JP2022184042A - 複合半透膜 - Google Patents

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伸也 三井
Shinya Mitsui
貴亮 安田
Takaaki Yasuda
晴季 志村
Harutoki Shimura
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Abstract

【課題】優れた分離性能と透水性能とを両立した複合半透膜を提供する。【解決手段】本発明は、微多孔性支持層と、前記微多孔性支持層上に設けられた分離機能層とを有する複合半透膜であって、前記分離機能層が架橋芳香族ポリアミドを含有し、前記架橋芳香族ポリアミドが明細書中に記載の一般式(1)で表される部分構造を有する複合半透膜に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、液状混合物の選択的分離に有用な複合半透膜に関する。本発明によって得られる複合半透膜は、かん水や海水の淡水化に好適に用いることができる。
膜分離法は、溶媒(例えば水)からその溶媒に溶解した物質(例えば塩類)を除去する方法として拡大しつつある。膜分離法は、省エネルギーかつ省資源な方法として注目されている。
膜分離法に使用される膜としては、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがある。これらの膜は、例えば海水、かん水、有害物を含んだ水などからの飲料水の製造および工業用超純水の製造、ならびに排水処理および有価物の回収などに用いられている(特許文献1、2)。
現在市販されている逆浸透膜およびナノろ過膜の大部分は複合半透膜である。複合半透膜としては、多孔性支持層上にゲル層とポリマーを架橋した活性層を有するものと、多孔性支持層と、多孔性支持層上でモノマーが重縮合することで形成された活性層と、を有するものとの2種類が挙げられる。後者の複合半透膜のなかでも、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応によって得られる架橋ポリアミドを含有する分離機能層を有する複合半透膜が、透過性および選択分離性の高い分離膜として広く用いられている。
特開昭55-14706号公報 特開平5-76740号公報
しかしながら、従来の、架橋芳香族ポリアミドを含む分離機能層を有する複合半透膜は、分離性能、透水性能に優れたものであるものの、分離性能と透水性能との両立は十分ではなく、膜性能には課題があった。
上記目的を達成するために、本発明の複合半透膜は、以下のいずれかの構成を備える。
[1]
微多孔性支持層と、前記微多孔性支持層上に設けられた分離機能層を有する複合半透膜であって、
前記分離機能層が架橋芳香族ポリアミドを含有し、
前記架橋芳香族ポリアミドが下記一般式(1)で表される部分構造を有する複合半透膜。
Figure 2022184042000001
(R~Rは水素原子、または炭素数が1~10の脂肪族鎖であり、Ar~Arは置換基を有していてもよい炭素数6~14の芳香族環であり、Ar~Arの少なくとも1つは、下記構造(2)で表される置換基Lを有する。)
Figure 2022184042000002
(Xは酸素原子もしくは炭素数1~3のアルキレン鎖、または単結合であり、Y~Yはそれぞれ独立にO、OH、Oであり、YまたはYは原子を含まなくてもよい。また、構造(2)中の
Figure 2022184042000003
は単結合または二重結合を表す。)
[2]
前記分離機能層は、ひだ状の薄膜を有し、
前記薄膜の厚みの平均値が10~20nmであり、
ラザフォード後方散乱分光法(RBS)で測定される前記分離機能層の窒素原子面密度が4.0×1020~1.2×1021個/mである、
上記[1]に記載の複合半透膜。
[3]
前記構造(2)のXが酸素原子または単結合である、
上記[1]または[2]に記載の複合半透膜。
[4]
前記構造(2)のXが単結合である、
上記[1]~[3]のいずれかに記載の複合半透膜。
[5]
前記架橋芳香族ポリアミドが、2種以上の多官能芳香族アミンに由来する構造を含む、
上記[1]~[4]に記載のいずれかに記載の複合半透膜。
[6]
前記分離機能層中に置換基Lを8.6×10-7mоl/m以上6.2×10-4mоl/m以下含む、
上記[1]~[5]のいずれかに記載の複合半透膜。
[7]
前記分離機能層のpH3におけるゼータ電位が-5mV以下である、
上記[1]~[6]のいずれかに記載の複合半透膜。
本発明によれば、優れた分離性能と透水性能とを両立した複合半透膜を提供することができる。
図1の(a)、(b)及び(c)は複合半透膜の構造を模式的に示した断面図であり、図1の(a)は複合半透膜の断面模式図であり、図1の(b)は分離機能層の拡大模式図であり、図1の(c)は分離機能層のひだ構造を模式的に示した拡大断面図である。
1.複合半透膜
本発明の実施形態に係る複合半透膜は、微多孔性支持層と、前記微多孔性支持層上に設けられた分離機能層とを有する複合半透膜であって、
前記分離機能層が架橋芳香族ポリアミドを含有し、
前記架橋芳香族ポリアミドが下記一般式(1)で表される部分構造を有する。
Figure 2022184042000004
(R~Rは水素原子、または炭素数が1~10の脂肪族鎖であり、Ar~Arは置換基を有していてもよい炭素数6~14の芳香族環であり、Ar~Arの少なくとも1つは、下記構造(2)で表される置換基Lを有する。)
Figure 2022184042000005
(Xは酸素原子もしくは炭素数1~3のアルキレン鎖、または単結合であり、Y~Yはそれぞれ独立にO、OH、またはOであり、YまたはYは原子を含まなくてもよい。また、構造(2)中の
Figure 2022184042000006
は単結合または二重結合を表す。)
図1の(a)に示すように、本発明に係る複合半透膜1は、微多孔性支持層3と、前記微多孔性支持層3上に設けられた分離機能層4とを有する。
微多孔性支持層3は、基材2上に形成されていてもよく、本発明の実施形態に係る複合半透膜1は、基材2と基材2上に形成された微多孔性支持層3とを含む支持膜を有していても良い。
前記分離機能層は実質的に分離性能を有するものであり、前記微多孔性支持層は実質的にイオン等の分離性能を有さず、前記分離機能層に強度を与えることができる。
(1-1)支持膜
支持膜は、基材と微多孔性支持層を備えてもよいし、支持膜は基体を有さず、微多孔性支持層のみで構成されていてもよい。すなわち、微多孔性支持層が支持膜であってもよい。
(1-2)基材
基材としては、例えば、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリオレフィン系重合体、あるいはこれらの混合物や共重合体等が挙げられる。中でも、機械的、熱的に安定性の高いポリエステル系重合体の布帛が特に好ましい。布帛の形態としては、長繊維不織布や短繊維不織布、さらには織編物を好ましく用いることができる。ここで、長繊維不織布とは、平均繊維長300mm以上、かつ平均繊維径3~30μmの不織布のことを指す。
基材は、通気量が0.5cc/cm/sec以上5.0cc/cm/secであることが好ましい。基材の通気量が上記範囲内にあることにより、微多孔性支持層を形成する高分子溶液が基材に含浸し易くなるため、微多孔性支持層と基材との接着性が向上し、支持膜の物理的安定性を高めることができる。
基材の厚みは10~200μmの範囲内にあることが好ましく、30~120μmの範囲内にあることがより好ましい。なお、本書において、特に付記しない限り、厚みとは、平均値を意味する。ここで平均値とは相加平均値を表す。すなわち、基材および微多孔性支持層の厚みは、断面観察で厚み方向に直交する方向(膜の面方向)に20μm間隔で測定した20点の厚みの平均値を算出することで求められる。
微多孔性支持層は、イオン等の分離性能を実質的に有さず、分離性能を実質的に有する分離機能層に強度を与えるためのものである。微多孔性支持層の孔のサイズや分布は特に限定されないが、例えば、均一で微細な孔、あるいは分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもち、かつ、分離機能層が形成される側の表面で微細孔の大きさが0.1nm以上100nm以下であるような微多孔性支持層が好ましいが、使用する材料やその形状は特に限定されない。
微多孔性支持層の素材には、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシドなどのホモポリマーあるいはコポリマーを単独であるいはブレンドして使用することができる。ここでセルロース系ポリマーとしては酢酸セルロース、硝酸セルロースなど、ビニルポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが使用できる。中でもポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどのホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。より好ましくは酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、またはポリフェニレンスルホンが挙げられ、さらに、これらの素材の中では化学的、機械的、熱的に安定性が高く、成型が容易であることからポリスルホンが一般的に使用できる。
ポリスルホンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)でN-メチルピロリドンを溶媒に、ポリスチレンを標準物質として測定した場合の質量平均分子量(Mw)が、10000以上200000以下であることが好ましく、より好ましくは15000以上100000以下である。Mwが10000以上であることで、微多孔性支持層として好ましい機械的強度および耐熱性を得ることができる。また、Mwが200000以下であることで、溶液の粘度が適切な範囲となり、良好な成形性を実現することができる。
基材と微多孔性支持層の厚みは、複合半透膜の強度およびそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。十分な機械的強度および充填密度を得るためには、基材と微多孔性支持層の厚みの合計が、30μm以上300μm以下であることが好ましく、100μm以上220μm以下であるとより好ましい。また、微多孔性支持層の厚みは、20μm以上100μm以下であることが好ましい。なお、本書において、特に付記しない限り、厚みとは、平均値を意味する。ここで平均値とは相加平均値を表す。すなわち、基材と微多孔性支持層の厚みは、断面観察で厚み方向に直交する方向(膜の面方向)に20μm間隔で測定した、20点の厚みの平均値を算出することで求められる。
(1-3)分離機能層
本発明の実施形態において分離機能層は、架橋芳香族ポリアミドを含有する。特に、分離機能層は、架橋芳香族ポリアミドを主成分として含有することが好ましい。主成分とは分離機能層の成分のうち、50質量%以上を占める成分を指す。分離機能層は、架橋芳香族ポリアミドを50質量%以上含むことにより、高い除去性能を発現することができる。また、分離機能層は、実質的に、架橋芳香族ポリアミドのみで形成されることが好ましい。つまり、分離機能層の90質量%以上を架橋芳香族ポリアミドが占めることが好ましい。
本発明の実施形態に係る分離機能層は架橋芳香族ポリアミドを含有し、架橋芳香族ポリアミドは、下記一般式(1)で表される部分構造を有する必要がある。
Figure 2022184042000007
(R~Rは水素原子、または炭素数が1~10の脂肪族鎖であり、Ar~Arは置換基を有していてもよい炭素数6~14の芳香族環であり、Ar~Arの少なくとも1つは、下記構造(2)で表される置換基Lを有する。)
Figure 2022184042000008
(Xは酸素原子もしくは炭素数1~3のアルキレン鎖、または単結合であり、Y~Yはそれぞれ独立にO、OH、Oであり、YまたはYは原子を含まなくてもよい。また、構造(2)中の
Figure 2022184042000009
は単結合または二重結合を表す。)
Xがアルキレン鎖である場合、がアルキレン鎖の炭素数は1~3である。アルキレン鎖の炭素数が4以上の場合、分離機能層の疎水的な部分が多くなり、透水性の低下を招くためである。
置換基Lを構成するXは酸素原子または単結合であることが好ましく、Xが単結合であることがより好ましい。発明者等の鋭意検討の結果、Xが酸素原子または単結合の場合に、より塩化ナトリウムなどの塩を高度に除去可能となり分離性能に優れることが確認された。また、Xが単結合の場合、透水性能がより高くなるだけでなく、長時間高圧運転した場合の性能変化が小さくなるため好ましい。
置換基Lの具体例としては、ホスホン酸基、リン酸基、ホスホノメチル基、ホスホメチル基、ホスホノエチル基、ホスホエチル基、ホスホノプロピル基、ホスホプロピル基などが挙げられる。
これらの置換基は、Y~Yのいずれかの部位が中性の水中で電離することにより、置換基全体として負電荷を帯びる。この結果、高い親水性を奏することによる優れた透水性能と、除去対象物である塩を構成する陰イオンとのクーロン反発による優れた塩分離性能とを両立する複合半透膜が得られる。
本発明の実施形態に係る複合半透膜は、分離機能層中に、置換基Lを8.6×10-7~6.2×10-4mоl/m含むことが好ましい。分離機能層中における置換基Lの含有量が8.6×10-7mоl/m以上であることで、親水性による透水性能、およびクーロン反発による塩分離性能を十分に発揮することができる。
一方、置換基Lの含有量が6.2×10-4mоl/m以下であることで、中性の水接触下において負に荷電する置換基同士のクーロン反発による、分離機能層の孔径拡大にともなう複合半透膜の分離性能の低下を防ぐことができる。分離機能層中の置換基Lの含有量は1.2×10-6~3.7×10-4mоl/mであることがより好ましく、2.5×10-6~1.2×10-4mоl/mであることがさらに好ましく、6.2×10-6~8.6×10-5g/mであることがよりさらに好ましい。
分離機能層中の置換基Lの含有量は、硝酸・過塩素酸分解-モリブデン青吸光光度法による全リン分析などの手法により測定することができる。
分離機能層のpH3におけるゼータ電位は、-5mV以下であることが好ましく、-10mV以下であることがより好ましい。ゼータ電位とは、平板状試料表面の正味の固定電荷の尺度である。分離機能層に含まれる架橋芳香族ポリアミドは、末端官能基としてアミノ基、カルボキシ基、置換基Lを有しており、これらの解離度はpHに依存する。pH3において、アミノ基は主に正に荷電し、カルボキシ基は主に中性であり、置換基Lは主に負に荷電する。すなわち、分離機能層のpH3におけるゼータ電位は、主にアミノ基と置換基Lの量に依存すると考えられる。分離機能層のpH3におけるゼータ電位が-5mV以下であることで、分離機能層表面付近に置換基Lが高密度で存在するため、優れた塩分離性能及び透過性能を有する複合半透膜が得られる。
分離機能層のラザフォード後方散乱分光法(以下、「RBS」)から求めた窒素原子面密度は、4.0×1020~1.2×1021個/mであることが好ましく、6.0×1020~1.2×1021個/mであることがより好ましく、8.0×1020~1.2×1021個/mであることがさらに好ましい。
RBSから求めた窒素原子面密度は、分離機能層の主成分である架橋芳香族ポリアミドの密度に対応する。RBSから求めた窒素原子面密度が4.0×1020個/m以上であることで、架橋芳香族ポリアミドが高密度で存在するため、緻密な孔径による優れた分離性能を有する複合半透膜が得られる。また、中性の水接触下において負に荷電する置換基L同士のクーロン反発による、分離機能層の孔径拡大にともなう複合半透膜の分離性能の低下を防ぐことができる。一方、RBSから求めた窒素原子面密度が1.2×1021個/m以下であることで、架橋芳香族ポリアミドの密度が高すぎず、適切な透過性能を有する複合半透膜が得られる。
窒素原子面密度は、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
分離機能層の形状や厚みは、分離性能及び透過性能に影響を与える。
分離機能層は、ひだ状の薄膜を有し、前記薄膜の厚みの平均値が10~20nmであり、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)で測定される前記分離機能層の窒素原子面密度が4.0×1020~1.2×1021個/mであることが好ましい。
本発明の実施形態に係る複合半透膜は、図1の(a)に示すように、複合半透膜1であってもよい。
図1の(b)に示すように、分離機能層は複数の凸部42と凹部43とを備えるひだ状の薄膜41を含むことが好ましい。分離機能層がひだ状の薄膜を有することで、平面構造と比較して分離機能層の比表面積を大幅に向上させることができる。その結果、分離性能を維持しつつ、分離機能層の表面積に比例して透過性能を向上させることができる。図1の(c)に示すように、凸部42内部(薄膜41と微多孔性支持層3との間)は空隙である。
また、上記薄膜の厚みTの平均値は10~20nmであることが好ましく、10~16nmであることがより好ましい。上記薄膜の厚みTの平均値が上記範囲内であることで、分離性能と透水性能とを両立した複合半透膜を得ることができる。
分離対象物質が複合半透膜内部に浸透することを防ぐため、分離機能層は、複合半透膜の表面側に配置されていることが好ましく、且つ、ろ過一次側に配置されていることがより好ましい。ろ過一次側とは、ろ過操作において複合半透膜によって分断される液体のうち、ろ過原液側の液体に接触した膜面のことを指す。
架橋芳香族ポリアミドは、多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸ハロゲン化物との界面重縮合により形成することができる。ここで、多官能芳香族アミン及び多官能芳香族酸ハロゲン化物の少なくとも一方に分類される、少なくとも一種類のモノマーが3官能以上の化合物を含んでいることが好ましい。
本発明における分離機能層を、以下、ポリアミド分離機能層と記載することがある。
多官能芳香族アミンとは、一分子中に第一級アミノ基及び第二級アミノ基のうち少なくとも一方のアミノ基を2個以上有し、かつ、アミノ基のうち少なくとも1つは第一級アミノ基である芳香族アミンを意味する。例えば、多官能芳香族アミンとしては、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、o-ジアミノピリジン、m-ジアミノピリジン、p-ジアミノピリジン、5-ホスホ-1,3-フェニレンジアミン、5-ホスホノ-1,3-フェニレンジアミン、4-ホスホ-1,3-フェニレンジアミン、4-ホスホノ-1,3-フェニレンジアミン、2-ホスホ-1,4-フェニレンジアミン、2-ホスホノ-1,4-フェニレンジアミン、5-ホスホメチル-1,3-フェニレンジアミン、5-ホスホノメチル-1,3-フェニレンジアミン、4-ホスホメチル-1,3-フェニレンジアミン、4-ホスホノメチル-1,3-フェニレンジアミン、2-ホスホメチル-1,4-フェニレンジアミン、2-ホスホノメチル-1,4-フェニレンジアミン、5-ホスホエチル-1,3-フェニレンジアミン、5-ホスホノエチル-1,3-フェニレンジアミン、4-ホスホエチル-1,3-フェニレンジアミン、4-ホスホノエチル-1,3-フェニレンジアミン、2-ホスホエチル-1,4-フェニレンジアミン、2-ホスホノエチル-1,4-フェニレンジアミン、5-ホスホプロピル-1,3-フェニレンジアミン、5-ホスホノプロピル-1,3-フェニレンジアミン、4-ホスホプロピル-1,3-フェニレンジアミン、4-ホスホノプロピル-1,3-フェニレンジアミン、2-ホスホプロピル-1,4-フェニレンジアミン、2-ホスホノプロピル-1,4-フェニレンジアミン等の2個のアミノ基がオルト位やメタ位、パラ位のいずれかの位置関係で芳香環に結合した多官能芳香族アミン、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,2,4-トリアミノベンゼン、3-アミノベンジルアミン、4-アミノベンジルアミンなどの多官能芳香族アミンなどが挙げられる。特に、多官能芳香族アミンの主成分(多官能芳香族アミンA)として、膜の選択分離性や透過性、耐熱性を考慮すると、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼンが好適に用いられる。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさから、m-フェニレンジアミン(以下、m-PDAとも記す)を用いることがより好ましい。
架橋芳香族ポリアミドの形成において、多官能芳香族アミンは、2種以上が併用されることが好ましい。
本発明者らは鋭意検討した結果、架橋芳香族ポリアミドの形成において、これらの多官能芳香族アミンは、2種以上が併用されることで分離機能層に適切な量の官能基を導入することができ、複合半透膜の分離性能および透水性能が向上することを見出した。
導入する官能基は上記構造(2)で表される置換基Lであることが好ましく、架橋芳香族ポリアミドが上記一般式(1)で表される部分構造を2種以上含んでいてもよい。
架橋芳香族ポリアミドは、2種以上の多官能芳香族アミンに由来する構造を含むことが好ましく、上記に例示した多官能芳香族アミンから選択される多官能芳香族アミンAに由来する構造と、多官能芳香族アミンAとは異なる多官能芳香族アミンである多官能芳香族アミンBに由来する構造を含むことがより好ましい。
多官能芳香族アミンBとしては、例えば、5-ホスホ-1,3-フェニレンジアミン、5-ホスホノ-1,3-フェニレンジアミン、4-ホスホ-1,3-フェニレンジアミン、4-ホスホノ-1,3-フェニレンジアミン、2-ホスホ-1,4-フェニレンジアミン、2-ホスホノ-1,4-フェニレンジアミン、5-ホスホメチル-1,3-フェニレンジアミン、5-ホスホノメチル-1,3-フェニレンジアミン、4-ホスホメチル-1,3-フェニレンジアミン、4-ホスホノメチル-1,3-フェニレンジアミン、2-ホスホメチル-1,4-フェニレンジアミン、2-ホスホノメチル-1,4-フェニレンジアミン、5-ホスホエチル-1,3-フェニレンジアミン、5-ホスホノエチル-1,3-フェニレンジアミン、4-ホスホエチル-1,3-フェニレンジアミン、4-ホスホノエチル-1,3-フェニレンジアミン、2-ホスホエチル-1,4-フェニレンジアミン、2-ホスホノエチル-1,4-フェニレンジアミン、5-ホスホプロピル-1,3-フェニレンジアミン、5-ホスホノプロピル-1,3-フェニレンジアミン、4-ホスホプロピル-1,3-フェニレンジアミン、4-ホスホノプロピル-1,3-フェニレンジアミン、2-ホスホプロピル-1,4-フェニレンジアミン、2-ホスホノプロピル-1,4-フェニレンジアミンなどが挙げられる。中でも、アミノ基周囲の立体障害が小さく、モノマーの反応性が比較的高いという観点から、5-ホスホノ-1,3-フェニレンジアミン、5-ホスホノエチル-1,3-フェニレンジアミン、5-ホスホ-1,3-フェニレンジアミン、又は5-ホスホエチル-1,3-フェニレンジアミンが好ましい。
多官能芳香族アミンAがm-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼンから選択される少なくとも一種であり、多官能芳香族アミンBが5-ホスホノ-1,3-フェニレンジアミン、5-ホスホノエチル-1,3-フェニレンジアミン、5-ホスホ-1,3-フェニレンジアミン、又は5-ホスホエチル-1,3-フェニレンジアミンから選択される少なくとも一種であることが好ましい。
多官能芳香族酸ハロゲン化物とは、一分子中に少なくとも2個のハロゲン化カルボニル基を有する芳香族酸ハロゲン化物をいう。例えば、3官能酸ハロゲン化物では、トリメシン酸クロリドなどを挙げることができ、2官能酸ハロゲン化物では、ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリドなどを挙げることができる。多官能芳香族アミンとの反応性を考慮すると、多官能芳香族酸ハロゲン化物は多官能芳香族酸塩化物であることが好ましく、また、複合半透膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2~4個の塩化カルボニル基を有する多官能芳香族酸塩化物であることが好ましい。
2.複合半透膜の製造方法
次に、上記複合半透膜の製造方法について説明する。複合半透膜は、基材上に微多孔性支持層を形成する工程、および微多孔性支持層の上に分離機能層を形成する工程を含む。
(2-1)微多孔性支持層の形成
基材および微多孔性支持層としては、ミリポア社製”ミリポアフィルターVSWP”(商品名)、および東洋濾紙社製”ウルトラフィルターUK10”(商品名)のような各種市販膜から適切な膜を選択することもできる。
また、”オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って製造することができる。その他、微多孔性支持層の形成方法として公知の方法が好適に使用される。
(2-2)分離機能層の製造方法
次に複合半透膜を構成する分離機能層の形成工程を説明する。
分離機能層の形成工程は、
(a)多官能芳香族アミンを含有する水溶液を微多孔性支持層上に接触させる工程と、
(b)多官能芳香族アミンを含有する水溶液を接触させた微多孔性支持層に多官能芳香族酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液を接触させる工程と、
(c)多官能芳香族酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液を接触させた微多孔性支持層を加熱する工程と、
(d)有機溶媒溶液を液切りした複合半透膜を熱水で洗浄する工程
を有することが好ましい。
微多孔性支持層、多官能芳香族アミン及び多官能芳香族酸ハロゲン化物としては、上述のものを挙げることができ、好ましいものも同様である。
工程(a)において、多官能芳香族アミン水溶液における多官能芳香族アミンの濃度は0.1質量%以上20質量%以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下の範囲内である。多官能芳香族アミンの濃度がこの範囲であると十分な溶質除去性能および透水性を得ることができる。
多官能芳香族アミンは、2種以上を用いることが好ましく、上記多官能芳香族アミンA及び上記多官能芳香族アミンBを含むことがより好ましい。
多官能芳香族アミン水溶液における多官能芳香族アミンA及び上記多官能芳香族アミンBの含有比(質量比)は、各多官能芳香族アミンの分子量や、重合時における各多官能芳香族アミンの重合場への拡散のしやすさ、各多官能芳香族アミンが関与する反応の速度などに依存して異なるが、一般的な例としては、多官能芳香族アミンA:上記多官能芳香族アミンBが1:0.3~1:1であることが好ましい。
多官能芳香族アミン水溶液には、多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸ハロゲン化物との反応を妨害しないものであれば、界面活性剤や有機溶媒、アルカリ性化合物、酸化防止剤などが含まれていてもよい。界面活性剤は、支持膜表面の濡れ性を向上させ、多官能芳香族アミン水溶液と非極性溶媒との間の界面張力を減少させる効果がある。有機溶媒は界面重縮合反応の触媒として働くことがあり、添加することにより界面重縮合反応を効率よく行える場合がある。
多官能芳香族アミン水溶液の接触は、微多孔性支持層上に均一にかつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、例えば、多官能芳香族アミン水溶液を微多孔性支持層にコーティングする方法や、微多孔性支持層を多官能芳香族アミン水溶液に浸漬する方法を挙げることができる。微多孔性支持層と多官能アミン水溶液との接触時間は、1秒以上10分間以下であることが好ましく、10秒以上3分間以下であるとさらに好ましい。
多官能アミン水溶液を微多孔性支持層に接触させた後は、膜上に液滴が残らないように十分に液切りする。十分に液切りすることで、微多孔性支持層形成後に液滴残存部分が膜欠点となって除去性能が低下することを防ぐことができる。液切りの方法としては、例えば、特開平2-78428号公報に記載されているように、多官能アミン水溶液接触後の支持膜を垂直方向に把持して過剰の水溶液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの気流を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させて水溶液の水分を一部除去することもできる。
工程(b)において、有機溶媒溶液中の多官能酸ハロゲン化物の濃度は、0.01質量%以上10質量%以下の範囲内であると好ましく、0.02質量%以上2.0質量%以下の範囲内であるとさらに好ましい。0.01質量%以上とすることで十分な反応速度が得られ、また、10質量%以下とすることで副反応の発生を抑制することができるためである。さらに、この有機溶媒溶液にアシル化触媒を含有させると、界面重縮合が促進され、さらに好ましい。
有機溶媒は、水と非混和性であり、かつ多官能酸ハロゲン化物を溶解し、支持膜を破壊しないものが望ましく、多官能アミン化合物および多官能酸ハロゲン化物に対して不活性であるものであればよい。好ましい例として、n-ヘキサン、n-オクタン、n-デカン、イソオクタンなどの炭化水素化合物が挙げられる。
多官能芳香族酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液の、多官能芳香族アミン水溶液と接触させた微多孔性支持層への接触の方法は、多官能芳香族アミン水溶液の微多孔性支持層への被覆方法と同様に行えばよい。
工程(c)において、多官能芳香族酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液を接触させた微多孔性支持層を加熱することが好ましい。加熱処理する温度としては、例えば、好ましくは50℃以上180℃以下、より好ましくは60℃以上160℃以下である。高密度なポリアミド機能層を得るためには、80℃以上160℃以下がさらに好ましい。加熱する時間は反応場である膜面の温度によって最適な時間が異なるが、10秒以上が好ましく、20秒以上がより好ましい。
工程(d)において、有機溶媒を除去した複合半透膜を熱水で洗浄することが好ましい。熱水の温度は40~95℃が好ましく、60~95℃がより好ましい。熱水の温度が40℃以上であることで、膜中に残存する未反応物やオリゴマーを十分に除去することができる。一方、熱水の温度が95℃以下であることで、複合半透膜の収縮度が大きくならず、良好な透過性能を維持することができる。なお、熱水の温度の好ましい範囲は、用いる多官能芳香族アミンや多官能芳香族酸ハロゲン化物の種類や使用量によって適宜調整することができる。
また、必要に応じて、複合半透膜をさらに洗浄してもよい。洗浄方法としては、例えば、複合半透膜表面にラジカルを接触させる方法が挙げられる。ラジカルとしては、例えば、ヒドロキシラジカル、ヒドロペルオキシラジカル、ペルオキシラジカル、アルコキシラジカル、チイルラジカル、亜硫酸ラジカルが挙げられる。中でも、ラジカルの強度、濃度の制御しやすさの点で、亜硫酸ラジカルが好ましい。また、架橋芳香族ポリアミドの芳香族環と反応し、化学的な劣化を引き起こす塩素ラジカルや過硫酸ラジカルは好ましくない。複合半透膜表面にラジカルを接触させることで、膜中に残存する未反応物やオリゴマーをさらに除去することができるとともに、薄膜の厚みを整えることもできる。なお、ラジカルの強度、濃度、温度、pH等の好ましい範囲は、用いるラジカルの活性によって適宜調整することができる。
3.複合半透膜の利用
本発明の複合半透膜は、プラスチックネットなどの供給水流路材と、トリコットなどの透過水流路材と、必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿設した筒状の集水管の周りに巻回され、スパイラル型の複合半透膜エレメントとして好適に用いられる。さらに、このエレメントを直列または並列に接続して圧力容器に収納した複合半透膜モジュールとすることもできる。
また、上記の複合半透膜やそのエレメント、モジュールは、それらに供給水を供給するポンプや、その供給水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、供給水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
本発明に係る複合半透膜によって処理される供給水としては、海水、かん水、排水等の500mg/L以上100g/L以下のTDS(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物が挙げられる。一般に、TDSは総溶解固形分量を指し、「質量÷体積」あるいは「質量比」で表される。定義によれば、0.45ミクロンのフィルターで濾過した溶液を39.5℃以上40.5℃以下の温度で蒸発させ残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分(S)から換算する。
流体分離装置の操作圧力は高い方が溶質除去率は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、複合半透膜の耐久性を考慮すると、複合半透膜に被処理水を透過する際の操作圧力は、0.5MPa以上、10MPa以下が好ましい。供給水温度は、低くなると膜透過流束が減少するので、5℃以上が好ましい。また、温度が高くなると溶質除去率が低下するので、28℃以下が好ましい。また、供給水pHが高くなると、海水などの高溶質濃度の供給水の場合、マグネシウムなどのスケールが発生する恐れがあり、また、高pH運転による膜の劣化が懸念されるため、中性領域での運転が好ましい。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
実施例、比較例における官能基・組成の解析、水の残存率は以下のように測定した。以下、特段の記述がない場合は、25℃で操作を行った。
(置換基Lの含有量)
置換基Lの含有量は、膜サンプルの全リン分析によるリンの含有量と、全窒素分析による窒素の含有量の比をとることにより実施した。複合半透膜を3cm×3cm角に切り出し、25℃の蒸留水で24時間洗浄した。サンプルを短冊状に切り出し、硝酸を加えて加熱濃縮し、さらに過塩素酸を加えながら加熱還流した。抽出物を希釈した後水酸化ナトリウム水溶液で中和し、蒸留水を加えて全量を50mLとした。この溶液に対し、七モリブデン酸六アンモニウム、タルトラトアンチモン(III)酸カリウム、L-(+)アスコルビン酸の水溶液をこの順に加え、生成したモリブデン青の吸光度から、リン酸イオンを定量した。この定量値を、全リン濃度(Amol/m)に変換した。Aの値により、置換基Lの含有量を評価した。
(複合半透膜の厚みTの平均値)
複合半透膜を3cm×3cm角に切り出し、25℃の蒸留水で24時間洗浄した。洗浄後の複合半透膜をエポキシ樹脂で包埋した後、四酸化オスミウムで染色して測定サンプルとした。得られたサンプルを、複合半透膜断面を観察面として、走査型透過電子顕微鏡(日立製作所製;HD2700)観察した。倍率100万倍での取得画像を用いて、複合半透膜外部表面上のある点から内部表面への最短距離を複合半透膜の厚みTとした。無作為に選択した10個の凸部について、凸部1個に対し5箇所の点の解析を行い、それらの平均値を複合半透膜の厚みの平均値(nm)とした。
(窒素原子面密度)
複合半透膜を10cm×10cm角に切り出し、25℃の蒸留水で24時間洗浄した。洗浄後の複合半透膜を、分離機能層を測定面として、RBS(National Electrostatics Corporation製;Pelletron 3SDH)測定し、窒素原子面密度(個/m)を算出した。具体的な測定条件は以下のとおりとした。
測定モード : RBS単独測定
入射イオン : He2+
入射エネルギー : 2300keV
入射角 : 0°
散乱角 : 160°
試料電流 : 4nA
ビーム径 : 2mmφ
照射量 : 0.8μC×126点=100.8μC
(ゼータ電位)
複合半透膜を10cm×10cm角に切り出し、蒸留水で洗浄した。洗浄後の複合半透膜を平板試料用セルにセットし、分離機能層を測定面として、電気泳動光散乱光度計(大塚電子製;ELS-8000)により測定し、分離機能層のpH3におけるゼータ電位を得た。測定箇所を無作為に5点選択し、それらの平均をゼータ電位(mV)とした。具体的な測定条件は以下の通りとした。
モニター粒子:ポリスチレンラテックス(ヒドロキシプロピルセルロースコート)
測定液 : NaCl水溶液(10mM)
pH : 3
温度 : 25℃
光源 : He-Neレーザー
(重量平均分子量)
PSfの重量平均分子量(ポリスチレン換算)を、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー製;HLC-8022)を用いて測定した。具体的な測定条件は以下のとおりとした。
カラム : TSK gel SuperHM-H(東ソー製;内径6.0mm、長さ15cm)2本
溶離液 : LiBr/N-メチルピロリドン溶液(10mM)
サンプル濃度:0.1質量%
流量 : 0.5mL/min
温度 : 40℃
(NaCl除去率)
複合半透膜に対し、NaCl濃度35,000ppm、ホウ素濃度5ppm、25℃、pH7に調製した評価水を操作圧力5.5MPaで供給して、膜ろ過試験を行なった。評価水及び透過水の電気伝導度をマルチ水質計(東亜ディーケーケー製;MM-60R)により測定し、それぞれのNaCl濃度(実用塩分)を得た。こうして得られたNaCl濃度から、下記式3に基づいて、NaCl除去率(%)を算出した。
NaCl除去率(%)=100×{1-(透過水中のNaCl濃度/評価水中のNaCl濃度)} ・・・(式3)
(ホウ素除去率)
「NaCl除去率」の膜ろ過試験において、評価水及び透過水中のホウ素濃度をICP発光分析装置(アジレント・テクノロジー製;Agilent 5110)により測定し、下記式4に基づいて、ホウ素除去率(%)を算出した。
ホウ素除去率(%)=100×{1-(透過水中のホウ素濃度/評価水中のホウ素濃度)} ・・・(式4)
(膜透過流束)
「NaCl除去率」の膜ろ過試験において、透過水量(m)を測定し、単位膜面積(m)及び単位時間(日)当たりの数値に換算し、膜透過流束(m/m/日)とした。
実施例及び比較例で用いた複合半透膜の原料を、以下にまとめる。
PSf(ソルベイスペシャルティポリマーズ製;Udel P-3500、M80000)
DMF(富士フイルム和光純薬製)
ポリエステル長繊維不織布(厚み90μm、密度0.42g/cm
m-PDA(富士フイルム和光純薬製)
TMC(富士フイルム和光純薬製)
デカン(富士フイルム和光純薬製)
亜硫酸水素ナトリウム(富士フイルム和光純薬製)
5-ホスホノ-1,3-フェニレンジアミン(合成)
5-ホスホノエチル-1,3-フェニレンジアミン(合成)
5-ホスホ-1,3-フェニレンジアミン(合成)
5-ホスホエチル-1,3-フェニレンジアミン(合成)
(支持膜の作製)
ポリエステル不織布(通気量2.0cc/cm/sec)上にポリスルホン(PSf)の16.0質量%DMF溶液を200μmの厚みでキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって支持膜を作製した。
(比較例1)
上述の操作で得られた支持膜を、多官能芳香族アミン水溶液として、m-フェニレンジアミンの3.0質量%水溶液中に2分浸漬し、該支持膜を垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付けることで、支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。40℃に制御した環境で、TMC0.18質量%を含む40℃のデカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布して1分静置し、その後、支持膜を垂直にして余分な溶液を液切りして取り除いた。こうして、支持膜上に架橋芳香族ポリアミドを含有する層を形成し、複合半透膜を得た。最後に、複合半透膜を80℃の熱水で2分洗浄した。
(比較例2)
上述の操作で得られた支持膜を、多官能芳香族アミン水溶液として、m-フェニレンジアミンの3.0質量%水溶液中に2分浸漬し、該支持膜を垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付けることで、支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。45℃に制御した環境で、TMC0.2質量%を含む45℃のデカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布して10秒静置した後、120℃のオーブンで10分加熱し、その後、支持膜を垂直にして余分な溶液を液切りして取り除いた。こうして、支持膜上に架橋芳香族ポリアミドを含有する層を形成し、複合半透膜を得た。その後、複合半透膜を80℃の熱水で2分洗浄した。さらに、亜硫酸水素ナトリウム水溶液に酸素をバブリングすることによって1.0×10-3mol/Lの亜硫酸ラジカルを含む25℃、pH3の水溶液を調製し、複合半透膜を1時間浸漬した。最後に、25℃のイソプロピルアルコール10質量%水溶液に1時間浸漬した後、25℃の蒸留水に1時間浸漬した。
(実施例1)
多官能芳香族アミン水溶液として、m-フェニレンジアミン2.5質量%と5-ホスホノ-1,3-フェニレンジアミン1.2質量%の混合水溶液を用いた以外は比較例1と同様にして、実施例1における複合半透膜を得た。
(実施例2)
多官能芳香族アミン水溶液として、m-フェニレンジアミン2.5質量%と5-ホスホノ-1,3-フェニレンジアミン1.2質量%の混合水溶液を用いた以外は比較例2と同様にして、実施例2における複合半透膜を得た。
(実施例3)
多官能芳香族アミン水溶液として、m-フェニレンジアミン2.5質量%と5-ホスホノエチル-1,3-フェニレンジアミン1.4質量%の混合水溶液を用いた以外は比較例1と同様にして、実施例3における複合半透膜を得た。
(実施例4)
多官能芳香族アミン水溶液として、m-フェニレンジアミン2.5質量%と5-ホスホノエチル-1,3-フェニレンジアミン1.4質量%の混合水溶液を用いた以外は比較例2と同様にして、実施例4における複合半透膜を得た。
(実施例5)
多官能芳香族アミン水溶液として、m-フェニレンジアミン2.5質量%と5-ホスホ-1,3-フェニレンジアミン1.3質量%の混合水溶液を用いた以外は比較例1と同様にして、実施例5における複合半透膜を得た。
(実施例6)
多官能芳香族アミン水溶液として、m-フェニレンジアミン2.5質量%と5-ホスホ-1,3-フェニレンジアミン1.3質量%の混合水溶液を用いた以外は比較例2と同様にして、実施例6における複合半透膜を得た。
(実施例7)
多官能芳香族アミン水溶液として、m-フェニレンジアミン2.5質量%と5-ホスホエチル-1,3-フェニレンジアミン1.5質量%の混合水溶液を用いた以外は比較例1と同様にして、実施例7における複合半透膜を得た。
(実施例8)
多官能芳香族アミン水溶液として、m-フェニレンジアミン2.5質量%と5-ホスホエチル-1,3-フェニレンジアミン1.5質量%の混合水溶液を用いた以外は比較例2と同様にして、実施例8における複合半透膜を得た。
以上の膜の構造および性能を表1および表2に示す。実施例に示すように、本発明の複合半透膜は、高い造水量と塩除去率を示し、優れた分離性能と透水性能とを両立することが分かる。
Figure 2022184042000010
Figure 2022184042000011
本発明の複合半透膜は、海水、かん水、排水等の脱塩に好適に用いることができる。
1 複合半透膜
2 基材
3 微多孔性支持層
4 分離機能層
41 薄膜
42 凸部
43 凹部
T 薄膜の厚み

Claims (7)

  1. 微多孔性支持層と、前記微多孔性支持層上に設けられた分離機能層とを有する複合半透膜であって、
    前記分離機能層が架橋芳香族ポリアミドを含有し、
    前記架橋芳香族ポリアミドが下記一般式(1)で表される部分構造を有する複合半透膜。
    Figure 2022184042000012
    (R~Rは水素原子、または炭素数が1~10の脂肪族鎖であり、Ar~Arは置換基を有していてもよい炭素数6~14の芳香族環であり、Ar~Arの少なくとも1つは、下記構造(2)で表される置換基Lを有する。)
    Figure 2022184042000013
    (Xは酸素原子もしくは炭素数1~3のアルキレン鎖、または単結合であり、Y~Yはそれぞれ独立にO、OH、またはOであり、YまたはYは原子を含まなくてもよい。また、構造(2)中の
    Figure 2022184042000014
    は単結合または二重結合を表す。)
  2. 前記分離機能層は、ひだ状の薄膜を有し、
    前記薄膜の厚みの平均値が10~20nmであり、
    ラザフォード後方散乱分光法(RBS)で測定される前記分離機能層の窒素原子面密度が4.0×1020~1.2×1021個/mである、
    請求項1に記載の複合半透膜。
  3. 前記構造(2)のXが酸素原子または単結合である、
    請求項1または2に記載の複合半透膜。
  4. 前記構造(2)のXが単結合である、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の複合半透膜。
  5. 前記架橋芳香族ポリアミドが、2種以上の多官能芳香族アミンに由来する構造を含む、
    請求項1~4に記載のいずれか一項に記載の複合半透膜。
  6. 前記分離機能層中に置換基Lを8.6×10-7mоl/m以上6.2×10-4mоl/m以下含む、
    請求項1~5のいずれか一項に記載の複合半透膜。
  7. 前記分離機能層のpH3におけるゼータ電位が-5mV以下である、
    請求項1~6のいずれか一項に記載の複合半透膜。
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