JP2004267833A - ポリケトン多孔体 - Google Patents
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Abstract
【課題】、微細な孔を多量に含有していながら、力学特性に優れ、かつ、製造時、後加工時および輸送時に破断や破損をしないポリケトン多孔体およびその製造方法を提供すること
【解決手段】オレフィンと一酸化炭素が共重合したポリケトンから構成された多孔体であって、平均孔径が0.001〜50μmであり、多孔体中の孔の体積割合が20〜90vol%であり、破断点伸度が30%以上であることを特徴とするポリケトン多孔体。
【選択図】 選択図なし。
【解決手段】オレフィンと一酸化炭素が共重合したポリケトンから構成された多孔体であって、平均孔径が0.001〜50μmであり、多孔体中の孔の体積割合が20〜90vol%であり、破断点伸度が30%以上であることを特徴とするポリケトン多孔体。
【選択図】 選択図なし。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、優れた力学特性を有するポリケトン多孔体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、一酸化炭素とオレフィンをパラジウムやニッケルを触媒として重合させることにより、一酸化炭素とオレフィンが実質完全に交互共重合した脂肪族ポリケトンが得られることが見いだされた。このポリケトンからなる繊維、フィルムおよび樹脂は高結晶性で、優れた高力学物性、高融点、高ガスバリアー性、耐薬品性等の特性を有し、次世代の汎用高分子材料として期待されている。
【0003】
一方、これら汎用材料以外では、中空糸、微多孔膜等の内部や表面に微細な孔を有する多孔体に成形することにより、ポリエチレン、PTFE等の既存の樹脂からなる多孔体では得ることのできなかった高力学特性、高耐熱性および高耐薬品性の特性を兼ね備えた分離膜が得られることが期待される。
ポリケトン分離膜を製造する方法としては、相分離法、延伸開孔法、粒子を添加し溶媒を抽出除去する方法等が挙げられる。20vol%以上の高空隙率でありながら高力学特性を有するポリケトン多孔体を得る場合には、高分子量のポリケトンを使用できる相分離法が有効な製造法である。
【0004】
相分離法によるポリケトン多孔体に関しては、特許文献1において、ポリケトンをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、イソプロパノール、アセトン、水等の非溶媒中にキャストした後に、溶媒であるHFIPを非溶媒と置換したものが開示されている。しかしながら、この文献では、ポリケトンの多孔体が得られることしか記載されておらず、高い破断点伸度を有するポリケトン多孔体に関する知見、非溶媒中で凝固して得られた多孔体から置換した非溶媒を除去する方法等については何の示唆もなされていない。
【0005】
特許文献2には、ポリケトンを塩化亜鉛等の金属塩溶液に溶解した後に、水等の非溶媒中に押し出して相分離によって多孔体とし、引き続き、水、tert−ブチルアルコール等の沸点が20〜200℃の非溶媒に置換した後に、非溶媒の沸点以上の温度で乾燥処理して得られるポリケトン多孔体が開示されている。しかしながら、この文献の方法で空隙率の大きい多孔体を得るには、非溶媒で置換した多孔体に凍結乾燥、減圧乾燥等の処理を施すことが必要である。得られたポリケトン多孔体は高強度であるものの非常に脆く、特に破断点伸度が小さい問題がった。また、この文献に記載の方法は、多量の液体窒素や減圧容器を用いなければならず、処理工程が煩雑であったり、処理装置が重厚化する等の問題があった。以上のように、この文献においては、高空隙率でありながら、高伸度、かつ、高タフネスを有するポリケトン多孔体およびその製造方法に関しては一切示されていない。
【0006】
特許文献3においても、ポリケトン多孔体の発明が開示されているが、この文献では、空隙率が20vol%以上の高空隙率で、破断点伸度が30%以上の高力学特性のポリケトン多孔体については一切記載されていない。
以上のように、高空隙率であるにもかかわらず、高い破断点伸度を有するポリケトン多孔体およびこの多孔体を効率的、かつ、生産性よく製造する方法は一切知られていない。
【0007】
【特許文献1】
特開平2−4431号公報
【特許文献2】
特開2002−348401号公報
【特許文献3】
特開2000−198866号公報
【0008】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、微細な孔を多量に含有していながら、力学特性に優れ、かつ、製造時、後加工時および輸送時に破断や破損をしないポリケトン多孔体およびその製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1) オレフィンと一酸化炭素が共重合したポリケトンから構成された多孔体であって、平均孔径が0.001〜50μmであり、多孔体中の孔の体積割合が20〜90vol%であり、破断点伸度が30%以上であることを特徴とするポリケトン多孔体。
(2) 平均孔径が0.01〜10μmであり、多孔体中の孔の体積割合が30〜80vol%であり、破断点伸度が40%以上であることを特徴とする(1)に記載のポリケトン多孔体。
(3) 多孔体が繊維であることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリケトン多孔体。
(4) 多孔体が長手方向に貫通する孔を一つ以上有する中空糸であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載のポリケトン多孔体。
(5) 中空部の割合が10〜70vol%であることを特徴とする(4)に記載のポリケトン中空糸。
(6) 多孔体がフィルムであることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリケトン多孔体。
【0010】
(7) (1)に記載のポリケトン多孔体の製造方法であって、溶媒(A)にポリケトンを溶解したドープを凝固剤(B)中に押出して固化させて多孔体とした後に、多孔体を処理剤(D)で処理して多孔体内部に孔径保持剤(C)を含有させ、次いで、40〜250℃で加熱処理をする工程を含むことを特徴とするポリケトン多孔体の製造方法。
ただし、上記(A)〜(D)は,以下のとおりである。
(A)ポリケトンを溶解する能力のある液体
(B)液体(A)と相溶性があり、ポリケトンに対して非溶解性の液体
(C)沸点が120℃以上である物質
(D)ポリケトンを溶解したドープを凝固剤(B)中に押出して固化させた多孔体中に含まれている液体と置換可能な液体に、孔径保持剤(C)を1wt%以上溶解させた溶液
【0011】
(8) 溶媒(A)がハロゲン化亜鉛を含有する水溶液であり、凝固剤(B)が水を50wt%以上含有する水溶液であり、孔径保持剤(C)が沸点が120℃以上の水溶性化合物であり、処理剤(D)が水を20wt%以上含有する水溶液であることを特徴とする(7)に記載のポリケトン多孔体の製造方法。
(9) 孔径保持剤(C)が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エーテル基、エステル基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する有機化合物であることを特徴とする(7)または(8)に記載のポリケトン多孔体の製造方法。
(10) 孔径保持剤(C)が、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、メチルセロソルブおよびエチルセロソルブから選ばれる少なくとも1種の化合物を1wt%以上含有する液体であることを特徴とする(7)〜(9)のいずれか1つに記載のポリケトン多孔体の製造方法。
【0012】
(11) ポリケトンを溶解したドープを凝固剤(B)中に押出して固化させた多孔体中に含まれている液体と置換可能な液体が、水、アルコール、ケトンおよびエーテルから選ばれる少なくとも1種を含む液体である(7)に記載のポリケトン多孔体の製造方法。
(12) 処理剤(D)で処理した後に、ポリケトン多孔体中の孔径保持剤(C)の量が1〜90vol%となるように加熱処理する工程を含むことを特徴とする(7)〜(11)のいずれか1つに記載のポリケトン多孔体の製造方法。
(13) 加熱処理後に、ポリケトン多孔体中に残存する孔径保持剤(C)を、ポリケトン多孔体に対して1wt%未満となるまで抽出除去する工程を含むことを特徴とする(7)〜(12)のいずれか1つに記載のポリケトン多孔体の製造方法。
【0013】
本発明のポリケトン多孔体を構成するポリマーは、オレフィンと一酸化炭素の共重合体である。強度、寸法安定性、耐熱性、耐薬品性等の観点から、エチレンと一酸化炭素が結合した化学式(1)で示す1−オキソトリメチレンを主たる繰り返し単位とすることが好ましい。具体的には90モル%以上が1−オキソトリメチレンであることが好ましい。
【0014】
【化1】
【0015】
ポリケトン分子中に、必要に応じて、プロペン、ヘキセン、シクロヘキセン等のオレフィンやスチレン、酢酸ビニル等の不飽和炭化水素を有する化合物と一酸化炭素の結合した単位を有していてもよい。
20モル%以下の割合であれば、オレフィンと一酸化炭素の共重合したもの以外の繰り返し単位、例えば、ヒドロキシ、エステル、アミド、エーテル、カルボキシ、スルホキシ等の基を有する繰り返し単位が入っていてもよい。
【0016】
本発明に用いるポリケトンの分子量には制限がないが、得られる多孔体の力学特性および成形性の観点から、極限粘度は1.0〜20.0dl/gが好ましく、より好ましくは2.0〜10.0dl/gである。
本発明のポリケトン多孔体は微多孔性で、多孔体の平均孔径は0.001〜50μmであり、多孔体中の孔の体積割合(以下、空隙率、ということがある)が20〜90vol%である。多孔体の孔の体積割合とは、ポリケトン多孔体の全体積に占める孔部の体積の割合である。ただし、多孔体が繊維であって、内部に繊維軸方向に貫通した空隙を有する中空糸の場合には、中空部を除いた体積に占める孔部の体積の割合を、多孔体の孔の体積割合とする。多孔体の孔の平均孔径および孔の体積分率は、後に述べる方法により測定される。
【0017】
平均孔径が0.001μm未満の場合、透過性能が著しく低下し、分離膜としての機能が不十分となる。平均孔径が50μmを越える場合、支持体であるポリケトンの力学物性が低下し、多孔体は脆弱になる。
ポリケトン多孔体中の孔の体積割合は多ければ多いほど、分離膜としては時間あたりの分離速度が速くなり好ましいが、孔の占める体積割合が90%を越えるとポリケトン多孔体の力学物性の低下が著しくなる。また、空隙率が20vol%未満では分離性能が低下する。このため、空隙率は20〜90vol%であることが必要であり、好ましくは25〜80vol%、より好ましくは30〜70vol%である。
【0018】
多孔体の孔はそれぞれ独立した孔であっても、隣接する孔同士が連結したものであってもよい。強度の観点からは独立孔であることが好ましいが、分離膜として用いる場合には分離効率の観点から隣接する孔同士が連結したものが好ましい。
本発明のポリケトン多孔体は、破断点伸度が30%以上である。破断点伸度が高いほど、高い負荷の用途に用いることが可能となる。また、製造時の破断や毛羽等の工程上のトラブルが減少し、モジュール化等の後加工時や輸送時に破損や破断等の欠陥が発生しにくく、取り扱い性が容易となり、欠陥の少ない高品質の製品が得られる。工業的に多量のポリケトン多孔体を取り扱うことができるためには、破断点伸度としては30%以上であることが必要であり、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上である。
【0019】
本発明においてポリケトン多孔体とは、繊維、フィルム、棒、ブロック、球、筒、鍋状物、布、織編物、シート、多層積層物等のポリケトンからなる成形体であって、内部および/または表面に微細な空隙が多数存在する成形体を意味する。分離膜用途として用いる場合には、繊維状またはフィルム状として用いられる。
繊維として用いる場合は、そのまま微多孔性繊維材料として、または微多孔内に機能性化合物を保持させて機能性繊維材料として、さらには内部に少なくとも一つの長手方向に貫通した空隙を有する中空糸膜として用いることができる。
【0020】
中空糸膜として用いる場合、内部に長手方向に貫通した空隙(中空部)の割合には制限はないが、少なすぎると膜の分離効率が低下し、多すぎると中空糸の力学特性が低下するため、好ましくは10〜70vol%、より好ましくは20〜60vol%である。さらに、力学特性および膜の分離性能の観点から、繊維の全体積に対する微多孔部の体積と中空部の体積の和が、好ましくは30〜95vol%、より好ましくは40〜80vol%である。繊維内部にある中空部の数には制限はなく1本であってもまた複数本であってもよい。
【0021】
ポリケトン多孔体が繊維の場合、その外径には制限はないが、1〜10000μmの範囲が一般的であり、中空糸膜として用いる場合は100〜5000μmの範囲が好ましい。繊維は1本で用いても、またマルチフィラメントとして用いてもよく、長繊維または短繊維として用いてもよい。繊維の断面は、円、楕円、三角、星形、アルファベット型等の公知の形状を適用することができる。
ポリケトン多孔体をフィルムとして用いる場合、フィルムの厚みには制限はなく、用途に応じて任意の厚みとすることができるが、通常、0.1〜1000μmである。
【0022】
ポリケトン多孔体に望まれる特性としては、引っ張り強度、沸水収縮率および融点が挙げられる。引っ張り強度は、高ければ高いほど支持体であるポリケトンの量を減らして、孔部および中空部の割合を増やすことが可能となり、より効率的な分離ができる。このため、引っ張り強度は、好ましくは1MPa以上、より好ましくは10MPa以上である。
本発明の多孔体を水の分離膜として用いる場合、水に対して膨潤および変形しないことが重要である。水に対する寸法安定性のパラメーターとして沸水収縮率がある。この値が小さいほど、水および熱に対して寸法安定性が優れることを意味し、具体的には−3〜3%であることが好ましく、より好ましくは−1〜1%、最も好ましくは−0.3〜0.3%である。
【0023】
ポリケトン多孔体の融点は、高いほど高温環境に曝される用途での展開が可能となるため、好ましくは200℃以上、より好ましくは220℃以上、最も好ましくは240℃以上である。
さらに、耐熱性、耐薬品性および安全性の観点から、ポリケトン多孔体中に含まれる亜鉛、カルシウム等の金属含量は少ないことが望ましく、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは10ppm以下である。
【0024】
本発明のポリケトン多孔体の製造方法に係る発明は、以下のとおりである。
すなわち、オレフィンと一酸化炭素が共重合したポリケトンから構成された多孔体であって、平均孔径が0.001〜50μmであり、多孔体中の孔の体積割合が20〜90vol%であり、破断点伸度が30%以上であることを特徴とするポリケトン多孔体の製造方法であって、溶媒(A)にポリケトンを溶解したドープを、凝固剤(B)中に押出して固化させて多孔体とした後に、多孔体を処理剤(D)で処理して多孔体内部に孔径保持剤(C)を含有させ、次いで、40〜250℃で加熱処理をする工程を含むことを特徴とするポリケトン多孔体の製造方法である。
ただし、上記の(A)〜(D)は、以下のとおりである。
(A)ポリケトンを溶解する能力のある液体
(B)液体(A)と相溶性があり、ポリケトンに対して非溶解性の液体
(C)沸点が120℃以上である物質
(D)ポリケトンを溶解したドープを凝固剤(B)中に押出して固化させた多孔体中に含まれている液体と置換可能な液体に、孔径保持剤
(C)を1wt%以上溶解させた溶液
【0025】
この方法において、ポリケトンは、まず、ポリケトンを溶解する能力のある液体(A)に溶解される。ポリケトンを溶解する能力のある液体とは、極限粘度6.0dl/gのポリケトンを液体に対して5wt%添加して、80℃、1時間加熱攪拌した後のポリケトンの質量減少率が2wt%以上である液体を意味する。具体的には、液体(A)として、ヘキサフルオロイソプロパノール、m−クレゾール、塩化亜鉛水溶液等の公知のポリケトンの溶剤が挙げられる。安全性、コストおよび回収の容易性の観点から、塩化亜鉛を含有する水溶液が好ましい。塩化亜鉛水溶液を用いる場合、必要に応じて、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、ヨウ化亜鉛等のハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属やチオシアン酸カルシウム、チオシアン酸亜鉛等のチオシアン酸金属塩等の金属塩を混合してもよい。
【0026】
ポリケトンを液体(A)に溶解した溶液(以下、ドープ、ということがある)において、ポリマー濃度を高くすると、多孔体の支持体であるポリケトンは密に、孔は微細となり、孔の体積割合を小さくすることができる。一方、ドープ中のポリマー濃度が低いと、支持体であるポリケトンは疎で、孔の体積割合を大きくすることができる。ポリマー濃度が高すぎると、溶剤への均一な溶解が困難となり、ポリマー濃度が低すぎると、ポリケトン支持体が不連続となり成形体の強度が低下するため、ドープ中のポリマー濃度は1〜75wt%が好ましく、より好ましくは2〜50wt%、最も好ましくは3〜30wt%である。
【0027】
ポリケトンドープを、紡糸口金、フィルムダイ等、任意の形状の金型から、凝固剤(B)中に押し出すことにより、相分離によってポリケトン多孔体が形成される。紡糸口金およびダイの形状は限定されず、公知のものを適用できる。中空糸型の多孔体を製造する場合、紡口として、二重管オリフィス、C型オリフィス等の公知のものを適用できる。二重管オリフィスを用いる場合、外側の輪状オリフィスからはポリケトンドープを、また、内側の円状オリフィスからは、気体またはポリケトンに対して非溶解性の液体(非溶剤)を吐出することが好ましく、非溶剤としては、凝固速度の速い、水を主成分とする液体が好ましい。
【0028】
本発明に用いられる凝固剤(B)は、液体(A)と相溶性があり、ポリケトンに対して非溶解性である液体であることが必要である。ポリケトンに対して非溶解性である液体とは、極限粘度6.0dl/gのポリケトンを液体に対して5wt%添加して、80℃、1時間加熱攪拌した後のポリケトンの質量減少率が2%未満である液体を意味する。凝固剤(B)が液体(A)と相溶性がない場合には、液体(A)が金型から押し出されたドープから凝固浴側に溶出することができず、多孔質のポリケトン成形体を得ることが困難となる。凝固剤(B)がポリケトンに対して溶解性である場合、凝固浴中でポリケトンを任意の形状に固化させることが困難となる。
【0029】
凝固剤(B)は、液体(A)の種類により異なるため、一概に規定することはできないが、例えば、溶剤が塩化亜鉛を含有する水溶液の場合、水、メタノール、アセトンおよびこれらの混合溶液、少量の金属塩を含有する溶液等が挙げられる。多孔体の性状および回収性の観点から、水、またはポリケトンを溶解しない程度の少量の金属塩を含有する金属塩水溶液が好ましい。得られる多孔体の構造、溶剤回収および生産性の観点から、水を50wt%以上含有する金属塩水溶液がより好ましい。
凝固剤(B)中で相分離させて得られたポリケトン多孔体の孔の中には、凝固剤(B)と、場合によっては若干量の液体(A)が含まれているため、必要に応じて洗浄処理を行い、不要な成分を洗浄除去する。この後のポリケトン多孔体の寸法安定性を維持する目的で、凝固剤(B)の沸点未満の温度で加熱処理を施してもよい。
【0030】
このようにして得られたポリケトン多孔体を、引き続き、処理剤(D)で処理をして、多孔体の孔内部の液体を処理剤(D)に置換し、後で述べる孔径保持剤(C)を多孔体の孔内部に含有させる。
【0031】
処理剤(D)は、ポリケトンを溶解したドープを凝固剤(B)中に押出して固化させた多孔体中に含まれている液体と置換可能な液体に、孔径保持剤(C)を1wt%以上溶解させた溶液である。このような置換可能な液体としては、多孔体中に含まれている凝固剤等と同じまたはそれと相溶性のある液体が好ましく、例えば、水、アルコール、ケトンおよびエーテルから選ばれる少なくとも1種の液体を含有する液体が挙げられ、中でも、水、メタノール、エタノールおよびアセトンがより好ましい。置換可能な液体中に含まれる、水、アルコール、ケトンおよびエーテルから選ばれる少なくとも1種の液体の割合は20wt%以上が好ましく、50wt%以上がより好ましい。
【0032】
すなわち、ポリケトンの凝固および洗浄は、凝固性、取り扱い性およびコストの観点から、水、アルコール、ケトンおよびエーテルから選ばれる少なくとも一種の溶液で行うことが有利である。このため、凝固および洗浄までの工程で得られるポリケトン多孔体は、孔の内部に上記の溶液を含んでいるため、孔の内部まで処理剤を効率的に置換するためには、処理剤も、水、アルコール、ケトンおよびエーテルから選ばれる少なくとも1種の液体であることが好ましい。
【0033】
また、凝固および洗浄に水、アルコール、ケトンおよびエーテルのいずれも含まない溶剤を使用した場合でも、取り扱い性、安全性、コストの観点から処理剤は水、アルコール、ケトンおよびエーテルを含有する溶液から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。ただし、凝固および洗浄で用いた溶剤と処理剤との相溶性が低い場合、処理剤で置換する前に、一旦、凝固、洗浄で用いた溶液と処理剤の双方と相溶性のある溶液で置換することが必要である。
【0034】
処理剤(C)の置換は、多孔体内部に含まれる液体成分の少なくとも50vol%が処理剤(C)となるまで行うことが好ましく、より好ましくは80vol%以上、最も好ましくは90vol%以上となるまで置換処理を行う。
処理剤(D)中に含まれる孔径保持剤(C)は1wt%以上であることが必要である。孔径保持剤の濃度が1wt%未満の場合、その後の乾燥処理によって多孔体の孔が収縮し、空隙率が20vol%以上の多孔体を得ることが困難となる。孔径保持剤の濃度は好ましくは1〜100wt%、より好ましくは10〜100wt%、最も好ましくは20〜100wt%である。
【0035】
孔径保持剤(C)は120℃以上の沸点を有することが必要である。処理剤(D)で処理されたポリケトン多孔体は、この後、乾燥加熱処理を行い、内部の液体を蒸発除去する。この際、多孔質構造を維持するためには、孔径保持剤(C)の少なくとも一部を多孔体内部に残留させ、孔径保持剤(C)以外の液体を蒸発除去する必要がある。孔径保持剤(C)以外の液体と共沸することなく効率的に孔径保持剤(C)を多孔体中に残留させるには、孔径保持剤(C)は、沸点が120℃以上であることが必要であり、好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上である。
【0036】
回収性および取り扱い性の観点から、ポリケトン多孔体の製造は、水を主成分とする水溶液で処理することが有利である。この場合、孔径保持剤(C)は、水溶性の物質であることが必要であり、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エーテル基、エステル基、アミノ基の群から選ばれる少なくとも1種の基を有する、沸点120℃以上の有機化合物が好ましい。具体的な好ましい化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ソルビトール、アジピン酸等が挙げられる。
【0037】
処理剤(D)による処理方法には制限はないが、多孔体内部まで処理剤が置換するように、ポリケトン多孔体を処理剤(D)中で浸漬処理または加熱浸漬処理する方法、処理剤(D)が環流する環境下にポリケトン多孔体を配置する方法、ポリケトン多孔体が処理剤(D)中に浸漬した状態で超音波や振動を加える方法等が好ましい。
処理剤(D)で置換処理を行ったポリケトン多孔体を、40〜250℃の温度で加熱処理を行う。加熱処理温度が40℃未満では、多孔体中の孔径保持剤(C)以外の液体の蒸発除去に長い時間を要し、生産性が低下する。加熱処理温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上である。一方、加熱処理温度は250℃以下であることが必要である。加熱処理温度が250℃を越える場合、ポリケトンの溶融により孔径の保持が困難となる。加熱処理温度は、好ましくは、220℃以下、より好ましくは200℃以下である。孔径保持剤(C)の沸点が250℃未満の場合、孔径保持の観点から孔径保持剤(C)の沸点未満の温度で加熱処理することが好ましい。
【0038】
加熱処理後のポリケトン多孔体の孔径保持剤(C)の残存量は、平均孔径および空隙率に影響するため、加熱処理後の孔径保持剤(C)の残存量は、好ましくは、ポリケトンに対して1〜90vol%、より好ましくは10〜85vol%、最も好ましくは20〜80vol%となるように、処理剤(D)中の孔径保持剤(C)の濃度、加熱処理温度、時間等を調整する。
ポリケトン多孔体を高温下で使用する場合には、加熱処理の後半に、使用時の温度以上の温度で加熱処理を施すことにより、高温使用時の寸法安定性が向上するので好ましい。
【0039】
このようにして得られたポリケトン多孔体は、内部に孔径保持剤を含んだ状態のままであり、このまま、または孔径保持剤を抽出除去して使用することができる。孔径保持剤の抽出除去は、ポリケトン多孔体を、水、アルコール等の孔径保持剤と相溶性のある液体で洗浄処理することにより容易に行うことができる。抽出除去を行う場合は、ポリケトン多孔体中の孔径保持剤の量をポリケトンに対して、好ましくは1wt%以下、より好ましくは0.1wt%以下にする。抽出除去の条件としては、例えば、孔径保持剤にグリセリンまたはエチレングリコールを用いる場合には、20〜100℃の温水で10分間以上、好ましくは30分以上の環流処理を行う。
【0040】
本発明のポリケトン多孔体は、高負荷、高靱性の要求される分離膜用途に非常に有用である。さらに、高耐熱性、高寸法安定性、高耐薬品性を具備し、水や血液、電解質液、各種薬液の分離膜として有用である。
【0041】
【発明の実施の形態】
本発明を、下記の実施例により具体的に説明するが、それらは本発明の範囲を限定するものではない。
本発明に用いられる各測定値の測定方法は次の通りである。
(1)極限粘度
極限粘度[η]は、次の定義式に基づいて求められる値である。
式中のtおよびTは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノールおよびヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間である。Cは、上記溶液100ml中のグラム単位による溶質質量値である。
【0042】
(2)繊維の外径
任意の10本の繊維について、外径を光学顕微鏡にて写真撮影し、それぞれの外径を計測して、その平均値を繊維の外径DF(μm)とする。
(3)中空部の外径
中空糸の任意の5カ所の横断面を光学顕微鏡にて写真撮影し、それぞれの中空部の外径を計測して、その平均値を中空部の外径DT(μm)とする。
(4)フィルムの厚み
フィルムを幅5mm、長さ100mmの短冊状に切り、任意の10片の短冊について光学顕微鏡写真を撮影し、それぞれの厚みを計測して、その平均値をフィルムの厚みDM(μm)とする。
【0043】
(5)微多孔の平均孔径
孔径保持剤を使用した場合は、ポリケトン多孔体の内部にある孔径保持剤を水で抽出除去後、孔径保持剤を使用していない場合はそのまま、液体窒素に浸漬し凍結試料とする。凍結試料を試料の表面から垂直方向に切断し、多孔体の横断面切片を調製する。試料が中空糸の場合、図1に示すように、中空糸1は、膜部2および中空糸の長手方向に貫通する中空部3を有する。この中空糸を、糸の長手方向に対して垂直に切断して切片を調製する。試料がフィルムの場合、図2に示すフィルムの側面5に対して垂直に切断し、横断面6を有する切片を調製する。電子顕微鏡を用いて、得られた切片の倍率500〜50000倍の写真(画像)を撮影する。
【0044】
撮影したネガ画像を画像解析装置(IP1000−PC:旭化成社製)を用いて、以下の方法で計測する。スキャナー(JX−330)を使用して、ネガ画像を白黒256階調(ガンマ補正値は2.2)で取り込む。取り込み領域は撮影倍率によって選択する。取り込んだ256階調の画像に対し、2値化処理を行う。この際に設定したパラメーターは、(a)しきい値(=自動)、(b)シェーディング補正処理(=有り)、(c)穴埋め処理(=有り)、(d)ガンマ補正処理(=補正値γ=2.2)である。得られた2値化画像より、計測エリアラインに接触して、一部が計測範囲から外れた孔および中空糸の中空部分を除去した後に、「粒子解析」コマンドを選択し、対象孔の円相当径を求める。
5つの視野について同様に円相当径を求め、得られた5つの円相当径の算術平均値を平均孔径DP(μm)とする。
【0045】
(6)中空率
上記(2)および(3)で求めた繊維外径および中空部外径から、下記式により中空部の体積割合(中空率)VTを求める。
VT = DT 2/DF 2 × 100 (%)
【0046】
(7)空隙率
試料を40℃の温水で12時間環流洗浄し、微多孔内部の孔径保持剤を完全に除去する。
(7−1)試料がフィルムの場合
5mm×20mmに試料を切り取り、重量Mf(g)を計量する。さらに、(4)の方法でフィルムの厚みDf(mm)を計測する。下記式により、試料の空隙率Vnを計算する。5点のサンプルについて計算を行い、その算術平均を空隙率VP(%)とする。
Vn=(0.13×Df−Mf)/(0.13×Df)×100 (%)
(7−2)試料が中空糸の場合
試料を長さ10mmに切り取り、重量MF(g)を計量する。さらに、(2)の方法で中空糸の繊維径D(mm)を計測する。(6)の方法で中空率VTを求め、下記式により、試料の空隙率Vnを計算する。5点のサンプルについて計算を行い、その算術平均を空隙率VP(%)とする。
Vn=1−MF/(1.3×D2/400×(1−Vt))×100 (%)
【0047】
(8)全空隙部の体積割合
(6)で求められる中空率VTおよび(7)で求められる空隙率VPより、下記式により求める。
全空隙部の体積割合=VT+(100−VT)/100×VP (%)
【0048】
(9)結晶化度
パーキンエルマー社製示差熱測定装置Pyris1を用いて下記条件で測定を行う。サンプルは、長さ5mmにカットしたものを用いる。ただし、孔径保持剤を含有するポリケトン多孔体の場合は、孔径保持剤を抽出除去後、抽出溶剤を液体窒素で凍結乾燥した試料を用いる。
サンプル質量: 1mg
測定温度 : 30℃→300℃
昇温速度 : 20℃/分
雰囲気 : 窒素、流量=200mL/分
得られる吸発熱曲線において、200〜300℃の範囲に観測される最大の吸熱ピークの面積から計算される熱量ΔH(J/g)より下記式により算出する。
結晶化度 = ΔH/225 × 100 (%)
【0049】
(10)融点
(9)で得られる吸発熱曲線の200〜300℃の範囲に観測される最大の吸熱ピークのピークトップ温度を融点とする。
【0050】
(11)引っ張り強度、破断点伸度
JIS−L−1013に基づいて測定する。
繊維および中空糸の場合は、試料長200mm、フィルムは、幅5.0mm長さ100mmの短冊状で測定する。フィルムの場合は、直交する二方向について測定を行いその平均値を用いる。多孔体が繊維、中空糸およびフィルム以外の場合は、試料を縦、横それぞれ2.0mm、長さ100mmの直方体状に切り取り測定する。試料の断面積は以下の式より求められる値を用いる。
繊維、中空糸の断面積 = 3.14×(DF/2)2 (μm2)
フィルムの断面積 = 5.0×DM×103 (μm2)
その他の多孔体の断面積 = 4.0×106 (μm2)
【0051】
(12)沸水収縮率
試料を沸騰水(100℃)中で30分間の処理前の試料長(Lb)、処理後の試料長(La)を測定し、下記式より算出する。繊維試料は繊維軸方向の試料長を測定し、フィルムに関しては、直交する二方向について測定を行いその平均値を収縮率とする。
沸水収縮率 = (Lb−La)/Lb × 100 (%)
【0052】
【実施例1】
常法により調製したエチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度5.8dl/gのポリケトンを、塩化カルシウム29.25wt%/塩化亜鉛23wt%/塩化リチウム9.75wt%を含有する水溶液に添加し、80℃で4時間攪拌溶解し、ポリマー濃度8wt%のドープを得た。
このドープを、図3に示す紡出面9を有する円筒二重管からなるオリフィスを用い、二重管の外側の輪状オリフィス7よりドープを、二重管内側の円形オリフィス8からは水を吐出した。図中、外外径=0.6mm、外内径=0.4mm、内外径=0.3mmである。
【0053】
オリフィスより吐出されたドープは、10mmのエアギャップを経て、凝固剤(B)として温度−2℃の水をはった浴に吐出線速度10.4m/分で押し出され凝固糸条となる。得られたポリケトン凝固糸を1wt%の塩酸水溶液で洗浄し、40℃の温水で仕上げ洗浄を行った後に、速度2.5m/分で曳きとった。
得られたポリケトン中空糸を、90℃の温水で1時間熱水処理を行った。さらに、孔径保持剤(C)として20wt%のグリセリンを含有する水溶液(処理剤(D))が、温度60℃、1L/分の速度で流れる管の中にポリケトン中空糸を配置し、1時間の環流処理を行った。
【0054】
環流処理したポリケトン中空糸を65℃で12時間の加熱処理を行い、中空糸内部にある水を蒸発除去した。
得られた糸は、繊維の中央に貫通した空隙とポリケトン部分(膜部)に平均孔径0.3μmの連続した孔を有する中空糸であり、空隙率は60.2vol%、中空率は.52.1vol%であった。この中空糸は、高い空隙率および中空率を有するにもかかわらず、引っ張り強度が1.5MPa、破断点伸度が52%と非常に優れた力学特性を有していた。
【0055】
この中空糸を用いて、長さ30cm、300本の束からなるモジュールを200本作製した。200本のモジュールには、モジュール作成時の時の欠損は全くなく、取り扱い性および加工性に優れるものであった。
本実施例および以下の実施例で得られた中空糸の性質および性能を表1にまとめて示す。
【0056】
【実施例2】
実施例1において、溶剤を塩化カルシウム39wt%/塩化亜鉛22wt%/チオシアン酸カルシウム1wt%を含有する水溶液とする以外は同様にして中空糸を得た。この中空糸を実施例1と同様にしてモジュールを作製したところ、加工性は良好で破断、欠損は全くなかった。
【0057】
【実施例3】
実施例1において、外外径=0.3mm、外内径=0.2mm、内外径=0.15mmの二重管オリフィスを用いる以外は同様にして中空糸を作製した。
【0058】
【実施例4】
実施例1において、外外径=1.2mm、外内径=0.8mm、内外径=0.6mmの二重管オリフィスを用いる以外は同様にして中空糸を作製した。
【0059】
【実施例5】
実施例1において、処理剤(D)中のグリセリン濃度を60wt%とする以外は同様にして中空糸を作製した。
【0060】
【実施例6】
実施例1において、処理剤(D)中のグリセリン濃度を8wt%とする以外は同様にして中空糸を作製した。
【0061】
【実施例7】
実施例1において、孔径保持剤としてグリセリンの替わりにエチレングリコールを使用する以外は同様にして中空糸を作製した。
【0062】
【実施例8】
実施例1において、孔径保持剤としてグリセリンの替わりにトリエチレングリコールを使用する以外は同様にして中空糸を作製した。
【0063】
【実施例9】
実施例1において、処理剤(D)による処理条件を、90℃、1時間とする以外は同様にして中空糸を作製した。
【0064】
【実施例10】
実施例1において、処理剤(D)による処理として、20wt%グリセリン水溶液を用いて、65℃、30分の処理後に、オートクレーブ中で180℃、30分の処理をする以外は同様にして中空糸を作製した。
【0065】
【実施例11】
実施例1で用いたポリケトンをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)にポリマー濃度7wt%で溶解しドープとした。二重管外側のオリフィスからドープを3m/分の速度で吐出し、二重管内側の円形オリフィスからアセトンを吐出し、凝固浴にアセトン(凝固剤(B))を用い、曳き取り速度を3m/分とする以外は実施例1と同様にして凝固を行った。引き続き、凝固した糸条をアセトンで洗浄し、内部のHFIPを洗浄除去した後に、水洗を行い多孔体内部の液を水に置換し中空糸を得た。
得られたポリケトン中空糸を、90℃の温水で1時間熱水処理を行った後に、孔径保持剤(C)として20wt%のグリセリンを含有する水溶液(処理剤(D)))で60℃、1時間の環流処理を行った。
環流処理したポリケトン中空糸を65℃で12時間の加熱処理を行い、微多孔内部にある水を蒸発除去した。
【0066】
【実施例12】
実施例1において、ドープを極限粘度12.3dl/gのポリケトンを4wt%溶解し、処理剤(D)のグリセリン濃度を60wt%とする以外は同様にして中空糸を作製した。
【0067】
【実施例13】
実施例1において、ドープを極限粘度3.7dl/gのポリケトンを15wt%溶解した以外は同様にして中空糸を作製した。
【0068】
【実施例14】
実施例1で得た中空糸を、窒素気流中で180℃、3分間の熱処理を行った後に、50℃の温水で1時間処理して、中空糸内部に残ったグリセリンを抽出除去した。抽出されたグリセリン量はポリケトンポリマーの1.45倍であった。抽出処理後、60℃で15時間乾燥処理を行い、中空糸内部の水を除去した。乾燥処理後の糸を観察したところ、処理前とほとんど同じ微多孔を有する中空糸であった。
【0069】
【実施例15】
実施例1において、ドープとして、1−オキソトリメチレン97.5wt%および1−オキソ−3−スルホナトリウムトリメチレン2.5wt%からなる極限粘度4.3dl/gのポリケトンを用い、ポリマー濃度を10wt%とする以外は同様にして、中空糸を製造した。
【0070】
【比較例1】
実施例1において、塩酸水溶液洗浄後、曳き取った中空糸を、内部に凝固剤(B)である水のみを含んだ状態で、200℃、3分の乾燥処理を行った。得られた糸は、内部に中空の貫通した孔はあるものの、ポリケトンがある部分の多孔質構造はほとんど消失し、中空糸膜として使用できるものではなくなっていた。
本比較例および以下の比較例で得られた中空糸の特性を表2にまとめて示す。
【0071】
【比較例2】
比較例1において、乾燥条件を120℃、1時間とする以外は同様にして乾燥処理を行った。この場合も、多孔質構造はほとんど消失していた。
【0072】
【比較例3】
比較例1において、乾燥条件を80℃、12時間とする以外は同様にして乾燥処理を行った。この場合も、多孔質構造はほとんど消失していた。
【0073】
【比較例4】
比較例1において、洗浄処理した中空糸をtert−ブチルアルコールに浸漬し、多孔体内部の液体をtert−ブチルアルコールに置換した。巻き取った凝固糸条を液体窒素で凍結後、0.01Paの減圧下10分の乾燥を行った。得られた中空糸は、多孔質構造は維持していたものの、力学特性が低く、特に破断点伸度が19%と小さいものであった。
この中空糸を、実施例1と同様にしてモジュールに加工したが、加工時に10本以上の糸が破断、破損するトラブルが発生した。
【0074】
【比較例5】
実施例11において、アセトン浴で凝固した中空糸を液体窒素で凍結し、0.01Paで減圧乾燥した。得られた中空糸は、力学特性が不十分であった。
この中空糸を、実施例1と同様にしてモジュールに加工したが、加工時に30本以上の糸が破断、破損するトラブルが発生した。
【0075】
【比較例6】
実施例1において、処理剤(D)として、グリセリン20wt%水溶液を用いる替わりに、メタノールを使用し、環流処理条件を50℃、1時間とする以外は同様にして乾留処理を行った。環流処理したポリケトン中空糸を、実施例1と同様に65℃で12時間の加熱処理を行ったところ、中空糸内部の多孔質構造はほとんど消失していた。
【0076】
【比較例7】
実施例1において、処理剤(D)として、グリセリン20wt%水溶液を用いる替わりに、シリコンオイルを使用し、環流処理条件を70℃、1時間とする以外は同様にして環流処理を行った。環流処理したポリケトン中空糸を、実施例1と同様に65℃で12時間の加熱処理を行ったところ、中空糸内部の多孔質構造はほとんど消失していた。
【0077】
【実施例16】
実施例1で得られたポリケトンドープを安田精機(株)社製製膜機(AUTOMATIC FILM APPLICATOR No.542−AB)を用いて、80℃に加温されたガラス板上に厚み0.5mmでキャストした。ドープをキャストしたガラス板を−20℃のメタノール(凝固剤(B))に浸漬し凝固させた後、2℃の水に浸漬し、引き続き20℃の0.1%塩酸水溶液にて洗浄した。さらに、水洗後、90℃の温水で1時間熱水処理を行った後に、孔径保持剤(C)として40wt%のグリセリンを含有する水溶液(処理剤(D))を用いて、実施例1と同様の方法で60℃、1時間の環流処理を行った。
【0078】
環流処理したポリケトン膜を65℃で12時間の加熱処理を行い、多孔体内部にある水を蒸発除去してポリケトン多孔膜を得た。この膜は、厚さ0.27m、平均孔径が0.7μm、孔の体積割合が58.2vol%の微多孔膜であった。この膜の引っ張り強度は1.9MPa、破断点伸度は60%、沸水収縮率は0.2%、融点は252℃であり、優れた力学特性、寸法安定性および耐熱性を有していた。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【発明の効果】
本発明によると、内部に微細な孔を多数有しながら高い破断点伸度を有するポリケトン多孔体が得られる。本発明のポリケトン多孔体は、例えば、繊維状、中空糸状、さらにはフィルム状にして用いることができる。本発明の多孔体は、また、優れた強度、熱特性、寸法安定性および耐薬品性を有しており、汚水処理、含油廃水処理、工業用純水の製造、果汁の処理等の水溶液濾過膜として、また、有機液体中の不純物除去、有機液体の回収等の有機溶液濾過膜として、またイオン性液体の透過膜として、さらには血液や体液の透析膜として有用である。特に、長期間にわたり高い力学的負荷を受ける液体分離膜用途や、欠陥がなく高品質のモジュールが要求される血液分離膜用途に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】中空糸の斜視図である。
【図2】フィルムの斜視図である。
【図3】中空糸製造に用いる二重管オリフィスの紡出面を表す図である。
【産業上の利用分野】
本発明は、優れた力学特性を有するポリケトン多孔体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、一酸化炭素とオレフィンをパラジウムやニッケルを触媒として重合させることにより、一酸化炭素とオレフィンが実質完全に交互共重合した脂肪族ポリケトンが得られることが見いだされた。このポリケトンからなる繊維、フィルムおよび樹脂は高結晶性で、優れた高力学物性、高融点、高ガスバリアー性、耐薬品性等の特性を有し、次世代の汎用高分子材料として期待されている。
【0003】
一方、これら汎用材料以外では、中空糸、微多孔膜等の内部や表面に微細な孔を有する多孔体に成形することにより、ポリエチレン、PTFE等の既存の樹脂からなる多孔体では得ることのできなかった高力学特性、高耐熱性および高耐薬品性の特性を兼ね備えた分離膜が得られることが期待される。
ポリケトン分離膜を製造する方法としては、相分離法、延伸開孔法、粒子を添加し溶媒を抽出除去する方法等が挙げられる。20vol%以上の高空隙率でありながら高力学特性を有するポリケトン多孔体を得る場合には、高分子量のポリケトンを使用できる相分離法が有効な製造法である。
【0004】
相分離法によるポリケトン多孔体に関しては、特許文献1において、ポリケトンをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、イソプロパノール、アセトン、水等の非溶媒中にキャストした後に、溶媒であるHFIPを非溶媒と置換したものが開示されている。しかしながら、この文献では、ポリケトンの多孔体が得られることしか記載されておらず、高い破断点伸度を有するポリケトン多孔体に関する知見、非溶媒中で凝固して得られた多孔体から置換した非溶媒を除去する方法等については何の示唆もなされていない。
【0005】
特許文献2には、ポリケトンを塩化亜鉛等の金属塩溶液に溶解した後に、水等の非溶媒中に押し出して相分離によって多孔体とし、引き続き、水、tert−ブチルアルコール等の沸点が20〜200℃の非溶媒に置換した後に、非溶媒の沸点以上の温度で乾燥処理して得られるポリケトン多孔体が開示されている。しかしながら、この文献の方法で空隙率の大きい多孔体を得るには、非溶媒で置換した多孔体に凍結乾燥、減圧乾燥等の処理を施すことが必要である。得られたポリケトン多孔体は高強度であるものの非常に脆く、特に破断点伸度が小さい問題がった。また、この文献に記載の方法は、多量の液体窒素や減圧容器を用いなければならず、処理工程が煩雑であったり、処理装置が重厚化する等の問題があった。以上のように、この文献においては、高空隙率でありながら、高伸度、かつ、高タフネスを有するポリケトン多孔体およびその製造方法に関しては一切示されていない。
【0006】
特許文献3においても、ポリケトン多孔体の発明が開示されているが、この文献では、空隙率が20vol%以上の高空隙率で、破断点伸度が30%以上の高力学特性のポリケトン多孔体については一切記載されていない。
以上のように、高空隙率であるにもかかわらず、高い破断点伸度を有するポリケトン多孔体およびこの多孔体を効率的、かつ、生産性よく製造する方法は一切知られていない。
【0007】
【特許文献1】
特開平2−4431号公報
【特許文献2】
特開2002−348401号公報
【特許文献3】
特開2000−198866号公報
【0008】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、微細な孔を多量に含有していながら、力学特性に優れ、かつ、製造時、後加工時および輸送時に破断や破損をしないポリケトン多孔体およびその製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1) オレフィンと一酸化炭素が共重合したポリケトンから構成された多孔体であって、平均孔径が0.001〜50μmであり、多孔体中の孔の体積割合が20〜90vol%であり、破断点伸度が30%以上であることを特徴とするポリケトン多孔体。
(2) 平均孔径が0.01〜10μmであり、多孔体中の孔の体積割合が30〜80vol%であり、破断点伸度が40%以上であることを特徴とする(1)に記載のポリケトン多孔体。
(3) 多孔体が繊維であることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリケトン多孔体。
(4) 多孔体が長手方向に貫通する孔を一つ以上有する中空糸であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載のポリケトン多孔体。
(5) 中空部の割合が10〜70vol%であることを特徴とする(4)に記載のポリケトン中空糸。
(6) 多孔体がフィルムであることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリケトン多孔体。
【0010】
(7) (1)に記載のポリケトン多孔体の製造方法であって、溶媒(A)にポリケトンを溶解したドープを凝固剤(B)中に押出して固化させて多孔体とした後に、多孔体を処理剤(D)で処理して多孔体内部に孔径保持剤(C)を含有させ、次いで、40〜250℃で加熱処理をする工程を含むことを特徴とするポリケトン多孔体の製造方法。
ただし、上記(A)〜(D)は,以下のとおりである。
(A)ポリケトンを溶解する能力のある液体
(B)液体(A)と相溶性があり、ポリケトンに対して非溶解性の液体
(C)沸点が120℃以上である物質
(D)ポリケトンを溶解したドープを凝固剤(B)中に押出して固化させた多孔体中に含まれている液体と置換可能な液体に、孔径保持剤(C)を1wt%以上溶解させた溶液
【0011】
(8) 溶媒(A)がハロゲン化亜鉛を含有する水溶液であり、凝固剤(B)が水を50wt%以上含有する水溶液であり、孔径保持剤(C)が沸点が120℃以上の水溶性化合物であり、処理剤(D)が水を20wt%以上含有する水溶液であることを特徴とする(7)に記載のポリケトン多孔体の製造方法。
(9) 孔径保持剤(C)が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エーテル基、エステル基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する有機化合物であることを特徴とする(7)または(8)に記載のポリケトン多孔体の製造方法。
(10) 孔径保持剤(C)が、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、メチルセロソルブおよびエチルセロソルブから選ばれる少なくとも1種の化合物を1wt%以上含有する液体であることを特徴とする(7)〜(9)のいずれか1つに記載のポリケトン多孔体の製造方法。
【0012】
(11) ポリケトンを溶解したドープを凝固剤(B)中に押出して固化させた多孔体中に含まれている液体と置換可能な液体が、水、アルコール、ケトンおよびエーテルから選ばれる少なくとも1種を含む液体である(7)に記載のポリケトン多孔体の製造方法。
(12) 処理剤(D)で処理した後に、ポリケトン多孔体中の孔径保持剤(C)の量が1〜90vol%となるように加熱処理する工程を含むことを特徴とする(7)〜(11)のいずれか1つに記載のポリケトン多孔体の製造方法。
(13) 加熱処理後に、ポリケトン多孔体中に残存する孔径保持剤(C)を、ポリケトン多孔体に対して1wt%未満となるまで抽出除去する工程を含むことを特徴とする(7)〜(12)のいずれか1つに記載のポリケトン多孔体の製造方法。
【0013】
本発明のポリケトン多孔体を構成するポリマーは、オレフィンと一酸化炭素の共重合体である。強度、寸法安定性、耐熱性、耐薬品性等の観点から、エチレンと一酸化炭素が結合した化学式(1)で示す1−オキソトリメチレンを主たる繰り返し単位とすることが好ましい。具体的には90モル%以上が1−オキソトリメチレンであることが好ましい。
【0014】
【化1】
【0015】
ポリケトン分子中に、必要に応じて、プロペン、ヘキセン、シクロヘキセン等のオレフィンやスチレン、酢酸ビニル等の不飽和炭化水素を有する化合物と一酸化炭素の結合した単位を有していてもよい。
20モル%以下の割合であれば、オレフィンと一酸化炭素の共重合したもの以外の繰り返し単位、例えば、ヒドロキシ、エステル、アミド、エーテル、カルボキシ、スルホキシ等の基を有する繰り返し単位が入っていてもよい。
【0016】
本発明に用いるポリケトンの分子量には制限がないが、得られる多孔体の力学特性および成形性の観点から、極限粘度は1.0〜20.0dl/gが好ましく、より好ましくは2.0〜10.0dl/gである。
本発明のポリケトン多孔体は微多孔性で、多孔体の平均孔径は0.001〜50μmであり、多孔体中の孔の体積割合(以下、空隙率、ということがある)が20〜90vol%である。多孔体の孔の体積割合とは、ポリケトン多孔体の全体積に占める孔部の体積の割合である。ただし、多孔体が繊維であって、内部に繊維軸方向に貫通した空隙を有する中空糸の場合には、中空部を除いた体積に占める孔部の体積の割合を、多孔体の孔の体積割合とする。多孔体の孔の平均孔径および孔の体積分率は、後に述べる方法により測定される。
【0017】
平均孔径が0.001μm未満の場合、透過性能が著しく低下し、分離膜としての機能が不十分となる。平均孔径が50μmを越える場合、支持体であるポリケトンの力学物性が低下し、多孔体は脆弱になる。
ポリケトン多孔体中の孔の体積割合は多ければ多いほど、分離膜としては時間あたりの分離速度が速くなり好ましいが、孔の占める体積割合が90%を越えるとポリケトン多孔体の力学物性の低下が著しくなる。また、空隙率が20vol%未満では分離性能が低下する。このため、空隙率は20〜90vol%であることが必要であり、好ましくは25〜80vol%、より好ましくは30〜70vol%である。
【0018】
多孔体の孔はそれぞれ独立した孔であっても、隣接する孔同士が連結したものであってもよい。強度の観点からは独立孔であることが好ましいが、分離膜として用いる場合には分離効率の観点から隣接する孔同士が連結したものが好ましい。
本発明のポリケトン多孔体は、破断点伸度が30%以上である。破断点伸度が高いほど、高い負荷の用途に用いることが可能となる。また、製造時の破断や毛羽等の工程上のトラブルが減少し、モジュール化等の後加工時や輸送時に破損や破断等の欠陥が発生しにくく、取り扱い性が容易となり、欠陥の少ない高品質の製品が得られる。工業的に多量のポリケトン多孔体を取り扱うことができるためには、破断点伸度としては30%以上であることが必要であり、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上である。
【0019】
本発明においてポリケトン多孔体とは、繊維、フィルム、棒、ブロック、球、筒、鍋状物、布、織編物、シート、多層積層物等のポリケトンからなる成形体であって、内部および/または表面に微細な空隙が多数存在する成形体を意味する。分離膜用途として用いる場合には、繊維状またはフィルム状として用いられる。
繊維として用いる場合は、そのまま微多孔性繊維材料として、または微多孔内に機能性化合物を保持させて機能性繊維材料として、さらには内部に少なくとも一つの長手方向に貫通した空隙を有する中空糸膜として用いることができる。
【0020】
中空糸膜として用いる場合、内部に長手方向に貫通した空隙(中空部)の割合には制限はないが、少なすぎると膜の分離効率が低下し、多すぎると中空糸の力学特性が低下するため、好ましくは10〜70vol%、より好ましくは20〜60vol%である。さらに、力学特性および膜の分離性能の観点から、繊維の全体積に対する微多孔部の体積と中空部の体積の和が、好ましくは30〜95vol%、より好ましくは40〜80vol%である。繊維内部にある中空部の数には制限はなく1本であってもまた複数本であってもよい。
【0021】
ポリケトン多孔体が繊維の場合、その外径には制限はないが、1〜10000μmの範囲が一般的であり、中空糸膜として用いる場合は100〜5000μmの範囲が好ましい。繊維は1本で用いても、またマルチフィラメントとして用いてもよく、長繊維または短繊維として用いてもよい。繊維の断面は、円、楕円、三角、星形、アルファベット型等の公知の形状を適用することができる。
ポリケトン多孔体をフィルムとして用いる場合、フィルムの厚みには制限はなく、用途に応じて任意の厚みとすることができるが、通常、0.1〜1000μmである。
【0022】
ポリケトン多孔体に望まれる特性としては、引っ張り強度、沸水収縮率および融点が挙げられる。引っ張り強度は、高ければ高いほど支持体であるポリケトンの量を減らして、孔部および中空部の割合を増やすことが可能となり、より効率的な分離ができる。このため、引っ張り強度は、好ましくは1MPa以上、より好ましくは10MPa以上である。
本発明の多孔体を水の分離膜として用いる場合、水に対して膨潤および変形しないことが重要である。水に対する寸法安定性のパラメーターとして沸水収縮率がある。この値が小さいほど、水および熱に対して寸法安定性が優れることを意味し、具体的には−3〜3%であることが好ましく、より好ましくは−1〜1%、最も好ましくは−0.3〜0.3%である。
【0023】
ポリケトン多孔体の融点は、高いほど高温環境に曝される用途での展開が可能となるため、好ましくは200℃以上、より好ましくは220℃以上、最も好ましくは240℃以上である。
さらに、耐熱性、耐薬品性および安全性の観点から、ポリケトン多孔体中に含まれる亜鉛、カルシウム等の金属含量は少ないことが望ましく、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは10ppm以下である。
【0024】
本発明のポリケトン多孔体の製造方法に係る発明は、以下のとおりである。
すなわち、オレフィンと一酸化炭素が共重合したポリケトンから構成された多孔体であって、平均孔径が0.001〜50μmであり、多孔体中の孔の体積割合が20〜90vol%であり、破断点伸度が30%以上であることを特徴とするポリケトン多孔体の製造方法であって、溶媒(A)にポリケトンを溶解したドープを、凝固剤(B)中に押出して固化させて多孔体とした後に、多孔体を処理剤(D)で処理して多孔体内部に孔径保持剤(C)を含有させ、次いで、40〜250℃で加熱処理をする工程を含むことを特徴とするポリケトン多孔体の製造方法である。
ただし、上記の(A)〜(D)は、以下のとおりである。
(A)ポリケトンを溶解する能力のある液体
(B)液体(A)と相溶性があり、ポリケトンに対して非溶解性の液体
(C)沸点が120℃以上である物質
(D)ポリケトンを溶解したドープを凝固剤(B)中に押出して固化させた多孔体中に含まれている液体と置換可能な液体に、孔径保持剤
(C)を1wt%以上溶解させた溶液
【0025】
この方法において、ポリケトンは、まず、ポリケトンを溶解する能力のある液体(A)に溶解される。ポリケトンを溶解する能力のある液体とは、極限粘度6.0dl/gのポリケトンを液体に対して5wt%添加して、80℃、1時間加熱攪拌した後のポリケトンの質量減少率が2wt%以上である液体を意味する。具体的には、液体(A)として、ヘキサフルオロイソプロパノール、m−クレゾール、塩化亜鉛水溶液等の公知のポリケトンの溶剤が挙げられる。安全性、コストおよび回収の容易性の観点から、塩化亜鉛を含有する水溶液が好ましい。塩化亜鉛水溶液を用いる場合、必要に応じて、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、ヨウ化亜鉛等のハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属やチオシアン酸カルシウム、チオシアン酸亜鉛等のチオシアン酸金属塩等の金属塩を混合してもよい。
【0026】
ポリケトンを液体(A)に溶解した溶液(以下、ドープ、ということがある)において、ポリマー濃度を高くすると、多孔体の支持体であるポリケトンは密に、孔は微細となり、孔の体積割合を小さくすることができる。一方、ドープ中のポリマー濃度が低いと、支持体であるポリケトンは疎で、孔の体積割合を大きくすることができる。ポリマー濃度が高すぎると、溶剤への均一な溶解が困難となり、ポリマー濃度が低すぎると、ポリケトン支持体が不連続となり成形体の強度が低下するため、ドープ中のポリマー濃度は1〜75wt%が好ましく、より好ましくは2〜50wt%、最も好ましくは3〜30wt%である。
【0027】
ポリケトンドープを、紡糸口金、フィルムダイ等、任意の形状の金型から、凝固剤(B)中に押し出すことにより、相分離によってポリケトン多孔体が形成される。紡糸口金およびダイの形状は限定されず、公知のものを適用できる。中空糸型の多孔体を製造する場合、紡口として、二重管オリフィス、C型オリフィス等の公知のものを適用できる。二重管オリフィスを用いる場合、外側の輪状オリフィスからはポリケトンドープを、また、内側の円状オリフィスからは、気体またはポリケトンに対して非溶解性の液体(非溶剤)を吐出することが好ましく、非溶剤としては、凝固速度の速い、水を主成分とする液体が好ましい。
【0028】
本発明に用いられる凝固剤(B)は、液体(A)と相溶性があり、ポリケトンに対して非溶解性である液体であることが必要である。ポリケトンに対して非溶解性である液体とは、極限粘度6.0dl/gのポリケトンを液体に対して5wt%添加して、80℃、1時間加熱攪拌した後のポリケトンの質量減少率が2%未満である液体を意味する。凝固剤(B)が液体(A)と相溶性がない場合には、液体(A)が金型から押し出されたドープから凝固浴側に溶出することができず、多孔質のポリケトン成形体を得ることが困難となる。凝固剤(B)がポリケトンに対して溶解性である場合、凝固浴中でポリケトンを任意の形状に固化させることが困難となる。
【0029】
凝固剤(B)は、液体(A)の種類により異なるため、一概に規定することはできないが、例えば、溶剤が塩化亜鉛を含有する水溶液の場合、水、メタノール、アセトンおよびこれらの混合溶液、少量の金属塩を含有する溶液等が挙げられる。多孔体の性状および回収性の観点から、水、またはポリケトンを溶解しない程度の少量の金属塩を含有する金属塩水溶液が好ましい。得られる多孔体の構造、溶剤回収および生産性の観点から、水を50wt%以上含有する金属塩水溶液がより好ましい。
凝固剤(B)中で相分離させて得られたポリケトン多孔体の孔の中には、凝固剤(B)と、場合によっては若干量の液体(A)が含まれているため、必要に応じて洗浄処理を行い、不要な成分を洗浄除去する。この後のポリケトン多孔体の寸法安定性を維持する目的で、凝固剤(B)の沸点未満の温度で加熱処理を施してもよい。
【0030】
このようにして得られたポリケトン多孔体を、引き続き、処理剤(D)で処理をして、多孔体の孔内部の液体を処理剤(D)に置換し、後で述べる孔径保持剤(C)を多孔体の孔内部に含有させる。
【0031】
処理剤(D)は、ポリケトンを溶解したドープを凝固剤(B)中に押出して固化させた多孔体中に含まれている液体と置換可能な液体に、孔径保持剤(C)を1wt%以上溶解させた溶液である。このような置換可能な液体としては、多孔体中に含まれている凝固剤等と同じまたはそれと相溶性のある液体が好ましく、例えば、水、アルコール、ケトンおよびエーテルから選ばれる少なくとも1種の液体を含有する液体が挙げられ、中でも、水、メタノール、エタノールおよびアセトンがより好ましい。置換可能な液体中に含まれる、水、アルコール、ケトンおよびエーテルから選ばれる少なくとも1種の液体の割合は20wt%以上が好ましく、50wt%以上がより好ましい。
【0032】
すなわち、ポリケトンの凝固および洗浄は、凝固性、取り扱い性およびコストの観点から、水、アルコール、ケトンおよびエーテルから選ばれる少なくとも一種の溶液で行うことが有利である。このため、凝固および洗浄までの工程で得られるポリケトン多孔体は、孔の内部に上記の溶液を含んでいるため、孔の内部まで処理剤を効率的に置換するためには、処理剤も、水、アルコール、ケトンおよびエーテルから選ばれる少なくとも1種の液体であることが好ましい。
【0033】
また、凝固および洗浄に水、アルコール、ケトンおよびエーテルのいずれも含まない溶剤を使用した場合でも、取り扱い性、安全性、コストの観点から処理剤は水、アルコール、ケトンおよびエーテルを含有する溶液から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。ただし、凝固および洗浄で用いた溶剤と処理剤との相溶性が低い場合、処理剤で置換する前に、一旦、凝固、洗浄で用いた溶液と処理剤の双方と相溶性のある溶液で置換することが必要である。
【0034】
処理剤(C)の置換は、多孔体内部に含まれる液体成分の少なくとも50vol%が処理剤(C)となるまで行うことが好ましく、より好ましくは80vol%以上、最も好ましくは90vol%以上となるまで置換処理を行う。
処理剤(D)中に含まれる孔径保持剤(C)は1wt%以上であることが必要である。孔径保持剤の濃度が1wt%未満の場合、その後の乾燥処理によって多孔体の孔が収縮し、空隙率が20vol%以上の多孔体を得ることが困難となる。孔径保持剤の濃度は好ましくは1〜100wt%、より好ましくは10〜100wt%、最も好ましくは20〜100wt%である。
【0035】
孔径保持剤(C)は120℃以上の沸点を有することが必要である。処理剤(D)で処理されたポリケトン多孔体は、この後、乾燥加熱処理を行い、内部の液体を蒸発除去する。この際、多孔質構造を維持するためには、孔径保持剤(C)の少なくとも一部を多孔体内部に残留させ、孔径保持剤(C)以外の液体を蒸発除去する必要がある。孔径保持剤(C)以外の液体と共沸することなく効率的に孔径保持剤(C)を多孔体中に残留させるには、孔径保持剤(C)は、沸点が120℃以上であることが必要であり、好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上である。
【0036】
回収性および取り扱い性の観点から、ポリケトン多孔体の製造は、水を主成分とする水溶液で処理することが有利である。この場合、孔径保持剤(C)は、水溶性の物質であることが必要であり、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エーテル基、エステル基、アミノ基の群から選ばれる少なくとも1種の基を有する、沸点120℃以上の有機化合物が好ましい。具体的な好ましい化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ソルビトール、アジピン酸等が挙げられる。
【0037】
処理剤(D)による処理方法には制限はないが、多孔体内部まで処理剤が置換するように、ポリケトン多孔体を処理剤(D)中で浸漬処理または加熱浸漬処理する方法、処理剤(D)が環流する環境下にポリケトン多孔体を配置する方法、ポリケトン多孔体が処理剤(D)中に浸漬した状態で超音波や振動を加える方法等が好ましい。
処理剤(D)で置換処理を行ったポリケトン多孔体を、40〜250℃の温度で加熱処理を行う。加熱処理温度が40℃未満では、多孔体中の孔径保持剤(C)以外の液体の蒸発除去に長い時間を要し、生産性が低下する。加熱処理温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上である。一方、加熱処理温度は250℃以下であることが必要である。加熱処理温度が250℃を越える場合、ポリケトンの溶融により孔径の保持が困難となる。加熱処理温度は、好ましくは、220℃以下、より好ましくは200℃以下である。孔径保持剤(C)の沸点が250℃未満の場合、孔径保持の観点から孔径保持剤(C)の沸点未満の温度で加熱処理することが好ましい。
【0038】
加熱処理後のポリケトン多孔体の孔径保持剤(C)の残存量は、平均孔径および空隙率に影響するため、加熱処理後の孔径保持剤(C)の残存量は、好ましくは、ポリケトンに対して1〜90vol%、より好ましくは10〜85vol%、最も好ましくは20〜80vol%となるように、処理剤(D)中の孔径保持剤(C)の濃度、加熱処理温度、時間等を調整する。
ポリケトン多孔体を高温下で使用する場合には、加熱処理の後半に、使用時の温度以上の温度で加熱処理を施すことにより、高温使用時の寸法安定性が向上するので好ましい。
【0039】
このようにして得られたポリケトン多孔体は、内部に孔径保持剤を含んだ状態のままであり、このまま、または孔径保持剤を抽出除去して使用することができる。孔径保持剤の抽出除去は、ポリケトン多孔体を、水、アルコール等の孔径保持剤と相溶性のある液体で洗浄処理することにより容易に行うことができる。抽出除去を行う場合は、ポリケトン多孔体中の孔径保持剤の量をポリケトンに対して、好ましくは1wt%以下、より好ましくは0.1wt%以下にする。抽出除去の条件としては、例えば、孔径保持剤にグリセリンまたはエチレングリコールを用いる場合には、20〜100℃の温水で10分間以上、好ましくは30分以上の環流処理を行う。
【0040】
本発明のポリケトン多孔体は、高負荷、高靱性の要求される分離膜用途に非常に有用である。さらに、高耐熱性、高寸法安定性、高耐薬品性を具備し、水や血液、電解質液、各種薬液の分離膜として有用である。
【0041】
【発明の実施の形態】
本発明を、下記の実施例により具体的に説明するが、それらは本発明の範囲を限定するものではない。
本発明に用いられる各測定値の測定方法は次の通りである。
(1)極限粘度
極限粘度[η]は、次の定義式に基づいて求められる値である。
式中のtおよびTは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノールおよびヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間である。Cは、上記溶液100ml中のグラム単位による溶質質量値である。
【0042】
(2)繊維の外径
任意の10本の繊維について、外径を光学顕微鏡にて写真撮影し、それぞれの外径を計測して、その平均値を繊維の外径DF(μm)とする。
(3)中空部の外径
中空糸の任意の5カ所の横断面を光学顕微鏡にて写真撮影し、それぞれの中空部の外径を計測して、その平均値を中空部の外径DT(μm)とする。
(4)フィルムの厚み
フィルムを幅5mm、長さ100mmの短冊状に切り、任意の10片の短冊について光学顕微鏡写真を撮影し、それぞれの厚みを計測して、その平均値をフィルムの厚みDM(μm)とする。
【0043】
(5)微多孔の平均孔径
孔径保持剤を使用した場合は、ポリケトン多孔体の内部にある孔径保持剤を水で抽出除去後、孔径保持剤を使用していない場合はそのまま、液体窒素に浸漬し凍結試料とする。凍結試料を試料の表面から垂直方向に切断し、多孔体の横断面切片を調製する。試料が中空糸の場合、図1に示すように、中空糸1は、膜部2および中空糸の長手方向に貫通する中空部3を有する。この中空糸を、糸の長手方向に対して垂直に切断して切片を調製する。試料がフィルムの場合、図2に示すフィルムの側面5に対して垂直に切断し、横断面6を有する切片を調製する。電子顕微鏡を用いて、得られた切片の倍率500〜50000倍の写真(画像)を撮影する。
【0044】
撮影したネガ画像を画像解析装置(IP1000−PC:旭化成社製)を用いて、以下の方法で計測する。スキャナー(JX−330)を使用して、ネガ画像を白黒256階調(ガンマ補正値は2.2)で取り込む。取り込み領域は撮影倍率によって選択する。取り込んだ256階調の画像に対し、2値化処理を行う。この際に設定したパラメーターは、(a)しきい値(=自動)、(b)シェーディング補正処理(=有り)、(c)穴埋め処理(=有り)、(d)ガンマ補正処理(=補正値γ=2.2)である。得られた2値化画像より、計測エリアラインに接触して、一部が計測範囲から外れた孔および中空糸の中空部分を除去した後に、「粒子解析」コマンドを選択し、対象孔の円相当径を求める。
5つの視野について同様に円相当径を求め、得られた5つの円相当径の算術平均値を平均孔径DP(μm)とする。
【0045】
(6)中空率
上記(2)および(3)で求めた繊維外径および中空部外径から、下記式により中空部の体積割合(中空率)VTを求める。
VT = DT 2/DF 2 × 100 (%)
【0046】
(7)空隙率
試料を40℃の温水で12時間環流洗浄し、微多孔内部の孔径保持剤を完全に除去する。
(7−1)試料がフィルムの場合
5mm×20mmに試料を切り取り、重量Mf(g)を計量する。さらに、(4)の方法でフィルムの厚みDf(mm)を計測する。下記式により、試料の空隙率Vnを計算する。5点のサンプルについて計算を行い、その算術平均を空隙率VP(%)とする。
Vn=(0.13×Df−Mf)/(0.13×Df)×100 (%)
(7−2)試料が中空糸の場合
試料を長さ10mmに切り取り、重量MF(g)を計量する。さらに、(2)の方法で中空糸の繊維径D(mm)を計測する。(6)の方法で中空率VTを求め、下記式により、試料の空隙率Vnを計算する。5点のサンプルについて計算を行い、その算術平均を空隙率VP(%)とする。
Vn=1−MF/(1.3×D2/400×(1−Vt))×100 (%)
【0047】
(8)全空隙部の体積割合
(6)で求められる中空率VTおよび(7)で求められる空隙率VPより、下記式により求める。
全空隙部の体積割合=VT+(100−VT)/100×VP (%)
【0048】
(9)結晶化度
パーキンエルマー社製示差熱測定装置Pyris1を用いて下記条件で測定を行う。サンプルは、長さ5mmにカットしたものを用いる。ただし、孔径保持剤を含有するポリケトン多孔体の場合は、孔径保持剤を抽出除去後、抽出溶剤を液体窒素で凍結乾燥した試料を用いる。
サンプル質量: 1mg
測定温度 : 30℃→300℃
昇温速度 : 20℃/分
雰囲気 : 窒素、流量=200mL/分
得られる吸発熱曲線において、200〜300℃の範囲に観測される最大の吸熱ピークの面積から計算される熱量ΔH(J/g)より下記式により算出する。
結晶化度 = ΔH/225 × 100 (%)
【0049】
(10)融点
(9)で得られる吸発熱曲線の200〜300℃の範囲に観測される最大の吸熱ピークのピークトップ温度を融点とする。
【0050】
(11)引っ張り強度、破断点伸度
JIS−L−1013に基づいて測定する。
繊維および中空糸の場合は、試料長200mm、フィルムは、幅5.0mm長さ100mmの短冊状で測定する。フィルムの場合は、直交する二方向について測定を行いその平均値を用いる。多孔体が繊維、中空糸およびフィルム以外の場合は、試料を縦、横それぞれ2.0mm、長さ100mmの直方体状に切り取り測定する。試料の断面積は以下の式より求められる値を用いる。
繊維、中空糸の断面積 = 3.14×(DF/2)2 (μm2)
フィルムの断面積 = 5.0×DM×103 (μm2)
その他の多孔体の断面積 = 4.0×106 (μm2)
【0051】
(12)沸水収縮率
試料を沸騰水(100℃)中で30分間の処理前の試料長(Lb)、処理後の試料長(La)を測定し、下記式より算出する。繊維試料は繊維軸方向の試料長を測定し、フィルムに関しては、直交する二方向について測定を行いその平均値を収縮率とする。
沸水収縮率 = (Lb−La)/Lb × 100 (%)
【0052】
【実施例1】
常法により調製したエチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度5.8dl/gのポリケトンを、塩化カルシウム29.25wt%/塩化亜鉛23wt%/塩化リチウム9.75wt%を含有する水溶液に添加し、80℃で4時間攪拌溶解し、ポリマー濃度8wt%のドープを得た。
このドープを、図3に示す紡出面9を有する円筒二重管からなるオリフィスを用い、二重管の外側の輪状オリフィス7よりドープを、二重管内側の円形オリフィス8からは水を吐出した。図中、外外径=0.6mm、外内径=0.4mm、内外径=0.3mmである。
【0053】
オリフィスより吐出されたドープは、10mmのエアギャップを経て、凝固剤(B)として温度−2℃の水をはった浴に吐出線速度10.4m/分で押し出され凝固糸条となる。得られたポリケトン凝固糸を1wt%の塩酸水溶液で洗浄し、40℃の温水で仕上げ洗浄を行った後に、速度2.5m/分で曳きとった。
得られたポリケトン中空糸を、90℃の温水で1時間熱水処理を行った。さらに、孔径保持剤(C)として20wt%のグリセリンを含有する水溶液(処理剤(D))が、温度60℃、1L/分の速度で流れる管の中にポリケトン中空糸を配置し、1時間の環流処理を行った。
【0054】
環流処理したポリケトン中空糸を65℃で12時間の加熱処理を行い、中空糸内部にある水を蒸発除去した。
得られた糸は、繊維の中央に貫通した空隙とポリケトン部分(膜部)に平均孔径0.3μmの連続した孔を有する中空糸であり、空隙率は60.2vol%、中空率は.52.1vol%であった。この中空糸は、高い空隙率および中空率を有するにもかかわらず、引っ張り強度が1.5MPa、破断点伸度が52%と非常に優れた力学特性を有していた。
【0055】
この中空糸を用いて、長さ30cm、300本の束からなるモジュールを200本作製した。200本のモジュールには、モジュール作成時の時の欠損は全くなく、取り扱い性および加工性に優れるものであった。
本実施例および以下の実施例で得られた中空糸の性質および性能を表1にまとめて示す。
【0056】
【実施例2】
実施例1において、溶剤を塩化カルシウム39wt%/塩化亜鉛22wt%/チオシアン酸カルシウム1wt%を含有する水溶液とする以外は同様にして中空糸を得た。この中空糸を実施例1と同様にしてモジュールを作製したところ、加工性は良好で破断、欠損は全くなかった。
【0057】
【実施例3】
実施例1において、外外径=0.3mm、外内径=0.2mm、内外径=0.15mmの二重管オリフィスを用いる以外は同様にして中空糸を作製した。
【0058】
【実施例4】
実施例1において、外外径=1.2mm、外内径=0.8mm、内外径=0.6mmの二重管オリフィスを用いる以外は同様にして中空糸を作製した。
【0059】
【実施例5】
実施例1において、処理剤(D)中のグリセリン濃度を60wt%とする以外は同様にして中空糸を作製した。
【0060】
【実施例6】
実施例1において、処理剤(D)中のグリセリン濃度を8wt%とする以外は同様にして中空糸を作製した。
【0061】
【実施例7】
実施例1において、孔径保持剤としてグリセリンの替わりにエチレングリコールを使用する以外は同様にして中空糸を作製した。
【0062】
【実施例8】
実施例1において、孔径保持剤としてグリセリンの替わりにトリエチレングリコールを使用する以外は同様にして中空糸を作製した。
【0063】
【実施例9】
実施例1において、処理剤(D)による処理条件を、90℃、1時間とする以外は同様にして中空糸を作製した。
【0064】
【実施例10】
実施例1において、処理剤(D)による処理として、20wt%グリセリン水溶液を用いて、65℃、30分の処理後に、オートクレーブ中で180℃、30分の処理をする以外は同様にして中空糸を作製した。
【0065】
【実施例11】
実施例1で用いたポリケトンをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)にポリマー濃度7wt%で溶解しドープとした。二重管外側のオリフィスからドープを3m/分の速度で吐出し、二重管内側の円形オリフィスからアセトンを吐出し、凝固浴にアセトン(凝固剤(B))を用い、曳き取り速度を3m/分とする以外は実施例1と同様にして凝固を行った。引き続き、凝固した糸条をアセトンで洗浄し、内部のHFIPを洗浄除去した後に、水洗を行い多孔体内部の液を水に置換し中空糸を得た。
得られたポリケトン中空糸を、90℃の温水で1時間熱水処理を行った後に、孔径保持剤(C)として20wt%のグリセリンを含有する水溶液(処理剤(D)))で60℃、1時間の環流処理を行った。
環流処理したポリケトン中空糸を65℃で12時間の加熱処理を行い、微多孔内部にある水を蒸発除去した。
【0066】
【実施例12】
実施例1において、ドープを極限粘度12.3dl/gのポリケトンを4wt%溶解し、処理剤(D)のグリセリン濃度を60wt%とする以外は同様にして中空糸を作製した。
【0067】
【実施例13】
実施例1において、ドープを極限粘度3.7dl/gのポリケトンを15wt%溶解した以外は同様にして中空糸を作製した。
【0068】
【実施例14】
実施例1で得た中空糸を、窒素気流中で180℃、3分間の熱処理を行った後に、50℃の温水で1時間処理して、中空糸内部に残ったグリセリンを抽出除去した。抽出されたグリセリン量はポリケトンポリマーの1.45倍であった。抽出処理後、60℃で15時間乾燥処理を行い、中空糸内部の水を除去した。乾燥処理後の糸を観察したところ、処理前とほとんど同じ微多孔を有する中空糸であった。
【0069】
【実施例15】
実施例1において、ドープとして、1−オキソトリメチレン97.5wt%および1−オキソ−3−スルホナトリウムトリメチレン2.5wt%からなる極限粘度4.3dl/gのポリケトンを用い、ポリマー濃度を10wt%とする以外は同様にして、中空糸を製造した。
【0070】
【比較例1】
実施例1において、塩酸水溶液洗浄後、曳き取った中空糸を、内部に凝固剤(B)である水のみを含んだ状態で、200℃、3分の乾燥処理を行った。得られた糸は、内部に中空の貫通した孔はあるものの、ポリケトンがある部分の多孔質構造はほとんど消失し、中空糸膜として使用できるものではなくなっていた。
本比較例および以下の比較例で得られた中空糸の特性を表2にまとめて示す。
【0071】
【比較例2】
比較例1において、乾燥条件を120℃、1時間とする以外は同様にして乾燥処理を行った。この場合も、多孔質構造はほとんど消失していた。
【0072】
【比較例3】
比較例1において、乾燥条件を80℃、12時間とする以外は同様にして乾燥処理を行った。この場合も、多孔質構造はほとんど消失していた。
【0073】
【比較例4】
比較例1において、洗浄処理した中空糸をtert−ブチルアルコールに浸漬し、多孔体内部の液体をtert−ブチルアルコールに置換した。巻き取った凝固糸条を液体窒素で凍結後、0.01Paの減圧下10分の乾燥を行った。得られた中空糸は、多孔質構造は維持していたものの、力学特性が低く、特に破断点伸度が19%と小さいものであった。
この中空糸を、実施例1と同様にしてモジュールに加工したが、加工時に10本以上の糸が破断、破損するトラブルが発生した。
【0074】
【比較例5】
実施例11において、アセトン浴で凝固した中空糸を液体窒素で凍結し、0.01Paで減圧乾燥した。得られた中空糸は、力学特性が不十分であった。
この中空糸を、実施例1と同様にしてモジュールに加工したが、加工時に30本以上の糸が破断、破損するトラブルが発生した。
【0075】
【比較例6】
実施例1において、処理剤(D)として、グリセリン20wt%水溶液を用いる替わりに、メタノールを使用し、環流処理条件を50℃、1時間とする以外は同様にして乾留処理を行った。環流処理したポリケトン中空糸を、実施例1と同様に65℃で12時間の加熱処理を行ったところ、中空糸内部の多孔質構造はほとんど消失していた。
【0076】
【比較例7】
実施例1において、処理剤(D)として、グリセリン20wt%水溶液を用いる替わりに、シリコンオイルを使用し、環流処理条件を70℃、1時間とする以外は同様にして環流処理を行った。環流処理したポリケトン中空糸を、実施例1と同様に65℃で12時間の加熱処理を行ったところ、中空糸内部の多孔質構造はほとんど消失していた。
【0077】
【実施例16】
実施例1で得られたポリケトンドープを安田精機(株)社製製膜機(AUTOMATIC FILM APPLICATOR No.542−AB)を用いて、80℃に加温されたガラス板上に厚み0.5mmでキャストした。ドープをキャストしたガラス板を−20℃のメタノール(凝固剤(B))に浸漬し凝固させた後、2℃の水に浸漬し、引き続き20℃の0.1%塩酸水溶液にて洗浄した。さらに、水洗後、90℃の温水で1時間熱水処理を行った後に、孔径保持剤(C)として40wt%のグリセリンを含有する水溶液(処理剤(D))を用いて、実施例1と同様の方法で60℃、1時間の環流処理を行った。
【0078】
環流処理したポリケトン膜を65℃で12時間の加熱処理を行い、多孔体内部にある水を蒸発除去してポリケトン多孔膜を得た。この膜は、厚さ0.27m、平均孔径が0.7μm、孔の体積割合が58.2vol%の微多孔膜であった。この膜の引っ張り強度は1.9MPa、破断点伸度は60%、沸水収縮率は0.2%、融点は252℃であり、優れた力学特性、寸法安定性および耐熱性を有していた。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【発明の効果】
本発明によると、内部に微細な孔を多数有しながら高い破断点伸度を有するポリケトン多孔体が得られる。本発明のポリケトン多孔体は、例えば、繊維状、中空糸状、さらにはフィルム状にして用いることができる。本発明の多孔体は、また、優れた強度、熱特性、寸法安定性および耐薬品性を有しており、汚水処理、含油廃水処理、工業用純水の製造、果汁の処理等の水溶液濾過膜として、また、有機液体中の不純物除去、有機液体の回収等の有機溶液濾過膜として、またイオン性液体の透過膜として、さらには血液や体液の透析膜として有用である。特に、長期間にわたり高い力学的負荷を受ける液体分離膜用途や、欠陥がなく高品質のモジュールが要求される血液分離膜用途に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】中空糸の斜視図である。
【図2】フィルムの斜視図である。
【図3】中空糸製造に用いる二重管オリフィスの紡出面を表す図である。
Claims (13)
- オレフィンと一酸化炭素が共重合したポリケトンから構成された多孔体であって、平均孔径が0.001〜50μmであり、多孔体中の孔の体積割合が20〜90vol%であり、破断点伸度が30%以上であることを特徴とするポリケトン多孔体。
- 平均孔径が0.01〜10μmであり、多孔体中の孔の体積割合が30〜80vol%であり、破断点伸度が40%以上であることを特徴とする請求項1記載のポリケトン多孔体。
- 多孔体が繊維であることを特徴とする請求項1または2記載のポリケトン多孔体。
- 多孔体が長手方向に貫通する孔を一つ以上有する中空糸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリケトン多孔体。
- 中空部の割合が10〜70vol%であることを特徴とする請求項4記載のポリケトン中空糸。
- 多孔体がフィルムであることを特徴とする請求項1または2記載のポリケトン多孔体。
- 請求項1記載のポリケトン多孔体の製造方法であって、溶媒(A)にポリケトンを溶解したドープを凝固剤(B)中に押出して固化させて多孔体とした後に、多孔体を処理剤(D)で処理して多孔体内部に孔径保持剤(C)を含有させ、次いで、40〜250℃で加熱処理をする工程を含むことを特徴とするポリケトン多孔体の製造方法。
ただし、上記(A)〜(D)は,以下のとおりである。
(A)ポリケトンを溶解する能力のある液体
(B)液体(A)と相溶性があり、ポリケトンに対して非溶解性の液体
(C)沸点が120℃以上である物質
(D)ポリケトンを溶解したドープを凝固剤(B)中に押出して固化させた多孔体中に含まれている液体と置換可能な液体に、孔径保持剤(C)を1wt%以上溶解させた溶液 - 溶媒(A)がハロゲン化亜鉛を含有する水溶液であり、凝固剤(B)が水を50wt%以上含有する水溶液であり、孔径保持剤(C)が沸点が120℃以上の水溶性化合物であり、処理剤(D)が水を20wt%以上含有する水溶液であることを特徴とする請求項7記載のポリケトン多孔体の製造方法。
- 孔径保持剤(C)が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エーテル基、エステル基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する有機化合物であることを特徴とする請求項7または8記載のポリケトン多孔体の製造方法。
- 孔径保持剤(C)が、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、メチルセロソルブおよびエチルセロソルブから選ばれる少なくとも1種の化合物を1wt%以上含有する液体であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のポリケトン多孔体の製造方法。
- ポリケトンを溶解したドープを凝固剤(B)中に押出して固化させた多孔体中に含まれている液体と置換可能な液体が、水、アルコール、ケトンおよびエーテルから選ばれる少なくとも1種を含む液体である請求項7記載のポリケトン多孔体の製造方法。
- 処理剤(D)で処理した後に、ポリケトン多孔体中の孔径保持剤(C)の量が1〜90vol%となるように加熱処理する工程を含むことを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載のポリケトン多孔体の製造方法。
- 加熱処理後に、ポリケトン多孔体中に残存する孔径保持剤(C)を、ポリケトン多孔体に対して1wt%未満となるまで抽出除去する工程を含むことを特徴とする請求項7〜12のいずれか1項に記載のポリケトン多孔体の製造方法。
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