JP2020121264A - 複合半透膜 - Google Patents

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志村晴季
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浜田剛志
Tsuyoshi Hamada
尾形雅美
Masami Ogata
吉崎友哉
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Abstract

【課題】より高い塩除去性を持つ複合半透膜を提供する。【解決手段】本発明の複合半透膜は、微多孔性支持層と、前記微多孔性支持層上に設けられた分離機能層と、前記分離機能層を被覆する被覆層と、を有し、前記分離機能層は、多官能芳香族アミン、多官能芳香族酸クロリドを反応させることで形成された架橋ポリアミドを含有し、飛行時間型二次イオン質量分析法による複合半透膜の被覆層側の面を測定して得られる正の2次イオンのピークカウントが、特定の範囲にある。【選択図】なし

Description

本発明は、液状混合物の選択的分離に有用な半透膜に関し、塩除去性に優れた複合半透膜に関するものである。
液状混合物の膜分離に使用される膜には、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがあり、これらの膜は、例えば塩分、有害物を含んだ水などから飲料水を得る場合や、工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収などに用いられている。
現在市販されている逆浸透膜およびナノろ過膜の大部分は複合半透膜であり、中でも、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応によって得られる架橋ポリアミドからなる分離機能層を微多孔性支持膜上に被覆して得られる複合半透膜(特許文献1)は、透過性や選択分離性の高い分離膜として広く用いられている。
しかしながら、特に高水質水域における海水淡水化用途においては、更に高い塩除去性を有する複合半透膜が求められている。膜の塩除去性を向上させる手段としては、例えば塩素による後処理方法(特許文献1)が知られている。
特開2001−79372号公報
現在、より高い塩除去性を持つ複合半透膜が求められている。
上記課題を解決するために、本発明は、下記(1)〜(3)のいずれかの構成を備える。
(1)微多孔性支持層と、前記微多孔性支持層上に設けられた分離機能層と、前記分離機能層を被覆する被覆層と、を有する複合半透膜であって、
前記分離機能層は、多官能芳香族アミン、多官能芳香族酸クロリドを反応させることで形成された架橋ポリアミドを含有し、
飛行時間型二次イオン質量分析法による複合半透膜の被覆層側の面を測定して得られる正の2次イオンのピークカウントが、式(2)、または式(3)を満たす、複合半透膜。
c/(a+b+d) ≧ 10 …(2)、e/(a+b+d) ≧ 10 …(3)
(a, b, c, d, eはそれぞれ、正2次イオンm/z = 104.03, 108.07, 128.14, 135.06, 173.16のカウント数である。)
(2)微多孔性支持層と、前記微多孔性支持層上に設けられた分離機能層と、前記分離機能層を被覆する被覆層と、を有する複合半透膜であって、
前記分離機能層は、多官能芳香族アミン、多官能芳香族酸クロリドを反応させることで形成された架橋ポリアミドを含有し、かつ前記被覆層は、3−(メタクリルアミノ)アルキルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロリドを重合反応させることで形成された非芳香族ポリマー、もしくは3−(メタクリルアミノ)アルキルアミンと3−(メタクリルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリドを重合反応させることで形成された非芳香族ポリマーを含有する複合半透膜。
(3)前記3−(メタクリルアミノ)アルキルアミンが3−(メタクリルアミノ)プロピルアミンである、(1)に記載の複合半透膜。
本発明によって、現状の複合半透膜と比較して高い塩除去性を持つ複合半透膜が得られる。
[1.複合半透膜]
本発明に係る複合半透膜は、支持膜と、支持膜上に形成される分離機能層と、分離機能層を被覆する被覆層とを備える。前記分離機能層は実質的に分離性能を有するものであり、支持膜は水を透過するものの実質的にイオン等の分離性能を有さず、分離機能層に強度を与えることができる。
(1)支持膜
本実施形態では、支持膜は、基材および微多孔性支持層を備える。ただし、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、支持膜は、基材を持たず、微多孔性支持層のみで構成されていてもよい。
(1−1)基材
基材としては、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリオレフィン系重合体、及びこれらの混合物又は共重合体等が挙げられる。中でも、機械的、熱的に安定性の高いポリエステル系重合体の布帛が特に好ましい。布帛の形態としては、長繊維不織布や短繊維不織布、さらには織編物を好ましく用いることができる。
(1−2)微多孔性支持層
本発明において微多孔性支持層は、イオン等の分離性能を実質的に有さず、分離性能を実質的に有する分離機能層に強度を与えるためのものである。微多孔性支持層の孔のサイズや分布は特に限定されない。例えば、均一で微細な孔、又は分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもち、かつ、分離機能層が形成される側の表面で微細孔の大きさが0.1nm以上100nm以下であるような微多孔性支持層が好ましい。支持層に使用する材料やその形状は特に限定されない。
微多孔性支持層の素材には、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、及びポリフェニレンオキシド等のホモポリマー又はコポリマーを、単独で又は混合して使用することができる。ここでセルロース系ポリマーとしては酢酸セルロース、硝酸セルロースなど、ビニルポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが使用できる。
中でもポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどのホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。より好ましくは酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、またはポリフェニレンスルホンが挙げられる。さらに、これらの素材の中では化学的、機械的、熱的に安定性が高く、成型が容易であることからポリスルホンが一般的に使用できる。
ポリスルホンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)でN−メチルピロリドンを溶媒に、ポリスチレンを標準物質として測定した場合の質量平均分子量(Mw)が、10000以上200000以下であることが好ましく、より好ましくは15000以上100000以下である。
ポリスルホンのMwが10000以上であることで、微多孔性支持層として好ましい機械的強度および耐熱性を得ることができる。また、Mwが200000以下であることで、溶液の粘度が適切な範囲となり、良好な成形性を実現することができる。
例えば、上記ポリスルホンのN,N−ジメチルホルムアミド(以降、DMFと記載)溶液を、密に織ったポリエステル布又は不織布の上に一定の厚さに注型し、それを水中で湿式凝固させることによって、表面の大部分が直径数10nm以下の微細な孔を有する微多孔性支持層を得ることができる。
基材と微多孔性支持層の厚みは、複合半透膜の強度及びそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。十分な機械的強度及び充填密度を得るためには、基材と微多孔性支持層の厚みの合計が、30μm以上300μm以下であることが好ましく、100μm以上220μm以下であるとより好ましい。また、微多孔性支持層の厚みは、20μm以上100μm以下であることが好ましい。なお、本書において、特に付記しない限り、厚みとは、平均値を意味する。ここで平均値とは相加平均値を表す。すなわち、基材と微多孔性支持層の厚みは、断面観察で厚み方向に直交する方向(膜の面方向)に20μm間隔で測定した、20点の厚みの平均値を算出することで求められる。
(1−3)支持膜の形成方法
本発明に使用する微多孔性支持層は、ミリポア社製“ミリポアフィルターVSWP”(商品名)や、東洋濾紙社製“ウルトラフィルターUK10”(商品名)のような各種市販材料から選択することもできるが、“オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って製造することができる。
(2−1)分離機能層の化学構造
分離機能層は、架橋芳香族ポリアミドを含有する。特に、分離機能層は、架橋芳香族ポリアミドを主成分として含有することが好ましい。主成分とは分離機能層の成分のうち、50重量%以上を占める成分を指す。分離機能層は、架橋芳香族ポリアミドを50重量%以上含むことにより、高い除去性能を発現することができる。また、分離機能層における架橋芳香族ポリアミドの含有率は80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましい。
架橋芳香族ポリアミドは、多官能芳香族アミン、多官能芳香族酸クロリドを化学反応させることにより形成できる。ここで、多官能芳香族アミンおよび多官能芳香族酸クロリドの少なくとも一方が3官能以上の化合物を含んでいることが好ましい。これにより、剛直な分子鎖が得られ、水和イオンやホウ素などの微細な溶質を除去するための良好な孔構造が形成される。
多官能芳香族アミンとは、一分子中に第一級アミノ基及び第二級アミノ基のうち少なくとも一方のアミノ基を2個以上有し、かつ、アミノ基のうち少なくとも1つは第一級アミノ基である芳香族アミンを意味する。多官能芳香族アミンとしては、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、o−ジアミノピリジン、m−ジアミノピリジン、p−ジアミノピリジン等の2個のアミノ基がオルト位やメタ位、パラ位のいずれかの位置関係で芳香環に結合した多官能芳香族アミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミンなどの多官能芳香族アミンなどが挙げられる。特に、膜の選択分離性や透過性、耐熱性を考慮すると、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、及び1,3,5−トリアミノベンゼンが好適に用いられる。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさから、m−フェニレンジアミン(以下、m−PDAとも記す)を用いることがより好ましい。これらの多官能芳香族アミンは、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
多官能芳香族酸クロリドとは、一分子中に少なくとも2個のクロロカルボニル基を有する芳香族酸クロリドをいう。例えば、3官能酸クロリドでは、トリメシン酸クロリドなどを挙げることができ、2官能酸クロリドでは、ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリドなどを挙げることができる。膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の塩化カルボニル基を有する多官能芳香族酸クロリドであることが好ましい。
(2−2)分離機能層の形成方法
分離機能層は、多官能芳香族アミン、多官能芳香族酸クロリドを化学反応させることにより架橋芳香族ポリアミドを形成することで得られる。化学反応の方法として、界面重合法が生産性、性能の観点から最も好ましい。以下、界面重合の工程について説明する。
界面重合の工程は、(a)多官能芳香族アミンを含有する水溶液を多孔性支持層上に接触させる工程と、(b)多官能芳香族アミンを含有する水溶液を接触させた多孔性支持層に多官能芳香族酸クロリドを溶解させた溶液Aを接触させる工程と、(c)さらに多官能芳香族酸クロリドを溶解させた有機溶媒溶液Bを接触させ加熱する工程と、(d)反応後の有機溶媒溶液を液切りする工程、を有する。
なお、本欄では、支持膜が基材と微多孔性支持層とを備える場合を例に挙げるが、支持膜が別の構成を備える場合は、「微多孔性支持層」を「支持膜」と読み替えればよい。
工程(a)において、多官能芳香族アミン水溶液における多官能芳香族アミンの濃度は0.1重量%以上20重量%以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以上15重量%以下の範囲内である。多官能芳香族アミンの濃度がこの範囲であると十分な溶質除去性能および透水性を得ることができる。
多官能芳香族アミン水溶液の接触は、微多孔性支持層上に均一かつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、例えば、多官能芳香族アミン水溶液を微多孔性支持層にコーティングする方法や、微多孔性支持層を多官能芳香族アミン水溶液に浸漬する方法などを挙げることができる。微多孔性支持層と多官能芳香族アミン水溶液との接触時間は、1秒以上10分間以下であることが好ましく、10秒以上3分間以下であるとさらに好ましい。
多官能芳香族アミン水溶液を微多孔性支持層に接触させた後は、膜上に液滴が残らないように十分に液切りする。十分に液切りすることで、微多孔性支持層形成後に液滴残存部分が膜欠点となって除去性能が低下することを防ぐことができる。液切りの方法としては、例えば、特開平2−78428号公報に記載されているように、多官能芳香族アミン水溶液接触後の支持膜を垂直方向に把持して過剰の水溶液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの気流を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させて水溶液の水分を一部除去することもできる。
有機溶媒溶液(溶液Aおよび溶液B)中の多官能芳香族酸クロリドの濃度は、0.01重量%以上10重量%以下の範囲内であると好ましく、0.02重量%以上2.0重量%以下の範囲内であるとさらに好ましい。0.01重量%以上とすることで十分な反応速度が得られ、また、10重量%以下とすることで副反応の発生を抑制することができるためである。
有機溶媒は、水と非混和性であり、かつ多官能芳香族酸クロリドを溶解し、支持膜を破壊しないものが好ましく、多官能芳香族アミンおよび多官能芳香族酸クロリドに対して不活性であるものであればよい。好ましい例として、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、イソオクタン、イソデカン、イソドデカンなどの炭化水素化合物および混合溶媒が挙げられる。
多官能芳香族酸クロリドの有機溶媒溶液の多官能芳香族アミン水溶液と接触させた微多孔性支持層への接触の方法は、多官能芳香族アミン水溶液の微多孔性支持層への被覆方法と同様に行えばよい。
工程(c)において多官能芳香族酸クロリドを溶解させた溶液Bを接触させ加熱する。加熱処理する温度としては50℃以上180℃以下、好ましくは60℃以上160℃以下である。この範囲で加熱することにより、熱および溶液の濃縮による界面重合反応の促進の相乗効果が得られる。
工程(d)において、反応後の有機溶媒溶液を液切りする工程により、有機溶媒を除去する。有機溶媒の除去は、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法、送風機で風を吹き付けることで有機溶媒を乾燥除去する方法、水とエアーの混合流体で過剰の有機溶媒を除去する方法等を用いることができる。
(3)被覆層
(3−1)被覆層の化学構造
被覆層は、3−(メタクリルアミノ)アルキルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロリドを重合反応させることで形成された非芳香族ポリマー、もしくは3−(メタクリルアミノ)アルキルアミンと3−(メタクリルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリドを重合反応させることで形成された非芳香族ポリマーを含有しており、以下に述べる構造を有する。
3−(メタクリルアミノ)アルキルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロリドを重合反応させることで形成された非芳香族ポリマーを含有する被覆層は、(I)の構造を有する。
Figure 2020121264
(但し、mは2〜4の整数、n1、n2は整数を指す。)
3−(メタクリルアミノ)アルキルアミンと3−(メタクリルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリドを重合反応させることで形成された非芳香族ポリマーを含有する被覆層は、(II)の構造を有する。
Figure 2020121264
(但し、mは2〜4の整数、n3、n4は整数を指す。)
本発明者は鋭意検討した結果、架橋芳香族ポリアミドに前記の非芳香族ポリマーを塗布して得られた膜について、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて複合半透膜の分離機能層側を測定し、正の2次イオンのピークを求めたとき、被覆層が3−(メタクリルアミノ)アルキルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロリドを重合反応させることで形成された非芳香族ポリマーを含有する複合半透膜では式(2)を、被覆層が3−(メタクリルアミノ)アルキルアミンと3−(メタクリルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリドを重合反応させることで形成された非芳香族ポリマーを含有する複合半透膜では式(3)を満たす場合に、該複合半透膜の塩除去性が向上することを見出した。
正2次イオンm/z=104.03,108.07,128.14,135.06,173.16のカウント数をそれぞれa,b,c,d,eとしたとき、式(2)、式(3)を以下とする。
c/(a+b+d)≧10…(2)、e/(a+b+d)≧10…(3)
なお、被覆層が3−(メタクリルアミノ)アルキルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロリドを重合反応させることで形成された非芳香族ポリマーを含有する複合半透膜では、正2次イオンm/z=128.14は(I)に、104.03,108.07,135.06は芳香族ポリアミドの部分構造に帰属し、被覆層が3−(メタクリルアミノ)アルキルアミンと3−(メタクリルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリドを重合反応させることで形成された非芳香族ポリマーを含有する複合半透膜では、m/z=173.16は(II)に、104.03,108.07,135.06は芳香族ポリアミドの部分構造に帰属する。
また本発明において、複合半透膜の塩除去性向上効果が十分に発揮されるためには、以下の条件を満たすことが必要である。
被覆層が3−(メタクリルアミノ)アルキルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロリドを重合反応させることで形成された非芳香族ポリマーを含有する複合半透膜を3cm*3cmのサイズに裁断する。本複合半透膜の分離機能層表面において、横及び縦5mmの間隔で飛行時間型二次イオン質量分析を測定し、得られた49個の測定データは、そのうちの35個の測定データに関して、式(2)を満たす。
被覆層が3−(メタクリルアミノ)アルキルアミンと3−(メタクリルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリドを重合反応させることで形成された非芳香族ポリマーを含有する複合半透膜を3cm*3cmのサイズに裁断する。本複合半透膜の分離機能層表面において、横及び縦5mmの間隔で飛行時間型二次イオン質量分析を測定し、得られた49個の測定データは、そのうちの35個の測定データに関して、式(3)を満たす。
また3−(メタクリルアミノ)アルキルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロリドを重合反応させることで形成された非芳香族ポリマー、3−(メタクリルアミノ)アルキルアミンと3−(メタクリルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリドを重合反応させることで形成された非芳香族ポリマー双方において、前記3−(メタクリルアミノ)アルキルアミンが3−(メタクリルアミノ)プロピルアミンであることが、該非芳香族ポリマーを被覆層に含有する複合半透膜の、塩除去性向上効果発現のために好ましい。
(3−2)被覆層の物性
複合半透膜の被覆層側の表面におけるゼータ電位Zは、式(1)を満たすことが好ましい。pH7.0で
Z≧10mV …(1)
ゼータ電位とは超薄膜層表面の正味の固定電荷の尺度であり、本発明の薄膜層表面のゼータ電位は、電気移動度から、下記数式1に示すヘルムホルツ・スモルコフスキー(Helmholtz−Smoluchowski)の式によって求めることができる。
ゼータ電位Z=4πηU/ε
(式中、Uは電気移動度、εは溶液の誘電率、ηは溶液の粘度である)。ここで、溶液の誘電率、粘度は、測定温度での文献値を使用した。
ゼータ電位の測定原理について説明する。材料に接した(水)溶液には、材料表面の電荷の影響で、表面の近傍に流動できない静止層が存在する。ゼータ電位は、材料の静止層と流動層の境界面(すべり面)での溶液に対する電位である。
ここで、石英ガラスセル中の水溶液を考えると、石英表面は通常マイナスに荷電されているため、セル表面付近にプラス荷電のイオンや粒子が集まる。一方、セル中心部にはマイナス荷電のイオンや粒子が多くなり、セル内でイオン分布が生じている。この状態で電場をかけると、セル内ではイオン分布を反映し、セル内の位置で異なる泳動速度でイオンが動く(電気浸透流という)。泳動速度はセル表面の電荷を反映したものであるので、この泳動速度分布を求めることにより、セル表面の電荷(表面電位)を評価することができる。
通常、ゼータ電位の測定は、大きさ20mm×30mmの膜試料を用い、電気泳動させるための標準粒子は表面をヒドロキシプロピルセルロースでコーティングしたポリスチレン粒子(粒径520nm)を所定濃度に調整したNaCl水溶液に分散させて測定することができる。測定装置は例えばPhotal Otsuka Electronic(株)製ELS−8000などが使用できる。
(3−3)被覆層の形成方法
被覆層を構成する前記非芳香族ポリマーの合成に際しては3−(メタクリルアミノ)アルキルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロリドとの重合反応、もしくは3−(メタクリルアミノ)アルキルアミンと3−(メタクリルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリドとの重合反応を利用する。この際、ラジカル重合反応が起こることにより炭素―炭素結合が形成されるが、高効率かつ短時間での反応にとり、必要に応じ、種々のラジカル反応開始剤を利用することが好ましい。ラジカル開始剤として、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、過酸化ベンゾイル、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、ジクミルペルオキシドなどを好適に使用することができる。
被覆層を形成するための非芳香族ポリマー合成の反応時間、温度および濃度は、使用する溶媒、ラジカル反応開始剤および化合物の化学構造により、適宜調整可能であるが、生産性の観点から、反応時間は24時間以内が好ましく、12時間以内がより好ましく、6時間以内がさらに好ましく、1時間以内が特に好ましい。反応終了後、残渣化合物を除去し、精製しておいてもよい。
(3−4)被覆層と分離機能層との間の化学結合
被覆層と分離機能層は、互いに化学結合により繋がっていてもよい。被覆層と分離機能層が化学結合を形成している場合、被覆層がより安定的に存在できるので、より好ましい。被覆層と分離機能層との間の化学結合は、共有結合であることが好ましく、各々の層を構成するポリマーの保有する官能基を使用できる点と、耐酸性を高いレベルで保持する観点から、被覆層と分離機能層との間の化学結合は、アミド結合であることが特に好ましい。具体的には、被覆層を形成する非芳香族ポリマーのアミノ基と、分離機能層を形成する架橋芳香族ポリアミドのカルボン酸基との反応によりアミド結合を形成することで、被覆層と分離機能層との間にアミド結合を形成することができる。
本アミド結合の形成は、分離機能層を構成する架橋芳香族ポリアミドと、前記非芳香族ポリマーとが接触した際に行われる。具体的には、予め合成された非芳香族ポリマーを含む溶液を分離機能層上にコーティングして被覆層を形成する際、被覆層と分離機能層との間で化学反応を行ってよい。または、非芳香族ポリマーを含む溶液に分離機能層を含む膜を浸漬して被覆層を形成する際、被覆層と分離機能層との間で化学反応を行ってよい。さらに、後述する複合半透膜エレメントを作成してから非芳香族ポリマー溶液を通液処理して、被覆層を形成する際、被覆層と分離機能層との間で化学反応を行ってよい。
被覆層と分離機能層との間のアミド結合形成に際し、カルボン酸基は、必要に応じ反応活性の高い状態にしておくことが好ましい。例えば、界面重合直後の架橋芳香族ポリアミドの保有する酸クロリド基と、前記非芳香族ポリマーの保有するアミノ基との反応を利用してもよい。この反応を利用することで、高効率かつ短時間で被覆層と分離機能層との間にアミド結合を形成することができる。
また、カルボン酸基とアミノ基との間の反応に際し、種々の反応助剤(縮合促進剤)を利用することも、高効率かつ短時間でのアミド結合形成にとり好ましい。縮合促進剤としては、硫酸、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’-カルボニルジイミダゾール、1,1’-カルボニルジ(1,2,4-トリアゾール)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩、(7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩、クロロトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロりん酸塩、ブロモトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩、3-(ジエトキシホスホリルオキシ)-1,2,3-ベンゾトリアジン-4(3H)-オン、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、O-(N-スクシンイミジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロほう酸塩、O-(N-スクシンイミジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、O-(3,4-ジヒドロ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン-3-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロほう酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-(2-オクトキシ-2-オキソエチル)ジメチルアンモニウム、S-(1-オキシド-2-ピリジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルチウロニウムテトラフルオロほう酸塩、O-[2-オキソ-1(2H)-ピリジル]-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロほう酸塩、{{[(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデン)アミノ]オキシ}-4-モルホリノメチレン}ジメチルアンモニウムヘキサフルオロりん酸塩、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロりん酸塩、1-(クロロ-1-ピロリジニルメチレン)ピロリジニウムヘキサフルオロりん酸塩、2-フルオロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロりん酸塩、フルオロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロりん酸塩、などを好適に使用することができる。
被覆層と分離機能層との間のアミド結合形成の反応時間および濃度は、使用する溶媒、縮合剤および非芳香族ポリマー、架橋芳香族ポリアミドの化学構造により、適宜調整可能であるが、生産性の観点から、反応時間は24時間以内が好ましく、1時間以内がより好ましく、10分以内がさらに好ましく、3分以内が特に好ましい。反応終了後、水、熱水または適切な有機溶媒により、得られた複合半透膜を洗浄し、反応性の化合物を除去することが好ましい。
(4)複合半透膜の利用
複合半透膜は、プラスチックネットなどの供給水流路材と、トリコットなどの透過水流路材と、必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿設した筒状の集水管の周りに巻回され、スパイラル型の複合半透膜エレメントとして好適に用いられる。さらに、このエレメントを直列または並列に接続して圧力容器に収納した複合半透膜モジュールとすることもできる。
また、上記の複合半透膜やそのエレメント、モジュールは、それらに供給水を供給するポンプや、その供給水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、供給水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
本発明に係る複合半透膜によって処理される供給水としては、海水、かん水、排水等の500mg/L以上100g/L以下のTDS(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物が挙げられる。一般に、TDSは総溶解固形分量を指し、「質量÷体積」あるいは「重量比」で表される。定義によれば、0.45ミクロンのフィルターで濾過した溶液を39.5℃以上40.5℃以下の温度で蒸発させ残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分(S)から換算する。
流体分離装置の操作圧力は高い方が溶質除去率は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、複合半透膜の耐久性を考慮すると、複合半透膜に被処理水を透過する際の操作圧力は、0.5MPa以上、10MPa以下が好ましい。供給水温度は、高くなると溶質除去率が低下するが、低くなるにしたがい膜透過流束も減少するので、5℃以上、45℃以下が好ましい。また、供給水pHが高くなると、海水などの高溶質濃度の供給水の場合、マグネシウムなどのスケールが発生する恐れがあり、また、高pH運転による膜の劣化が懸念されるため、中性領域での運転が好ましい。
以下実施例をもって本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれにより限定されるものではない。
(1)膜の作製
(比較例1)
ポリエステル不織布(通気量2.0cc/cm2/sec)上にポリスルホン(PSf)の16.0質量%DMF溶液を25℃の条件下で200μmの厚みでキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって、多孔性支持膜を作製した。
得られた多孔性支持膜をm−フェニレンジアミン(m−PDA)の3質量%水溶液中に2分間浸漬し、該支持膜を垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、室温25℃に制御した環境で、トリメシン酸クロリド(TMC)0.165質量%を含む25℃のデカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布して1分間静置したのち、膜を垂直にして余分な溶液を液切りして除去し、80℃で1分間加熱乾燥することで、架橋芳香族ポリアミド分離機能層を有する複合半透膜を得た。
(比較例2)
シアノ酢酸を50ppmの濃度で純水中に溶解した後、縮合剤として4―(4,6―ジメトキシ―1,3,5−トリアジン―2―イル)―4―メチルモルホリニウムクロリドを50ppmの濃度となる様に溶解した。得られたポリマー溶液を、(比較例1)で得られた架橋芳香族ポリアミド分離機能層を有する複合半透膜の分離機能層側表面に塗布し、25℃で3分間静置した後、純水で洗浄することで、被覆層を有する複合半透膜を作製した。
(比較例3)
(比較例1)で得られた架橋芳香族ポリアミド分離機能層を有する複合半透膜をポリビニルアルコール(けん化度88%、重量平均分子量2,000)0.5重量%と、グルタルアルデヒド0.2重量%とを含む水溶液に、酸触媒として塩酸を0.1モル/リットルとなるように添加した水溶液に1分間浸漬した。垂直で1分間保持し余分な液を切った後に熱風乾燥機で90℃、30秒間乾燥して、分離機能層がポリビニルアルコールでコーティングされた複合半透膜を得た。複合半透膜は、評価前に10%イソプロパノール水溶液に10分間浸漬し親水化処理を行った。
(比較例4)
ポリアクリル酸(重量平均分子量2,000、東亞合成社製)を100ppmの濃度で純水中に溶解した後、縮合剤として4―(4,6―ジメトキシ―1,3,5−トリアジン―2―イル)―4―メチルモルホリニウムクロリドを100ppmの濃度となる様に溶解した。得られたポリマー溶液を、(比較例1)で得られた架橋芳香族ポリアミド分離機能層を有する複合半透膜の分離機能層側表面に塗布し、25℃で3分間静置した後、純水で洗浄することで、被覆層を有する複合半透膜を作製した。
(比較例5)
(比較例1)で得られた膜の膜表面に、ポリエチレンイミン(重量平均分子量600)2.0重量%を含む水溶液を塗布し、熱風乾燥機で60℃、30秒間乾燥した。次に、ポリビニルアルコール(重量平均分子量2,000)0.5重量%と、グルタルアルデヒド0.171重量%とを含む水溶液に、酸触媒として塩酸を0.1モル/Lとなるように添加した水溶液を膜表面に塗布し、熱風乾燥機で80℃、2分間乾燥し架橋した。その後、未架橋物や酸触媒を除去するため70℃の熱水で洗浄を行い、さらに、イソプロピルアルコールを10重量%含む水溶液に1時間接触させた後十分に水洗を行い、被覆層を有する複合半透膜を作製した。
(比較例6)
(比較例1)で得られた膜の膜表面に、ヘキサメチレンビス(グリシジルジメチルアンモニウム)ジクロリドの5重量%水溶液を塗布して2分間静置した後、膜を垂直にして余分な溶液を液切りして除去し、120℃、2分間乾燥機中で熱処理し、水洗した。その後、10%イソプロピルアル
コール水溶液に10分間浸漬して親水化処理を行い、被覆層を有する複合半透膜を作製した。
(比較例7)
ジメチルアクリルアミド、4−ビニルフェニルスルホン酸ナトリウム、1-ビニル-3-イミダゾリウムクロリド、ヒドロキシエチルアクリルアミドを50mMの濃度で水に溶解させ、さらに、光重合開始剤2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンを10mMの濃度で水に溶解させた。
こうして得られた溶液に、UV照射装置によって365nmの紫外線を照射することで、ポリマー層を形成するためのポリマー溶液を得た。UV照射装置の照射強度は、紫外線積算光量計で測定される値が40mW/cm2となるように設定した。このポリマー溶液に、さらに架橋剤としてジビニルスルホンを50mMの濃度で溶解させ、(比較例1)で得られた膜上に30秒間接触させた後、スピンコーターを用いて余分な溶液を除去し、被覆層を有する複合半透膜を作製した。
(比較例8)
冷却還流管を備えた500mL容量の反応槽に、ブチルメタクリレート60g、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライド40g、重合溶剤としてイソプロピルアルコール150g、及び重合開始剤として2,2‘− アゾビスイソブチロニトリル 0.5gを仕込んだ。 反応槽内を十分窒素置換した後、反応槽に窒素を流通させつつ、反応槽を60℃に加温し、8時間攪拌して重合をほぼ完結させた。この共重合体を、3重量%イソプロピルアルコール溶液とし、乾燥膜厚0.2μmとなるように(比較例1)で得られた膜の膜表面に塗布し、 120℃で10分間加熱乾燥させて、本発明による複合半透膜を得た。
(実施例1−6)
表1に示す非芳香族ポリマーを、1000ppmの濃度で純水中に溶解した後、縮合剤として4―(4,6―ジメトキシ―1,3,5−トリアジン―2―イル)―4―メチルモルホリニウムクロリドを1000ppmの濃度となる様に溶解した。得られたポリマー溶液を、(比較例1)で得られた架橋芳香族ポリアミド分離機能層を有する複合半透膜の分離機能層側表面に塗布し、25℃で3分間静置した後、純水で洗浄することで、被覆層を有する複合半透膜を作製した。
(実施例7−8)
表1に示す非芳香族ポリマーを、1000ppmの濃度で純水中に溶解した後、縮合剤として4―(4,6―ジメトキシ―1,3,5−トリアジン―2―イル)―4―メチルモルホリニウムクロリドを1000ppmの濃度となる様に溶解した。得られたポリマー溶液に、(比較例1)で得られた架橋芳香族ポリアミド分離機能層を有する複合半透膜を浸漬し、25℃で3分間静置した後、純水で洗浄することで、被覆層を有する複合半透膜を作製した。
(実施例9−10)
表1に示す非芳香族ポリマーを、1000ppmの濃度で純水中に溶解した後、縮合剤として4―(4,6―ジメトキシ―1,3,5−トリアジン―2―イル)―4―メチルモルホリニウムクロリドを1000ppmの濃度となる様に溶解した。(比較例1)で得られた複合半透膜を用い、上述の方法で複合半透膜エレメントを作成し、得られたエレメントに対して、上述のポリマー溶液をエレメント内の全ての複合半透膜が濡れるように25℃で通液処理した。その後、十分量の純水を通液して洗浄し、得られたエレメントから切り出しを行うことで、被覆層を有する複合半透膜を作製した。
(合成例1)
3−(メタクリルアミノ)プロピルアミン(324mg,1.81mmol)とジアリルジメチルアンモニウムクロリド(1460mg,9.05mmol)を純水(3mL)中に溶解し凍結脱気、窒素置換を行った後、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)(20mg,0.120mmol)を加え、70℃に加熱して7時間攪拌した。生じた懸濁液を濃縮することにより得られた残渣を乾燥することにより、非芳香族ポリマーA(1430mg,80%)を得た。
(合成例2)
3−(メタクリルアミノ)プロピルアミン(324mg,1.81mmol)と3−(メタクリルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド(2000mg,9.05mmol)を純水(3mL)中に溶解し凍結脱気、窒素置換を行った後、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)(20mg,0.120mmol)を加え、70℃に加熱して7時間攪拌した。生じた懸濁液を濃縮することにより得られた残渣を乾燥することにより、非芳香族ポリマーB(1970mg,85%)を得た。
(合成例3)
3−(メタクリルアミノ)エチルアミン(292mg,1.81mmol)とジアリルジメチルアンモニウムクロリド(1460mg,9.05mmol)を純水(3mL)中に溶解し凍結脱気、窒素置換を行った後、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)(20mg,0.120mmol)を加え、70℃に加熱して7時間攪拌した。生じた懸濁液を濃縮することにより得られた残渣を乾燥することにより、非芳香族ポリマーC(1400mg,80%)を得た。
(合成例4)
3−(メタクリルアミノ)エチルアミン(292mg,1.81mmol)と3−(メタクリルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド(2000mg,9.05mmol)を純水(3mL)中に溶解し凍結脱気、窒素置換を行った後、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)(20mg,0.120mmol)を加え、70℃に加熱して7時間攪拌した。生じた懸濁液を濃縮することにより得られた残渣を乾燥することにより、非芳香族ポリマーD(1700mg,74%)を得た。
(合成例5)
3−(メタクリルアミノ)ブチルアミン(356mg,1.81mmol)とジアリルジメチルアンモニウムクロリド(1460mg,9.05mmol)を純水(3mL)中に溶解し凍結脱気、窒素置換を行った後、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)(20mg,0.120mmol)を加え、70℃に加熱して7時間攪拌した。生じた懸濁液を濃縮することにより得られた残渣を乾燥することにより、非芳香族ポリマーE(1410mg,78%)を得た。
(合成例6)
3−(メタクリルアミノ)ブチルアミン(356mg,1.81mmol)と3−(メタクリルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド(2000mg,9.05mmol)を純水(3mL)中に溶解し凍結脱気、窒素置換を行った後、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)(20mg,0.120mmol)を加え、70℃に加熱して7時間攪拌した。生じた懸濁液を濃縮することにより得られた残渣を乾燥することにより、非芳香族ポリマーF(1990mg,84%)を得た。
(2)飛行時間型二次イオン質量分析測定
上記(1)実施例で得られた複合半透膜を室温・真空下で乾燥し、TOF SIMS 5 (ION TOF 社製)装置を使用し、飛行時間型二次イオン質量分析測定を行った(2次イオン極性:正、質量範囲(m/z)=0−200、ラスターサイズ:300μm、スキャン数:16、ピクセル数(1辺)=256、測定真空度=4×10−7Pa以下、1次イオン種:Bi3 ++、1次イオン加速電圧=25kV、パルス幅=12.5, 13.3 ns、バンチング:あり、帯電中和:あり、後段加速:10kV)。複合半透膜の被覆層側表面において、正2次イオンm/z = 104.03, 108.07, 128.14, 135.06, 173.16のカウント数をそれぞれ求め、正2次イオンm/z = 104.03, 108.07, 128.14, 135.06, 173.16のカウント数をa, b, c, d, eとしたとき、実施例1、3、5、7、9、比較例2、4に関してはc/(a+b+d)の値を、実施例2、4、6、8、10、比較例3、5に関してはe/(a+b+d)の値を求めた。
また、上記(1)実施例1、3、5、7、9、比較例2、4で得られた複合半透膜を3cm*3cmのサイズに裁断し、得られた半透膜の分離機能層表面において、横及び縦5mmの間隔で、上記方法により飛行時間型二次イオン質量分析を測定し、49個の測定データ(カウント数:a,b,c,d,e)を取得した。この49個の測定データのうち、 c/(a+b+d)≧10を満たす測定点個数が何個あるか求めた。
さらに、上記(1)実施例2、4、6、8、10、比較例3、5で得られた複合半透膜を3cm*3cmのサイズに裁断し、得られた半透膜の分離機能層表面において、横及び縦5mmの間隔で、上記方法により飛行時間型二次イオン質量分析を測定し、49個の測定データ(カウント数:a,b,c,d,e)を取得した。この49個の測定データのうち、 e/(a+b+d)≧10 を満たす測定点個数が何個あるか求めた。
(3)ゼータ電位測定
ゼータ電位の測定は、複合半透膜を超純水で洗浄し、平板試料用セルに、複合半透膜の分離機能層面がモニター粒子溶液に接するようにセットし、平板試料ゼータ電位測定器であるPhotal Otsuka Electronic(株)製ELS−8000により測定した。モニター粒子溶液としては、pH7.0に調整した10mM−NaCl水溶液にポリスチレンラテックスのモニター粒子を分散させた測定液を用いた。
また、上記(1)実施例1−10、比較例1−5で得られた複合半透膜を3cm*3cmのサイズに裁断し、得られた半透膜の分離機能層表面において、横及び縦5mmの間隔で、上記方法により飛行時間型二次イオン質量分析を測定し、49個の測定データを取得した。この49個の測定データのうち、Z≧10mVを満たす測定点個数が何個あるか求めた。
(4)複合半透膜の性能評価
得られた複合半透膜に、温度25℃、pH7に調整した海水(TDS濃度3.5%)(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を操作圧力5.5MPaで供給して膜通水試験を行い、製造時性能を求めた。
次の式から塩除去率を求めた。
塩除去率(%)=100×{1−(透過水中のTDS濃度/供給水中のTDS濃度)}
また、上述の条件下で得られた、膜面1平方メートル当たりの1日の透水量(立方メートル)から、透過水量(m/m/日)を求めた。
以上の実施例、比較例で得られた複合半透膜の膜性能を表2に示す。実施例に示すように、本発明の複合半透膜は、比較例と比較して塩除去性が向上していることが分かる。
Figure 2020121264
Figure 2020121264

Claims (3)

  1. 微多孔性支持層と、前記微多孔性支持層上に設けられた分離機能層と、前記分離機能層を被覆する被覆層と、を有する複合半透膜であって、
    前記分離機能層は、多官能芳香族アミン、多官能芳香族酸クロリドを反応させることで形成された架橋ポリアミドを含有し、
    飛行時間型二次イオン質量分析法による複合半透膜の被覆層側の面を測定して得られる正の2次イオンのピークカウントが、式(2)、または式(3)を満たす、複合半透膜。
    c/(a+b+d) ≧ 10 …(2)、e/(a+b+d) ≧ 10 …(3)
    (a, b, c, d, eはそれぞれ、正2次イオンm/z = 104.03, 108.07, 128.14, 135.06, 173.16のカウント数である。)
  2. 前記被覆層が、3−(メタクリルアミノ)アルキルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロリドとの重合物、または3−(メタクリルアミノ)アルキルアミンと3−(メタクリルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリドとの重合物の少なくとも一方を含有する請求項1に記載の複合半透膜。
  3. 前記3−(メタクリルアミノ)アルキルアミンが3−(メタクリルアミノ)プロピルアミンである、請求項1または2に記載の複合半透膜。
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