JP2005144412A - ポリケトン系中空糸膜およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 力学特性、耐熱性、耐久性、耐薬品性、寸法安定性に優れることが知られているポリケトンを用いた中空糸膜で、分離膜として効率的で緻密な構造を有し、かつマクロボイドや中空糸膜の内面から外面にかけて貫通する粗大な孔を含まないポリケトン中空糸膜を提供する。
【解決手段】 ポリケトン濃度(PC(重量%))と極限粘度([η](dl/g))との関係が、40≦PC×[η]≦100、かつ5≦PC≦50を満たす範囲にあるポリケトンドープを二重管オリフィスの外側から吐出すると同時に二重オリフィスの内側からポリケトンの非溶剤を吐出することによって緻密な構造を持ち、かつマクロボイドや中空糸膜の内面から外面にかけて貫通する粗大な孔を含まないポリケトン中空糸膜を得ることが出来る。透水速度は3.4×10-4〜18.7×10-3m3/hr・m2・kPaの範囲であった。
【選択図】 図5
【解決手段】 ポリケトン濃度(PC(重量%))と極限粘度([η](dl/g))との関係が、40≦PC×[η]≦100、かつ5≦PC≦50を満たす範囲にあるポリケトンドープを二重管オリフィスの外側から吐出すると同時に二重オリフィスの内側からポリケトンの非溶剤を吐出することによって緻密な構造を持ち、かつマクロボイドや中空糸膜の内面から外面にかけて貫通する粗大な孔を含まないポリケトン中空糸膜を得ることが出来る。透水速度は3.4×10-4〜18.7×10-3m3/hr・m2・kPaの範囲であった。
【選択図】 図5
Description
本発明は、多数の微細な孔を有するポリケトン中空糸膜に関する。更に詳しくは、ナノメーター〜マイクロメーターの溶質を効率的に分離除去することが可能となるポリケトン中空糸膜に関する。
これまで、一酸化炭素とオレフィン類をパラジウムやニッケルを触媒として重合させることにより、一酸化炭素とオレフィンが実質的完全に交互共重合した脂肪族ポリケトンが得られることが見出された。該ポリケトンは高結晶性で、高力学特性、高融点、高ガスバリアー性、耐薬品性に優れているという特性を有し、この特性を利用した繊維やフィルムなどに関する技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。ところで膜分離技術は、その省エネルギー性、コンパクト性といった面で注目され、水処理膜、海水の淡水化処理膜、血液透析膜など、すでに幅広い分野で利用されている。
また、分離膜の形態として、平膜、円筒状膜、中空糸膜等が代表的であるが、その中でも、中空糸型分離膜は、その単位容積あたりの膜面積が他の種類の膜よりも非常に大きく、装置の省スペース化を図ることができるという利点があるため、各分野で広く用いられている。
また、分離膜の形態として、平膜、円筒状膜、中空糸膜等が代表的であるが、その中でも、中空糸型分離膜は、その単位容積あたりの膜面積が他の種類の膜よりも非常に大きく、装置の省スペース化を図ることができるという利点があるため、各分野で広く用いられている。
また、分離膜を形成する膜素材としては、これまでにセルロース系、ポリスルホン系、ポリアクリロニトリル系、ポリフッ化ビニリデン系、ポリアミド系、ポリエチレン系などのポリマーが使用されている。オレフィンと一酸化炭素の共重合体であるポリケトンは、素材自体の特徴として高強度、耐熱性、耐久性、耐薬品性に優れている事が知られており、該ポリケトンを使用した中空糸膜が昨今注目されるようになりつつある。
ポリケトン中空糸膜は素材であるポリケトンの特徴をそのまま有しており、耐熱性、耐久性、耐薬品性にすぐれ、水性もしくは有機液体の分離、廃水処理、工業用水の処理、血液の透析膜、血漿分離膜、或いはガス分離膜として非常に有用である。
成型体の内部や表面に微細な孔を多数有するポリケトン繊維や中空糸に関する技術についても既にいくつか報告されている(特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。
ポリケトン中空糸膜は素材であるポリケトンの特徴をそのまま有しており、耐熱性、耐久性、耐薬品性にすぐれ、水性もしくは有機液体の分離、廃水処理、工業用水の処理、血液の透析膜、血漿分離膜、或いはガス分離膜として非常に有用である。
成型体の内部や表面に微細な孔を多数有するポリケトン繊維や中空糸に関する技術についても既にいくつか報告されている(特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。
特許文献3によれば、α−オレフィンと一酸化炭素とがランダムに共重合されたポリマーを用いて溶融成型することにより微多孔フィルムを提供するものであるが、フィルム状分離膜は、中空糸状分離膜と比較して、コンパクト性に劣っており、分離膜の単位有効面積あたりに占めるモジュールの容積が増大してしまい、装置が大型化してしまうといった欠点がある。
また、この発明で使用されているランダム共重合されたポリマーは実質的に交互に共重合されたポリマーよりも融点が低く、交互共重合されたポリマーによる成型体に比較して耐熱性、耐久性に劣る。また、交互に共重合されたポリマーは融点が高いため成型しにくいという難点がある。本発明によれば、ポリケトンポリマーを、少なくともハロゲン化亜鉛などを含む溶液に溶解させて成型させる湿式紡糸法により加工することで交互共重合体ポリマーの成型も可能にしている。この方法によって得られた成型体はランダム共重合体ポリマーによる成型体よりも耐熱性、耐久性に優れた中空糸膜である。
また、この発明で使用されているランダム共重合されたポリマーは実質的に交互に共重合されたポリマーよりも融点が低く、交互共重合されたポリマーによる成型体に比較して耐熱性、耐久性に劣る。また、交互に共重合されたポリマーは融点が高いため成型しにくいという難点がある。本発明によれば、ポリケトンポリマーを、少なくともハロゲン化亜鉛などを含む溶液に溶解させて成型させる湿式紡糸法により加工することで交互共重合体ポリマーの成型も可能にしている。この方法によって得られた成型体はランダム共重合体ポリマーによる成型体よりも耐熱性、耐久性に優れた中空糸膜である。
また特許文献4には、ポリケトンをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解させ得られる、ポリケトンのフィルム状分離膜に関する技術が開示されているが、先に述べたとおり、フィルム状分離膜よりも中空糸型分離膜の方がそのコンパクト性から有利である。
特許文献5には、平均孔径が0.001〜10μmであるポリケトン多孔体についての記述があり、多孔体としてフィルムの他に中空糸についても例示されている。しかしながら、例えば実施例14の記述にみられるように、中空糸状のポリケトン多孔体ではドープ中のポリマー濃度が10質量%、極限粘度が3.9(dl/g)であり、この条件で中空糸を作製すると、構造中に短径が50μm以上のマクロボイドを含む中空糸膜ができてしまううえ、まれにピンホールなどの欠陥なども生じてしまう場合もある。
特許文献5には、平均孔径が0.001〜10μmであるポリケトン多孔体についての記述があり、多孔体としてフィルムの他に中空糸についても例示されている。しかしながら、例えば実施例14の記述にみられるように、中空糸状のポリケトン多孔体ではドープ中のポリマー濃度が10質量%、極限粘度が3.9(dl/g)であり、この条件で中空糸を作製すると、構造中に短径が50μm以上のマクロボイドを含む中空糸膜ができてしまううえ、まれにピンホールなどの欠陥なども生じてしまう場合もある。
本発明が解決しようとする課題は、力学特性、耐熱性、耐久性、耐薬品性、寸法安定性に優れることが知られているポリケトンを用いた中空糸膜の提供で、これらポリケトンの特性を具備し、水性または有機液体、工業用水、排水、血漿、血液、気体などの分離膜としてより効率的で緻密な構造を有し、かつマクロボイドや中空糸膜の内面から外面にかけて貫通する粗大な孔を含まないポリケトン中空糸膜を提供することにある。
そこで本発明者らは、膜中にマクロボイドを含まない構造を有するポリケトン中空糸膜および粗大な貫通孔を含まないポリケトン中空糸膜を作製できないか、鋭意研究を重ねた。
また、構造中に短径が50μm以上であるマクロボイドを含まない構造は、中空糸膜構造としては対称性に優れており、このような中空糸膜はすぐれた分画性、優れた耐圧性を示すので、マクロボイドを含まない構造を有する膜は非常に優位である。
本発明は、繰り返し単位の90%以上が下記式(1)に示される構造であるポリケトンにより構成された中空糸膜であり、バブルポイントが5kPa以上であることを特徴とするポリケトン中空糸膜であり、もう一つの発明は、繰り返し単位の90%以上が下記式(1)に示される構造であるポリケトンにより構成された中空糸膜であり、中空糸膜の膜構造中に、孔の短径が50μm以上であるマクロボイドを含まず、かつ膜構造内に平均孔径が0.001〜10μmである孔を5〜90vol%含有するポリケトン中空糸膜に関する。
また、構造中に短径が50μm以上であるマクロボイドを含まない構造は、中空糸膜構造としては対称性に優れており、このような中空糸膜はすぐれた分画性、優れた耐圧性を示すので、マクロボイドを含まない構造を有する膜は非常に優位である。
本発明は、繰り返し単位の90%以上が下記式(1)に示される構造であるポリケトンにより構成された中空糸膜であり、バブルポイントが5kPa以上であることを特徴とするポリケトン中空糸膜であり、もう一つの発明は、繰り返し単位の90%以上が下記式(1)に示される構造であるポリケトンにより構成された中空糸膜であり、中空糸膜の膜構造中に、孔の短径が50μm以上であるマクロボイドを含まず、かつ膜構造内に平均孔径が0.001〜10μmである孔を5〜90vol%含有するポリケトン中空糸膜に関する。
本発明によると、繰り返し単位の90%以上が上記式(1)に示される構造であるポリケトンにより構成され、孔の短径が50μm以上であるマクロボイドを含まず、かつ粗大な貫通孔を含まない緻密かつ均質なポリケトン中空糸膜が得られ、強度、寸法安定性、耐薬品性、耐熱性の力学特性、熱特性、分離特性に優れるポリケトン中空糸膜が得られる。
本発明のポリケトン中空糸膜は、膜構造中に、孔の短径が50μm以上であるマクロボイドを含まず、かつ膜構造内に平均孔径が0.001〜10μmである孔を5〜90vol%含有するものである。
本発明に用いるポリケトンは、繰り返し単位の90重量%以上が上記式(1)で示されるポリケトンである。
繰り返し単位の10重量%未満で式(1)のケトン以外の繰り返し単位を有していてもよい。
本発明に用いるポリケトンは、繰り返し単位の90重量%以上が上記式(1)で示されるポリケトンである。
繰り返し単位の10重量%未満で式(1)のケトン以外の繰り返し単位を有していてもよい。
また、強度、寸法安定性、耐熱性、耐薬品性などの観点から、以下の構造式に示すポリケトンが特に好ましい。
(ここで、Rは炭素数1〜30の有機基である。)
すなわち、この好ましいポリケトンでは、カルボニル基とRが交互に配列されているポリマーである。このポリマー中には部分的にカルボニル基同士、アルキレン基同士が繋がっていてもよいが、90%以上が完全交互共重合体、すなわち、Rの次にはカルボニル基が結合し、カルボニル基の次にはRが結合する交互共重合体からなるポリケトンであることが耐熱性、耐光性を向上させる観点から好ましい。もちろん、完全交互共重合した部分の含有率は高ければ高いほどよく、好ましくは97%以上であり、最も好ましくは100%である。
すなわち、この好ましいポリケトンでは、カルボニル基とRが交互に配列されているポリマーである。このポリマー中には部分的にカルボニル基同士、アルキレン基同士が繋がっていてもよいが、90%以上が完全交互共重合体、すなわち、Rの次にはカルボニル基が結合し、カルボニル基の次にはRが結合する交互共重合体からなるポリケトンであることが耐熱性、耐光性を向上させる観点から好ましい。もちろん、完全交互共重合した部分の含有率は高ければ高いほどよく、好ましくは97%以上であり、最も好ましくは100%である。
Rは炭素数が1〜30の有機基であり、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、1−フェニルエチレン等が例示される。これらの水素原子の一部または全部が、ハロゲン原子、エステル基、アミド基、水酸基、エーテル結合等の原子や基で置換されていてもよい。さらに、Rに含まれる水素原子の一部または全部が、{−SO3X基、−COOX基、−PO3X基}または{−R’−SO3X基、−R’−COOX基、−R’−PO3X基}(ここでXは、水素、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウムの群から選ばれる化合物であり、R’は(炭素、窒素、酸素)の群から選ばれる元素を少なくとも一つ以上有する有機基である。)で表される基で置換されていてもよい。また、Rに含まれる水素原子の一部又は全部が表面処理によってアミノ酸、オリゴペプチド類、シアル酸など糖類、核酸塩基類などで置換してもよい。もちろん、Rは2種以上であってもよく、例えば、エチレンとプロピレンが混在していてもよい。
これらのポリケトンとしては、中でも、強度、寸法安定性、耐熱性、耐薬品性などの観点から、エチレンと一酸化炭素が交互に結合した下記式(2)で示す1−オキソトリメチレンを主たる繰り返し単位とすることが好ましい。具体的には繰り返し単位の90%以上が1−オキソトリメチレンであることが望ましい。
本発明において孔とは、中空糸膜の内側の表面、膜構造の内部、または中空糸膜の外側の表面に観察される細孔のことである。さらに、本発明におけるマクロボイドとは、膜構造中に含まれる孔のなかで、その短径、すなわち最大内接円径が50μm以上である孔のことである。膜構造中にマクロボイドが含まれると、膜構造の対称性が悪くなり、それにより膜の分画性能、強度、耐圧性などの物性も悪くなる事が一般的に知られている。
また、本発明における中空糸膜の膜構造中に観察される孔の平均孔径は、0.001〜10μmである。また、膜全体の孔の分布は、中空糸の内側と外側には小さな孔が分布したスキン層を有した構造が好ましい。ここで平均孔径とは、中空糸膜構造中に含まれる孔のうち、少なくとも100個以上の孔をランダムに抽出し、本発明の実施例に示される方法により計測した大きさの平均値である。また、中空糸を作製する時に使用するドープ中のポリケトン濃度PCと極限粘度[η]の値が高いほど、平均孔径は小さくなる。
平均孔径が0.001μm未満の場合、透過性能が著しく低下し、分離膜の機能が不十分となる。また、平均孔径が10μmを超える場合、支持体であるポリケトンの力学物性が低下し脆弱な材料となってしまう。平均孔径は用途により要求される大きさが異なるため、一概に規定することはできないが、一般的には0.01〜5μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01〜1μmである。また、水や有機溶液、血液等の分離膜用途では0.001〜5μmが好ましく、より好ましくは0.005〜1μmである。
平均孔径が0.001μm未満の場合、透過性能が著しく低下し、分離膜の機能が不十分となる。また、平均孔径が10μmを超える場合、支持体であるポリケトンの力学物性が低下し脆弱な材料となってしまう。平均孔径は用途により要求される大きさが異なるため、一概に規定することはできないが、一般的には0.01〜5μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01〜1μmである。また、水や有機溶液、血液等の分離膜用途では0.001〜5μmが好ましく、より好ましくは0.005〜1μmである。
本発明において、中空糸膜とは、繊維状であって、その内部に繊維軸方向に貫通した空隙を有する膜のことである。繊維軸方向に貫通した空隙(中空部)の割合である中空率には特に制限はないが、少なすぎると膜の分離効率が低下し、また多すぎると中空糸の力学特性低下するため、好ましくは5〜70%、より好ましくは10〜60%、最も好ましくは10〜50%である。本発明において中空部の割合である中空率とは、繊維の全断面積に対する中空部の面積の100分率で表され、電子顕微鏡あるいは光学顕微鏡により得られる中空糸の断面写真から、本発明実施例記載の方法で求めることが出来る。繊維内部にある中空部の数は特に制限は無く1本であっても、また複数本であっても良いが、中空糸の対称性、力学特性等の観点から、好ましくは1本である方が良い。中空糸の外径は、用途によって異なるが、一般的に50〜5000μmの範囲が好適に用いることが出来る。また膜モジュールに加工した場合の、単位膜面積あたりの装置の体積などを考慮すると、細い方が良いが、膜モジュールの単位時間あたりの処理能力を考慮するとある程度の外径と内径を有していたほうが良く、外径の好ましい範囲は50〜3000μm、より好ましくは70〜2000μmである。また、中空糸繊維膜は、1本で用いても、マルチフィラメントとして用いてもよく、長繊維、或いは短繊維として用いても良い。中空糸繊維の断面は円、楕円、多角形等の形を適用できるが、対称性からは真円状であることが最も望ましい。
また、膜構造中に含まれる最も大きな孔の孔径は、膜の透過性能を著しく低下させない範囲で、小さければ小さいほどよく、好ましくは25μm以下であり、更に好ましくは10μm以下である事が好ましい。本発明における中空糸膜内には、マクロボイドが含まれないものであった。すなわち、ポリケトン中空糸断面の電子顕微鏡観察において、ランダムに抽出された部分の中空糸断面写真を5枚以上撮影したとき、マクロボイドが1つも観察されないということである。
本発明において、中空糸膜の孔の体積割合(空隙率)とは、ポリケトン中空糸膜の中空部を除いた体積に占める膜構造部の空隙部体積の割合を中空糸膜の孔の体積割合とする。中空糸膜の孔の平均孔径および空隙率の測定方法は後述する。なお、本発明における中空糸膜の空隙率は5〜90vol%である。空隙率が5vol%未満であると、膜の透過性能が著しく低下してしまう。また、90vol%を超えるとポリケトン中空糸膜の力学物性の低下が著しくなるという問題が生じる。このため、好ましくは10〜88vol%、より好ましくは20〜85vol%であることが望ましい。また、中空糸膜構造中の孔には、構造中の独立した孔と、隣接する孔同士が連結した種類の孔があるが、強度の観点からは独立孔であることが望ましいが、分離膜として用いる場合には分離効率の観点から隣接する孔同士が連結した物や、膜構造内を貫通した孔が望ましい。
本発明において、中空糸膜の孔の体積割合(空隙率)とは、ポリケトン中空糸膜の中空部を除いた体積に占める膜構造部の空隙部体積の割合を中空糸膜の孔の体積割合とする。中空糸膜の孔の平均孔径および空隙率の測定方法は後述する。なお、本発明における中空糸膜の空隙率は5〜90vol%である。空隙率が5vol%未満であると、膜の透過性能が著しく低下してしまう。また、90vol%を超えるとポリケトン中空糸膜の力学物性の低下が著しくなるという問題が生じる。このため、好ましくは10〜88vol%、より好ましくは20〜85vol%であることが望ましい。また、中空糸膜構造中の孔には、構造中の独立した孔と、隣接する孔同士が連結した種類の孔があるが、強度の観点からは独立孔であることが望ましいが、分離膜として用いる場合には分離効率の観点から隣接する孔同士が連結した物や、膜構造内を貫通した孔が望ましい。
本発明のもう一つの形態は、繰り返し単位の90%以上が上記式(1)に示される構造であるポリケトンにより構成された中空糸膜であり、バブルポイントが5kPa以上であることを特徴とするポリケトン中空糸膜である。
本発明におけるバブルポイントとは、水で膨潤させた該中空糸膜モジュールの内側に、圧力を加えながら空気を送り、膜を透過する気体が観測されたときの圧力であり、この値が大きいほど、中空糸膜の内側から外側にかけて貫通する細孔のうち、最も大きな径を有する細孔の孔径が小さいことを意味する(例えば、非特許文献1)。バブルポイントの値は、分離する溶質の径や性状、目的用途によって異なるため、一概に規定することはできないが、水処理膜や血液透析膜用途では分離能の観点から5kPa以上であることが好ましく、より好ましくは10kPa以上、さらに好ましくは20kPa以上、特に好ましくは40kPa以上であることが望ましい。
本発明におけるバブルポイントとは、水で膨潤させた該中空糸膜モジュールの内側に、圧力を加えながら空気を送り、膜を透過する気体が観測されたときの圧力であり、この値が大きいほど、中空糸膜の内側から外側にかけて貫通する細孔のうち、最も大きな径を有する細孔の孔径が小さいことを意味する(例えば、非特許文献1)。バブルポイントの値は、分離する溶質の径や性状、目的用途によって異なるため、一概に規定することはできないが、水処理膜や血液透析膜用途では分離能の観点から5kPa以上であることが好ましく、より好ましくは10kPa以上、さらに好ましくは20kPa以上、特に好ましくは40kPa以上であることが望ましい。
また、膜を利用した分離プロセスにおいて、膜の持つ透水能を表す透水速度が重要である。ここで透水速度とは、中空糸膜の単位膜面積、単位時間、単位圧力条件下での、水の透過量のことである。透水速度の測定方法については後述する。透水速度は膜の分離能を低下させない範囲内では高ければ高い方が良いとされる。一般に水処理などに利用される精密ろ過膜、限外ろ過膜等は透水速度が比較的高く、逆浸透膜等は構造中の孔が非常に小さいので限外ろ過膜などと比較して透水速度は低い。透水速度の値の大きさは構造中の孔の平均孔径に関係しており、平均孔径が大きいほど透水速度の値は大きくなるが、分離性能も低下する。膜の性能としては膜構造中の孔の平均孔径が小さくかつ膜を貫通する孔が多い方が分離性能、透過性能に優れた良質な膜である。また、本発明の実施例における中空糸膜の透水速度は、3.4×10-4 〜18.7×10-3m3/hr・m2・kPaの範囲にあり、高い透水能を有する。
また、中空糸膜に望まれる特性としては、引張強度、伸度、融点などが挙げられる。引張強度は高ければ高いほど取扱性、耐久性、耐圧性等が優れるため有利である。また、素材の特性としての引張り強度が高ければ、支持体であるポリマーの量を減らして微多孔や中空部の割合を増やすことが可能にもなり、より多くの機能性化合物、親水化剤の添加も出来るようになる。このために引張り強度としては、0.1MPa以上、より好ましくは1MPa以上、特に好ましくは2MPa以上である。本発明の実施例における引張り強度は、0.8〜2.5MPaの範囲にあり、好適な範囲内にある。
伸度については、高ければ高いほど、加工時や製品とした際の靱性が高くなり、加工性や製品の取扱性がよくなる。さらに、膜の長期使用による、膜の部分的劣化に起因する収縮に対して有利である。このため伸度としては、好ましくは10%以上であり、より好ましくは20%以上であり、特に好ましくは30%以上である。本発明の実施例における伸度は20〜65%の範囲であり、非常に好適な範囲にある。
伸度については、高ければ高いほど、加工時や製品とした際の靱性が高くなり、加工性や製品の取扱性がよくなる。さらに、膜の長期使用による、膜の部分的劣化に起因する収縮に対して有利である。このため伸度としては、好ましくは10%以上であり、より好ましくは20%以上であり、特に好ましくは30%以上である。本発明の実施例における伸度は20〜65%の範囲であり、非常に好適な範囲にある。
融点は高いほど高温環境での使用が可能となり、中空糸の耐久性も向上するため、好ましくは200℃以上であり、より好ましくは220℃以上、特に好ましくは240℃以上である。本発明におけるポリケトン中空糸は融点が250〜255℃であり、極めて良好な中空糸膜である。また、熱的安定性も重要であり、熱的安定性に優れているほど耐熱性、耐久性に優れた中空糸膜である。本発明の実施例1では、ポリケトン中空糸は150℃×2時間熱水処理前後の糸長変化率、透水速度変化率がそれぞれ8.8%、1%未満と、ポリケトン中空糸膜が非常に優れた耐熱性を発揮することを示した。
本発明のポリケトン中空糸の製造方法は、ポリケトンを溶解させたドープを、二重管オリフィスの外側の輪状オリフィスから吐出させるのと同時に、内側の円状オリフィスからポリケトンの非溶剤を吐出し、ポリケトンドープを凝固浴にて凝固させることによって中空糸膜を製造する方法であって、ポリケトンを溶解させたドープ中に含まれるポリケトン濃度(PC(重量%))と極限粘度([η](dl/g))との関係が、40≦PC×[η]≦100、かつ5≦PC≦50を満たす範囲とするものである。このような製造方法により、膜構造内に孔の短径が50μm以上であるマクロボイドを含まないポリケトン中空糸を作製することが出来る。
本発明のポリケトン中空糸の製造方法は、ポリケトンを溶解させたドープを、二重管オリフィスの外側の輪状オリフィスから吐出させるのと同時に、内側の円状オリフィスからポリケトンの非溶剤を吐出し、ポリケトンドープを凝固浴にて凝固させることによって中空糸膜を製造する方法であって、ポリケトンを溶解させたドープ中に含まれるポリケトン濃度(PC(重量%))と極限粘度([η](dl/g))との関係が、40≦PC×[η]≦100、かつ5≦PC≦50を満たす範囲とするものである。このような製造方法により、膜構造内に孔の短径が50μm以上であるマクロボイドを含まないポリケトン中空糸を作製することが出来る。
ポリケトンの溶剤としては、得られる中空糸膜の孔の形状、中空糸膜の力学特性、安全性、取扱製の観点から濃厚金属塩溶剤が好適に用いられる。
以下、この濃厚金属塩溶液を溶剤とするポリケトン中空糸膜の製造方法を説明する。
まず、ポリケトンを少なくともハロゲン化亜鉛を含有する溶液に溶解してドープとする。溶剤はハロゲン化亜鉛(例:塩化亜鉛)単独あるいはハロゲン化亜鉛とその他の塩との複合塩の溶液が用いられる。その他の塩としては、ハロゲン化アルカリ金属塩(例:塩化ナトリウム)、ハロゲン化アルカリ土類金属塩(例:塩化カルシウム)等が挙げられる。ポリケトンをこれら溶剤に溶解し、ポリケトンドープが得られる。
このドープを二重管オリフィスの外側の輪状オリフィスから押し出し、内側の円状オリフィスからは、気体またはポリケトンに対して非溶解性の液体(非溶剤)を吐出することが好ましく、非溶剤としては、特に凝固速度の速い水を主成分とする液体が好ましい。また、中空部の形状維持の点からは内側に流す気体及び液体には0.01MPa以上の圧力をかけて吐出することが好ましい。
以下、この濃厚金属塩溶液を溶剤とするポリケトン中空糸膜の製造方法を説明する。
まず、ポリケトンを少なくともハロゲン化亜鉛を含有する溶液に溶解してドープとする。溶剤はハロゲン化亜鉛(例:塩化亜鉛)単独あるいはハロゲン化亜鉛とその他の塩との複合塩の溶液が用いられる。その他の塩としては、ハロゲン化アルカリ金属塩(例:塩化ナトリウム)、ハロゲン化アルカリ土類金属塩(例:塩化カルシウム)等が挙げられる。ポリケトンをこれら溶剤に溶解し、ポリケトンドープが得られる。
このドープを二重管オリフィスの外側の輪状オリフィスから押し出し、内側の円状オリフィスからは、気体またはポリケトンに対して非溶解性の液体(非溶剤)を吐出することが好ましく、非溶剤としては、特に凝固速度の速い水を主成分とする液体が好ましい。また、中空部の形状維持の点からは内側に流す気体及び液体には0.01MPa以上の圧力をかけて吐出することが好ましい。
なお、本発明においてポリケトンに対して非溶解性の液体(非溶剤)とは、該液体に対して本発明の実施例に記載した方法で測定される極限粘度が6.0であるポリケトンを5.0%添加して、80℃、1時間過熱攪拌した後のポリケトン質量減少率が2%未満である液体を意味する。
一方、凝固浴の温度は、得られるポリケトン多孔体中の孔の大きさ・形状を決定する上で重要な要因であり、目的・用途に応じて温度を選定することが必要である。凝固温度が高いほど平均孔径の大きい中空糸膜が得られるが、高すぎるとポリケトン支持体の強度が弱くなる。凝固浴温度が低いほど、平均孔径が小さく強固な構造のポリケトン中空糸膜が得られるが、凝固速度が遅くなり設備が長大になり製造速度が遅くなる。このため、凝固浴温度としては−50℃〜100℃、好ましくは−30℃〜80℃、より好ましくは−10℃〜60℃の範囲内から目的に応じて選定することが望ましい。凝固浴はドープで用いた溶剤に対比して溶解性の劣る溶液が用いられる。通常、水やハロゲン化亜鉛を含有する水溶液または有機溶液が用いられる。
一方、凝固浴の温度は、得られるポリケトン多孔体中の孔の大きさ・形状を決定する上で重要な要因であり、目的・用途に応じて温度を選定することが必要である。凝固温度が高いほど平均孔径の大きい中空糸膜が得られるが、高すぎるとポリケトン支持体の強度が弱くなる。凝固浴温度が低いほど、平均孔径が小さく強固な構造のポリケトン中空糸膜が得られるが、凝固速度が遅くなり設備が長大になり製造速度が遅くなる。このため、凝固浴温度としては−50℃〜100℃、好ましくは−30℃〜80℃、より好ましくは−10℃〜60℃の範囲内から目的に応じて選定することが望ましい。凝固浴はドープで用いた溶剤に対比して溶解性の劣る溶液が用いられる。通常、水やハロゲン化亜鉛を含有する水溶液または有機溶液が用いられる。
凝固速度を速くし、生産性よく凝固を行う場合には、水を10重量%以上含有する溶液が好ましいが、必要に応じてメタノールやアセトン、エチレングリコールなどの有機溶剤を主成分とし、水を10重量%未満で、或いは水を全く含有しない溶液を用いても良い。より好ましくは水を50重量%以上、特に好ましくは水を90重量%以上含有する溶液が望ましい。凝固浴をでた中空糸は、水や硫酸、塩酸、リン酸等の酸性水溶液により中空糸膜中に残存する金属塩を洗浄除去する。金属塩が膜構造内に残存した場合、中空糸膜の力学物性や耐薬品性、耐熱性の低下や変色、血液成分分離膜用途等では、金属が血液中に溶出する等の問題が起こる。
特に、本発明のポリケトン多孔体は内部に金属塩が取り込まれ易いため洗浄を十分に行うことが必要で、最終的に成型体に含まれる金属塩の残量が好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下、特に好ましくは10ppm以下になるまで繰り返し洗浄することが望ましい。洗浄に酸性溶液を用いた場合、引き続き成形体中に残存する酸を洗浄する。洗浄に使用される酸性水溶液の濃度は、塩酸の場合、0.1重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以上であることが望ましい。本発明における酸洗浄では1重量%の塩酸水溶液を使用しているが、さらに高い濃度の酸性水溶液を用いても良い。洗浄後のポリケトン中空糸は孔中が洗浄液で充たされたものであるが、微多孔の平均孔径及び体積割合を制御する目的で孔中の洗浄液を、水や有機溶剤に置換しても良い。洗浄には水を主成分とする溶液を用いることが効率的である。必要に応じてはアルカリ性の溶液で中和洗浄をしても良い。
洗浄後のポリケトン中空糸膜は孔中が洗浄液で充たされたものであるが、この洗浄液を分離ろ過する対象の溶媒に置換すれば、そのまま分離ろ過の用途に用いることも出来る。また、微多孔中の平均孔径及び体積割合を制御する目的で孔中の洗浄液を、水や有機溶剤または孔径保持剤に置換してもよい。この際、ポリケトン中空糸膜の微多孔中に充填される液体の特性として沸点が重要である。沸点が高すぎると、乾燥時にポリケトンが軟化し、微多孔の変形、閉塞が生じる。また、沸点が低すぎると冷却機が必要となり生産コストが増大する。このため、好ましくは沸点が20〜200℃、より好ましくは30〜150℃、さらに好ましくは40〜120℃、特に好ましくは50〜100℃の液体が好ましい。
孔径保持剤を用いる場合には、沸点が50〜500℃の液体が好ましく、具体的には例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等の水溶性化合物が挙げられる。これら孔径保持剤をポリケトン中空糸膜中に任意の濃度で置換し、必要に応じて熱処理、抽出除去をすることによって、平均孔径を制御しても良い。また、場合によっては孔径保持剤で置換せずに引き続き得られたポリケトン中空糸膜を乾燥しても良い。
乾燥時には、乾燥温度を高くしすぎないことは特に重要である。乾燥温度が高すぎるとポリケトンが軟化し孔の変形、閉塞が生じ、本発明のポリケトン中空糸膜が得られなくなる。乾燥温度としては、常圧下では、好ましくは20〜200℃、より好ましくは30℃〜150℃、さらに好ましくは40〜120℃、特に好ましくは50〜100℃である。また、孔中に充填された液体の蒸気圧以下に減圧して低温で乾燥すると、孔の孔径及び体積割合の大きな中空糸膜が得られる。特に、乾燥温度を徐々に下げていく多段乾燥にすると微多孔構造を維持して効率的に乾燥することが出来る。
乾燥時には、乾燥温度を高くしすぎないことは特に重要である。乾燥温度が高すぎるとポリケトンが軟化し孔の変形、閉塞が生じ、本発明のポリケトン中空糸膜が得られなくなる。乾燥温度としては、常圧下では、好ましくは20〜200℃、より好ましくは30℃〜150℃、さらに好ましくは40〜120℃、特に好ましくは50〜100℃である。また、孔中に充填された液体の蒸気圧以下に減圧して低温で乾燥すると、孔の孔径及び体積割合の大きな中空糸膜が得られる。特に、乾燥温度を徐々に下げていく多段乾燥にすると微多孔構造を維持して効率的に乾燥することが出来る。
多段乾燥を行う際の好ましい条件としては、乾燥温度をTとして、乾燥が進むにつれて徐々にTが小さくなることが望ましい。具体的なTの範囲としては、乾燥前に中空糸膜の空隙中に充填されている液体を(B)として、以下の3段階の乾燥が挙げられる。
1:膨潤度≧100%の段階、
液体(B)の沸点+60℃≦T≦200℃
ただし、液体(B)の沸点が140℃以上の場合、T=200℃
2:50≦膨潤度≦100%の段階、
液体(B)の沸点≦T≦200℃
3:膨潤度≦50%の段階、
液体(B)の沸点≦T≦液体(B)の沸点+20℃
ただし、膨潤度とは、液体(B)の質量をB、中空糸膜におけるポリケトンの質量をPとして下式により算出される値である。
膨潤度=B/P×100 (質量%)
1:膨潤度≧100%の段階、
液体(B)の沸点+60℃≦T≦200℃
ただし、液体(B)の沸点が140℃以上の場合、T=200℃
2:50≦膨潤度≦100%の段階、
液体(B)の沸点≦T≦200℃
3:膨潤度≦50%の段階、
液体(B)の沸点≦T≦液体(B)の沸点+20℃
ただし、膨潤度とは、液体(B)の質量をB、中空糸膜におけるポリケトンの質量をPとして下式により算出される値である。
膨潤度=B/P×100 (質量%)
上記乾燥条件の具体的な例としては、常圧で中空糸膜中の液体が水である場合には、膨潤度が100質量%以上では160〜200℃で乾燥し、膨潤度が50〜100質量%では100〜200℃で、膨潤度が50質量%未満では100〜120℃で乾燥する。また、力学強度を高くする目的で、或いは、孔径に異方性を持たせる目的で、乾燥時に張力を印可して1.2〜3倍の延伸を行っても良い。このようにして得られたポリケトン中空糸膜を力学強度及び耐熱性、寸法安定性を高くする目的で、定長熱処理あるいは熱延伸を行っても良い。定長熱処理及び熱延伸は、1段もしくは2段以上の多段で行っても良いが、孔を閉塞しないようにポリケトン中空糸膜の融点−20℃以下の温度で処理することが重要である。
中空糸製造工程で、ポリケトンを溶解させたドープ中のポリマー濃度(PC)とポリマーの極限粘度([η])が膜の構造制御に非常に重要である。PCが高く、かつ[η]が大きい条件でドープを作製し、中空糸を製造することでマクロボイドを含まず、緻密な構造を有する中空糸膜を形成することが出来る。しかし、ポリマーの[η]が大きいと溶剤へのポリマーの溶解性は悪くなり、ポリマー濃度を高くすることは出来ない。[η]が大きすぎるとPCを高く出来ないので、その結果、膜が疎となり、場合によってはマクロボイドを含んだ構造が出来てしまう。また、[η]が小さいとPCの濃度を高めることが出来るが、[η]が小さすぎると、PCが高くてしても分子量が小さいため、強度に乏しい中空糸ができる。膜構造中に短径が50μm以上であるマクロボイドを含まないポリケトン中空糸膜を形成するためには、ドープ中に含まれるポリケトンのPCと[η]との関係が40≦PC×[η]≦100かつ5≦PC≦50を満足することが必要であり、より好ましくは45≦PC×[η]≦60かつ6≦PC≦20であることが望ましい。さらに、ポリケトンの重合度は、極限粘度で0.8〜20dl/gであることが好ましい。得られる多孔体の物性、成形性、重合コストの観点から、より好ましくは1〜10dl/g、もっとも好ましくは2〜8dl/gである。
本発明を、下記の実施例により具体的に説明するが、それらは本発明の範囲を限定するものではない。また、本発明に用いられる各測定値の測定方法は次の通りである。
(1)極限粘度
極限粘度[η]は、次の定義式に基づいて求められる値である。
[η]=lim(T−t)/(t・C) [dl/g]
C→0
ただし、式中のt及びTは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノール及びヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間である。Cは、上記溶液100ml中のグラム単位による溶質質量値である。
(2)繊維の外径・内径
任意の10本以上の繊維について断面を光学顕微鏡にて写真撮影し、それぞれの外径、内径を計測しその平均値を繊維の外径DF、内径DT(μm)とする。 (3)中空率
上記(2)で求められた繊維外径、内径から下記式により中空部の体積割合(中空率)VTを求める。
VT = DT2 / DF2 ×100 (%)
(1)極限粘度
極限粘度[η]は、次の定義式に基づいて求められる値である。
[η]=lim(T−t)/(t・C) [dl/g]
C→0
ただし、式中のt及びTは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノール及びヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間である。Cは、上記溶液100ml中のグラム単位による溶質質量値である。
(2)繊維の外径・内径
任意の10本以上の繊維について断面を光学顕微鏡にて写真撮影し、それぞれの外径、内径を計測しその平均値を繊維の外径DF、内径DT(μm)とする。 (3)中空率
上記(2)で求められた繊維外径、内径から下記式により中空部の体積割合(中空率)VTを求める。
VT = DT2 / DF2 ×100 (%)
(4)微多孔の平均孔径および電子顕微鏡観察方法
ポリケトン中空糸を液体窒素に浸漬冷却した状態で切断し,繊維の横断面切片を調整したあと、電子顕微鏡を用いて、得られた切片の倍率30000倍の写真を膜構造中のランダムな部分から少なくとも10枚以上撮影し、得られたそれぞれの画像の視野内に存在する細孔の孔径を最低10個以上数えた。ここで観察される孔が円形に近ければその円の直径を細孔の径とし、観察された孔が円形では無い場合には、観察されたその孔と同一面積の円の直径とした。そして、それぞれの部分で観察された孔の直径すべての平均を値算出し、平均孔径DP(μm)とした。
また、マクロボイドの有無の判定には、中空糸を液体窒素で浸漬冷却した状態で切断し、繊維の横断面切片を調整し、倍率150倍で拡大した該断面の電子顕微鏡写真によって行った。試料は最低でも5個作製し、5個の試料を観察したときに、短径が50μm以上のマクロボイドが観察されない物を、マクロボイドを含まない膜とした。
ポリケトン中空糸を液体窒素に浸漬冷却した状態で切断し,繊維の横断面切片を調整したあと、電子顕微鏡を用いて、得られた切片の倍率30000倍の写真を膜構造中のランダムな部分から少なくとも10枚以上撮影し、得られたそれぞれの画像の視野内に存在する細孔の孔径を最低10個以上数えた。ここで観察される孔が円形に近ければその円の直径を細孔の径とし、観察された孔が円形では無い場合には、観察されたその孔と同一面積の円の直径とした。そして、それぞれの部分で観察された孔の直径すべての平均を値算出し、平均孔径DP(μm)とした。
また、マクロボイドの有無の判定には、中空糸を液体窒素で浸漬冷却した状態で切断し、繊維の横断面切片を調整し、倍率150倍で拡大した該断面の電子顕微鏡写真によって行った。試料は最低でも5個作製し、5個の試料を観察したときに、短径が50μm以上のマクロボイドが観察されない物を、マクロボイドを含まない膜とした。
(5)膜の空隙率
3cmにカットされた中空糸を水で膨潤させ、さらに中空部にも水が充たされた状態で、余分な水分をふき取り、重量を計測し、内径と外径、そして長さから算出される中空糸の膜構造部分の体積と、ポリケトンの比重1.3、水の比重1を用いて下記式により算出する。
孔の体積割合=(膨潤した膜ポリマー部分の体積×1.3+中空部体積×1−計測した中空糸の重量)/(0.3×膨潤した膜構造部分の体積)
膨潤した膜構造部分の体積(cm3 )は内径と外径から、{(DF2 /4)−(DT2 /4)}×π×糸の長さ(cm)/108 により求められる。
また、中空部体積は(DT2/4)×π×糸の長さ(cm)/108 により求められる。
重量計測は最低10回行い、最大値と最小値を除いた測定値による平均値を用いた。
3cmにカットされた中空糸を水で膨潤させ、さらに中空部にも水が充たされた状態で、余分な水分をふき取り、重量を計測し、内径と外径、そして長さから算出される中空糸の膜構造部分の体積と、ポリケトンの比重1.3、水の比重1を用いて下記式により算出する。
孔の体積割合=(膨潤した膜ポリマー部分の体積×1.3+中空部体積×1−計測した中空糸の重量)/(0.3×膨潤した膜構造部分の体積)
膨潤した膜構造部分の体積(cm3 )は内径と外径から、{(DF2 /4)−(DT2 /4)}×π×糸の長さ(cm)/108 により求められる。
また、中空部体積は(DT2/4)×π×糸の長さ(cm)/108 により求められる。
重量計測は最低10回行い、最大値と最小値を除いた測定値による平均値を用いた。
(6)引張強度、伸度測定
JIS−L−1013に基づいて測定する。繊維を試料長200mmで測定した。試料の断面積は以下の式より求められる値を用いる。
繊維の断面積=3.14×[(外径/2 2−(内径/2)2] (μm2 )
(7)透水速度
透水速度は、中空糸ミニモジュールを作製して評価した。モジュールは、中空糸を15〜25本程度、有効長は15cmとした。モジュールの一方の断面からポンプで蒸留水を送り込み、モジュールの入口圧力、出口圧力の平均を膜圧とした。膜面積は(5)で後述する。一分間のうちに中空糸膜を透過して表面に出てくる水の量を測定し、この量を単位時間、単位膜面積、単位圧力あたりの量に換算して透水速度(m3 /hr・m2 ・kPa)とした。すなわち、下記の式により求められる。一つの試料につきこの測定を2回行い、平均値をその値とした。 透水速度=測定量(m3 )×60/圧力(kPa)・モジュールの膜面積(m2 )
JIS−L−1013に基づいて測定する。繊維を試料長200mmで測定した。試料の断面積は以下の式より求められる値を用いる。
繊維の断面積=3.14×[(外径/2 2−(内径/2)2] (μm2 )
(7)透水速度
透水速度は、中空糸ミニモジュールを作製して評価した。モジュールは、中空糸を15〜25本程度、有効長は15cmとした。モジュールの一方の断面からポンプで蒸留水を送り込み、モジュールの入口圧力、出口圧力の平均を膜圧とした。膜面積は(5)で後述する。一分間のうちに中空糸膜を透過して表面に出てくる水の量を測定し、この量を単位時間、単位膜面積、単位圧力あたりの量に換算して透水速度(m3 /hr・m2 ・kPa)とした。すなわち、下記の式により求められる。一つの試料につきこの測定を2回行い、平均値をその値とした。 透水速度=測定量(m3 )×60/圧力(kPa)・モジュールの膜面積(m2 )
(8)モジュールの膜面積
モジュール中の膜面積(m2 )は、(2)で求められた内径の値より、
内径(μm)×π×有効長(cm)×(モジュールあたりの中空糸本数)×10-8
で求められる値である。
(9)融点
パーキンエルマー社製示差熱測定装置Pyris1を用いて下記条件で測定を行う。サンプルは長さ5mmにカットしたものを用いる。
サンプル質量: 1mg
測定温度 : 30℃→300℃
昇温速度 : 20℃/分
雰囲気 : 窒素、流量=200ml/分
得られる吸発熱曲線の200〜300℃の範囲に観察される最大の吸熱ピークのピークトップ温度を融点とする。
モジュール中の膜面積(m2 )は、(2)で求められた内径の値より、
内径(μm)×π×有効長(cm)×(モジュールあたりの中空糸本数)×10-8
で求められる値である。
(9)融点
パーキンエルマー社製示差熱測定装置Pyris1を用いて下記条件で測定を行う。サンプルは長さ5mmにカットしたものを用いる。
サンプル質量: 1mg
測定温度 : 30℃→300℃
昇温速度 : 20℃/分
雰囲気 : 窒素、流量=200ml/分
得られる吸発熱曲線の200〜300℃の範囲に観察される最大の吸熱ピークのピークトップ温度を融点とする。
(10)熱水処理による糸長変化率
中空糸を耐熱容器中に入った水中に浸し、恒温装置中で2時間熱水処理する。処理温度は、80、150、190℃で行う。最低10本の糸長をそれぞれの温度の処理前後で測定しその平均から、糸長変化を百分率で表す。
(11)バブルポイント
透水速度試験に使用した中空糸ミニモジュールを作製し、水で膨潤させた後水中に浸し、モジュールの片側から空気を送り込み、反対側は密閉した状態とする。空気を1.3kPa/min.の昇圧速度で40kPaになるまで送り込み、膜モジュールの表面から気体が発生するのが観測され始めた時の圧力の値である。
中空糸を耐熱容器中に入った水中に浸し、恒温装置中で2時間熱水処理する。処理温度は、80、150、190℃で行う。最低10本の糸長をそれぞれの温度の処理前後で測定しその平均から、糸長変化を百分率で表す。
(11)バブルポイント
透水速度試験に使用した中空糸ミニモジュールを作製し、水で膨潤させた後水中に浸し、モジュールの片側から空気を送り込み、反対側は密閉した状態とする。空気を1.3kPa/min.の昇圧速度で40kPaになるまで送り込み、膜モジュールの表面から気体が発生するのが観測され始めた時の圧力の値である。
本発明を、下記の実施例により具体的に説明する。
[実施例1]
常法により調整したエチレンと一酸化炭素が完全共重合した極限粘度3.9dl/gのポリケトンポリマーを、塩化亜鉛23質量%/塩化カルシウム29.25質量%/塩化リチウム9.75質量%を含有する水溶液に添加し、70℃で4時間攪拌して溶解し、ポリマー濃度13%のドープを得た。得られたドープを、図1、図2に示すような二重オリフィス管の外側の輪状オリフィスより80℃で吐出し、同時に二重管内側の円形オリフィスからは水を1.24cc/分で吐出した。図1中、外外径=0.5mm、外内径=0.3mm、内内径=0.2mmのサイズである。本発明における二重オリフィス管とは、すべて図1のような形状とサイズを有するものを用いた。オリフィスより吐出されたドープは15mmのエアギャップを経て温度2℃である水凝固浴に押し出され、凝固された。
[実施例1]
常法により調整したエチレンと一酸化炭素が完全共重合した極限粘度3.9dl/gのポリケトンポリマーを、塩化亜鉛23質量%/塩化カルシウム29.25質量%/塩化リチウム9.75質量%を含有する水溶液に添加し、70℃で4時間攪拌して溶解し、ポリマー濃度13%のドープを得た。得られたドープを、図1、図2に示すような二重オリフィス管の外側の輪状オリフィスより80℃で吐出し、同時に二重管内側の円形オリフィスからは水を1.24cc/分で吐出した。図1中、外外径=0.5mm、外内径=0.3mm、内内径=0.2mmのサイズである。本発明における二重オリフィス管とは、すべて図1のような形状とサイズを有するものを用いた。オリフィスより吐出されたドープは15mmのエアギャップを経て温度2℃である水凝固浴に押し出され、凝固された。
引き続き、得られたポリケトン凝固糸を、室温において濃度1質量%の塩酸水溶液中で洗浄し、最後に水で洗浄し、目的のポリケトン中空糸膜を得た。得られた中空糸は、繊維の中央に貫通した円筒形の空隙を有しており、中空率は24.1%であった。膜の平均孔径は0.2μmであった。膜の空隙率は71.5%であった。引張強度は2.1MPa、伸度は36%、融点は254℃、透水速度は6.8×10-3m3 /hr・m2 ・kPaであった。図3、図4と図5にそれぞれ内表面付近の断面写真、膜構造内部の断面写真、外表面付近の断面写真を示す。
また、この中空糸について熱水処理を行った。耐熱用のオートクレーブ中で水に浸し、80℃、150℃、190℃の3条件でそれぞれ2時間処理し、処理前後で試料の糸長の変化率を算出し、強伸度、融点も測定した。150℃で処理した試料については透水速度も測定した。80℃で2時間処理した試料は、糸長の変化率は1.5%、強度は2.07MPa、伸度は33%、融点は253℃であった。150℃で2時間処理した試料は糸長の変化率は8.8%、強度は2.34MPa、伸度は26%、融点は253℃、透水速度は6.8×10-3m3 /hr・m2 ・kPaであった。190℃で2時間処理した試料は糸長の変化率が14.3%、強度が1.8MPa、伸度が9%であった。40kPaまでにバブルポイントは観測されなかった。
また、この中空糸について熱水処理を行った。耐熱用のオートクレーブ中で水に浸し、80℃、150℃、190℃の3条件でそれぞれ2時間処理し、処理前後で試料の糸長の変化率を算出し、強伸度、融点も測定した。150℃で処理した試料については透水速度も測定した。80℃で2時間処理した試料は、糸長の変化率は1.5%、強度は2.07MPa、伸度は33%、融点は253℃であった。150℃で2時間処理した試料は糸長の変化率は8.8%、強度は2.34MPa、伸度は26%、融点は253℃、透水速度は6.8×10-3m3 /hr・m2 ・kPaであった。190℃で2時間処理した試料は糸長の変化率が14.3%、強度が1.8MPa、伸度が9%であった。40kPaまでにバブルポイントは観測されなかった。
[実施例2]
実施例1においてポリケトンポリマーが、極限粘度3.7dl/gであること以外は同様にして、ポリケトン中空糸を得た。得られた中空糸は、中空率が20.6%であった。引張強度は1.89MPa、伸度は34%、融点は254℃、透水速度は8.5×10-3m3 /hr・m2 ・kPaであった。膜の平均孔径は0.7μmであった。空隙率は78.8%であった。40kPaまでにバブルポイントは観測されなかった。
[実施例3]
実施例1においてポリケトンポリマーが、極限粘度2.7、ドープ中のポリマー濃度PCが15%であること以外は同様にしてポリケトン中空糸を得た。得られた中空糸は、中空率が14.1%であった。引張り強度は0.92MPa、伸度は28%、融点が254℃、透水速度が8.0×10-3m3 /hr・m2 ・kPaであった。膜の平均孔径は0.5μmであった。空隙率は76.7%であった。40kPaまでにバブルポイントは観測されなかった。
実施例1においてポリケトンポリマーが、極限粘度3.7dl/gであること以外は同様にして、ポリケトン中空糸を得た。得られた中空糸は、中空率が20.6%であった。引張強度は1.89MPa、伸度は34%、融点は254℃、透水速度は8.5×10-3m3 /hr・m2 ・kPaであった。膜の平均孔径は0.7μmであった。空隙率は78.8%であった。40kPaまでにバブルポイントは観測されなかった。
[実施例3]
実施例1においてポリケトンポリマーが、極限粘度2.7、ドープ中のポリマー濃度PCが15%であること以外は同様にしてポリケトン中空糸を得た。得られた中空糸は、中空率が14.1%であった。引張り強度は0.92MPa、伸度は28%、融点が254℃、透水速度が8.0×10-3m3 /hr・m2 ・kPaであった。膜の平均孔径は0.5μmであった。空隙率は76.7%であった。40kPaまでにバブルポイントは観測されなかった。
[実施例4]
実施例2において内液に2質量%の塩化カルシウム及び1.1%質量%の塩化亜鉛、0.1質量%の塩酸を有する塩溶液を用いること以外は同様にしてポリケトン中空糸を得た。得られた中空糸は、中空率が29.1%、強度が1.78MPa、伸度が29%、融点が253℃、透水速度が9.5×10-3m3 /hr・m2 ・kPaであった。膜の平均孔径は0.9μmであった。空隙率は80.2%であった。40kPaまでにバブルポイントは観測されなかった。
[実施例5]
実施例1においてポリケトンポリマーが、極限粘度4.8dl/g、ドープ中のポリマー濃度PCが10%であること以外は同様にしてポリケトン中空糸を得た。得られた中空糸は、中空率が18.5%、強度が1.21MPa、伸度が59.4%、融点が255℃、透水速度が10.4×10-3m3 /hr・m2 ・kPaであった。膜の平均孔径は1.0μmであった。空隙率は82.3%であった。40kPaまでにバブルポイントは観測されなかった。
実施例2において内液に2質量%の塩化カルシウム及び1.1%質量%の塩化亜鉛、0.1質量%の塩酸を有する塩溶液を用いること以外は同様にしてポリケトン中空糸を得た。得られた中空糸は、中空率が29.1%、強度が1.78MPa、伸度が29%、融点が253℃、透水速度が9.5×10-3m3 /hr・m2 ・kPaであった。膜の平均孔径は0.9μmであった。空隙率は80.2%であった。40kPaまでにバブルポイントは観測されなかった。
[実施例5]
実施例1においてポリケトンポリマーが、極限粘度4.8dl/g、ドープ中のポリマー濃度PCが10%であること以外は同様にしてポリケトン中空糸を得た。得られた中空糸は、中空率が18.5%、強度が1.21MPa、伸度が59.4%、融点が255℃、透水速度が10.4×10-3m3 /hr・m2 ・kPaであった。膜の平均孔径は1.0μmであった。空隙率は82.3%であった。40kPaまでにバブルポイントは観測されなかった。
[実施例6]
実施例5において内液に実施例4で使用した組成の塩溶液を用いること以外は同様にしてポリケトン中空糸を得た。得られた中空糸は、中空率が20.8%、強度が0.82MPa、伸度が64.5%、融点が254℃、透水速度が13.5×10-3m3 /hr・m2 ・kPaであった。膜の平均孔径は1.2μmであった。空隙率は86.2%であった。40kPaまでにバブルポイントは観測されなかった。
[実施例7]
実施例2において内液にジメチルアセトアミド(DMAc)を用いること以外は同様にしてポリケトン中空糸を得た。得られた中空糸は、中空率が30.1%、強度が1.73MPa、伸度は50%、融点が254℃、透水速度が11.8×10-3m3 /hr・m2 ・kPaであった。膜の平均孔径は2.2μmであった。空隙率は85.8%であった。40kPaまでにバブルポイントは観測されなかった。
実施例5において内液に実施例4で使用した組成の塩溶液を用いること以外は同様にしてポリケトン中空糸を得た。得られた中空糸は、中空率が20.8%、強度が0.82MPa、伸度が64.5%、融点が254℃、透水速度が13.5×10-3m3 /hr・m2 ・kPaであった。膜の平均孔径は1.2μmであった。空隙率は86.2%であった。40kPaまでにバブルポイントは観測されなかった。
[実施例7]
実施例2において内液にジメチルアセトアミド(DMAc)を用いること以外は同様にしてポリケトン中空糸を得た。得られた中空糸は、中空率が30.1%、強度が1.73MPa、伸度は50%、融点が254℃、透水速度が11.8×10-3m3 /hr・m2 ・kPaであった。膜の平均孔径は2.2μmであった。空隙率は85.8%であった。40kPaまでにバブルポイントは観測されなかった。
[実施例8]
実施例1においてポリケトンポリマーが、極限粘度2.3、ドープ中のポリマー濃度PCが18%であること以外は同様にしてポリケトン中空糸を得た。得られた中空糸は、中空率が25.7%、強度が0.75MPa、伸度は27%、融点が254℃、透水速度が2.4×10-3m3 /hr・m2 ・kPaであった。 膜の平均孔径は0.09μmであった。空隙率は66.8%であった。40kPaまでにバブルポイントは観測されなかった。
実施例1においてポリケトンポリマーが、極限粘度2.3、ドープ中のポリマー濃度PCが18%であること以外は同様にしてポリケトン中空糸を得た。得られた中空糸は、中空率が25.7%、強度が0.75MPa、伸度は27%、融点が254℃、透水速度が2.4×10-3m3 /hr・m2 ・kPaであった。 膜の平均孔径は0.09μmであった。空隙率は66.8%であった。40kPaまでにバブルポイントは観測されなかった。
[実施例9]
実施例2において、室温中、水で酸を洗浄した後、60℃の20%グリセリン水溶液中で2時間糸を処理し、続けて80℃で3時間乾燥すること以外は同様にして、ポリケトン中空糸を得た。得られた中空糸は、中空率が21.8%、強度が2.4MPa、伸度は35%、融点が254℃、透水速度が3.4×10-3m3/hr・m2・kPaであった。膜の平均孔径は0.02μmであった。空隙率は29%であった。40kPaまでにバブルポイントは観測されなかった。
[比較例1]
実施例1においてポリケトンポリマーが、極限粘度4.2dl/g、ドープ中のポリマー濃度PCが8%であること以外は同様にしてポリケトン中空糸膜を得た。得られた中空糸膜は、その構造中に多数のマクロボイド(1視野中に72μm、127μm、152μm)を有するものであった。この中空糸膜のバブルポイントは4.7kPaと、全く不十分で、ピンホールが存在していることが示唆された。
実施例2において、室温中、水で酸を洗浄した後、60℃の20%グリセリン水溶液中で2時間糸を処理し、続けて80℃で3時間乾燥すること以外は同様にして、ポリケトン中空糸を得た。得られた中空糸は、中空率が21.8%、強度が2.4MPa、伸度は35%、融点が254℃、透水速度が3.4×10-3m3/hr・m2・kPaであった。膜の平均孔径は0.02μmであった。空隙率は29%であった。40kPaまでにバブルポイントは観測されなかった。
[比較例1]
実施例1においてポリケトンポリマーが、極限粘度4.2dl/g、ドープ中のポリマー濃度PCが8%であること以外は同様にしてポリケトン中空糸膜を得た。得られた中空糸膜は、その構造中に多数のマクロボイド(1視野中に72μm、127μm、152μm)を有するものであった。この中空糸膜のバブルポイントは4.7kPaと、全く不十分で、ピンホールが存在していることが示唆された。
膜構造の対象性、かつ糸の強度、耐熱性、耐久性を兼ね備えた中空糸膜であり、分離膜用途、具体的には汚水処理、含油廃水処理、工業用純水の製造、果汁の処理などの水溶性ろ過膜、有機液体中の不純物除去、有機液体の回収などの有機溶液ろ過膜、またイオン性液体の透過膜、さらには液体や体液の透析膜などの用途に非常に有用であり、特に高温、高圧にさらされるような条件下での使用が予想される工場等での利用に有利である。
1:ポリケトンドープが流れる孔
2:ポリケトンの非溶剤である内液が流れる孔
3:ポリケトンの非溶剤である内液が流れる部分
4:ポリケトンドープが流れる部分
2:ポリケトンの非溶剤である内液が流れる孔
3:ポリケトンの非溶剤である内液が流れる部分
4:ポリケトンドープが流れる部分
Claims (3)
- ポリケトンを溶解させたドープを、二重管オリフィスの外側の輪状オリフィスから吐出させるのと同時に、内側の円状オリフィスからポリケトンの非溶剤を吐出し、ポリケトンドープを凝固浴にて凝固させることによって中空糸膜を製造する方法であって、ポリケトンドープ中に含まれるポリケトン濃度(PC(重量%))と極限粘度([η](dl/g))との関係が、40≦PC×[η]≦100、かつ5≦PC≦50を満たす範囲であることを特徴とするポリケトン中空糸膜の製造方法。
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- 2003-11-20 JP JP2003390107A patent/JP2005144412A/ja active Pending
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