっている間は「TX_PWR」信号値を段階的に減少させ送信部53からの「Scroll All ID」信号の送信出力を段階的に減少させる制御を繰り返す。これらの繰り返しの間にリプライ信号が1つになりアクセス対象の無線タグ回路素子10Aが1つに特定されるとそのときの(必要最小限の)最適な送信値に関わる「TX_PWR」信号の値を次回使用するためにP1として記憶する。
その後、上記のようにして特定されたタグへの書き込み手順では、「Erase」信号の送信出力が足りず、初期化が十分に行われない間や送信部53からの「Program」信号の送信出力が足りず書き込みが正常に行われない間は「TX_PWR」信号値を段階的に増大させ送信部53からの「Erase」信号又は「Program」信号の送信出力を段階的に増大させながらステップS302→ステップS303→ステップS304→ステップS305→ステップS305a→ステップS305bあるいはステップS307〜ステップS310→ステップS311→ステップS312を繰り返す。これらの繰り返しの間に「Erase」信号や「Program」信号の送信出力がある程度大きくなりアクセス対象の無線タグ回路素子10Aへの書き込みが正常に行われるとステップS310の判定が満たされ、ステップS313を経てフローを終了する。
図19は、以上説明した手順における、「Scroll All ID」信号と、「Erase」信号及び「Verify」信号と、「Program」信号及び「Verify」信号との、送信部53からの送信出力が時間とともに段階的に増大される様子を模式的に表した図である。
以上のように構成した本実施形態においては、上記第1の実施形態と同様の原理で必要最小限の送信出力でタグ特定を行い、そうして特定した書き込み対象の無線タグ回路素子10Aに対して第2の実施形態と同様、書き込みが可能な限りにおいて極力小さい必要最小限の送信部53からの送信出力でアクセスを実行することができる。
また、タグ特定の際、前述の図11及び図12に係る第1の実施形態の変形例と同様、認識する無線タグ回路素子10Aの数が0個からいきなり2個以上となった場合であっても、それまでとは逆に、認識する無線タグ回路素子10Aの数が1個と判定されるまで送信出力を段階的に減少させることで、確実に必要最小限の送信出力でタグ特定を行うことが可能となる。
また、ステップS324においてリプライ信号の数が1個と判定され最小限出力値が決定された後、そのときの「TX_PWR」信号の値をP1として記憶学習(これは言い換えれば第2アクセス情報としての「Scroll All ID」信号の最終出力値を記憶学習していることに相当する)する。これにより、次にカートリッジ20から取り出され書き込み対象となる無線タグ回路素子10Aの特定を行う際、制御回路60が、ステップS321において当該記憶学習した値P1を読み込み、ステップS326又はステップS327においてこのP1より「TX_PWR」信号の送信出力を段階的に増大又は減少させることができる。このようにして、今回タグ特定時における記憶学習結果を以降のタグ特定に反映させるようにすることで、例えば各回ごとに独立して「TX_PWR」信号の送信出力を段階的に増加させてタグ特定を行う場合に比べ、短い時間で容易に特定を行うことができる。
また、本実施形態では、タグ特定手順(ステップS321〜ステップS330)が終了した後の無線タグ情報書き込み手順(ステップS302〜ステップS313)において、「Erase」信号、「Program」信号、「Verify」信号を送信するときの「TX_PWR」信号の出力値を、先に上記タグ特定手順において1つの無線タグ回路素子10Aが特定されたときの「TX_PWR」信号の送信出力値P1から段階的に増加させる。これは、以下のような意義がある。
すなわち、タグ特定を行うための「Scroll All ID」信号の送信に必要な送信出力の大きさは「Erase」信号及び「Program」信号の送信に必要な送信出力の大きさとは異なり、通常は後者に必要な送信出力の大きさは前者に必要な送信出力よりも大きい。
そこで本実施形態ではこれに対応し、上記無線タグ情報書き込み手順において書き込み対象無線タグ回路素子10Aに書き込みを行うために段階的に「Program」信号の送信出力を増加させるべく「TX_PWR」信号の値を段階的に増大させるとき、上記タグ特定手順において当該タグ回路素子の特定に成功したときの「Scroll All ID」信号の送信出力に相当する「TX_PWR」信号の値から段階的に増加させる。これにより、無線タグ情報書き込み手順において例えば出力0から段階的に増加させる場合に比べ、短い時間で容易に書き込みを行うことができる。このとき、タグ特定手順において当該タグ回路素子の特定に成功したときの「Scroll All ID」信号の送信出力に相当する「TX_PWR」信号の値そのものでなく、それより若干大きい値から「TX_PWR」信号の値を段階的に増加させれば、さらに短い時間で書き込みを行うことができる。
なお、上記第3の実施形態においては、制御回路60は、図19に示したように、書き込み手順において「Erase」信号及び「Verify」信号、又は「Program」信号及び「Verify」信号を段階的に出力増大させつつ送信する際、各段階において「TX_PWR」信号の値を互いに同一(言い換えれば送信部53からの「Erase」信号及び「Verify」信号、又は「Program」信号及び「Verify」信号も互いに同一)としたが、これに限られず、「Erase」信号及び「Verify」信号を「Program」信号とは異なる値に制御してもよい。図20は、そのような変形例の1つであり、「Erase」信号や「Program」信号を段階的に増大させるのに対し「Verify」信号を略一定とした場合の「Erase」信号及び「Verify」信号、又は「Program」信号及び「Verify」信号の送信部53からの送信出力挙動を「Scroll All ID」信号とともに模式的に表した図であり、上記図19に対応する図である。
この変形例では、前述の図16に示した変形例と同様、「Erase」信号、「Program」信号送信時の送信出力を段階的に増大させつつ「Verify」信号送信時の送信出力についてはある所定の値の略一定値とすることで、「Verify」信号送信に関する漏れ電力及び消費電力の抑制を併せて図れる効果がある。
また、上記本発明の第3の実施形態は、ステップS329において記憶学習したP1を用いて次回のタグ特定時における出力値制御を開始した(ステップS321)が、これに限られず、P1より小さい値又はP1よりわずかに大きい値を用いてもよいことは言うまでもない。例えば前回記憶値のP1でなくそれよりやや小さい値からタグ特定時の出力制御を行うようにすることで、比較的短い時間でかつ漏れのないタグ特定を行うことができる。以上のように、前回記憶値のP1そのもの、P1より大きい値、P1より小さい値を今回のタグ特定に用いることは、すなわち、前回記憶学習した「TX_PWR」信号の値に対応した値を今回のタグ特定の「TX_PWR」の基準値として用いることに他ならない。
さらに、上記第3の実施形態では、図18のフローのうちタグ特定手順に含まれるステップS325において、リプライ信号が2つであった場合にはステップS327に移って「TX_PWR」信号の送信出力を段階的に減少させることでリプライ信号を1つに絞るようにしてタグの特定を図ったが、これに限られない。すなわち、アンテナ40より送信した「Scroll All ID」信号に対し通信可能な範囲内に複数の無線タグ回路素子10Aが存在した場合、それぞれからのリプライ信号の通信強度は、アンテナ40からの距離が近いものほど大きくなるという原理に基づき、ステップS327に代えて設けたステップS327′において2個以上のリプライ信号のうち信号強度(=前述したようにRSSI回路81を介し信号処理回路52に入力される)が最大である無線タグ回路素子10Aを書き込み対象であると特定してもよい。そしてこのステップS327′の後は、ステップS302以降へ移り、信号強度が最大の無線タグ回路素子以外の無線タグ回路素子には機能を一時停止する「Quiet」信号を送信して、そうして特定した(リプライ信号の信号強度が最大であった)無線タグ回路素子10Aに各種信号を送信するようにすればよい。これにより、本来の書き込み対象である無線タグ回路素子10Aに対しさらに迅速かつ確実に書き込みを行うことができる。
また、上記は、前回制御時に記憶したP1を用いて、今回制御時の出力制御開始時に利用する場合を例にとって説明したが、さらにカートリッジ20が交換された場合には、これら記憶学習値を初期化する(例えばP1=0とする)ようにしてもよい。また、先に図13を用いて説明した変形例のように、そのカートリッジ20におけるP1の値をカートリッジ20に記載しておくようにしてもよい。これらの場合も同様の効果を得る。
また、上記第1の実施形態の変形例及び第3の実施形態においては、前述の減算演算子Pstep′の値をPstepより小さくしたが、これに限られず、Pstep′>Pstepとなる値のPstep′でもよいし、また同じPstepを用いてもよい。
さらに、以上において、各動作フローにおいては、印刷動作に伴い搬送ガイド83を移動中のタグテープ28に対してアクセスエリア内に保持してアクセスするようにした例を示したが、これに限られない。すなわち、そのタグテープ28を所定位置で停止させて搬送ガイド83にて保持した状態で上記アクセスを行うようにしてもよい。
また、以上においては、無線タグ回路素子収納手段として、長手方向に複数の無線タグ回路素子10Aが順次形成された基材テープ21を第1ローラ22に巻き回したカートリッジ20を用いたが、これに限られない。すなわち、それぞれに1つの無線タグ回路素子10Aが形成された平紙状の複数のラベル素材を、平積み方向に積層して収納するトレイ部材(いわゆるスタックタイプのもの)を用いてもよい。
また、無線タグ回路素子収納手段は、上記カートリッジや上記トレイ部材のような無線タグ情報通信装置本体側に着脱可能なものにも限られず、装置本体側に着脱不能のいわゆる据え付け型あるいは一体型のものを用いてもよい。この場合も同様の効果を得る。
また、以上は、無線タグ情報通信装置2が、無線タグ回路素子10AのIC回路部100から無線タグ情報の読み取り又は書き込みを行うと共に、サーマルヘッド41によってその無線タグ回路素子10Aを識別するための印刷を行うものであったが、この印刷は必ずしも行われなくともよく、無線タグ回路素子10Aに無線タグ情報の読み取り又は書き込みのみを行うものであっても構わない。
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。