JP2001327840A - 複合半透膜およびその製造方法 - Google Patents

複合半透膜およびその製造方法

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JP2001327840A
JP2001327840A JP2000154486A JP2000154486A JP2001327840A JP 2001327840 A JP2001327840 A JP 2001327840A JP 2000154486 A JP2000154486 A JP 2000154486A JP 2000154486 A JP2000154486 A JP 2000154486A JP 2001327840 A JP2001327840 A JP 2001327840A
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semipermeable membrane
membrane
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Gakuji Inoue
岳治 井上
Mutsuo Murakami
睦夫 村上
Yoshinari Fusaoka
良成 房岡
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】低圧操作下でも高い溶質排除性と高い透水性と
を有する複合半透膜およびその製造方法を提供する。 【解決手段】1分子中に少なくとも2個のアミノ基を有
する多官能脂肪族アミン化合物と、1分子中に少なくと
も2個の酸ハライド基を有する多官能酸ハロゲン化物と
を重縮合させて多孔性支持膜上にポリアミドを含む分離
機能層を設けた後、この分離機能層の上に親水基を含む
水可溶性有機重合体を被覆し、次いで、この水可溶性有
機重合体を架橋させて親水基を含む水不溶性の保護層を
設ける。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、飲料水や純水の製
造、工業排水の浄化や有価物の回収などに好適に使用で
きる複合半透膜およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、水などの溶媒に溶解した物質の除
去技術として、省エネルギーや省資源の観点から、膜分
離法が広く利用されてきている。この膜分離法に使用さ
れている膜には、存在する細孔径の大きさにより、精密
ろ過膜や限外ろ過膜、逆浸透膜に分類され、また、最近
になって逆浸透膜と限外ろ過膜の中間に位置するNF膜
(Nanofiltration membrane)
と呼ばれる膜も現れ利用が進んでいる。具体的には、た
とえば、海水やかん水、有害物を含んだ水から飲料水を
得たり、工業用の超純水を得たり、また、排水処理や有
価物の回収などがあり、省エネルギー性をさらに高める
べく、より低圧運転が可能で、しかも、溶質の排除性と
透水性とがともに高い膜が要求されている。
【0003】しかしながら、従来の膜は、溶質の排除性
を高めようとすると、同時に、たとえば、シリカなどの
析出成分の除去率も高まり、膜の濃縮水側でシリカ濃度
が急激に高まって膜面に析出し、透水性が低下したり、
透過水の水質が低下したりするといった問題があった。
【0004】また、近年、河川水および湖沼水などを原
水とする浄水場では、泥炭地や山間部などから流入する
溶解性有機物(トリハロメタン前駆物質)を浄水場で塩
素殺菌処理することで発ガン性を有するハロゲン含有有
機物(トリハロメタン類)の生成が深刻な問題になって
いる。トリハロメタン前駆物質でもっとも重要なもの
は、分子量数千〜数万の溶解性有機物であるフミン酸で
あり、様々な除去方法が試行されている。このうち、浄
水場への導入が検討されているオゾン・活性炭処理方法
は、これら有機物の運転開始時における除去率は高いも
のの、長期間運転を行うと活性炭への有機物の吸着が飽
和して除去率が急激に低下するといった問題があった。
このために頻繁に活性炭の交換が必要となりコストが増
加するといった問題もあった。また、原水中の有機物除
去方法として、接触酸化法や生物膜法などの生物処理方
法もあるが、除去しようとする溶解性有機物は、もとも
と、生物代謝の末に生成されてきたものであり、これら
の方法では十分な除去が行えないという問題があった。
さらに、膜分離法では、精密ろ過膜や限外ろ過膜では細
孔径が大きすぎてフミン酸の除去が十分に行えず、ま
た、逆浸透膜では細孔径が小さすぎてフミン酸の除去率
は高いものの、シリカ除去率も高くなってシリカが膜面
に析出し、透水性が損なわれるといった問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
した従来の問題を解決し、低圧操作下でも高い溶質排除
性と高い透水性とを有する複合半透膜およびその製造方
法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明は、多孔性支持膜と、架橋ポリアミドを含む分
離機能層と、親水基を有する保護層とをこの順に設けて
なり、25℃において、pH6.5の、βシクロデキス
トリン濃度が1,000mg/lであり、NaCl濃度
が1,500mg/lである水溶液を0.5MPaの圧
力で加えたときのβシクロデキストリンの排除率が90
%以上であり、NaClの排除率が90%以下である複
合半透膜を特徴とするものである。
【0007】ここで、親水基が、第2アミン、水酸基お
よびエーテル基からなる群から選ばれる少なくとも1つ
の基であることも好ましい。
【0008】また、分離機能層がカルボキシル基を含
み、かつ、X線光電子分光法(ESCA)を用いて保護
層側から測定した親水基濃度が0.2〜0.6の範囲内
にあり、カルボキシル基濃度が0.001〜0.03の
範囲内にある上記の複合半透膜も好ましい。
【0009】さらに、25℃において、pH6.5の、
NaCl濃度が1,500mg/lである水溶液を0.
5MPaの圧力で加えて1時間ろ過したときの透過水量
をF1とし、続いてヘキサデシルトリメチルアンモニウ
ムクロリドを10mg/lの濃度となるように前記水溶
液に加えて24時間ろ過したときの透過水量をF2とし
たとき、(1−(F2/F1))×100の値が35以
下である上記の複合半透膜も好ましい。
【0010】また、X線光電子分光法(ESCA)を用
いて測定した分離機能層の親水基濃度が0.01〜0.
1の範囲内にあることも好ましい。
【0011】さらに、原水を0.5MPaの圧力で加え
たときの透過水量が0.5〜3m3・m-2・d-1の範囲
内にある上記の複合半透膜も好ましい。
【0012】また、本発明は、1分子中に少なくとも2
個のアミノ基を有する多官能脂肪族アミン化合物と、1
分子中に少なくとも2個の酸ハライド基を有する多官能
酸ハロゲン化物とを重縮合させて多孔性支持膜上にポリ
アミドを含む分離機能層を形成した後、この分離機能層
の上に親水基を含む水可溶性有機重合体を被覆し、次い
で、この水可溶性有機重合体を架橋させて親水基を含む
水不溶性の保護層を形成する複合半透膜の製造方法を特
徴とする。
【0013】ここで、多官能酸無水物ハロゲン化物の存
在下で重縮合を行うとともに、この多官能酸無水物ハロ
ゲン化物のモル数をNとし、多官能酸無水物ハロゲン化
物以外の多官能酸ハロゲン化物のモル数をMとしたと
き、N/Mの値を0.2〜10の範囲内に制御すること
も好ましい。
【0014】また、上記の複合半透膜を備えている流体
分離素子も好ましく、これら複合半透膜や流体分離素子
を用いる造水方法も好ましい。
【0015】この場合、界面活性剤を含む原水を用いる
ことも好ましく、水の回収率が90%以上であることも
好ましい。
【0016】また、上記の複合半透膜や流体分離素子を
用いて透過水を得た後、この透過水を逆浸透膜を用いて
処理する造水方法も好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の複合半透膜は、多孔性支
持膜と、架橋ポリアミドを含む分離機能層と、親水基を
有する保護層とをこの順に設けてなり、25℃におい
て、pH6.5の、βシクロデキストリン濃度が1,0
00mg/lであり、NaCl濃度が1,500mg/
lである水溶液を0.5MPaの圧力で加えたときのβ
シクロデキストリンの排除率が90%以上であり、Na
Clの排除率が90%以下であることを特徴としてい
る。
【0018】上記したβシクロデキストリンの排除率が
90%以上であると、フミン酸やその前駆物質に代表さ
れる有害物質の除去効率が向上し、低い操作圧力におい
ても高い溶質排除性を有する複合半透膜とすることがで
きる。また、同時にNaClの排除率が90%以下であ
ると、シリカに代表される膜への析出物質が透過しやす
い膜とすることができ、溶質排除性を高く維持しつつ、
透水性などの膜性能が低下しにくい複合半透膜とするこ
とができる。さらに、分離機能層の上に、親水基を有す
る保護層を設けることにより、膜の親水性が増し、水の
透過量を増加させることができるとともに、膜表面への
有機物の付着を抑えてファウリングを発生しにくくする
ことができる。また、分離機能層を擦過や衝撃などの物
理的外力から保護することができ、複合半透膜の性能低
下を防ぐことも可能となる。
【0019】上記の親水基は、第2アミン、水酸基およ
びエーテル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの
基であることが好ましい。
【0020】なお、本発明における排除率は、次式によ
り求められる値をいう。
【0021】排除率(%)=(1−(透過水中の溶質濃
度)/(原水中の溶質濃度))×100 また、分離機能層が、親水基であるカルボキシル基を含
み、かつ、X線光電子分光法(ESCA)を用いて保護
層側から測定した親水基濃度が、0.2〜0.6の範囲
内にあり、カルボキシル基濃度が0.001〜0.03
の範囲内にあれば、膜の脱塩率を高く維持しつつ、透水
性をさらに高めることができる。
【0022】ここで、親水基濃度とは、下記式で示され
るように、全炭素量(モル数)に対する親水基量(モル
数)の割合のことをいう。親水基量は、種々の親水基が
混合している場合も含む。
【0023】親水基濃度=測定された親水基量(モル
数)/測定された全炭素量(モル数) 親水基としては、たとえば、水酸基やアミノ基、エーテ
ル基、カルボニル基、スルホン酸基、カルボキシル基が
あり、これらの親水基濃度は、「Journal of
Polymer Science」,Vol.26,
559−572(1988)および「日本接着学会
誌」,Vol.27,No.4(1991)で例示され
ているX線光電子分光法(ESCA)を用いることによ
り求めることができる。
【0024】第1アミンや第2アミンなどのアミノ基濃
度、水酸基濃度およびカルボキシル基濃度については、
ラベル化試薬による気相化学修飾法により求めることが
できる。ラベル化試薬としては、第1アミンに対しては
ペンタフルオロベンズアルデヒドを用い、水酸基とアミ
ノ基に対しては無水トリフルオロ酢酸を用い、カルボキ
シル基に対してはトリフルオロエタノールやジシクロヘ
キシルカルボジイミドを用いる。ラベル化試薬を親水基
の種類にあわせて変更することで同様な測定方法を用い
ることができる。
【0025】以下に一例として、カルボキシル基濃度の
測定方法について説明する。ラベル化試薬により、試料
へ気相化学修飾を行い、同時に気相化学修飾を行ったポ
リアクリル酸標準試料のESCAスペクトルから、ラベ
ル化試薬の反応率(r)および反応残留物(m)を求め
る。つぎに、試料とラベル化試薬が反応してできたF1
sピーク(フッ素の1s軌道のピーク)の面積強度[F
1s]を求める。また、元素分析によりC1sピーク
(炭素の1s軌道のピーク)の面積強度[C1s]を求
める。
【0026】測定条件を以下に示す。
【0027】装置:SSX−100(米国SSI社製) 励起X線:アルミニウム K α 1、2線(148
6.6eV) X線出力:10kV 20mV 光電子脱出角度:35° データ処理は中性炭素(CHx)のC1sピーク位置を
284.6eVに合わせる。
【0028】上述のようにして求めた面積強度[F1
s]、[C1s]を「Journalof Polym
er Science」,Vol.26,559−57
2(1988)に示される下記式に代入しカルボキシル
基濃度を求める。
【0029】
【数1】
【0030】また、カルボニル基およびスルホン酸基濃
度は、「日本接着学会誌」,Vol.27,No.4
(1991)で例示されているように、ワイドスキャン
やナロースキャンを行い、ナロースキャンの化学シフト
から元素の化学状態を判断する。次いで、ナロースキャ
ンスペクトルをピーク分割することにより求める。
【0031】エーテル基濃度は、C1sピークの分割に
より求められるC−O結合濃度から、気相化学修飾法で
求めた水酸基濃度を差し引くことにより求めることがで
きる(上記のC−O結合濃度は、エーテル基濃度と水酸
基濃度の総和であることに基づく)。
【0032】親水基濃度が高いと、ファウリングが起こ
りにくく、透水性も増加するが、脱塩率は低下する傾向
にある。逆に、親水基濃度が低いと、膜が疎水性となっ
てファウリングが起こり易く、透水性が低下する。この
ため、複合半透膜の分離機能層側から測定した親水基濃
度は0.2〜0.6の範囲内にあることが好ましく、
0.2〜0.5の範囲内にあるとさらに好ましい。同時
に、分離機能層がカルボキシル基を含み、複合半透膜の
分離機能層側から測定したカルボキシル基濃度が、0.
001〜0.03の範囲内にあることが好ましく、0.
001〜0.02の範囲内にあるとより好ましい。親水
基濃度およびカルボキシル濃度が上記の範囲にあれば、
高い脱塩率を維持しつつ、高い透過水量を得ることがで
き、さらに原水中にカチオン系有機物(界面活性剤)が
含まれている場合においても透過水の低下率を低く抑え
ることができる。特に、カルボキシル基濃度が0.03
を超える場合に、透水性低下の傾向が大きい。
【0033】具体的には、25℃において、pH6.5
の、NaCl濃度が1,500mg/lである水溶液を
0.5MPaの圧力で加えて1時間ろ過したときの透過
水量をF1とし、続いてヘキサデシルトリメチルアンモ
ニウムクロリドを10mg/lの濃度となるように前記
水溶液に加えて24時間ろ過したときの透過水量をF2
としたとき、(1−(F2/F1))×100の値を3
5以下とすることができる。この値(以下、造水量低下
率という)は、上記の親水基濃度やカルボキシル基濃度
をさらに制御することにより30以下とすることもでき
る。
【0034】また、ESCAを用いて分析した分離機能
層の親水基濃度が0.01〜0.1の範囲内にあると好
ましく、0.02〜0.07の範囲内にあるとより好ま
しく、0.02〜0.05の範囲内にあるとさらに好ま
しい。これにより、複合半透膜の親水性が増し、低圧操
作下においても脱塩率と透過水量とをより高めることが
可能となる。この親水基濃度が0.1を超えると、膜の
形成が不十分となりやすく、また、0.01を下回ると
膜の疎水性が増加して透過水量が低下しやすくなる。
【0035】さらに、分離機能層の全窒素原子数に対す
る第1アミン濃度は0.05〜0.5の範囲内にあるこ
とが好ましく、0.05〜0.45の範囲内にあるとよ
り好ましく、0.10〜0.4の範囲内にあるとさらに
好ましい。第1アミンはイオン性の親水基であるため、
その濃度が0.05を下回れば、イオン性を有する界面
活性剤などによるファウリングは抑制されるが造水量は
低下する傾向がみられ、0.5を超えると、造水量は増
加するがファウリングが発生しやすくなる。
【0036】また、分離機能層の水酸基濃度と第2アミ
ン濃度との和は、0.008〜0.8の範囲にあること
が好ましく、0.01〜0.6の範囲内にあるとより好
ましく、0.05〜0.6の範囲内にあるとさらに好ま
しい。水酸基および第2アミンはイオン性の低い親水基
であるため、これらの濃度の和が0.008を下回る
と、ファウリングの抑制効果や高い造水量が得にくくな
り、0.8を超えると、膜が形成されにくくなる傾向が
みられる。
【0037】さらに、分離機能層の全炭素原子数に対す
る塩素原子数の比は、0.03以下であると好ましく、
0.02以下であるとより好ましい。この塩素原子数の
比は、複合半透膜の残存酸ハライド濃度を示す指標であ
り、0.03を超える場合は十分な架橋反応が進行して
おらず、膜の性能が低下する傾向がある。この塩素原子
数比は、上記のESCAを用いてワイドスキャンを行
い、各元素の組成比を求めて算出する。
【0038】多孔性支持膜は、分離機能層に機械的な強
度を与えるために用いられる。この多孔性支持膜として
は、たとえば、孔径が均一な微細孔、または、片面から
もう一方の面まで徐々に孔径が大きくなっている微細孔
を有し、その孔径が、一方の面の表面において100n
m以下であるような構造を有する支持膜が好ましい。こ
のような多孔性支持膜は、「オフィス・オブ・セイリー
ン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメン
ト・プログレス・レポート」,No.359(196
8)に記載された方法に従って製造することができる。
用いる素材としては、ポリスルホンや酢酸セルロース、
硝酸セルロースやポリ塩化ビニルなどのホモポリマー、
あるいはそれらをブレンドしたものを使用することがで
きるが、化学的、機械的、熱的に安定性の高いポリスル
ホンを用いることが好ましい。具体的には、上記ポリス
ルホンのジメチルフォルムアミド(DMF)溶液を、密
に織ったポリエステル布あるいは不織布の上に一定の厚
さに注型し、それをドデシル硫酸ナトリウムを0.5重
量%およびDMFを2重量%含む水溶液中で湿式凝固さ
せることによって、表面の大部分の孔径が10nm以下
である微細な孔を有した多孔性支持膜を得ることができ
る。
【0039】また、この多孔性支持膜の機械的強度を高
める目的で、不織布や織物、編物などの布帛を積層して
膜を強化してもよい。
【0040】次に、複合半透膜の製造方法について述べ
る。
【0041】本発明の複合半透膜は、たとえば、1分子
中に少なくとも2個のアミノ基を有する多官能アミン化
合物と、1分子中に少なくとも2個の酸ハライド基を有
する多官能酸ハロゲン化物とを重縮合させて多孔性支持
膜上にポリアミドを含む分離機能層を設けた後、この分
離機能層の上に親水基を含む水可溶性有機重合体を被覆
し、次いで、この水可溶性有機重合体を架橋させて親水
基を含む水不溶性の保護層を設けることにより製造する
ことができる。
【0042】ここで、一分子中に少なくとも2個のアミ
ノ基を有する多官能アミン化合物としては、たとえば、
芳香族アミンであるm−フェニレンジアミン、p−フェ
ニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼンを用
いることができ、また、脂肪族アミンであるメチレンジ
アミン、エチレンジアミン、プロパンジアミン、シクロ
プロパンジアミン、1,2−シクロブタンジアミン、
1,3−シクロブタンジアミン、1,2−シクロペンタ
ンジアミン、1,3−シクロペンタンジアミン、1,2
−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジ
アミン、プロパントリアミン、シクロプロパントリアミ
ン、1,2,3−シクロブタントリアミン、1,2,3
−シクロペンタントリアミン、1,3,5−シクロヘキ
サントリアミンなどを用いることができる。中でも、重
縮合反応性の観点からは芳香族アミンのm−フェニレン
ジアミンを用いることが好ましいが、本発明の複合半透
膜として最適な性能を有する分離機能層を得るには多官
能脂肪族アミン化合物、特に、ピペラジンを用いること
が好ましい。また、上記の各種アミンは単独で用いるこ
ともできるが、もちろん混合して用いてもよい。
【0043】また、一分子中に少なくとも2個の酸ハラ
イド基を有する多官能酸ハロゲン化物としては、たとえ
ば、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸や1,
3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキ
サンジカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン
酸、1,3−ベンゼンジカルボン酸、1,4−ベンゼン
ジカルボン酸などの酸ハロゲン化物を用いることができ
る。中でも、経済性や入手の容易さ、取り扱い易さ、反
応性の容易さなどの観点から1,3,5−ベンゼントリ
カルボン酸の酸ハロゲン化物であるトリメシン酸クロラ
イドが好ましい。また、上記の各種多官能酸ハロゲン化
物は単独で用いることもできるが、もちろん混合して用
いてもよい。
【0044】分離機能層の形成は、まず、上記の多官能
アミン化合物と多官能酸ハロゲン化物とを重縮合させる
ことにより行う。この反応は、多官能アミン化合物と多
官能酸ハロゲン化物とを接触させて行うが、たとえば、
多官能アミン化合物の水溶液を多孔性支持膜上に被覆し
た後、多官能酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液を被覆して
行うことができる。このとき、用いる有機溶媒として水
と非混和性の溶媒を用いることにより、均一な厚みを有
する分離機能層を形成することが可能となる。
【0045】以下、上記の方法を用いた場合について説
明する。
【0046】多官能アミン化合物水溶液のアミン化合物
濃度は、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜15
重量%の範囲内であると好ましい。また、この水溶液お
よび後述する有機溶媒溶液には、アミノ化合物と多官能
酸ハロゲン化物との反応を妨害しないものであれば、必
要に応じて、アシル化触媒や極性溶媒、酸捕捉剤、界面
活性剤、酸化防止剤等の化合物を添加しておいてもよ
い。
【0047】次に、多孔性支持膜表面へのアミン水溶液
の被覆であるが、これは、この水溶液が支持膜表面に均
一に、かつ、連続的に被覆されればよく、たとえば、塗
布によったり、多孔性支持膜を水溶液に浸漬したりして
行えばよい。
【0048】次いで、過剰に被覆されたアミン水溶液を
液切り工程により除去する。液切りは、たとえば、膜面
を垂直方向に保持して自然流下させたり、空気流により
除去したりする方法を用いて行うことができる。この液
切りを行った後は、一旦膜面を乾燥させてもよいし、ま
た、水溶液の溶媒である水の全部、または、一部を除去
する工程を加えてもよい。
【0049】次に、前述の多官能酸ハロゲン化物の有機
溶媒溶液を多官能アミン水溶液に接触させて重縮合反応
を起こし、架橋ポリアミドを含む分離機能層を形成す
る。このとき多官能酸ハロゲン化物の濃度としては、
0.01〜1重量%の範囲内であると好ましい。0.0
1重量%を下回ると、分離機能層の形成が不十分となり
やすく、1重量%を超えると製造コストの点から不利と
なりやすい。上記の接触の方法は、多官能アミン水溶液
の多孔性支持膜への被覆方法と同様に、塗布によったり
浸漬によったりして行うとよい。また、重縮合反応を終
えた後の過剰の有機溶媒の除去は、たとえば、特開平5
−76740号公報に記載に方法により行うことができ
る。
【0050】上記の有機溶媒は、水と非混和性であっ
て、かつ、多官能酸ハロゲン化物を溶解するとともに多
孔性支持膜を破壊しない性質を有することが望まれる。
具体的には、たとえば、液状の炭化水素やトリクロロト
リフルオロエタンなどのハロゲン化炭化水素を用いるこ
とができるが、オゾン層を破壊しない物質であることや
入手のしやすさ、取り扱いの容易さ、取り扱い上の安全
性などを考慮すると、オクタンやノナン、デカン、ウン
デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘプタ
デカン、ヘキサデカン、シクロオクタン、エチルシクロ
ヘキサン、1−オクテン、1−デセンなどを単独で、ま
たは、混合して用いると好ましい。
【0051】ここで、上記重縮合の際に、多官能酸無水
物ハロゲン化物を存在させることにより反応をより効率
的に進行させることができる。このとき、この多官能酸
無水物ハロゲン化物のモル数をNとし、多官能酸無水物
ハロゲン化物以外の多官能酸ハロゲン化物のモル数をM
としたとき、N/Mの値を0.2〜10の範囲内に制御
することが好ましい。上記N/Mの値が0.2を下回る
と、多官能酸無水物ハロゲン化物の効果が現れにくく複
合半透膜の水透過性が低下しやすくなる。また、10を
超えると、分離機能層が形成されにくくなる。このN/
Mの値は、好ましくは0.3〜9の範囲内、より好まし
くは0.5〜9の範囲内にあるとよい。
【0052】なお、上記の多官能酸無水物ハロゲン化物
としては、1分子中に酸無水物部分とハロゲン化カルボ
ニル基部分とを有している化合物が好ましく、たとえ
ば、無水安息香酸や無水フタル酸、無水酢酸のカルボニ
ルハロゲン化物などを用いることができる。さらに、高
い水透過性の発現や、原水中の溶解性有機物を除去しや
すい細孔径を有する膜の生成といった観点から、下記化
学式(1)で表されるトリメリット酸無水物ハロゲン化
物を用いると好ましい。
【0053】
【化1】
【0054】なお、上記化学式(1)において、X1お
よびX2は、互いに結合したジカルボン酸基であること
も好ましい。また、X1〜X3における脂肪族基の炭素
数は1〜3であるとより好ましく、さらに、直鎖状や環
状であってもよく、飽和していても不飽和状態であって
も構わない。
【0055】次に、分離機能層表面に水可溶性有機重合
体を配して架橋し、水不溶性の保護層を形成する。これ
により、複合半透膜に親水基である第2アミンや水酸
基、エーテル基を導入することができる。複合半透膜に
は、これらの親水基のうち、その少なくとも1つを含ん
でいるが、2つ以上含んでいるとより好ましい。
【0056】上記の水可溶性有機重合体としては、ビニ
ル系重合体や縮合系重合体、付加系重合体などを用いる
ことができ、特に、重合体中に非イオン系の親水性基を
有するものが好ましい。この親水性基としては、水酸基
(−OH)やエーテル基(−O−)、アミノ基(−NH
2 )などが好ましい。具体的には、たとえば、ポリビニ
ルアルコールや、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物、ポリ
ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアリルアミ
ン、ポリエチレンイミン、ポリエピアミノヒドリン、ア
ミン変性ポリエピクロルヒドリン、ポリアクリルアミ
ド、ポリアクリル酸アミド、ポリエチレングリコール、
セルロース誘導体などを用いることができる。これら
は、単独で用いてもよいが、ポリエチレンイミンとポリ
ビニルアルコールを混合して用い、第2アミンと水酸基
とを導入すると好ましい。
【0057】これら重合体の水溶液濃度は、0.01〜
30重量%の範囲内にあると好ましく、0.01〜10
重量%の範囲内にあるとより好ましく、0.01〜5重
量%の範囲内にあるとさらに好ましい。濃度が、0.0
1重量%を下回ると、分離機能層表面に均一に被覆しに
くくなり、また30重量%を上回ると、得られる水不溶
性の架橋重合体の厚みが増し、架橋重合体の抵抗による
造水量の低下が見られるようになる。
【0058】水可溶性有機重合体を架橋する方法として
は、たとえば、グリオキサールやグルタルアルデヒドな
どの、1分子中に少なくとも2個の官能基を有する多官
能アルデヒドを用いて、酸またはアルカリ触媒存在下で
熱架橋する方法を用いることができる。添加濃度として
は、0.01〜5.0重量%の範囲内にあることが好ま
しく、0.01〜1.0重量%の範囲内にあるとより好
ましく、0.01〜0.5重量%の範囲内にあるとさら
に好ましい。濃度が0.01重量%を下回ると、架橋密
度が低くなり架橋重合体の水不溶性が不十分となりやす
く、5.0重量%を上回ると、架橋密度が高くなり造水
量が低くなる傾向がみられ、さらに、架橋反応が急激に
進み室温でゲル化が起こり、均一塗布ができにくくな
る。
【0059】また、用いる酸としては、無機酸でも有機
酸でもよく、たとえば、塩酸を使用する場合、その濃度
は0.01〜1.0モル/lの範囲内にあることが好ま
しく、0.01〜0.5モル/lの範囲内にあるとより
好ましく、0.01〜0.3モル/lの範囲内にあると
さらに好ましい。濃度が0.01モル/lを下回ると、
触媒としての機能が発現しにくくなり、1.0モル/l
を超えると、分離機能層が加水分解する傾向がみられ
る。
【0060】熱架橋を行う際の加熱方法としては、たと
えば、熱風を吹き付ける方法を用いることができる。そ
の場合の加熱温度は、30〜150℃の範囲内にあるこ
とが好ましく、30〜130℃の範囲内にあるとより好
ましく、60〜130℃の範囲内にあるとさらに好まし
い。加熱温度が30℃を下回ると、十分な加熱が行われ
ず架橋反応速度が低下する傾向にあり、150℃を超え
ると副反応が進行しやすくなる。
【0061】この熱架橋を行って得られた複合膜を水洗
し、さらに30〜70℃の範囲内の水で洗浄を行って、
過剰の水可溶性物質および酸触媒などを除去するとよ
い。
【0062】次に、水不溶性の架橋重合体に界面活性剤
を接触させ、膜の親水性を増すことが好ましい。界面活
性剤としては、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエ
ーテルなどの中性界面活性剤や、ノルマルドデシルベン
ゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤
などを用いることが好ましい。これらの界面活性剤を溶
液の状態で用いる場合、その濃度は0.1〜1,000
mg/lの範囲内にあることが好ましく、1〜100m
g/lの範囲内にあるとより好ましい。
【0063】また、表面張力が17〜27dyn/cm
の範囲内にある化合物を接触させて膜の親水性を増すこ
ともできる。この化合物としては、たとえば、アルコー
ル類や炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類
などを用いることができる。具体的には、アルコール類
としては、メチルアルコールやエチルアルコール、n−
プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブ
チルアルコールを用いることができ、炭化水素類として
は、ヘキサンやオクタン、ノナン、デカンを用いること
ができる。また、エステル類としては、酢酸エチルやギ
酸エチル、プロピオン酸エチル、カプロン酸メチルを用
いることができ、ケトン類としてはジエチルケトンを用
いることができる。これらは、それぞれ単独で用いても
よく、混合して用いてもよい。また、上記の中では、ア
ルコール類を用いることが好ましく、特に、メチルアル
コールやエチルアルコール、イソプロピルアルコールを
用いると好ましく、イソプロピルアルコールを用いると
さらに好ましい。用いる濃度としては、0.1〜50重
量%の範囲内にあると好ましく、0.5〜15重量%の
範囲内にあるとより好ましい。濃度が50重量%を上回
ると、コスト高につながり、また、0.1重量%を下回
ると、水透過性を向上させる効果を得にくくなる。
【0064】上記界面活性剤や、表面張力が17〜27
dyn/cmの範囲内にある化合物を接触させる時間
は、10秒以上であると好ましく、1分以上であればよ
り好ましい。
【0065】上記により得られる複合半透膜は、取り扱
いを容易にするため筐体に納めて流体分離素子とするこ
とができる。この流体分離素子は、たとえば、多数の孔
を穿設した筒状の集水管の周囲に、上記の複合半透膜
と、トリコットなどからなる透過水流路材と、プラスチ
ックネットなどからなる原水流路材とを含む膜ユニット
を巻回し、これらを円筒状の筐体に納めたスパイラル型
構造とすると好ましい。これにより、複数の流体分離素
子を直列あるいは並列に接続して圧力容器に納めて分離
膜モジュールとすることもできる。
【0066】もちろん、スパイラル型以外にも中空糸膜
形態の複合半透膜を束ねて筐体に収納した中空糸型構造
やプレートアンドフレーム型構造の流体分離素子とする
こともできる。
【0067】また、上記により得られる本発明の複合半
透膜を用いれば、0.1〜1.5MPaの範囲内、好ま
しくは0.1〜1MPaの範囲内、より好ましくは0.
1〜0.6MPaの範囲内といった低い操作圧力で、原
水中に含まれるフミン酸などの有害物質やその前駆物質
の除去を行うことができる。また、シリカが透過しやす
い膜とすることができるので、シリカ濃度が高くなるこ
とを防ぎ、シリカスケール生成を防止することができ
る。さらに、上記した本発明の複合半透膜は、原水を
0.5MPaの圧力で加えたときの透過水量を0.5〜
3m3・m-2・d-1の範囲内とすることができる。
【0068】さらに、上記の複合半透膜または流体分離
素子に、ポンプなどを用いて原水を供給すれば、効率的
に飲料水などを得ることができる。このとき、原水中に
界面活性剤などが含まれていたとしても、膜性能の劣化
が少ないため、高い回収率を維持しつつ原水の精製を行
うことができる。特に、本発明の複合半透膜を用いれ
ば、水の回収率を90%とすることができる。ここで、
この水の回収率とは、原水の供給量に対する透過水の割
合をいい、下記式(a)〜(d)を連立して解くことに
より得られる値をいう。
【0069】 F=B+P (a) F×Cf=B×Cb+P×Cp (b) 排除率=(1−Cp/Cf)×100 (c) 回収率=P/F×100 (d) F:原水流量 B:濃縮水流量 P:透過水流量 Cf:原水中の溶質濃度 Cb:濃縮水中の溶質濃度 Cp:透過水中の溶質濃度 本発明の複合半透膜や流体分離素子は、たとえば、浄水
場などにおいて用いれば、原水に含まれるフミン酸など
の溶解性有機物を選択的に除去することができ、シリカ
などの析出成分は透過させて、低い操作圧力においても
高い透水性を維持し、飲料水などの製造を高回収率で得
ることができる。
【0070】また、本発明の複合半透膜や流体分離素子
を用いて得られた透過水を、さらに逆浸透膜を透過させ
て処理すれば、有害物質などの溶質の濃度がさらに低い
飲料水や純水を得ることができる。このとき、原水とし
て海水やかん水を用い、本発明の複合半透膜を前処理膜
として用いて逆浸透膜を備えた膜処理装置に供給すれ
ば、逆浸透膜の性能低下を防いで高効率で淡水を得るこ
とができる。膜処理装置としては、逆浸透膜を1段備え
た装置や、前段の逆浸透膜からの透過水をさらに後段の
逆浸透膜で処理する透過水2段装置、前段の逆浸透膜か
ら透過水を得るとともに、濃縮水を後段の逆浸透膜でさ
らに処理して透過水を得る濃縮水2段装置などを用いる
ことができる。
【0071】
【実施例】以下の実施例および比較例において用いた繊
維補強ポリスルホン支持膜は以下の手法により製膜し
た。
【0072】すなわち、ポリエステル繊維からなる、縦
30cm横20cmの大きさのタフタ(縦糸、横糸とも
150デニールのマルチフィラメント糸、織密度は縦9
0本/インチ、横67本/インチ、厚さ160μm)を
ガラス板上に固定し、その上にポリスルホンの15重量
%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を、200μm
の厚みで、25℃にてキャストし、ただちに純水中に浸
漬して5分間放置し、次いで、90℃2分間熱水中で処
理して繊維補強ポリスルホン支持膜(以下、FT−PS
支持膜という)を得た。このFT−PS支持膜の厚さは
200〜210μmであり、純水透過係数は圧力0.1
MPa、液温25℃、雰囲気温度25℃で測定したとき
0.1〜0.3g/(cm2 ・sec・MPa)であっ
た。 (実施例1)FT−PS支持膜を、m−フェニレンジア
ミン0.5重量%と、ピペラジン2.5重量%とを含む
水溶液中に1分間浸漬した。ついで、この支持膜を垂直
方向にゆっくりと引上げ、支持膜表面から余分な水溶液
を取除いた後、トリメシン酸クロライド0.06重量
%、トリメリット酸無水物クロライド0.048重量%
(モル比1)を含むデカン溶液を、表面が完全に濡れる
ように塗布した。次に、膜を垂直にして余分な溶液を液
切りして除去した後、膜面に残った溶媒を蒸発させるた
めに、膜表面での風速が8m/sとなるように、温度3
0℃の空気を1分間吹き付けた。この膜を炭酸ナトリウ
ム1重量%と、ラウリル硫酸ナトリウム0.3重量%と
を含む水溶液に2分間浸漬した。さらに、90℃の熱水
に2分間浸漬後、膜性能向上のため、pH7に調整し
た、次亜塩素酸ナトリウム濃度が500mg/lの溶液
中に2分間浸漬し、亜硫酸水素ナトリウム濃度が1,0
00mg/lの溶液中に処理前膜として保管した。
【0073】このようにして得られた処理前膜を、pH
6.5に調整した、βシクロデキストリン濃度が1,0
00mg/lであり、NaCl濃度が1,500mg/
lである水溶液を原水とし、0.5MPa、25℃の条
件下で逆浸透テストした結果、造水量は1.12m3
-2・d-1、βシクロデキストリンの排除率は99%以
上、NaClの排除率は72%であった。また、X線光
電子分光法(ESCA)によりカルボキシル基濃度を求
めると、0.026であった。
【0074】次に、上記で得られた処理前膜の表面に、
ポリエチレンイミン(重量平均分子量600)0.1重
量%を含む水溶液を塗布し、熱風乾燥機で60℃で30
秒間乾燥した。次に、ポリビニルアルコール(重量平均
分子量2,000)1.0重量%と、グルタルアルデヒ
ド0.114重量%とを含む水溶液に、酸触媒として塩
酸を0.1モル/lとなるように添加した水溶液を膜表
面に塗布し、熱風乾燥機で80℃で2分間乾燥し架橋し
た。その後、未架橋物や酸触媒を除去するため70℃の
熱水で洗浄を行い、さらに、イソプロピルアルコールを
10重量%含む水溶液に1時間接触させた後十分に水洗
を行い複合半透膜を得た。評価結果を表1に示す。 (実施例2)実施例1で得られた処理前膜の膜表面に、
ポリエチレンイミン(重量平均分子量600)2.0重
量%を含む水溶液を塗布し、熱風乾燥機で60℃で30
秒間乾燥した。次に、ポリビニルアルコール(重量平均
分子量2,000)0.5重量%と、グルタルアルデヒ
ド0.171重量%とを含む水溶液に、酸触媒として塩
酸を0.1モル/lとなるように添加した水溶液を膜表
面に塗布し、熱風乾燥機で80℃で2分間乾燥し架橋し
た。その後、未架橋物や酸触媒を除去するため70℃の
熱水で洗浄を行い、さらに、イソプロピルアルコールを
10重量%含む水溶液に1時間接触させた後十分に水洗
を行い複合半透膜を得た。評価結果を表1に示す。 (比較例1)実施例1における処理前膜を、その後の処
理をすることなくそのまま評価に供した。評価結果を表
1に示す。 (比較例2)FT−PS支持膜を、m−フェニレンジア
ミン3.0重量%を含む水溶液中に1分間浸漬した。つ
いで、この支持膜を垂直方向にゆっくりと引上げ、支持
膜表面から余分な水溶液を取除いた後、トリメシン酸ク
ロライド0.06重量%を含むデカン溶液を、表面が完
全に濡れるように塗布した以外は比較例1と同様にして
膜を作製し、評価に供した。評価結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【発明の効果】本発明の複合半透膜は、多孔性支持膜
と、架橋ポリアミドを含む分離機能層と、親水基を有す
る保護層とをこの順に設けてなり、25℃において、p
H6.5の、βシクロデキストリン濃度が1,000m
g/lであり、NaCl濃度が1,500mg/lであ
る水溶液を0.5MPaの圧力で加えたときのβシクロ
デキストリンの排除率が90%以上であり、NaClの
排除率が90%以下であるので、フミン酸などの溶解性
有機物を選択的に除去できると同時に、析出成分である
シリカなどは透過させることができ、低圧操作下におい
ても、高い溶質排除性と高い透水性とをあわせ有する膜
を提供することができる。
【0077】また、分離機能層の上に、親水基を有する
保護層を設けているので、擦過や折り曲げなどによる分
離機能層の損傷を防ぐことができるとともに、親水基に
よる膜の透水性向上を図ることができる。
【0078】さらに、保護層が第2アミン、水酸基およ
びエーテル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの
親水基を含んでいる場合には、原水中の荷電性有機分子
などをより効果的に除去できるので、透過水量が低下し
にくい複合半透膜を提供することができる。
【0079】また、X線光電子分光法(ESCA)によ
り求めた親水基濃度やカルボキシル基濃度が特定の範囲
内にある場合には、高い溶質排除性を維持しつつ、造水
量をより高めることができ、さらに、原水にカチオン系
有機物(界面活性剤)などの荷電性物質が含まれている
場合においても、透過水量の低下をより低く抑えること
ができる。
【0080】さらに、本発明の複合半透膜を用いること
によって、膜に加える操作圧力を0.1〜1.5MPa
といった低い圧力とすることができるので、ポンプの小
型化などを図ることができ、造水のコストダウンを達成
することができる。
フロントページの続き Fターム(参考) 4D006 GA03 HA01 HA61 KA12 KA52 KA55 KA57 MA10 MB02 MB06 MC56X MC75X NA44 NA46 PA04 PB08 PC03

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多孔性支持膜と、架橋ポリアミドを含
    む分離機能層と、親水基を有する保護層とをこの順に設
    けてなり、25℃において、pH6.5の、βシクロデ
    キストリン濃度が1,000mg/lであり、NaCl
    濃度が1,500mg/lである水溶液を0.5MPa
    の圧力で加えたときのβシクロデキストリンの排除率が
    90%以上であり、NaClの排除率が90%以下であ
    ることを特徴とする複合半透膜。
  2. 【請求項2】 親水基が、第2アミン、水酸基およびエ
    ーテル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基で
    ある、請求項1に記載の複合半透膜
  3. 【請求項3】 分離機能層がカルボキシル基を含み、か
    つ、X線光電子分光法(ESCA)を用いて保護層側か
    ら測定した親水基濃度が0.2〜0.6の範囲内にあ
    り、カルボキシル基濃度が0.001〜0.03の範囲
    内にある、請求項1または2に記載の複合半透膜。
  4. 【請求項4】 25℃において、pH6.5の、NaC
    l濃度が1,500mg/lである水溶液を0.5MP
    aの圧力で加えて1時間ろ過したときの透過水量をF1
    とし、続いてヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロ
    リドを10mg/lの濃度となるように前記水溶液に加
    えて24時間ろ過したときの透過水量をF2としたと
    き、(1−(F2/F1))×100の値が35以下で
    ある、請求項1〜3のいずれかに記載の複合半透膜。
  5. 【請求項5】 X線光電子分光法(ESCA)を用いて
    測定した分離機能層の親水基濃度が0.01〜0.1の
    範囲内にある、請求項1〜4のいずれかに記載の複合半
    透膜。
  6. 【請求項6】 原水を0.5MPaの圧力で加えたとき
    の透過水量が0.5〜3m3・m-2・d-1の範囲内にあ
    る、請求項1〜5のいずれかに記載の複合半透膜。
  7. 【請求項7】 1分子中に少なくとも2個のアミノ基を
    有する多官能脂肪族アミン化合物と、1分子中に少なく
    とも2個の酸ハライド基を有する多官能酸ハロゲン化物
    とを重縮合させて多孔性支持膜上にポリアミドを含む分
    離機能層を形成した後、この分離機能層の上に親水基を
    含む水可溶性有機重合体を被覆し、次いで、この水可溶
    性有機重合体を架橋させて親水基を含む水不溶性の保護
    層を形成することを特徴とする複合半透膜の製造方法。
  8. 【請求項8】 多官能酸無水物ハロゲン化物の存在下で
    重縮合を行うとともに、この多官能酸無水物ハロゲン化
    物のモル数をNとし、多官能酸無水物ハロゲン化物以外
    の多官能酸ハロゲン化物のモル数をMとしたとき、N/
    Mの値を0.2〜10の範囲内に制御する、請求項7に
    記載の複合半透膜の製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項1〜6のいずれかに記載の複合半
    透膜を備えていることを特徴とする流体分離素子。
  10. 【請求項10】 請求項1〜6のいずれかに記載の複合
    半透膜または請求項9に記載の流体分離素子を用いるこ
    とを特徴とする造水方法。
  11. 【請求項11】 界面活性剤を含む原水を用いる、請求
    項10に記載の造水方法。
  12. 【請求項12】 水の回収率が90%以上である、請求
    項10または11に記載の造水方法。
  13. 【請求項13】 請求項1〜6のいずれかに記載の複合
    半透膜または請求項9に記載の流体分離素子を用いて透
    過水を得た後、この透過水を逆浸透膜を用いて処理する
    ことを特徴とする造水方法。
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