JP2015203048A - ポリケトン多孔膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱性、耐薬品性、耐有機溶剤性を有し、かつ、カチオン性及びアニオン性不純物の両方の除去が可能な濾過用フィルターとして有用な両性イオン性ポリケトン多孔膜、及び該ポリケトン多孔膜を濾材として用いたフィルターの提供。
【解決手段】下記化学式(1):
Figure 2015203048

で表される1−オキソトリメチレン繰り返し単位を含むポリケトンからなるポリケトン多孔膜であって、下記条件:
(1)空隙率が5〜90%であること;
(2)pH=1〜3におけるゼータ電位が+5mV〜+80mVであること;
(3)pH=11〜14におけるゼータ電位が−80mV〜−5mVであること;
を満足するポリケトン多孔膜、及びポリケトン多孔膜を含む濾過用フィルター。
【選択図】なし

Description

本発明は、両性イオン性ポリケトン多孔膜及びその用途に関する。さらに詳しくは、本発明は、両性イオン性ポリケトン多孔膜を含む微粒子吸着性、ゲル吸着性、及びイオン吸着性に優れた液体ろ過フィルターに関する。
近年、半導体・電子部品製造、バイオ医薬品分野、ケミカル分野、食品工業分野の製造プロセスにおいて、微粒子、ゲル、ウイルス等の不純物を効率的に除去することができる濾材が求められている。濾過対象物のサイズよりも小さい孔径の濾材を使用すれば、上記不純物はある程度までは除去可能である。しかしながら、一般に孔径が小さくなる程、濾過における圧力損失が大きくなり、透過流束が減少してしまう。そこで、極めて小さい不純物を十分に濾過できるだけでなく、圧力損失も小さい濾材が求められている。
圧力損失を大きくせずに微小不純物を除去する方法として、吸着性能を有するフィルターの使用が知られている。しかしながら、前記製造プロセスにおいては、アニオン性の不純物とカチオン性の不純物が混在していることが多く、両方の不純物を全て除去するためには、アニオン吸着性のフィルターとカチオン吸着性のフィルターの両方を直列で用いる必要があり、フィルターを設置するためのスペースの確保が必要となり、また、フィルターの維持・管理に多大なコストと労力が必要となる。
また、一部のフィルターでは、処理気液が有機溶媒である場合、腐食性を有する場合があり、また、高温環境下で使用される場合もある。このような場合、フィルターには耐薬品性、耐有機溶媒性、化学安定性、耐熱性が要求される場合が多い。現在、微小な不純物等の除去が可能で、かつ耐薬品性、耐有機溶媒性を持つ濾材として、ポリエチレン多孔膜やポリテトラフルオロエチレン多孔膜が用いられている。しかしながら、ポリエチレン多孔膜は耐熱性が低いという問題がある。また、ポリテトラフルオロエチレン多孔膜は非常に高価であり、10nm程度の微小な不純物を除去できる孔径を持った濾材を作りにくいという問題がある。更に、これらの濾材は共に疎水性であり、水系の処理液を濾過する場合には、濾材に予め親水化処理を施しておくか、濾材を使用前にアルコール浸漬してから使用しなければならないという問題がある。
ところで、パラジウム又はニッケルを触媒として一酸化炭素とオレフィンとを重合させることにより得られる、一酸化炭素とオレフィンとが完全交互共重合した脂肪族ポリケトン(以下、ポリケトンともいう。)が知られている。ポリケトンは、その高い結晶性により、繊維又はフィルムとしたときに、高力学物性、高融点、耐有機溶媒性、耐薬品性等の特性を有する。特に、オレフィンがエチレンの場合、該ポリケトンの融点は240℃以上となる。このようなポリケトンは、例えば、ポリエチレンと比較して耐熱性に優れる。従って、ポリケトンを加工して多孔膜とすることで得られるポリケトン多孔膜も、耐熱性、耐薬品性、耐有機溶媒性を持つ。更に、ポリケトンは水及び各種有機溶媒との親和性があること、また、原料の一酸化炭素及びエチレンは比較的安価であり、ポリケトンのポリマー価格が安くなる可能性があることから、孔径の小さいポリケトン多孔膜は濾材として産業上の活用が期待できる。
ポリケトン多孔膜が濾材として有用であることは、例えば、以下の特許文献1及び特許文献2に記載されている。しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示されたポリケトン多孔膜は、孔径より大きなサイズの粒子の除去は可能であるものの、濾過抵抗が大きく、かつ、吸着性能を有しないため、孔径より小さい微粒子状不純物、ゲル状異物、イオンに対しては、濾過精度が不十分であった。
特開平2−4431号公報 特開2002−348401号公報
本発明が解決しようとする課題は、耐熱性、耐薬品性、耐有機溶剤性を有し、かつ、カチオン性及びアニオン性不純物の両方の除去が可能な濾過用フィルターとして有用な両性イオン性ポリケトン多孔膜、及び該ポリケトン多孔膜を濾材として用いたフィルターを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究し実験を重ねた結果、酸性領域において正のゼータ電位を、塩基性領域において負のゼータ電位を有するポリケトン多孔膜が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち本発明は、以下の[1]〜[6]に記載する通りのものである。
[1]下記化学式(1):
Figure 2015203048
で表される1−オキソトリメチレン繰り返し単位を含むポリケトンからなるポリケトン多孔膜であって、下記条件(1)〜(3):
(1)空隙率が5〜90%であること;
(2)pH=1〜3におけるゼータ電位が+5mV〜+80mVであること;
(3)pH=11〜14におけるゼータ電位が−80mV〜−5mVであること;
を満足するポリケトン多孔膜。
[2]下記条件(1)及び(2):
(1)スルホン酸基、スルホン酸エステル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、及び水酸基からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を有し、かつ、陽イオン交換容量が0.01〜10ミリ当量/gであること;
(2)1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、及び4級アンモニウム塩からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を含み、かつ、陰イオン交換容量が0.01〜10ミリ当量/gであること;
を同時に満たす、前記[1]に記載のポリケトン多孔膜。
[3]pH=4〜10に等電点を有する、前記[1]又は[2]に記載のポリケトン多孔膜。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリケトン多孔膜を含む濾過用フィルター。
[5]イオン吸着用の、前記[4]に記載の濾過用フィルター。
[6]粒子又はゲル吸着除去用の、前記[4]に記載の濾過用フィルター。
本発明のポリケトン多孔膜を各種プロセス用のフィルターとして用いた場合、アニオン性及びカチオン性不純物の両方の除去が可能であるため、各種プロセス液の品質を大きく上げることが可能となる。また、アニオン性フィルター及びカチオン性フィルターを直列で使う必要がなくなるため、省スペース化が可能であり、さらに、フィルターの維持・管理に掛かるコストと労力を大幅に減らすことが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一態様は、一酸化炭素とエチレン性不飽和化合物が交互に共重合した下記化学式(1):
Figure 2015203048
で表される1−オキソトリメチレン繰り返し単位を含むポリケトンからなるポリケトン多孔膜を含む。本発明のポリケトン多孔膜は実質的にポリケトンのみで構成されていてもよいし、また、ポリケトンと別の材料(例えば、一つ以上の不織布)とを複合化して構成してもよい。
ポリケトン多孔膜中のポリケトンの含有率は、ポリケトンが本来持つ耐熱性及び耐有機溶剤性を反映させるという観点から、高いほど好ましい。別の材料と複合化されない平膜状である場合、ポリケトン多孔膜中のポリケトン含有率は、70〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましく、90〜100質量%が更に好ましい。また、不織布等が複合化されているポリケトン多孔複合膜では、ポリケトンが持つ耐熱性及び耐有機溶剤性と、不織布等が持つ力学特性を両立させるという観点から、ポリケトン多孔複合膜中のポリケトン含有率は、10〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、10〜50質量%が更に好ましい。ポリケトン多孔膜中のポリケトンには、0〜30質量%の割合で他の繰り返し単位があってもよい。ポリケトン多孔膜中のポリケトンの含有率は、該多孔膜を構成する成分のうちポリケトンのみを溶解する溶媒によってポリケトンを溶解除去する方法、又は、ポリケトン以外を溶解する溶媒によってポリケトン以外を溶解除去する方法によって確認される。
本発明のポリケトン多孔膜は、空隙率5〜90%を有することができる。空隙率は、下記数式:
空隙率(%)=(1−G/ρ/V)×100
{式中、Gはポリケトン多孔膜の質量(g)であり、ρはポリケトン多孔膜を構成する全ての樹脂の質量平均密度(g/cm3)であり、そしてVはポリケトン多孔膜の体積(cm3)である。}により算出される。上記数式において、質量平均密度ρは、ポリケトン多孔膜が、ポリケトンとは密度の異なる樹脂と、ポリケトン樹脂との複合化によって構成される場合、各々の樹脂の密度にその構成質量比率を乗じた値の和である。例えば、ρA及びρBの密度をそれぞれ持つ繊維がGA及びGBの質量比率で構成された不織布に、密度ρpのポリケトンがGpの質量比率で複合されているときには、質量平均密度は、下記数式:
質量平均密度=(ρA・GA+ρB・GB+ρp・Gp)/(GA+GB+Gp)
で表される。空隙率が5%より低いポリケトン多孔膜は、例えば、濾材として用いられる場合、圧力損失が大きい、透過流束が小さい、粒子捕集効率が悪い、閉塞までの時間が短い等の不具合を生じる。したがって、本発明のポリケトン多孔膜の空隙率としては30〜90%がより好ましく、40〜90%が更に好ましく、50〜90%が最も好ましい。
ポリケトン多孔膜は、平均貫通孔径10〜50000nmを有することができる。平均貫通孔径は、ハーフドライ法(ASTM E1294−89に準拠)により測定される値である。平均貫通孔径が10nmより小さいポリケトン多孔膜が例えば濾材として用いられた場合、平均貫通孔径が小さすぎるために圧力損失の著しい増大又は透過流束の著しい減少が起こる。一方、平均貫通孔径が50000nmより大きいポリケトン多孔膜が例えば濾過用フィルターとして用いられた場合、平均貫通孔径が大きすぎて除去可能な粒子が限られてしまう。ポリケトン多孔膜の平均貫通孔径は、20〜40000nmがより好ましく、30〜30000nmが更に好ましく、50〜20000nmが特に好ましい。
本発明のポリケトン多孔膜は、pH=4〜10に等電点を有することが好ましい。ポリケトン多孔膜がpH=4〜10において等電点を有しない場合、アニオン性及びカチオン性の不純物の両方を同時に吸着することができない。多くのプロセス液が中性付近のpHを有することから、ポリケトン多孔膜はpH=5〜9に等電点を有することがより好ましい。
本発明のポリケトン多孔膜は、pH=1〜3においてゼータ電位+5〜+80mVを有する。pH=1〜3においてゼータ電位が+5mVより低いポリケトン多孔膜では、濾過対象の流体がどのようなpHであろうとも、アニオン性粒子や陰イオンに対する吸着力が弱く、十分な除去性能を発揮できない。一方、pH=1〜3においてゼータ電位が+80mVより大きい場合は、ポリケトン多孔膜の強度低下が起こり使用できない。また、目詰まりが起こり易く、圧力損失が大きくなるなどの問題が生じる場合がある。pH=1〜3におけるポリケトン多孔膜のゼータ電位は+5〜+60mVが好ましく、+10〜+50mVがより好ましい。
本発明のポリケトン多孔膜は、pH=11〜14においてゼータ電位−80mV〜−5mVを有する。pH=11〜14においてゼータ電位が−5mVより高いポリケトン多孔膜では、濾過対象の流体がどのようなpHであろうとも、カチオン性微粒子や陽イオンに対する吸着力が弱く、十分な除去性能を発揮できない。一方、pH=11〜14においてゼータ電位が−80mVより低い場合は、ポリケトン多孔膜の強度低下が起こり使用できない。また、目詰まりが起こり易く、圧力損失が大きくなるなどの問題が生じる場合がある。pH=11〜14におけるポリケトン多孔膜のゼータ電位は−60mV〜−5mVが好ましく、−50mV〜−10mVが更に好ましい。
ポリケトン多孔膜の形状は特に限定されないが、例えば、平膜状であり、あるいは長手方向に貫通した1つ以上の空隙を有する中空糸膜である。ポリケトン多孔膜の形状は目的・用途に応じて使い分けることができる。また、本発明のポリケトン多孔膜は、ポリケトンと少なくとも1つの不織布とが複合化されたものであることができる。
本発明のポリケトン多孔膜は、無機フィラー、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、親水性高分子、タンパク吸着性物質等の機能性物質を含んでもよい。具体的には、ポリケトン多孔膜は、機械的強度、耐衝撃性、及び耐熱性を上げるために、無機フィラーとしてガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維、又はカーボンナノチューブ等を含んでもよい。また、ポリケトン多孔膜は、光及び酸化に対する安定性を向上させるために、光安定剤として紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等を含んでもよく、酸化防止剤としてフェノール系、リン系、又は硫黄系の酸化防止剤等を含んでもよい。更に、ポリケトン多孔膜は、帯電防止剤として各種界面活性剤等を含んでもよい。
本発明のポリケトン多孔膜の一態様は、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、及び4級アンモニウム塩からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を有する。官能基を有する形態の例としては、化学結合や物理的に結合した状態が挙げられる。化学結合としては、共有結合のようなものであってもよい。共有結合としては、C−C結合、C=N結合、ピロール環を介する結合などが挙げられる。化学結合する物質としては、ポリマーであってもよいし、分子量の小さいモノマーのようなものであってもよい。一方、物理的に結合した状態としては、水素結合、ファンデルワールス力、静電引力、疎水相互作用のような分子間力によって化学結合を介さずに結合した吸着や付着の様な状態が挙げられる。物理的に結合した状態としては、ポリマーが付着された状態などが挙げられる。ポリマーの分子量が1000以上である場合、物理的な結合力が強く、該ポリマーは水溶液中でも安定してポリケトン多孔膜に保持される。pH=1〜3における正のゼータ電位を付与するためのポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アミノ基含有カチオン性ポリ(メタ)アクリル酸エステル、アミノ基含有カチオン性ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアミンアミド−エピクロロヒドリン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリジシアンジアミド、キトサン、カチオン化キトサン、アミノ基含有カチオン化デンプン、アミノ基含有カチオン化セルロース、アミノ基含有カチオン化ポリビニルアルコール、又は上記ポリマーの塩が挙げられる。また、上記ポリマー又はポリマーの塩は、他のポリマーとの共重合体であってもよい。pH=1〜3において十分なゼータ電位を有するという点で、上記ポリマー又はポリマーの塩の割合は、0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜50重量%、より好ましくは1〜50重量%である。
また、ポリケトン多孔膜にpH=1〜3における正のゼータ電位を付与するという観点で、ポリケトンは下記化学式(2)〜(5):
Figure 2015203048
Figure 2015203048
Figure 2015203048
Figure 2015203048
{式中、Rは、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、及び4級アンモニウム基からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を含む置換基である。}で表される構造のいずれかを含む共重合体であってもよい。
1級アミノ基としては−R1−NH(R1は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキレン鎖である。)が挙げられる。また、2級アミノ基としては、−R1−NR2H(R1は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキレン鎖であり、そして、R2は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基である。)が挙げられる。さらに、3級アミノ基としては、−R1−NR2R3(R1は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキレン鎖であり、そしてR2とR3は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基である。)が挙げられる。そして、4級アンモニウム塩としては−R1−NR2R3R4X(R1は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキレン鎖であり、R2、R3及びR4は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基であり、そしてXはOH、F、Cl、Br、I、CHSO などのアニオンである。)が挙げられる。
本発明の一態様に係るポリケトン多孔膜の陰イオン交換容量は、0.01〜10ミリ当量/gであることができる。陰イオン交換容量は、該膜を一定量の塩酸で処理し、消費された塩酸量を水酸化ナトリウムで中和滴定した場合、下記の方法により求められる。
5重量%水酸化ナトリウム水溶液200mlをビーカー(ビーカーAとする)に入れ、ポリケトン多孔膜を30分間浸漬した後、取り出す。取り出したポリケトン多孔膜を更に15分間水洗した後、別のビーカー(ビーカーBとする)に入れる。これに、濃度Xモル/lの塩酸をYml入れて、上記のポリケトン多孔膜30分間浸漬した後、ポリケトン多孔膜を取り出す。取り出したポリケトン多孔膜は50mlの水で洗浄し、ビーカーB内の液に加える。これを、濃度1モル/lの水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、下記数式にて容量を算出する。
陰イオン交換容量(ミリ当量/g)=[X(モル/l)×Y(ml)−1(モル/l)×滴定に要した水酸化ナトリウム水溶液量(ml)]/サンプル重量(g)
陰イオン交換容量が0.01ミリ当量/gより小さいポリケトン多孔膜は、pH=1〜3において安定して+5mV以上のゼータ電位が得られない場合があり、アニオン性不純物の捕捉率が低い、効果の持続時間が短いなどの不具合を生じる。一方、10ミリ当量/gより大きい場合は、ゼータ電位の値がばらつき、性能が安定したフィルターを作ることができない。安定したゼータ電位が得られるという点で、上記容量は、0.01〜5ミリ当量/gであることがより好ましく、0.01〜2ミリ当量/gであることが更に好ましい。
本発明のポリケトン多孔膜の一態様は、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、及び水酸基からなる群から選ばれる一つ以上の官能基を有することができる。官能基を有する形態の例としては、化学結合や物理的に結合した状態が挙げられる。化学結合としては、共有結合のようなものであってもよい。共有結合としては、C−C結合、C=N結合、ピロール環を介する結合などが挙げられる。化学結合する物質としては、ポリマーであってもよいし、分子量の小さいモノマーのようなものであってもよい。一方、物理的に結合した状態としては、水素結合、ファンデルワールス力、静電引力、疎水相互作用のような分子間力によって化学結合を介さずに結合した吸着や付着の様な状態が挙げられる。物理的に結合した状態としては、ポリマーが付着された状態などが挙げられる。ポリマーの分子量が1000以上である場合、物理的な結合力が強く、該ポリマーは水溶液中でも安定してポリケトン多孔膜上に保持される。pH=10〜14における負のゼータ電位を付与するためのポリマーとしては、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルスルホン酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、アニオン性ポリアクリルアミド、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、アニオン化ポリビニルアルコール、ポリビニルホスホン酸が挙げられる。また、上記ポリマー又はポリマーの塩は、他のポリマーとの共重合体であってもよい。pH=11〜14において十分なゼータ電位を有するという点で、上記ポリマー又はポリマーの塩の割合は、0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜50重量%、より好ましくは1〜50重量%である。
また、ポリケトン多孔膜にpH=11〜14における負のゼータ電位を付与するという観点から、ポリケトンは、下記化学式(2)〜(5):
Figure 2015203048
Figure 2015203048
Figure 2015203048
Figure 2015203048
{式(2)〜(5)中、Rは、炭素数1〜20のスルホン酸基、スルホン酸エステル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、及び水酸基からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を含む置換基である。}で表される構造のいずれかを含む共重合体であってもよい。
スルホン酸基としては、−R1−SOH(R1は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキレン鎖である。)、−R2−C−SOH(R2は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキレン鎖である。)などが挙げられる。また、上記スルホン酸基は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンなどの1価の金属イオンとの塩であってもよい。スルホン酸エステル基としては、−R1−SOR3(R1とR3は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキレン鎖である。)、−R2−C−SOR3(R2とR3は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキレン鎖である。)等が挙げられる。カルボン酸基としては、−R1−COH(R1は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキレン鎖である。)、−R2−C(5−n)−nCOH(nは1〜5の整数であり、R2は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキレン鎖である。)等が挙げられる。また、上記カルボン酸基は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンなどの1価の金属イオンとの塩であってもよい。カルボン酸エステル基としては、−R1−COR3(R1とR3は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキレン鎖である。)、−R2−C(5−n)−nCOR3(nは1〜5の整数であり、R2とR3は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキレン鎖である。)等が挙げられる。リン酸基としては、−R−OPO(OH)(R1は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキレン鎖である。)などが挙げられる。また、上記リン酸基は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンなどの1価の金属イオンやカルシウムイオンやマグネシウムイオンとの塩であってもよい。リン酸エステル基としては−R1−OPO(OH)(OR2)(R1とR2は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン鎖である。)あるいは−R1−OPO(OR2)(OR3)(R1、R2及びR3は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン鎖である。)が挙げられる。そして水酸基としては、−C2n−m(OH)m+1(mとnは1〜20の整数)あるいは−R1−C5−n(OH)(R1は炭素数1〜20のアルキレン鎖であり、そしてnは1〜5の整数である。)が挙げられる。
本発明の一態様に係るポリケトン多孔膜の陽イオン交換容量は、0.01〜10ミリ当量/gであることが好ましい。陽イオン交換容量は、該膜を一定量の水酸化ナトリウムで処理し、消費された水酸化ナトリウム量を塩酸で中和滴定した場合、下記の方法により求められる。
5重量%塩酸200mlをビーカー(ビーカーAとする)に入れ、ポリケトン多孔膜を30分間浸漬した後、取り出す。取り出したポリケトン多孔膜を更に15分間水洗した後、別のビーカー(ビーカーBとする)に入れる。これに、濃度Xモル/lの水酸化ナトリウム水溶液をYml入れて、上記のポリケトン多孔膜30分間浸漬した後、ポリケトン多孔膜を取り出す。取り出したポリケトン多孔膜は50mlの水で洗浄し、洗浄液をビーカーB内の液に加える。これを、濃度1モル/lの塩酸で滴定し、下記数式にて容量を算出する。
陽イオン交換容量(ミリ当量/g)=[X(モル/l)×Y(ml)−1(モル/l)×滴定に要した塩酸量(ml)]/サンプル重量(g)
陽イオン交換容量が0.01ミリ当量/gより小さいポリケトン多孔膜は、pH=11〜14において安定して−5mVより低いゼータ電位が得られない場合があり、カチオン性不純物に対する吸着力が弱く、十分な除去性能を発揮できない場合がある。一方、容量が10ミリ当量/gより大きい場合は、ゼータ電位の値がばらつき、性能が安定したフィルターを作ることができない。安定したゼータ電位が得られるという点で、上記容量は、0.01〜5ミリ当量/gであることがより好ましく、0.01〜2ミリ当量/gであることが更に好ましい。
以下、本発明のポリケトン多孔膜の製造方法の一例について説明する。
ポリケトンの重合方法としては、特に制限はないが、例えば、オートクレーブ等の反応容器の溶媒中で、エチレンと一酸化炭素を反応させる。溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサフルオロイソプロパノールが挙げられ、これらの混合溶媒として使用してもよい。より好ましい溶媒としては、重合活性等のコストの観点から、溶媒は、水、メタノールである。ポリケトンの原料としては、一酸化炭素とエチレンが主体となるが、ポリケトンの加工性を考慮して、エチレン以外のプロペン、ヘキセン、シクロヘキセン、スチレン等のエチレン性不飽和化合物を混合させる場合がある。
ポリケトンの重合は、溶媒に溶解した有機金属錯体触媒の存在下で進行する。なお、有機金属錯体触媒とは、周期律表の(a)第10族遷移金属化合物、(b)第15族の原子を有する配位子からなるものである。更に、かかる(a)第10族又は(b)第15族の原子を有する配位子に、第3成分として(c)酸を加えてもよい。(a)成分中の第10族遷移金属化合物の例としては、ニッケル又はパラジウムの錯体、カルボン酸塩、リン酸塩、カルバミン酸塩、スルホン酸塩を挙げることができ、その具体例としては、酢酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトネート、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトネート、塩化パラジウム等を挙げることができる。(b)成分の第15族の原子を有する配位子の例としては、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパン等のリン二座配位子を挙げることができる。(c)酸の例としては、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸のpKaが4以下の有機酸の陰イオンを挙げることができる。
有機金属錯体触媒として用いる遷移金属化合物(a)の使用量は、他の重合条件によってその好適な値が異なるため、一概にその範囲を定めることはできないが、好ましくは、反応帯域の容量1リットル当り0.1〜1000マイクロモルである。反応帯域の容量とは、反応器中の液相容量をいう。配位子(b)の使用量も制限されるものではないが、遷移金属化合物1モル当たり0.8〜3モルである。酸(c)の使用量は、パラジウム化合物1モル当たり、0.1〜100モルである。
有機金属錯体触媒は、遷移金属化合物(a)、配位子(b)、及び好ましくは酸(c)を混合することによって生成する。有機金属錯体触媒の使用法についての制限はないが、各成分の混合物からなる有機金属錯体触媒を予め調製してから反応容器内に添加することが好ましい。有機金属錯体触媒を調製する場合には、まず、遷移金属化合物(a)及び配位子(b)を混合し、次いで、酸(c)を混合することが好ましい。触媒組成物の調製に用いる溶媒は、アルコール、アセトン、及びメチルエチルケトンから選ばれる有機溶媒が好ましい。また、上記(a)、(b)、及び(c)3成分からなる触媒に、重合活性を維持する効果が高いという観点から、ベンゾキノン、ナフトキノンの酸化剤を添加することが好ましい。これらキノン類の添加量は、遷移金属化合物1モル当たり10〜200モルである。キノン類の添加は、触媒組成物に添加してから反応容器に添加する方法、重合溶媒に添加する方法のいずれであってもよく、必要に応じて、反応中に反応容器内に連続的に添加してもよい。
重合温度は70〜150℃、重合圧力は1〜50MPaであることが好ましく、重合時間は1〜10時間である。重合が完了したポリケトンは懸濁液の状態で反応容器内から抜き出される。反応容器から抜き出された懸濁液は必要に応じてフラッシュタンクを通過させて、懸濁液内に残留する未反応の一酸化炭素及びエチレンを除去する。次いで、ポリケトン懸濁液を、重合溶媒に用いた溶媒と同一種類の溶媒を用いて洗浄しながら、遠心脱水機等の公知の遠心分級器によりポリケトン粉体と液体成分とを分離する。その後、加熱気体を吹き付ける方法、ポリケトン粉体を攪拌しながら加熱気体を通す方法等、公知の装置、方法を用いポリケトン粉体に残存する液体成分を乾燥、除去し、ポリケトンを単離する。
以上のようにして得られたポリケトンをレゾルシン水溶液に溶解する。レゾルシン水溶液の濃度は60〜72wt%の範囲である。また、ポリマー濃度は5〜30wt%の範囲である。レゾルシン水溶液の濃度とポリマー濃度との組合せにより、ポリケトン多孔膜の孔径がコントロール可能であり、所望の孔径により適宜決められる。ポリケトンの極限粘度に特に制限は無いが、溶解性や多孔膜への成形しやすさの観点から、0.5〜5dl/gである。
以上のようにレゾルシン水溶液にポリケトンを溶解したドープを凝固剤で凝固させることで、平膜状又は中空糸状のポリケトン多孔膜を作製する。平膜形状であれば、Tダイ等のフィルムダイからドープを吐出して凝固浴中で凝固させる方法や、基材にダイコーター、ロールコーター、バーコーター等の装置を用いてドープを塗工した後に凝固浴中で凝固させる方法等、従来公知のものがそのまま適用できる。中空糸形状であれば、二重管オリフィスやC型オリフィスなどを用いて、外側の輪状オリフィスからはドープを、また、内側の円状オリフィスからは凝固剤を吐出しながら凝固浴中で凝固させる方法等、従来公知のものがそのまま適応できる。
凝固剤は、メタノール、エタノール、及びプロパノールから選択される水溶液であり、その濃度は35〜70wt%である。このようにして得られた凝固膜を、必要に応じて凝固剤や水等でさらに洗浄した後、70〜100℃の温水中に1〜30分間浸漬する。
上述の温水処理後のポリケトン多孔膜を、必要に応じて、メタノール、エタノール、及びプロパノールから選択される溶媒に浸漬して、多孔膜に含まれる水を溶媒と置換する。その後、加熱ロールに接触させる方法、熱風を吹きかける方法、電熱ヒーターで非接触加熱して乾燥する方法等、又はこれらを組み合わせた方法等、公知の乾燥方法で乾燥する。加熱ロールに接触させる方法が最も効率が良いため好適に選ばれる。乾燥温度は、60〜200℃の範囲で、乾燥させる液体の種類により適宜選ばれる。本発明のポリケトン多孔膜の乾燥では、乾燥時に収縮や延伸による面方向への変形が少ない方法であることが重要である。許容される面方向への変形倍率は0.9〜1.1の範囲である。
乾燥後に、膜構造を安定化するために80〜200℃の範囲で熱処理を行う場合がある。熱処理を行うことで、ポリケトン多孔膜を50〜150℃での加温状態で使用する場合や、水等の表面張力の高い溶媒を含浸させた後に再び乾燥させた場合に、膜構造の変形を抑制することが可能となる。その際にも、収縮や延伸による面方向への変形倍率が少ない方法が重要であり、許容される面方向への変形倍率は0.9〜1.1の範囲である。
官能基を含ませる方法については特に制限はないが、化学反応による方法、物理反応による方法、コーティングによる方法、さらにこれらを組み合わせた方法などが挙げられる。化学反応による方法は、パール・クノール反応などが挙げられる。また、物理反応による方法はプラズマ処理やコロナ処理などが挙げられる。コーティングによる方法はポリマーを含む水溶液などに含浸させる方法が挙げられる。その他の方法としては放射線グラフト反応などが挙げられる。
ポリケトン多孔膜に好適なゼータ電位を付与するという観点で、ポリケトン多孔膜に正又は負のいずれか一方の電荷を有するポリマーなどを付着又はコーティングさせた後、前記ポリマーと反対の電荷を有するポリマーなどを付着又はコーティングさせてもよい。付着又はコーティングさせる方法としては、水や有機溶媒などにポリマーを溶解させた溶液にポリケトンを含浸させた後、取り出して乾燥させる方法などが挙げられる。乾燥の前後に加熱処理や水洗などを行ってもよい。正の電荷を有するポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アミノ基含有カチオン性ポリ(メタ)アクリル酸エステル、アミノ基含有カチオン性ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアミンアミド−エピクロロヒドリン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリジシアンジアミド、キトサン、カチオン化キトサン、アミノ基含有カチオン化デンプン、アミノ基含有カチオン化セルロース、アミノ基含有カチオン化ポリビニルアルコール及び上記ポリマーの塩が挙げられる。また、負の電荷を有するポリマーとしては、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルスルホン酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、アニオン性ポリアクリルアミド、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル基プロパンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル基プロパンスルホン酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、アニオン化ポリビニルアルコール、ポリビニルホスホン酸等が挙げられる。また、上記ポリマー又はポリマーの塩は、他のポリマーとの共重合体であってもよい。十分なゼータ電位を付与するという点で、上記ポリマー又はポリマーの塩の付着又はコーティング量は、0.2〜100重量%、好ましくは1〜100重量%、より好ましくは2〜100重量%である。
ポリケトン多孔膜に適切なゼータ電位を付与するという観点で、ポリケトン多孔膜を構成するポリケトンの少なくとも1つの水素原子を他の基に置換する場合、置換方法としては、例えば、電子線、γ線、プラズマ等の照射によってポリケトンにラジカルを発生させた後、正の電荷を有する反応性モノマーと、負の電荷を有する反応性モノマーの両方を付加させる方法が挙げられる。この場合、正の反応性モノマーと負の反応性モノマーを段階的に付加させてもよく、正の反応性モノマーと負の反応性モノマーを混合して同時に付加させてもよい。正の電荷を有する反応性モノマーの例としては、1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム塩を含むアクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸の誘導体、アリルアミン、p−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。より具体的な例としては、アクリル酸3−(ジメチルアミノ)プロピル、メタクリル酸3−(ジメチルアミノ)プロピル、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]アンモニウムクロライドなどが挙げられる。また、負の電荷を有する反応性モノマーとしては、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、水酸基を含むアクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸、の誘導体等が挙げられる。より具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸及びそれらのナトリウム塩などが挙げられる。上記の置換処理は、ポリケトンを多孔膜に成型する前に行ってもよいし、多孔膜に成型した後に行ってもよいが、成型性の観点から、多孔膜に成型した後に行う方が好ましい。
また、下記化学式(6)及び(7):
Figure 2015203048
Figure 2015203048
{式中、R1は、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、及び4級アンモニウム基からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を含む置換基であり、R2は、炭素数1〜20のスルホン酸基、スルホン酸エステル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、及び水酸基からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を含む置換基である。}で表される構造を両方とも含むポリケトンを製造する場合、任意の方法が可能であるが、ポリケトンと1級アミンとの脱水縮合反応によって、上記2構造を両方とも含むポリケトンを製造することが、簡便性の面で好ましい。R1の置換基を有する1級アミンとしては、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N−メチルプロパンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルプロパンジアミン、N−アセチルエチレンジアミン、イソホロンジアミン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。また、R2の置換基を有する1級アミンとしては、アミノメタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルファニル酸、スルファニル酸ナトリウム、グリシン、グリシンメチルエステル、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、ミステイン、イソロイシン、ロイシン、セリン、トレオニン、チロシン、バリン、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、O−ホスホエタノールジアミン、システイン、システアミン、メチオニン、メチオニンメチルエステル、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、等が挙げられる。上記脱水縮合反応は、R1の置換基を有する1級アミンとR2の置換基を有する1級アミンを段階的に反応させてもよく、また、R1の置換基を有する1級アミンとR2の置換基を有する1級アミンを混合して同時に反応させてもよい。また、上記脱水縮合反応は、ポリケトンを多孔膜に成型する前に行ってもよいし、多孔膜に成型した後に行ってもよいが、成型性の観点から、多孔膜に成型した後に行う方が好ましい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例における各測定値の測定方法は以下の通りであった。
1.ポリケトンの極限粘度[η]
以下の定義式に基づいて極限粘度を求めた。
Figure 2015203048
{式中、tは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノールの25℃での粘度管の流下時間であり、Tは、該ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトン希釈溶液の25℃での粘度管の流下時間であり、そしてCは、上記ポリケトン希釈溶液100ml中のグラム単位による溶質の質量値である。}。
2.平均貫通孔径(nm)
PMI社のパームポロメーター(型式:CFP−1200AEX)を用い、浸液にPMI社製のガルウィック(表面張力=15.6dynes/cm)を用い、ASTM E1294−89に準拠し、ハーフドライ法により測定した。
3.膜厚(μm)
ダイヤルゲージ(尾崎製作所:PEACOCK No.25)にて、ポリケトン多孔膜の膜厚を、格子状に5mm間隔で9箇所(3点×3点)選んだ測定点にて測定し、数平均値として得られる平均厚みLp(μm)を膜厚とした。
4.空隙率(ε)(%)
空隙率(ε)は、下記の数式(2):
ε=1−G/ρ/(t・A) (2)
{式中、Gは、ポリケトン多孔膜の重量(g)であり、ρは、ポリケトン多孔膜を構成する高分子の密度(g/cm)であり、tは、ポリケトン多孔膜の平均厚み(cm)であり、そしてAは、ポリケトン多孔膜の面積(cm)である。}により求めた。
5.透気抵抗度(sec/100ml)
JIS P8117(ガーレー法)に準拠して、透気抵抗度を測定した。
6.引張強度(MPa)、伸度、及び強度低下率(%)
横型引張強度試験機(熊谷理機工業製)を用い、15mm幅の短冊状に切り出したサンプルについて、チャック間距離:80mm、伸長速度:80m/minの条件で5点の破断強度を測定し、その数平均を引張強度(MPa)とした。
また、下記式により、破断時の伸度を算出した。
伸度(%)=[破断時のチャック間距離(mm)−80(mm)]/80(mm)×100
また、下記式により、強度低下率を算出した。
強度低下率(%)=(ポリケトン多孔膜の強度−元のポリケトン多孔膜の強度)/元のポリケトン多孔膜の強度×100
7.圧力損失(kPa)
ポリケトン多孔平膜を円形に打ち抜き、ステンレス製ホルダ(アドバンテック製、有効濾過面積3.5cm2)に平膜を固定し、1.4mL/min/cm2で25℃の蒸留水を通液した際の圧力損失(kPa)を測定した。
8.アニオン性及びカチオン性成分除去率(%)
平膜状のポリケトン多孔膜を濾材として、アニオン性成分として1ppmのオレンジII(関東化学社製)、カチオン性成分として1ppmのメチレンブルー(関東化学社製)を含む水溶液3mlを、差圧100kPa、有効濾過面積3.5cm2で全量濾過した。濾液の各成分の濃度C(ppm)を測定し、下記式よりアニオン性及びカチオン性成分除去率(%)を算出した。
アニオン性及びカチオン性成分除去率(%)=(1−C)×100
尚、濾液のオレンジII及びメチレンブルーの濃度C(ppm)は、紫外可視分光光度計(日本分光:V−650)を用い、濃度既知のオレンジII(波長485nm)及びメチレンブルー(波長665nm)の検量線を作成して測定した。
9.ゼータ電位(mV)及び等電点
ポリケトン多孔膜のゼータ電位は、ゼータ電位測定システムELS−Z(大塚電子株式会社製)を用いて、電気泳動光散乱法により測定した。平板試料用セルユニット(大塚電子株式会社製)のセル上面にポリケトン多孔膜を取り付け、0.1M塩酸又は0.1M水酸化ナトリウム水溶液でpHを3及び11に調節した10mM塩化ナトリウム水溶液にモニター粒子(大塚電子製)を分散させた液でセルを満たし、モニター粒子の電気泳動を行い、セル上下面間の7点においてモニター粒子の電気移動度を測定した。得られた電気移動度のデータを森・岡本の式、及びSmoluchowskiの式で解析することにより、ポリケトン多孔膜のゼータ電位を算出した。また、等電点は、横軸をpH、縦軸をゼータ電位としたグラフにおいて、(pH=3,pH=3におけるゼータ電位)及び(pH=11,pH=11におけるゼータ電位)の2点を直線で結び、ゼータ電位が0mVになる点のpHとした。
10.陰イオン交換容量測定
5重量%水酸化ナトリウム水溶液200mlをビーカー(ビーカーAとする)に入れ、ポリケトン多孔膜を30分間浸漬した後、取り出した。取り出したポリケトン多孔膜を更に15分間水洗した後、別のビーカー(ビーカーBとする)に入れた。これに、濃度Xモル/lの塩酸をYml入れて、上記のポリケトン多孔膜30分間浸漬した後、ポリケトン多孔膜を取り出した。取り出したポリケトン多孔膜は50mlの水で洗浄し、ビーカーB内の液に加えた。これを、濃度1モル/lの水酸化ナトリウムで滴定し、下記数式にて容量を算出した。
陰イオン交換容量(ミリ当量/g)=[X(モル/l)×Y(ml)−1(モル/l)×滴定に要した水酸化ナトリウム水溶液量(ml)]/サンプル重量(g)
11.陽イオン交換容量測定
5重量%塩酸200mlをビーカー(ビーカーAとする)に入れ、ポリケトン多孔膜を30分間浸漬した後、取り出した。取り出したポリケトン多孔膜を更に15分間水洗した後、別のビーカー(ビーカーBとする)に入れた。これに、濃度Xモル/lの水酸化ナトリウム水溶液をYml入れて、上記のポリケトン多孔膜30分間浸漬した後、ポリケトン多孔膜を取り出した。取り出したポリケトン多孔膜は50mlの水で洗浄し、ビーカーB内の液に加えた。これを、濃度1モル/lの塩酸で滴定し、下記数式にて容量を算出した。
陽イオン交換容量(ミリ当量/g)=[X(モル/l)×Y(ml)−1(モル/l)× 滴定に要した塩酸量(ml)]/サンプル重量(g)
[実施例1]
エチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度3.4dl/gのポリケトンを、ポリマー濃度10.7wt%で63wt%レゾルシン水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌したところ、ポリケトンは溶解して均一透明なドープが得られた。
得られたドープをアプリケータでガラス板に塗布した。これを50wt%のメタノール水溶液中に10分間浸漬して凝固させた後、水で洗浄し、さらに80℃の温水中に30分間浸漬した。これを2−プロパノールで溶媒置換した後、枠固定して80℃で乾燥を行った。
このポリケトン多孔膜を、1重量%の酢酸、1重量%のアミノメタンスルホン酸、1重量%のN,N−ジメチルプロパンジアミンの混合水溶液に80℃で30分間浸漬させた。次いで、ポリケトン多孔膜を取り出して、水、メタノール、アセトンの順で良く洗浄した後60℃で乾燥した。
このようにして得られたポリケトン多孔膜の平均貫通孔径は98nmであり、厚みは105μm、空隙率は79%、透気抵抗度は45秒/100ml、引張強度は3.6MPa、伸度は18.0%であった。また、pH=3におけるゼータ電位は+12mV、pH=11におけるゼータ電位は−24mV、等電点は5.7、陰イオン交換容量は0.01ミリ当量/g、陽イオン交換容量は0.01ミリ当量/gであった。圧力損失は44kPa、アニオン性成分の除去率は93%、カチオン性成分の除去率は98%であり、圧力損失が小さく、アニオン性成分とカチオン性成分の両方を除去する性能を有していた。
[実施例2]
実施例1で得られた化学処理前のポリケトン多孔膜を、ドライアイスで冷やしながら200kGyの電子線を数秒間照射して、ラジカル化ポリケトン多孔膜を作製した。窒素バブリングによって溶存酸素を除去した1重量%の2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び1重量%のp-ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドの混合水溶液に、上記ラジカル化ポリケトン多孔膜を窒素雰囲気下、40℃で1時間浸漬させた。次いで、水、メタノール、アセトンの順でよく洗浄した後60℃で乾燥した。
このようにして得られたポリケトン多孔膜の平均孔径は96nmであり、厚みは107μm、空隙率は78%、透気抵抗度は42秒/100ml、引張強度は3.4MPa、伸度は18.0%であった。また、pH=3におけるゼータ電位は+38mV、pH=11におけるゼータ電位は−38mV、等電点は7.0、陰イオン交換容量は0.63ミリ当量/g、陽イオン交換容量は0.63ミリ当量/gであった。圧力損失は48kPa、アニオン性成分の除去率は99%、カチオン性成分の除去率は99%であり、圧力損失が小さく、アニオン性成分とカチオン性成分の両方を除去する性能を有していた。
[実施例3]
実施例1で得られた化学処理前のポリケトン多孔膜を、1.0重量%のポリエチレンイミンに1分間浸漬させた後、更に1.0重量%のポリスチレンスルホン酸水溶液に1分間浸漬させた後、取り出して、100℃で2分間加熱した。これを15分間流水で洗浄した後、100℃で乾燥させた。
このようにして得られたポリケトン多孔膜の平均孔径は101nmであり、厚みは100μm、空隙率は80%、透気抵抗度は40秒/100ml、引張強度は4.0MPa、伸度は17.3%であった。また、pH=3におけるゼータ電位は+28mV、pH=11におけるゼータ電位は−35mV、等電点は6.6、陰イオン交換容量は0.60ミリ当量/g、陽イオン交換容量は0.70ミリ当量/gであった。圧力損失は47kPa、アニオン性成分の除去率は99%、カチオン性成分の除去率は99%であり、圧力損失が小さく、アニオン性成分とカチオン性成分の両方を除去する性能を有していた。
[実施例4]
エチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度3.4dl/gのポリケトンを、ポリマー濃度12wt%で61wt%レゾルシン水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌したところ、ポリケトンは溶解して均一透明なドープが得られた。
得られたドープをアプリケータでガラス板に塗布した。これを50wt%のメタノール水溶液中に10分間浸漬して凝固させた後、水で洗浄し、さらに80℃の温水中に30分間浸漬した。これを2−プロパノールで溶媒置換した後、枠固定して80℃で乾燥を行った。
このポリケトン多孔膜を、実施例3と同様に、1.0重量%のポリエチレンイミンに1分間浸漬させた後、更に1.0重量%のポリスチレンスルホン酸水溶液に1分間浸漬させた後、取り出して、100℃で2分間加熱した。これを15分間流水で洗浄した後、100℃で乾燥させた。
このようにして得られたポリケトン多孔膜の平均孔径は50nmであり、厚みは102μm、空隙率は77%、透気抵抗度は150秒/100ml、引張強度は4.0MPa、伸度は18.2%であった。また、pH=3におけるゼータ電位は+27mV、pH=11におけるゼータ電位は−35mV、等電点は6.5、陰イオン交換容量は0.62ミリ当量/g、陽イオン交換容量は0.74ミリ当量/gであった。圧力損失は180kPa、アニオン性成分の除去率は99%、カチオン性成分の除去率は99%であり、圧力損失が小さく、アニオン性成分とカチオン性成分の両方を除去する性能を有していた。
[実施例5]
エチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度3.4dl/gのポリケトンを、ポリマー濃度10.7wt%で65wt%レゾルシン水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌したところ、ポリケトンは溶解して均一透明なドープが得られた。
得られたドープをアプリケータでガラス板に塗布した。これを50wt%のメタノール水溶液中に10分間浸漬して凝固させた後、水で洗浄し、さらに80℃の温水中に30分間浸漬した。これを2−プロパノールで溶媒置換した後、枠固定して80℃で乾燥を行った。
このポリケトン多孔膜を、実施例3と同様にしてポリマー水溶液で処理を行った。
このようにして得られたポリケトン多孔膜の平均孔径は202nmであり、厚みは97μm、空隙率は81%、透気抵抗度は18秒/100ml、引張強度は3.9MPa、伸度は18.1%であった。また、pH=3におけるゼータ電位は+28mV、pH=11におけるゼータ電位は−36mV、等電点は6.5、陰イオン交換容量は0.56ミリ当量/g、陽イオン交換容量は0.64ミリ当量/gであった。単位厚み当りの圧力損失は12kPa、アニオン性成分の除去率は98%、カチオン性成分の除去率は98%であり、圧力損失が小さく、アニオン性成分とカチオン性成分の両方を除去する性能を有していた。
[実施例6]
実施例1と同じ条件で作製したポリケトンドープを、アプリケータを用いて、平均繊維径16μmのポリエチレンテレフタレート繊維からなる、目付14.7g/mの不織布の片面に塗布した。このポリケトンドープ/不織布複合体を、実施例1と同じ条件で凝固、洗浄、および乾燥して、ポリエステル不織布複合ポリケトン多孔膜を得た。このポリケトン多孔膜の全質量に対するポリケトン質量割合は20質量%であった。
この複合膜を実施例3と同様にしてポリマー水溶液で処理を行った。
このようにして得られたポリケトン多孔膜の平均孔径は98nmであり、厚みは201μm、空隙率は75%、透気抵抗度は40秒/100ml、引張強度は24.9MPa、伸度は18.2%であった。また、pH=3におけるゼータ電位は+28mV、pH=11におけるゼータ電位は−36mV、等電点は6.5、陰イオン交換容量は0.30ミリ当量/g、陽イオン交換容量は0.35ミリ当量/gであった。圧力損失は46kPa、アニオン性成分の除去率は99%、カチオン性成分の除去率は99%であり、圧力損失が小さく、アニオン性成分とカチオン性成分の両方を除去する性能を有していた。
[実施例7]
ポリスチレンスルホン酸の代わりにポリアクリル酸を用いた以外は、実施例3と同じ条件でポリケトン多孔膜を作製した。
このようにして得られたポリケトン多孔膜の平均孔径は97nmであり、厚みは98μm、空隙率は81%、透気抵抗度は41秒/100ml、引張強度は3.9MPa、伸度は18.2%であった。また、pH=3におけるゼータ電位は+27mV、pH=11におけるゼータ電位は−19mV、等電点は7.7、陰イオン交換容量は0.62ミリ当量/g、陽イオン交換容量は0.72ミリ当量/gであった。圧力損失は43kPa、アニオン性成分の除去率は99%、カチオン性成分の除去率は98%であり、圧力損失が小さく、アニオン性成分とカチオン性成分の両方を除去する性能を有していた。
[実施例8]
ポリエチレンイミンの代わりにポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドを用いた以外は、実施例3と同じ条件でポリケトン多孔膜を作製した。
このようにして得られたポリケトン多孔膜の平均孔径は98nmであり、厚みは98μm、空隙率は82%、透気抵抗度は40秒/100ml、引張強度は3.8MPa、伸度は18.0%であった。また、pH=3におけるゼータ電位は+35mV、pH=11におけるゼータ電位は−38mV、等電点は6.8、陰イオン交換容量は0.50ミリ当量/g、陽イオン交換容量は0.47ミリ当量/gであった。圧力損失は43kPa/μm、アニオン性成分の除去率は99%、カチオン性成分の除去率は99%であり、圧力損失が小さく、アニオン性成分とカチオン性成分の両方を除去する性能を有していた。
[比較例1]
エチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度3.4dl/gのポリケトンを、ポリマー濃度10.7wt%で63wt%レゾルシン水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌したところ、ポリケトンは溶解して均一透明なドープが得られた。
得られたドープをアプリケータでガラス板に塗布した。これを50wt%のメタノール水溶液中に10分間浸漬して凝固させた後、水で洗浄し、さらに80℃の温水中に30分間浸漬した。これを2−プロパノールで溶媒置換した後、枠固定して80℃で乾燥を行った。
このようにして得られたポリケトン多孔膜の平均孔径は100nmであり、厚みは100μm、空隙率は80%、透気抵抗度は38秒/100ml、引張強度は4.0MPa、伸度は18.8%であった。また、pH=3におけるゼータ電位は+2mV、pH=11におけるゼータ電位は−4mV、等電点は5.7、陰イオン交換容量は0ミリ当量/g、陽イオン交換容量は0ミリ当量/gであった。圧力損失は45kPa/μm、アニオン性成分の除去率は3%、カチオン性成分の除去率は2%であり、圧力損失は小さいが、アニオン性成分及びカチオン性成分共に除去する能力は極めて低かった。
[比較例2]
1重量%の酢酸、1重量%のアミノメタンスルホン酸、1重量%のN,N−ジメチルプロパンジアミンの混合水溶液への浸漬時間を120分にした以外は、実施例1と同じ条件でポリケトン多孔膜を作製した。
このようにして得られたポリケトン多孔膜の平均孔径は、極めて低強度であるため平均孔径は測定できず、厚みは98μm、空隙率は80%、透気抵抗度は35秒/100ml、引張強度は0.5MPa、伸度は3.1%であった。また、pH=3におけるゼータ電位は+90mV、pH=11におけるゼータ電位は−95mV、等電点は6.9、陰イオン交換容量は5.4ミリ当量/g、陽イオン交換容量は5.2ミリ当量/gであった。圧力損失、アニオン性成分除去率及びカチオン性成分の除去率は測定できなかった。
[比較例3]
ポリエチレンイミン処理を行わなかった以外は、実施例3と同じ条件でポリケトン多孔膜を作製した。
このようにして得られたポリケトン多孔膜の平均孔径は98nmであり、厚みは102μm、空隙率は80%、透気抵抗度は40秒/100ml、引張強度は3.8MPa、伸度は18.2%であった。また、pH=3におけるゼータ電位は−28mV、pH=11におけるゼータ電位は−38mV、等電点はなく、陰イオン交換容量は0ミリ当量/g、陽イオン交換容量は0.92ミリ当量/gであった。圧力損失は44kPa/μm、アニオン性成分の除去率は3%、カチオン性成分の除去率は99%であり、圧力損失は小さく、カチオン成分除去率は高かったが、アニオン性成分除去率は極めて低かった。
[比較例4]
ポリスチレンスルホン酸処理を行わなかった以外は、実施例8と同じ条件でポリケトン多孔膜を作製した。
このようにして得られたポリケトン多孔膜の平均孔径は98nmであり、厚みは102μm、空隙率は80%、透気抵抗度は40秒/100ml、引張強度は3.7MPa、伸度は17.3%であった。また、pH=3におけるゼータ電位は+38mV、pH=11におけるゼータ電位は+22mV、等電点はなく、陰イオン交換容量は0.85ミリ当量/g、陽イオン交換容量は0ミリ当量/gであった。圧力損失は42kPa/μm、アニオン性成分の除去率は99%、カチオン性成分の除去率は2%であり、圧力損失は小さく、アニオン成分除去率は高かったが、カチオン性成分除去率は極めて低かった。
[比較例5]
エチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度3.4dl/gのポリケトンを、ポリマー濃度12wt%で61wt%レゾルシン水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌したところ、ポリケトンは溶解して均一透明なドープが得られた。
得られたドープをアプリケータでガラス板に塗布した。これを純水中に10分間浸漬して凝固させた後、水で洗浄し、温水処理及び2−プロパノール置換を行わずに、枠固定して80℃で乾燥を行った。
このポリケトン多孔膜を、実施例3と同様に、1.0重量%のポリエチレンイミンに1分間浸漬させた後、更に1.0重量%のポリスチレンスルホン酸水溶液に1分間浸漬させた後、取り出して、100℃で2分間加熱した。これを15分間流水で洗浄した後、100℃で乾燥させた。
このようにして得られたポリケトン多孔膜の平均孔径は23nmであり、厚みは18μm、空隙率は4%、透気抵抗度は1000秒/100ml以上、引張強度は5.0MPa、伸度は16.5%であった。また、pH=3におけるゼータ電位は+28mV、pH=11におけるゼータ電位は−35mV、等電点は6.6、陰イオン交換容量は0.11ミリ当量/g、陽イオン交換容量は0.12ミリ当量/gであった。圧力損失、アニオン性成分の除去率及びカチオン性成分の除去率は透液しないために測定できなかった。
Figure 2015203048
本発明のポリケトン多孔膜は、ポリケトン由来の高い耐熱性と耐薬品性を有し、かつ、酸性領域で正のゼータ電位を有し、かつ塩基性領域で負のゼータ電位を有するために、アニオン性の物質及びカチオン性の物質両方に対する吸着性能を発揮し、各種プロセス液の清浄化が可能なフィルター濾材として有用である。更に、本発明のポリケトン多孔膜を用いたフィルターは、1本のフィルターで両方のイオン性の不純物を除去できるため、従来であれば2本必要なフィルターの本数を減らし、省スペース化及びフィルターの維持・管理のコストと労力の低減が可能である。該フィルターは、水処理用、工業用液体濾過用、気体除塵用、ケミカルフィルター用、及び医療用の濾過フィルターとして好適に利用可能である。

Claims (6)

  1. 下記化学式(1):
    Figure 2015203048
    で表される1−オキソトリメチレン繰り返し単位を含むポリケトンからなるポリケトン多孔膜であって、下記条件(1)〜(3):
    (1)空隙率が5〜90%であること;
    (2)pH=1〜3におけるゼータ電位が+5mV〜+80mVであること;
    (3)pH=11〜14におけるゼータ電位が−80mV〜−5mVであること;
    を満足するポリケトン多孔膜。
  2. 下記条件(1)及び(2):
    (1)スルホン酸基、スルホン酸エステル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、及び水酸基からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を有し、かつ、陽イオン交換容量が0.01〜10ミリ当量/gであること;
    (2)1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、及び4級アンモニウム塩からなる群から選ばれる1つ以上の官能基を含み、かつ、陰イオン交換容量が0.01〜10ミリ当量/gであること;
    を同時に満たす、請求項1に記載のポリケトン多孔膜。
  3. pH=4〜10に等電点を有する、請求項1又は2に記載のポリケトン多孔膜。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリケトン多孔膜を含む濾過用フィルター。
  5. イオン吸着用の、請求項4に記載の濾過用フィルター。
  6. 粒子又はゲル吸着除去用の、請求項4に記載の濾過用フィルター。
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