JP2010110693A - 複合多孔質分離膜の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】酵素濃縮・回収・分離等に必要な分離性能、透過性能、化学的強度、物理的強度、耐ファウリング性及び耐熱性のいずれの性能にも優れた複合多孔質分離膜の製造方法を提供すること。
【解決手段】下記(1)〜(3)の工程を有する複合多孔質分離膜の製造方法とする。
(1)実質的にポリフッ化ビニリデン系樹脂とその貧溶媒のみを含有する樹脂溶液を冷却液体中に吐出することにより固化させて球状構造層を形成する工程。
(2)前記球状構造層の表面にポリスルホン系樹脂を含有する樹脂溶液を塗布した後、凝固液に接触させることで、三次元網目構造層を前記球状構造層に積層させた積層体とする工程。
(3)前記三次元網目構造層と前記球状構造層との積層体を、110℃以上の加圧水蒸気で熱処理する工程。
【選択図】 なし

Description

本発明は、飲料水製造、浄水処理、排水処理などの水処理分野、医薬品製造分野、食品工業分野、特に酵素濃縮・回収・分離を目的とするバイオマス利活用分野に好適な複合多孔質膜の製造方法に関する。
分離膜は、飲料水製造、浄水処理、排水処理などの水処理分野、食品工業分野等様々な方面で既に利用されている。飲料水製造、浄水処理、排水処理などの水処理分野においては、分離膜が従来の砂ろ過、凝集沈殿過程の代替として水中の不純物を除去するために用いられ、食品工業分野においては、発酵に用いた酵母の分離除去や液体の濃縮に用いられている。
最近、化石資源の枯渇問題と地球温暖化問題が深刻化するにつれて、循環型資源であるバイオマス資源の活用促進が叫ばれるようになってきた。そして、このようなバイオマス利活用分野においても、分離膜を酵素濃縮・回収・分離等に適用することによって、バイオマス資源の有効活用に利用しようとする動きが見られるようになってきた。
バイオマス利活用分野では、分離膜を繰り返し使用する必要があり、膜のバイオファウリングを防止する目的で次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤の添加が適宜行われ、酸・アルカリ・塩素・界面活性剤などによる膜の薬品洗浄も頻繁に実施される。このため、分離膜には、これらの薬品に対する高い化学的強度が求められる。さらに、分離膜には、使用中に破断が起こらないように高い物理的強度も要求される。
また、バイオマス利活用分野では、経済的な観点から、分離膜には優れた耐ファウリング性が求められる。優れた耐ファウリング性とは、(1)長時間安定して分離操作が可能なこと、(2)洗浄操作による透過性能等の回復率が高いことを意味し、優れた耐ファウリング性を備えた分離膜を用いると運転コストが低減される。
上記に加えて、バイオマス利活用分野では、雑菌の繁殖を防止するために熱水による殺菌が頻繁に実施されるため、分離膜に60〜100℃の高温下で繰り返し使用できる程度の耐熱性も要求される。
このように、特にバイオマス利活用分野で使用される分離膜には、分離に必要な分離性能と透過性能、基本的な物性である化学的強度と物理的強度だけでなく、耐ファウリング性及び耐熱性も求められる。
ここで、分離膜に、酵素濃縮・回収・分離に必要な分離性能を発現させるためには、その表面孔径を数nmから数十nm程度に制御する必要がある。このような表面細孔径を有する膜は、一般的に限外ろ過膜と呼ばれる。限外ろ過膜を得るためには、樹脂・溶媒・開孔剤等の原料と製造方法との組み合わせを検討することになるが、上述した各種膜性能が実用的な範囲となる限外ろ過膜を得るための組み合わせは限られており、特に樹脂に対する選択の自由度が小さい。その中で、化学的強度と耐熱性を併せ有し、分離性能と透過性能を両立できる樹脂として、ポリスルホンやポリエーテルスルホンが注目されている。
例えば、特許文献1には、酵素濃縮・回収・分離に必要な表面孔径を有するポリスルホン膜が開示されている。しかしながら、ポリスルホン膜は柔軟さに欠けるために、洗浄を頻繁に行うと屈曲疲労によって破断するおそれがあり、物理的強度を向上させるために膜を厚くすると、透過性能が低くなってしまうという問題を有していた。特に、ポリエーテルスルホンを中空糸膜状に成形した場合には、剛直な中空糸膜となる反面、柔軟さに欠けるために糸切れを起こしやすいという問題を有していた。すなわち、物理的強度と透過性能を両立することが困難であり、物理的強度を維持しつつ透過性能を向上することが課題であった。
そこで、特許文献2に記載されているように、分離機能を担う層と物理的強度を担う層との積層によって、物理的強度と透過性能の両立が図られた。この膜は、物理的強度に優れたポリフッ化ビニリデン製内層部の上に、分離機能を有するポリフッ化ビニリデンやポリスルホン表層部を被覆してなる複合膜である。ポリフッ化ビニリデンもポリスルホンも化学的強度の高い樹脂であり、内層部と表層部を独自に設計できるため、バイオマス利活用分野に必要な分離膜性能を高いレベルでバランスすることができる膜であると考えられた。しかしながら、ポリフッ化ビニリデン製内層部の上にポリフッ化ビニリデン製表層部を積層させた場合は、酵素分離性能と透過性能を両立することができなかった。また、ポリフッ化ビニリデン製内層部の上にポリスルホン表層部を積層させた場合には、内層部と表層部を構成する樹脂が異なるために、内層部と表層部とで界面剥離が生じ、膜使用中の糸切れや表層部剥離を惹起してしまう。このような物理的強度の低い膜では、精密なろ過が要求される酵素濃縮・回収・分離には、使用することができなかった。
特開平11−215980号公報 国際公開第03/106545号パンフレット
本発明は、従来の技術の上述した問題点に鑑み、酵素濃縮・回収・分離等に必要な分離性能、透過性能、化学的強度、物理的強度、耐ファウリング性及び耐熱性のいずれの性能にも優れた複合多孔質分離膜の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明は、下記(i)〜(iv)の構成によって達成される。
(i)下記(1)〜(3)の工程を有する複合多孔質分離膜の製造方法。
(1)実質的にポリフッ化ビニリデン系樹脂とその貧溶媒のみを含有する樹脂溶液を冷却液体中に吐出することにより固化させて球状構造層を形成する工程。
(2)前記球状構造層の表面にポリスルホン系樹脂を含有する樹脂溶液を塗布した後、凝固液に接触させることで、三次元網目構造層を前記球状構造層に積層させた積層体とする工程。
(3)前記三次元網目構造層と前記球状構造層との積層体を、110℃以上の加圧水蒸気で熱処理する工程。
(ii)加圧水蒸気が、121℃以上である(i)記載の複合多孔質分離膜の製造方法。
(iii)前記ポリスルホン系樹脂を含有する樹脂溶液に、界面活性剤を含有させる(i)または(ii)に記載の複合多孔質分離膜の製造方法。
(iv)球状構造の平均直径を0.1μm以上5μm以下とする(i)〜(iii)のいずれかに記載の複合多孔質分離膜の製造方法。
本発明によれば、三次元網目構造層と球状構造層との積層体を、110℃以上の加圧水蒸気で熱処理することによって、三次元網目構造層と球状構造層とが強固に接着された複合孔質分離膜が製造される。ここで、球状構造層は、実質的にポリフッ化ビニリデン系樹脂のみからなるので、薬液洗浄を行っても球状構造の物理的強度は低下しない。この球状構造によって膜全体の物理的強度が担われるため、複合多孔質膜は剛直さと柔軟さを併せ示し、薬液洗浄を行っても膜全体の物理的強度が低下せず、糸切れを防止できる。一方、三次元網目構造層は、ポリエーテルスルホン系樹脂を含有するため、化学的強度と耐熱性を併せ有するだけでなく、酵素濃縮・回収・分離に必要な分離性能と透過性能を両立するように設計することが容易になる。さらに、球状構造層によって物理的強度が付与されているため、三次元網目構造層を薄くすることが可能となり、透過性能を高くすることができる。従って、得られた分離膜は、酵素濃縮・回収・分離等に必要な分離性能、透過性能、化学的強度、物理的強度、耐ファウリング性、耐熱性の諸性能を従来膜よりも高くすることが可能になる。
本発明の複合多孔質分離膜の製造方法は、下記(1)〜(3)の工程を有することを特徴とする。すなわち、(1)実質的にポリフッ化ビニリデン系樹脂とその貧溶媒のみを含有する樹脂溶液を冷却液体中に吐出することにより固化させて球状構造層を形成する工程、(2)前記球状構造層の表面にポリスルホン系樹脂を含有する樹脂溶液を塗布した後、凝固液に接触させることで、三次元網目構造層を前記球状構造層に積層させた積層体とする工程、(3)前記三次元網目構造層と前記球状構造層との積層体を、110℃以上の加圧水蒸気で熱処理する工程である。
まず、(1)の工程では、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の球状構造層を製造する。ここで、球状構造とは、多数の球状もしくは略球状の固形分が、直接もしくは筋状の固形分を介して連結している構造のことをいう。球状構造の平均直径が大きくなると、空隙率が高くなり透過性能が増大するが、物理的強度が低下する。一方、平均直径が小さくなると、空隙率が低くなり、物理的強度が増大するが、透過性能が低下する。従って、球状構造の平均直径は0.1μm以上5μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以上4μm以下である。球状構造の平均直径は、分離膜の断面を走査型電子顕微鏡で例えば10000倍で写真撮影し、10個以上、好ましくは20個以上の任意の球状構造の直径を測定し、数平均して求める。画像処理装置等を用いて、球状構造の直径の平均値を求め、等価円直径の平均孔径とすることも好ましく採用できる。
このような球状構造からなる層、すなわち球状構造層は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を20重量%以上60重量%以下程度の比較的高濃度で、該樹脂の貧溶媒に比較的高温で溶解して樹脂溶液を調製し、該樹脂溶液を冷却液体中に吐出して冷却固化することにより相分離せしめて製造する。
本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂とは、フッ化ビニリデンホモポリマーおよび/またはフッ化ビニリデン共重合体を含有する樹脂のことである。複数の種類のフッ化ビニリデン共重合体を含有していても良い。フッ化ビニリデン共重合体としては、フッ化ビニル、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、三フッ化塩化エチレンから選ばれる少なくとも1種とフッ化ビニリデンとの共重合体が挙げられる。また、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量は、要求される分離膜の物理的強度と透過性能によって適宜選択すれば良いが、重量平均分子量が大きくなると透過性能が低下し、重量平均分子量が小さくなると物理的強度が低下する。このため、重量平均分子量は5万以上100万以下が好ましい。特に、分離膜が薬液洗浄に晒される場合、重量平均分子量は10万以上70万以下が好ましく、さらに15万以上60万以下が好ましい。
なお、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を20重量%以上60重量%以下程度の比較的高濃度で、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の貧溶媒に、80〜170℃程度の比較的高温で溶解して該樹脂溶液を調製することが好ましい。樹脂濃度は高くなれば高い強度、伸度を有する分離膜が得られるが、高すぎると分離膜の空孔率が小さくなり透過性能が低下する。また、該樹脂溶液の粘度が適正な範囲に無ければ、取り扱いが困難であり、製膜することができなくなる。従って、樹脂濃度は、30重量%以上50重量%以下の範囲とすることがより好ましい。
また、貧溶媒とは、樹脂を60℃以下の低温では、5重量%以上溶解させることができないが、60℃以上かつ樹脂の融点以下(例えば、樹脂がフッ化ビニリデンホモポリマー単独で構成される場合は178℃程度)の高温領域で5重量%以上溶解させることができる溶媒のことである。貧溶媒に対し、60℃以下の低温領域でも樹脂を5重量%以上溶解させることができる溶媒を良溶媒、樹脂の融点または溶媒の沸点まで、樹脂を溶解も膨潤もさせない溶媒を非溶媒と定義する。本発明で用いるポリフッ化ビニリデン系樹脂の貧溶媒としては、シクロヘキサノン、イソホロン、γ−ブチロラクトン、メチルイソアミルケトン、フタル酸ジメチル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレンカーボネート、ジアセトンアルコール、グリセロールトリアセテート等の中鎖長のアルキルケトン、エステル、グリコールエステルおよび有機カーボネート等およびそれらの混合溶媒が挙げられる。非溶媒と貧溶媒の混合溶媒であっても、上記貧溶媒の定義を満足するものは、貧溶媒であると定義する。
該樹脂溶液を冷却固化するにあたっては、口金から該樹脂溶液を冷却浴中に吐出する方法が好ましい。この際、冷却浴に用いる冷却液体としては温度が5〜50℃であり、濃度が60〜100重量%の貧溶媒もしくは良溶媒を含有する液体を用いて固化させることが好ましい。冷却液体には、貧溶媒、良溶媒以外に非溶媒を含有していても良いが、冷却液体に非溶媒を主成分とする液体を用いると、冷却固化による相分離よりも非溶媒滲入による相分離が優先し、球状構造が得られにくくなる。ポリフッ化ビニリデン系樹脂を比較的高濃度で、該樹脂の貧溶媒に比較的高温度で溶解し、急冷して固化することによって、得られる分離膜の構造は、球状構造、もしくは、緻密な網目構造となる。球状構造を形成させるためには、樹脂溶液の濃度および温度、用いる溶媒の組成、冷却液体の組成および温度の組み合わせで制御しなければならない。
分離膜の形状を中空糸膜とする場合には、樹脂溶液を調製した後、二重管式口金の外側の管から吐出するとともに、中空部形成流体を二重管式口金の内側の管から吐出しながら冷却浴中で固化して、中空糸膜とする。この際、中空部形成流体には、通常気体もしくは液体を用いることができるが、本発明においては、冷却液体と同様の濃度が60〜100重量%の貧溶媒もしくは良溶媒を含有する液体を用いることが好ましく採用できる。なお、中空部形成流体は冷却して供給しても良いが、冷却浴の冷却力のみで中空糸膜を固化するのに十分な場合は、中空部形成流体は冷却せずに供給しても良い。
また、分離膜の形状を平膜とする場合には、樹脂溶液を調製した後、スリット口金から吐出し、冷却浴中で固化し平膜とする。
このようにして得られた球状構造層は、実質的にポリフッ化ビニリデン系樹脂のみからなるので、薬液洗浄を行っても球状構造の物理的強度は低下しない。この球状構造によって膜全体の物理的強度が担われるため、複合多孔質膜は剛直さと柔軟さを併せ示し、薬液洗浄を行っても膜全体の物理的強度が低下せず、糸切れを防止できる。
次に、(2)の工程では、(1)で得られたポリフッ化ビニリデン系樹脂の球状構造層に、分離機能を担うポリスルホン系樹脂の三次元網目構造層を積層させた積層体を製造する。ここで、三次元網目構造とは、固形分が三次元的に網目状に広がっている構造のことをいう。三次元網目構造は、網を形成する固形分に仕切られた細孔およびボイドを有する。このような三次元網目構造からなる層、すなわち三次元網目構造層は、球状構造層の上に、ポリスルホン系樹脂溶液を塗布した後、凝固浴に接触させることで、球状構造層の上に積層させて製造する。
三次元網目構造層と球状構造層の上下や内外の配置は、ろ過方式によって変えることができるが、三次元網目構造層が分離機能を担い、球状構造層が物理的強度を担うため、三次元網目構造層を分離対象側に配置することが好ましい。特に、汚れ物質の付着による透過性能の低下を抑制するためには、分離機能を担う三次元網目構造層を分離対象側の最表層に配置することが好ましい。三次元網目構造層と球状構造層の各厚みは、分離特性、透水性能、化学的強度(耐薬品性)、物理的強度、耐汚れ性の各性能が要求される条件を満足するように自由に調整できるが、三次元網目構造層が薄いと分離特性や物理的強度が低く、厚いと透水性能が低くなる。球状構造層が薄いと物理的強度が低く、厚いと透水性能が低くなる。従って、上述した各性能のバランスや運転コストを考慮すると、三次元網目構造層の厚みは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上40μm以下が良く、球状構造層の厚みは100μm以上500μm以下、より好ましくは200μm以上300μm以下が良い。さらに、三次元網目構造層と球状構造層の厚みの比も上述した各性能や運転コストにとって重要であり、三次元網目構造層の割合が大きくなると物理的強度が低下する。従って、三次元網目構造層の平均厚みの球状構造層の平均厚みに対する比は、0.03以上0.25以下が良く、より好ましくは0.05以上0.15以下が良い。なお、球状構造と三次元網目構造の界面は、両者が互いに入り組んだ構造をしている。本発明における球状構造層とは、走査型電子顕微鏡を用いて3000倍で、分離膜の断面を写真撮影した際に、球状構造が観察される範囲の層をいう。また、本発明における三次元網目構造層とは、走査型電子顕微鏡を用いて3000倍で、分離膜の断面を写真撮影した際に、球状構造が観察されない範囲の層をいう。
ここで、本発明の三次元網目構造を形成させるためのポリスルホン系樹脂を含有する樹脂溶液は、ポリスルホン系樹脂および溶媒で構成されるものである。
本発明のポリスルホン系樹脂とは、一般式(a−1)および/または一般式(a−2)で表される構造を繰り返し単位として有するものである。ここで、式中のRは、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜8のアリール基を表し、mは0〜3の整数を表す。Yは直接結合、酸素、硫黄、SO、CO、もしくはC(CHを表す。代表的なポリスルホン系樹脂として、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンを例示することができる。
また、ポリスルホン系樹脂の溶媒としては、良溶媒を用いることが好ましい。ポリスルホン系樹脂の良溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、テトラメチル尿素、リン酸トリメチル等の低級アルキルケトン、エステル、アミド等およびそれらの混合溶媒が挙げられる。ポリスルホン系樹脂溶液の樹脂濃度は、通常5〜30重量%が好ましく、より好ましくは10〜25重量%の範囲である。5重量%未満では、三次元網目構造層の物理的強度が低下し、30重量%を超えると透過性能が低下する。また、ポリスルホン系樹脂溶液は、ポリスルホン系樹脂や溶媒の種類、後述する界面活性剤の種類・濃度によって溶解温度が異なる。再現性良く安定な該樹脂溶液を調製するためには、溶媒の沸点以下の温度で攪拌しながら数時間加熱して、透明な溶液となるようにすることが好ましい。さらに、該溶液を塗布する際の温度も重要であり、分離膜を安定して製造するためには、該樹脂溶液の安定性を損なわないように温度を制御しつつ、系外からの非溶媒の侵入を防止することが好ましい。
分離膜の形状が中空糸膜である場合、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の球状構造層の上に、ポリスルホン系樹脂溶液を塗布する方法としては、中空糸膜を該樹脂溶液中に浸漬したり、中空糸膜に該樹脂溶液を滴下したりする方法が好ましく用いられ、中空糸膜の内表面側に該樹脂溶液を塗布する方法としては、該樹脂溶液を中空糸膜内部に注入する方法などが好ましく用いられる。さらに、該樹脂溶液の塗布量を制御する方法としては、該樹脂溶液の塗布量自体を制御する以外に、分離膜を該樹脂溶液に浸漬したり、分離膜に該樹脂溶液を塗布した後に、該樹脂溶液の一部を掻き取ったり、エアナイフを用いて吹き飛ばしたりする方法も好ましく用いられる。
また、分離膜の形状を平膜とする場合、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の球状構造層の上に、ポリスルホン系樹脂溶液を塗布する方法としては、平膜を該樹脂溶液中に浸漬したり、平膜に該樹脂溶液を滴下したりする方法が好ましく用いられる。さらに、該樹脂溶液の塗布量を制御する方法としては、該樹脂溶液の塗布量自体を制御する以外に、分離膜を該樹脂溶液に浸漬したり、分離膜に該樹脂溶液を塗布した後に、該樹脂溶液の一部を掻き取ったり、エアナイフを用いて吹き飛ばしたりする方法も好ましく用いられる。
ここで、凝固浴は、ポリスルホン系樹脂の非溶媒を含むことが好ましい。非溶媒としては、水、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、四塩化炭素、o−ジクロルベンゼン、トリクロルエチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、低分子量のポリエチレングリコール等の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族多価アルコール、芳香族多価アルコール、塩素化炭化水素、またはその他の塩素化有機液体およびそれらの混合溶媒が好ましく用いられる。このような非溶媒に、塗布された樹脂溶液を接触させることで、非溶媒誘起相分離が生じ、三次元網目構造層が形成される。
三次元網目構造層の表面孔径や空隙率を制御するために、ポリスルホン系樹脂溶液に、孔径を制御するための添加剤を入れ、三次元網目構造を形成する際に、または、三次元網目構造を形成した後に、該添加剤を溶出させてもよい。該添加剤としては、有機化合物および無機化合物が挙げられる。有機化合物としては、ポリスルホン系樹脂溶液に用いる溶媒および非溶媒誘起相分離を起こす非溶媒の両方に溶解するものが好ましく用いられる。例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、デキストランなどの水溶性ポリマー、界面活性剤、グリセリン、糖類などを挙げることができる。無機化合物としては、ポリスルホン系樹脂溶液に用いる溶媒および非溶媒誘起相分離を起こす非溶媒の両方に溶解するものが好ましく、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、硫酸バリウムなどを挙げることができる。ここで、界面活性剤は、表面孔径や空隙率の制御だけでなく、親水性の付与や球状構造層と三次元網目構造層との接着力強化に寄与し、その結果、透過性能、耐ファウリング性、物理的強度などの分離膜の諸性能を改善する効果があるため、特に好ましく用いられる。また、添加剤を用いずに、凝固浴における非溶媒の種類、濃度および温度によって相分離速度を制御し、表面孔径を制御することも可能である。一般的には、相分離速度が速いと表面孔径が小さく、遅いと大きくなる。また、該樹脂溶液に非溶媒を添加することも、相分離速度の制御に有効である。
本発明の複合多孔質分離膜は、バイオマス利活用分野、特に酵素濃縮・回収・分離に好適に使用される。酵素は、例えばセルロース分解活性を有する酵素であるセルラーゼを挙げることができる。セルラーゼには、結晶性セルロースの分解活性を有するエキソ型セルラーゼ(エキソセロビオハイドロラーゼ)、あるいはエンド型セルラーゼ(エンドグルコシダーゼ)があり、グルコースの生成効率を向上させるためのセロビオース分解酵素であるβグルコシダーゼがある。これらセルラーゼの分子量が数万Da程度であるため、分離膜を用いた濃縮・回収・分離を効率良く実施するためには、分離膜の表面孔径を数nmから数十nm程度に制御することが好ましい。
このような表面細孔径を有する膜は、一般的に限外ろ過膜と呼ばれる。限外ろ過膜を得るためには、樹脂・溶媒・開孔剤等の原料と製造方法との組み合わせを検討することになるが、分離に必要な分離性能と透過性能、基本的な物性である化学的強度と物理的強度だけでなく、耐ファウリング性及び耐熱性が実用的な範囲となる限外ろ過膜を得るための組み合わせは限られており、特に樹脂に対する選択の自由度が小さい。このため、本発明では、化学的強度と耐熱性を併せ有し、分離性能と透過性能を両立できる樹脂として、ポリスルホン系樹脂を三次元網目構造層に含有させている。
ここで、限外ろ過膜の表面孔径は、精密ろ過膜とは異なり、電子顕微鏡による観察・計測が困難なため、孔径の代わりに分画分子量という値を指標とすることになっている。分画分子量とは、日本膜学会編膜学実験シリーズ 第III巻 人工膜編 編集委員/木村尚史・中尾真一・大矢晴彦・仲川勤(1993 共立出版) P92に、『溶質の分子量を横軸に、阻止率を縦軸にとってデータをプロットしたものを分画分子量曲線とよんでいる。そして阻止率が90%となる分子量を膜の分画分子量とよんでいる。』とあるように限外ろ過膜の膜性能を表す指標として当業者には周知である。
本発明の製造方法によって得られる複合多孔質分離膜は、三次元網目構造層が分離機能を担う。分離膜を、酵素濃縮・回収・分離に適用する場合には、分画分子量が1,000Da以上100,000Da以下が好ましく、より好ましくは5,000Da以上50,000Da以下であり、さらに好ましくは10,000Da以上35,000Da以下となるように三次元網目構造層を設計すると良い。
このようにして得られた三次元網目構造層は、ポリエーテルスルホン系樹脂を含有するため、化学的強度と耐熱性を併せ有するだけでなく、酵素濃縮・回収・分離に必要な分離性能と透過性能を両立するように設計することが容易になる。さらに、球状構造層によって物理的強度が付与されているため、三次元網目構造層を薄くすることが可能となり、透過性能を高くすることができる。
しかしながら、異なる樹脂を積層させる場合、収縮率や表面張力等の樹脂物性が異なるため、両者の界面で剥離が生じやすい。このような界面剥離を抑制する方法としては、例えば、いずれかの樹脂の融点にまで加熱してその樹脂を溶解せしめ、界面付近の樹脂を再構成させる方法があり、両者の接着性は改善される。特に、加圧下加熱処理すると、両者の接着性は大きく改善される。しかしながら、この方法では、分離膜全体、特に界面付近が緻密になるために、分離膜の重要な性能である透過性能が大きく低下してしまう。樹脂の融点はしばしば100℃以上であり、このような加熱処理は通常100℃以上で実施されるため、分離膜が乾燥し、透過性能のさらなる低下と分離膜の圧壊が惹起される。
分離膜の乾燥を避ける加熱処理としては、熱水や水蒸気を媒体に用いる方法があるが、水の沸点以下、すなわち100℃以下でしか処理できないため、接着性は改善され難い。
そこで、発明者らは、透過性能を損なうことなく、三次元網目構造層と球状構造層とを強固に接着させる方法を鋭意検討し、110℃以上の加圧水蒸気で熱処理することを見出した。(3)の工程では三次元網目構造層と球状構造層との接着性を改善するために、(2)で得られたポリフッ化ビニリデン系樹脂の球状構造層とポリスルホン系樹脂の三次元網目構造層との積層体を、110℃以上の加圧水蒸気で熱処理する。
この熱処理は、前記積層体を加圧水蒸気中に供給することによって達成できるが、その供給方法はバッチ式でも連続式でも良い。
バッチ式の場合、例えば、加圧水蒸気を発生することができるオートクレーブと呼ばれる装置内に前記積層体を供給し、所定温度で所定時間熱処理を行えば良い。オートクレーブとしては、市販の装置を利用することが可能であり、所望の加圧水蒸気温度・時間をプログラムにより制御することができるものもある。
連続式の場合、例えば、加圧水蒸気を供給する部屋を設け、その出入り口をラビリンスシール等によって可能な限り小さくするようにし、加圧水蒸気の散逸を避けるようにする。この部屋に前記積層体を連続的に供給し、所定温度で所定時間熱処理を行えば良い。熱処理を施す時間は、部屋内の積層体の移動時間(供給速度や積層体の移動距離)で制御することができる。
本発明の目的である三次元網目構造層と球状構造層とを強固に接着させるためには、加圧水蒸気による熱処理は、110℃以上であることが必要であり、さらには、121℃以上であることが好ましい。一方、加圧水蒸気による熱処理温度が高くなりすぎると、分離膜が緻密化しやすくなり、透過性能が低下しやすくなるので、150℃以下が好ましく、さらには140℃以下が好ましい。
熱処理を行う時間は、特に限定されないが、短時間すぎると接着性の改善効果が小さく、長時間すぎると経済的に不利になる。上述した加圧水蒸気による熱処理温度と熱処理時間とを、接着性の改善効果と経済性のバランスなどを考慮しながら決定すれば良いが、例えば110℃では熱処理時間を10〜60分、121℃では熱処理時間を5〜50分とすることが好ましい。このような加圧水蒸気による熱処理の条件は、プログラムによって条件制御が可能なオートクレーブを用いると、効率良く決定できる。
本発明の複合多孔質分離膜の製造方法である上述した(1)〜(3)の工程を含むことによって、三次元網目構造層と球状構造層とが強固に接着した複合多孔質分離膜が得られる。本発明において、界面剥離が見られるか否かは、走査型電子顕微鏡(S−800)(日立製作所製)を用いて、球状構造層−三次元網目構造層の界面を60及び/または3000倍で10ヶ所、好ましくは20ヶ所以上写真撮影し、両層の界面付近に、「厚み:20μm以上、幅:20μm以上の割れ」が観察されるか否かで判定する。このような割れを有する分離膜では、特に、酵素濃縮・回収・分離を目的とする場合に、酵素を漏洩してしまうために、分離膜の適用が困難になる。
なお、本発明の複合多孔質分離膜の製造方法は、上述した(1)〜(3)の工程を含むことを必須とするが、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、その他の工程が付加されても構わない。また、本発明の複合多孔質分離膜を構成する三次元網目構造層および球状構造層には、それぞれ発明の目的を阻害しない範囲であれば、他の成分、例えば、有機物、無機物、高分子などが含まれていても良い。さらに、本発明の製造方法によって得られた複合多孔質分離膜は、球状構造層と三次元網目構造層以外の層、例えば多孔質基材などの支持体層を含んでいても良い。多孔質基材としては、有機材料、無機材料等、特に限定されないが、軽量化しやすい点から有機繊維が好ましい。さらに好ましくは、セルロース系繊維、酢酸セルロース系繊維、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリエチレン系繊維などの有機繊維からなる織布や不織布である。
そして、本発明の製造方法によって得られた複合多孔質分離膜は、原液流入口や透過液流入口などを備えたケーシングに収容され膜モジュールとして使用される。膜モジュールは、膜が中空糸膜である場合には、中空糸膜を複数本束ねて円筒状の容器に納め、両端または片端をポリウレタンやエポキシ樹脂等で固定して、透過液を回収できるようにしたもの、平板状に中空糸膜を固定して透過液を回収できるようにしたものが挙げられる。膜が平膜状である場合には、平膜を集液管の周りに封筒状に折り畳みながらスパイラル状に巻き取り、円筒状の容器に納め、透過液を回収できるようにしたもの、集液管の両面に平膜を配置して周囲を密に固定し、透過液を回収できるようにしたものが挙げられる。
そして、膜モジュールは、少なくとも原液側に加圧手段または透過液側に吸引手段を設け、水などを分離する分離装置として用いられる。加圧手段としてはポンプを用いても良いし、水位差による圧力を利用してもよい。また、吸引手段としては、ポンプやサイフォンを利用すればよい。
この分離装置は、水処理分野であれば浄水処理、上水処理、排水処理、工業用水製造などで利用でき、河川水、湖沼水、地下水、海水、下水、排水などを被処理水とする。
また、上記の複合多孔質分離膜は、電池の内部で正極と負極とを分離する電池用セパレーターに用いることもでき、この場合、イオンの透過性が高いことによる電池性能の向上や、破断強度が高いことによる電池の耐久性向上などの効果が期待できる。
そして、上記の分離膜を血液浄化用膜として用いると、血中老廃物の除去性向上や、破断強度が高いことによる血液浄化用膜の耐久性向上などが期待できる。
以下に具体的実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
実施例および比較例における測定は、次のとおり行った。
1.水透過性能
分離膜に、温度25℃の蒸留水を操作圧力0.1MPaで供給したときの、単位時間(d)及び単位面積(m)当たりの透過水量(m)を測定し、水透過性能(m/m/d)を算出した。なお、実際には、ろ過時間は1時間とした。そして、得られた透過水量を24倍することにより、単位時間(d)に換算した。
2.ろ過前後のセロビオース分解活性
分離膜が、酵素濃縮・回収・分離に適用できるかどうかを評価するためには、ろ過前後の酵素濃度を測定し、酵素濃縮の程度を評価すれば良い。ここで、ろ過前後の酵素濃度は、ろ過前後の酵素液のセロビオース分解活性に比例することが分かっている。このため、ろ過前後のセロビオース分解活性の比「(ろ過後セロビオース分解活性)/(ろ過前セロビオース分解活性)」を求めることによって、分離膜の酵素濃縮・回収・分離への適用性を判断することができる。
酵素としては、βグルコシダーゼであるノボザイム188(分子量:約100、000Da、シグマ・アルドリッチ・ジャパン)を用いた。1.4gのノボザイム188を7Lの0.05M酢酸緩衝液(pH=5)に添加して、200ppm酵素液を調製した。
分離膜に、温度35℃の200ppm酵素液100mLを操作圧力0.1MPaで供給し、50mLをろ過した。このろ過操作は、2倍濃縮操作に相当する。このため、(ろ過後セロビオース分解活性)/(ろ過前セロビオース分解活性)は、系外からの汚染が無いなど理想的には1以上2以下の数値となる。そして、(ろ過後セロビオース分解活性)/(ろ過前セロビオース分解活性)が2に近い分離膜ほど、酵素濃縮・回収・分離に適していることになる。
なお、ろ過前後の酵素液のセロビオース分解活性は、以下の方法で求めることができる。
まず、ろ過前の200ppm酵素液から5mL抜き取り、95mLの0.05M酢酸緩衝液(pH=5)を添加して20倍に希釈したテスト液(ろ過前)を調製する。
次に、ろ過後に残存した酵素液から5mLを回収し、95mLの0.05M酢酸緩衝液(pH=5)を添加して20倍に希釈したテスト液(ろ過後)を調製する。
そして、15mMのセロビオース溶液250μL(50mM酢酸緩衝液、pH5.0)に対し、テスト液(ろ過前)あるいはテスト液(ろ過後)を250μL添加し、50℃で30分間反応させた後、生成したグルコース濃度の測定を行った。生成したグルコース濃度は、グルコーステスト和光(和光純薬工業)で測定した。
最後に、テスト液(ろ過前)あるいはテスト液(ろ過後)のセロビオース分解活性1ユニット(U)を下記の式に準じて算出し、それぞれをろ過後セロビオース分解活性、ろ過前セロビオース分解活性とした。
セロビオース分解活性(1ユニット(U))=生成したグルコース濃度(g/L)×1000÷180÷30
3.伸度
引張り試験機(TENSILON(登録商標)/RTM−100)(東洋ボールドウィン製)を用いて、測定長さ50mmの試料を引張り速度50mm/分で、試料を変えて引張り試験を5回行って破断伸度を測定し、破断伸度の平均値を伸度とした。
4.球状構造層−三次元網目構造層の界面剥離の有無
走査型電子顕微鏡(S−800)(日立製作所製)を用いて、球状構造層−三次元網目構造層の界面を60倍で10ヶ所写真撮影し、界面剥離の有無を判定した。すなわち、両層の界面付近で、「厚み:20μm以上、幅:20μm以上の割れ」が観察される時に界面剥離有りと判定し、その割れが観察されない時に界面剥離無しと判定した。
5.三次元網目構造層の平均厚み、球状構造層の平均厚み
三次元網目構造層の平均厚みや球状構造層の平均厚みは、分離膜の断面を上記の走査型電子顕微鏡を用いて100倍および1000倍で写真撮影し、その写真から次のような方法で算出した。まず、三次元網目構造層の平均厚みを次の方法で求めた。実施例の分離膜は外層に三次元網目構造層を有し、内層に球状構造を有している。1000倍の写真において、外層表面の任意の1点から内層に向かって外層表面接線に対して垂直に進み、初めて球状構造が観察されるまでの距離を測定する。この距離が、三次元網目構造層の厚みである。この操作を任意の30カ所で行い、数平均して、三次元網目構造層の平均厚みを算出した。同様にして、球状構造層の平均厚みも算出できるが、実施例では球状構造層が厚いため、分離膜断面の表面から反対側の表面までを1000倍で写真撮影すると画面に収まらず、数枚の写真を貼り合わせなければならない。そこで、1000倍で数枚の写真撮影を行う代わりに、次の方法を選択した。すなわち、100倍で写真撮影し、分離膜の厚み(分離膜断面の表面から反対側の表面まで)を求める。この分離膜の厚みから三次元網目構造層の平均厚みを引き算したものが球状構造層の厚みである。この操作を任意の30カ所で行い、数平均して、球状構造層の平均厚みを算出した。
6.分画分子量
分離膜の分画分子量は、6種類の分子量の異なるデキストラン(FULKA製 No.31394;分子量 約1,200、No.31388;分子量 約6,000、No.31387;分子量15,000〜20,000、No.31389;分子量 約40,000、No.31397;分子量56,000、No.31398;分子量222,000)の5,000ppm水溶液をろ過し、原水と透過水のデキストラン濃度を示差屈折率計で測定し、デキストランの分子量を横軸に、阻止率を縦軸にとってデータをプロットし、阻止率が90%となるデキストランの分子量を分画分子量とすることにより求めた。なお、阻止率(%)=[1−(透過水中のデキストラン濃度)/(原水中のデキストラン濃度)]×100で求めた。
<実施例1>
重量平均分子量41.7万のポリフッ化ビニリデン(PVDF)とγ−ブチロラクトンとを、それぞれ38重量%と62重量%の割合で170℃の温度で溶解した。この高分子溶液をγ−ブチロラクトン80重量%水溶液を中空部形成液体として随伴させながら口金から吐出し、温度20℃のγ−ブチロラクトン80重量%水溶液からなる冷却浴中で固化して、中空糸膜状に球状構造層を形成させた。
次いで、重量平均分子量5万のポリエーテルスルホン(PES)を20重量%、界面活性剤:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(三洋化成工業、ニューポール(登録商標)PE−108)を3重量%、N−メチル−2−ピロリドンを77重量%の割合で60℃の温度で混合溶解して樹脂溶液を調製した。この樹脂原液を、中空糸膜状に成形した球状構造層の表面に均一に塗布し、すぐに水浴中で凝固させて球状構造層の上に三次元網目構造層を積層させた中空糸膜状の積層体を作製した。
最後に、得られた三次元網目構造層と前記球状構造層との中空糸膜状の積層体を、50cmの長さにカットし、オートクレーブ(トミー精工 オートクレーブES―315)に入れ、121℃の加圧水蒸気(水蒸気の圧力:110kPa)で20分間熱処理した。
得られた中空糸膜は、外径:1440μm、内径:780μm、球状構造の平均直径:3.0μm、三次元網目構造層の平均厚み:80μm、球状構造層の平均厚み:250μm、水透過性能:1.3m/m/d、伸度:41%、分画分子量:30,000Daであった。
得られた中空糸膜の断面写真を図1に示す。
球状構造層−三次元網目構造層の界面剥離を走査型電子顕微鏡写真で観察した結果、「厚み:20μm以上、幅:20μm以上の割れ」は観察されず、界面剥離無しであった。
分離膜に、酵素液100mLを供給し、50mLをろ過した結果、(ろ過後セロビオース分解活性)/(ろ過前セロビオース分解活性)は1.95であった。従って、得られた複合多孔質分離膜は、(ろ過後セロビオース分解活性)/(ろ過前セロビオース分解活性)が高く、酵素濃縮・回収・分離に適していることが分かった。なお、評価結果を表1にまとめた。
<実施例2>
実施例1と同様の方法で中空糸膜状の積層体を作製した。
得られた三次元網目構造層と前記球状構造層との中空糸膜状の積層体を、50cmの長さにカットし、オートクレーブ(トミー精工 オートクレーブES―315)に入れ、130℃の加圧水蒸気(水蒸気の圧力:185kPa)で15分間熱処理した。
得られた中空糸膜は、外径:1440μm、内径:780μm、球状構造の平均直径:3.0μm、三次元網目構造層の平均厚み:80μm、球状構造層の平均厚み:250μm、水透過性能:1.2m/m/d、伸度:35%、分画分子量:28,000Daであった。
得られた中空糸膜の断面写真を図2に示す。
球状構造層−三次元網目構造層の界面剥離を走査型電子顕微鏡写真で観察した結果、「厚み:20μm以上、幅:20μm以上の割れ」は観察されず、界面剥離無しであった。
分離膜に、酵素液100mLを供給し、50mLをろ過した結果、(ろ過後セロビオース分解活性)/(ろ過前セロビオース分解活性)は1.98であった。従って、得られた複合多孔質分離膜は、(ろ過後セロビオース分解活性)/(ろ過前セロビオース分解活性)が高く、酵素濃縮・回収・分離に適していることが分かった。なお、評価結果を表1にまとめた。
<実施例3>
実施例1と同様の方法で中空糸膜状の積層体を作製した。
得られた三次元網目構造層と前記球状構造層との中空糸膜状の積層体を、50cmの長さにカットし、オートクレーブ(トミー精工 オートクレーブES―315)に入れ、110℃の加圧水蒸気(水蒸気の圧力:42kPa)で20分間熱処理した。
得られた中空糸膜は、外径:1440μm、内径:780μm、球状構造の平均直径:3.0μm、三次元網目構造層の平均厚み:80μm、球状構造層の平均厚み:250μm、水透過性能:1.4m/m/d、伸度:40%、分画分子量:31,000Daであった。
球状構造層−三次元網目構造層の界面剥離を走査型電子顕微鏡写真で観察した結果、「厚み:20μm以上、幅:20μm以上の割れ」は観察されず、界面剥離無しであった。
分離膜に、酵素液100mLを供給し、50mLをろ過した結果、(ろ過後セロビオース分解活性)/(ろ過前セロビオース分解活性)は1.87であった。従って、得られた複合多孔質分離膜は、(ろ過後セロビオース分解活性)/(ろ過前セロビオース分解活性)が高く、酵素濃縮・回収・分離に適していることが分かった。なお、評価結果を表1にまとめた。
<実施例4>
界面活性剤を添加しなかった以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜状の積層体を作製した。
得られた三次元網目構造層と前記球状構造層との中空糸膜状の積層体を、50cmの長さにカットし、オートクレーブ(トミー精工 オートクレーブES―315)に入れ、110℃の加圧水蒸気(水蒸気の圧力:42kPa)で20分間熱処理した。
得られた中空糸膜は、外径:1400μm、内径:780μm、球状構造の平均直径:3.0μm、三次元網目構造層の平均厚み:60μm、球状構造層の平均厚み:250μm、水透過性能:0.7m/m/d、伸度:38%、分画分子量:40,000Daであった。
球状構造層−三次元網目構造層の界面剥離を走査型電子顕微鏡写真で観察した結果、「厚み:20μm以上、幅:20μm以上の割れ」は観察されず、界面剥離無しであった。
分離膜に、酵素液100mLを供給し、50mLをろ過した結果、(ろ過後セロビオース分解活性)/(ろ過前セロビオース分解活性)は1.88であった。従って、得られた複合多孔質分離膜は、(ろ過後セロビオース分解活性)/(ろ過前セロビオース分解活性)が高く、酵素濃縮・回収・分離に適していることが分かった。なお、評価結果を表1にまとめた。
<比較例1>
実施例1と同様の方法で中空糸膜状の積層体を作製した。
しかし、得られた三次元網目構造層と前記球状構造層との中空糸膜状の積層体に、熱処理を施さなかった。
得られた中空糸膜は、外径:1500μm、内径:800μm、球状構造の平均直径:3.0μm、三次元網目構造層の平均厚み:95μm、球状構造層の平均厚み:255μm、水透過性能:1.6m3/m2/d、伸度:47%、分画分子量:51,000Daであった。
得られた中空糸膜の断面写真を図3に示す。
球状構造層−三次元網目構造層の界面剥離を走査型電子顕微鏡写真で観察した結果、「厚み:20μm以上、幅:20μm以上の割れ」が観察され、界面剥離有りであった。
分離膜に、酵素液100mLを供給し、50mLをろ過した結果、(ろ過後セロビオース分解活性)/(ろ過前セロビオース分解活性)は1.38であった。従って、得られた複合多孔質分離膜は、(ろ過後セロビオース分解活性)/(ろ過前セロビオース分解活性)が低く、酵素濃縮・回収・分離に適していないことが分かった。なお、評価結果を表1にまとめた。
<比較例2>
実施例1と同様の方法で中空糸膜状の積層体を作製した。
得られた三次元網目構造層と前記球状構造層との中空糸膜状の積層体を、50cmの長さにカットし、95℃の水蒸気(水蒸気の圧力:0kPa)で20分間熱処理した。
得られた中空糸膜は、外径:1460μm、内径:780μm、球状構造の平均直径:3.0μm、三次元網目構造層の平均厚み:90μm、球状構造層の平均厚み:250μm、水透過性能:1.5m/m/d、伸度:52%、分画分子量:45,000Daであった。
得られた中空糸膜の断面写真を図4に示す。
球状構造層−三次元網目構造層の界面剥離を走査型電子顕微鏡写真で観察した結果、「厚み:20μm以上、幅:20μm以上の割れ」が観察され、界面剥離有りであった。
分離膜に、酵素液100mLを供給し、50mLをろ過した結果、(ろ過後セロビオース分解活性)/(ろ過前セロビオース分解活性)は1.72であった。従って、得られた複合多孔質分離膜は、(ろ過後セロビオース分解活性)/(ろ過前セロビオース分解活性)が低く、酵素濃縮・回収・分離に適していないことが分かった。なお、評価結果を表1にまとめた。
<比較例3>
重量平均分子量5万のポリエーテルスルホン(PES)を20重量%、界面活性剤:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(三洋化成工業、ニューポール(登録商標)PE−108)を3重量%、N−メチル−2−ピロリドンを77重量%の割合で60℃の温度で混合溶解して樹脂溶液を調製した。この樹脂原液を、N−メチル−2−ピロリドン60重量%水溶液を中空部形成液体として随伴させながら口金から吐出し、温度20℃のN−メチル−2−ピロリドン40重量%水溶液中で凝固させて、三次元網目構造層のみからなる中空糸膜を作製した。
最後に、得られた三次元網目構造層のみからなる中空糸膜を、50cmの長さにカットし、オートクレーブ(トミー精工 オートクレーブES―315)に入れ、121℃の加圧水蒸気(水蒸気の圧力:110kPa)で20分間熱処理した。
得られた中空糸膜は、外径:1400μm、内径:800μm、三次元網目構造層の平均厚み:300μm、水透過性能:0.4m/m/d、伸度:19%、分画分子量:37,000Daであった。
分離膜に、酵素液100mLを供給し、50mLをろ過した結果、(ろ過後セロビオース分解活性)/(ろ過前セロビオース分解活性)は1.90であった。従って、得られた複合多孔質分離膜は、(ろ過後セロビオース分解活性)/(ろ過前セロビオース分解活性)が高いが、球状構造層を有さないために、水透過性能と伸度が低く、酵素濃縮・回収・分離に適していないことが分かった。なお、評価結果を表1にまとめた。
<比較例4>
重量平均分子量41.7万のポリフッ化ビニリデン(PVDF)とγ−ブチロラクトンとを、それぞれ38重量%と62重量%の割合で170℃の温度で溶解した。この高分子溶液をγ−ブチロラクトン80重量%水溶液を中空部形成液体として随伴させながら口金から吐出し、温度20℃のγ−ブチロラクトン80重量%水溶液からなる冷却浴中で固化して、球状構造層のみからなる中空糸膜を作製した。
最後に、得られた三次元網目構造層のみからなる中空糸膜を、50cmの長さにカットし、オートクレーブ(トミー精工 オートクレーブES―315)に入れ、121℃の加圧水蒸気(水蒸気の圧力:110kPa)で20分間熱処理した。
得られた中空糸膜は、外径:1400μm、内径:780μm、球状構造の平均直径:3.0μm、球状構造層の平均厚み:310μ、水透過性能:25.5m/m/d、伸度:110%であった。なお、分画分子量については、最も大きな分子量である222,000のデキストランでも阻止率が90%とならず、測定できなかった。
分離膜に、酵素液100mLを供給し、50mLをろ過した結果、(ろ過後セロビオース分解活性)/(ろ過前セロビオース分解活性)は1.02であった。従って、得られた複合多孔質分離膜は、三次元網目構造層を有さないために、(ろ過後セロビオース分解活性)/(ろ過前セロビオース分解活性)が低く、酵素濃縮・回収・分離に適していないことが分かった。なお、評価結果を表1にまとめた。
本発明の複合多孔質分離膜の製造方法は、酵素濃縮・回収・分離に好適に使用することができる。
実施例1の方法により製造した中空糸膜の断面写真である。 実施例2の方法により製造した中空糸膜の断面写真である。 比較例1の方法により製造した中空糸膜の断面写真である。 比較例2の方法により製造した中空糸膜の断面写真である。

Claims (4)

  1. 下記(1)〜(3)の工程を有する複合多孔質分離膜の製造方法。
    (1)実質的にポリフッ化ビニリデン系樹脂とその貧溶媒のみを含有する樹脂溶液を冷却液体中に吐出することにより固化させて球状構造層を形成する工程。
    (2)前記球状構造層の表面にポリスルホン系樹脂を含有する樹脂溶液を塗布した後、凝固液に接触させることで、三次元網目構造層を前記球状構造層に積層させた積層体とする工程。
    (3)前記三次元網目構造層と前記球状構造層との積層体を、110℃以上の加圧水蒸気で熱処理する工程。
  2. 加圧水蒸気が121℃以上である請求項1記載の複合多孔質分離膜の製造方法。
  3. 前記ポリスルホン系樹脂を含有する樹脂溶液に、界面活性剤を含有させる請求項1または2に記載の複合多孔質分離膜の製造方法。
  4. 球状構造の平均直径を0.1μm以上5μm以下とする請求項1〜3のいずれかに記載の複合多孔質分離膜の製造方法。
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