JP2017148771A - 複合半透膜 - Google Patents

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Kiyohiko Takaya
清彦 高谷
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Takao Sasaki
崇夫 佐々木
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Shuji Furuno
修治 古野
恵介 米田
Keisuke Yoneda
恵介 米田
将弘 木村
Masahiro Kimura
将弘 木村
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Abstract

【課題】液状混合物の分離において、膜面汚れを抑制することで長時間運転における性能変化が小さい複合半透膜を提供する。
【解決手段】基材及び前記基材上に配置された支持層からなる支持膜と、前記支持膜上に配置されたポリアミド分離機能層とを備えた複合半透膜であって、前記支持膜は前記ポリアミド分離機能層が配置される側の表面に凹凸があり、前記支持膜の前記表面における1mm四方の領域の表面粗さを任意の10領域について測定したときに、前記表面粗さから求められる最大高さの前記10領域における平均が4.0μm以上30.0μm以下であり、かつ、前記支持膜の前記表面の膜面方向における長さ1mmの線粗さを任意の10カ所について測定したときに、前記10カ所における凸部の平均数密度が2個/mm以上である複合半透膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、液状混合物の分離に有用な複合半透膜に関する。
混合物の分離に関して、溶媒(例えば水)に溶解した物質(例えば塩類)を除くための技術には様々なものがある。近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして膜分離法の利用が拡大している。膜分離法に使用される膜には、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがある。これらの膜は、例えば海水、かん水、有害物を含んだ水などから飲料水を得る場合や、工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収などに用いられている。
現在市販されている逆浸透膜およびナノろ過膜の大部分は複合半透膜であり、支持膜上にゲル層とポリマーを架橋した活性層を有するものと、支持膜上でモノマーを重縮合した活性層を有するものとの2種類がある。なかでも、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との重縮合反応によって得られる架橋ポリアミドからなる分離機能層を支持膜上に被覆して得られる複合半透膜は、透水性能や塩除去性能の高い分離膜として広く用いられている(特許文献1)。
複合半透膜は、プラスチックネットなどの原水流路材、トリコットなどの透過水流路材、及び必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿設した筒状の集水管の周りに巻回され、スパイラル型の複合半透膜エレメントとして広く用いられている。
特開平5−76740号公報
逆浸透膜を用いる造水プラントでは、ランニングコストの一層の低減を図るため、さらなる高い透水性能とともに、長時間運転においても透水性能を維持できることが求められている。
長時間運転において性能が変化する原因として、圧力による変形や膜面汚れ(ファウリング)が考えられる。
本発明の目的は、液状混合物の分離において、膜面汚れを抑制することで長時間運転における性能変化が小さい複合半透膜を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。
[1] 基材及び前記基材上に配置された支持層からなる支持膜と、前記支持膜上に配置されたポリアミド分離機能層とを備えた複合半透膜であって、
前記支持膜は前記ポリアミド分離機能層が配置される側の表面に凹凸があり、
前記支持膜の前記表面における1mm四方の領域の表面粗さを任意の10領域について測定したときに、前記表面粗さから求められる最大高さの前記10領域における平均が4.0μm以上30.0μm以下であり、かつ、
前記支持膜の前記表面の膜面方向における長さ1mmの線粗さを任意の10カ所について測定したときに、前記10カ所における凸部の平均数密度が2個/mm以上である複合半透膜。
[2] 前記支持膜の前記表面の二乗平均平方根高さの平均が0.80μm以上である前記[1]に記載の複合半透膜。
[3] 前記基材の前記支持層が配置される側の表面における任意の1mm四方の領域の表面粗さを任意の10領域について測定したときに、二乗平均平方根高さの平均が4.0μm以上13.0μm以下である前記[1]または[2]に記載の複合半透膜。
[4] 前記支持層の厚みが10μm以上35μm以下である前記[1]〜[3]のいずれか1に記載の複合半透膜。
本発明に係る複合半透膜は、支持膜表面が凹凸形状であることで、複合半透膜の膜表面で発生する乱流効果によりファウリング物質の吸着を抑制することができ、長時間運転における性能変化を小さくすることができる。
1.複合半透膜
本発明に係る複合半透膜は、基材及び前記基材上に配置された支持層からなる支持膜と、前記支持層上に配置されたポリアミド分離機能層(以下、単に「分離機能層」と称することがある。)とを備える。前記分離機能層は実質的に分離性能を有するものであり、前記支持膜は実質的にイオン等の分離性能を有さず、前記分離機能層に強度を与えることができる。
(1−1)支持膜
本発明において、支持膜は基材と前記基材上に配置された支持層からなる。支持膜は、ポリアミド分離機能層が配置される側の表面(以下、単に「支持膜表面」と称することがある。)に凹凸があり、前記支持膜表面における1mm四方の領域の表面粗さを任意の10領域について測定したときに、前記表面粗さから求められる最大高さの前記10領域における平均が4.0μm以上30.0μm以下であり、かつ、支持膜表面の膜面方向における長さ1mmである線粗さを任意の10カ所について測定したときに、前記10カ所における凸部の平均数密度が2個/mm以上であることを特徴とする。
本発明者らは、支持膜表面の凹凸構造に着目し、鋭意検討を行った結果、最大高さの平均および凸部の平均数密度を上記範囲とすることで、長時間運転における性能変化が小さくなることを見出した。これは、支持膜表面の凹凸に起因した複合半透膜の膜表面の形状により発生する乱流の効果で、有機物およびコロイド等のファウリング物質の吸着が抑制されるからであると考えられる。
基材や支持膜又は支持層の表面の凹凸は、非接触三次元測定機によって測定することができる。非接触三次元測定機は、KEYENCE社製VR−3000などが使用できる。測定した結果は、専用の解析アプリケーションを利用して、二次曲面での面形状補正を行い、そのデータのうち任意の1mm四方の領域で表面粗さ計測を行い、最大高さや二乗平均平方根高さなどを求める。同じ操作を任意の10ヶ所の領域で行い、その平均値を求めることで、最大高さの平均や二乗平均平方根高さの平均を求めることができる。
本明細書における最大高さとは、任意の1mm四方の領域の表面粗さを測定し、その粗さ曲線における平均線から最も高い点の高さ(最大山高さ)と最も低い点の高さの絶対値(最大谷深さ)の和である。
また、二乗平均平方根高さとは、任意の1mm四方の領域の表面粗さを測定し、その粗さ曲線における各点の高さの二乗平均平方根であり、高さ(表面粗さ)の標準偏差に相当する値である。
本明細書における凸部の平均数密度とは、支持膜表面の凹凸のうち、凸部についての平均数密度である。凸部とは、非接触三次元測定機によって測定した画像に対して、線粗さの解析により、粗さ曲線および平均線を求めたとき、基準長さ1mmにおける上記粗さ曲線と平均線で形成された高さ1μm以上の凸部のことを言う。
この凸部を膜面方向における長さ1mmの範囲で数え、数密度を求める。同様の操作を異なる任意の10ヶ所で行い、その平均を求めることで、凸部の平均数密度(個/mm)を求めることができる。
なお、凸部の高さは線粗さ解析を行った後に得られる解析画像において、上記粗さ曲線と平均線で形成された凸部に対し、平均線から凸部の最高点までの距離をスケールで測定することで、求めることができる。
本発明に係る複合半透膜の支持膜表面において、最大高さの平均が4.0μm以上30.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは6.0μm以上30.0μm以下である。最大高さの平均が4.0μm以上であることで、長時間運転の安定性に寄与する乱流効果を得ることができ、30.0μm以下であることで分離機能層の形成が容易かつ複合半透膜としての取り扱い性が容易となる。
支持膜表面の二乗平均平方根高さの平均は、0.80μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましい。0.80μm以上であることで、複合半透膜表面に起こる乱流効果が高まり、長時間運転した時の安定性が向上する。
また、支持膜表面の凸部の平均数密度が2個/mm以上であることが好ましく、5個/mm以上がより好ましい。凸部の平均数密度が2個/mm以上であることで長時間運転の安定性に寄与する乱流効果を得ることができる。
なお、粗さ曲線はISO4287:1997に基づき定義される曲線である。また、平均線はISO4287:1997に基づき定義される直線であり、基準長さにおいて、粗さ曲線と平均線で囲まれる領域の面積の合計が平均線の上下で等しくなるように描かれる直線である。
支持膜表面の凹部や凸部の形状は、分離機能層形成における均一性を得るために、モノマー溶液の塗布や液切りが均一に行えることが重要であり、表面上部から観察した形で、楕円、円、長円、台形が好ましく、立体的には凸部の最高点から最低点に向かって広がる形が好ましい。
支持膜表面に凹凸形状を持たせる方法は特に限定されないが、支持膜製膜時に凹凸を形成する方法が挙げられる。例えば、少なくとも支持層が配置される側の表面に凹凸のある基材を用いる方法、基材上に支持層を形成する高分子溶液を塗布した後にローラーなどを用いて表面に凹凸を形成する方法、基材上に支持層を形成する高分子溶液を塗布した後に周期的な波を発生させた凝固浴に浸漬することで、その波模様を転写させる方法などがある。
(1−1−1)基材
基材としては、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリオレフィン系重合体、あるいはこれらの混合物や共重合体等が挙げられる。中でも、機械的、熱的に安定性の高いポリエステル系重合体の布帛が特に好ましい。布帛の形態としては、長繊維不織布や短繊維不織布、さらには織編物を好ましく用いることができる。ここで、長繊維不織布とは、平均繊維長300mm以上、かつ平均繊維径3〜30μmの不織布のことを指す。
基材は、通気量が0.5cc/cm/sec以上5.0cc/cm/secであることが好ましい。基材の通気量が上記範囲内にあることにより、支持層となる高分子溶液が基材に含浸するため、基材との接着性が向上し、支持膜の物理的安定性を高めることができる。また、通気度がこの範囲であると、複合半透膜の透水性が高くなる。これは、支持膜を形成する工程で、基材上に高分子重合体を流延し、凝固浴に浸漬した際に、基材側からの非溶媒置換速度が速くなることで支持層の内部構造が変化し、その後の分離機能層を形成する工程においてモノマーの保持量や拡散速度に影響を及ぼすためと考えられる。
なお、通気度はJIS L1096(2010)に基づき、フラジール形試験機によって測定できる。
例えば、200mm×200mmの大きさに基材を切り出し、サンプルとする。このサンプルをフラジール形試験機に取り付け、傾斜形気圧計が125Paの圧力になるように吸込みファン及び空気孔を調整し、このときの垂直形気圧計の示す圧力と使用した空気孔の種類から基材を通過する空気量、すなわち通気度を算出することができる。フラジール形試験機は、カトーテック株式会社製KES−F8−AP1などが使用できる。
基材の厚みは20μm以上200μm以下であることが好ましく、40μm以上がより好ましく、120μm以下がより好ましい。なお、後述するとおり、複合半透膜の厚みは、基材の厚みと支持層の厚みの総和(支持膜の厚み)で近似することができる。
基材の厚みは、デジタルシックネスゲージによって測定することができる。デジタルシックネスゲージとしては、尾崎製作所株式会社のPEACOCKなどが使用できる。デジタルシックネスゲージを用いる場合は、任意の20箇所について厚みを測定してその平均値を算出する。
なお、基材の厚みもしくは複合半透膜の厚みをシックネスゲージによって測定することが困難な場合、走査型電子顕微鏡で測定してもよい。1つのサンプルについて任意の5箇所における断面観察の電子顕微鏡写真から厚みを測定し、平均値を算出することで厚みが求められる。
本発明を達成する手段として、基材の少なくとも一方の表面に凹凸を持たせることが好ましい。すなわち、基材の支持層が配置される側の表面(基材表面)に凹凸を持たせることが好ましい。
基材表面に凹凸を持たせることで、その上に支持層を形成した際に、支持層の表面、すなわち支持膜表面にも凹凸を形成することができる。また、基材表面に凹凸を持たせることで、得られる複合半透膜を加圧しても表面の凹凸が維持され効果を持続することができる。
基材表面に凹凸を持たせる方法として、長繊維不織布や短繊維不織布を用いる場合には、例えば異なる繊維径を持つ糸を混合させる方法などがある。エンボスによっても凹凸を形成可能だが、一部で熱融着が発生して支持層が含浸しなくなることがあり、基材から支持層が剥がれやすくなる場合がある。
基材表面に凹凸を持たせる場合、基材表面の最大高さの平均が40μm以上80μm以下であることが好ましい。この範囲であることで、支持膜表面の最大高さの平均を4.0μm以上30.0μm以下とすることができる。なお、基材表面の最大高さの平均は、支持膜表面の最大高さの平均と同様の方法で測定することができる。
また、基材表面に凹凸を持たせる場合、基材表面の凸部のうち、高さが5μm以上の凸部の平均数密度が2個/mm以上であることが好ましい。この範囲であることで、支持膜表面の凸部の平均数密度が2個/mm以上とすることができる。
基材表面に凹凸を持たせる場合、基材表面の二乗平均平方根高さは4.0μm以上13.0μm以下であることが好ましい。4.0μm以上13.0μm以下であることで、支持膜表面の二乗平均平方根高さの平均を0.80μm以上とすることができる。
なお、基材表面の凸部の平均数密度及び二乗平均平方根高さは、それぞれ、支持膜表面の凸部の平均数密度及び二乗平均平方根高さと同様の方法で測定することができる。
(1−1−2)支持層
支持層の孔のサイズや分布は特に限定されないが、例えば、均一で微細な孔、あるいは分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな細孔をもち、かつ、分離機能層が形成される側の表面で細孔の大きさが直径0.1nm以上100nm以下であるような支持層が好ましい。
支持層の素材には、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシドなどのホモポリマーまたはコポリマーを単独であるいはブレンドして使用することができる。
ここでセルロース系ポリマーとしては酢酸セルロース、硝酸セルロースなど、ビニルポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが使用できる。
中でもポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどのホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。より好ましくは酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、またはポリフェニレンスルホンが挙げられ、さらに、これらの素材の中では化学的、機械的、熱的に安定性が高く、成型が容易であることからポリスルホンが特に好ましく使用できる。
具体的には、次の化学式に示す繰り返し単位からなるポリスルホンを用いると、支持層の孔径が制御しやすく、寸法安定性が高いため好ましい。なお、式中のnは繰り返し数を意味する。
Figure 2017148771
ポリスルホンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)でN−メチルピロリドンを溶媒に、ポリスチレンを標準物質として測定した場合の質量平均分子量(Mw)が、10000以上200000以下であることが好ましく、より好ましくは15000以上100000以下である。Mwが10000以上であることで、支持層として好ましい機械的強度および耐熱性を得ることができる。また、Mwが200000以下であることで、溶液の粘度が適切な範囲となり、良好な成形性を実現することができる。
例えば、上記ポリスルホンのN,N−ジメチルホルムアミド(以降、「DMF」と記載することがある。)溶液を、密に織ったポリエステル布あるいは不織布の上に一定の厚さに注型し、それを水中で湿式凝固させることによって、表面の大部分が直径数30nm以下の微細な孔を有する支持層を得ることができる。
基材と支持層の厚みは、複合半透膜の強度およびそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。十分な機械的強度および充填密度を得るためには、基材と支持層の厚みの合計が、30μm以上300μm以下であることが好ましく、80μm以上200μm以下であるとより好ましい。支持層の厚みは、支持膜の厚みから基材の厚みを引くことによって求めることができる。また、支持膜の断面観察の画像から、基材と支持層の界面を特定し、支持層の厚みをスケールで測定することにより求めることもできる。
なお、本明細書において表面に凹凸がある場合の厚みとは、該凹凸の平均線を用いた厚み、又は、デジタルシックネスゲージ等により直接測定した厚みの平均とする。
本発明において支持層の厚みは、10μm以上35μm以下であることが好ましい。表面に凹凸のある基材を用いた場合、10μm未満だと、基材が露出して欠点となる場合があり、35μmを超えると基材表面の形状に由来した凹凸が支持膜表面で形成されず効果が出ない場合がある。
支持層の厚みは、高分子を溶解する溶媒の種類、高分子溶液の粘度、高分子溶液の濃度、凝固浴温度、基材への高分子溶液の塗布厚みなどで制御することができる。
支持層の厚みは、基材と同様に走査型電子顕微鏡(SEM)や光学顕微鏡などによる断面観察で厚み方向に直交する方向(膜の面方向)に20μm間隔で測定した、任意の20点の厚みの平均値を算出することで求められる。
また、支持層の厚みは、デジタルシックネスゲージによっても測定することもできる。分離機能層の厚みは基材や支持層と比較して非常に薄いので、複合半透膜の厚みを基材と支持層の合計の厚み(支持膜の厚み)とみなすことができる。従って、複合半透膜の厚みをデジタルシックネスゲージで測定し、複合半透膜の厚みから基材の厚みを引くことで、支持層の厚みを簡易的に算出することができる。デジタルシックネスゲージとしては、尾崎製作所株式会社製のPEACOCKなどが使用できる。デジタルシックネスゲージを用いる場合は、任意の20箇所について厚みを測定してその平均値を算出する。
支持層には50μmを超える粗大なマクロボイドが存在しないことが好ましい。50μmを超える粗大なマクロボイドが存在しないことで、圧力をかけたときに支持層がつぶれて変形することにより生じる性能低下を抑制することが可能となり、また、表面の凹凸形状を維持することが可能となる。
本発明に使用する支持層は、“オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って製造することができる。
(1−2)ポリアミド分離機能層
ポリアミド分離機能層は、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との重縮合反応で得られたポリアミドを主成分とする薄膜を有する。主成分とは分離機能層の成分のうち、50質量%以上を占める成分を指す。
ポリアミド分離機能層は、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との界面重縮合により形成することができる。
ここで、多官能性アミン及び多官能性酸ハロゲン化物の少なくとも一方が3官能以上の化合物を含んでいることが好ましい。
多官能性アミンとは、一分子中に第一級アミノ基及び第二級アミノ基のうち少なくとも一方のアミノ基を2個以上有し、かつ、アミノ基のうち少なくとも1つは第一級アミノ基であるアミンを意味する。
例えば、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2−メチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,3,5−トリメチルピペラジン、2,5−ジエチルピペラジン、2,3,5−トリエチルピペラジン、2−n−プロピルピペラジン、2,5−ジ−n−ブチルピペラジン、エチレンジアミンなどの脂肪族多官能アミン;o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、o−ジアミノピリジン、m−ジアミノピリジン、p−ジアミノピリジン等の2個のアミノ基がオルト位やメタ位、パラ位のいずれかの位置関係で芳香環に結合した多官能芳香族アミン;1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミンなどの多官能芳香族アミンなどが挙げられる。
中でも、膜の選択分離性や透過性、耐熱性を考慮すると、ピペラジン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼンが好適に用いられる。これらの多官能性アミンは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
多官能性酸ハロゲン化物とは、一分子中に少なくとも2個のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物をいう。
例えば、3官能酸ハロゲン化物では、トリメシン酸クロリドなどを挙げることができ、2官能酸ハロゲン化物では、ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリドなどを挙げることができる。
多官能性アミンとの反応性を考慮すると、多官能性酸ハロゲン化物は多官能芳香族酸塩化物であることが好ましく、また、膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の塩化カルボニル基を有する多官能芳香族酸塩化物であることが好ましい。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさの観点から、トリメシン酸クロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリドを用いるとより好ましい。これらの多官能芳香族酸ハロゲン化物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、分離機能層の厚みは、十分な分離性能および透過水量を得るために、通常0.01〜1μmの範囲内、好ましくは0.1〜0.5μmの範囲内である。
上記基材、支持層及びポリアミド分離機能層を備えた複合半透膜の膜表面は、支持膜表面の凹凸に起因した凹凸を有する。この凹凸により、複合半透膜表面で乱流が発生し、その効果によってファウリング物質の吸着を抑制できることから、造水プラントの長時間運転における性能変化が小さい複合半透膜とすることができる。
複合半透膜の膜厚を基材及び支持層の合計の膜厚(支持層の膜厚)とみなすことができるように、ポリアミド分離機能層は薄い。そのため、得られる複合半透膜表面の最大高さの平均、平均数密度及び二乗平均平方根高さの平均は、それぞれ、支持膜表面の最大高さの平均、平均数密度及び二乗平均平方根高さの平均と同じ値とみなすことができる。
なお、分離機能層は塩素やアルカリなどを用いて加水分解することで、支持膜から剥離することが可能である。そのため分離機能層を除いた支持膜の最大高さの平均、平均数密度及び二乗平均平方根高さの平均を測定すると、より正確な値となる。
すなわち、本発明に係る複合半透膜表面の最大高さの平均は4.0μm以上30.0μm以下であり、凸部の平均数密度が2個/mm以上である。また、二乗平均平方根高さの平均は0.80μm以上であることが好ましい。
2.複合半透膜の製造方法
複合半透膜の製造方法について説明する。当該製造方法は、支持膜の形成工程および分離機能層の形成工程を含む。
(2−1)支持膜の形成工程
支持膜の形成工程は、例えば、(i)基材に高分子溶液を塗布する工程、(ii)前記基材に前記高分子溶液を含浸させる工程、および(iii)前記高分子溶液を含浸した前記基材を、前記高分子の良溶媒と比較して高分子の溶解度が小さい凝固浴に浸漬させることで前記高分子を凝固させ、三次元網目構造を形成させる工程、を含む。また、支持膜の形成工程は、(iv)支持層の成分である高分子を、その高分子の良溶媒に溶解して高分子溶液を調製する工程、をさらに含んでいてもよい。
基材上への高分子溶液の塗布する工程及び含浸する工程は、種々のコーターによって実施でき、例えば、コンマコーター、バーコーター、グラビアコーター、スリットダイコーターなどが利用できる。
本発明の支持膜の形成においては、まずコンマコーターで下地となる高分子溶液Aを塗布し、続いてスリットダイコーターで上地となる高分子溶液Bを塗布することが好ましい。これにより、特に、表面に凹凸がある基材を用いる場合に、欠点なく支持膜を形成することが可能である。
コンマコーターを用いることで高分子溶液Aを基材に均一に含浸させることができ、十分な強度が得られる。また、スリットダイコーターを用いることで基材表面の凹凸に沿って高分子溶液Bを塗布することができ、基材表面の凹凸を利用して支持膜表面にも凹凸を形成することができる。
高分子溶液Aを塗布した後に高分子溶液Bを塗布するまでの時間は、0.5秒以上10秒以下が好ましく、1秒以上6秒以下がより好ましい。高分子溶液Aを塗布後に長い時間を設けた場合には、高分子溶液Aの相分離によって形成される第1層の表面に密度の高いスキン層が形成され、透過流速を大幅に低下させる場合がある。そのため、高分子溶液Aが相分離により密度の高いスキン層を形成しない程度に、時間を置かずに高分子溶液Bを塗布することが好ましい。
高分子を凝固させ、三次元網目構造を形成させる工程において、基材上に高分子溶液A及び高分子溶液B(以下、総称して単に「高分子溶液」と称することがある。)を塗布した後、凝固浴に浸漬させるまでの時間は、通常0.1〜5秒間の範囲であることが好ましい。凝固浴に浸漬するまでの時間がこの範囲であれば、高分子を含む有機溶媒溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化されやすい。なお、凝固浴に浸漬するまでの時間の好ましい範囲は、用いる高分子溶液の粘度などによって適宜調整すればよい。
高分子溶液塗布時の高分子溶液の温度は、10〜60℃の範囲内が好ましく、10〜35℃の範囲内がより好ましい。この範囲内であれば、高分子溶液が析出することなく、高分子を含む有機溶媒溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化されやすい。その結果、アンカー効果により支持層が基材に強固に接合した支持膜を得ることができる。
支持層の素材としてポリスルホンを含有する場合、高分子溶液のポリスルホン濃度は、好ましくは15重量%以上22重量%以下である。高分子濃度が15重量%以上22重量%以下であることで、より実用に耐えうる強度をもった支持膜が得られる。なお、高分子溶液A中のポリスルホン濃度と高分子溶液B中のポリスルホン濃度は、同一でも、異なっても良い。
支持層の素材がポリスルホン以外のポリマーである場合、ポリマーの種類によるが、一般的には、高分子溶液中のポリマー濃度は合計で12重量%以上が好ましく、14重量%以上がより好ましい。また30重量%以下が好ましく、24重量%以下がより好ましい。なお、高分子溶液A中のポリマー濃度と高分子溶液B中のポリマー濃度とは同一でも異なっていてもよい。
なお、高分子溶液Aと高分子溶液Bが含有するポリマーは、同一のポリマーでも、互いに異なるポリマーでも良い。ポリマーの種類や濃度を適宜調整することで、製造する支持膜の強度特性、透過特性、表面特性などの諸特性を所望のものにすることができる。
なお、高分子溶液Aと高分子溶液Bにおける溶媒は、高分子(ポリマー)の良溶媒であれば同一の溶媒でも、異なる溶媒でも良い。適宜、製造する支持膜の強度特性、高分子溶液の基材への含浸等を勘案して、より広い範囲で選択することができる。
高分子の良溶媒とは、高分子材料を溶解するものである。良溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP);テトラヒドロフラン;ジメチルスルホキシド;テトラメチル尿素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド;アセトン、メチルエチルケトン等の低級アルキルケトン;リン酸トリメチル、γ−ブチロラクトン等のエステルおよびラクトン;並びにこれらの混合溶媒が挙げられる。
高分子の非溶媒としては、例えば水、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、トリクロルエチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、低分子量のポリエチレングリコール等の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族アルコール、またはこれらの混合溶媒などが挙げられる。
また、上記高分子溶液は、支持膜の孔径、空孔率、親水性、弾性率などを調節するための添加剤を含有してもよい。
孔径および空孔率を調節するための添加剤としては、水、アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等の水溶性高分子またはその塩、さらに塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸リチウム等の無機塩、ホルムアルデヒド、ホルムアミド等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
親水性や弾性率を調節するための添加剤としては、種々の界面活性剤が挙げられる。
凝固浴としては、通常水が使われるが、重合体(ポリマー)を溶解しないものであればよい。凝固浴の組成によって支持膜の膜形態が変化し、それによって複合半透膜の膜形成性も変化する。
凝固浴の温度は、−20℃〜50℃が好ましい。より好ましくは0〜40℃であり、さらに好ましくは5〜30℃である。この範囲より高いと、熱運動により凝固浴面の振動が激しくなり、膜形成後の膜表面の平滑性が低下しやすい。逆に低すぎると凝固速度が遅くなり、製膜性が悪くなる場合がある。
本発明において、支持膜の表面に凹凸を形成する方法として、支持膜製膜時に凹凸を形成する方法が挙げられる。具体的な方法は先述したとおりであるが、例えば、表面に凹凸のある基材を用いる方法、基材に高分子溶液を塗布した後、水面を波立たせた凝固浴に浸漬させることで波模様を転写させて凹凸を形成する方法などが挙げられる。
次に、上記で得られた支持膜を、支持膜中に残存する溶媒を除去するために純水で洗浄する。このときの純水の温度は25〜100℃が好ましく、さらに好ましくは40〜90℃である。この範囲より高いと、支持膜の収縮度が大きくなり、透水性が低下しやすい。逆に、洗浄温度が低いと洗浄効果が小さくなりやすい。
(2−2)ポリアミド分離機能層の形成工程
次に、複合半透膜を構成するポリアミド分離機能層の形成工程について説明する。なお、ポリアミド分離機能層とは、ポリアミドを主成分とする層である。
ポリアミド分離機能層の形成工程では、前述の多官能性アミンを含有する水溶液と、多官能性酸ハロゲン化物を含有する水と非混和性の有機溶媒溶液とを用い、支持膜の表面で界面重縮合を行うことにより、ポリアミド骨格を形成することができる。
多官能性アミン水溶液における多官能性アミンの濃度は0.1重量%以上15重量%以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以上10重量%以下の範囲内である。この範囲であると十分な透水性と塩およびホウ素の除去性能を得ることができる。
多官能性アミン水溶液には、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との反応を妨害しないものであれば、界面活性剤や有機溶媒、アルカリ性化合物、酸化防止剤などが含まれていてもよい。
界面活性剤は、支持膜表面の濡れ性を向上させ、アミン水溶液と非極性溶媒との間の界面張力を減少させる効果がある。
有機溶媒は界面重縮合反応の触媒として働くことがあり、添加することにより界面重縮合反応を効率よく行える場合がある。
界面重縮合を支持膜上で行うために、まず、上述の多官能性アミン水溶液を支持膜に接触させる。接触は、支持膜表面上に均一にかつ連続的に行うことが好ましい。
具体的には、例えば、多官能性アミン水溶液を支持膜にコーティングする方法や支持膜を多官能性アミン水溶液に浸漬する方法を挙げることができる。
支持膜と多官能性アミン水溶液との接触時間は、1秒以上10分以下の範囲内であることが好ましく、5秒以上3分以下の範囲内であるとさらに好ましい。
多官能性アミン水溶液を支持膜に接触させた後は、膜上に液滴が残らないように十分に液切りする。十分に液切りすることで、複合半透膜形成後に液滴残存部分が欠点となって複合半透膜の除去性能が低下することを防ぐことができる。
液切りの方法としては、例えば、特開平2−78428号公報に記載されているように、多官能性アミン水溶液接触後の支持膜を垂直方向に把持して過剰の水溶液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの気流を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させて水溶液の水分を一部除去することもできる。
次いで、多官能性アミン水溶液接触後の支持膜に、多官能性酸ハロゲン化物を含む水と非混和性の有機溶媒溶液を接触させ、界面重縮合により架橋ポリアミド分離機能層を形成させる。
水と非混和性の有機溶媒溶液中の多官能性酸ハロゲン化物濃度は、0.01重量%以上8重量%以下の範囲内であると好ましく、0.05重量%以上2重量%以下の範囲内であるとさらに好ましい。多官能性酸ハロゲン化物濃度が0.01重量%以上であることで十分な反応速度が得られ、また、8重量%以下であることで副反応の発生を十分に抑制することができる。さらに、この有機溶媒溶液にDMFのようなアシル化触媒を含有させると、界面重縮合が促進され、さらに好ましい。
水と非混和性の有機溶媒は、多官能性酸ハロゲン化物を溶解し、支持膜を破壊しないものが望ましく、多官能性アミン化合物および多官能性酸ハロゲン化物に対して不活性であるものであればよい。好ましい有機溶媒の例として、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの炭化水素化合物が挙げられる。
多官能性酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液を支持膜へ接触させる方法は、多官能性アミン水溶液を支持膜へ被覆する方法と同様に行えばよい。
本発明の界面重縮合工程においては、支持膜上を架橋ポリアミド薄膜で十分に覆い、かつ、接触させた多官能性酸ハロゲン化物を含む水と非混和性の有機溶媒溶液を支持膜上に残存させておくことが肝要である。このため、界面重縮合を実施する時間は、0.1秒以上3分以下が好ましく、0.1秒以上1分以下であるとより好ましい。界面重縮合を実施する時間が0.1秒以上3分以下であることで、支持膜上を架橋ポリアミド薄膜で十分に覆うことができ、かつ多官能性酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液を支持膜上に保持することができる。
界面重縮合によって支持膜上にポリアミド分離機能層を形成した後は、余剰の溶媒を液切りする。液切りの方法は、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法、送風機で風を吹き付けることで有機溶媒を乾燥除去する方法、水とエアーの混合流体(2流体)で過剰の有機溶媒を除去する方法等を用いることができる。
さらに、40℃以上90℃以下の純水で1分間〜60分間洗浄処理する工程を付加することが好ましい。
3.複合半透膜の利用
本発明の複合半透膜は、スパイラル型の複合半透膜エレメントとして好適に用いられる。さらに、このエレメントを直列または並列に接続して圧力容器に収納した複合半透膜モジュールとすることもできる。
また、上記の複合半透膜やそのエレメント、モジュールは、それらに原水を供給するポンプや、その原水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、原水を飲料水などを目的とした透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
流体分離装置の操作圧力は高い方が塩除去性は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、複合半透膜の耐久性を考慮すると、複合半透膜に被処理水を透過する際の操作圧力は、0.5MPa以上、8MPa以下が好ましい。
供給水温度は、高くなると塩除去性が低下するが、低くなるにしたがい膜透過流束も減少するので、5℃以上、45℃以下が好ましい。
また、供給水pHは、高くなると海水などの高塩濃度の供給水の場合、マグネシウムなどのスケールが発生する恐れがあり、また、高pH運転による膜の劣化が懸念されるため、中性領域での運転が好ましい。
複合半透膜によって処理される原水としては、海水、かん水、排水等の500mg/L〜100g/LのTDS(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物等が挙げられる。一般に、TDSは総溶解固形分量を指し、「質量÷体積」で表されるか、1Lを1kgと見なして「重量比」で表される。定義によれば、0.45μmのフィルターで濾過した溶液を39.5〜40.5℃の温度で蒸発させ残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分から換算する。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
<膜性能評価>
以下に示す方法で、複合半透膜の性能を評価した。
(塩除去性(TDS除去率))
複合半透膜に、温度25℃、pH6.5に調整した供給水(NaCl濃度3.2%、ホウ素濃度約5ppm)を操作圧力5.5MPaで供給して膜ろ過処理を3時間行ない、その後の供給水および透過水の電気伝導度を東亜電波工業株式会社製電気伝導度計で測定して、実用塩分を測定した。この実用塩分を換算して得られるTDS濃度から、次の式により塩除去性すなわちTDS除去率を求めた。
TDS除去率(%)=100×{1−(透過水中のTDS濃度/供給水中のTDS濃度)}
(膜透過流束)
前項の試験において、供給水の膜透過水量を、膜面1平方メートルあたり、1日あたりの透水量(立方メートル)に換算し、膜透過流束(m/m/日)として表した。
(耐ファウリング性)
複合半透膜に、温度25℃、pH6.5に調整した供給水(海水)を操作圧力5.5MPaで供給して膜ろ過処理を240時間行ない、その後のTDS除去率、膜透過流速を求めた。前項の試験で求めた膜性能と比較して、耐ファウリング性を確認した。なお、海水は一般的にファウリングしやすい。
<基材または支持膜の最大高さ、二乗平均平方根高さ、凸部の数密度の測定>
25℃で風乾させた基材または支持膜を、2mm四方のサイズに切断して、10個のサンプルを作製した。作製したサンプルを、表面が平らになるように試料台にセットした後、非接触三次元測定機(KEYENCE社製VR−3000)を用いて表面観察を行った。
得られた画像を、専用の解析アプリケーションを利用して、二次曲面での面形状補正を行い、そのデータのうち任意の1mm四方の領域で表面粗さ計測を行い、最大高さや二乗平均平方根高さを求めた。同じ操作を10個のサンプルで行い、その平均値を求めることで、最大高さの平均や二乗平均平方根高さの平均を求めた。
また、得られた画像を、二次曲面での面形状補正を行い、そのデータのうち膜面方向における長さ1mmの任意の範囲で線粗さ計測を行い、得られた粗さ曲線と平均線から凸部の数密度を求めた。同様の操作を同じ画像の異なる任意の10ヶ所で行い、その平均を求めることで、凸部の平均数密度を求めた。
なお、実施例において、支持膜を作製した後に測定した結果を載せているが、支持膜を作製した後に測定した結果と、分離機能層を作製し、塩素を用いて分離機能層を剥離した後に測定した結果が同じになることは確認済みである。
<支持層厚みの測定>
支持層が形成される前の基材単独の厚み、および完成した複合半透膜の厚みを尾崎製作所株式会社製PEACOCKデジタルシックネスゲージにより測定して、その差を支持層厚みとした。基材の厚みおよび複合半透膜の厚みは、それぞれ幅方向に20点測定してその平均値を算出した。
支持層厚み(μm)=複合半透膜厚み(μm)−基材厚み(μm)
<実施例1>
ポリスルホン18重量%のDMF溶液(高分子溶液A)およびポリスルホン18重量%のDMF溶液(高分子溶液B)を、各溶媒および溶質の混合物を攪拌しながら90℃で3時間加熱保持することで調製した。
調製した高分子溶液はそれぞれ25℃まで冷却し、金属メッシュを用いて濾過した。その後、抄紙法で製造されたポリエステル繊維からなる不織布(厚み:約100μm、通気度:1.0cc/cm/sec、最大高さの平均:40μm、凸部の平均数密度:2個/mm、二乗平均平方根高さの平均:4.0μm)上に高分子溶液Aを50μmの厚みで塗布し、3秒後に高分子溶液Bを100μmの厚みで塗布した。塗布後、直ちに純水中に浸漬して相分離させ、続いて60℃の純水で5分間洗浄することによって支持膜を得た。ここで、支持膜表面を観察したところ、最大高さの平均は4.0μm、凸部の平均数密度は2個/mm、二乗平均平方根高さの平均は0.80μmであった。
得られた支持膜を、m−フェニレンジアミン(m−PDA)の4.0重量%水溶液中に1分間浸漬した後、膜面が鉛直になるようにゆっくりと引き上げた。エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、膜面が水平となるように支持膜を置き、トリメシン酸クロリド0.15重量%を含む25℃のn−デカン溶液を膜表面が完全に濡れるように塗布した。
1分間静置した後、膜から余分な溶液を除去するために膜面を1分間鉛直に保持して液切りし、送風機を使い25℃の空気を吹き付けて乾燥させた。その後、80℃の水で5分間洗浄することで、複合半透膜を得た。得られた複合半透膜の膜性能および耐ファウリング性評価結果を表1に示す。
<実施例2〜4、比較例1〜3>
実施例1において、基材となる不織布の最大高さの平均、凸部の平均数密度、二乗平均平方根高さの平均および支持層の厚みを変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜4、比較例1〜3の複合半透膜をそれぞれ得た。得られた複合半透膜の膜性能および耐ファウリング性評価結果を表1に示す。
Figure 2017148771
<実施例5〜6、比較例4>
実施例1において、高分子溶液A及び高分子溶液Bの塗布厚みを変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例5〜6、比較例4の複合半透膜をそれぞれ得た。得られた複合半透膜の膜性能および耐ファウリング性評価結果を表2に示す。
Figure 2017148771
実施例1〜6より、供給水としてNaClを用いた場合の塩除去性(TDS除去率)での評価結果と、供給水として海水を用いて長時間運転したときの耐ファウリング性評価結果を比較すると、本発明により特に透過流束に関する性能変化が小さい複合半透膜を得られることが分かった。
本発明の複合半透膜は、特に、かん水や海水の脱塩に好適に用いることができる。

Claims (4)

  1. 基材及び前記基材上に配置された支持層からなる支持膜と、前記支持膜上に配置されたポリアミド分離機能層とを備えた複合半透膜であって、
    前記支持膜は前記ポリアミド分離機能層が配置される側の表面に凹凸があり、
    前記支持膜の前記表面における1mm四方の領域の表面粗さを任意の10領域について測定したときに、前記表面粗さから求められる最大高さの前記10領域における平均が4.0μm以上30.0μm以下であり、かつ、
    前記支持膜の前記表面の膜面方向における長さ1mmの線粗さを任意の10カ所について測定したときに、前記10カ所における凸部の平均数密度が2個/mm以上である複合半透膜。
  2. 前記支持膜の前記表面の二乗平均平方根高さの平均が0.80μm以上である請求項1に記載の複合半透膜。
  3. 前記基材の前記支持層が配置される側の表面における任意の1mm四方の領域の表面粗さを任意の10領域について測定したときに、二乗平均平方根高さの平均が4.0μm以上13.0μm以下である請求項1または2に記載の複合半透膜。
  4. 前記支持層の厚みが10μm以上35μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合半透膜。
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