しかしながら、本発明者らの検討によれば、上記した小型化に適した構成を有するスパークプラグにおいて、次のような問題が生じることがわかった。
図19は、この種のスパークプラグにおける放電部近傍の側面図を示すものである。中心電極30は、その先端部31が露出した状態で取付金具10に収納されている。また、接地電極40は、一端42側が取付金具10に支持されて固定されるとともに他端41側が中心電極30の先端部31と対向している。
ここで、互いに対向する中心電極30および接地電極40の両対向部31、43には、相手側の対向部に延びるように円柱状の円柱部35、45が配設されている。そして、中心電極30側の円柱部35の一端面35aと接地電極40側の円柱部45の一端面45aが放電ギャップ50を介して互いに対向している。
これら円柱部35は、例えば、Ir(イリジウム)合金やPt(白金)合金等からなる貴金属チップとして構成されている。また、図19中の一点鎖線35b、45bは、両円柱部35、45の軸である。
このようなスパークプラグにおいて、中心電極30と接地電極40との間に放電電圧を印加したとき、互いの円柱部35、45のエッジ部における電界強度が高くなる。なお、図示例では、両円柱部35、45の一端面35a、45aは全面が平面であるため、エッジ部とはこれら一端面35a、45aにおける端部(角部)のことである。
そして、このように両円柱部35、45のエッジ部における電界強度が高いため、円柱部35、45の一端面35a、45aの平面部ではなく、図19中の両矢印に示すように、主として当該エッジ部にて放電が発生する。
そして、本発明者らの検討によれば、この放電は、互いに対向する両円柱部35、45の一端面35a、45aのエッジ部のいろいろな場所で発生する。
ここで、図20は、互いに対向する両円柱部35、45の一端面35a、45a近傍部について、中心電極30側の円柱部35の一端面35aの斜め上方から見たときの斜視図である。
上述したような、放電が両円柱部35、45の一端面35a、45aのエッジ部のいろいろな場所で発生することとは、図20中の両矢印に示すように、放電がエッジ部の各所でランダムに発生するということである。
このように、放電がエッジ部の各所でランダムに発生すると、サイクル間の燃焼速度がばらついてしまう。
例えば、図19において、上記エッジ部のうち接地電極40の曲げ部44側に位置する部位は取付金具10に近く、熱引きがよいので比較的温度が低い部分である。それに対して、上記エッジ部のうち接地電極40の他端41側に位置する部位は取付金具10から遠く、熱引きが悪く比較的温度が高い部分である。
そのため、エッジ部のうち接地電極40の他端41側の部位で放電した場合は、火炎核の成長も速く、燃焼が速くなるのに対して、エッジ部のうち接地電極40の曲げ部44側の部位で放電した場合は、火炎核の成長が遅く、燃焼が遅くなる。
このようなことから、従来のスパークプラグにおいては、サイクル間の燃焼速度がばらつく場合がある。このようなサイクル間の燃焼速度のばらつきは、例えば、車両のエンジンにおいて、サイクル毎の熱発生量のばらつきを生じ、結果として、エンジン振動が大きくなるなどの現象をもたらす。
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、中心電極と接地電極の対向部に円柱部が設けられ、これら両円柱部の一端面が放電ギャップを介して対向するスパークプラグにおいて、小型化に適し且つ放電位置の安定化に適した構成を実現することを目的とする。
本発明者らは、中心電極側の円柱部の一端面と接地電極側の円柱部の一端面とが互いに放電ギャップを介して対向しているスパークプラグにおいて、中心電極側の円柱部および接地電極側の円柱部の直径を、ともに1.1mm以下とすることで小型化を図るようにした。
そして、このような小型化を図ったスパークプラグにおいては、従来では、中心電極側の円柱部の軸と接地電極側の円柱部の軸とが互いに平行であって且つ一致していた。それに対し、本発明者らは、これら両軸を、互いに平行であって且つどちらか一方の軸を延長した線上に他方の軸が存在しないように、互いにずらすことを考えた。
このように両軸をずらしてやれば、両電極の円柱部の一端面に存在するエッジ部において、対向するエッジ部間の距離が比較的近い部分と当該エッジ部間の距離が比較的遠い部分とが形成される。
そのため、上記距離が比較的近い部分におけるエッジ部間の方が、上記距離が比較的遠い部分におけるエッジ部間よりも、高い確率で放電を発生させることができる。
つまり、従来では、放電がエッジ部の各所でランダムに発生したのに対し、上記距離の比較的近い部分のエッジ部間において選択的に放電させることができるならば、放電位置の安定化につながる。
そして、上記両軸のずれ量すなわち軸ずれ量と放電安定化との関係について、実験検討を行った。その結果、当該軸ずれ量が0.05mm以上であれば、その場合に形成される、両電極の円柱部のエッジ部間の距離が比較的近い部分におけるエッジ部同士において、従来よりも高い確率で安定した放電を行えることを見出した(図5参照)。
本発明は、このような検討結果およびそこから得られた知見等に基づいて、創出されたものである。
すなわち、請求項1に記載の発明では、先端部(31)が露出した状態で取付金具(10)に収納された中心電極(30)と、一端(42)側が取付金具(10)に支持されて固定されるとともに、他端(41)側が中心電極(30)の先端部(31)と対向する接地電極(40)とを備え、互いに対向する中心電極(30)および接地電極(40)の対向部(31、43)には、ともに円柱状の円柱部(35、45)が相手側の対向部に延びるように配設されており、中心電極(30)側の円柱部(35)の一端面(35a)と接地電極(40)側の円柱部(45)の一端面(45a)とが互いに放電ギャップ(50)を介して対向しているものであるスパークプラグにおいて、次のような点を特徴としている。
・中心電極(30)側の円柱部(35)および接地電極(40)側の円柱部(45)は、ともにその直径(T1、T2)が1.1mm以下であること。
中心電極(30)側の円柱部(35)の軸(35b)と接地電極(40)側の円柱部(45)の軸(45b)とは、互いに平行であって且つどちらか一方の軸を延長した線上に他方の軸が存在しないように互いにずれて位置しており、これら両軸(35b、45b)のずれ量(x)は、0.05mm以上であって且つ両円柱部(35、45)のうちの太い方の円柱部の半径以下の大きさであること。本発明はこれらの点を特徴としている。
それによれば、まず、中心電極(30)側の円柱部(35)および接地電極(40)側の円柱部(45)を、ともにその直径(T1、T2)が1.1mm以下であるものとすることによって、スパークプラグの小型化が図れる。
また、本発明では、中心電極(30)側の円柱部(35)の軸(35b)と接地電極(40)側の円柱部(45)の軸(45b)とを、互いに平行であって且つどちらか一方の軸を延長した線上に他方の軸が存在しないように互いにずらして位置させ、これら両軸(35b、45b)のずれ量(x)を0.05mm以上であって且つ両円柱部(35、45)のうちの太い方の円柱部の半径以下の大きさであるものとしている。
それによって、中心電極(30)側の円柱部(35)の一端面(35a)と接地電極(40)側の円柱部(45)の一端面(45a)との間で、これら両一端面(35a、45a)に存在し対向するエッジ部間の距離を部分的に見たとき、当該距離が比較的近い部分(A)と当該距離が比較的遠い部分(B)とが形成される。
それとともに、上記両軸のずれ量すなわち軸ずれ量(x)を0.05mm以上としていることから、上記エッジ部間の距離が比較的近い部分(A)におけるエッジ部(P1、P2)同士の間で安定した放電が発生するようになる。
また、上記軸ずれ量(x)を太い方の円柱部の半径以下の大きさとすることによって、放電部である円柱部(35、45)の消耗を少なくできる。ここで、両円柱部(35、45)の直径(T1、T2)が同じ場合、すなわち両円柱部(35、45)の太さが同じ場合には、上記軸ずれ量(x)は、両円柱部(35、45)の半径以下の大きさとする。
もし、上記軸ずれ量(x)を太い方の円柱部の半径よりも大きいものにした場合には、両電極(30、40)の円柱部(35、45)におけるエッジ部同士のうち、軸(35b、45b)のずらしによって上記距離が比較的近くなった部分のみにて、実質的に放電が発生する。
そのため、上記エッジ部間の距離が比較的近くなった部分におけるエッジ部(P3)の消耗が、それ以外の部分におけるエッジ部の消耗に比べて大幅に激しいものになる。つまり、当該円柱部のうちのある一部分のみが早く消耗するため、プラグ寿命の短命化を招くことになってしまう。
以上のように、本発明によれば、中心電極と接地電極の対向部に円柱部が設けられ、これら両円柱部の一端面が放電ギャップを介して対向するスパークプラグにおいて、小型化に適し且つ放電位置の安定化に適した構成を実現することができる。
さらに、本発明者らは、中心電極側の円柱部の直径と接地電極側の円柱部の直径とを異なるものにした場合に、上記した両軸のずらしを行ってやれば、対向する両電極の円柱部のエッジ部間において、当該エッジ部間の距離が比較的近い部分と当該距離が比較的遠い部分とが、より明確に形成されやすいと考えた。
そして、このように両円柱部(35、45)の直径(T1、T2)を異ならせた場合でも、上記軸ずれ量(x)が0.05mm以上であれば、中心電極(30)側の円柱部(35)のエッジ部と接地電極(40)側の円柱部(45)のエッジ部との間のうち、エッジ部間の距離が比較的近い部分(A)のエッジ部(P1、P2)同士において、従来よりも高い確率で安定した放電を行えることを見出した(図5参照)。
また、上記軸ずれ量をxとした場合、異なる両円柱部(35、45)の直径(T1、T2)の差が軸ずれ量の2倍すなわち2xであるときに、両円柱部(35、45)のエッジ部間のうち比較的近い部分(A)の距離が最小となり、当該部分(A)における放電確率を最も高くできることを見出した(図5参照)。
請求項2に記載の発明は、この知見に基づいてなされたものであり、請求項1に記載のスパークプラグにおいて、中心電極(30)側の円柱部(35)の軸(35b)と接地電極(40)側の円柱部(45)の軸(45b)とのずれ量をxとしたとき、中心電極(30)側の円柱部(35)の直径(T1)と、接地電極(40)側の円柱部(45)の直径(T2)とは、2x以上の差をもって異なっていることを特徴としている。
それによれば、放電位置をより安定化させた構成を有するスパークプラグを実現することができる。
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載のスパークプラグにおいて、中心電極(30)側の円柱部(35)の一端面(35a)と接地電極(40)側の円柱部(45)の一端面(45a)とは、互いに平行な位置関係にあることを特徴としている。
このように、放電ギャップ(50)を介して対向する両電極(30、40)の円柱部(35、45)の一端面(35a、45a)は、互いに平行な配置としたものにできる。
また、請求項7に記載の発明では、請求項1ないし6のいずれか1つに記載のスパークプラグにおいて、接地電極(40)は、他端(41)側が中心電極(30)の先端部(31)に覆い被さるように、一端(42)と他端(41)との間の中間部が曲げられた曲げ部(44)となっている柱状のものであることを特徴としている。
それによれば、請求項1に記載の発明における、中心電極(30)側の円柱部(35)の軸(35b)と接地電極(40)側の円柱部(45)の軸(45b)とが互いに平行であって且つどちらか一方の軸を延長した線上に他方の軸が存在しないように互いにずれて位置するという構成を、適切に実現することができる。
また、請求項8に記載の発明では、先端部(31)が露出した状態で取付金具(10)に収納された中心電極(30)と、一端(42)側が取付金具(10)に支持されて固定されるとともに、他端(41)側が中心電極(30)の先端部(31)と対向する接地電極(40)とを備え、互いに対向する中心電極(30)および接地電極(40)の対向部(31、43)には、ともに円柱状の円柱部(35、45)が相手側の対向部に延びるように配設されており、これら両円柱部(35、45)の一端面(35a、45a)が互いに放電ギャップ(50)を介して対向しているものであるスパークプラグにおいて、次のような点を特徴としている。
・中心電極(30)側の円柱部(35)および接地電極(40)側の円柱部(45)は、ともにその直径(T1、T2)が1.1mm以下であること。
・中心電極(30)側の円柱部(35)の一端面(35a)と接地電極(40)側の円柱部(45)の一端面(45a)との間の平行度(H)が、放電ギャップ(50)の大きさの1%以上であって且つ0.15mm未満であること。本発明はこれらの点を特徴としている。
本発明は、上記した知見、すなわち、「上記軸ずれ量(x)が0.05mm以上であれば、その場合に形成される両円柱部(35、45)のエッジ部間の距離が比較的近い部分(A)において、従来よりも高い確率で安定した放電を行える」という知見に基づいて、創出されたものである。
このように、上記軸ずれ量(x)を0.05mmとした場合、両円柱部(35、45)のエッジ部間の距離のうちの最小距離(A)と最大距離(B)との差が、放電ギャップ(50)の1%となることを見出した。
そして、両円柱部(35、45)のエッジ部間の距離に差を生じさせるためには、上記請求項1の発明のような中心電極(30)側の円柱部(35)の軸(35b)と接地電極(40)側の円柱部(45)の軸(45b)とをずらす方法以外にも、対向する両円柱部(35、45)の一端面(35a、45a)において、一方の一端面を基準として他方の一端面を平行状態から傾斜させてやればよいことを見出した。
具体的には、対向する両円柱部(35、45)の一端面(35a、45a)の間の平行度(H)が放電ギャップ(50)の大きさの1%であれば、両円柱部(35、45)のエッジ部間の距離のうちの最小距離と最大距離との差が放電ギャップ(50)の1%であることを実現できる。そして、その結果、上記軸ずれ量(x)を0.05mmとすることと同様の効果を発揮させることが可能になる。
つまり、対向する両円柱部(35、45)の一端面(35a、45a)の間の平行度(H)を放電ギャップ(50)の大きさの1%以上にしてやれば、上記軸ずれ量(x)を0.05mm以上にすることと同様の効果を有する構成を実現できる。
また、対向する両円柱部(35、45)の一端面(35a、45a)の間の平行度(H)が0.15mm未満であることが好ましい。
これは、一般に、スパークプラグのライフサイクルにおける放電摩耗による放電ギャップ長の変化が0.3mm以下であることが要求されていることによる。当該放電ギャップ長が0.3mmを超えると、スパークプラグに要求される放電電圧が増大し、失火の原因となる。
ここで、上記平行度(H)が0.15mm未満であることとは、両円柱部(35、45)の一端面(35a、45a)のうち一方の一端面を基準面として、この基準面と他方の一端面との間の最小距離と最大距離との差が、0.15mm未満であることに相当するものである。
つまり、上記平行度(H)が0.15mm以上であると、両円柱部(35、45)の一端面(35a、45a)の間において上記最小距離となっている部分では、上記最大距離となっている部分よりも0.15mm以上、他方の一端面が一方の一端面に近いことになる。ここで、この最小距離の部分で対向するエッジ部が最も放電確率が高く、摩耗も激しい。
そのとき、摩耗は、対向する部分の一方だけではなく、他方すなわち相手側にも同様に発生する。つまり、対向する部分の一方が0.15mm摩耗すれば、対向する部分の他方も0.15mm摩耗し、その結果、この摩耗による放電ギャップ長の変化は0.3mmとなる。
このようなことから、対向する両円柱部(35、45)の一端面(35a、45a)の間の平行度(H)が0.15mm未満であれば、スパークプラグの放電摩耗による放電ギャップ長の変化が0.3mm以上となるのを極力遅らせることができ、好ましい。
以上のようなことから、本発明では、中心電極(30)側の円柱部(35)の直径(T1)および接地電極(40)側の円柱部(45)の直径(T2)をともに1.1mm以下とし、中心電極(30)側の円柱部(35)の一端面(35a)と接地電極(40)側の円柱部(45)の一端面(45a)との間の平行度(H)を、放電ギャップ(50)の大きさ(G)の1%以上であって且つ0.15mm未満としている。
そして、本発明によれば、中心電極と接地電極の対向部に円柱部が設けられ、これら両円柱部の一端面が放電ギャップを介して対向するスパークプラグにおいて、小型化に適し且つ放電位置の安定化に適した構成を実現することができる。
また、上記した平行度に関する知見は、上記請求項1や請求項2に記載のスパークプラグに対しても適用することができ、そのようなものとして、請求項4、請求項5および請求項6に記載の発明が提供されている。
請求項4に記載の発明では、請求項1または2に記載のスパークプラグにおいて、中心電極(30)側の円柱部(35)の一端面(35a)と接地電極(40)側の円柱部(45)の一端面(45a)との間の平行度(H)が、放電ギャップ(50)の大きさ(G)の1%以上であることを特徴としている。
本発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、請求項8に記載の発明における平行度(H)を放電ギャップ(50)の大きさの1%以上としたことによる効果が発揮され、その結果、小型化に適し且つ放電位置の安定化に適した構成を実現することができる。
また、請求項5に記載の発明では、請求項4に記載のスパークプラグにおいて、平行度(H)は、0.15mm未満であることを特徴としている。
本発明によれば、請求項4に記載の発明の効果に加えて、請求項8に記載の発明における平行度(H)を放電ギャップ(50)の大きさの1%以上であって且つ0.15mm未満としたことによる効果が発揮され、その結果、小型化に適し且つ放電位置の安定化に適した構成を実現することができる。
また、請求項6に記載の発明では、請求項4または請求項5に記載のスパークプラグにおいて、中心電極(30)側の円柱部(35)の一端面(35a)と接地電極(40)側の円柱部(45)の一端面(45a)との間の距離が最小となる部分が、最も放電確率が高くなるような方向に、中心電極(30)側の円柱部(35)の軸(35b)と接地電極(40)側の円柱部(45)の軸(45b)とは、互いにずれていることを特徴としている。
本発明は、対向する両円柱部(35、45)の一端面(35a、45a)において一方の一端面を基準として他方の一端面を平行状態から傾斜させる場合に、その傾斜させる方向と上記した軸のずらし方向との好ましい関係を規定したものである。
さらに、請求項9に記載の発明では、請求項8に記載のスパークプラグにおいて、中心電極(30)側の円柱部(35)の軸(35b)と接地電極(40)側の円柱部(45)の軸(45b)とは、互いに平行であることを特徴としている。
請求項8に記載のスパークプラグにおいても、このような構成であってよい。この場合、両円柱部(35、45)のうちの少なくとも一方の円柱部の一端面を当該円柱部の軸と直交する面から傾斜させた面とすればよい。
また、請求項10に記載の発明では、請求項8に記載のスパークプラグにおいて、中心電極(30)側の円柱部(35)の軸(35b)と接地電極(40)側の円柱部(45)の軸(45b)とは、互いに非平行であることを特徴としている。
請求項8に記載のスパークプラグにおいては、さらにこのような構成であってよい。この場合も請求項8に記載されている両円柱部(35、45)の一端面(35a、45a)間の平行度(H)を大きくした構成を適切に実現できる。
特に、この場合、請求項11に記載の発明のようにすることが好ましい。請求項11に記載の発明では、請求項10に記載のスパークプラグにおいて、次のような点を特徴としている。
・接地電極(40)は、他端(41)側が中心電極(30)の先端部(31)に覆い被さって対向するように、一端(42)と他端(41)との間の中間部が曲げられた曲げ部(44)となっている柱状のものであること。
・接地電極(40)における他端(41)側の部位の方が、接地電極(40)における曲げ部(44)側の部位よりも中心電極(30)の先端部(31)に近づくようになっていること。
・中心電極(30)側の円柱部(35)の一端面(35a)と接地電極(40)側の円柱部(45)の一端面(45a)との間の距離において、接地電極(40)における他端(41)側に位置する部位の距離の方が、接地電極(40)における曲げ部(44)側に位置する部位の距離よりも小さいこと。本発明はこれらの点を特徴としている。
それによれば、接地電極(40)における他端(41)側の部位の方が、接地電極(40)における曲げ部(44)側の部位よりも中心電極(30)の先端部(31)に近づくようになっているため、結果として、曲げ部(44)の湾曲度合を大きくすることができる。
このことにより、放電部に対して接地電極が大きく引っ込んだ形を実現することができる(図8参照)。そのため、当該放電部における燃焼空間を大きく確保することができ、失火の抑制にとって好ましい。
また、このような接地電極(40)の曲げ部(44)の構成を採用すれば、中心電極(30)側の円柱部(35)の一端面(35a)と接地電極(40)側の円柱部(45)の一端面(45a)との間のエッジ部同士において、接地電極(40)における他端(41)側に位置する部位の距離の方を、接地電極(40)における曲げ部(44)側に位置する部位の距離よりも容易に小さくできることは、明らかである。
そして、このような距離関係を設定することにより、放電部のうち、接地電極(40)における曲げ部(44)側よりも比較的熱引き性の低い他端(41)側において、放電確率を高くすることができる。つまり、放電部のうち比較的高温となる部分において燃焼する割合を多くすることができる結果、燃焼速度を早くすることができる。
また、請求項12に記載の発明のように、請求項1ないし請求項11のいずれか1つに記載のスパークプラグにおいては、中心電極(30)側の円柱部(35)および接地電極(40)側の円柱部(45)は、電極母材に溶接された貴金属チップとして構成されたものにできる。
さらに、請求項13に記載の発明のように、請求項12に記載の貴金属チップとしては、Irを50重量%以上含有したIr合金またはPtを50重量%以上含有したPt合金よりなるものを採用することができる。
また、請求項14に記載の発明のように、請求項12または13に記載の貴金属チップとしては、添加物としてIr、Pt、Rh、Ni、W、Pd、Ru、Os、Al、Y、Y2O3のいずれかを含有するものを採用することができる。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態や各例の相互において同一または均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係るスパークプラグS1の全体構成を示す半断面図である。
このスパークプラグS1は、自動車用エンジンの点火栓等に適用されるものであり、該エンジンの燃焼室を区画形成するエンジンヘッド(図示せず)に設けられたネジ穴に挿入されて固定されるようになっている。
スパークプラグS1は、導電性の鉄鋼材料(例えば低炭素鋼等)等よりなる円筒形状の取付金具10を有している。本例では、取付金具10は、炭素鋼を用いて冷間鍛造や切削加工等を行うことにより筒状に形成されている。また、取付金具10は、図示しないエンジンブロックに固定するための取付ネジ部11を備えている。
取付金具10の内部には、アルミナセラミック(Al2O3)等からなる絶縁体(絶縁碍子)20が固定されている。この絶縁体20の先端部21は、取付金具10の一端から露出するように設けられている。
絶縁体20の軸孔22には中心電極30が固定されている。この中心電極30は取付金具10に対して絶縁保持されている。中心電極30は、例えば、内材がCu等の熱伝導性に優れた金属材料、外材がNi基合金等の耐熱性および耐食性に優れた金属材料により構成された円柱体からなる。
そして、図1に示すように、本例では、中心電極30はプラグの軸方向(取付金具10の軸方向)に延びる円柱形状をなし、その先端部31が絶縁体20の先端部21から露出するように設けられている。こうして、中心電極30は、その先端部31が露出した状態で取付金具10に収納されている。
一方、接地電極40は、本実施形態では、先端部41側が中心電極30の先端部31に覆い被さるように、根元端部42と先端部41との間の中間部が曲げられた柱状のものである。ここで、曲げられた中間部は曲げ部44として構成されている。
本例では、接地電極40は、Niを主成分とするNi基合金からなる角柱より構成されており、根元端部42にて取付金具10の一端に溶接により固定され、中間部が略L字に曲げられた曲げ部44をなしている。そして、接地電極40の先端部41の側面(以下、先端部側面という)43は、中心電極30の先端部31と放電ギャップ50を介して対向している。
ここで、接地電極40において、根元端部42は接地電極40の一端に相当し、先端部41は接地電極40の他端に相当し、先端部側面43は接地電極40の対向部に相当するものである。また、中心電極30の先端部31は、中心電極30の対向部に相当するものである。
図2は、スパークプラグS1における放電部近傍の拡大構成を概略断面図として示すもので、図3は、図2中の放電ギャップ50近傍部のさらなる拡大図を示すものである。なお、図3において、(a)は放電ギャップ50近傍部の側面図であり、(b)は(a)中の下方からみたときの中心電極30側の円柱部35と接地電極40側の円柱部45とが重なっている状態を示す図である。
上記したように、放電ギャップ50を介して、両電極30、40の対向部31、43、すなわち中心電極30の先端部31と接地電極40の先端部側面43とが対向して配置されている。
そして、互いに対向する中心電極30および接地電極40の対向部31、43すなわちこれら中心電極30の先端部31および接地電極40の先端部側面43には、ともに円柱状の円柱部35、45が相手側の対向部31、43に延びるように配設されている。そして、中心電極30側の円柱部35の一端面35aと接地電極40側の円柱部45の一端面45aとが互いに放電ギャップ50を介して対向している。
このような中心電極30側の円柱部35および接地電極40側の円柱部45は、各電極母材すなわち中心電極30および接地電極40と一体に形成された同材質のものであってもよいが、本例では、電極母材30、40に溶接された貴金属チップとして構成されている。
貴金属チップからなる各円柱部35、45は、それぞれ一端面35a、45aとは反対側の他端面側において電極母材30、40に溶接されているが、その溶接方法としては、レーザ溶接、抵抗溶接、アーク溶接、プラズマ溶接等の種々の手法を採用することができる。
なかでも、接合強度の確保等の点からレーザ溶接を用いることが好ましい。本例では、各円柱部35、45は、電極母材30、40にレーザ溶接されており、各円柱部35、45と電極母材30、40とは、互いの構成材料が溶け合った溶融部36、46を介して接合されている。
また、このような貴金属チップとしては、Ir、Irを50重量%以上含有したIr合金、Pt、Ptを50重量%以上含有したPt合金等から選択された貴金属からなるものを採用することができる。本例では、中心電極側30の円柱部35はIr合金からなり、接地電極40側の円柱部45はPt合金からなるものとしている。
また、この貴金属チップが合金である場合、添加物としてIr(イリジウム)、Pt(白金、プラチナ)、Rh(ロジウム)、Ni(ニッケル)、W(タングステン)、Pd(パラジウム)、Ru(ルテニウム)、Os(オスミウム)、Al(アルミニウム)、Y(イットリウム)、Y2O3(三酸化二イットリウム、イットリア)のいずれかを含有するものが好ましい。
また、本例では、中心電極30側の円柱部35の一端面35aと接地電極40側の円柱部45の一端面45aとは、互いに平行な位置関係にある。つまり、本例の放電ギャップ50は、これら平行な両円柱部35、45の一端面35a、45a間の空隙である。ここでは、この放電ギャップ50の大きさGすなわち両一端面35a、45a間の最小距離G(図3(a)参照)は1mmとしている。
また、本実施形態では、中心電極30側の円柱部35の直径T1および接地電極40側の円柱部45の直径T2は、ともに1.1mm以下である。これら直径T1、T2については図3(a)を参照のこと。
なお、厳密には、これら円柱部35、45の直径T1、T2は、それぞれの一端面35a、45aの直径である。ちなみに、直径1.1mm以下であることは、当該直径を構成する円形面の面積が0.95mm2以下であることに相当するものである。つまり、本実施形態の両円柱部35、45の一端面35a、45aはその面積が0.95mm2以下であることになる。
また、限定するものではないが、中心電極30の対向部31から突出する中心電極30側の円柱部35の長さ、および、接地電極40の対向部43から突出する接地電極40側の円柱部45の長さは、例えば0.8mm程度のものにできる。
このように、本実施形態のスパークプラグS1は、先端部31が露出した状態で取付金具10に収納された中心電極30と、根元端部(一端)42側が取付金具10に支持されて固定されるとともに、先端部(他端)41側が中心電極30の先端部31と対向する接地電極40とを備え、互いに対向する中心電極30および接地電極40の対向部31、43に、円柱状の円柱部35、45を相手側の対向部31、43に延びるように配設し、両円柱部35、45の一端面35a、45aが互いに放電ギャップ50を介して対向しており、さらに、両円柱部35、45の直径T1、T2がともに1.1mm以下である構成を有している。
そして、本実施形態では、このような構成を有するスパークプラグS1において、図3に示すように、中心電極30側の円柱部35の軸35bと接地電極40側の円柱部45の軸45bとは、互いに平行であって且つどちらか一方の軸を延長した線上に他方の軸が存在しないように互いにずれて位置している。
ここにおいて、図3(a)に示されている両円柱部35、45の軸35a、45aにおけるずれ量(以下、軸ずれ量という)xは、0.05mm以上であって且つ両円柱部35、45のうちの太い方の円柱部の半径以下の大きさとしている。
なお、本実施形態においては、両円柱部35、45の直径T1、T2は互いに同一あっても、異なるものであってもよい。
上記軸ずれ量xを両円柱部35、45のうちの太い方の円柱部の半径以下の大きさとするにあたって、両円柱部35、45の直径T1、T2が同じである場合には、軸ずれ量xは両円柱部35、45の半径0.5T1、0.5T2以下の大きさとする。
一方、中心電極30側の円柱部35および接地電極40側の円柱部45とで、互いの直径T1、T2が異なる場合には、もちろん、軸ずれ量xは太い方の円柱部の半径以下の大きさとするものである。
ここで、両円柱部35、45の直径T1とT2とが異なる場合には、中心電極30側の円柱部35の直径T1と、接地電極40側の円柱部45の直径T2とは、軸ずれ量の2倍以上すなわち2x以上の差をもって異なっているものとする。
ところで、本実施形態では、上述したように、上記軸ずれ量xを、0.05mm以上であって且つ両円柱部35、45のうちの太い方の円柱部の半径以下の大きさとしたことを、主たる特徴点としている。このような特徴的な構成を採用した根拠について、次に説明することとする。
中心電極30側の円柱部35の一端面35aと接地電極40側の円柱部45の一端面45aとが互いに放電ギャップ50を介して対向しており、これら両円柱部35、45の直径T1、T2を、ともに1.1mm以下とすることで小型化を図るようにしたスパークプラグにおいては、従来では、上記図19に示されるように、中心電極30側の円柱部35の軸35bと接地電極40側の円柱部45の軸45bとが互いに平行であって且つ一致していた。
それに対し、本発明者らは、これら両軸35b、45bを、互いに平行であって且つどちらか一方の軸を延長した線上に他方の軸が存在しないように、互いにずらすことを考えた。
このように両軸35b、45bをずらしてやれば、上記図3に示されるように、両電極30、40の円柱部35、45の一端面35a、45aに存在するエッジ部において、対向するエッジ部間の距離が比較的近い部分Aと当該エッジ部間の距離が比較的遠い部分Bとが形成される。
なお、上記距離が比較的近い部分Aは、図3(b)に示されるように、全周の略1/4の範囲に相当するものである。また、この図3および後述する図4においては、エッジ部とはこれら一端面35a、45aにおける端部のことである。
上記図3では、両円柱部35、45の直径が異なる場合を示している。ここでは、中心電極30側の円柱部35の直径T1よりも接地電極40側の円柱部45の直径T2の方が大きい場合、すなわち接地電極40側の円柱部45の方が中心電極30側の円柱部35よりも太い場合について示されている。
また、この両電極30、40の円柱部35、45の一端面35a、45aに存在するエッジ部において、対向するエッジ部間の距離が比較的近い部分Aと当該エッジ部間の距離が比較的遠い部分Bとが形成されることは、両円柱部35、45の直径T1、T2が同じである場合にも同様に言えるものである。
図4は、両円柱部35、45の直径T1、T2が同じ場合について、両軸35b、45bをずらした例について、上記図3と同様の視点からみた状態を示す図である。なお、図4においても、上記距離が比較的近い部分Aは、図3(b)と同様に、全周の略1/4の範囲に相当するものである。
こうして、図3および図4に示されるように、両円柱部35、45の軸35b、45bをずらしてやれば、両円柱部35、45の直径T1、T2が同一であっても異なるものであっても関係なく、両円柱部35、45の一端面35a、45a間を部分的に見たとき、対向するエッジ部間の距離が比較的近い部分Aと当該距離が比較的遠い部分Bとが形成されるのである。
そのため、上記距離が比較的近い部分Aにおけるエッジ部P1とP2間の方が、上記距離が比較的遠い部分Bにおけるエッジ部間よりも、高い確率で放電を発生させることができる。
つまり、従来では、放電がエッジ部の各所でランダムに発生したのに対し、上記距離の比較的近い部分Aのエッジ部P1、P2間において選択的に放電させることができるならば、放電位置の安定化につながる。
なお、両円柱部35、45の直径T1、T2が同じである場合よりも異なる場合の方が、両軸35b、45bのずらしを行うことによって、もともと太さの違う円柱部をさらにずらすことになる。このことから、両円柱部35、45の直径T1、T2が異なる場合の方が上記距離が比較的近い部分Aと当該距離が比較的遠い部分Bとが、より明確に形成されやすいと考えられる。
そして、上記軸ずれ量xと放電安定化との関係について、実験検討を行った。まず、上記図4に示した両円柱部35、45の直径T1、T2が同じである場合に両軸35b、45bをずらした構成について述べる。この場合、例えば、両円柱部35、45の直径T1、T2をともに0.6mmとした。
そして、両円柱部35、45の軸35b、45bが平行且つ一致している状態では、上記図4中の上記距離が比較的近い部分Aにおけるエッジ部P1とP2との間にて放電する割合は、50%であった。つまり、上記距離が比較的近い部分Aを構成するエッジ部P1およびP2は、図4に示されるように2箇所あるので、1箇所について言えば放電する割合は25%である。
一方、両円柱部35、45の軸35b、45bをずらして、軸ずれ量xを0.05mmずらした状態では、上記図4中のエッジ部P1とP2との間にて放電する割合は、80%にまで向上した。上述したのと同じく、1箇所のエッジ部P1とP2との間について言えば放電する割合は40%まで向上した。
また、両円柱部35、45の直径T1、T2が異なる場合についても、実験を行い調べた。ここでは、上記図3に示されるような、中心電極30側の円柱部35の直径T1よりも接地電極40側の円柱部45の直径T2の方が大きい場合について調べた。その実験結果の一例を図5に示す。
図5では、中心電極30側の円柱部35の直径T1を0.6mmと固定し、接地電極40側の円柱部45の直径T2を0.7mm、0.8mm、0.9mmと変えていった。そして、これら直径T1とT2との各々の組み合わせの場合について、軸ずれ量x(単位:mm)と上記距離が比較的近い部分Aにおけるエッジ部P1、P2間で放電する割合(単位:%)との関係を調べた結果が示されている。
ここで、上記距離が比較的近い部分Aにおけるエッジ部P1、P2間で放電する割合とは、上記一端面35a、45aのエッジ部全周のうち当該部分Aにて放電が行われる確率すなわち当該部分Aにおける放電確率を示すものである。
図5では、直径T1、T2の組み合わせについて、(T1、T2)=(0.6mm、0.7mm)の場合は白四角プロットにて示し、(T1、T2)=(0.6mm、0.8mm)の場合は白丸プロットにて示し、(T1、T2)=(0.6mm、0.9mm)の場合は白三角プロットにて示してある。
図5に示される結果から、軸ずれ量xが0.05mm以上であれば、上記距離が比較的近い部分Aにおけるエッジ部P1、P2同士において、従来よりも高い確率で安定した放電を行えることがわかる。このことから、上記軸ずれ量xを0.05mm以上にすればよいことが言える。
また、中心電極30側の円柱部35の直径T1を0.6mmとして、接地電極40側の円柱部45の直径T2を0.7mm、0.8mm、0.9mmとすることにより、各場合において、両円柱部35、45の直径T1、T2の差は、それぞれ0.1mm、0.2mm、0.3mmとなる。
ここにおいて、図5に示される結果を見ると、上記部分Aにおける放電確率が最も高くなるときの軸ずれ量xは、両円柱部35、45の直径T1、T2の差が0.1mmである場合には0.05mmとなり、両円柱部35、45の直径T1、T2の差が0.2mmである場合には0.1mmとなり、両円柱部35、45の直径T1、T2の差が0.3mmである場合には0.15mmとなる。
つまり、上記軸ずれ量xに対して、異なる両円柱部35、45の直径T1、T2の差が軸ずれ量xの2倍すなわち2xであるときに、両円柱部35、45のエッジ部間のうち比較的近い部分Aにおけるエッジ部間距離が最小となる。その結果、当該部分Aの放電確率が最も高くなりうる。
このことから、本実施形態では、両円柱部35、45の直径T1、T2を異ならせる場合には、中心電極30側の円柱部35の直径T1と、接地電極40側の円柱部45の直径T2とは、上記軸ずれ量xの2倍すなわち2x以上の差をもって異ならせるようにしている。
また、軸ずれ量xを両円柱部35、45のうちの太い方の円柱部の半径以下の大きさとする根拠は、次のようなものである。上記軸ずれ量xを太い方の円柱部の半径よりも大きいものにした場合について考える。
図6は、上記図3に示される例のように、接地電極40の円柱部45の方が中心電極30側の円柱部35よりも太い場合において、両円柱部35、45の軸35b、45bの軸ずれ量xを、太い方の接地電極40側の円柱部45の半径0.5T2よりも大きくした状態を示す図である。なお、図6では溶融部は省略してある。
この図6に示されるような状態においては、両円柱部35、45のエッジ部同士のうち、軸35b、45bのずらしによって上記距離が比較的近くなった部分のみにて、実質的に放電が発生する。図6においては、例えば、接地電極40側の円柱部45のエッジ部P3のみで実質的に放電が発生する可能性が高い。
そのため、接地電極40側の円柱部45のエッジ部のうちでは、上記距離が比較的近い部分におけるエッジ部P3の消耗が、それ以外の部分におけるエッジ部の消耗に比べて大幅に激しいものになる。つまり、円柱部45のうちのある一部分のみが早く消耗するため、プラグ寿命の短命化を招いてしまう。
また、両軸35b、45bを互いにずらしすぎると、互いの円柱部35、45の一端面35a、45aの対向面積が少なくなる。
また、両一端面35a、45aの間にて対向しない領域が増えると、円柱部35、45の一端面35a、45aの間以外の部位で放電が発生する可能性もある。例えば、上記溶融部36、46(図2参照)などで放電が発生すると、溶融部36、46の摩耗が生じたりする。
そこで、こういった面からも、軸ずれ量xを両円柱部35、45のうちの太い方の円柱部の半径以下の大きさとすることが好ましく、それにより、スパークプラグの寿命の短化を極力抑制することができうる。
以上のことを根拠として、本実施形態では、軸ずれ量xを、0.05mm以上であって且つ両円柱部35、45のうちの太い方の円柱部の半径以下の大きさとした構成を採用している。
ところで、本実施形態のスパークプラグS1によれば、まず、中心電極30側の円柱部35および接地電極40側の円柱部45を、ともにその直径T1、T2が1.1mm以下であるものとしている。
また、本実施形態のスパークプラグS1では、中心電極30側の円柱部35の軸35bと接地電極40側の円柱部45の軸45bとを、互いに平行であって且つどちらか一方の軸を延長した線上に他方の軸が存在しないように互いにずらして位置させ、この軸ずれ量xを0.05mm以上であって且つ両円柱部35、45のうちの太い方の円柱部の半径以下の大きさであるものとしている。
これらのことにより、本実施形態では、中心電極30と接地電極40の対向部31、43に円柱部35、45が設けられ、これら両円柱部35、45の一端面35a、45aが放電ギャップ50を介して対向するスパークプラグS1において、小型化に適し且つ放電位置の安定化に適した構成を実現することができる。
また、本実施形態では、接地電極40は、先端部(他端)41側が中心電極30の先端部31に覆い被さるように、根元端部(一端)42と先端部41との間の中間部が曲げられた曲げ部44となっている柱状のものである。
このような接地電極40とすることにより、「中心電極30側の円柱部35の軸35bと接地電極40側の円柱部45の軸45bとが互いに平行であって且つどちらか一方の軸を延長した線上に他方の軸が存在しないように互いにずれて位置する」という構成を、適切に実現することができている。
なお、本実施形態においては、軸35b、45bをずらす方向は限定されるものではない。つまり、エッジ部のうち接地電極40の先端部(他端)41側の部位で放電位置を安定化させた場合は、火炎核の成長も速く、燃焼が速くなる。一方、エッジ部のうち接地電極40の曲げ部44側の部位で放電を安定化させた場合は、火炎核の成長が遅く、燃焼が遅くなる。
いずれにせよ、放電位置が安定化していれば、燃焼速度は安定しており、サイクル間の燃焼速度のばらつきを抑制することができ、サイクル間で火炎の成長が速かったり遅かったりというばらつきは防止できうる。
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態に係るスパークプラグS2の要部すなわち放電部近傍の構成を示す側面図である。
本実施形態のスパークプラグS2も、先端部31が露出した状態で取付金具10に収納された中心電極30と、根元端部(一端)42側が取付金具10に支持されて固定されるとともに先端部(他端)41側が中心電極30の先端部31と対向する接地電極40とを備えている。
そして、互いに対向する中心電極30および接地電極40の対向部31、43には、ともに円柱状の円柱部35、45が相手側の対向部35、45に延びるように配設されている。そして、これら両円柱部35、45の一端面35a、45aが互いに放電ギャップ50を介して対向している。
また、本実施形態においても、中心電極30側の円柱部35および接地電極40側の円柱部45は、ともにその直径T1、T2が1.1mm以下である。
このような構成を有する本スパークプラグS2においては、中心電極30側の円柱部35の一端面35aと接地電極40側の円柱部45の一端面45aとの間の平行度Hが、放電ギャップ50の大きさGの1%以上であって且つ0.15mm未満であることを、主たる特徴としている。
ここで、上記平行度Hは、両円柱部35、45の一端面35a、45aのうちどちらか一方の一端面を基準面とし、この基準面に対して他方の一端面を傾斜させて配置したときの両一端面の間の最小距離Aと最大距離Bとの差であり、放電ギャップ50の大きさGは、最小距離Aと一致する。
本例では、図7に示されるように、実際には、接地電極40側の円柱部45の一端面45aが、プラグの軸と直交する面から傾斜したものになっているが、この接地電極40側の円柱部45の一端面45aを基準面としている。
そして、この基準面45aに対する中心電極30側の円柱部35の一端面35aについての平行度Hが示されたものになっている。なお、基準面45aは、接地電極40側の円柱部45の一端面45aと同一平面上に延長した面である。
このような特徴的な構成を採用した根拠について述べる。この特徴点は、上記実施形態における知見に基づく。
すなわち、本実施形態の特徴的な構成は、「軸ずれ量xが0.05mm以上であれば、その場合に形成される両円柱部35、45のエッジ部間の距離が比較的近い部分Aにおいて、従来よりも高い確率で安定した放電を行える」という上記知見に基づいて創出されたものである。
本発明者らは、上記実施形態についてさらに検討したところ、上記図3(a)において、上記軸ずれ量xを0.05mmとした場合、両円柱部35、45のエッジ部間の距離のうちの最小距離Aと最大距離Bとの差は、放電ギャップ50の1%となることを見出した。なお、当該最小距離は、上記図3(a)に示される両矢印Aの長さに相当し、当該最大距離は、同図中に示される両矢印Bの長さに相当する。
具体的に、上記図3にて考えると、例えば、中心電極30側の円柱部35の直径が0.6mm、接地電極40側の円柱部45の直径が0.8mm、放電ギャップ50が1mm、軸ずれ量xが0.05mmのとき、最大距離Bと最小距離Aとの差は0.01mmであり、放電ギャップ50の1%となる。
また、両円柱部35、45のエッジ部間の距離に差を生じさせるためには、上記実施形態に示したような、中心電極30側の円柱部35の軸35bと接地電極40側の円柱部45の軸45bとをずらす方法以外にも、対向する両円柱部35、45の一端面35a、45aにおいて、一方の一端面を基準として他方の一端面を平行状態から傾斜させてやればよい。
そして、対向する両円柱部35、45の一端面35a、45aの間の平行度Hが放電ギャップ50の大きさの1%であることは、図7において、両円柱部35、45のエッジ部間の距離のうちの最小距離Aと最大距離Bとの差が放電ギャップ50の1%であることと同じことになる。その結果、上記軸ずれ量xを0.05mmとすることと同様の効果を発揮させることが可能になる。
このようなことから、本実施形態では、上記軸ずれ量xを0.05mm以上にすることと同様の作用効果を有する構成を実現するために、対向する両円柱部35、45の一端面35a、45aの間の平行度Hを放電ギャップ50の大きさの1%以上にしているのである。
また、上記平行度Hが0.15mm未満であることの根拠については、次のようなことが考えられる。
一般に、スパークプラグのライフサイクルにおける放電摩耗による放電ギャップ長(つまり、放電ギャップ50の大きさ)Gの変化が0.3mm以下であることが要求されていることによる。当該放電ギャップ長が0.3mmを超えると、スパークプラグに要求される放電電圧が増大し、失火の原因となる。
ここで、上記平行度Hが0.15mm未満であることとは、両円柱部35、45の一端面35a、45aのうち一方の一端面を基準面とし、この基準面と他方の一端面との間の最小距離と最大距離との差が、0.15mm未満であることに相当するものである。
逆に言うならば、上記平行度Hが0.15mm以上であると、両円柱部35、45の一端面35a、45aの間において上記最小距離となっている部分では、上記最大距離となっている部分よりも0.15mm以上の大きさをもって、他方の一端面が一方の一端面に近いことになる。
具体的に、図7に示す例でいうと、上記平行度Hが0.15mm以上である場合、両円柱部35、45の一端面35a、45aの間において上記最小距離Aとなっている部分は、中心電極30側の円柱部35におけるエッジ部P4である。そして、このエッジ部P4は、上記最大距離Bとなっている部分であるエッジ部P5よりも0.15mm以上、接地電極40側の円柱部45の一端面45aに近い。
ここで、この最小距離Aの部分であるエッジ部P4とこれに対向するエッジ部P6の部分が最も放電確率が高く、摩耗も激しい。この摩耗は、中心電極30側のエッジ部P4だけではなく、このエッジ部P4に対向する接地電極40側のエッジ部P6にも同様に発生する。
つまり、一方の中心電極30側のエッジ部P4が0.15mm摩耗すれば、対向する接地電極40側のエッジ部P6も0.15mm摩耗し、その結果、この摩耗によるエッジ部P4、P6間の放電ギャップ長Gの変化は0.3mmとなる。
このようなことから、対向する両円柱部35、45の一端面35a、45aの間の平行度Hが0.15mm未満であれば、スパークプラグの放電摩耗による放電ギャップ長Gの変化が0.3mm以上となることを極力遅らせることができ、好ましい。
以上のようなことから、本実施形態では、中心電極30側の円柱部35の直径T1および接地電極40側の円柱部45の直径T2をともに1.1mm以下とし、中心電極30側の円柱部35の一端面35aと接地電極40側の円柱部45の一端面45aとの間の平行度Hを、放電ギャップ50の大きさの1%以上であって且つ0.15mm未満としている。
そして、このような本実施形態のスパークプラグS2によれば、中心電極30と接地電極40の対向部31、43に円柱部35、45が設けられ、これら両円柱部35、45の一端面35a、45aが放電ギャップ50を介して対向するスパークプラグS2において、小型化に適し且つ放電位置の安定化に適した構成を実現することができる。
ここで、図7に示す例では、接地電極40の曲げ部44の曲げ度合を少なめにすることにより、中心電極30側の円柱部35の軸35bと接地電極40側の円柱部45の軸45bとは、互いに非平行となっている。
そして、このような非平行配置の採用により、両円柱部35、45の一端面35a、45a間の距離が、接地電極40の曲げ部44側から先端部(他端)41側に向かって広くなるように、上記平行度Hが設定されている。
よって、この図7に示す例では、接地電極40の曲げ部44側場合の部位で放電位置を安定化させたものとなる。そのため、比較的火炎核の成長が遅くなり、遅い燃焼速度にて安定化が図られる。
もちろん、本実施形態においても、安定化させる放電位置は限定されるものではない。例えば、火炎核の成長も速く燃焼が速くなる接地電極40の先端部(他端)41側の部位にて、放電位置を安定化させるようにしてもよい。
そのような例を本実施形態の第1の変形例として、図8に示しておく。図8に示すスパークプラグS2’も、接地電極40は、先端部(他端)41側が中心電極30の先端部31に覆い被さるように、根元端部(一端)42と先端部41との間の中間部が曲げられた曲げ部44となっている柱状のものである。、
ここで、図8では、上記図7に示すものとは反対に、接地電極40における先端部(他端)41側の部位の方が、接地電極40における曲げ部44側の部位よりも中心電極30の先端部31に近づくようになっている。
つまり、両円柱部35、45の一端面35a、45a間の距離が、接地電極40の先端部(他端)41側から曲げ部44側に向かって広くなるように、上記平行度Hが設定されている。
それによれば、接地電極40における先端部(他端)41側の部位の方が、曲げ部44側の部位よりも中心電極30の先端部31に近づくようになっているため、結果として、曲げ部44の湾曲度合を大きくすることができる。
このことにより、放電部に対して接地電極40が大きく引っ込んだ形を実現することができるため、当該放電部における燃焼空間を大きく確保することができ、失火の抑制にとって好ましい。
また、このような接地電極40の曲げ部44の構成を採用すれば、中心電極30側の円柱部35の一端面35aと接地電極40側の円柱部45の一端面45aとの間のエッジ部同士において、接地電極40における先端部(他端)41側に位置する部位の距離の方を、接地電極40における曲げ部44側に位置する部位の距離よりも容易に小さくできることは、明らかである。
そして、このような距離関係を設定することにより、接地電極40のうち曲げ部44側よりも比較的熱引き性の低い先端部(他端)41側において放電確率を高くすることができる。つまり、放電部のうち比較的高温となる部分において燃焼する割合を多くすることができる結果、燃焼速度を速くすることができる。
また、上記図7および図8に示される例では、接地電極40の曲げ部44の曲げ度合を調節することによって、中心電極30側の円柱部35の軸35bと接地電極40側の円柱部45の軸45bとを、互いに非平行な配置状態としている。それにより、本実施形態の平行度Hが実現されている。
これに対して、本実施形態においても、中心電極30側の円柱部35の軸35bと接地電極40側の円柱部45の軸45bとを、互いに平行にしてもよい。この場合、両円柱部35、45のうちの少なくとも一方の円柱部の一端面を当該円柱部の軸と直交する面から傾斜させた面とすればよい。
そのような両円柱部35、45の軸35b、45bを平行とした種々の変形例を図9、図10、図11に、それぞれ本実施形態の第2の変形例、第3の変形例、第4の変形例として示す。
図9〜図11に示される本実施形態の第2〜第4の変形例では、両円柱部35、45の軸35b、45bが平行であって且つ一致している。そして、接地電極40における先端部(他端)41側の部位の方が、接地電極40における曲げ部44側の部位よりも中心電極30の先端部31に近づくようになっている。
つまり、これら第2〜第4の変形例においても、両円柱部35、45の一端面35a、45a間の距離が、接地電極40の先端部(他端)41側から曲げ部44側に向かって広くなるように、上記平行度Hが設定されている。
さらに、図9に示される第2の変形例では、中心電極30側の円柱部35の一端面35aは当該円柱部35の軸35bと直交する面とし、接地電極40側の円柱部45の一端面45aを当該円柱部45の軸45bと直交する面から傾斜させた面としている。
また、図10に示される第3の変形例では、中心電極30側の円柱部35の一端面35aを当該円柱部35の軸35bと直交する面から傾斜させた面とし、接地電極40側の円柱部45の一端面45aは当該円柱部45の軸45bと直交する面としている。
また、図11に示される第4の変形例では、両方の円柱部35、45の一端面35a、45aを、それぞれの円柱部35、45の軸35b、45bと直交する面から傾斜させた面としている。
このような一端面35a、45aが自身の軸35b、45bから傾斜した円柱部35、45は、円柱部を切断する際の方向を斜めにしたり、円柱部自身を型加工したりする等により、容易に形成することができる。
また、本実施形態における上記した各例では、接地電極40側の円柱部45の方が太い例を示してあるが、両円柱部35、45の太さが同等、すなわち両直径T1、T2が同等のものであってもよい。そのような例を、本実施形態の第5の変形例として、図12に示しておく。
図12では、両円柱部35、45の軸35b、45bが平行であって且つ一致した例が示されており、両円柱部35、45の太さが同等である。また、ここでは、接地電極40側の円柱部45の一端面45aが当該円柱部45の軸45bと直交する面から傾斜させた面となっている。
この図12に示すように、両円柱部35、45の太さが同等である場合にも、中心電極30側の円柱部35の一端面35aを当該円柱部35の軸35bと直交する面から傾斜させた面としてもよいし、上記図11に示される例のように、両一端面35a、45aを傾斜させた面としてもよい。
また、もちろん上記図7や図8に示したような両円柱部35、45の軸35b、45bを非平行な配置とした場合においても、両円柱部35、45の直径T1、T2が同等であってもよい。
さらに、本実施形態において、上記各例では、各円柱部35、45の一端面35a、45aは、それぞれひとつの平面から構成されおり、一方の一端面35aの全面と他方の一端面45aの全面との間において上記平行度Hの関係が設定されていた。
ここにおいて、各一端面35a、45aが互いに傾斜方向の異なる複数の平面からなり、複数の平面の境界にエッジ部を持つものであってもよい。そのような例を本実施形態の第6の変形例として、図13に示す。
図13に示す例では、中心電極30側の円柱部35の一端面35aが、傾斜方向の異なる2つの面からなり、これら2つの面の境界にエッジ部が形成されている。そして、これら2つの面と接地電極40側の円柱部45の一端面45aとの間にて、上記平行度Hの関係が満足されたものとなっている。
(第3実施形態)
図14は、本発明の第3実施形態に係るスパークプラグの要部すなわち放電ギャップ50の近傍部を示す側面図である。
本実施形態は、上記第1実施形態と上記第2実施形態とを組み合わせたものである。本実施形態においても、中心電極30と接地電極40の対向部31、43に円柱部35、45が設けられ、これら両円柱部35、45の一端面35a、45aが放電ギャップ50を介して対向する。
そして、両円柱部35、45は、ともにその直径T1、T2が1.1mm以下であり、両円柱部35、45の軸35b、45bは、互いに平行であって且つどちらか一方の軸を延長した線上に他方の軸が存在しないように互いにずれて位置している。さらに、軸ずれ量xは、0.05mm以上であって且つ両円柱部35、45のうちの太い方の円柱部の半径以下の大きさである。
このような構成に加えて、さらに、本実施形態では、中心電極30側の円柱部35の一端面35aと接地電極40側の円柱部45の一端面45aとの間の平行度Hが、放電ギャップ50の大きさGの1%以上である。また、本実施形態においても、平行度Hは、0.15mm未満であることが好ましい。
ちなみに、上記第1実施形態では、中心電極30側の円柱部35の一端面35aと接地電極40側の円柱部45の一端面45aとは、互いに平行な位置関係にあるものとしていた。
そして、本実施形態によれば、上記第1実施形態の作用効果と上記第2実施形態の作用効果が期待でき、その結果、小型化に適し且つ放電位置の安定化に適した構成を実現することができる。
ここで、図14に示す例では、中心電極30側の円柱部35の一端面35aと接地電極40側の円柱部45の一端面45aとの間の距離において、接地電極40における先端部(他端)41側に位置する部位の距離の方が、曲げ部44側に位置する部位の距離よりも小さくなっている。
それにより、接地電極40のうち曲げ部44側よりも比較的熱引き性の低い先端部(他端)41側において放電確率を高くすることができる。つまり、放電部のうち比較的高温となる部分において燃焼する割合を多くすることができる結果、燃焼速度を速くすることができる。
また、図14に示す例では、接地電極40側の円柱部45を基準にした場合、中心電極30側の円柱部35は、両円柱部35、45の一端面35a、45a間の距離が最小となる部分が最も放電確率が高くなるような方向(図中の白抜き矢印Y方向)に、ずらされている。
もし、図14において、接地電極40側の円柱部45を基準にして、図中の白抜き矢印Y方向とは反対方向に、中心電極30側の円柱部35をずらした場合、両円柱部35、45の一端面35a、45a間の距離が最小となる部分が最も放電確率が高くなるとは限らない。
そのため、本実施形態においては、両一端面35a、45a間の距離が最小となる部分が最も放電確率が高くなるような方向に、両円柱部35、45の軸35b、45bが互いにずれていることが好ましい。
なお、この「両一端面35a、45a間の距離が最小となる部分が最も放電確率が高くなるような方向に、両円柱部35、45の軸35b、45bをずらす」ことは、あくまで本実施形態における好ましい形態であって、本実施形態はこれに限定されるものではない。
そして、本実施形態においても、両円柱部35、45の直径の大きさや、軸35a、45aをずらす方向、両一端面35a、45aを傾斜させる方向等は、上記実施形態と同様に限定されるものではなく、具体的には、上記実施形態に示されている各種の好ましい形態や変形例を適宜選択して採用できることは言うまでもない。
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態においては、中心電極30側の円柱部35と接地電極40側の円柱部45とで、太さが同等かもしくは接地電極40側の円柱部45の方が太い例を示してあるが、中心電極30側の円柱部35の方が太い場合であってもよい。
ここで、本発明に適用可能な種々の変形例を示しておく。図15(a)、(b)は、接地電極40と円柱部45との接合界面への熱応力を低減するのに適した接地電極40の形状を示す図であり、接地電極40の先端部側面(対向面)43の上から当該構成を見た図である。
図15(a)に示されるように、接地電極40の幅を先端部41に向かって細くなるテーパ形状としたり、図15(b)に示されるように、接地電極40の先端部41を凸字形状としたりして、接地電極40の先端部41を細くする。このようにすれば、電極母材である接地電極40自体への熱応力を低減することができ、結果として、上記接合界面への熱応力を低減できることから好ましい。
また、図16、図17は、それぞれ、接地電極40と接地電極側貴金属チップ45との接合界面への熱応力を低減するのに適した接地電極40の内部構成を示す概略断面図である。
図16および図17に示す接地電極40は、その内部に母材(例えばNi基合金)よりも熱伝導性に優れた内層部材70を収納したものである。このようにすれば、接地電極40の先端部(チップ接合部)41の温度を低減することができ、結果として、上記接合界面への熱応力を低減できることから好ましい。
ここで、図16では、Cu等よりなる1層の内層部材70が収納されており、図17では、Cu+Niクラッド(CuとNiの積層体)等よりなる2層の内層部材70が収納されている。
また、図18は、中心電極30と接地電極40に加えて、絶縁体20の先端部21に対向する補助電極60を有するスパークプラグを示す図である。なお、図18において、(b)は(a)の左方から視た側面図である。
このような構成とすることで、スパークプラグがくすぶった場合に、補助電極60により絶縁体20の表面に付着したカーボンを焼き切る作用効果があり、前述した生産性、着火性、接合信頼性だけでなく、耐くすぶり性も向上できることから好ましい。
なお、本発明は、スパークプラグにおける放電部、特に電極およびその対向部の構成を上記実施形態に述べたような構成としたことを要部とするものであり、他の部分は適宜設計変更可能である。