JP5126459B2 - セルロースエステル中空糸膜およびその製造方法 - Google Patents

セルロースエステル中空糸膜およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、体外循環療法に用いられる血液浄化用中空糸膜及びその製造方法に関する。
腎不全治療などにおける血液浄化療法では、血液中の尿毒素、老廃物を除去する目的で、天然素材であるセルロース、またその誘導体であるセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、合成高分子としてはポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどの高分子を用いた透析膜や限外濾過膜を分離材として用いた血液透析器、血液濾過器あるいは血液透析濾過器などの血液浄化器が広く使用されている。特に中空糸型の膜を分離材として用いたモジュールは体外循環血液量の低減、血中の物質除去効率の高さ、さらには生産性の高さなどの利点から血液浄化分野での重要度が高い。
中空糸膜を用いた血液浄化器は、通常中空糸内空部に血液を流し、外側部に透析液を向流で流し、血液から透析液への拡散に基づく物質移動により尿素、クレアチニンなどの低分子量物質を血中から除くことを主眼としている。さらに、長期透析患者の増加に伴い、透析合併症が問題となり、近年では透析による除去対象物質は、尿素、クレアチニンなどの低分子量物質のみではなく、分子量数千の中分子量から分子量1〜2万の高分子量の物質まで拡大し、これらの物質をも除去できることが血液浄化膜に要求されている。特に、分子量11700のβ2ミクログロブリンは手根管症候群の原因物質であることがわかっており除去ターゲットとなっている。このような高分子量物質除去の治療に用いられる膜を得るためには、従来の透析膜より膜の細孔径を大きくしたり、細孔数を増やしたり、空隙率を上げたり、膜厚を薄くし膜の透水率を上げるのが好ましい。
しかし、透水率を上げるためには細孔径を大きくしたり、細孔数を増やしたりすると膜強度が低下したり、膜破れ等の欠陥ができるといった問題が生じやすくなる。特に透水率が100ml/m2/hr/mmHgを越える中空糸膜の場合、紡糸工程やモジュール組立工程で受ける中空糸膜の内外圧、曲げ、引張り荷重に対して弱く、臨床時の血液リークにつながる欠点部を生じやすくなる。
更に、近年血液透析療法においては、従来用いられてきた拡散の効果を主眼においた血液透析療法に濾過の効果を加え、低分子タンパク領域までの除去を目的とした血液濾過透析療法が考案され、注目を集めている。血液濾過透析療法においてはポンプ負荷などにより血液と透析液との間でより高い圧力差を生じさせることにより、血液と透析液との間で強制的に液置換を行う。したがって、中空糸膜には従来にない耐圧性が求められる。
セルロースエステルからなるドライタイプの中空糸膜の製造方法は、例えばポリマーとしてセルローストリアセテート、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン、非溶媒としてトリエチレングルコールからなる原料を調合し、均一状態とする。さらにこのポリマー溶液を連続ニーダーで完全溶解させ、チューブインオリフィス型ノズル外側スリットより吐出し、内孔からは中空形成剤である流動パラフィンを同時に吐出する。エアギャップを通過後、凝固浴中で凝固させる。その後、水洗し溶媒を除去した後グリセリン水溶液中を通過させドライヤーで乾燥し巻き上げる。ポリマー分率、ポリマー溶液の吐出量、凝固条件、グリセリン浸漬条件、乾燥条件等により広い範囲で膜厚や透水率の調整が可能である。
ここで透水率の高い中空糸膜を得る為に膜の細孔径を大きくしたり、細孔数を増やしたり、空孔率をあげたりするための手段としては、紡糸溶液中のポリマー分率を下げる方法が一般的である。しかし紡糸溶液中のポリマー分率を下げると、透水率は向上するが中空糸膜の強度が低下するため、血液浄化器組立て時に糸切れや膜破れ等により不良品の発生率が増加するという問題がある。また臨床現場での治療中に血液リークを起こしやすくなる。該課題解決の方法として、ポリマー分率を高めた上で、ノズルの温度を上げる方法がある。しかしノズルの温度を上げると数時間に1回位の頻度で、糸形状が著しく変化する欠点糸が発生したり、ノズル直下で糸切れを起こしたりすることが経験される。
特許文献1には、臨床使用時の血液リークトラブルを低減する為、ポリマー溶液をノズルから吐出直前にフィルター処理しノズルの詰りによる偏肉の発生や部分的なボイドの発生を抑制すること、ノズルのスリット幅のばらつきを低減することで偏肉の発生を抑制すること等による、強度の向上した中空糸膜が開示されている。しかし、透水性を上げるためにポリマー溶液のポリマー分率は17%と下げているため、ポリマー溶液の粘度が低く可紡性が悪いのが実情である。またポリマー分率の低い条件で紡糸した中空糸膜は、上記のような手段により耐圧性は維持できているが、単糸当たりの破断強度が34gと低いため、しばしば血液浄化器組立工程で糸切れや膜破れを引き起こしていた。
特開2005−21510号公報
上記のような理由から、高い透水性と血液浄化器組立時の中空糸膜への物理的負荷に対する耐久性、臨床現場での血液リークに対する耐久性を有する中空糸膜の安定した紡糸方法はなかった。
これらの問題に対し、例えば特許文献2には膜内径と膜厚を規定することで高い透過性能をもち、耐圧強度にも優れた血漿成分分離膜が得られるとの開示がある。また、特許文献3には中空糸膜の断面構造を規定することで高透水性・高耐圧性の水処理用中空糸膜が得られるとの開示がある。これらは中空糸膜の高透水性と高耐圧性が両立する技術ではあるが、いずれも体外循環療法に用いられる血液浄化用中空糸膜に関するものでない。
特開2001−38169号公報 特開平6−343842号公報
また、特許文献4〜6には、血液浄化膜の分離性能と耐圧性に関する記述があるが、いずれの記載でも耐圧性は0.5MPa以下であり、血液浄化器組立工程で発生する糸欠点が少なくかつ臨床時の血液リークの危険性が低い血液浄化用中空糸膜としての十分な耐久性があるとはいえない。
特開平7−185278号公報 特開平5−23554号公報 特開平8−10320号公報
また特許文献7には中空糸膜の中空形成剤に脱気した液体を用いることで糸切れや欠点糸の発生を防止する紡糸方法が開示されているが、これは中空形成剤である液体中の溶存気体を脱気する方法であり、液体成分の除去に関する記載はない。
特開平9−52028号公報
従来、高透水性のセルロースエステル中空糸膜の製造においては、紡糸原液中のセルロースエステル分率を下げることにより得られる中空糸膜の空隙率を下げるなどの方策を採っていた。しかし、そうすると中空糸膜の透水性は上げることができるが、糸強度が弱くなるとか、中空糸膜形状が長さ方向で安定しない(糸径斑や偏肉の発生)などの問題が生じていた。
高透水性と糸強度とを両立するためには、紡糸原液中のセルロースエステル分率を高くし、かつノズル温度を高めるのが有効である。しかし、ノズル温度を高めると、紡糸中の突発的な糸切れやノブの発生といった問題が生じやすくなることがわかり、この課題の解決が望まれていた。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、中空形成剤である非水溶性液体中の水、溶存気体だけでなく低沸点成分を特定の条件で除去した後、中空糸膜の製造に用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は下記の構成を有する。
(1)中空糸膜を製造するに際して、中空形成剤として−600mmHg以下の減圧下、130℃以上で処理された流動パラフィンを用いて製造された中空糸膜であって、膜厚が5μm以上30μm以下であり、透水率が25ml/m/hr/mmHg以上300ml/m/hr/mmHg以下であり、単糸の破断強力が40g以上であるセルロースエステルからなる中空糸膜であって、該中空糸膜を組み込んだ血液浄化器を37℃の純水に浸漬して測定した時のバースト圧が0.8MPa以上であるセルロースエステル中空糸膜。
(2)(1)記載のセルロースエステル中空糸膜の製造において、中空形成剤として沸点が130℃未満の低沸点成分が除去された流動パラフィンを用いることを特徴とするセルロースエステル中空糸膜の製造方法。
(3)低沸点成分の含有率が0.15%以下とされた流動パラフィンを用いることを特徴とする(2)に記載のセルロースエステル中空糸膜の製造方法。
(4)含有水分率が50ppm以下とされた流動パラフィンを用いることを特徴とする(2)または(3)に記載のセルロースエステル中空糸膜の製造方法。
(5)炭素数10〜15の流動パラフィンであることを特徴とする(2)〜(4)いずれかに記載のセルロースエステル中空糸膜の製造方法。
(6)紡糸溶液中のセルロースエステル分率を20重量%以上とし、ノズル温度を130℃以上とすることを特徴とする(2)〜(5)いずれかに記載のセルロースエステル中空糸膜の製造方法。
本発明の中空糸膜は、血液浄化器として実際に使用する温度に近い温度での耐圧性に優れているので血液浄化器用として使用した場合の信頼性を高めることができる。
また、血液浄化用中空糸膜の製造において、中空形成剤として含有低沸点成分を除去した非水溶性液体を用いることで、透水率が高く、血液浄化器組立性に優れ、血液リークの可能性の少ない血液浄化用中空糸膜を、糸切れや糸欠点を生じることなく安定して紡糸することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、血液浄化器に用いられる中空糸膜の物理的性質について検討した。通常、血液浄化器は、製品となる最終段階で、中空糸膜や血液浄化器の欠陥を確認するため、中空糸膜内部あるいは外部をエアによって加圧するリークテストを行う。加圧エアによってリークが検出されたときには、血液浄化器は不良品として、廃棄あるいは欠陥を修復する作業がなされる。このリークテストのエア圧力は血液浄化器の保証耐圧(通常500mmHg)の数倍である1500〜2000mmHg(0.2〜0.27MPa)であることが多い。しかしながら、特に高い透水性を有する中空糸膜型血液浄化器の場合、通常の加圧リークテストでは検出できない中空糸膜の微小な傷、つぶれ、裂け目などが、リークテスト後の製造工程(主に滅菌や梱包)、輸送工程、あるいは臨床現場での取扱い(開梱や、プライミングなど)時に、中空糸膜の切断やピンホールの発生につながり、ひいては治療時に血液がリークする等のトラブルの元になっていることを本発明者らは見出した。上記事象に関して鋭意検討した結果、臨床使用時の中空糸膜の切断やピンホールの発生につながる潜在的な中空糸膜の欠陥は、通常の加圧エアリークテスト程度の圧力では検出することができず、より高い圧力が必要であることを見出し、本発明に至った。
本発明におけるバースト圧とは、血液浄化器を組立てた後の中空糸膜の湿潤状態での耐圧性能の指標である。具体的には、水中に浸漬した血液浄化器の中空糸膜内側を気体で加圧し加圧圧力を徐々に上げていった際に、中空糸膜が内部圧に耐えきれずに破裂(バースト)したときの圧力である。中空糸膜の膜破れが血液浄化器のプライミング時、透析治療時に発生すると血液リークとなるため、湿潤状態での耐圧性を高めることが必要である。バースト圧は高いほど使用時の中空糸膜の切断やピンホール発生のリスクが少なくなるので0.8MPa以上が好ましく、0.85MPa以上がより好ましく、0.9MPa以上がさらに好ましく、0.95MPa以上がよりさらに好ましく、1.0MPa以上が特に好ましい。バースト圧が0.8MPa未満では中空糸膜が傷やボイド等の潜在的な欠陥を有している可能性がある。また、バースト圧は高いほど好ましいが、バースト圧を高めることを主眼に置き、膜厚を上げたり、空隙率を下げすぎたりすると所望の膜性能を得ることができなくなることがある。したがって、血液透析膜として仕上げる場合には、バースト圧は2.0MPa程度が上限と思われる。
本発明において、中空糸膜の偏肉度は、0.6以上であることが好ましい。偏肉度とは血液浄化器中の100本の中空糸膜断面を観察した際の膜厚の偏りのことであり、最大値と最小値の比で示す。ここで偏肉度0.6以上は、100本の中空糸膜の最小の偏肉度であることを特徴とする。100本の中空糸膜に1本でも偏肉度0.6未満の中空糸膜が含まれると、その中空糸膜が臨床使用時のリーク発生となることがあるので、本発明の偏肉度は平均値でなく、100本の最小値を表す。偏肉度は高い方が、膜の均一性が増し、潜在欠陥の顕在化が抑えられバースト圧が向上するので、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上、よりさらに好ましくは0.85以上である。偏肉度が低すぎると、潜在欠陥が顕在化しやすく、前記バースト圧が低くなり、臨床使用時に血液リークを起こす可能性がある。
本発明において、バースト圧測定時、血液浄化器を浸漬する純水の温度は37℃が好ましい。中空糸膜のバースト圧は浸漬水の温度の影響を受け、例えば浸漬水の温度が室温に対して高い場合のバースト圧は、浸漬水温度を室温下で測定したときのバースト圧よりも低くなるので、37℃での評価は、室温での評価に比べ中空糸膜に存在する潜在的な傷やボイドを顕在化し評価することができる。また通常血液浄化器の臨床での使用温度が37℃程度であり、バースト圧測定は臨床時の実使用温度において評価することが望ましい。
本発明において、中空糸膜の膜構造は特に限定はしない。中空糸膜表面に緻密層、その内層部に多孔支持層を有する非対称構造としてもよいが、非対称構造を有する中空糸膜の場合は強度を得る為に膜厚を30μm以上必要とする場合がある。血液浄化器のコンパクト性や強度を維持しつつ透水性や分離特性を高めるためには、均質構造とするのが有利である。
本発明の中空糸膜は、ドライタイプの高性能血液浄化器とすることを主目的としており、透水性が25ml/m2/hr/mmHg以上であるのが好ましい。透水性が25ml/m2/hr/mmHg未満では透析効率が低下することがある。透析効率を上げるためには細孔径を大きくしたり、細孔数を増やしたりするが、そうすると膜強度が低下したり中空糸膜に欠陥ができるといった問題が生じやすくなる。しかし本発明の中空糸膜では、空隙率を最適化し、溶質透過抵抗と膜強度を高次元でバランスさせたものである。より好ましい透水性は30ml/m2/hr/mmHg以上、さらに好ましくは35ml/m2/hr/mmHg以上、よりさらに好ましくは40ml/m2/hr/mmHg以上である。また、透水性が高すぎる場合、血液透析時の除水コントロールがしにくくなることがあるため、290ml/m2/hr/mmHg以下が好ましい。より好ましくは280ml/m2/hr/mmHg以下、さらに好ましくは270ml/m2/hr/mmHg以下である。
また、本発明の中空糸膜は単糸の破断強力が40g以上であることが好ましい。破断強力が小さすぎると、中空糸膜取扱い時や血液浄化器組立て時に糸折れや糸切れが発生しやすくなる。したがって、破断強力は43g以上がより好ましく、45g以上がさらに好ましい。逆に、破断強力が大きすぎると、膜の細孔径が小さくなったり空隙率が低下したりして十分な透過性能を得ることが困難になる。したがって、破断強力は100g以下が好ましく、95g以下がより好ましく、90g以下がさらに好ましい。
また、単糸の破断伸度は25%以上であることが好ましい。破断伸度が25%未満では中空糸膜が剛直になるため、血液浄化器容器への中空糸膜束挿入時に糸折れが発生することがある。したがって、破断伸度は27%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。逆に破断伸度が大きすぎると、中空糸膜が容易に曲がるため、血液浄化器容器への中空糸膜束挿入時、中空糸膜束外周部と容器内面との摩擦により中空糸膜の蛇行が生じやすくなり、端部接着不良や品質低下(外観不良)の原因になる。したがって、破断伸度は80%以下がより好ましく、70%以下がさらに好ましい。
前記範囲の破断強伸度を有する中空糸膜を得ることにより、血液浄化器の製造にかかる歩留まりを80%以上まで向上させることが可能となる。より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
本発明の中空糸膜厚としては5〜30μmが好ましい。膜厚が薄すぎると所望の膜強度が得られないことがある。したがって、膜厚は7μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましい。また、膜厚が厚すぎると透水性が低下したり、物質の透過性が低下したりすることがある。したがって、膜厚は28μm以下がより好ましく、26μm以下がさらに好ましい。
このような血液浄化器に用いる中空糸膜を製造する方法としては、例えば、セルロース系高分子と溶媒、非溶媒からなるポリマー溶液をチューブインオリフィス型ノズルより中空形成剤とともに吐出し、エアギャップ部を通過後、凝固液に浸漬させる乾湿式紡糸法が挙げられる。バースト圧を0.8MPa以上にするためには中空糸膜の偏肉度を0.6以上にすることが有効である。該偏肉度を0.6以上にするための達成手段は、例えば、製膜溶液の吐出口であるノズルのスリット幅を厳密に均一にすることが好ましい。中空糸膜の紡糸ノズルは、一般的に、ポリマー溶液を吐出する環状部と、その内側に中空形成剤吐出孔を有するチューブインオリフィス型ノズルが用いられるが、スリット幅とは、前記ポリマー溶液を吐出する外側環状部の幅を指す。このスリット幅のばらつきを小さくすることで、紡糸された中空糸膜の偏肉を減らすことができる。具体的にはスリット幅の最大値と最小値の比が1.00以上1.11以下とし、最大値と最小値の差を10μm以下とすることが好ましく、7μm以下とすることがより好ましく、さらに好ましくは5μm以下、よりさらに好ましくは3μm以下である。
本発明の紡糸溶液中のセルロースエステル分率は20重量%以上であることが好ましい。セルロースエステル分率が低すぎると紡糸溶液粘度が低くなりノズル温度を高めた場合に可紡性が低下することがある。また破断強力、破断伸度が低くなるため、中空糸膜の糸切れや糸折れ等により血液浄化器組立て不良率が高くなる可能性がある。
また本発明における中空糸膜を得る為には、ノズルの温度を130℃以上とすることが好ましい。ノズル温度が130℃未満であると紡糸溶液のセルロースエステル分率が20重量%以上の場合に十分な透水性を有する中空糸膜が得られないことがある。したがって、ノズル温度は135℃以上がより好ましく、140℃以上が更に好ましい。
逆に、ノズル温度が高すぎると紡糸溶液の粘度が低くなりすぎて、偏肉や真円度の低下、異形糸の発生につながることがある。したがって、ノズル温度は190℃以下が好ましく、185℃以下がより好ましく、180℃以下がさらに好ましい。
また、本発明において重要な要件の一つとして、チューブインオリフィス型ノズルの中心パイプに中空形成剤として非水溶性液体を注入して中空糸膜を得る際、該非水溶性液体中に含有される低沸点成分を除去した非水溶性液体を用いることがある。従来、ノズル温度を比較的低く設定した条件では、紡糸数十時間〜数日間に1回程度の割合で内径斑やノブ(風船状の膨らみ)などの欠点糸が発生することがあった。しかし、中空糸膜の高性能化を目的としノズル温度を高めていくと、前記トラブルの発生頻度も高まるという課題が生じた。このようなトラブルに対しては、欠点糸の廃棄はもちろんのこと、生産を中断してノズルを交換するなどの対処をしてきた。そうすると、生産コストや欠点糸の廃棄処理コストを低く抑えることが出来なくなるため、工業的には該トラブルの回避が至上命題であった。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、中空形成剤である非水溶性液体中には溶存気体や水のほかに低沸点成分が極微量含まれており、これが紡糸中に諸条件が重なった際にいわゆる突沸のような現象を起こし、中空糸膜の内径斑やノブの発生として顕在化するものと考えられた。含有低沸点成分を除去した非水溶性液体を用いると、ノズル温度を高めても非水溶性液体中の低沸点成分が突発的な気化を起こすことがなくなるため、糸径が均一な中空糸膜を安定的に紡糸できるようになる。除去する含有低沸点成分としては、非水溶性液体中に含まれるヘキサン、ヘプタンなどが挙げられ、その非水溶性液体中の含有率を0.15%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.12%以下、更に好ましくは0.10%以下である。例えば、非水溶性液体として流動パラフィンを使用する場合、一般に購入できる流動パラフィン中には低沸点成分が0.3%程度含有されている。これをそのまま紡糸に使用すると7回/24h程度の頻度で気泡をかみこみ糸径が著しく変化した欠点糸を生じていたが、含有低沸点成分を少なくしていくに従い欠点糸の発生頻度は徐々に低下し、低沸点成分含有率を0.15%以下にすることにより、ノズル温度を130℃以上に高めても長さ方向に糸径の安定した中空糸膜を工業的に安定生産することが可能となることを見出した。
また、本発明においては、中空形成剤に用いる非水溶性液体は含有される水分を除去したものを用いることが好ましい。非水溶性液体中の含有水分は、ノズル温度を高めると突発的な気化を起こすため、糸径が不均一になったり糸切れを起こしたりする原因となる。特に、非水溶性液体中の含有水分は、糸切れの原因になる場合が多い。水は紡糸原液に対して凝固能があるため、ノズルから吐出直後に気化すると均一な吐出を乱すだけでなくノズル吐出面が凝固した紡糸原液で汚染されたり、吐出面を閉塞したりすることがある。また、汚染が軽度の場合、中空糸膜にミクロの傷を与えるとか凝固した紡糸原液が異物として中空糸膜に混入することがある。例えば、流動パラフィン中には100ppm程度の水分が含まれており、未処理のままで紡糸に使用するとノズル温度130℃以上の条件下では紡糸開始から24h以内で糸切れを生じていたが、含有水分を少なくしていくにつれ紡糸開始から糸切れが発生するまでの時間は徐々に長くなり、含有水分率を50ppm以下にすることにより、ノズル温度を130℃以上高めても中空糸膜を工業的に安定生産することが可能となることがわかった。流動パラフィン中の含有水分率は40ppm以下がより好ましく、30ppm以下が更に好ましい。
本発明において、中空形成剤に用いる非水溶性液体中の低沸点成分の除去方法として、加温攪拌する方法、不活性ガスパージ下で加熱する方法等が挙げられるが、減圧下で加熱攪拌する方法が望ましい。減圧度と加熱温度は、用いる非水溶性液体の沸点や低沸点成分の組成、含水率、処理コストなどにより適宜設定すればよいが、例えば、流動パラフィンを用いる場合は130℃以上が好ましく、より好ましくは150℃以上である。また、非水溶性液体、特に流動パラフィンは温度を上げるに従い気体溶解量が増大する特性を有しているので、減圧下で処理することが好ましい。減圧度は−500mmHg以下が好ましく、−700mmHg以下が更に好ましい。減圧攪拌下の加熱時間は短すぎると十分な効果は得られず、長時間であれば特に問題となることはないが、工業的に実施する上では通常1時間以上12時間以下が好ましい。
本発明において、中空形成剤として用いられる非水溶性液体としては、炭素数10〜30の脂肪族パラフィン、高級脂肪酸エステルおよび炭素数7〜10の芳香族炭化水素が挙げられる。これらは単独でも混合物でも構わない。これらのうちで、炭素数16以上のパラフィンおよび炭素数20以上の高級脂肪酸エステルは常温で固体であることが多いので、紡糸時には加熱融解する必要がある。
本発明方法において、中空形成剤として好適に用いられる非水溶性液体は、常温で液体の炭素数10〜15の流動パラフィン、イソプロピルミリステート、トルエン、キシレンなどである。これらの中空形成剤の中でも、紡糸過程での中空糸膜の形状維持や中空糸膜内面の平滑性および中空糸膜強度などの点から、凝固浴水溶液に非溶解性であると同時に紡糸原液とも全く非混和性の流動パラフィンが最も好適に用いられる。
さらに、バースト圧を高くする方策として、中空糸膜表面の傷や異物および気泡の混入を少なくし潜在的な欠陥を低減するのも有効な方法である。傷発生を低減させる方法としては、中空糸膜の製造工程のローラーやガイドの材質や表面粗度を最適化する、血液浄化器の組立時に中空糸膜束を血液浄化器容器に挿入する時に容器と中空糸膜との接触あるいは中空糸膜同士のこすれが少なくなるような工夫をする等が有効である。本発明では、使用するローラーは中空糸膜がスリップして中空糸膜表面に傷が付くのを防止するため、表面が鏡面加工されたものを使用するのが好ましい。また、ガイドは中空糸膜との接触抵抗をできるだけ避ける意味で、表面が梨地加工されたものやローレット加工されたものを使用するのが好ましい。中空糸膜束を血液浄化器容器に挿入する際には、中空糸膜束を直接血液浄化器容器に挿入するのではなく、中空糸膜との接触面が例えば梨地加工されたフィルムを中空糸膜束に巻いたものをモジュール容器に挿入し、挿入した後、フィルムのみ血液浄化器容器から抜き取る方法を用いるのが好ましい。
また、本発明において重要な要件の1つとして中空糸膜への異物の混入を抑えることが必要である。方法としては、異物の少ない原料を用いる、製膜用の紡糸原液を濾過し異物を低減する方法等が有効である。本発明では、中空糸膜の膜厚よりも小さな孔径のフィルターを用いて紡糸原液を濾過するのが好ましく、具体的には均一溶解した紡糸原液を溶解タンクからノズルまで導く間に設けられた孔径1〜30μmの焼結フィルターを通過させる。濾過処理は少なくとも1回行えば良いが、濾過処理を何段階かにわけて行うことも好ましい実施態様である。フィルターの孔径は2〜25μmがより好ましく、3〜20μmがさらに好ましく、4〜15μmがよりさらに好ましい。フィルター孔径が小さすぎると背圧が上昇し、定量性が落ちることがある。
また、気泡混入を抑える方法としては、製膜用のポリマー溶液の脱泡を行うのが有効である。紡糸原液の粘度にもよるが、静置脱泡や減圧脱泡を用いることができる。具体的には、溶解タンク内を−100〜−750mmHgに減圧した後タンク内を密閉し5分〜30分間静置する。この操作を数回繰り返し脱泡処理を行う。減圧度が低すぎる場合には、脱泡の回数を増やす必要があるなど処理に長時間を要することがある。また減圧度が高すぎると、系の密閉度を上げるためのコストが高くなる可能性がある。
トータルの処理時間は5分〜5時間とするのが好ましい。処理時間が短すぎると脱泡の効果が不十分になることがある。
本発明の中空糸膜の製造において上記説明したような配慮をすることにより、偏肉の抑制、中空糸膜への異物や気泡の混入、傷の発生を防止することができる。すなわち、このような製造方法を用いて製造された本発明の中空糸膜は、高い透水性や透析性能を有するだけでなく、バースト圧が高い中空糸膜を得ることによりプライミング操作や血液浄化使用中のリーク発生等のトラブルを減少することができるという相反する課題を高い次元で両立したものである。また、上記製造方法の配慮により、破断強力も高めることができるため、血液浄化器の生産性や輸送時の中空糸膜の破損等に起因するトラブルも低減することができる。
(透水性の測定)
血液浄化器の血液出口部回路(圧力測定点よりも出口側)を鉗子により流れを止め全濾過とする。37℃に保温した純水を加圧タンクに入れ、レギュレーターにより圧力を制御しながら、37℃恒温槽で保温した血液浄化器へ純水を送り、透析液側から流出したろ液量をメスシリンダーで測定する。膜間圧力差(TMP)は
TMP=(Pi+Po)/2
とする。ここでPiは血液浄化器入り口側圧力、Poは血液浄化器出口側圧力である。TMPを4点変化させ濾過流量を測定し、それらの関係の傾きから透水性(mL/hr/mmHg)を算出する。このときTMPと濾過流量の相関係数は0.999以上でなくてはならない。また回路による圧力損失誤差を少なくするために、TMPは100mmHg以下の範囲で測定する。中空糸膜の透水性は膜面積と血液浄化器の透水性から算出する。
UFR(H)=UFR(D)/A
ここでUFR(H)は中空糸膜の透水性(mL/m2/hr/mmHg)、UFR(D)は血液浄化器の透水性(mL/hr/mmHg)、Aは血液浄化器の膜面積(m2)である。
(バースト圧の測定)
約10000本の中空糸膜よりなる血液浄化器の透析液側を水で満たして栓をする。血液側から空気を送り込み、1分間に0.5MPaの割合で昇圧していく。圧力を上昇させ、中空糸膜が内部圧に耐えきれずに破裂(バースト)したときの圧力をバースト圧とする。
(破断強力の測定)
(1)乾燥中空糸膜の場合
有効試料長10cmの中空糸膜試験片をクロスヘッドを10cm/分で引張試験を行った際の破断点を測定する。測定には、東洋ボールドウイン製テンシロンUTMIIを用いた。中空糸膜は1本のモジュールから30本をランダムにサンプリングし測定し、最低値を評価結果とする。
(2)湿潤中空糸膜の場合
引張特性の測定はインストロンエンジニアリングコーポレーション社製インストロン(モデルNo.TM)で、37℃の水中で行った。チャック間距離は5cm、引張速度は5cm/分である。中空糸膜は1本のモジュールから30本をランダムにサンプリングし測定し、最低値を評価結果とする。
(非水溶性液体中の低沸点成分含有率)
非水溶性液体中の低沸点成分含有率の測定について、流動パラフィンを例として以下に説明する。低沸点成分含有率は、ガスクロマトグラフ法により求めた。保持時間5〜7分に現れるピークを流動パラフィン含有低沸点成分とし、ピーク面積比により含有率を求める。測定条件は次に示すとおりである。
測定装置:島津製作所製 GC−9A
充填カラム:内径3.2mmφ、長さ1.6m
カラム充填剤:Silicone OV−1 2% 80/100mesh(ジーエルサイエンス社製)
カラム温度:初期温度100℃で4分保持後、10℃/分で最終温度200℃まで昇温し、200℃で4分保持
注入部温度:260℃
検出器:FID
検出器温度:260℃
試料注入量:0.5μl
移動相:窒素、流量:50ml/min
(非水溶性液体中の含有水分率)
非水溶性液体中の含有水分率は、カールフィッシャー法により求めた。非水溶性液体として流動パラフィンを用いる際の測定条件は次に示すとおりである。
測定装置:京都電子工業製 MKC−610
水分気化温度:120℃
試薬:発生液 ハイドラナール・クーロマットAG(シグマ社製)
対極液 ハイドラナール・クーロマットCG(シグマ社製)
流動パラフィンサンプル量:4ml
(実施例1)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)20.5重量%、N−メチル−2−ピロリドン(三菱化学社製)50重量%、トリエチレングリコール(三井化学社製)29.5重量%を170℃で均一溶解し製膜溶液を得た。得られた製膜溶液を5μmのフィルターに通した後、150℃に加温したチューブインオリフィス型ノズルから中空形成剤である流動パラフィン(三光化学社製)と同時に吐出し、エアギャップを通過後、33℃のN−メチル−2−ピロリドン/トリエチレングリコール/水=10.5/4.5/85からなる凝固浴中で凝固させた。流動パラフィンは、−700mmHgで減圧下、温度130℃で2.5時間加熱処理したものを使用した。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均90μmであり、最大92μm、最小88μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.05であった。その後、水洗し溶媒を除去した後60重量%のグリセリン水溶液中を通過させドライヤーで乾燥し巻き上げた。紡糸工程中、中空糸膜が接触するローラーは表面が鏡面加工されたもの、ガイドはすべて表面が梨地加工されたものを使用した。紡糸開始より96時間以内に糸切れは発生しなかった。また気泡を噛みこんだ欠点糸の発生回数は24hに1回以下であった。得られた中空糸膜の内径は198.3μm、膜厚は14.8μmであった。このようにして得られた中空糸膜を用いて、血液浄化器を組み立てた。この時、血液浄化器内の中空糸膜充填率は52〜55vol%となるようにケースのサイズを調整した。使用した血液浄化器は、モジュール組立後に、0.1MPaの圧力で加圧空気を充填し、10秒間の圧力降下が30mmAq以下のモジュールを試験に用いた。得られた血液浄化器の試験結果を表1に示した。
(比較例1)
実施例1と同様の製膜溶液を5μmのフィルターに通した後、145℃に加温したチューブインオリフィス型ノズルから中空形成剤として流動パラフィンを用いて製膜溶液を吐出、エアギャップを通過後、35℃のN−メチル−2−ピロリドン/トリエチレングリコール/水=10.5/4.5/85からなる凝固浴中で凝固させた。流動パラフィンは未処理のものをそのまま使用した。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均95μmであり、最大97μm、最小93μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.04であった。水洗し溶媒を除去した後65重量%のグリセリン水溶液中を通過させドライヤーで乾燥し巻き上げた。紡糸開始から12時間後に糸切れが発生した。また気泡を噛みこんだ欠点糸の発生回数は糸切れするまでの間14回であった。得られた中空糸膜の内径は202.5μm、膜厚は14.7μmであった。このようにして得られた中空糸膜を用いて、血液浄化器を組み立てた。この時、血液浄化器内の中空糸膜充填率は52〜55vol%となるようにケースのサイズを調整した。使用した血液浄化器は、モジュール組立後に、0.1MPaの圧力で加圧空気を充填し、10秒間の圧力降下が30mmAq以下のモジュールを試験に用いた。得られた血液浄化器の分析結果を表1に示した。未処理の流動パラフィンを用いた為気泡を含む欠点糸が発生している。バースト圧は低くバースト部位は糸欠点部であった。
(実施例2)
セルローストリアセテート25重量%、N−メチル−2−ピロリドン53重量%、トリエチレングリコール22重量%を170℃で均一溶解し製膜溶液を得た。得られた製膜溶液を5μmのフィルターに通した後、165℃に加温したチューブインオリフィス型ノズルから中空形成剤である流動パラフィンと同時に吐出し、エアギャップを通過後、25℃のN−メチル−2−ピロリドン/トリエチレングリコール/水=21/9/70からなる凝固浴中で凝固させた。流動パラフィンは、-700mmHgで減圧下、温度150℃で5時間加熱処理したものを使用した。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均94μmであり、最大96μm、最小93μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.03であった。その後、水洗し溶媒を除去した後60重量%のグリセリン水溶液中を通過させドライヤーで乾燥し巻き上げた。紡糸開始より96時間以内に糸切れは発生しなかった。また気泡を噛みこんだ欠点糸の発生回数は24hに1回以下であった。得られた中空糸膜の内径は199.9μm、膜厚は15.0μmであった。このようにして得られた中空糸膜を用いて、血液浄化器を組み立てた。この時、血液浄化器内の中空糸膜充填率は52〜55vol%となるようにケースのサイズを調整した。使用した血液浄化器は、モジュール組立後に、0.1MPaの圧力で加圧空気を充填し、10秒間の圧力降下が30mmAq以下のモジュールを試験に用いた。得られた血液浄化器の試験結果を表1に示した。
(比較例2)
実施例2と同様の製膜溶液を5μmのフィルターに通した後、170℃に加温したチューブインオリフィス型ノズルから中空形成剤として流動パラフィンを用いて製膜溶液を吐出、エアギャップを通過後、28℃のN−メチル−2−ピロリドン/トリエチレングリコール/水=21/9/70からなる凝固浴中で凝固させた。流動パラフィンは、常圧下、温度70℃で2時間加熱処理したものを使用した。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均98μmであり、最大99μm、最小96μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.03であった。水洗し溶媒を除去した後60重量%のグリセリン水溶液中を通過させドライヤーで乾燥し巻き上げた。紡糸開始から約3時間後に糸切れが発生した。また気泡を噛みこんだ欠点糸の発生回数は糸切れするまでの間に4回であった。得られた中空糸膜の内径は199.6μm、膜厚は14.6μmであった。このようにして得られた中空糸膜を用いて、血液浄化器を組み立てた。この時、血液浄化器内の中空糸膜充填率は52〜55vol%となるようにケースのサイズを調整した。使用した血液浄化器は、モジュール組立後に、0.1MPaの圧力で加圧空気を充填し、10秒間の圧力降下が30mmAq以下のモジュールを試験に用いた。得られた血液浄化器の試験結果を表1に示した。流動パラフィンの加温処理を行っているが、欠点糸が発生しており、紡糸開始から3時間後に糸切れが発生している。バースト圧は低くバースト部位は糸欠点部であった。ノズル温度を高く設定した為、流動パラフィン中の低沸点成分が気化したものと考えられた。
(比較例3)
実施例2と同様の製膜溶液を5μmのフィルターに通した後、実施例2と同じ90℃に加温したチューブインオリフィス型ノズルから中空形成剤として流動パラフィンを用いて製膜溶液を吐出、エアギャップを通過後、28℃のN−メチル−2−ピロリドン/トリエチレングリコール/水=21/9/70からなる凝固浴中で凝固させた。流動パラフィンは、未処理のものをそのまま使用した。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均93μmであり、最大94μm、最小91μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.03であった。水洗し溶媒を除去した後55重量%のグリセリン水溶液中を通過させドライヤーで乾燥し巻き上げた。紡糸開始より96時間以内に糸切れは発生しなかった。また気泡を噛みこんだ欠点糸の発生回数は24hに1回以下であった。得られた中空糸膜の内径は199.3μm、膜厚は35.0μmであった。このようにして得られた中空糸膜を用いて、血液浄化器を組み立てた。この時、血液浄化器内の中空糸膜充填率は52〜55vol%となるようにケースのサイズを調整した。使用した血液浄化器は、モジュール組立後に、0.1MPaの圧力で加圧空気を充填し、10秒間の圧力降下が30mmAq以下のモジュールを試験に用いた。得られた血液浄化器の試験結果を表1に示した。未処理の流動パラフィンを用いたが欠点糸は発生していない。しかし透水性が低い。ノズル温度が低すぎた為と考えられる。
(比較例4)
セルローストリアセテート17重量%、N−メチル−2−ピロリドン58重量%、トリエチレングリコール25重量%を170℃で均一溶解し製膜溶液を得た。得られた製膜液は120℃に加温したチューブインオリフィス型ノズルから中空形成剤として流動パラフィンを用いて製膜溶液を吐出、エアギャップを通過後、35℃の水中で凝固させた。流動パラフィンは、未処理のものをそのまま使用した。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均80μmであり、最大82μm、最小78μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.05であった。水洗し溶媒を除去した後70重量%のグリセリン水溶液中を通過させドライヤーで乾燥し巻き上げた。紡糸開始から12時間後に糸切れが発生した。また気泡を噛みこんだ欠点糸の発生回数は糸切れするまでの間に3回であった。得られた中空糸膜の内径は202.1μm、膜厚は14.9μmであった。このようにして得られた中空糸膜を用いて、血液浄化器を組み立てた。この時、血液浄化器内の中空糸膜充填率は52〜55vol%となるようにケースのサイズを調整した。使用した血液浄化器は、モジュール組立後に、0.1MPaの圧力で加圧空気を充填し、10秒間の圧力降下が30mmAq以下のモジュールを試験に用いた。得られた血液浄化器の試験結果を表1に示した。未処理の流動パラフィンを用いた為気泡を含む欠点糸が発生している。しかし紡糸開始12時間後に糸切れ発生。ポリマー溶液のポリマー分率が低いことと、未処理の流動パラフィンを用いたのが原因と考えられた。また、破断強力が低いため血液浄化器組立ての歩留まりが低下していた。
(実施例3)
セルローストリアセテート20.2重量%、N−メチル−2−ピロリドン55.9重量%、トリエチレングリコール23.9重量%を170℃で均一溶解し製膜溶液を得た。得られた製膜溶液を5μmのフィルターに通した後、140℃に加温したチューブインオリフィス型ノズルから中空形成剤である流動パラフィンと同時に吐出し、エアギャップを通過後、33℃のN−メチル−2−ピロリドン/トリエチレングリコール/水=10.5/4.5/85からなる凝固浴中で凝固させた。流動パラフィンは、−700mmHgで減圧下、温度130℃で3.5時間加熱処理したものを使用した。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均90μmであり、最大91μm、最小89μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.02であった。その後、水洗し溶媒を除去した後68重量%のグリセリン水溶液中を通過させドライヤーで乾燥し巻き上げた。紡糸開始より96時間以内に糸切れは発生しなかった。また気泡を噛みこんだ欠点糸の発生回数は24hに1回以下であった。得られた中空糸膜の内径は198.3μm、膜厚は10.3μmであった。このようにして得られた中空糸膜を用いて、血液浄化器を組み立てた。この時、血液浄化器内の中空糸膜充填率は52〜55vol%となるようにケースのサイズを調整した。使用した血液浄化器は、モジュール組立後に、0.1MPaの圧力で加圧空気を充填し、10秒間の圧力降下が30mmAq以下のモジュールを試験に用いた。得られた血液浄化器の試験結果を表1に示した。
(実施例4)
セルローストリアセテート24.0重量%、N−メチル−2−ピロリドン53.2重量%、トリエチレングリコール22.8重量%を170℃で均一溶解し製膜溶液を得た。得られた製膜溶液を5μmのフィルターに通した後、155℃に加温したチューブインオリフィス型ノズルから中空形成剤である流動パラフィンと同時に吐出し、エアギャップを通過後、25℃のN−メチル−2−ピロリドン/トリエチレングリコール/水=21/9/70からなる凝固浴中で凝固させた。流動パラフィンは、−600mmHgで減圧下、温度150℃で4時間加熱処理したものを使用した。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均94μmであり、最大95μm、最小92μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.03であった。その後、水洗し溶媒を除去した後55重量%のグリセリン水溶液中を通過させドライヤーで乾燥し巻き上げた。紡糸開始より96時間以内に糸切れは発生しなかった。また気泡を噛みこんだ欠点糸の発生回数は24hに1回以下であった。得られた中空糸膜の内径は190.2μm、膜厚は29.3μmであった。このようにして得られた中空糸膜を用いて、血液浄化器を組み立てた。この時、血液浄化器内の中空糸膜充填率は52〜55vol%となるようにケースのサイズを調整した。使用した血液浄化器は、モジュール組立後に、0.1MPaの圧力で加圧空気を充填し、10秒間の圧力降下が30mmAq以下のモジュールを試験に用いた。得られた血液浄化器の試験結果を表1に示した。
(比較例5)
セルローストリアセテート20重量%、N−メチル−2−ピロリドン56重量%、トリエチレングリコール24重量%を170℃で均一溶解し製膜溶液を得た。得られた製膜溶液を5μmのフィルターに通した後、160℃に加温したチューブインオリフィス型ノズルから中空形成剤である流動パラフィンと同時に吐出し、エアギャップを通過後、38℃のN−メチル−2−ピロリドン/トリエチレングリコール/水=7/3/90からなる凝固浴中で凝固させた。流動パラフィンは、−700mmHgで減圧下、温度130℃で2.5時間加熱処理したものを使用した。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均90μmであり、最大92μm、最小88μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.05であった。その後、水洗し溶媒を除去した後70重量%のグリセリン水溶液中を通過させドライヤーで乾燥し巻き上げた。紡糸開始より96時間以内に糸切れは発生しなかった。また気泡を噛みこんだ欠点糸の発生回数は24hに1回以下であった。得られた中空糸膜の内径は199.3μm、膜厚は14.5μmであった。このようにして得られた中空糸膜を用いて、血液浄化器を組み立てた。この時、血液浄化器内の中空糸膜充填率は52〜55vol%となるようにケースのサイズを調整した。使用した血液浄化器は、モジュール組立後に、0.1MPaの圧力で加圧空気を充填し、10秒間の圧力降下が30mmAq以下のモジュールを試験に用いた。得られた血液浄化器の試験結果を表1に示した。紡糸安定性は良好であったが、破断強力が低いため血液浄化器組立ての歩留まりが低くなった。
Figure 0005126459
本発明の中空糸膜は、透水性が優れている。また、本発明の中空糸膜は、耐圧性、破断強度が高い。従って、溶質透過性に優れ、例えば、血液浄化器用として使用した場合の組立性も良く、臨床使用時の血液リークのリスクが少ないという利点がある。また、本発明の中空糸膜は、紡糸時の糸切れや糸欠点の発生がほとんどないので高品質な中空糸膜を経済的に製造することができる。従って、産業界に寄与することが大である。

Claims (6)

  1. 中空糸膜を製造するに際して、中空形成剤として−600mmHg以下の減圧下、130℃以上で処理された流動パラフィンを用いて製造された中空糸膜であって、膜厚が5μm以上30μm以下であり、透水率が25ml/m/hr/mmHg以上300ml/m/hr/mmHg以下であり、単糸の破断強力が40g以上であるセルロースエステルからなる中空糸膜であって、該中空糸膜を組み込んだ血液浄化器を37℃の純水に浸漬して測定した時のバースト圧が0.8MPa以上であるセルロースエステル中空糸膜。
  2. 請求項1記載のセルロースエステル中空糸膜の製造において、中空形成剤として沸点が130℃未満の低沸点成分が除去された流動パラフィンを用いることを特徴とするセルロースエステル中空糸膜の製造方法。
  3. 低沸点成分の含有率が0.15%以下とされた流動パラフィンを用いることを特徴とする請求項2に記載のセルロースエステル中空糸膜の製造方法。
  4. 含有水分率が50ppm以下とされた流動パラフィンを用いることを特徴とする請求項2または3に記載のセルロースエステル中空糸膜の製造方法。
  5. 炭素数10〜15の流動パラフィンであることを特徴とする請求項2〜4いずれかに記載のセルロースエステル中空糸膜の製造方法。
  6. 紡糸溶液中のセルロースエステル分率を20重量%以上とし、ノズル温度を130℃以上とすることを特徴とする請求項2〜5いずれかに記載のセルロースエステル中空糸膜の製造方法。
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