JP2020082034A - 複合半透膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】実用に耐える除去性を有し、透水性に優れ、かつ、塩素に接触後も高いホウ素除去性を有する複合半透膜を提供する。【解決手段】本発明の複合半透膜は、微多孔性支持層と、前記微多孔性支持層上に設けられた分離機能層を有する複合半透膜であって、前記分離機能層が架橋芳香族ポリアミドを含有し、かつ前記ポリアミドが特定の部分構造を有する。【選択図】なし
Description
本発明は、液状混合物の選択的分離に有用な半透膜に関し、実用性のある選択分離性を有し、透過性に優れ、かつ、耐久性の高い複合半透膜に関する。
液状混合物の膜分離に使用される膜には、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがあり、これらの膜は、例えば塩分、有害物を含んだ水などから飲料水を得る場合や、工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収などに用いられている。
現在市販されている逆浸透膜およびナノろ過膜の大部分は複合半透膜であり、中でも、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応によって得られる架橋芳香族ポリアミドからなる分離機能層を微多孔性支持膜上に被覆して得られる複合半透膜(特許文献1−2)は、透過性や選択分離性の高い分離膜として広く用いられている。
ここで造水プラントなどの各種水処理において、前処理に添加している塩素は原則として膜と接触しないようオペレーション設計されているものの、オペレーションミスにより漏洩した塩素が膜と接触し、膜が酸化劣化するリスクが存在する。そこで塩素漏洩による膜劣化リスクを低減し、膜寿命を長期化する目的で、これら複合半透膜について耐塩素性向上に向けた検討が行われてきた。
耐塩素性向上方法としては、分離機能層を形成するモノマー成分を改良する方法および分離機能層上に保護層を形成する方法が知られている。特許文献1には、分離機能層を形成する多官能アミンとしてm−フェニレンジアミン−4−スルホン酸ナトリウムを用いることが開示されており、特許文献2には、分離機能層を形成する多官能アミンとして、ヘキサフルオロアルコールを側鎖として有する化合物を用いることが開示されている。
上述した種々の提案では耐塩素性を有する膜もあるが、透水性および除去性を併せもつ膜は得られていない。また、原水の水質が悪い海域での運転により、ホウ素除去性が低下することがある。本発明の目的は、透水性に優れ、塩素に接触後も高いホウ素除去性を有する複合半透膜を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の複合半透膜は、微多孔性支持層と、前記微多孔性支持層上に設けられた分離機能層を有する複合半透膜であって、前記分離機能層が芳香族ポリアミドの末端アミノ基とアミン反応性官能基を有する低分子化合物を作用させることで得られる架橋芳香族ポリアミドを含有し、かつ前記ポリアミドが(1)または(2)であらわされる部分構造を有し、下記条件(A)を満たす複合半透膜。
(Ar1〜3は置換基を有していてもよい炭素数5〜14の芳香族環であり、R1は芳香族環を有さない原子団でヘテロ原子を少なくとも1つ含む。またR2〜5は水素原子または炭素原子が1〜10の脂肪族鎖である。)
(A) 前記分離機能層中のポリアミドを13C固体NMRで測定した際、芳香化合物族由来のカルボキシ基量をA、脂肪族化合物由来のカルボキシ基量をBとすると、B/Aが0.10以上である。
(A) 前記分離機能層中のポリアミドを13C固体NMRで測定した際、芳香化合物族由来のカルボキシ基量をA、脂肪族化合物由来のカルボキシ基量をBとすると、B/Aが0.10以上である。
本発明によって実用性のある除去性を有し、透水性に優れ、さらに塩素に接触後も高いホウ素除去性を示す複合半透膜が得られる。
1.複合半透膜
本発明に係る複合半透膜は、支持膜と、支持膜上に形成される分離機能層とを備える。複合半透膜は逆浸透膜またはナノろ過膜としての分離性能を備える。前記分離機能層は実質的に分離性能を有するものであり、支持膜は水を透過するものの実質的にイオン等の分離性能を有さず、分離機能層に強度を与えることができる。
本発明に係る複合半透膜は、支持膜と、支持膜上に形成される分離機能層とを備える。複合半透膜は逆浸透膜またはナノろ過膜としての分離性能を備える。前記分離機能層は実質的に分離性能を有するものであり、支持膜は水を透過するものの実質的にイオン等の分離性能を有さず、分離機能層に強度を与えることができる。
(1)支持膜
本実施形態では、支持膜は、基材および微多孔性支持層を備える。ただし、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、支持膜は、基材を持たず、微多孔性支持層のみで構成されていてもよい。
本実施形態では、支持膜は、基材および微多孔性支持層を備える。ただし、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、支持膜は、基材を持たず、微多孔性支持層のみで構成されていてもよい。
(1−1)基材
基材としては、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリオレフィン系重合体、及びこれらの混合物又は共重合体等が挙げられる。中でも、機械的、熱的に安定性の高いポリエステル系重合体の布帛が特に好ましい。布帛の形態としては、長繊維不織布や短繊維不織布、さらには織編物を好ましく用いることができる。
基材としては、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリオレフィン系重合体、及びこれらの混合物又は共重合体等が挙げられる。中でも、機械的、熱的に安定性の高いポリエステル系重合体の布帛が特に好ましい。布帛の形態としては、長繊維不織布や短繊維不織布、さらには織編物を好ましく用いることができる。
(1−2)微多孔性支持層
本発明において微多孔性支持層は、イオン等の分離性能を実質的に有さず、分離性能を実質的に有する分離機能層に強度を与えるためのものである。微多孔性支持層の孔のサイズや分布は特に限定されない。例えば、均一で微細な孔、又は分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもち、かつ、分離機能層が形成される側の表面で微細孔の大きさが0.1nm以上100nm以下であるような微多孔性支持層が好ましい。支持層に使用する材料やその形状は特に限定されない。
本発明において微多孔性支持層は、イオン等の分離性能を実質的に有さず、分離性能を実質的に有する分離機能層に強度を与えるためのものである。微多孔性支持層の孔のサイズや分布は特に限定されない。例えば、均一で微細な孔、又は分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもち、かつ、分離機能層が形成される側の表面で微細孔の大きさが0.1nm以上100nm以下であるような微多孔性支持層が好ましい。支持層に使用する材料やその形状は特に限定されない。
微多孔性支持層の素材には、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、及びポリフェニレンオキシド等のホモポリマー又はコポリマーを、単独で又は混合して使用することができる。ここでセルロース系ポリマーとしては酢酸セルロース、硝酸セルロースなど、ビニルポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが使用できる。
中でもポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどのホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。より好ましくは酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、またはポリフェニレンスルホンが挙げられる。さらに、これらの素材の中では化学的、機械的、熱的に安定性が高く、成型が容易であることからポリスルホンが一般的に使用できる。
ポリスルホンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)でN−メチルピロリドンを溶媒に、ポリスチレンを標準物質として測定した場合の質量平均分子量(Mw)が、10000以上200000以下であることが好ましく、より好ましくは15000以上100000以下である。
ポリスルホンのMwが10000以上であることで、微多孔性支持層として好ましい機械的強度および耐熱性を得ることができる。また、Mwが200000以下であることで、溶液の粘度が適切な範囲となり、良好な成形性を実現することができる。
例えば、ポリスルホンのN,N−ジメチルホルムアミド(以降、DMFと記載)溶液を、密に織ったポリエステル布又は不織布の上に一定の厚さに注型し、それを水中で湿式凝固させることによって、表面の大部分が直径数10nm以下の微細な孔を有する微多孔性支持層を得ることができる。
基材と微多孔性支持層の厚みは、複合半透膜の強度及びそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。十分な機械的強度及び充填密度を得るためには、基材と微多孔性支持層の厚みの合計が、30μm以上300μm以下であることが好ましく、100μm以上220μm以下であるとより好ましい。また、微多孔性支持層の厚みは、20μm以上100μm以下であることが好ましい。なお、本書において、特に付記しない限り、厚みとは、平均値を意味する。ここで平均値とは相加平均値を表す。すなわち、基材と微多孔性支持層の厚みは、断面観察で厚み方向に直交する方向(膜の面方向)に20μm間隔で測定した、20点の厚みの平均値を算出することで求められる。
(2)分離機能層
(2−1)分離機能層の化学構造
分離機能層は、架橋芳香族ポリアミドを含有する。特に、分離機能層は、架橋芳香族ポリアミドを主成分として含有することが好ましい。主成分とは分離機能層の成分のうち、50重量%以上を占める成分を指す。分離機能層は、架橋芳香族ポリアミドを50重量%以上含むことにより、高い除去性能を発現することができる。また、分離機能層における架橋芳香族ポリアミドの含有率は80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましい。
本発明における架橋芳香族ポリアミドは、その末端アミノ基を介したアミド結合によって(1)または(2)であらわされる部分構造を有する。
(2−1)分離機能層の化学構造
分離機能層は、架橋芳香族ポリアミドを含有する。特に、分離機能層は、架橋芳香族ポリアミドを主成分として含有することが好ましい。主成分とは分離機能層の成分のうち、50重量%以上を占める成分を指す。分離機能層は、架橋芳香族ポリアミドを50重量%以上含むことにより、高い除去性能を発現することができる。また、分離機能層における架橋芳香族ポリアミドの含有率は80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましい。
本発明における架橋芳香族ポリアミドは、その末端アミノ基を介したアミド結合によって(1)または(2)であらわされる部分構造を有する。
(Ar1〜3は置換基を有していてもよい炭素数5〜14の芳香族環であり、R1は芳香族環を有さない原子団でヘテロ原子を少なくとも1つ含む。またR2〜5は水素原子であるかまたは炭素数が1〜10の脂肪族鎖である。)
式(1)および(2)における繰り返し単位(括弧内の構造)は、多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸クロリドとの重合物であることが好ましい。
式(1)および(2)における繰り返し単位(括弧内の構造)は、多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸クロリドとの重合物であることが好ましい。
部分構造(1)または(2)におけるR1の炭素数は5以下であることが好ましい。炭素数が5以下であることで、親水性基に対する疎水性部位の割合が小さくなるため、膜の透水性は大きくなる。
これらのポリアミド中の官能基量は、例えば、13C固体NMR測定で求めることができる。具体的には、複合半透膜から基材を剥離し、分離機能層と多孔性支持層を得た後、多孔性支持層を溶解・除去し、分離機能層を得る。得られた分離機能層をDD/MAS−13C固体NMR測定を行い、各官能基が結合している炭素原子のピークの積分値を算出する。この積分値から各官能基量を同定できる。
これらのポリアミド中の官能基量は、例えば、13C固体NMR測定で求めることができる。具体的には、複合半透膜から基材を剥離し、分離機能層と多孔性支持層を得た後、多孔性支持層を溶解・除去し、分離機能層を得る。得られた分離機能層をDD/MAS−13C固体NMR測定を行い、各官能基が結合している炭素原子のピークの積分値を算出する。この積分値から各官能基量を同定できる。
鋭意検討した結果、ポリアミドに含まれる官能基について、芳香族化合物由来のカルボキシ基量をA、脂肪族化合物由来のカルボキシ基をBとすると、B/Aが0.10以上であると、透水性に優れることを見出した。
R1は、脂肪族カルボン酸クロリド、酸無水物、および脂肪族カルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物に由来することが好ましい。これらの化合物については後述する。
本発明において、pH3におけるゼータ電位は+10mV以下であることが好ましい。より好ましくは+5mV以下、更に好ましくは0mV以下である。ゼータ電位とは超薄膜層表面の正味の固定電荷の尺度である。ポリアミド分離機能層には、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物に由来する未反応のアミノ基とカルボキシル基が含まれ、それら官能基の解離度によってゼータ電位の値が変化する。pH3においては未反応アミノ基が解離すると考えられるため、pH3におけるゼータ電位は+10mV以下であれば上記(1)または(2)であらわされる部分構造が十分に付与されるため耐塩素性向上効果が得られる。
なお、ゼータ電位は、電気泳動光散乱光度計により測定できる。例えば、平板試料用セルに、複合半透膜の分離機能層面がモニター粒子溶液に接するようにセットして測定する。モニター粒子はポリスチレンラテックスをヒドロキシプロピルセルロースでコーティングしたもので、10mM−NaCl溶液に分散させてモニター粒子溶液とする。モニター粒子溶液のpHを調整しておくことで所定のpHでのゼータ電位を測定することができる。電気泳動光散乱光度計は、大塚電子株式会社製ELS−8000などが使用できる。
2.複合半透膜の製造方法
(1)分離機能層の形成方法
上記の分離機能層は、多官能芳香族アミン、多官能芳香族酸クロリド、脂肪族カルボン酸誘導体を化学反応させることにより得られる。主骨格である架橋芳香族ポリアミドは、多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸クロリドの重合反応により構築される。
(1)分離機能層の形成方法
上記の分離機能層は、多官能芳香族アミン、多官能芳香族酸クロリド、脂肪族カルボン酸誘導体を化学反応させることにより得られる。主骨格である架橋芳香族ポリアミドは、多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸クロリドの重合反応により構築される。
多官能芳香族アミンとは、一分子中に第一級アミノ基及び第二級アミノ基のうち少なくとも一方のアミノ基を2個以上有し、かつ、アミノ基のうち少なくとも1つは第一級アミノ基である芳香族アミンを意味する。多官能芳香族アミンとしては、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、o−ジアミノピリジン、m−ジアミノピリジン、p−ジアミノピリジン等の2個のアミノ基がオルト位やメタ位、パラ位のいずれかの位置関係で芳香環に結合した多官能芳香族アミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミンなどの多官能芳香族アミンなどが挙げられる。特に、膜の選択分離性や透過性、耐熱性を考慮すると、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、及び1,3,5−トリアミノベンゼンが好適に用いられる。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさから、m−フェニレンジアミンを用いることがより好ましい。これらの多官能芳香族アミンは、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
多官能芳香族酸クロリドとは、一分子中に少なくとも2個のクロロカルボニル基を有する芳香族酸クロリドをいう。例えば、3官能酸クロリドでは、トリメシン酸クロリドなどを挙げることができ、2官能酸クロリドでは、ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリドなどを挙げることができる。膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の塩化カルボニル基を有する多官能芳香族酸クロリドであることが好ましい。膜の選択分離性や透過性、耐熱性を考慮すると、トリメシン酸クロリドがより好ましい。これらの多官能芳香族酸クロリドは、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
多官能芳香族アミンおよび多官能芳香族酸クロリドについて、少なくとも一方が3官能以上の化合物を含んでいることが好ましい。これにより、剛直な分子鎖が得られ、水和イオンやホウ素などの微細な溶質を除去するための良好な孔構造が形成される。
化学反応の方法として、界面重合法が生産性、性能の観点から最も好ましい。以下、界面重合の工程について説明する。
界面重合の工程は、(a)多官能芳香族アミンを含有する水溶液を多孔性支持層上に接触させる工程と、(b)多官能芳香族アミンを含有する水溶液を接触させた多孔性支持層に多官能芳香族酸クロリド溶液を接触させる工程と、(c)接触後の有機溶媒溶液を液切りする工程と、(d)有機溶媒溶液を液切りした複合半透膜を熱水で洗浄する工程、を有する。
なお本欄では、支持膜が基材と微多孔性支持層とを備える場合を例に挙げるが、支持膜が別の構成を備える場合は、「微多孔性支持層」を「支持膜」と読み替えればよい。
工程(a)において、多官能芳香族アミン水溶液における多官能芳香族アミンの濃度は0.1重量%以上20重量%以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以上15重量%以下の範囲内である。多官能芳香族アミンの濃度がこの範囲であると十分な溶質除去性能および透水性を得ることができる。
多官能芳香族アミン水溶液の接触は、微多孔性支持層上に均一かつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、例えば、多官能芳香族アミン水溶液を微多孔性支持層にコーティングする方法や、微多孔性支持層を多官能芳香族アミン水溶液に浸漬する方法などを挙げることができる。微多孔性支持層と多官能芳香族アミン水溶液との接触時間は、1秒以上10分間以下であることが好ましく、10秒以上3分間以下であるとさらに好ましい。
多官能芳香族アミン水溶液を微多孔性支持層に接触させた後は、膜上に液滴が残らないように十分に液切りする。十分に液切りすることで、微多孔性支持層形成後に液滴残存部分が膜欠点となって除去性能が低下することを防ぐことができる。液切りの方法としては、例えば、特開平2−78428号公報に記載されているように、多官能芳香族アミン水溶液接触後の支持膜を垂直方向に把持して過剰の水溶液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの気流を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させて水溶液の水分を一部除去することもできる。
工程(b)において、有機溶媒溶液中の多官能芳香族酸クロリドの濃度は、0.01重量%以上10重量%以下の範囲内であると好ましく、0.02重量%以上2.0重量%以下の範囲内であるとさらに好ましい。0.01重量%以上とすることで十分な反応速度が得られ、また、10重量%以下とすることで副反応の発生を抑制することができるためである。
有機溶媒は、水と非混和性であり、かつ多官能芳香族酸クロリドを溶解し、支持膜を破壊しないものが好ましく、多官能芳香族アミンおよび多官能芳香族酸クロリドに対して不活性であるものであればよい。好ましい例として、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、イソオクタン、イソデカン、イソドデカンなどの炭化水素化合物および混合溶媒が挙げられる。
多官能芳香族酸クロリドの有機溶媒溶液の多官能芳香族アミン水溶液と接触させた微多孔性支持層への接触の方法は、多官能芳香族アミン水溶液の微多孔性支持層への被覆方法と同様に行えばよい。
工程(c)において、反応後の有機溶媒溶液を液切りする工程により、有機溶媒を除去する。有機溶媒の除去は、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法、送風機で風を吹き付けることで有機溶媒を乾燥除去する方法、水とエアーの混合流体で過剰の有機溶媒を除去する方法等を用いることができる。
工程(d)において、有機溶媒を除去した複合半透膜を熱水で洗浄する。熱水の温度としては40℃以上100℃以下、好ましくは60℃以上100℃以下である。
こうして、末端アミノ基を有する架橋芳香族ポリアミド(下記式(3))を含む層が形成される。
(Ar1〜3は置換基を有していてもよい炭素数5〜14の芳香族環であり、R2〜5は水素原子または炭素原子が1〜10の脂肪族鎖である。)
次に、上記(1)または(2)であらわされる部分構造を架橋芳香族ポリアミドに付与する。部分構造の付与は、架橋芳香族環を有さない原子団であって、ヘテロ原子を少なくとも1つ含み、かつアミン反応性官能基を有する化合物のアミン反応性官能基を、架橋芳香族ポリアミドの末端アミノ基と反応させることで行われる。
次に、上記(1)または(2)であらわされる部分構造を架橋芳香族ポリアミドに付与する。部分構造の付与は、架橋芳香族環を有さない原子団であって、ヘテロ原子を少なくとも1つ含み、かつアミン反応性官能基を有する化合物のアミン反応性官能基を、架橋芳香族ポリアミドの末端アミノ基と反応させることで行われる。
具体的には、脂肪族カルボン酸クロリドを作用させる方法、酸無水物を作用させる方法、および脂肪族カルボン酸を作用させる方法が挙げられる。
脂肪族カルボン酸クロリドとは、一分子中にクロロカルボニル基を少なくとも1つ有する脂肪族酸クロリドをいう。たとえば、一分子中に1つクロロカルボニル基を有す、アセチルクロリド、ブチリルクロリド、ヘプタノイルクロリド、パルミトイルクロリドなどや、一分子中に2つクロロカルボニル基を有すアジポイルクロリド、アゼライン酸クロリド、グルタリルジクロリド、マロニルクロリド、セバコイルクロリド、スクシニルクロリド、スベロイルクロリド、イタコン酸クロリド、ヘキサハイドロテレフタル酸ジクロリドなどを用いることができる。
酸無水物は、-CO-O-CO- 基が含まれる化合物をいう。具体例としては、無水酢酸、プロパン酸無水物、ペンタン酸無水物、デカン酸無水物、シクロヘキサン酸無水物、酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、プロパン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、酢酸ペンタフルオロ安息香酸無水物、プロパン酸ペンタフルオロ安息香酸無水物、酢酸−2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物、プロパン酸−2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物、2,2-ジメチルコハク酸無水物、コハク酸無水物、ブチルコハク酸無水物、3,3-ジメチルグルタル酸無水物、2.2-ジメチルグルタル酸無水物、(ジグリコール酸無水物)、3-メチルグルタル酸無水物、無水マレイン酸、デシルこはく酸無水物、グルタル酸無水物、n−オクチルこはく酸無水物、ドデシルこはく酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、テトラデシルこはく酸無水物、1,1−シクロペンタン二酢酸無水物、ヘキサデシルこはく酸無水物、シトラコン酸無水物、オクタデシルこはく酸無水物、(2−メチル−2−プロペニル)こはく酸無水物、2−ブテン−1イルこはく酸無水物、1,1−シクロヘキサン二酢酸無水物、カロン酸無水物、イタコン酸無水物、アリルこはく酸無水物、2−ドデセン−1−イルこはく酸無水物、2−ヘキセン1−イルこはく酸無水物、4−メチルシクロヘキサンー1,2−ジカルボン酸無水物、2−オクテニルこはく酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、1,2−シクロプロパンジカルボン酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、(2,7−オクタジエン−1-イル)こはく酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、3-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、4-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物などを挙げることができる。
脂肪族カルボン酸は、一分子内にカルボキシ基が少なくとも1つ含まれる脂肪族化合物をいい、ヘテロ原子の有無や分岐構造の有無、および不飽和炭素結合の有無によりなんら限定されない。具体的には、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピルビン酸、乳酸といった単価カルボン酸や、グリシン、アラニン、アスパラギン酸などアミン酸の類、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、リンゴ酸、酒石酸などジカルボン酸や2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、クエン酸、トリカルバリル酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸、アコニット酸、3-カルボキシアジピン酸といったトリカルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸さらにはエチレンジアミン四酢酸、1,3-ジアミノ-2-プロパノール-N,N,N’,N’-四酢酸、トリグリコラミン酸、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン-N,N',N'-三酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸といったキレート剤の類が挙げられる。
用いる脂肪族カルボン酸の炭素数は8以下であることが好ましく、より好ましくは7以下である。脂肪族カルボン酸の炭素数が8以下であることで、ポリアミド末端のアミノ基に接近しやすいため、反応が十分に進行し、分離機能層の耐塩素性向上効果が得られる。
これらの脂肪族カルボン酸は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
上述した3つの手法のうち、取扱いの容易性と使用できる試薬の汎用性から、脂肪族カルボン酸を作用させる方法がより好ましい。以下では、脂肪族カルボン酸を作用させる方法について例示するが、同様の手法が他の2つの化合物を用いる場合にも適用される。
脂肪族カルボン酸は、そのまま接触させてもよいし、支持膜を変質させない溶媒に溶解し、複合半透膜に接触させてもよい。
脂肪族カルボン酸を接触させる方法としては、複合半透膜の分離機能層上にコーティングすることで反応させてもよいし、脂肪族カルボン酸、もしくはそれを含む溶液に、分離機能層を含む膜を浸漬して反応させてもよい。また、後述する複合半透膜エレメントを作成してから脂肪族カルボン酸を含む溶液を通液処理して反応させてもよい。
脂肪族カルボン酸を水溶液として、またはそのまま複合半透膜に塗布する際の反応時間および温度は、脂肪族カルボン酸の種類、塗布方法により適宜調整可能である。脂肪族カルボン酸を溶液として塗布する際には、10mmol/L以上が好ましい。10mmol/L以上であることで、機能層のポリアミド末端のアミノ基と脂肪族カルボン酸が十分に反応し、分離機能層の耐塩素性向上効果が得られる。
また、脂肪族カルボン酸を接触させる場合は、高効率かつ短時間での反応のため、必要に応じ、種々の反応助剤(縮合促進剤)を利用することが好ましい。縮合促進剤として、硫酸、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(以下、DMT-MMという)、 1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’-カルボニルジイミダゾール、1,1’-カルボニルジ(1,2,4-トリアゾール)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩、(7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩、クロロトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロりん酸塩、ブロモトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩、3-(ジエトキシホスホリルオキシ)-1,2,3-ベンゾトリアジン-4(3H)-オン、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、O-(N-スクシンイミジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロほう酸塩、O-(N-スクシンイミジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、O-(3,4-ジヒドロ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン-3-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロほう酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-(2-オクトキシ-2-オキソエチル)ジメチルアンモニウム、S-(1-オキシド-2-ピリジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルチウロニウムテトラフルオロほう酸塩、O-[2-オキソ-1(2H)-ピリジル]-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロほう酸塩、{{[(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデン)アミノ]オキシ}-4-モルホリノメチレン}ジメチルアンモニウムヘキサフルオロりん酸塩、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロりん酸塩、1-(クロロ-1-ピロリジニルメチレン)ピロリジニウムヘキサフルオロりん酸塩、2-フルオロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロりん酸塩、フルオロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロりん酸塩、などが例として挙げられる。
(2)支持膜の形成方法
支持膜は、ミリポア社製“ミリポアフィルターVSWP”(商品名)や、東洋濾紙社製“ウルトラフィルターUK10”(商品名)のような各種市販材料から選択することができる。
支持膜は、ミリポア社製“ミリポアフィルターVSWP”(商品名)や、東洋濾紙社製“ウルトラフィルターUK10”(商品名)のような各種市販材料から選択することができる。
また、複合半透膜の製造方法は、支持膜の形成工程を含んでもよい。
支持膜は、例えば、基材上に、微多孔性支持層を“オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って形成することで製造することもできる。
微多孔性支持層の形成方法は、具体的には以下の工程を含む。
・微多孔性支持層を形成する樹脂を溶媒に溶かすことで、溶液を得る。
・得られた溶液を基材に塗布する。
・上記樹脂の非溶媒を含む凝固液に浸漬する。
・微多孔性支持層を形成する樹脂を溶媒に溶かすことで、溶液を得る。
・得られた溶液を基材に塗布する。
・上記樹脂の非溶媒を含む凝固液に浸漬する。
3.複合半透膜の利用
複合半透膜は、プラスチックネットなどの供給水流路材と、トリコットなどの透過水流路材と、必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿設した筒状の集水管の周りに巻回され、スパイラル型の複合半透膜エレメントとして好適に用いられる。さらに、このエレメントを直列または並列に接続して圧力容器に収納した複合半透膜モジュールとすることもできる。
複合半透膜は、プラスチックネットなどの供給水流路材と、トリコットなどの透過水流路材と、必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿設した筒状の集水管の周りに巻回され、スパイラル型の複合半透膜エレメントとして好適に用いられる。さらに、このエレメントを直列または並列に接続して圧力容器に収納した複合半透膜モジュールとすることもできる。
また、上記の複合半透膜やそのエレメント、モジュールは、それらに供給水を供給するポンプや、その供給水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、供給水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
本発明に係る複合半透膜によって処理される供給水としては、海水、かん水、排水等の500mg/L以上100g/L以下のTDS(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物が挙げられる。一般に、TDSは総溶解固形分量を指し、「質量÷体積」あるいは「重量比」で表される。定義によれば、0.45ミクロンのフィルターで濾過した溶液を39.5℃以上40.5℃以下の温度で蒸発させ残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分(S)から換算する。
流体分離装置の操作圧力は高い方が溶質除去率は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、複合半透膜の耐久性を考慮すると、複合半透膜に被処理水を透過する際の操作圧力は、0.5MPa以上、10MPa以下が好ましい。供給水温度は、高くなると溶質除去率が低下するが、低くなるにしたがい膜透過流束も減少するので、5℃以上、45℃以下が好ましい。また、供給水pHが高くなると、海水などの高溶質濃度の供給水の場合、マグネシウムなどのスケールが発生する恐れがあり、また、高pH運転による膜の劣化が懸念されるため、中性領域での運転が好ましい。
以下実施例をもって本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれにより限定されるものではない。
(官能基量の算出)
複合半透膜のポリアミドに含まれる官能基量は、13C固体NMR測定で求めることができる。具体的には、複合半透膜から基材を剥離し、分離機能層と多孔性支持層を得た後、多孔性支持層を溶解・除去し、分離機能層を得る。多孔性支持層を溶解する際には、支持層を溶解する溶媒を用い、具体的には、ジクロロメタンなどが好ましい。得られた分離機能層をDD/MAS−13C固体NMR測定を行い、各官能基が結合している炭素原子のピークの積分値を算出する。この積分値から各官能基量を同定できる。
複合半透膜のポリアミドに含まれる官能基量は、13C固体NMR測定で求めることができる。具体的には、複合半透膜から基材を剥離し、分離機能層と多孔性支持層を得た後、多孔性支持層を溶解・除去し、分離機能層を得る。多孔性支持層を溶解する際には、支持層を溶解する溶媒を用い、具体的には、ジクロロメタンなどが好ましい。得られた分離機能層をDD/MAS−13C固体NMR測定を行い、各官能基が結合している炭素原子のピークの積分値を算出する。この積分値から各官能基量を同定できる。
(ゼータ電位測定)
複合半透膜を超純水で洗浄し、平板試料用セルに、複合半透膜の分離機能層面がモニター粒子溶液に接するようにセットし、大塚電子株式会社製電気泳動光散乱光度計(ELS−8000)により測定した。モニター粒子溶液としては、pH3に調整した10mM−NaCl水溶液にポリスチレンラテックスのモニター粒子を分散させた測定液を用いた。
複合半透膜を超純水で洗浄し、平板試料用セルに、複合半透膜の分離機能層面がモニター粒子溶液に接するようにセットし、大塚電子株式会社製電気泳動光散乱光度計(ELS−8000)により測定した。モニター粒子溶液としては、pH3に調整した10mM−NaCl水溶液にポリスチレンラテックスのモニター粒子を分散させた測定液を用いた。
複合半透膜の各種特性は、複合半透膜に、pH7.0に調整した海水(TDS濃度3.5%、ホウ素濃度約5ppm)を操作圧力5.5MPaで供給して膜ろ過処理を24時間行い、その後の透過水、供給水の水質を測定することにより求めた。
(膜透過流束)
供給水(海水)の膜透過水量を、膜面1平方メートルあたり、1日あたりの透水量(立方メートル)でもって膜透過流束(m3/m2/日)を表した。
供給水(海水)の膜透過水量を、膜面1平方メートルあたり、1日あたりの透水量(立方メートル)でもって膜透過流束(m3/m2/日)を表した。
(ホウ素除去率)
供給水と透過水中のホウ素濃度をICP発光分析装置(アジレント・テクノロジー社製5110 ICP−OES)で分析し、次の式から求めた。
供給水と透過水中のホウ素濃度をICP発光分析装置(アジレント・テクノロジー社製5110 ICP−OES)で分析し、次の式から求めた。
ホウ素除去率(%)=100×{1−(透過水中のホウ素濃度/供給水中のホウ素濃度)}
(耐塩素性試験)
複合半透膜をpH7.0に調整した25mg/L次亜塩素酸ナトリウム水溶液に25℃雰囲気下、24時間浸漬した。その後1000mg/L亜硫酸水素ナトリウム水溶液に10分浸漬し、引き続いて水で十分に洗浄した。
耐薬品性は浸漬前後での膜透過流束比とホウ素SP比から求めた。
(耐塩素性試験)
複合半透膜をpH7.0に調整した25mg/L次亜塩素酸ナトリウム水溶液に25℃雰囲気下、24時間浸漬した。その後1000mg/L亜硫酸水素ナトリウム水溶液に10分浸漬し、引き続いて水で十分に洗浄した。
耐薬品性は浸漬前後での膜透過流束比とホウ素SP比から求めた。
膜透過流束比=浸漬後の膜透過流束/浸漬前の膜透過流束
ホウ素SP比=(100−浸漬後のホウ素除去率)/(100−浸漬前のホウ素除去率)
(膜の作製)
(参考例1)
ポリエステル不織布(通気量2.0cc/cm2/sec)上にポリスルホン(PSf)の16.0質量%DMF溶液を25℃の条件下で200μmの厚みでキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって、多孔性支持膜を作製した。
(比較例1)
参考例1により得られた多孔性支持膜をm−フェニレンジアミン(m−PDA)の3質量%水溶液中に2分間浸漬し、該支持膜を垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、室温40℃に制御した環境で、トリメシン酸クロリド(TMC)0.165質量%を含む40℃のデカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布して1分間静置したのち、膜を垂直にして余分な溶液を液切りして除去し、架橋芳香族ポリアミド分離機能層を有する複合半透膜を得た。
ホウ素SP比=(100−浸漬後のホウ素除去率)/(100−浸漬前のホウ素除去率)
(膜の作製)
(参考例1)
ポリエステル不織布(通気量2.0cc/cm2/sec)上にポリスルホン(PSf)の16.0質量%DMF溶液を25℃の条件下で200μmの厚みでキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって、多孔性支持膜を作製した。
(比較例1)
参考例1により得られた多孔性支持膜をm−フェニレンジアミン(m−PDA)の3質量%水溶液中に2分間浸漬し、該支持膜を垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、室温40℃に制御した環境で、トリメシン酸クロリド(TMC)0.165質量%を含む40℃のデカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布して1分間静置したのち、膜を垂直にして余分な溶液を液切りして除去し、架橋芳香族ポリアミド分離機能層を有する複合半透膜を得た。
(比較例2)
(比較例1)で得られた複合半透膜を、酢酸とDMT-MMをそれぞれ100mmol/Lの濃度で含むpH7の水溶液に25℃で24時間浸漬させた。得られた複合半透膜をRO水に10分間浸漬し、酢酸処理を経た複合半透膜を得た。
(比較例3)
比較例1により得られた複合半透膜を50℃の水で2分間洗浄し、500ppmのm−PDAを含む水溶液に60分間浸漬した。次に、膜を硫酸によりpH3に調整した、0.3重量%の亜硝酸ナトリウムを含む35℃の水溶液に1分間浸漬し、続いて水で洗浄した。最後に、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬することで、比較例3の複合半透膜を得た。
(比較例4)
芳香族カルボン酸であるトリメシン酸を100mmol/L含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、比較例4の複合半透膜を得た。
(比較例1)で得られた複合半透膜を、酢酸とDMT-MMをそれぞれ100mmol/Lの濃度で含むpH7の水溶液に25℃で24時間浸漬させた。得られた複合半透膜をRO水に10分間浸漬し、酢酸処理を経た複合半透膜を得た。
(比較例3)
比較例1により得られた複合半透膜を50℃の水で2分間洗浄し、500ppmのm−PDAを含む水溶液に60分間浸漬した。次に、膜を硫酸によりpH3に調整した、0.3重量%の亜硝酸ナトリウムを含む35℃の水溶液に1分間浸漬し、続いて水で洗浄した。最後に、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬することで、比較例3の複合半透膜を得た。
(比較例4)
芳香族カルボン酸であるトリメシン酸を100mmol/L含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、比較例4の複合半透膜を得た。
(比較例5)
脂肪族カルボン酸として1mol/Lのアジピン酸を含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、比較例5の複合半透膜を得た。
脂肪族カルボン酸として1mol/Lのアジピン酸を含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、比較例5の複合半透膜を得た。
(比較例6)
脂肪族カルボン酸として1mol/Lのマレイン酸を含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、比較例6の複合半透膜を得た。
脂肪族カルボン酸として1mol/Lのマレイン酸を含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、比較例6の複合半透膜を得た。
(比較例7)
脂肪族カルボン酸として100ppmのポリアクリル酸(重量平均分子量 5、000、和光純薬社製)を含み、DMT-MMの添加濃度を1000ppmとした水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、比較例7の複合半透膜を得た。
脂肪族カルボン酸として100ppmのポリアクリル酸(重量平均分子量 5、000、和光純薬社製)を含み、DMT-MMの添加濃度を1000ppmとした水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、比較例7の複合半透膜を得た。
(比較例8)
参考例1により得られた多孔性支持膜をm−フェニレンジアミン(m−PDA)の3質量%水溶液中に2分間浸漬し、該支持膜を垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、室温40℃に制御した環境で、トリメシン酸クロリド(TMC)と4−(クロロカルボニル)ブタン酸をイソパラフィン溶液(ISOPAR L)中の酸塩化物量を0.24% w/vとし、4−(クロロカルボニル)ブタン酸を0.03% w/vを添加した40℃のイソパラフィン溶液を表面が完全に濡れるように塗布して1分間静置したのち、膜を垂直にして余分な溶液を液切りして除去し、架橋芳香族ポリアミド分離機能層を有する複合半透膜を得た。
参考例1により得られた多孔性支持膜をm−フェニレンジアミン(m−PDA)の3質量%水溶液中に2分間浸漬し、該支持膜を垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、室温40℃に制御した環境で、トリメシン酸クロリド(TMC)と4−(クロロカルボニル)ブタン酸をイソパラフィン溶液(ISOPAR L)中の酸塩化物量を0.24% w/vとし、4−(クロロカルボニル)ブタン酸を0.03% w/vを添加した40℃のイソパラフィン溶液を表面が完全に濡れるように塗布して1分間静置したのち、膜を垂直にして余分な溶液を液切りして除去し、架橋芳香族ポリアミド分離機能層を有する複合半透膜を得た。
(実施例1)
脂肪族カルボン酸として100mmol/Lのクエン酸を含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、実施例1の複合半透膜を得た。
脂肪族カルボン酸として100mmol/Lのクエン酸を含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、実施例1の複合半透膜を得た。
(実施例2)
脂肪族カルボン酸として100mmol/Lの1,2,3-プロパントリカルボン酸を含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、実施例2の複合半透膜を得た。
脂肪族カルボン酸として100mmol/Lの1,2,3-プロパントリカルボン酸を含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、実施例2の複合半透膜を得た。
(実施例3)
脂肪族カルボン酸として10mmol/Lの1,2,3-プロパントリカルボン酸を含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、実施例3の複合半透膜を得た。
脂肪族カルボン酸として10mmol/Lの1,2,3-プロパントリカルボン酸を含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、実施例3の複合半透膜を得た。
(実施例4)
脂肪族カルボン酸として5mmol/Lのグルタル酸無水物を含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、実施例4の複合半透膜を得た。
脂肪族カルボン酸として5mmol/Lのグルタル酸無水物を含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、実施例4の複合半透膜を得た。
(実施例5)
脂肪族カルボン酸として100mmol/Lのトリグリコラミン酸を含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、実施例5の複合半透膜を得た。
脂肪族カルボン酸として100mmol/Lのトリグリコラミン酸を含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、実施例5の複合半透膜を得た。
(実施例6)
脂肪族カルボン酸として100mmol/Lのアコニット酸を含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、実施例6の複合半透膜を得た。
脂肪族カルボン酸として100mmol/Lのアコニット酸を含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、実施例6の複合半透膜を得た。
(実施例7)
脂肪族カルボン酸として100mmol/Lの1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸を含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、実施例7の複合半透膜を得た。
脂肪族カルボン酸として100mmol/Lの1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸を含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、実施例7の複合半透膜を得た。
(実施例8)
脂肪族カルボン酸として100mmol/Lの1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸を含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、実施例8の複合半透膜を得た。
脂肪族カルボン酸として100mmol/Lの1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸を含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、実施例8の複合半透膜を得た。
(実施例9)
脂肪族カルボン酸として100mmol/Lの2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸を含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、実施例9の複合半透膜を得た。
脂肪族カルボン酸として100mmol/Lの2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸を含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、実施例9の複合半透膜を得た。
以上の比較例、実施例で得られた複合半透膜の、ポリアミド中の芳香族カルボキシ基に対する脂肪族カルボキシ基量の割合、pH3におけるゼータ電位、製造時性能、R1中の炭素数、塩素劣化後性能を表1に示す。実施例に示すように、本発明の複合半透膜は、高い透水性能を持ち、かつ高い耐塩素性を有することが分かる。
Claims (7)
- 前記複合半透膜の架橋芳香族ポリアミドの構造(1)のR2〜5が水素原子、さらにAr1〜3が置換基を有していてもよいベンゼン環である請求項1に記載の複合半透膜。
- 前記複合半透膜において、pH3におけるゼータ電位が+10mV以下である請求項1または2に記載の複合半透膜。
- 前記複合半透膜の架橋芳香族ポリアミドの構造(1)のR1の炭素数が1〜5であることを特徴とする、請求項1〜3に記載の複合半透膜。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合半透膜を備えた、複合半透膜エレメント。
- 脂肪族トリカルボン酸もしくは脂肪族テトラカルボン酸が、クエン酸、トリカルバリル酸、トリグリコラミン酸、アコニット酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、から選ばれる少なくとも一つである請求項6に記載の複合半透膜の製造方法。
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JP2018224646A JP2020082034A (ja) | 2018-11-30 | 2018-11-30 | 複合半透膜 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN114504956A (zh) * | 2022-02-17 | 2022-05-17 | 北京碧水源分离膜科技有限公司 | 一种耐氯纳滤膜及其制备方法 |
-
2018
- 2018-11-30 JP JP2018224646A patent/JP2020082034A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN114504956A (zh) * | 2022-02-17 | 2022-05-17 | 北京碧水源分离膜科技有限公司 | 一种耐氯纳滤膜及其制备方法 |
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