JP2017213501A - 複合半透膜および複合半透膜の製造方法 - Google Patents

複合半透膜および複合半透膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】実用に耐える透水性と除去性を両立し、高圧で運転停止が繰り返される運転下でも透水性を維持できる複合半透膜を提供すること。【解決手段】基材と、前記基材上に多孔質支持層を有し、前記多孔質支持層上に分離機能層を備えた複合半透膜であって、前記分離機能層は、ポリアミドを80%以上有し、かつ前記分離機能層は、複数の凸部と凹部とを備えるひだ構造を有し、かつ前記分離機能層の任意の20箇所において原子間力顕微鏡を用いたフォースカーブ測定法により、25℃の純水中で5.0nNの力で押し込んだ際の変形量の平均値が4.0nm以下であり、かつ前記変形量の標準偏差が1.0nm以上である複合半透膜。【選択図】図1

Description

本発明は、液状混合物の選択的分離に有用な複合半透膜および複合半透膜の製造方法に関する。
混合物の分離に関して、溶媒(例えば水)に溶解した物質(例えば塩類)を除くための技術には種々報告されているが、近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして膜分離法の利用が拡大している。膜分離法に使用される膜には、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがあり、これらの膜は、例えば海水、かん水、有害物を含んだ水などから飲料水を得る場合や、工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収などに用いられている。
現在市販されている逆浸透膜およびナノろ過膜の大部分は複合半透膜であり、多孔性支持層上にゲル層とポリマーを架橋した活性層を有するものと、多孔性支持層上でモノマーを重縮合して得られた活性層を有するものとの2種類がある。後者のうち、多孔質支持層上に多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸ハロゲン化物を重縮合反応させ得られる分離機能層を有す複合半透膜は、透過性や選択分離性の高い分離膜として広く用いられている(特許文献1)。
一般に複合半透膜を用いた膜分離プロセスは以下に示す逆浸透現象を利用するものが主流である。半透膜で隔てた2つの溶液間において、溶媒が溶質の濃度が高い溶液から低い溶液と半透膜を通じて移動する現象は浸透現象と呼ばれ、このとき溶媒の移動によって溶質濃度の高い溶液側に作用する圧力が浸透圧である。ここで浸透圧より高い外部圧力を加えると、溶媒が溶質濃度の低い溶液側に移動する。本現象は逆浸透現象と呼ばれ、今日の海水淡水化プロセスでは、原水側に外部圧力をかけ逆浸透現象を利用し溶質を原水から分離し、溶質濃度の低い透過水を得ている。
日本国特開平5−76740号公報
実用的な複合半透膜に要求される透水性や溶質除去性を持ち、さらに高圧運転下で長時間運転による透水性能の低下を抑制することが本発明の目的である。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。
(1)基材と、前記基材上に多孔質支持層を有し、前記多孔質支持層上に分離機能層を備えた複合半透膜であって、前記分離機能層は、ポリアミドを80%以上有し、かつ前記分離機能層は、複数の凸部と凹部とを備えるひだ構造を有し、かつ前記分離機能層の任意の20箇所において原子間力顕微鏡を用いたフォースカーブ測定法により、25℃の純水中で5.0nNの力で押し込んだ際の変形量の平均値が4.0nm以下であり、かつ前記変形量の標準偏差が1.0nm以上である複合半透膜。
(2)前記変形量の最大値が5.0nm以下である(1)に記載の複合半透膜。
(3)前記変形量の標準偏差が2.0nm以上の(1)に記載の複合半透膜。
(4)原子間力顕微鏡を用いて20μm×20μmの領域を測定したとき分離機能層の10点平均面粗さが50nm以上である(1)〜(3)のいずれかに記載の複合半透膜。
(5)(1)に記載の複合半透膜であって、前記ポリアミドが架橋全芳香族ポリアミドである複合半透膜。
本発明の複合半透膜は、分離機能層が変形に富む柔軟な部位と形態を維持できる強固な部位とのモザイク構造を有することで機械強度と弾力性を付与し、運転開始時などに瞬間的に高圧がかかることによる透水性の低下を抑え、膜性能の維持を可能とする。
図1は、分離機能層の凸部高さの測定方法を模式的に示す図面である。 図2は、分離機能層の凸部の変形量の測定方法を模式的に示す図面である。
1.複合半透膜
本発明に係る複合半透膜は、基材と前記基材上に形成された多孔性支持層とを含む支持膜と、前記多孔性支持層上に形成される分離機能層とを備える。前記分離機能層は実質的に分離性能を有するものであり、前記支持膜は実質的にイオン等の分離性能を有さず、前記分離機能層に強度を与えることができる。
(1−1)基材
基材としては、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリオレフィン系重合体、あるいはこれらの混合物や共重合体等が挙げられる。中でも、機械的、熱的に安定性の高いポリエステル系重合体の布帛が特に好ましい。布帛の形態としては、長繊維不織布や短繊維不織布、さらには織編物を好ましく用いることができる。ここで、長繊維不織布とは、平均繊維長300mm以上、かつ平均繊維径3〜30μmの不織布のことを指す。
基材は、通気量が0.5cc/cm/sec以上5.0cc/cm/secであることが好ましい。基材の通気量が上記範囲内にあることにより、多孔性支持層をとなる高分子溶液が基材に含浸するため、基材との接着性が向上し、微多孔性支持膜の物理的安定性を高めることができる。
基材の厚みは10〜200μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは30〜120μmの範囲内である。なお、本書において、特に付記しない限り、厚みとは、平均値を意味する。ここで平均値とは相加平均値を表す。すなわち、基材の厚みは、断面観察で厚み方向に直交する方向(膜の面方向)に20μm間隔で測定した20点の厚みの平均値を算出することで求められる。また、基材の厚みは、デジタルシックネスゲージによっても測定することができる。デジタルシックネスゲージとしては、尾崎製作所株式会社のPEACOCKなどが使用できる。デジタルシックネスゲージを用いる場合は、20箇所について厚みを測定して平均値を算出する。
(1−2)多孔性支持層
本発明において多孔性支持層は、実質的にイオン等の分離性能を有さず、実質的に分離性能を有する分離機能層に強度を与えるためのものである。多孔性支持層の孔のサイズや分布は特に限定されないが、例えば、均一で微細な孔、あるいは分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもち、かつ、分離機能層が形成される側の表面で微細孔の大きさが0.1nm以上100nm以下であるような多孔性支持層が好ましいが、使用する材料やその形状は特に限定されない。
多孔性支持層の素材には、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシドなどのホモポリマーあるいはコポリマーを単独であるいはブレンドして使用することができる。ここでセルロース系ポリマーとしては酢酸セルロース、硝酸セルロースなど、ビニルポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが使用できる。中でもポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどのホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。より好ましくは酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、またはポリフェニレンスルホンが挙げられ、さらに、これらの素材の中では化学的、機械的、熱的に安定性が高く、成型が容易であることからポリスルホンが一般的に使用できる。
具体的には、次の化学式に示す繰り返し単位からなるポリスルホンを用いると、多孔性支持層の孔径が制御しやすく、寸法安定性が高いため好ましい。
Figure 2017213501
ポリスルホンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)でN−メチルピロリドンを溶媒に、ポリスチレンを標準物質として測定した場合の重量平均分子量(Mw)が、10000以上200000以下であることが好ましく、より好ましくは15000以上100000以下である。Mwが10000以上であることで、多孔性支持層として好ましい機械的強度および耐熱性を得ることができる。また、Mwが200000以下であることで、溶液の粘度が適切な範囲となり、良好な成形性を実現することができる。
例えば、上記ポリスルホンのN,N−ジメチルホルムアミド(以降、DMFと記載)溶液を、密に織ったポリエステル布あるいは不織布の上に一定の厚さに注型し、それを水中で湿式凝固させることによって、表面の大部分が直径数10nm以下の微細な孔を有する多孔性支持層を得ることができる。
基材と多孔性支持層の厚みは、複合半透膜の強度およびそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。十分な機械的強度および充填密度を得るためには、基材と多孔性支持層の厚みの合計が、30μm以上300μm以下であることが好ましく、100μm以上220μm以下であるとより好ましい。また、多孔性支持層の厚みは、20μm以上100μm以下であることが好ましい。多孔性支持層の厚みは、基材と同様に断面観察で厚み方向に直交する方向(膜の面方向)に20μm間隔で測定した、20点の厚みの平均値を算出することで求められる。また、多孔性支持層の厚みは、デジタルシックネスゲージによっても測定することができる。分離機能層の厚みは多孔性支持層と比較して非常に薄いので、複合半透膜の厚みを基材と多孔性支持層の厚みとみなすことができる。従って、複合半透膜の厚みをデジタルシックネスゲージで測定し、複合半透膜の厚みから基材の厚みを引くことで、多孔性支持層の厚みを簡易的に算出することができる。デジタルシックネスゲージとしては、尾崎製作所株式会社のPEACOCKなどが使用できる。デジタルシックネスゲージを用いる場合は、20箇所について厚みを測定して平均値を算出する。
本発明に使用する多孔性支持層は、ミリポア社製”ミリポアフィルターVSWP”(商品名)や、東洋濾紙社製”ウルトラフィルターUK10”(商品名)のような各種市販材料から選択することもできるが、”オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って製造することができる。
(1−3)分離機能層
分離機能層は、多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸ハロゲン化物との重縮合反応で得られたポリアミドを主成分とする。言い換えると、分離機能層は、架橋全芳香族ポリアミドを主成分として含有する。主成分とは分離機能層の成分のうち、50%以上を占める成分を指す。分離機能層が架橋全芳香族ポリアミドを50%以上含むことにより、高性能な膜性能を発現しやすい。さらには、分離機能層は80%以上がポリアミドであると分離機能層の親水性が向上し透水性の高い膜となる。
また、架橋全芳香族ポリアミドは、多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸ハロゲン化物との界面重縮合により形成することができる。
ここで、多官能芳香族アミン及び多官能芳香族酸ハロゲン化物の少なくとも一方が3官能以上の化合物を含んでいることが好ましい。また、分離機能層の厚みは、十分な分離性能および透過水量を得るために、通常0.01〜1μmの範囲内、好ましくは0.1〜0.5μmの範囲内である。本発明における分離機能層を、以下、ポリアミド分離機能層とも記載する。
多官能芳香族アミンとは、一分子中に第一級アミノ基及び第二級アミノ基のうち少なくとも一方のアミノ基を2個以上有し、かつ、アミノ基のうち少なくとも1つは第一級アミノ基である芳香族アミンを意味する。例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、o−ジアミノピリジン、m−ジアミノピリジン、p−ジアミノピリジン等の2個のアミノ基がオルト位やメタ位、パラ位のいずれかの位置関係で芳香環に結合した多官能芳香族アミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミンなどの多官能芳香族アミンなどが挙げられる。中でも、膜の選択分離性や透過性、耐熱性を考慮すると、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼンが好適に用いられる。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさから、m−フェニレンジアミン(以下、m−PDAとも記す)を用いることがより好ましい。これらの多官能芳香族アミンは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
多官能芳香族酸ハロゲン化物とは、一分子中に少なくとも2個のハロゲン化カルボニル基を有する芳香族酸ハロゲン化物をいう。例えば、3官能酸ハロゲン化物では、トリメシン酸クロリドなどを挙げることができ、2官能酸ハロゲン化物では、ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリドなどを挙げることができる。多官能芳香族アミンとの反応性を考慮すると、多官能芳香族酸ハロゲン化物は多官能芳香族酸塩化物であることが好ましく、また、膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の塩化カルボニル基を有する多官能芳香族酸塩化物であることが好ましい。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさの観点から、トリメシン酸クロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリドを用いるとより好ましい。これらの多官能芳香族酸ハロゲン化物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
分離機能層において、凹部と凸部とを有するひだ構造が形成される。より具体的には、ひだ構造においては、凹部と凸部が繰り返される。
本発明における分離機能層の凸部とは、10点平均面粗さの5分の1以上の高さの凸部のことを言う。10点平均面粗さとは、次のような算出方法で得られる値である。まず電子顕微鏡により、膜面に垂直な方向の断面を下記の倍率で観察する。得られた断面画像には、分離機能層(図1に符号“1”で示す。)の表面が凸部と凹部が連続的に繰り返される、ひだ構造の曲線として表れる。この曲線について、ISO4287:1997に基づき定義される粗さ曲線を求める。上記粗さ曲線の平均線の方向に2.0μmの幅で断面画像を抜き取る(図1)。
なお、平均線とは、ISO4287:1997に基づき定義される直線であり、測定長さにおいて、平均線と粗さ曲線とで囲まれる領域の面積の合計が平均線の上下で等しくなるように描かれる直線である。
抜き取った幅2.0μmの画像において、上記平均線を基準線として、分離機能層における凸部の高さと、凹部の深さをそれぞれ測定する。最も高い凸部から徐々に高さが低くなって5番目の高さまでの5つの凸部の高さH1〜H5の絶対値について平均値を算出し、最も深い凹部から徐々に深さが浅くなって5番目の深さまでの5つの凹部の深さD1〜D5の絶対値について平均値を算出して、さらに、得られた2つの平均値の絶対値の和を算出する。こうして得られた和が、10点平均面粗さである。
分離機能層の変形量(Deformation)は、原子間力顕微鏡(AFM)のタッピングモードで測定することができる。具体的には、図2に示すように、横軸にチップ−サンプル間距離(Separation)、縦軸に荷重をとったフォースカーブ上において、カンチレバーをサンプルに近付ける前の点をA点、荷重が立ち上がる瞬間をB点、荷重が最大荷重の90%となる点をC点、最大荷重点をD点としたとき、CD間の距離を変形量とした。なお、フォースカーブは、カンチレバーをサンプルに近付けるときのものを使用した。
原子間力顕微鏡はBruker AXS社製Dimension FastScanを用いることができる。付属のアタッチメントを利用することで、水中での観察が可能である。また、その際、使用するカンチレバーの探針の形状は、円錐形(ピラミッド型)のものを用いる。カンチレバーを使用する前には、必ず校正(Calibration)を行う。まず、十分な硬度を有する物質でカンチレバーの反り感度(Deflection Sensitivity)を測定する。十分な硬度を有する物質としては、シリコンウェハーやサファイヤを用いることができる。次に、熱振動(Thermal Tune)でカンチレバーのバネ定数を測定する。校正を行うことで、測定の精度が向上する。
本発明における分離機能層は、上記の測定方法で、分離機能層の任意の20箇所において、25℃の純水中で5.0nNの力で押し込んだ際の変形量の平均値を算出すると、平均値は4.0nm以下である。平均値とは、相加平均値である。変形量の平均値を4.0nm以下とすることで、高圧運転時に分離機能層の圧密化による影響を受けにくくなり、透水性の低下を抑制できる。前記変形量の標準偏差を算出すると、分離機能層の機械強度と弾力性を両立するには1.0nm以上であること、さらには、2.0nm以上であることがより好ましい。また、分離機能層の機械強度が局所的に低下することを防ぐため、前記変形量の最大値が5.0nm以下であることが好ましい。
分離機能層の20μm四方の領域における10点平均面粗さは、分離機能層の表面積を十分に大きく確保し、高い透水性を発現するために、50nm以上であることが好ましい。
2.複合半透膜の製造方法
次に、上記複合半透膜の製造方法について説明する。
(2−1)概要
複合半透膜の製造方法は、基材と多孔性支持層とを有する膜の上で、分離機能層を形成する工程を少なくとも備える。また、複合半透膜の製造方法は、基材上に多孔性支持層を形成する工程、基材を製造する工程、分離機能層を形成後に後処理を行う工程などを備えてもよい。
(2−2)分離機能層の形成工程
複合半透膜を構成する分離機能層の形成工程を説明する。分離機能層の形成工程は、
(a)多官能芳香族アミンを含有する水溶液を多孔性支持層上に接触させる工程と、
(b)多官能性芳香族酸ハロゲン化物を含有する有機溶液に予め少量の多官能性芳香族アミンを添加する工程と、
(c)多官能芳香族アミンを含有する水溶液を接触させた多孔性支持層に先の工程で得たプレ重合体を含有する有機溶媒溶液を接触させる工程と、
(d)上記工程(c)の後で、有機溶媒溶液を液切りする工程、を有する。
工程(a)において、多官能芳香族アミン水溶液における多官能芳香族アミンの濃度は0.1重量%以上12重量%以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以上8重量%以下の範囲内である。多官能芳香族アミンの濃度がこの範囲であると十分な溶質除去性および透水性を得ることができる。多官能芳香族アミン水溶液には、多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸ハロゲン化物との反応を妨害しないものであれば、有機溶媒、アルカリ性化合物、酸化防止剤などが含まれていてもよい。有機溶媒は界面重縮合反応の触媒として働くことがあり、添加することにより界面重縮合反応を効率よく行える場合がある。
多官能芳香族アミン水溶液の接触は、多孔性支持層上に均一にかつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、例えば、多官能芳香族アミン水溶液を多孔性支持層にコーティングする方法や、多孔性支持層を多官能芳香族アミン水溶液に浸漬する方法を挙げることができる。多孔性支持層と多官能アミン水溶液との接触時間は、1秒以上10分間以下であることが好ましく、10秒以上3分間以下であるとさらに好ましい。
多官能芳香族アミン水溶液を多孔性支持層に接触させた後は、膜上に液滴が残らないように十分に液切りする。十分に液切りすることで、多孔性支持層形成後に液滴残存部分が膜欠点となって膜性能が低下することを防ぐことができる。液切りの方法としては、例えば、特開平2−78428号公報に記載されているように、多官能芳香族アミン水溶液接触後の支持膜を垂直方向に把持して過剰の水溶液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの気流を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させて水溶液の水分を一部除去することもできる。
工程(b)において、有機溶媒中の多官能芳香族酸ハロゲン化物の濃度は、0.01重量%以上5.0重量%以下の範囲内であると好ましく、0.02重量%以上2.0重量%以下の範囲内であるとさらに好ましい。0.01重量%以上とすることで、十分な反応速度を得ることができ、5.0重量%以下とすることで副反応の発生を抑制することができる。一方、添加する多官能芳香族アミンは、添加した多官能芳香族酸ハロゲン化物との重量比で0.01〜0.1倍程度が好ましい。0.01倍以上とすることで、効率よく多官能芳香族酸ハロゲン化物と反応させることができる。また、0.1倍以下とすると十分量の未反応の多官能芳香族ハロゲン化物を確保でき、工程(c)以降でも十分に重合反応を進行できる。
有機溶媒は、水と非混和性であり、かつ多官能酸ハロゲン化物を溶解し、支持膜を破壊しないものが望ましく、多官能アミン化合物および多官能酸ハロゲン化物に対して不活性であるものであればよい。また、有機溶媒の沸点または初留点が100℃以上であると、有機溶媒の残存率を制御しやすく、好ましい。好ましい例として、n−ヘキサン、n−ノナン、イソオクタン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、イソデカン、イソドデカンなどの炭化水素化合物が挙げられる。
多官能芳香族酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液の多官能芳香族アミン化合物水溶液と接触させた多孔性支持層への接触の方法は、多官能芳香族アミン水溶液の多孔性支持層への被覆方法と同様に行えばよい。
工程(d)において、反応後の有機溶媒溶液を液切り工程により除去する。有機溶媒の除去は、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法、送風機で風を吹き付けることで有機溶媒を乾燥除去する方法、水とエアーの混合流体(2流体)で過剰の有機溶媒を除去する方法等を用いることができる。
工程(d)の後に、さらに、60℃〜90℃の範囲内で1分間〜60分間熱水で洗浄処理する工程を付加することが好ましい。
3.複合半透膜の利用
本発明の複合半透膜は、プラスチックネットなどの供給水流路材と、トリコットなどの透過水流路材と、必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿設した筒状の集水管の周りに巻回され、スパイラル型の複合半透膜エレメントとして好適に用いられる。さらに、このエレメントを直列または並列に接続して圧力容器に収納した複合半透膜モジュールとすることもできる。
また、上記の複合半透膜やそのエレメント、モジュールは、それらに供給水を供給するポンプや、その供給水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、供給水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
本発明に係る複合半透膜によって処理される供給水としては、海水、かん水、排水等の500mg/L以上100g/L以下のTDS(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物が挙げられる。一般に、TDSは総溶解固形分量を指し、「質量÷体積」あるいは「重量比」で表される。定義によれば、0.45ミクロンのフィルターで濾過した溶液を39.5℃以上40.5℃以下の温度で蒸発させ残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分(S)から換算する。
流体分離装置の操作圧力は高い方が溶質除去率は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、複合半透膜の耐久性を考慮すると、複合半透膜に被処理水を透過する際の操作圧力は、0.5MPa以上、10MPa以下が好ましい。また、供給水pHが高くなると、海水などの高溶質濃度の供給水の場合、マグネシウムなどのスケールが発生する恐れがあり、また、高pH運転による膜の劣化が懸念されるため、中性領域での運転が好ましい。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
比較例、実施例における凸部の変形量の平均値、最大値および標準偏差、分離機能層の10点平均面粗さは以下のように測定した。
<凸部の変形量>
純水で濡れた状態の複合半透膜を1cm四方に切り、接着剤を用いて分離機能層面が上になるようにサンプル台に固定し、測定サンプルを作製した。次に、測定ステージ上に磁石を用いて測定サンプルを固定し、分離機能層上に純水を滴下した後、原子間力顕微鏡(AFM)で表面の観察を行った。得られた画像のうち凸部のフォースカーブを10点抜きだし、変形量を解析した。この操作を2視野分行い、計20点の変形量を解析し、平均値、最大値および、標準偏差を算出した。具体的な測定条件は以下のとおりである。
・装置:Bruker AXS社製 Dimension FastScan
・走査モード:水中ナノメカニカルマッピング
・探針:シリコンカンチレバー(Bruker AXS社製ScanAsyst−Fluid)なお、カンチレバーは測定前に校正した。
・最大荷重:5.0nN
・走査範囲:2μm×2μm
・走査速度:0.5Hz
・ピクセル数:256×256
・測定条件:純水中
・測定温度:25℃
<分離機能層の10点平均面粗さ>
上述したように20μm四方の領域について10点平均面粗さを算出した。
<膜性能評価>
以下に示す方法で、複合半透膜の性能を評価した。
(NaCl透過率)
複合半透膜に、温度25℃、pH6.5に調整した評価原水(NaCl濃度3.2%、ホウ素濃度約5ppm)を操作圧力5.5MPaで供給して膜ろ過処理を24時間行ない、その後の供給水および透過水の電気伝導度を東亜電波工業株式会社製電気伝導度計で測定して、それぞれのNaCl濃度を得た。
NaCl透過率(%)=100×(透過水中のNaCl濃度/供給水中のNaCl濃度)
(膜透過流束)
前項の試験において、供給水(評価原水)の膜透過水量を、膜面1平方メートルあたり、1日あたりの透水量(立方メートル)でもって膜透過流束(m/m/日)を表した。
(ホウ素透過率)
前項の試験において、供給水と透過水中のホウ素濃度をICP発光分析装置(株式会社日立製作所製 P−4010)で分析し、次の式から求めた。
ホウ素透過率(%)=100×(透過水中のホウ素濃度/供給水中のホウ素濃度)
<高温高圧下での耐久性評価>
複合半透膜に、温度50℃、pH6.5に調整した評価原水(NaCl濃度3.2%、ホウ素濃度約5ppm)を操作圧力7.0MPaで供給して、5分運転した後5分停止させる発停試験を1000回行った後、膜ろ過処理を行なった。その後、25℃、pH6.5に調整した評価原水(NaCl濃度3.2%、ホウ素濃度約5ppm)で膜ろ過処理を3時間行ない、透過水、供給水の水質を測定した。発停試験前後での膜透過流束を比較し、試験前の膜透過流束に対する試験後の膜透過流束の変化量を耐久性の指標とした。
<参考例1>
ポリエステル不織布(通気量2.0cc/cm/sec)上にポリスルホン(PSf)の16.0重量%DMF溶液を25℃の雰囲気下で200μmの厚みでキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって支持膜を作製した。
<実施例1>
参考例1によって得られた支持膜をm−フェニレンジアミン(m−PDA)の4重量%を含む水溶液中に2分間浸漬し、該支持膜を垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、トリメシン酸クロリド(TMC)0.12重量%に重量比で0.01倍のm−PDAを塗布する3分前に添加し予め調整しておいた25℃のイソオクタン溶液を表面が完全に濡れるように塗布した。次に、膜から余分な溶液を除去するために、膜を垂直にして液切りを行って、送風機を使い20℃の空気を吹き付けて乾燥させた。最後に、90℃の純水で洗浄することで複合半透膜を得た。得られた複合半透膜の、5.0nNで押し込んだ際の変形量の平均値、最大値および標準偏差、分離機能層の10点平均面粗さ、25℃での膜性能と発停試験後の膜性能を表2に示す。
<実施例2〜5、比較例1〜3>
添加するm−フェニレンジアミン(m−PDA)の添加量とトリメシン酸クロリド(TMC)の添加量と予め有機溶媒に添加するm−PDAの添加量および有機溶媒を表1に記載のように変更した以外は実施例1と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜の、5.0nNで押し込んだ際の変形量の平均値、最大値および標準偏差、分離機能層の10点平均面粗さ、25℃での膜性能と発停試験後の膜性能を表2に示す。
Figure 2017213501
Figure 2017213501
表2の結果から、凸部を5.0nNの力で押し込んだ際の変形量の平均値が4.0nm以下、かつ標準偏差が1.0nm以上である実施例1〜5の複合半透膜は、高温高圧で発停運転後の25℃で膜評価したとき、試験前の膜透過流束に対する試験後の膜透過流束の変化量が0.10以下と小さくなることがわかった。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本発明は、複合半透膜の性能維持を実現するものであり、膜もしくはそのエレメントの交換頻度をより低減することが可能となる。
1 分離機能層
H1、H2、H3、H4、H5 分離機能層のひだ構造における凸部の高さ
D1、D2、D3、D4、D5 分離機能層のひだ構造における凹部の深さ

Claims (6)

  1. 基材と、前記基材上に多孔質支持層を有し、前記多孔質支持層上に分離機能層を備えた複合半透膜であって、
    前記分離機能層は、ポリアミドを80%以上有し、
    かつ前記分離機能層は、複数の凸部と凹部とを備えるひだ構造を有し
    かつ前記分離機能層の任意の20箇所において原子間力顕微鏡を用いたフォースカーブ測定法により、25℃の純水中で5.0nNの力で押し込んだ際の変形量の平均値が4.0nm以下であり、かつ前記変形量の標準偏差が1.0nm以上である複合半透膜。
  2. 前記変形量の最大値が5.0nm以下である請求項1に記載の複合半透膜。
  3. 前記変形量の標準偏差が2.0nm以上の請求項1に記載の複合半透膜。
  4. 原子間力顕微鏡を用いて20μm×20μmの領域を測定したとき分離機能層の10点平均面粗さが50nm以上である請求項1〜3のいずれかに記載の複合半透膜。
  5. 請求項1に記載の複合半透膜であって、前記ポリアミドが架橋全芳香族ポリアミドである複合半透膜。
  6. 多孔性支持膜上に多官能芳香族アミンを含有する水溶液を接触させる工程と、
    多官能性芳香族酸ハロゲン化物を含有する有機溶液に予め少量の多官能性芳香族アミンを添加する工程と、
    多官能芳香族アミンを含有する水溶液を接触させた多孔性支持層に先の工程で得た有機溶媒溶液を接触させた後、有機溶媒溶液を液切りする工程と、
    を行なう複合半透膜の製造方法。
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