以下に図面を参照しながら第1実施形態について説明する。
図1に示すように、画像形成装置としてのフルカラーインクジェットプリンター(以下、プリンターという)10は、用紙Pに対して非接触で直接インクを転移させる画像形成手段としての記録ヘッド44と、記録ヘッド44のノズル面40Aに対向配置されたメンテナンス装置81と、記録ヘッド44とメンテナンス装置81との間に用紙を搬送する搬送手段202とから基本的に構成される。
記録ヘッド44は、用紙に対して非接触で直接転移させるものであるサーマルインクジェット方式、ピエゾ式インクジェット、連続流型インクジェット、静電吸引型インクジェット等、何れでも良い。
また、使用するインクも水性インク、油性インク、常温で固形の所謂ソリッドインク、溶剤インク等、何れも適用可能である。インク中の色材も顔料・染料を問わない。
また、図2に示すように、記録ヘッド44は、用紙Pの最大用紙幅PWに対応する印字領域を有するものであり、記録ヘッド44を走査させることなく用紙Pの全幅に印字可能なものである。即ち、記録ヘッド44の下を用紙Pが1回通過するだけで印字が完了する構成である。
用紙Pに印字マージンが設定されている場合には、記録ヘッド44の印字領域は、最大用紙幅PWから印字マージンを引いた記録領域に対応した(記録領域以上の)幅となる。
一般的には、用紙Pが搬送方向に対して所定角度傾斜して搬送される(スキュー)ことが生じるし、縁無し印字の要請等もあるので、記録ヘッド44の印字領域は、記録領域よりも大きく構成することが望ましい。
また、記録ヘッド44は、印字領域にわたってノズルが1列に形成されたモノリシックの長尺ヘッド(ヘッドチップ)から構成してもよいが、短尺ヘッド(ヘッドチップ。以下、単位記録ヘッドという)40(図3参照)の組合せから構成することが好ましい。単位記録ヘッド(短尺ヘッド)の方が大量に製造でき、また、個々の短尺ヘッドの歩留まりを高めることもモノシリックの長尺ヘッドに比べて格段に容易である。従って、単位記録ヘッド40を組合せて記録ヘッド44を構成した方が安価に構成できる。
例えば、図4に示すように、ノズル面40Aに1列にノズル58が配列された記録ヘッド40をノズル列を一致させて共通基板46A、46Bに取り付け、互いにずらして配置することにより、印字領域内で間断なく印字可能な記録ヘッド44を構成することができる。この場合には、大量に生産される安価なデバイス(記録ヘッド)と共通化が可能となり、低価格で全幅印字可能な記録ヘッド44を構成できる。また、記録ヘッドアレイ42A、42Bの構成が簡略化し、製作も高精度調整も、より簡易になる。
しかし、記録ヘッド44は、このような構成に限られるではなく、図5に示すように、1つの共通基板46の両側に単位記録ヘッド40を複数取り付けて記録ヘッドアレイ42A、42Bを構成することもできる。このように構成することによって、共通基板46を共通化して記録ヘッド44を小型化することができる。
なお、単位記録ヘッドは、市販もしくは公知のシリアル記録型インクジェット記録ヘッドを流用しても良い。また、単位記録ヘッドをヘッドチップのみで構成し、複数のヘッドチップに対して共通基板46に設けたインク流路でインクを供給する構成としも良い。さらに、単位記録ヘッド毎に交換可能にできれば好適である。
また、単位記録ヘッド40におけるノズル58をノズル配列方向端部まで形成した単位記録ヘッド110(図6参照)を幅方向に連続して配置して記録ヘッド44を構成しても良い(図7参照)。単位記録ヘッド同士の接続部分におけるノズルピッチを合わせる為に、単位記録ヘッド110の端部を高精度に作製する必要があるが、記録ヘッド44を最も小型化できる構成である。
さらに、単位ヘッド40、110におけるノズル配列は一直線状のもので説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図8に示すように、千鳥状にノズルを配列することも可能である。
図1に示すように、記録ヘッド44に対向配置されるメンテナンス装置81は、少なくとも非印字時に記録ヘッド44から吐き出されたインクを収容するインク受部を備えるものであり、記録ヘッド44の印字(インク転移)性能を一定に維持するものである。このように、インク受部を備えるメンテナンス装置81が記録ヘッド44に対向配置されているため、記録ヘッド44から非印字時に転移されたインクが確実に収容される。
記録ヘッド44は、インクの乾燥(特に、水性インク、溶剤インク)によるインク滴の吐き出し性能を初期化する目的で、非印字時にインク滴の吐き出し(以下、ダミージェットという)を行う必要がある。
また、インクが殆ど乾燥しない油性インクやソリッドインクの場合であっても、印字中に記録ヘッド44の内部に発生する微小な気泡による影響や、ノズル面(インク滴吐出し面)に付着したインクや微小なゴミによる影響を除去して初期化するためにダミージェットを行う必要がある。
メンテナンス装置81(インク受部)は、このダミージェット時のインク滴を収容するものであり、収容したインク滴が飛散しないようにインク吸収部材を配置しても良い。或いは、インク浸透部材やチューブ部材等を介して別の場所に設けた排インク手段に排出する構成としても良い。
また、メンテナンス装置81は、少なくとも上記インク受け機能を備えれば良いが、さらにインク滴の吐出し性能を維持するために、他のメンテナンス機能を有するように構成しても良い。例えば、ノズル面を清掃するワイパー部材を設けても良いし、ノズル面を気密して保護するキャッピング機能を有する構成としても良い。さらにはノズルからインク等を吸引するバキューム機能を有する構成としても良い。
なお、インク受け機能以外の機能、例えば上記ワイピング機能やキャッピング機能等は必ずしもメンテナンス装置81に備える必要はなく、例えば記録ヘッド側に当該機能を果たす機構(ワイピング機構、キャッピング機構等)を設けても良い。
搬送手段202は、静電吸着以外の方法(以下、非静電吸着方式という)によって用紙を搬送するものである。即ち、搬送手段202は、記録ヘッド44とメンテナンス装置81の間に一定速度で安定的に用紙Pを搬送可能なものであれば特に限定するものではない。例えば、搬送ロールや搬送ベルトと付勢手段としての押圧ロールやバキューム装置との組合せ等が考えられる。
また、搬送手段202は、用紙搬送方向において記録ヘッド44と異なる位置に配置することが望ましい。これは、記録ヘッド44と対向する位置にメンテナンス装置81を容易に配設するためである。
例えば、用紙Pの裏面に当接して用紙Pに搬送力を付与する搬送ロール100と、搬送ロール100に対して用紙Pを押し付ける付勢手段204とから搬送手段202を構成することが考えられる。
これは、静電吸着方式を採用した場合には、用紙Pの厚さや材質によって静電吸着状態が安定しない恐れがあるのに対して、搬送ロール100に付勢手段204によって用紙Pを押し付けることで用紙Pの厚み、材質等に拘らず搬送ロール100から用紙Pに駆動力が確実に伝達され、安定して搬送することができるためである。
付勢手段204は、用紙Pに対して付勢部材が直接接触して付勢する方式と、用紙Pに対して直接接触しない方式が考えられる。後者の方式としては、例えば、エアーの吹き付け等が考えられる。印字された用紙Pに接触しない点で優れている。
一方、前者の方式としては、例えば、図9に示すように、シャフト74を介してスプリング75の付勢力が作用したスターホイール70が考えられる。即ち、搬送ロール100に対して弾性的に付勢されたスターホイール70によって厚さや材質に拘らず用紙Pが搬送ロール100に押圧される。この結果、搬送ロール100から確実に駆動力が伝達され、用紙Pが安定的に搬送される。
スターホイール70の形状は、用紙Pに対する接触面積が最小限に抑制されていれば、特に限定するものでない。例えば、SUS631Hを高温で硬化処理したSUS631H材が好適である。製造方法も特に限定するものでないが、エッチングやプレス、レーザ加工等が可能である。
従って、スターホイール70が用紙Pの画像形成面に接触しても、インクが転移したばかりの画像形成面に対する接触面積が最小限に抑制され、印字画質に対する影響を最小限に抑制できる。
シャフト74を介して付勢されたスターホイール70に作用する押圧力は、5gf〜30gfが好ましく、10gf〜20gfが一層好ましい。5gfよりも小さいと用紙Pを十分に押えることができず、30gfよりも大きいと用紙Pを傷つけるためである。
なお、複数のスターホイール70によってスターホイール群を構成する場合には、共通のシャフトに支持されることが望ましく、用紙Pの局所的な浮きや変形を押えるために、スターホイール70の間隔が50mm以下であることが好適である。
また、印字領域が大きい場合には、シャフト74を複数に分割してそれぞれに複数のスターホイール70を軸支させることが望ましい。シャフト74が撓んでスターホイール70が用紙Pを不均一に付勢し、用紙Pの局所的な浮きや変形を押えることができなくなるためである。
搬送ロール100は、従来公知の搬送ロールであれば何れも適用可能である。用紙Pに駆動力を確実に伝達するために、表面の摩擦係数が大きく、且つ耐磨耗性に優れたものが好ましい。例えば、金属のロール外周面にゴムを被覆したゴムロールや金属のロール外周面にセラミック粉をコートしたセラミックロールが考えられる。
なお、スターホイール70が搬送ロール100側に弾性的に付勢されているため、搬送ロール100に接触したスターホイール70の歯先が破損しないように、搬送ロール100には破損回避部が設けられている。例えば、搬送ロール100がゴムロールであれば外周面を被覆したゴムが破損回避部に該当する。また、搬送ロール100がセラミックロールであれば、図10に示すように、スターホイール70と対向する部位に設けられた周回する溝101が破損回避部に相当する。但し、溝101を設けた場合はには、スターホイール70の歯先が溝101の内部に侵入する量が過剰になって用紙Pの搬送抵抗が増大しないように規制手段を設けることが好ましい。例えば、シャフト74に当接してスターホイール70の侵入量を規制する構成が考えられる。
また、図11に示すように、プリンタ10は、記録ヘッド44を複数の記録ヘッドアレイ42A、42Bの組合せで構成したもの(図4参照)であり、搬送方向に沿って複数の記録ヘッド44(記録ヘッドアレイ42A、記録ヘッドアレイ42B)を配設することによって、多色印字を可能にしたものである。ここでは、搬送方向上流側からイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のインク滴を吐出し可能な記録ヘッド44Y、44M、44C、44K(以下、44Y〜44Mという、他の部材も同様)(記録ヘッドアレイ42YA・42YB〜42KA・42KB)を配置してカラー印字可能に構成したものである。しかし、記録ヘッドのインクの色・数はこれに限定されるものではなく、他の色の記録ヘッドを追加しても良いし、同一の色の記録ヘッドを複数有する構成でも良い。
この場合には、記録ヘッドアレイ間及び最上流の記録ヘッドアレイ42YAよりも上流側、及び最下流の記録ヘッドアレイ42KBよりも下流側の所定区間A2、A3に搬送手段202を配設している。この点については後に詳細に説明する。
なお、このように配置された複数の搬送手段202の駆動源106は単一であることが望ましい。これは、駆動源が複数ある場合には、複数の駆動源の駆動速度や変動特性を同一にすることは困難であり、結果として各駆動源の速度変動成分が重畳して用紙搬送速度に作用するためである。この結果、各駆動源の速度変動成分が十分に小さくても上記重畳によって用紙速度変動が印字画質の劣化として顕在化する恐れがあるためである。駆動源106としては、例えばステッピングモータやサーボモータが考えられる。
また、複数の搬送手段202に対して単一の駆動源106から共通の駆動部材104で駆動力を伝達されることが望ましい。駆動部材104は、公知の駆動伝達部材が適用可能であるが、特に、歯の噛合がなく表面の摩擦力で駆動力を伝達できる平ベルト構造が好ましい。ギア(歯の噛合)を用いる場合、歯毎の周期的な速度変動を生じ、印字された画像において人間に識別され易い画質欠陥を生ずる恐れが大きいためである。
なお、駆動部材104として平ベルトを用いて搬送ロール100に巻き掛ける場合には、滑り易い特性を補うために、アイドラロール114を用いて巻き付け角度を稼ぐことが必要である。なお、平ベルトは伸縮性が小さく、変形しにくいものが好ましい。例えば、樹脂繊維の織物を芯体とし、各種ゴム(クロロプレンゴム、ニトリルゴム)やポリウレタンを表層に設けて機械的強度と摩擦係数を両立させることができる。また、SUSやニッケルの金属ベルトでも良い。
この平ベルト104を搬送ロール100に架け渡す場合には、図12に示すように、搬送ロール100の用紙搬送領域外である非用紙搬送領域に架けることになる。この場合、搬送ロール100の非用紙搬送領域は、用紙搬送領域と同一径であることが必要であり、用紙搬送領域と同一の加工工程・方法で加工されていることが望ましい。例えば、搬送ロール100の用紙搬送領域がゴムで被覆されたゴムロールやセラミック粉末でコーティングがなされた場合には、平ベルトを架け渡す非用紙搬送領域も同様の加工で形成される。
このように構成されたプリンタ10の作用について説明する。
プリンタ10では、記録ヘッド44の印字領域が記録領域以上とされているので、記録ヘッド44とメンテナンス装置81との間に用紙Pが搬送されることによって記録ヘッド44から用紙に色材が転移して画像が形成される。
また、搬送手段202は非静電吸着方式の搬送手段、例えば、搬送ロール100と付勢手段204の構成の場合、静電特性が変化する用紙の材質や厚さの変化や用紙に対する色材の付着、或いは環境温湿度変化に拘らず、付勢手段204によって搬送ロール100に用紙Pが確実に押し付けられ、搬送ロール100から用紙Pに駆動力が確実に伝達される。この結果、用紙Pが安定して搬送され、高画質に印字することができる。
また、付勢手段204がスプリング75で弾性的に付勢されたスターホイール70であれば、インク滴等が付着した用紙Pに対する接触面積が最小限に限定され、高画質な印字が可能になる。このように付勢手段204にスプリング75で付勢されたスターホイール70を用いても、搬送ロール100に破損回避部(例えば、セラミックロールに設けられた溝101)を設けることによって破損・変形することを確実に回避できる。
ところで、搬送手段202が搬送方向において記録ヘッド44と異なる位置に配置された場合には、記録ヘッド44のノズル面40Aと対向する位置にメンテナンス装置81を容易に配設することができる。
一方、記録ヘッド44のノズル40Aと対向してメンテナンス装置81を配設させているため、記録ヘッド44を移動させることなく(印字状態のままで)、色材を転移させることができる。例えば、記録ヘッド44がインクジェット方式であれば、インク滴をメンテナンス装置81に向って吐出しする(ダミージェットを行う)ことによって、記録ヘッド44の内部に存在した気泡が排出され、インク滴の吐出し性能が初期化される。
特に、連続印字中に先行する用紙Pの後端が通過して後続の用紙Pの先端が到着するまでのタイミングでメンテナンス装置81に向ってインク滴を吐出し、連続印字中に変化してしまうインク滴の吐出し性能を一定に維持して高画質の印字を可能にすることができる。
即ち、連続印字中に印字動作を中段することなく、ダミージェットを行うことができるため、高画質な印字を可能にしつつ印字能力(生産性)を高く維持できる。
なお、ダミージェットを行うために、記録ヘッド44やメンテナンス装置81を移動させる機構が不要であり、簡単な装置構成とすることができる。
また、プリンタ10が複数の記録ヘッド44Y〜44K(記録ヘッドアレイ42YA〜44KB)から構成されている場合であっても、各記録ヘッドアレイ間及び最上流の記録ヘッドアレイ42YAよりも上流側、及び最下流の記録ヘッドアレイ42KBよりも下流側の所定区間A2、A3に非静電吸着方法の搬送手段202を配設することによって、用紙Pの紙質や厚さ等の変化、インク付着、或いは環境温湿度変化等の静電特性の変化に拘らず各記録ヘッドアレイ42(記録ヘッド44)に用紙Pを安定して搬送することができ、高画質に印字することができる。
特に、搬送手段202が搬送ロール100と付勢手段204で構成されている場合には、搬送手段202を記録ヘッドアレイ42間に配設することによって、インクの付着によって生じる用紙Pの変形を付勢手段204、例えば、付勢されたスターホイール70によって搬送ロール100に押し付けて抑制する。従って、インク付着による用紙変形によって用紙Pが記録ヘッド44のノズル面40Aに接触してノズル面40Aを傷つけたり、用紙Pが汚れることを確実に防止できる。
また、複数の搬送手段202、例えば搬送ロール100を単一の駆動源106で駆動することにより、複数の駆動源の速度変動の重畳による用紙搬送速度変動が防止される。
しかも、駆動源106から搬送手段202に共通の駆動部材104で駆動力が伝達されるため、搬送手段202間における搬送速度のバラツキが抑制される。
また、搬送ロール100に対してアイドラロール110〜114を介して平ベルト104を巻き掛ける構成の場合には、チェーンとギアを用いる場合のように、歯毎の周期的な速度変動成分が抑制され、周期的な変動が用紙上に形成された画像に表れることを低減できる。
特に、搬送ロール100の用紙搬送領域と同一径で同一加工された非用紙搬送領域に平ベルト104を巻き掛けることによって、搬送ロール100の加工精度や保持方法(ベアリング等)に起因する芯ぶれがあっても周期的な速度変動が発生せず、用紙Pは平ベルト104の移動速度と同一速度で搬送される。従って、周期的な速度変動が一層確実に低減される。
なお、平ベルト104の巻き付け角度を稼ぐためにアイドラロール114を配置する構成では、厳密に言えば、アイドラロール114の加工精度や保持方法に起因する周期的速度変動が発生するが、アイドラロール114は比較的小径であり単一材料でよいので安価で且つ高精度に加工することは容易である。一方、搬送ロール100はサイズが大きく、構成も例えば芯金と被覆材という複数の材料構成となるので、高精度の加工が困難である。或いは、非常に高価な部品になってしまう。
また、本実施形態の駆動機構では、共通駆動部材として平ベルト104を採用したため、巻き付け角度を確保するために搬送ロール100間にアイドラロール114を配設する構成としたが、例えばチェーンの場合のように滑りについてほとんど考慮する必要がない構成であれば、アイドラロール110〜114を省略して搬送ロール100の表面に接触する構成でも良い。
ここで、搬送ローラ100とスターホイール70の配置について説明する。
図11に示すように、搬送ローラ100とスターホイール70は、記録ヘッド44Y〜44K(記録ヘッドアレイ42YA〜44KB)に面する画像形成区間A1と、画像形成区間から搬送方向の上流側及び下流側へ所定距離だけ拡張された所定区間A2、A3に同様の配列で設けられている。
この所定距離は、プリント可能な用紙の搬送方向の長さ(長尺紙を除く)、例えばA3用紙の長手幅(420mm)とされている。このため、用紙Pの先端が画像形成区間A1に入って画像形成が開始された時、用紙Pの全域が、画像形成区間A1と搬送方向の上流側の所定区間A2に配置された搬送ローラ100とスターホイール70から挟持される。
また、用紙Pの後端が画像形成区間A1を抜ける時、即ち、用紙Pの後端に画像が形成されている時、用紙Pの全域が、画像形成区間A1と搬送方向の上流側の所定区間A3に配置された搬送ローラ100とスターホイール70から挟持される。
ここで、搬送ローラ100とスターホイール70は画像形成区間A1と所定区間A2とで同様の配列とされている。また、上述したように、搬送ローラ100は、同一の駆動力伝達機構を通じて回転される。このため、搬送される用紙Pが所定区間A2、A3と画像形成区間A1に跨った時に、所定区間A2、A3と画像形成区間A1とで用紙Pにかかる負荷の差が無くなるので、用紙Pの姿勢や搬送速度の変化を抑制できる。従って、画像の曲がりや色ずれ等を防止できる。
[実施例1]
本発明の実施例1のプリンタ10について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成について同一の符号を付し、説明は省略する。
(プリンタ10の全体構成)
ここで、プリンタ10の全体構成について説明する。
図13に示すように、プリンタ10は、用紙Pを送り出す用紙供給部12と、用紙Pの姿勢を制御するレジ調整部14と、インク滴を吐出して用紙Pに画像を形成する記録ヘッド部16と、記録ヘッド部16のメンテナンスを行うメンテナンス部18とを備える記録部20と、記録部20で画像形成された用紙Pを排出する排出部22とから構成される。
用紙供給部12は、用紙が積層されてストックされているストッカ24と、ストッカ24から1枚ずつ枚葉してレジ部14に搬送する搬送装置26とから構成されている。
レジ部14は、ループ形成部28と用紙Pの姿勢を制御するガイド部材30が備えられており、この部分を通過することによって用紙Pのコシを利用してスキューが矯正されると共に搬送タイミングが制御されて記録部20に進入する構成である。
記録部20については、記録ヘッド部16とメンテナンス部18の間を用紙Pが搬送される用紙搬送路が構成されており、用紙搬送路を連続的に(停止することなく)搬送される用紙Pに対して、記録ヘッド部16からインク滴が吐出され当該用紙Pに画像が形成される構成である。
記録ヘッド部16とメンテナンス部18は、それぞれユニット化されており、記録ヘッド部16がメンテナンス部18と用紙搬送路を挟んで分離可能に構成されている。従って、用紙ジャムの場合に、容易にジャムした用紙Pを取り出すことができる。なお、記録部20については後述するので、詳細な説明は省略する。
排紙部22は、記録部20で画像が形成された用紙Pを排紙ベルト31を介してトレイ32に収納するものである。
(記録ヘッド部16の構成)
次に、記録ヘッド部16について説明する。
図14に示すように、記録ヘッド部16は、用紙搬送方向(矢印X方向。以下、搬送方向という)に対して直交する用紙幅方向(矢印Y方向。以下、幅方向という)に対して一定の間隔で8個配設されることによって構成されている。
図15に示すように、単位記録ヘッド40は、ノズル面40Aにインクを吐出すノズル58が一直線上に形成されたものであり、周知のサーマルインクジェット方式によりインク滴が吐出されるものである。本実施形態では、単位記録ヘッド40はノズル配列密度が800dpiで800ノズルであり、噴射周波数が7.56kHzで、顔料インクを使用するものである。
このような単位記録ヘッド40がノズル配列方向が幅方向と一致するように一直線上に後述する共通基板46に6個取り付けられることによって記録ヘッドアレイ42A、42Bが形成されている。
図16に示すように、記録ヘッドアレイ42A、42Bは、それぞれ6個の単位記録ヘッド40が一定間隔をおいて配設されたものであり、記録ヘッドアレイ42A、42Bでは単位記録ヘッド40の配置を幅方向で相互にずらして配置することによって、単位記録ヘッド40のノズル列の一部が記録ヘッドアレイ42A、42B間において重複するオーバーラップ領域OLを有するように配置されている。このようにオーバーラップ領域OLを設けることによって、印字領域内で印字ができない領域が発生することを防止している。即ち、記録ヘッドアレイ42A、42Bの単位記録ヘッド42A、42Bの単位記録ヘッド40のノズル58からインク滴を吐出したことによって、用紙Pに対する一色分の印字を行うものである。本実施形態では、この一対の記録ヘッドアレイ42A、42Bの組合せを記録ヘッド44と呼ぶものとする。
記録ヘッド44では、印字領域が12インチとされており、最大用紙幅PWのA3短手幅(A4長手幅)の297mmよりも広く設定されている。
図17に示すように、記録ヘッド44を構成する記録ヘッドアレイ42Aは、用紙幅方向に延在する共通基板46Aに6個の単位記録ヘッド40が所定間隔で取り付けられている。
即ち、図16に示すように、単位記録ヘッド40は、共通基板46Aに取り付けられることによりこのノズル列が幅方向に並ぶことになる。
また、記録ヘッド部16では、搬送方向に沿って記録ヘッドアレイ42間(即ち、画像形成区間A1)、最上流側の記録ヘッドアレイ42YAよりも上流側にA3用紙の長手幅だけ拡張された所定区間A2、及び最下流側の記録ヘッドアレイ42KBよりも下流側にA3用紙の長手幅だけ拡張された所定区間A3に3つのスターホイール群72A〜72Cが配設されている(図14参照)。スターホイール群72A〜72Cは、幅方向に連続して配置された3本のシャフト74A〜74Cに対し所定間隔をおいてそれぞれ6個のスターホイール70が軸支されているものである。この各シャフト74A〜74Cは、両端でスプリング75によって後述する搬送ロール100側に付勢されている。なお、スターホイール70の搬送ロール100側への変位量は、搬送ロール100の表面よりわずかに食い込む位置で停止するように、規制部材77が配設されている(図18参照)。
ここで、スターホイール70同士の幅方向間隔は、最も広い箇所で25.4mmとした。用紙Pの局所的な浮き・変形を押えるために50mm以下が望ましいからである。
また、スターホイール70がスプリング75によって搬送ロール100に押圧される力は、1個当り10gfとされている。これは、押圧力が5gfよりも小さいと用紙Pを搬送ロール100に十分押え付けることができず、30gfよりも大きいとスターホイール70が用紙Pを傷付けるためである。
図19(A)に示すように、スターホイール70は、孔部74が形成された円筒形の樹脂製の保持体76と、保持体76に保持されたステンレス勢のホイール78から構成されている。
保持体76は、軸方向中央で縮径してホイール78を挿入可能とした第1部材76Aと、縮径部分に嵌合して第1部材76Aと共にホイール78を挟持する第2部材76Bとから構成されている。ホイール78は、外周に歯79が一定間隔で多数形成されている。歯79の先端形状は、鈍角で先端がR形状とされている(図19(B)参照)が、用紙上の未乾燥インクと接触するため接触面積が極力小さくされていれば良く、例えば、鋭角(図19(C)参照)でも良い。
また、ホイール78の厚みは、本実施例では、0.1mmで先端(歯先)の厚みをテーパ加工により0.01〜0.02mm程度に薄くしたものである。また、ホイール78は、SUS631EH材から両面段差エッチングで外形と先端テーパ形状を同時に加工したものであり、表面をフッ素樹脂撥水コートしたものである。
また、記録ヘッドアレイ42Aでは、各単位記録ヘッド40の隣りにスターホイール70が配置されている。スターホイール70は、共通基板46に嵌合されている支持部材71の先端に板バネ73を介して弾性的に軸支されている(図18参照)。
さらに、搬送方向の上流側、及び下流側の所定区間A2、A3には、スターホイール群69A〜69Cのスターホイール70が、各単位記録ヘッドの隣りに配置されたスターホイール70の搬送方向、及び幅方向の間隔を同じにして配置されている。スターホイール群69A〜69Cは、搬送方向に沿ってスターホイール群72A〜72C間に幅方向に連続して配置された3本のシャフト67A〜67Cに対し、2個のスターホイール70が軸支されているものである。この2個のスターホイール70は、各単位記録ヘッドの隣りに配置されたスターホイール70の搬送方向の一直線上に配置されている。各シャフト67A〜69Cは、両端でスプリング(図示省略)によって搬送ローラ100側に付勢されている。
(メンテナンス部18の構成)
記録部20に対して対向配置されるメンテナンス部18の構成を説明する。
図20に示すように、メンテナンス部18は、記録部20と用紙搬送経路を挟んで対向配置されており、記録部20の各単位記録ヘッド40と対向する位置にメンテナンス装置81が配置されている(図14参照)。
図21に示すように、メンテナンス装置81は、キャップ部材80とワイピング部材88から構成されている。キャップ部材80は、矩形状の深さ8mmの凹部82Aが形成されPBT樹脂から形成された受部82と、受部82の上部にシリコンゴム(硬度40Hs)から形成されたゴム部84と、凹部82Aの底面全体に配設されたポリプロピレンとポリエチレンとからなるインク吸収体86とから構成されている。従って、後述するダミージェットの際、各単位記録ヘッド40のノズル58からキャップ部材80の開口部84Aを介して凹部82Aの内部にインク滴が吐出され、インク吸収体86に吸収される構成である。
また、図22に示すように、キャップ部材80は、記録ヘッドアレイ42を構成する各単位記録ヘッド40にそれぞれ対応した6個のキャップ部材80が共通基板300に取り付けられてユニット化され、昇降機構302によって一体的に単位記録ヘッド40のノズル面40Aに対して接近・離間可能に構成されている。
昇降機構302は、駆動モータ304と、駆動モータ304の駆動軸306に取り付けられ、共通基板300の下面に当接される偏心カム308とから構成されている。従って、駆動モータ304が駆動されることにより偏心カム308が回転し、偏心カム308が当接された共通基板300が単位記録ヘッド40のノズル面40Aに対して接近・離間する構成である。
なお、キャップ部材80の下側には、ノズル面40Aに圧接する際に圧接力を調整するスプリング87が配設されている(図26参照)。従って、後述するキャッピング動作時にはキャップ部材80が上昇してゴム部84がノズル面40Aに対して圧接してノズル58を含むノズル面40Aを密閉し、インクの乾燥を抑制すると共にゴミ、埃等の付着を防止する。また、後述するワイピング動作時にはキャップ部材80が下降してワイピング部材88を幅方向に移動可能とするものである。
さらに、各キャップ部材80の幅方向において隣接する位置には、各単位記録ヘッド40のノズル面40Aをクリーニングするためのワイピング部材88が配設されている(図21、22参照)。
図21に示すように、ワイピング部材88は、幅方向視において略アーチ型の形状をした保持部材90と、保持部材90の上部に配設され搬送方向に延在するワイパー92とから構成されているものである。
ワイパー92は熱可塑性ポリマー樹脂(硬度65Hs)から形成され、幅方向厚さW1が0.8mm、搬送方向長さL1が8mmであり、保持部材90からの高さ(自由長)が6mmである。保持部材90はSUS材から形成されている。
なお、ワイピング部材88はキャップ部材80の幅方向端部から1mmの位置に配置した。
また、図22に示すように、ワイピング部材88は、記録ヘッドアレイ42を構成する各単位記録ヘッド40にそれぞれ対応した全ワイピング部材88が共通基板310に取り付けられてユニット化され、移動機構312によって一体的に単位記録ヘッド40のノズル面40Aに対して接近・離間及び幅方向に移動可能に構成されている。
移動機構312は、共通基板310を幅方向に移動可能に支持するスライダ314と、スライダ314上で共通基板310を幅方向に移動させる駆動モータ316と、スライダ314を昇降させる駆動モータ318とから構成されている。スライダ314は、搬送方向両端に設けられ幅方向に延在するガイド320を備えており、ガイド320に案内された共通基板310が幅方向に移動可能とされている。また、共通基板310の一側面には、ラック322が形成された凸部324が形成されており、スライダ314に取り付けられた駆動モータ316の駆動ギア326と噛合されている。従って、駆動モータ316の駆動によって共通基板310がスライダ314上を幅方向に移動可能とされている。
また、スライダ314の下側には、上下方向に延在するラック330が設けられた凸部332が形成されており、駆動モータ318の駆動ギア334が噛合されている。従って、駆動モータ318の駆動によってスライダ314が昇降可能とされている。即ち、スライダ314に支持された共通基板310、ワイピング部材88が一体的に昇降する構成とされている。
このように、ワイピング部材88は移動機構312によってノズル面40Aに対して接近離間(昇降)可能に構成されると共に、幅方向に移動可能とされている。即ち、ワイピング部材88(ワイパー92)は、ホームポジションでは搬送されてくる用紙Pと干渉しないようにキャップ部材80よりも低い位置に位置している(図23(A)参照)が、ワイピング時には上昇してホームポジションから下降したキャップ部材80を跨いで搬送方向に移動してワイピングを行う(図23(C)参照)構成とされている。
また、記録部20において用紙搬送時にキャップ部材80の凹部82Aに用紙Pが突入しないように、各キャップ部材80の幅方向両側にガイド部材94が配設されている(図21参照)。ガイド部材94はSUS材から形成され、図21に示すように、搬送方向に延在する2本の水平部94Aと、水平部94Aの搬送方向両端部から垂直下方に延在する2本の垂直部94Bと、水平部94Aの搬送方向両端部から搬送方向斜め下方に延在するガイド部94C、94Dとから構成される。
なお、このガイド部材94の水平部94Aは、単位記録ヘッド間に配設されたスターホイール70と対向配置されている(図14、図18及び図20参照)。従って、搬送される用紙Pが、搬送方向における印字位置でスターホイール70によってガイド部材94(水平部94A)に当接され、インク付着等によって変形する用紙Pをノズル面40Aに対して一定の距離に保つ構成である(図18参照)。
続いて、メンテナンス装置81を構成する各部材の本実施例におけるホームポジション(画像印字中で単位記録ヘッド40に対するメンテナンスを行っていない状態における位置)について説明する。
キャップ部材80は、記録ヘッド40の記録ヘッド40のノズル面40Aの下方に配置され、平面視においてゴム部84が単位記録ヘッド40のノズル面40Aの全体を覆うように、また、平面視においてゴム部84の開口部84A内に単位記録ヘッド40の全ノズル58が位置するように配置されている。
ワイピング部材88は、ワイパー92の先端が単位記録ヘッド40のノズル面40Aの下方に配置され、平面視においてワイパー92の長手(搬送)方向長さが単位記録ヘッド40のノズル面40Aの搬送方向幅をカバーできる位置で、ワイパー92が単位記録ヘッド40の幅方向端部から1mm離れた位置(記録ヘッドの短手幅方向に対し、清掃できる位置)に配置されている。
ガイド部材94は、用紙が接触する水平部94Aの最上面が単位記録ヘッド40のノズル面40Aの下方に配置され、平面視においてガイド部材94の水平部94Aの搬送方向長さが単位記録ヘッド40のノズル面40Aをカバーできる位置で、用紙が接触する水平部94Aの最上面が単位記録ヘッド40の幅方向端部から2mm離れた位置に配設されている。
続いて、メンテナンス装置81と単位記録ヘッド40の間に用紙を搬送する構成について説明する。
図20に示すように、用紙Pに駆動力を伝達して搬送する搬送ロール100が、メンテナンス部18(画像形成区間A1)において搬送方向で隣接するキャップ部材80の間に配列されている。搬送用ロール100は、画像形成区間A1において用紙搬送位置を挟んでスターホイール群72A〜72Cの配設位置に対応して配置されており(図18参照)、搬送用ロール100側にスプリング75によって弾性的に押圧されているスターホイール群72A〜72Cのスターホイール70によって搬送用ロール100に用紙が当接され、搬送ロール100から駆動力が伝達されるように構成されている。
また、搬送ロール100は、画像形成区間A1からA3用紙の長手幅(420mm)だけ搬送方向の上流側、及び下流側に拡張された所定区間A2、A3に画像形成区間A1と同じ間隔で配設されている。
搬送ロール100は、ケーシング102に軸支される小径部100Aと、小径部100Aよりも径が大きくスターホイール72が当接する大径部100Bとから構成されている(図17参照)。搬送ロール100は、大径部100Bを介して用紙に駆動力を伝達するものであり、摩擦係数が大きくかつ磨耗しにくいものが良い。本実施例では、搬送ロール100は直径10mmの金属(SUS303)ロール表面にアルミナを主成分とするセラミック微粉末をスプレーコートして燒結したものであり、上記条件を満たしている。この加工は、搬送ロール100の大径部100Bにおいて用紙が当接する印字領域のみならず、平ベルト104が張架される非印字領域も同様の加工が施される。
なお、搬送ロール100の表面にスターホイール70が接触して歯先が変形することを防止するために、搬送ロール100のスターホイール70に対向する部分には、幅2mm、深さ2mmの周回する溝101(図10、図18参照)を設けている。また、この溝101内へのスターホイール70の進入量が増加することによって、用紙搬送抵抗が増加することを防止するために、スターホイール70の進入量を規制する規制部材77(図18参照)が設けられている。
搬送ロール100を駆動する駆動機構は、図24に示すように、単一のモータ106の駆動軸108からアイドラロール110、112を介して全ての搬送ロール100に平ベルト104が巻きかけられているものである。隣接する搬送ロール100間には、アイドラロール114が配設されており、各搬送ロール100(大径部100B)に対する平ベルトの巻きつけ角度を稼いでいる。
また、搬送ロール100は、図25に示すように、搬送される用紙が当接される大径部100Bにおいて印字領域外の非印字領域に平ベルト104が巻きかけられている。
ここでモータ106を単一とするのは、駆動源が複数存在すると、各モータの駆動速度・変動特性を厳密に均一にするのが困難であり、結果的に用紙速度に各種速度変動成分が重畳し、各モータの速度変動が十分小さくても各速度変動の重畳によって用紙の速度変動が問題になるためである。すなわち、単一の駆動源(モータ106)で複数の搬送ロール100を駆動することによって、用紙の搬送速度を均一にして高画質な印字を達成するものである。
平ベルト104は、搬送ロール100に対して歯の噛合い無しで(摩擦力で)駆動伝達するので、特に歯毎の周期的な速度変動などがなく好適である。
また、本実施例の平ベルト104は、ポリエステル繊維を織った基材の表面(片面)にポリウレタンを薄膜コートした厚さ0.4mmのものであり、機械的強度と高摩擦性を両立させている。
このように、記録部20が構成されることにより、本実施例ではノズル面−用紙間隔が1.5mmに設計され、その間を水平方向に用紙が搬送されるものである。また、印字対象となる最大記録領域(最大用紙幅PW)は、A3短手(A4長手)とされている。また、記録部20のプロセス速度は240mm/sであり、印字解像度=800×800dpi、記録速度が毎分60枚(A4LEF(Long Edge Feed)の場合)とされている。
このように構成されるプリンタ10の作用について説明する。
以下、印字動作、メンテナンス動作(ダミージェット、ワイピング、キャッピング)について順次説明する。
先ず、印字動作について説明する。
印字動作を行なう場合には、用紙供給部12から用紙が供給され、レジ調整部14で用紙の姿勢やタイミングが制御されて記録部20に搬送される。
一方、記録部20ではモータ106が駆動され、平ベルト104を介して全搬送ロール100に駆動力が伝達される。
したがって、記録部20に到達した用紙は、最も搬送方向上流側にある搬送ロール100とスターホイール群72A〜72Cの間に挿入される。この際、スプリング75で付勢されたスターホイール群72A〜72Cのスターホイール70が搬送ロール100に用紙を押し付けるため、搬送ロール100から用紙に搬送力が確実に伝達され、一定速度で単位記録ヘッド40の下部に挿入される。以下、記録ヘッドアレイ42間に配設された搬送ロール100から順次、駆動力が伝達されて搬送されていく。
この際、全ての搬送ロール100が単一のモータ106で駆動されているため、複数の駆動源で駆動される場合のように複数の駆動源の速度変動が重畳して用紙搬送速度の変動に影響を与えることが回避され、用紙がより一定速度で搬送される。また、画像上で視認しやすい画像欠陥の原因である周期的な速度変動は歯の加工精度等によって生ずることが多いが、平ベルト104を介して(歯の噛合等を介さずに)駆動力が伝達されているため、上記画像欠陥の発生も防止される。さらに、搬送ロール100の用紙が当接される大径部100Bの非印字領域に平ベルト104が巻き掛けられているため、搬送ロール100の加工精度や保持方法(ベアリング等)に起因する芯振れがあっても周期的な速度変動は発生せず、平ベルト104の移動速度(一定速度)で用紙が搬送される。平ベルト104の巻き付け角を稼ぐためにアイドラーロール114を配置する構成では、厳密に言えば、アイドラーロール114の加工精度や保持方法に起因する周期的速度変動が発生するが、アイドラーロール114は比較的小型であり単一材料でよいので安価でかつ高精度に加工することは容易である。一方搬送ロール100はサイズが大きく、構成も例えば芯金と被覆材という複数の材料構成となるので、高精度の加工が困難である。あるいは非常に高価な部品になってしまう。平ベルト104による表面摩擦駆動方式は、搬送ロール100の半径や回転中心が多少ばらついていてもそこに起因する周期的変動は発生しないという効果がある。
また、画像形成区間A1と、画像形成区間A1から搬送方向の上流側と下流側へA3用紙の長手幅(420mm)だけ拡張された所定区間A2、A3に搬送ローラ100とスターホイール70が同様の間隔で配列されているので、用紙Pにかかる負荷が画像形成中、均等になる。従って、用紙Pの搬送速度変動、スキューを抑制でき、画像の曲がり、色ずれを防止できる。
さらに、スターホイール群72A〜72Cを幅方向で三つに分割し、それぞれのシャフト74A〜74Cの長さを短くしたため、シャフト74A〜74Cの撓みを防止できて、スプリング75で付勢された複数のスターホイール70が均等に用紙を抑える。したがって、用紙に駆動力を均等に伝達することができる。
特に、スターホイール70によって用紙を搬送ロール100に押圧しているため、用紙に駆動力が確実に伝達され、一定速度で搬送することができる。特に、静電吸着方式を採用していないため、用紙の厚さや材質などに拘らず安定して搬送することができる。
また、幅方向において単位記録ヘッド40間にスターホイール70を配設し、これと対向する位置にガイド部材94を配設しているため、搬送方向における印字(記録ヘッドアレイ42)位置においても、用紙の浮きあがり等を防止して、用紙の平面性(ノズル面40Aに対する一定距離)を確保することができる。
逆にいえば、このようにスターホイール70を配置することによって、単位記録ヘッド40に対向する位置にキャップ部材80等のメンテナンス装置81を配置しても、用紙の平面性(ノズル面40Aに対する一定距離)を確保することができる。
また、記録ヘッド部16に対して装置の制御部から印字信号が各単位記録ヘッド40に入力されると、印字信号に応じて該当するノズルの発熱素子が発熱し、ノズル面40Aに対して一定距離とされつつ搬送される用紙に対して、当該ノズルからインク滴が吐出されていく。
したがって、記録ヘッドアレイ42Aで印字が行なわれ、続いて記録ヘッドアレイ42Bで印字が行なわれることにより、用紙の当該部分における一色分の印字が終了する。したがって、記録部20で用紙が搬送されるにつれて、記録ヘッド44Y、44M、44C、44Kの順で印字され、フルカラーの印字が行われる。
このように、平面性(ノズル面に対する一定距離)が確保され、一定速度で搬送される用紙に対して印字を行なうことにより、高画質な画像を形成することができる。特に、記録部20の搬送中、スターホイール70によって常時平面性が確保されるため、各種厚みの用紙に対して印字中に生ずる用紙の変形を良好に矯正でき、ノズル面40Aに対する距離を一定に維持して高画質な印字を達成できる。
特に、記録部20において、搬送ロール100が記録ヘッドアレイ42間に配設され、また最上流の記録ヘッドアレイ42YAよりも上流側および最下流の記録ヘッドアレイ42KBよりも下流側に配設されていると共に、複数の搬送ロ−ル100が単一の駆動源で駆動されるため、用紙が一定速度で確実に搬送され、高画質な印字を達成することができる。
次に、ダミージェットの動作について説明する。
ダミージェットは、非印字時、あるいは複数の用紙を連続印字中に所定枚数の印字が終了する度に、後続の用紙先端が到達する前に行なう。すなわち、記録ヘッド44Y〜44Kを構成する全単位記録ヘッド40のうち、任意のノズルからキャップ部材80に向かってインク滴の吐出(いわゆるダミージェット)が行なわれる。ダミージェットを行なうのは、全単位記録ヘッド40の全ノズルでも良いし、選択された単位記録ヘッド40、あるいは記録ヘッドアレイ42の全ノズル58でも良いし、さらには所定時間インク滴の吐出を行なっていないノズル58のみでも良い。
例えば、複数枚数の用紙連続印字時のダミージェット時におけるノズル面40Aとキャップ部材80の上面との距離を3mmに設定し、30頁(A4)毎に先行する用紙通過後で後続の用紙先端到達前のタイミングで全ノズルから500ドロップ吐出する。
この際、キャップ部材80の凹部82Aの底面にインク吸収部材86が配設されているため、吐出されたインクが凹部82Aからあふれたり飛び散ったりすることはない。
例えば、単位記録ヘッド40の全ノズルからインク滴の吐出(ダミージェット)を行なうことによって、インク(特に水性インク、溶剤インク)の乾燥による吐出性能の変化を初期化することができる。また、インクがほとんど乾燥しない油性インク、ソリッドインクであっても、印字によってヘッド内部のインク流路等に付着した気泡の排除、あるいはノズル面に付着したゴミの除去を行なうことができ、ノズルのインク滴の吐出性能を初期化することができる。
本実施例のように、連続して印字する(搬送されてくる)複数の用紙印字中に、記録ヘッド44やキャップ部材80を移動させることなくダミージェットを行なうことができるため、印字速度(生産性)の向上が達成される。また、ダミージェットによって記録ヘッド44の印字性能が一定に維持され、高画質な印字が可能になる。
次にワイピング動作について説明する。
ワイピング動作は、印字開始前等に行なう。メンテナンス部18のワイピング部材88によって記録ヘッド40(ノズル面40A)のワイピングが行なわれる。具体的な動作を図23に示す模式図に基づいて説明する。
先ず、図22に示す昇降機構302の駆動モータ304が駆動され、偏心カム306の回転によって共通基板300が下降する。また、移動機構312の駆動モータ318が駆動され、スライダ314およびスライダ314に支持された共通基板310が上昇する。すなわち、共通基板300に取りつけられた6個のキャップ部材80がホームポジションから下降(記録ヘッド40から離間する方向に移動)すると共に、共通基板310に取りつけられた6個のワイピング部材88がホームポジションから上昇する(記録ヘッド40のノズル面40A側に移動する)(図23(A)→(B)参照)。
本実施例では、キャップ部材80が単位記録ヘッド40のノズル面40Aから6mmの位置まで下降すると共に、ワイピング部材88のワイパー92の先端(上端)がノズル面40Aよりも1.5mm高い位置(以下、当接量1.5mmという)まで上昇する。
この結果、ワイピング部材88の保持部材90がキャップ部材80を跨いで幅方向に移動可能になる。また、ワイピング部材88のワイパー92が記録ヘッド40のノズル面40Aと上下方向(図23、矢印Z方向)においてオーバーラップする状態となる(図23(B)参照)。
この状態で、図22に示す移動機構312の駆動モータ316を駆動することによって、駆動ギア326に噛合されたラック322を介してスライダ314上を共通基板310が幅方向に移動する。したがって、共通基板310に取り付けられたワイピング部材88が幅方向に移動し、先端がノズル面40Aよりも高い位置とされたワイピング部材88のワイパー92が単位記録ヘッド40のノズル面40Aを摺接しながら移動する。この結果、ノズル面40Aに付着した埃や乾燥したインク等を除去する(図23(C)参照)。この際、ワイピング部材88は、下降したキャップ部材80を跨ぐようにして移動することになる。
本実施例では、ワイパー92が当接量1.5mmを維持したままノズル面40Aを摺接するため、ノズル面40Aに付着した汚れを確実に除去する。
さらに、ワイピング部材88がノズル面40Aの下部から脱け出して、ワイピング部材88およびガイド部材94の幅方向への移動を完了する(図23(D)参照)。続いて、移動機構312の駆動モータ318の駆動によって共通基板310、すなわちワイピング部材88を下降させ、ホームポジションの高さまで移動させる(図23(E)参照)。
続いて、図20に示す移動機構312の駆動モータ318の駆動によって共通基板310、すなわち、ワイピング部材88を一緒に幅方向反対側に移動させ、ホームポジションに復帰させる(図23(F)参照)。さらに、昇降機構302の駆動モータ304を駆動してキャップ部材80を上昇させて記録ヘッド40のノズル面40Aと近接したホームポジションに復帰させることによってワイピング動作を完了する(図23(G)参照)。
続いて、キャッピング動作について説明する。
キャッピング動作は、非印字状態が長時間継続する場合、あるいは電源OFF時等に行なうものである。具体的には、図22に示す昇降機構302の駆動モータ304を駆動することによって共通基板300を上昇させ、共通基板300に取りつけられたキャップ部材80のゴム部84を記録ヘッド40のノズル面40Aに圧接させる(図26(A)→(B)参照)。この結果、ノズル面40(ノズル58)の気密性が確保され、インクの増粘、乾燥が防止されると共に、ゴミの付着を防止する。
さらに、本実施例の記録ヘッド44は、図16に示すように、短尺の単位記録ヘッド40を複数配列した記録ヘッドアレイ42A、42Bをそれぞれ共通基板46A、46Bに取り付けることによって構成しているため、大量に生産される安価なデバイス(記録ヘッド)と共通化が可能となり、低価格で全幅印字可能な記録ヘッド40を構成できる。
また、記録ヘッドアレイ42A、42Bをそれぞれ共通基板46A、46Bに取り付けることにより各記録ヘッドアレイ42A、42Bの構成が簡略化し、製作も高精度調整もより簡易になる。さらに、メンテナンス部(キャップ部材80、ワイピング部材88)の構成も短尺の記録ヘッドで使用されているものと共通化できるというメリットがある。さらにまた、幅方向における単位記録ヘッド間の間隙(空間)を利用して、ノズル面40Aと用紙間の距離を一定にする手段(本実施例のスターホイール70等)を配置可能になる、あるいはキャップ部材80等の配置の設計自由度を増大するという利点がある。
さらに、本実施例では、単位記録ヘッド40に対応してキャップ部材80を設けたが、複数の単位記録ヘッド40に対して1つのキャップ部材80を対応させても良い。
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
図27〜図29には、本発明の第2実施形態のインクジェットプリンタ(以下、プリンタという)50の概略構成が示されている。
図27(B)に示すように、プリンタ50は、記録媒体の一例である用紙Pが収容される給紙トレイ15と、この給紙トレイ15から供給された用紙Pに画像を記録する記録部17、及び、記録部17によって画像が記録された用紙Pを収容する排紙トレイ19を有している。給紙トレイ15の用紙Pは、図示しないピップアップローラによって1枚ずつ取り出されて、記録部17に送られる。
記録部17は、図29に示すように、ハウジング(図示省略)に取り付けられた枠状の用紙搬送フレーム21を有しており、この用紙搬送フレーム21上を、用紙Pは所定の搬送方向に搬送される。各図面において、用紙搬送方向を矢印Fで、これと直交する用紙幅方向を矢印Wでそれぞれ示す。
記録部17は、図28(A)に示すように、このプリンタ50での画像記録が想定される用紙Pの最大幅W0と同程度、もしくは、さらに広い幅W1の記録可能領域R1を有している。たとえばA3サイズ用紙を想定した場合には、その最大幅W0(短手方向の長さ)は297mmとなるが、これに対して、記録可能領域R1の幅W1は、後述するように本実施形態では307.8mmとしている。
記録可能領域R1には、用紙Pの幅方向に分割された複数の個別記録領域R2が想定されている。図27から分かるように、それぞれの個別記録領域R2に対応して、本発明の記録ヘッド組23が配置されている。記録ヘッド組23はいわゆる千鳥配置とされ、用紙幅方向に隣接するものどうしは、搬送方向に交互に位置している(以下、搬送方向の上流側と下流側とで記録ヘッド組23を区別する必要がある場合は、上流側を記録ヘッド組23A、下流側を記録ヘッド組23Bとして示す)。したがって、画像記録が完了した用紙P上では、記録ヘッド組23Aによって記録された領域と、記録ヘッド組23Bによって記録された領域とが、用紙幅方向に交互に並ぶことになる。
記録ヘッド組23Aの上流側、及び記録ヘッド組23Bの下流側には、図27(B)に示すように、用紙センサ25A、25Bが配置されており、それぞれ、用紙Pを検出して、その情報を、コントローラに送るようになっている。
記録ヘッド組23のそれぞれは、インク吐出特性の異なる複数の単位ヘッド27が、用紙搬送方向に沿って配列されることにより構成されている。
単位ヘッド27には、図30に示すように、用紙幅方向に沿って形成された複数のノズル29によってノズル列33が構成されており、ノズル29の先端のインク吐出口35から、画像情報に応じたインク滴を吐出することができる。図27(A)から分かるように、1つの記録ヘッド組23内ではノズル列33の両端位置が用紙幅方向で一致するように、それぞれの単位ヘッド27が配置されている。また、用紙搬送方向に見たときに、それぞれの単位ヘッド27から吐出されるインク滴による用紙P上のドットに隙間が生じることなく用紙幅方向に一致するか、もしくはオーバーラップするように、記録ヘッド組23Aと記録ヘッド組23Bとが配置されている。したがって、それぞれの記録ヘッド組23は、対応する個別記録領域R2のみにおいて用紙Pに画像を記録するが、すべての記録ヘッド組23では、用紙Pの全幅にわたる画像の記録が可能となる。なお、上記のように、各単位ヘッド27からのドットが用紙幅方向に重なるように単位ヘッド27が配置されている場合には、オーバーラップ部分に対応するノズル29を使用しないようにすればよい。
上記の「インク吐出特性」とは、吐出するインク滴の特性のことをいい、たとえば、インク滴の色や滴体積、吐出速度などが含まれる。本実施形態では、1つの記録ヘッド組23あたりの単位ヘッド27の数を4つとし、搬送方向上流側から順に、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色を割り当てている。これにより、いわゆるフルカラーの画像を記録可能となる(以下、単位ヘッド27を色ごとに区別する必要がある場合には、符号の末尾にY、M、C、Kのいずれかを付して区別する)。もちろんこれ以外の構成であってもよく、たとえば、1つの記録ヘッド組23あたりの単位ヘッド27の数を2つとしても、それぞれの単位ヘッド27に異なる色を割り当てることで2色の画像を記録可能である。また、この数をたとえば5以上として、YMCK以外の色も加え、より色再現性の高い構成とすることも可能である。さらには、同一色に対応した単位ヘッド27であっても、インク滴体積が異なるようにし、より高い階調性を有られるようにしてもよい。
記録ヘッド組23は、上記した複数の単位ヘッド27を1つの記録ヘッド組23内で一体的にユニット化することにより構成されていてもよいが、本実施形態では、図28(A)に示すように、記録ヘッド組23A、23Bのそれぞれにおいて、各色に対応する単位ヘッド27ごとに共通基板36を設け、この共通基板36に、単位ヘッド27を取り付けて記録ヘッドユニット34を構成することで、単位ヘッド27の組み付けを容易に行うことが可能になる。(なお、図28(及び後述する図35)では図示の便宜上、特定の色(たとえばイエロー)に対応する記録ヘッドユニット34のみを示しているが、他の色についても同様である。)すなわち、共通基板36を記録媒体幅方向に掛け渡して、図示しないハウジング(あるいは固定用の部材)に固定し、この共通基板36に、用紙幅方向に等間隔(個別記録領域R2の幅W2と同じ間隔)をあけて複数の単位ヘッド27を取り付けて、記録ヘッドユニット34を構成している。このようにして、記録ヘッド組23Aの全体で各色ごとに1本ずつ記録ヘッドユニット34を備え(本実施形態では合計で4本)、同様に、記録ヘッド組23Bの全体においても各色ごとに1本ずつ(合計で4本)の記録ヘッドユニット34を備えている。それぞれの記録ヘッドユニット34において、単位ヘッド27を個別記録領域R2の幅W2と同じ間隔で取り付けているので、同一色に対応する2本の記録ヘッドユニット34としては全く同一構成とし、これら2本の記録ヘッドユニット34を用紙幅方向に沿って、個別記録領域R2の幅W2だけずらして配置することで、用紙Pの全幅へのインク滴吐出が可能となる。このようにして記録ヘッドユニット34を共通化すると、部品点数が少なくなり、低コストで記録部17を構成できる。
なお、本実施形態において、単位ヘッド27のノズル列33の長さは25.4mmとしている。この単位ヘッド27が、1本の記録ヘッドユニット34で6つ設けられ、さらに、それぞれの色において、記録ヘッドユニット34が2本備えられているので、全体として、25.4mmのノズル列33が、用紙幅方向に見て隙間無くならべられ、記録可能領域R1としては304.8mmの幅を得ている。
記録可能領域R1のなかで、記録ヘッド組23(単位ヘッド27)からインク滴がインク滴が吐出されない領域(以下、非記録領域という)、すなわち、単位ヘッド27からの吐出インクの飛翔軌跡を回避した位置には、図27(A)に示すように、媒体搬送ベルト38が配設されている。非記録領域は、記録ヘッド組23と用紙幅方向に交互に位置していることになるので、用紙幅方向に等間隔で複数の媒体搬送ベルト38が掛けられている。そして、上流側の媒体搬送ベルト38Aと下流側の媒体搬送ベルト38Bとは、用紙幅方向に、個別記録領域R2の幅分だけずらして配置されているので、全体として媒体搬送ベルト38は千鳥状になっている。
したがって、本実施形態では、記録可能領域R1を用紙幅方向に見ると、個別記録領域R2に記録ヘッド組23A又は記録ヘッド組23Bがそれぞれ一定の周期で配置され、さらに、非記録領域には、媒体搬送ベルト38A又は媒体搬送ベルト38Bが一定の周期で配置されて、記録ヘッド組23と媒体搬送ベルト38とが交互に配置されていることになる。
媒体搬送ベルト38は、用紙Pとの摩擦により、あるいは、用紙Pを静電的に又は非静電的に保持しつつ所定の方向に循環(回転)することで、用紙Pを搬送する。本実施形態では、図27、図31に示すように、非静電的な保持方法として、吸引手段37によって用紙Pを媒体搬送ベルト38に吸着させて用紙Pを搬送する。
吸引手段37は、媒体搬送ベルト38A、38Bの円周の内側の搬送方向中央部にそれぞれ配置され用紙幅方向に延出する吸引主ダクト39Aと、吸引主ダクト39Aから分岐して媒体搬送ベルト38A、38Bの用紙搬送面の裏面に面して搬送方向に延出する吸引分岐ダクト39Bと、吸引主ダクト39Aの用紙幅方向の一端部に設けられた吸引ファン41とで構成されている。
媒体搬送ベルト38A、38Bには、搬送方向に所定のピッチで吸引孔38Cが形成されており、この吸引孔38Cを通して吸引ファン41の吸引力が用紙Pに伝わり媒体搬送ベルト38A、38Bに吸着される。
図29(A)にも示すように、記録部17の用紙搬送方向中央には、1本の駆動ローラ43が用紙幅方向に掛け渡されて、用紙搬送フレーム21に回転可能に支持されている。上流側の媒体搬送ベルト38Aと下流側の媒体搬送ベルト38Bとが、駆動ローラ43に交互に巻き掛けられて保持されている。
また、用紙搬送方向の上流端近傍及び下流端近傍には、それぞれ1本ずつ従動ローラ45が用紙幅方向に掛け渡されており、それぞれ、用紙搬送フレーム21内の従動ローラフレーム47に、ベアリングなどを介して回転可能に支持されている。図27(A)に示すように、媒体搬送ベルト38A、及び媒体搬送ベルト38Bが、対応する従動ローラ45に巻き掛けられて、保持されている。
駆動ローラ43には、ギヤ48を介して(もしくは直接的に)ドライブモータ51と接続されており、ドライブモータ51は媒体搬送ベルト38の駆動源となっている。ドライブモータ51の駆動による駆動ローラ43の回転によって、全ての媒体搬送ベルト38を、同一の循環速度で循環させることができるので、記録ヘッド組23A、23B間での記録画像の品質ムラを無くして、高画質の画像を得ることができる。なお、ドライブモータ51としては、ステッピングモータを使用すると、高精度の用紙搬送制御が可能になるので好ましいが、これに限定されない。
駆動ローラ43にはエンコーダ52が設けられており、駆動ローラ43の回転に同期して、所定のパルスを出力するようになっている。このパルスに基づいて、ドライブモータ制御手段54がドライブモータ51の回転を制御し、たとえば、ドライブモータ51の出力軸や、ギヤ48、駆動ローラ43の偏心などから生じる駆動ローラ43の回転ムラを一定範囲内に抑制できる。
なお、ドライブモータ制御手段54としては、上記した制御を行うことできれば限定されないが、たとえば、駆動ローラ43の回転時の個別のエンコータ信号から、駆動ローラ43の理想的な回転との差分、すなわち偏心エラー成分を読み取り、この偏心エラー成分を打ち消す情報をドライブモータ51に対して与えることで、偏心制御を行うものを使用できる。
従動ローラ45を支持する従動ローラフレーム47は、図29(A)及び(B)に示すように、従動ローラ45の軸方向に移動可能に用紙搬送フレーム21に取り付けられている。用紙搬送フレーム21には手動で回転させるツマミ56が設けられており、ツマミ56と同軸のピニオン57Pが、従動ローラフレーム47のラック57Rと噛合っているため、ツマミ56を回転させて、従動ローラ45を軸方向に移動させることができるようになっている。これにより、媒体搬送ベルト38のベルト循環方向での誤差を少なくできるので、用紙Pを正確な位置で搬送して、高画質の画像を得ることが可能になる。
図32(A)〜(C)に示すように、従動ローラ45の一端44Aは用紙搬送方向に移動不能とされているが、他端44Bは用紙搬送方向に移動可能とされると共に、ステアリング機構59が設けられている。ステアリング機構59は、中央部分を中心として揺動可能とされた揺動アーム60と、この揺動アーム60の一端60A側に接触配置された偏心カム62、及び偏心カム62を回転させるモータ64で構成されており、揺動アーム60の他端60Bが、従動ローラ45の他端を保持している。モータを回転させて偏心カム62を所定の回転角度とすることで揺動アーム60を揺動させ、従動ローラ45を、図5(A)に示す用紙幅方向に平行な姿勢から、図32(B)又は図32(C)に示すように、用紙搬送方向に傾斜した姿勢へと移動させることができる。これにより、媒体搬送ベルト38上を搬送される用紙Pの蛇行を防止できる。ステアリング機構59による従動ローラ45の揺動量の調整は、たとえば従動ローラ45の他端44Bの位置を検出するエッジセンサを設け、エッジセンサからの位置情報を基に行うことができる。
なお、図27(A)では、駆動ローラ43が、軸方向に一定の径を有する円柱状又は円筒状の部材で構成されている。また、及び従動ローラ45としては、それぞれシャフト66と、このこのシャフト66の固定された複数のプーリ68とで構成されている。これにより、すべての媒体搬送ベルト38が用紙搬送方向に沿って配置されて、平行になっている。
これに対し、媒体搬送ベルト38を図33(A)に示す姿勢となるように保持してもよい。この例では、駆動ローラ43、従動ローラ45はそれぞれ、プーリ68を設けることなく、シャフトのみで構成されており、媒体搬送ベルト38が巻き掛けられる部分が、用紙幅方向に対しそれぞれ所定の角度で傾斜するようになっている。これにより、用紙幅方向中央と比較して端部の媒体搬送ベルト38A、38Bが、搬送方向下流側に向かうにしたがって、外側に広がる姿勢となっている。媒体搬送ベルト38A、38Bをこのような姿勢とすると、用紙Pの搬送時のしわやたるみが防止され、これに起因する画像記録位置のズレなどの画質劣化も防止されるので、好ましい。
この構成ではさらに、図33(B)から分かるように、媒体搬送ベルト38A、38Bのそれぞれは、駆動ローラ43の巻きかけ部分の傾斜に対応して、幅方向に異なる厚みを有する形状とし、媒体搬送ベルト38A、38Bを全体でみたときの上面、すなわち用紙Pを搬送する面の平坦性を確保することが好ましい。
なお、媒体搬送ベルト38A、38Bを、搬送方向下流側に向かうにしたがって外側に広がる姿勢とするためには、たとえば図34に示す構造でもよい。この例では、駆動ローラ43及び従動ローラ45をいずれもシャフト66とプーリ68とで構成している。そして、プーリ68は軸方向中央が外に凸の樽状(クラウン形状)とされており、媒体搬送ベルト38A、38Bが外側に広がる形状となるように、従動ローラ45のプーリ68を、駆動ローラ43のプーリ68よりも軸方向にそれぞれ微小にずらして配置されている。
もしくは、用紙幅方向中央よりも用紙幅方向端部のほうが媒体搬送ベルト38A、38Bによる搬送速度が速くなるような形状の駆動ローラ43、従動ローラ45でも、用紙Pの搬送時のしわやたるみを防止できる。たとえば、用紙幅方向中央から端部に向かうにしたがって、駆動ローラ43、従動ローラ45それぞれの媒体搬送ベルト巻き掛け部分の径が漸増するようにすればよい。
図27(B)に示すように、記録ヘッド組23内でのそれぞれの単位ヘッド27の用紙搬送方向のノズル間距離Daは、駆動ローラ43の周長Laのn倍(nは任意の自然数)となるように設定されている。これにより、駆動ローラ43の偏心に起因する、いわゆる色ずれを防止することができる。
すなわち、一般に駆動ローラ43は、高精度に用紙搬送フレーム21に取り付けた場合であっても、わずかながら偏心していることがある。駆動ローラ43を一定の角速度で回転させても、この偏心によって、媒体搬送ベルト38の循環速度には、周期的な変動が生じ、用紙Pの搬送速度も周期的に変動する。したがって、用紙Pの搬送速度が最も速いときには、連続して吐出されたインク滴による用紙搬送方向のドットの間隔が広がり、搬送速度が最も遅いときには、この間隔が狭くなる。たとえば、搬送速度が最速の状態でイエローのインク滴が吐出された部分が、搬送速度が最遅の状態でマゼンタのインク滴が吐出されるように搬送されてしまうと、イエローのドットとマゼンタのドットとで搬送方向に大きなズレが生じる。しかし、本実施形態では、用紙P上の任意の箇所において、それぞれのインク滴が吐出されるときの搬送速度が、各色で同じになっている。たとえば、搬送速度が最速の状態でイエローのインク滴が吐出された箇所には、搬送速度が最速の状態でマゼンタ、シアン、ブラックの各色のインク滴が吐出される。逆に、搬送速度が最遅の状態でイエローのインク滴が吐出された箇所も、おなじく搬送速度が最遅の状態でマゼンタ、シアン、ブラックの各色のインク滴が吐出される。このようにして、駆動ローラ43の偏心に起因する色ずれを防止することができる。
また、記録ヘッド組23Aの最下流の単位ヘッド27のノズル29と、記録ヘッド組23Bの最上流の単位ヘッド27のノズル29とのノズル間距離Dbは、おなじく駆動ローラ43の周長Laのm倍(mは任意の自然数)となるように設定されている。これにより、上記と同様にして、駆動ローラ43が偏心していても、これら2つのノズル29からのインク滴によるドットのズレが解消される。
なお、上記のノズル間距離Da、Dbは、それぞれが上記の条件を満たしていればよく、これらが一致している必要はない。
ここで、媒体搬送ベルト38A、38B、吸引手段37の配置について説明する。
図27に示すように、媒体搬送ベルト38A、38Bと吸引手段37の吸引分岐ダクト39Bは、記録ヘッド組23A、23Bに面する画像形成区間A1と、画像形成区間A1から搬送方向の上流側及び下流側へ所定距離だけ拡張された所定区間A2、A3に延出している。
この所定距離は、プリント可能な用紙の搬送方向の長さ(長尺紙を除く)、例えばA3用紙の長手幅(420mm)とされている。このため、用紙Pの先端が画像形成区間A1に入って画像形成が開始された時、用紙Pの全域が、画像形成区間A1と搬送方向の上流側の所定区間A2に延出している媒体搬送ベルト38Aに吸着される。
また、用紙Pの後端が画像形成区間A1を抜ける時、即ち、用紙Pの後端に画像が形成されている時、用紙Pの全域が、画像形成区間A1と搬送方向の上流側の所定区間A3に延出している媒体搬送ベルト38Bに吸着される。また、複数の媒体搬送ベルト38A、38Bは、同一の駆動力伝達機構を通じて移動される。
このため、搬送される用紙Pが所定区間A2、A3と画像形成区間A1に跨った時に、所定区間A2、A3と画像形成区間A1とで用紙Pにかかる搬送負荷の差が無くなるので、画像形成中の用紙Pの姿勢や搬送速度の変化を抑制できる。従って、画像の曲がりや色ずれ等を防止できる。
図28(B)、図35(A)〜(D)に示すように、搬送される用紙Pを挟んで単位ヘッド27と対向する位置、すなわち、媒体搬送ベルト38A、38Bが配置されていない領域には、単位ヘッド27と一対一で対応するヘッド回復手段120が配置されている。図面上は、駆動ローラ43と従動ローラ45との間でヘッド回復手段120を1つのみ示しているが、実際は、単位ヘッド27の数と同数だけ設けられる。また、これらの図面では、上流側の従動ローラ45と駆動ローラ43との間を示しているが、駆動ローラ43と下流側の従動ローラ45との間でも、同様にヘッド回復手段120が設けられる。
ヘッド回復手段120は、単位ヘッド27に向かって開口したキャップ部材122と、このキャップ部材122を保持する保持部材124とを少なくとも有しており、保持部材124は、図示しない昇降機構によって昇降(単位ヘッド27への接近及び離間)するようになっている。さらに必要に応じて、キャップ部材122の内部を吸引する吸引手段を備えている。
図35(D)に示すように、ヘッド回復手段120が上昇した状態では、キャップ部材122が、単位ヘッド27のそれぞれのインク吐出面27Aに、ノズル列33(図30参照)を取り囲むように密着してキャッピングする。これにより、不用意なインクの乾燥を防止して増粘インクによるノズル29の目詰まりを防止したり、インクの劣化を防止したりする。また、この状態では、いわゆるバキューム動作を行い、単位ヘッド27のノズル29からインクを強制的に吸引することできる。
これに対し、ヘッド回復手段120が下降した状態では、図35(B)に示すように、用紙Pが媒体搬送ベルト38A、38Bによって搬送されて単位ヘッド27の下方を通過可能となり、用紙Pへの画像記録を行うことができる。また、図35(C)に示すように、用紙Pが単位ヘッド27の下方に位置していないとき(たとえば連続する2枚に用紙Pの間)には、単位ヘッド27からいわゆるダミージェットを行い、このインク滴をキャップ部材122で受けることができる。
なお、ヘッド回復手段120の昇降機構は、各ヘッド回復手段120の個別に設けられていてもよいし、複数のヘッド回復手段120に共通で設けられていてもよい。昇降機構を複数のヘッド回復手段120で共通化する場合には、たとえば、複数のヘッド回復手段120を共通のベース板上に固定し、ベース板自体を昇降させる構成とすることができる。
また、ヘッド回復手段120は、上記のように、単位ヘッド27に対するキャッピングなどができるようになっていることが好ましいが、プリンタ50の構成によっては、少なくともダミージェットのインクを受けることができれば十分である場合もある。
上記では、記録ヘッド組23A、23Bを全体として千鳥配置となるようにしたが、記録ヘッド組23A、23Bは、全体としてすべての個別記録領域を網羅するように配置されていれば、用紙Pの全幅にわたる画像記録が可能であるので、用紙Pの幅方向にランダムな配置でもよい。ただし、たとえばヘッド回復手段120の幅などを考慮すると、記録ヘッド組23A、23Bを用紙Pの幅方向に一定の周期で配置して、それぞれの記録ヘッド組23A間、又は記録ヘッド組23B間にある程度の空間が構成されるようにすると、ヘッド回復手段120が幅広であっても、隣接するヘッド回復手段120どうしが干渉せす、配置上の制約が少なくなるので好ましい。
同様に、用紙搬送ベルト38A、38Bも、用紙Pを確実に搬送でき、かつ単位ヘッド27からのインク滴の飛翔軌跡を回避した位置であればよいが、用紙Pの幅方向にランダムは配置でもよい。ただし、用紙Pの幅方向に一定の周期で配置して、用紙Pを確実に搬送できるようにすることが好ましい。
以上の構成とされたプリンタ50では、図示しないコントローラからの指示に基づいて、用紙Pに画像を記録する。以下、この画像記録動作について説明する。
コントローラからの指示がない状態では、プリンタ50はスタンバイ状態であり、各部材は停止している。ヘッド回復手段120は上昇してキャップ部材122が対応する単位ヘッド27のインク吐出面に密着し、ノズル29の目詰まりやインクの劣化を防止している。
コントローラから画像記録を行う旨の指示があると、図36のフローチャートに示すように、プリンタ50はまず、ステップ1でヘッド回復手段120を下降させて、単位ヘッド27の下方を用紙Pが通過できるようにする。このとき、必要に応じて、いわゆるダミージェットを行い、単位ヘッド27をインク滴吐出に最適な状態へと回復させてもよい。単位ヘッド27の下方にはキャップ部材122が位置しているので、ダミージェットによって吐出されたインク滴を受けることができる。
これにあわせて、ステップ2でドライブモータ51を駆動して駆動ローラ43を回転させ、媒体搬送ベルト38A、38Bを循環駆動させる。このとき、エンコータ52からの信号を受けて偏心制御を行いながら、ドライブモータ51を回転させる。このようにして、媒体搬送ベルト38A、38Bの循環速度が安定した状態で、コントローラは、ステップ3で図示しないピップアップローラを駆動し、給紙トレイ15から用紙Pを1枚ずつ記録部17に送る。
用紙センサ25Aが用紙Pの先端を検出すると、ステップ4では、この検出信号に基づいてコントローラが、あらかじめ決められた所定のタイミングでインク滴を吐出するように、各単位ヘッド27を駆動する。これにより、搬送方向最上流の単位ヘッド27から順次、画像情報に応じたインク滴が用紙Pの所定の位置に吐出され、画像記録が行われる。この状態での用紙Pの搬送は、用紙搬送方向及び用紙幅方向に所定の幅を有する媒体搬送ベルト38によって行われるので、安定して搬送することができる。
搬送方向最下流の単位ヘッド27からのインク滴吐出が完了した時点で、用紙Pの全体への画像記録が完了し、用紙Pを排紙トレイ19に排出する。このとき、ステップ5において、ダミージェットが必要であるか否かを判断し、必要である場合には、ステップ6でダミージェットを行った後、ステップ7に進む。ダミージェットが必要でない場合には、そのままステップ7に進む。ステップ7では、排出された用紙Pの枚数をカウントし、所定枚数の用紙Pへの画像記録が完了すると、ステップ8でドライブモータ51の回転を停止させ、媒体搬送ベルト38A、38Bの循環も停止ささせる。なお、排出された用紙Pの枚数は、用紙センサ25Bが用紙Pの後端を検出することで知ることができる。
その後、ステップ9において、コントローラはヘッド回復手段を上昇させて単位ヘッド27のそれぞれをキャップ部材122によってキャッピングする。
以上により、一連の画像記録動作が完了する。なお、キャップ部材122によって単位ヘッド27をキャッピングした状態で、必要に応じ、単位ヘッド27からのインクの吸引(バキューム動作)を行ってもよい。
このように、本実施形態のプリンタ50では、記録ヘッド組23A、22Bを用紙幅方向に移動させることなく、用紙Pの搬送を行うのみで全幅にわたる画像記録を行うことができ、生産性が高くなる。
しかも、単位ヘッド27のそれぞれに対応するヘッド回復手段120が常にインク吐出面27Aに対向しており、ダミージェットを行うときに、単位ヘッド27あるいはヘッド回復手段120を移動させる必要がない。また、媒体搬送ベルト38A、38Bは非記録領域に配置されており、ダミージェットで吐出されたインクが、不用意に媒体搬送ベルト38A、38Bに付着することもない。したがって、画像記録を行いつつ、たとえば用紙Pの間の領域でダミージェットを行うことも可能であり、この点においても、高い生産性を得ることができる。加えて、ダミージェット時に単位ヘッド27あるいはヘッド回復手段120を移動させう必要がないので、プリンタ50の構造の簡素化、小型化を図ることも可能となる。
また、本実施形態では、搬送される用紙Pが所定区間A2、A3と画像形成区間A1に跨った時に、所定区間A2、A3と画像形成区間A1とで用紙Pにかかる負荷の差が無くなるので、用紙Pの姿勢や搬送速度の変化を抑制できる。従って、画像の曲がりや色ずれ等を防止できる。
また、本実施形態では、記録部17での用紙Pの搬送に媒体搬送ベルト38A、38Bを使用しているので、用紙Pの平坦性を確保しつつ、高い搬送精度で搬送できる。
特に本実施形態では、媒体搬送ベルト38A、38Bが用紙Pの幅方向に見て、一定の周期で配置されているので、用紙Pをより高い搬送精度で搬送できる。
なお、本発明において、記録ヘッド組23A、23Bの配置、媒体搬送ベルト38A、38Bの配置等は、上記したものに限定されず、以下に示す各実施形態の構成を採用することができる。
また、第1、第2実施形態において本発明をインクジェットプリンタ10、50を例に取って説明したが、これに限らず、本発明は、レーザービームプリンタ、感熱式プリンタ等、種々の画像形成装置に適用可能である。