本発明は、電子写真方式、静電記録方式等を利用するプリンタ、複写機、複合機等の画像形成装置において乾式トナーからなる画像を記録するために使用される記録用紙を加熱してその含水率を下げる記録用紙の除湿装置に関するものである。特に、記録用紙を加熱用ベルトに接触させて加熱することにより除湿する場合に、その用紙に不要な変形が発生することを抑えつつ、より良好な除湿を行うことができる除湿装置に関するものである。
電子写真方式等を採用した画像形成装置では、感光体等の像担持体に形成される静電潜像を乾式トナーにより現像してトナー像とした後、その未定着のトナー像を直接または中間転写体を介して記録用紙に転写し、最後にそのトナー像を加熱加圧して記録用紙に定着させることで画像の形成を行っている。
そして、このような画像形成時における未定着トナー像の記録用紙への転写は、コロトロン等のような非接触式の放電転写装置や、転写バイアスが印加される転写ロール等のような接触式の静電転写装置を用いて、記録用紙の収容部から給紙路を経て搬送される記録用紙に対して静電的な作用により移行させることで行われている。
また、その未定着トナー像の記録用紙への定着は、加熱ロールと加圧ロールにより形成されるロールニップ部に未定着トナー像が転写された記録用紙を導入して加熱加圧させることで定着させるロール定着方式や、加熱ロールに定着ベルトを所定の距離だけ接触させて形成されるベルトニップ部に未定着のトナー像が転写された記録用紙を導入して加熱加圧させることで定着させるベルト定着方式等を採用して行われている。
さらに、定着方式(装置)に関しては、近年、次のような新たなベルト定着方式も提案されている。すなわち、そのベルト定着方式は、複数の支持ロールに張架された状態で回転する定着ベルトと、この定着ベルトの支持ロール間の張架部分に所定の距離だけ張架部分にて接触しながら同じ方向に回転する張架状態の搬送支持ベルトを使用し、その定着ベルトと搬送支持ベルトが接触して形成されるベルトニップ部に対して未定着のトナー像が転写された記録用紙をその像担持面が定着ベルト側に接するように挟持させた状態で搬送し、その搬送途中で冷却した後に記録用紙を定着ベルトから剥離させることにより定着を行うものである。
なお、上記搬送支持ベルトの代わりに、支持ロールに支持された定着ベルトに圧接して定着ニップ部を形成する加圧ロールを設置し、その定着ニップ部に記録用紙を搬送導入して通過させ、その定着ベルトに密着させた状態で搬送する途中で冷却した後に定着ベルトから剥離するように構成したベルト定着方式も提案されている。
ところで、このような乾式トナーからなるトナー像の記録紙への静電転写や定着の工程を経て画像が形成される画像形成装置においては、記録用紙がその使用に先立って吸湿して含水率の高い状態にあると、次のような問題が発生する。
すなわち、記録用紙が吸湿することにより、記録用紙が重送される等の搬送性の悪化や、トナー像を記録用紙への静電転写時に記録用紙の抵抗値が吸湿によりばらつくことで安定した転写が行われない等の転写不良や、記録用紙に転写されたトナー像を加熱加圧して定着する際に、吸湿している記録用紙内の水分が蒸発することで紙しわになる等の定着不良などが発生してしまう。
これに対し、従来においても、たとえばその記録用紙の吸湿により発生している種々の問題を解消するための以下に示すような解決手段が提案されている。
例えば、電子写真複写機における転写材(記録用紙)の送り出し手段と転写手段との間にその転写材を加熱するための転写前加熱装置を設けることを示し、またその具体例として、主に加熱ロールと加圧ロールとの間に形成するロールニップ部に転写材を通過させるように構成した転写前加熱装置を示す提案がある(特許文献1)。
また、複写機本体内の感光体と用紙トレイとの間の搬送路に用紙除湿装置としてのヒータを設けることを示し、またその具体例として、トランスポートの搬送ベルトの内部にヒータを設置し、その搬送ベルトにより搬送される用紙を加熱して除湿するように構成した用紙除湿装置を示す提案がある(特許文献2)。
特開昭50−43936号公報
特開昭61−26060号公報
しかしながら、近年、特に電子写真方式等を採用する複写機やプリンタのような画像形成装置にあっては、その画像形成の高速化や高画質化が進むとともに、その画像形成に使用する記録用紙の種類(普通紙や塗工紙、また厚紙や薄紙など)に依存しない適性が求められており、中でもオンデマンドパブリッシングをはじめとする軽印刷分野への汎用性が求められている。
このような要請がある状況のなかで上記したような記録用紙に対する従来の除湿(加熱)装置ではいずれも、その加熱による除湿を行った場合、加熱した記録用紙がその後の画像形成(画質)に支障となるほどに変形してしまったり、あるいは、効率よく加熱することができず記録用紙の含水率を短時間で十分に下げることが難しいなどの問題がある。このように高速で十分な除湿を行うことが困難であることから、特に上記した画像形成の高速化に対応することが難しい。
具体的に説明すると、前掲の特許文献1に示される転写前加熱装置の場合には、記録用紙を加熱ロールと加圧ロールで形成される短いロールニップに通過させるだけであるため記録材の水分を蒸発させるのに充分な加熱を行うことができず、その十分な加熱を行うようにするためには加熱ロールの加熱温度を高温に設定せざるを得ない。また、上記加熱装置では、そのロールニップの下流側となる搬送路上に熱源を設置して記録用紙を加熱できるようにしているが、かかる熱源による加熱では、開放された状態で搬送される記録用紙を加熱することになるため、その加熱時に発生する水蒸気により記録用紙がでこぼこ状に変形してしまう。
また、特許文献2に示される用紙除湿装置では、記録用紙の加熱を搬送用ベルトの内部に設置したヒータで行うものであることから、その記録用紙が搬送用ベルトで搬送されて通過する際には常に記録用紙のほかに搬送用ベルトも同時に加熱する必要があり、このため記録用紙を効率よく加熱することができない。また、記録用紙が搬送用ベルト上に載せられただけの開放状態で搬送されるなかで加熱されるため、その加熱により発生する水蒸気により記録用紙がでこぼこ状に変形してしまう。
また、特許文献2に示される除湿装置は、搬送用ベルトの外周面に記録用紙を広い面積でもって接触させた状態で加熱を行うため、記録用紙を僅かな幅のロールニップに通して加熱させる前者(特許文献1)の加熱装置に比べると、その加熱時間を長く確保することができ、この結果、記録用紙を十分に加熱させて効率のよい除湿が可能になる点で有利である。
しかし、後者(特許文献2)の除湿装置のように、記録用紙を無端状のベルトに接触させて加熱することにより除湿を行おうとした場合には、記録用紙が水蒸気の発生によりベルトから浮く(離れる)現象が発生して十分に加熱されず効率のよい良好な除湿ができなくなるという不具合がある。
すなわち、本発明者らの研究によれば、記録用紙はベルトとの接触により加熱されると、用紙内に含まれる水分が蒸発し水蒸気となって発生し、そのうち大半の水蒸気がベルトと接触していない側から抜け出ることで含水率の低下に寄与しているものと考えられるが、その水蒸気の一部がベルトと接触する側にも抜け出るため記録用紙がベルトから部分的に浮いた状態になることが確認されている。そして、その浮く現象によりベルトと記録用紙の間に隙間が形成され、その隙間に介在する空気層が熱抵抗になるため、その分ベルトの熱が記録用紙に伝わりにくくなり記録用紙が十分に加熱されなくなるものと推測される。なお、この記録用紙の浮く現象は、記録用紙を加熱する温度を高めるほど、より発生しやすくなる傾向にある。また、本発明者らの研究によれば、その浮く現象は、たとえば、ベルトに接触する記録用紙を押圧ロールでベルトに押し付ける対策を施した場合でも加熱温度が高いと解消されないときがあることが確認されている。
本発明は、上述したような問題点を解決するためになされたものであり、記録用紙を無端状の加熱用ベルトに接触させて加熱させることでその紙の含水率を下げて除湿する除湿装置として、その記録用紙の変形の発生を抑えつつ、記録用紙が加熱用ベルトから浮く現象の発生も極力抑制し、もって効率のよい良好な除湿を行うことができる記録用紙の除湿装置を提供するものである。
上記課題を解決し得る本発明の記録用紙の除湿装置は、複数の支持ロールに張架されて回転する無端状の加熱用ベルトと、この加熱用ベルトを加熱する加熱手段と、この加熱手段で加熱される前記加熱用ベルトの所定区間の外周面に接触させた状態で通過させる記録用紙をそのベルト外周面に押し付ける押圧部材とを備え、前記押圧部材が、複数の支持ロールに張架されて回転し得る無端状のベルトであってそのベルト外周面の一区間を前記加熱ベルトのうち少なくとも前記所定区間の外周面に当接させた状態で回転させるものであることを特徴とするものである。
また、この除湿装置においては、前記無端状のベルトは通気性を有するものであることが好ましい。このような無端状のベルトとしては、繊維材料で構成される繊維シートを使用するとよい。
さらに、上記各除湿装置においては、前記無端状のベルトが当接する前記加熱用ベルトの内周面側に、その内周面に接する板状の対向部材を配置した構成にするとよい。
本発明の除湿装置によれば、記録用紙が、加熱手段で加熱される加熱用ベルトの所定区間の外周面に接触した状態で通過させられる。この際、記録用紙は、複数の支持ロールで支持されて回転する押圧部材としての無端状のベルトにより、加熱用ベルトの所定区間においてそのベルトに押し付けられる。これにより、記録用紙は、押圧部材としての無端状ベルトの押し付け作用により加熱用ベルトの外周面に確実に接触した状態に保たれるようになるため、記録用紙が加熱用ベルトに接触して加熱された際に発生する水蒸気によりそのベルトから浮く現象が発生しにくくなり、その所定区間において加熱用ベルトに良好に接触し続けるようになる。
したがって、記録用紙は加熱用ベルトに接触し続けて十分に加熱されるようになるため、ほとんど変形することもなく効率よく除湿される。また、このような除湿装置では、記録用紙の高速の供給搬送が要求される画像形成装置の高速化にも十分に対応することが可能となる。高速の除湿処理としては、例えば、A4用紙横送りで80枚/分以上の処理速度が得られることが好ましい。
図1は、本発明を適用した実施の形態に係る記録用紙の除湿装置1の概要を示す説明図である。図2は、この除湿装置1の上方位置から見たときの要部平面図である。
この実施の形態に係る除湿装置1は、基本的に、記録用紙Pを加熱するための無端状の加熱用ベルト2と、この加熱用ベルト2を矢印A方向に回転し得るように張架して支持する複数の支持ロール3A〜3Cと、加熱用ベルト2を加熱する加熱手段4と、記録用紙Pを加熱用ベルト2に押し付ける無端状のベルトからなる押圧部材5とを、少なくとも備えたものである。図中の矢付き一点鎖線は、記録用紙Pの搬送経路を示す。
加熱用ベルト2は、良好な耐熱性、熱伝導性および機械的強度を有する材料を無端ベルト(帯状)に形成してなるものであることが好ましい。そのベルトを構成する材料としては、アルミニウム、ステンレスなどの金属製薄膜シートや、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリイミド、ポリイミドアミド等の合成樹脂製フィルムが挙げられる。この加熱用ベルト2の厚さは、好ましくは30〜200μm、より好ましくは40〜150μm、さらに好ましくは50〜130μmである。この厚さが30μmよりも薄い場合は機械的強度が不足し耐久性に劣るものとなってしまい、反対に200μmよりも厚い場合は熱容量が高くなるため加熱装置4等により所定の温度に加熱するのに時間がかかってしまう。また、加熱用ベルト2は、その幅(ベルト幅)が、少なくとも除湿対象となる記録用紙Pの送り方向幅の最大値以上であればよい。さらに、加熱用ベルト2は、記録用紙が接触する側の面(外周面)にシリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム材料からなる表面層などを必要に応じて形成したものであってもよい。このゴム材料からなる表面層を形成した場合には、その表面層の記録用紙に対する良好な密着性が得られるようになり、記録用紙が加熱時に加熱用ベルト2から浮きにくくなる。
支持ロール3A〜3C(第1〜第3の支持ロール)は、加熱用ベルト2を張架して矢印A方向に回転させるように支持するものである。この複数の支持ロール3のうち、その1つはフィルム部材2を回転駆動させるための駆動ロールとして、その1つは加熱用ベルト2に張力を付与するテンションロールとして使用される。この例では、例えば、第2支持ロール3Bを駆動ロールとして使用するが、第1支持ロール3Aや第3支持ロール3Cを駆動ロールとして使用することも可能である。
また、支持ロール3の数は、この例のように3つ(本)に限らず、2本であっても、あるいは、4本以上であってもよい。3本以上の支持ロール3を使用する場合、その各支持ロールの配置パターンや離間距離などの条件については、それらの支持ロール3に張架する加熱用ベルト2における記録用紙Pの接触区間(E)などの構成内容に応じて適宜設定される。さらに、支持ロール3は、必要に応じて、そのロール内部やその外部に加熱源を備えた加熱ロールとして構成してもよい。例えば、記録用紙Pが加熱用ベルト2に接触を開始する位置(Q)およびその接触開始位置の直前近傍位置に設置される第1支持ロール3Aを加熱ロールとして構成すると、加熱手段4とともに記録用紙Pが接触する前の加熱用ベルト2を加熱することが可能となり有効である。
加熱手段4は、加熱用ベルト2を除湿に必要な温度に均一に加熱することができるものであれば特に制約されるものではないが、回転移動する加熱用ベルト2を記録用紙Pと接触する手前の地点で少なくともその副方向全域にわたって均一に効率よく所定の温度まで加熱することができるものを少なくとも1つ採用することが好ましい。この加熱手段4による加熱は、記録用紙Pの導入タイミングに合わせて開始されるように設定されている。つまり、記録用紙Pが接触開始位置:Qに到達する時点で、加熱用ベルト2がすでに所定の温度に加熱されているようなタイミングで加熱を開始するようになっている。また、この例では、記録用紙Pの加熱用ベルト2への接触開始位置(Q)にある第1支持ロール3Aと第3支持ロール3Cの間に設置しているが、第2支持ロール3Bと第3支持ロール3Cとの間に単独であるいは追加して設置してもよい。さらに、第1支持ロール3Aと第2支持ロール3Bと間に設置してもよい(この場合、通常は加熱用ベルト2の内周面側に設置されることになる)。加熱手段4は、加熱用ベルト2の内周面側または外周面側の一方またはその双方に設置される。また、加熱手段4は、加熱用ベルト2に接して加熱する接触方式のものであっても、あるいは加熱用ベルト2に接しないで加熱する非接触方式のものであってもよい。
この加熱手段4としては、加熱用ランプ、(電熱)ヒータなどを備えた加熱器や加熱ロールや加熱板、フラッシュランプ、電磁誘導加熱方式による加熱器などが挙げられる。また、この加熱手段4は、加熱用ベルト2を所定温度に短時間で加熱することができる観点からすると、加熱手段4による加熱用ベルト2の加熱領域を長くすることが可能な接触式の加熱板や、加熱用ベルト2を掛け回す加熱ロールが有効である。
加熱手段4として加熱ロールを使用する場合、その加熱ロールは、良好な熱伝導性を確保できる観点からニッケル、アルミニウム、ステンレスなどの金属製ロール単体や、そのような金属製ロールの表面にパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などの樹脂材料をコーティングしたロール体が使用される。加熱ロールの肉厚は、薄すぎる場合には熱容量の不足により加熱用ベルト2を十分に加熱することができなくなる問題があり、厚すぎる場合には加熱ロールを加熱するのに時間がかかったり装置の重量が重くなるなどの問題があるため、2〜20mm程度が好ましい。
加熱手段4として接触式の加熱板を使用する場合、その加熱板は、良好な熱伝導性を確保できる観点等からアルミニウム、ステンレスなどの金属材料にて形成される板部材に、ラバーヒータ等の加熱源を付設したものである。また、その加熱板は、加熱用ベルト2との密着性を高める観点から、加熱用ベルト2と接触する面を一定の曲率からなる曲面にすることが望ましい。その接触面の曲率としては、曲率半径で30〜1500mmが好ましい。その曲率半径が30mmよりも小さい場合には加熱用ベルト2を張架した時のその加熱用ベルト2の引き回しが難しくなり、反対に1500mmを超えた場合には加熱用ベルト2との密着性を十分に確保することが難しくなる。この加熱板の肉厚も、上記加熱ロールの場合と同様の理由から、2〜20mm程度が好ましい。
押圧部材5は、複数の支持ロール6a,6bに張架されて回転し得る無端状のベルトであり、そのベルトの外周面の一区間を加熱ベルト2のうち少なくとも所定区間(前記接触区間:E)の外周面に当接させた状態で矢印B方向に回転させるものである。この無端状ベルトからなる押圧部材(以下、単に「押圧用ベルト」ともいう)は、回転する加熱用ベルト2の接触区間に接触して搬送される記録用紙Pをその押圧用ベルト5と加熱用ベルト2の間で挟んだ状態に保持して加熱用ベルト2の外周面に対して広い面でもって均一かつ確実に押し付けるためのものである。押圧用ベルト5を張架した状態で支持する支持ロール6は、2つ(本)に限らず、3本以上であってもよい。押圧用ベルト5は、通常、加熱用ベルト2に接触させた状態に配置することでその加熱用ベルト2の回転に追従させて従動回転させるが、必要であれば、支持ロール6の一部を駆動ロールとして構成して回転駆動させてもよい。
押圧用ベルト5としては、良好な耐熱性および機械的強度を有する材料を無端ベルト(帯状)に形成してなるものであることが好ましいが、加熱された記録用紙Pから発生する水蒸気を押圧用ベルト5側を通過させて逃し除湿処理後の記録用紙Pにでこぼこ状等の小さな変形が発生することを確実に防止する観点からすると、通気性を有するものがより好ましい。その通気性とは、押圧用ベルト5の外周面の平滑性が大幅に損なわれず、加熱用ベルト2で加熱された記録用紙Pから発生する水蒸気を通過させることができる程度のものである。
このような通気性を有する押圧用ベルト5としては、たとえば、繊維材料で構成される繊維シートや、微細な通気孔が全面的に形成されたシートなどが使用されるが、良好な通気性が得られる観点からは繊維シートが好ましい。繊維シートとしては、耐熱性のある合成樹脂製または金属製の繊維材料をたとえば通気性を持たせるために微細な空隙が存在するように交絡させてシート状にしたものが使用できるが、特にこれに限定されない。
また、押圧用ベルト5の厚さについては特に限定されないが、50〜500μm程度が好ましい。そのベルト5の幅は、除湿対象となる記録用紙Pの送り方向の幅より広いことが必要である。また、このベルト5の幅については、記録用紙Pの送り方向の幅より広い幅に設定しさえすれば加熱用ベルト2の幅との大小関係は特に問題にならない。
押圧用ベルト5の押圧力(押し付け荷重)については、例えば、加熱用ベルト2に押圧用ベルト5を直接押し付ける支持ロール6における押圧力が5〜50N程度になるように設定する。なお、この押し付け荷重は、後述する対向部材7を設置する場合を前提にしたものであるが、かかる対向部材6を設置しない場合であっても、加熱用ベルト2に通常20〜80N程度の張力を付与するため、その対向部材7が設置される場合の押し付け荷重と比べてもそれほど大差はないものになる。
上記接触開始位置(Q)に設置される支持ロール6Aの設置位置は、前記接触区間Eの開始位置によって決定される。たとえば図1に例示するような接触開始位置Q1から始まる接触区間E1とする場合には、加熱用ベルト2の第一支持ロール3Aと対向する位置となり、また接触開始位置Q2から始まる接触区間E2の構成の場合には、図中に符号6Cとして示す支持ロールのように第一支持ロール3Aよりもベルト5の回転方向B下流側にずれた位置となる。支持ロール6のロール形態は、特に限定されるものではない。
また、この除湿装置1においては、図1に二点鎖線で示すかまたは図3に示すように、加熱用ベルト2の前記接触区間Eに含まれる内周面部分に当接してそのベルト2(の走行状態)を支持する板状の対向部材7を設置するとよい。この対向部材7は、少なくとも前記押圧用ベルト5が当接する加熱用ベルト2の範囲に該当する内周面部分に接するように設けることが望ましい。このような板状の対向部材7を設置した場合は、押圧用ベルト5がその対向部材7により広い面でもって支持された加熱用ベルト2に的確に圧接した状態となって押圧用ベルト5による押圧効果が有効に発揮されるようになり、その結果、記録用紙が加熱用ベルト2に対してより確実に密着して十分に加熱されるようになる。
この板状の対向部材7としては、ニッケル、アルミニウム、ステンレスなどの金属材料にて形成される板状部材が使用できる。この対向部材7は、少なくとも加熱用ベルト2の内周面に当接させる側が平滑な面に形成されているものである。
また、対向部材7は、加熱用ベルト2との密着性を高める観点から、加熱用ベルト2の内周面に当接させる当接面を加熱用ベルト2の回転方向Aに沿って一定の曲率からなる曲面(6a)にすることが望ましい(図3参照)。その当接面の曲率としては、曲率半径で100〜1500mmが好ましい。その曲率半径が100mmよりも小さい場合には加熱用ベルト2との接触幅(加熱用ベルト2の回転方向Aに沿う長さ)を十分に確保することが難しく、また、加熱用ベルト2もその曲率で湾曲した状態となるため、かかる加熱用ベルト2への記録用紙Pの密着性も劣ることになる。反対に1500mmを超えた場合には、その接触面の湾曲度合いが小さくなって加熱用ベルト2との密着性を十分に確保することが難しくなる。この対向板の肉厚も、上記加熱ロール(4)の場合とほぼ同様の理由から2〜20mm程度が好ましい。
さらに、対向部材7には、その部材を加熱するための加熱手段を設置することが好ましい。この加熱手段を設置することにより、加熱用ベルト2の記録用紙Pとの接触により熱が奪われて温度が低下することを防止することができる。この場合には、加熱用ベルト2の内周面に接する対向部材7自体も加熱されるため、記録用紙との接触により熱が奪われて温度が低下する加熱用ベルト2を対向部材7が加熱することとなる。この結果、加熱用ベルトの温度が低下するおそれが少なくなり、記録用紙の加熱も安定して行われるようになる。
そして、この除湿装置1においては、図1に示すように、たとえばその第1支持ロール3Aと第2支持ロール3Bとの間で張架されている加熱用ベルト2の領域が記録用紙Pの接触区間(E1)として形成されている。すなわち、除湿対象の記録用紙Pは、第1支持ロール3Aで支持されている加熱用ベルト2の部分(接触開始位置:Q1)から接触し始め、第2支持ロール3Bに支持されている加熱用ベルト2の部分(剥離位置:H)で剥離されるようになっている。
接触区間:E(E1,E2)の長さ(加熱用ベルト2の回転方向Aに沿う長さ)については、加熱用ベルト2の加熱設定温度やその回転速度の設定条件において、記録用紙Pを加熱してその含水率を確実に低下させることができる観点などから適宜変更することが可能である。
この例では、第1支持ロール3Aと第2支持ロール3Bとの離間距離を増減したり、あるいは押圧用ベルト5の支持ロール6の離間距離を増減することで変更することができる。また、接触区間E2のように設置する場合には、図1の二点鎖線で示すように、第一支持ロール3Aから少しずれた位置において押圧用ベルト5が加熱用ベルト2に接する部位(ニップ部)から記録用紙Pが加熱用ベルト2に接触を開始するように支持ロール6Aの設置位置を変更することで対応することが可能である。この場合は、その押圧用ベルト5が接する加熱用ベルト2のニップ部が接触開始位置:Qとなる。さらに、板状の対向部材7を設ける場合には、図3に例示するように、その対向部材7により加熱用ベルト2をその内周面側から持ち上げるように支持し、その対向部材7と接触する区間を接触区間:E2とするように構成することも可能である。図3中の符号7aは、対向部材における加熱用ベルト2に対する当接面を示す。
このような除湿装置1では、次のようにして記録用紙Pの除湿が行われる。
まず、その除湿を行うべき時期が到来すると、無端ベルト状の加熱用ベルト2が矢印A方向に所定の速度で回転するとともに、加熱用ベルト2が加熱手段4により所定の温度まで加熱される。加熱用ベルト2の回転に従って押圧用ベルト5が従動回転する。加熱用ベルト2の回転速度は、要求される除湿処理速度に応じて適宜設定される。また、加熱用ベルト2を加熱する所定の温度は、例えば150〜190℃程度である。
次いで、記録用紙Pが、加熱用ベルト2と押圧用ベルト5とが当接してニップ部を形成し始める部位(ニップ部の入り口)に相当する接触開始位置Qに向けて搬送導入され、加熱用ベルト2と押圧用ベルト5の間に挟持された状態で搬送されるとともに、押圧用ベルト5により押し付けられながら加熱用ベルト2に接触させられる、これにより記録用紙Pは加熱用ベルト2によって加熱され始める。
この際、加熱用ベルト2による記録用紙Pの加熱は、加熱用ベルト2が記録用紙Pとの接触前に予め加熱手段4によって所定の温度まで加熱されているため、その加熱用ベルト2が既に有している十分な熱が記録用紙Pにその接触と同時にすぐに伝わることで行われる。また、この記録用紙Pとの接触により熱を奪われたフィルム部材領域は、その後、加熱手段4を通過する際に再度、所定の温度まで加熱される。さらに、加熱手段を有する対向部材7を設けた場合には、その対向部材7によっても加熱用ベルト2が加熱されるため、加熱用ベルト2が記録用紙Pとの接触により熱が奪われても加熱補完(保温)されるためその温度の低下割合が少なくなる。
また、記録用紙Pは、接触区間Eにおいて押圧用ベルト5により加熱用ベルト2の外周面に押し付けられて良好に密着した状態で搬送される。これにより、加熱状態にある加熱用ベルト2に接触して加熱され始めた記録用紙Pからは、その内部に含まれる水分が水蒸気となって発生し、特に加熱用ベルト2との間にも発生する水蒸気により記録用紙Pが所々で加熱用ベルト2から浮いた状態になりやすいが、その記録用紙Pは押圧用ベルト5による押し付け作用により加熱用ベルト2の外周面部分に押し付けられた状態に保たれるため、浮きにくくなる。この結果、記録用紙Pが加熱用ベルト2から浮くことで加熱不良となることが抑制されるようになる。このとき発生する水蒸気は、加圧用ベルト5が通気性に乏しい特性のものである場合には、加熱用ベルト2と押圧用ベルト5との記録用紙Pが存在しない間を通して放出される。この点、加圧用ベルト5が通気性を有するものである場合には、図4に例示するように、その水蒸気(点線矢印S)はそのベルト5を通して効率よく放出される。
そして、その記録用紙Pは、加熱用ベルト2の回転に伴って加圧用ベルト5に押し付けられつつその回転方向A(B)に送られ、その接触区間Eが終り、加熱用ベルト2からの剥離位置Hに到達したときに、加熱用ベルト2と加圧用ベルト5とのニップ空間から抜け出すとともに加熱用ベルト2から剥離されて排出される。この結果、記録用紙Pは効率よく十分に加熱される、その含水率が低下して除湿される。
また、このような除湿装置1は、通常、前述した電子写真方式、静電記録方式等を採用する画像形成装置における記録用紙Pの収容部(画像形成装置内の用紙収容部や画像形成装置に外付けされる用紙収容部など)とその記録用紙Pにトナー像を転写する転写部との間に設置して使用されるが、必要に応じて、画像形成装置とは独立して単独の除湿装置1として構成して使用してもよい。
さらに、この除湿装置1は、定着装置として、前記した新たなベルト定着装置(定着ベルトと搬送支持ベルトまたは加圧ロールとでベルトニップ部または定着ニップ部を形成し、記録用紙をそのいずれかのニップ部に通して定着ベルトに密着させたままで搬送する途上で冷却してから剥離する方式)を採用する画像形成装置に適用すると有効である。それは、主に上記ベルト定着方式を採用する定着装置では、その定着時に記録用紙から水蒸気が発生することでブリスター現象が起こるため、その定着物の光沢度が低下してしまう問題があるが、その除湿装置1で除湿した後の記録用紙を使用して定着を行うことになれば、上記ブリスター現象が発生することひいては光沢度の低下が起こることを抑制または防止できるようになるからである。
なお、この除湿装置に適用する記録用紙Pは、前述した乾式トナーによる画像が転写および定着等の工程を経て形成するために使用される記録媒体であり、そのような画像形成を行うための画像形成装置に使用することが可能なものである。具体的には、普通紙に限らず、吸湿して前述したような不具合を引き起こす可能性があるものすべてが含まれる。例えば、樹脂層を塗工した塗工紙(コート紙)等も含まれる。また、その普通紙、コート紙等にあっては、その薄め(65gsm程度)のものから厚め(256gsm程度)のものまで幅広く適用することができる。
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
図5は、本発明の実施例に係る記録用紙の除湿装置10を示す説明図である。図6は、この除湿装置10の上方位置から見たときの要部平面図である。
この除湿装置10は、記録用紙Pを加熱するための無端状フィルムベルト20と、このフィルムベルト20を矢印A方向に回転し得るように張架して支持する3つの支持ロール31〜33と、フィルムベルト20を加熱する加熱板40と、3本の押圧ロール51、52、53に張架されて回転可能に支持され、記録用紙Pをフィルムベルト20に押し付けるための押圧用ベルト50と、対向板60とを少なくとも備えたものである。
フィルムベルト20としては、ポリイミド(日東電工社製)を厚さ75μm、幅360mm、周長1300mmの無端ベルト状に成形したフィルムを使用した。
3つの支持ロール31〜33は、その互いの軸心を直線で結んだ形状がほぼ逆三角形になるような状態で配置した。すなわち、2つの支持ロール31、32を水平方向に間を開けて配置するとともに、残り1つの支持ロール33を2つの支持ロール31、32の中間位置から下方側にずれた位置に配置しており、その支持ロール31、33どうしの軸心間距離が530mm程度となり、支持ロール31、33どうしおよび支持ロール32、33どうしの軸心間距離がいずれも310mm程度となるように設置している。また、支持ロール33を図示しない回転駆動源の動力にて駆動する駆動ロールとして構成し、支持ロール32をテンション用ロールとして構成している。支持ロール32により付与する張力は8kgf(=80N)とした。さらに、支持ロール31は、フィルムベルト20を加熱する加熱ロールとして構成している。
加熱板40は、加熱ロールとしての支持ロール31と駆動ロールとしての支持ロール33との間に張架されたフィルムベルト20の内周面に接触した状態で設けられてフィルムベルト20を加熱するものである。この加熱板30は、幅400mm、全長400mm、厚さ3mmの寸法からなるアルミニウム製の板を本体とし、そのアルミニウム板のフィルムベルト20との接触面30aを曲率半径が900mmの曲面に成形しているとともに、この接触面20aの反対側になる裏面にアルミニウム板を所定の温度まで加熱するためのラバーヒータ41を取り付けている。
また、加熱ロールとしての支持ロール31は、φ45mm、肉厚3mm、長さ400mmの寸法からなるアルミニウム製の中空ロールを本体とし、その中空内部に中空ロールを所定の温度まで加熱するための加熱ランプ35を設置している。この他、支持ロール32は、φ45mm、肉厚3mm、長さ400mmの寸法からなるアルミニウム製の中空ロールである。また、駆動ロールとして使用する支持ロール33は、φ45mm、肉厚3mm、長さ400mmの寸法からなるアルミニウム製の中空ロールに、ポリウレタンからなる厚さ25μの弾性層を形成したものである。
押圧用ベルト50としては、アクリル繊維を焼成炭化させてシート状に結着させた繊維シート(旭化成社製:ラスタンTOP4001Sライト)を、厚さ400μm、幅360mm、周長800mmの無端ベルト状に成形したものを使用した。このベルト50は、良好な通気性を有するうえに、優れた耐熱性や断熱性を有するものである。
この押圧用ベルト50は、各軸心を直線で結んだ形状がほぼ三角形になるような状態で回転可能に配置した前記3本の支持ロール51〜53に張架した。支持ロール51〜53は、2つの支持ロール51、52を水平方向に間を開けて配置するとともに、残り1つの支持ロール53を2つの支持ロール31、32のほぼ中間位置から上方側にずれた位置に配置した。また、2つの支持ロール51、52については加熱用ベルト20における記録用紙Pの接触区間Eの前後端部(Q,H)に対応させる位置に配置し、これにより当該支持ロール51,52で支持されている区間の加圧用ベルト50の外周面を加熱用ベルト20の接触区間Eの外周面に当接させた状態にしている。接触区間Eの基本的な長さ(ベルト2の回転方向の長さ)については、押圧用ベルト50に対する2つの支持ロール51、52どうしの軸心間距離とほぼ等しい寸法に設定している。
支持ロール51〜52はいずれも、外径がφ8mmのアルミニウムのロールに厚さ mmのシリコーンゴム(JIS−A 30Hs)からなるゴム層を形成したゴムロール(金陽社製)を使用した。支持ロール53は、φ10mmのアルミニウム製のロールを使用した。支持ロール51については、対向板60の先端部位置と同様に、フィルムベルト20の支持ロール31の最上部からフィルムベルト20の回転方向Aの下流側に10mmだけ離れた位置に配置している。また、支持ロール51、52はいずれも、押し付け荷重が3kgf(約30N)となるようにフィルムベルト20(対向板60)にむけて圧接されている。
対向板60は、加熱ロールとしての支持ロール31とテンションロールとしての支持ロール32との間に張架されたフィルムベルト20の内周面に接触するとともにそのベルト部分を少し上方側に持ち上げるような状態で設けられるものである。この対向板60は、前記加熱板40とほぼ同様に、幅400mm、全長525mm、厚さ3mmの寸法からなるアルミニウム製の板を本体とし、そのアルミニウム板のフィルムベルト20との接触面20aを曲率半径が900mmの曲面に成形しているとともに、この接触面20aの反対側になる裏面にアルミニウム板を所定の温度まで加熱するためのラバーヒータ61を取り付けている。また、対向板60は、その先端部が支持ロール31の最上部からベルト回転方向下流側に10mmだけ離れた地点に位置する状態で設置されている。
そして、この除湿装置10では、押圧用ベルト50のフィルムベルト20とのニップ部(この例では対向板60の先端部位置でもある)を記録用紙Pの接触開始位置:Qと設定する一方、押圧用ベルト50がフィルムベルト20から離れる位置(この例では対向板60の後端部位置でもある)、厳密にはフィルムベルト20の対向板60の後端部から回転方向下流側に5mmだけ離れた位置を記録用紙Pのフィルムベルト20からの剥離位置Hに設定している。これにより、その接触開始点:Qから剥離位置:Hまでのフィルムベルト20部分をベルト20の記録用紙Pとの接触区間:Eとしている。また、その除湿に際しては、フィルムベルト20を所定の速度で矢印A方向に回転させるとともに、加熱板40と加熱ロール31とによりフィルムベルト20を接触区間Eに達する前に所定の温度まで加熱するように設定されている。
この本実施例の除湿装置10では、まず記録用紙Pが、図4に一点鎖線で示すように接触開始位置:Qの押圧用ベルト50とフィルムベルト20との間のニップ部に導入される。これにより、記録用紙Pは、所定の温度まで既に加熱されて回転するフィルムベルト20に押圧用ベルト50にて押し付けられつつ加熱されるとともに、フィルムベルト20と押圧用ベルト50に挟まれた状態で搬送される。次いで、記録用紙Pは、フィルムベルト20の剥離位置:Hに到達した時点でベルト20から剥離される。この結果、記録用紙Pは、押圧用ベルト50によりフィルムベルト20に押し付けられながら、そのベルト20によって十分にかつ効率よく加熱され、もってその含水率が下げられて除湿される。
以下、この除湿装置10を用いて次のような各試験を行った。
<試験1>
試験1は、除湿装置10におけるフィルムベルト20の接触区間Eにおける表面温度の状況について調べた。このときの試験条件については、加熱板40と加熱ロール31の加熱温度をいずれも170℃とし、対向板60の加熱温度を170とした。また、フィルムベルト20を351mm/secの速度で回転させた。フィルムベルトの表面温度の測定は、フィルムベルト20の接触開始位置:Qから剥離位置:Hまでの接触区間:Eにおける各接触時間(接触開始位置を0秒としたときの移動時間)に相当する位置でのベルト表面の温度を赤外放射温度計で計測した。この試験結果を図7に示す。
また、試験1では、除湿装置に実際に記録用紙を導入し、フィルムベルト20に接触している間における記録用紙の表面温度の状況について調べた。試験条件等については試験1と同じ内容に設定した。記録用紙Pとしては、A4版サイズの両面コート紙(王子製紙社製:OKトップコート紙、坪量127.9g/m2)を使用した。これを横送り(長辺部を送り先端部として送る形態)で接触開始位置Qに導入した。また、記録用紙の表面温度の測定は、赤外放射温度計を用いてフィルムベルト20の表面温度測定の場合と同様にして測定作業を行った。ちなみに、この記録用紙Pの除湿に必要な加熱温度(所定の温度)は加熱時間等によっても異なるが、たとえば110℃程度である。
さらに比較例として、上記除湿装置において、押圧用ベルト50に代えて、そのベルトの支持ロール51、52を押圧ロールとして使用し、その1つの押圧ロール51をそのまま対向板60の先端部と対向するフィルムベルト20の外周面の位置に同様に配置し、もう1つの押圧ロール52を1本めの押圧ロール51の設置位置から回転方向下流側に80mmだけ離れた位置に配置した点のみを異ならせた除湿装置を用意し、同様の試験を行った。このときの双方の試験結果を図7に併せて示す。
図7に示す結果から明らかなように、この実施例に係る除湿装置10では、フィルムベルト20が接触開始位置:Qに達する前に加熱板40および加熱ロール31によって予め加熱されているため、その接触開始位置に到達した時点において既に設定加熱温度(170℃)に保たれている。これにより、その加熱されたフィルムベルト20に接する記録用紙Pを直ちに所定の温度で加熱し始めることができることがわかる。なお、比較例の除湿装置におけるベルトの表面温度についても温度測定したところ、ほぼ同じ170℃に加熱されていることが確認されている。
また、この除湿装置10では、対向板60も加熱板40等と同じ温度で加熱されているため、フィルムベルト20が対向板60に接触して通過することによっても、その表面温度が低下せずにほぼ同じ温度に保たれるようになる。これにより、記録用紙Pが接触区間E(厳密には対向板60が存在する領域)では常に所定の温度で安定して加熱されるようになる。ちなみに、この除湿装置において対向板60に加熱手段を設置しない(取り外した)場合には、フィルムベルト20の表面温度は、接触開始位置:Qを通過して非加熱状態の対向板60に接触して通過するにつれてベルト側の熱が対向板60に奪われて次第にある程度の温度(120〜125℃程度)まで低下してしまうことが確認されている。
そして、図7に示す結果から明らかなように、実施例の除湿装置10では用紙を最大で約160℃の表面温度まで加熱することが可能であり、しかも、用紙の表面温度を120℃に加熱するまでの所要時間が約0.15秒(sec)という短い時間で済むことが確認された。これに対し、比較例の除湿装置10では用紙を最大で約120℃まで加熱することが限界であり、しかも、用紙の表面温度を120℃に加熱するまでの所要時間が約0.5秒という時間を要することが確認された。これにより、実施例の除湿装置では記録用紙を効率よく十分に加熱できることがわかる。
<試験2>
試験2は、上記実施例の除湿装置および比較例の除湿装置により実際に記録用紙の除湿をそれぞれ行い、そのときの除湿性能について調べた。除湿性能としては、初期の含水率が4.5%の上記用紙(両面コート紙)をその含水率が3.0%までに下げるために要する時間を測定することで調べた。含水率は、各除湿装置を通されて排出される記録用紙に対して紙水分計(インフラレッド・エンジニアリング社製:モイストレックス)を用いて測定した。また、上記判定基準の含水率に要する時間は、接触区間Eについて支持ロール52などの位置を図7にプロットした各加熱時間に相当する時間が得られるようにそれぞれ変更したうえで、その各加熱時間により除湿を行った後に得られる各記録用紙の含水率を測定することで調べた。
この結果、含水率が3.0%になるまで除湿するのに、比較例の除湿装置では加熱板40等の加熱温度を前記したとおり170℃に設定した場合において1.0秒の時間を要したのに対し、実施例の除湿装置では当該加熱温度を170℃に設定した場合に0.2秒の時間で済み、当該加熱温度を130℃に設置した場合に1.0秒の時間で済むことが確認された。これにより、実施例の除湿装置では、短時間で除湿することができることがわかる。ちなみに、この除湿を行った後の記録用紙については、でこぼこ状の変形がほとんど発生していなかった。
実施形態に係る除湿装置の概要を示す要部説明図である。
図1の除湿装置を上方側から見たときの状態を示す概略平面図である。
図1の除湿装置に対向部材を設置した場合の状態を示す要部説明図である。
加熱時に記録用紙から発生する水蒸気の放出状態を示す断面説明図である。
実施例に係る除湿装置を示す要部説明図である。
図5の除湿装置を上方側から見たときの状態を示す概略平面図である。
試験1の結果を示すグラフである。
符号の説明
1,10…除湿装置、2…加熱用ベルト、3A,3B,3C,31〜33,6,51〜53…支持ロール、4…加熱手段、5…無端状のベルトからなる押圧部材、7…板状の対向部材、20…フィルムベルト(加熱用ベルト)、31…加熱ロール(加熱手段)を兼ねた支持ロール、40…加熱板(加熱手段)、50…押圧用ベルト、60…対向板、P…記録用紙、E…接触区間(所定区間)。