JP2011050881A - 中空糸膜の紡糸方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
中空糸膜の内径ムラや糸切れ、芯液の吐出部分の閉塞などを防ぎ、内径に対して膜厚が薄く、均一構造の中空糸膜を高速に紡糸する方法を提供する。
【解決手段】
紡糸ポリマー原液と、前記紡糸ポリマー原液に対して不活性な芯液とをチューブインオリフィスノズルから同時に吐出する中空糸膜の紡糸方法であって、ノズルスリット部から紡糸ポリマー原液を吐出するときの平均吐出線速度(A)と、ノズルスリット内径基準としたときの芯液の平均吐出線速度(B)の比率が0.4≦A/B≦2.0であり、紡糸後の中空糸膜の膜厚と内径の比率が0.03以上0.15以下であり、ノズル吐出から凝固浴に導入されるまでのエアギャップ部分での紡糸ポリマー原液のノズルドラフト比が5以上30以下である。
【選択図】図1
中空糸膜の内径ムラや糸切れ、芯液の吐出部分の閉塞などを防ぎ、内径に対して膜厚が薄く、均一構造の中空糸膜を高速に紡糸する方法を提供する。
【解決手段】
紡糸ポリマー原液と、前記紡糸ポリマー原液に対して不活性な芯液とをチューブインオリフィスノズルから同時に吐出する中空糸膜の紡糸方法であって、ノズルスリット部から紡糸ポリマー原液を吐出するときの平均吐出線速度(A)と、ノズルスリット内径基準としたときの芯液の平均吐出線速度(B)の比率が0.4≦A/B≦2.0であり、紡糸後の中空糸膜の膜厚と内径の比率が0.03以上0.15以下であり、ノズル吐出から凝固浴に導入されるまでのエアギャップ部分での紡糸ポリマー原液のノズルドラフト比が5以上30以下である。
【選択図】図1
Description
本発明は、紡糸ポリマー原液と芯液をチューブインオリフィスノズルから同時に吐出する均一構造の中空糸膜の紡糸方法において、中空糸膜の内径ムラや、芯液の吐出部分の閉塞を防ぐことにより、膜厚が薄く、性能の高い中空糸膜を、高い生産性で得ることができる紡糸方法に関する。
中空糸膜は、その構造上の特徴から、膜モジュール体積あたりの膜面積が大きいこと、耐ファウリング性に優れること、スケールアップが容易であることから、逆浸透膜、限外濾過膜、精密ろ過膜、血液透析膜など多くの用途に応用されている。
中空糸膜は、一般的に芯液を内側から、紡糸ポリマー原液をその外側から同時に吐出することにより製造されている。このとき、吐出ノズルとして、多くの場合、チューブインオリフィスノズルが用いられる。このチューブインオリフィスノズルは、ノズル中心部に芯液用の吐出口があり、その外側にドーナツ状の紡糸ポリマー原液吐出用のスリットを有する。
中空糸膜は、その用途によって、中空糸膜の寸法、すなわち、内径や膜厚、外径、中空比率などを最適化する必要がある。例えば、中空糸膜の外側から高圧を付与して内側にろ過する場合、外圧に対して耐久性を持たせるために、膜厚を大きくし、かつ外径と中空比率を小さくする必要がある。また、比較的小さい膜間圧力で透過性を高めるときには、中空糸膜の膜厚を出来るだけ小さくすることが好ましい。
このように、異なる寸法の中空糸膜の紡糸にあたっては、チューブインオリフィスノズルにおける紡糸ポリマー原液吐出部スリットの径や幅、芯液吐出口の径を経験的に調節している。
また、芯液の性質により、中空糸膜の内表面構造が変わることが知られており、中空糸膜の用途によって芯液が選択される。例えば、紡糸ポリマー原液に対して凝固性を有する中空部形成用流体を芯液として選択すると、紡糸ポリマー原液はノズル吐出時に凝固性流体と接触して凝固するので、中空糸内表面に緻密なスキン層を有する非対称膜が形成される。この非対称膜は、ろ過流体に対する抵抗が比較的低いので、高い流束を必要とする内側から外側へのろ過時に好適に使用できる。
一方、紡糸ポリマー原液に対して不活性な芯液を使用すると、紡糸ポリマー原液は、ノズル吐出時に凝固することなく、その後の過程で凝固するので、均一な膜構造をとりやすい。均一構造の中空糸膜は、薄い膜厚でも比較的強度が高く、膜モジュールをコンパクト化する際に使用されることが多い。
芯液は、気体または液体が実際に用いられているが、気体の場合、気体そのものが圧縮性であることから、液体状態の紡糸ポリマー原液と同時に吐出すると、体積変動を起こしやすいので、中空糸の内径ムラや、その結果によるノズル部での糸切れを発生しやすく、一部の特殊な用途を除いて、芯液には一般的に液体が使用されることが多い。
内径に対して膜厚が薄く、均一構造の中空糸膜を高速に紡糸する場合は、紡糸ポリマー原液の吐出量が少なく、しかも芯液の吐出量が多くなるので、吐出直後の紡糸ポリマー原液と芯液の双方の安定性が低い。中空糸膜の内径ムラや、その結果発生する糸切れ、さらには、吐出時のバランスが崩れて、紡糸ポリマー原液が逆流することによってチューブインオリフィスノズルの芯液吐出口が閉塞するなどの問題がある。
安定した中空糸膜を紡糸するためには、チューブインオリフィスノズルの紡糸ポリマー原液吐出部スリットからの吐出線速度と、芯液の吐出口からの吐出線速度を調節する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、この方法は、芯液に凝固性の溶媒を用いるため、均一構造を有する中空糸膜の紡糸に対しては、適切な技術とは言えない。また、この方法は、ノズルドラフト(ノズル吐出速度と紡糸捲取速度の比)が1に近い中空糸膜の紡糸に用いることは可能であるが、ノズルドラフト比が大きい場合には適切ではない。
本発明は、上記の従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、中空糸膜の内径ムラや糸切れ、芯液の吐出部分の閉塞などを防ぎ、内径に対して膜厚が薄く、均一構造の中空糸膜を高速に安定して紡糸する方法を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために、内径に対して膜厚が薄く、均一構造の中空糸膜を高速に紡糸するための、ノズルディメンジョンと紡糸条件について鋭意検討した結果、ノズルディメンジョンの中で、ノズルスリット内径を基準として芯液の平均吐出線速度を求め、これと紡糸ポリマー原液の平均吐出線速度の比率、ならびに紡糸ポリマー原液のノズルドラフト比、さらにエアギャップ長に対するノズルドラフト比を特定の範囲に制御することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は以下の(1)及び(2)の構成を有するものである。
(1)紡糸ポリマー原液と、前記紡糸ポリマー原液に対して不活性な芯液とをチューブインオリフィスノズルから同時に吐出する中空糸膜の紡糸方法において、ノズルスリット部から紡糸ポリマー原液を吐出するときの平均吐出線速度(A)と、ノズルスリット内径基準としたときの芯液の平均吐出線速度(B)の比率が0.4≦A/B≦2.0であること、紡糸後の中空糸膜の膜厚と内径の比率が0.03以上0.15以下であること、及びノズル吐出から凝固浴に導入されるまでのエアギャップ部分での紡糸ポリマー原液のノズルドラフト比が5以上30以下であることを特徴とする方法。
(2)ノズル吐出から凝固浴に導入されるまでのエアギャップ長に対するノズルドラフト比が1.0(−/cm)以上10.0(−/cm)以下であることを特徴とする(1)に記載の方法。
(1)紡糸ポリマー原液と、前記紡糸ポリマー原液に対して不活性な芯液とをチューブインオリフィスノズルから同時に吐出する中空糸膜の紡糸方法において、ノズルスリット部から紡糸ポリマー原液を吐出するときの平均吐出線速度(A)と、ノズルスリット内径基準としたときの芯液の平均吐出線速度(B)の比率が0.4≦A/B≦2.0であること、紡糸後の中空糸膜の膜厚と内径の比率が0.03以上0.15以下であること、及びノズル吐出から凝固浴に導入されるまでのエアギャップ部分での紡糸ポリマー原液のノズルドラフト比が5以上30以下であることを特徴とする方法。
(2)ノズル吐出から凝固浴に導入されるまでのエアギャップ長に対するノズルドラフト比が1.0(−/cm)以上10.0(−/cm)以下であることを特徴とする(1)に記載の方法。
本発明の中空糸膜の紡糸方法は、内径に対して膜厚が薄く、均一構造の中空糸膜を高速に紡糸する際に、ノズルスリット部から紡糸ポリマー原液を吐出するときの平均吐出線速度(A)と、ノズル内径基準としたときの芯液の平均吐出線速度(B)の比率(A/B)を特定の範囲に制御しているので、中空糸膜の内径ムラや、その結果発生する糸切れ、さらには、吐出時のバランスが崩れて、紡糸ポリマー原液が逆流することによってチューブインオリフィスノズルの芯液吐出口が閉塞するなどの問題がなく、中空糸膜を高い生産性で安定して製造することができる。
以下、本発明の中空糸膜の紡糸方法を詳細に説明する。
本発明の中空糸膜の紡糸方法は、紡糸ポリマー原液と芯液とを図1に示すようなチューブインオリフィスノズルから同時に吐出することによって行われ、ノズルスリット部から紡糸原液ポリマー原液を吐出するときの平均吐出線速度(A)と、ノズルスリット内径基準としたときの芯液の平均吐出線速度(B)の比率が0.4≦A/B≦2.0であることを特徴とする。
本発明の中空糸膜の紡糸方法は、紡糸ポリマー原液と芯液とを図1に示すようなチューブインオリフィスノズルから同時に吐出することによって行われ、ノズルスリット部から紡糸原液ポリマー原液を吐出するときの平均吐出線速度(A)と、ノズルスリット内径基準としたときの芯液の平均吐出線速度(B)の比率が0.4≦A/B≦2.0であることを特徴とする。
従来、チューブインオリフィスノズルの芯液の吐出線速度は、芯液吐出口径(図1(b)のc)を基準に計算されていた。この計算方法では、実際の芯液の吐出後の広がりを無視しているため、芯液吐出口径を調節して芯液と紡糸ポリマー原液の吐出線速度を一致させても、吐出直下の紡糸状態は必ずしも安定しなかった。そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、実際の芯液の吐出後の外側への広がりを考慮して、ノズルスリット内径(図1(b)のb)を基準とした芯液吐出線速度を、紡糸ポリマー原液の吐出線速度と一致させることにより、吐出直後の紡糸状態を安定させることができることが分かった。
ノズルから吐出された芯液は、ノズル面から紡糸ポリマー原液が吐出されるとノズルスリット部まで広がり、ノズルスリットの内径部分で紡糸ポリマー原液と接触し、そこから一緒に吐出されている。従って、ノズルスリット内径を基準として芯液の吐出線速度を調節すれば、吐出された紡糸ポリマー原液との摩擦力を小さく調節することができ、その結果、可紡性を安定化させることができる。
本発明において、ノズルスリット部から紡糸ポリマー原液を吐出するときの平均吐出線速度(A)は、下記式のように、紡糸ポリマー原液平均吐出量を、図1(b)に示すノズルスリット外径(a)とノズルスリット内径(b)から計算されるノズルスリット断面積で除して求められる。
紡糸ポリマー原液の平均吐出線速度(A)[ml/min]=紡糸ポリマー原液平均吐出量/[π{(a/2)2−(b/2)2}]
また、ノズルスリット内径基準としたときの芯液の平均吐出線速度(B)は、下記式のように、芯液平均吐出量を、図1(b)に示すノズルスリット内径(b)から計算される円面積で除して求められる。
芯液の平均吐出線速度(B)[ml/min]=芯液平均吐出量/{π(b/2)2}
紡糸ポリマー原液の平均吐出線速度(A)[ml/min]=紡糸ポリマー原液平均吐出量/[π{(a/2)2−(b/2)2}]
また、ノズルスリット内径基準としたときの芯液の平均吐出線速度(B)は、下記式のように、芯液平均吐出量を、図1(b)に示すノズルスリット内径(b)から計算される円面積で除して求められる。
芯液の平均吐出線速度(B)[ml/min]=芯液平均吐出量/{π(b/2)2}
本発明の紡糸方法において、紡糸ポリマー原液と芯液の平均吐出線速度の比率(A/B)は0.4以上である。この比が小さいと、芯液の吐出線速度が紡糸ポリマー原液の吐出線速度より大きくなるので、ノズル吐出時に、芯液の吐出速度が速くなり、その結果、紡糸ポリマー原液の吐出が不安定になり、糸径ムラが発生したり、さらには紡糸ポリマー原液が芯液を支えきれなくなって糸切れが発生することがある。このため、この吐出線速度比は0.5以上が好ましく、0.6以上がさらに好ましく、0.7以上が特に好ましい。
一方、紡糸ポリマー原液と芯液の平均吐出線速度の比率(A/B)は2.0以下である。この比が大きいと、紡糸ポリマー原液の吐出線速度が芯液の吐出線速度より大きくなるので、ノズル吐出時に紡糸ポリマー原液の吐出速度が速くなり、その結果、芯液の吐出が不安定になり糸径ムラが発生したり、さらには、紡糸ポリマー原液が芯液の吐出孔をふさいでしまって糸切れが発生することがある。このため、この吐出線速度は、1.8以下が好ましく、1.6以下がさらに好ましく、1.5以下が特に好ましい。
紡糸ポリマー原液と芯液の平均吐出線速度の比率(A/B)はできるだけ1.0に近いことが最も好ましい。紡糸ポリマー原液と芯液との間の剪断(速度差)が少ないと、中空糸膜の内表面の平滑性が適切に保持される。内表面が荒れると、血液を流した際に血液にダメージを与えたり(溶血)、血中タンパクや血球成分が膜表面に付着しやすくなり、中空糸膜の分離特性の低下や安全性の低下(血小板や補体の活性化)を招くおそれがある。
本発明において、紡糸ポリマー原液の平均吐出線速度(A)は、ノズルドラフト比や紡速との関係にもよるが、重力の影響を受けない程度で、かつ作業性が低下しない程度の範囲に設定するのが好ましい。具体的には、紡糸ポリマー原液の平均吐出線速度(A)は2〜60m/minが好ましく、2.5〜50m/minがより好ましく、3〜40m/minがさらに好ましく、4〜30m/minがさらにより好ましい。また、芯液の平均吐出線速度(B)は、4〜120m/minが好ましく、4〜60m/minがより好ましく、4〜45m/minがさらに好ましく、4〜30m/minがさらにより好ましい。
本発明の紡糸方法において、芯液は紡糸ポリマー原液に対して不活性なものを使用する。不活性なものとは、紡糸ポリマー原液を凝固も溶解もしない流体であり、不活性な液体としては、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピルなどが挙げられ、不活性な気体としては、窒素、アルゴンなどが挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。好ましい芯液としては、取扱い性と安全性の点で流動パラフィンや窒素が挙げられ、この中でも流動パラフィンは、非圧縮性の液体であり、糸切れや糸径ムラが少ないので特に好ましい。芯液として紡糸ポリマー原液に対して活性のある液体を用いると、ノズル吐出直後に中空糸膜内側から凝固してしまうため、非対称構造をとって糸強度が低下し、膜厚を低くすることが困難となる場合がある。
このように紡糸ポリマー原液に対して不活性な芯液を用いると、ノズル吐出時には紡糸ポリマー原液は凝固せず、凝固浴に進入するまでのエアギャップ部分で十分な延伸を付与することができるので、高い糸強度を有する実質的に均一構造の中空糸膜が得られる。本発明の方法で得られる中空糸膜の膜内部は、実質的に均一構造であるが、実際には、2000倍の電子顕微鏡で膜断面を観察すると、膜断面に明らかに認められるフィンガーライク構造や網目構造などの組織が観察されない(つまり、孔が観察されない)。
本発明の方法で得られる中空糸膜は、紡糸後の膜厚と内径の比率が0.03以上0.15以下である。この比率が小さいと、膜厚が薄くなりすぎて、本発明の紡糸方法でも安定した紡糸が困難となることがあり、比率の下限は0.05以上が好ましく、0.06以上が特に好ましい。また、この比率が大きいと、膜厚が十分に大きくなるので、あえて本発明の紡糸方法を用いなくても安定した紡糸は可能であり、本発明の効果を享受するには、比率の上限は0.12以下が好ましく、0.10以下が特に好ましい。
本発明の方法で得られる中空糸膜の膜厚は、上記のように内径との比率から決定されるので、特に限定されるものではないが、具体的には5μm〜50μmが好ましい。膜厚が薄いと、安定した吐出や捲取が困難となることがあるので、膜厚の下限は7μm以上がより好ましく、10μm以上が特に好ましい。膜厚が厚い場合は、あえて本発明の紡糸方法を用いなくても安定した紡糸は可能であり、本発明の効果を享受するには、膜厚の上限は40μm以下が好ましく、30μm以下が特に好ましい。また、中空糸膜の内径は、同様に膜厚との比率から決定されるので、特に限定されるものではないが、具体的には100μm〜500μmが好ましい。
本発明の紡糸方法において、ノズル吐出から凝固浴に導入されるまでのエアギャップ部分での紡糸ポリマー原液のノズルドラフト比は5以上30以下である。ここでノズルドラフト比とは、紡糸ポリマー原液の平均吐出線速度と、凝固浴から糸をテイクアップするときの捲取速度の比である。ノズルドラフト比が小さいと、本発明のように、紡糸ポリマー原液に対して不活性な芯液を用いる場合には、エアギャップ部での張力が低くなり、外乱によって糸径ムラが発生することがあるので、ノズルドラフト比の下限は6以上が好ましく、7以上が特に好ましい。また、ノズルドラフト比が大きいと、エアギャップ部の張力が大きくなり、その結果糸切れが発生することがあるので、ノズルドラフト比の上限は25以下が好ましく、20以下が特に好ましい。
本発明の紡糸方法において、ノズル吐出から凝固浴に導入されるまでのエアギャップ長に対する前記ノズルドラフト比は1.0(−/cm)以上10.0(−/cm)以下とすることが好ましい。この比が小さいと、ノズルドラフト比を前記範囲にしても、エアギャップ部での張力が低くなり、外乱によって糸径ムラが発生することがあるので、この比の下限は1.5(−/cm)以上とすることがより好ましく、2.0(−/cm)以上とすることが特に好ましい。逆に、この比が小さいと、エアギャップ部での張力が大きくなり、その結果、糸切れが発生することがあるので、この比の上限は9.0(−/cm)以下とすることがより好ましく、8.0(−/cm)以下とすることが特に好ましい。
本発明の紡糸方法において使用するチューブインオリフィスノズルのディメンジョンは、中空糸型の精密ろ過膜、限外ろ過膜、逆浸透膜を製造できるものであれば特に限定されないが、ノズルスリット外径が400〜2500μm、ノズルスリット内径が200〜1500μm、芯液吐出口口径が100〜1000μmであることが好ましい。例えば、外径が230μm程度、内径が200μm程度の血液浄化用の中空糸膜を製造する場合には、ノズルのスリット外径、内径、芯液吐出口口径がそれぞれ400〜1200μm、200〜1000μm、100〜800μm程度が適当である。このようなノズルを使用することにより、紡糸ポリマー原液の吐出線速度と芯液の吐出線速度の比率やノズルドラフト比、中空糸膜内径に対する膜厚を好ましい範囲に設定し易くなる。
本発明の紡糸方法において、平均吐出線速度(A)及び(B)並びにノズルドラフト比は、チューブインオリフィスノズル径(ノズルスリット外径、ノズルスリット内径)、紡糸ポリマー原液の吐出量、芯液の吐出量、紡糸速度(凝固浴出口ローラー速度)を変えることによって制御することができる。例えば、内径200μm、膜厚15μmの中空糸膜を紡糸速度70m/minで製造する場合、紡糸ポリマー原液の吐出量はおよそ1.5cm3/min、芯液の吐出量はおよそ2.5cm3/minとなるが、ここで、ノズルスリット外径が0.1cm、ノズルスリット内径が0.08cmの場合、平均吐出線速度(A)は上述の式を用いて計算すると5.3m/minとなり、平均吐出線速度(B)は5.0m/min、ノズルドラフト比は13.2となる。
本発明において、中空糸膜の素材は、溶媒に溶解し、乾湿式紡糸できるものであれば特に制限はなく、セルロース、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のポリマーが好適に用いられる。中でも、酢酸セルロースや三酢酸セルロースなどのセルロースアセテート系ポリマーや、ポリスルホンやポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系ポリマーは細孔径を調節しやすく、強度も比較的高いので、特に好ましく用いられる。紡糸ポリマー原液中のポリマー濃度は、用いるポリマーの種類や目的とする中空糸膜の性能、物性、品質により適宜設定する必要があるが、本発明においては15〜50重量%が好ましい。
セルロースアセテート系ポリマーやポリスルホン系ポリマーに対する溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられるが、セルロースアセテート系ポリマーやポリスルホン系ポリマーの凝固および相分離のコントロールのしやすさ、作業安全性、廃棄処理の観点からN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミドを用いるのが好ましい。
また、紡糸ポリマー原液に非溶媒を添加する場合には、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が好ましく用いられるが、溶媒との相溶性や洗浄除去性、安全性の観点からトリエチレングリコール、ポリエチレングリコールがより好ましい。ポリエチレングリコールは分子量200、400のものを用いるのが、室温で液体であり取扱い性に優れる点で好ましい。さらに、紡糸ポリマー原液には、公知の酸化防止剤や微孔形成剤などの添加剤を必要に応じて加えることができる。紡糸ポリマー原液中の溶媒/非溶媒の重量比は、紡糸ポリマー原液の安定性が高まることや均質膜構造を得やすいことなどから、97/3〜40/60とするのが好ましい。より好ましくは90/10〜50/50であり、さらに好ましくは80/20〜60/40である。
紡糸ポリマー原液は、チューブインオリフィスノズルから吐出してエアギャップを通過した後、凝固浴中の凝固液に浸漬され、凝固および相分離を進行させる。ここで凝固液としては、紡糸ポリマー原液の調製に用いた溶媒および非溶媒と水との混合液を用いるのが好ましい。凝固液組成により、得られる中空糸膜の構造、特性が変化するため、溶媒、非溶媒、水の混合比率は目的とする膜構造、膜特性に合わせて試行錯誤により決定する必要がある。凝固液の調製に用いる溶媒、非溶媒は、紡糸ポリマー原液の調製に用いたものと同じものを使用することが好ましく、さらに紡糸時の経時的な組成変化を抑制するため紡糸ポリマー原液中の溶媒、非溶媒比と同じにするのが好ましい。
凝固浴から引き上げた中空糸膜は、引き続き洗浄工程に導き、中空糸膜製造に用いた溶媒、非溶媒等を除去する。洗浄装置の構成や用いる洗浄液については特に限定されるものではない。洗浄液については、溶媒、非溶媒と相溶性のあるものであればよく、例えば水、アルコールなどを用いることができるが、温水を用いるのが好ましい。
洗浄終了後、乾燥状態の中空糸膜を得る際には、中空糸膜細孔に孔径保持剤等を含浸させる工程に導かれる。孔径保持剤としては、グリセリンを用いるのが好ましい。グリセリンは医薬品や化粧料の用途として用いられる安全性の高い物質であるが、室温における粘度が高いため、原液のままでは孔径保持剤として使用するのは困難である。したがって、グリセリンを水に溶解したものを100℃以下に加熱して使用する。溶液中のグリセリン濃度や温度は、中空糸膜の細孔の大きさや数、分布状態によって適宜設定する必要がある。
このようにして得られた中空糸膜は、次に乾燥工程にて乾燥される。乾燥温度は40〜120℃が好ましい。ここで、中空糸膜を乾燥させる目的としては、中空糸膜に含まれる水を蒸発させて中空糸膜の軽量化を行うだけでなく、モジュール組立て性の確保(ポッティング剤が水と反応し接着不良を起こすことを防ぐ)、グリセリンの脱落防止(余剰の水を蒸発させることによりグリセリンの流動性を低下させる)、膜構造の固定化(その後の温度変化による細孔の拡大縮小を防ぐ)などが挙げられる。乾燥温度が低過ぎると瞬時に水を蒸発させることができず、グリセリンの脱落を招くことがある。したがって、乾燥温度は45℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。また、乾燥温度が高過ぎると、グリセリンが熱酸化を起こすことがある。したがって、乾燥温度は115℃以下がより好ましく、110℃以下がさらに好ましい。
本発明の紡糸方法の効果を実施例によって示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、この実施例中で測定した特性値は以下の方法で評価した。
(紡糸ポリマー原液および芯液の平均吐出線速度)
紡糸ポリマー原液の平均吐出線速度(A)(m/min)は、チューブインオリフィスノズルのスリット外径をOD(m)、スリット内径をID(m)、紡糸ポリマー原液の平均吐出量をP(m3/min)として下記式により求めた。
A(m/min)=P/[π×{(OD/2)2−(ID/2)2}]
また、芯液の平均吐出線速度(B)(m/min)は、芯液吐出口径をTD(m)、芯液の平均吐出量をQ(m3/min)として、下記式により求めた。
B(m/min)=Q/{π×(TD/2)2}
紡糸ポリマー原液の平均吐出線速度(A)(m/min)は、チューブインオリフィスノズルのスリット外径をOD(m)、スリット内径をID(m)、紡糸ポリマー原液の平均吐出量をP(m3/min)として下記式により求めた。
A(m/min)=P/[π×{(OD/2)2−(ID/2)2}]
また、芯液の平均吐出線速度(B)(m/min)は、芯液吐出口径をTD(m)、芯液の平均吐出量をQ(m3/min)として、下記式により求めた。
B(m/min)=Q/{π×(TD/2)2}
(ノズルドラフト比およびノズルドラフト比/エアギャップ(AG)長)
ノズルドラフト比は、凝固浴出口のローラー速度V(m/min)を紡糸ポリマー原液の平均吐出線速度(A)(m/min)で除して求めた。また、ノズルドラフト比/AG長は、ノズルドラフト比をノズル吐出から凝固浴に導入するまでのエアギャップ長(cm)で除して求めた。
ノズルドラフト比は、凝固浴出口のローラー速度V(m/min)を紡糸ポリマー原液の平均吐出線速度(A)(m/min)で除して求めた。また、ノズルドラフト比/AG長は、ノズルドラフト比をノズル吐出から凝固浴に導入するまでのエアギャップ長(cm)で除して求めた。
(中空糸膜の内径、膜厚、膜厚と内径の比率)
紡糸後の中空糸膜を厚さ2mmのスライドガラスの中央に開けられたφ1mmの孔に適当数通し、スライドガラス上下面で剃刀によりカットし、中空部を露出させた断面サンプルを得る。得られたサンプルは投影機(Nikon−12A)を用いて、視野内に確認される大〜小5サンプルについて、各中空糸膜断面内側の短径と長径をそれぞれ測定し、その算術平均値を中空糸膜の内径とした。また、各中空糸膜断面外側の短径と長径をそれぞれ測定し、その算術平均値を中空糸膜の外径とした。さらに、前記得られた(中空糸膜の外径−中空糸膜の内径)/2を中空糸膜の膜厚とした。また、膜厚と内径から膜厚と内径の比率を求めた。
紡糸後の中空糸膜を厚さ2mmのスライドガラスの中央に開けられたφ1mmの孔に適当数通し、スライドガラス上下面で剃刀によりカットし、中空部を露出させた断面サンプルを得る。得られたサンプルは投影機(Nikon−12A)を用いて、視野内に確認される大〜小5サンプルについて、各中空糸膜断面内側の短径と長径をそれぞれ測定し、その算術平均値を中空糸膜の内径とした。また、各中空糸膜断面外側の短径と長径をそれぞれ測定し、その算術平均値を中空糸膜の外径とした。さらに、前記得られた(中空糸膜の外径−中空糸膜の内径)/2を中空糸膜の膜厚とした。また、膜厚と内径から膜厚と内径の比率を求めた。
(操業性指標)
160錘のノズルを用いて紡糸速度70m/minで中空糸膜の紡糸を30日間連続して行った際、1日(24時間)あたりの糸切れおよび捲付き回数を計測した。糸切れまたは捲付きが1週間に1度以内(0.29回/日/160錘)であれば、ほぼ操業性は良好と言える。また、内径ムラについては、平均内径±15%の範囲を外れるものが1錘/160錘でも発生した場合に内径ムラと判断し、30日間での1日(24時間)あたりの内径ムラの回数を計測した。
160錘のノズルを用いて紡糸速度70m/minで中空糸膜の紡糸を30日間連続して行った際、1日(24時間)あたりの糸切れおよび捲付き回数を計測した。糸切れまたは捲付きが1週間に1度以内(0.29回/日/160錘)であれば、ほぼ操業性は良好と言える。また、内径ムラについては、平均内径±15%の範囲を外れるものが1錘/160錘でも発生した場合に内径ムラと判断し、30日間での1日(24時間)あたりの内径ムラの回数を計測した。
(実施例1〜4、比較例1〜4)
セルローストリアセテート(ダイセル化学工業製、LT105)19重量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(三菱化学製)56.7重量%、トリエチレングリコール(TEG)(三井化学製)24.3重量%を混合し、均一に加熱溶解した後、脱泡を行った。得られた紡糸ポリマー原液を130℃に加温したチューブインオリフィスノズルのスリット部より吐出し、同時に芯液吐出口より流動パラフィンを吐出した。吐出後の紡糸ポリマー原液はエアギャップ部を通過した後、30℃の15重量%のNMP/TEG(重量比7/3)水溶液中で凝固させた。次いで、70℃の洗浄槽を経た後、80℃、65重量%のグリセリン水溶液槽を通過させ、ドライヤーで乾燥させた後、ボビンにチーズ状に巻き取った。なお、実施例1〜4、比較例1〜4の中空糸膜の紡糸条件と評価結果は表1に記載の通りである。
セルローストリアセテート(ダイセル化学工業製、LT105)19重量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(三菱化学製)56.7重量%、トリエチレングリコール(TEG)(三井化学製)24.3重量%を混合し、均一に加熱溶解した後、脱泡を行った。得られた紡糸ポリマー原液を130℃に加温したチューブインオリフィスノズルのスリット部より吐出し、同時に芯液吐出口より流動パラフィンを吐出した。吐出後の紡糸ポリマー原液はエアギャップ部を通過した後、30℃の15重量%のNMP/TEG(重量比7/3)水溶液中で凝固させた。次いで、70℃の洗浄槽を経た後、80℃、65重量%のグリセリン水溶液槽を通過させ、ドライヤーで乾燥させた後、ボビンにチーズ状に巻き取った。なお、実施例1〜4、比較例1〜4の中空糸膜の紡糸条件と評価結果は表1に記載の通りである。
(実施例5、6)
セルロースジアセテート(ダイセル化学工業製、L−40S)26重量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(三菱化学製)51.8重量%、エチレングリコール(EG)(三井化学製)22.2重量%を混合し、均一に加熱溶解した後、脱泡を行った。得られた紡糸ポリマー原液を130℃に加温したチューブインオリフィスノズルのスリット部より吐出し、同時に芯液吐出口より流動パラフィンを吐出した。吐出後の紡糸ポリマー原液はエアギャップ部を通過した後、15℃の40重量%のNMP/EG(重量比7/3)水溶液中で凝固させた。次いで、70℃の洗浄槽を経た後、70℃、45重量%のグリセリン水溶液槽を通過させ、ドライヤーで乾燥させた後、ボビンにチーズ状に巻き取った。なお、実施例5,6の中空糸膜の紡糸条件と評価結果は表1に記載の通りである。
セルロースジアセテート(ダイセル化学工業製、L−40S)26重量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(三菱化学製)51.8重量%、エチレングリコール(EG)(三井化学製)22.2重量%を混合し、均一に加熱溶解した後、脱泡を行った。得られた紡糸ポリマー原液を130℃に加温したチューブインオリフィスノズルのスリット部より吐出し、同時に芯液吐出口より流動パラフィンを吐出した。吐出後の紡糸ポリマー原液はエアギャップ部を通過した後、15℃の40重量%のNMP/EG(重量比7/3)水溶液中で凝固させた。次いで、70℃の洗浄槽を経た後、70℃、45重量%のグリセリン水溶液槽を通過させ、ドライヤーで乾燥させた後、ボビンにチーズ状に巻き取った。なお、実施例5,6の中空糸膜の紡糸条件と評価結果は表1に記載の通りである。
(実施例7〜10)
ポリエーテルスルホン(住友化学製、スミカエクセル4800P)42重量%、ポリビニルピロリドン(BASF製、コリドンK90)4重量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)32.4重量%、トリエチレングリコール(TEG)21.6重量%を混合し、均一に加熱溶解した後、脱泡を行った。得られた紡糸ポリマー原液を125℃に加温したチューブインオリフィスノズルのスリット部より吐出し、同時に芯液吐出口より流動パラフィンを吐出した。吐出後の紡糸ポリマー原液はエアギャップ部を通過させた後、5℃の60重量%のNMP/TEG(重量比6/4)水溶液中で凝固させた。次いで、70℃の洗浄槽を経た後、70℃、45重量%のグリセリン水溶液槽を通過させ、ドライヤーで乾燥させた後、ボビンにチーズ状に巻き取った。なお、実施例7〜10の中空糸膜の紡糸条件と評価結果は表1に記載の通りである。
ポリエーテルスルホン(住友化学製、スミカエクセル4800P)42重量%、ポリビニルピロリドン(BASF製、コリドンK90)4重量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)32.4重量%、トリエチレングリコール(TEG)21.6重量%を混合し、均一に加熱溶解した後、脱泡を行った。得られた紡糸ポリマー原液を125℃に加温したチューブインオリフィスノズルのスリット部より吐出し、同時に芯液吐出口より流動パラフィンを吐出した。吐出後の紡糸ポリマー原液はエアギャップ部を通過させた後、5℃の60重量%のNMP/TEG(重量比6/4)水溶液中で凝固させた。次いで、70℃の洗浄槽を経た後、70℃、45重量%のグリセリン水溶液槽を通過させ、ドライヤーで乾燥させた後、ボビンにチーズ状に巻き取った。なお、実施例7〜10の中空糸膜の紡糸条件と評価結果は表1に記載の通りである。
表1からわかるように、チューブインオリフィスノズルにおいてノズルスリット部から紡糸ポリマー原液を吐出する平均吐出線速度(A)とノズルスリット内径基準としたときの芯液の平均吐出線速度(B)の比率が0.4≦A/B≦2.0の範囲にあり、ノズルドラフト比が5以上30以下の範囲にある実施例1〜10の場合には、中空糸の内径ムラやその結果生じる糸切れや捲付きは発生せず、良好に中空糸膜が紡糸でき、吐出時のバランスが崩れて、紡糸ポリマーが逆流することによってチューブインオリフィスノズルの芯液吐出口が閉塞することもなかった。
一方、比較例1は、チューブインオリフィスノズルにおいてノズルスリット内径基準としたときの芯液の平均吐出線速度(B)が極めて高く、平均吐出線速度の比率(A/B)が低いために紡糸ポリマー原液と芯液の吐出が不安定であり、糸切れの頻度が高くなった。また、比較例2は、チューブインオリフィスノズルにおいてノズルスリット内径基準としたときの芯液の平均吐出線速度(B)が極めて低く、平均吐出線速度の比率(A/B)が高いために吐出時のバランスが崩れて、紡糸ポリマー原液が逆流することによってチューブインオリフィスノズルの芯液吐出口が閉塞し、糸切れの頻度が高くなった。また、比較例3は、チューブインオリフィスノズルにおいてノズルスリット部から紡糸ポリマー原液を吐出する平均吐出線速度(A)に対して紡糸速度が遅く、ノズルドラフト比が低いために中空糸膜の内径ムラが生じ、その結果、糸切れや捲付きの頻度が高くなった。また、比較例4は、チューブインオリフィスノズルにおいてノズルスリット部から紡糸ポリマー原液を吐出する平均吐出線速度(A)が極めて低く、ノズルドラフト比が高いために中空糸膜の膜厚が薄くなりすぎ、その結果、糸切れの頻度が高くなった。
本発明の紡糸方法は、中空糸膜の内径ムラや、その結果発生する糸切れや捲付き、さらには、吐出時のバランスが崩れて、紡糸ポリマー原液が逆流することによってチューブインオリフィスノズルの芯液吐出口が閉塞するなどの問題がなく、中空糸膜を高い生産性で安定して製造することができる。
Claims (2)
- 紡糸ポリマー原液と、前記紡糸ポリマー原液に対して不活性な芯液とをチューブインオリフィスノズルから同時に吐出する中空糸膜の紡糸方法において、ノズルスリット部から紡糸ポリマー原液を吐出するときの平均吐出線速度(A)と、ノズルスリット内径基準としたときの芯液の平均吐出線速度(B)の比率が0.4≦A/B≦2.0であること、紡糸後の中空糸膜の膜厚と内径の比率が0.03以上0.15以下であること、及びノズル吐出から凝固浴に導入されるまでのエアギャップ部分での紡糸ポリマー原液のノズルドラフト比が5以上30以下であることを特徴とする方法。
- ノズル吐出から凝固浴に導入されるまでのエアギャップ長に対するノズルドラフト比が1.0(−/cm)以上10.0(−/cm)以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
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