JP2009136763A - 中空糸型分離膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、ニ重管状ノズルの外側環状部より紡糸原液を吐出し、同時に中心孔より中空内液を吐出し、空走部を経た後、凝固浴に浸漬させる中空糸型分離膜の製造方法において、中心孔の孔径が中空糸型分離膜の内径の0.9倍以下であり、外側環状部の幅が中空糸型分離膜の膜厚の5倍以上であるニ重管状ノズルを用いる中空糸型分離膜の製造方法である。
【選択図】なし
Description
偏肉発生の要因は、ノズル内部の紡糸原液流路において滞留部が発生し流路を閉塞させているのが原因と考えられる。偏肉発生の抑制には、ノズル内の流路壁面の研磨を施したり、流路の屈曲部に滑らかなアールをつける処理を施すことにより偏肉抑制の効果を検討したが、十分な効果は得られなかった。また、ノズル内の外側環状部(以下、スリットということがある)の長さを延ばし圧力損失を大きくし、加工精度による外側環状部の幅のバラツキ(外側環状部の偏心)を打ち消そうと試みたが、外側環状部の長さを長くすることで加工精度が一層低下し、狙った効果を得ることは出来なかった。
内径斑に対しては、内液を供給するギアポンプ方式を加圧による圧送方式への変更を試みたが、流量を均一にするためには個々のノズルに対し圧力制御する必要があり実用化が難しく、また、キャピラリーチューブを用いた流量の均一分配もギアポンプ方式と比較し定量性に劣ることから目標を達成することが出来なかった。
(1)本発明は、ニ重管状ノズルの外側環状部より紡糸原液を吐出し、同時に中心孔より中空内液を吐出し、空走部を経た後、凝固浴に浸漬させる中空糸型分離膜の製造方法において、ノズルの中心孔の孔径が中空糸型分離膜の内径の0.9倍以下であり、ノズルの外側環状部の幅が中空糸型分離膜の膜厚の5倍以上であるニ重管状ノズルを用いる中空糸型分離膜の製造方法である。
(2)また、ニ重管状ノズルの外側環状部の幅が100〜250μmであることを特徴とする中空糸型分離膜の製造方法である。
(3)また、ニ重管状ノズルの中心孔の孔径が70〜180μmであることを特徴とする中空糸型分離膜の製造方法である。
(4)また、ニ重管状ノズルの外側環状部の外径が400〜800μmであることを特徴とする中空糸型分離膜の製造方法である。
(5)さらに、前記いずれかに記載の中空糸型分離膜の製造方法により得られた中空糸膜であって、偏肉度が0.75以上であることを特徴とする中空糸膜である。
(6)また、中空糸膜の長さ20cmあたりの内径斑が中空糸膜平均内径の15%以内であることを特徴とする中空糸膜である。
本発明における偏肉度とは、中空糸膜断面を観察した際の膜厚の偏りのことであり、最大値と最小値の比で示す。本発明では、偏肉度は0.75以上であることが好ましい。本発明では、100本の中空糸膜の最小の偏肉度は0.75以上であることを特徴とする。100本の中空糸膜に1本でも偏肉度0.75未満の中空糸膜が含まれると、その中空糸膜が臨床使用時のリーク発生となることがあるので、本発明の偏肉度は平均値でなく、100本の最小値を表す。偏肉度は高い方が、膜の均一性が増し、潜在欠陥の顕在化が抑えられるので、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.85以上、さらにより好ましくは0.9以上である。偏肉度が低すぎると、潜在欠陥が顕在化しやすく、血液リークが起こりやすくなることがある。
なお、本発明の製造方法は、内径が100〜300μm、より好ましくは130〜280μm、さらに好ましくは150〜240μmである中空糸膜の製造に好ましく適用できる。
このようにして得られた中空糸膜は、膜厚の偏り(偏肉)を最大部と最小値の比で0.75以上に抑制され、内径の長さ方向の変動幅を15%以内に抑制されることで、分離膜としての特性と使用時の耐久性の維持の両立が可能となる。
本発明の中空糸膜の材質は特に限定されるものではなく、例えばセルロース系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー等を用いることができる。これらのポリマーの例として、セルロース系ポリマーの場合は、酢酸セルロース、三酢酸セルロースが挙げられ、ポリスルホン系ポリマーの場合は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンを用いるのが好ましい。これらのポリマーに、親水性ポリマーをさらに含有する紡糸原液に対しても有効である。
紡糸原液中の総溶媒分率は30〜70質量%、総非溶媒分率は5〜50質量%が好ましい。上記の紡糸原液を室温〜190℃に加熱して均一に溶解させた後、脱泡、濾過した後に、ニ重管ノズルの外側環状部(スリット)から押し出し、中心孔からは内液(芯液)を供給する。ここで内液としては、流動パラフィンまたは不活性な気体を用いるのが好ましい。
上記の溶媒としては、いわゆる非プロトン性の極性溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドンなどを単独または混合して用いる。
非溶媒としては、無機塩やアルコール類などが挙げられるが、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類を単独または混合して用いることが好ましい。
凝固性液体としては水、または水と紡糸原液で用いた溶媒並びに非溶媒の混合水溶液が使用できる。
血液浄化器の血液出口部回路(圧力測定点よりも出口側)を鉗子で挟んで封止した。37℃に保温した純水を加圧タンクに入れ、レギュレーターにより圧力を制御しながら、37℃恒温槽で保温した血液浄化器の血液流路側へ純水を送り、透析液側から流出した濾液量を測定した。膜間圧力差(TMP)は
TMP=(Pi+Po)/2
とする。ここでPiは透析器入り口側圧力、Poは透析器出口側圧力である。TMPを4点変化させ濾過流量を測定し、それらの関係の傾きから透水性(mL/hr/mmHg)を算出した。このときTMPと濾過流量の相関係数は0.999以上でなくてはならない。また回路による圧力損失誤差を少なくするために、TMPは100mmHg以下の範囲で測定する。中空糸膜の透水性は膜面積と血液浄化器の透水性から算出する。
UFR(H)=UFR(D)/A
ここでUFR(H)は中空糸膜の透水性(mL/m2/hr/mmHg)、UFR(D)は血液浄化器の透水性(mL/hr/mmHg)、Aは血液浄化器の膜面積(m2)である。
生理食塩液でプライミングし湿潤化した血液浄化器(膜面積1.5m2)の血液流路側に、0.01%ミオグロビン(キシダ化学社製)透析液水溶液を流量(Qbin)200ml/minで濾過をかけずにシングルパスで流しつつ、透析液側流路に透析液を流量(Qd)500ml/minで流す。最初のミオグロビン原液のミオグロビン濃度(Cbin)と血液浄化器を通って出てきた液のミオグロビン濃度(Cbout)、流量から、血液浄化器のクリアランス(CLmyo)を算出する。測定は37℃で実施する。血液浄化器10本について前記測定を行い、性能および性能ばらつきを評価した。
CLmyo=(Cbin−Cbout)/Cbin
中空糸膜100本の断面を200倍の投影機で観察する。一視野中、最も膜厚差がある一本の糸断面について、最も厚い部分と最も薄い部分の厚さを測定する。
偏肉度=最薄部/最厚部
偏肉度=1で膜厚が完璧に均一となる。
中空糸膜を厚さ2mmのスライドガラスの中央に開けられたφ1mmの孔に適当数通し、スライドガラス上下面で剃刀によりカットし、中空部を露出させた断面サンプルを得る。サンプルは投影機(Nikon-12A)を用いて、200倍で観察する。一視野中、中空糸膜の内径が最も小さい一本の中空糸膜断面と、最も大きい一本の中空糸膜断面の、内径を測定する。長さ20cmの中空糸膜をほぼ均等に5分割し、それぞれについて内径を測定する。
内径斑=内径が最大の中空糸膜断面の内径−内径が最小の中空糸膜断面の内径
内径斑=0で内径斑が完璧になくなる。
1時間以上純水に浸漬した中空糸膜束を900rpmの回転数で5分間遠心脱液し、重量を測定する。その後、乾燥機中で絶乾し重量を測定する(Mp)。
Wt(空孔に詰まっている水の重量)=遠心後の糸束の重量−Mp
体積空孔率(Vt)%=Wt/(Wt+Mp/ポリマー密度)×100
生食にてプライミングしたモジュールを用いて、クエン酸を添加して凝固を抑制した37℃の牛血液を、血液浄化器に200ml/minで送液し、20ml/minの割合で血液をろ過する。このとき、ろ液は血液に戻し、循環系とする。60分後に血液浄化器のろ液を採取し、赤血球のリークに起因する赤色を目視で観察する。この血液リーク試験を各実施例、比較例ともに10,000本の血液浄化器を用い、血液リークしたモジュール数を調べる。
セルローストリアセテート(ダイセル化学工業社)17.5質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社)およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社)を7対3の重量比で均一に溶解し、紡糸原液の脱泡を行った。得られた紡糸原液を105℃に加温したニ重管ノズルの外側環状部より吐出し、同時に中心孔より流動パラフィンを芯液として吐出した。ノズルは外側環状部の外径400μm、外側管状部幅(スリット幅)100μm、中心孔径70μmのノズルを用いた。長さ50mmの乾式部を通過後、30℃の20質量%NMP/TEG(7/3)水溶液中で凝固させ、50℃の洗浄槽を経た後、50℃、60質量%のグリセリン水溶液槽を通過させ、ドライヤーで乾燥し、速度75m/minで巻き上げた。得られた中空糸膜を用いて種々の評価を行なった。結果を表1にまとめる。
ポリエーテルスルホン(PES;住友化学社製、スミカエクセル)35重量%およびポリビニルピロリドン(PVP K90;BASF社製)7重量%をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)とトリエチレングリコール(TEG)を8対2の重量比で均一に溶解した後、紡糸原液の脱泡を行った。得られた紡糸原液を125℃に加温した二重環ノズルの外側環状部より吐出し、同時に中心孔から流動パラフィンを芯液として吐出した。ノズルは外側環状部の外径600μm、スリット幅200μm、中心孔径100μmのノズルを用いた。長さ40mmの乾式部を通過後、25℃の10重量%のNMP/TEG(8/2)水溶液中で凝固させ、40℃の洗浄槽を経た後、50℃、30重量%のグリセリン水溶液槽を通過させ、ドライヤーで乾燥し、75m/minで巻き上げた。得られた中空糸膜を用いて種々の評価を行なった。結果を表1にまとめる。
セルローストリアセテート(ダイセル化学工業社)17.5質量%、N−メチル−2−ピロリドンおよびトリエチレングリコールを7対3の重量比で均一に溶解し、紡糸原液の脱泡を行った。得られた紡糸原液を105℃に加温したニ重管ノズルの外側環状部より吐出し、同時に中心孔より流動パラフィンを芯液として吐出した。ノズルは外側環状部の外径500μm、スリット幅150μm、中心孔径100μmのノズルを用いた。長さ50mmの乾式部を通過後、30℃の20質量%NMP/TEG(7/3)水溶液中で凝固させ、50℃の洗浄槽を経た後、50℃、60質量%のグリセリン水溶液槽を通過させ、ドライヤーで乾燥し、速度75m/minで巻き上げた。得られた中空糸膜を用いて種々の評価を行なった。結果を表1にまとめる。
セルローストリアセテート(ダイセル化学工業社)17.5質量%、N−メチル−2−ピロリドンおよびトリエチレングリコールを7対3の重量比で均一に溶解し、紡糸原液の脱泡を行った。得られた紡糸原液を105℃に加温したニ重管ノズルの外側環状部より吐出し、同時に中心孔より流動パラフィンを芯液として吐出した。ノズルは外側環状部の外径760μm、スリット幅250μm、中心孔径180μmのノズルを用いた。長さ50mmの乾式部を通過後、30℃の20質量%NMP/TEG(7/3)水溶液中で凝固させ、50℃の洗浄槽を経た後、50℃、60質量%のグリセリン水溶液槽を通過させ、ドライヤーで乾燥し、速度75m/minで巻き上げた。得られた中空糸膜を用いて種々の評価を行なった。結果を表1にまとめる。
ノズルを中心孔径500μm、外側環状部外径1000μm、スリット幅100μmのものに変更した以外は実施例1と同様にして、中空糸膜を得た。得られた中空糸膜を用いて種々の評価を行なった。結果を表1にまとめる。
本比較例においては、ノズルの中心孔径/中空糸膜の平均内径が2.5と低いため、内径斑が大きくなり、したがって血液浄化器間での性能バラつきが大きくなり、またリークの発生率が若干高めになったものと思われる。
ノズルを中心孔径100μm、外側環状部外径300μm、スリット幅50μmのものに変更した以外は実施例1と同様にして、中空糸膜を得た。得られた中空糸膜を用いて種々の評価を行なった。結果を表1にまとめる。
本比較例においては、スリット幅/膜厚が3倍であり、ノズルから押し出される紡糸原液の脈動が十分に解消されておらず、したがって得られた中空糸膜の偏肉度が低くなり、リーク発生率が高まったものと思われる。
ノズルを中心孔径200μm、外側環状部外径540μm、スリット幅70μmのものに変更した以外は実施例1と同様にして、中空糸膜を得た。得られた中空糸膜を用いて種々の評価を行なった。結果を表1にまとめる。
本比較例においては、中心孔径/中空糸膜の平均内径、およびスリット幅/膜厚のいずれもが好ましい範囲を外れている。したがって、性能のバラつき及びリーク発生率が高くなったものと思われる。
2:中心孔径
3:紡糸原液導入口
4:内液導入口
Claims (6)
- ニ重管状ノズルの外側環状部より紡糸原液を吐出し、同時に中心孔より中空内液を吐出し、空走部を経た後、凝固浴に浸漬させる中空糸型分離膜の製造方法において、ノズルの中心孔の孔径が中空糸型分離膜の内径の0.9倍以下であり、ノズルの外側環状部の幅が中空糸型分離膜の膜厚の5倍以上であるニ重管状ノズルを用いる中空糸型分離膜の製造方法。
- ニ重管状ノズルの外側環状部の幅が100〜250μmであることを特徴とする請求項1に記載の中空糸型分離膜の製造方法。
- ニ重管状ノズルの中心孔の孔径が70〜180μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の中空糸型分離膜の製造方法。
- ニ重管状ノズルの外側環状部の外径が400〜800μmであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の中空糸型分離膜の製造方法。
- 請求項1〜4いずれかに記載の中空糸型分離膜の製造方法により得られた中空糸膜であって、偏肉度が0.75以上であることを特徴とする中空糸膜。
- 中空糸膜の長さ20cmあたりの内径斑が中空糸膜平均内径の15%以内であることを特徴とする請求項5に記載の中空糸膜。
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