[実施形態]
図1には、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置が示されている。
(インクジェット記録装置の全体構成)
先ず、インクジェット記録装置の全体構成について簡単に説明する。
インクジェット記録装置10は、図1に示すように、用紙を送り出す用紙供給部12と、用紙の姿勢を制御するレジ調整部14と、インク滴を吐出して用紙に画像形成(印字)する記録ヘッド部16と、記録ヘッド部16のメンテナンスを行なうメンテナンス部18とを備える記録部20と、記録部20で印字された用紙を排出する排出部22とから基本的に構成される。
用紙供給部12は、用紙が積層されてストックされているストッカ24と、ストッカ24から1枚ずつ枚葉してレジ調整部14に搬送する搬送装置26とから構成されている。
レジ調整部14は、ループ形成部28と用紙の姿勢を制御する搬送リブ30が備えられており、この部分を通過することによって用紙のコシを利用してスキューが矯正されると共に搬送タイミングが制御されて記録部20に進入する構成である。
記録部20については、記録ヘッド部16とメンテナンス部18の間を用紙が搬送される用紙搬送路が構成されており、用紙搬送路を連続的に(停止することなく)搬送される用紙に対して、記録ヘッド部16からインク滴が吐出され当該用紙に画像が形成される構成である。記録ヘッド部16とメンテナンス部18は、それぞれユニット化されており、記録ヘッド部16がメンテナンス部18と用紙搬送路面を挟んで分離可能に構成されている。したがって、用紙ジャムの場合に、容易にジャムした用紙を取り出すことができる。排出部22は、記録部20で画像が形成された用紙を排紙ベルト31を介してトレイ32に収納するものである。
ここで、記録部20について説明する。
図2に示すように、記録部20は、用紙を搬送する搬送ロール100と、搬送ロール100を駆動するモータ106と、複数の単位記録ヘッド40(後述する)で構成されたインク滴を吐出して用紙に印字する記録ヘッド部16と、メンテナンス部18を構成し、単位記録ヘッド40のノズル面40Aをキャッピング等するキャップ部材80及びノズル面40Aの清掃を行なうワイピング部材88と、とから基本的に構成される。
搬送ロール100は、SUS材の10φ芯金に、ゴム硬度65Hs、厚さ2mmのEPDM材を巻きつけた構造をしている。搬送ロール100を駆動する駆動機構は、単一のモータ106の駆動軸108からアイドラロール110を介して全ての搬送ロール100に平ベルト104が巻きかけられたものである。隣接する搬送ロール100間には、アイドラロール114が配設されており、各搬送ロール100(大径部100B)に対する平ベルト104の巻きつけ角度を稼いでいる。また、搬送ロール100は、図14に示すように、搬送される用紙が当接される大径部100Bにおいて、印字領域外の非印字領域に平ベルト104が巻きかけられている。
ここでモータ106を単一とするのは、駆動源が複数存在すると、各モータの駆動速度・変動特性を厳密に均一にするのが困難であり、結果的に用紙速度に各種速度変動成分が重畳し、各モータの速度変動が十分小さくても各速度変動の重畳によって用紙の速度変動が問題になるためである。すなわち、単一の駆動源(モータ106)で複数の搬送ロール100を駆動することによって、用紙の搬送速度を均一にして高画質な印字を達成するものである。
また、平ベルト104は、搬送ロール100に対して歯の噛合いではなく(摩擦力で)駆動伝達するので、特に歯毎の周期的な速度変動などがなく好適である。本実施例の平ベルト104は、ポリエステル繊維を織った基材の表面(片面)にポリウレタンを薄膜コートした厚さ0.4mmのものであり、機械的強度と高摩擦性を両立させている。
このように、記録部20が構成されることにより、本実施例ではノズル面−用紙間隔が1.5mmに設計され、その間を水平方向に用紙が搬送されるものである。また、印字対象となる最大記録領域(最大用紙幅PW)は、A3短手(A4長手)とされている。また、記録部20のプロセス速度は240mm/sであり、印字解像度=800×800dpi、記録速度が毎分60枚(A4LEF(Long Edge Feed)の場合)とされている。
一方、用紙搬送路面を挟んで搬送ロール100と対向する位置には、スターホイール70が設けられている。インクジェット記録装置10(図1参照)では用紙幅にわたって印字が可能であり、インクのかすれや転写を防ぐため、点接触のスターホイール70で用紙の印字部分を押圧して搬送ロール100との間で用紙を挟持している。このスターホイール70は、SUS材で12φ、厚さ0.5mmの薄い円盤状を成しており、突起数は20となっている。
これらの搬送ロール100とスターホイール70とで用紙を挟持し、記録ヘッド部16へ用紙を搬送する。記録ヘッド部16の直下には、搬送される用紙を記録ヘッド部16と正しい間隔を保って保持するためのガイド部材94が、用紙搬送路面を挟んで用紙の非印字面側に記録ヘッド部16と対向する位置に設けられている。搬送された用紙は、記録ヘッド部16とガイド部材94の間をさらに搬送されながら、記録ヘッド部16からインク滴が吐出されて、用紙に画像が形成される。
一方、用紙が記録ヘッド部16とメンテナンス部18の間を通過した後、記録ヘッド部16の単位記録ヘッド40は、キャップ部材80に向けてダミージェットを噴射する。次いでワイピング部材88がノズル面40Aを清掃し、ノズル面40Aに残ったインクを拭取り、ノズル面40Aを清浄に保つようにする(後述する)。
ここで、非印字状態が長時間継続する場合、あるいは電源OFF時等に、ノズル面40Aが長時間大気に晒されるとインクの溶媒あるいは分散媒が蒸発し、残留成分がインクノズルを塞ぎインクの吐出不良を引き起こす事態を防ぐため、キャップ部材80によるキャップ動作を行なう(後述する)。具体的には、キャップ部材80が上昇して記録ヘッドのインク吐出面に圧接する。この結果、ノズル面40Aの気密性が確保され、インクの増粘、乾燥が防止される構成である。
(記録ヘッド部の構成)
次に、記録ヘッド部16について、図3〜図8を参照して詳細に説明する。図3は、記録ヘッド部16を上側から見た模式図(図9との対応をとりやすくするためにあえて上方から見た平面図とした)である。
記録ヘッド部16は、図3に示すように、用紙搬送方向(矢印X方向。以下、搬送方向という場合がある)に対して直交する用紙幅方向(矢印Y方向。以下、幅方向という場合がある)に対して一定の間隔で配置された単位記録ヘッド40が6個配置された記録ヘッドアレイ42が用紙搬送方向に一定間隔で8個配設されることによって基本的に構成されている。
単位記録ヘッド40は、図4に示すように、ノズル面40Aにインク吐出するノズル58が一直線上に形成されたものであり、周知のサーマルインクジェット方式によりインク滴が吐出されるものである。本実施例では、単位記録ヘッド40はノズル配列密度が800dpiで800ノズルであり、噴射周波数が7.56kHzで、顔料インクを使用するものである。
このような単位記録ヘッド40が、図5に示すように、ノズル配列方向が幅方向と一致するように共通基板46A、46B(後述する)に一直線上に6個の単位記録ヘッド40が取り付けられることによって記録ヘッドアレイ42A、42Bが形成されている。
記録ヘッドアレイ42A、42Bは、それぞれ6個の単位記録ヘッド40が一定間隔をおいて配設されたものであり、記録ヘッドアレイ42A、42Bでは単位記録ヘッド40の配置を幅方向で相互にずらして千鳥状に配置することによって、単位記録ヘッド40のノズル列の一部が記録ヘッドアレイ42A、42B間において重複するオーバーラップ領域OLを有するように配置されている。
このようにオーバーラップ領域OLを設けることによって、印字領域内で印字ができない領域が発生することを防止している。すなわち、記録ヘッドアレイ42A、42Bの単位記録ヘッド40のノズル58からインク滴を吐出することによって、用紙に対する一色分の印字を行なうものである。本実施例では、この一対の記録ヘッドアレイ42A、42Bの組み合わせを記録ヘッド群44と呼ぶものとする。
本実施例の記録ヘッド群44では、印字領域が12インチとされており、最大用紙幅PWのA3短手幅(A4長手幅)の297mmよりも広く設定されている。
図3に示すように、記録ヘッド部16では、搬送方向上流側からイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に記録ヘッド群44が配置され、順番に印字されてフルカラー印字可能な構成となっており、必要な場合には該当する記録ヘッド群44の参照番号にY、M、C、Kの符号を付して(44Y、44M、44C、44Kとして)区別する。以下、他の部材についても同様である。
また、記録ヘッド群44Y〜44Kの構成は同一なので、記録ヘッド群44Yの構成要素についてのみ参照符号を付し、他の記録ヘッド群44M〜44Kの構成要素に対する参照符号を付するのを省略している。
記録ヘッド群44を構成する記録ヘッドアレイ42A、42Bは、用紙幅方向に延在する共通基板46A、46Bにそれぞれ6個の単位記録ヘッド40が所定間隔で取り付けられている。すなわち、単位記録ヘッド40は、共通基板46A、46Bに取り付けられることによりこのノズル列が幅方向に並ぶことになる。
また、記録ヘッドアレイ42A、42Bでは、各単位記録ヘッド40の幅方向隣りにスターホイール70が配置されている。スターホイール70は、図7に示すように、共通基板46A、46Bに嵌合されている支持部材71の先端に板バネ73を介して弾性的に軸支されている。
ここで、スターホイール70は、図8(A)に示すように、孔部74が形成された円筒形の樹脂製の保持体76と、保持体76に保持されたステンレス製のホイール78から構成されている。
保持体76は、軸方向中央で縮径してホイール挿入可能とした第1部材76Aと、縮径部分に嵌合して第1部材76Aと共にホイール78を挟持する第2部材76Bとから構成されている。ホイール78は、外周に歯79が一定間隔で多数形成されている。歯79の先端形状は、鈍角で先端がR形状とされている(図8(B)参照)が、用紙上の未乾燥のインクと接触するため接触面積が極力小さくされていれば良く、例えば、鋭角(図8(C)参照)でも良い。
また、ホイール78の厚みは、本実施例では、0.1mmで先端(歯先)の厚みをテーパー加工により0.01〜0.02mm程度に薄くしたものである。また、ホイール78は、SUS631EH材から両面段差エッチングで外形と先端テーパー形状を同時加工して形成したものであり、表面をフッ素樹脂撥水コートしたものである。
一方、図3に示すように、記録ヘッド部16では、搬送方向に沿って記録ヘッドアレイ42A、42B間、最上流側の記録ヘッドアレイ42YAよりも上流側、および最下流側の記録ヘッドアレイ42KBよりも下流側にスターホイール群72が配設されている。
このスターホイール群72は、幅方向に連続して配置された3本のシャフト74A〜74Cに対し所定間隔をおいてそれぞれ6個のスターホイール70が軸支されているものである。この各シャフト74A〜74Cは、図7に示すように、両端でスプリング75によって後述する搬送ロール100側に付勢されている。なお、スターホイール70の搬送ロール100側への変位量は、搬送ロール100の表面よりわずかに食いこむ位置で停止するように、規制部材77が配設されている。
ここで、スターホイール70同士の幅方向間隔は、最も広い箇所で25.4mmとした。用紙の局所的な浮き・変形を押さえるために50mm以下が望ましいからである。
また、スターホイール70がスプリング75によって搬送ロール100に押圧される力は、1個当たり10gfとされている。これは、押圧力が5gfよりも小さいと用紙を搬送ロール100に十分押さえることができず、30gfよりも大きいとスターホイール70が用紙を傷つけるためである。
(メンテナンス部の構成)
図1に示すように、記録ヘッド部16に対して対向配置されるメンテナンス部18の構成を図9〜図11を参照して説明する。図9は、搬送位置からメンテナンス部18を平面視にしたものであり、図3及び図9に示すように、記録ヘッド部16の各単位記録ヘッド40と対向する位置にメンテナンス装置81が配置されている。
メンテナンス装置81は、キャップ部材80とワイピング部材88とで構成されており、キャップ部材80は、図10に示すように、矩形状の深さ8mmの凹部82Aが形成されPBT樹脂で成形された受け部82と、受け部82の上部にシリコーンゴム(硬度40Hs)から形成されたゴム部84と、凹部82Aの底面全体に配設されたポリプロピレンとポリエチレンとからなるインク吸収体86で構成されている。
したがって、後述するダミージェットの際、各単位記録ヘッド40(図5参照)のノズル58からキャップ部材80の開口部84Aを介して凹部82Aの内部にインク滴が吐出され、インク吸収体86に吸収される構成である。
また、キャップ部材80は、図6及び図11に示すように、記録ヘッドアレイ42を構成する各単位記録ヘッド40にそれぞれ対応した6個のキャップ部材80が、共通基板300に取りつけられてユニット化され、昇降機構302によって一体的に単位記録ヘッド40のノズル面40Aに対して接近・離間可能に構成されている。
昇降機構302は、駆動モータ304と、駆動モータ304の駆動軸306に取りつけられ、共通基板300の下面に当接される偏心カム308とから構成されている。したがって、駆動モータ304が駆動することにより偏心カム308が回転し、偏心カム308が当接された共通基板300を介してキャップ部材80が、単位記録ヘッド40のノズル面40Aに対して接近・離間する構成である(図12(A)、(B)参照)。
ところで、キャップ部材80の下側には、ノズル面40Aに圧接する際に圧接力を調整するスプリング87が配設されている(図13(A)〜(G)参照)。したがって、後述するキャッピング動作時には、キャップ部材80が上昇してゴム部84(図10参照)がノズル面40Aに対して圧接し、ノズル58を含むノズル面40Aを密閉して、インクの乾燥を抑制すると共にゴミ、埃等の付着を防止する。また、後述するワイピング動作時にはキャップ部材80が下降してワイピング部材88を幅方向に移動可能とするものである。
さらに、図6に示すように、各キャップ部材80の幅方向において隣接する位置には、各単位記録ヘッド40のノズル面40Aをクリーニングするためのワイピング部材88が配設されている。
ワイピング部材88は、図10に示すように、幅方向視において門型フレームのSUS製の保持部材90と、保持部材90の上部に配設され搬送方向に延在するワイパー92とから構成されている。
ワイパー92は熱可塑性ポリマー樹脂(硬度65Hs)から形成され、搬送方向長さL1が8mm、幅方向厚さW1が0.8mmであり、保持部材90からの高さ(自由長)が6mmである。なお、ワイピング部材88はキャップ部材80の幅方向端部から1mmの位置に配置している。
また、ワイピング部材88は、図6及び図11に示すように、記録ヘッドアレイ42を構成する各単位記録ヘッド40にそれぞれ対応した全ワイピング部材88が、共通基板310に取りつけられてユニット化され、移動機構312によって一体的に単位記録ヘッド40のノズル面40Aに対して接近・離間および幅方向に移動可能に構成されている。
移動機構312は、共通基板310を幅方向に移動可能に支持する支持体としてのスライダ314と、スライダ314上で共通基板310を幅方向に移動させる駆動モータ316と、スライダ314を昇降させる駆動モータ318とから基本的に構成される。
スライダ314は、搬送方向両端に設けられ幅方向に延在するガイド320を備えており、ガイド320に案内された共通基板310が幅方向に移動可能とされている。また、共通基板310の一側面には、ラック322が形成された凸部324が形成されており、スライダ314に取りつけられた駆動モータ316の駆動ギア326と噛合されている。したがって、駆動モータ316の駆動によって共通基板310がスライダ314上を幅方向に移動可能とされている。
一方、スライダ314の下側には、上下方向に延在するラック330が設けられた凸部332が形成されており、駆動モータ318の駆動ギア334が噛合されている。したがって、駆動モータ318の駆動によってスライダ314が昇降可能とされている。すなわち、スライダ314に支持された共通基板310、ワイピング部材88が一体的に昇降する構成とされている。
このように、ワイピング部材88は移動機構312によってノズル面40Aに対して接近離間(昇降)可能に構成されると共に、幅方向に移動可能とされている。すなわち、ワイピング部材88(ワイパー92)は、ホームポジションでは搬送されてくる用紙と干渉しないようにキャップ部材80よりも低い位置に位置している(図12(A)、(B)参照)が、ワイプ時には上昇して、ホームポジションから下降したキャップ部材80を跨いで搬送方向に移動してワイピングを行なう(図12(C)参照)構成とされている。
一方、記録部20(図1参照)において、用紙搬送時にキャップ部材80の凹部82Aに用紙が突入しないように、各キャップ部材80の幅方向両側にガイド部材94が配設されている。
ガイド部材94はSUS材から形成され、門型形状を成し、搬送方向に延在する水平部94Aと、水平部94Aの両端部から垂直下方に延在する2本の垂直部94Bと、水平部94Aの搬送方向両端部から搬送方向斜め下方に延在するガイド部94C、94Dとから構成されており、垂直部94Bはケーシング102(図9参照)に設けられた図示しない台座に固定されている。
なお、このガイド部材94の水平部94Aは、図7に示すように、単位記録ヘッド40間に配設されたスターホイール70と対向配置されている。したがって、搬送される用紙が、搬送方向における印字位置でスターホイール70によってガイド部材94(水平部94A)に当接され、インク付着などによって変形する用紙をノズル面40Aに対して一定の距離に保つ構成である。
続いて、メンテナンス装置81を構成する各部材の本実施例におけるホームポジション(画像印字中で単位記録ヘッド40に対するメンテナンスを行っていない状態における位置)について説明する。
図10及び図14に示すように、キャップ部材80は、単位記録ヘッド40のノズル面40Aの下方に配置され、平面視においてゴム部84が単位記録ヘッド40のノズル面40Aの全体を覆うように、また、ゴム部84の開口部84A内に単位記録ヘッド40の全ノズル58(図4参照)が位置するように配置されている。
ワイピング部材88は、ワイパー92の先端が単位記録ヘッド40のノズル面40Aの下方に配置され、平面視においてワイパー92の長手(搬送)方向長さが単位記録ヘッド40のノズル面40Aの搬送方向幅をカバーできる位置で、ワイパー92が単位記録ヘッド40の幅方向端部から1mm離れた位置(単位記録ヘッド40の短手幅方向に対し、清掃できる位置)に配置されている。
ガイド部材94は、平面視においてガイド部材94の水平部94Aの搬送方向長さが単位記録ヘッド40のノズル面40Aをカバーできる位置で、用紙が接触する水平部94Aの最上面が単位記録ヘッド40の幅方向端部から2mm離れた位置に配設されている。
続いて、メンテナンス装置81と単位記録ヘッド40の間に用紙を搬送する構成について説明する。
図7及び図9に示すように、用紙に駆動力を伝達して搬送する搬送ロール100が、メンテナンス部18において搬送方向両端と搬送方向で隣接するキャップ部材80の間にそれぞれ配設されている。
搬送ロール100は、用紙搬送路面を挟んで用紙の非印字面側にスターホイール群72の配設位置に対応して配置されており、搬送ロール100側にスプリング75によって弾性的に押圧されているスターホイール群72のスターホイール70によって搬送ロール100に用紙が当接され、搬送ロール100から駆動力が伝達されるように構成されている。
搬送ロール100は、ケーシング102に軸支される小径部100Aと、小径部100Aよりも径が大きくスターホイール群72が当接する大径部100Bとから構成されている。搬送ロール100は、大径部100Bを介して用紙に駆動力を伝達するものであり、摩擦係数が大きくかつ磨耗しにくいものが良い。
本実施例では、搬送ロール100は直径10mmの金属(SUS303)ロール表面にアルミナを主成分とするセラミック微粉末をスプレーコートして燒結したものであり、上記条件を満たしている。この加工は、搬送ロール100の大径部100Bにおいて用紙が当接する印字領域のみならず、平ベルト104が張架される非印字領域も同様の加工が施される。
なお、搬送ロール100の表面にスターホイール70が接触して刃先が変形することを防止するために、搬送ロール100のスターホイール群72に対向する部分には、幅2mm、深さ2mmの溝101を設けている。また、この溝101内へのスターホイール群72の進入量が増加することによって、用紙搬送抵抗が増加することを防止するために、スターホイール群72の進入量を規制する規制部材77が設けられている。
次に、このインクジェット記録装置の印字動作、メンテナンス動作(ダミージェット、ワイピング、キャッピング)について順次説明する。
先ず、印字動作について説明する。
印字動作を行なう場合には、図1に示すように、用紙供給部12から用紙が供給され、レジ調整部14で用紙の姿勢やタイミングが制御されて記録部20に搬送される。一方、図2に示すように、記録部20ではモータ106が駆動し、平ベルト104を介して全搬送ロール100に駆動力が伝達される。
したがって、記録部20に到達した用紙は、最も搬送方向上流側にある搬送ロール100とスターホイール70の間に挿入される。この際、図7に示すスプリング75で付勢されたスターホイール70が搬送ロール100に用紙を押し付けるため、搬送ロール100から用紙に搬送力が確実に伝達され、一定速度で単位記録ヘッド40の下部に挿入される。以下、記録ヘッドアレイ42A、42B間に配設された搬送ロール100から順次、駆動力が伝達されて搬送されていく。
このとき、図2に示すように、全ての搬送ロール100が単一のモータ106で駆動されているため、複数の駆動源で駆動される場合のように複数の駆動源の速度変動が重畳して用紙搬送速度の変動に影響を与えることが回避され、用紙がより一定速度で搬送される。
また、画像上で視認しやすい画像欠陥の原因である周期的な速度変動は歯の加工精度等によって生ずることが多いが、平ベルト104を介して(歯の噛合等を介さずに)駆動力が伝達されているため,上記画像欠陥の発生も防止される。
さらに、搬送ロール100の用紙が当接される大径部100Bの非印字領域に平ベルト104が巻き掛けられているため(図14参照)、搬送ロール100の加工精度や保持方法(ベアリング等)に起因する芯振れがあっても周期的な速度変動は発生せず、平ベルト104の移動速度(一定速度)で用紙が搬送される。
この平ベルト104の巻き付け角を稼ぐためにアイドラロール114を配置する構成では、厳密に言えば、アイドラロール114の加工精度や保持方法に起因する周期的速度変動が発生するが、アイドラロール114は比較的小型であり単一材料でよいので安価でかつ高精度に加工することは容易である。
一方、搬送ロール100はサイズが大きく、構成も例えば芯金と被覆材という複数の材料構成となるので、高精度の加工が困難である。あるいは非常に高価な部品になってしまう。平ベルト104による表面摩擦駆動方式は、搬送ロール100の半径や回転中心が多少ばらついていてもそこに起因する周期的変動は発生しないという効果がある。
さらに、図14に示すように、スターホイール群72を幅方向で三つに分割し、それぞれのシャフト74A〜74Cの長さを短くしたため、シャフト74A〜74Cの撓みを防止できて、スプリング75(図7参照)で付勢された複数のスターホイール70が均等に用紙を抑える。したがって、用紙に駆動力を均等に伝達することができる。
特に、スターホイール70によって用紙を搬送ロール100に押圧しているため、用紙に駆動力が確実に伝達され、一定速度で搬送することができる。また、静電吸着方式を採用していないため、用紙の厚さや材質などに拘らず安定して搬送することができる。
さらに、幅方向において単位記録ヘッド40間にスターホイール70を配設し、これと対向する位置にガイド部材94を配設しているため、搬送方向における印字(記録ヘッドアレイ42)位置においても、用紙の浮きあがり等を防止して、用紙の平面性(ノズル面40Aに対する一定距離)を確保することができる。
逆にいえば、このようにスターホイール70を配置することによって、単位記録ヘッド40に対向する位置にキャップ部材80等のメンテナンス装置81(図7参照)を配置しても、用紙の平面性(ノズル面40Aに対する一定距離)を確保することができる。
一方、図1及び図7に示すように、記録ヘッド部16に対してインクジェット記録装置10の制御部から印字信号が各単位記録ヘッド40に入力されると、印字信号に応じて該当するノズルの発熱素子が発熱し、ノズル面40Aに対して一定距離とされつつ搬送される用紙に対して、当該ノズルからインク滴が吐出されていく。
したがって、記録ヘッドアレイ42Aで印字が行なわれ、続いて記録ヘッドアレイ42Bで印字が行なわれることにより、用紙の当該部分における一色分の印字が終了する。したがって、記録部20で用紙が搬送されるにつれて、記録ヘッド群44Y、44M、44C、44Kの順で印字され、フルカラーの印字が行われる(図3参照)。
このように、平面性(ノズル面に対する一定距離)が確保され、一定速度で搬送される用紙に対して印字を行なうことにより、高画質な画像を形成することができる。特に、記録部20の搬送中、スターホイール70によって常時平面性が確保されるため、各種厚みの用紙に対して印字中に生ずる用紙の変形を良好に矯正でき、ノズル面40Aに対する距離を一定に維持して高画質な印字を達成できる。
特に、記録部20において、搬送ロール100が記録ヘッドアレイ42A、42B間に配設され、また最上流の記録ヘッドアレイ42YAよりも上流側および最下流の記録ヘッドアレイ42KBよりも下流側に配設されていると共に、複数の搬送ロ−ル100が単一の駆動源で駆動されるため、用紙が一定速度で確実に搬送され、高画質な印字を達成することができる。
次に、ダミージェットの動作について説明する。
ダミージェットは、非印字時、あるいは複数の用紙を連続印字中に所定枚数の印字が終了する度に、後続の用紙先端が到達する前に行なう。すなわち、図3に示す記録ヘッド群44Y〜44Kを構成する全単位記録ヘッド40のうち、任意のノズルから図6に示すキャップ部材80に向かってインク滴の吐出(いわゆるダミージェット)が行なわれる。
ダミージェットを行なうのは、全単位記録ヘッド40の全ノズル58(図5参照)でも良いし、選択された単位記録ヘッド40、あるいは記録ヘッドアレイ42の全ノズル58でも良いし、さらには所定時間インク滴の吐出を行なっていないノズル58のみでも良い。
例えば、複数枚数の用紙連続印字時のダミージェット時におけるノズル面40Aとキャップ部材80の上面との距離を3mmに設定し、30頁(A4)毎に先行する用紙通過後で後続の用紙先端到達前のタイミングで全ノズルから500ドロップ吐出する。この際、図10に示すように、キャップ部材80の凹部82Aの底面にインク吸収体86が配設されているため、吐出されたインクが凹部82Aからあふれたり飛び散ったりすることはない。
また、単位記録ヘッド40の全ノズルからインク滴の吐出(ダミージェット)を行なうことによって、インク(特に水性インク、溶剤インク)の乾燥による吐出性能の変化を初期化することができる。さらに、インクがほとんど乾燥しない油性インク、ソリッドインクであっても、印字によってヘッド内部のインク流路等に付着した気泡の排除、あるいはノズル面に付着したゴミの除去を行なうことができ、ノズルのインク滴の吐出性能を初期化することができる。
本実施例のように、連続して印字する(搬送されてくる)複数の用紙印字中に、記録ヘッド群44(図3参照)やキャップ部材80を移動させることなくダミージェットを行なうことができるため、印字速度(生産性)の向上が達成される。また、ダミージェットによって記録ヘッド群44の印字性能が一定に維持され、高画質な印字が可能になる。
次にワイピング動作について説明する。
ワイピング動作は、印字開始前等に行なう。メンテナンス部18(図1参照)のワイピング部材88によって単位記録ヘッド40(ノズル面40A)のワイピングが行なわれる。図11を参照して具体的な動作を図13に示す模式図に基づいて説明する。
まず、ワイピング部材88の動作では、移動機構312の駆動モータ318が駆動し、スライダ314およびスライダ314に支持された共通基板310が駆動ギア334及びラック330を介して上昇すると共に、昇降機構302の駆動モータ304が駆動して、偏心カム308の回転によって共通基板300が下降する。
すなわち、図13(A)、(B)に示すように、共通基板310に取付けられた6個のワイピング部材88がホームポジションから上昇すると共に、共通基板300に取りつけられた6個のキャップ部材80がホームポジションから所定位置へ下降(単位記録ヘッド40から離間する方向に移動)する。
本実施例では、キャップ部材80が単位記録ヘッド40のノズル面40Aから6mmの位置まで下降すると共に、ワイピング部材88のワイパー92の先端(上端)がノズル面40Aよりも1.5mm高い位置(以下、当接量1.5mmという)まで上昇し、ワイピング部材88の保持部材90がキャップ部材80を跨いで幅方向に移動可能となる。
また、ワイピング部材88のワイパー92が、図13(B)に示すように、単位記録ヘッド40のノズル面40Aと上下方向(矢印Z方向)においてオーバーラップする状態となる。
この状態で、移動機構312の駆動モータ316を駆動することによって、駆動ギア326に噛合されたラック322を介してスライダ314上を共通基板310が幅方向に移動する。したがって、共通基板310に取り付けられたワイピング部材88が幅方向(ワイピング方向)に移動し、先端がノズル面40Aよりも高い位置とされたワイピング部材88のワイパー92が単位記録ヘッド40のノズル面40Aを摺接しながら、下降したキャップ部材80を跨ぐようにして移動し、ワイピングを開始する。
これにより、ノズル面40Aに付着した埃や乾燥したインク等が除去される(図13(C)参照)。本実施例では、ワイパー92が当接量1.5mmを維持したままノズル面40Aを摺接するため、ノズル面40Aに付着した汚れを確実に除去する。
さらに、図13(D)に示すように、ワイピング部材88がノズル面40Aの下部から脱け出して、ワイピング部材88が幅方向への移動を終了し、ワイピング部材88が移動停止する。続いて、移動機構312の駆動モータ318の駆動によって共通基板310、すなわち、図13(E)に示すように、ワイピング部材88を下降させ、ホームポジションの高さまで移動させる。
そして、図13(F)に示すように、移動機構312の駆動モータ318の駆動によって共通基板310を介して、ワイピング部材88を幅方向反対側に移動させ、ホームポジションへ復帰させる。
さらに、図13(G)に示すように、昇降機構302の駆動モータ304を駆動してキャップ部材80を上昇させ、単位記録ヘッド40のノズル面40Aと近接したホームポジションに復帰させることによってワイピングを完了する。
続いて、キャッピング動作について説明する。
キャッピング動作は、非印字状態が長時間継続する場合、あるいは電源OFF時等に行なうものである。具体的には、図11に示す昇降機構302の駆動モータ304を駆動することによって共通基板300を上昇させ、共通基板300に取りつけられたキャップ部材80のゴム部84(図10参照)を単位記録ヘッド40のノズル面40Aに圧接させる(図12(A)、(B)参照)。この結果、ノズル面40Aの気密性が確保され、インクの増粘、乾燥が防止されると共に、ゴミの付着を防止する。
さらに、図3に示すように、本実施例の記録ヘッド群44は、短尺の単位記録ヘッド40を複数配列した記録ヘッドアレイ42A、42Bをそれぞれ共通基板46A、46Bに取り付けることによって構成しているため、大量に生産される安価なデバイス(記録ヘッド)と共通化が可能となり、低価格で全幅印字可能な単位記録ヘッド40を構成できる。
また、記録ヘッドアレイ42A、42Bをそれぞれ共通基板46A、46Bに取り付けることにより各記録ヘッドアレイ42A、42Bの構成が簡略化し、製作も高精度調整もより簡易になる。
さらに、図6に示すように、メンテナンス部(キャップ部材80、ワイピング部材88)の構成も短尺の単位記録ヘッド40で使用されているものと共通化できるというメリットがある。さらにまた、幅方向における単位記録ヘッド40間の間隙(空間)を利用して、ノズル面40Aと用紙間の距離を一定にする手段(本実施例のスターホイール70等)を配置可能になる、あるいはキャップ部材80等の配置の設計自由度を増大するという利点がある。
さらに、本実施例では、単位記録ヘッド40に対応してキャップ部材80を設けたが、複数の単位記録ヘッド40に対して1つのキャップ部材80を対応させても良い。
次に、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の要旨について説明する。
本実施形態では、図2に示すように、記録ヘッドアレイ42MBと記録ヘッドアレイ42CAの間の、用紙の非印字面側に乾燥装置120を配設しており、この乾燥装置120は、用紙の搬送方向と直交する印字領域幅(図14参照)よりも幅広となるように設定している。
乾燥装置120を、記録ヘッドアレイ42MBと記録ヘッドアレイ42CAの間に配設することで、記録ヘッドアレイ42MBによる印字が行なわれた後、記録ヘッドアレイ42CAによって次の印字が行なわれる前に、用紙を乾燥させることができるため、インクの滲み等がなく、良好な画像が得られる。
また、用紙の非印字面側に乾燥装置120を設けることで、用紙を乾燥装置120に接触させながら搬送させることができるため、搬送される用紙を効率良く乾燥させることができる。
さらに、記録ヘッドアレイ42間(ここでは、記録ヘッドアレイ42MBと記録ヘッドアレイ42CAの間)の用紙の非印字面に乾燥装置120を配置することで、単位記録ヘッド40のノズル面40Aと乾燥装置120とが対面しないため、乾燥装置120によるノズル面40Aの乾燥を防止することができる。
また、乾燥装置120を、用紙の搬送方向と直交する印字領域幅よりも幅広に設定することで、搬送時の用紙の搬送方向に対するズレも考慮し、用紙に形成された画像を確実に乾燥させることができる。
ここで、最上流に位置する記録ヘッドアレイ42YAの上流側、及び最下流に位置する記録ヘッドアレイ42KBの下流側には、記録ヘッドアレイ42が配設されないため、記録ヘッドアレイ42YAの上流側の及び記録ヘッドアレイ42KBの下流側では、記録ヘッドアレイ42間という要件を満足させることはできない。このため、記録ヘッドアレイ42YAの上流側の及び記録ヘッドアレイ42KBの下流側に乾燥装置120を設けないことになる。しかし、これは、記録ヘッドアレイ42YAの上流側では、画像が形成されておらず、また、記録ヘッドアレイ42KBの下流側では、画像が形成されないため、どちらも乾燥装置120は不要であると考える。
なお、ここでは、記録ヘッドアレイ42MBと記録ヘッドアレイ42CAに乾燥装置120を配設したが、記録ヘッドアレイ42間に乾燥装置120を配設すれば良いため、この位置に限るものではない。また、乾燥装置120は一つに限るものではなく、記録ヘッドアレイ42間全てに乾燥装置120を配設しても良い。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る記録装置について説明する。なお、本実施形態と同様の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図15に示すように、一つの色に対して二つの記録ヘッドアレイ42A、42Bを有する記録ヘッド群44間の用紙の非印字面側に、用紙を乾燥させる乾燥手段(後述する)を設け、用紙の搬送方向と直交する印字領域幅(図14参照)よりも幅広に設定している。
ここで、記録ヘッド群44にはメンテナンス装置群122が対向しており、この記録ヘッド群44とメンテナンス装置群122とで記録単位124を構成している。つまり、記録単位124では一色の画像が形成される。
メンテナンス装置群122間には、用紙搬送単位とされる搬送ロール126を配設しており、各メンテナンス装置81間に配設される搬送ロール100と区別している。この搬送ロール126に乾燥手段を設ける。
具体的には、搬送ロール126の軸芯部に、棒状のヒーターランプ128を挿入し、加熱ロール(以下、「加熱ロール126」という)とする。ここで、ヒーターランプ128は300w程度の電力を有し、加熱ロール126の表面温度が100℃程度になるまで加熱できるようにする。
印字中は、各ヒーターランプ128がすべてがOn状態となるようにし、印字後はOffの状態となるようにする。また、図示しないサーモスタットによりヒーターランプ128を温度制御し、印字中は、加熱ロール126の表面温度が約100℃の状態で保持されるようにする。
さらに、図16及び図17に示すように、加熱ロール126の上流側及び下流側に、加熱ロール126との間に隙間を設けた状態で遮熱板130A、130Bを配置する。この遮熱板130A、130Bは、厚さ1mmのアルミ材で形成し、加熱ロール126の長手方向全域に渡って覆うように設け、加熱ロール126の両端部を開口とする。
また、遮熱板130A、130Bの上方は、互いに近接する方向へ向かって折り曲げ、遮熱板130Aの上部と遮熱板130Bの上部の間に隙間132を設け、この隙間132から加熱ロール126の一部を露出させる。
ここで、メンテナンス装置81にはガイド部材94が用紙の搬送方向に沿って延出しており、搬送方向における印字位置でスターホイール70をガイド部材94に当接させ、インク付着などによって変形する用紙をノズル面40Aに対して一定の距離に保つようにしている。
このガイド部材94の両端部は、斜め下方へ向かって傾斜しており、遮熱板130の上部は、このガイド部材94の両端部よりも若干高く、また、用紙の搬送路と略同一となるように設定しており、用紙の先端部を加熱ロール126とスターホイール70の間へ案内するようにしている。
本実施形態に係るインクジェット記録装置の作用について説明する。
図15に示すように、記録単位124と記録単位124の間に位置する搬送ロール126に用紙を乾燥させる乾燥手段を設けることで、一つの色の印字が終わり、次の色の画像を形成する前に、用紙を乾燥させることができる。このため、異なる色の滲みを防止し、良好な画像を得ることができる。
また、図16及び図17に示すように、加熱ロール126の上流部及び下流部に遮熱板130A、130Bを配置することで、加熱ロール126周りの空気の温度上昇を防止し、メンテナンス装置81や単位記録ヘッド40へ、熱による影響を及ぼさないようにしている。特に、単位記録ヘッド40のノズル面40Aの乾燥を防止する。
ここで、遮熱板130は搬送ロール126との間に隙間を設け、加熱ロール126の両端側を開口とすることで、加熱ロール126自体の熱により上昇する遮熱板130内の空気を放熱できるようにしている。
また、用紙を搬送する搬送手段を加熱ロール126とすることで、用紙を乾燥させるために別途乾燥装置等を設ける場合と比較して、乾燥装置を配設するためのスペースの確保が不要であり、乾燥装置を設けることで記録装置の構成が複雑になってしまうという恐れはない。
なお、本形態では、図15に示すように、記録単位124が、一つの色に対して記録ヘッドアレイ42A、42Bで構成されたが、これに限るものではなく、一つの色に対して複数の記録ヘッドアレイで構成されるものに対して適用される。また、各記録単位124間に乾燥手段を設けたが、少なくとも記録単位124の下流側であれば良いため、記録部20に対して一つの乾燥手段であっても良い。但し、この場合も、この記録単位124の上流側及び下流側では、画像が形成されないため、最上流及び最下流に位置する記録単位124に関しては、加熱ロール126を設ける必要はない。
[第2実施例]
本発明の第1、2実施形態に係る記録装置について説明する。なお、本実施形態と同様の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図18に示すように、メンテナンス装置群122間に用紙搬送単位として配設された搬送ロール134に、搬送ロール134の上流側と上部を覆うように、断面が逆L字状のプレート136を取り付ける。
図19及び図20に示すように、プレート136は搬送ロール134の上流側に位置する側壁136Bと搬送ロール134の上部に位置する天井壁136Aとで構成し、側壁136Bと天井壁136Aとを直交させている。
天井壁136Aの中央部には、開口部136Cを設け、開口部136Cから搬送ロール134を露出させるようにしている。ここで、天井壁136Aの上面と搬送ロール134の外周面とが略面一となるようにし、搬送ロール134で搬送される用紙は、天井壁136Aに接触した状態で搬送されるようにする。
一方、側壁136Bにはラバーヒーター138を貼着している。このラバーヒーター138は、通電発熱体をシリコーンラバーで被覆したものであり、厚さ0.5mm、幅300mm、高さ方向の長さ10mmのものを使用し、シリコーン材専用の接着剤によって側壁136Bに接着している。
ラバーヒーター138の幅は、搬送される用紙の幅よりも広くなるようにしており、厚さはスペース上の問題からできるだけ薄い方が好ましいが、天井壁136Aの温度を約100℃に保持する必要があるため、ラバーヒーター138の厚さ及び高さ方向の長さは、プレート136の材質、寸法等によっても若干異なってくる。
さらに、搬送ロール134及びプレート136を、上部が開口された矩形状の遮熱板140で覆う。遮熱板140の両端部は開口とし、放熱できるようにしている。
本実施形態に係るインクジェット記録装置の作用について説明する。
図19及び図20に示すように、搬送ロール134の上流側と上部を覆うようにプレート136を取り付け、天井壁136Aの上面と搬送ロール134の外周面とが略面一となるようにして、搬送ロール134を天井壁136Aの開口部136Cから露出させることで、搬送ロール134で搬送される用紙は、天井壁136Aに接触した状態で搬送されることとなる。
このため、図16に示すように、搬送ロール126を加熱ロールにした場合と比較して、図19に示すように、プレート136は搬送される用紙と面で接触することが可能なため、用紙の乾燥能力をさらに向上させることができる。
また、搬送ロール134及びプレート136を、上部が開口された矩形状の遮熱板140で覆うことで、搬送ロール134周りの空気の温度上昇を防止し、単位記録ヘッド40のノズル面40Aが乾燥等しないようにすることができる。
ここで、プレート136を加熱する手段としてラバーヒーター138を用いたが、プレート136を加熱させることができれば良いため、これに限るものではなく、例えば、セラミックヒーターであっても良い。
なお、本発明の記録装置において画像記録の対象となる「記録媒体」には、記録装置がインク滴を吐出する対象物であれば広く含まれる。また、インク滴が記録媒体上に付着されることで得られる記録媒体上のドットのパターンが、本発明の記録装置で得られる「画像」あるいは「記録画像」に広く含まれる。したがって、本発明の記録装置は、記録用紙上への文字や画像の記録に用いられるものに限定されない。
また、記録媒体には、記録用紙やOHPシートなどが含まれるのはもちろんであるが、これら以外にも、たとえば、配線パターン等が形成される基板などが含まれる。また、「画像」には、一般的な画像(文字、絵、写真など)のみならず、上記したような配線パターンや3次元物体、有機薄膜などが含まれる。吐出する液体も着色インクに限定されるわけではない。
例えば、高分子フィルムやガラス上に着色インクを吐出して行うディスプレイ用のカラーフィルターの作製、溶融状態のハンダを基板上に吐出して行う部品実装用のバンプの形成、有機EL溶液を基板上に吐出させて行うELディスプレイパネルの形成、溶融状態のハンダを基板上に吐出して行う電気実装用のバンプの形成など、様々な工業的用途を対象とした液滴噴射装置一般に対して、本発明の記録装置を適用することが可能である。