JP2005037564A - 投写型表示装置及びそれを用いた背面投写型表示装置 - Google Patents

投写型表示装置及びそれを用いた背面投写型表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】投写型映像表示装置における高画質化、及び高信頼性を実現する。
【解決手段】黄色成分を赤色及び緑色からカットして色純度を向上させると共に、緑色の光路に光を反射させる反射型減衰フィルタを挿入して3色の光エネルギーバランスを良くする。更に、緑色の光路に光学位相差補償板を設け、コントラスト性能を向上させ、同時に映像表示素子の長寿命化を実現するため、紫外線反射コーティングした光学部品を青色の光路に2個配置し、青色液晶パネルの入射側に紫外線吸収フィルタを設ける。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は画像を投影する投写型映像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
マトリクス状に配置された画素を有する液晶パネル等の映像表示素子に、光源からの光を当て、映像信号に合わせて各画素に光強度を変調させることにより生成された画像を投写レンズ等の拡大手段を用いてスクリーン上に拡大投写する投写型映像表示装置が知られている。
【0003】
これらの投写型映像表示装置は、従来パソコンなどの画像をスクリーンに投写してプレゼンテーションを行う等業務用の用途が主たる目的であったため、明るい部屋でも鮮明に画像が投影できるように、高出力の光源や高効率な照明光学系が開発され、明るさ重視の設計となっていた。
【0004】
一方、この光学ユニットをキャビネット内に配置し、所定位置に配置した透過型スクリーンの背面より画像を投影する背面投写型映像表示装置が市場に出回り初めている。この背面投写型映像表示装置は、テレビ画像やビデオ画像などの映像を楽しむホームシアター用途として一般家庭で使用されるため、従来の明るさ重視の設計に対して、色純度、色再現性、コントラスト性能等に優れかつ、長寿命な製品が求められるようになってきた。
【0005】
色純度が優れた投写型映像表示装置としては下記特許文献1に記載されたものがある。一方、コントラストの高い投写型映像表示装置としては、下記特許文献2に記載されているものがある。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−92419号公報
【特許文献2】
特開2002−131750号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1に記載されている投写型映像表示装置は、波長570〜590nmの黄色成分が赤色光束R,緑色光束Gに入らないようにして、各色の色純度を向上させたものであるが、最終的に映像表示素子により変調された、赤色映像光Ri,緑色映像光Gi,青色映像光Biを合成する場合の色バランスに関して考慮されていない。特に、赤色映像光Ri,緑色映像光Gi,青色映像光Biを合成して得られる白色表示映像の色度は、色度座標上で黒体軌跡から垂直方向に離れたでy値が高い緑色がかった白色となってしまうという問題がある。
【0008】
更に、近年はブラウン管式のテレビジョン同様に色温度が9800°k以上の青みがかった白色が好まれるようになってきているが、上記特許文献1に記載された投写型映像表示装置においては白色の色温度を高くする技術内容が開示されていないばかりか白色表示の色温度を高くする必要性については示唆されてもいない。
【0009】
一方、上記特許文献2に記載されている投写型映像表示装置は、R,G,Bそれぞれの映像表示素子と入射側偏光板の間に、光学位相差補償板を配置してコントラストを向上させたものであるが、色再現性や白色の色温度に関して考慮されていない。また、光学位相差補償板を配置したことにより、コントラスト性能は向上するが、黒表示時の色むらが発生してしまうという問題がある。
【0010】
さらに、上記特許文献1及び特許文献2に記載の投写型映像表示装置においては、映像表示素子である液晶パネルの長寿命化に関する技術的な記載は一切なされていない。
【0011】
本発明の目的は、上記した課題を鑑みて成されたものであり、その目的は、高画質な投写型映像表示装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題の内、赤色映像光と緑色映像光の色純度を良くするための解決手段として、照明系に設けた2枚のダイクロイックミラーの特性と、偏光板を保持する部材に設けられたトリミングフィルタの特性により、黄色成分が赤色及び緑色に対応した液晶パネルに入射しないようにする。
【0013】
また、3色混合した場合に得られる白色は色温度が高く色度座標上において黒体軌跡からY軸方向に30MPCD以上離れないようにするための解決手段として、緑色の光路に約40%以上の光を反射させる反射型減衰フィルタを挿入して3色の光エネルギーバランスを良くする。
【0014】
更に、セットのコントラスト性能を最小のコストUPで実現する解決手段として、比視感度の最も高い緑色光束の光路中に光学位相差補償板を設ける。
【0015】
また、映像表示素子の長寿命化を実現するための解決手段として(1)紫外線を除去する紫外線反射コーティングを施した光学部品を光源から青色光束に対応した液晶パネルまでの間に2個配置するとともに、青色液晶パネルの入射側に紫外線吸収フィルタを設ける。(2)前述した緑色の光路に約40%以上の光を反射させる反射型減衰フィルタを挿入して液晶パネルの温度上昇そのものを低減する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態の一例について図面を用いて説明する。なお、全図において、共通な機能を有する部分には同一な符号を付して示し、一度説明したものについては重複した説明を省略する。
【0017】
図1は本発明の投写型映像表示装置における、映像表示素子として液晶パネルを用いた場合の光学ユニット部の構成図である。なお、光学ユニットは、光源からの光を液晶パネルで映像信号に合わせて光の濃淡に変える光強度変調(空間光変調ともいう)をして生成された画像を投写レンズで拡大投写するものである。
【0018】
図1において、1は白色光源、2は光学ユニットの光軸、3、4はインテグレータ機能を持つ第1レンズアレイ、第2レンズアレイである。5は所定の方向に偏光を揃える偏光変換素子、6は集光レンズ、7は赤色光束が反射し緑青色光束が透過するダイクロイックミラー、8は緑色光束が反射し青色光束が透過するダイクロイックミラー、9は赤色光用ミラー、10,11は青色光用ミラー、12R,12Gはコンデンサレンズ、131は第1リレーレンズ、132は第2リレーレンズ、133は第3リレーレンズ、14はIR(赤外線)反射フィルタ、15はUV(紫外線)吸収フィルタ、16は反射型減衰フィルタ、17は光学位相差補償板、18R,18G,18Bは入射側偏光板,19R,19G,19Bは各色に対応した液晶パネル、20R,20G,20Bは出射側偏光板、21は合成プリズム、22は投写レンズを示している。
【0019】
白色光源1より出射した光束は第1レンズアレイ3へと出射される。この第1レンズアレイ3はマトリックス状に複数のレンズセルが配列されており、入射した光束を複数の光束に分割して、効率よく第2レンズアレイ4、偏光変換素子5を通過させるように導く。第2レンズアレイ4は第1レンズアレイ3と同様にマトリックス状に複数のレンズセルが配列されており、構成するレンズセルそれぞれが、対応する第1レンズアレイ3の各レンズセルの投影像を集光レンズ6、及びコンデンサレンズ12R、12G、第1リレーレンズ131、第2リレーレンズ132、第3リレーレンズ133により各液晶パネル19R、19G、19B上に重ね合わせる。この時、集光レンズ6を出射した白色光は、赤反射緑青透過ダイクロイックミラー7において、R光の成分は反射し、赤色光用ミラー9を経て、液晶パネル19Rに入射する。赤反射緑青透過ダイクロイックミラー7において、透過したGB光の成分は、緑反射青透過ダイクロイックミラー8に入射する。ここで、G光の成分は反射し液晶パネル19Gに入射する。緑反射青透過ダイクロイックミラー8を透過したB光の成分は青色光用ミラー10,11を経て液晶パネル19Bに入射する。液晶パネル19R,19G,19Bの入射側に配置されている入射側偏光板18R,18G,18Bは透明基材であるガラス基板に偏光フィルムが貼り付けられた構成である。さらに、赤用入射側偏光板18Rと緑用入射側偏光板18Gのガラス基板は、ダイクロイックフィルターとすることで後述するトリミングフィルタとしての機能を兼ねている。
【0020】
各液晶パネル19R、19G、19Bは映像信号駆動回路(図示しない)により液晶パネルの各画素に対応する透明電極に印加する電圧を制御することで、偏光の捩れ量を変化させる。このため、各画素ごとに出射側偏光板を透過する光量を制御することが可能となり、画素ごとに濃淡を変える光強度変調を行うことで光学像を形成する。
【0021】
この結果得られた液晶パネル19R、19G、19B上の光学像は、合成プリズム21によって色合成され、投写レンズ22によって図示せぬスクリーン上へと投写され、大画面映像を得ることができる。
【0022】
また、第1リレーレンズ131、第2リレーレンズ132、第3リレーレンズ133は液晶パネル19R、19Gに対して液晶パネル19Bの光路長が長くなっていることを補うものである。
【0023】
次に、この光学ユニットの製品への適用例を説明する。図2,図3は背面投写型映像表示装置に適用した場合の実施例で、上記光学ユニットと制御回路(図示せぬ)を搭載した投写型映像表示装置31をキャビネット33内に配置し、投写レンズから投射された画像を、光折返しミラー32に反射させて、キャビネット33の前面に配置された透過型スクリーン34の背面より映し出すものである。また、図4は前面投写型映像表示装置に適用した場合の実施例を示したもので、上記光学ユニットと制御回路(図示せぬ)を搭載した投写型映像表示装置31’の投写レンズから投射された画像を前面に配置したスクリーン35の前面より映し出すものである。
【0024】
前面投写型映像表示装置としては、図4に示すようにパソコンなどの画像を投射してプレゼンテーションを行ったりするのが主流である。この場合、明るい部屋でも画像が鮮明に映るように、性能項目のなかでは明るさが重視され、白色光源1に200W以上の高出力なものを採用し、照明光学系の高効率化を図ることで2000lm以上の光出力を達成している。白色光源1として、当初メタルハライドランプを使用していたが、現在では発光効率が高い超高圧水銀ランプが使用されている。この白色光源1より放射される波長ごとの光エネルギーは図5に示されるようにa点435(nm)〜b点465(nm)の波長領域である青色光のエネルギーやc点535(nm)〜d点560(nm)の波長領域である緑色光のエネルギーに対して、e点600(nm)〜f点630(nm)の波長領域である赤色光のエネルギーは1/3以下であり、図6に示す比視感度特性を考慮しても相対的に赤色領域の光エネルギーが小さい。
【0025】
このため、d点565(nm)〜e点600(nm)の波長領域である黄色から朱色の光を緑色光や赤色光に混ぜることにより白色光源1からの光を全て使って、明るさ性能を得ていた。この結果、緑色は黄緑色になり、赤色はオレンジ色になってしまい、色純度が良くないという欠点がある。
【0026】
超高圧水銀ランプのほかに、白色光源としては前述したメタルハロイドランプ、キセノンランプがある。これらのランプの分光エネルギー特性にも同様に565(nm)〜600(nm)の波長領域である黄色やオレンジ色の光成分が存在するのでこれらを白色光源として使用する場合においても色純度向上のためには以下に記載する技術手段が有効となる。
【0027】
これに対し、図3,図4のような背面投写型表示装置として使用する場合は、光出力が500lm以下でも透過型スクリーンのスクリーンゲインを有効活用することで十分明るい映像を得ることができる。一方、テレビ用途として一般家庭で使用されるため、色純度、色再現性、コントラスト性能の向上はもとより、表示装置そのものの長寿命化が求められることになる。
【0028】
次に本願発明の実施例において得られる画像の色純度向上のための具体的な実現手段に関して以下説明する。
【0029】
赤色の色純度を向上させるために、本願発明では光路に配置された赤反射緑青透過ダイクロイックミラー7と入射側偏光板18Rを貼り付けている透明基材に設けたトリミングフィルタの特性を図7及び図8に示すように最適化する。具体的には図7に示すように赤反射緑青透過ダイクロイックミラー7の透過率が50%となる波長(以下半値波長と記載する)を580nm近傍とし急峻な特性としている。すなわち、白色光源1から放射された白色光束のうち赤色光束が反射し、緑色光束・青色光束(シアン光束)が透過するようになっている。赤反射緑青透過ダイクロイックミラー7を反射する赤色光束には、図7に示すように590nm以下の黄色成分が含まれる。本願発明では白色光源1として超高圧水銀ランプを使用するために照射される光エネルギーは、図5に示すように590nmより短波長成分である黄色の光エネルギーが大きい。このためこのままでは赤色液晶パネルに入射する光束に黄色成分が混色してオレンジ色に近い赤色となってしまう。そこで本願発明では、黄色成分を除去し赤色映像表示素子に入射する光束の色純度を上げるために、入射側偏光板18Rを貼り付けている透明基材に設けられたトリミングフィルタの特性を、図8に示すように半値波長を580nmより長波長側とし587nm近傍とし急峻な特性としている。上記2枚のフィルタは成膜時に半値波長がばらつくので上述したように2枚を巧く組合せることで、本来白色光源1の発光スペクトルに存在する黄色成分が赤色映像表示素子である液晶パネル19Rに入射しないようにしている。
【0030】
同様に、緑色光束の色純度を向上させるため本願発明においては、照明光路に配置された赤反射緑青透過ダイクロイックミラー7と、緑反射青透過ダイクロイックミラー8と、入射側偏光板18Gを貼り付けた透明基材に設けたトリミングフィルタの特性を最適化した。具体的に取り得る緑反射青透過ダイクロイックミラー8と、入射側偏光板18Gに設けられたトリミングフィルタの透過率特性を図9,図10に示す。赤反射緑青透過ダイクロイックミラー7を透過したシアン光束は緑反射青透過ダイクロイックミラー8により、緑色光束が反射し、青色光束が透過する。緑反射青透過ダイクロイックミラー8の半値波長を図9に示すように515nm近傍としている。ここで、緑反射青透過ダイクロイックミラー8を反射してくる緑色光束には570nm以上の黄色成分が含まれている。
【0031】
上述したように本願発明では白色光源1として超高圧水銀ランプを使用するために照射される光エネルギーは、図5に示すように570nmより長波長成分である黄色の光エネルギーが大きい。このためこのままでは緑色映像表示素子に入射する光束に黄色成分が混色して黄緑色となってしまう。そこで本願発明では、黄色成分を除去し緑色映像表示素子に入射する光束の色純度を上げるために、入射側偏光板18Gを貼り付けている透明基材に設けられたトリミングフィルタの特性を、図10に示すように半値波長を570nmより短波長側とし568nm近傍とし急峻な特性としている。上記2枚のフィルタは成膜時に半値波長がばらつくので上述したように2枚を巧く組合せることで、本来白色光源1の発光スペクトルに存在する黄色成分が緑色映像表示素子である液晶パネル19Gに入射しないようにしている。
【0032】
本願発明の実施例で使用している白色光源1である超高圧水銀ランプは図5に示すように500nmから525nmまでの青緑光成分の発光スペクトルが弱いので、緑反射青透過ダイクロイックミラー8を透過する光束の色純度は比較的良いため、トリミングフィルタは設けていなのでコスト低減効果がある。
【0033】
上述したダイクロイックミラーとトリミングフィルタ組合せをモデル化し色度をシミュレーションにて求めた結果、各色の色度は以下のようになる。
赤: x=0.648,y=0.343
緑: x=0.301,y=0.685
青: x=0.141,y=0.067
これは、図11に示すCIE(国際照明学会)1931のxy色度図上に示したNTSCの色再現範囲(それぞれを三角印で示す)である赤色R(0.67,0.33),緑色G(0.21,0.71),青色B(0.14,0.08)とほぼ同じ色再現範囲でテレビとして使用する場合に問題ない色再現範囲となる。
【0034】
次に、白色映像表示について説明する。光により表現される再生色は、光の3原色であるR,G,Bそれぞれの加法混色により表現される。すなわち、各色の液晶パネル19R,19G,19Bを透過してくる光束量のバランスにより表現される。例えば、各色の光束量を0〜255の256階調で制御する場合、R=G=B=0の場合が黒表示であり、R=G=B=255が白表示となる。従来の図4に示す前面投写型映像表示装置では、明るさ重視で設計していたため、比視感度の高い緑色の光エネルギーを多くして緑がかった白色表示として明るくしていた。したがって、白色は等色温度線の黒体軌跡(図12実線)からプラス側(緑色の強い方向)に離れた色となっていた。上記した特許文献1の色設計で、R=G=B=255の白表示を行った場合、
白: x=0.268,y=0.353
となり、色温度は8600°K、黒体軌跡から約+40MPCD(Minimum Perceptible Color Difference)離れた色となる。
【0035】
一方、図2,図3に示すような背面投写型映像表示装置として使用する場合、直視テレビや3管式リア投写型テレビに近い黒体軌跡になるべく近くかつ、色温度が10000°K以上の青みがかった白色とする設計が必要となる。
【0036】
しかしながら、上述したフィルタの組合せだけではTV用途の白色表示が不可能であること。さらにフィルタ特性の量産ばらつきを考慮してセットとして決められた白色映像の色度を得るために、本願発明の投写型映像表示装置の光学ユニットでは下記2点を考慮した。
【0037】
(1)波長(色)による液晶パネルのV−T特性のばらつき、
(2)緑色の光路に反射型減衰フィルタ16を配置して、緑色液晶パネル19Gに入射する緑色光束の最適化。
【0038】
上記(1)は液晶パネルが固有に有する特性で、入射する光束の波長が短いほど同じ駆動電圧を透明電極に印加した場合透過率がより高くなる。たとえば、規定電圧を印加した場合青色光束の透過率は90%とすれば、緑色光束は88.5%、赤色光束は82.5%となる。(2)については緑色光束の光エネルギが高すぎるので白表示の場合のY値が高くなる。
【0039】
そこで、 緑色の光路に反射型減衰フィルタ16を配置して、緑色液晶パネル19Gに入射する緑色光束の最適化することとした。
【0040】
次に、出願人らはこの緑色光束のカット量を約35%としてシミュレーションを行った。
【0041】
白色の色度は、
白: x=0.263,y=0.295
となり、色温度は約11600°Kで、+14MPCDの座標点である。この時得られる光束量は100Wという低出力の高圧水銀ランプを用いても355lmという明るさを実現できるため、背面投写型映像表示装置として十分使用することが出来る。
【0042】
次にカット量を約52%とした場合には、
白色の色度は、
白: x=0.260,y=0.270
となり、色温度は約16000°K、黒体軌跡から約4MPCDしか離れていない。したがって、緑色の光路に反射型減衰フィルタを配置することで、色温度の高く、黒体軌跡に近い白色とすることが出来るのでTV映像を表示するのに好適となる。この時、白色光源1としては、100Wという低出力の高圧水銀ランプを用いても光束量で302lmという明るさを実現できるため、背面投射型映像表示装置として十分使用することが出来る。
【0043】
次にコントラスト性能に関して説明する。上述したように各色の光束量を0〜255の256階調で制御する場合、R=G=B=0の場合が黒表示であり、R=G=B=255が白表示となる。コントラストはR=G=B=255(白表示)時の明るさとR=G=B=0(黒表示)時の明るさの比で表される。上記特許文献2記載の従来の投写型表示装置においては明るさ最重視で白色光源1として200W以上の超高圧水銀ランプを使用して白色表示時の明るさは光束量2000lm以上であり、同時にコントラスト性能を向上させるためにRGB全ての光路に光学位相差補償板を配置していた。光学位相差補償板は、液晶パネルにおいて黒色表示時に液晶層の複屈折により生じる残留位相差に対して逆位相を与えて補償するものである。仮に白表示時の明るさ(光束量)を2000lmとし、コントラスト性能を500:1とした場合、黒表示時の明るさ(光束量)は4lmとなる。4lmという光束量が存在する黒表示時においては、光学位相差補償板の影響で色むらが生じてしまう。 一方、背面投写型映像表示装置の場合は、白表示時の明るさ(光束量)が約300lmと約1/7の明るさである。したがって、コントラスト性能が同じ500:1の場合でも、黒表示時の明るさ(光束量)は0.6lmと充分に暗い。この時黒表示時の光束量のほとんどは緑色の光エネルギーであって、赤色の光エネルギーや青色の光エネルギーはほとんどない。本願発明ではこの点に着目して、緑色の光路にのみ光学位相差補償板17を用いた。このため最小のコストUPで高コントラスト性能を得ることができる。
【0044】
さらに、光学位相差補償板17を緑色の光路に1枚だけ用いているので、黒色表示時の明るさ(光束量)を充分に小さくでき、色むらはほとんど目立つことはない。
【0045】
また、従来の前面投写型映像表示装置に対して本発明の背面投写型映像表示装置は光エネルギーの絶対値が低く、さらに光学位相差補償板17を反射型減衰フィルタ16の出射側に配置したため、有機物である光学位相差補償板17に入射する光エネルギーを約50%も低減できたので温度上昇も抑えられ性能劣化を抑え高い信頼性を得ることができた。
【0046】
なお、本発明では、光学位相差補償板17を入射側偏光板17と液晶パネル19Gとの間に配置したが、これに限定されるものではなく、液晶パネル19Gと出射側偏光板20Gとの間に配置してもよいことはいうまでもない。
【0047】
次に、液晶パネル19R,19G,19Bの寿命に関して説明する。液晶パネルの劣化要因は温度と光エネルギーの総量で、特に光エネルギーについては短波長の紫外線に対してさらに弱くなる。
【0048】
まず最初に温度と液晶パネルの寿命に関して相関関係を説明する。液晶パネルは使用温度が高いほど劣化も早い。液晶パネルの温度は液晶パネルに照射される光エネルギーにより温度が上昇する。この原因は液晶パネルを構成している材料に光を吸収する材料が含まれているためである。
【0049】
本発明の投写型映像表示装置においては、光エネルギーの一番高い緑色用の液晶パネル19Gに入射する光エネルギーは上記したように、反射型減衰フィルタ17により約50%に減少させているため、緑色用の液晶パネル19Gの温度上昇が小さい。このため、液晶パネルを冷却している冷却用ファン(図示せず)により発生させる冷却風の風量も少なくてよいため、ファンによる騒音を小さくすることが可能となる。
【0050】
次に、本願発明において採用した液晶パネルに入射する紫外線の低減手段について説明する。紫外線は、図7に特性が示された色分離用の赤反射緑青透過ダイクロイックミラー7と図9に特性が示された緑反射青透過ダイクロイックミラー8を透過する。したがって、上記ダイクロイックミラーの反射の光路となるR色光の光路と、G色光の光路には紫外線は入射しない。したがって、液晶パネル19R,液晶パネル19G,液晶パネル19Bのうち、紫外線が入射する可能性があるのはB色光の光路にある液晶パネル19Bである。
【0051】
紫外線が液晶パネル19Bに入射すると、液晶パネル19Bを構成する材料の内有機物である配光膜や液晶封止材料が分解して液晶に混入し誘電率が変化してV−T特性(印加電圧とパネルの透過率特性)が初期状態に対して変化する。また液晶そのものが変質してV−T特性が変化するので同一の印加電圧を加えても映像の見え方が変化して画質低下を招く。さらに分解が進むと液晶が分解してガス化して液晶パネルが印加電圧では制御不能になる。
【0052】
従来の投写型映像表示装置においては、明るさ性能を重視して、少しでも多くの青色光束を液晶パネルに入射させていたためUVフィルタの半値の波長が420〜425nmのものが多く用いられてきた。これに対して本願発明においては、装置の長寿命化を図るために、紫外線や光エネルギの高い青色光が液晶パネル19Bに入射しないように、半値波長が略430nm(426〜434nm程度)の図13に示した特性を有するUVフィルタを使用する。ただし反射型のフィルタでは図13に示したように400nm近傍の光線はわずかであるが0.5%程度透過してくる。このため、第1レンズアレイ3と、第2レンズアレイ4の平面側の2箇所において半値波長が略430nm(426〜434nm程度)の反射型のUVカットのコーティングを施している。更に 紫外線が入射する可能性があるB色光の光路にある液晶パネル19Bの直前に吸収型のUVカットフィルタ15を設けることで、液晶パネル19Bに入射する紫外線は1.25×10−5%以下となり高い信頼性(長寿命化)が実現できる。
【0053】
以上述べた投写型映像表示装置を図2及び図3に示すように配置し、光路折り返しミラーを介してスクリーン上に拡大投写する背面投写型映像表示装置においても上述した効果が得られるのは言うまでもない。
【0054】
以上述べた投写型映像表示装置及びこれを用いた背面投写型映像表示装置においては、2枚のダイクロイックミラーの特性と、偏光板に設けられたトリミングフィルタの特性を最適化することで、色純度の良いR,G,Bの映像光を得る。
【0055】
また、G光路に約50%の反射型減衰フィルタを挿入して白色光の色温度を高くしている。更に、比視感度が最も高いG光の光路中に光学位相差補償板を設けることでコストアップを最小としてセットのコントラスト性能を向上させている。一方、B光用の液晶パネルの直前に吸収型UVカットフィルタを設けたばかりでなく、第1レンズアレイ3と、第2レンズアレイ4の平面側にも反射型UVカットコーティングを施したことにより、液晶パネルの長寿命化を図ることが出来る。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本願発明により、高画質な投写型表示装置が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】映像表示素子として液晶パネルを用いた、本発明の投写型映像表示装置の光学ユニット部の構成図である。
【図2】背面投射型映像表示装置の側面図である。
【図3】背面投射型映像表示装置の正面図である。
【図4】前面投写型映像表示装置に適用した場合の実施例を示した説明図である。
【図5】本願発明の実施例に示した白色光源としての超高圧水銀ランプの分光エネルギーである。
【図6】比視感度特性である。
【図7】本願発明の実施例に示したダイクロイックフィルタの特性図である。
【図8】本願発明の実施例に示したダイクロイックフィルタの特性図である。
【図9】本願発明の実施例に示したダイクロイックフィルタの特性図である。
【図10】本願発明の実施例に示したダイクロイックフィルタの特性図である。
【図11】CIE(国際照明学会)1931のxy色度図上に示したNTSCの色再現範囲である。
【図12】黒体軌跡である。
【図13】本願発明の実施例に示したUVフィルタの特性図である。
【符号の説明】
1…白色光源、2…光学ユニットの光軸、3…第1レンズアレイ、4…第2レンズアレイ、5…偏光変換素子、6…集光レンズ、7…赤色光束が反射し緑青色光束が透過するダイクロイックミラー、8…緑色光束が反射し青色光束が透過するダイクロイックミラー、9…赤色光用ミラー、10,11…青色光用ミラー、12R,12G…コンデンサレンズ、131…第1リレーレンズ、132…第2リレーレンズ、133…第3リレーレンズ、14…IR(赤外線)反射フィルタ、15…UV(紫外線)吸収フィルタ、16…反射型減衰フィルタ、17…光学位相差補償板、18R,18G,18B…入射側偏光板、19R,19G,19B…各色に対応した液晶パネル、20R,20G,20B…出射側偏光板、21…合成プリズム、22…投写レンズ。

Claims (12)

  1. 白色光源と該白色光源から放射される可視光束を赤、緑及び青の3原色に分光する分光手段と、入力された映像信号の振幅により前記光束の光強度を変調する手段を有する画素をマトリックス状に配置した赤色表示素子、緑色表示素子及び青色表示素子と、該赤色、緑色及び青色表示素子からの変調された各色の光束を合成する光合成手段と、投写レンズとを備え、前記光合成手段により合成された合成光を前記投写レンズによりスクリーン上に拡大投影する投写型表示装置であって、
    少なくとも前記赤色表示素子と前記緑色表示素子の何れか一方と前記白色光源との間に配置した、前記分光手段との組合せにより所定波長領域の光束成分を選択的に反射する第1の反射手段と、
    前記緑色表示素子と前記白色光源との間に配置した緑色光成分の所定量を反射する第2の反射手段と、
    前記緑色表示素子と前記第2の反射手段との間に配置した光学位相差補償手段とを有することを特徴とする投写型表示装置。
  2. 前記所定波長領域は、275nm以上で285nm以下の波長の黄色光領域を含むことを特徴とする請求項1に記載の投写型表示装置。
  3. 前記白色光源として、赤色光領域の光エネルギーが緑色光、青色光領域の光エネルギーに対して少ないことを特徴とする請求項1乃至請求項2の何れか一項に記載の投写型表示装置。
  4. 前記白色光源は、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハロイドランプの何れか1つであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の投写型表示装置。
  5. 前記第2の反射手段は、545nm近傍の反射率が35%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の投写型表示装置。
  6. 前記白色光源と前記分光手段との間に配設された光学部品に半値波長が略430nmの反射型UVカットフィルタを複数箇所設け、かつ前記青色表示素子と前記分光手段との間に半値波長が略430nmの吸収型UVカットフィルタを設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の投写型表示装置。
  7. 白色光源と該白色光源から放射される可視光束を赤、緑及び青の3原色に分光する分光手段と、入力された映像信号の振幅により前記光束の光強度を変調する手段を有する画素をマトリックス状に配置した赤色表示素子、緑色表示素子及び青色表示素子と、該赤色、緑色及び青色表示素子からの変調された各色の光束を合成する光合成手段と、投写レンズと、光路折返しミラーと、スクリーンとを備え、前記光合成手段により合成された合成光を前記光路折返しミラーを介して前記投写レンズによりスクリーン上に拡大投影する背面投写型表示装置であって、
    少なくとも前記赤色表示素子と前記緑色表示素子の何れか一方と前記白色光源との間に配置した、前記分光手段との組合せにより所定波長領域の光束成分を選択的に反射する第1の反射手段と、
    前記緑色表示素子と前記白色光源との間に配置した緑色光成分の所定量を反射する第2の反射手段と、
    前記緑色表示素子と前記第2の反射手段との間に配置した光学位相差補償手段を有することを特徴とする背面投写型表示装置。
  8. 前記所定波長領域は、275nm以上で285nm以下の波長の黄色光領域を含むことを特徴とする請求項7に記載の背面投写型表示装置。
  9. 前記白色光源として、赤色光領域の光エネルギーが緑色光、青色光領域の光エネルギーに対して少ないことを特徴とする請求項7乃至請求項8の何れか一項に記載の背面投写型表示装置。
  10. 前記白色光源は、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハロイドランプの何れか1つであることを特徴とする請求項7乃至請求項9の何れか一項に記載の背面投写型表示装置。
  11. 前記第2の反射手段は、545nm近傍の反射率が35%以上であることを特徴とする請求項7乃至請求項10の何れか一項に記載の背面投写型表示装置。
  12. 前記白色光源と前記分光手段との間に配設された光学部品に半値波長が略430nmの反射型UVカットフィルタを複数箇所設け、かつ前記青色表示素子と前記分光手段との間に半値波長が略430nmの吸収型UVカットフィルタを設けたことを特徴とする請求項7乃至請求項11の何れか一項に記載の背面投写型表示装置。
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