JP2007016956A - ころ軸受およびころ軸受の保持器 - Google Patents

ころ軸受およびころ軸受の保持器 Download PDF

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Abstract

【課題】 ころを安定して案内することができるころ軸受およびころ軸受の保持器を提供する。
【解決手段】 針状ころ軸受の保持器は、V型フォーム成型工程の後に、ポケット抜き工程を行っている。側壁面に含まれるせん断面のうち、柱部の折り曲げ部に相当する部分の形状測定線32は、局部的な凹凸部分を有さず、側壁面の中央部に位置するせん断面は平らであり、針状ころの外形輪郭線31に沿う形状である。
【選択図】 図5

Description

この発明は、ころ軸受およびころ軸受の保持器に関し、特に、2サイクルエンジンのコンロッド等に使用されるシェル形針状ころ軸受およびこのようなシェル形針状ころ軸受に含まれる保持器に関する。
シェル形針状ころ軸受は、軸受投影面積が小さいにもかかわらず、高荷重の負荷を受けることができ、かつ、高剛性であるため、排気量の小さい2サイクルエンジンのコンロッド等に使用されている。ここで、シェル形針状ころ軸受は、鋼板を絞り加工等して成型されたシェル形外輪と、針状ころと、シェル形外輪の内径面に沿うように配置される保持器とを含む。保持器には、針状ころを保持するためのポケットが設けられ、各ポケットの間に位置する柱部で、各針状ころの間隔を保持する。
ここで、上記したシェル形針状ころ軸受に含まれる保持器の製造方法について、簡単に説明する。まず、保持器の材料となる帯鋼を、ころを保持することができる大きさのポケット穴を開口するようポケット抜きする。その後、帯鋼の断面形状がV字状となるように、成型プレスにてV型フォーム成型加工する。V型フォーム成型加工後、保持器の円周長さとなるように切断し、切断された鋼板を円筒状に折り曲げ、折り曲げられた鋼板の端面同士を溶接等により接合し、熱処理工程を行い、保持器を製造する。
ここで、V型フォーム成型加工を行うと、径方向の断面高さを大きく確保することができるため、次のような効果が生じる。図6は、V型フォーム成型加工を行った後に、切断された帯鋼を円筒状に折り曲げる前後の径方向の断面図である。保持器104が円筒状に折り曲げられる前(図6(a))の柱部106の内径面112側の間隔は、保持器104が円筒状に折り曲げられた後(図6(b))に小さくなるため、ポケットに保持された針状ころ103が、内径面112側に抜け落ちることを防止することができる。この場合、さらに、柱部106の外径面111側に、ころ抜け防止部を設けることにより、針状ころ103が外径面111側に抜け出るのを防止するようにしてもよい。
また、図7は、針状ころ103が保持された保持器104が、外輪102および軸101に組み込まれた状態を示す図であり、V型フォーム成型加工を行うことにより、針状ころ103を案内するのに最も挙動が安定する位置であるPCD(Pitch Circle Diameter)105付近で、針状ころ103を案内することもできる。
なお、上記した工程により製造された保持器と同様の形状を有する針状ころ軸受の保持器が、特開2005−98368号公報(特許文献1)に記載されている。
特開2005−98368号公報(段落番号0040、図2)
上記したポケット抜き工程では、打ち抜き刃を有するポンチ等で、保持器の材料である帯鋼に対し、ポケット形状に刃先を押し当てて打ち抜くことにより行う。この場合、打ち抜かれたポケットの側壁面、すなわち、各ポケットの間に位置する柱部の側壁面には、せん断面および破断面が発生することになる。せん断面とは、ポンチ等の打ち抜き刃の刃先によって打ち抜かれて切断される平滑な面である。また、破断面とは、ポンチ等の打ち抜き刃によって打ち抜くときに、刃先によって押し込まれた材料で引きちぎられるように切断される粗い面である。
ここで、ポケット抜き工程において、円筒状に折り曲げられたときに、内径面となる側からポケットを打ち抜くと、柱部の側壁面の外径面となる側に破断面が位置することになる。
図8は、この場合の保持器104の径方向の断面図である。図8を参照して、内径面112側となる図中の矢印Xの方向からポケット抜きを行うと、保持器104はV型フォーム成型加工されているため、針状ころを保持したときに、側壁面110の中央部のPCD105付近に、破断面109が位置することになる。そうすると、針状ころを安定して案内することができない。
このような問題に対応するため、ポケット抜き工程において、円筒状に折り曲げられたときに、外径面となる側からポケットを打ち抜くことが考えられる。そうすると、柱部の側壁面の外径面となる側に、せん断面が位置することになる。
この場合のPCD上における側壁面の長手方向に走査して得られる形状測定線114を、針状ころの外形輪郭線113と重ねて、図9に示す。図9中、縦方向の1枡は10μm、横方向の1枡は0.2mmである。図9を参照して、形状測定線114は、せん断面である中央部に対して、破断面である端部が凹んだ形状となる。そうすると、針状ころは、側壁面の中央部のせん断面に接触して案内されることになる。
しかし、中央部のせん断面のうち、柱部の折り曲げ部分に相当する部分115は、中央部のせん断面に対して、針状ころの外形輪郭線113側に凸状となっている。これは、V型フォーム成型加工において、柱部がV字状に折り曲げられたときに、柱部の外径側の余肉によって、柱部の折り曲げ部分に相当する部分の側壁面が盛り上がったことによるものである。
針状ころを案内するせん断面にこのような凸状部分が含まれると、ころの案内時に、中央部のせん断面の全体がころの転動面と当接することにならず、凸状部分が局部的に当接することになり、安定して針状ころを案内することができない。
この発明は、ころを安定して案内することができるころ軸受およびころ軸受の保持器を提供することを目的とする。
この発明に係るころ軸受は、複数のころと、ころを保持する保持器とを有する。上記した保持器は、一対の環状部と、ころを収容するポケットを形成するように一対の環状部を連結し、その中央部を折り曲げて径方向内側に凹んだ形状とした柱部とを含む。ここで、柱部の側壁面は、径方向外側に位置し、ポケットを形成するように打ち抜き刃によって打ち抜かれるせん断面と、径方向内側に位置し、打ち抜き刃によって押し込まれる材料で引きちぎられる破断面とを有する。上記したせん断面のうち、ころの転動面に沿う案内面は、長手方向に走査して得られる形状測定線において、局部的な凹凸部分を有しない平らな形状線を有する。
このように構成することにより、ころを案内するせん断面において、ころと局部的に当接する部分がなくなる。したがって、中央部のせん断面の全体でころと当接することになるため、安定してころを案内することができる。
好ましくは、ころを案内するせん断面の軸方向の長さは、ころの軸方向の長さの60%以上である。こうすることにより、ころを安定して案内する案内面を十分に確保することができ、より安定してころを案内することができる。
この発明の他の局面においては、ころ軸受の保持器は、複数のころを保持する。上記した保持器は、一対の環状部と、ころを収容するポケットを形成するように一対の環状部を連結し、その中央部を折り曲げて径方向内側に凹んだ形状とした柱部とを含む。ここで、柱部の側壁面は、径方向外側に位置し、ポケットを形成するように打ち抜き刃によって打ち抜かれるせん断面と、径方向内側に位置し、打ち抜き刃によって押し込まれる材料で引きちぎられる破断面とを有する。上記したせん断面のうち、ころの転動面に沿う案内面は、長手方向に走査して得られる形状測定線において、局部的な凹凸部分を有しない平らな形状線を有する。
このようなころ軸受の保持器を使用することにより、ころを安定して案内することができるころ軸受を提供することができる。
この発明によれば、ころを案内するせん断面において、ころを案内するせん断面において、ころと局部的に当接する部分がなくなる。したがって、せん断面の中央部の全体でころと当接することになるため、安定してころを案内することができる。
また、このような針状ころ軸受の保持器を使用することにより、ころを安定して案内することができる針状ころ軸受を提供することができる。
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施形態に係るころ軸受をシェル形針状ころ軸受として使用し、コンロッドに取り付けられた状態を示す断面図である。図1を参照して、針状ころ軸受11は、外輪12と、外輪12の内径面に沿うように配置される複数の針状ころ13と、針状ころ13を保持する保持器14とを有する。保持器14は、外輪12の両端面側に位置する一対の環状部と、各針状ころを収容するポケットを形成するように一対の環状部を連結し、その中央部を折り曲げて径方向内側に凹んだ形状を有する柱部とを有する。針状ころ軸受11は、コンロッド15に設けられた係合穴に取り付けられる。
ここで、針状ころ軸受11を構成する部材のうち、保持器14の製造方法について説明する。
図2は、針状ころ軸受11の保持器14を製造する工程を示すフローチャートである。また、図3は、図2に示された工程のうち、代表的な工程を表す概略図である。図2および図3を参照して、保持器14の製造方法について説明する。
まず、保持器14の材料となる鋼板に対し、帯鋼の状態(図3(a))において、断面形状がV字状となるようにプレス成型するV型フォーム成型工程(図3(b))を行う。ここで、V字状とは、円筒状に折り曲げられたときに、帯鋼の中央部と、帯鋼の端部とが、径方向に段差が設けられるように押し曲げることをいう。これは、後の曲げ工程で円筒状に折り曲げたときに、外径面となる側から内径面となる側に向かって、プレスで押圧することによって行う。
次に、V型フォーム成型工程によって押し曲げられた帯鋼に対し、針状ころ13を保持するポケットを形成するためのポケット抜き工程(図3(c))を行う。ポケット抜き工程は、打ち抜き刃を有するポンチで、帯鋼に対し、ポケット形状に刃先を押し当てて打ち抜くことにより行う。ここで、ポンチの打ち抜く方向であるが、後の曲げ工程で円筒状に折り曲げたときに、外径面となる側から打ち抜きを行う。したがって、ポケット抜き工程によって形成されたポケット間に位置する柱部のうち、その中央部は、帯鋼の端部に位置する環状部よりも径方向の内側に凹んだ形状となる。
こうすることにより、最終的に製造された保持器について、外径面となる側の柱部の側壁面はせん断面となり、内径面となる側の柱部の側壁面は破断面となる。
また、V型フォーム成型加工を行った後にポケット抜き工程を行うため、V型フォーム成型工程で折り曲げられた柱部の側壁面において、折り曲げによる偏肉を生ずることはない。したがって、ポケット抜き工程により発生した側壁面のせん断面に、柱部の折り曲げ部分において凸状となる部分が含まれることはない。
その後、保持器14の円周長さとなるように、帯鋼を切断する切断工程を行う。次に、切断された鋼板を、外輪12の内径面に沿うような円筒状に折り曲げる曲げ工程(図3(d))を行い、その後、両端面を溶接等により接合する接合工程を行った後、軟窒化処理や浸炭焼入処理等の熱処理工程を行って、保持器14が製造される(図3(e))。
なお、このようにして製造された保持器14のポケットに、複数の針状ころ13を組み込み、針状ころ13が組み込まれた保持器14を外輪12に取り付け、針状ころ軸受11が製造される。
図4は、上記した製造工程で製造された保持器14の軸方向の断面図である。図4において、点線で示された部分は、保持器14のポケットに保持された針状ころ13を示しており、一点鎖線は、PCD26を示す。また、この場合のPCD26における側壁面25の長手方向に走査して得られる形状測定線32を、針状ころ13の外形輪郭線31と重ねて、図5に示す。図5中、縦方向の1枡は10μm、横方向の1枡は0.2mmである。この場合において、針状ころ13を案内するせん断面23の軸方向の長さは、針状ころ13の軸方向の長さの60%以上確保されている。
図4および図5を参照して、柱部22の中央部は、上述したV型フォーム成型工程において、断面形状がV字状となるように内径面28側に押し曲げられているため、環状部21よりも内径面28側に位置することになる。また、上述したポケット抜き工程において、外径面27側からポンチの打ち抜き刃を押し当てて打ち抜いているため、柱部22の側壁面25では、外径面27側にはせん断面23が位置し、内径面28側には破断面24が位置している。
したがって、PCD26上において、側壁面25の中央部には、外径面27側のせん断面23が位置し、側壁面25の端部には、内径面28側の破断面24が位置することになる。
ここで、柱部の折り曲げ部に相当する部分の形状測定線32は、局部的な凹凸部分を有さず、側壁面25の中央部に位置するせん断面23は平らであり、針状ころ13の外形輪郭線31に沿う形状となる。そうすると、針状ころ13の中央部と側壁面25の中央部のせん断面23は、針状ころ13と局部的に当接することなく、せん断面23の全体で針状ころ13と当接することができ、安定して針状ころ13を案内することができる。
なお、せん断面23の長さをころ長さの60%以上とするには、上記したV型フォーム成型工程において、PCD26上のせん断面23の長さを、ころ長さの60%以上になるように押し曲げることにより行ってもよい。具体的には、図4中のAの寸法、すなわち、PCD26における一方の環状部21側の破断面24の寸法を、ポケットの軸方向の長さであるBの寸法の20%以下となるように、V字状に、かつ、径方向に押し曲げることにより行う。このようにすると、針状ころ13と平らな面で接触するせん断面23を多くすることができ、針状ころ13の挙動を抑え、より安定して針状ころ13を案内することができる。
ここで、実施例として、図5で示した、せん断面がころ長さの60%以上である保持器が含まれる針状ころ軸受、サンプルAとして、せん断面がころ長さの50%である保持器が含まれる針状ころ軸受、従来品として、従来の保持器が含まれる針状ころ軸受について、各針状ころ軸受をコンロッドに使用して、耐焼付き性を確認する試験を実施した。
試験条件は、以下の通りである。また、本試験結果を、表1に示す。
混合比 :ガソリン/潤滑オイル=100/1
運転パターン :フルスロットル
運転時間 :2時間又は焼き付くまで
Figure 2007016956
表1は、上記した試験の結果を示す表である。表1を参照して、従来品においては、針状ころ軸受10個中、7個に対して焼付きが発生した。また、サンプルAにおいては、針状ころ軸受10個中、5個に対して焼付きが発生した。実施例においては、針状ころ軸受10個中、焼付きが発生した軸受はなかった。したがって、せん断面の軸方向の長さは60%あれば十分である。
なお、上記の実施の形態においては、シェル形針状ころ軸受について説明したが、これに限らず、ソリッド形針状ころ軸受であってもよい。
また、上記した実施の形態においては、針状ころ軸受について説明したが、これに限らず、棒状ころ軸受、円筒ころ軸受等、他のころ軸受であってもよい。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明に係るころ軸受およびころ軸受の保持器は、ころを安定して案内することができるため、スキューを抑制し、耐焼付き性を向上させた2サイクルエンジンのコンロッド等に使用される針状ころ軸受およびこのような針状ころ軸受に使用される保持器に有効に利用できる。
この発明の一実施形態に係るころ軸受を針状ころ軸受11とし、コンロッド15に取り付けた状態を示す断面図である。 針状ころ軸受11の保持器14の製造工程を示すフローチャートである。 保持器14の製造工程のうち、代表的な工程を示す概略図であり、帯鋼の状態(a)、V型フォーム成型工程(b)、ポケット抜き工程(c)、曲げ工程(d)、最終製品(e)を示す。 針状ころ軸受11の保持器14の軸方向の断面図である。 PCD26における側壁面25の形状測定線32を、針状ころ13の外形輪郭線31と重ねて示す図である。 帯鋼を円筒状に折り曲げる前(a)および折り曲げた後(b)の状態を示す径方向の断面図である。 V型フォーム成型加工を行った保持器104のポケットに、針状ころ103を保持した状態を示した図である。 内径面112側にせん断面108、外径面111側に破断面109が位置された場合の径方向の断面図である。 従来における外径面111側にせん断面108、内径面112側に破断面109が位置された場合のPCD105における側壁面110の形状測定線114を、針状ころ103の外形輪郭線113と重ねて示す図である。
符号の説明
11 針状ころ軸受、12 外輪、13 針状ころ、14 保持器、15 コンロッド、21 環状部、22 柱部、23 せん断面、24 破断面、25 側壁面、26 PCD、27 外径面、28 内径面、31 外形輪郭線、32 形状測定線。

Claims (3)

  1. 複数のころと、
    前記ころを保持する保持器とを有するころ軸受であって、
    前記保持器は、一対の環状部と、前記ころを収容するポケットを形成するように前記一対の環状部を連結し、その中央部を折り曲げて径方向内側に凹んだ形状とした柱部とを含み、
    前記柱部の側壁面は、径方向外側に位置し、前記ポケットを形成するように打ち抜き刃によって打ち抜かれるせん断面と、径方向内側に位置し、打ち抜き刃によって押し込まれる材料で引きちぎられる破断面とを有し、
    前記せん断面のうち、前記ころの転動面に沿う案内面は、長手方向に走査して得られる形状測定線において、局部的な凹凸部分を有しない平らな形状線を有する、ころ軸受。
  2. ころを案内する前記せん断面の軸方向の長さは、ころの軸方向の長さの60%以上である、請求項1に記載のころ軸受。
  3. 複数のころを保持するころ軸受の保持器であって、
    一対の環状部と、前記ころを収容するポケットを形成するように前記一対の環状部を連結し、その中央部を折り曲げて径方向内側に凹んだ形状とした柱部とを含み、
    前記柱部の側壁面は、径方向外側に位置し、前記ポケットを形成するように打ち抜き刃によって打ち抜かれるせん断面と、径方向内側に位置し、打ち抜き刃によって押し込まれる材料で引きちぎられる破断面とを有し、
    前記せん断面のうち、前記ころの転動面に沿う案内面は、長手方向に走査して得られる形状測定線において、局部的な凹凸部分を有しない平らな形状線を有する、ころ軸受の保持器。
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