JP2017131794A - 複合半透膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】 水以外の物質の高い除去性および高い透水性を両立する複合半透膜を提供する。【解決手段】 本発明の複合半透膜は、凸部と凹部とが連続的に繰り返される多孔性支持膜と、前記多孔性支持膜上に形成されて凸部と凹部とが連続的に繰り返される、ひだ構造の分離機能層とを備えた複合半透膜であって、前記多孔性支持膜を電子顕微鏡を用いて膜面方向における長さが50μmである任意の10箇所の断面を観察したときの10点平均面粗さが1.0〜30μmであり、かつ、前記分離機能層の膜面方向における長さが2.0μmである任意の10箇所の断面を観察したときに、各断面において、前記分離機能層の10点平均面粗さの5分の1以上の高さを有するひだの平均数密度が10.0個/μm以上である。【選択図】 図1
Description
本発明は、液状混合物の選択的分離に有用な複合半透膜に関する。本発明によって得られる複合半透膜は、例えば海水やかん水の淡水化に好適に用いることができる。
混合物の分離に関して、溶媒(例えば水)に溶解した物質(例えば塩類)を除くための技術には様々なものがあるが、近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして膜分離法の利用が拡大している。膜分離法に使用される膜には、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがあり、これらの膜は、例えば海水、かん水、有害物を含んだ水などから飲料水を得る場合や、工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収などに用いられている。
現在市販されている逆浸透膜およびナノろ過膜の大部分は複合半透膜であり、多孔性支持膜上にゲル層とポリマーを架橋した活性層を有するものと、多孔性支持膜上でモノマーを重縮合した活性層を有するものとの2種類がある。なかでも、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応によって得られる架橋ポリアミドからなる分離機能層を多孔性支持膜上に被覆して得られる複合半透膜は、透水性や塩除去性の高い分離膜として広く用いられている(特許文献1、2)。
逆浸透膜を用いる造水プラントではランニングコストの一層の低減を図るため、さらなる高い透水性能が求められている。また、逆浸透として用いる場合には、高圧力での長時間運転においても上記の膜性能を維持できることが要求される。
複合半透膜の性能に影響を及ぼす因子として、ポリアミド表面に形成されるひだ構造が挙げられる。膜性能とひだ構造の関係については、ひだを伸長することによって実質的な膜面積を大きくし、透水性を向上させられることが提示されている(特許文献3、4、5)。
また、製膜原液中にナノボールを分散させて製膜を行うことで分離膜表面に突起を形成する方法や、凹凸を有する多孔性支持体の表面に原料液を塗布して分離活性層を形成し、シート面積当たりの有効膜面積(比表面積)を大きくして透水性を向上させる方法も提案されている(特許文献6、7)。
上述のように、ひだ構造や多孔性支持体の構造を変えることにより、高い塩除去性および透水性を付与できるが、ひだの大きさは不均一になりやすく、例えば過度に大きいひだが存在する場合、高圧で使用した際にひだが潰れ、塩除去性や透水性の低下を引き起こしたり、長期運転において膜面汚れ(ファウリング)を誘発したりすることがある。本発明の目的は、これらの問題を解決し、高い塩除去性および透水性、連続運転安定性を有する複合半透膜を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。
(1)凸部と凹部とが連続的に繰り返される多孔性支持膜と、
前記多孔性支持膜上に形成されて凸部と凹部とが連続的に繰り返される、ひだ構造の分離機能層とを備えた複合半透膜であって、
前記多孔性支持膜を電子顕微鏡を用いて膜面方向における長さが50μmである任意の10箇所の断面を観察したときの10点平均面粗さが1.0〜30μmであり、かつ
前記分離機能層の膜面方向における長さが2.0μmである任意の10箇所の断面を観察したときに、各断面において、前記分離機能層の10点平均面粗さの5分の1以上の高さを有するひだの平均数密度が10.0個/μm以上であることを特徴とする複合半透膜。
(2)前記多孔性支持膜の10点平均面粗さが5.0〜30μmである、(1)に記載の複合半透膜。
(3)電子顕微鏡を用いて前記分離機能層の断面を観察したときに、各断面において、前記ひだの平均高さが100nm以上であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の複合半透膜。
(4)1つの前記断面における前記ひだの高さの標準偏差が80nm以下であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の複合半透膜。
(1)凸部と凹部とが連続的に繰り返される多孔性支持膜と、
前記多孔性支持膜上に形成されて凸部と凹部とが連続的に繰り返される、ひだ構造の分離機能層とを備えた複合半透膜であって、
前記多孔性支持膜を電子顕微鏡を用いて膜面方向における長さが50μmである任意の10箇所の断面を観察したときの10点平均面粗さが1.0〜30μmであり、かつ
前記分離機能層の膜面方向における長さが2.0μmである任意の10箇所の断面を観察したときに、各断面において、前記分離機能層の10点平均面粗さの5分の1以上の高さを有するひだの平均数密度が10.0個/μm以上であることを特徴とする複合半透膜。
(2)前記多孔性支持膜の10点平均面粗さが5.0〜30μmである、(1)に記載の複合半透膜。
(3)電子顕微鏡を用いて前記分離機能層の断面を観察したときに、各断面において、前記ひだの平均高さが100nm以上であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の複合半透膜。
(4)1つの前記断面における前記ひだの高さの標準偏差が80nm以下であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の複合半透膜。
本発明によって、複合半透膜における高い塩除去性および透水性の両立が実現される。
1.複合半透膜
複合半透膜は、多孔性支持膜と、前記多孔性支持膜上に設けられた分離機能層とを備える。前記多孔性支持膜の10点平均面粗さが1.0〜30μmであり、かつ前記分離機能層のひだの平均数密度が10.0個/μm以上であることを特徴とする。
複合半透膜は、多孔性支持膜と、前記多孔性支持膜上に設けられた分離機能層とを備える。前記多孔性支持膜の10点平均面粗さが1.0〜30μmであり、かつ前記分離機能層のひだの平均数密度が10.0個/μm以上であることを特徴とする。
(1−1)多孔性支持膜
多孔性支持膜は、分離機能層を支持することで、複合半透膜に強度を与える。分離機能層は多孔性支持膜の少なくとも片面に設けられる。
多孔性支持膜は、分離機能層を支持することで、複合半透膜に強度を与える。分離機能層は多孔性支持膜の少なくとも片面に設けられる。
基材の上に多孔性支持膜を設け、さらにその多孔性支持膜の上に分離機能層を設けることができる。また、基材の上に分離機能層を設け、さらにその分離機能層の上に多孔性支持膜を設けることもできる。多孔性支持膜に複数の分離機能層を設けても良いが、通常、片面に1層の分離機能層があれば十分である。なお、膜の支持性、目詰まりの防止および透水性の確保という理由から、目の粗い層から目の細かい層の順に積層するのが一般的である。そこで、基材の上に多孔性支持膜を設け、さらにその多孔性支持膜の上に分離機能層を設ける構成が採用されることが多い。
多孔性支持膜の素材にはポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシドなどのホモポリマーあるいはコポリマーを単独であるいはブレンドして使用することができる。ここでセルロース系ポリマーとしては酢酸セルロース、硝酸セルロースなど、ビニルポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが使用できる。中でもポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどのホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。より好ましくは酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、またはポリフェニレンスルホンが挙げられ、さらに、これらの素材の中では化学的、機械的、熱的に安定性が高く、成型が容易であることからポリスルホンが一般的に使用できる。
具体的には、次の化学式に示す繰り返し単位からなるポリスルホンを用いると、孔径が制御しやすく、寸法安定性が高いため好ましい。
例えば、上記ポリスルホンのN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMF)溶液を、基材上に一定の厚さに注型し、それを水中で湿式凝固させることによって、表面の大部分が直径数1〜30nmの微細な孔を有する多孔性支持膜を得ることができる。
上記の多孔性支持膜の厚みは、複合半透膜の強度およびそれを膜エレメントにしたときの充填密度に影響を与える。十分な機械的強度および充填密度を得るためには、30〜300μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは50〜250μmの範囲内である。また、多孔性支持膜の厚みは、10〜200μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは20〜100μmの範囲内である。基材の厚みは10〜250μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは20〜200μmの範囲内である。
なお、本書において、特に付記しない限り、膜の厚みとは、平均値を意味する。ここで平均値とは相加平均値を表す。すなわち、膜の厚みは、断面観察で厚み方向に直交する方向(膜の面方向)に20μm間隔で測定した20点の厚みの平均値を算出することで求められる。
本発明においては、多孔性支持膜は凸部と凹部とが連続的に繰り返されており、前記多孔性支持膜を電子顕微鏡を用いて膜面方向における長さが50μmである任意の10箇所の断面を観察したときの10点平均面粗さが1.0〜30μmであり、より好ましくは、5.0〜30μmである。多孔性支持膜表面の凹凸はシート面積当たりの有効膜面積を大きくでき、かつ後述する分離機能層の形成が満足に行える必要がある。
そこで本発明者らは、多孔性支持膜表面の凹凸構造に着目し、鋭意検討を行った。その結果、多孔性支持膜の10点平均面粗さを上記範囲となるように精密に制御することで分離機能層の形成能を損なうことなくシート面積当たりの有効膜面積を大きくでき、高い塩除去性と透水性を両立できることを見出した。
本発明における多孔性支持膜の凸部とは、10点平均面粗さの5分の1以上の高さの凸部のことを言う。10点平均面粗さとは、次のような算出方法で得られる値である。まず電子顕微鏡により、膜面に垂直な方向の断面を下記の倍率で観察する。得られた断面画像には、多孔性支持膜(図1に符号“1”で示す。)の表面が凸部と凹部が連続的に繰り返される曲線として表れる。この曲線について、ISO4287:1997に基づき定義される粗さ曲線を求める。上記粗さ曲線の平均線の方向に50μmの幅で断面画像を抜き取る(図1)。
なお、平均線とは、ISO4287:1997に基づき定義される直線であり、測定長さにおいて、平均線と粗さ曲線とで囲まれる領域の面積の合計が平均線の上下で等しくなるように描かれる直線である。
抜き取った幅50μmの画像において、上記平均線を基準線2として、多孔性支持膜における凸部の高さと、凹部の深さをそれぞれ測定する。最も高い凸部から徐々に高さが低くなって5番目の高さまでの5つの凸部の高さH1〜H5の絶対値について平均値を算出し、最も深い凹部から徐々に深さが浅くなって5番目の深さまでの5つの凹部の深さD1〜D5の絶対値について平均値を算出して、さらに、得られた2つの平均値の絶対値の和を算出する。こうして得られた和が、10点平均面粗さである。
多孔性支持膜の凸部高さや凹部深さは、透過型電子顕微鏡(TEM)、TEMトモグラフィー、集束イオンビーム/走査型電子顕微鏡(FIB/SEM)等の観察手法を用いて分析できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、複合半透膜サンプルに白金または白金−パラジウムまたは四酸化ルテニウム、好ましくは四酸化ルテニウムを薄くコーティングして3〜6kVの加速電圧で高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)を用いて観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、日立製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。観察倍率は100〜2,000倍が好ましく、得られた電子顕微鏡写真から観察倍率を考慮して多孔性支持膜の凸部高さや凹部深さをスケールなどで直接測定することができる。
多孔性支持膜の凸部や凹部の形状は、特に限定されないが、分離機能層形成におけるひだ構造を均一化するために、モノマー溶液の塗布や液切りを安定的に行えることが重要である。これらの点で、多孔性支持膜表面上部から観察した形では、楕円、円、長円、台形、三角形、長方形、正方形、平行四辺形、菱形、不定形がある。立体的には凸部の最高点から最低点に向かって広がる形や狭まる形で賦形したものが用いられる。図2のように多孔性支持膜の側面が矩形形状であっても、図3のように一部が円弧形状であっても良い。また図4や図5に示すように独立した凸部や凹部形状有する形状であっても良い。
多孔性支持膜を構成する基材としては、例えば、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリオレフィン系重合体、あるいはこれらの混合物や共重合体等が挙げられるが、機械的強度、耐熱性、耐水性等により優れた多孔性支持膜を得られることから、ポリエステル系重合体であることが好ましい。
本発明で用いられるポリエステル系重合体とは、酸成分とアルコール成分からなるポリエステルである。酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸およびフタル酸などの芳香族カルボン酸、アジピン酸やセバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、およびシクロヘキサンカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸などを用いることができる。また、アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびポリエチレングリコールなどを用いることができる。
ポリエステル系重合体の例としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂およびポリブチレンサクシネート樹脂等が挙げられ、またこれらの樹脂の共重合体も挙げられる。
前記基材に用いられる布帛には、強度、流体透過性の点で繊維状基材を用いることが好ましい。基材としては、長繊維不織布及び短繊維不織布のいずれも好ましく用いることができる。特に、長繊維不織布は基材には高分子重合体の溶液を流延した際の浸透性に優れ、多孔性支持膜が剥離すること、さらには基材の毛羽立ち等により膜が不均一化すること、及びピンホール等の欠点が生じたりすることを抑制できる。また、基材が熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布からなることにより、短繊維不織布を用いたときに起こる、毛羽立ちによって生じる高分子溶液流延時の不均一化や、膜欠点を抑制することができる。また、分離膜の連続製膜においては、製膜方向に対し張力がかけられることからも、基材にはより寸法安定性に優れる長繊維不織布を用いることが好ましい。
長繊維不織布は、成形性、強度の点で、多孔性支持層とは反対側の表層における繊維が、多孔性支持層側の表層の繊維よりも縦配向であることが好ましい。そのような構造によれば、強度を保つことで膜破れ等を防ぐ高い効果が実現される。より具体的に、前記長繊維不織布の、多孔性支持層とは反対側の表層における繊維配向度は、0°〜25°であることが好ましく、また、多孔性支持層側表層における繊維配向度との配向度差が10°〜90°であることが好ましい。
分離膜の製造工程やエレメントの製造工程においては加熱する工程が含まれるが、加熱により多孔性支持膜または分離機能層が収縮する現象が起きる。特に連続製膜において張力が付与されていない幅方向において顕著である。収縮することにより、寸法安定性等に問題が生じるため、基材としては熱寸法変化率が小さいものが望まれる。不織布において多孔性支持層とは反対側の表層における繊維配向度と多孔性支持層側表層における繊維配向度との差が10°〜90°であると、熱による幅方向の変化を抑制することもでき、好ましい。
ここで、繊維配向度とは、多孔性支持膜を構成する不織布基材の繊維の向きを示す指標であり、連続製膜を行う際の製膜方向を0°とし、製膜方向と直角方向、すなわち不織布基材の幅方向を90°としたときの、不織布基材を構成する繊維の平均の角度のことを言う。よって、繊維配向度が0°に近いほど縦配向であり、90°に近いほど横配向であることを示す。
繊維配向度は、不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、該サンプルの表面を走査型電子顕微鏡で100〜1000倍で撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維について、不織布の長手方向(縦方向、製膜方向)を0°とし、不織布の幅方向(横方向)を90°としたときの角度を測定し、それらの平均値を、小数点以下第一位を四捨五入して繊維配向度として求める。
(1−2)分離機能層
分離機能層は、複合半透膜において溶質の分離機能を担う層である。分離機能層の組成および厚み等の構成は、複合半透膜の使用目的に合わせて設定される。
分離機能層は、複合半透膜において溶質の分離機能を担う層である。分離機能層の組成および厚み等の構成は、複合半透膜の使用目的に合わせて設定される。
一般に、分離機能層上の突起(ひだ)を拡大すると、透水性は向上するものの塩透過性も大きくなる。ひだを拡大することによって高い塩除去性と透水性を両立することができると考えられるのは、あくまで、透水性が上がることによって、塩透過量に対して水透過量が相対的に増加した結果として、塩除去性が高い状態に維持されるのであって、塩の透過性を抑制しているわけではない。むしろ、過度に拡大したひだの存在は、加圧時の変形、ひいては、膜構造破壊につながり、塩除去性を低下させることになる。また、多孔性支持膜上に形成されるひだの大きさが不均一だと長期運転において膜面汚れ(ファウリング)を誘発しやすい傾向にある。
本発明における分離機能層のひだとは、10点平均面粗さの5分の1以上の高さの突起のことを言う。
分離機能層のひだの平均数密度および高さは、多孔性支持膜の10点平均面粗さの測定と同様に透過型電子顕微鏡(TEM)、TEMトモグラフィー、集束イオンビーム/走査型電子顕微鏡(FIB/SEM)等の観察手法を用いて分析できる。
例えば、複合半透膜サンプルを、エポキシ樹脂で包埋後、四酸化オスミウムまたは四酸化ルテニウム、好ましくは四酸化オスミウムによる染色処理を行い、さらにガラスナイフまたはダイヤモンドナイフにより面出し加工および100nm以下の超薄切片作成を行い、50〜200kVの加速電圧で透過型電子顕微鏡を用いて観察する。透過型電子顕微鏡は、(日立、H7100FA)電子顕微鏡などが使用できる。観察倍率は5,000〜100,000倍が好ましく、ひだの平均数密度や高さを求めるには10,000〜50,000倍が好ましい。得られた電子顕微鏡写真から観察倍率を考慮してひだの平均数密度および高さをスケールなどで直接測定することができる。
10点平均面粗さは、電子顕微鏡により、膜面に垂直な断面を上記の倍率で観察する。得られた断面画像に現れる分離機能層表面の曲線について、ISO4287:1997に基づき定義される方法で多孔性支持膜の凹凸に起因するうねり曲線を除去し、分離機能層表面の粗さ曲線を求める。その後、上記粗さ曲線の平均線の方向に2.0μmの幅で断面画像を抜き取る。抜き取り部分の平均線を基準線として、分離機能層における突起(凸部)の山頂の高さと、谷底(凹部)の高さをそれぞれ測定する。最も高い山頂から5番目までの山頂の高さの絶対値について平均値を算出し、最も低い谷底から5番目までの谷底の高さの絶対値について平均値を算出して、得られた2つの平均値の和をさらに算出する。こうして得られた和が、10点平均面粗さである。
本発明における分離機能層のひだの平均数密度は、好ましくは10.0個/μm以上であることが好ましく、より好ましくは12.0個/μm以上である。また、分離機能層のひだの平均数密度は、好ましくは50個/μm以下であり、より好ましくは40個/μm以下である。ひだの平均数密度が10.0個/μm以上であることで、複合半透膜が十分な透水性を得られ、さらには加圧時のひだの変形を抑えることもでき、安定した膜性能を得られる。またひだの平均数密度が50個/μm以下であることで、ひだの成長が十分に起こり、所望の透水性を備えた複合半透膜を容易に得ることができる。
本発明における分離機能層のひだの高さは、好ましくは100nm以上、より好ましくは110nm以上である。また、分離機能層のひだの高さは、好ましくは1000nm以下であり、より好ましくは800nm以下である。ひだの高さが100nm以上であることで、十分な透水性を備えた複合半透膜を容易に得ることができる。また、ひだの高さが1000nm以下であることにより、複合半透膜を運転して使用する際にもひだが潰れることなく、安定した膜性能を得ることができる。
さらに、本発明における分離機能層のひだの高さの標準偏差は80nm以下であることが好ましい。標準偏差がこの範囲内であれば、均一な大きさのひだを形成でき、長期運転においても安定した膜性能を得ることができる。
分離機能層は、ポリアミドを主成分として含有してもよい。分離機能層を構成するポリアミドは、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との界面重縮合により形成することができる。ここで、多官能アミンまたは多官能酸ハロゲン化物の少なくとも一方が3官能以上の化合物を含んでいることが好ましい。
なお、本書において、「XがYを主成分として含有する」とは、YがXの60重量%以上、80重量%以上、又は90重量%以上を占めることを意味し、Xが実質的にYのみを含有する構成を含む。
ポリアミド分離機能層の厚みは、十分な分離性能および透過水量を得るために、通常0.01〜1μmの範囲内が好ましく、0.1〜0.5μmの範囲内がより好ましい。ここで、多官能アミンとは、一分子中に少なくとも2個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有し、そのアミノ基のうち少なくとも1つは第一級アミノ基であるアミンをいい、例えば、2個のアミノ基がオルト位やメタ位、パラ位のいずれかの位置関係でベンゼン環に結合したフェニレンジアミン、キシリレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミンなどの芳香族多官能アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族アミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4−アミノピペリジン、4−アミノエチルピペラジンなどの脂環式多官能アミン等を挙げることができる。中でも、膜の選択分離性や透過性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有する芳香族多官能アミンであることが好ましく、このような多官能芳香族アミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼンが好適に用いられる。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさから、m−フェニレンジアミン(以下、m−PDA)を用いることがより好ましい。これらの多官能アミンは、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。2種以上を同時に用いる場合、上記アミン同士を組み合わせてもよく、上記アミンと一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンを組み合わせてもよい。一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンとして、例えば、ピペラジン、1,3−ビスピペリジルプロパン等を挙げることができる。
多官能酸ハロゲン化物とは、一分子中に少なくとも2個のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物をいう。例えば、3官能酸ハロゲン化物としては、トリメシン酸クロリド、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸トリクロリド、1,2,4−シクロブタントリカルボン酸トリクロリドなどを挙げることができ、2官能酸ハロゲン化物としては、ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリドなどの芳香族2官能酸ハロゲン化物、アジポイルクロリド、セバコイルクロリドなどの脂肪族2官能酸ハロゲン化物、シクロペンタンジカルボン酸ジクロリド、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド、テトラヒドロフランジカルボン酸ジクロリドなどの脂環式2官能酸ハロゲン化物を挙げることができる。多官能アミンとの反応性を考慮すると、多官能酸ハロゲン化物は多官能酸塩化物であることが好ましい。また、膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、多官能酸塩化物は一分子中に2〜4個の塩化カルボニル基を有する多官能芳香族酸塩化物であることがより好ましい。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさの観点から、トリメシン酸クロリドを用いるとさらに好ましい。これらの多官能酸ハロゲン化物は、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。
2.複合半透膜の製造方法
次に、上記複合半透膜の製造方法について説明する。製造方法は、多孔性支持膜の形成工程および分離機能層の形成工程を含む。
次に、上記複合半透膜の製造方法について説明する。製造方法は、多孔性支持膜の形成工程および分離機能層の形成工程を含む。
(2−1)多孔性支持膜の形成工程
多孔性支持膜の形成工程は、多孔性基材に高分子溶液を塗布する工程、多孔性基材に高分子溶液を含浸させる工程、および前記溶液を含浸した前記多孔性基材を、高分子の良溶媒と比較して前記高分子の溶解度が小さい凝固浴に浸漬させて前記高分子を凝固させ、三次元網目構造を形成させる工程を含んでもよい。また、多孔性支持膜の形成工程は、多孔性支持膜の成分である高分子を、その高分子の良溶媒に溶解して高分子溶液を調製する工程を、さらに含んでいてもよい。
多孔性支持膜の形成工程は、多孔性基材に高分子溶液を塗布する工程、多孔性基材に高分子溶液を含浸させる工程、および前記溶液を含浸した前記多孔性基材を、高分子の良溶媒と比較して前記高分子の溶解度が小さい凝固浴に浸漬させて前記高分子を凝固させ、三次元網目構造を形成させる工程を含んでもよい。また、多孔性支持膜の形成工程は、多孔性支持膜の成分である高分子を、その高分子の良溶媒に溶解して高分子溶液を調製する工程を、さらに含んでいてもよい。
所定の構造をもつ多孔性支持膜を得るためには、高分子溶液の基材への含浸を制御する必要がある。高分子溶液の基材への含浸を制御するためには、例えば、基材上に高分子溶液を塗布した後、非溶媒に浸漬させるまでの時間を制御する方法、或いは高分子溶液の温度または濃度を制御することにより粘度を調製する方法が挙げられ、これらの製造方法を組み合わせることも可能である。
基材上に高分子溶液を塗布した後、凝固浴に浸漬させるまでの時間は、通常0.1〜5秒間の範囲であることが好ましい。凝固浴に浸漬するまでの時間がこの範囲であれば、高分子を含む有機溶媒溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。なお、凝固浴に浸漬するまでの時間の好ましい範囲は、用いる高分子溶液の粘度などによって適宜調製すればよい。
多孔性支持膜の材料としてポリスルホンを含有する場合、高分子溶液のポリスルホン濃度(すなわち固形分濃度)は、好ましくは12重量%以上であり、より好ましくは13重量%以上である。また、高分子溶液のポリスルホン濃度は、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは25重量%以下である。高分子濃度が12重量%以上であることで、連通孔が比較的小さく形成されるので、所望の孔径が容易に得られる。また、高分子濃度が30重量%を超えると、表面細孔が小さくなる傾向にあり、分離機能層を形成する際、モノマーの供給速度が小さくなり、結果的に形成されるひだが小さくなる。
高分子溶液塗布時の高分子溶液の温度は、ポリスルホンを用いる場合、通常10〜60℃の範囲内で塗布するとよい。この範囲内であれば、高分子溶液が析出することなく、高分子を含む有機溶媒溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。その結果、アンカー効果により多孔性支持膜が基材に強固に接合し、本発明の多孔性支持膜を得ることができる。なお、高分子溶液の好ましい温度範囲は、用いる高分子溶液の粘度などによって適宜調製すればよい。
基材上への高分子溶液の塗布は、種々のコーティング法によって実施でき、コンマコーティング、ダイコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング等のコーティング法が好ましく適用される。
本発明の良溶媒とは、高分子材料を溶解するものである。良溶媒としては、例えばN-メチル-2-ピロリドン(NMP);テトラヒドロフラン;ジメチルスルホキシド;テトラメチル尿素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド;アセトン、メチルエチルケトン等の低級アルキルケトン;リン酸トリメチル、γ−ブチロラクトン等のエステルおよびラクトン;並びにこれらの混合溶媒が挙げられる。
前記樹脂の非溶媒としては、例えば水、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、トリクロルエチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、低分子量のポリエチレングリコール等の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族アルコール、またはこれらの混合溶媒などが挙げられる。
また、上記高分子溶液は、多孔性支持膜の孔径、空孔率、親水性、弾性率などを調節するための添加剤を含有してもよい。孔径および空孔率を調節するための添加剤としては、水、アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等の水溶性高分子またはその塩、さらに塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸リチウム等の無機塩、ホルムアルデヒド、ホルムアミド等が例示されるが、これらに限定されるものではない。親水性や弾性率を調節するための添加剤としては、種々の界面活性剤が挙げられる。
凝固浴としては、通常水が使われるが、重合体を溶解しないものであればよい。組成によって多孔性支持膜の膜形態が変化し、それによって複合膜の膜形成性も変化する。また、凝固浴の温度は、−20℃〜100℃が好ましい。さらに好ましくは10〜30℃である。この範囲より高いと、熱運動により凝固浴面の振動が激しくなり、膜形成後の膜表面の平滑性が低下しやすい。逆に低すぎると凝固速度が遅くなり、製膜性に問題が生じる。
このような好ましい条件下で得られた多孔性支持膜は、膜中に残存する製膜溶媒を除去するために熱水洗浄する。このときの熱水の温度は50〜100℃が好ましく、さらに好ましくは60〜95℃である。この範囲より高いと、多孔性支持膜の収縮度が大きくなり、透水性が低下する。逆に、低いと洗浄効果が小さい。
本発明において、多孔性支持膜の表面に凹凸を形成する方法としては、多孔性支持膜製膜時に凹凸を形成する方法や、多孔性支持膜製膜後に凹凸を形成する方法が挙げられる。
製膜時に凹凸を形成する方法では、例えば高分子溶液をナイフエッジとロール面間の間隙(クリアランス)をセットしたドクターナイフを使用して、ミゾ付きロール上に流延、基材に転写することにより形成する方法、平膜状の未凝固の高分子溶液の一方の面を、複数の微小な窪みを有する型面に接触させながら凝固させ、複数の微小突起を形成する方法などが挙げられる。
製膜後に凹凸を形成する方法では、例えば刃物等の工具やレーザーにより、多孔性支持膜表面を切削加工する方法、高速に噴射されたスラリーを多孔性支持膜表面に衝突させるブラスト加工、エンボスロールを被加工材に押し当てロール形状を転写するエンボス加工、搬送される多孔性支持膜表面を研磨ロールで研磨するヘアライン加工、などが挙げられるが、加工精度や連続加工性、加工コストの点でエンボス加工またはヘアライン加工が好ましく適用される。
次に、複合半透膜を構成する分離機能層の形成工程の一例として、ポリアミドを主成分とする層の形成を挙げて説明する。ポリアミド分離機能層の形成工程では、前述の多官能アミンを含有する水溶液と、多官能酸ハロゲン化物を含有する水と非混和性の有機溶媒溶液とを用い、多孔性支持膜の表面で界面重縮合を行うことにより、ポリアミド骨格を形成することができる。
多官能アミン水溶液における多官能アミンの濃度は0.1重量%以上20重量%以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以上15重量%以下の範囲内である。この範囲であると十分な透水性と塩およびホウ素の除去性能を得ることができる。多官能アミン水溶液には、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との反応を妨害しないものであれば、界面活性剤や有機溶媒、アルカリ性化合物、酸化防止剤などが含まれていてもよい。界面活性剤は、多孔性支持膜表面の濡れ性を向上させ、アミン水溶液と非極性溶媒との間の界面張力を減少させる効果がある。有機溶媒は界面重縮合反応の触媒として働くことがあり、添加することにより界面重縮合反応を効率よく行える場合がある。
界面重縮合を多孔性支持膜上で行うために、まず、上述の多官能アミン水溶液を多孔性支持膜に接触させる。接触は、多孔性支持膜面上に均一にかつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、例えば、多官能アミン水溶液を多孔性支持膜にコーティングする方法や多孔性支持膜を多官能アミン水溶液に浸漬する方法を挙げることができる。多孔性支持膜と多官能アミン水溶液との接触時間は、5秒以上10分以下の範囲内であることが好ましく、10秒以上3分以下の範囲内であるとさらに好ましい。
多官能アミン水溶液を多孔性支持膜に接触させた後は、膜上に液滴が残らないように十分に液切りする。十分に液切りすることで、複合半透膜形成後に液滴残存部分が欠点となって複合半透膜の除去性能が低下することを防ぐことができる。液切りの方法としては、例えば、特開平2−78428号公報に記載されているように、多官能アミン水溶液接触後の多孔性支持膜を垂直方向に把持して過剰の水溶液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの気流を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させて水溶液の水分を一部除去することもできる。
次いで、多官能アミン水溶液接触後の多孔性支持膜に、多官能酸ハロゲン化物を含む水と非混和性の有機溶媒溶液を接触させ、界面重縮合により架橋ポリアミド分離機能層を形成させる。
水と非混和性の有機溶媒溶液中の多官能酸ハロゲン化物濃度は、0.01重量%以上10重量%以下の範囲内であると好ましく、0.02重量%以上2.0重量%以下の範囲内であるとさらに好ましい。多官能酸ハロゲン化物濃度が0.01重量%以上であることで十分な反応速度が得られ、また、10重量%以下であることで副反応の発生を抑制することができる。さらに、この有機溶媒溶液にDMFのようなアシル化触媒を含有させると、界面重縮合が促進され、さらに好ましい。
水と非混和性の有機溶媒は、多官能酸ハロゲン化物を溶解し、多孔性支持膜を破壊しないものが望ましく、多官能アミン化合物および多官能酸ハロゲン化物に対して不活性であるものであればよい。好ましい例として、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの炭化水素化合物が挙げられる。
多官能酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液を多孔性支持膜へ接触させる方法は、多官能アミン水溶液を多孔性支持膜へ被覆する方法と同様に行えばよい。
本発明の界面重縮合工程においては、多孔性支持膜上を架橋ポリアミド薄膜で十分に覆い、かつ、接触させた多官能酸ハロゲン化物を含む水と非混和性の有機溶媒溶液を多孔性支持膜上に残存させておくことが肝要である。このため、界面重縮合を実施する時間は、0.1秒以上3分以下が好ましく、0.1秒以上1分以下であるとより好ましい。界面重縮合を実施する時間が0.1秒以上3分以下であることで、多孔性支持膜上を架橋ポリアミド薄膜で十分に覆うことができ、かつ多官能酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液を多孔性支持膜上に保持することができる。
界面重縮合によって多孔性支持膜上にポリアミド分離機能層を形成した後は、余剰の溶媒を液切りする。液切りの方法は、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法を用いることができる。この場合、垂直方向に把持する時間としては、1分以上5分以下であることが好ましく、1分以上3分以下であるとより好ましい。短すぎると分離機能層が完全に形成せず、長すぎると有機溶媒が過乾燥となってポリアミド分離機能層に欠損部が発生し、膜性能が低下する。
3.複合半透膜の利用
複合半透膜は、プラスチックネットなどの原水流路材と、トリコットなどの透過水流路材と、必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿設した筒状の集水管の周りに巻回され、スパイラル型の複合半透膜エレメントとして好適に用いられる。さらに、このエレメントは、直列または並列に接続されて圧力容器に収納されることで、複合半透膜モジュールを構成することもできる。
3.複合半透膜の利用
複合半透膜は、プラスチックネットなどの原水流路材と、トリコットなどの透過水流路材と、必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿設した筒状の集水管の周りに巻回され、スパイラル型の複合半透膜エレメントとして好適に用いられる。さらに、このエレメントは、直列または並列に接続されて圧力容器に収納されることで、複合半透膜モジュールを構成することもできる。
また、上記の複合半透膜やそのエレメント、モジュールは、それらに原水を供給するポンプや、その原水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、原水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
流体分離装置の操作圧力は高い方が塩除去性は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、複合半透膜の耐久性を考慮すると、複合半透膜に被処理水を透過する際の操作圧力は、0.1MPa以上、10MPa以下が好ましい。供給水温度は、高くなると塩除去性が低下するが、低くなるにしたがい膜透過流束も減少するので、5℃以上、45℃以下が好ましい。また、供給水pHは、高くなると海水などの高塩濃度の供給水の場合、マグネシウムなどのスケールが発生する恐れがあり、また、高pH運転による膜の劣化が懸念されるため、中性領域での運転が好ましい。
複合半透膜によって処理される原水としては、海水、かん水、排水等の500mg/L〜100g/LのTDS(TotalDissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物が挙げられる。一般に、TDSは総溶解固形分量を指し、「質量÷体積」で表されるか、1Lを1kgと見なして「重量比」で表される。定義によれば、0.45ミクロンのフィルターで濾過した溶液を39.5〜40.5℃の温度で蒸発させ残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分から換算する。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
<複合半透膜の作製>
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート長繊維からなる不織布(繊度:1.1dtex、厚み:90μm、通気度:1cc/cm2/sec、繊維配向度:多孔性支持層側表層40°、多孔性支持層とは反対側の表層20°)上に、ポリスルホン15.7重量%のジメチルホルムアミド(DMF)溶液を180μmの厚みで室温(25℃)にてキャストし、ただちに20℃の純水中に浸漬して5分間放置し、厚さ130μmの繊維補強ポリスルホン多孔性支持膜ロールを作製した。
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート長繊維からなる不織布(繊度:1.1dtex、厚み:90μm、通気度:1cc/cm2/sec、繊維配向度:多孔性支持層側表層40°、多孔性支持層とは反対側の表層20°)上に、ポリスルホン15.7重量%のジメチルホルムアミド(DMF)溶液を180μmの厚みで室温(25℃)にてキャストし、ただちに20℃の純水中に浸漬して5分間放置し、厚さ130μmの繊維補強ポリスルホン多孔性支持膜ロールを作製した。
その後、表1に示す多孔性支持膜の10点平均面粗さになるようにブラッシング方式のヘアライン加工機を用い、搬送される多孔性支持膜のポリスルホンがキャストされた面に、研磨剤(ブラシ)を接触させて多孔性支持膜表面に微細な凹凸を形成した。
凹凸形成後の多孔性支持膜は70℃の熱水で2分間洗浄した。
次いで、メタフェニレンジアミン(1.8重量%)水溶液を塗布し、続いて、エアーノズルから窒素を吹き付け多孔性支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、トリメシン酸クロリド0.07重量%を含む25℃のn−デカン溶液を膜表面が完全に濡れるように塗布した。その後、膜から余分な溶液をエアブローで除去し、熱水洗浄(75℃)後、エアブローで液切りして複合半透膜を作製した。
(実施例2〜4)
実施例1において、研磨剤(ブラシ)の種類、多孔性支持膜への研磨剤の接触圧力を変更して、多孔性支持膜の10点平均面粗さを変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜4の複合半透膜を得た。
実施例1において、研磨剤(ブラシ)の種類、多孔性支持膜への研磨剤の接触圧力を変更して、多孔性支持膜の10点平均面粗さを変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜4の複合半透膜を得た。
(実施例5)
実施例1において、エンボスロール(柄:ダイヤ柄)を有するエンボス加工機を用いて、80℃および40kg/cmの条件で、多孔性支持膜の10点平均面粗さを変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の複合半透膜を得た。
実施例1において、エンボスロール(柄:ダイヤ柄)を有するエンボス加工機を用いて、80℃および40kg/cmの条件で、多孔性支持膜の10点平均面粗さを変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の複合半透膜を得た。
(実施例6)
実施例5において、エンボスロールの柄を梨地柄に変更して、多孔性支持膜の10点平均面粗さを変更した以外は、実施例5と同様にして、実施例6の複合半透膜を得た。
実施例5において、エンボスロールの柄を梨地柄に変更して、多孔性支持膜の10点平均面粗さを変更した以外は、実施例5と同様にして、実施例6の複合半透膜を得た。
(比較例1)
実施例1において、多孔性支持膜表面に微細な凹凸を形成しない以外は、実施例1と同様の手順によって多孔性支持膜を得た。得られた多孔性支持膜上に、実施例1と同様の手順によって分離機能層を形成し、比較例1における複合半透膜を得た。
実施例1において、多孔性支持膜表面に微細な凹凸を形成しない以外は、実施例1と同様の手順によって多孔性支持膜を得た。得られた多孔性支持膜上に、実施例1と同様の手順によって分離機能層を形成し、比較例1における複合半透膜を得た。
(比較例2〜3)
実施例1において、研磨剤(ブラシ)の種類、多孔性支持膜への研磨剤の接触圧力を変更して、多孔性支持膜の10点平均面粗さを50μm以上に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2〜3の複合半透膜を得た。
実施例1において、研磨剤(ブラシ)の種類、多孔性支持膜への研磨剤の接触圧力を変更して、多孔性支持膜の10点平均面粗さを50μm以上に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2〜3の複合半透膜を得た。
<多孔性支持膜の10点平均面粗さ測定>
多孔性支持膜サンプルを液体窒素中で凍結させ、賦形した凹凸形状が断面方向に現れるように直ちに炭素鋼製片刃(刃厚0.245mm)で切断して多孔性支持膜の断面試料を10個作製した。得られた断面試料について、走査型電子顕微鏡を用いて断面写真を撮影した。観察時の加速電圧は3kVであり、観察倍率は800倍であった。得られた断面写真について、長さ50μmの距離における凹凸部をスケールを用いて測定し、上述したように10点平均面粗さを算出した。
多孔性支持膜サンプルを液体窒素中で凍結させ、賦形した凹凸形状が断面方向に現れるように直ちに炭素鋼製片刃(刃厚0.245mm)で切断して多孔性支持膜の断面試料を10個作製した。得られた断面試料について、走査型電子顕微鏡を用いて断面写真を撮影した。観察時の加速電圧は3kVであり、観察倍率は800倍であった。得られた断面写真について、長さ50μmの距離における凹凸部をスケールを用いて測定し、上述したように10点平均面粗さを算出した。
<分離機能層のひだの平均数密度、高さおよび標準偏差の測定>
複合半透膜サンプルをエポキシ樹脂で包埋し、断面観察を容易にするためOsO4で染色して、これをウルトラミクロトームで切断し超薄切片を10個作製した。得られた超薄切片について、透過型電子顕微鏡を用いて断面写真を撮影した。観察時の加速電圧は100kVであり、観察倍率は10,000倍であった。得られた断面写真について、長さ2.0μmの距離におけるひだの数をスケールを用いて測定し、上述したように10点平均面粗さを算出した。この10点平均面粗さに基づいて、10点平均面粗さの5分の1以上の高さを有する部分をひだとして、その数を数えた。分離機能層のひだの平均数密度を求めた。また、断面写真中の全てのひだの高さをスケールで測定し、ひだの平均高さを求めると共に、標準偏差を計算した。
複合半透膜サンプルをエポキシ樹脂で包埋し、断面観察を容易にするためOsO4で染色して、これをウルトラミクロトームで切断し超薄切片を10個作製した。得られた超薄切片について、透過型電子顕微鏡を用いて断面写真を撮影した。観察時の加速電圧は100kVであり、観察倍率は10,000倍であった。得られた断面写真について、長さ2.0μmの距離におけるひだの数をスケールを用いて測定し、上述したように10点平均面粗さを算出した。この10点平均面粗さに基づいて、10点平均面粗さの5分の1以上の高さを有する部分をひだとして、その数を数えた。分離機能層のひだの平均数密度を求めた。また、断面写真中の全てのひだの高さをスケールで測定し、ひだの平均高さを求めると共に、標準偏差を計算した。
<塩除去性(TDS除去率)>
温度25℃、pH6.5のNaCl水溶液(供給水に該当)を、操作圧力0.5MPaで複合半透膜に供給することで、1週間に渡ってろ過処理を行った。得られた透過水を、塩除去性の測定に用いた。
温度25℃、pH6.5のNaCl水溶液(供給水に該当)を、操作圧力0.5MPaで複合半透膜に供給することで、1週間に渡ってろ過処理を行った。得られた透過水を、塩除去性の測定に用いた。
東亜電波工業株式会社製電気伝導度計で供給水および透過水の電気伝導度を測定することにより、実用塩分を得た。この実用塩分を換算して得られるTDS濃度から、次の式により塩除去性すなわちTDS除去率を求めた。
TDS除去率(%)=100×{1−(透過水中のTDS濃度/供給水中のTDS濃度)}
なお、初期性能として運転開始3時間後のTDS除去率を、通水後性能として運転開始1週間後のTDS除去率をそれぞれ測定し比較を行った。
なお、初期性能として運転開始3時間後のTDS除去率を、通水後性能として運転開始1週間後のTDS除去率をそれぞれ測定し比較を行った。
<膜透過流束>
運転開始3時間後および1週間後の上記ろ過処理により得られた透過水量を、膜面1平方メートルあたり、1日あたりの透水量(立方メートル)でもって膜透過流束(m3/m2/日)として表した。
運転開始3時間後および1週間後の上記ろ過処理により得られた透過水量を、膜面1平方メートルあたり、1日あたりの透水量(立方メートル)でもって膜透過流束(m3/m2/日)として表した。
以上の結果を表1に示す。実施例1〜6より、本発明により、高い塩除去性および透水性、連続運転安定性を有した複合半透膜が得られることがわかる。
本発明の複合半透膜は、特に、かん水や海水の脱塩に好適に用いることができる。
1 多孔性支持膜
2 基準線
H1、H2、H3、H4、H5 多孔性支持膜表面の凸部の高さ
D1、D2、D3、D4、D5 多孔性支持膜表面の凹部の深さ
2 基準線
H1、H2、H3、H4、H5 多孔性支持膜表面の凸部の高さ
D1、D2、D3、D4、D5 多孔性支持膜表面の凹部の深さ
Claims (4)
- 凸部と凹部とが連続的に繰り返される多孔性支持膜と、
前記多孔性支持膜上に形成されて凸部と凹部とが連続的に繰り返される、ひだ構造の分離機能層とを備えた複合半透膜であって、
前記多孔性支持膜を電子顕微鏡を用いて膜面方向における長さが50μmである任意の10箇所の断面を観察したときの10点平均面粗さが1.0〜30μmであり、かつ
前記分離機能層の膜面方向における長さが2.0μmである任意の10箇所の断面を観察したときに、各断面において、前記分離機能層の10点平均面粗さの5分の1以上の高さを有するひだの平均数密度が10.0個/μm以上であることを特徴とする複合半透膜。 - 前記多孔性支持膜の10点平均面粗さが5.0〜30μmである、請求項1に記載の複合半透膜。
- 電子顕微鏡を用いて前記分離機能層の断面を観察したときに、各断面において、前記ひだの平均高さが100nm以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の複合半透膜。
- 1つの前記断面における前記ひだの高さの標準偏差が80nm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の複合半透膜。
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