JP2005076811A - 針状ころ軸受用の保持器及び針状ころ軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】
特に保持器の柱部の付け根の強度を向上させ、より耐久性に優れた針状ころ軸受用の保持器及び針状ころ軸受を提供する。
【解決手段】
保持器12の外径側をせん断面とし、その内径側を破断面とするように、保持器12の素材をパンチで打ち抜いてポケットを形成し、更に面押し工具を用いて、保持器の環状部と柱部の接合部(特に破断面)を押圧し、いわゆる面押し加工を施しているので、破断面を滑らかな面とし、それにより疲労破壊強度を高めることができる。
【選択図】 図2
特に保持器の柱部の付け根の強度を向上させ、より耐久性に優れた針状ころ軸受用の保持器及び針状ころ軸受を提供する。
【解決手段】
保持器12の外径側をせん断面とし、その内径側を破断面とするように、保持器12の素材をパンチで打ち抜いてポケットを形成し、更に面押し工具を用いて、保持器の環状部と柱部の接合部(特に破断面)を押圧し、いわゆる面押し加工を施しているので、破断面を滑らかな面とし、それにより疲労破壊強度を高めることができる。
【選択図】 図2
Description
本発明は、針状ころ軸受用の保持器及び針状ころに関し、特に耐久性を向上させることができる針状ころ軸受用の保持器及び針状ころ軸受に関する。
車両等に搭載されている自動変速機において、一般的には遊星歯車機構が用いられている。ここで、針状ころ軸受は、細径のころを用いていることから、内輪外径と外輪内径との差が小さいスペースにも収めることができるので、遊星歯車機構の遊星歯車を回転自在に支持するために用いると、それを搭載した自動変速機のコンパクト化に寄与するので好ましいといえる(特許文献1参照)。
ところで、近年は、燃費の向上などを目的として、自動変速機においても多段化される傾向がある。しかるに、現在は4速が主流である自動変速機を、例えば5速或いは6速に多段化しようとすると、動力を伝達する遊星歯車機構の遊星歯車の公転速度が増大するということがある。このような場合、遊星歯車を回転自在に支持する針状ころ軸受のころの挙動を抑制するために、保持器が重要な意義を持つ。
せん断打ち抜き加工でポケットを打ち抜いた針状ころ軸受用の保持器に関しては、溶接タイプの保持器と一体タイプの保持器とがある。溶接タイプの保持器は、帯状鋼材にプレス成形を施して保持器の基本断面を形成し、せん断加工で針状ころを収容するポケット孔を打ち抜き、所定長さに切断し、リング状に曲げ、両端部を溶接することによって作製される。これに対し、一体タイプの保持器は、鋼管素材などから削旋加工により基本形状を削り出した後、せん断加工で針状ころを収容するポケット孔を打ち抜くことによって作製される。
ここで、せん断加工でポケット孔を打ち抜き形成した場合、ポケット孔の周面側面には、せん断により形成された面(せん断面)部分と破断により形成された面(破断面)部分が生じる。せん断面はせん断の途中で、刃先の側面によって押し付けられながら擦られ変形してできた面であり、表面性状は良好である、これに対し、破断面は素材が破断力によって引き裂かれ変形してできた面であり、表面が粗く、表面層に微小な亀裂が存在する。
このようなせん断加工の特徴に基づき、特許文献2に開示された技術のように、針状ころを案内するポケット孔の案内面がピッチ円上においてせん断面であり、保持器の案内精度の向上を図ったものがある。また特許文献3に開示された技術のように、外径側から内径側に向けて打ち抜くことによりポケット孔を形成し、表面の粗い破断面を潤滑油溜めとして利用し、高速回転使用時に潤滑油補給効果を図ったものがある。
特開2002−349647号公報
特開平9−236130号公報
実用新案登録第2571697号公報
しかし、特に高速回転又は高負荷用途の場合、このような針状ころ軸受用保持器は、その付け根部において局部的応力集中及び亀裂の発生・伸展に起因して、柱部の破損などが生じることがある。
例えば本発明者の研究結果によれば、特に自動変速機の遊星歯車機構において、遊星歯車を支持する針状ころ軸受のように高速回転又は高負荷で使用される場合、保持器の柱部の付け根の疲労強度が低下する恐れがあることが判明した。より具体的には、遊星歯車は自転しながら太陽歯車の周囲を公転しているが、このとき針状ころ軸受におけるころは、内輪の周囲を公転すると共に、太陽歯車の周囲を公転するので、それらを合成した公転速度はころの位置によって異なり、それにより異なる遠心力を受ける。ここで、遠心力により正の加速力をうけたころは保持器の柱部に追突し、負の加速力を受けたころは保持器の柱部から追突されるというように、交互の力を受けることとなり、従って保持器の柱部の付け根が受ける応力値や応力繰返数が増大し、保持器の柱部の付け根からの疲労クラックあるいは保持器の柱部の付け根が接続された環状部の疲労クラックが生じる恐れがある。また、本来的に回転するころにはスキューが発生するため、さらに保持器の柱部の付け根に負荷される応力やその繰返数が増大する。すなわち、針状ころ軸受が自転しさらに公転するような使われ方をすると焼入処理を施した保持器でも疲労強度が不足するという課題がある。
特に、針状ころ軸受用の保持器においては、ころバレ防止用のスカーフを形成することが通常行われているが、かかるスカーフは、保持器の柱部を工具を用いて外径側から押圧して組成変形させることで形成しているため、破断面を保持器の外径側とすると、スカーフの成形不良や欠けなどが生じる恐れがある。
本発明は、特に保持器の柱部の付け根の強度を向上させ、より耐久性に優れた針状ころ軸受用の保持器及び針状ころ軸受を提供することを目的とする。
第1の本発明の針状ころ軸受用の保持器は、
一対の環状部と、前記環状部を連結する複数の柱部とよりなる針状ころ軸受用の保持器において、
前記保持器の柱部は、その素材において保持器の外径側となる面から内径側となる面に向かってせん断打ち抜き加工することで形成されており、更に、少なくとも前記環状部と前記柱部の接合部に面押し加工が施されていることを特徴とする。
一対の環状部と、前記環状部を連結する複数の柱部とよりなる針状ころ軸受用の保持器において、
前記保持器の柱部は、その素材において保持器の外径側となる面から内径側となる面に向かってせん断打ち抜き加工することで形成されており、更に、少なくとも前記環状部と前記柱部の接合部に面押し加工が施されていることを特徴とする。
第2の本発明の針状ころ軸受用の保持器は、
一対の環状部と、前記環状部を連結する複数の柱部とよりなる針状ころ軸受用の保持器において、
前記保持器の柱部は、その素材において保持器の外径側となる面から内径側となる面に向かってせん断打ち抜き加工することで形成されており、更に、少なくとも前記環状部と前記柱部の接合部にショットピーニング加工が施されていることを特徴とする。
一対の環状部と、前記環状部を連結する複数の柱部とよりなる針状ころ軸受用の保持器において、
前記保持器の柱部は、その素材において保持器の外径側となる面から内径側となる面に向かってせん断打ち抜き加工することで形成されており、更に、少なくとも前記環状部と前記柱部の接合部にショットピーニング加工が施されていることを特徴とする。
保持器を、同じ素材から同じ寸法で同じせん断打ち抜き加工で形成した場合でも、疲労強度に大きく差が生じることが確認された。保持器のポケット部をせん断打ち抜き加工で形成したときに、図1で矢印方向にパンチ工具を移動させ、せん断打ち抜き加工で打ち抜いた面には、せん断面SFと破断面BF(いずれも模式的に示す)とが生じる。せん断面SFは、せん断の途中で工具刃先の側面によって押し付けられながら擦られ変形してできた面であり、表面性状は良好である。これに対し、破断面BFは、素材が破断力によって引き裂かれ変形してできた面であり、表面が粗く、表面層に微小な亀裂が存在する。
更に、図1に示すように、保持器の柱部を工具を用いて矢印方向に押圧して、ころバレ防止用のスカーフを形成することを考える。この場合、破断面BF側にスカーフが形成されると、破断面BFの特性から、スカーフの成形不良や欠けなどが生じる恐れがあり、ころの脱落などを招く恐れがある。そこで、本発明においては、表面正常が良好なせん断面SF側にスカーフを形成するために、保持器の外径側になる面から内径側になる面に向かってせん断打ち抜き加工を行い、その結果、保持器の外径側にせん断面が形成され、その内径側に破断面が形成されることとなる。ただし、かかる場合、応力の高くなる柱部の付け根(P)が破断面に含まれるため、繰り返し応力を受けたときなど、破断面の亀裂などを起点としてクラックが生じる恐れがある。
そこで、図2に示すように、保持器の素材をパンチ工具で打ち抜いてポケットを形成した後に、面押し工具を用いて、保持器の環状部と柱部の接合部(特に破断面)を押圧し、いわゆる面押し加工を施すことにより、破断面BFを滑らかな面とし、それにより疲労破壊強度を高めることができる。尚、面押し工具は、ポケット部全周の破断面に対して押圧されても良い。
更に、第2の本発明のように、保持器の素材をパンチ工具で打ち抜いてポケットを形成した後に、保持器の環状部と柱部の接合部(特に破断面)に対してショットピーニング加工を施すことにより、破断面BFを滑らかな面とし、且つ残留圧縮応力を創成することで疲労破壊強度をより高めることができる。尚、ショットピーニング加工については良く知られているので、詳細は省略する。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して以下に詳細に説明する。図3は、本実施の形態にかかる針状ころ軸受を含む車両の自動変速機1の断面図である。図3において、エンジンのクランクシャフト2から出力されるトルクは、トルクコンバータ3を介して伝達され、更に複数列組み合わせれた遊星歯車機構4,5,6等を介して複数段に減速され、その後デファレンシャルギヤ7及びドライブシャフト8を介して、不図示の車輪に出力されるようになっている。
図4は、遊星歯車機構4(5,6も原則的に同じ)の分解図である。図4において、遊星歯車機構4は、内歯を有するリングギヤ4aと、外歯を有する太陽ギヤ4bと、リングギヤ4a及び太陽ギヤ4bに噛合する3つの遊星歯車4cと、3つのピニオンシャフト4eにより遊星歯車4cを回転自在に支持すると共に、自らも回転可能なキャリヤ4dとを有する。
遊星歯車機構4の作動原理を図5に示す。まず、1速の場合、図5(a)に示すように、太陽歯車4bをドライブ側とし、遊星歯車4c(キャリヤ)をドリブン側とし、リングギヤ4aを固定することで、大きな減速比が得られる。次に、2速の場合、図5(b)に示すように、太陽歯車4bを固定し、遊星歯車4c(キャリヤ)をドリブン側とし、リングギヤ4aをドライブ側とすることで、中程度の減速比が得られる。更に、3速の場合、図5(c)に示すように、太陽歯車4bを固定し、遊星歯車4c(キャリヤ)をドライブ側とし、リングギヤ4aをドリブン側とすることで、小さな減速比が得られる。尚、後退の場合、図5(d)に示すように、太陽歯車4bをドリブン側とし、遊星歯車4c(キャリヤ)を固定し、リングギヤ4aをドライブ側とすることで、入力に対して出力を逆転させることができる。なお、以上は遊星歯車機構4の動作の一例を示すものであり、必ずしもかかる動作に限られることはない。
図6は、本実施の形態の針状ころ軸受を遊星歯車機構に組み込んだ状態で示す図である。図6に示すように、針状ころ軸受10は、ピニオンシャフト(内輪)4eと遊星歯車(外輪)4cとの間に配置され、遊星歯車4cを回転自在に支持している。針状ころ軸受10は、複数のころ11と、それらを保持する保持器12とからなっている。ピニオンシャフト4e内には、図6で右方から軸線に沿って延在し、かつ中央で外周面に抜ける油路4fが形成されている。保持器12は外輪案内で用いられる。尚、キャリヤ4dと遊星歯車4cとの間には、ワッシャ4gが配置されている。
図7は、本実施の形態にかかる針状ころ軸受の斜視図である。図に示すように、保持器12は、一対の環状部12aを複数の柱部12cで連結した構成を有している。隣接する柱部12cの側面12b間が、ころ11を保持するポケットとなる。各柱部12cは、軸線方向中央において縮径(即ち保持器12の軸線に近接)している。このような形状を有する保持器12を溶接保持器と呼ぶ。柱部12cの両端外周近傍に、ころバレ防止のスカーフ12dを形成している。スカーフ12dは、1枚の板材をパンチして柱部12cを形成した後に、不図示の工具を用いて柱部12cの両端を押圧したときに形成される圧痕であり、それにより柱部12cの側面12bが周方向に組成変形することで、ころ11の半径方向外方への分離を阻止するように機能するものである。
本実施の形態においては、保持器12の外径側をせん断面とし、その内径側を破断面とするように、保持器12の素材をパンチ工具で打ち抜いてポケットを形成し、更に面押し工具を用いて、保持器の環状部と柱部の接合部(特に破断面)を押圧し、いわゆる面押し加工を施しているので、破断面を滑らかな面とし、それにより疲労破壊強度を高めることができる(図2参照)。
更に、変形例として、保持器の素材をパンチ工具で打ち抜いてポケットを形成した後に、保持器の環状部と柱部の接合部(特に破断面)に対してショットピーニング加工を施しても、破断面を滑らかな面とし、且つ残留圧縮応力を創成することで疲労破壊強度をより高めることができる。
以上、本発明を実施例を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、本発明は針状ころ軸受に限らず、通常のころ軸受にも適用できる。
本発明によれば、保持器の柱部の付け根の強度を向上させ、より耐久性に優れた針状ころ軸受用の保持器及び針状ころ軸受を提供することができる。
1 自動変速機
4〜6 遊星歯車機構
10 針状ころ軸受
11 ころ
12 保持器
4〜6 遊星歯車機構
10 針状ころ軸受
11 ころ
12 保持器
Claims (3)
- 一対の環状部と、前記環状部を連結する複数の柱部とよりなる針状ころ軸受用の保持器において、
前記保持器の柱部は、その素材において保持器の外径側となる面から内径側となる面に向かってせん断打ち抜き加工することで形成されており、更に、少なくとも前記環状部と前記柱部の接合部に面押し加工が施されていることを特徴とする針状ころ軸受用の保持器。 - 一対の環状部と、前記環状部を連結する複数の柱部とよりなる針状ころ軸受用の保持器において、
前記保持器の柱部は、その素材において保持器の外径側となる面から内径側となる面に向かってせん断打ち抜き加工することで形成されており、更に、少なくとも前記環状部と前記柱部の接合部にショットピーニング加工が施されていることを特徴とする針状ころ軸受用の保持器。 - 請求項1又は2に記載の針状ころ軸受用の保持器を用いたことを特徴とする針状ころ軸受。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003310110A JP2005076811A (ja) | 2003-09-02 | 2003-09-02 | 針状ころ軸受用の保持器及び針状ころ軸受 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
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---|---|
JP2005076811A true JP2005076811A (ja) | 2005-03-24 |
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ID=34412076
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2003
- 2003-09-02 JP JP2003310110A patent/JP2005076811A/ja active Pending
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