以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る記録装置が適用されたインクジェット記録装置について説明する。なお、以下に説明する第1〜第3の実施形態では、用紙幅対応の非走査型の記録ヘッドによって用紙を連続搬送しつつ印字するフルラインヘッド式のインクジェット記録装置を例に説明する。
(第1の実施形態)
図1に示すように、第1の実施形態に係るインクジェット記録装置10は、用紙Pを所定の用紙搬送方向(図中の矢印X方向)へ搬送する搬送機構150を備えており、搬送機構150の上方には、用紙搬送方向に沿って配置され、搬送される用紙Pに対して画像を順次記録するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色の記録ヘッド44Y、44M、44C、44Kが設けられている。記録ヘッド44Y〜44Kは、本実施の形態では、用紙搬送方向の上流側からY、M、C、Kの順に配置されており、それぞれ2個で一組の記録ヘッドアレイ42A、42Bにより構成されている(記録ヘッド44Y:記録ヘッドアレイ42YA、42YB/記録ヘッド44M:記録ヘッドアレイ42MA、42MB/記録ヘッド44C:記録ヘッドアレイ42CA、42CB/記録ヘッド44K:記録ヘッドアレイ42KA、42KB)。また、用紙搬送路上においては、用紙搬送方向の最上流側に配置された記録ヘッドアレイ42YAと最下流側に配置された記録ヘッドアレイ42KBとの間が、記録ヘッドアレイ42YA〜42KBによって画像記録が行われる画像記録領域となる。
図2に示すように、記録ヘッドアレイ42A、42Bは、基板(共通基板)46に複数個の単位記録ヘッド40が一定間隔をおいて配設され構成されている。単位記録ヘッド40のノズル面40Aには、インクを吐出する複数個のノズル58が一直線上に形成されており、各単位記録ヘッド40は、ノズル配列方向が基板46の幅方向と一致するように一直線上に配列されて基板46に取り付けられている。
基板46の一側端部には、搬送される用紙Pの先端を検出してその検出信号(以下、センサ信号と呼ぶ)を生成する用紙検出センサ152が取り付けられている。この用紙検出センサ152は反射型光センサとされており、投受光部(検出部)153が単位記録ヘッド40のノズル58と同方向に向けられると共にノズル58よりも用紙搬送方向の上流側に配置されている。また、投受光部153の中心とノズル58との間には、用紙検出センサ152が用紙Pを検出してから単位記録ヘッド40によるインク吐出が開始可能な最短時間を距離に換算した必要最小距離よりも十分に大きな距離L(図2(A)参照)が確保されている。
搬送機構150は、記録ヘッドアレイ42YA〜42KBと略対向し用紙搬送方向に沿って記録ヘッドアレイ42YAよりも上流側及び各記録ヘッドアレイ42YA〜42KBの間にそれぞれ配置された8本の搬送ロール100(100YA、100YB、100MA、100MB、100CA、100CB、100KA、100KB)と、これらの搬送ロール100YA〜100KBを回転駆動する図示しない駆動モータ等の駆動源(回転駆動手段)と、を備えており、搬送ロール100YA〜100KBを駆動源により回転駆動することで、用紙Pを搬送ロール100YA〜100KBにより所定の用紙搬送方向へ搬送する。また、搬送ロール100YA〜100KBの上方には、記録ヘッドアレイ42YA〜42KBの単位記録ヘッド40よりも上流側に配設された上記の用紙検出センサ152がそれぞれ配置され、各用紙検出センサ152は搬送ロール100YA〜100KB近傍における用紙Pの検出を行う。
用紙搬送方向の最上流側に配置された搬送ロール100YAには、ロータリエンコーダ154(以下、単にエンコーダ154と呼ぶ)が設けられている。エンコーダ154は、搬送ロール100YAが回転駆動されると、搬送ロール100YAの回転速度を検出して回転速度に比例した周波数のパルス信号(以下、エンコーダパルス信号と呼ぶ)を生成する。このエンコーダパルス信号が、搬送ロール100YAによる用紙搬送速度を示す基準信号となる。そして、エンコーダ154が生成したエンコーダパルス信号156と、上記の用紙検出センサ152(152YA〜152KB)が生成したセンサ信号158(158YA〜158KB)とは印字制御部160に入力される。
図3に示すように、印字制御部160は、選択部162及び印字タイミング信号生成部164を備えている。
選択部162には、センサ信号158YA〜158KBと、インクジェット記録装置10と直接接続又はネットワーク接続された図示しないパーソナル・コンピュータ(以下、PCと呼ぶ)等から選択信号166とが入力され、選択部162は、選択信号166の指示により、入力されるセンサ信号158YA〜158KBの中から何れのセンサ信号を記録ヘッドアレイ42YA〜42KBの制御に用いるか選択する。本実施の形態では、選択部162は選択信号166の指示により、記録ヘッドアレイ42YAに対しては用紙検出センサ152YAのセンサ信号158YA、記録ヘッドアレイ42YBに対しては用紙検出センサ152YBのセンサ信号158YB(残りの記録ヘッドアレイ42MA〜42KBについても同様)、というように、各記録ヘッドアレイ42YA〜42KBに対し、それぞれ上流側直近に配置された用紙検出センサ152YA〜152KBが生成したセンサ信号を選択する。
なお、上記のような選択パターンを指示する選択信号166は、他の選択パターンを指示する選択信号に切り替え可能であり、その信号選択については、例えばユーザ等がPCの操作画面から任意に行うことができる。また、用紙検出センサ152YA〜152KBの故障時などには、故障した用紙検出センサを使用しいない選択パターンの選択信号に切り替えられることにより対応することができる。
選択部162によって記録ヘッドアレイ42YA〜42KBに対し割り当てられたセンサ信号158YA〜158KBと、エンコーダパルス信号156とは、印字タイミング信号生成部164へ入力される。印字タイミング信号生成部164は、選択入力されたセンサ信号158YA〜158KB及びエンコーダパルス信号156により、記録ヘッドアレイ42YA〜42KBの印字を開始するタイミングを制御するための印字タイミング信号168YA〜168KBを生成し、記録ヘッドアレイ42YA〜42KBへ出力する。
印字(画像記録)タイミング:T2については、基本的に、用紙検出センサ152と記録ヘッドアレイ42との距離(設計値):L1、用紙先端から印字開始位置までの距離(画像データ):L2、用紙Pの搬送速度:V1、及び、用紙先端の検出タイミング:T1から以下の式によって求められる。
[T2=(L1+L2)/V1+T1]
ここで、印字タイミング信号生成部164は、入力されたエンコーダパルス信号156により把握した搬送機構150の用紙搬送速度(V1)、及び、選択入力されたセンサ信号158YA〜158KBにより把握した用紙先端の検出タイミング(T1)により求めた印字タイミング(T2)で、記録ヘッドアレイ42YA〜42KBに印字を開始させる印字タイミング信号168YA〜168KBを生成する。
そして、記録ヘッドアレイ42YA〜42KBは、搬送される用紙Pに対し、入力された印字タイミング信号168YA〜168KBが示すタイミングで印字を開始する。
また、搬送される用紙Pの先端を用紙検出センサ152YA〜152KBの各々が所定時間経過しても検出できない場合には、図示しない装置動作制御部(システムコントロール部)から出力された緊急停止信号170が印字タイミング信号生成部164及び搬送制御部172(図1参照)へ入力される。この緊急停止信号170の入力により、印字タイミング信号生成部164は印字タイミング信号168YA〜168KBの出力を停止して記録ヘッドアレイ42YA〜42KBによる印字動作を停止させ、また、搬送制御部172は駆動源を停止させて搬送ロール100YA〜100KBの回転駆動を停止させる。また、このような印字動作の緊急停止は、上記の自動停止の他に、ユーザ等がインクジェット記録装置10の操作部やPCの操作画面から停止操作することにより行うこともできる(手動停止)。
次に、本実施の形態に係るインクジェット記録装置10の画像記録動作及び作用について説明する。
インクジェット記録装置10による画像記録では、図4に示すように、ステップ180で印字処理が開始されると、搬送機構150の駆動源が回転駆動し搬送ロール100YA〜100KBが回転して用紙Pの搬送準備状態に入る。ここで、搬送ロール100YAに設けられたエンコーダ154は、搬送ロール100YAの回転速度を検出しエンコーダパルス信号156(基準信号)を生成して印字制御部160の選択部162へ出力する。
さらに、ステップ182で印字制御部160の選択部162はセンサ信号158YA〜158KBの選択を行う。このステップ182では、上述したように、選択部162はPC等から入力された選択信号166の指示により、記録ヘッドアレイ42YA〜42KBに対し、それぞれ上流側直近に配置された用紙検出センサ152YA〜152KBからのセンサ信号158YA〜158KBを割り当てる選択を行う。
次に、ステップ184で用紙Pが搬送機構150へ供給され搬送ロール100YA〜100KBにより所定の搬送方向へ搬送開始される(図1の矢印X方向)。ここで、搬送される用紙Pの先端が用紙検出センサ152YA〜152KBにより検出されると、用紙検出センサ152YA〜152KBはセンサ信号158YA〜158KBを印字制御部160の印字タイミング信号生成部164へ出力する。印字タイミング信号生成部164は、入力されたエンコーダパルス信号156及び選択入力されたセンサ信号158YA〜158KBの各々に基づいて、各用紙検出センサ152YA〜152KBよりも搬送方向の下流側直近に配置された各記録ヘッドアレイ42YA〜42KBの印字開始タイミングを制御するための上述した印字タイミング信号168YA〜168KBを生成し、記録ヘッドアレイ42YA〜42KBへ出力する。
続いてステップ186で、記録ヘッドアレイ42YA〜42KBは、搬送ロール100YA〜100KBにより搬送路を所定の搬送方向へ搬送される用紙Pに対し、入力された印字タイミング信号が示すタイミングで印字を開始する。そして用紙搬送に伴い、用紙Pには記録ヘッドアレイ42YA〜42KBにより各色の画像が順次記録され重畳されてフルカラーの画像が形成される。
また、この印字動作中に用紙Pが画像記録領域及びその手前でジャムを起こした場合には、用紙検出センサ152YA〜152KBの各々が所定時間経過しても用紙Pの先端を検出できない状態となり、印字制御部160及び搬送制御部172へ緊急停止信号170が入力される。すると、記録ヘッドアレイ42YA〜42KBによる印字が停止されると共に搬送ロール100YA〜100KBが回転停止して用紙Pの搬送が停止される。
最後に、記録ヘッドアレイ42YA〜42KBによる印字が無事に終了すると、用紙Pはインクジェット記録装置10の排紙部へ排出され、ステップ188で印字処理を終了する。
また、ユーザ等による印字動作の手動停止については、上述したステップ180〜ステップ188の何れのタイミングで行っても機能し、例えばユーザ等がインクジェット記録装置10の異常を察知した場合などには手動によって印字動作を緊急停止することができる。
以上説明したように、本実施形態のインクジェット記録装置10では、画像記録において、搬送される用紙Pに対する用紙先端の検出を各記録ヘッドアレイ42YA〜42KBの上流側直近で行い(8箇所)、各箇所での用紙検出タイミングに応じて対応する記録ヘッドアレイ42YA〜42KBの画像記録タイミングを制御することにより、用紙Pの搬送速度が局所的に変動することにより発生する各画像のレジストレーションずれが補正される。さらに本実施形態では、記録ヘッドアレイ42YA〜42KBのそれぞれの上流側直近で用紙先端の検出を行い画像記録タイミングを制御していることにより、各画像のレジストレーションずれをより精度よく補正できる。したがって、高品質の画像記録を実現することができる。
また本実施形態では、各用紙検出センサ152を搬送ロール100YA〜100KBの近傍(上方)に配置して用紙Pの検出を行っていることにより、搬送ロール100YA〜100KBの周速度変動要因による用紙搬送速度の変動をより精度よく検出できる。また、このように、用紙Pの検出を複数箇所で行い、各検出箇所間の用紙Pの検出タイミングの差分を上記の画像記録タイミングの補正制御に用いる方式であれば、搬送ロール100YA〜100KBの回転速度や外径寸法のばらつき、芯ぶれ等、各搬送ロールに周速度差を生じさせる全ての要因によって発生するレジストレーションずれを補正することができる。
また、本実施形態では、搬送される用紙Pの検出を、記録ヘッドアレイ42YA〜42KBにより画像記録が行われる画像記録領域の複数箇所で行っていることにより、画像記録領域で生じる用紙Pのジャムを迅速に検出することができる。そしてジャムの発生を検出した場合には、記録ヘッドアレイ42YA〜42KBによる画像記録を停止させることにより、インクの無駄な消費が抑えられると共にインクによる装置内の汚れが防止される。
(第2の実施形態)
図5には本発明の第2の実施形態に係るインクジェット記録装置が示されている。なお、本実施形態に係るインクジェット記録装置200では、第1の実施形態に係るインクジェット記録装置10と共通の部分に同一符合を付して説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置200では、記録ヘッド部を構成する8個の記録ヘッドアレイ42YA〜42KBのうち、記録ヘッドアレイ42YA、42MA、42CA、42KAの4個のみに用紙検出センサ152YA、152MA、152CA、152KAが設けられている。
搬送ロール100YA〜100KBにより搬送される用紙Pの先端を検出することで、用紙検出センサ152YA、152MA、152CA、152KAにより生成されたセンサ信号158YA、158MA、158CA、158KAは、印字制御部160へ入力され、印字制御部160の選択部162(図2参照)は、選択信号166の指示により、入力されるセンサ信号158YA、158MA、158CA、158KAの中から何れのセンサ信号を記録ヘッドアレイ42YA〜42KBの制御に用いるか選択する。本実施の形態では、選択部162は選択信号166の指示により、記録ヘッドアレイ42YA、42YBに対しては用紙検出センサ152YAのセンサ信号158YA、記録ヘッドアレイ42MA、42MBに対しては用紙検出センサ152MAのセンサ信号158MA(残りの記録ヘッドアレイ42CA〜42KBについても同様)、というように、センサ信号158YA、158MA、158CA、158KAを、用紙検出センサ152YA、152MA、152CA、152KAのそれぞれ下流側に配置された2個の記録ヘッドアレイ42YA〜42KBの印字タイミング制御用に割り当てている。すなわち、センサ信号158YA、158MA、158CA、158KAを、記録ヘッドアレイ42のY、M、C、Kの色毎(記録ヘッド44毎)に割り当てている。
そして、印字制御部160の印字タイミング信号生成部164(図2参照)は、入力されたエンコーダパルス信号156及び選択入力されたセンサ信号158YA、158MA、158CA、158KAの各々により、記録ヘッドアレイ42YA〜42KBの印字開始タイミングを制御するための印字タイミング信号168YA〜168KBを生成し、記録ヘッドアレイ42YA〜42KBへ出力する。
なお、本実施形態のインクジェット記録装置200による印字タイミング信号168YA〜168KBの生成過程及び画像記録動作(図4参照)については、第1の実施形態と記録ヘッドアレイ42YA〜42KBに対するセンサ信号の割り当て方が異なる他は同様であるため、その詳細説明を省略する。
以上説明した本実施形態のインクジェット記録装置200では、画像記録において、搬送される用紙Pに対する用紙先端の検出を、記録ヘッドアレイ42YA〜42KBのY、M、C、Kの色毎にそれぞれ上流側直近で行い(4箇所)、各箇所での用紙検出タイミングに応じて記録ヘッドアレイ42YA〜42KBの色毎に画像記録タイミングを制御することにより、用紙Pの搬送速度が局所的に変動することにより発生する画像の色毎のレジストレーションずれが精度よく補正される。また、本実施形態では、第1の実施形態に比べて用紙検出センサの配設数を減らしてしていることにより、装置コストが抑えられる。
(第3の実施形態)
図6には本発明の第3の実施形態に係るインクジェット記録装置が示されている。なお、本実施形態に係るインクジェット記録装置210では、第1の実施形態に係るインクジェット記録装置10と共通の部分に同一符合を付して説明を省略する。
図6に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置210では、記録ヘッド部を構成する8個の記録ヘッドアレイ42YA〜42KBのうち、記録ヘッドアレイ42YA、42CAの2個のみに用紙検出センサ152YA、152CAが設けられている。
搬送ロール100YA〜100KBにより搬送される用紙Pの先端を検出することで、用紙検出センサ152YA、152CAにより生成されたセンサ信号158YA、158CAは、印字制御部160へ入力され、印字制御部160の選択部162(図2参照)は、選択信号166の指示により、入力されるセンサ信号158YA、158CAのうち何れのセンサ信号を記録ヘッドアレイ42YA〜42KBの制御に用いるか選択する。本実施の形態では、選択部162は選択信号166の指示により、記録ヘッドアレイ42YA、42YB、42MA、42MBに対しては用紙検出センサ152YAのセンサ信号158YA、記録ヘッドアレイ42CA、42CB、42KA、42KBに対しては用紙検出センサ152CAのセンサ信号158CA、というように、センサ信号158YA、158CAを、用紙検出センサ152YA、152CAのそれぞれ下流側に配置された4個の記録ヘッドアレイ42YA〜42KBの印字タイミング制御用に割り当てている。すなわち、センサ信号158YA、158CAを、記録ヘッドアレイ42のY、M、及び、C、Kの2色づつに割り当てている。
そして、印字制御部160の印字タイミング信号生成部164(図2参照)は、入力されたエンコーダパルス信号156及び選択入力されたセンサ信号158YA、158CAの各々により、記録ヘッドアレイ42YA〜42KBの印字開始タイミングを制御するための印字タイミング信号168YA〜168KBを生成し、記録ヘッドアレイ42YA〜42KBへ出力する。
なお、本実施形態のインクジェット記録装置210による印字タイミング信号168YA〜168KBの生成過程及び画像記録動作(図4参照)については、第1の実施形態と記録ヘッドアレイ42YA〜42KBに対するセンサ信号の割り当て方が異なる他は同様であるため、その詳細説明を省略する。
以上説明した本実施形態のインクジェット記録装置210では、画像記録において、搬送される用紙Pに対する用紙先端の検出を記録ヘッドアレイ42YA、42CAのそれぞれ上流側直近で行い(2箇所)、各箇所での用紙検出タイミングに応じて記録ヘッドアレイ42YA〜42KBのY、M、及び、C、Kの2色毎に画像記録タイミングを制御することにより、用紙Pの搬送速度が局所的に変動することにより発生する画像のY、M、及び、C、Kの2色毎のレジストレーションずれが精度よく補正される。また、本実施形態では、第1及び第2の実施形態に比べて用紙検出センサの配設数を減らしてしていることにより、装置コストが更に抑えられる。
なお、上述したように、第1〜第3の実施形態では用紙検出センサ152の数、配置箇所を変更した場合を例に説明したが、これらは上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、用紙検出センサ152の数、配置箇所は、要求するレジストレーションずれの補正精度、補正する各画像の組み合わせ(色種毎等)、及び装置コスト等の条件により適宜選択することができる。また、搬送される用紙Pの先端を検出するための手段(検出信号生成手段)としては、上述したような反射型光センサに限らず、例えば、透過型光センサ等の他の手段を用いることもできる。
また、本発明が適用される記録媒体を搬送するための搬送手段は、上述したようなロール搬送方式に限らず、ベルト搬送方式の搬送手段とすることもできる。
(実施例)
以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。なお、本実施例に係る記録装置が適用されたインクジェット記録装置は、第1の実施形態で説明したインクジェット記録装置の構成をベースとしたものであり、第1の実施形態と共通の部分には同一符合を付している。
(インクジェット記録装置の全体構成)
先ず、インクジェット記録装置の全体構成について簡単に説明する。
本実施例のインクジェット記録装置10は、図7に示すように、用紙を送り出す用紙供給部12と、用紙の姿勢を制御するレジ調整部14と、インク滴を吐出して用紙に画像形成する記録ヘッド部16及び記録ヘッド部16のメンテナンスを行なうメンテナンス部18を備える記録部20と、記録部20で画像形成された用紙を排出する排出部22とから基本的に構成される。
用紙供給部12は、用紙が積層されてストックされているストッカ24と、ストッカ24から1枚ずつ枚葉してレジ調整部14に搬送する搬送装置26とから構成されている。
レジ調整部14は、ループ形成部28と用紙の姿勢を制御するガイド部材30が備えられており、この部分を通過することによって用紙のコシを利用してスキューが矯正されると共に搬送タイミングが制御されて記録部20に進入する構成である。
記録部20については、記録ヘッド部16とメンテナンス部18の間を用紙が搬送される用紙搬送路が構成されており、用紙搬送路を連続的に(停止することなく)搬送される用紙に対して、記録ヘッド部16からインク滴が吐出され当該用紙に画像が形成される構成である。記録ヘッド部16とメンテナンス部18は、それぞれユニット化されており、記録ヘッド部16がメンテナンス部18と用紙搬送路を挟んで分離可能に構成されている。したがって、用紙ジャムの場合に、容易にジャムした用紙を取り出すことができる。なお、記録部20については後述するので、詳細な説明を省略する。
排紙部22は、記録部20で画像が形成された用紙を排紙ベルト31を介してトレイ32に収納するものである。
(記録ヘッド部の構成)
次に、記録ヘッド部16について、図8〜図13を参照して詳細に説明する。図8は、記録ヘッド部16を上側から見た模式図(図14との対応をとりやすくするためにあえて上方から見た平面図とした)である。
記録ヘッド部16は、図8に示すように、用紙搬送方向(矢印X方向。以下、搬送方向という場合がある)に対して直交する用紙幅方向(矢印Y方向。以下、幅方向という場合がある)に対して一定の間隔で配置された単位記録ヘッド40が6個配置された記録ヘッドアレイ42が用紙搬送方向に一定間隔で8個配設されることによって基本的に構成されている。
単位記録ヘッド40は、図9に示すように、ノズル面40Aにインク吐出するノズル58が一直線上に形成されたものであり、周知のサーマルインクジェット方式によりインク滴が吐出されるものである。本実施例では、単位記録ヘッド40はノズル配列密度が800dpiで800ノズルであり、噴射周波数が7.56kHzで、顔料インクを使用するものである。
このような単位記録ヘッド40がノズル配列方向が幅方向と一致するように一直線上に後述する共通基板46に6個の単位記録ヘッド40が取り付けられることによって記録ヘッドアレイ42A、42Bが形成されている。
記録ヘッドアレイ42A、42Bは、図10に示すように、それぞれ6個の単位記録ヘッド40が一定間隔をおいて配設されたものであり、記録ヘッドアレイ42A、42Bでは単位記録ヘッド40の配置を幅方向で相互にずらして配置することによって、単位記録ヘッド40のノズル列の一部が記録ヘッドアレイ42A、42B間において重複するオーバーラップ領域OLを有するように配置されている。このようにオーバーラップ領域OLを設けることによって、印字領域内で印字ができない領域が発生することを防止している。すなわち、記録ヘッドアレイ対42A、42Bの単位記録ヘッド40のノズル58からインク滴を吐出することによって、用紙に対する一色分の印字を行なうものである。本実施例では、この一対の記録ヘッドアレイ42A、42Bの組み合わせを記録ヘッド44と呼ぶものとする。
本実施例の記録ヘッド44では、印字領域が12インチとされており、最大用紙幅PWのA3短手幅(A4長手幅)の297mmよりも広く設定されている。
記録ヘッド44は、搬送方向上流側からイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に印字されてフルカラー印字可能な構成であり、必要な場合には該当する記録ヘッドの参照番号にY、M、C、Kの符号を付して(44Y、44M、44C、44Kとして)区別する(図8参照)。以下、他の部材についても同様である。
また、図8において、記録ヘッド44Y〜44Kの構成は同一なので、記録ヘッド44Yの構成要素についてのみ参照符号を付し、他の記録ヘッド44M〜44Kの構成要素に対する参照符号を付するのを省略している。
記録ヘッド44を構成する記録ヘッドアレイ42Aは、図11に示すように、用紙幅方向に延在する共通基板46Aに6個の単位記録ヘッド40が所定間隔で取り付けられている。
すなわち、単位記録ヘッド40は、図10に示すように、共通基板46Aに取り付けられることによりこのノズル列が幅方向に並ぶことになる。
また、図10に示すように、記録ヘッドアレイ42A、42Bの共通基板46A、46Bには、用紙検出センサ152が設けられている。用紙検出センサ152は、共通基板46A、46Bの幅方向に配列された6個の単位記録ヘッド40のほぼ中間位置に配設されて共通基板46の単位記録ヘッド取付面に取り付けられている。また、用紙検出センサ152の検出部153は、図10に示す単位記録ヘッド40のノズル58側から見た場合にノズル58よりも共通基板46側に配置されている。
本実施例では、用紙検出センサ152にレーザ光を利用した反射型の光電センサを用いている。レーザタイプの光電センサであれば、(1)レーザビームを数十μm程度に微小径で照射できるため用紙の有無を高精度に検出できる、(2)非接触検出なので用紙自体に負荷をかけない(用紙搬送速度に影響を与えない)、(3)応答時間が速いので用紙の有無を高速に検出できる、などの利点があり好適である。
また、用紙検出センサを記録ヘッドの上流側に配置する場合には、次の条件を満たす必要がある。
[センサが用紙を検出してから記録ヘッドがインク吐出を開始するまでの時間(TA)<センサと記録ヘッド間の用紙の移動時間(TB)]
例えば、A4短手幅(210mm)、60ppm、1200dpi相当の紙送りスピードの場合、印字周波数は〜10kHz(=100μs)となるので、上記条件のTA=センサの応答時間(50μs〜1ms)+コントロールの処理遅延(〜200μs)より、250μs〜1.2ms程度となる。したがって、センサと記録ヘッド間に必要とされる最小距離は、210mm/s×(250μs〜1.2ms)=52.5μm〜310μm程度となる。本実施例の場合、上記例における必要最小距離よりも、用紙検出センサ152の検出部153と単位記録ヘッド40のノズル58との距離を十分大きくしており、用紙検出センサ152による用紙の検出情報を印字動作の制御に利用することに問題はない。
なお、本実施例では、用紙検出センサ152を共通基板46A、46Bの幅方向(用紙搬送路の幅方向)における中央付近に配設しているが、これは共通基板46A、46Bの幅方向の幅方向における側端寄りとすることも可能である。用紙検出センサ152の配設箇所については、用紙搬送路の幅寸法よりも幅狭の用紙(本実施例の場合はB5やA5サイズ等)に対して印字を行う際に、その用紙を用紙搬送路の中央を搬送するか、あるいは用紙搬送路の側端に沿わせて搬送するかという搬送通路の設定条件に応じて適宜選択できる。
これにより、搬送される用紙が用紙検出センサ152を通過する際には、用紙検出センサ152は照射したレーザ光の反射光量の変化によって用紙の先端を検出し、その検出タイミングでセンサ信号(検出信号)を生成する。そして、センサ信号は印字制御部160(図2参照)へ入力され、第1の実施形態で説明したように記録ヘッドアレイ42の印字開始タイミングを制御するために用いられる。
また、記録ヘッド部16では、搬送方向に沿って記録ヘッドアレイ42間、最上流側の記録ヘッドアレイ42YAよりも上流側、及び最下流側の記録ヘッドアレイ42KBよりも下流側に3つのスターホイール群72A〜72Cが配設されている(図8参照)。スターホイール群72A〜72Cは、幅方向に連続して配置された3本のシャフト74A〜74Cに対し所定間隔をおいてそれぞれ6個のスターホイール70が軸支されているものである。この各シャフト74A〜74Cは、両端でスプリング75によって後述する搬送ロール100側に付勢されている。なお、スターホイール70の搬送ロール100側への変位量は、搬送ロール100の表面よりわずかに食いこむ位置で停止するように、規制部材77が配設されている(図12参照)。
ここで、スターホイール70同士の幅方向間隔は、最も広い箇所で25.4mmとした。用紙の局所的な浮き・変形を押さえるために50mm以下が望ましいからである。
また、スターホイール70がスプリング75によって搬送ロール100に押圧される力は、1個当たり10gfとされている。これは、押圧力が5gfよりも小さいと用紙を搬送ロール100に十分押さえることができず、30gfよりも大きいとスターホイール70が用紙を傷つけるためである。
スターホイール70は、図13(A)に示すように、孔部74が形成された円筒形の樹脂製の保持体76と、保持体76に保持されたステンレス製のホイール78から構成されている。
保持体76は、軸方向中央で縮径してホイール挿入可能とした第1部材76Aと、縮径部分に嵌合して第1部材76Aと共にホイール78を挟持する第2部材76Bとから構成されている。ホイール78は、外周に歯79が一定間隔で多数形成されている。歯79の先端形状は、鈍角で先端がR形状とされている(図13(B)参照)が、用紙上の未乾燥のインクと接触するため接触面積が極力小さくされていれば良く、例えば、鋭角(図13(C)参照)でも良い。
また、ホイール78の厚みは、本実施例では、0.1mmで先端(歯先)の厚みをテーパー加工により0.01〜0.02mm程度に薄くしたものである。また、ホイール78は、SUS631EH材から両面段差エッチングで外形と先端テーパー形状を同時加工して形成したものであり、表面をフッ素樹脂撥水コートしたものである。
また、記録ヘッドアレイ42Aでは、各単位記録ヘッド40の隣りにスターホイール70が配置されている。スターホイール70は、共通基板46に嵌合されている支持部材71の先端に板バネ73を介して弾性的に軸支されている(図12参照)。
(メンテナンス部の構成)
記録部20に対して対向配置されるメンテナンス部18の構成を図14〜図18、図19を参照して説明する。図14は、搬送位置からメンテナンス部18を平面視にしたものである。
メンテナンス部18は、記録部20と用紙搬送位置を挟んで対向配置されており、図14に示すように、記録部20の各単位記録ヘッド40と対向する位置にメンテナンス装置81が配置されている。メンテナンス装置81は、キャップ部材80とワイピング部材88から構成されている。
キャップ部材80は、図15に示すように、矩形状の深さ8mmの凹部82Aが形成されPBT樹脂から形成された受け部82と、受け部82の上部にシリコーンゴム(硬度40Hs)から形成されたゴム部84と、凹部82Aの底面全体に配設されたポリプロピレンとポリエチレンとからなるインク吸収体86とから構成されている。したがって、後述するダミージェットの際、各単位記録ヘッド40のノズル58からキャップ部材80の開口部84Aを介して凹部82Aの内部にインク滴が吐出され、インク吸収体86に吸収される構成である。
また、キャップ部材80は、図16に示すように、記録ヘッドアレイ42を構成する各単位記録ヘッド40にそれぞれ対応した6個のキャップ部材80が共通基板300に取りつけられてユニット化され、昇降機構302によって一体的に単位記録ヘッド40のノズル面40Aに対して接近・離間可能に構成されている。
昇降機構302は、駆動モータ304と、駆動モータ304の駆動軸306に取りつけられ、共通基板300の下面に当接される偏心カム308とから構成されている。したがって、駆動モータ304が駆動されることにより偏心カム308が回転し、偏心カム308が当接された共通基板300が単位記録ヘッド40のノズル面40Aに対して接近・離間する構成である。
なお、キャップ部材80の下側には、ノズル面40Aに圧接する際に圧接力を調整するスプリング87が配設されている(図20参照)。したがって、後述するキャッピング動作時にはキャップ部材80が上昇してゴム部84がノズル面40Aに対して圧接してノズル58を含むノズル面40Aを密閉し、インクの乾燥を抑制すると共にゴミ、埃等の付着を防止する。また、後述するワイピング動作時にはキャップ部材80が下降してワイピング部材88を幅方向に移動可能とするものである。
さらに、各キャップ部材80の幅方向において隣接する位置には、各単位記録ヘッド40のノズル面40Aをクリーニングするためのワイピング部材88が配設されている(図15、図16参照)。
ワイピング部材88は、図15に示すように、幅方向視において略アーチ型の形状をした保持部材90と、保持部材90の上部に配設され搬送方向に延在するワイパー92とから構成されているものである。
ワイパー92は熱可塑性ポリマー樹脂(硬度65Hs)から形成され、幅方向厚さW1が0.8mm、搬送方向長さL1が8mmであり、保持部材90からの高さ(自由長)が6mmである。
保持部材90はSUS材から形成されている。
なお、ワイピング部材88はキャップ部材80の幅方向端部から1mmの位置に配置した。
また、ワイピング部材88は、図16に示すように、記録ヘッドアレイ42を構成する各単位記録ヘッド40にそれぞれ対応した全ワイピング部材88が共通基板310に取りつけられてユニット化され、移動機構312によって一体的に単位記録ヘッド40のノズル面40Aに対して接近・離間及び幅方向に移動可能に構成されている。
移動機構312は、共通基板310を幅方向に移動可能に支持するスライダ314と、スライダ314上で共通基板310を幅方向に移動させる駆動モータ316と、スライダ314を昇降させる駆動モータ318とから基本的に構成される。スライダ314は、搬送方向両端に設けられ幅方向に延在するガイド320を備えており、ガイド320に案内された共通基板310が幅方向に移動可能とされている。また、共通基板310の一側面には、ラック322が形成された凸部324が形成されており、スライダ314に取りつけられた駆動モータ316の駆動ギア326と噛合されている。したがって、駆動モータ316の駆動によって共通基板310がスライダ314上を幅方向に移動可能とされている。
また、スライダ314の下側には、上下方向に延在するラック330が設けられた凸部332が形成されており、駆動モータ318の駆動ギア334が噛合されている。したがって、駆動モータ318の駆動によってスライダ314が昇降可能とされている。すなわち、スライダ314に支持された共通基板310、ワイピング部材88が一体的に昇降する構成とされている。
このように、ワイピング部材88は移動機構312によってノズル面40Aに対して接近離間(昇降)可能に構成されると共に、幅方向に移動可能とされている。すなわち、ワイピング部材88(ワイパー92)は、ホームポジションでは搬送されてくる用紙と干渉しないようにキャップ部材80よりも低い位置に位置している(図17(A)参照)が、ワイピング時には上昇してホームポジションから下降したキャップ部材80を跨いで搬送方向に移動してワイピングを行なう(図17(C)参照)構成とされている。
また、記録部20において用紙搬送時にキャップ部材80の凹部82Aに用紙が突入しないように、各キャップ部材80の幅方向両側にガイド部材94が配設されている(図15参照)。ガイド部材94はSUS材から形成され、図15に示すように、搬送方向に延在する水平部94Aと、水平部94Aの両端部から垂直下方に延在する2本の垂直部94Bと、水平部94Aの搬送方向両端部から搬送方向斜め下方に延在するガイド部94C、94Dとから構成される。
なお、このガイド部材94の水平部94Aは、単位記録ヘッド間に配設されたスターホイール70と対向配置されている(図8、図14及び図12参照)。したがって、搬送される用紙が、搬送方向における印字位置でスターホイール70によってガイド部材94(水平部94A)に当接され、インク付着などによって変形する用紙をノズル面40Aに対して一定の距離に保つ構成である(図12参照)。
続いて、メンテナンス装置81を構成する各部材の本実施例におけるホームポジション(画像印字中で単位記録ヘッド40に対するメンテナンスを行っていない状態における位置)について説明する。
キャップ部材80は、記録ヘッド40のノズル面40Aの下方に配置され、平面視においてゴム部84が単位記録ヘッド40のノズル面40Aの全体を覆うように、また、平面視においてゴム部84の開口部84A内に単位記録ヘッド40の全ノズル58が位置するように配置されている。
ワイピング部材88は、ワイパー92の先端が単位記録ヘッド40のノズル面40Aの下方に配置され、平面視においてワイパー92の長手(搬送)方向長さが単位記録ヘッド40のノズル面40Aの搬送方向幅をカバーできる位置で、ワイパー92が単位記録ヘッド40の幅方向端部から1mm離れた位置(記録ヘッドの短手幅方向に対し、清掃できる位置)に配置されている。
ガイド部材94は、用紙が接触する水平部94Aの最上面が単位記録ヘッド40のノズル面40Aの下方に配置され、平面視においてガイド部材94の水平部94Aの搬送方向長さが単位記録ヘッド40のノズル面40Aをカバーできる位置で、用紙が接触する水平部94Aの最上面が単位記録ヘッド40の幅方向端部から2mm離れた位置に配設されている。
続いて、メンテナンス装置81と単位記録ヘッド40の間に用紙を搬送する構成について説明する。
用紙に駆動力を伝達して搬送する搬送ロール100が、メンテナンス部18において搬送方向両端と搬送方向で隣接するキャップ部材80の間にそれぞれ配設されている(図14参照)。搬送用ロール100は、用紙搬送位置を挟んでスターホイール群72A〜72Cの配設位置に対応して配置されており(図12参照)、搬送用ロール100側にスプリング75によって弾性的に押圧されているスターホイール群72A〜72Cのスターホイール70によって搬送用ロール100に用紙が当接され、搬送ロール100から駆動力が伝達されるように構成されている。
搬送ロール100は、ケーシング102に軸支される小径部100Aと、小径部100Aよりも径が大きくスターホイール70が当接する大径部100Bとから構成されている(図11参照)。搬送ロール100は、大径部100Bを介して用紙に駆動力を伝達するものであり、摩擦係数が大きくかつ磨耗しにくいものが良い。本実施例では、搬送ロール100は直径10mmの金属(SUS303)ロール表面にアルミナを主成分とするセラミック微粉末をスプレーコートして燒結したものであり、上記条件を満たしている。この加工は、搬送ロール100の大径部100Bにおいて用紙が当接する印字領域のみならず、平ベルト104が張架される非印字領域も同様の加工が施される。
なお、搬送ロール100の表面にスターホイール70が接触して刃先が変形することを防止するために、搬送ロール100のスターホイール70に対向する部分には、幅2mm、深さ2mmの周回する溝101(図12参照)を設けている。また、この溝101内へのスターホイール70の進入量が増加することによって、用紙搬送抵抗が増加することを防止するために、スターホイール70の進入量を規制する規制部材77(図12参照)が設けられている。
また、搬送方向の最上流側のキャップ部材80よりも上流側の搬送ロール100には、エンコーダ(ロータリエンコーダ)154が設けられている(図14参照)。エンコーダ154は、搬送ロール100の一端側(後述する平ベルト104巻き掛け側)に位置し搬送ロール100と同軸的に配置されてケーシング102に取り付けられており、回転軸155の先端部が搬送ロール100の小径部100A端部に連結されている。これにより、搬送ロール100が回転駆動すると、エンコーダ154は回転軸155が搬送ロール100と共に回転されてその回転速度を検出し、回転速度に比例した周波数のエンコーダパルス信号を生成する。そして、エンコーダパルス信号は印字制御部160(図2参照)へ入力され、第1の実施形態で説明したように記録ヘッドアレイ42の印字開始タイミングを制御するために用いられる。
搬送ロール100を駆動する駆動機構は、図18に示すように、単一のモータ106の駆動軸108からアイドラロール110、112を介して全ての搬送ロール100に平ベルト104が巻きかけられているものである。隣接する搬送ロール100間には、アイドラロール114が配設されており、各搬送ロール100(大径部100B)に対する平ベルトの巻きつけ角度を稼いでいる。
搬送ロール100は、図19に示すように、搬送される用紙が当接される大径部100Bにおいて印字領域外の非印字領域に平ベルト104が巻きかけられている。このような平ベルト104は、搬送ロール100に対して歯の噛合い無しで(摩擦力で)駆動伝達するので、特に歯毎の周期的な速度変動などがなく好適である。また、本実施例の平ベルト104は、ポリエステル繊維を織った基材の表面(片面)にポリウレタンを薄膜コートした厚さ0.4mmのものであり、機械的強度と高摩擦性を両立させている。
このように、記録部20が構成されることにより、本実施例ではノズル面−用紙間隔が1.5mmに設計され、その間を水平方向に用紙が搬送されるものである。また、印字対象となる最大記録領域(最大用紙幅PW)は、A3短手(A4長手)とされている。また、記録部20のプロセス速度は240mm/sであり、印字解像度=800×800dpi、記録速度が毎分60枚(A4LEF(Long Edge Feed)の場合)とされている。
また、本実施例のインクジェット記録装置10における印字制御部160の構成、印字制御部160による印字タイミング信号の生成過程及び印字タイミングの制御については、第1の実施形態と同じであるためその詳細説明を省略する。
このように構成されるインクジェット記録装置10の作用について説明する。
以下、印字動作、メンテナンス動作(ダミージェット、ワイピング、キャッピング)について順次説明する。
先ず、印字動作について説明する。
印字動作を行なう場合には、用紙供給部12から用紙が供給され、レジ調整部14で用紙の姿勢やタイミングが制御されて記録部20に搬送される。
一方、記録部20ではモータ106が駆動され、平ベルト104を介して全搬送ロール100に駆動力が伝達される。
したがって、記録部20に到達した用紙は、最も搬送方向上流側にある搬送ロール100とスターホイール群72A〜72Cの間に挿入される。この際、スプリング75で付勢されたスターホイール群72A〜72Cのスターホイール70が搬送ロール100に用紙を押し付けるため、搬送ロール100から用紙に搬送力が確実に伝達され、一定速度で単位記録ヘッド40の下部に挿入される。以下、記録ヘッドアレイ42間に配設された搬送ロール100から順次、駆動力が伝達されて搬送されていく。
この際、全ての搬送ロール100が単一のモータ106で駆動されているため、複数の駆動源で駆動される場合のように複数の駆動源の速度変動が重畳して用紙搬送速度の変動に影響を与えることが抑制され、用紙がより一定速度で搬送される。また、画像上で視認しやすい画像欠陥の原因である周期的な速度変動は歯の加工精度等によって生ずることが多いが、平ベルト104を介して(歯の噛合等を介さずに)駆動力が伝達されているため、上記画像欠陥の発生も防止される。さらに、搬送ロール100の用紙が当接される大径部100Bの非印字領域に平ベルト104が巻き掛けられているため、搬送ロール100の加工精度や保持方法(ベアリング等)に起因する芯振れがあっても周期的な速度変動は抑制され、各搬送ロール100による用紙の搬送速度をより一定速度に保つことができる。平ベルト104の巻き付け角を稼ぐためにアイドラーロール114を配置する構成では、厳密に言えば、アイドラーロール114の加工精度や保持方法に起因する周期的速度変動が発生するが、アイドラーロール114は比較的小型であり単一材料でよいので安価でかつ高精度に加工することは容易である。一方搬送ロール100はサイズが大きく、構成も例えば芯金と被覆材という複数の材料構成となるので、高精度の加工が困難である。あるいは非常に高価な部品になってしまう。平ベルト104による表面摩擦駆動方式は、搬送ロール100の半径や回転中心が多少ばらついていてもそこに起因する周期的変動は発生しないという効果がある。
さらに、スターホイール群72A〜72Cを幅方向で三つに分割し、それぞれのシャフト74A〜74Cの長さを短くしたため、シャフト74A〜74Cの撓みを防止できて、スプリング75で付勢された複数のスターホイール70が均等に用紙を抑える。したがって、用紙に駆動力を均等に伝達することができる。
特に、スターホイール70によって用紙を搬送ロール100に押圧しているため、用紙に駆動力が確実に伝達され、一定速度で搬送することができる。特に、静電吸着方式を採用していないため、用紙の厚さや材質などに拘らず安定して搬送することができる。
また、幅方向において単位記録ヘッド40間にスターホイール70を配設し、これと対向する位置にガイド部材94を配設しているため、搬送方向における印字(記録ヘッドアレイ42)位置においても、用紙の浮きあがり等を防止して、用紙の平面性(ノズル面40Aに対する一定距離)を確保することができる。
逆にいえば、このようにスターホイール70を配置することによって、単位記録ヘッド40に対向する位置にキャップ部材80等のメンテナンス装置81を配置しても、用紙の平面性(ノズル面40Aに対する一定距離)を確保することができる。
一方、記録ヘッド部16に対して装置の制御部から印字信号が各単位記録ヘッド40に入力されると、印字信号に応じて該当するノズルの発熱素子が発熱し、ノズル面40Aに対して一定距離とされつつ搬送される用紙に対して、当該ノズルからインク滴が吐出されていく。
したがって、記録ヘッドアレイ42Aで印字が行なわれ、続いて記録ヘッドアレイ42Bで印字が行なわれることにより、用紙の当該部分における一色分の印字が終了する。したがって、記録部20で用紙が搬送されるにつれて、記録ヘッド44Y、44M、44C、44Kの順で印字され、フルカラーの印字が行われる。
このように、平面性(ノズル面に対する一定距離)が確保され、一定速度で搬送される用紙に対して印字を行なうことにより、高画質な画像を形成することができる。特に、記録部20の搬送中、スターホイール70によって常時平面性が確保されるため、各種厚みの用紙に対して印字中に生ずる用紙の変形を良好に矯正でき、ノズル面40Aに対する距離を一定に維持して高画質な印字を達成できる。
特に、記録部20において、搬送ロール100が記録ヘッドアレイ42間に配設され、また最上流の記録ヘッドアレイ42YAよりも上流側及び最下流の記録ヘッドアレイ42KBよりも下流側に配設されていると共に、複数の搬送ロ−ル100が単一の駆動源で駆動されるため、用紙が一定速度で確実に搬送され、高画質な印字を達成することができる。
ただし、上述したような機構的な構成によって用紙搬送速度の周期的変動は抑制されるものの、平ベルト104の部分的な弛み、あるいは搬送ロール100の芯振れが大きい場合にはその搬送ロール100の回転ムラによって引き起こされる平ベルト104の振動等により、各搬送ロール100の回転速度がばらつくことがある。そのため、各搬送ロール100の周速度に差が出て用紙の搬送速度に局所的な変動が生じ、カラー画像にレジストレーションずれが起こる。このような用紙搬送速度の局所的な変動を要因とするレジストレーションずれについては、本実施例のインクジェット記録装置10の場合、第1の実施形態で説明した電気的な補正を行うことにより、そのレジストレーションずれを精度良く補正することができる。したがって、高品質の画像記録を実現することができる。
また、本実施例では、搬送される用紙の検出を、記録ヘッドアレイ42YA〜42KBにより画像記録が行われる画像記録領域の複数箇所(8箇所)で行っていることにより、画像記録領域で生じる用紙のジャムを迅速に検出することができる。そしてジャムの発生を検出した場合には、第1の実施形態で説明したように、記録ヘッドアレイ42YA〜42KBによる画像記録が停止される。したがって、インクの無駄な消費が抑えられると共にインクによる装置内の汚れが防止される。
また、本実施例の記録ヘッドアレイ42では、共通基板46の同一面に単位記録ヘッド40と用紙検出センサ152とを設け、且つ、用紙検出センサ152の検出部153を単位記録ヘッド40のノズル58側から見てノズル58よりも共通基板46に配置したことにより、例えば共通基板46の両面に単位記録ヘッド40と用紙検出センサ152とを別々に設ける構成に比べて記録ヘッドアレイ42は小型化され、更にこの記録ヘッドアレイ42を複数備える記録ヘッド部16、及びインクジェット記録装置10全体を小型化できている。
次に、ダミージェットの動作について説明する。
ダミージェットは、非印字時、あるいは複数の用紙を連続印字中に所定枚数の印字が終了する度に、後続の用紙先端が到達する前に行なう。すなわち、記録ヘッド44Y〜44Kを構成する全単位記録ヘッド40のうち、任意のノズルからキャップ部材80に向かってインク滴の吐出(いわゆるダミージェット)が行なわれる。ダミージェットを行なうのは、全単位記録ヘッド40の全ノズルでも良いし、選択された単位記録ヘッド40、あるいは記録ヘッドアレイ42の全ノズル58でも良いし、さらには所定時間インク滴の吐出を行なっていないノズル58のみでも良い。
例えば、複数枚数の用紙連続印字時のダミージェット時におけるノズル面40Aとキャップ部材80の上面との距離を3mmに設定し、30頁(A4)毎に先行する用紙通過後で後続の用紙先端到達前のタイミングで全ノズルから500ドロップ吐出する。
この際、キャップ部材80の凹部82Aの底面にインク吸収部材86が配設されているため、吐出されたインクが凹部82Aからあふれたり飛び散ったりすることはない。
例えば、単位記録ヘッド40の全ノズルからインク滴の吐出(ダミージェット)を行なうことによって、インク(特に水性インク、溶剤インク)の乾燥による吐出性能の変化を初期化することができる。また、インクがほとんど乾燥しない油性インク、ソリッドインクであっても、印字によってヘッド内部のインク流路等に付着した気泡の排除、あるいはノズル面に付着したゴミの除去を行なうことができ、ノズルのインク滴の吐出性能を初期化することができる。
本実施例のように、連続して印字する(搬送されてくる)複数の用紙印字中に、記録ヘッド44やキャップ部材80を移動させることなくダミージェットを行なうことができるため、印字速度(生産性)の向上が達成される。また、ダミージェットによって記録ヘッド44の印字性能が一定に維持され、高画質な印字が可能になる。
次にワイピング動作について説明する。
ワイピング動作は、印字開始前等に行なう。メンテナンス部18のワイピング部材88によって記録ヘッド40(ノズル面40A)のワイピングが行なわれる。具体的な動作を図17に示す模式図に基づいて説明する。
先ず、図16に示す昇降機構302の駆動モータ304が駆動され、偏心カム306の回転によって共通基板300が下降する。また、移動機構312の駆動モータ318が駆動され、スライダ314及びスライダ314に支持された共通基板310が上昇する。すなわち、共通基板300に取りつけられた6個のキャップ部材80がホームポジションから下降(記録ヘッド40から離間する方向に移動)すると共に、共通基板310に取りつけられた6個のワイピング部材88がホームポジションから上昇する(記録ヘッド40のノズル面40A側に移動する)(図17(A)→(B)参照)。
本実施例では、キャップ部材80が単位記録ヘッド40のノズル面40Aから6mmの位置まで下降すると共に、ワイピング部材88のワイパー92の先端(上端)がノズル面40Aよりも1.5mm高い位置(以下、当接量1.5mmという)まで上昇する。
この結果、ワイピング部材88の保持部材90がキャップ部材80を跨いで幅方向に移動可能になる。また、ワイピング部材88のワイパー92が記録ヘッド40のノズル面40Aと上下方向(図17、矢印Z方向)においてオーバーラップする状態となる(図17(B)参照)。
この状態で、図16に示す移動機構312の駆動モータ316を駆動することによって、駆動ギア326に噛合されたラック322を介してスライダ314上を共通基板310が幅方向に移動する。したがって、共通基板310に取り付けられたワイピング部材88が幅方向に移動し、先端がノズル面40Aよりも高い位置とされたワイピング部材88のワイパー92が単位記録ヘッド40のノズル面40Aを摺接しながら移動する。この結果、ノズル面40Aに付着した埃や乾燥したインク等を除去する(図17(C)参照)。この際、ワイピング部材88は、下降したキャップ部材80を跨ぐようにして移動することになる。
本実施例では、ワイパー92が当接量1.5mmを維持したままノズル面40Aを摺接するため、ノズル面40Aに付着した汚れを確実に除去する。
さらに、ワイピング部材88がノズル面40Aの下部から脱け出して、ワイピング部材88及びガイド部材94の幅方向への移動を完了する(図17(D)参照)。続いて、移動機構312の駆動モータ318の駆動によって共通基板310、すなわちワイピング部材88を下降させ、ホームポジションの高さまで移動させる(図17(E)参照)。
続いて、移動機構312の駆動モータ318の駆動によって共通基板310、すなわち、ワイピング部材88を一緒に幅方向反対側に移動させ、ホームポジションに復帰させる(図17(F)参照)。さらに、昇降機構302の駆動モータ304を駆動してキャップ部材80を上昇させて記録ヘッド40のノズル面40Aと近接したホームポジションに復帰させることによってワイピング動作を完了する(図17(G)参照)。
続いて、キャッピング動作について説明する。
キャッピング動作は、非印字状態が長時間継続する場合、あるいは電源OFF時等に行なうものである。具体的には、図16に示す昇降機構302の駆動モータ304を駆動することによって共通基板300を上昇させ、共通基板300に取りつけられたキャップ部材80のゴム部84を記録ヘッド40のノズル面40Aに圧接させる(図20(A)→(B)参照)。この結果、ノズル面40(ノズル58)の気密性が確保され、インクの増粘、乾燥が防止されると共に、ゴミの付着を防止する。
さらに、本実施例の記録ヘッド44は、図10に示すように、短尺の単位記録ヘッド40を複数配列した記録ヘッドアレイ42A、42Bをそれぞれ共通基板46A、46Bに取り付けることによって構成しているため、大量に生産される安価なデバイス(記録ヘッド)と共通化が可能となり、低価格で全幅印字可能な記録ヘッド40を構成できる。
また、記録ヘッドアレイ42A、42Bをそれぞれ共通基板46A、46Bに取り付けることにより各記録ヘッドアレイ42A、42Bの構成が簡略化し、製作も高精度調整もより簡易になる。さらに、メンテナンス部(キャップ部材80、ワイピング部材88)の構成も短尺の記録ヘッドで使用されているものと共通化できるというメリットがある。さらにまた、幅方向における単位記録ヘッド間の間隙(空間)を利用して、ノズル面40Aと用紙間の距離を一定にする手段(本実施例のスターホイール70等)を配置可能になる、あるいはキャップ部材80等の配置の設計自由度を増大するという利点がある。
さらに、本実施例では、単位記録ヘッド40に対応してキャップ部材80を設けたが、複数の単位記録ヘッド40に対して1つのキャップ部材80を対応させても良い。