JP2005041595A - テンタ、クリップチェーンの異常検出方法、およびシート状物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】テンタにおけるクリップチェーンの異常を、効率よく、早期かつ確実に検出し、ひいてはフィルム等シート状物の品質や生産性を向上させる。
【解決手段】複数のクリップを連結してなるクリップチェーンを有するテンタのクリップチェーンの異常検出方法であって、クリップチェーンを支持する部分の少なくとも1箇所についてクリップチェーンの走行時に当該支持部分に生じる異常を検出し、異常が生じるタイミングに特定の箇所を通過するクリップを同定することを特徴とするクリップチェーンの異常検出方法。
【選択図】なし
【解決手段】複数のクリップを連結してなるクリップチェーンを有するテンタのクリップチェーンの異常検出方法であって、クリップチェーンを支持する部分の少なくとも1箇所についてクリップチェーンの走行時に当該支持部分に生じる異常を検出し、異常が生じるタイミングに特定の箇所を通過するクリップを同定することを特徴とするクリップチェーンの異常検出方法。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、布用幅出機、フィルム用幅出機、プラスチックフィルム延伸機あるいは2軸延伸機等といったテンタに関する。また、そのクリップチェーンの異常検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
テンタは通常、シート状物の進行方向に向かって両脇にクリップチェーンを有し、当該クリップチェーンのクリップ(テンタクリップとも呼ぶ。)がシート状物を把持しつつ走行して、シート状物を延伸、引伸等する。
【0003】
従って、均一に処理されたシート状物を得るためには、このテンタクリップはフィルムの把持を正しい幅、間隔、高さ方向の均一性、張力等で確実に行う必要があるが、長時間の運転後には多数のテンタクリップの中にはガタ、ユルミ、機械的損耗、バネのヘタリ等が生じてシート状物の把持不良を起こすものがでてくる。また、テンタクリップ同士を連結してチェーンとする連結ピンや、これを支持するクリップ台も、摩耗が生じると、クリップチェーンの長手方向に伸びが生じたり、対となるべき左右のクリップの位相がズレたり、シートを把持する高さに差が生じてくる。このようなクリップ把持不良、クリップチェーンの伸び、位相ズレはフィルムの搬送を不安定にし、延伸ムラ等の処理ムラや、シワや、フィルム破れを引き起こす要因となる。
【0004】
そこで、クリップチェーンに発生した異常を的確に検出することが必要となる。
その手段として例えば、テンタ出口にフィルム等の耳部の把持跡状態を検知する把持跡検出器を設け、フィルム等についた把持跡の検知を通じて、クリップチェーンの異常を発見する手段が開示されている(特許文献1参照。)。しかし、この手段では、フィルム等の厚さ、品種、生産条件に把持跡の検出精度も大きく依存し、同じクリップの条件でも把持跡の付き方にバラつきが生じやすいので、異常の検出精度を十分に確保することができなかった。
【0005】
また、例えば、クリップ通過検知センサをテンタ内に設け、順次各クリップの通過時刻を調べ、このデータに基づいてクリップチェーンの異常を検出する方法が開示されている(特許文献2参照。)。しかしこの方法は、もっぱら連結ピンの損耗によるクリップチェーンの長手方向に生じる伸び・弛みを検出しうるものであり、その他の異常を検出することは実質不可能であった。
【0006】
また例えば、クリップの形態上の特性値を設定し、この特性値との比較から個々のクリップの形状異常を判定する方法が開示されている(特許文献3参照。)。しかしこの方法では、センサの応答周波数の限界から、あまり速いライン速度では十分な分解能が得られず、10〜30m/min程度の低速で実施する必要がある。そのため、例えばフィルムの延伸用途においては、実質的にはオフラインでの測定となり、異常が発生したら直ちに異常箇所のクリップを交換するなど、適宜時の対応をとることが困難であり、異常の早期発見につながらず、生産ロスを最小限にとどめることはできなかった。
【0007】
【特許文献1】
特公平4−51458号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平6−211396号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平6−247615号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、テンタにおけるクリップチェーンの異常を、効率よく、早期かつ確実に検出し、ひいてはフィルム等シート状物の品質や生産性を向上させることを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、複数のクリップを連結してなるクリップチェーンを有するテンタであって、クリップチェーンを支持する部分の少なくとも1箇所について、クリップチェーンの走行時に当該支持部分に生じる異常を検出する手段を備え、当該異常が生じるタイミングに特定の箇所を通過するクリップを同定する手段を備えたことを特徴とするテンタである。
【0012】
また本発明は、複数のクリップを連結してなるクリップチェーンを有するテンタのクリップチェーンの異常検出方法であって、クリップチェーンを支持する部分の少なくとも1箇所についてクリップチェーンの走行時に当該支持部分に生じる異常を検出し、異常が生じるタイミングに特定の箇所を通過するクリップを同定することを特徴とするクリップチェーンの異常検出方法である。
【0013】
また本発明は、本発明のテンタを用いた工程を含むことを特徴とするシート状物の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、適宜図を用いながら説明するが、本発明は図に記載された形態のみに限定されるものではない。
【0015】
本発明のテンタは、複数のクリップを連結してなるクリップチェーンを有する。また同じく本発明のクリップチェーンの異常検出方法は、複数のクリップを連結してなるクリップチェーンを有するテンタのクリップチェーンに係るものである。図1において、クリップ本体4は、クリップ台3に載置固定されており、ベース4aからアーチ形に起立部を有し、当該起立部の上端には、支軸5によりクリップレバー6の略中央部が回転可能に支持されている。クリップレバー6は、上部6aとクリップ本体との間に張設されたスプリング12のばね力により実線で示す位置に回動され、下部6bのエッジ6cとクリップ本体4のベース4aに配設されたライナ7との間でフィルム11の両端部(耳部)を把持するようになっている。
【0016】
また図3において、クリップ台3とローラーリンク14はチェーンピン13を軸として回転可能に連結され、チェーンを構成している。テンタクリップの個数としては、テンタ1台当たり数百〜数千個、より具体的には500〜3000個程度使用され、すなわち一対のチェーンの片側としては、250〜1500個程度連結されている。
【0017】
図1において、左右一対のテンタクリップ1,1は各々レール2,2上に相対して摺動可能に配設された一対のクリップ台3,3上に取り付けられており、図2において、クリップは、テンタ8の入口部8aから出口部8bに向かって所定の速度で移動し、出口部8bで反転して入口部8aに戻るようになっている。フィルム11は、レール2、2上を摺動するクリップに把持されながら共に移動し、テンタ8を通過する間に横(左右)に所定の倍率に延伸される(図2)。
【0018】
また、テンタ8の出口部8bにはクリップオープナー9aおよびターンホイル10aが、入口部8aには、クリップクローザー9bおよびターンホイル10bが設けられている(図2)。テンタクリップ1が入口部8aに来ると、クリップレバー6は、その上部6aがターンホイル10a及びクリップクローザー9bに接触することにより、スプリング12のばね力により図1の実線の位置に回動して固定され、シート状物11を把持する。そして、テンタクリップ1が出口部8bに来ると、クリップレバー6は、その上部6aがクリップオープナー9a及びターンホイル10aに接触することにより、スプリング12のばね力に抗して図1に破線で示すように回動して、シート状物11の両側端部の把持を解除し、シート状物11を次工程に送り出す。
【0019】
また本発明のテンタは、クリップチェーンを支持する部分の少なくとも1箇所について、クリップチェーンの走行時に当該支持部分に生じる異常を検出する手段を備えていることが重要である。また同じく本発明のクリップチェーンの異常検出方法は、クリップチェーンを支持する部分の少なくとも1箇所についてクリップチェーンの走行時に当該支持部分に生じる異常を検出することが重要である。そうすることで、例えばクリップの形状を一つ一つ検査していくよりも、振動や歪みとして、工程に生じている異常をより本質的に簡便確実にとらえることができ、また、例えばシート状物の把持跡を観察するよりも、生じている異常のリアルタイムな検出が可能となる。
【0020】
支持部に生じる異常を検出すれば良いということのメカニズムとしては、例えば図3においてチェーンピン13の外周が摩耗してくると、ローラーリンク14やチェーンリンクとの間に隙間が生じ、これに設置したクリップ台の鉛直方向、水平方向にズレが発生することによりクリップが振動し、シート状物を把持する位置、角度が変化し、シート状物の破れ等の原因となる。そこで、支持部に伝搬するこの振動を検出すれば、シート状物の処理・製造に重大な影響を及ぼすクリップチェーンの異常を検出することができるのである。
【0021】
検出手段としては、歪みゲージ、変位センサ(レーザー変位センサなど)、振動センサ等を好ましく採用することができる。例えば、異常クリップの走行によって、ターンホイルがフィルムの走行方向に対して0.5mm以上変動するようなテンタの構造であれば、変位計による検知が好ましい。また例えば、ターンホイルの歪みが垂直方向に発生しやすい構造であれば、振動計の適用が好ましい。
【0022】
歪みゲージの具体例としては例えば、図4に示すように歪みゲージ21と動歪計30とからなる。歪みゲージ21は1×10−6程度まで測定できるものが好ましく、歪みゲージの取付けは、単純圧縮もしくは引張りに対応する1ゲージ法が簡便であるが、環境温度が変化する場合には1ゲージ3線式結線法、1アクチブ1ダミーゲージ法、2アクチブゲージ法、対辺アクチブゲージ法、対辺2アクチブゲージ3線式結線法、4アクチブゲージ法等を使用して温度補償をすることがより好ましい。また歪みゲージ21から動歪計30までの導電接続上の距離は、出力の電圧降下を防止するために、5m以下が好ましく、2m以下がより好ましい。
【0023】
振動センサとしては、渦電流型、容量型、電子光学型、ホール素子型等の非接触式のものと、圧電型、サーボ型、ストレインゲージ型、動電型等の接触式のものとがあり、接触式が好ましく、とりわけストレインゲージ型、動電型がより好ましい。
【0024】
検出手段を設置する個所としては例えば、チェーンがターンするターンホイール部分などが、チェーンの張力等の変動を受けやすいため好ましい。
【0025】
また、チェーンの長手方向と垂直方向に生じる異常をより精度良く検出するために、複数のセンサを配置したり、複数種類のセンサを併用することも好ましい。
【0026】
また本発明のテンタは、異常が生じる(すなわち、支持部分に生じる異常を検出する)タイミングに特定の箇所を通過するクリップを同定する手段を備えていることが重要である。また同じく本発明のクリップチェーンの異常検出方法は、異常が生じるタイミングに特定の箇所を通過するクリップを同定することが重要である。
【0027】
当該同定手段としては例えば、トリガセンサによりチェーンの周回の始点と周期を検知し、始点と異常発生時点の通過時間の差から、始点からの番号を検知することができる。例えば、クリップ数が1000個である場合には、先頭クリップを最初に検知したタイミングを開始点(t1)とし、次の先頭クリップ検知までの時間(t1′)をCPU32またはA/D変換器31(図4)に内蔵されたタイマーにて計測する。チェーンにおいてクリップの間隔が均等であるという前提で、個々のクリップがトリガーセンサ20を通過する時間差tは、(t(1′)−t(1))/1000であることから、N番目のクリップ通過時間t(N)は、t(N)=[(t(1′)−t(1))/1000]×Nとなり、異常を検出したタイミングに特定の箇所を通過するクリップを同定することができる。
【0028】
先頭クリップには物理的なマークをつけることにより同定が可能である。先頭クリップのマークとトリガーセンサの組み合わせとしては例えば、先頭クリップ表面に小孔を開けたり、表面を部分的に鏡面にして反射率を上げる等により、光電式センサを使用することができる。また、先頭クリップに機械的な凹凸を付加することにより、トリガーセンサとして、渦電流式センサや超音波式センサを使用することもできる。また、先頭クリップに機械的な突起を設けることにより、接触式センサを使用することもできる。
【0029】
異常検出手段やトリガセンサの、テンタにおける設置態様例を説明する。図2のテンタ8において、シート状物11の幅方向の両端にクリップチェーン17を配し、クリップチェーン17の移動によりシート状物11をテンタ入口部8aから出口部8b方向に搬送する。そして入口部8a側の一対のターンホイル10bのそれぞれに近接してトリガセンサ20を配置し、また同ターンホイル10bのクリップチェーン17の折り返し点においてホイル径方向の歪みを測定する様に歪みゲージ21を配置している。
【0030】
また、異常検出手段と、異常が生じるタイミングに特定の箇所を通過するクリップを同定する手段との設置箇所が、クリップチェーンの長手方向において離れている場合には、テスト用の異常付クリップをクリップチェーンに組み込んでテンタの予備運転を行い、異常が生じる(異常を検出する)タイミングと、テスト用の異常付クリップの通過を検出するタイミングとの時差を求め、補正用の値とすると良い。
【0031】
尚、「同定する」とは、必ずしも同定手段のみを用いてクリップの一つ一つまで区別する必要はなく、例えば同定手段により1〜5個のクリップの範囲に辺りをつけ、後は目視により異常クリップを確認するといった態様も含むものとする。
【0032】
また本発明のテンタは、クリップがシート状物を把持する直前の位置にエッジセンサを設けることも好ましい。エッジセンサによりシート状物の把持幅を監視し把持幅を一定に保つことにより、シート状物の蛇行、破れや、装置への巻き込まれを防ぐことができる。シート状物の把持幅の調整は、テンタの入口部8aに設置した一対のセルベージガイダ(図2中15)を、各支点16を中心として回動可能させることにより行うことができる。
【0033】
本発明のテンタにおけるデータ処理手段としては、パーソナルコンピューター等の電子演算手段を用いることが好ましい。例えば、ターンホイル10bの振動の測定データは、1〜100μsec毎に測定することにより、数周回分の測定データだけで数万〜数十万個と膨大なものになるためである。
【0034】
電子演算手段によりデータ処理する場合は、異常検出手段で測定されたデータはA/D(アナログ/デジタル)変換されて電子演算手段に取り込まれる。その際、異常検出手段から入力されるデータを全て累積していくのではなく、テンタ1周回分のデータと2〜3周回分の累積値(あるいは平均値)とを一時的に記憶させ、当該累積値(あるいは平均値)を予め設定した閾値と比較し、その比較に基づき異常と判定したクリップを同定した後は、異常クリップの位置情報以外を消去することが好ましい。そうすることで、メモリの容量に対する演算の負担を軽減することができる。累積値あるいは平均値を閾値との比較に用いることは、突発的な電圧変化等、クリップの異常以外によるノイズを拾わないためにも好ましい。
【0035】
データ処理装置系の一例の説明をする。図4において、データ処理装置系34は、動歪計30、アナログ−デジタル変換器(以下「A/D変換器」という。)31、CPU32、警報装置(図中A)33を有している。歪みゲージ21からの信号は、動歪計30により増幅し、A/D変換器31においてアナログ信号からデジタル信号に変換し、CPU32に入力する。また、トリガーセンサ20からの信号も、A/D変換器31においてアナログ信号からデジタル信号に変換し、CPU32に入力する。CPU32は、トリガーセンサ20からの信号によりクリップチェーンの周期を認識し、例えばクリップ1個分の区間における歪み量に相当する電圧信号を予め入力した閾値と比較したり、前述のように累積値あるいは平均値を閾値との比較に用いる場合にも、当該周期の認識に基づいて1周回ごとのデータを累積等することができる。
【0036】
本発明のクリップチェーンの異常検出方法は、上記のような構成をとることにより、シート状物を把持しつつ走行させながら、クリップチェーンの支持部分に生じる異常を検出することが可能である。そして、このようにいわゆるオンラインで異常を検出することが、不良品の発生量を抑える等、コスト低減やシート状物の品質向上の点からも好ましい。
【0037】
また本発明のシート状物の製造方法は、本発明のテンタを用いた工程を含むことを特徴とするものである。そうすることで、シート状物の品質や生産性を向上させることができる。例えば、延伸フィルムの製造の逐次延伸工程に本発明のテンタを好適に適用することができる。逐次延伸タイプのフィルムの製造は例えば、ダイから押し出された溶融ポリマを冷却ロールで固化させて延伸用原反とし、この延伸用原反を延伸温度まで加熱してロールにより縦方向に延伸した後冷却し、次いで当該縦延伸したフィルムの両端をテンタクリップで把持して横延伸装置に導入し、加熱下で横方向に延伸し、引き続き緊張のまま適当な温度で熱処理して配向を固定した後両端の未延伸部を除去して巻取り機で巻き取る。
【0038】
【実施例】
[フィルムの製造]
ポリエチレンテレフタレートのチップを300℃で溶融し、濾過後、幅1600mmの口金から吐出し、表面温度25℃のキャスティングドラム上にキャストして未延伸フィルムとした。
【0039】
当該未延伸フィルムをロール式延伸機に導き、85℃の予熱ロールで予熱した後、温度95℃の周速差のあるロール間で長手方向に3倍に延伸し、一旦室温まで冷却した。
【0040】
次いで、本発明のテンタとして、図2及び図4に示すような構成のテンタ式横延伸機にフィルムを送り込み、温度95℃で幅方向に3倍に延伸し、さらにテンターの熱処理ゾーンで220℃の雰囲気下10秒間の熱処理を施して、厚さ12μmの二軸延伸フィルムを作製した。
【0041】
[クリップチェーン]
クリップピッチ127mm、クリップ個数499個のものを用いた。また、クリップの走行速度は220m/minとした。
クリップチェーンの1周回分の周期は計算上、
0.127(m)×499÷220(m/min)
=0.28806(min)
=17.28(sec)
となり、また、あるクリップから隣り合うクリップまでの区間あたりの時間は計算上、
0.127(m)÷220(m/min)
=5.773×10−4(min)
=0.0346(sec)
=34.6(msec)
となる。
【0042】
[センサ及びデータ処理装置系]
それぞれ次のようなものを用いた。
・歪みゲージ :NEC三栄製一軸の箔ゲージ(N11−FA−5−120−11−VSE5)
・トリガーセンサ:KEYENCE製光電スイッチ(PZ−101)
・動歪み計 :NEC三栄製ACストレインアンプ(AS1302)
・A/D変換器 :KEYENCE製データ収集システム(NR−2000)
・CPU :富士通製ノートパソコン(FMV−6333NU4/X)
[異常の検出]
正常な状態でクリップチェーンに発生する歪みは、最大で1×10−3(A/D変換後:20mV)で、異常時に発生する歪みはこの3〜10倍の3×10−3〜10×10−3(A/D変換後:60〜200mV)であることから、歪みの閾値を3×10−3に定めた。
【0043】
ここで、トリガーセンサから測定された周期は、上記計算値と同じ17.28(sec)であることから、チェーンピンの摩耗等によるチェーン長手方向の異常は無いことを確認した。
【0044】
測定される電圧のクリップチェーン5周回分の平均値について、一部の区間を抜き出したグラフを図5に示す。異常が発生した箇所は、先頭クリップからの経過時間が5.26secであったため、
5.26(sec)÷0.0346(sec)=152
から、異常クリップの位置は先頭クリップから数えて153番目であると同定した。
【0045】
[クリップチェーン部材の交換]
上記153番目のクリップを観察したところ、チェーンピンが著しく摩耗し、チェーンピンとローラーリンク(それぞれ図中13,14)の間に隙間が生じていたため、新たなチェーンピンとローラーリンクに交換した。クリップ交換前の図5に対応する、クリップ交換後のグラフを図6に示す。クリップ交換の結果、閾値を超える電圧の発生は解消した。また、これまで4回/日の頻度で発生していたフィルム破れが、0回/日となった。
【0046】
【発明の効果】
本発明により、テンタにおけるクリップチェーンの異常を効率よく早期かつ確実に検出することができ、よってフィルム等シート状物の品質や生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】テンタのクリップがフィルムを把持した状態を示す断面図である。
【図2】テンタの概略を示す平面図である。
【図3】クリップチェーンの連結部分の断面図である。
【図4】本発明の一態様におけるデータ処理装置系概略構成を示すブロック図である。
【図5】実施例1(クリップチェーン部材交換前)の一部の区間における歪み電圧測定結果を示すグラフである。
【図6】実施例1(クリップチェーン部材交換後)の図5に対応する区間における歪み電圧測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 :テンタクリップ
2 :レール
3 :クリップ台
4 :クリップ本体
5 :支軸
6 :クリップレバー
6a : 上部
6b : 下部
6c : エッジ
7 :ライナ
8 :テンタ
8a : 入口部
8b : 出口部
9a :クリップオープナー
9b :クリップクローザー
10a,10b:ターンホイル
11 :シート状物
12 :スプリング
13 :チェーンピン
14 :ローラーリンク
15 :セルベージガイダ
16 :支点
17 :クリップチェーン
20 :トリガセンサ
21 :歪みゲージ
30 :動歪計
31 :アナログ−デジタル変換器
32 :CPU
33 :警報装置
34 :制御装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、布用幅出機、フィルム用幅出機、プラスチックフィルム延伸機あるいは2軸延伸機等といったテンタに関する。また、そのクリップチェーンの異常検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
テンタは通常、シート状物の進行方向に向かって両脇にクリップチェーンを有し、当該クリップチェーンのクリップ(テンタクリップとも呼ぶ。)がシート状物を把持しつつ走行して、シート状物を延伸、引伸等する。
【0003】
従って、均一に処理されたシート状物を得るためには、このテンタクリップはフィルムの把持を正しい幅、間隔、高さ方向の均一性、張力等で確実に行う必要があるが、長時間の運転後には多数のテンタクリップの中にはガタ、ユルミ、機械的損耗、バネのヘタリ等が生じてシート状物の把持不良を起こすものがでてくる。また、テンタクリップ同士を連結してチェーンとする連結ピンや、これを支持するクリップ台も、摩耗が生じると、クリップチェーンの長手方向に伸びが生じたり、対となるべき左右のクリップの位相がズレたり、シートを把持する高さに差が生じてくる。このようなクリップ把持不良、クリップチェーンの伸び、位相ズレはフィルムの搬送を不安定にし、延伸ムラ等の処理ムラや、シワや、フィルム破れを引き起こす要因となる。
【0004】
そこで、クリップチェーンに発生した異常を的確に検出することが必要となる。
その手段として例えば、テンタ出口にフィルム等の耳部の把持跡状態を検知する把持跡検出器を設け、フィルム等についた把持跡の検知を通じて、クリップチェーンの異常を発見する手段が開示されている(特許文献1参照。)。しかし、この手段では、フィルム等の厚さ、品種、生産条件に把持跡の検出精度も大きく依存し、同じクリップの条件でも把持跡の付き方にバラつきが生じやすいので、異常の検出精度を十分に確保することができなかった。
【0005】
また、例えば、クリップ通過検知センサをテンタ内に設け、順次各クリップの通過時刻を調べ、このデータに基づいてクリップチェーンの異常を検出する方法が開示されている(特許文献2参照。)。しかしこの方法は、もっぱら連結ピンの損耗によるクリップチェーンの長手方向に生じる伸び・弛みを検出しうるものであり、その他の異常を検出することは実質不可能であった。
【0006】
また例えば、クリップの形態上の特性値を設定し、この特性値との比較から個々のクリップの形状異常を判定する方法が開示されている(特許文献3参照。)。しかしこの方法では、センサの応答周波数の限界から、あまり速いライン速度では十分な分解能が得られず、10〜30m/min程度の低速で実施する必要がある。そのため、例えばフィルムの延伸用途においては、実質的にはオフラインでの測定となり、異常が発生したら直ちに異常箇所のクリップを交換するなど、適宜時の対応をとることが困難であり、異常の早期発見につながらず、生産ロスを最小限にとどめることはできなかった。
【0007】
【特許文献1】
特公平4−51458号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平6−211396号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平6−247615号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、テンタにおけるクリップチェーンの異常を、効率よく、早期かつ確実に検出し、ひいてはフィルム等シート状物の品質や生産性を向上させることを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、複数のクリップを連結してなるクリップチェーンを有するテンタであって、クリップチェーンを支持する部分の少なくとも1箇所について、クリップチェーンの走行時に当該支持部分に生じる異常を検出する手段を備え、当該異常が生じるタイミングに特定の箇所を通過するクリップを同定する手段を備えたことを特徴とするテンタである。
【0012】
また本発明は、複数のクリップを連結してなるクリップチェーンを有するテンタのクリップチェーンの異常検出方法であって、クリップチェーンを支持する部分の少なくとも1箇所についてクリップチェーンの走行時に当該支持部分に生じる異常を検出し、異常が生じるタイミングに特定の箇所を通過するクリップを同定することを特徴とするクリップチェーンの異常検出方法である。
【0013】
また本発明は、本発明のテンタを用いた工程を含むことを特徴とするシート状物の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、適宜図を用いながら説明するが、本発明は図に記載された形態のみに限定されるものではない。
【0015】
本発明のテンタは、複数のクリップを連結してなるクリップチェーンを有する。また同じく本発明のクリップチェーンの異常検出方法は、複数のクリップを連結してなるクリップチェーンを有するテンタのクリップチェーンに係るものである。図1において、クリップ本体4は、クリップ台3に載置固定されており、ベース4aからアーチ形に起立部を有し、当該起立部の上端には、支軸5によりクリップレバー6の略中央部が回転可能に支持されている。クリップレバー6は、上部6aとクリップ本体との間に張設されたスプリング12のばね力により実線で示す位置に回動され、下部6bのエッジ6cとクリップ本体4のベース4aに配設されたライナ7との間でフィルム11の両端部(耳部)を把持するようになっている。
【0016】
また図3において、クリップ台3とローラーリンク14はチェーンピン13を軸として回転可能に連結され、チェーンを構成している。テンタクリップの個数としては、テンタ1台当たり数百〜数千個、より具体的には500〜3000個程度使用され、すなわち一対のチェーンの片側としては、250〜1500個程度連結されている。
【0017】
図1において、左右一対のテンタクリップ1,1は各々レール2,2上に相対して摺動可能に配設された一対のクリップ台3,3上に取り付けられており、図2において、クリップは、テンタ8の入口部8aから出口部8bに向かって所定の速度で移動し、出口部8bで反転して入口部8aに戻るようになっている。フィルム11は、レール2、2上を摺動するクリップに把持されながら共に移動し、テンタ8を通過する間に横(左右)に所定の倍率に延伸される(図2)。
【0018】
また、テンタ8の出口部8bにはクリップオープナー9aおよびターンホイル10aが、入口部8aには、クリップクローザー9bおよびターンホイル10bが設けられている(図2)。テンタクリップ1が入口部8aに来ると、クリップレバー6は、その上部6aがターンホイル10a及びクリップクローザー9bに接触することにより、スプリング12のばね力により図1の実線の位置に回動して固定され、シート状物11を把持する。そして、テンタクリップ1が出口部8bに来ると、クリップレバー6は、その上部6aがクリップオープナー9a及びターンホイル10aに接触することにより、スプリング12のばね力に抗して図1に破線で示すように回動して、シート状物11の両側端部の把持を解除し、シート状物11を次工程に送り出す。
【0019】
また本発明のテンタは、クリップチェーンを支持する部分の少なくとも1箇所について、クリップチェーンの走行時に当該支持部分に生じる異常を検出する手段を備えていることが重要である。また同じく本発明のクリップチェーンの異常検出方法は、クリップチェーンを支持する部分の少なくとも1箇所についてクリップチェーンの走行時に当該支持部分に生じる異常を検出することが重要である。そうすることで、例えばクリップの形状を一つ一つ検査していくよりも、振動や歪みとして、工程に生じている異常をより本質的に簡便確実にとらえることができ、また、例えばシート状物の把持跡を観察するよりも、生じている異常のリアルタイムな検出が可能となる。
【0020】
支持部に生じる異常を検出すれば良いということのメカニズムとしては、例えば図3においてチェーンピン13の外周が摩耗してくると、ローラーリンク14やチェーンリンクとの間に隙間が生じ、これに設置したクリップ台の鉛直方向、水平方向にズレが発生することによりクリップが振動し、シート状物を把持する位置、角度が変化し、シート状物の破れ等の原因となる。そこで、支持部に伝搬するこの振動を検出すれば、シート状物の処理・製造に重大な影響を及ぼすクリップチェーンの異常を検出することができるのである。
【0021】
検出手段としては、歪みゲージ、変位センサ(レーザー変位センサなど)、振動センサ等を好ましく採用することができる。例えば、異常クリップの走行によって、ターンホイルがフィルムの走行方向に対して0.5mm以上変動するようなテンタの構造であれば、変位計による検知が好ましい。また例えば、ターンホイルの歪みが垂直方向に発生しやすい構造であれば、振動計の適用が好ましい。
【0022】
歪みゲージの具体例としては例えば、図4に示すように歪みゲージ21と動歪計30とからなる。歪みゲージ21は1×10−6程度まで測定できるものが好ましく、歪みゲージの取付けは、単純圧縮もしくは引張りに対応する1ゲージ法が簡便であるが、環境温度が変化する場合には1ゲージ3線式結線法、1アクチブ1ダミーゲージ法、2アクチブゲージ法、対辺アクチブゲージ法、対辺2アクチブゲージ3線式結線法、4アクチブゲージ法等を使用して温度補償をすることがより好ましい。また歪みゲージ21から動歪計30までの導電接続上の距離は、出力の電圧降下を防止するために、5m以下が好ましく、2m以下がより好ましい。
【0023】
振動センサとしては、渦電流型、容量型、電子光学型、ホール素子型等の非接触式のものと、圧電型、サーボ型、ストレインゲージ型、動電型等の接触式のものとがあり、接触式が好ましく、とりわけストレインゲージ型、動電型がより好ましい。
【0024】
検出手段を設置する個所としては例えば、チェーンがターンするターンホイール部分などが、チェーンの張力等の変動を受けやすいため好ましい。
【0025】
また、チェーンの長手方向と垂直方向に生じる異常をより精度良く検出するために、複数のセンサを配置したり、複数種類のセンサを併用することも好ましい。
【0026】
また本発明のテンタは、異常が生じる(すなわち、支持部分に生じる異常を検出する)タイミングに特定の箇所を通過するクリップを同定する手段を備えていることが重要である。また同じく本発明のクリップチェーンの異常検出方法は、異常が生じるタイミングに特定の箇所を通過するクリップを同定することが重要である。
【0027】
当該同定手段としては例えば、トリガセンサによりチェーンの周回の始点と周期を検知し、始点と異常発生時点の通過時間の差から、始点からの番号を検知することができる。例えば、クリップ数が1000個である場合には、先頭クリップを最初に検知したタイミングを開始点(t1)とし、次の先頭クリップ検知までの時間(t1′)をCPU32またはA/D変換器31(図4)に内蔵されたタイマーにて計測する。チェーンにおいてクリップの間隔が均等であるという前提で、個々のクリップがトリガーセンサ20を通過する時間差tは、(t(1′)−t(1))/1000であることから、N番目のクリップ通過時間t(N)は、t(N)=[(t(1′)−t(1))/1000]×Nとなり、異常を検出したタイミングに特定の箇所を通過するクリップを同定することができる。
【0028】
先頭クリップには物理的なマークをつけることにより同定が可能である。先頭クリップのマークとトリガーセンサの組み合わせとしては例えば、先頭クリップ表面に小孔を開けたり、表面を部分的に鏡面にして反射率を上げる等により、光電式センサを使用することができる。また、先頭クリップに機械的な凹凸を付加することにより、トリガーセンサとして、渦電流式センサや超音波式センサを使用することもできる。また、先頭クリップに機械的な突起を設けることにより、接触式センサを使用することもできる。
【0029】
異常検出手段やトリガセンサの、テンタにおける設置態様例を説明する。図2のテンタ8において、シート状物11の幅方向の両端にクリップチェーン17を配し、クリップチェーン17の移動によりシート状物11をテンタ入口部8aから出口部8b方向に搬送する。そして入口部8a側の一対のターンホイル10bのそれぞれに近接してトリガセンサ20を配置し、また同ターンホイル10bのクリップチェーン17の折り返し点においてホイル径方向の歪みを測定する様に歪みゲージ21を配置している。
【0030】
また、異常検出手段と、異常が生じるタイミングに特定の箇所を通過するクリップを同定する手段との設置箇所が、クリップチェーンの長手方向において離れている場合には、テスト用の異常付クリップをクリップチェーンに組み込んでテンタの予備運転を行い、異常が生じる(異常を検出する)タイミングと、テスト用の異常付クリップの通過を検出するタイミングとの時差を求め、補正用の値とすると良い。
【0031】
尚、「同定する」とは、必ずしも同定手段のみを用いてクリップの一つ一つまで区別する必要はなく、例えば同定手段により1〜5個のクリップの範囲に辺りをつけ、後は目視により異常クリップを確認するといった態様も含むものとする。
【0032】
また本発明のテンタは、クリップがシート状物を把持する直前の位置にエッジセンサを設けることも好ましい。エッジセンサによりシート状物の把持幅を監視し把持幅を一定に保つことにより、シート状物の蛇行、破れや、装置への巻き込まれを防ぐことができる。シート状物の把持幅の調整は、テンタの入口部8aに設置した一対のセルベージガイダ(図2中15)を、各支点16を中心として回動可能させることにより行うことができる。
【0033】
本発明のテンタにおけるデータ処理手段としては、パーソナルコンピューター等の電子演算手段を用いることが好ましい。例えば、ターンホイル10bの振動の測定データは、1〜100μsec毎に測定することにより、数周回分の測定データだけで数万〜数十万個と膨大なものになるためである。
【0034】
電子演算手段によりデータ処理する場合は、異常検出手段で測定されたデータはA/D(アナログ/デジタル)変換されて電子演算手段に取り込まれる。その際、異常検出手段から入力されるデータを全て累積していくのではなく、テンタ1周回分のデータと2〜3周回分の累積値(あるいは平均値)とを一時的に記憶させ、当該累積値(あるいは平均値)を予め設定した閾値と比較し、その比較に基づき異常と判定したクリップを同定した後は、異常クリップの位置情報以外を消去することが好ましい。そうすることで、メモリの容量に対する演算の負担を軽減することができる。累積値あるいは平均値を閾値との比較に用いることは、突発的な電圧変化等、クリップの異常以外によるノイズを拾わないためにも好ましい。
【0035】
データ処理装置系の一例の説明をする。図4において、データ処理装置系34は、動歪計30、アナログ−デジタル変換器(以下「A/D変換器」という。)31、CPU32、警報装置(図中A)33を有している。歪みゲージ21からの信号は、動歪計30により増幅し、A/D変換器31においてアナログ信号からデジタル信号に変換し、CPU32に入力する。また、トリガーセンサ20からの信号も、A/D変換器31においてアナログ信号からデジタル信号に変換し、CPU32に入力する。CPU32は、トリガーセンサ20からの信号によりクリップチェーンの周期を認識し、例えばクリップ1個分の区間における歪み量に相当する電圧信号を予め入力した閾値と比較したり、前述のように累積値あるいは平均値を閾値との比較に用いる場合にも、当該周期の認識に基づいて1周回ごとのデータを累積等することができる。
【0036】
本発明のクリップチェーンの異常検出方法は、上記のような構成をとることにより、シート状物を把持しつつ走行させながら、クリップチェーンの支持部分に生じる異常を検出することが可能である。そして、このようにいわゆるオンラインで異常を検出することが、不良品の発生量を抑える等、コスト低減やシート状物の品質向上の点からも好ましい。
【0037】
また本発明のシート状物の製造方法は、本発明のテンタを用いた工程を含むことを特徴とするものである。そうすることで、シート状物の品質や生産性を向上させることができる。例えば、延伸フィルムの製造の逐次延伸工程に本発明のテンタを好適に適用することができる。逐次延伸タイプのフィルムの製造は例えば、ダイから押し出された溶融ポリマを冷却ロールで固化させて延伸用原反とし、この延伸用原反を延伸温度まで加熱してロールにより縦方向に延伸した後冷却し、次いで当該縦延伸したフィルムの両端をテンタクリップで把持して横延伸装置に導入し、加熱下で横方向に延伸し、引き続き緊張のまま適当な温度で熱処理して配向を固定した後両端の未延伸部を除去して巻取り機で巻き取る。
【0038】
【実施例】
[フィルムの製造]
ポリエチレンテレフタレートのチップを300℃で溶融し、濾過後、幅1600mmの口金から吐出し、表面温度25℃のキャスティングドラム上にキャストして未延伸フィルムとした。
【0039】
当該未延伸フィルムをロール式延伸機に導き、85℃の予熱ロールで予熱した後、温度95℃の周速差のあるロール間で長手方向に3倍に延伸し、一旦室温まで冷却した。
【0040】
次いで、本発明のテンタとして、図2及び図4に示すような構成のテンタ式横延伸機にフィルムを送り込み、温度95℃で幅方向に3倍に延伸し、さらにテンターの熱処理ゾーンで220℃の雰囲気下10秒間の熱処理を施して、厚さ12μmの二軸延伸フィルムを作製した。
【0041】
[クリップチェーン]
クリップピッチ127mm、クリップ個数499個のものを用いた。また、クリップの走行速度は220m/minとした。
クリップチェーンの1周回分の周期は計算上、
0.127(m)×499÷220(m/min)
=0.28806(min)
=17.28(sec)
となり、また、あるクリップから隣り合うクリップまでの区間あたりの時間は計算上、
0.127(m)÷220(m/min)
=5.773×10−4(min)
=0.0346(sec)
=34.6(msec)
となる。
【0042】
[センサ及びデータ処理装置系]
それぞれ次のようなものを用いた。
・歪みゲージ :NEC三栄製一軸の箔ゲージ(N11−FA−5−120−11−VSE5)
・トリガーセンサ:KEYENCE製光電スイッチ(PZ−101)
・動歪み計 :NEC三栄製ACストレインアンプ(AS1302)
・A/D変換器 :KEYENCE製データ収集システム(NR−2000)
・CPU :富士通製ノートパソコン(FMV−6333NU4/X)
[異常の検出]
正常な状態でクリップチェーンに発生する歪みは、最大で1×10−3(A/D変換後:20mV)で、異常時に発生する歪みはこの3〜10倍の3×10−3〜10×10−3(A/D変換後:60〜200mV)であることから、歪みの閾値を3×10−3に定めた。
【0043】
ここで、トリガーセンサから測定された周期は、上記計算値と同じ17.28(sec)であることから、チェーンピンの摩耗等によるチェーン長手方向の異常は無いことを確認した。
【0044】
測定される電圧のクリップチェーン5周回分の平均値について、一部の区間を抜き出したグラフを図5に示す。異常が発生した箇所は、先頭クリップからの経過時間が5.26secであったため、
5.26(sec)÷0.0346(sec)=152
から、異常クリップの位置は先頭クリップから数えて153番目であると同定した。
【0045】
[クリップチェーン部材の交換]
上記153番目のクリップを観察したところ、チェーンピンが著しく摩耗し、チェーンピンとローラーリンク(それぞれ図中13,14)の間に隙間が生じていたため、新たなチェーンピンとローラーリンクに交換した。クリップ交換前の図5に対応する、クリップ交換後のグラフを図6に示す。クリップ交換の結果、閾値を超える電圧の発生は解消した。また、これまで4回/日の頻度で発生していたフィルム破れが、0回/日となった。
【0046】
【発明の効果】
本発明により、テンタにおけるクリップチェーンの異常を効率よく早期かつ確実に検出することができ、よってフィルム等シート状物の品質や生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】テンタのクリップがフィルムを把持した状態を示す断面図である。
【図2】テンタの概略を示す平面図である。
【図3】クリップチェーンの連結部分の断面図である。
【図4】本発明の一態様におけるデータ処理装置系概略構成を示すブロック図である。
【図5】実施例1(クリップチェーン部材交換前)の一部の区間における歪み電圧測定結果を示すグラフである。
【図6】実施例1(クリップチェーン部材交換後)の図5に対応する区間における歪み電圧測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 :テンタクリップ
2 :レール
3 :クリップ台
4 :クリップ本体
5 :支軸
6 :クリップレバー
6a : 上部
6b : 下部
6c : エッジ
7 :ライナ
8 :テンタ
8a : 入口部
8b : 出口部
9a :クリップオープナー
9b :クリップクローザー
10a,10b:ターンホイル
11 :シート状物
12 :スプリング
13 :チェーンピン
14 :ローラーリンク
15 :セルベージガイダ
16 :支点
17 :クリップチェーン
20 :トリガセンサ
21 :歪みゲージ
30 :動歪計
31 :アナログ−デジタル変換器
32 :CPU
33 :警報装置
34 :制御装置
Claims (7)
- 複数のクリップを連結してなるクリップチェーンを有するテンタであって、クリップチェーンを支持する部分の少なくとも1箇所について、クリップチェーンの走行時に当該支持部分に生じる異常を検出する手段を備え、当該異常が生じるタイミングに特定の箇所を通過するクリップを同定する手段を備えたことを特徴とするテンタ。
- 支持部分に生じる異常を検出する手段が歪みゲージである請求項1記載のテンタ。
- 支持部分に生じる異常を検出する手段が変位センサである請求項1記載のテンタ。
- 支持部分に生じる異常を検出する手段が振動センサである請求項1記載のテンタ。
- 複数のクリップを連結してなるクリップチェーンを有するテンタのクリップチェーンの異常検出方法であって、クリップチェーンを支持する部分の少なくとも1箇所についてクリップチェーンの走行時に当該支持部分に生じる異常を検出し、異常が生じるタイミングに特定の箇所を通過するクリップを同定することを特徴とするクリップチェーンの異常検出方法。
- シート状物を把持しつつ走行させながら、クリップチェーンの支持部分に生じる異常を検出する請求項5記載のクリップチェーンの異常検出方法。
- 請求項1記載のテンタを用いた工程を含むことを特徴とするシート状物の製造方法。
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