JP2016215393A - フィルム延伸装置及び延伸フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも2本の回転ローラーと、非接触加熱手段を有し、非接触加熱手段によってフィルムを加熱し、回転ローラー間の周速差による引っ張り力によってフィルムを延伸させ、フィルムの流れ方向において、フィルムの非接触加熱手段よりも下流側部位の幅を測定する第2幅検知手段を有し、下流側部位の幅の縮みに関する情報に基づいて、非接触加熱手段の出力を調整する構成とする。
【選択図】図6
Description
例えば、2本以上のロールで樹脂フィルムを走行させながら、ガラス転移温度以上に加熱し、走行方向に配置されたロール間の周速差を利用して、フィルムを走行方向に一軸延伸(縦延伸)する技術が一般的に行われている。
しかし、近年、樹脂フィルムに要求される品質が高度化しており、従来の高温ロールと接触させて加熱する方法では、高温ロールからの剥離時の転写欠陥や剥離点の変動に伴う延伸ムラなどが問題になっている。
そこで、近年では、高温ロールによる加熱に加えて、非接触ヒーターや熱風炉等を用いて、樹脂フィルムを所望の温度にコントロールする方策が用いられている(例えば、特許文献1,2)。
上記した特許文献2の例では、赤外線ヒーターで加熱される位置が概ね延伸開始点に相当する。しかし、特許文献2に記載の延伸装置においても、赤外線ヒーターで加熱されている位置の樹脂フィルムの温度を精度良く把握することは出来ない。すなわち、特許文献2に記載の延伸装置は、加熱位置の温度を測定するために、非接触温度計を採用しているが、当該非接触温度計が樹脂フィルムを挟んで赤外線ヒーターと対抗配置されている。そのため、非接触温度計の計測範囲内に赤外線ヒーターの照射部分が入ることとなり、樹脂フィルム単独の温度を精度良く測定することはできない。それ故に、特許文献2に記載の延伸装置では、高品質の延伸フィルムを製造するにあたって、改善の余地があった。
ここで、「延伸条件」とは、製造装置の機械的条件や運転条件を広く指すが、特にネックイン量への影響が強い因子としては、延伸区間距離、延伸倍率、ラインスピード、及びフィルムの温度が挙げられる。すなわち、フィルムの加熱温度以外の延伸条件を同一として縦延伸する場合は、フィルムの加熱部位通過直後のフィルムの温度と延伸後のネックイン量は相関関係を持つと考えられる。また、フィルムの加熱温度は、当然のことながら、加熱手段の出力や加熱手段とフィルムの距離とある一定の相関性を持つ。すなわち、本発明者は、ネックイン量から加熱温度を推定し、加熱温度から加熱手段の出力等との相関関係をみることによって、加熱温度を実際に測定しなくても、出力等とネックイン量との相関関係を導き出せると考察した。
(1)非接触加熱手段の出力
(2)非接触加熱手段と熱可塑性樹脂フィルムの距離
そして、本発明の構成によれば、熱可塑性樹脂フィルムの非接触加熱手段よりも下流側部位の幅の縮みに関する情報に基づいて、上記の(1)又は(2)を調整する。すなわち、非接触加熱手段によって加熱された部位の幅の縮み関する情報に基づいて、上記の(1)又は(2)を調整し、非接触加熱手段によるフィルムの加熱温度を調整する。そのため、非接触加熱手段によるフィルムの加熱部位の加熱温度を調整するにあたって、実際のフィルム温度を物理的に測定することなく、高品質の延伸フィルムを製造することが可能である。また、非接触加熱手段によるフィルムの加熱温度を所定の閾値内に収まるように、上記の(1)又は(2)を調整することによって、一定の品質以上の延伸フィルムを継続的に製造できる。
また、本発明の構成によれば、加熱部位におけるフィルム温度が推定できるので、製造初期において、出力等の調整が容易である。
(1)非接触加熱手段の出力
(2)非接触加熱手段と熱可塑性樹脂フィルムの距離
このことを踏まえながら、以下、第1実施形態の延伸装置1について詳細に説明する。
また、第1回転ローラー2は、原反フィルム100aの温度をガラス転移温度近傍の温度であって、ガラス転移温度以下の温度になるように加熱する加熱ローラーでもある。
また、第2回転ローラー3は、原反フィルム100aが加熱された仕掛延伸フィルム100bを冷却する冷却手段たる冷却ローラーでもある。
非接触加熱手段5は、非接触式の加熱装置であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ランプ式やパネル式の赤外線ヒーターや熱風ノズルによる対流加熱、熱風炉の設置を通過させる手段などが挙げられる。
フィルム100を走行方向Xに均一に延伸させたい場合は、非接触加熱手段5として、走行方向Xに加熱範囲を有する熱風炉やパネル式赤外線ヒーターが使用可能である。
回転ローラー2,3間が極めて短い場合やフィルム100の延伸開始点位置を優先して制御したい場合は、非接触加熱手段5として、バー型ランプ式の赤外線ヒーターや熱風ノズル単独による加熱が使用可能である。
また、非接触加熱手段5は、延伸フィルム100cの製造時において、走行中のフィルム100に対して幅方向全域又は一部の領域を加熱するように、フィルム100の片面又は両面側に非接触で配置されている。
本実施形態の非接触加熱手段5は、ライン状に延びた2本の赤外線ヒーター12,13を使用しており、熱可塑性樹脂フィルムを線状に加熱することが可能となっている。
また、赤外線ヒーター12,13は、延伸フィルム100cの製造時において、フィルム100を挟んで対向する位置に配されている。すなわち、赤外線ヒーター12,13は、フィルム100の両面に向けて赤外線を照射可能となっている。
本実施形態では、第1幅検知手段6は、原反フィルム100aの第1回転ローラー2との接触開始位置X1直前の幅を検知するものである。すなわち、第1幅検知手段6は、幅方向Yのエッジ検出手段である。
第1幅検知手段6は、フィルム100の幅を検知できれば特に限定されるものではなく、例えば株式会社オムロン社製のレーザー式CCD測長センサーZX−GTや、株式会社ニレコ社製の超音波センサーUHWシリーズが使用可能である。
検知部10,11は、第1回転ローラー2の軸方向に所定の幅をもっており、フィルム100の幅方向Yの端部を検出する部位である。検知部10,11は、フィルム100の幅方向Yの両端部に対応して設けられており、フィルム100のエッジ位置のデータから幅W1(図3参照)を算出することができる。
第2幅検知手段7は、フィルム100の幅を検知できれば特に限定されるものではなく、例えば株式会社オムロン社製のレーザー式CCD測長センサーZX−GTや、株式会社ニレコ社製の超音波センサーUHWシリーズが使用可能である。
検知部15,16は、第2回転ローラー3の軸方向に所定の幅をもっており、フィルム100の軸方向の端部を検知する部位である。すなわち、検知部15,16は、フィルム100の幅方向両端部に対応するように設けられており、フィルム100のエッジ位置のデータから幅W2(図3参照)を算出することができる。
なお、ROMには、演算部22に各種制御を行わせるためのプログラム及びデータが記憶され、RAMには、各種設定値や、プログラムの実行に必要なデータが記憶される。
フィルム100は、上記したように、延伸装置1によって加工され、原反フィルム100a、仕掛延伸フィルム100b、延伸フィルム100cの順に変化する。
原反フィルム100aは、延伸加工前の材料フィルムであり、一律の厚みをもったフィルムである。
仕掛延伸フィルム100bは、延伸フィルム100cの仕掛品である。
延伸フィルム100cは、原反フィルム100aを一軸延伸したフィルムである。
延伸装置1でフィルム100を加工している状態においては、原反フィルム100aは、仕掛延伸フィルム100bよりも上流側部位であり、延伸フィルム100cは、仕掛延伸フィルム100bよりも下流側部位である。すなわち、原反フィルム100aは、延伸フィルム100cよりも上流側部位である。
本実施形態の第1幅検知手段6は、第1回転ローラー2によるフィルム100の引き込み開始位置X1(接触開始位置X1)よりも上流側に配されている。すなわち、第1幅検知手段6は、外部から延伸装置1に搬入された原反フィルム100aが第1回転ローラー2に掛かる位置X1よりも上流側に配されている。そのため、走行中の原反フィルム100aの幅W1を第1回転ローラー2に掛かる直前で測定でき、原反フィルム100aのバタつきや走行皺の影響を抑えることができる。
本実施形態の第2幅検知手段7は、第2回転ローラー3の離反する位置X4よりも下流側に配されている。すなわち、第2幅検知手段7は、延伸装置1から外部へ搬出される延伸フィルム100cが第2回転ローラー3から剥離(離反)位置X4よりも下流側に配されている。そのため、第2幅検知手段7は、走行中の延伸フィルム100cの幅W2を第2回転ローラー3によって冷却され、フィルム100の性状が安定した位置で測定でき、延伸フィルム100cのバタつきや走行皺の影響を抑えることができる。
具体的には、フィルム100は、図1,図2,図5から読み取れるように、縦延伸区間を構成する原反領域30と、延伸領域31と、接触領域32を通過する。
延伸領域31は、非接触加熱手段5によって加熱される位置X5から第2回転ローラー3の引き込み開始位置X3までの領域である。延伸領域31は、フィルム100が周速差を利用した引っ張り力によって延伸され、仕掛延伸フィルム100bの状態で通過する領域であり、流れ方向(走行方向X)の上流側から下流側に向けて幅が漸次減少する領域である。
接触領域32は、第2回転ローラー3の引き込み開始位置X3から外部への送り出し開始位置X4(離反開始位置X4)までの領域である。接触領域32は、フィルム100が第2回転ローラー3と接触して冷却され、安定した状態となる領域であり、幅が概ね一定となる領域である。
このとき、第1回転ローラー2と第2回転ローラー3は、ともにフィルム100を一方向に搬送するように、異なる周速で回転する。具体的には、第1回転ローラー2の周速V1は、第2回転ローラー3の周速V2よりも遅くなっている。そのため、第1回転ローラー2と第2回転ローラー3の間で周速差が発生し、この周速差によって、フィルム100が走行方向Xに引っ張られ、フィルム100に走行方向Xの引っ張り力が加わる。
なお、第1回転ローラー2の周速V1と第2回転ローラー3の周速V2は、それぞれ工程全体のラインスピードと延伸区間における縦延伸倍率によって適宜決定される。また、フィルム100の材質等によっても適宜決定される。
具体的には、非接触加熱手段5によって、原反フィルム100aをガラス転移温度以上の温度となるように急激に加熱し、回転ローラー2,3の周速差によって走行方向Xに延伸させる。
このとき、非接触加熱手段5で加熱されたフィルム100は、非接触加熱手段5から第2回転ローラー3に接触するまでの間、ガラス転移温度以上の温度に維持される。
またこのとき、フィルム100は、走行方向Xと非接触加熱手段5を構成する赤外線ヒーター12,13の赤外線照射方向が交わる位置X5で幅方向Yに均一に加熱される。
このとき、仕掛延伸フィルム100bの断面積は、回転ローラー2,3に延伸されることによって、原反フィルム100aの断面積に比べて小さくなる。そのため、フィルム100が下流側に進むにつれて、空気による冷却速度が増加し、第2回転ローラー3によって延伸フィルム100cが引き込まれる引き込み開始位置X3では、自然冷却によりガラス転移温度付近の温度又はガラス転移温度以下になる。
またこのとき、第2回転ローラー3に接触したフィルム100は、第2回転ローラー3の表面温度によってガラス転移温度以下に冷却される。そのため、第2回転ローラー3よりも下流側では、フィルム100は、変形せず、形状を保ったまま送り出される。
特定部位Sは、加熱位置X5に至ると、非接触加熱手段5から受ける熱量によって、ガラス転移温度以上の状態(本実施形態ではガラス転移温度よりも高温状態)となり、弾性率及び機械的強度が低下する。
このときの特定部位Sのフィルム温度は、(Tg+5)℃〜(Tg+20)℃であることが好ましい。
まず第1幅検知手段6によって、延伸前の原反フィルム100aの幅W1を検知し、延伸後の延伸フィルム100cの幅W2を検知する。
そして、原反フィルム100aの幅W1と延伸フィルム100cの幅W2の差分たるネックイン量Nを算出し(STEP.1)、あらかじめオフラインで取得したネックイン量Nと加熱位置X5でのフィルム温度T0との関係から、加熱位置X5におけるフィルム温度T1を推定する(STEP.2)。
下限閾値A≦フィルム温度T1≦上限閾値B・・・・(1)
すなわち、フィルム温度T1が下限閾値A又は上限閾値Bとなったとしても、品質に異常が生じていない。
自動で行う場合は、あらかじめ延伸条件、フィルム温度、ネックイン量、非接触加熱手段5の出力のデータを制御装置8に登録しておく。そして、運転中はネックイン量Nのリアルタイムの測定データから非接触加熱手段5の出力値の変更量を決定し、その変更量に基づき非接触加熱手段5の出力を調整する。こうすることで、自動で一定の品質以上の延伸フィルム100cを連続的に製造することができる。
また、本実施形態の延伸装置1によれば、下流側ローラーたる第2回転ローラー3を通過した後もフィルム温度がガラス転移温度以下となる。そのため、第2回転ローラー3を通過した後に応力や張力の影響によりフィルム100が変形することを防止できる。
すなわち、第1実施形態の延伸装置1の調整動作では、非接触加熱手段5による加熱位置X5でのフィルム100の温度を推定し、推定した温度に基づいて非接触加熱手段5の出力を制御した。一方、第2実施形態の延伸装置の調整動作では、ネックイン量からフィルム100の温度を推定せずに、直接非接触加熱手段5をフィードバック制御する。
そして、原反フィルム100aの幅W1と延伸フィルム100cの幅W2の差分たるネックイン量N(=W1−W2)を算出し(STEP.11)、ネックイン量Nが以下の数式(2)を満たすかどうか判断する(STEP.12)。
下限閾値C≦ネックイン量N≦上限閾値D・・・・(2)
下限閾値C未満である場合には(STEP.13でYES)、非接触加熱手段5の出力が小さすぎるとして、数式(2)の範囲を満たすように非接触加熱手段5の出力を大きくし(STEP.14)、STEP.11に戻る。すなわち、変更後の出力で延伸フィルム100cの製造を続ける。
下限閾値C未満でない場合には(STEP.13でNO)、ネックイン量Nが上限閾値D超過であるから、非接触加熱手段5の出力が大きすぎるとして、数式(2)の範囲を満たすように非接触加熱手段5の出力を小さくし(STEP.15)、STEP.11に戻る。すなわち、変更後の出力で延伸フィルム100cの製造を続ける。
また、3本以上の回転ローラー2,300,3を使用する場合において、非接触加熱手段は、一対の回転ローラー2,3の間の位置にあれば特に限定されるものではない。例えば、非接触加熱手段5は、図9(a)のように上流側の回転ローラー2と中流側の回転ローラー300の間に設けてもよい。また例えば、非接触加熱手段5は、図9(b)のように上流側の回転ローラー2と中流側の回転ローラー300の間と、中流側の回転ローラー300と下流側の回転ローラー3との間のそれぞれに設けてもよい。
また、図10(b)に示されるように、非接触加熱手段5よりも下流側であって、かつ、引き込み開始位置X3よりも上流側に第1幅検知手段6を設け、仕掛延伸フィルム100bの所定位置での幅と延伸フィルム100cの幅W2との差(延伸フィルム100cの幅の縮みに関する情報)から非接触加熱手段5の出力を調整してもよい。
さらに、図10(c)に示されるように、非接触加熱手段5よりも下流側であって、かつ、引き込み開始位置X3よりも上流側に第1幅検知手段6及び第2幅検知手段7を設け、仕掛延伸フィルム100bの幅の変化(仕掛延伸フィルム100bの幅の縮みに関する情報)から非接触加熱手段5の出力を調整してもよい。
例えば、別の製造ライン等によって製造されたフィルム100を用いたり、市販品のフィルム100を用いたりする場合などの原反フィルム100aの幅W1が既知である場合には、必ずしも第1幅検知手段6によってフィルム幅W1を検知する必要はない。この場合、第1幅検知手段6を設けなくてもよい。
この場合、赤外線ヒーターとフィルム100を挟んで対向する位置に赤外線の反射板を設けることが好ましい。反射板を設けることによって、反射板を用いない場合に比べて赤外線による加熱効果を高めることができる。
この場合、熱風炉をフィルム100の片面側又は両面側に非接触で配置し、熱風炉が覆う範囲のフィルム100を所望の温度と風量の熱風で加熱することが好ましい。
まず、延伸フィルム100cの製造に先立って、オフラインにて、フィルム100のネックイン量と加熱部位のフィルム温度との関係を取得した。
具体的には、原反フィルム100aとして、厚さ100μmのアクリル系の熱可塑性樹脂フィルム原反を用い、恒温槽付引張試験機(恒温槽はエスペック株式会社製恒温槽PHH−302)を使用して引張試験を行った。
この引張試験では、延伸フィルム100cの製造工程で用いられる延伸条件(延伸区間距離、延伸倍率、ラインスピード)に該当する初期ひずみ速度でのネックイン量Nを、ガラス転移温度(Tg)℃から(Tg+25)℃の範囲で1℃刻みに取得した。
また、引張試験時のフィルム温度に関しては、恒温槽が設定温度到達後にフィルムサンプルを恒温槽内にセットし、5分間待機して熱可塑性樹脂フィルムと恒温槽内の温度が完全に一致してから引張試験を実施した。
一例として、恒温槽の設定温度が(Tg+8)℃の時、延伸倍率が2.0倍、延伸方向の初期ひずみ速度が0.5[1/sec]の条件ではネックイン量は31.4mmであった。このとき、延伸後のフィルムの透明性を示すヘイズ値は、1%以下と良好な範囲内に収まった。
このとき、非接触加熱手段5として熱風炉を用いた。また、原反フィルム100aとして、引張試験時と同じ幅及び厚みをもつ同材料のフィルム原反を用い、延伸倍率2.0倍、延伸方向の初期ひずみ速度が0.5[1/sec]の条件で、ネックイン量が31.4mmとなるように熱風炉の出力をフィードバック制御しながら調整した。
結果、熱風炉内温度が(Tg+10)℃で安定した時に、ネックイン量が31.4mmとなった。この時、延伸後のフィルムの透明性を示すヘイズ値は、1%以下と良好な範囲内に収まった。
比較例1では、実施例1とは異なり、ネックイン量が所定の値(実施例1では31.4mm)をとるように出力を制御するのではなく、熱風炉の設定温度を調整してフィルムの延伸を行った。
具体的には、比較例1では、実施例1と同様に、非接触加熱手段が熱風炉である延伸装置1を使用し、原反フィルム100aとして、引張試験時と同幅及び厚みである同様のフィルム原反を用いた。また、延伸倍率2.0倍、延伸方向のひずみ速度を0.5[1/sec]の条件とし、熱風炉の設定温度を(Tg+8)℃に設定して、フィルムを延伸した。その結果、ネックイン量が30.9mmとなった。
このとき、延伸後のフィルムは、実施例1よりも白濁しており、ヘイズ値が1%を上回って製品の許容範囲を外れる結果となった。
比較例1と同様の装置構成及び延伸条件で、原反フィルムの中央表面に高応答性の熱電対を貼付し、熱風炉の設定温度を(Tg+8)℃に設定した際のフィルム表面の実測温度を測定した。その結果、熱電対で測定したフィルムの表面温度は(Tg+5)℃であり、熱風炉の設定温度より低くなった。すなわち、熱風炉の設定温度と実際のフィルムの表面温度の間で、ずれが生じていた。
2 第1回転ローラー
3 第2回転ローラー(冷却手段)
5 非接触加熱手段
6 第1幅検知手段(上流側幅測定手段)
7 第2幅検知手段(下流側幅測定手段)
100 フィルム
100a 原反フィルム(上流側部位)
100b 仕掛延伸フィルム(上流側部位,下流側部位)
100c 延伸フィルム(下流側部位)
N ネックイン量
Tg ガラス転移温度
Claims (8)
- 複数の回転ローラーと、前記複数の回転ローラーの中で対をなす2本の回転ローラーの間に非接触加熱手段を有したフィルム延伸装置であって、
前記非接触加熱手段によって熱可塑性樹脂フィルムを加熱し、前記複数の回転ローラー間で生じる周速差を利用して前記熱可塑性樹脂フィルムを延伸させるフィルム延伸装置において、
前記熱可塑性樹脂フィルムの走行方向において、前記熱可塑性樹脂フィルムの前記非接触加熱手段よりも下流側部位の幅を測定する下流側幅測定手段を有し、
前記下流側部位の幅の縮みに関する情報に基づいて、以下の(1)又は(2)を調整することを特徴とするフィルム延伸装置。
(1)非接触加熱手段の出力
(2)非接触加熱手段と熱可塑性樹脂フィルムの距離 - 前記熱可塑性樹脂フィルムは、前記非接触加熱手段によってガラス転移温度以上の温度に加熱された後、自然冷却又は冷却手段によって冷却されるものであり、
前記下流側幅測定手段は、前記熱可塑性樹脂フィルムの温度がガラス転移温度以下に下がる部位よりも下流側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフィルム延伸装置。 - 前記熱可塑性樹脂フィルムは、前記2本の回転ローラーのうち下流側の回転ローラーと一時的に接触するものであり、
前記熱可塑性樹脂フィルムの下流側の回転ローラーとの接触開始位置よりも下流側の幅を測定することを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム延伸装置。 - 前記熱可塑性樹脂フィルムの走行方向において、前記熱可塑性樹脂フィルムの前記非接触加熱手段よりも上流側部位の幅を測定する上流側幅測定手段を有し、
前記上流側部位の幅と前記下流側部位の幅の差分に基づいて、前記非接触加熱手段の出力を調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム延伸装置。 - 前記上流側部位の幅と前記下流側部位の幅の差分に基づいて、前記非接触加熱手段による前記熱可塑性樹脂フィルムの加熱部位の温度を推定することを特徴とする請求項4に記載のフィルム延伸装置。
- 前記熱可塑性樹脂フィルムの原反の幅と前記下流側部位の幅の差分に基づいて、前記非接触加熱手段の出力を調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム延伸装置。
- 前記2本の回転ローラーのうち、下流側の回転ローラーは、前記熱可塑性樹脂フィルムを冷却する冷却ローラーであり、
前記熱可塑性樹脂フィルムは、前記回転ローラーに接触することによって、ガラス転移温度以下に冷却されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフィルム延伸装置。 - 複数の回転ローラーと、非接触加熱手段を使用する延伸フィルムの製造方法であって、
前記非接触加熱手段によって熱可塑性樹脂フィルムを加熱し、前記回転ローラー間で生じる周速差を利用して前記熱可塑性樹脂フィルムを延伸させて延伸フィルムを形成する延伸フィルムの製造方法において、
前記熱可塑性樹脂フィルムの走行方向において、前記熱可塑性樹脂フィルムの前記非接触加熱手段よりも下流側部位の幅を測定する下流側幅測定手段を使用し、
前記下流側部位の幅の縮みに関する情報に基づいて、以下の(1)又は(2)を調整することを特徴とする延伸フィルムの製造方法。
(1)非接触加熱手段の出力
(2)非接触加熱手段と熱可塑性樹脂フィルムの距離
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