JP2005010533A - 定着装置 - Google Patents
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Abstract
【解決課題】加熱加圧ニップ部を通過した定着ベルトから用紙等の記録媒体が剥離するのを抑制し、グロスムラや記録媒体の変形、あるいは紙しわが発生するのを防止することが可能な定着装置を提供することを課題とする。
【解決手段】互いに圧接した状態で循環移動する定着ベルトと加圧ベルトとの間に、未定着トナー像を担持した記録媒体を挟持した状態で搬送しつつ、前記定着ベルト及び加圧ベルトを介して、加熱加圧手段によって加熱加圧ニップ部で記録媒体を加熱加圧した後、前記記録媒体を冷却させて定着ベルト及び加圧ベルトから剥離し、前記記録媒体上にトナー像を定着する定着装置において、前記加熱加圧ニップ部よりも下流の領域に、前記記録媒体を定着ベルトに押圧させる少なくとも2つ以上の押圧手段を備えるように構成して課題を解決した。
【選択図】 図1
【解決手段】互いに圧接した状態で循環移動する定着ベルトと加圧ベルトとの間に、未定着トナー像を担持した記録媒体を挟持した状態で搬送しつつ、前記定着ベルト及び加圧ベルトを介して、加熱加圧手段によって加熱加圧ニップ部で記録媒体を加熱加圧した後、前記記録媒体を冷却させて定着ベルト及び加圧ベルトから剥離し、前記記録媒体上にトナー像を定着する定着装置において、前記加熱加圧ニップ部よりも下流の領域に、前記記録媒体を定着ベルトに押圧させる少なくとも2つ以上の押圧手段を備えるように構成して課題を解決した。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
この発明は、電子写真方式を適用した複写機、プリンタ、ファクシミリあるいはこれらの複合機等の画像形成装置に用いられる定着装置に関するものである。
【0002】
【特許文献1】特開平2−72376号公報
【0003】
【従来の技術】
従来、上記電子写真方式を適用した複写機、プリンタ、ファクシミリあるいはこれらの複合機等の画像形成装置に用いられる定着装置としては、種々の方式のものが提案されている。かかる定着装置としては、定着ベルトと用紙を密着させたまま搬送しつつ冷却し、非オフセット性を確保するものとして、例えば、特開平2−72376号公報に開示されているものがある。
【0004】
この特開平2−72376号公報に係る定着装置100は、図11に示すように、加熱源102を内蔵した加熱ローラ101と、加熱源104を内蔵した加圧ローラ103とを圧接させるとともに、両ローラ101、103の圧接部から上分離ローラ105までの範囲にわたって、供給ロール106から供給される定着フィルム107を搬送しつつ巻き取りロール108によって巻き取り、当該定着フィルム107の下面には、加圧ローラ103と下分離ローラ109との間に巻き付けられた搬送ベルト110を圧接させるように構成したものである。そして、この定着装置100では、加熱ローラ101と加圧ローラ103との圧接部において、用紙111上の未定着トナー像112を融点以上に加熱しながら、加熱ローラ101でトナー112と用紙111を加熱する加熱工程と、加熱工程で溶融したトナー112と定着フィルム107とを密着させながら搬送してトナー112の軟化点温度以下まで冷却させる冷却工程と、トナー112が冷却した用紙111を定着フィルム107から剥離する剥離工程とを備えるように構成されている。
【0005】
また、上記特開平2−72376号公報に係る定着装置100は、図12に示すように、加熱源102を内蔵した加熱ローラ101と、加熱源104を内蔵した加圧ローラ103とを圧接させるとともに、加熱ローラ101と小径の分離ローラ105との間に定着ベルト113を張架するとともに、加圧ローラ103と小径の分離ローラ106との間に搬送ベルト110を張架し、これら定着ベルト113と搬送ベルト110を圧接させるようにした構成をも含んでいる。そして、この定着装置100では、加熱ローラ101と加圧ローラ103との圧接部において、用紙111上の未定着トナー像112を融点以上に加熱しながら、加熱ローラ101でトナー像112と用紙111を加圧する加熱工程と、加熱工程で溶融したトナー像112と定着ベルト113とを密着させながら搬送してトナーの軟化点温度以下まで冷却させる冷却工程と、用紙111を剥離する剥離工程とを備えるように構成されている。
【0006】
なお、上記定着装置100では、冷却工程において、用紙111と定着ベルト113とを密着させる手段として、搬送ベルト110の裏面側から板状部材114を圧接させる方法が用いられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術の場合には、次のような問題点を有している。すなわち、上記特開平2−72376号公報に開示された定着装置の場合、用紙111は、水分や空気を含んでいるため、加熱領域において高温に加熱されると、水蒸気が発生し、この水蒸気の圧力によって、加熱ローラ101のニップ部を通過した後の用紙111と定着フィルム107や定着ベルト113とが剥離してしまうことになる。上記の如く用紙111が定着フィルム107や定着ベルト113から剥離する形態は、加熱ローラ101等による定着フィルム107や定着ベルト113の加熱温度、あるいは用紙111上のトナー像112の配置、更には定着フィルム107や定着ベルト113の剥離性など種々な要因で変化し、用紙111と定着フィルム107や定着ベルト113との間に発生する微小な剥離は、画像のグロスムラの原因となったり、大規模な剥離は、用紙111の変形や紙しわの原因となるという問題点を有していた。
【0008】
そこで、上記用紙と定着フィルムや定着ベルトとの間に発生する微小な剥離や大規模な剥離を抑制するためには、冷却工程において、用紙(トナー)と定着フィルムや定着ベルトとを互いに密着させる必要がある。
【0009】
しかし、本発明者らの実験によれば、定着フィルムや定着ベルト、あるいは搬送ベルトのテンションのみ、もしくは板状部材を当接させただけでは、押圧力が不足しており、グロスムラや用紙の変形、あるいは紙しわを防止することができないことがわかった。
【0010】
更に説明すると、上記の如く定着フィルムや定着ベルト、あるいは搬送ベルトのテンションのみ、もしくは板状部材を当接させただけでは、用紙に含まれる水分や空気によって、加熱加圧時に発生する水蒸気の圧力に打ち勝つことができず、用紙上のトナー像と定着フィルムや定着ベルトとの密着状態を維持することができないばかりか、搬送ベルトの裏面側から板状部材を圧接させた場合には、搬送ベルトと板状部材との摩擦力が大きくなり、搬送ベルトに波打ち等が発生して、用紙の歪みが押し集められ、紙しわや用紙の変形の原因となるという問題点を招来することがわかった。
【0011】
そこで、この発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、加熱加圧ニップ部を通過した定着ベルトから用紙等の記録媒体が剥離するのを抑制し、グロスムラや記録媒体の変形、あるいは紙しわが発生するのを防止することが可能な定着装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載された発明は、互いに圧接した状態で循環移動する定着ベルトと加圧ベルトとの間に、未定着トナー像を担持した記録媒体を挟持した状態で搬送しつつ、前記定着ベルト及び加圧ベルトを介して、加熱加圧手段によって加熱加圧ニップ部で記録媒体を加熱加圧した後、前記定着ベルトと加圧ベルトとの間に記録媒体を挟持したままの状態で、当該記録媒体を所定温度以下に冷却するとともに、前記記録媒体を定着ベルト及び加圧ベルトから剥離し、前記記録媒体上にトナー像を定着する定着装置において、前記加熱加圧ニップ部よりも下流の領域に、前記記録媒体を定着ベルトに押圧させる少なくとも2つ以上の押圧手段を備えたことを特徴とする定着装置である。
【0013】
また、請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の定着装置において、前記少なくとも2つ以上の押圧手段と対向する位置には、対向部材を設けたことを特徴とする定着装置である。
【0014】
さらに、請求項3に記載された発明は、請求項1に記載の定着装置において、前記少なくとも2つ以上の押圧手段は、前記定着ベルトの温度が、前記未定着トナー像を形成するトナーのバインダー樹脂の融点よりも30℃以上低くなる位置よりも上流側に配置されていることを特徴とする定着装置である。
【0015】
又、請求項4に記載された発明は、請求項1に記載の定着装置において、前記少なくとも2つ以上の押圧手段のうち、定着ベルトの移動方向の最も上流側に配置される押圧手段は、その押圧力が103 [Pa]以下に設定されていることを特徴とする定着装置である。
【0016】
更に、請求項5に記載された発明は、請求項1に記載の定着装置において、前記少なくとも2つ以上の押圧手段のうち、2番目以降の押圧手段は、その押圧力が104 [Pa]以上に設定されていることを特徴とする定着装置である。
【0017】
また、請求項6に記載された発明は、請求項1に記載の定着装置において、前記少なくとも2つ以上の押圧手段のうち、定着ベルトの移動方向の最も上流側に配置される押圧手段は、パッド形状に形成されていることを特徴とする定着装置である。
【0018】
さらに、請求項7に記載された発明は、請求項6に記載の定着装置において、前記パッド形状に形成される押圧手段の押圧面は、弾性を有する部材によって形成されていることを特徴とする定着装置である。
【0019】
又、請求項8に記載された発明は、請求項6に記載の定着装置において、前記パッド形状に形成される押圧手段の押圧面は、フッ素樹脂によって形成されていることを特徴とする定着装置である。
【0020】
更に、請求項9に記載された発明は、請求項1に記載の定着装置において、前記少なくとも2つ以上の押圧手段のうち、2番目以降の押圧手段は、ロール状に形成されていることを特徴とする定着装置である。
【0021】
また、請求項10に記載された発明は、請求項9に記載の定着装置において、前記ロール状に形成された押圧手段は、その表面が弾性を有する部材によって形成されていることを特徴とする定着装置である。
【0022】
さらに、請求項11に記載された発明は、請求項1に記載の定着装置において、前記少なくとも2つ以上の押圧手段のうち、2番目以降の押圧手段は、その上流側の押圧力が下流側の押圧力よりも大きく設定されていることを特徴とする定着装置である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
実施の形態1
図1はこの発明の実施の形態1に係る定着装置を示すものである。
【0025】
この定着装置1は、図1に示すように、定着部材としての定着ベルト2と、加圧部材としての加圧ベルト3を有している。上記定着ベルト2は、第1の加熱ローラ4、第2の加熱ローラ5、定着ローラ6、熱循環器7、及び4本のアイドラーローラ8〜11によって、循環移動可能に張架されている。また、加圧ベルト3は、加圧ローラ12と、4本のアイドラーローラ13〜16により循環移動可能に張架されている。上記定着ローラ6と加圧ローラ12は、定着ベルト2と加圧ベルト3を介して互いに圧接することにより、記録媒体17の搬送方向の入口側の端部に、加熱加圧ニップ部18を形成するように配設されている。
【0026】
また、上記定着ベルト2と加圧ベルト3は、加熱加圧ニップ部18から剥離位置19の近傍まで、互いに圧接した状態で走行し、これら定着ベルト2と加圧ベルト3の間に、未定着トナー画像Tを担持した記録媒体としての用紙17を挟持した状態で搬送しつつ、加熱加圧ニップ部18の通過後からトナー画像Tが冷却されるまでの間、用紙17と定着ベルト2が密着した状態を維持して、用紙17上に担持されたトナー画像Tを定着するように構成されている。
【0027】
上記定着ローラ6としては、例えば、図2に示すように、アルミニウムやステンレス等からなる金属製コア20の表面に、シリコンゴム等からなる弾性体層21を所定の厚さに被覆して、所定の外径(例えば、50mm)に形成したものが用いられる。この定着ローラ6の内部には、加熱源として例えば300〜350Wのハロゲンランプ22が2本配設されており、ウオームアップ時に、当該定着ローラ6の表面温度が所定の温度(例えば、140℃〜150℃程度)となるように内部から加熱される。
【0028】
また、上記加圧ローラ12としては、例えば、図2に示す定着ローラ6と同様に構成したものが用いられ、アルミニウムやステンレス等からなる金属製コア20の表面に、シリコンゴム等からなる弾性体層21を所定の厚さに被覆して、所定の外径(例えば、50mm)に形成したものが用いられる。この加圧ロール12の内部には、加熱源として例えば300〜350Wのハロゲンランプ22が2本配設されており、ウオームアップ時に、当該加圧ローラ12の表面温度が所定の温度(70℃〜80℃程度)となるように内部から加熱される。
【0029】
そして、上記定着ローラ6と加圧ローラ12は、定着ベルト2と加圧ベルト3を介して、図示しない加圧手段により、75kg〜200kgの荷重で互いに圧接するように構成されている。
【0030】
さらに、上記定着ベルト2は、上述したように、定着ローラ6と、小径の剥離ローラ10と、ウオーク制御ロール11と、第1の加熱ローラ4と、第2の加熱ローラ5と、2本のアイドラーローラ8、9からなる複数のローラにより回動可能に支持されており、図示しない駆動源によって回転駆動される定着ローラ6により、所定の高速度(例えば、350mm/sec)で回転駆動される。この定着ベルト2としては、例えば、厚さ80μmのポリイミド製の無端状フィルム上に、厚さ50μmのシリコンゴム層を被覆し、必要に応じて、シリコンゴム層の上にフッ素ゴム等からなる離型層を設けたものが用いられる。また、上記定着ベルト2は、定着ローラ6から剥離ローラ10との間において、略水平に走行するように張架されており、加熱加圧ニップ部18から剥離位置19の近傍までの間、加圧ベルト3と密着した状態で走行するようになっている。更に、上記定着ベルト2は、2本のアイドラーローラ8、9によって、定着ローラ6と加圧ローラ12とで形成される加熱加圧ニップ部18への突入角度が略水平となり、当該定着ベルト2の走行が安定するように構成されている。
【0031】
また、上記定着ベルト2は、図1に示すように、走行する間に、第1の加熱ローラ4と第2の加熱ローラ5によって、定着時、所定の高温(170℃以上:例えば、190℃)に加熱されるようになっている。上記第1の加熱ローラ4は、アルミニウム等からなる金属製コアによって形成されており、当該第1の加熱ローラ4の内部には、加熱源としてハロゲンランプ23が2本配設されており、定着時に、第1の加熱ローラ4の表面が第2の加熱ローラ5の表面温度よりも5℃程度低く加熱されるように構成されている。また、上記第2の加熱ローラ5は、アルミニウム等からなる金属製コアの表面にテフロン(登録商標)を被覆して形成されており、当該第2の加熱ローラ5の内部には、加熱源としてハロゲンランプ24が3本配設されており、定着時に、第2の加熱ローラ5の表面が所定の温度(170〜200℃:例えば、190℃)に加熱されるようになっている。
【0032】
なお、上記第2の加熱ローラ5の表面には、クリーニングウエブ等のクリーニング部材を設けるように構成しても良い。
【0033】
一方、上記加圧ベルト3は、加圧ローラ12と、小径のアイドラーローラ15と、直径が比較的大きなアイドラーローラ16と、2本の小径のアイドラーローラ13、14からなる複数のローラにより回動可能に支持されており、図示しない駆動源によって回転駆動される加圧ローラ12により、所定の高速度(例えば、350mm/sec)で回転駆動されるか、又は、定着ベルト2に従動回転するように構成されている。この加圧ベルト3としては、例えば、厚さ80μmのポリイミド製の無端状フィルム上に、厚さ50μmのシリコンゴム層を被覆し、当該シリコンゴム層の上にシリコン樹脂等からなる離型層を被覆したものが用いられている。また、上記加圧ベルト3は、ウオームアップ時に、加圧ローラ12によって、所定の温度(70〜80℃)に加熱されるようになっている。
【0034】
また、上記定着ベルト2の内面側には、定着ロール6と剥離ロール10との間に、当該定着ベルト2を強制的に冷却する熱循環器7の冷却域を構成する冷却手段としての冷却用のアルミ板25が配設されており、この冷却用のアルミ板25によって定着ベルト2及び記録用紙17の冷却、並びに記録用紙17の搬送を行う冷却・用紙搬送部が形成されている。そして、上記定着ベルト2は、剥離ロール10付近において、約70℃程度まで冷却される。
【0035】
さらに、上記熱循環器7の冷却域を構成する冷却用のアルミ板25は、複数本の側面矩形状のループを形成するヒートパイプ26を介して、アイドラーローラ11と第1の加熱ロール4との間に配設された、定着ベルト2を予熱する熱循環器7の熱戻し域を構成する予熱用のアルミ板27と、熱の授受が可能となるように接続されている。そして、上記熱循環器7では、冷却域を構成する冷却用のアルミ板25で、定着ベルト2からの熱を吸収するとともに、当該冷却用のアルミ板25が吸収した熱量を、ヒートパイプ26を介して、熱循環器7の熱戻し域を構成する予熱用のアルミ板27に伝達し、当該予熱用のアルミ板27によって定着ベルト2を予熱するように構成されている。なお、上記ヒートパイプ26の本数や性能は、適宜設定される。また、ヒートパイプ26の代わりにヒートシンクを用いても良い。なお、上記冷却用のアルミ板25と予熱用のアルミ板27のベルト接触面は、定着ベルトとの接触を良好にするため、ベルト側に向けて凸になるような曲率(例えば、曲率半径1000mm)を有している。
【0036】
ところで、この実施の形態に係る定着装置は、互いに圧接した状態で循環移動する定着ベルトと加圧ベルトとの間に、未定着トナー像を担持した記録媒体を挟持した状態で搬送しつつ、前記定着ベルト及び加圧ベルトを介して、加熱加圧手段によって加熱加圧ニップ部で記録媒体を加熱加圧した後、前記定着ベルトと加圧ベルトとの間に記録媒体を挟持したままの状態で、当該記録媒体を所定温度以下に冷却するとともに、前記記録媒体を定着ベルト及び加圧ベルトから剥離し、前記記録媒体上にトナー像を定着する定着装置において、前記加熱加圧ニップ部よりも下流の領域に、前記記録媒体を定着ベルトに押圧させる少なくとも2つ以上の押圧手段を備えるように構成されている。
【0037】
また、この実施の形態では、前記少なくとも2つ以上の押圧手段と対向する位置に、対向部材を設けるように構成されている。
【0038】
さらに、この実施の形態では、前記少なくとも2つ以上の押圧手段は、前記定着ベルトの温度が、前記未定着トナー像を形成するトナーのバインダー樹脂の融点よりも30℃以上低くなる位置よりも上流側に配置されるように構成されている。
【0039】
又、この実施の形態では、前記少なくとも2つ以上の押圧手段のうち、定着ベルトの移動方向の最も上流側に配置される押圧手段は、その押圧力が103 [Pa]以下に設定されている。
【0040】
すなわち、この実施の形態に係る定着装置1では、図1に示すように、加熱加圧ニップ部18の下流側に、第1の押圧部材31と、第2の押圧部材32と、第3の押圧部材33とが順次配置されており、これらの押圧部材31〜33に対向する位置には、定着ベルト2の背面側に押圧力を受ける対向部材として、冷却用のアルミ板25が配設されている。また、上記第1乃至第3の押圧部材31〜33は、定着ベルト2の温度が、未定着トナー像Tを形成するトナーのバインダー樹脂の融点よりも30℃以上低くなる位置よりも上流側、つまり、トナーのバインダー樹脂の融点よりも30℃以上高い位置に配置されている。
【0041】
上記第1の押圧部材31は、図1に示すように、加熱加圧ニップ部18の加熱領域を通過した直後の位置に配置されている。この第1の押圧部材31は、図3に示すように、金属又は耐熱性の合成樹脂等によって、先端部がテーパー状に薄く形成された平板状のパッド部材34からなり、このパッド部材34の表面35は、フッ素樹脂等によって形成されており、加圧ベルト3との摩擦を低減させ、摺動性を向上させるとともに、フッ素樹脂35とパッド部材34との間には、シリコンゴム等からなる弾性層36が介在されており、均一な押圧力を得ることができるように構成されている。また、上記パッド部材34は、図示しないスプリング等によって加圧ベルト3の裏面に圧接されており、当該パッド部材34の押圧力は、103 [Pa]以下に設定されている。
【0042】
また、上記第1の押圧部材31の下流側には、図1に示すように、ローラ状に形成された第2の押圧部材32と第3の押圧部材33とが配設されており、これら第2の押圧部材32と第3の押圧部材33は、加圧ベルト3に圧接した状態で従動回転されるように構成されている。上記第2の押圧部材32及び第3の押圧部材33としては、図4に示すように、ステンレス等からなる芯金37の表面に、シリコンゴム等からなる弾性層38を被覆して、外径20〜30mm程度のローラ状に形成したものが用いられる。また、上記第2の押圧部材32及び第3の押圧部材33は、定変位状態で加圧ベルト3の裏面に圧接されており、当該第2の押圧部材32及び第3の押圧部材33の押圧力は、いずれも104 [Pa]以上に設定されている。
【0043】
ところで、上記第1の押圧部材31の下流側に配設される押圧部材32、33は、グロスムラの抑制効果を向上させるため、複数設けるのが望ましいが、これら第2及び第3の押圧部材32、33は、上流側の第2の押圧部材32の押圧力が、下流側の第3の押圧部材33の押圧力よりも大きく設定されている。
【0044】
以上の構成において、この実施の形態に係る定着装置では、次のようにして、ニップ部を通過した定着ベルトから用紙等の記録媒体が剥離するのを抑制し、グロスムラや記録媒体の変形、あるいは紙しわが発生するのを防止することが可能となっている。
【0045】
すなわち、この実施の形態に係る定着装置1では、図1に示すように、ウオームアップ時に、定着ベルト2が遅い速度で回転移動しながら、定着ローラ6と加圧ローラ12によって、所定の温度(70〜100℃)に予め加熱されるようになっている。そして、この定着装置1では、定着時に、第1の加熱ローラ4及び第2の加熱ローラ5によって所定温度(170〜200℃:例えば、190℃)に加熱され、定着ローラ6と加圧ローラ12の加熱加圧ニップ部18でトナー画像Tが転写された記録用紙17を、定着ベルト2と加圧ベルト3とによって挟持した状態で、記録用紙17上のトナー像Tをトナーの融点以上に加熱・溶融し、トナー画像Tを記録用紙17上に定着する。
【0046】
更に説明すると、上記定着装置1では、図1に示すように、表面にカラートナー画像Tなどが転写・定着された記録用紙17が、定着ロール6と当該定着ロール6に定着ベルト2と加圧ベルト3を介して圧接する加圧ロール12との加熱加圧ニップ部18に、カラートナー画像Tが定着ロール6側に位置するようにして導入され、上記定着ロール6と加圧ロール12との加熱加圧ニップ部18を通過する間に、カラートナー画像Tが記録用紙17上に加熱溶融されて定着される。その際、上記記録用紙17の表面に形成されたトナー画像Tは、加熱されて軟化し、定着ベルト2の表面に密着した状態となり、当該定着ベルト2の表面が写し取られ(レプリカが形成され)、高い光沢を有する画像となる。
【0047】
その後、上記定着ベルト2は、記録用紙17と共に、冷却領域において、熱循環器7の冷却用のアルミ板25で冷却されるが、加熱加圧ニップ部18を通過した直後には、加圧ベルト3の背面側にパッド部材31が圧接されている。この加熱加圧ニップ部18を通過した直後の用紙17は、110〜130[℃]程度の温度を有しており、定着ベルト2も高温であることから、用紙17に含まれる水分が蒸発して、場合によっては多くの水蒸気が発生する。その後、熱循環器7の冷却用のアルミ板25が接触する冷却領域において、定着ベルト2と共に用紙17は、下流側に移動しながら温度を下げて、70〜90[℃]程度の温度で剥離される。この冷却工程の上流側において、第2及び第3の押圧部材32、33を加圧ベルト3の裏面側から押圧することによって、図5に示すような作用・効果が得られる。
【0048】
まず、加熱加圧ニップ部18からなる加熱領域を通過した直後では、図5に示すように、パッド部材31の押圧力を104 [Pa]以上に高く設定すると、当該加熱領域の通過直後では、水蒸気圧が高く、用紙17が定着ベルト2から大きく剥離している状態で、パッド部材31によって加圧ベルト3及び定着ベルト2を強く押圧すると、パッド部材31の押圧により用紙17の歪みが蓄積されてしまい、紙しわが発生する。
【0049】
そこで、上記加熱加圧ニップ部18からなる加熱領域を通過した直後では、図5に示すように、パッド部材31の押圧力を103 [Pa]以下に低く設定することによって、パッド部材31の押圧力が弱いため、用紙17の歪みが蓄積されることがなく、紙しわが発生するのを防止することができる。
【0050】
一方、上記パッド部材31の下流側に位置する冷却領域の上流部では、第2及び第3の押圧部材32、33の押圧力を104 [Pa]以上に高く設定することにより、トナーTと用紙17の再付着が十分に行われるため、画像にグロスムラが発生するのを防止することができる。また、第2及び第3の押圧部材32、33の押圧力を103 [Pa]以下に設定した場合には、トナーTと用紙17の再付着が不十分となり、画像にグロスムラが発生する。
【0051】
さらに、上記第2及び第3の押圧部材32、33の下流側に位置する冷却領域の下流部では、トナーが冷却固化し、再付着が行われないため、当該冷却領域の下流部にのみ押圧部材を設けても、画像にグロスムラが発生するのを防止することができない。
【0052】
従って、紙しわとグロスムラを共に発生させないためには、加熱領域の通過直後は、第1の押圧部材31を弱い圧力で押圧し、冷却領域の上流部では、第2及び第3の押圧部材32、33を104 [Pa]以上の強い圧力で押圧する必要があることになる。また、冷却領域の上流部に配置される第2及び第3の押圧部材32、33は、押圧力を大きく設定することができるローラ状のものが適している。これに対して、加熱領域の通過直後に設けられる押圧部材31は、定着ローラ6のニップ部18になるべく近い部分で押圧させ、用紙17と定着ベルト2の剥離を抑制することが望ましいことから、先端が尖った形状のパッド部材を用いるのが適している。
【0053】
また、加熱領域の通過直後と冷却領域の上流部では、いずれの位置でも加圧ベルト3と定着ベルト2を押圧させる必要がある。これは、加熱領域の通過直後に配置される押圧部材31は、その後に配置される第2の押圧部材32の押圧によって発生する紙しわを防止するものであるのに対し、冷却領域の上流部では、用紙17と定着ベルト2とを密着させてグロスムラの発生を防止するものであり、役割がそれぞれ異なるためである。
【0054】
さらに、上記第1の押圧部材31、及び第2、第3の押圧部材32、33による押圧は、トナーが冷却固化しない位置で行う必要がある。そのため、定着ベルト2の温度が、未定着トナー像Tを形成するトナーのバインダー樹脂の融点よりも30℃以上低くなる位置よりも上流側、すなわちトナーが軟化している状態で、第1の押圧部材31、及び第2、第3の押圧部材32、33を押圧させる必要がある。
【0055】
また、冷却領域の上流部での押圧は、2箇所以上で行っても良い。このように、冷却領域の上流部での押圧を2箇所以上で行うことにより、トナーTと用紙17との再付着がより一層促進され、グロスムラの抑制能力を向上させることができる。ただし、グロスムラの抑制性能は、トナーの温度が高い領域で押圧する上流側のローラ32が優れており、下流側のローラ33は、その補助的な役割を担うものである。これらローラ32及びローラ33は、共に圧力を上げ過ぎると、定着ベルト2及び加圧ベルト3の駆動抵抗が大きくなり、ベルトの弛みなど別の問題が発生する可能性もあるため、下流側のローラ33の押圧力は、上流側に比べて小さくするのが望ましい。
【0056】
このように、加熱領域の通過直後に、第1の押圧部材31を設けた場合と設けなかった場合では、図6に示すように、加熱領域の通過直後に、第1の押圧部材31を設けず、しかも冷却領域の上流部に、第2及び第3の押圧部材32、33を設けないと、グロスムラや紙しわが発生してしまうことになる。また、図9に示すように、冷却領域の上流部に、第2及び第3の押圧部材32、33のみを設けると、当該冷却領域の上流部における用紙17と定着ベルト2の剥離が抑制できるため、グロスムラの発生は防止できるが、加熱領域の通過直後で紙しわが発生してしまう。
【0057】
一方、加熱領域の通過直後に、第1の押圧部材31を設けたが、冷却領域の上流部に、第2及び第3の押圧部材32、33を設けなかった場合には、図6に示すように、紙しわの発生は防止できるが、冷却領域の上流部における用紙17と定着ベルト2の剥離を防止できず、グロスムラが発生してしまう。また、加熱領域の通過直後に、第1の押圧部材31を設け、かつ冷却領域の上流部に、第2及び第3の押圧部材32、33を設けた場合には、図8に示すように、紙しわの発生及びグロスムラの発生を防止することができる。
【0058】
また、加熱領域の通過直後に設ける第1の押圧部材31の押圧力を、103 [Pa]未満に設定した場合では、図7に示すように、冷却領域の上流部における第2及び第3の押圧部材32、33の押圧力が、104 [Pa]未満であると、グロスムラが発生するとともに、紙しわが僅か発生してしまい、冷却領域の上流部における第2及び第3の押圧部材32、33の押圧力が、104 [Pa]以上であると、グロスムラ及び紙しわが発生せず良好である。
【0059】
これに対して、加熱領域の通過直後に設ける第1の押圧部材31の押圧力を、103 [Pa]以上に設定した場合では、図7に示すように、冷却領域の上流部における第2及び第3の押圧部材32、33の押圧力が、104 [Pa]未満であると、グロスムラが幾らか発生するが、紙しわの発生は抑制され、冷却領域の上流部における第2及び第3の押圧部材32、33の押圧力が、104 [Pa]以上であると、グロスムラの発生は抑制できるが、紙しわが発生してしまい、不可である。
【0060】
実施の形態2
図10はこの発明の実施の形態2を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態2では、定着ベルト及び加圧ベルトを張架するローラの構成が、前記実施の形態1と異なっている。
【0061】
すなわち、この実施の形態2では、図10に示すように、加熱ローラ6と、小径の剥離ローラ41との間に、定着ベルト2が直接張架されているとともに、加圧ローラ12と、小径の剥離ローラと42の間に、加圧ベルト3が直接張架されるように構成されている。
【0062】
また、上記定着ベルト2の裏面側には、ヒートシンク43が当接するように配置されており、加熱加圧ニップ部18の通過直後の位置に、第1の押圧部材31が配設されているとともに、当該第1の押圧部材31の下流側に、第2の押圧部材32が配設されている。なお、図10中、44は用紙17を定着装置1へ搬送する搬送ベルトを示している。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、加熱加圧ニップ部を通過した定着ベルトから用紙等の記録媒体が剥離するのを抑制し、グロスムラや記録媒体の変形、あるいは紙しわが発生するのを防止することが可能な定着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はこの発明の実施の形態1に係る定着装置を示す構成図である。
【図2】図2はこの発明の実施の形態1に係る加熱ローラと加圧ローラを示す構成図である。
【図3】図3は第1の押圧部材を示す構成図である。
【図4】図4は第2の押圧部材を示す断面図である。
【図5】図5は実験結果を示す図表である。
【図6】図6は実験結果を示す図表である。
【図7】図7は実験結果を示す図表である。
【図8】図8はこの発明の実施の形態1に係る定着装置の作用を示す説明図である。
【図9】図9は比較例の定着装置の作用を示す説明図である。
【図10】図10はこの発明の実施の形態2に係る定着装置を示す構成図である。
【図11】図11は従来の定着装置を示す構成図である。
【図12】図12は従来の定着装置を示す構成図である。
【符号の説明】
1:定着装置、2:加熱ベルト、3:加圧ベルト、6:定着ローラ、12:加圧ローラ、18:加熱加圧ニップ部、31:第1の押圧部材、32:第2の押圧部材、33:第3の押圧部材。
【発明が属する技術分野】
この発明は、電子写真方式を適用した複写機、プリンタ、ファクシミリあるいはこれらの複合機等の画像形成装置に用いられる定着装置に関するものである。
【0002】
【特許文献1】特開平2−72376号公報
【0003】
【従来の技術】
従来、上記電子写真方式を適用した複写機、プリンタ、ファクシミリあるいはこれらの複合機等の画像形成装置に用いられる定着装置としては、種々の方式のものが提案されている。かかる定着装置としては、定着ベルトと用紙を密着させたまま搬送しつつ冷却し、非オフセット性を確保するものとして、例えば、特開平2−72376号公報に開示されているものがある。
【0004】
この特開平2−72376号公報に係る定着装置100は、図11に示すように、加熱源102を内蔵した加熱ローラ101と、加熱源104を内蔵した加圧ローラ103とを圧接させるとともに、両ローラ101、103の圧接部から上分離ローラ105までの範囲にわたって、供給ロール106から供給される定着フィルム107を搬送しつつ巻き取りロール108によって巻き取り、当該定着フィルム107の下面には、加圧ローラ103と下分離ローラ109との間に巻き付けられた搬送ベルト110を圧接させるように構成したものである。そして、この定着装置100では、加熱ローラ101と加圧ローラ103との圧接部において、用紙111上の未定着トナー像112を融点以上に加熱しながら、加熱ローラ101でトナー112と用紙111を加熱する加熱工程と、加熱工程で溶融したトナー112と定着フィルム107とを密着させながら搬送してトナー112の軟化点温度以下まで冷却させる冷却工程と、トナー112が冷却した用紙111を定着フィルム107から剥離する剥離工程とを備えるように構成されている。
【0005】
また、上記特開平2−72376号公報に係る定着装置100は、図12に示すように、加熱源102を内蔵した加熱ローラ101と、加熱源104を内蔵した加圧ローラ103とを圧接させるとともに、加熱ローラ101と小径の分離ローラ105との間に定着ベルト113を張架するとともに、加圧ローラ103と小径の分離ローラ106との間に搬送ベルト110を張架し、これら定着ベルト113と搬送ベルト110を圧接させるようにした構成をも含んでいる。そして、この定着装置100では、加熱ローラ101と加圧ローラ103との圧接部において、用紙111上の未定着トナー像112を融点以上に加熱しながら、加熱ローラ101でトナー像112と用紙111を加圧する加熱工程と、加熱工程で溶融したトナー像112と定着ベルト113とを密着させながら搬送してトナーの軟化点温度以下まで冷却させる冷却工程と、用紙111を剥離する剥離工程とを備えるように構成されている。
【0006】
なお、上記定着装置100では、冷却工程において、用紙111と定着ベルト113とを密着させる手段として、搬送ベルト110の裏面側から板状部材114を圧接させる方法が用いられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術の場合には、次のような問題点を有している。すなわち、上記特開平2−72376号公報に開示された定着装置の場合、用紙111は、水分や空気を含んでいるため、加熱領域において高温に加熱されると、水蒸気が発生し、この水蒸気の圧力によって、加熱ローラ101のニップ部を通過した後の用紙111と定着フィルム107や定着ベルト113とが剥離してしまうことになる。上記の如く用紙111が定着フィルム107や定着ベルト113から剥離する形態は、加熱ローラ101等による定着フィルム107や定着ベルト113の加熱温度、あるいは用紙111上のトナー像112の配置、更には定着フィルム107や定着ベルト113の剥離性など種々な要因で変化し、用紙111と定着フィルム107や定着ベルト113との間に発生する微小な剥離は、画像のグロスムラの原因となったり、大規模な剥離は、用紙111の変形や紙しわの原因となるという問題点を有していた。
【0008】
そこで、上記用紙と定着フィルムや定着ベルトとの間に発生する微小な剥離や大規模な剥離を抑制するためには、冷却工程において、用紙(トナー)と定着フィルムや定着ベルトとを互いに密着させる必要がある。
【0009】
しかし、本発明者らの実験によれば、定着フィルムや定着ベルト、あるいは搬送ベルトのテンションのみ、もしくは板状部材を当接させただけでは、押圧力が不足しており、グロスムラや用紙の変形、あるいは紙しわを防止することができないことがわかった。
【0010】
更に説明すると、上記の如く定着フィルムや定着ベルト、あるいは搬送ベルトのテンションのみ、もしくは板状部材を当接させただけでは、用紙に含まれる水分や空気によって、加熱加圧時に発生する水蒸気の圧力に打ち勝つことができず、用紙上のトナー像と定着フィルムや定着ベルトとの密着状態を維持することができないばかりか、搬送ベルトの裏面側から板状部材を圧接させた場合には、搬送ベルトと板状部材との摩擦力が大きくなり、搬送ベルトに波打ち等が発生して、用紙の歪みが押し集められ、紙しわや用紙の変形の原因となるという問題点を招来することがわかった。
【0011】
そこで、この発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、加熱加圧ニップ部を通過した定着ベルトから用紙等の記録媒体が剥離するのを抑制し、グロスムラや記録媒体の変形、あるいは紙しわが発生するのを防止することが可能な定着装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載された発明は、互いに圧接した状態で循環移動する定着ベルトと加圧ベルトとの間に、未定着トナー像を担持した記録媒体を挟持した状態で搬送しつつ、前記定着ベルト及び加圧ベルトを介して、加熱加圧手段によって加熱加圧ニップ部で記録媒体を加熱加圧した後、前記定着ベルトと加圧ベルトとの間に記録媒体を挟持したままの状態で、当該記録媒体を所定温度以下に冷却するとともに、前記記録媒体を定着ベルト及び加圧ベルトから剥離し、前記記録媒体上にトナー像を定着する定着装置において、前記加熱加圧ニップ部よりも下流の領域に、前記記録媒体を定着ベルトに押圧させる少なくとも2つ以上の押圧手段を備えたことを特徴とする定着装置である。
【0013】
また、請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の定着装置において、前記少なくとも2つ以上の押圧手段と対向する位置には、対向部材を設けたことを特徴とする定着装置である。
【0014】
さらに、請求項3に記載された発明は、請求項1に記載の定着装置において、前記少なくとも2つ以上の押圧手段は、前記定着ベルトの温度が、前記未定着トナー像を形成するトナーのバインダー樹脂の融点よりも30℃以上低くなる位置よりも上流側に配置されていることを特徴とする定着装置である。
【0015】
又、請求項4に記載された発明は、請求項1に記載の定着装置において、前記少なくとも2つ以上の押圧手段のうち、定着ベルトの移動方向の最も上流側に配置される押圧手段は、その押圧力が103 [Pa]以下に設定されていることを特徴とする定着装置である。
【0016】
更に、請求項5に記載された発明は、請求項1に記載の定着装置において、前記少なくとも2つ以上の押圧手段のうち、2番目以降の押圧手段は、その押圧力が104 [Pa]以上に設定されていることを特徴とする定着装置である。
【0017】
また、請求項6に記載された発明は、請求項1に記載の定着装置において、前記少なくとも2つ以上の押圧手段のうち、定着ベルトの移動方向の最も上流側に配置される押圧手段は、パッド形状に形成されていることを特徴とする定着装置である。
【0018】
さらに、請求項7に記載された発明は、請求項6に記載の定着装置において、前記パッド形状に形成される押圧手段の押圧面は、弾性を有する部材によって形成されていることを特徴とする定着装置である。
【0019】
又、請求項8に記載された発明は、請求項6に記載の定着装置において、前記パッド形状に形成される押圧手段の押圧面は、フッ素樹脂によって形成されていることを特徴とする定着装置である。
【0020】
更に、請求項9に記載された発明は、請求項1に記載の定着装置において、前記少なくとも2つ以上の押圧手段のうち、2番目以降の押圧手段は、ロール状に形成されていることを特徴とする定着装置である。
【0021】
また、請求項10に記載された発明は、請求項9に記載の定着装置において、前記ロール状に形成された押圧手段は、その表面が弾性を有する部材によって形成されていることを特徴とする定着装置である。
【0022】
さらに、請求項11に記載された発明は、請求項1に記載の定着装置において、前記少なくとも2つ以上の押圧手段のうち、2番目以降の押圧手段は、その上流側の押圧力が下流側の押圧力よりも大きく設定されていることを特徴とする定着装置である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
実施の形態1
図1はこの発明の実施の形態1に係る定着装置を示すものである。
【0025】
この定着装置1は、図1に示すように、定着部材としての定着ベルト2と、加圧部材としての加圧ベルト3を有している。上記定着ベルト2は、第1の加熱ローラ4、第2の加熱ローラ5、定着ローラ6、熱循環器7、及び4本のアイドラーローラ8〜11によって、循環移動可能に張架されている。また、加圧ベルト3は、加圧ローラ12と、4本のアイドラーローラ13〜16により循環移動可能に張架されている。上記定着ローラ6と加圧ローラ12は、定着ベルト2と加圧ベルト3を介して互いに圧接することにより、記録媒体17の搬送方向の入口側の端部に、加熱加圧ニップ部18を形成するように配設されている。
【0026】
また、上記定着ベルト2と加圧ベルト3は、加熱加圧ニップ部18から剥離位置19の近傍まで、互いに圧接した状態で走行し、これら定着ベルト2と加圧ベルト3の間に、未定着トナー画像Tを担持した記録媒体としての用紙17を挟持した状態で搬送しつつ、加熱加圧ニップ部18の通過後からトナー画像Tが冷却されるまでの間、用紙17と定着ベルト2が密着した状態を維持して、用紙17上に担持されたトナー画像Tを定着するように構成されている。
【0027】
上記定着ローラ6としては、例えば、図2に示すように、アルミニウムやステンレス等からなる金属製コア20の表面に、シリコンゴム等からなる弾性体層21を所定の厚さに被覆して、所定の外径(例えば、50mm)に形成したものが用いられる。この定着ローラ6の内部には、加熱源として例えば300〜350Wのハロゲンランプ22が2本配設されており、ウオームアップ時に、当該定着ローラ6の表面温度が所定の温度(例えば、140℃〜150℃程度)となるように内部から加熱される。
【0028】
また、上記加圧ローラ12としては、例えば、図2に示す定着ローラ6と同様に構成したものが用いられ、アルミニウムやステンレス等からなる金属製コア20の表面に、シリコンゴム等からなる弾性体層21を所定の厚さに被覆して、所定の外径(例えば、50mm)に形成したものが用いられる。この加圧ロール12の内部には、加熱源として例えば300〜350Wのハロゲンランプ22が2本配設されており、ウオームアップ時に、当該加圧ローラ12の表面温度が所定の温度(70℃〜80℃程度)となるように内部から加熱される。
【0029】
そして、上記定着ローラ6と加圧ローラ12は、定着ベルト2と加圧ベルト3を介して、図示しない加圧手段により、75kg〜200kgの荷重で互いに圧接するように構成されている。
【0030】
さらに、上記定着ベルト2は、上述したように、定着ローラ6と、小径の剥離ローラ10と、ウオーク制御ロール11と、第1の加熱ローラ4と、第2の加熱ローラ5と、2本のアイドラーローラ8、9からなる複数のローラにより回動可能に支持されており、図示しない駆動源によって回転駆動される定着ローラ6により、所定の高速度(例えば、350mm/sec)で回転駆動される。この定着ベルト2としては、例えば、厚さ80μmのポリイミド製の無端状フィルム上に、厚さ50μmのシリコンゴム層を被覆し、必要に応じて、シリコンゴム層の上にフッ素ゴム等からなる離型層を設けたものが用いられる。また、上記定着ベルト2は、定着ローラ6から剥離ローラ10との間において、略水平に走行するように張架されており、加熱加圧ニップ部18から剥離位置19の近傍までの間、加圧ベルト3と密着した状態で走行するようになっている。更に、上記定着ベルト2は、2本のアイドラーローラ8、9によって、定着ローラ6と加圧ローラ12とで形成される加熱加圧ニップ部18への突入角度が略水平となり、当該定着ベルト2の走行が安定するように構成されている。
【0031】
また、上記定着ベルト2は、図1に示すように、走行する間に、第1の加熱ローラ4と第2の加熱ローラ5によって、定着時、所定の高温(170℃以上:例えば、190℃)に加熱されるようになっている。上記第1の加熱ローラ4は、アルミニウム等からなる金属製コアによって形成されており、当該第1の加熱ローラ4の内部には、加熱源としてハロゲンランプ23が2本配設されており、定着時に、第1の加熱ローラ4の表面が第2の加熱ローラ5の表面温度よりも5℃程度低く加熱されるように構成されている。また、上記第2の加熱ローラ5は、アルミニウム等からなる金属製コアの表面にテフロン(登録商標)を被覆して形成されており、当該第2の加熱ローラ5の内部には、加熱源としてハロゲンランプ24が3本配設されており、定着時に、第2の加熱ローラ5の表面が所定の温度(170〜200℃:例えば、190℃)に加熱されるようになっている。
【0032】
なお、上記第2の加熱ローラ5の表面には、クリーニングウエブ等のクリーニング部材を設けるように構成しても良い。
【0033】
一方、上記加圧ベルト3は、加圧ローラ12と、小径のアイドラーローラ15と、直径が比較的大きなアイドラーローラ16と、2本の小径のアイドラーローラ13、14からなる複数のローラにより回動可能に支持されており、図示しない駆動源によって回転駆動される加圧ローラ12により、所定の高速度(例えば、350mm/sec)で回転駆動されるか、又は、定着ベルト2に従動回転するように構成されている。この加圧ベルト3としては、例えば、厚さ80μmのポリイミド製の無端状フィルム上に、厚さ50μmのシリコンゴム層を被覆し、当該シリコンゴム層の上にシリコン樹脂等からなる離型層を被覆したものが用いられている。また、上記加圧ベルト3は、ウオームアップ時に、加圧ローラ12によって、所定の温度(70〜80℃)に加熱されるようになっている。
【0034】
また、上記定着ベルト2の内面側には、定着ロール6と剥離ロール10との間に、当該定着ベルト2を強制的に冷却する熱循環器7の冷却域を構成する冷却手段としての冷却用のアルミ板25が配設されており、この冷却用のアルミ板25によって定着ベルト2及び記録用紙17の冷却、並びに記録用紙17の搬送を行う冷却・用紙搬送部が形成されている。そして、上記定着ベルト2は、剥離ロール10付近において、約70℃程度まで冷却される。
【0035】
さらに、上記熱循環器7の冷却域を構成する冷却用のアルミ板25は、複数本の側面矩形状のループを形成するヒートパイプ26を介して、アイドラーローラ11と第1の加熱ロール4との間に配設された、定着ベルト2を予熱する熱循環器7の熱戻し域を構成する予熱用のアルミ板27と、熱の授受が可能となるように接続されている。そして、上記熱循環器7では、冷却域を構成する冷却用のアルミ板25で、定着ベルト2からの熱を吸収するとともに、当該冷却用のアルミ板25が吸収した熱量を、ヒートパイプ26を介して、熱循環器7の熱戻し域を構成する予熱用のアルミ板27に伝達し、当該予熱用のアルミ板27によって定着ベルト2を予熱するように構成されている。なお、上記ヒートパイプ26の本数や性能は、適宜設定される。また、ヒートパイプ26の代わりにヒートシンクを用いても良い。なお、上記冷却用のアルミ板25と予熱用のアルミ板27のベルト接触面は、定着ベルトとの接触を良好にするため、ベルト側に向けて凸になるような曲率(例えば、曲率半径1000mm)を有している。
【0036】
ところで、この実施の形態に係る定着装置は、互いに圧接した状態で循環移動する定着ベルトと加圧ベルトとの間に、未定着トナー像を担持した記録媒体を挟持した状態で搬送しつつ、前記定着ベルト及び加圧ベルトを介して、加熱加圧手段によって加熱加圧ニップ部で記録媒体を加熱加圧した後、前記定着ベルトと加圧ベルトとの間に記録媒体を挟持したままの状態で、当該記録媒体を所定温度以下に冷却するとともに、前記記録媒体を定着ベルト及び加圧ベルトから剥離し、前記記録媒体上にトナー像を定着する定着装置において、前記加熱加圧ニップ部よりも下流の領域に、前記記録媒体を定着ベルトに押圧させる少なくとも2つ以上の押圧手段を備えるように構成されている。
【0037】
また、この実施の形態では、前記少なくとも2つ以上の押圧手段と対向する位置に、対向部材を設けるように構成されている。
【0038】
さらに、この実施の形態では、前記少なくとも2つ以上の押圧手段は、前記定着ベルトの温度が、前記未定着トナー像を形成するトナーのバインダー樹脂の融点よりも30℃以上低くなる位置よりも上流側に配置されるように構成されている。
【0039】
又、この実施の形態では、前記少なくとも2つ以上の押圧手段のうち、定着ベルトの移動方向の最も上流側に配置される押圧手段は、その押圧力が103 [Pa]以下に設定されている。
【0040】
すなわち、この実施の形態に係る定着装置1では、図1に示すように、加熱加圧ニップ部18の下流側に、第1の押圧部材31と、第2の押圧部材32と、第3の押圧部材33とが順次配置されており、これらの押圧部材31〜33に対向する位置には、定着ベルト2の背面側に押圧力を受ける対向部材として、冷却用のアルミ板25が配設されている。また、上記第1乃至第3の押圧部材31〜33は、定着ベルト2の温度が、未定着トナー像Tを形成するトナーのバインダー樹脂の融点よりも30℃以上低くなる位置よりも上流側、つまり、トナーのバインダー樹脂の融点よりも30℃以上高い位置に配置されている。
【0041】
上記第1の押圧部材31は、図1に示すように、加熱加圧ニップ部18の加熱領域を通過した直後の位置に配置されている。この第1の押圧部材31は、図3に示すように、金属又は耐熱性の合成樹脂等によって、先端部がテーパー状に薄く形成された平板状のパッド部材34からなり、このパッド部材34の表面35は、フッ素樹脂等によって形成されており、加圧ベルト3との摩擦を低減させ、摺動性を向上させるとともに、フッ素樹脂35とパッド部材34との間には、シリコンゴム等からなる弾性層36が介在されており、均一な押圧力を得ることができるように構成されている。また、上記パッド部材34は、図示しないスプリング等によって加圧ベルト3の裏面に圧接されており、当該パッド部材34の押圧力は、103 [Pa]以下に設定されている。
【0042】
また、上記第1の押圧部材31の下流側には、図1に示すように、ローラ状に形成された第2の押圧部材32と第3の押圧部材33とが配設されており、これら第2の押圧部材32と第3の押圧部材33は、加圧ベルト3に圧接した状態で従動回転されるように構成されている。上記第2の押圧部材32及び第3の押圧部材33としては、図4に示すように、ステンレス等からなる芯金37の表面に、シリコンゴム等からなる弾性層38を被覆して、外径20〜30mm程度のローラ状に形成したものが用いられる。また、上記第2の押圧部材32及び第3の押圧部材33は、定変位状態で加圧ベルト3の裏面に圧接されており、当該第2の押圧部材32及び第3の押圧部材33の押圧力は、いずれも104 [Pa]以上に設定されている。
【0043】
ところで、上記第1の押圧部材31の下流側に配設される押圧部材32、33は、グロスムラの抑制効果を向上させるため、複数設けるのが望ましいが、これら第2及び第3の押圧部材32、33は、上流側の第2の押圧部材32の押圧力が、下流側の第3の押圧部材33の押圧力よりも大きく設定されている。
【0044】
以上の構成において、この実施の形態に係る定着装置では、次のようにして、ニップ部を通過した定着ベルトから用紙等の記録媒体が剥離するのを抑制し、グロスムラや記録媒体の変形、あるいは紙しわが発生するのを防止することが可能となっている。
【0045】
すなわち、この実施の形態に係る定着装置1では、図1に示すように、ウオームアップ時に、定着ベルト2が遅い速度で回転移動しながら、定着ローラ6と加圧ローラ12によって、所定の温度(70〜100℃)に予め加熱されるようになっている。そして、この定着装置1では、定着時に、第1の加熱ローラ4及び第2の加熱ローラ5によって所定温度(170〜200℃:例えば、190℃)に加熱され、定着ローラ6と加圧ローラ12の加熱加圧ニップ部18でトナー画像Tが転写された記録用紙17を、定着ベルト2と加圧ベルト3とによって挟持した状態で、記録用紙17上のトナー像Tをトナーの融点以上に加熱・溶融し、トナー画像Tを記録用紙17上に定着する。
【0046】
更に説明すると、上記定着装置1では、図1に示すように、表面にカラートナー画像Tなどが転写・定着された記録用紙17が、定着ロール6と当該定着ロール6に定着ベルト2と加圧ベルト3を介して圧接する加圧ロール12との加熱加圧ニップ部18に、カラートナー画像Tが定着ロール6側に位置するようにして導入され、上記定着ロール6と加圧ロール12との加熱加圧ニップ部18を通過する間に、カラートナー画像Tが記録用紙17上に加熱溶融されて定着される。その際、上記記録用紙17の表面に形成されたトナー画像Tは、加熱されて軟化し、定着ベルト2の表面に密着した状態となり、当該定着ベルト2の表面が写し取られ(レプリカが形成され)、高い光沢を有する画像となる。
【0047】
その後、上記定着ベルト2は、記録用紙17と共に、冷却領域において、熱循環器7の冷却用のアルミ板25で冷却されるが、加熱加圧ニップ部18を通過した直後には、加圧ベルト3の背面側にパッド部材31が圧接されている。この加熱加圧ニップ部18を通過した直後の用紙17は、110〜130[℃]程度の温度を有しており、定着ベルト2も高温であることから、用紙17に含まれる水分が蒸発して、場合によっては多くの水蒸気が発生する。その後、熱循環器7の冷却用のアルミ板25が接触する冷却領域において、定着ベルト2と共に用紙17は、下流側に移動しながら温度を下げて、70〜90[℃]程度の温度で剥離される。この冷却工程の上流側において、第2及び第3の押圧部材32、33を加圧ベルト3の裏面側から押圧することによって、図5に示すような作用・効果が得られる。
【0048】
まず、加熱加圧ニップ部18からなる加熱領域を通過した直後では、図5に示すように、パッド部材31の押圧力を104 [Pa]以上に高く設定すると、当該加熱領域の通過直後では、水蒸気圧が高く、用紙17が定着ベルト2から大きく剥離している状態で、パッド部材31によって加圧ベルト3及び定着ベルト2を強く押圧すると、パッド部材31の押圧により用紙17の歪みが蓄積されてしまい、紙しわが発生する。
【0049】
そこで、上記加熱加圧ニップ部18からなる加熱領域を通過した直後では、図5に示すように、パッド部材31の押圧力を103 [Pa]以下に低く設定することによって、パッド部材31の押圧力が弱いため、用紙17の歪みが蓄積されることがなく、紙しわが発生するのを防止することができる。
【0050】
一方、上記パッド部材31の下流側に位置する冷却領域の上流部では、第2及び第3の押圧部材32、33の押圧力を104 [Pa]以上に高く設定することにより、トナーTと用紙17の再付着が十分に行われるため、画像にグロスムラが発生するのを防止することができる。また、第2及び第3の押圧部材32、33の押圧力を103 [Pa]以下に設定した場合には、トナーTと用紙17の再付着が不十分となり、画像にグロスムラが発生する。
【0051】
さらに、上記第2及び第3の押圧部材32、33の下流側に位置する冷却領域の下流部では、トナーが冷却固化し、再付着が行われないため、当該冷却領域の下流部にのみ押圧部材を設けても、画像にグロスムラが発生するのを防止することができない。
【0052】
従って、紙しわとグロスムラを共に発生させないためには、加熱領域の通過直後は、第1の押圧部材31を弱い圧力で押圧し、冷却領域の上流部では、第2及び第3の押圧部材32、33を104 [Pa]以上の強い圧力で押圧する必要があることになる。また、冷却領域の上流部に配置される第2及び第3の押圧部材32、33は、押圧力を大きく設定することができるローラ状のものが適している。これに対して、加熱領域の通過直後に設けられる押圧部材31は、定着ローラ6のニップ部18になるべく近い部分で押圧させ、用紙17と定着ベルト2の剥離を抑制することが望ましいことから、先端が尖った形状のパッド部材を用いるのが適している。
【0053】
また、加熱領域の通過直後と冷却領域の上流部では、いずれの位置でも加圧ベルト3と定着ベルト2を押圧させる必要がある。これは、加熱領域の通過直後に配置される押圧部材31は、その後に配置される第2の押圧部材32の押圧によって発生する紙しわを防止するものであるのに対し、冷却領域の上流部では、用紙17と定着ベルト2とを密着させてグロスムラの発生を防止するものであり、役割がそれぞれ異なるためである。
【0054】
さらに、上記第1の押圧部材31、及び第2、第3の押圧部材32、33による押圧は、トナーが冷却固化しない位置で行う必要がある。そのため、定着ベルト2の温度が、未定着トナー像Tを形成するトナーのバインダー樹脂の融点よりも30℃以上低くなる位置よりも上流側、すなわちトナーが軟化している状態で、第1の押圧部材31、及び第2、第3の押圧部材32、33を押圧させる必要がある。
【0055】
また、冷却領域の上流部での押圧は、2箇所以上で行っても良い。このように、冷却領域の上流部での押圧を2箇所以上で行うことにより、トナーTと用紙17との再付着がより一層促進され、グロスムラの抑制能力を向上させることができる。ただし、グロスムラの抑制性能は、トナーの温度が高い領域で押圧する上流側のローラ32が優れており、下流側のローラ33は、その補助的な役割を担うものである。これらローラ32及びローラ33は、共に圧力を上げ過ぎると、定着ベルト2及び加圧ベルト3の駆動抵抗が大きくなり、ベルトの弛みなど別の問題が発生する可能性もあるため、下流側のローラ33の押圧力は、上流側に比べて小さくするのが望ましい。
【0056】
このように、加熱領域の通過直後に、第1の押圧部材31を設けた場合と設けなかった場合では、図6に示すように、加熱領域の通過直後に、第1の押圧部材31を設けず、しかも冷却領域の上流部に、第2及び第3の押圧部材32、33を設けないと、グロスムラや紙しわが発生してしまうことになる。また、図9に示すように、冷却領域の上流部に、第2及び第3の押圧部材32、33のみを設けると、当該冷却領域の上流部における用紙17と定着ベルト2の剥離が抑制できるため、グロスムラの発生は防止できるが、加熱領域の通過直後で紙しわが発生してしまう。
【0057】
一方、加熱領域の通過直後に、第1の押圧部材31を設けたが、冷却領域の上流部に、第2及び第3の押圧部材32、33を設けなかった場合には、図6に示すように、紙しわの発生は防止できるが、冷却領域の上流部における用紙17と定着ベルト2の剥離を防止できず、グロスムラが発生してしまう。また、加熱領域の通過直後に、第1の押圧部材31を設け、かつ冷却領域の上流部に、第2及び第3の押圧部材32、33を設けた場合には、図8に示すように、紙しわの発生及びグロスムラの発生を防止することができる。
【0058】
また、加熱領域の通過直後に設ける第1の押圧部材31の押圧力を、103 [Pa]未満に設定した場合では、図7に示すように、冷却領域の上流部における第2及び第3の押圧部材32、33の押圧力が、104 [Pa]未満であると、グロスムラが発生するとともに、紙しわが僅か発生してしまい、冷却領域の上流部における第2及び第3の押圧部材32、33の押圧力が、104 [Pa]以上であると、グロスムラ及び紙しわが発生せず良好である。
【0059】
これに対して、加熱領域の通過直後に設ける第1の押圧部材31の押圧力を、103 [Pa]以上に設定した場合では、図7に示すように、冷却領域の上流部における第2及び第3の押圧部材32、33の押圧力が、104 [Pa]未満であると、グロスムラが幾らか発生するが、紙しわの発生は抑制され、冷却領域の上流部における第2及び第3の押圧部材32、33の押圧力が、104 [Pa]以上であると、グロスムラの発生は抑制できるが、紙しわが発生してしまい、不可である。
【0060】
実施の形態2
図10はこの発明の実施の形態2を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態2では、定着ベルト及び加圧ベルトを張架するローラの構成が、前記実施の形態1と異なっている。
【0061】
すなわち、この実施の形態2では、図10に示すように、加熱ローラ6と、小径の剥離ローラ41との間に、定着ベルト2が直接張架されているとともに、加圧ローラ12と、小径の剥離ローラと42の間に、加圧ベルト3が直接張架されるように構成されている。
【0062】
また、上記定着ベルト2の裏面側には、ヒートシンク43が当接するように配置されており、加熱加圧ニップ部18の通過直後の位置に、第1の押圧部材31が配設されているとともに、当該第1の押圧部材31の下流側に、第2の押圧部材32が配設されている。なお、図10中、44は用紙17を定着装置1へ搬送する搬送ベルトを示している。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、加熱加圧ニップ部を通過した定着ベルトから用紙等の記録媒体が剥離するのを抑制し、グロスムラや記録媒体の変形、あるいは紙しわが発生するのを防止することが可能な定着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はこの発明の実施の形態1に係る定着装置を示す構成図である。
【図2】図2はこの発明の実施の形態1に係る加熱ローラと加圧ローラを示す構成図である。
【図3】図3は第1の押圧部材を示す構成図である。
【図4】図4は第2の押圧部材を示す断面図である。
【図5】図5は実験結果を示す図表である。
【図6】図6は実験結果を示す図表である。
【図7】図7は実験結果を示す図表である。
【図8】図8はこの発明の実施の形態1に係る定着装置の作用を示す説明図である。
【図9】図9は比較例の定着装置の作用を示す説明図である。
【図10】図10はこの発明の実施の形態2に係る定着装置を示す構成図である。
【図11】図11は従来の定着装置を示す構成図である。
【図12】図12は従来の定着装置を示す構成図である。
【符号の説明】
1:定着装置、2:加熱ベルト、3:加圧ベルト、6:定着ローラ、12:加圧ローラ、18:加熱加圧ニップ部、31:第1の押圧部材、32:第2の押圧部材、33:第3の押圧部材。
Claims (11)
- 互いに圧接した状態で循環移動する定着ベルトと加圧ベルトとの間に、未定着トナー像を担持した記録媒体を挟持した状態で搬送しつつ、前記定着ベルト及び加圧ベルトを介して、加熱加圧手段によって加熱加圧ニップ部で記録媒体を加熱加圧した後、前記定着ベルトと加圧ベルトとの間に記録媒体を挟持したままの状態で、当該記録媒体を所定温度以下に冷却するとともに、前記記録媒体を定着ベルト及び加圧ベルトから剥離し、前記記録媒体上にトナー像を定着する定着装置において、
前記加熱加圧ニップ部よりも下流の領域に、前記記録媒体を定着ベルトに押圧させる少なくとも2つ以上の押圧手段を備えたことを特徴とする定着装置。 - 請求項1に記載の定着装置において、前記少なくとも2つ以上の押圧手段と対向する位置には、対向部材を設けたことを特徴とする定着装置。
- 請求項1に記載の定着装置において、前記少なくとも2つ以上の押圧手段は、前記定着ベルトの温度が、前記未定着トナー像を形成するトナーのバインダー樹脂の融点よりも30℃以上低くなる位置よりも上流側に配置されていることを特徴とする定着装置。
- 請求項1に記載の定着装置において、前記少なくとも2つ以上の押圧手段のうち、定着ベルトの移動方向の最も上流側に配置される押圧手段は、その押圧力が103 [Pa]以下に設定されていることを特徴とする定着装置。
- 請求項1に記載の定着装置において、前記少なくとも2つ以上の押圧手段のうち、2番目以降の押圧手段は、その押圧力が104 [Pa]以上に設定されていることを特徴とする定着装置。
- 請求項1に記載の定着装置において、前記少なくとも2つ以上の押圧手段のうち、定着ベルトの移動方向の最も上流側に配置される押圧手段は、パッド形状に形成されていることを特徴とする定着装置。
- 請求項6に記載の定着装置において、前記パッド形状に形成される押圧手段の押圧面は、弾性を有する部材によって形成されていることを特徴とする定着装置。
- 請求項6に記載の定着装置において、前記パッド形状に形成される押圧手段の押圧面は、フッ素樹脂によって形成されていることを特徴とする定着装置。
- 請求項1に記載の定着装置において、前記少なくとも2つ以上の押圧手段のうち、2番目以降の押圧手段は、ロール状に形成されていることを特徴とする定着装置。
- 請求項9に記載の定着装置において、前記ロール状に形成された押圧手段は、その表面が弾性を有する部材によって形成されていることを特徴とする定着装置。
- 請求項1に記載の定着装置において、前記少なくとも2つ以上の押圧手段のうち、2番目以降の押圧手段は、その上流側の押圧力が下流側の押圧力よりも大きく設定されていることを特徴とする定着装置。
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-
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