JP7409072B2 - 多孔質膜、複合膜及び多孔質膜の製造方法 - Google Patents

多孔質膜、複合膜及び多孔質膜の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7409072B2
JP7409072B2 JP2019231581A JP2019231581A JP7409072B2 JP 7409072 B2 JP7409072 B2 JP 7409072B2 JP 2019231581 A JP2019231581 A JP 2019231581A JP 2019231581 A JP2019231581 A JP 2019231581A JP 7409072 B2 JP7409072 B2 JP 7409072B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
porous membrane
membrane
polymer
polymer solution
polyvinylidene fluoride
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019231581A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2020104104A (ja
Inventor
健太 岩井
俊 志村
正行 花川
貴亮 安田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toray Industries Inc filed Critical Toray Industries Inc
Publication of JP2020104104A publication Critical patent/JP2020104104A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7409072B2 publication Critical patent/JP7409072B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Separation Using Semi-Permeable Membranes (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Description

本発明は、多孔質膜、複合膜及び多孔質膜の製造方法に関する。
近年、精密ろ過膜や限外ろ過膜等の多孔質膜は、浄水又は排水処理等の水処理分野、血液浄化等の医療分野、食品工業分野等、様々な分野で利用されている。そのような分野における多孔質膜は、繰り返し使用するため、多様な薬品で洗浄又は殺菌されることから、高い耐薬品性が求められるのが通常である。
優れた耐薬品性を示す多孔質膜としては、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含むポリマーからなる多孔質膜が知られている。例えば特許文献1には、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含むポリマーからなる多孔質膜の断面構造における孔径分布を小さくして、分離性能を向上させる技術が開示されている。また特許文献2においては、多孔質膜が含むポリフッ化ビニリデン系樹脂として長鎖分岐フルオロポリマーを選択することで、多孔質膜の孔径を拡大して透過性能を向上させる技術が開示されている。
特開2006-263721号 特開2016-510688号
しかしながら、分離性能又は透過性能の向上を図った、従来のポリフッ化ビニリデン系樹脂を含むポリマーからなる多孔質膜では、トレードオフの関係にある双方の性能を両立させることはできず、そのどちらか一方が犠牲となることが問題視されてきた。
そこで本発明は、優れた分離性能と透過性能とを両立することが可能であり、かつ、高い耐薬品性を有し、さらには、濁質を多量に含む被ろ過液に対しても、安定的なろ過運転性を長期に維持可能な、多孔質膜を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含むポリマーからなり、表面における、5nNの負荷に対する変形量Dの標準偏差が0.8nm以上であり、変動係数が0.3以上である、多孔質膜を提供する。
本発明の多孔質膜によれば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を主成分とするポリマーからなることによる高い耐薬品性を確保しつつ、優れた分離性能及び透過性能の双方が達成され、かつ、安定的なろ過運転性を長期に維持可能な多孔質膜を提供することができる。
原子間力顕微鏡(AFM)のタッピングモードで測定した多孔質膜の表面の変形量Dを決定するための、フォースカーブの一例である。 「三次元網目構造」を例示する、多孔質膜の拡大画像である。 「三次元網目構造」を例示する、多孔質膜の拡大画像である。 ろ過抵抗上昇度等の評価のための、中空糸膜モジュールの概略構成図である。 各実施例/比較例における多孔質膜の評価結果を示すグラフである。
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
本発明の多孔質膜は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含むポリマーからなり、少なくとも一方の表面における、5nNの負荷に対する変形量Dの標準偏差が0.8nm以上であり、変動係数が0.3以上であることを必要とする。
本発明の多孔質膜を構成するポリマーが含む、ポリフッ化ビニリデン系樹脂とは、フッ化ビニリデン単独重合体又はフッ化ビニリデン共重合体をいう。ここでフッ化ビニリデン共重合体とは、フッ化ビニリデン残基構造を有するポリマーをいい、典型的には、フッ化ビニリデンモノマーと、それ以外のフッ素系モノマー等との共重合体である。そのようなフッ素系モノマーとしては、例えば、フッ化ビニル、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン又は三フッ化塩化エチレンが挙げられるが、本発明の効果を損なわない程度に、上記フッ素系モノマー以外のエチレン等が共重合されていても構わない。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量は、大きくなると多孔質膜の透過性能が低下し、小さくなると多孔質膜の分離性能が低下するため、5万~100万Daが好ましい。多孔質膜が、薬液洗浄に晒される水処理用途に供される場合、重量平均分子量は10万~90万Daが好ましく、15万~80万Daがより好ましい。
本発明の多孔質膜は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を主成分とするポリマーからなることが好ましい。ここで「ポリフッ化ビニリデン系樹脂を主成分とする」とは、多孔質膜を構成するポリマーに占めるポリフッ化ビニリデン系樹脂の割合が、50質量%以上であることをいう。上記割合は、高い耐薬品性を確保するため、55質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。
下記式1の関係から決定される、本発明の多孔質膜を構成するポリマーについてのaの値は、0.32~0.41であり、かつ、bの値は、0.18~0.42であることが好ましい。
<S1/2=bM ・・・(式1)
aの値が0.41以下であることで、ポリマーの絶対分子量Mに対して回転半径<S1/2が適度に小さくなり、多孔質膜が形成される際にポリマーが多孔質膜の表層へと移動することで、多孔質膜の表層のポリマー密度が上昇し、それによって多孔質膜が優れた分離性能を発現するものと推測される。一方で、aの値が0.32以上であることで、ポリマー同士が適度に絡み合い、表層のポリマー密度が均質となって、さらに高い分離性能が発現するものと推測される。さらに多孔質膜の表層のポリマー密度の上昇に伴って、内層のポリマー密度は低下するため、優れた分離性能と同時に、高い透過性能が発現するものと推測される。aの値は、0.37~0.40であることがより好ましく、0.37~0.39であることがさらに好ましい。
上記ポリマーについてのbの値は、ポリマー同士の絡み合いによる表層のポリマー密度の均質化によって、さらに分離性能を高めるため、0.18~0.42であることが好ましく、0.20~0.38であることがより好ましく、0.25~0.33であることがさらに好ましい。
上記ポリマーについてのaの値を0.32~0.41の範囲により簡便に調整するため、本発明の多孔質膜は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂として、分岐ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含むことが好ましい。ポリフッ化ビニリデン系樹脂に占める分岐ポリフッ化ビニリデン系樹脂の割合は、10~100質量%が好ましく、25~100質量%がより好ましい。
また、aの値を0.32~0.41の範囲により簡便に調整するため、分岐ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量は、5万~100万Daが好ましく、10万~60万Daがより好ましく、12万~30万Daがさらに好ましい。
さらに、上記ポリマーについてのaの値を0.32~0.41の範囲により簡便に調整するためには、分岐ポリフッ化ビニリデン系樹脂は溶融粘度が30kP以下であることが好ましく、20kP以下であることがより好ましく、10kP以下であることがさらに好ましい。
上記ポリマーについてのa及びbの値を、所定の範囲により簡便に調整するため、本発明の多孔質膜を構成するポリマーは、親水性樹脂を含むことが好ましい。さらに、本発明の多孔質膜を構成するポリマーが親水性樹脂を含むことで、汚れが多孔質膜に付着しづらくなる。
ここで「親水性樹脂」とは、水との親和性が高く、水に溶解する樹脂、又は、水に対する接触角がポリフッ化ビニリデン系樹脂よりも小さい樹脂をいう。親水性樹脂としては、例えば、セルロースアセテート若しくはセルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル、脂肪酸ビニルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド若しくはポリメタクリル酸メチル等のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの重合体、あるいは、それら重合体の共重合体が挙げられる。
本発明の多孔質膜の少なくとも一方の表面における、5nNの負荷に対する変形量D(Deformation)は以下のように測定される。
多孔質膜サンプルの表面を、大気中で原子間力顕微鏡(以下、「AFM」)を用いてタッピングモードで観察し、5μm四方の領域を、無作為に選択する。この領域を、0.5μm四方に100分割し、その0.5μm四方の分割領域それぞれの中心点(対角線の交点)100箇所において、多孔質膜の表面に5nNの負荷をかけたときの変形量Dを測定する。無作為に選択した他の二つの5μm四方の領域についても同様の測定を繰り返し、測定された変形量Dの値全てについての平均値、標準偏差、変動係数を算出する。
AFMのタッピングモードでの、5nNの負荷に対する変形量Dの測定は、より具体的には、図1に示すように、横軸にチップ-サンプル間距離、縦軸に荷重をとったフォースカーブ上において、探針が円錐形のカンチレバーを多孔質膜サンプルに近付ける前の点をH点、荷重(負荷)が立ち上がる瞬間をI点、荷重(負荷)が最大荷重(負荷)の90%となる点をJ点、最大荷重(負荷)点をK点としたときに、JK間の距離を、5nNの負荷に対する変形量Dとすることができる。
多孔質膜の表面における、負荷に対する変形量Dの標準偏差及び変動係数は、多孔質膜の表面に相対的に硬い部分と軟らかい部分とが存在し、表面の硬さの分布が大きいと、それに比例して大きくなる。本発明の多孔質膜は、その表面における5nNの負荷に対する変形量Dの標準偏差が0.8nm以上であり、変動係数が0.3以上であることで、被ろ過液等と接触することとなる多孔質膜の表面が適度な硬さ分布を有し、相対的に硬い部分が濁質等に対する保持点となって、多孔質膜全体の擦過を抑制することで、ろ過運転性を長期に維持可能であるものと推測される。
変形量Dの平均値は、多孔質膜の表面全体の変形を抑制するため、3nm以下であることが好ましい。
また本発明の多孔質膜は、多孔質膜の表面の目詰まりを防ぎ、エアースクラビングや逆流洗浄(以下、「逆洗」)の効率を向上させるため、多孔質膜の表面の算術平均粗さRaが20nm以下であり、かつ、二乗平均平方根粗さRqが、20nm以下であることが好ましい。
本発明の多孔質膜の少なくとも一方の表面における、算術平均粗さRa及び二乗平均平方根粗さRqは、以下のように測定される。
多孔質膜サンプルの表面を、大気中でAFMを用いて観察し、5μm四方の領域を、無作為に選択する。この領域の粗さ解析を行う。無作為に選択した他の四つの5μm四方の領域についても同様の粗さ解析を繰り返し、それぞれの値の平均値を、算術平均粗さRa及び二乗平均平方根粗さRqとすることができる。
本発明の多孔質膜は、ポリマー同士の絡み合いによる表層のポリマー密度の均質化によって、さらに分離性能を高めるため、三次元網目構造を有することが好ましい。ここで「三次元網目構造」とは、図2及び図3に示すように、本発明の多孔質膜を構成するポリマーが、三次元的に、網目状に広がっている構造をいう。三次元網目構造は、網目を形成するポリマーに仕切られた、細孔及びボイドを有する。
上記のa及びbの値は、多角度光散乱検出器(以下、「MALS」)及び示差屈折率計(以下、「RI」)を備えた、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」)であるGPC-MALSにより測定される、回転半径<S1/2と、絶対分子量Mとの関係に基づき、決定することができる。GPC-MALSの測定は、多孔質膜を構成するポリマーを、溶媒に溶解して行う。溶媒には、ポリマーの溶解性を向上させるため、塩を添加しても構わない。ポリフッ化ビニリデン系樹脂についてGPC-MALSの測定をする場合においては、例えば、0.1mol/Lの塩化リチウムを添加した、N-メチル-2-ピロリドン(以下、「NMP」)を用いることが好ましい。
GPC-MALSにより測定される、回転半径<S1/2と、絶対分子量Mとの関係は、コンフォメーションプロットと呼ばれ、ポリマーの研究において一般的に用いられる手法によって下記式1のように近似することで、上記a及びbの値を決定することができる。
<S1/2=bM ・・・(式1)
本発明の複合膜は、本発明の多孔質膜と、他の層と、を備え、本発明の多孔質膜が、表面部に配置されていることを特徴とする。ここで複合膜の「表面部」とは、複合膜の表面から、その厚み方向に20μmの深さまでの部位をいう。ここで複合膜が中空糸状である場合には、その内表面及び/又は外表面がここでいう「複合膜の表面」となり、複合膜の厚み方向は、中空糸膜の径方向と一致する。優れた分離性能を示す本発明の多孔質膜が表面部に配置されていることで、被ろ過液に含まれる成分が複合膜の内部に侵入しにくく、複合膜が長期にわたり高い透過性能を維持することができる。
上記の他の層は、多孔質膜と重なり層状を形成することが可能な構成要素であれば特に限定はされないが、上記の他の層が、支持体であることが好ましい。ここで「支持体」とは、多孔質膜を物理的に補強するための、多孔質膜よりも破断強力が高い構造体をいう。支持体の破断強力を高めるためには、支持体の破断強度は、3MPa以上であることが好ましく、10MPa以上であることがより好ましい。なお複合膜が中空糸状である場合には、支持体の破断強力は300gf以上であることが好ましく、800gf以上であることがより好ましい。また支持体は、複合膜の強力をより高めるため、繊維状組織、柱状組織又は球状組織を有することが好ましい。
支持体の破断強度又は破断強力は、引張試験機を用い、長さ50mmの試料について、引張速度50mm/分の条件で引張試験を5回繰り返し、それら平均値として算出することができる。なお、複合膜の全体積に占める支持体の体積の割合が50%以上である場合には、複合膜の破断強度又は破断強力を、その構成要素である支持体の破断強度又は破断強力と見なすことができる。
本発明の多孔質膜又は複合膜の分画分子量は、5,000~80,000Daであることが好ましく、8,000~60,000Daであることがより好ましく、10,000~40,000Daであることがさらに好ましい。ここで「分画分子量」とは、被ろ過液に含まれる成分の分子量の内、多孔質膜で90%除去できる、最小の分子量をいう。
本発明の多孔質膜は、表層のポリマー密度を高め、優れた分離性能を発現させるため、平均表面孔径が3~16nmであることが好ましく、6~14nmであることがより好ましく、8~11nmであることがさらに好ましい。多孔質膜の平均表面孔径は、多孔質膜の表面を電子顕微鏡(以降、「SEM」)で観察することで算出できる。
より具体的には、多孔質膜の表面を3万~10万倍の倍率でSEMを用いて観察し、無作為に選択した300個の孔の面積をそれぞれ測定する。各孔の面積から、孔が円であった仮定したときの直径を孔径としてそれぞれ算出し、それらの平均値を、表面平均孔径とすることができる。
本発明の多孔質膜又は複合膜は、平均表面孔径が上記の範囲であり、かつ25℃、50kPaにおける純水透水性が、0.1~0.8m/m/hrであることが好ましく、0.3~0.7m/m/hrであることがより好ましい。また本発明の多孔質膜又は複合膜の50kPaにおける純水透水性は、多孔質膜が変形しない範囲の圧力で膜面積及び時間当たりの透水量を測定し、それらの値を50kPaの圧力下の値にそれぞれ換算して、算出すればよい。
本発明の多孔質膜の製造方法は、(A)ポリフッ化ビニリデン系樹脂を主成分とするポリマーを溶媒に溶解させて、ポリマー溶液を得る、ポリマー溶液調製工程と、(B)上記ポリマー溶液を20℃以下の非溶媒中で凝固させて、多孔質膜を形成する、多孔質膜形成工程と、を備えることを必要とする。
ポリマー溶液調製工程で用いる溶媒としては、良溶媒が好ましい。ここで「良溶媒」とは、60℃以下の低温領域でもポリフッ化ビニリデン系樹脂を5質量%以上溶解させることができる溶媒をいう。良溶媒としては、例えば、NMP、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素もしくはリン酸トリメチル又はそれらの混合溶媒が挙げられる。
ポリマー溶液調製工程で得られるポリマー溶液は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の他に、親水性樹脂等の第二の樹脂、可塑剤又は塩等を適宜含んでいても構わない。
またポリマー溶液が可塑剤又は塩を含むことで、ポリマー溶液の溶解性が向上する。可塑剤としては、例えば、グリセロールトリアセテート、ジエチレングリコール、フタル酸ジブチル又はフタル酸ジオクチル等が挙げられる。塩としては、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム又は硫酸バリウムが挙げられる。
ポリマー溶液調製工程で得られるポリマー溶液の濃度は、高い分離性能と透過性能とを両立させるため、15~30質量%であることが好ましく、20~25質量%であることがより好ましい。
ポリマー溶液調製工程においてポリマーが溶媒に完全溶解したかどうかは、目視で濁り又は不溶物がないことを確認して判断することができるが、吸光度計を用いて確認することが好ましい。ポリマーの溶解が不十分である場合には、ポリマー溶液の保存安定性が低下するばかりでなく、製造される多孔質膜が不均質な構造となり、優れた分離性能を発現しにくい状況となる。なお得られたポリマー溶液の吸光度は、波長500nmにおいて0.50以下であることが好ましく、0.09以下であることがより好ましい。
ポリマー溶液調製工程において溶媒に溶解するポリフッ化ビニリデン系樹脂の結晶化度は、製造される多孔質膜を構成するポリマーについてのa及びbの値を、所定の範囲により簡便に調整するため、35%以上であることが好ましく、38%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。ポリフッ化ビニリデン系樹脂の結晶化度は、示差走査熱量計(以下、「DSC」)の測定結果から算出することができる。
多孔質膜形成工程における「非溶媒」とは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の融点又は溶媒の沸点まで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解も膨潤もさせない溶媒をいう。非溶媒としては、例えば、水、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、四塩化炭素、o-ジクロルベンゼン、トリクロルエチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール若しくは低分子量のポリエチレングリコール等の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族多価アルコール、芳香族多価アルコール、塩素化炭化水素、又は、その他の塩素化有機液体あるいはそれらの混合溶媒が挙げられる。
多孔質膜形成工程において連続的に多孔質膜の形成を行う場合には、ポリマー溶液と非溶媒とを接触させる凝固浴において、ポリマー溶液の溶媒が非溶媒と混合され、ポリマー溶液由来の溶媒の濃度が上昇する。そのため、凝固浴中の液体の組成が一定範囲に保たれるように、凝固浴中の非溶媒を入れ替えることが好ましい。凝固浴中の良溶媒の濃度が低いほど、ポリマー溶液の凝固が速くなるため、多孔質膜の構造が均質化され、優れた分離性能を発現させることができる。また、ポリマー溶液の凝固が速くなるため製膜速度を上げるでき、多孔質膜の生産性を向上させることができる。凝固浴中の良溶媒の濃度は、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
通常の多孔質膜の形成においては、ポリマー溶液を凝固させる非溶媒の温度が低いほど分離性能が向上するが、その一方で透過性能が低下してしまう、いわゆるトレードオフの関係が存在する。多孔質膜を形成するためのポリマー溶液は、該ポリマーについてのa及びbの値が、所定の範囲に調整されていることで、非溶媒の温度をより低温化した場合においても、優れた透過性能を実現しやすくなる。凝固浴中の、ポリマー溶液及び/又は非溶媒を含む液体の温度は、20℃以下である必要があるが、0~20℃が好ましく、5~15℃がより好ましい。
製造される多孔質膜の形状は、多孔質膜形成工程におけるポリマー溶液の凝固の態様により制御することができる。平膜状の多孔質膜を製造する場合には、例えば、不織布、金属酸化物又は金属からなるフィルム状の支持体に、ポリマー溶液を塗布したものを凝固浴に浸漬させることができる。
中空糸膜状の多孔質膜を製造する場合には、二重管口金の外周部からポリマー溶液を、中心部から芯液を、同時に非溶媒の入った凝固浴に吐出することができる。芯液としては、ポリマー溶液調製工程における良溶媒等を用いることが好ましい。またポリマー、金属酸化物又は金属からなる中空糸状の支持体の表面に、多孔質膜を形成しても構わない。ポリマーからなる中空糸状の支持体の表面に多孔質膜を形成する方法としては、例えば、三重管口金を用いて、中空糸状の支持体の原料となる溶液と、ポリマー溶液とを同時に吐出する方法、又は、予め製膜した中空糸状の支持体の表面にポリマー溶液を塗布したものを、凝固浴中の非溶媒を通過させる方法が挙げられる。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例及び比較例における測定、評価は次のとおり行った。
(1)5nNの負荷に対する多孔質膜の表面の変形量D
多孔質膜を1cm四方に切り、測定対象となる表面が上になるようにサンプル台に接着し、多孔質膜サンプルを作製した。この多孔質膜サンプルをAFM(Bruker AXS社製;Dimension FastScan)で観察して、変形量Dの平均値、標準偏差、変動係数をそれぞれ算出した。具体的な測定条件は以下のとおりとした。なお、カンチレバーは測定前に都度校正をした。
走査モード : 大気中ナノメカニカルマッピング
探針 : カンチレバー(Bruker AXS社製;RTESPA-150)
最大荷重(負荷) : 5nN
走査範囲 : 5μm×5μm
走査速度 : 0.5Hz
ピクセル数 : 256×256

測定温度 : 25℃
(2)多孔質膜の表面の算術平均粗さRa、二乗平均平方根粗さRq
上記(1)の多孔質膜サンプルを用いて、上記(1)と同条件で観察し、算術平均粗さRa、二乗平均平方根粗さRqをそれぞれ算出した。
(3)多孔質膜を構成するポリマーについてのa値及びb値
蒸留水中に浸漬した多孔質膜又は複合膜を、クライオスタット(Leica製;Jung CM3000)を用いて-20℃で凍結し、多孔質膜の切片(複合膜においては、表面部の多孔質膜の切片)を採取して、25℃で1晩、真空乾燥した。真空乾燥後の5mgの多孔質膜に5mLの0.1M塩化リチウム添加NMPを加え、50℃で約2時間撹拌した。得られたポリマー溶液を、以下の条件でGPC-MALS(カラム:昭和電工製;Shodex KF-806M φ8.0mm×30cm 2本を直列に接続、示差屈折率計:Wyatt Technology製;Optilab rEX、MALS:Wyatt Technology製;DAWN HeLEOS)に注入して測定した。注入したポリマー溶液は、27~43分間の範囲でカラムから溶出した。
カラム温度 : 50℃
検出器温度 : 23℃
溶媒 : 0.1M塩化リチウム添加NMP
流速 : 0.5mL/分
注入量 : 0.3mL
RIから得られた、溶出時間tのときのポリマー濃度c、MALSから得られた、溶出時間tのときの過剰レーリー比Rθiから、sin(θ/2)と(K×c/Rθi1/2とのプロットを行い(Berry plot又はZimm plot;下記式3)、その近似式のθ→0の値から、各溶出時間tにおける絶対分子量MWiを算出した。ここで、Kは光学定数であり、下記式2から算出される。なお式2におけるdn/dcは、ポリマー濃度の変化に対するポリマー溶液の屈折率の変化量、すなわち屈折率増分であるが、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を主成分とするポリマーを測定対象とし、かつ上記の溶媒を用いる場合には、屈折率増分として-0.050mL/gの値を適用することができる。
K=4π×n ×(dn/dc)/(λ×N) ・・・(式2)
: 溶媒の屈折率
dn/dc : 屈折率増分
λ : 入射光の真空中での波長
: アボガドロ数
また、各溶出時間tにおける回転半径<S1/2の値は、下記式3の傾きから算出した。
(Kc/Rθi1/2=MWi -1/2{1+1/6(4πn/λ)<S>sin(θ/2) ・・・(式3)
式3から算出される、各溶出時間tにおける絶対分子量MWiをx軸にとって、かつ、各溶出時間tにおける回転半径<S1/2をy軸にとってプロットし、上記の式1で近似して、多孔質膜を構成するポリマーについてのaの値及びbの値を求めた。
(4)ポリフッ化ビニリデン系樹脂の結晶化度
ポリフッ化ビニリデン系樹脂を約5~10mg程度採取し、DSC(SEIKO製;DSC6200)にセットして室温から300℃まで5℃/分で上昇させたとき、100~190℃の範囲に見られる吸熱ピークをポリフッ化ビニリデン系樹脂の融解熱と見なし、該熱量を、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の完全結晶融解熱量である104.6J/g除して、百分率として算出した。
(5)多孔質膜又は複合膜の分画分子量
多孔質膜の形状が平膜状の場合には、有効膜面積30cmに対して評価を行った。また、多孔質膜の形状が中空糸膜状の場合には、有効膜面積14cmに対して評価を行った。なお、多孔質膜に加えて支持体を備える複合膜については、支持体を含めた複合膜全体について評価を行った。評価には、下記各種のデキストランを用いた。
デキストランf1~f4(Fluka製;重量平均分子量がそれぞれ1,500Da、6,000Da、15,000~25,000Da、40,000Da)
デキストランa1及びa2(アルドリッチ製;重量平均分子量がそれぞれ60,000Da、20,000Da)
デキストランa3及びa4(アルドリッチ製分子量標準物質;重量平均分子量がそれぞれ5,200Da、150,000Da)
デキストランa5~a7(アルドリッチ製分子量標準物質;重量平均分子量がそれぞれ1,300Da、12,000Da、50,000Da)
デキストランf1~f4、並びに、デキストランa1及びa2をそれぞれ500ppmずつ蒸留水に混合して、デキストラン水溶液1を調製した。調製したデキストラン水溶液1を多孔質膜に10kPaで供給して、クロスフロー線速度1.1m/sでクロスフローろ過し、ろ液をサンプリングした。デキストラン水溶液1、及び、サンプリングしたろ液を、GPC(カラム:東ソー製;TSKgel G3000PW φ7.5mm×30cm 1本及び東ソー製;TSKgel α-M φ7.8mm×30cm 1本を直列に接続、RI:東ソー製;HLC-8320)に注入して測定した。注入したデキストランは26~42分間の範囲でカラムから溶出した。
カラム温度 : 40℃
検出器温度 : 40℃
溶媒 : 0.5M硝酸リチウム添加50体積%メタノール水溶液
流速 : 0.5mL/分
注入量 : 0.1mL
各溶出時間tにおいて、ろ液とデキストラン水溶液1との示差屈折率の値から除去率を算出した。また、デキストランa3及びa4をそれぞれ500ppmずつ蒸留水に混合して、デキストラン水溶液2を調製した。さらに、デキストランa5~a7をそれぞれ500ppmずつ蒸留水に混合して、デキストラン水溶液3を調製した。これらデキストラン水溶液2及び3を、デキストラン水溶液1と同じ条件でGPCに注入して測定し、各溶出時間tにおける重量平均分子量を算出する、検量線を作成した。作成した検量線から、各溶出時間tにおける除去率を、各重量平均分子量における除去率に換算し、除去率が90%となる最小の重量平均分子量を、評価対象である多孔質膜の分画分子量とした。
(6)多孔質膜の平均表面孔径
多孔質膜の表面をSEM(HITACHI製;S-5500)を用いて、3万~10万倍の倍率で観察し、無作為に選択した孔300個の面積をそれぞれ測定した。各孔の面積から、孔が円であったと仮定したときの直径を孔径としてそれぞれ算出し、それらの平均値を表面平均孔径とした。
(7)多孔質膜又は複合膜の純水透水性
多孔質膜が平膜状の場合には、有効膜面積30cmに対して評価を行った。また、多孔質膜が中空糸膜状の場合には、有効膜面積14cmに対して評価を行った。多孔質膜に、温度25℃、ろ過差圧10kPaの条件で、1時間にわたって蒸留水を供給して全量ろ過し、得られた透過水量(m)を測定し、単位時間(h)及び単位膜面積(m)当たりの数値に換算し、さらに圧力(50kPa)換算して算出した。なお、多孔質膜に加えて支持体を備える複合膜については、支持体を含めた複合膜全体について評価を行った。
(8)ポリマー溶液の吸光度
ポリマー溶液を光路長10mmのポリスチレン製セルに入れて、吸光度計(島津製;UV-2450)にセットし、波長500nmにおける吸光度を測定した。
(9)多孔質膜又は複合膜のろ過抵抗上昇度及び振とう回復性
多孔質膜が中空糸状の場合には、外筒内に中空糸状の多孔質膜6本を収納して端部固定した、図4に示す長さ150mmの中空糸膜モジュールを作製した。この中空糸膜モジュールにおいては、B端及びD端では中空糸膜を開口させた。
圧力計を設置した10Lのステンレス製加圧タンクに原水を入れ、同様に圧力計を設置した40Lのステンレス製加圧タンクに蒸留水を入れた。原水としては、琵琶湖水(濁度1.0NTU以下,TOC(全有機炭素)1.2mg/L,カルシウム濃度15mg/L,ケイ素濃度0.5,マンガン濃度0.01mg/L以下,鉄濃度0.01mg/以下)を用いた。
原水入り加圧タンクの流出口に接続した2方コックと、中空糸膜モジュールのA点とを、3方コックを介してテフロン(登録商標)チューブで接続し、蒸留水入り加圧タンクの流出口に接続した2方コックと、中空糸膜モジュールのB点とを、テフロン(登録商標)チューブで接続した。中空糸膜モジュールのC点は樹脂キャップにより封止し、D点から透過水が流出するようにした。
原水入り加圧タンクに100kPaの圧力をかけ、2方コックを開にして、中空糸膜モジュールに原水を供給した。このとき、中空糸膜モジュールとの間にある三方コックは、原水入り加圧タンクと中空糸膜モジュールとの間のみを開とし、また、蒸留水入り加圧タンクとB点との間の2方コックは閉とした。
得られる透過水の重量を、パソコンに接続した電子天秤(AND製;HF-6000)で5秒毎に測定し、連続記録プログラム(AND製;RsCom ver.2.40)を用いて記録して、ろ過抵抗を下記式4から算出した。
ろ過抵抗(1/m)=(ろ過圧力(kPa))×10×5×(膜面積(m))×10/((透過水粘度(Pa・s)×(5秒当たりの透過水重量(g/s))×(透過水密度(g/mL))) ・・・(式4)
総透過水量が0.03m/mになるまで原水の供給を続けた後、原水入り加圧タンクの2方コックを閉として、原水の供給を終了した。次いで、中空糸膜モジュールとの間にある3方コックを3方向とも開の状態にし、中空糸膜モジュールの透過水出口(D点)を樹脂キャップで封止した。
蒸留水入り加圧タンクに150kPaの圧力をかけ、2方コックを開にして、中空糸モジュールに蒸留水を供給して、中空糸膜を逆洗した。3方コックから流出する逆洗排水量が0.003m/mとなるまで逆洗を続けた後、蒸留水入り加圧タンクの2方コックを閉として、逆洗を終了した。
以上の操作を、一つの中空糸膜モジュールに対して10回連続して実施し、総透過水量を横軸に、算出したろ過抵抗を縦軸に、それぞれプロットしてグラフを作成した。
ここでプロットは、各回の原水の供給開始から30秒後から開始した。また、ろ過抵抗の上昇に伴い透過水量が減少するため、5秒当たりの透過水重量が減少する。ろ過抵抗は5秒当たりの透過水重量を含む上記式4から算出するため、5秒当たりの透過水重量が減少すると、そのばらつきが、算出されるろ過抵抗の値に与える影響が大きくなる。従って、5秒当たりの透過水重量の減少が著しい場合には、適宜作成したグラフの移動平均近似をとって、グラフを修正した。
作成した総透過水量-ろ過抵抗のグラフ、場合によっては上記グラフの移動平均近似をとって修正したグラフにおいて、総透過水量とろ過抵抗との関係から、2~10回目の原水の供給開始時のろ過抵抗9点を結んだ直線の傾きを、ろ過抵抗上昇度とした。ただし、9点が直線上に乗らない場合には、線形近似で直線の傾きを求めて、ろ過抵抗上昇度とした。
また、10回連続の操作が終了した後の中空糸膜モジュールを蒸留水が残った状態で封止し、中空糸膜モジュールの長手方向(中空糸膜表面に水平な方向)に60cm/秒の速度で1方向に0.5秒、反対方向に0.5秒、往復15回の振とうを行い、その後、上記と同様の方法で原水を供給し、ろ過抵抗を算出した。この振とう後のろ過抵抗値を、上記ろ過抵抗上昇度の縦軸との切片であるろ過抵抗値で除した値を、振とう回復性とした。
なお、多孔質膜が平膜状の場合には、多孔質膜を直径60mmの円形に切り出して、有効膜面積0.1mとなるようにして円筒型のろ過ホルダーにセットし、上記の中空糸膜の場合と同様の装置構成にて、単位膜面積当たりのろ過量が同等となるようにろ過試験を行い、ろ過抵抗上昇度及び振とう回復性を算出した。
(10)耐擦過性試験
多孔質膜が平膜状の場合には、横20cm×縦30cmの多孔質膜を同サイズのABS板に多孔質膜表面を外側にして貼り付け、横30cm×縦50cm×幅15cmの槽内にセットした。次に槽内を5,000ppmのカオリン(富士フイルム和光純薬社製)水溶液で満たし、25L/分の空気を連続的に10日間供給して、耐擦過性試験を行った。
多孔質膜が中空糸膜状の場合には、まず、端部を封止した多孔質膜1500本を束ね、直径10cm、長さ100cmの円筒状透明容器内に充填して、多孔質膜モジュールを作製した。次に、多孔質膜モジュール内を5,000ppmのカオリン水溶液で満たし、円筒状透明容器の下部から100L/分の空気を連続的に10日間供給して、耐擦過性試験を行った。
耐擦過性試験後の多孔質膜又は複合膜について、上記(5)、(7)及び(9)と同様の方法で膜性能の評価を行い、耐擦過性試験を行っていない多孔質膜又は複合膜についての膜性能との性能比を算出した。
実施例及び比較例で用いたポリマー溶液の原料を、以下にまとめる。
分岐ポリフッ化ビニリデン(以下、「分岐PVDF」)1(ソルベイスペシャリティケミカル製Solef9009、結晶化度44%、溶融粘度3kP)
分岐PVDF2(ソルベイスペシャリティケミカル製;Solef460、結晶化度38%、溶融粘度26kP)
分岐PVDF3(ソルベイスペシャリティケミカル製;Solef9007、結晶化度45%、溶融粘度2kP)
直鎖ポリフッ化ビニリデン(以下、「直鎖PVDF」)1(アルケマ製Kynar710、結晶化度49%、溶融粘度6kP)
直鎖PVDF2(ソルベイスペシャリティケミカル製Solef1015、結晶化度48%、溶融粘度22kP)
直鎖PVDF3(クレハ製KF1300)
NMP(三菱ケミカル製)
セルロースアセテート(以下、「CA」)(ダイセル製;LT-35)
セルロースアセテートプロピオネート(以下、「CAP」)(イーストマンケミカル製;CAP482-0.5)
(実施例1)
25質量%の分岐PVDF1と、75質量%の直鎖PVDF1とを混合して「PVDF」として、NMP等を加えて120℃で4時間撹拌し、表1に示す組成比のポリマー溶液を調製した。25℃まで放冷したポリマー溶液の吸光度は、0.1であった。
次いで、密度0.42g/cmのポリエステル繊維製不織布を支持体として、その表面に、調製したポリマー溶液を、バーコーター(膜厚2mil)を用いて10m/分で均一に塗布した。ポリマー溶液を塗布した支持体を塗布から3秒後に、6℃の蒸留水に60秒間浸漬させて凝固させ、三次元網目構造を有する多孔質膜を形成した。
得られた多孔質膜を評価した結果を、表1及び図5に示す。分離性能の指標である分画分子量と、透過性能の指標である純水透水性と、ろ過運転性の指標であるろ過抵抗上昇度とは、いずれも優れた値を示した。多孔質膜表面の変形量Dの平均値は2.34nm、標準偏差は0.82、変動係数は0.35であり、耐擦過性試験後も膜性能変化は小さく、いずれも優れた値を示した。
(実施例2)
分岐PVDF1を「PVDF」として、NMP等を加えて120℃で4時間撹拌し、表1に示す組成比のポリマー溶液を調製した。25℃まで放冷したポリマー溶液の吸光度は、0.09であった。
次いで、蒸留水の温度を15℃に変更した以外は実施例1と同様にして、三次元網目構造を有する多孔質膜を形成した。
得られた多孔質膜を評価した結果を、表1及び図5に示す。分離性能の指標である分画分子量と、透過性能の指標である純水透水性と、ろ過運転性の指標であるろ過抵抗上昇度とは、いずれも優れた値を示した。多孔質膜表面の変形量Dの平均値は1.93nm、標準偏差は0.84、変動係数は0.44であり、耐擦過性試験後も膜性能変化は小さく、いずれも優れた値を示した。
(実施例3)
分岐PVDF1に代えて分岐PVDF3を用い、CAに代えてCAP用いた以外は実施例2と同様にして、表1に示す組成比のポリマー溶液を調製した。25℃まで放冷したポリマー溶液の吸光度は、0.07であった。
次いで、蒸留水の温度を20℃に変更した以外は実施例1と同様にして、三次元網目構造を有する多孔質膜を形成した。
得られた多孔質膜を評価した結果を、表1及び図5に示す。分離性能の指標である分画分子量と、透過性能の指標である純水透水性と、ろ過運転性の指標であるろ過抵抗上昇度とは、いずれも優れた値を示した。多孔質膜表面の変形量Dの平均値は2.58nm、標準偏差は0.86、変動係数は0.33であり、耐擦過性試験後も膜性能変化は小さく、いずれも優れた値を示した。
(実施例4)
38質量%の直鎖PVDF3と、62質量%のγ-ブチロラクトンを混合し、160℃で溶解して、製膜原液を調製した。この製膜原液を、85質量%γ-ブチロラクトン水溶液を中空部形成液体として随伴させながら二重管口金から吐出し、口金の30mm下方に設置した温度20℃の85質量%γ-ブチロラクトン水溶液が入った冷却浴中で凝固させて、球状構造を有する中空糸状の支持体を作製した。
分岐PVDF1に代えて分岐PVDF3を用いた以外は実施例と同様にして、ポリマー溶液を調製した。25℃まで放冷したポリマー溶液の吸光度は、0.07であった。
次いで、上記の中空糸状の支持体の外表面に、ポリマー溶液を、10m/分で均一に塗布した(厚み50μm)。ポリマー溶液を塗布した支持体を塗布から1秒後に、15℃の蒸留水に10秒浸漬させて凝固させ、三次元網目構造を有する多孔質膜を形成した。
得られた多孔質膜を評価した結果を、表1及び図5に示す。また、得られた多孔質膜をSEMで観察した拡大画像を図2に示す。分離性能の指標である分画分子量と、透過性能の指標である純水透水性と、ろ過運転性の指標であるろ過抵抗上昇度はと、いずれも優れた値を示した。多孔質膜表面の変形量Dの平均値は2.21nm、標準偏差は0.90、変動係数は0.41であり、耐擦過性試験後も膜性能変化は小さく、いずれも優れた値を示した。
(比較例1)
直鎖PVDF2を「PVDF」として、NMPを加えて120℃で4時間撹拌し、表2に示す組成比のポリマー溶液を調製した。25℃まで放冷したポリマー溶液の吸光度は、0.01であった。
次いで、蒸留水の温度を25℃に変更した以外は実施例1と同様にして、三次元網目構造を有する多孔質膜を形成した。
得られた多孔質膜を評価した結果を、表2及び図5に示す。分離性能の指標である分画分子量の値は実施例の結果と同等であったが、透過性能の指標である純水透水性と、ろ過運転性の指標であるろ過抵抗上昇度とは、いずれも実施例の結果と比較して劣るものであった。多孔質膜表面の変形量Dの平均値は2.09nm、標準偏差は0.48、変動係数は0.23であり、耐擦過性試験後も膜性能変化は小さかった。
(比較例2)
直鎖PVDF2に代えて分岐PVDF2を用いた以外は比較例1と同様にして、表2に示す組成比のポリマー溶液を調製した。25℃まで放冷したポリマー溶液の吸光度は、0.1であった。
次いで、蒸留水の温度を40℃に変更した以外は実施例1と同様にして、三次元網目構造を有する多孔質膜を形成した。
得られた多孔質膜を評価した結果を、表2及び図5に示す。透過性能の指標である純水透水性の値は実施例の結果と同等であったが、分離性能の指標である分画分子量と、ろ過運転性の指標であるろ過抵抗上昇度とは、いずれも実施例の結果と比較して劣るものであった。多孔質膜表面の変形量Dの平均値は2.32nm、標準偏差は0.60、変動係数は0.26と実施例の結果と比べて均質であり、耐擦過性試験後は、特に純水透水性と分画分子量との変化が大きかった。
(比較例3)
分岐PVDF3に代えて直鎖PVDF1を用いた以外は実施例4と同様にして、表2に示す組成比のポリマー溶液を調製した。25℃まで放冷したポリマー溶液の吸光度は、0.03であった。
次いで、実施例4と同様にして、中空糸状の支持体の外表面にポリマー溶液を塗布して凝固させ、三次元網目構造を有する多孔質膜を形成した。
得られた多孔質膜を評価した結果を、表2及び図5に示す。また、得られた多孔質膜をSEMで観察した拡大画像を図3に示す。分離性能の指標である分画分子量と、透過性能の指標である純水透水性と、ろ過運転性の指標であるろ過抵抗上昇度とは、いずれも実施例の結果と比較して劣るものであった。多孔質膜表面の変形量Dの平均値は1.79nm、標準偏差は0.38、変動係数は0.21であり、耐擦過性試験後は、特に純水透水性と分画分子量との変化が大きかった。
(比較例4)
実施例4と同様にして、表2に示す組成比のポリマー溶液を調製した。25℃まで放冷したポリマー溶液の吸光度は、0.05であった。
次いで、実施例4と同様にして、中空糸状の支持体の外表面にポリマー溶液を塗布して凝固させ、三次元網目構造を有する多孔質膜をした。
得られた多孔質膜を評価した結果を、表2及び図5に示す。透過性能の指標である純水透水性の値は実施例の結果と比較して優れていたが、分離性能の指標である分画分子量と、ろ過運転性の指標であるろ過抵抗上昇度とは、いずれも実施例の結果と比較して劣るものであった。多孔質膜表面の変形量Dの平均値は3.11nm、標準偏差は0.55、変動係数は0.18であり、耐擦過性試験後の膜性能変化は、比較例2及び比較例3と比較すると小さかった。
Figure 0007409072000001
Figure 0007409072000002

Claims (8)

  1. 被ろ過液と接触する表面が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂と、親水性樹脂を含むポリマーからなり、
    前記ポリマーに占める前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂の割合が50質量%以上であり、
    前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂が、フッ化ビニリデン単独重合体、並びにフッ化ビニリデンモノマーと、フッ化ビニル、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、及び三フッ化塩化エチレンからなる群より選択される1以上の化合物との共重合体からなる群より選択される1以上の化合物であり、
    前記親水性樹脂が、セルロースエステル、脂肪酸ビニルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、エチレンオキサイド、及びプロピレンオキサイドからなる群より選択される化合物であり、
    前記表面の0.5μm四方の分割領域それぞれの中心点(対角線の交点)300箇所における、5nNの負荷に対する変形量Dの標準偏差が0.8nm以上であり、変動係数が0.3以上である、多孔質膜。
  2. 前記膜が、三次元網目構造を有する、請求項1記載の多孔質膜。
  3. 前記変形量Dの平均値が、3nm以下である、請求項1又は2記載の多孔質膜。
  4. 表面の算術平均粗さRaが、20nm以下であり、かつ、
    表面の二乗平均平方根粗さRqが、20nm以下である、請求項1~のいずれか一項記載の多孔質膜。
  5. 請求項1~のいずれか一項記載の多孔質膜と、他の層と、を備え、
    前記多孔質膜が、表面部に配置されている、複合膜。
  6. 前記他の層が、支持体である、請求項に記載の複合膜。
  7. (A)ポリフッ化ビニリデン系樹脂を主成分とするポリマーを溶媒に溶解させて、ポリマー溶液を得る、ポリマー溶液調製工程と、
    (B)前記ポリマー溶液を20℃以下の非溶媒中で凝固させて、多孔質膜を形成する、多孔質膜形成工程と、を備える、請求項1~のいずれか一項記載の多孔質膜の製造方法。
  8. 前記(A)ポリマー溶液調製工程に供するポリフッ化ビニリデン系樹脂の結晶化度が、35%以上である、請求項記載の多孔質膜の製造方法。
JP2019231581A 2018-12-26 2019-12-23 多孔質膜、複合膜及び多孔質膜の製造方法 Active JP7409072B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018242774 2018-12-26
JP2018242774 2018-12-26

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020104104A JP2020104104A (ja) 2020-07-09
JP7409072B2 true JP7409072B2 (ja) 2024-01-09

Family

ID=71447675

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019231581A Active JP7409072B2 (ja) 2018-12-26 2019-12-23 多孔質膜、複合膜及び多孔質膜の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7409072B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2020262490A1 (ja) * 2019-06-27 2020-12-30
JP2022057397A (ja) * 2020-09-30 2022-04-11 日東電工株式会社 有機物含有排水の処理方法
EP4349461A1 (en) * 2021-05-27 2024-04-10 Toray Industries, Inc. Separation membrane and method for producing same

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009178696A (ja) 2008-02-01 2009-08-13 Toray Ind Inc 膜分離方法および膜分離装置
JP2011189266A (ja) 2010-03-15 2011-09-29 Toray Ind Inc 多孔質分離平膜およびその製造方法
JP2012076075A (ja) 2010-09-08 2012-04-19 Toray Ind Inc ウイルス除去方法および透過水の製造方法
WO2015146469A1 (ja) 2014-03-26 2015-10-01 株式会社クラレ 中空糸膜、及び中空糸膜の製造方法
JP2017213501A (ja) 2016-05-31 2017-12-07 東レ株式会社 複合半透膜および複合半透膜の製造方法

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009178696A (ja) 2008-02-01 2009-08-13 Toray Ind Inc 膜分離方法および膜分離装置
JP2011189266A (ja) 2010-03-15 2011-09-29 Toray Ind Inc 多孔質分離平膜およびその製造方法
JP2012076075A (ja) 2010-09-08 2012-04-19 Toray Ind Inc ウイルス除去方法および透過水の製造方法
WO2015146469A1 (ja) 2014-03-26 2015-10-01 株式会社クラレ 中空糸膜、及び中空糸膜の製造方法
JP2017213501A (ja) 2016-05-31 2017-12-07 東レ株式会社 複合半透膜および複合半透膜の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2020104104A (ja) 2020-07-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7409072B2 (ja) 多孔質膜、複合膜及び多孔質膜の製造方法
AU2006345112B2 (en) Polymer separation membrane and process for producing the same
JP5732719B2 (ja) 分離膜およびその製造方法
JP5066810B2 (ja) 高分子分離膜及びその製造方法
Alsalhy Hollow fiber ultrafiltration membranes prepared from blends of poly (vinyl chloride) and polystyrene
JP2010094670A (ja) ポリフッ化ビニリデン系複合膜およびその製造方法
JP4869272B2 (ja) 多孔性多層中空糸膜
JP2009082882A (ja) ポリフッ化ビニリデン系複合中空糸膜及びその製造方法
WO2020262490A1 (ja) 多孔質膜および複合多孔質膜
WO2019066061A1 (ja) 多孔質中空糸膜及びその製造方法
JP2007289927A (ja) 複合分離膜およびその製造方法
JPS58114702A (ja) ポリスルホン中空繊維膜
JPWO2017217446A1 (ja) 多孔質膜、及び多孔質膜の製造方法
JPH0242102B2 (ja)
JP5109263B2 (ja) フッ素樹脂系高分子分離膜およびその製造方法
WO2012063669A1 (ja) 分離膜の製造方法
JP7435438B2 (ja) 多孔質膜、複合膜及び多孔質膜の製造方法
WO2021241514A1 (ja) 多孔質膜及び複合膜
JP7115309B2 (ja) 分離膜及び分離膜の製造方法
AU715033B2 (en) Polyacrylonitrile-based filtration membrane in a hollow fiber state
WO2022249839A1 (ja) 分離膜及びその製造方法
JP2024049374A (ja) 多孔質中空糸膜およびその製造方法
WO2023054228A1 (ja) 多孔質膜及び多孔質膜の製造方法
WO2021106726A1 (ja) 多孔質膜、複合膜及び多孔質膜又は複合膜の製造方法
JP2023090677A (ja) 疎水性多孔質中空糸膜

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20221006

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20221006

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230726

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230801

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230927

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20231121

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20231204

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 7409072

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151