JP2005029907A - 伸縮性不織布、並びにその製造方法、及びそれを用いた感圧接着シート - Google Patents

伸縮性不織布、並びにその製造方法、及びそれを用いた感圧接着シート Download PDF

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幸夫 山川
Tadashi Furuya
太多司 古谷
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彰文 植野
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Kanebo Ltd
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Abstract

【課題】環境負荷の大きいフッ素系、或いはシリコーン系の後加工剤を使用すること無く、環境負荷の少ないノンハロゲンタイプの有機化合物を使用する方法にて優れた撥水性を有する伸縮性不織布を提供する。
【解決手段】融点が100℃以上の高級脂肪酸ビスアミド化合物を0.1〜1.0wt%含む熱可塑性ポリウレタンフィラメントからなり、そのフィラメント相互が自己接着した伸縮性不織布であって、JIS L 1092 スプレー試験法で測定した撥水度が3級以上である伸縮性不織布。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、撥水性を有する熱可塑性ポリウレタンフィラメントから成る伸縮性不織布、及びその製造方法、並びにその不織布を使用した創傷面保護材用感圧接着シートに関する。
【0002】
【従来技術】
各種繊維製品に撥水性を付与する方法として、各種フッ素化合物、或いは各種シリコーン化合物をその繊維表面に付着させる後加工方法が知られている。
ところが、これらの撥水加工剤、特にフッ素系化合物はその繊維製品表面への固着熱処理加工段階で有毒ガスが発生して、人体に多くの害を及ぼす危険性が有るばかりでなく、化学的に不活性で自然環境では殆ど分解されない為、環境悪化物質と位置づけられている。そこで特に繊維業界ではハロゲンを含まず、又、環境に優しい撥水性繊維製品が望まれている。
【0003】
又、感圧接着シート分野に目を向けると、各種構造物の目止め用感圧性接着シート分野、或いは創傷面保護材感圧粘着シート分野で伸縮性感圧接着シートが幅広く使用されている。特に創傷面保護材用感圧シートの代表である救急絆創膏分野において、ポリウレタンフィラメントからなる伸縮性不織布は、柔軟にして人体の動きに対する優れた追随性能を有する特性に加え、良好な通気性を有する事より幅広く使用されている。この分野においては上記した柔軟性・通気性などの性能以外に、水仕事をする際に撥水性・防水性を有する創傷面保護材用感圧接着シートの開発が望まれている。
【0004】
この撥水性・防水性付与要望に対し、透湿性を有するウレタンフィルムなどがその基材として使用されている。これらの基材は、一般的に30〜40μmより厚いフィルムが使用され、それらのフィルム透湿度は高々1,000〜1,500g/m/24H程度しか無く、この素材に感圧接着剤を塗布した後は高々400〜500g/m/24H程度の透湿度になってしまう。この高々400〜500g/m/24H程度の透湿性では肌に貼り付けた際の蒸れを防止する事が不十分な為、蒸れにより肌が白くなるのを防止することは出来ない。即ち高い透湿性(通気性)と適度な撥水性・防水性とを有する創傷面保護材接着シート開発の要望は大きい。
【0005】
この高い通気性と適度な撥水性を付与した創傷面保護材粘着シートとして、ポリウレタン系伸縮フィラメントから成る伸縮性不織布をフッ素系化合物で撥水加工した撥水性の救急絆創膏が特許文献1に記載されているが、この製品は環境負荷の大きいフッ素系化合物が使用されている。
【0006】
又、各種構造物の目止めなどに使用される感圧接着テープにおいても、繋ぎ目からの水滴浸入防止の目的で撥水性能付与の要望は大きい。
【0007】
【特許文献1】
特許第2865342号公報
【特許文献2】
特開平08−113861号公報
【特許文献3】
特許第2883764号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記したように、環境負荷の大きいフッ素系、或いはシリコーン系の後加工剤を使用すること無く、環境負荷の少ないノンハロゲンタイプの有機化合物を使用する方法にて優れた撥水性を有する伸縮性不織布を提供することに有る。
【0009】
又、もう1つの目的は、かかる撥水性を有する伸縮性不織布の有用用途であるところの高い透湿性と防水性、並びに速乾性に優れた創傷面保護材用感圧接着性シートを提供することにある。
【0010】
【課題を解決する為の手段】
本発明者らは、環境負荷の少なく、熱可塑性ポリウレタンとの相溶性の良い各種低分子化合物をウレタンポリマーに添加した不織布、並びに、撥水剤にも使用されているところのシリコーをソフトセグメント成分の一部として使用したシリコーン共重合ウレタンポリマーからなる不織布などを試作し、撥水性付与などの観点から鋭意研究した結果、シリコーン共重合ウレタンポリマーでは十分な撥水性能は得られず、特定の脂肪酸アミド化合物を熱可塑性ポリウレタンに添加した後、メルトブロー法で積層した不織布が優れた撥水性能を有する事を発見し、本発明に至った。
【0011】
又、本発明不織布は、通常の洗濯、或いは通常の精練加工、染色加工などで損なわれるところの撥水性能が、70〜100℃の熱処理にて回復する優れた撥水性復元性能を有する伸縮性不織布である特徴を有する。
【0012】
【発明の実施の形態】
各種脂肪族アミド化合物は、熱可塑性ポリウレタン業界では優れたブロッキング防止剤として一般的に知られた化合物で、ペレット段階でのペレット相互のブロッキング防止剤、フィルム分野ではフィルム相互のブロッキング防止剤、射出成形分野では射出成形サイクル性向上剤などに使用されている。
【0013】
又、溶融紡糸スパンデックスにおいては、紡糸して巻き取った捲糸体からの解舒性向上剤として使用されている。又、熱可塑性ポリウレタンからなるメルトブロー不織布においても、特許文献2に記載されているように、目付け50g/m以下の低目付け不織布をメルトブローして集積した補集ネットへの膠着防止として高級脂肪酸ビスアミド化合物、モンタン酸エステル、モンタン酸金属塩添加の記載があるが、これらは何れもポリウレタン相互の膠着性低下、或いはポリウレタンとその他の物質との接着力低下を利用する記載であり、撥水性能に関する記載はない。
【0014】
又、特許文献3にはポリウレタンに有機高級直鎖状カルボン酸アミドを0.05〜1.5wt%添加したポリウレタン不織布の記載があるが、この特許の内容は、ポリウレタン不織布を複数枚数重ねて打ち抜いた際の切断面の上下層のポリウレタン不織布が接着一体化する事を防止するのが目的で、本発明であるところの撥水性能に対する記載は無い。
【0015】
即ち、上記したポリウレタンフィラメントから成る不織布に関する先行技術には撥水性に関する記載はなく、撥水性能は先行技術では予想だに出来なかった新規な性能発見であると考えられる。
【0016】
本発明の伸縮性不織布は熱可塑性ポリウレタンフィラメントからなり、そのフィラメント相互が自己接着した伸縮性不織布で、JIS L 1092 スプレー法で測定した撥水度が3級以上有する伸縮性不織布である。
【0017】
本発明に使用される添加剤は高級脂肪族ビスアミド化合物であって、その融点が100℃以上化合物であり、望ましくは融点が100〜170℃の範囲に有る化合物である。
【0018】
高級脂肪族ビスアミド化合物のうち、融点が100℃未満の化合物は、ポリウレタン伸縮性不織布に添加しても満足の出来る撥水耐久性が得られないばかりでなく、ウレタン繊維表面への滲み出しが激しく、常温での経過時間と共に繊維表面に白粉が発生し、その白粉が製造工程のガイド類に付着し、張力変動の原因になるなどの欠点がある。又、融点が100〜170℃の化合物は、ウレタン繊維表面への滲み出しが適度であり、大きな撥水効果が得られる利点がある。
【0019】
本発明の望ましい高級脂肪族ビスアミド化合物は、エチレンビスステアロアミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミドなどである。
【0020】
本発明では、上記した高級脂肪族ビスアミド化合物を0.1〜1.0wt%添加した熱可塑性ポリウレタンをメルトブロー法で溶融紡糸したフィラメントを連続して移動する捕集ネット上に集積し、ウレタン繊維自体の粘着性でフィラメント相互を接着させて不織布を形成させる。
【0021】
ここで、高級脂肪族ビスアミド化合物の添加率が0.1wt%未満であると十分な撥水効果が得られない。又、添加率が1.0wt%を超えるとフィラメント相互の接着力が不十分で、後工程の取り扱いが困難になる。高級脂肪族ビスアミド化合物の好ましい添加率は0.2〜0.8wt%である。
【0022】
不織布を形成するポリウレタンフィラメントの断面形状は任意の形状が可能であるが、ノズル穴加工の容易さの観点から丸形状が望ましい。
【0023】
通常の繊維布帛において耐水圧力を上げる方法として、▲1▼繊維径を細くして、▲2▼布帛の繊維密度を高める事が有効とされている。ポリウレタン連続フィラメントから成る伸縮性不織布においては、繊維の太さ(繊維径)が不織布強度に大きく影響し、特に平均繊維径が3〜5μm程度以下になると引っ張り強度は著しく低下する現象が有る。即ち、平均繊維径が小さすぎる不織布は、強度不足の問題が発生する。従って、本発明においては、実用性のある強度を有する不織布として平均繊維径が6〜20μmのフィラメントから成る不織布が望ましい。
【0024】
又、目付けは50〜150g/mが望ましい。目付けがこの範囲にあると適度な柔軟性と適度な剛性を有し(しわになり難く)、例えば絆創膏用途として使用した場合に違和感を感じることがないので好ましい。
【0025】
又、本発明では、上記方法にて得られた撥水性能を有する伸縮性不織布の両面又は片面を熱圧着加工するのが望ましい。熱圧着加工とは、表面がフラットな2対のローラー間に不織布を挟み込み、少なくとも片方のローラーを加熱して熱加工するところの熱カレンダー加工、或いは2対のローラーの少なくとも片方表面が凹凸を有する熱ローラーで熱加工するところの熱エンボス加工などである。加熱圧着加工は、繊維断面が熱と圧力にて変形し、例えば丸断面のフィラメントから成る不織布においては、熱ローラーに接する面の繊維断面形状が偏平化するか、或いは一部がフィルム化するまで加工する事が望ましい。
【0026】
本発明で撥水性を有する伸縮性不織布を熱圧着加工する目的の第1は、撥水性能向上を図ること、第2は耐水圧力の向上を図る事、第3は伸縮性不織布を構成する連続フィラメント相互の接着力を向上させて層間剥離強度の向上を図ることにある。
【0027】
熱圧着加工は、不織布の密度向上、或いは一部分フィルム化等によって耐水圧は向上するが、その反面透湿度が低下してしまう危険がある。従って、熱圧着加工は、この透湿度と耐水圧力のバランスを図りながら加工条件を設定しなければならない。
【0028】
尚、本発明の撥水性不織布は、メルトブロー紡糸した不織布段階から撥水性を有する特性として、熱圧着加工により耐水圧力が著しく向上し、その結果として通気性を大きく損なう事無く耐水圧力が大きい不織布が得られる特徴が有る。
【0029】
本発明不織布においては、その透湿度が8,000g/m/24H以上が好ましく、より好ましくは9000g/m/24H以上、更に好ましくは10、000g/m/24H以上である。
尚、本発明不織布の透湿度の上限は、測定方法の精度にもよるが、20,000g/m/24H程度である。
【0030】
耐水圧は100mm水圧以上、望ましくは150mm水圧以上、更に望ましくは200mm水圧以上ある事が望ましい。尚、耐水圧の上限は、1,000mm水圧程度である。耐水圧が1,000mm水圧を超えると、十分な透湿度の不織布が得られなくなる。
【0031】
一般に、耐水圧を上げると透湿度が下がり、透湿度を上げると耐水圧は下がる傾向があるので、両者のバランスを取ることが重要である。
【0032】
本発明不織布には、各種ワックス類、変性シリコーン化合物などのブロッキング防止剤、各種酸化防止剤、耐光剤などの物性改良剤、ベンガラ、酸化チタンなどの各種顔料着色剤、或いは銀イオン、銅イオンなどを含む各種抗菌剤などを予め添加した熱可塑性ポリウレタンポリマーを使用出来る。
【0033】
本発明では、上記した熱圧着加工前の不織布、或いは熱圧着加工後の不織布の片面又は両面に感圧接着剤を塗付して創傷面保護材用感圧接着シートに加工する。
【0034】
創傷面保護材用感圧接着シート素材は、大きく分けて2種類ある。その1つは繊維の織編物、不織布などからなる繊維構造物であり、もう1つはフィルムシートである。この2種類の材料にそれぞれ長短が有り、繊維構造物には通気性があるが防水性に劣る欠点が有り、フィルムシートには防水性はあるが通気性並びに透湿性に劣る欠点がある。
【0035】
又、その感圧接着シート素材には、上記した通気性、透湿性、防水性以外に、肌に貼り付けた際に肌の変化に容易に追随出来る伸縮性は重要であるが、更なる要望特性として速乾性の要望は大きい。
【0036】
即ち、速乾性に関し、肌に貼り付けた状態で水仕事をしたり、又、入浴した後、その感圧接着シートが速乾性を有する事は、傷口の保護のみならず着用感においても極めて重要な要望項目である。
本発明不織布は、上記した創傷面保護材用感圧接着シート素材として、優れた伸縮性と速乾性を有し、更には良好な通気性と適度な防水性(耐水圧)を有する素材である。
【0037】
創傷面保護材用感圧接着シート用粘着剤には、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤などが使用されるが、それらの中で特に肌に対して刺激性が少ない粘着剤が使用するのが望ましい。
【0038】
本発明に使用される粘着剤は、上記した肌に対して刺激性の少ない性能以外に透湿性に優れた粘着剤である事が望ましい。即ち、粘着剤層の透湿性が不十分であれば、そのポリウレタンフィラメントからなる基材が有するところの通気性、透湿性が損なわれてしまう。
【0039】
粘着剤層に通気性を付与する方法には多くの方法が有り、▲1▼接着剤自体に通気性のある材料を使用する。▲2▼気泡を多量に含む粘着剤を使用する。▲3▼気泡を発生する化合物を含む粘着剤を使用する。▲4▼機械的に粘着剤層に小さな穴を空ける方法などがあるが、本発明では何れの方法でも採用できる。
【0040】
本発明では、粘着剤層を塗布した後の感圧接着テープの透湿度が1,500g/m/24H以上、更に望ましくは2,500g/m/24H以上有ることが望ましい。特に好ましくは3,300g/m/24H以上である。尚、その透湿度の上限は、8,000g/m/24H程度であり、これより大きい透湿度を有する感圧接着テープでは十分な耐水圧が得られなくなる。
【0041】
又、耐水圧力が200mm水圧以上、更に望ましくは300mm水圧以上、特に望ましくは400mm水圧以上の性能を有する感圧接着シートが望ましい。又、その上限耐水圧力は1,500水圧程度であり、1,500水圧を超えると十分な透湿度が得られなくなる。
【0042】
ここでも、耐水圧を上げると透湿度が下がり、透湿度を上げると耐水圧は下がる傾向があるので、両者のバランスを取ることが重要である。
【0043】
この程度の透湿度と耐水圧を有する感圧接着テープは、肌に直接貼り付けても蒸れることは殆ど無く、又、優れた防水性を有する傷手当て用品として使用出来る。
【0044】
【実施例】
<物性測定方法>
1)撥水度測定
JIS L 1092 スプレー試験法で測定。
【0045】
2)耐水圧測定
JIS L 1092 A法で測定。
【0046】
3)透湿度測定
JIS L 1099 A法で測定。
【0047】
4)不織布の目付け測定
10cm×10cm試料を打ち抜き、その重量を測定して1m当たりの重量に換算。
【0048】
5)不織布の平均繊維径測定
電子顕微鏡で無作為に写真を撮り、その写真より20本の繊維直径を測定し、その平均値を平均繊維径とする。
【0049】
6)耐久性評価の為の洗濯方法
家庭用洗濯試験としてJIS L 217法に準じて実施。
【0050】
<実施例−1、2、3>
ソフトセグメントがポリヘキサンブチレンアジペート、ハードセグメントが4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと1,4−ブタンジオールからなるショアーA硬度が90の熱可塑性ポリウレタンペレット(ベースペレット)を重合した。又、このウレタンペレットに2軸混練機を使用して高級脂肪酸ビスアミド化合物の1種類であるエチレンビスオレイン酸アミド(以後EBOAと記載する、融点約116℃)を、ポリマー重量に対して13wt%練り込んマスターペレットを試作した。
【0051】
次いで、上記ベースペレットとマスターペレットを重量比で100対3.1の割合でチップブレンドし、次いでメルトブロー紡糸機を使用して、EBOAの含有量が0.4wt%になるポリウレタンフィラメントからなる伸縮性不織布を試作した。
【0052】
尚、この不織布の目付けは75g/m、平均繊維径が10μmで、ポリウレタンフィラメントはその接触部で自己接着していた。この伸縮性不織布を実施例−1とした。
【0053】
次いで、この実施例−1の伸縮性不織布を、柄は格子状、圧着部が25%で120℃に加熱したエンボスローラーとペーパーローラーの組み合わせからなる熱圧着加工機でエンボス加工した。このエンボス加工品を実施例−2とした。
このエンボス加工品は、表面、裏面ともにエンボス柄の凹凸を有し、エンボスローラー側の熱圧着部分を拡大写真で評価すると、繊維の一部が偏平化し、又、一部がフィルム化していた。
【0054】
次いで、実施例−1の不織布を118℃の鏡面熱ローラーとゴムローラーの組み合わせからなるカレンダー加工機を使用して、熱圧着加工した。このカレンダー加工品を実施例−3とした。
【0055】
<比較例−1、2>
実施例−1のショアーA硬度が90の熱可塑性ポリウレタンペレットを、実施例−1と同じメルトブロー紡糸機を使用してEBOAを含まないポリウレタンフィラメントから成り、目付けが75g/m、平均繊維径が10μmの伸縮性不織布を得た。
【0056】
次いでこの不織布を実施例−2に準じた方法でエンボス加工した。このエンボス加工不織布を比較例−1とした。
【0057】
又、比較例−1のエンボス加工した伸縮性不織布を下記条件でフッ素系撥水加工した。この製品を比較例−2とした。
【0058】
その撥水加工内容は、フッ素系撥水処理剤水溶液(旭硝子(株)製、アサヒガードAG730)に伸縮性不織布を連続的に浸漬した後マングルで軽く絞り、次いで110℃の熱風乾燥機で連続乾燥し、撥水処理剤の付着量(固形分含量)が1g/mの撥水加工不織布を得た。
【0059】
次いで撥水性能の耐久性評価の為、上記試作品をJIS L 217法の105法に準じて家庭用洗濯試験を実施した。洗濯回数を5回として、5回洗濯後の撥水性能を評価した。
【0060】
尚、洗濯により低下した撥水性の復元効果を評価する為、洗濯5回後の各試料を90℃の熱風で10分間処理した後、再度その熱処理試料の撥水性能を評価した。
【0061】
実施例−1、2、3、及び比較例−1、2の物性値は下表の通りであった。
【0062】
【表1】
Figure 2005029907
【0063】
1)本発明品の実施例−1、2、3は何れも5級の撥水度に対し、EBOAを含まない比較例−1不織布は撥水性能が低い1級であった。
又、比較例−1をフッ素系撥水剤で加工した比較例−2不織布は撥水度5級であった。
【0064】
又、耐洗濯性に関し、実施例−1、2、3、並びに比較例−2は洗濯後の撥水度が3級に低下した。ところが、90℃の熱処理により、比較例−2は撥水度に変化は無かったが、本発明の実施例−1、2、3は熱処理により撥水度が3級から4〜5級に向上した。
即ち、本発明不織布は、熱処理により撥水性能が向上する特徴が有る結果であった。
【0065】
2)透湿度は、エンボス加工、カレンダー加工にて若干低下するが(原反比較)、何れも9,000g/m/24H以上の高い透湿度を有した。
【0066】
3)耐水圧に関し、本発明品のエンボス加工品の実施例−2は、EBOAを添加しない比較例−1より極めて大きい耐水圧を有するばかりでなく、エンボス加工後フッ素系撥水加工した比較例−2よりも大きい耐水圧力を有する結果で有った。即ち、本発明不織布は、洗濯などで損なわれた撥水性能が熱処理による回復するのみならず、熱圧着加工により高い耐水圧を付与出来る不織布である。
【0067】
<実施例−4、比較例−3、4>
ポリヘキサンブチレンアジペートをソフトセグメントとするショアーA硬度が85の熱可塑性ポリウレタンに、2軸混練機を使用して、エチレンビスエルカ酸アミド(以後EBEAと記載、融点101℃)、オレイン酸アミド(以後OAと記載、融点70〜78℃)、モンタン酸ワックス(クラリアント・ジャパン社のヘキストワックスE、以後MWaxと記載、融点約80℃)をそれぞれ0.8wt%練り込んだ3種類の熱可塑性ウレタンを試作した。
【0068】
次いで、上記3種類のウレタンポリマーをメルトブロー紡糸して目付けが100g/m、平均繊維径が12μmのポリウレタンフィラメントからなる伸縮性不織布原反3種類を試作し、EBEA添加不織布を実施例−4、OA添加不織布を比較例−3、MWax添加不織布を比較例−4とした。
【0069】
次いで、その3種類の不織布をゴムローラーと表面が鏡面の加熱ローラーからなるカレンダーローラーで熱圧着加工した加工品3種類を試作した。それらの不織布の熱圧着加熱面を顕微鏡下で観察したところ、ポリウレタン繊維は偏平化し一部はフィルム化していた。
【0070】
又、ソフトセグメントがシリコーンジオールとカプロラクトンジオールからなるショアーA硬度88の熱可塑性ポリウレタン(大日精化工業株式会社製のレザミンPS−42488)をメルトブロー紡糸して伸縮性不織布とし、次いでカレンダー加工して、シリコーン共重合ウレタンからなる伸縮性不織布原反とカレンダー加工反を試作し、比較例−5とした。尚、この不織布の目付けは100g/mで平均繊維径は12μmであった
【0071】
上記4種類の原反並びにカレンダー加工品4種類の撥水度、並びに洗濯5回後の撥水度、及び洗濯5回後の試料を90℃で15分間熱処理した後の撥水度は下表の通りであった。
【0072】
又、ポリウレタンに添加した各化合物の融点は下記の通りであった。
実施例−4:エチレンビスエルカ酸アミド(EBEA);融点101℃
比較例−3:オレイン酸アミド(OA)融点70〜75℃
比較例−4:モンタン酸ワックス(MWax);融点約80℃
【0073】
【表2】
Figure 2005029907
【0074】
本発明の融点が101℃のEBEAを添加した不織布(実施例−4)は、原反、並びにカレンダー加工反共に5級の撥水度を有し、洗濯5回後は3級に低下したが、熱処理により4級に復元した。
【0075】
しかしながら、比較例−3の融点が100℃以下のオレイン酸アミド(融点70〜75℃)を添加した不織布は、カレンダー加工により3級の撥水度を示したが、洗濯5回で1級の撥水度になり、熱処理しても殆ど復元しなかった。
又、比較例−4のMWax(融点約8℃)を添加した不織布も、カレンダー加工により撥水度は3級まで向上したが、洗濯5回で1級にまで低下し、熱処理しても殆ど復元しなかった。
【0076】
一方、シリコーンを共重合したウレタンからなる不織布(比較例−5)は、原反、カレンダー加工反共に十分な撥水性能が得られなかった。
【0077】
上記したように、融点が100℃以上の脂肪酸ビスアミド化合物を添加した実施例−4不織布は、洗濯耐久性にも優れ、熱処理により撥水性能が復元する伸縮性不織布であった。
【0078】
<実施例−5、比較例―6>
創傷面保護材用に使用されるところの透湿性を有するアクリル系粘着剤液を高速攪拌して多量の気泡を含ませた後、ポリエチレンシート引き離型紙の上に塗布して感圧接着剤層を形成させた。次いで実施例−2、比較例−2の伸縮性不織布の裏側(エンボス面の裏)に感圧接着剤層を加圧下で転写し、厚さ30μmの感圧接着剤層を有する感圧接着剤シート2種類を試作し、それぞれ実施例−5、及び比較例−6とした。
【0079】
この感圧接着剤塗布シートの粘着剤層を電子顕微鏡で観察したところ多数の小孔が観察された。また、この感圧接着シートの不織布側の撥水度、透湿度、並びに耐水圧を測定した結果は下表の通りであった。
【0080】
【表3】
Figure 2005029907
【0081】
この2種類の感圧接着シートを使用し、患部にレーヨン、ポリプロピレン、ポリエステルからなる不織布が患部に当たる状態に設計した幅1.8cm、長さ8cmの創傷面保護材(救急絆創膏)に加工し、その加工品を指に捲きつけた状態で短時間の食器洗い作業を実施した。
【0082】
作業完了10分後に2種類の救急絆創膏表面を観察したところ、実施例−5の救急絆創膏表面には水気が観察されなかったが、比較例−7はまだ水気が有った。
又、その2種類の救急絆創膏を指から引き剥がし、患部に当たる部分の不織布を観察したところ、実施例−5の救急絆創膏の患部不織布は濡れていなかったが、比較例−6のそれは濡れていた。
【0083】
上記結果が示す様に、本発明不織布を使用して加工した創傷面保護材シートは、優れた速乾性と耐水性能を有する結果であった。
【0084】
【発明の効果】
本発明は上記した様に、フッ素化合物の様な環境負荷が大きく、人体にも害がある可能性の有るハロゲン系化合物を使用することなく、優れた撥水性を有するポリウレタンフィラメントから成る伸縮性不織布を得る事が出来る。又、この撥水性不織布は、優れた撥水耐久性を有するばかりでなく、熱圧着加工を施す方法にて高い透湿性を損なう事なく良好な耐水圧を有する伸縮性不織布に加工出来る。更に、これらの伸縮性不織布は透湿性を有する感圧接着剤を塗布することにより、優れた透湿性と耐水圧を有する創傷面保護材に使用出来る。

Claims (8)

  1. 融点が100℃以上の高級脂肪酸ビスアミド化合物を0.1〜1.0wt%含む熱可塑性ポリウレタンフィラメントからなり、そのフィラメント相互が自己接着した伸縮性不織布であって、JIS L 1092 スプレー試験法で測定した撥水度が3級以上である事を特徴とする伸縮性不織布。
  2. JIS L 1092 A法で測定した耐水圧を100mm水圧以上有する請求項1記載の伸縮性不織布。
  3. JIS L 1099 A法で測定した透湿度が8,000g/m/24H以上である、請求項1又は2記載の伸縮性不織布。
  4. 融点が100℃以上の高級脂肪酸ビスアミド化合物の少なくとも1種類を0.1〜1.0wt%添加した熱可塑性ポリウレタンをメルトブロー法で溶融紡糸してフィラメント相互を自己接着させることを特徴とする伸縮性不織布の製造方法。
  5. 請求項4記載の製造方法において、得られた伸縮性不織布を更に熱圧着加工して繊維の一部分を偏平化(又はフィルム化)させる事を特徴とする伸縮性不織布の製造方法。
  6. 請求項1、又は請求項2、又は請求項3の伸縮性不織布の両面又は片面に透湿性を有する感圧接着剤を塗布した創傷面保護用感圧接着性シート。
  7. 耐水圧が200mm水圧以上である、請求項6記載の創傷面保護用感圧接着性シート。
  8. 透湿度が1,500g/m/24H以上である、請求項6又は7記載の創傷面保護用感圧接着性シート。
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