JP2005104771A - オキシ水酸化コバルト粒子及びその製造方法 - Google Patents

オキシ水酸化コバルト粒子及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高密度でありかつ球状のオキシ水酸化コバルト粒子と、その製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るオキシ水酸化コバルト粒子は、2価のCo塩水溶液にアルカリ水溶液を加えて攪拌し、酸化触媒の存在下、空気と接触させることにより酸化し、球状粒子として沈殿生成させることにより得られる。
【選択図】なし

Description

本発明は、オキシ水酸化コバルト粒子に関する。さらに詳しくは、高密度であり、かつほぼ球状の形状を有し、酸化度が実質的に100%であるオキシ水酸化コバルト粒子及びその製造方法に関する。
従来から板状粒子のオキシ水酸化コバルトの製造方法としては、まず原料として板状粒子の水酸化コバルトを製造し、その後それをスラリー状とし、適当な酸化剤を用いて酸化する方法が知られていた(例えば、特許文献1参照)。
しかしかかる方法は、酸化生成物の形状や粒径分布が、原料の形状や粒径分布に依存するという問題を有する。さらに、完全に酸化することが難しいという問題を有する。
特開2002-321922号公報
本発明は、高密度であり、かつほぼ球状の形状を有し、酸化度が実質的に100%であるオキシ水酸化コバルト粒子を、単一工程で容易に得ることができる製造方法を見いだすことを課題とする。
本発明者等は鋭意研究した結果、酸化触媒の存在下で空気酸化により、2価のCo塩水溶液から単一工程でオキシ水酸化コバルトを球状の粒子として沈殿させる方法を見出し本発明を完成させた。
すなわち、本発明にかかる高密度でありかつほぼ球状のオキシ水酸化コバルト粒子を製造する方法は、酸化触媒の存在下で2価のCo塩水溶液とアルカリ水溶液の混合物を攪拌して空気と接触させることにより酸化し、ほぼ球状のオキシ水酸化コバルト粒子を沈殿生成させることを特徴とする。
また、本発明にかかる製造方法は、前記酸化触媒が、鉄、ニッケル、クロムのいずれか一種の金属若しくはそれらのイオンであることを特徴とする。
さらに本発明は、かかる製造方法により得られる、密度が1.8g/cm以上であり、かつほぼ球状の新規なオキシ水酸化コバルト粒子に関する。
また本発明は、かかる製造方法により得られる、平均粒径が5μm〜15μmである新規オキシ水酸化コバルト粒子に関する。
本発明に係る製造方法は、2価のコバルト塩水溶液から単一工程でオキシ水酸化コバルト粒子を得る方法であることから、完全に酸化された、かつ粉体特性(密度、粒径分布、平均粒径)の制御されたほぼ球状のオキシ水酸化コバルト粒子を得ることが可能となる。
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(オキシ水酸化コバルト粒子)
本発明により得られるオキシ水酸化コバルト粒子は、従来知られているオキシ水酸化コバルトより高密度であり、少なくとも1.8g/cmの密度を有することを特徴とし、場合により2.2g/cmを越える密度を有する。
さらに、その形状は一次粒子が集まったほぼ球状の二次粒子であり、平均粒径が5μm〜15μmであることを特徴とする。
また、得られた粒子は黒色であり、実際に実測された酸化度が実質的に100%であることを特徴とする。
ここで密度(バルク密度、タッピング密度)又は形状、平均粒径については、以下説明するように、2価コバルト塩溶液の濃度等の製造条件を適宜選択することにより広範に制御することができる。
表面の形状については例えば走査電子顕微鏡の観察により容易に判別することができ、粒径分布についても通常の粒径分布測定装置を用いて得ることができる。さらに、酸化度については酸化還元滴定等の化学分析方法や、X線回折方法により得ることができる。
(製造方法)
本発明に係る製造方法は、上で説明した本発明にかかる、高密度であり、かつほぼ球状の形状を有し、酸化度が実質的に100%であるオキシ水酸化コバルト粒子を2価コバルト塩を出発として単一の工程で沈殿として製造することを特徴とする。
すなわち、かかる単一工程とは、適当な酸化触媒と空気の存在下、2価のCo塩水溶液にアルカリ水溶液を攪拌しつつ加えて、オキシ水酸化コバルトをほぼ球状の粒子として生成させる工程である。
本発明において用いることができる「2価のCo塩」としては、具体的には、硝酸コバルト(Co(NO))、塩化コバルト(CoCl)、硫酸コバルト(CoSO)等が好適な一例として挙げられる。これらのCo塩は、単独で用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。また必要に応じて少量の他の金属塩を共存させてもよい。
また本発明は、2価のCo塩水溶液の濃度等を変化させることで容易に粒径や密度を好ましい範囲に揃えることが可能となる。2価のCo塩水溶液の濃度は、具体的にはコバルトの量に換算して10g/L〜150g/Lの範囲が可能であり、好ましくは40g/L〜100g/L、さらに好ましくは60g/L〜90g/Lの範囲である。
一般的には反応させる2価のCo塩水溶液の濃度とアルカリ濃度が低い方が、より大きなサイズの一次粒子が生成し、該一次粒子からなるオキシ水酸化コバルト粒子の密度は高くなる傾向にある。例えば、2価のCo塩水溶液として硫酸コバルト水溶液を用いる場合、硫酸コバルトの濃度は、例えば、90g/Lの場合は緻密な一次粒子からなるほぼ球状のオキシ水酸化コバルト粒子(密度1.8g/cm)が得られ、60g/Lの場合にはより細かい一次粒子からなるほぼ球状のオキシ水酸化コバルト粒子(密度2.3g/cm)が得られる。
なお、得られるオキシ水酸化コバルト粒子の粒状特性(球状性、平均粒径、密度等)は、これらコバルト塩水溶液の濃度の他、アルカリ水溶液の濃度、アルカリ水溶液の滴下時間、アルカリ水溶液の滴下量、反応温度、反応時間、撹拌速度、触媒の種類、触媒の添加量、空気の吹き込み速度等により制御可能である。すなわちこれらの条件を適宜選択して所望の粒状特性を得ることは当業者にとって容易である。
また、本発明において用いることができる「アルカリ水溶液」としては、具体的には、NaOH水溶液、KOH水溶液、アンモニア水等が好適な一例として挙げられるが、NaOH水溶液の使用がより好ましい。アルカリ水溶液は、反応中反応液のpHを11〜13に維持するべく添加することが好ましい。より好ましくは、反応中反応液のpHを12.0〜12.8に維持するべく添加することが好ましい。アルカリ水溶液の添加の方法には特に制限はなく、反応溶液のpHが速やかに所望のpHとなるようにすることが好ましい。pHを好ましい範囲に維持するためにpHモニターを使用し、自動的にアルカリ水溶液の添加量を調節できることが好ましい。
本発明において用いることができる触媒は、アルカリ水溶液の条件下で、空気中の酸素による酸化反応を触媒するものであればよい。酸素と触媒による2価コバルト塩の、アルカリ存在下所定のpHにおいてオキシ水酸化コバルトに酸化される機構については触媒によりそれぞれ異なると考えられるが、1つの機構として一旦溶液中で生成したCo(OH)(粒子、沈殿に制限されない)が速やかに酸化され沈殿として生成されると考えられる。
酸化触媒は、具体的には鉄、クロム、ニッケル等の金属又はそれらの金属イオンが挙げられる。かかる触媒は反応溶液中に添加したり、またステンレススチール製のような鉄製の反応容器中で反応させる場合においては反応溶液が反応容器の壁に接触したり、また鉄製反応容器からごく少量の金属イオンが溶液中に遊離することでも存在可能となる。
同様に本発明において用いることができる酸化剤としての酸素は空気を吹き込むことにより容易に導入可能である。吹き込み量については特に制限はないが、反応溶液中に十分吹き込み常に飽和状態に保持することが好ましい。
さらに酸素との反応を均一にかつ迅速に行うために反応溶液を空気とともに十分に攪拌することが好ましい。
反応温度についても特に制限はないが、通常40〜60℃の範囲が好ましい。
反応は、最初は溶液であるが沈殿が生成するにつれスラリー状となる。粒子形状、粒径を望ましい範囲にそろえる目的で所定の反応時間が経過し定常状態になった後はオーバーフロー装置によりスラリーを連続的に取り出すことが好ましい。取り出した粒子は濾過等の通常の方法により分離し、熱風等で乾燥することができる。
本発明で得られたオキシ水酸化コバルト粒子は、高密度かつ平均粒径及び粒径分布が所望の範囲であり、かつほぼ完全に酸化されているものであることから、リチウム2次電池の材料等に広く使用することができる。
以下本発明を実施例に即して説明する。
高濃度での反応
攪拌機とオーバーフローパイプを備えた有効容積15Lのステンレス製円筒形反応槽に水を13L入れた。反応槽の材質にはSUS304を用いた。次いでpHが12.7になるまで30%水酸化ナトリウム溶液を加え、電熱ヒーターにて温度を50℃に保持した。次いで反応槽内の溶液中に十分空気が含まれるように一定速度にて攪拌を行った。次にCoイオンが1Lあたり60g含まれている硫酸コバルト水溶液を10cc/分の一定速度にて連続供給した。さらに反応槽内の溶液がpH12.7に保持されるように30%水酸化ナトリウムを断続的に加えオキシ水酸化コバルト粒子を形成させた。
反応槽内が定常状態になった72時間後にオーバーフローパイプよりオキシ水酸化コバルト粒子を連続的に24時間採取し水洗後、濾過し100℃にて15時間乾燥し乾燥粉末であるオキシ水酸化コバルト(試料1とする。)を得た。試料1の色調は黒色であった。
また、試料1のX線回折による分析(XRD)を以下のように行った。
試料の調整:上で得られたオキシ水酸化コバルト粒子をそのまま使用した。
測定装置と条件:株式会社理学製、RINT2000(Cu−Kα)
測定結果:化学式CoO(OH)にて表されるオキシ水酸化コバルトによるピーク(Heterogenite-3R)が観測できた。
試料1のタッピング密度を以下のように測定した。
試料の調整:試料1を以下のように使用した。20mLセルの質量を測定し[A]、48meshのフルイで結晶をセルに自然落下して充填した。4cmスペーサー装着のセイシン企業株式会社製、「TAPDENSER KYT3000」を用いて200回タッピング後セルの質量[B]と充填容積[D]を測定した。次式により計算した。
タップ密度=(B−A)/D g/ml
測定結果:2.24g/cc
得られたオキシ水酸化コバルトの平均粒径を以下のように測定した。
試料の調整:試料1をそのまま使用した。
測定装置と条件:堀場製作所製LA−910を使用し、操作手順書に従った。
測定結果:11.6μm
得られたオキシ水酸化コバルトの酸化度をヨードメトリー法にて測定した。なお、酸化度はオキシ水酸化コバルトに含まれる全Co量に対する価数が3価であるCoの量を百分率にて表した。
測定結果:酸化度=102%
試料1の表面構造を走査電子顕微鏡(SEM)により図1に示した。一次粒子が集まってほぼ球状の二次粒子となっていることが分かる。
低濃度での反応
Coイオンが1Lあたり90g含まれている硫酸コバルト水溶液を用いた他は実施例1と同様の条件でオキシ水酸化コバルトを製造し試料2とした。また試料1と同様に解析を行った。試料2の色調は同様に黒色であった。
X線回折結果からは、化学式CoO(OH)にて表されるオキシ水酸化コバルトによるピーク(Heterogenite-3R)を観測した。
タッピング密度の測定結果:1.81g/cc
平均粒子径の測定結果:8.4μm
酸化度の測定結果:102%
図2に走査電子顕微鏡による表面構造を示した。細かい一次粒子が集まってほぼ球状の二次粒子となっていることが分かる。
表1に得られた粒子の分析結果をまとめた。
(比較例1)
反応装置が強化プラスチック製である他は、実施例と同じ条件で反応を行った。
得られた粉末について、目視による粉末の色の評価、SEMによる粒子形状、密度測定、平均粒径測定、及びXRDによる生成相の同定を行った。得られた粒子は褐色の球状粒子であり、また、平均粒径は0.3〜4μmであった。密度は1.7g/cmであった。さらに、ヨウ素滴定法により、50%酸化度であることが分かった。さらにX線回折パターンからはオキシ水酸化コバルトによる典型的ピークを有することが分かった。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
実施例1で得られたオキシ水酸化コバルト粒子の電子顕微鏡写真(5000倍)を示す。 実施例1で得られたオキシ水酸化コバルト粒子のXRDを示す。 実施例2で得られたオキシ水酸化コバルト粒子の電子顕微鏡写真(5000倍)を示す。 実施例2で得られたオキシ水酸化コバルト粒子のXRDを示す。

Claims (4)

  1. 密度が1.8g/cm以上であり、かつほぼ球状のオキシ水酸化コバルト粒子。
  2. さらに平均粒径が5μm〜15μmである、請求項1に記載のオキシ水酸化コバルト粒子。
  3. 高密度であり、かつほぼ球状のオキシ水酸化コバルト粒子を製造する方法であって、酸化触媒の存在下で2価のCo塩水溶液とアルカリ水溶液の混合物を攪拌して空気と接触させることにより酸化し、ほぼ球状のオキシ水酸化コバルト粒子を沈殿生成させることを特徴とする、オキシ水酸化コバルト粒子の製造方法。
  4. 前記酸化触媒が、鉄、ニッケル、クロムのいずれか一種以上から構成される金属若しくはそれらのイオンであることを特徴とする、請求項3に記載のオキシ水酸化コバルト粒子の製造方法。
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