以下、実施形態を挙げ、本発明の実施の形態について説明する。なお、第2実施形態以降では、既に説明した同様の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
[第1実施形態]
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置について説明する。
記録装置200は、図1に示すように、用紙に対して非接触で直接インクを転移させる記録ヘッド44と、記録ヘッド44のノズル面40Aに対向配置されたメンテナンス装置81と、記録ヘッド44とメンテナンス装置81の間に用紙を搬送する搬送手段202とから基本的に構成される。
記録ヘッド44は、用紙に対して非接触で直接インクを転移させるものであるサーマルインクジェット方式、ピエゾ式インクジェット、連続流型インクジェット、静電吸引型インクジェット等、いずれでもよい。
また、使用するインクも水性インク、油性インク、常温で固形のいわゆるソリッドインク、溶剤インク等いずれも適用可能である。インク中の色材も顔料・染料を問わない。
また、記録ヘッド44は、図2に示すように、用紙Pの最大用紙幅PWに対応する印字領域を有するものであり、記録ヘッド44を走査させることなく用紙の全幅に印字可能なものである。すなわち、記録ヘッド44の下を用紙が1回通過するだけで印字が完了する構成である。
用紙に印字マージンが設定されている場合には、記録ヘッド44の印字領域は、最大用紙幅PWから印字マージンを引いた記録領域に対応した(記録領域以上の)幅となる。
一般的には、用紙が搬送方向に対して所定角度傾斜して搬送される(スキュー)ことが生じるし、縁無し印字の要請等もあるので、記録ヘッド44の印字領域は、記録領域よりも大きく構成することが望ましい。
また、記録ヘッド44は、印字領域にわたってノズルが1列に形成されたモノリシックの長尺ヘッド(ヘッドチップ)から構成してもよいが、短尺ヘッド(ヘッドチップ。以下、単位記録ヘッド)40(図3参照)の組み合わせから構成することが好ましい。単位記録ヘッド(短尺ヘッド)の方が大量に製造でき、また、個々の短尺ヘッドの歩留まりを高めることもモノリシックの長尺ヘッドに比べて格段に容易である。したがって、単位記録ヘッド40を組み合わせて記録ヘッド44を構成した方が安価に構成できるためである。
例えば、図4に示すように、ノズル面40Aに1列にノズル58が配列された記録ヘッド40をノズル列を一致させて共通基板46A、46Bに取りつけ、お互いにずらして配置することにより、印字領域内で間断なく印字可能な記録ヘッド44を構成することができる。この場合には、大量に生産される安価なデバイス(記録ヘッド)と共通化が可能となり、低価格で全幅印字可能な記録ヘッド44を構成できる。また、記録ヘッドアレイ42A、42Bをそれぞれ共通基板46A、46Bに取り付けることにより各記録ヘッドアレイ42A、42Bの構成が簡略化し、製作も高精度調整もより簡易になる。
しかし、記録ヘッド44は、このような構成に限定されるものではなく、図5に示すように、1つの共通基板46の両側に単位記録ヘッド40を複数取り付けて記録ヘッドアレイ42A、42Bを構成することもできる。このように構成することによって、共通基板46を共通化して記録ヘッド44を小型化することができる。
なお、単位記録ヘッドは、市販もしくは公知のシリアル記録型インクジェット記録ヘッドを流用しても良い。また、単位記録ヘッドをヘッドチップのみで構成し、複数のヘッドチップに対して共通基板46に設けたインク流路でインクを供給する構成としても良い。さらに、単位記録ヘッド毎に交換可能にできれば好適である。
また、単位記録ヘッド40におけるノズル58をノズル配列方向端部まで形成した単位記録ヘッド110(図6参照)を幅方向に連続して配置して記録ヘッド44を構成しても良い(図7参照)。単位記録ヘッド同士の接続部分におけるノズルピッチを合わせる為に、単位記録ヘッド110の端部を高精度に作製する必要があるが、記録ヘッド44を最も小型化できる構成である。
さらに、単位記録ヘッド40、110のノズル配列は一直線状のもので説明してきたが、これに限定されるものではない。例えば、図8に示すように、千鳥状にノズルを配列することも可能である。
記録ヘッド44に対向配置されるメンテナンス装置81は、少なくとも非印字時に記録ヘッド44から吐出されたインクを収容するインク受け部を備えるものであり、記録ヘッド44の印字(インク転移)性能を一定に維持するものである。このように、インク受け部を備えるメンテナンス装置81が記録ヘッド44に対向配置されているため、記録ヘッド44から非印字時に転移されたインクが確実に収容される。
記録ヘッド44は、インクの乾燥(特に、水性インク、溶剤インク)によるインク滴の吐出性能を初期化する目的で非印字時にインク滴の吐出(以下、ダミージェットという)を行なう必要がある
また、インクがほとんど乾燥しない油性インクやソリッドインクの場合であっても、印字中に記録ヘッド44の内部に発生する微小な気泡による影響や、ノズル面(インク滴吐出面)に付着したインクや微小なゴミによる影響を除去して初期化するためにダミージェットを行なう必要がある。
メンテナンス装置81(インク受け部)は、このダミージェット時のインク滴を収容するものであり、収容したインク滴が飛散しないようにインク吸収部材を配置しても良い。あるいは、インク浸透部材やチューブ部材等を介して別の場所に設けた排インク手段に排出する構成としても良い。
また、メンテナンス装置81は、少なくとも上記インク受け機能を備えれば良いが、さらにインク滴の吐出性能を維持するために、他のメンテナンス機能を有するように構成しても良い。例えば、ノズル面を清掃するワイパー部材を設けても良いし、ノズル面を気密にして保護するキャッピング機能を有する構成としても良い。さらにはノズルからインク等を吸引するバキューム機能を有する構成としても良い。
なお、インク受け機能以外の機能、例えば、上記ワイピング機能やキャッピング機能等は必ずしもメンテナンス装置81が備える必要はなく、例えば記録ヘッド側に当該機能を果たす機構(ワイピング機構、キャッピング機構等)を設けても良い。
搬送手段202は、静電吸着以外の方法(以下、非静電吸着方式という)によって用紙を搬送するものである。すなわち、搬送手段202は、記録ヘッド44とメンテナンス装置81の間に一定速度で安定的に用紙を搬送可能なものであれば特に限定するものではない。例えば、搬送ロールや搬送ベルトと押圧手段の組み合わせ等が考えられる。
また、搬送手段202は、用紙搬送方向において記録ヘッド44と異なる位置に配置することが望ましい。これは、記録ヘッド44と対向する位置にメンテナンス装置81を配設容易にするためである。
例えば、用紙の裏面に当接して用紙に駆動力を付与する搬送ロール100と、搬送ロール100に対して用紙を押しつける付勢手段204とから搬送手段202を構成することが考えられる(図1参照)。
これは、静電吸着方式を採用した場合には、用紙の厚さや用紙の材質によって静電吸着状態が安定しないおそれがあるのに対して、搬送ロール100に付勢手段204によって用紙を押し付けることによって、用紙の厚み、材質等に拘わらず搬送ロール100から用紙に駆動力が確実に伝達され、安定して搬送することができるためである。
付勢手段204は、用紙に対して付勢部材が直接接触して付勢する方式と、用紙に対して直接接触しない方式が考えられる。後者の方式としては、例えば、エアーの吹き付け等が考えられる。印字された用紙に接触しない点で優れている。
一方、前者の方式としては、例えば、図9に示すように、シャフト74を介してスプリング75の付勢力が作用したスターホイール70が考えられる。すなわち、搬送ロール100に対して弾性的に付勢されたスターホイール70によって厚さや材質に拘らず用紙Pが搬送ロール100に押圧される。この結果、搬送ロール100から確実に駆動力を伝達され、用紙Pが安定的に搬送される。
スターホイール70の形状は、用紙に対する接触面積が最小限に抑制されていれば、特に限定するものでない。また、スターホイール70の材質は、金属、プラスチックなどで良い。例えば、SUS631Hを高温で硬化処理したSUS631H材が好適である。製造方法も特に限定するものでないが、エッチングやプレス、レーザ加工などが可能である。
したがって、スターホイール70が用紙Pの記録面に接触しても、インクが転移したばかりの記録面に対する接触面積が最小限に抑制され、印字画質に対する影響を最小限に抑制できる。
シャフト74を介して付勢されたスターホイール70に作用する押圧力は、5gf〜30gfが好ましく、10gf〜20gfが一層好ましい。5gfよりも小さいと用紙を十分に押えることができず、30gfよりも大きいと用紙を傷つけるためである。
なお、複数のスターホイール70によってスターホイール群を構成する場合には、共通のシャフトに支持されることが望ましく、用紙の局所的な浮きや変形を押えるために、スターホイール70の間隔が50mm以下であることが好適である。
また、印字領域が大きい場合には、シャフト74を複数に分割してそれぞれに複数のスターホイール70を軸支させることが望ましい。シャフト74が撓んで、スターホイール70が用紙を不均一に付勢し、用紙の局所的な浮きや変形を押えることができなくなるためである。
搬送ロール100は、従来公知の搬送ロールであればいずれでも適用可能である。用紙に駆動力を確実に伝達するために、表面の摩擦係数が大きく、かつ耐摩耗性に優れたものが好ましい。例えば、金属のロール外周面にゴムを被覆したゴムロールや金属のロール外周面にセラミック粉をコートしたセラミックロールが考えられる。
なお、スターホイール70が搬送ロール側に弾性的に付勢されているため、搬送ロール100に接触したスターホイール70の歯先が破損しないように、搬送ロール100には破損回避部が設けられている。例えば、搬送ロールがゴムロールであれば外周面を被覆したゴムが破損回避部に該当する。また、搬送ロール100がセラミックロールであれば、図10に示すように、スターホイール70と対向する部位に設けられた周回する溝101が破損回避部に相当する。ただし、溝101を設けた場合には、スターホイール70の歯先が溝101の内部に進入する量が過剰になって用紙の搬送抵抗が増大しないように規制手段を設けることが好ましい。例えば、シャフト74に当接してスターホイール70の進入量を規制する構成が考えられる。
本実施形態に係る記録装置200の作用について説明する。
記録装置200では、記録ヘッド44の印字領域が記録領域以上とされているため、記録ヘッド44とメンテナンス装置81の間に用紙が連続的に搬送されることによって記録ヘッド44から用紙に色材が転移して画像形成される。
また、搬送手段202は非静電吸着方式の搬送手段、例えば、搬送ロール100と付勢手段204の構成の場合、静電特性が変化する用紙の材質や厚さの変化や用紙に対する色材の付着、あるいは環境温湿度変化にかかわらず、付勢手段204によって搬送ロール100に用紙が確実に押し付けられ、搬送ロール100から用紙に駆動力が確実に伝達される。この結果、用紙が安定して搬送され、高画質に印字することができる。
また、付勢手段204がスプリング75で弾性的に付勢されたスターホイール70であれば、インク滴などが付着した用紙に対する接触面積が最小限に限定され、高画質な印字が可能になる。このように付勢手段204にスプリング75で付勢されたスターホイール70を用いても、搬送ロール100に破損回避部(例えば、セラミックロールに設けられた溝101)を設けることによって、スターホイール70の歯先が搬送ロール100と接触することによって破損・変形することを確実に回避できる。
ところで、搬送手段202が搬送方向において記録ヘッド44と異なる位置に配置された場合には、記録ヘッド44のノズル面40Aと対向する位置にメンテナンス装置81を容易に配設することができる。
一方、記録ヘッド44のノズル40Aと対向してメンテナンス装置81を配設させているため、記録ヘッド44を移動させることなく(印字状態のままで)、色材を転移させることができる。例えば、記録ヘッド44がインクジェット方式であれば、インク滴をメンテナンス装置に向かって吐出する(ダミージェットを行なう)ことによって、記録ヘッド44の内部に存在した気泡が排出され、インク滴の吐出性能が初期化される。
特に、連続印字中に先行する用紙後端が通過して後続の用紙先端が到着するまでのタイミングでメンテナンス装置81に向かってインク滴を吐出し、連続印字中に変化してしまうインク滴の吐出性能を一定に維持して高画質の印字を可能にすることができる。
すなわち、連続印字中に印字動作を中断することになく、ダミージェットを行なうことができるため、高画質な印字を可能にしつつ印字能力(生産性)を高く維持できる。
なお、ダミージェットを行なうために、記録ヘッド44やメンテナンス装置81を移動させる機構も不要であり、簡単な装置構成とすることができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る記録装置について説明する。
本実施形態に係る記録装置250は、図11に示すように、記録ヘッド44を複数の記録ヘッドアレイ42A、42Bの組み合わせで構成したもの(図4参照)であり、搬送方向に沿って複数の記録ヘッド44(記録ヘッドアレイ42A、42B)を配設することによって、多色印字を可能にしたものである。ここでは、搬送方向上流側からイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のインク滴を吐出可能な記録ヘッド44Y、44M、44C、44K(以下、44Y〜44Mという、他の部材も同様)(記録ヘッドアレイ42YA・42YB〜42KA・42KB)を配置してカラー印字可能に構成したものである。しかし、記録ヘッドのインクの色・数はこれに限定されるものではなく、他の色の記録ヘッドを追加しても良いし、同一の色の記録ヘッドを複数有する構成でも良い
この場合には、各記録ヘッドアレイ間および最上流の記録ヘッドアレイ42YAよりも上流側、および最下流の記録ヘッドアレイ42KBよりも下流側に搬送手段202を配設させている。
なお、このように配置された複数の搬送手段202の駆動源106は、単一であることが望ましい。これは、駆動源が複数ある場合には、複数の駆動源の駆動速度や変動特性を同一にすることは困難であり、結果として各駆動源の速度変動成分が重畳して用紙搬送速度に作用するためである。この結果、各駆動源の速度変動成分が十分に小さくても上記重畳によって用紙速度変動が印字画質の劣化として顕在化するおそれがあるためである。駆動源106としては、例えば、ステッピングモータやサーボモータが考えられる。
また、複数の搬送手段202に対して単一の駆動源106から共通の駆動部材104で駆動力を伝達されることが望ましい。駆動部材104は、公知の駆動伝達部材が適用可能であるが、特に、歯の噛合がなく表面の摩擦力で駆動力を伝達できる平ベルト構造が好ましい。ギア(歯の噛合)を用いる場合、歯毎の周期的な速度変動を生じ、印字された画像において人間に識別され易い画質欠陥を生ずるおそれが大きいためである。
なお、図11に示すように、駆動部材として平ベルト104を用いる場合、搬送手段202、例えば、搬送ロール100に巻きかける場合には、滑り易い特性を補うために、アイドラロール114を用いて巻き付け角度を稼ぐことが必要である。なお、平ベルトは伸縮性が小さく、変形しにくいものが好ましい。例えば、樹脂繊維の織物を芯体とし、各種ゴム(クロロプレンゴム、ニトリルゴム)やポリウレタンを表層に設けて機械的強度と摩擦係数を両立させることができる。また、SUSやニッケルの金属ベルトでも良い。
この平ベルト104を搬送ロール100に架け渡す場合には、図12に示すように、搬送ロールの用紙搬送領域外側である非用紙搬送領域に架けることなる。この場合、搬送ロールの非用紙搬送領域は、用紙搬送領域と同一径であることが必要であり、用紙搬送領域と同一の加工工程・方法で加工されていることが望ましい。例えば、搬送ロール100の用紙搬送領域がゴムで被覆されたゴムロールやセラミック粉末でコーティングがなされた場合には、平ベルトを架け渡す非用紙搬送領域も同様の加工で形成される。
このように構成された記録装置250の作用について説明する。
記録装置250が複数の記録ヘッド44Y〜44K(記録ヘッドアレイ42YA〜44KB)から構成されている場合であっても、各記録ヘッドアレイ間および最上流の記録ヘッドアレイ42YAよりも上流側、および最下流の記録ヘッドアレイ42KBよりも下流側に非静電吸着方法の搬送手段202を配設することによって、用紙の紙質や厚さ等の変化、インク付着、あるいは環境温湿度変化等の静電特性の変化に拘らず各記録ヘッドアレイ42(記録ヘッド44)に用紙を安定して搬送することができ、高画質に印字することができる。
特に、搬送手段202が搬送ロール100と付勢手段204で構成されている場合には、搬送手段202を記録ヘッドアレイ42間に配設することによって、インクの付着によって生ずる用紙の変形を付勢手段204、例えば、付勢されたスターホイール70によって搬送ロール100に押圧しつけて抑制する。したがって、インク付着による用紙変形によって用紙が記録ヘッド44のノズル面40Aに接触してノズル面40Aを傷つけたり、用紙が汚れることを確実に防止できる。
また、複数の搬送手段202、例えば搬送ロール100を単一の駆動源106で駆動することにより、複数の駆動源の速度変動の重畳による用紙搬送速度変動が防止される。
しかも、駆動源106から搬送手段202に共通の駆動部材104で駆動力が伝達されるため、搬送手段202間における搬送速度のバラツキが抑制される。
また、搬送ロール100に対してアイドラロール110〜114を介して平ベルト104を巻きかける構成の場合には、チェーンとギアを用いる場合のように、歯毎の周期的な速度変動成分が抑制され、周期的な変動が用紙上に形成された画像に表れることを低減できる。
特に、搬送ロール100の用紙搬送領域と同一径で同一加工された非用紙搬送領域に平ベルト104を巻きかけることによって、搬送ロール100の加工精度や保持方法(ベアリング等)に起因する芯ブレがあっても周期的な速度変動が発生せず、用紙は平ベルト104の移動速度と同一速度で搬送される。したがって、周期的な速度変動が一層確実に低減される。
なお、平ベルト104の巻き付け角を稼ぐためにアイドラーロール114を配置する構成では、厳密に言えば、アイドラーロール114の加工精度や保持方法に起因する周期的速度変動が発生するが、アイドラーロール114は比較的小型であり単一材料でよいので安価でかつ高精度に加工することは容易である。一方搬送ロール100はサイズが大きく、構成も例えば芯金と被覆材という複数の材料構成となるので、高精度の加工が困難である。あるいは、非常に高価な部品になってしまう。
また、本実施形態に係る駆動搬送機構では、共通駆動部材として平ベルト104を採用したため、巻き付け角度を確保するために搬送ロール100間にアイドラロール114を配設する構成としたが、例えばチェーンの場合のように滑りについてほとんど考慮する必要がない構成であれば、図27に示すように、アイドラロール110〜114を省略して搬送ロール100の表面に接触する構成でも良い。
[実施例1]
本発明の実施例1に係る記録装置が適用されたインクジェット記録装置について説明する。なお、実施形態と同様の構成要素について同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
(インクジェット記録装置の全体構成)
先ず、インクジェット記録装置の全体構成について簡単に説明する。
インクジェット記録装置10は、図13に示すように、用紙を送り出す用紙供給部12と、用紙の姿勢を制御するレジ調整部14と、インク滴を吐出して用紙に画像形成する記録ヘッド部16と、記録ヘッド部16のメンテナンスを行なうメンテナンス部18とを備える記録部20と、記録部20で画像形成された用紙を排出する排出部22とから基本的に構成される。
用紙供給部12は、用紙が積層されてストックされているストッカ24と、ストッカ24から1枚ずつ枚葉してレジ部14に搬送する搬送装置26とから構成されている。
レジ部14は、ループ形成部28と用紙の姿勢を制御するガイド部材30が備えられており、この部分を通過することによって用紙のコシを利用してスキューが矯正されると共に搬送タイミングが制御されて記録部20に進入する構成である。
記録部20については、記録ヘッド部16とメンテナンス部18の間を用紙が搬送される用紙搬送路が構成されており、用紙搬送路を連続的に(停止することなく)搬送される用紙に対して、記録ヘッド部16からインク滴が吐出され当該用紙に画像が形成される構成である。記録ヘッド部16とメンテナンス部18は、それぞれユニット化されており、記録ヘッド部16がメンテナンス部18と用紙搬送路を挟んで分離可能に構成されている。したがって、用紙ジャムの場合に、容易にジャムした用紙を取り出すことができる。なお、記録部20については後述するので、詳細な説明を省略する。
排紙部22は、記録部20で画像が形成された用紙を排紙ベルト31を介してトレイ32に収納するものである。
(記録ヘッド部の構成)
次に、記録ヘッド部16について、図14〜図19を参照して詳細に説明する。図14は、記録ヘッド部16を上側から見た模式図(図20との対応をとりやすくするためにあえて上方から見た平面図とした)である。
記録ヘッド部16は、図14に示すように、用紙搬送方向(矢印X方向。以下、搬送方向という場合がある)に対して直交する用紙幅方向(矢印Y方向。以下、幅方向という場合がある)に対して一定の間隔で配置された単位記録ヘッド40が6個配置された記録ヘッドアレイ42が用紙搬送方向に一定間隔で8個配設されることによって基本的に構成されている。
単位記録ヘッド40は、図15に示すように、ノズル面40Aにインク吐出するノズル58が一直線上に形成されたものであり、周知のサーマルインクジェット方式によりインク滴が吐出されるものである。本実施例では、単位記録ヘッド40はノズル配列密度が800dpiで800ノズルであり、噴射周波数が7.56kHzで、顔料インクを使用するものである。
このような単位記録ヘッド40がノズル配列方向が幅方向と一致するように一直線上に後述する共通基板46に6個の単位記録ヘッド40が取り付けられることによって記録ヘッドアレイ42A、42Bが形成されている。
記録ヘッドアレイ42A、42Bは、図16に示すように、それぞれ6個の単位記録ヘッド40が一定間隔をおいて配設されたものであり、記録ヘッドアレイ42A、42Bでは単位記録ヘッド40の配置を幅方向で相互にずらして配置することによって、単位記録ヘッド40のノズル列の一部が記録ヘッドアレイ42A、42B間において重複するオーバーラップ領域OLを有するように配置されている。このようにオーバーラップ領域OLを設けることによって、印字領域内で印字ができない領域が発生することを防止している。すなわち、記録ヘッドアレイ対42A、42Bの単位記録ヘッド40のノズル58からインク滴を吐出することによって、用紙に対する一色分の印字を行なうものである。本実施例では、この一対の記録ヘッドアレイ42A、42Bの組み合わせを記録ヘッド44と呼ぶものとする。
本実施例の記録ヘッド44では、印字領域が12インチとされており、最大用紙幅PWのA3短手幅(A4長手幅)の297mmよりも広く設定されている。
記録ヘッド44は、搬送方向上流側からイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に印字されてフルカラー印字可能な構成であり、必要な場合には該当する記録ヘッドの参照番号にY、M、C、Kの符号を付して(44Y、44M、44C、44Kとして)区別する(図14参照)。以下、他の部材についても同様である。
また、図14において、記録ヘッド44Y〜44Kの構成は同一なので、記録ヘッド44Yの構成要素についてのみ参照符号を付し、他の記録ヘッド44M〜44Kの構成要素に対する参照符号を付するのを省略している。
記録ヘッド44を構成する記録ヘッドアレイ42Aは、図17に示すように、用紙幅方向に延在する共通基板46Aに6個の単位記録ヘッド40が所定間隔で取り付けられている。
すなわち、単位記録ヘッド40は、図16に示すように、共通基板46Aに取り付けられることによりこのノズル列が幅方向に並ぶことになる。
また、記録ヘッド部16では、搬送方向に沿って記録ヘッドアレイ42間、最上流側の記録ヘッドアレイ42YAよりも上流側、および最下流側の記録ヘッドアレイ42KBよりも下流側に3つのスターホイール群72A〜72Cが配設されている(図14参照)。スターホイール群72A〜72Cは、幅方向に連続して配置された3本のシャフト74A〜74Cに対し所定間隔をおいてそれぞれ6個のスターホイール70が軸支されているものである。この各シャフト74A〜74Cは、両端でスプリング75によって後述する搬送ロール100側に付勢されている。なお、スターホイール70の搬送ロール100側への変位量は、搬送ロール100の表面よりわずかに食いこむ位置で停止するように、規制部材77が配設されている(図18参照)。
ここで、スターホイール70同士の幅方向間隔は、最も広い箇所で25.4mmとした。用紙の局所的な浮き・変形を押さえるために50mm以下が望ましいからである。
また、スターホイール70がスプリング75によって搬送ロール100に押圧される力は、1個当たり10gfとされている。これは、押圧力が5gfよりも小さいと用紙を搬送ロール100に十分押さえることができず、30gfよりも大きいとスターホイール70が用紙を傷つけるためである。
スターホイール70は、図19(A)に示すように、孔部74が形成された円筒形の樹脂製の保持体76と、保持体76に保持されたステンレス製のホイール78から構成されている。
保持体76は、軸方向中央で縮径してホイール挿入可能とした第1部材76Aと、縮径部分に嵌合して第1部材76Aと共にホイール78を挟持する第2部材76Bとから構成されている。ホイール78は、外周に歯79が一定間隔で多数形成されている。歯79の先端形状は、鈍角で先端がR形状とされている(図19(B)参照)が、用紙上の未乾燥のインクと接触するため接触面積が極力小さくされていれば良く、例えば、鋭角(図19(C)参照)でも良い。
また、ホイール78の厚みは、本実施例では、0.1mmで先端(歯先)の厚みをテーパー加工により0.01〜0.02mm程度に薄くしたものである。また、ホイール78は、SUS631EH材から両面段差エッチングで外形と先端テーパー形状を同時加工して形成したものであり、表面をフッ素樹脂撥水コートしたものである。
また、記録ヘッドアレイ42Aでは、各単位記録ヘッド40の隣りにスターホイール70が配置されている。スターホイール70は、共通基板46に嵌合されている支持部材71の先端に板バネ73を介して弾性的に軸支されている(図18参照)。
(メンテナンス部の構成)
記録部20に対して対向配置されるメンテナンス部18の構成を図20〜図24、図25を参照して説明する。図20は、搬送位置からメンテナンス部18を平面視にしたものである。
メンテナンス部18は、記録部20と用紙搬送位置を挟んで対向配置されており、図20に示すように、記録部20の各単位記録ヘッド40と対向する位置にメンテナンス装置81が配置されている(図14参照)。メンテナンス装置81は、キャップ部材80とワイピング部材88から構成されている。
キャップ部材80は、図21に示すように、矩形状の深さ8mmの凹部82Aが形成されPBT樹脂から形成された受け部82と、受け部82の上部にシリコーンゴム(硬度40Hs)から形成されたゴム部84と、凹部82Aの底面全体に配設されたポリプロピレンとポリエチレンとからなるインク吸収体86とから構成されている。したがって、後述するダミージェットの際、各単位記録ヘッド40のノズル58からキャップ部材80の開口部84Aを介して凹部82Aの内部にインク滴が吐出され、インク吸収体86に吸収される構成である。
また、キャップ部材80は、図22に示すように、記録ヘッドアレイ42を構成する各単位記録ヘッド40にそれぞれ対応した6個のキャップ部材80が共通基板300に取りつけられてユニット化され、昇降機構302によって一体的に単位記録ヘッド40のノズル面40Aに対して接近・離間可能に構成されている。
昇降機構302は、駆動モータ304と、駆動モータ304の駆動軸306に取りつけられ、共通基板300の下面に当接される偏心カム308とから構成されている。したがって、駆動モータ304が駆動されることにより偏心カム308が回転し、偏心カム308が当接された共通基板300が単位記録ヘッド40のノズル面40Aに対して接近・離間する構成である。
なお、キャップ部材80の下側には、ノズル面40Aに圧接する際に圧接力を調整するスプリング87が配設されている(図26参照)。したがって、後述するキャッピング動作時にはキャップ部材80が上昇してゴム部84がノズル面40Aに対して圧接してノズル58を含むノズル面40Aを密閉し、インクの乾燥を抑制すると共にゴミ、埃等の付着を防止する。また、後述するワイピング動作時にはキャップ部材80が下降してワイピング部材88を幅方向に移動可能とするものである。
さらに、各キャップ部材80の幅方向において隣接する位置には、各単位記録ヘッド40のノズル面40Aをクリーニングするためのワイピング部材88が配設されている(図21、図22参照)。
ワイピング部材88は、図21に示すように、幅方向視において略アーチ型の形状をした保持部材90と、保持部材90の上部に配設され搬送方向に延在するワイパー92とから構成されているものである。
ワイパー92は熱可塑性ポリマー樹脂(硬度65Hs)から形成され、幅方向厚さW1が0.8mm、搬送方向長さL1が8mmであり、保持部材90からの高さ(自由長)が6mmである。
保持部材90はSUS材から形成されている。
なお、ワイピング部材88はキャップ部材80の幅方向端部から1mmの位置に配置した。
また、ワイピング部材88は、図22に示すように、記録ヘッドアレイ42を構成する各単位記録ヘッド40にそれぞれ対応した全ワイピング部材88が共通基板310に取りつけられてユニット化され、移動機構312によって一体的に単位記録ヘッド40のノズル面40Aに対して接近・離間および幅方向に移動可能に構成されている。
移動機構312は、共通基板310を幅方向に移動可能に支持するスライダ314と、スライダ314上で共通基板310を幅方向に移動させる駆動モータ316と、スライダ314を昇降させる駆動モータ318とから基本的に構成される。スライダ314は、搬送方向両端に設けられ幅方向に延在するガイド320を備えており、ガイド320に案内された共通基板310が幅方向に移動可能とされている。また、共通基板310の一側面には、ラック322が形成された凸部324が形成されており、スライダ314に取りつけられた駆動モータ316の駆動ギア326と噛合されている。したがって、駆動モータ316の駆動によって共通基板310がスライダ314上を幅方向に移動可能とされている。
また、スライダ314の下側には、上下方向に延在するラック330が設けられた凸部332が形成されており、駆動モータ318の駆動ギア334が噛合されている。したがって、駆動モータ318の駆動によってスライダ314が昇降可能とされている。すなわち、スライダ314に支持された共通基板310、ワイピング部材88が一体的に昇降する構成とされている。
このように、ワイピング部材88は移動機構312によってノズル面40Aに対して接近離間(昇降)可能に構成されると共に、幅方向に移動可能とされている。すなわち、ワイピング部材88(ワイパー92)は、ホームポジションでは搬送されてくる用紙と干渉しないようにキャップ部材80よりも低い位置に位置している(図23(A)参照)が、ワイピング時には上昇してホームポジションから下降したキャップ部材80を跨いで搬送方向に移動してワイピングを行なう(図23(C)参照)構成とされている。
また、記録部20において用紙搬送時にキャップ部材80の凹部82Aに用紙が突入しないように、各キャップ部材80の幅方向両側にガイド部材94が配設されている(図21参照)。ガイド部材94はSUS材から形成され、図21に示すように、搬送方向に延在する水平部94Aと、水平部94Aの両端部から垂直下方に延在する2本の垂直部94Bと、水平部94Aの搬送方向両端部から搬送方向斜め下方に延在するガイド部94C、94Dとから構成される。
なお、このガイド部材94の水平部94Aは、単位記録ヘッド間に配設されたスターホイール70と対向配置されている(図14、図20および図18参照)。したがって、搬送される用紙が、搬送方向における印字位置でスターホイール70によってガイド部材94(水平部94A)に当接され、インク付着などによって変形する用紙をノズル面40Aに対して一定の距離に保つ構成である(図18参照)。
続いて、メンテナンス装置81を構成する各部材の本実施例におけるホームポジション(画像印字中で単位記録ヘッド40に対するメンテナンスを行っていない状態における位置)について説明する。
キャップ部材80は、記録ヘッド40のノズル面40Aの下方に配置され、平面視においてゴム部84が単位記録ヘッド40のノズル面40Aの全体を覆うように、また、平面視においてゴム部84の開口部84A内に単位記録ヘッド40の全ノズル58が位置するように配置されている。
ワイピング部材88は、ワイパー92の先端が単位記録ヘッド40のノズル面40Aの下方に配置され、平面視においてワイパー92の長手(搬送)方向長さが単位記録ヘッド40のノズル面40Aの搬送方向幅をカバーできる位置で、ワイパー92が単位記録ヘッド40の幅方向端部から1mm離れた位置(記録ヘッドの短手幅方向に対し、清掃できる位置)に配置されている。
ガイド部材94は、用紙が接触する水平部94Aの最上面が単位記録ヘッド40のノズル面40Aの下方に配置され、平面視においてガイド部材94の水平部94Aの搬送方向長さが単位記録ヘッド40のノズル面40Aをカバーできる位置で、用紙が接触する水平部94Aの最上面が単位記録ヘッド40の幅方向端部から2mm離れた位置に配設されている。
続いて、メンテナンス装置81と単位記録ヘッド40の間に用紙を搬送する構成について説明する。
用紙に駆動力を伝達して搬送する搬送ロール100が、メンテナンス部18において搬送方向両端と搬送方向で隣接するキャップ部材80の間にそれぞれ配設されている(図20参照)。搬送用ロール100は、用紙搬送位置を挟んでスターホイール群72A〜72Cの配設位置に対応して配置されており(図18参照)、搬送用ロール100側にスプリング75によって弾性的に押圧されているスターホイール群72A〜72Cのスターホイール70によって搬送用ロール100に用紙が当接され、搬送ロール100から駆動力が伝達されるように構成されている。
搬送ロール100は、ケーシング102に軸支される小径部100Aと、小径部100Aよりも径が大きくスターホイール72が当接する大径部100Bとから構成されている(図17参照)。搬送ロール100は、大径部100Bを介して用紙に駆動力を伝達するものであり、摩擦係数が大きくかつ磨耗しにくいものが良い。本実施例では、搬送ロール100は直径10mmの金属(SUS303)ロール表面にアルミナを主成分とするセラミック微粉末をスプレーコートして燒結したものであり、上記条件を満たしている。この加工は、搬送ロール100の大径部100Bにおいて用紙が当接する印字領域のみならず、平ベルト104が張架される非印字領域も同様の加工が施される。
なお、搬送ロール100の表面にスターホイール70が接触して歯先が変形することを防止するために、搬送ロール100のスターホイール72に対向する部分には、幅2mm、深さ2mmの周回する溝101(図10、図18参照)を設けている。また、この溝101内へのスターホイール72の進入量が増加することによって、用紙搬送抵抗が増加することを防止するために、スターホイール72の進入量を規制する規制部材77(図18参照)が設けられている。
搬送ロール100を駆動する駆動機構は、図24に示すように、単一のモータ106の駆動軸108からアイドラロール110、112を介して全ての搬送ロール100に平ベルト104が巻きかけられているものである。隣接する搬送ロール100間には、アイドラロール114が配設されており、各搬送ロール100(大径部100B)に対する平ベルトの巻きつけ角度を稼いでいる。
また、搬送ロール100は、図25に示すように、搬送される用紙が当接される大径部100Bにおいて印字領域外の非印字領域に平ベルト104が巻きかけられている。
ここでモータ106を単一とするのは、駆動源が複数存在すると、各モータの駆動速度・変動特性を厳密に均一にするのが困難であり、結果的に用紙速度に各種速度変動成分が重畳し、各モータの速度変動が十分小さくても各速度変動の重畳によって用紙の速度変動が問題になるためである。すなわち、単一の駆動源(モータ106)で複数の搬送ロール100を駆動することによって、用紙の搬送速度を均一にして高画質な印字を達成するものである。
平ベルト104は、搬送ロール100に対して歯の噛合い無しで(摩擦力で)駆動伝達するので、特に歯毎の周期的な速度変動などがなく好適である。
また、本実施例の平ベルト104は、ポリエステル繊維を織った基材の表面(片面)にポリウレタンを薄膜コートした厚さ0.4mmのものであり、機械的強度と高摩擦性を両立させている。
このように、記録部20が構成されることにより、本実施例ではノズル面−用紙間隔が1.5mmに設計され、その間を水平方向に用紙が搬送されるものである。また、印字対象となる最大記録領域(最大用紙幅PW)は、A3短手(A4長手)とされている。また、記録部20のプロセス速度は240mm/sであり、印字解像度=800×800dpi、記録速度が毎分60枚(A4LEF(Long Edge Feed)の場合)とされている。
このように構成されるインクジェット記録装置10の作用について説明する。
以下、印字動作、メンテナンス動作(ダミージェット、ワイピング、キャッピング)について順次説明する。
先ず、印字動作について説明する。
印字動作を行なう場合には、用紙供給部12から用紙が供給され、レジ調整部14で用紙の姿勢やタイミングが制御されて記録部20に搬送される。
一方、記録部20ではモータ106が駆動され、平ベルト104を介して全搬送ロール100に駆動力が伝達される。
したがって、記録部20に到達した用紙は、最も搬送方向上流側にある搬送ロール100とスターホイール群72A〜72Cの間に挿入される。この際、スプリング75で付勢されたスターホイール群72A〜72Cのスターホイール70が搬送ロール100に用紙を押し付けるため、搬送ロール100から用紙に搬送力が確実に伝達され、一定速度で単位記録ヘッド40の下部に挿入される。以下、記録ヘッドアレイ42間に配設された搬送ロール100から順次、駆動力が伝達されて搬送されていく。
この際、全ての搬送ロール100が単一のモータ106で駆動されているため、複数の駆動源で駆動される場合のように複数の駆動源の速度変動が重畳して用紙搬送速度の変動に影響を与えることが回避され、用紙がより一定速度で搬送される。また、画像上で視認しやすい画像欠陥の原因である周期的な速度変動は歯の加工精度等によって生ずることが多いが、平ベルト104を介して(歯の噛合等を介さずに)駆動力が伝達されているため,上記画像欠陥の発生も防止される。さらに、搬送ロール100の用紙が当接される大径部100Bの非印字領域に平ベルト104が巻き掛けられているため、搬送ロール100の加工精度や保持方法(ベアリング等)に起因する芯振れがあっても周期的な速度変動は発生せず、平ベルト104の移動速度(一定速度)で用紙が搬送される。平ベルト104の巻き付け角を稼ぐためにアイドラーロール114を配置する構成では、厳密に言えば、アイドラーロール114の加工精度や保持方法に起因する周期的速度変動が発生するが、アイドラーロール114は比較的小型であり単一材料でよいので安価でかつ高精度に加工することは容易である。一方搬送ロール100はサイズが大きく、構成も例えば芯金と被覆材という複数の材料構成となるので、高精度の加工が困難である。あるいは非常に高価な部品になってしまう。平ベルト104による表面摩擦駆動方式は、搬送ロール100の半径や回転中心が多少ばらついていてもそこに起因する周期的変動は発生しないという効果がある。
さらに、スターホイール群72A〜72Cを幅方向で三つに分割し、それぞれのシャフト74A〜74Cの長さを短くしたため、シャフト74A〜74Cの撓みを防止できて、スプリング75で付勢された複数のスターホイール70が均等に用紙を抑える。したがって、用紙に駆動力を均等に伝達することができる。
特に、スターホイール70によって用紙を搬送ロール100に押圧しているため、用紙に駆動力が確実に伝達され、一定速度で搬送することができる。特に、静電吸着方式を採用していないため、用紙の厚さや材質などに拘らず安定して搬送することができる。
また、幅方向において単位記録ヘッド40間にスターホイール70を配設し、これと対向する位置にガイド部材94を配設しているため、搬送方向における印字(記録ヘッドアレイ42)位置においても、用紙の浮きあがり等を防止して、用紙の平面性(ノズル面40Aに対する一定距離)を確保することができる。
逆にいえば、このようにスターホイール70を配置することによって、単位記録ヘッド40に対向する位置にキャップ部材80等のメンテナンス装置81を配置しても、用紙の平面性(ノズル面40Aに対する一定距離)を確保することができる。
一方、記録ヘッド部16に対して装置の制御部から印字信号が各単位記録ヘッド40に入力されると、印字信号に応じて該当するノズルの発熱素子が発熱し、ノズル面40Aに対して一定距離とされつつ搬送される用紙に対して、当該ノズルからインク滴が吐出されていく。
したがって、記録ヘッドアレイ42Aで印字が行なわれ、続いて記録ヘッドアレイ42Bで印字が行なわれることにより、用紙の当該部分における一色分の印字が終了する。したがって、記録部20で用紙が搬送されるにつれて、記録ヘッド44Y、44M、44C、44Kの順で印字され、フルカラーの印字が行われる。
このように、平面性(ノズル面に対する一定距離)が確保され、一定速度で搬送される用紙に対して印字を行なうことにより、高画質な画像を形成することができる。特に、記録部20の搬送中、スターホイール70によって常時平面性が確保されるため、各種厚みの用紙に対して印字中に生ずる用紙の変形を良好に矯正でき、ノズル面40Aに対する距離を一定に維持して高画質な印字を達成できる。
特に、記録部20において、搬送ロール100が記録ヘッドアレイ42間に配設され、また最上流の記録ヘッドアレイ42YAよりも上流側および最下流の記録ヘッドアレイ42KBよりも下流側に配設されていると共に、複数の搬送ロ−ル100が単一の駆動源で駆動されるため、用紙が一定速度で確実に搬送され、高画質な印字を達成することができる。
次に、ダミージェットの動作について説明する。
ダミージェットは、非印字時、あるいは複数の用紙を連続印字中に所定枚数の印字が終了する度に、後続の用紙先端が到達する前に行なう。すなわち、記録ヘッド44Y〜44Kを構成する全単位記録ヘッド40のうち、任意のノズルからキャップ部材80に向かってインク滴の吐出(いわゆるダミージェット)が行なわれる。ダミージェットを行なうのは、全単位記録ヘッド40の全ノズルでも良いし、選択された単位記録ヘッド40、あるいは記録ヘッドアレイ42の全ノズル58でも良いし、さらには所定時間インク滴の吐出を行なっていないノズル58のみでも良い。
例えば、複数枚数の用紙連続印字時のダミージェット時におけるノズル面40Aとキャップ部材80の上面との距離を3mmに設定し、30頁(A4)毎に先行する用紙通過後で後続の用紙先端到達前のタイミングで全ノズルから500ドロップ吐出する。
この際、キャップ部材80の凹部82Aの底面にインク吸収部材86が配設されているため、吐出されたインクが凹部82Aからあふれたり飛び散ったりすることはない。
例えば、単位記録ヘッド40の全ノズルからインク滴の吐出(ダミージェット)を行なうことによって、インク(特に水性インク、溶剤インク)の乾燥による吐出性能の変化を初期化することができる。また、インクがほとんど乾燥しない油性インク、ソリッドインクであっても、印字によってヘッド内部のインク流路等に付着した気泡の排除、あるいはノズル面に付着したゴミの除去を行なうことができ、ノズルのインク滴の吐出性能を初期化することができる。
本実施例のように、連続して印字する(搬送されてくる)複数の用紙印字中に、記録ヘッド44やキャップ部材80を移動させることなくダミージェットを行なうことができるため、印字速度(生産性)の向上が達成される。また、ダミージェットによって記録ヘッド44の印字性能が一定に維持され、高画質な印字が可能になる。
次にワイピング動作について説明する。
ワイピング動作は、印字開始前等に行なう。メンテナンス部18のワイピング部材88によって記録ヘッド40(ノズル面40A)のワイピングが行なわれる。具体的な動作を図23に示す模式図に基づいて説明する。
先ず、図22に示す昇降機構302の駆動モータ304が駆動され、偏心カム306の回転によって共通基板300が下降する。また、移動機構312の駆動モータ318が駆動され、スライダ314およびスライダ314に支持された共通基板310が上昇する。すなわち、共通基板300に取りつけられた6個のキャップ部材80がホームポジションから下降(記録ヘッド40から離間する方向に移動)すると共に、共通基板310に取りつけられた6個のワイピング部材88がホームポジションから上昇する(記録ヘッド40のノズル面40A側に移動する)(図23(A)→(B)参照)。
本実施例では、キャップ部材80が単位記録ヘッド40のノズル面40Aから6mmの位置まで下降すると共に、ワイピング部材88のワイパー92の先端(上端)がノズル面40Aよりも1.5mm高い位置(以下、当接量1.5mmという)まで上昇する。
この結果、ワイピング部材88の保持部材90がキャップ部材80を跨いで幅方向に移動可能になる。また、ワイピング部材88のワイパー92が記録ヘッド40のノズル面40Aと上下方向(図23、矢印Z方向)においてオーバーラップする状態となる(図23(B)参照)。
この状態で、図22に示す移動機構312の駆動モータ316を駆動することによって、駆動ギア326に噛合されたラック322を介してスライダ314上を共通基板310が幅方向に移動する。したがって、共通基板310に取り付けられたワイピング部材88が幅方向に移動し、先端がノズル面40Aよりも高い位置とされたワイピング部材88のワイパー92が単位記録ヘッド40のノズル面40Aを摺接しながら移動する。この結果、ノズル面40Aに付着した埃や乾燥したインク等を除去する(図23(C)参照)。この際、ワイピング部材88は、下降したキャップ部材80を跨ぐようにして移動することになる。
本実施例では、ワイパー92が当接量1.5mmを維持したままノズル面40Aを摺接するため、ノズル面40Aに付着した汚れを確実に除去する。
さらに、ワイピング部材88がノズル面40Aの下部から脱け出して、ワイピング部材88およびガイド部材94の幅方向への移動を完了する(図23(D)参照)。続いて、移動機構312の駆動モータ318の駆動によって共通基板310、すなわちワイピング部材88を下降させ、ホームポジションの高さまで移動させる(図23(E)参照)。
続いて、図20に示す移動機構312の駆動モータ318の駆動によって共通基板310、すなわち、ワイピング部材88を一緒に幅方向反対側に移動させ、ホームポジションに復帰させる(図23(F)参照)。さらに、昇降機構302の駆動モータ304を駆動してキャップ部材80を上昇させて記録ヘッド40のノズル面40Aと近接したホームポジションに復帰させることによってワイピング動作を完了する(図23(G)参照)。
続いて、キャッピング動作について説明する。
キャッピング動作は、非印字状態が長時間継続する場合、あるいは電源OFF時等に行なうものである。具体的には、図22に示す昇降機構302の駆動モータ304を駆動することによって共通基板300を上昇させ、共通基板300に取りつけられたキャップ部材80のゴム部84を記録ヘッド40のノズル面40Aに圧接させる(図26(A)→(B)参照)。この結果、ノズル面40(ノズル58)の気密性が確保され、インクの増粘、乾燥が防止されると共に、ゴミの付着を防止する。
さらに、本実施例の記録ヘッド44は、図16に示すように、短尺の単位記録ヘッド40を複数配列した記録ヘッドアレイ42A、42Bをそれぞれ共通基板46A、46Bに取り付けることによって構成しているため、大量に生産される安価なデバイス(記録ヘッド)と共通化が可能となり、低価格で全幅印字可能な記録ヘッド40を構成できる。
また、記録ヘッドアレイ42A、42Bをそれぞれ共通基板46A、46Bに取り付けることにより各記録ヘッドアレイ42A、42Bの構成が簡略化し、製作も高精度調整もより簡易になる。さらに、メンテナンス部(キャップ部材80、ワイピング部材88)の構成も短尺の記録ヘッドで使用されているものと共通化できるというメリットがある。さらにまた、幅方向における単位記録ヘッド間の間隙(空間)を利用して、ノズル面40Aと用紙間の距離を一定にする手段(本実施例のスターホイール70等)を配置可能になる、あるいはキャップ部材80等の配置の設計自由度を増大するという利点がある。
さらに、本実施例では、単位記録ヘッド40に対応してキャップ部材80を設けたが、複数の単位記録ヘッド40に対して1つのキャップ部材80を対応させても良い。
[試験結果]
用紙の種類や周囲環境温湿度に拘らず、用紙を安定搬送できることを確認するために、本実施例の記録装置を用いて以下の確認試験を行なった。下記4種類の記録用紙(用紙(1)〜(4))を用意し、それぞれの記録用紙に対して下記3種類の環境条件(環境(1
)〜(3))で合計12種類の印字テストを行った。
用紙(1):”ST紙”(レーザープリンター用薄・軽量紙。坪量52.3g/m^2、
厚さ79μm)
用紙(2):”J紙”(カラーレーザープリンタ用標準紙。坪量82.0g/m^2、厚
さ97μm)
用紙(3):”Color Copy紙”(カラーレーザープリンター用厚・重量紙。坪
量200.0g/m^2、厚さ220μm)
用紙(4):”インクジェット用OHPフィルム”(ポリエステル基材の表面にインク保
持層がコートされている。厚さ100μm)
いずれも富士ゼロックスオフィスサプライ株式会社の商品である。
環境(1): 低温低湿環境として、10℃、15%RH
環境(2): 常温常湿環境として、22℃、55%RH
環境(3): 高温高湿環境として、28℃、85%RH
上記12種類の条件でそれぞれ連続1000枚の印字テストを実施した結果、紙詰まりや用紙スキューの発生は無く用紙を安定に搬送することができた。また、画質も初期の印字画質が最後まで維持された。すなわち、静電吸着方式では対応が困難な、紙の“こし”の違い、電気特性の違い、水性インク付着による物性の変化、外部変動要因としての環境条件の違いに拘らず、安定して搬送でき、高画質で印字できることが確認された。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第1実施形態に比べ、搬送方向Uに隣り合う搬送ロール100間に、無端状のワイヤ体400が搬送方向Uに沿って張架されている(図28、図29参照)。ワイヤ体400は搬送ロール100の回転によって周回転されるので、このワイヤ体400によって、搬送方向Uに隣り合う搬送ロール100間に搬送中の記録用紙が突入していくことが防止されていると共に、ワイヤ体400の周回転によっても記録用紙に搬送力が与えられる。
ワイヤ体400の本数やワイヤ径は、搬送ロール100の回転によってワイヤ体400が周回転しても切断しないように、予め設定されている。ワイヤ体400の材質は、強度性を考慮して金属とすることが多く、また、インク滴が付着しても腐食しないように、耐インク性の材質とすることが多い。なお、搬送ロール100が回転しても、搬送方向Uと直交する方向(記録用紙幅方向)にワイヤ体400がずれないような機構にされている。
図28、図29に示すように、ワイヤ体400は、搬送方向Uに直交する方向に隣り合うメンテナンス装置81間にそれぞれ位置するように、ワイヤ体400が搬送方向Uに沿ってそれぞれ張架されていてもよい。これにより、記録用紙が搬送中にメンテナンス装置81に触れることが確実に防止される。
また、平面から見てメンテナンス装置81を挟む位置であって搬送方向Uに直交する方向に隣り合っているワイヤ体が、必ず共通の搬送ロールにそれぞれ張架されている(例えば、図29で、ワイヤ体400A、400Bは共通の搬送ロール100P、100Qにそれぞれ張架されている)ようにワイヤ体400を配設してもよく、更に、図29に示すように、ワイヤ体400の配置位置を、平面から見て千鳥配置としてもよい。
これにより、記録用紙が搬送中に搬送ロール100間に突入していくことが確実に防止される。
以上説明したように、本実施形態では、搬送方向Uに隣り合う搬送ロール間にワイヤ体400を張架している。これにより、記録用紙を搬送する際、記録用紙の先端側が搬送ロール間に突入することが防止されている。従って、記録用紙にインク滴が付着することにより記録用紙がカールして記録用紙の先端側が下方に向いても、搬送方向に隣り合う搬送ロール間に記録用紙が巻き込まれることがないので、記録用紙にインク滴が付着しても安定して搬送することができる。また、搬送方向Uに隣り合う搬送ロール間で、搬送方向Uと直交する方向に隣り合うワイヤ体間にメンテナンス装置81をそれぞれ設けているので、生産性とメンテナンス性とを両立させた記録装置を実現させることができる。
なお、搬送ロール100は、記録用紙に駆動力を伝達できるものであれば良く、一般の公知のもので充分であるが、好ましくは、摩擦係数が大きくて且つ磨耗し難いものが良い。例えば、金属製の芯金にゴム材を被覆したゴムロールや、金属製の芯金にセラミック粉をコートしたロールなどが好ましい。
[第4実施形態]
図30、図31に示すように、本実施形態では、各ワイヤ体400がそれぞれ入り込む溝404が全周にわたって形成された搬送ロール410を搬送ロール100に代えて備えている。溝404の深さ、幅は、ワイヤ体400が搬送ロール410の搬送面よりも突出しない寸法にする。ワイヤ体400の径が0.1mmφである場合、溝404の幅W、深さDを何れも0.5mm〜2.5mm程度とすることが多い。
本実施形態により、搬送ロール100上では記録用紙の背面側にワイヤ体400が接触することがないので、搬送ロール100とスターホイール70とによって挟まれた記録用紙がワイヤ体400によって悪影響を受けることを確実に回避できる。このことは、径が太いワイヤ体400を用いた場合に特に大きな効果を奏することができる。
[実施例2(第4実施形態の実施例)]
以下、搬送ロール410としてステンレス製のものを用い、ワイヤ体400として銅線材を用いる例を説明する。
搬送ロール410の溝404の幅W、深さDは何れも2mm程度とする。搬送ロール410の表面には、シリコーンゴムを被覆してなる被覆層を形成する。被覆層の厚みは、耐久性や搬送良好性などを考慮して2mm程度とすることが好ましい。
ワイヤ体400としては、径が0.1mmφのシームレス形状とし、搬送ロール410の溝404に入り込むように張架する。これにより、搬送ロール410に対して滑ることなく回転しても、記録用紙の搬送方向Uと直交する幅方向へワイヤ体400が移動することがなく、ワイヤ体400の位置を安定させながら搬送ロール410を回転させることができる。搬送ロール410上では、搬送方向Uと直交する幅方向に隣り合うワイヤ体400の間隔Lを50mmとする。これにより、隣り合うワイヤ体400間に記録用紙が搬送によって突入していくことを充分に防止できる。
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について説明する。図32、図33に示すように、本実施形態では、第1実施形態に比べ、リブ体94に代えてリブ体500を設けている。
リブ体500の材質は、例えば、金属や樹脂である。リブ体500の表面は、インク滴が付着しても腐食しないように耐インク性であることが好ましく、必要に応じて表面にコーティングを施してもよい。
リブ体500の幅Bは、メンテナンス装置81の動作に支障をきたさない程度にしておけば良い。リブ体500の上部リブ502の上面側は、記録用紙の搬送路として形成されており、このため、上部リブ502の高さ位置Hは、搬送ロール表面の最上高さと同じとされていることが多い。
リブ体500を製造するには、例えば、肉厚3mm程度のステンレス製のプレート部材をコの字状に曲げ加工して切断することにより製造する。これにより、リブ体500の製造工程を簡素にできる。なお、樹脂成形によって製造してもよく、これにより、大量生産が可能になる。
以上説明したように、本実施形態では、搬送方向に隣り合う搬送ロール間にリブ体500を設けているので、リブ体500の上部リブ502により、記録用紙の先端側が搬送ロール間に突入することが防止されている。従って、記録用紙にインク滴が付着することにより記録用紙がカールして記録用紙の先端側が下方に向いても、記録用紙が搬送ロール間に巻き込まれることを防止できる。
なお、リブ体500の上部リブ502の高さ位置等を調整して、第1実施形態で説明したリブ体94と同様の機能をリブ体500に更に持たせることも可能である。
[実施例3(第5実施形態の実施例)]
図34〜図37に示すように、本実施例では、搬送方向に隣り合う搬送ロール100間に配置されたリブ体520の上部リブ522の上端部522Eが、リブ体520を構成する脚部524の上端位置から搬送方向Uの前後方向に突出している。上部リブ522の搬送方向幅Bは1mm程度であることが多い。
すなわち、上部リブ522の上端部522Eが、上部リブ522の搬送方向前後に位置する搬送ロール100の上側にオーバーラップしているので、これにより、搬送中に記録用紙が搬送ロール間に突入することを確実に防止することができる。
なお、上端部522Eが、リブ体520の上流側にのみ形成されていても、搬送中に記録用紙が搬送ロール間に突入することを充分に防止することができ、リブ体の小型化を図ることができる。
[実施例4(第5実施形態の実施例)]
図38に示すように、本実施例では、実施例3に比べ、リブ体530の形状が異なる。すなわち、リブ体530は、搬送方向Uに延在する水平部532と、水平部532から垂直下方に延在する2本の垂直部534と、水平部532の搬送方向両端部から搬送方向斜め下方に延在するガイド部536とから構成される。更に、記録用紙を搬送する搬送ロール510には、ガイド部536の先端部と当接しないように細径部510Sが全周にわたって形成されている。
記録用紙の先端側は、搬送ロール510の太径部510Bによって搬送方向Uに案内されるので、記録用紙の先端側が搬送ロール510の細径部510Sに入り込むことがない。従って、実施例3に比べ、搬送中に記録用紙が搬送ロール100とリブ体530との僅かな隙間に入り込むことが完全に防止されるので、搬送中に記録用紙が搬送ロール間に突入することが完全に防止される。
[第6実施形態]
次に、第6実施形態について説明する。図39、図40に示すように、本実施形態では、第3実施形態に比べ、ワイヤ体400に代えて細幅のベルト体600が、搬送方向Uに隣り合う搬送ロール610に張架されている。
ベルト体600は、ウレタンゴム等のゴム部材で構成されていてもよいし、金属部材で構成されてキャタピラ状であってもよく、搬送ロール610の回転に支障をきたさない限り、ベルト体600の構成は特に限定しない。また、ベルト体600の材質は、インク滴が付着しても腐食しないように、耐インク性の材質とすることが多い。
ベルト体600の幅は、スペースの関係上、1〜1.5mm程度とすることが多いが、ここの範囲に特に限定せず、記録用紙の搬送に支障をきたさない幅であればよい。
ベルト体600の厚みは、耐強度性を考慮の上、搬送ロール610の回転に伴なって周回転しやすい厚みとする。
また、搬送ロール610に形成された溝604は、第3実施形態で説明した搬送ロール410に形成された溝404に比べ、ベルト体600の幅に合わせて広くしておく。
溝604の幅、深さは、細幅のベルト体600が搬送ロール610の搬送面(太径部610Bの表面)から突出しない寸法とする。例えば、ベルト体600の幅が1.5mm、厚さが1mmである場合、溝604は、幅及び深さを何れも2mm程度とする。
なお、搬送ロール610の上方には、何れも、シャフト(軸体)74が設けられ、各シャフト74には複数個のスターホイール(拍車)70が取付けられている。搬送方向Uと直交する方向に隣り合うベルト体600間には例えば1個のスターホイール70が配置されている。
以上説明したように、本実施形態では、搬送方向Uに隣り合う搬送ロール間にベルト体600を張架している。これにより、記録用紙を搬送する際、記録用紙の先端側が搬送ロール間に突入することが防止されている。従って、記録用紙にインク滴が付着することにより記録用紙がカールして記録用紙の先端側が下方に向いても、搬送方向に隣り合う搬送ロール間に記録用紙が巻き込まれることがないので、記録用紙にインク滴が付着しても安定して搬送することができる。また、搬送方向Uに隣り合う搬送ロール間で、搬送方向Uと直交する方向に隣り合うベルト体間にメンテナンス装置81をそれぞれ設けているので、生産性とメンテナンス性とを両立させた記録装置を実現させることができる。