JP2005106211A - 保持器付きころ - Google Patents

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Abstract

【課題】 限られたスペース内で軸受負荷容量を大きくすることができ、かつ機器への非組み込み状態において、外径側と内径側の両方にころの脱落防止が行えて、組み込み性にも優れた保持器付きころを提供する。
【解決手段】 保持器1と複数のころ2とでなる。保持器1は、ころ配列のピッチ円直径PCDよりも大径の環状部1aと、この環状部1aの軸方向両端から内径側に突出する鍔部1bとを有する。環状部1aには、ころ2がそれぞれ入る複数のポケット3が、周方向に並んで形成され、互いの間と部分が柱部7となる。保持器1には、ころ2の保持器内径側への抜け止めを行う手段として、環状部1aの内径部における隣合うころ2間の部分に曲げ片状のころ保持爪10Aを設ける。保持器1の全周に対するころ2の充填率Pを80%以上とする。充填率Pは、P=(d×n)/(D×π)である。ただし、d:ころ径、n:ころ本数、D:ころ配列のピッチ円直径とする。
【選択図】 図11

Description

この発明は、一般産業機械に用いられる高負荷容量型の保持器付きころ、特に遊星歯車装置の遊星歯車の支持用等の厳しい条件に適用できる保持器付きころに関する。
従来、保持器付きころとして、図28に示すように、断面M形の保持器70を用いたものが一般的に使用されている。これは、ころピッチ円直径PCDより小径の中央環状部71と、ころピッチ円直径PCDより大径の外方環状部72と、外方環状部72から内径側に折曲された鍔部73,73からなっている。ころ74の外方への抜け止めを外方環状部72で、また内方への抜け止めを中央環状部71によって行う。すなわち、それぞれ環状部71,72の円周等配位置に、ころ74を収容するポケット75を形成しているが、このポケット75に突出した係止片76を幅を、ころ74の外径よりも僅かに小さくしている。同図の保持器付きころは、保持器70に対するころ74の内外の落ち止め機能を有するため、保持器付きころを一体品として取り扱うことができ、機器への組み込み前の状態における取扱や運搬性に優れている。
この他に、内外の抜け止めを可能とした保持器付きころとして、ころ端面に設けた突出部を、保持器鍔部の内側面に係合させるもの(特許文献1)や、保持器を外方部材と内方部材とで構成したもの(特許文献2)等が提案されている。
特開2000−220645号公報 特開2000−179544号公報
一般に、限られたスペース内で軸受負荷容量を大きくするためには、ころ本数を多くすれば良い。しかし、図28のようなM形の保持器70を用いたものでは、ころ本数を多くすると、内径側の中央環状部71で形成される柱部の幅寸法aが小さくなり、加工上の限界ができるだけでなく、保持器強度が低下する。そのため、ころ本数は、保持器全周に対するころの充填割合である充填率で示すと、45〜76%程度となっており、これ以上に充填率を上げることが難しい。そのため、特に、遊星歯車装置の遊星歯車の支持用軸受等に用いる場合、軸受設置スペースや作用負荷等で条件が厳しく、遊星歯車装置コンパクト化を図る上での妨げ要因となっている。
また、従来の特許文献1や特許文献2に開示された保持器付きころは、各種の工夫がなれているが、上記充填率については、解明されていない。
なお、一定のスペース内で最大の負荷容量を得る軸受として総ころ形式があるが、機器への未組み込み状態では、各ころが保持器から脱落するため、取り扱い上の問題点、すなわち組立、分解時の取扱性の悪さがあり、また、使用中の、ころスキューによる機能的な問題が内在している。
この発明の目的は、限られたスペース内で軸受負荷容量を大きくすることができ、かつ機器への非組み込み状態において、外径側と内径側の両方にころの脱落防止が行えて、組み込み性にも優れた保持器付きころを提供することである。
この発明の保持器付きころは、保持器と複数のころとでなり、上記保持器は、ころ配列のピッチ円直径よりも大径の環状部と、この環状部の軸方向両端から内径側に突出する鍔部と、上記環状部に円周方向に並んで形成されて互いの間で柱部を形成し内部に上記ころがそれぞれ入る複数のポケットと、上記ころの保持器内径側への抜け止めを行う抜け止め手段とを有する保持器付きころにおいて、保持器全周に対するころの充填率Pを80%以上としたことを特徴とする。 充填率Pは、次式で示される値とする。
P=(d×n)/(D×π)
ただし、d:ころ径、n:ころ本数、D:ころ配列のピッチ円直径、である。
この構成によると、ころの充填率Pを80%以上としたため、限られたスペース内で軸受負荷容量を大きくすることができる。また、保持器は、ピッチ円直径よりも大径の環状部にポケットを形成し、保持器内径側への抜け止めを行う抜け止め手段を設けたため、機器への非組み込み状態において、外径側と内径側の両方にころの脱落防止が行え、組み込み性にも優れたものとなる。
この発明において、上記抜け止め手段が、上記鍔部の内側面に円周方向に沿って形成されて上記各ころの端面中央に設けられた突出部が係合する環状溝であっても良い。上記環状溝は、例えば鍔部の内側面におけるころ配列のピッチ円直径部に形成する。
この構成によると、機器への非組み込み状態において、ころは、外径側にはポケットの両側縁で抜け止めされ、内径側にはころの両端が保持器の環状溝に係合することで抜け止めされる。保持器のポケット間の柱部は、外径側だけに設けられるため、従来の抜け止めの目的で内外径部にわたる柱部を設けたM形保持器に場合に比べて、保持器の形状がシンプルとなり、製造が容易となって、ポケット間の柱部分をどこまで狭くできるかの加工限界を上げることが可能となる。これにより、一定スペースでころ本数をできるだけ増やすことができ、最大の負荷容量を有するものとできる。環状溝の形成は必要であるが、環状部は鍔部に設けるため、柱部幅を狭めるための障害となり難い。
この発明において、上記抜け止め手段は、上記記鍔部の内側面における隣合うころの間の部分から突出した突起であっても良い。
この構成の場合、保持器の柱部と突起とで、ころの外径側への抜け止めと内径側への抜け止めとを行わせるため、従来のM形の保持器を用いるものに比べて、柱部が簡素な形状となり、柱部の位置を外径方向に移動する事が可能となり、ころ間のすき間を小さくする事が出来る。すなわち一定のスペース内でころ本数を多くすることができ、大きな負荷容量を得ることができる。ころの内径側への抜け止めは、保持器の環状部分に設けた突起で行うため、保持器が1部品で構成でき、部品点数が削減できて、低コストとできる。また内径側への抜け止め手段が、保持器の環状部分に設けられた局部的なものであるため、抜け止め手段が設けられていても、軸受内の空間容積の減少に影響が少なく、内径側に柱部を設ける場合に比べて通油性が向上する。しかも、抜け止め手段が突起であるため、加工が簡単で低コスト化が図れる。
この発明において、上記抜け止め手段が、上記鍔部の内径部における隣合うころ間の部分に設けられた曲げ片状のころ保持爪であっても良い。この場合に、上記保持器は、上記ころの未組立の状態で熱処理しても良い。またこの場合に、上記ころ保持爪は、保持器全体の硬度と同等以下の硬度であって、Hv400以下の硬度に焼鈍または防浸炭処理されたものとしても良い。上記のようにころの未組立の状態で熱処理する代わりに、上記保持器にころを組み込んだ状態で熱処理しても良い。
この構成の場合、保持器の柱部ところ保持爪とで、ころの外径側への抜け止めと内径側への抜け止めを分担させたため、柱部が簡素な形状となり、柱部の位置を従来よりも外径側に配置することが可能となり、ころ間の隙間を小さくできる。このため、保持器全周に対するころの充填率Pを高めることができて、大きな負荷容量を得ることができる。ころの内径側への抜け止めは、保持器の鍔部に設けたころ保持爪で行うため、保持器が1部品で構成でき、部品点数が削減できて、低コストとできる。また、上記ころ保持爪が保持器の鍔部に設けられたものであるため、柱部と異なり、軸方向の一部に局部的に設けたもので済む。そのため、軸受内の空間容積の減少に影響が少なく、内径側に柱部を設ける場合に比べて通油性が向上する。
上記保持器を、ころの未組立の状態で熱処理する場合は、ころとは別に保持器に適した熱処理条件で熱処理が行えるという利点が得られる反面、ころの組み込みのために、熱処理後にころ保持爪を折り曲げる必要があり、この折り曲げ加工時のころ保持爪の損傷が問題となる。しかし、上記のように、ころ保持爪を、保持器全体の硬度と同等以下の硬度であって、Hv400以下の硬度に焼鈍または防浸炭処理されたものとした場合は、曲げ加工を容易に行うことができ、ころ保持爪が折り曲げ時に割れ等の損傷を生じることが回避される。また、ころ保持爪は、曲げ加工で形成できるため、ステーキングによる場合に比べて加工が簡単である。保持器にころを組み込んだ状態で熱処理する場合は、ころと保持器を同時に熱処理することができて、処理コストを安くすることができると共に、熱処理前に保持爪加工することで、破損の恐れなく、容易に加工することができる。
この発明において、上記保持器が、外方部材、および上記抜け止め手段となる内方部材からなり、上記外方部材が上記ピッチ円直径よりも大径の環状部と、この環状部の軸方向両端から内径側へ突出した鍔部とを有し、上記内方部材は、ころ配列のピッチ円直径よりも小径の環状に形成され、円周方向に並び上記各ころをそれぞれ内径側へ突出させる複数のポケットを有するものとしても良い。
この構成の場合、保持器を外方部材および内方部材の2部品としたため、外側へのころ抜け止めと、内側へのころ抜け止めの機能を、外方部材および内方部材にそれぞれ分担させることができ、各部材の機能が簡略化される。このため、外方部材および内方部材の形状がシンプルとなり、製造が容易となって、ポケット間の柱部分をどこまで狭くできるかの加工限界を上げることが可能となる。これにより、一定スペースでころ本数をできるだけ増やすことができ、最大の負荷容量を有するものとできる。また、このように外方部材および内方部材の形状がシンプルとなることから、ころ案内機能も向上し、強度面、精度面でも優れたものとできる。特に、柱部幅寸法の確保の厳しい内方部材の柱部の強度が低下する場合は、内方部材の板厚を外方部材よりも厚くすることも可能で、最適設計の自由度が高くなる。
このように、保持器を外方部材および内方部材からなるものとする場合に、上記内方部材が、ころ配列の内接円径よりも小径に縮径可能とされたものとしても良い。
内方部材が、ころの内接円径よりも小径に縮径可能とされているため、組立時において、鍔付き側の部材である外方部材のポケットにころを収容した後、内方部材を装着するときに、内方部材を縮径状態としてころ配列の内径側から装着することができる。このため組立性に優れる。
この発明の保持器付きころは、上記のいずれの構成のものであっても、遊星歯車装置における遊星歯車とこの遊星歯車を支持する支持軸との間に介在し、上記ころが上記遊星歯車の内径孔内面と上記支持軸とに転接するものとしても良い。
遊星歯車装置では、遊星歯車に大きなラジアル荷重が作用し、またその遊星歯車の支持部は限られたスペースとなる。このため、この発明の保持器付きころを用いることで、その限られたスペース内で大負荷容量が得られるという効果が有効に発揮され、遊星歯車装置の小型化に貢献することができる。
この発明の保持器付きころは、保持器が、ころ配列のピッチ円直径よりも大径の環状部と、この環状部の軸方向両端から内径側に突出する鍔部と、上記環状部に円周方向に並んで形成されて互いの間で柱部を形成し内部に上記ころがそれぞれ入る複数のポケットと、上記ころの保持器内径側への抜け止めを行う抜け止め手段とを有するものであって、保持器全周に対するころの充填率Pを80%以上としたため、限られたスペース内で軸受負荷容量を大きくすることができ、かつ機器への非組み込み状態において、外径側と内径側の両方にころの脱落防止が行えて、組み込み性にも優れたものとなる。
この発明の一実施形態を図1ないし図3に基づいて説明する。この保持器付きころは、保持器1と、複数の針状のころ2とでなる。保持器1は、ころ配列のピッチ円直径PCDよりも大径の環状部1aと、この環状部1aの軸方向両端から内径側に突出する鍔部1bとを有する。環状部1aには、各ころ2が抜け止め状態に入るポケット3が、円周方向複数箇所に、等間隔等で設けられており、隣合うポケット3間の部分が柱部7となる。保持器1の両側の鍔部1bには、その内側面のピッチ円直径部に、ころ2の保持器内径側に対する抜け止め手段となる環状溝4が形成されている。ころ2は、両端面の中心に突出部である係合突部2aを有し、この係合突部2aで環状溝4に係合している。
保持器1の全周に対するころ2の充填率Pは、80%以上としてある。充填率Pは、次式で示される値である。
P=(d×n)/(D×π)
ただし、d:ころ径、n:ころ本数、D:ころ配列のピッチ円直径、とする。
保持器1の鍔部1bの環状溝4は、図示の例では台形状断面形状とされているが、環状溝4の断面形状は、ころ2の端部を環状部1aと反対側に抜け止め状態に保持できる形状であれば良く、円弧状など、種々の断面形状のものとできる。また、環状溝4は、必ずしも溝中心に対称形状である必要はなく、例えば、鍔部1bの先端に環状溝4の側面を形成する突条が形成され、鍔部1bの基端側には特に溝側面となる部分を有しない形状のものであっても良い。ころ2の係合突部2aは、台形状断面形状の円形の突部とされているが、球面状の突部等であっても良い。また、係合突部2aを設ける代わりに、ころ2の端面の全体を球面状等の凸曲面形状の突出部としても良い。その場合、保持器1の鍔部1bの環状溝4は、鍔部1bの略全体幅にわたる溝幅としても良い。
保持器2は、ポケットの側面が軸方向の中央部において凹んでおり、この凹み部分5の両側のポケット側面形成部分が、ころ案内部3aとされている。凹み部分5は、環状部1aを内外径面に貫通した浅い台形溝状に形成されている。これにより、ポケット3の中央部のポケット幅Waが、その両側のポケット幅Wbよりも広がっている。
また、ポケット3間の柱部7の外径側面における保持器軸方向の中央部には円周方向溝6が形成されている。円周方向溝6の溝幅Lbは、ポケット側面の凹み部分5の幅Laよりも狭く形成されている。
図3(A)は、柱部7の円周方向溝6がある部位の横断面形状を、同図(B)は柱部7の円周方向溝6がない部位の横断面形状をそれぞれ示す。同図に示すように、柱部7の断面形状は、外径側面7aのポケット開口縁7aaが、保持器環状部1aの外径面位置1aaよりもピッチ円側に位置している。このポケット開口縁7aaは、面だらし部で形成されていて、柱部7の柱幅の中央付近では、その外径側面7aは、保持器環状部1aの外径面位置1aaと等しい位置となっている。面だらしを設ける範囲は、ポケット開口縁7aaだけであっても、またポケット開口縁7aaから柱幅の中央側へ広がる範囲であっても良い。面だらしの形成は、保持器1が鋼製ないし金属製のものである場合、タンブラ加工等で行われる。
この構成の保持器付きころによると、保持器1の全周に対するころ2の充填率Pを80%以上としたため、限られたスペース内で軸受負荷容量を大きくすることができる。そのため、例えば、後に示す遊星歯車装置における遊星歯車の支持等に用いられた場合に、その効果が有効に発揮される。
また、この構成の保持器付きころによると、次の各作用が得られる。保持器1は、各ポケット3間の柱部7で、ころ2の外径側への抜け止めが行え、また内径側の抜け止めは、ころ2の両端が保持器1の環状溝4に係合することで行える。ころ2の両端と環状溝4との係合は、外径側への抜け止め機能も果たすが、柱部2により、一層確実な抜け止め効果が得られる。このように、ころ2は、内外径の両方向に抜け止めされるため、軸受使用機器への非組み込み状態で、ころ2が脱落することがなく、軸受の取扱性が良い。
各ころ2を、その係合突部2aが両側の鍔部1bの環状溝4に係合するように保持器1に組み込むには、内径側から保持器1の鍔部1b,1b間にころ2を押し込む。このとき押し込み力で保持器1が若干の弾性変形を生じて、鍔部1b,1b間の幅が広がる。ころ2の両端の係合突部2aが鍔部1b,1b間に入ると、弾性復元力で鍔部1b,1bの幅が復帰し、ころ2は、両側の係合突部2aが環状溝4に係合した状態に取付けられる。
このように、保持器1は、ころ2の径方向内外の両方向に抜け止めする機能を得るようにしたが、内径側への抜け止めを鍔部1bの環状溝4で行うようにしたため、柱部7の形状は、V字状等に曲げる必要がなく、簡素な形状とできる。そのため、加工上の制約が少なく、柱部1bの柱幅をできるだけ狭めることが容易で、ころ2の本数の増大、あるいはころ2の径の増大を図り、軸受設置スペースを増やすことなく、上記充填率Pを高めて負荷容量を増大することができる。
軸受使用時において、ころ2は、ポケット3の側面における両端のころ案内部3aで案内される。ころ案内部3aは、ポケット両端だけに設けられていて、ポケット側面の中央部は凹み部5となっているため、保持器内外径面の間の循環油の流れが凹み部5により得られ、ころ案内部3aによる潤滑油の流れの阻害で潤滑性が低下することが防止される。そのため、潤滑不足によるトルクの増大が防止される。柱部7には、凹み部5の幅内で外径側に円周方向溝6が形成されているため、これよっても潤滑油の流動性が向上する。
また、柱部7の外径側面7aのポケット開口縁7aaが、保持器環状部1aの外径面位置1aaよりもピッチ円(PCD)側に位置しているため、ポケット開口縁7aaのエッジによる潤滑油の掻き取り作用が緩和され、潤滑不足による回転時のトルク損失が抑制される。
製作例を説明する。この実施形態の保持器付きころにおいて、表1の実施例1,2に示す柱幅、ころ径、ころ本数、およびピッチ円直径(PCD)のものを製作した。また、図28に示す保持器付きころの比較例1を製作した。
第1の実施例における保持器付きころは、内径:46mm、外径:φ66mm、幅22.8mmであり、そのころ長さは19.1mm、保持器内径はφ50.5mm、保持器外径はφ65.7mm、環状部1aの肉厚は2.0mmとした。
第2の実施例における保持器付きころは、内径:39mm、外径:φ59mm、幅22.8mmであり、そのころ長さは19.1mm、保持器内径はφ44.3mm、保持器外径はφ55.1mm、環状部1aの肉厚は1.9mmとした。
比較例1における保持器付きころは、内径:46mm、外径:φ66mm、幅22.8mmであり、そのころ長さは18mm、保持器内径はφ50.2mm、保持器外径はφ65.5mm、環状部1aの肉厚は2.0mmとした。
Figure 2005106211
表1に示すように、各実施例1,2では、保持器全周に対するころの充填率Pが、いずれも91%となり、この発明の規定する80%以上という要件を十分に充足するものとできた。この場合に、保持器1やころ2の製作や、寸法,強度等において、無理が生じず、製作が簡単で強度にも優れたものとできた。
これに対して、図28に示すM形の保持器を用いた比較例では、図1に示すころ径、ころ本数、ピッチ円直径(PCD)のものとしたが、製作上の限界から、充填率Pを68%までしか上げることができず、負荷容量が満足できないものとなった。
図4ないし図9は、この発明の他の実施形態を示す。この保持器付きころは、保持器1と複数のころ2とからなる。保持器1は、ころ配列のピッチ円直径PCDよりも大径の環状部1aと、この環状部1aの軸方向両端から内径側に突出する鍔部1bとを有する。環状部1aには、各ころ2が抜け止め状態に入るポケット3が、円周方向複数箇所に等間隔等で設けられており、隣合うポケット3間の部分が柱部7となる。各柱部7は矩形状の直線の部分である。保持器1の一対の鍔部1bのうち、いずれか片方の鍔部1bには、内径部における隣合うころ2間の部分に、ころ2の保持器内径側への抜け止めを行う手段となる突起10が設けられている。保持器1は、全体が一体の鋼板のプレス加工品からなる。ころ2は、軸受鋼等からなり、例えば針状ころとされる。この保持器付きころにおける、保持器1の全周に対するころ2の充填率Pは、80%以上としてある。
保持器1における両側の鍔部1bは、保持器中心Oに対して垂直な平板状である。鍔部1bの内径縁と外径縁間の半径方向幅は、ころ2の外径よりも若干小さな程度の幅としてある。各柱部7間のポケット3の周方向m幅は、ころ2の外径よりも僅かに小さく、ころ2が外径側に抜けることを柱部7で防止している。保持器1の柱部7は、ころ2の配列のピッチ円PCDよりも外径側に位置し、突起10はピッチ円PCDよりも内径側に位置する。
突起10は、この実施形態では図7〜図9に示すように、ステーキング部分からなる突起としてある。ステーキングは、加締によって突起を形成する局部的な塑性加工である。突起10の形状は、図8のように内径側から見て、軸方向の内面側に円弧状に突出し、かつ裏側が凹み部分10aとなるカウンタシンク形状である。また、この突起10は、図9に示すように鍔部1bの内径縁の付近の部分7bが最も突出高さが高く、鍔部1bの外径側に至るに従って突出高さが低くなる形状とされている。図9において、突起10の最低部分を符号10cで示す。図7に示すように、突起10の突出高さは、最も高い部分で、ころ2の端部の面取部分の軸方向幅と同程度としてある。突起10の保持器円周方向の最大幅部分の幅Bは、ころ2の配列における各ころ2間の隙間Cよりも広くしてある。
この構成の保持器付きころの場合、保持器1の柱部7と突起10とでころ2の外径側への抜け止めと内径側への抜け止めとを分担させたため、柱部7の位置を外径方向に移動させた位置にする事が可能となり、ころ2間のすき間を小さくする事が出来る。そのため、一定のスペース内でころ2の本数を多くすることができ、大きな負荷容量を得ることができる。これにより、保持器1の全周に対するころ2の充填率Pを80%以上とすることが実現出来た。また、柱部7を簡素な形状とできることから、柱部7によるころ2の案内機能も向上し、回転精度面でも優れたものとできる。
ころ2の内径側への抜け止めは、保持器1の鍔部1bに設けた突起10で行うため、保持器1が1部品で構成でき、部品点数が削減できて、低コストとできる。突起10は、この実施形態ではステーキング部分からなる突部としているため、より一層加工が簡単で、加工コストが安価となる。また、内径側への突起10が、保持器1の鍔部1bに設けられたものであるため、柱部7と異なり、軸方向の一部に局部的に設けたもので済む。そのため、突起10が設けられていても、軸受内の空間容積の減少に対する影響が少なく、内径側に柱部を設ける場合に比べて通油性が向上する。保持器付きころの組立においては、突起10をステーキングとした場合、鍔部1bにステーキングを設けたあとに、ステーキングの部分を弾性変形させながら、ころ2を組み込む。
なお、突起10は、片方の鍔部1bのみに設けたため、ころ2は突起10で一端が支持され、他端が内径側へ傾くことがある。しかし、両側の鍔部1b間の間隔ところ2の長さの関係を適宜設定しておけば、ころ2の他端は環状部分4の内面に当接することで、抜けるまでに至らない。突起10は、保持器付きころを単独で取り扱うときに、ころ2の抜け止めを行うものであり、機器へ組み込まれた状態で必要なものではないため、上記のようにころ2が傾き状態で抜け止めされても、使用上の性能への影響はない。突起10は、両側の鍔部1bに設けても良いが、片方の鍔部1bのみに設ける構成とした場合、製造が簡単でより低コスト化が図れる。
また、保持器1における両側の鍔部1bは、平板状であるため、鍔部1bにある程度の面積が確保でき、そのため、保持器1が後述の遊星歯車支持用のクランク軸等に設置されて隣接部品と摺接するような場合でも、保持器が遊星歯車等の隣接部品の内径面に干渉する等の支障が無くなる。
図10ないし図13は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態の保持器付きころは、図4ないし図9に示した実施形態において、突起10を曲げ片状のころ保持爪10Aとしたものである。この実施形態においても、図4〜図9の実施形態と同様に、保持器1は、ころ配列のピッチ円直径PCDよりも大径の環状部1aと、この環状部1aの軸方向両端から内径側に突出する鍔部1bとを有する。環状部1aには、各ころ2が抜け止め状態に入るポケット3が、円周方向複数箇所に等間隔で設けられており、隣合うポケット3間の部分が柱部7となる。各柱部7は矩形状の直線の部分である。保持器1の一対の鍔部1bには、内径部における隣合うころ2間の部分に、ころ2の保持器内径側への抜け止めを行う手段となる突起として、上記曲げ片状のころ保持爪10Aが設けられている。保持器1は、全体が一体の鋼板のプレス加工品からなる。ころ2は、軸受鋼等からなり、例えば針状ころとされる。この保持器付きころにおける、保持器1の全周に対するころ2の充填率Pは、80%以上としてある。
保持器1における両側の鍔部1bは、保持器中心軸Oに対して垂直な平板状である。各柱部7間のポケット3の周方向幅mは、ころ2の外径よりも僅かに小さく、ころ2が外径側に抜けることを柱部7で防止している。保持器1の柱部7は、ころ2の配列のピッチ円PCDよりも外径側に位置しており、ころ保持爪10Aはピッチ円PCDよりも内径側に位置する。
保持器1は、パイプ材を削り出し、または全体が一体の鋼板をプレス加工により形成し、その両側の鍔部1bに内径側に放射状に突出するころ保持爪10Aを加工する。その加工方法はプレス加工でも、ワイヤカットでも、放電加工などでも良い。このように加工された保持器1は、保持器単体で熱処理する。この熱処理としては、浸炭焼入れ(Hv400〜650)や、軟窒化処理(Hv300以上)等が好適である。この熱処理時に、ころ保持爪10Aは防浸炭処理を施しておいて浸炭焼入れがころ保持爪10Aに及ばないようにするか、焼入れ後に焼鈍を行うことにより、保持爪7の曲げ加工を行い易くする。ころ保持爪10Aは、保持器1の熱処理完成状態において、保持器1の全体の硬度と同等以下の硬度であって、Hv400以下の硬度にする。このように熱処理した保持器1にころ2を組み込んだ後に、ころ保持爪10Aを鍔部1bの内面側に曲げ込む。曲げ込みは、プレス加工やへら絞り加工等により行う。
図13に曲げ込んだころ保持爪10Aの形状を示す。ころ保持爪10Aの鍔部1bに対する折り曲げ角度θは、30〜90°とする。ころ保持爪10Aの上記折り曲げ角度が30°未満であると、ころ2がころ保持爪10Aを潜り抜け、ころ落ちが発生する恐れがある。また、90°を超える角度まで曲げると、ころ保持爪10Aの破損の恐れがある。30〜90°の範囲であれば、ころ落ちが発生する恐れがないように、ころ2の保持が行え、かつころ保持爪10Aの破損の問題を生じることない。ころ保持爪10Aの長さは、ころ保持爪10Aがころ2の面取り部に掛かる程度が好ましい。このように、ころ保持爪10Aの曲げ角度θおよび長さを設定することにより、ころ2の収容スペースを狭くすることなく、ころ2の内径側への脱落も確実に防止できる。
図13では、鍔部1bから曲げ込まれるころ保持爪10Aを直線状としているが、これに限らず、図14のようにころ保持爪10Aの内側が凹となる円弧状の曲線状としても良く、さらには図15のように先端に向けて厚みが漸減する先細り状としても良い。上記直線状および円弧状のいずれの場合も、図15のように先細り状としても良い。また、ころ保持爪10Aは、上記のいずれの形状のものであっても、図16に示すように、いずれか片方の鍔部1bのみに設けても良い。
この構成の保持器付きころによると、保持器1の柱部7ところ保持爪10Aとで、ころ2の外径側への抜け止めと内径側への抜け止めとを分担させたため、柱部7が簡素な形状となり、柱部7の位置をより外径側に配置することが可能となり、ころ間の隙間を小さくできる。すなわち一定のスペース内でころ本数を多くすることができて、保持器全周に対するころの充填率Pを80%以上に向上させることができ、大きな負荷容量を得ることができる。ころ2の内径側への抜け止めは、保持器1の鍔部1bに設けたころ保持爪10Aで行うため、保持器1が1部品で構成でき、部品点数が削減できて、低コストとできる。また、上記ころ保持爪10Aが保持器1の鍔部1bに設けられたものであるため、柱部2と異なり、軸方向の一部に局部的に設けたもので済む。そのため、軸受内の空間容積の減少に影響が少なく、内径側に柱部を設ける場合に比べて通油性が向上する。上記保持器1は、ころの未組立の状態で熱処理するため、ころ2とは別に保持器1に適した熱処理条件で熱処理が行えるという利点が得られる。その反面、ころ2の組み込みのために、熱処理後にころ保持爪10Aを折り曲げる必要があり、この折り曲げ加工時のころ保持爪10Aの損傷が問題となる。しかし、この実施形態では、ころ保持爪10Aは、保持器1の全体の硬度と同等以下の硬度であって、Hv400以下の硬度に焼鈍または防浸炭処理されたものとしたため、ころ保持爪10Aの曲げ加工を容易に行うことができ、ころ保持爪10Aが折り曲げ時に割れ等の損傷を生じることが回避される。また、ころ保持爪10Aは、曲げ加工で形成できるため、ステーキングによる場合に比べて加工が簡単である。
この実施形態においても、保持器1における両側の鍔部1bは、鍔状の平板状であるため、鍔部1bにある程度の面積が確保でき、そのため、保持器1が後述の遊星歯車支持用のクランク軸等に設置されて隣接部品と摺接するような場合でも、保持器1が遊星歯車等の隣接部品の内径面に干渉する等の支障が無くなる。
この発明のさらに他の実施形態にかかる保持器付きころを、図17,図18と共に説明する。この保持器付きころは、保持器1と針状のころ2とからなり、保持器1は、外方部材1A、および抜け止め手段となる内方部材1Bで構成される。外方部材1Aは、ころ配列のピッチ円PCDの径より大径の環状部1Aaと、この環状部1Aaの軸方向両端部を内径側に折曲した鍔部1Abとを有する。内方部材1Bは、ころ配列のピッチ円PCDの径より小径の環状に形成する。これら外方部材1Aの環状部1Aaおよび内方部材1Bは円筒状のものであり、円周方向複数箇所に等間隔でポケット3A,3Bをそれぞれ設ける。これら外方部材1Aおよび内方部材1Bのポケット3A,3Bにわたって上記のころ2を収容する。外方部材1Aおよび内方部材1Bの隣合うポケット3A間およびポケット3B間の部分は、それぞれ柱部7A,7Bとなる。
鍔部付き側の外方部材1Aは、ポケット3Aの幅mが、ころ2の外径Daよりも僅かに小さく、ころ2が外方に脱落するのを防止する。鍔無し側の内方部材1Bも同様に、ポケット3Bの幅nが、ころ2の外径Daよりも僅かに小さい寸法に形成され、ころ2が内方に脱落するのを防止する。
内方部材1Bのポケット3Bは、ころ案内形状とされている。すなわち、このポケット3Bは、円周方向両側のポケット内面が、ころ2を抱く傾斜面3Baに形成されている。この傾斜面3Baは、図18(A)のようにポケット3Bのプレス加工等による抜き加工が行われた後、プレス加工による面押しを行うことで、同図(B)のように傾斜面3Baに形成される。
また、内方部材1Bは、合成樹脂製とされ、または鋼板等の帯板を丸めて両端部を溶接することにより、環状に作られている。合成樹脂の場合は、ポリアミド樹脂(例えばPA66,PA46等)又はポリアセタール樹脂が用いられ、これらの合成樹脂にカーボンファイバーやグラスファイバー等の強化繊維を添加して成形する。ポケット3Bは、丸める前に加工される。外方部材1Aは、鋼板等の金属板の絞り成形等によるプレス加工品である。また、外方部材1Aは、外径案内とされる。
このように保持器1を構成することで、限られたスペース内で、ころ充填率Pを高めることを可能としている。すなわち、保持器1を外方部材1Aおよび内方部材1への2部品としたため、外側へのころ抜け止めと、内側へのころ抜け止めの機能を、外方部材1Aおよび内方部材1Bにそれぞれ分担させることができ、各部材1A,1Bの機能が簡略化される。このため、外方部材1Aおよび内方部材1Bの形状がシンプルとなり、製造が容易となって、ポケット3A,3B間の柱部7A,7B、特に内径側の柱部7Bをどこまで狭くできるかの加工限界を上げることが可能となる。これにより、一定スペースでころ本数をできるだけ増やすことができ、最大の負荷容量を有するものとできる。また、このように外方部材1Aおよび内方部材1Bの形状がシンプルとなることから、ころ案内機能も向上し、強度面、精度面でも優れたものとできる。特に、柱部幅寸法の確保の厳しい内方部材1Bの柱部7Bの強度が低下する場合は、内方部材1Bの板厚を外方部材1Aよりも厚くすることも可能で、最適設計の自由度が高くなる。
なお、図10〜図16に示す実施形態において、保持器1およびころ2を、保持器1にころ2を組み込んだ状態で熱処理しても良い。その場合、ころ保持爪10Aの曲げ加工を行ってから熱処理する。
この発明のさらに他の実施形態を、図19〜図21と共に説明する。この保持器付きころは、図17,図18に示した実施形態の保持器付きころにおいて、内方部材1Bを、ころ配列の内接円径よりも小径に縮径可能としたものである。
この例では、図19(B)に示すように、内方部材1Bは、円周方向の1か所にスリット1Bdを形成することよって有端形状とし、これにより縮径可能としてある。すなわち内方部材1Bは、円周方向の1か所割りの割り筒としてある。スリット1Bdの形成箇所は、内方部材1Bのポケット3Bのある箇所であっても、柱部7Bとなる箇所であっても良い。内方部材1Bは、弾性復元状態では、外方部材1Aの鍔部1Abの内径端面に弾性で押し付けられるものでも、外方部材1Aと内方部材1Bの間に隙間があっても良い。
内方部材1Bの材質は、合成樹脂製(合成樹脂の材質は前記の通り)とされ、または鋼板等の金属板製とされる。
この構成によると、組立に際して、鍔付き側の部材である外方部材1Aのポケット3Aにころ2を収容した後、内方部材1Bを装着する。内方部材1Bは縮径状態としてころ配列の内径側から装着する。このとき、内方部材1Bは、有端状としてあるため、容易にころ配列の内接円径よりも小径に弾性変形させることができる。このため、図17,図18に示す実施形態に比べて組立性に優れる。
図22,図23は、この発明の保持器付きころを応用した減速機となる遊星歯車装置の一例を示す。この遊星歯車装置は、内歯の太陽歯車であるリング歯車11と、回転出力部となるキャリア12と、このキャリア12に回転自在に支持されて隣接する複数の偏心軸部13a,13bを有する支持軸であるクランク軸13と、このクランク軸13の各偏心軸部13a,13bに回転自在に設置されてリング歯車11に噛み合う複数の遊星歯車14,15と、クランク軸13に回転を入力する回転入力部16とを有する。リング歯車11はハウジング17に固定され、キャリア12はリング歯車11と同心に回転自在なように、軸受18(図23)を介してハウジング17に設置されている。回転入力部16は、リング歯車11と同心の入力軸19と、各クランク軸13に設けられて入力軸19の歯車部に噛み合う伝達歯車20とで構成される。クランク軸13は、キャリア12の円周方向複数箇所(例えば3箇所)に設けられている。遊星歯車14,15は、図23に示すように、各々保持器付きころ21を介してクランク軸13の偏心軸部13a,13bに設置されている。この保持器付きころ21に、この発明の保持器付きころ、例えば上記いずれかの実施形態の保持器付きころが用いられる。
この遊星歯車装置の動作を説明する。中心の入力軸19を回転させると、伝達歯車20を介して3本のクランク軸13が互いに同期して回転する。ここで、1段目の減速が行われる。クランク軸13と遊星歯車14,15とは、保持器付きころ21を介して連結されており、クランク軸13の振れ回りは、遊星歯車14,15が内歯のリング歯車11の内側を回るときの公転と自転の合成運動に同期する。軸方向に並ぶ2枚の遊星歯車14,15は、互いに180°位相がずれた状態で内歯の太陽歯車であるリング歯車11の内周を公転する。このため、2枚の遊星歯車14,15の振れ回りによる慣性力は打ち消し合う。内歯リング歯車11は固定してあり、遊星歯車14,15は内歯リング歯車11の内周を回る。3本のクランク軸13は、出力部材となるキャリア12の2枚の円盤部12a,12bの間に挟まっている。したがって、遊星歯車14,15の公転は、クランク軸13の公転を通じてキャリア12に達し、減速された回転運動が得られる。
この構成の遊星歯車装置は、遊星歯車14,15とクランク軸13の間に介在した保持器付きころ21に、大きなラジアル負荷が作用し、しかもこの保持器付きころ21の設置スペーサは、支持構造全体の大型化を避けるために限られたスペースとなる。また、この保持器付きころ21の保持器は、隣接する遊星歯車14,15の幅面と摺接する。しかし、上記各実施形態の保持器付きころによると、限られたスペース内で大きな負荷容量を得ることができ、また保持器1が両側に鍔状の環状部分3,4を有しているため、隣接する互いに偏心した遊星歯車14,15の幅面との摺接によっても、その遊星歯車14,15の内径面に干渉する問題が生じない。
このように、この発明の保持器付きころ21をクランク軸タイプの遊星歯車装置に適用した場合、この発明の保持器付きころ21の限られたスペース内で負荷容量が大きく得られるという利点により、遊星歯車支持の特徴である高負荷条件下で偏心運動を生じるという過酷な使用条件で使用されても、ころ2(図1)やクランク軸13の表面損傷や剥離の問題を生じず、耐久性を向上させることができる。また、保持器付きころ21の保持器1がクランク軸13の偏心回転動作によって、隣の遊星歯車14,15と摺接しても、保持器1が遊星歯車14,15の内径面に干渉する等の支障が無くなる。
図24は遊星歯車装置の他の例を示す。この例は、2つのキャリア33,34にそれぞれ遊星歯車31,32が単列に配置された遊星歯車装置の例である。同図は、遊星歯車31,32とキャリア33,34との関係を示すための図であり、遊星歯車装置としての構成は一部を省略して示している。遊星歯車31は、第1のキャリア33に設けられた支持軸33aに保持器付きころ35を介して設置される。遊星歯車31は、キャリア33の円周方向の3か所に等配されている。他の遊星歯車32は、第2のキャリア34に設けられた支持軸34aに、保持器付きころ36を介して設置されている。遊星歯車32は、キャリア34の円周方向の4か所に等配されている。各保持器付きころ35,36のころは、遊星歯車31,32と支持軸33a,33bの外径面を転動する。遊星歯車31,32はケーシング37に設けられた内歯の太陽歯車38に噛み合う。また、一方の遊星歯車31は、回転軸40に設けられた第1の外歯太陽歯車40aに噛み合い、他方の遊星歯車32は回転軸40に設けられた第2の外歯太陽歯車40bに噛み合う。各キャリア33,34は、内歯の太陽歯車38と同心に回転自在に設けられる。上記各保持器付きころ35,36に、この発明の保持器付きころ、例えば上記第1実施形態の保持器付きころが用いられる。なお、この遊星歯車装置は、斜板型アキシャルプランジャポンプに組み込まれて、ポンプ部の駆動のための斜板39の駆動に使用されるものである。
このような構成の遊星歯車装置に、その保持器付きころ35,36としてこの発明の保持器付きころを使用した場合も、その限られたスペース内で負荷容量が大きく得られ、耐久性に優れるという効果が、有効に発揮される。
図25および図26は遊星歯車装置のさらに他の例を示す。図25は、遊星歯車装置を備えた風力発電機用増速機を示す。この増速機は、入力軸41の回転を増速して低速軸42に伝達する遊星歯車装置43と、低速軸42の回転をさらに増速して出力軸44に伝達する2次増速装置45とを備える。遊星歯車装置43および2次増速装置45は、共通のケーシング46内に設けられている。入力軸41は風車(図示せず)の主軸(図示せず)等に接続され、出力軸44は発電機(図示せず)に接続される。
遊星歯車装置43は、旋回自在なキャリア47の周方向複数箇所に支持軸50が設けられ、各支持軸50に遊星歯車48が保持器付きころ49を介して回転自在に支持されている。各遊星歯車48の保持器付きころ49は、図示の例では2個並べて用いているが、1個であっても良い。キャリア47は、遊星歯車装置43における入力部となる部材であり、上記入力軸41と一体の部材として設けられ、または一体に結合されている。キャリア47は、入力軸41の部分で軸受51を介してケーシング46に旋回自在に支持されている。キャリア47に支持された各遊星歯車48は、ケーシング46に設けられた内歯の太陽歯車であるリングギヤ52に噛み合い、かつこのリングギヤ52と同心位置に設けられた太陽歯車53に噛み合う。リングギヤ52は、ケーシング46に直接に形成されたものであってもケーシング46に固定されたものであっても良い。外歯の太陽歯車53は、遊星歯車装置43における出力部となる部品であり、上記低速軸42に設けられている。低速軸42は、軸受54,55を介してケーシング46に回転自在に支持されている。
2次増速装置45は、ギヤ列により構成されている。図示の例では、2次増速装置45は、低速軸42に固定されたギヤ57が中間軸61の小径側ギヤ58に噛み合い、中間軸61に設けられた大径側ギヤ59が出力軸44のギヤ60に噛み合うギヤ列とされている。中間軸61および出力軸44は、それぞれ軸受62,63によってケーシング46に回転自在に支持されている。
ケーシング46の下部は、潤滑油の油浴56を形成する部分とされ、その油浴56の油面レベルLは遊星歯車48を支持する保持器付きころ49が、キャリア47の旋回によって出入りする高さとされている。各遊星歯車48を支持する保持器付きころ49に、この発明の保持器付きころ、例えば上記第1実施形態の保持器付きころが用いられる。
上記構成の動作を説明する。入力軸41が回転すると、入力軸41と一体のキャリア47が旋回し、キャリア47の複数箇所に支持された遊星歯車48が公転移動する。このとき各遊星歯車48は、固定のリングギヤ52に噛み合いながら公転することで、自転を生じる。この公転しながら自転する遊星歯車48に外歯の太陽歯車53が噛み合っており、そのため太陽歯車53は、入力軸41に対して増速されて回転する。遊星歯車装置43の出力部となる太陽歯車53は、2次増速装置45の低速軸42に設けられたものであり、太陽歯車53の回転が2増速装置45で増速されて出力軸44に伝えられる。このように、入力軸41に入力される風車主軸(図示せず)の回転が、遊星歯車装置43と2次増速装置45とで大幅に増幅されて出力軸44に伝えられる。そのため、風の状況で風車が非常に低速で回転する場合でも、出力軸44からは発電が可能な高速回転が得られる。
各遊星歯車48を支持する保持器付きころ49の潤滑は、次のように行われる。遊星歯車48およびその保持器付きころ49は、キャリア47の旋回により公転して底に位置した時に油浴56に浸かり、潤滑油が供給される。
このように、上記実施形態の保持器付きころを増速用の遊星歯車装置43に適用した場合も、その限られたスペース内で負荷容量が大きく得られ、耐久性に優れるという効果が有効に発揮される。
図27は遊星歯車装置のさらに他の例を示す。入力部材64の外周に設けられた外歯の太陽歯車64aと、ケーシング65の内周に設けられた内歯の太陽歯車65aとの間に複数の遊星歯車66が円周等間隔に介装され、太陽歯車65a,64aの双方と噛み合う。各遊星歯車66は、それぞれ保持器付きころ69を介して支持軸67に回転自在に支持され、各支持軸67は、それぞれキャリアとなる出力部材68に固定される。
入力部材64が回転すると、その外周の太陽歯車64aに噛み合った遊星歯車66が、支持軸67の軸心回りに自転しながら、入力部材64の軸心回りに公転する。その遊星歯車66の公転運動が支持軸67を介して出力部材68の回転運動に変換され、出力部材68が所定の減速比で減速されて回転する。
この構成の遊星歯車装置の場合も、その保持器付きころ69としてこの発明の保持器付きころを用いたことにより、その限られたスペース内で負荷容量が大きく得られ、耐久性に優れるという効果が有効に発揮される。
なお、上記各構成の遊星歯車装置において、その遊星歯車14,15,31,32,48,66の支持に、図4〜図9に示す実施形態や、図10〜図16に示す実施形態の保持器付きころを用いた場合は、その通油性が優れていることから、遊星歯車装置の厳しい潤滑条件によっても、発熱が低減される。
(A)はこの発明の一実施形態にかかる保持器付きころの部分省略破断側面図、(B)はその部分破断正面図である。 同保持器付きころにおける保持器の部分斜視図である。 (A)は図1(A)のA−A線拡大断面図、(B)は図1(A)のB−B線拡大断面図である。 この発明の他の実施形態にかかる保持器付きころの横断面図である。 図4のV−V線に沿う断面図である。 同保持器付きころの正面図である。 図4のVII-VII 矢印図である。 図7のVIII部分の拡大図である。 同保持器付きころにおける抜け止め手段の斜視図である。 この発明のさらに他の実施形態にかかる保持器付きころの破断正面図である。 図10のXI−XI線に沿う断面図である。 同保持器付きころの正面図である。 図11の部分拡大図である。 同保持器付きころのころ保持爪の変形例を示す部分拡大図である。 同保持器付きころのころ保持爪の他の変形例を示す部分拡大図である。 この発明のさらに他の実施形態にかかる保持器付きころの部分拡大断面図である。 (A)はこの発明のさらに他の実施形態にかかる保持器付きころの部分破断側面図、(B)は同部分の破断正面図である。 その保持器のころ案内形状の成形過程を示す説明図である。 (A)はこの発明のさらに他の実施形態にかかる保持器付きころの縦断面図、(B)はその正面図である。 同保持器付きころの破断正面図である。 同保持器付きころの部分拡大断面図である。 この発明の保持器付きころを用いた遊星歯車装置の一例の模式図である。 同遊星歯車装置の部分切欠側面図である。 この発明の保持器付きころを用いた遊星歯車装置の他の例の部分切欠側面図である。 この発明の保持器付きころを用いた遊星歯車装置を備えた風力発電機用増速機を示す破断側面図である。 同増速機における遊星歯車装置の破断正面図である。 この発明の保持器付きころを用いたさらに他の遊星歯車装置の断面図である。 (A),(B)はそれぞれ従来の保持器付きころにおける保持器の部分斜視図および部分断面図である。
符号の説明
1…保持器
1a…環状部
1b…鍔部
1A…外方部材
1B…内方部材(抜け止め手段)
2…ころ
2a…係合突部(突出部)
3,3A,3B…ポケット
4…環状溝(抜け止め手段)
7…柱部
10…突起(抜け止め手段)
14,15,31,32,48,66…遊星歯車
21,35,36,49,69…保持器付きころ
33a,34a,50,67…支持軸
PCD…ピッチ円直径

Claims (7)

  1. 保持器と複数のころとでなり、上記保持器は、ころ配列のピッチ円直径よりも大径の環状部と、この環状部の軸方向両端から内径側に突出する鍔部と、上記環状部に円周方向に並んで形成されて互いの間で柱部を形成し内部に上記ころがそれぞれ入る複数のポケットと、上記ころの保持器内径側への抜け止めを行う抜け止め手段とを有する保持器付きころにおいて、
    保持器全周に対するころの充填率Pを、
    P=(d×n)/(D×π)
    (ただし、d:ころ径、n:ころ本数、D:ころ配列のピッチ円直径、)とした場合に、 充填率が80%以上であることを特徴とする保持器付きころ。
  2. 請求項1において、上記抜け止め手段が、上記鍔部の内側面に円周方向に沿って形成されて上記各ころの端面中央に設けられた突出部が係合する環状溝である保持器付きころ。
  3. 請求項1おいて、上記抜け止め手段が、上記記鍔部の内側面における隣合うころの間の部分から突出した突起である保持器付きころ。
  4. 請求項1において、抜け止め手段が、上記鍔部の内径部における隣合うころ間の部分に設けられた曲げ片状のころ保持爪である保持器付きころ。
  5. 請求項1において、上記保持器が、外方部材、および上記抜け止め手段となる内方部材からなり、上記外方部材が上記ピッチ円直径よりも大径の環状部と、この環状部の軸方向両端から内径側へ突出した鍔部とを有し、上記内方部材は、ころ配列のピッチ円直径よりも小径の環状に形成され、円周方向に並び上記各ころをそれぞれ内径側へ突出させる複数のポケットを有するものとした保持器付きころ。
  6. 請求項5において、上記内方部材が、ころ配列の内接円径よりも小径に縮径可能とされている保持器付きころ。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の保持器付きころであって、遊星歯車装置における遊星歯車とこの遊星歯車を支持する支持軸との間に介在し、上記ころが上記遊星歯車の内径孔内面と上記支持軸とに転接する保持器付きころ。
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