JP7347127B2 - 淡水の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、複合半透膜を用いて、原水から淡水を得る方法に関するものであり、詳しくは、原水中に含まれる酸化劣化因子となる物質による膜の酸化劣化を防止することが可能な淡水の製造方法に関するものである。
混合物の分離に関して、溶媒(例えば水)に溶解した物質(例えば塩類)を除くための技術には様々なものがあるが、近年、省エネルギー及び省資源のためのプロセスとして膜分離法の利用が拡大している。膜分離法に使用される膜には、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透透膜などがあり、これらの膜は、例えば海水、かん水、有害物を含んだ水などから飲料水を得る場合や、工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収などに用いられている。
現在市販されている逆浸透膜及びナノろ過膜の大部分は複合半透膜であり、支持膜上にゲル層とポリマーを架橋した活性層を有するものと、支持膜上でモノマーを重縮合した活性層を有するものとの2種類がある。なかでも、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応によって得られる架橋ポリアミドからなる分離機能層を支持膜上に被覆して得られる複合半透膜は、透過性や選択分離性の高い分離膜として広く用いられている(特許文献1)。
近年、複合半透膜を用いた処理工程で生じる処理原水の濃縮水について、排出規制の動きが強まっており、濃縮水をさらに複合半透膜を用いた高回収率運転により処理することで濃縮水量を低減させる水処理システムが提案されており、濃縮水の蒸発や晶析などで水分をなくす工程で消費するエネルギー低減に寄与するとされている。ここで造水プラントなどの各種水処理において、複合半透膜モジュールを用いたろ過に先立って、原水の水質により適切な前処理を行う必要がある。特に、微生物の存在量が多く、汚濁の見られる海域におけるプラントでは殺菌のために次亜塩素酸塩などの酸化性物質が使用される。
一方で、酸化性物質は分離膜を劣化させてその阻止性能を低下させる。特許文献2には、ポリフェノールを含む水をエレメントに加圧通水することで、分離膜の性能を回復させる方法が開示されている。
WO2010/096563 特開2006-224049
特許文献2のように、塩の除去能力が落ちてから回復処理を行う場合、除去能力を一定水準以上に保つには頻繁な処理が必要になるためプラントの運転効率が低下する。
また、重金属イオンの存在下では、重金属イオンが原水中の亜硫酸水素イオンおよび/またはバイオポリマーなどの原水中の溶存物質と作用することで酸化性物質が生成するなど、人為的に添加したものに由来しない種々の酸化性物質が発生する場合がある。このような場合は、さらに頻繁な回復処理が必要になる。
本発明の目的は、酸化性物質生成の原因となりうる重金属イオン、亜硫酸水素イオンおよび有機物を高濃度で含む原水をろ過するにあたって、実用に耐える高い透水性、除去性および透過水回収率を常に維持し、酸化性物質に接触後も高い塩除去性を維持できる水処理システムを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、以下のいずれかの構成を備える。
[1]下記条件(A)、(B)、(C)および(D)
(A)Co,Ni,MnおよびCuの濃度の総和が1.0μg/L以上であり、
(B)亜硫酸水素イオン濃度が0.5mg/L以上であり、
(C)総溶解固形分(TDS)濃度が3g/L以上であり、
(D)全有機炭素(TOC)濃度が10mg/L以上である
を満たす供給水から、
微多孔性支持層と、前記微多孔性支持層上に設けられる架橋芳香族ポリアミドを含む分離機能層を有する複合半透膜により、前記供給水よりも低い塩濃度を有する透過水を得る淡水化工程を有し、
前記分離機能層が、式(1)または(2)に表される少なくとも一方の部分構造を有する架橋芳香族ポリアミドを含有する、淡水の製造方法であり、
前記淡水化工程は
前記供給水から、前記複合半透膜を有する第一の半透膜モジュールにより前記供給水よりも低い塩濃度を有する透過水を得る第一ステップと、
前記第一ステップで生じた濃縮水から、前記複合半透膜を有する第二の半透膜モジュールにより、前記供給水よりも低い塩濃度を有する透過水を得る第二ステップと、
を有し、
前記供給水の量に対して得られる透過水の総量が75%以上である淡水の製造方法。
Figure 0007347127000001
(Ar1~3は置換基を有していてもよい炭素数5~14の芳香族環であり、R1は炭素数7以下の任意の原子団である。またR2~5は水素原子または炭素原子が1~10の脂肪族鎖である。)
[2]前記供給水の全有機炭素(TOC)濃度が20mg/L以上である、
上記[1]に記載の淡水の製造方法。
[3]前記複合半透膜の架橋芳香族ポリアミドの構造(1)のR1が脂肪鎖である、
上記[1]または[2]に記載の淡水の製造方法。
[4] 前記複合半透膜の架橋芳香族ポリアミドの構造(1)のR1がヘテロ原子を含まない脂肪鎖である、
上記[1]~[3]のいずれかに記載の淡水の製造方法。
[5]前記複合半透膜の架橋芳香族ポリアミドの構造(1)のR2~5が水素原子、さらにAr1~3が置換基を有していてもよいベンゼン環である、
本発明によって実用に耐える透水性と除去性を常に維持し、酸化性物質を発生させるリスクが高い原水を淡水化する際に高い塩除去率と運転安定性、透過水回収率を有する水処理システムが提供される。
水処理システムの概要を示す図である。 一段目のモジュールで得られた濃縮水を二段目のモジュールでさらに処理する濃縮水二段構造を持つ水処理システムの概要を示す図である。
[1.水処理システム]
以下に、複合半透膜により、供給水から、その供給水よりも低い塩濃度を有する透過水を得る淡水化工程を有する淡水製造方法を実行するシステムの一例を示す。
図1に示す水処理システム1は、複合半透膜を備えた半透膜モジュール13と、半透膜モジュール13に供給水を供給する供給水流路12と、供給水流路に設けられた供給水昇圧ポンプ17と、半透膜で分離された濃縮水を取り出す濃縮水流路18と、半透膜モジュールで分離された透過水を取り出す透過水流路16とを備える。水処理システムは、半透膜モジュール、各流路および供給水昇圧ポンプをそれぞれ1つ有してもよいし、複数のこれら部材を有していてもよい。水処理システムによると、供給水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水に分離して、目的にあった水を得ることができる。
供給水としては、海水、かん水、排水等の500mg/L以上100g/L以下のTDS(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物が挙げられる。一般に、TDSは総溶解固形分量を指し、「質量÷体積」あるいは「重量比」で表される。定義によれば、0.45ミクロンのフィルターで濾過した溶液を39.5℃以上40.5℃以下の温度で蒸発させ残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分(S)から換算する。また、TOC(Total Organic Carbon:全有機炭素)は水中の有機物量を指し、「質量÷体積」で表される。定義によれば、試料水を空気または酸素とともに、酸化コバルト,白金,バラジウムなどの酸化触媒を充填し900から950℃に加熱した燃焼管に送り込み、有機物を二酸化炭素に酸化させる。その二酸化炭素量を赤外線分析計などで測定し全炭素量を求める。その後、無機炭素の測定を行うため、試料水をリン酸などの無機炭素用の酸化触媒を充填し約150℃に熱した燃焼管に送り込み、全炭素量を測定した方法同様に、二酸化炭素を発生させ測定する。全炭素量から無機炭素量を引き、その差を全有機炭素量とする
より具体的には、本発明の供給水において、Co,Ni,MnおよびCuの濃度の総和が1.0μg/L以上であり、亜硫酸水素イオン濃度が0.5mg/L以上、総溶解固形分(TDS)が3g/L以上、かつ全有機炭素(TOC)濃度が10mg/L以上であるのものである。このような条件を満たす供給水は酸化リスクが高く、複合半透膜の分離機能層を酸化分解しうる。また、TOCが20mg/L以上のとき、供給水の酸化リスクはさらに高くなる
Co,Ni,MnおよびCuの濃度は、価数に関わらず、また錯体等の多原子イオンに含まれるか否かに関わらず、これら金属の質量に基づいて決定される。半透膜モジュールに水を供給する操作圧力は高い方が溶質除去率は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、複合半透膜の耐久性を考慮すると、複合半透膜に被処理水を透過する際の操作圧力は、0.5MPa以上、14MPa以下が好ましい。供給水温度は、高くなると溶質除去率が低下するが、低くなるにしたがい膜透過流束も減少するので、5℃以上、45℃以下が好ましい。また、供給水pHが高くなると、海水などの高溶質濃度の供給水の場合、マグネシウムなどのスケールが発生する恐れがあり、また、高pH運転による膜の劣化が懸念されるため、中性領域での運転が好ましい。
半透膜モジュールは、1つの複合半透膜エレメント、または直列または並列に接続された複数の複合半透膜エレメントと、これらの複合半透膜エレメントを収容する圧力容器とを備える。
複合半透膜エレメントの一例として、複合半透膜が、プラスチックネットなどの供給水流路材と、トリコットなどの透過水流路材と共に、多数の孔を穿設した筒状の集水管の周りに巻回されてなるスパイラル型複合半透膜エレメントが挙げられる。複合半透膜エレメントは、耐圧性を高めるためのフィルムを備えてもよい。フィルムも透過水流路材と同様に複合半透膜都共に集水管の周りに巻回される。
半透膜モジュールは2段で構成されても、3段以上で構成されてもよい。
図2に示す水処理システム3は、いわゆる濃縮水二段の構成を有することで、濃縮水をさらに別の半透膜モジュールでろ過するようになっている。具体的には、水処理システム3は、一段目の半透膜モジュール131と、二段目の半透膜モジュール132と、一段目の半透膜モジュール131の濃縮水を二段目の半透膜モジュール132に供給する流路181と、一段目の半透膜モジュール131の透過水を取り亜出す流路161と、二段目の半透膜モジュール132の濃縮水を取り出す流路182と、二段目の半透膜モジュール132の透過水を取り出す流路162と、を有する。
半透膜モジュールはさらに増やしてもよい。また、図2の構成において流路181上にさらにポンプを設ける等、構成は適宜変更可能である。
1つのシステムが複数の半透膜エレメントを有する場合(つまり、複数の半透膜モジュールを有するか、1つの半透膜モジュールが複数のエレメントを有する場合)、それら半透膜エレメントの構成は同一であっても、異なっていてもよい。半透膜エレメントの構成としては、半透膜の性能、構造、組成、および枚数、並びに流路材の構造等が挙げられる。
ただし、少なくとも1つの半透膜エレメントは、微多孔性支持層と、微多孔性支持層上に設けられる架橋芳香族ポリアミドを含む分離機能層を有し、かつ、分離機能層が、後述の式(1)または(2)に表される少なくとも一方の部分構造を有する架橋芳香族ポリアミドを含有する。これにより、供給水中に発生した酸化性物質により膜が酸化するのを防止することができる。詳細については後述する。
式(1)または(2)に表される少なくとも一方の部分構造を有する架橋芳香族ポリアミドを含有する分離機能層を有する複合半透膜からなる複合半透膜エレメントは、複数の半透膜モジュールを用いて淡水を製造する場合、より高濃度の酸化劣化原因物質に触れる場所にある半透膜モジュールの中に組み込まれていることが好ましい。具体的な例としては、第1のモジュールの濃縮水を第2のモジュールの原水として用いるため、第2のモジュールに組み込まれていることが好ましい。
本発明における水処理システムの全体の回収率は75%以上である。回収率が75%以上であることで、濃縮水量を低減させることができ、その後の濃縮水の水分を完全に除去する蒸発や晶析などの工程で消費するエネルギーを低減させることが可能である。
[2.複合半透膜]
本発明に係る複合半透膜は、支持膜と、支持膜上に形成される分離機能層とを備える。複合半透膜は逆浸透膜またはナノろ過膜としての分離性能を備える。前記分離機能層は実質的に分離性能を有するものであり、支持膜は水を透過するものの実質的にイオン等の分離性能を有さず、分離機能層に強度を与えることができる。
(1)支持膜
本実施形態では、支持膜は、基材および微多孔性支持層を備える。ただし、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、支持膜は、基材を持たず、微多孔性支持層のみで構成されていてもよい。
(1-1)基材
基材としては、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリオレフィン系重合体、及びこれらの混合物又は共重合体等が挙げられる。中でも、機械的、熱的に安定性の高いポリエステル系重合体の布帛が特に好ましい。布帛の形態としては、長繊維不織布や短繊維不織布、さらには織編物を好ましく用いることができる。
(1-2)微多孔性支持層
本発明において微多孔性支持層は、イオン等の分離性能を実質的に有さず、分離性能を実質的に有する分離機能層に強度を与えるためのものである。微多孔性支持層の孔のサイズや分布は特に限定されない。例えば、均一で微細な孔、又は分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもち、かつ、分離機能層が形成される側の表面で微細孔の大きさが0.1nm以上100nm以下であるような微多孔性支持層が好ましい。支持層に使用する材料やその形状は特に限定されない。
微多孔性支持層の素材には、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、及びポリフェニレンオキシド等のホモポリマー又はコポリマーを、単独で又は混合して使用することができる。ここでセルロース系ポリマーとしては酢酸セルロース、硝酸セルロースなど、ビニルポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが使用できる。
中でもポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどのホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。より好ましくは酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、またはポリフェニレンスルホンが挙げられる。さらに、これらの素材の中では化学的、機械的、熱的に安定性が高く、成型が容易であることからポリスルホンが一般的に使用できる。
ポリスルホンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)でN-メチルピロリドンを溶媒に、ポリスチレンを標準物質として測定した場合の質量平均分子量(Mw)が、10000以上200000以下であることが好ましく、より好ましくは15000以上100000以下である。
ポリスルホンのMwが10000以上であることで、微多孔性支持層として好ましい機械的強度および耐熱性を得ることができる。また、Mwが200000以下であることで、溶液の粘度が適切な範囲となり、良好な成形性を実現することができる。
例えば、ポリスルホンのN,N-ジメチルホルムアミド(以降、DMFと記載)溶液を、密に織ったポリエステル布又は不織布の上に一定の厚さに注型し、それを水中で湿式凝固させることによって、表面の大部分が直径数10nm以下の微細な孔を有する微多孔性支持層を得ることができる。
基材と微多孔性支持層の厚みは、複合半透膜の強度及びそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。十分な機械的強度及び充填密度を得るためには、基材と微多孔性支持層の厚みの合計が、30μm以上300μm以下であることが好ましく、100μm以上220μm以下であるとより好ましい。また、微多孔性支持層の厚みは、20μm以上100μm以下であることが好ましい。なお、本書において、特に付記しない限り、厚みとは、平均値を意味する。ここで平均値とは相加平均値を表す。すなわち、基材と微多孔性支持層の厚みは、断面観察で厚み方向に直交する方向(膜の面方向)に20μm間隔で測定した、20点の厚みの平均値を算出することで求められる。
(2)分離機能層
(2-1)分離機能層の化学構造
分離機能層は、架橋芳香族ポリアミドを含有する。特に、分離機能層は、架橋芳香族ポリアミドを主成分として含有することが好ましい。主成分とは分離機能層の成分のうち、50重量%以上を占める成分を指す。分離機能層は、架橋芳香族ポリアミドを50重量%以上含むことにより、高い除去性能を発現することができる。
本発明における芳香族ポリアミドは、その末端アミノ基を介したアミド結合によって上記(1)または(2)であらわされる部分構造を有する。
式(1)および(2)における繰り返し単位(括弧内の構造)は、多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸クロリドとの重合物であることが好ましい。
末端にアミノ基ではなく、(1)または(2)の構造を有することで、末端アミノ基に比べてエネルギー準位が低下するため、耐酸化性が向上して酸化性物質に接触後も構造が変化しにくくなる。また、親水性であるカルボニル基が存在することにより、末端官能基が嵩高くなっても透水性が低下しづらい。
部分構造(1)におけるR1は、実用に耐えうる造水量を担保するために炭素数が7以下である必要がある。これにより、R1の炭素鎖で分離機能層中の孔は塞がれない。R1はヘテロ原子を含んでもよい脂肪鎖であることが好ましく、より好ましくは炭素原子と水素原子のみからなる脂肪鎖である。R1が脂肪鎖であることで、後述するポリアミド機能層の末端アミノ基との反応を効率よく行うことができる。また、鎖中にヘテロ原子を含まないことで、末端基のエネルギー準位をより低下させることができ、より酸化耐性の強い構造が得られる。
これらのポリアミド中の官能基量は、例えば、13C固体NMR測定で求めることができる。具体的には、複合半透膜から基材を剥離し、分離機能層と多孔性支持層を得た後、多孔性支持層を溶解・除去し、分離機能層を得る。得られた分離機能層をDD/MAS-13C固体NMR測定を行い、各官能基が結合している炭素原子のピークの積分値を算出する。この積分値から各官能基量を同定できる。13C固体NMRで測定される官能基としては、具体的には、カルボキシ基、アミノ基、R1が想定される。
R1は、カルボン酸、カルボン酸クロリドおよび酸無水物かなる群より選択される少なくとも1種の化合物に由来することが好ましい。これらの化合物については後述する。
2.複合半透膜の製造方法
(1)分離機能層の形成方法
上記の分離機能層は、多官能芳香族アミン、多官能芳香族酸クロリド、カルボン酸誘導体を化学反応させることにより得られる。主骨格である架橋芳香族ポリアミドは、多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸クロリドの重合反応により構築される。
多官能芳香族アミンとは、一分子中に第一級アミノ基及び第二級アミノ基のうち少なくとも一方のアミノ基を2個以上有し、かつ、アミノ基のうち少なくとも1つは第一級アミノ基である芳香族アミンを意味する。多官能芳香族アミンとしては、例えば、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、o-ジアミノピリジン、m-ジアミノピリジン、p-ジアミノピリジン等の2個のアミノ基がオルト位やメタ位、パラ位のいずれかの位置関係で芳香環に結合した多官能芳香族アミン、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,2,4-トリアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸、3-アミノベンジルアミン、4-アミノベンジルアミンなどの多官能芳香族アミンなどが挙げられる。特に、膜の選択分離性や透過性、耐熱性を考慮すると、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、及び1,3,5-トリアミノベンゼンが好適に用いられる。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさから、m-フェニレンジアミンを用いることがより好ましい。これらの多官能芳香族アミンは、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
多官能芳香族酸クロリドとは、一分子中に少なくとも2個のクロロカルボニル基を有する芳香族酸クロリドをいう。例えば、3官能酸クロリドでは、トリメシン酸クロリドなどを挙げることができ、2官能酸クロリドでは、ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリドなどを挙げることができる。膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2~4個の塩化カルボニル基を有する多官能芳香族酸クロリドであることが好ましい。膜の選択分離性や透過性、耐熱性を考慮すると、トリメシン酸クロリドがより好ましい。これらの多官能芳香族酸クロリドは、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
ここで、多官能芳香族アミンおよび多官能芳香族酸クロリドについて、少なくとも一方が3官能以上の化合物を含んでいることが好ましい。これにより、剛直な分子鎖が得られ、水和イオンやホウ素などの微細な溶質を除去するための良好な孔構造が形成される。
化学反応の方法として、界面重合法が生産性、性能の観点から最も好ましい。以下、界面重合の工程について説明する。
界面重合の工程は、(a)多官能芳香族アミンを含有する水溶液を多孔性支持層上に接触させる工程と、(b)多官能芳香族アミンを含有する水溶液を接触させた多孔性支持層に多官能芳香族酸クロリド溶液を接触させる工程と、(c)接触後の有機溶媒溶液を液切りする工程と、(d)有機溶媒溶液を液切りした複合半透膜を熱水で洗浄する工程、を有する。
なお本欄では、支持膜が基材と微多孔性支持層とを備える場合を例に挙げるが、支持膜が別の構成を備える場合は、「微多孔性支持層」を「支持膜」と読み替えればよい。
工程(a)において、多官能芳香族アミン水溶液における多官能芳香族アミンの濃度は0.1重量%以上20重量%以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以上15重量%以下の範囲内である。多官能芳香族アミンの濃度がこの範囲であると十分な溶質除去性能および透水性を得ることができる。
多官能芳香族アミン水溶液の接触は、微多孔性支持層上に均一かつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、例えば、多官能芳香族アミン水溶液を微多孔性支持層にコーティングする方法や、微多孔性支持層を多官能芳香族アミン水溶液に浸漬する方法などを挙げることができる。微多孔性支持層と多官能芳香族アミン水溶液との接触時間は、1秒以上10分間以下であることが好ましく、10秒以上3分間以下であるとさらに好ましい。
多官能芳香族アミン水溶液を微多孔性支持層に接触させた後は、膜上に液滴が残らないように十分に液切りする。十分に液切りすることで、微多孔性支持層形成後に液滴残存部分が膜欠点となって除去性能が低下することを防ぐことができる。液切りの方法としては、例えば、特開平2-78428号公報に記載されているように、多官能芳香族アミン水溶液接触後の支持膜を垂直方向に把持して過剰の水溶液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの気流を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させて水溶液の水分を一部除去することもできる。
工程(b)において、有機溶媒溶液中の多官能芳香族酸クロリドの濃度は、0.01重量%以上10重量%以下の範囲内であると好ましく、0.02重量%以上2.0重量%以下の範囲内であるとさらに好ましい。0.01重量%以上とすることで十分な反応速度が得られ、また、10重量%以下とすることで副反応の発生を抑制することができるためである。
有機溶媒は、水と非混和性であり、かつ多官能芳香族酸クロリドを溶解し、支持膜を破壊しないものが好ましく、多官能芳香族アミンおよび多官能芳香族酸クロリドに対して不活性であるものであればよい。好ましい例として、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、イソオクタン、イソデカン、イソドデカンなどの炭化水素化合物および混合溶媒が挙げられる。
多官能芳香族酸クロリドの有機溶媒溶液の多官能芳香族アミン水溶液と接触させた微多孔性支持層への接触の方法は、多官能芳香族アミン水溶液の微多孔性支持層への被覆方法と同様に行えばよい。
工程(c)において、反応後の有機溶媒溶液を液切りする工程により、有機溶媒を除去する。有機溶媒の除去は、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法、送風機で風を吹き付けることで有機溶媒を乾燥除去する方法、水とエアーの混合流体で過剰の有機溶媒を除去する方法等を用いることができる。
工程(d)において、有機溶媒を除去した複合半透膜を熱水で洗浄する。熱水の温度としては40℃以上100℃以下、好ましくは60℃以上100℃以下である。
こうして、末端アミノ基を有する架橋芳香族ポリアミド(下記式(3))を含む層が形成される。
Figure 0007347127000002
(Ar1~3は置換基を有していてもよい炭素数5~14の芳香族環であり、R2~5は水素原子または炭素原子が1~10の脂肪族鎖である。)
次に、上記(1)または(2)であらわされる部分構造を架橋芳香族ポリアミドに付与する。部分構造の付与は、アミン反応性官能基を有する化合物のアミン反応性官能基を、架橋芳香族ポリアミドの末端アミノ基と反応させることで行われる。
具体的には、カルボン酸クロリドを作用させる方法、酸無水物を作用させる方法、およびカルボン酸を作用させる方法が挙げられる。
カルボン酸クロリドとは、一分子中にクロロカルボニル基を少なくとも1つ有する酸クロリドをいう。例えば、一分子中に1つクロロカルボニル基を有す、アセチルクロリド、ブチリルクロリド、ヘプタノイルクロリド、ベンゾイルクロリド、p-トルオイルクロリド、4-フルオロベンゾイルクロリドなどや、一分子中に2つクロロカルボニル基を有すアジポイルクロリド、グルタリルジクロリド、マロニルクロリド、スクシニルクロリド、スベロイルクロリド、イタコン酸クロリド、ヘキサハイドロテレフタル酸ジクロリド、フタロイルクロリド、イソフタロイルクロリド、テレフタロイルクロリドなどを用いることができる。
用いるカルボン酸クロリドの炭素数は8以下であり、7以下であることが好ましい。カルボン酸クロリドの炭素数が7以下であることで、ポリアミド末端のアミノ基に接近しやすいため、反応が十分に進行し、分離機能層の耐酸化性向上効果が得られる。
これらのカルボン酸クロリドは、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
酸無水物は、-CO-O-CO-基が含まれる化合物をいう。具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、イソ酪酸無水物、ピバル酸無水物、ジフルオロ酢酸無水物、イソ吉草酸無水物、2-メトキシ酢酸無水物、ヘキサン酸無水物、クロトン酸無水物、ヘプタン酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、トリクロロ酢酸無水物、吉草酸無水物、n-オクタン酸無水物、メタクリル酸無水物、アンゲリカ酸無水物、チグリン酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物、クロロジフルオロ酢酸無水物、ペンタフルオロプロピオン酸無水物、安息香酸無水物、ヘプタフルオロ酪酸無水物、2-メチル安息香酸無水物、フェノキシ酢酸無水物、p-アニス酸無水物、4-トリフルオロメチル安息香酸無水物、4-メトキシフェニル酢酸無水物、2-フルオロ-6-(トリフルオロメチル)安息香酸無水物、2-メチル-6-ニトロ安息香酸無水物、無水ニコチン酸、2,2-ジメチルコハク酸無水物、コハク酸無水物、3,3-ジメチルグルタル酸無水物、2,2-ジメチルグルタル酸無水物、3-メチルグルタル酸無水物、無水マレイン酸、グルタル酸無水物、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、(2-メチル-2-プロペニル)こはく酸無水物、カロン酸無水物、イタコン酸無水物、アリルこはく酸無水物、1,2-シクロプロパンジカルボン酸無水物、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物などを挙げることができる。
用いる酸無水物の炭素数は、非環状酸無水物の場合は16以下、環状酸無水物の場合は8以下であり、非環状酸無水物の場合は14以下、環状酸無水物の場合は7以下であることが好ましい。酸無水物の炭素数が14以下(環状酸無水物の場合は7以下)であることで、ポリアミド末端のアミノ基に接近しやすいため、反応が十分に進行し、分離機能層の耐酸化性向上効果が得られる。
カルボン酸は、一分子内にカルボキシ基が少なくとも1つ含まれる化合物をいい、ヘテロ原子の有無や分岐構造の有無、および不飽和炭素結合の有無によりなんら限定されない。具体的には、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピルビン酸、乳酸、安息香酸、p-トルイル酸といった単価カルボン酸や、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、チロシンなどアミノ酸の類、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、リンゴ酸、酒石酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などジカルボン酸や、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、クエン酸、トリカルバリル酸、アコニット酸、3-カルボキシアジピン酸といったトリカルボン酸の類が挙げられる。
用いるカルボン酸の炭素数は8以下であり、7以下であることが好ましい。カルボン酸の炭素数が7以下であることで、ポリアミド末端のアミノ基に接近しやすいため、反応が十分に進行し、分離機能層の耐酸化性向上効果が得られる。
これらのカルボン酸は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
以下、カルボン酸を作用させる方法および酸無水物を反応させる方法について例示するが、同様の手法が他の化合物を用いる場合にも適用される。
カルボン酸は、そのまま接触させてもよいし、支持膜を変質させない溶媒に溶解し、複合半透膜に接触させてもよい。
カルボン酸を接触させる方法としては、複合半透膜の分離機能層上にコーティングすることで反応させてもよいし、カルボン酸、もしくはそれを含む溶液に、分離機能層を含む膜を浸漬して反応させてもよい。また、後述する複合半透膜エレメントを作成してからカルボン酸を含む溶液を通液処理して反応させてもよい。
カルボン酸を水溶液として、またはそのまま複合半透膜に塗布する際の反応時間および温度は、カルボン酸の種類、塗布方法により適宜調整可能である。カルボン酸を溶液として塗布する際には、10mmol/L以上が好ましい。10mmol/L以上であることで、機能層のポリアミド末端のアミノ基とカルボン酸が十分に反応し、分離機能層の耐酸化性向上効果が得られる。
また、カルボン酸を接触させる場合は、高効率かつ短時間での反応のため、必要に応じ、種々の反応助剤(縮合促進剤)を利用することが好ましい。縮合促進剤として、硫酸、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(以下、DMT-MMという)、 1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’-カルボニルジイミダゾール、1,1’-カルボニルジ(1,2,4-トリアゾール)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩、(7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩、クロロトリピロリジノホスホにニウムヘキサフルオロりん酸塩、ブロモトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩、3-(ジエトキシホスホリルオキシ)-1,2,3-ベンゾトリアジン-4(3H)-オン、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、O-(N-スクシンイミジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロほう酸塩、O-(N-スクシンイミジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、O-(3,4-ジヒドロ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン-3-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロほう酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-(2-オクトキシ-2-オキソエチル)ジメチルアンモニウム、S-(1-オキシド-2-ピリジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルチウロニウムテトラフルオロほう酸塩、O-[2-オキソ-1(2H)-ピリジル] -N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロほう酸塩、{{[(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデン)アミノ]オキシ}-4-モルホリノメチレン}ジメチルアンモニウムヘキサフルオロりん酸塩、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロりん酸塩、1-(クロロ-1-ピロリジニルメチレン)ピロリジニウムヘキサフルオロりん酸塩、2-フルオロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロりん酸塩、フルオロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロりん酸塩、などが例として挙げられる。
以下、酸無水物を反応させる工程について述べる。酸無水物は加水分解反応が起こりやすいものも存在するため、剰余水分を液切りしてから反応を行うのが好ましい。液切りの方法としては、エアーノズルから窒素などの気流を吹き付け、強制的に液切りする方法、雰囲気温度を高温にすることで膜面を乾燥させる方法などを用いることができる。
酸無水物は、そのまま接触させてもよいし、支持膜を変質させない溶媒に溶解し、複合半透膜に接触させてもよい。溶媒は酸無水物を溶解あるいは懸濁できるものであれば特に限定されないが、溶媒中の水分量は2%以下であると加水分解による反応阻害が小さくなり好ましい。
酸無水物を接触させる方法としては、複合半透膜の分離機能層上にコーティングすることで反応させてもよいし、酸無水物またはそれを含む溶液に、分離機能層を含む膜を浸漬して反応させてもよい。また、後述する複合半透膜エレメントを作成してから酸無水物を含む溶液を通液処理して反応させてもよい。
酸無水物を溶液として、またはそのまま複合半透膜に塗布する際の反応時間および温度は、酸無水物の種類、塗布方法により適宜調整可能である。酸無水物を溶液として塗布する際には、溶液の濃度は10mmol/L以上であることが好ましい。10mmol/L以上であることで、機能層のポリアミド末端のアミノ基と酸無水物が十分に反応し、分離機能層の耐酸化性向上効果が得られる。
(2)支持膜の形成方法
支持膜は、ミリポア社製“ミリポアフィルターVSWP”(商品名)や、東洋濾紙社製“ウルトラフィルターUK10”(商品名)のような各種市販材料から選択することができる。
また、複合半透膜の製造方法は、支持膜の形成工程を含んでもよい。
支持膜は、例えば、基材上に、微多孔性支持層を“オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って形成することで製造することもできる。
微多孔性支持層の形成方法は、具体的には以下の工程を含む。
・微多孔性支持層を形成する樹脂を溶媒に溶かすことで、溶液を得る。
・得られた溶液を基材に塗布する。
・上記樹脂の非溶媒を含む凝固液に浸漬する。
以下実施例をもって本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれにより限定されるものではない。
(膜の作製)
(参考例1)
ポリエステル不織布(通気量2.0cc/cm2/sec)上にポリスルホン(PSf)の16.0質量%DMF溶液を25℃の条件下で200μmの厚みでキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって、多孔性支持膜を作製した。
(参考例2)
参考例1により得られた多孔性支持膜をm-フェニレンジアミン(m-PDA)の3質量%水溶液中に2分間浸漬し、該支持膜を垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、室温40℃に制御した環境で、トリメシン酸クロリド(TMC)0.165質量%を含む40℃のデカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布して1分間静置したのち、膜を垂直にして余分な溶液を液切りして除去し、架橋芳香族ポリアミド分離機能層を有する複合半透膜を得た。
(参考例3)
参考例1により得られた多孔性支持膜をm-フェニレンジアミン(m-PDA)の1.8質量%水溶液中に2分間浸漬し、該支持膜を垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、トリメシン酸クロリド(TMC)0.065質量%を含む25℃のデカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布して1分間静置したのち、膜を垂直にして余分な溶液を液切りして除去し、架橋芳香族ポリアミド分離機能層を有する複合半透膜を得た。
(参考例4)
参考例3により得られた複合半透膜に、100mmol/Lのトリクロロ酢酸無水物を含むイソプロパノール溶液を表面が完全に濡れるようコーティングして塗布し、25℃で2分間接触させた。得られた複合半透膜を純水に10分間浸漬し、参考例4の複合半透膜を得た。
(参考例5)
酸無水物溶液として100mmol/Lのn-オクタン酸無水物を含むイソプロパノール溶液を用いた以外は、参考例4と同様にして、参考例5の複合半透膜を得た。
(参考例6)
酸無水物溶液として100mmol/Lの無水酢酸を含むイソプロパノール溶液を用いた以外は、参考例4と同様にして、参考例6の複合半透膜を得た。
(参考例7)
処理する複合半透膜として、参考例2により得られた複合半透膜を用いた以外は、参考例4と同様にして、参考例7の複合半透膜を得た。
(参考例8)
参考例2により得られた複合半透膜に、100mmol/Lの安息香酸無水物を含むイソプロパノール溶液を表面が完全に濡れるようコーティングして塗布し、25℃で2分間接触させた。得られた複合半透膜を純水に10分間浸漬し、参考例8の複合半透膜を得た。
(参考例9)
処理する複合半透膜として、参考例2により得られた複合半透膜を用いた以外は、参考例5と同様にして、参考例9の複合半透膜を得た。
(参考例10)
処理する複合半透膜として、参考例2により得られた複合半透膜を用いた以外は、参考例6と同様にして、参考例10の複合半透膜を得た。
(水処理プラントの運転)
以下の比較例および実施例において、複合半透膜モジュール中の複合半透膜エレメントは全て直径8インチのものを使用しており、特に限定の無い限り1つのモジュールは8つの複合半透膜エレメントにより構成されている。
(比較例1)
1段目に参考例3により得られた複合半透膜が組み込まれた複合半透膜モジュールを用い、2段目に参考例2により得られた複合半透膜が組み込まれた複合半透膜モジュールを用い、2段目のモジュールの供給水として1段目のモジュールから得られた濃縮水を用いるようなろ過システム(図2の構成)に対し、1段目モジュール供給水の金属イオンMn+の総濃度を[M]と表したとき、[Co]=0.2μg/L、[Ni]=5.0μg/L、[Mn]=0.2μg/L、[Cu]=2.0μg/Lであり、さらに亜硫酸水素イオン濃度が5.0mg/L、TOC濃度が10.0mg/Lである、25℃の0.3質量%塩化ナトリウム水溶液を、流量12.0m/hを保ったまま供給し、システム回収率76%で6か月間通水運転を継続した。
(比較例2)
TOC濃度が20.0mg/Lである以外は、比較例1と同じ1段目モジュール供給水を流量12.0m/hを保ったまま供給し、システム回収率76%で6か月間通水運転を継続した。
(比較例3)
システム回収率が84%である以外は、比較例2と同じ1段目モジュール供給水、供給流量で6か月間通水運転を継続した。 (実施例1)
2段目に参考例8により得られた複合半透膜が組み込まれた複合半透膜モジュールを用いる以外は、比較例1と同じ1段目モジュール供給水、供給流量およびシステム回収率で6か月間通水運転を継続した。
(実施例2)
2段目に参考例7により得られた複合半透膜が組み込まれた複合半透膜モジュールを用いる以外は、比較例1と同じ1段目モジュール供給水、供給流量およびシステム回収率で6か月間通水運転を継続した。
(実施例3)
1段目に参考例4により得られた複合半透膜が組み込まれた複合半透膜モジュールを用いる以外は、比較例1と同じ1段目モジュール供給水、供給流量およびシステム回収率で6か月間通水運転を継続した。
(実施例4)
1段目に参考例5により得られた複合半透膜が組み込まれた複合半透膜モジュールを用い、2段目に参考例8により得られた複合半透膜が組み込まれた複合半透膜モジュールを用いる以外は、比較例1と同じ1段目モジュール供給水、供給流量およびシステム回収率で6か月間通水運転を継続した。
(実施例5)
2段目に参考例9により得られた複合半透膜が組み込まれた複合半透膜モジュールを用いる以外は、比較例2と同じ1段目モジュール供給水、供給流量およびシステム回収率で6か月間通水運転を継続した。
(実施例6)
1段目に参考例5により得られた複合半透膜が組み込まれた複合半透膜モジュールを用い、2段目に参考例9により得られた複合半透膜が組み込まれた複合半透膜モジュールを用いる以外は、比較例2と同じ1段目モジュール供給水、供給流量およびシステム回収率で6か月間通水運転を継続した。
(実施例7)
2段目に参考例10により得られた複合半透膜が組み込まれた複合半透膜モジュールを用いる以外は、比較例3と同じ1段目モジュール供給水、供給流量およびシステム回収率で6か月間通水運転を継続した。
(実施例8)
1段目に参考例6により得られた複合半透膜が組み込まれた複合半透膜モジュールを用い、2段目に参考例10により得られた複合半透膜が組み込まれた複合半透膜モジュールを用いる以外は、比較例3と同じ1段目モジュール供給水、供給流量およびシステム回収率で6か月間通水運転を継続した。
以上の比較例、実施例における淡水製造方法において、通水運転開始時の透過水中のTDS(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)および6か月間の運転前後のSP比(SP比=運転継続後の透過水中のTDS/運転初期の透過水中のTDS)を表1に示す。実施例に示すように、本発明の淡水製造方法は酸化リスクの高い原水を用いて長期間通水運転した後においても高い塩除去率を保てることがわかる。
Figure 0007347127000003


Claims (5)

  1. 下記条件(A)、(B)、(C)および(D)
    (A)Co,Ni,MnおよびCuの濃度の総和が1.0μg/L以上であり、
    (B)亜硫酸水素イオン濃度が0.5mg/L以上であり、
    (C)総溶解固形分(TDS)濃度が3g/L以上であり、
    (D)全有機炭素(TOC)濃度が10mg/L以上である
    を満たす供給水から、
    微多孔性支持層と、前記微多孔性支持層上に設けられる架橋芳香族ポリアミドを含む分離機能層を有する複合半透膜により、前記供給水よりも低い塩濃度を有する透過水を得る第一ステップと、
    前記第一ステップで生じた濃縮水から、前記複合半透膜により、前記供給水よりも低い塩濃度を有する透過水を得る第二ステップと、
    を有し、
    前記供給水の量に対して、前記第一および第二ステップで得られる透過水の総量が75%以上であり、
    前記分離機能層が、式(1)に表される部分構造を有する架橋芳香族ポリアミドを含有する
    淡水の製造方法。
    Figure 0007347127000004
    (Ar1~3は置換基を有するまたは置換基有しないベンゼン環であり、R1は炭素数7以下の芳香環またはヘテロ原子を含むもしくはヘテロ原子を含まない脂肪族鎖である。またR2~5は水素原子または炭素原子が1~10の脂肪族鎖である。)
  2. 前記供給水の全有機炭素(TOC)濃度が20mg/L以上である、請求項1に記載の淡水の製造方法。
  3. 前記複合半透膜の架橋芳香族ポリアミドの構造(1)のR1がヘテロ原子を含むまたはヘテロ原子を含まない脂肪鎖である、請求項1または2に記載の淡水の製造方法。
  4. 前記複合半透膜の架橋芳香族ポリアミドの構造(1)のR1がヘテロ原子を含まない脂肪鎖である、請求項1~3のいずれかに記載の淡水の製造方法。
  5. 前記複合半透膜の架橋芳香族ポリアミドの構造(1)のR2~5が水素原子である、請求項1~4のいずれかに記載の淡水の製造方法。

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