JP2005010671A - 定着装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】定着加圧部を通過した後の定着ベルトと記録用紙との間における剥離ブリスターの発生を防止でき、かかる剥離ブリスターに起因した光沢ムラ等の定着不良や紙しわの発生も防止することができる定着装置を提供する。
【解決手段】定着ベルト(10)および支持ベルト(35)を、加圧回転体(30,31)の定着加圧部(N)からその回転方向上流側となる位置でその各ベルトの外周面どうしが対面した状態となるように各ベルトの内周面からロール(50、51)でそれぞれ支持し、その両ベルトが対面し始める部位(Q)から定着対象のトナー像(T)を担持する記録用紙(P)を導き入れるように構成した。この際、定着ベルトは加熱手段(20、21)により少なくとも100℃以上の温度に加熱する。
【選択図】 図1
【解決手段】定着ベルト(10)および支持ベルト(35)を、加圧回転体(30,31)の定着加圧部(N)からその回転方向上流側となる位置でその各ベルトの外周面どうしが対面した状態となるように各ベルトの内周面からロール(50、51)でそれぞれ支持し、その両ベルトが対面し始める部位(Q)から定着対象のトナー像(T)を担持する記録用紙(P)を導き入れるように構成した。この際、定着ベルトは加熱手段(20、21)により少なくとも100℃以上の温度に加熱する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、定着対象のトナー像を担持する記録用紙を、加熱されて回転する無端状の定着ベルトに圧接させて密着させたままの状態で搬送した後に剥離するタイプの定着装置に係り、特に、定着時に記録用紙から水蒸気が発生して定着ベルトとの間に介在することに起因した定着不良や紙しわの発生を防止することが可能な定着装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真方式、静電記録方式等を利用してトナー(現像工程に使用される着色粉体)からなる画像を最終的に記録用紙に形成するプリンタ、複写機、複合機等の画像形成装置において、そのトナー像を記録用紙に定着させるために使用される定着装置として、以下に示すように、加熱されて一定の方向に回転する無端状の定着ベルトの外周面に定着対象のトナー像を担持する記録用紙を圧接させて定着を行うタイプのものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、このタイプの定着装置は、まず、その定着ベルトを加熱ロールを含む複数のロールに張架して一定の方向に回転させる一方で、その加熱ロールにより加熱された定着ベルトに加圧ロールや加圧ベルトを押し当てるように配置して定着(加熱)加圧部を形成したものである。しかも、このタイプの定着装置は、定着対象のトナー像を担持する記録用紙を、その定着加圧部に導き入れて通過させるとともにその通過後も定着ベルトの外周面に密着させた状態で所定の距離だけ搬送してトナー像を冷却させてから剥離するように構成されている。
【0004】
そして、このタイプの定着装置によれば、記録用紙上のトナー像が定着ベルトの平滑面にそって固化することになるため、そのトナー像の表面も平滑なものとなって光沢感に優れた定着画像が得られるという利点がある。また、トナーが冷却固化されることにより、そのトナーの凝集力がトナーと定着ベルト間の接着力よりも大きくなった状態で定着ベルトから剥離されることになるため、トナーが定着ベルトに残留付着してしまういわゆるホットオフセットの現象も発生しにくくなるという利点もある。
【0005】
ところが、このような定着装置においては、記録用紙に含まれる水分が定着時の加熱により気化膨張して用紙の外部に抜けて定着ベルトとの間に水蒸気として溜まり、その水蒸気の蒸気圧の作用を受けて記録用紙が定着ベルトから剥離することがあり(以下、この現象を「剥離ブリスター」と呼ぶ)、この現象によりトナー像が冷却固化する前に定着ベルトから剥離してしまうと、次のような定着不良の1種でもある光沢の低下や光沢むらが発生する。また、特に上記定着加圧部を通過した後に記録用紙を定着ベルト側に押し付けるように保持する部材が存在する場合には、次にような紙しわが発生する。
【0006】
つまり、剥離ブリスターにより定着ベルトから剥離したトナー像部分は、そのベルトの平滑面にならって固化せずトナー像表面が本来もつ凹凸感が残ることとなり、この結果、かかる剥離が起こらないトナー像部分に比べると、その光沢感が低下したものとなったり、あるいは、その剥離したトナー像部分がトナー像全体の一部である場合に光沢感が異なる部分が混在するという光沢むらになる。また、剥離ブリスターにより定着ベルトから剥離して浮いた記録用紙部分は、その浮いた状態の用紙部分が寄せ集められて前記したような保持部材を通過する際に座屈して折れ曲がってしわとなる。
【0007】
なお、上記タイプの定着装置とは異なるタイプ(定着対象のトナー像を担持する記録用紙を定着加圧部の通過直後に剥離させるタイプ)の定着装置ではあるものの、次のような構成からなる定着装置が提示されている。
【0008】
その1つは、加熱ローラと従動ローラとの間に張架された無端状の定着ベルトと、その従動ローラに対向して設けた加圧ローラとを備えた定着装置であって、その従動ローラに支持された定着ベルトと加圧ローラの間に形成される定着ニップ部の入口の上流側に定着ベルトに圧接する補助ロールを設けたものである(特許文献2)。
【0009】
もう1つは、第1定着ローラと発熱ローラとの間に張架されたベルト部材と、その第1定着ローラとの間でニップ部を形成する第2定着ローラとを備えた定着装置であり、そのベルト部材の内側より当接してそのベルト部材を加熱する面状の発熱体を設け、そのベルト部材に転写材を静電的に密着させて予備加熱を行うとともに、そのニップ部にて記録用紙上のトナー像を定着するようにしたものである(特許文献3)。
【0010】
しかしながら、これら従来の定着装置は、そのいずれも定着ニップ部等を通過した直後に記録用紙を剥離させるものであって、記録用紙を定着ベルトの外周面に圧接させる定着加圧部を通過させた後もそのベルト外周面に密着させた状態で搬送するものではないため、前述したような剥離ブリスターが発生することがなく、この結果、その剥離ブリスターに起因した光沢ムラ等の定着不良や紙しわが発生することもない。
【0011】
また、上記従来の定着装置は、その定着ニップ部の上流側で補助ローラまたは面状加熱体を配置したベルト部分においてトナーと記録用紙を予備加熱するものであるが、その予備加熱の目的が、定着温度を低くすることを可能にしてホットオフセットの発生を防止するようにしたり、あるいは、ベルト部材のウォーミングアップ時間の短縮化や連続プリント時のベルト温度の安定化または均一化を図ることにあり、前記剥離ブリスターの発生に着目してその発生を防止することを目的にはしていない。さらに、記録用紙を定着ベルトに強固に圧接させるものではないため、その用紙と高温の定着ベルトとの密着性を十分に得ることができない。特に記録用紙としてコート紙(塗工紙)を用いる場合には、定着ベルトとの間に水蒸気が発生することによって密着性が阻害され、その塗工紙を十分に加熱するに至らない。
【0012】
【特許文献1】特開平5−72926号公報(請求項1、図1など)
【特許文献2】特開平9−281822号公報(請求項1、図1など)
【特許文献3】特開2001−166617号公報(請求項1、図3など)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述したような問題点を解消するためになされたものであり、その主な目的とするところは、定着加圧部を通過した後の定着ベルトと記録用紙との間における剥離ブリスターの発生を防止することができ、かかる剥離ブリスターに起因した光沢ムラ等の定着不良や紙しわの発生も防止することができる定着装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の定着装置は、複数のロールに張架されて一定の方向に回転する無端状の定着ベルトと、この定着ベルトを加熱する加熱手段と、この加熱手段で加熱された定着ベルトをその外周面および内周面の両側から加圧した状態で挟んでそのベルト外周面との間に定着対象のトナー像を担持する記録用紙を導き入れて加圧するための定着加圧部を形成するように対向配置される加圧回転体と、この加圧回転体による定着加圧部を通過した後も前記記録用紙を定着ベルトの外周面に密着させた状態で所定の距離だけ搬送してから剥離する剥離手段と、前記加圧回転体のうち前記定着ベルトの外周面側に配置される加圧回転体と他のロールに張架されて前記定着加圧部を通過した後の記録用紙を定着ベルトの外周面に密着させた状態で保持して搬送するように回転する無端状の支持ベルトとを備えた定着装置において、
前記定着ベルトおよび支持ベルトを、前記加圧回転体の定着加圧部からその回転方向上流側となる位置でその各ベルトの外周面どうしが対面した状態となるように各ベルトの内周面からロールでそれぞれ支持し、その両ベルトが対面し始める部位から前記定着対象のトナー像を担持する記録用紙を導き入れることを特徴とするものである。
【0015】
ここで、上記定着ベルトおよび支持ベルトをその内周面から支持するロールは、その各ベルトを張架して支持するための支持ロールをそのまま使用することも可能である。また、両ベルトが対面した状態とは、対面して完全に接触している状態か、または対面接触している領域と僅かに離れている領域(特に両ベルトが対面し始める側の領域)とが混在している状態にあることをいう。上記加熱手段による定着ベルトの加熱は、少なくとも100℃以上の温度、その記録用紙の含水率を効率よく減少させることができる等の観点からすると好ましくは150℃以上の温度となるように構成するとよい。また、このロールとしては、定着対象となる記録用紙の幅(送り幅)以上の長さのものが使用される。
【0016】
また、上記加圧回転体は、対向して配置されるロール形態どうしのものが好ましいが、特にその形態のものに限定されない。この加圧回転体における定着加圧部は、定着対象のトナー像を担持する記録用紙に対して、少なくとも定着に必要な加圧を行うことができるものであればよい。
【0017】
さらに、上記剥離手段は、例えば、定着ベルトを記録用紙の搬送方向とは急激に離れる方向に曲げて移動走行させるようにロールで支持し、その用紙が自身のこしの強さにより自力でその曲がって移動走行する定着ベルト部分から剥離するように構成したものであってもよい。また、上記所定の距離は、主にトナー像が冷却されて固化されるに足る搬送距離であり、その冷却性能や搬送速度などによって適宜設定される。
【0018】
このような定着装置によれば、定着対象のトナー像を担持する記録用紙が定着加圧部に導き入れられる前に、加熱された定着ベルトの外周面と支持ベルトの外周面とがロールで支持された状態で対面し始める部位に対して導入されて加熱された後に、その両ベルトに挟まれた状態のままで定着加圧部に導き入れられる。
【0019】
これにより、記録用紙に含まれる水分は高温で確実に加熱されて気化し、水蒸気となって、ロールによる支持を通過した定着ベルトと支持ベルトに挟まれた状態において主にその両ベルトの両脇部や搬送方向前後部(用紙先端および後端側)に存在する隙間を通して発散される。この結果、記録用紙の含水率が定着加圧部に突入する前に減少し、その定着加圧部を通過した後における水蒸気の発生が抑えられるようになる。
【0020】
またこの際、上記の予備加熱によりトナー像は溶融し始めて記録用紙にある程度圧接されるため記録用紙に仮定着され、定着加圧部での通常の定着時における温度での加熱が不要となる。この結果、定着加圧部における加熱温度を定着温度よりも低い温度に低下させることが可能になる。
【0021】
そして、上記各定着装置においては、定着ベルトおよび支持ベルトを対面した状態となるようにそれぞれ支持するロールの少なくとも一方が、そのロールの表面側に弾性層を形成してなるものを使用することが好ましい。弾性層としては、例えば、ゴム層、樹脂発泡層などが適用可能である。
【0022】
このようなロールを使用した場合には、記録用紙の定着ベルト外周面に対する良好な密着性を確保することができる。
【0023】
また、上記各定着装置においては、定着ベルトおよび支持ベルトを対面した状態となるようにそれぞれ支持するロールの少なくとも一方に、そのロールを加熱する加熱手段を設けるとよい。この加熱手段は、好ましくは支持ベルト側のロールに設け、より好ましくは双方のロールに設けるようにする。
【0024】
この場合には、室温に近い温度の記録用紙が接触して定着ベルトや支持ベルトの温度が低下することにより記録用紙を所望の温度で加熱できなくなることを回避することができる。支持ベルトを支持するロールに加熱手段を設けた場合には、記録用紙をその表裏両面側から確実に加熱することができる。
【0025】
また、上記各定着装置においては、上記定着ベルトと支持ベルトとを対面した状態となるようにそれぞれ支持するロールどうしを、その各ベルトの外周面との間が記録用紙の厚さに相当する距離だけ離れた状態となるように設置するとよい。この場合には、前述した記録用紙からの水蒸気が、定着加圧部の手前において定着ベルトと支持ベルトに挟まれた状態にあってもその両ベルトの隙間や用紙後端側から効率よく排出されるようになる。
【0026】
さらに、上記各定着装置においては、加圧回転体の少なくとも一方を定着時に冷却する冷却手段を設けるとよい。この場合には、その冷却手段で冷却された加圧回転体を介して定着ベルトや記録用紙等が間接的に冷却されるため、定着加圧部を通過する際に記録用紙が高温で加熱されることがなく、その記録用紙からの水蒸気の発生を抑制することができる。
【0027】
以上の各定着装置において、記録用紙は、定着装置内を搬送してトナー像の定着が可能なものであればよく、通常の普通紙に限らず、塗工紙、OHPシート、ハガキ、封筒等のような部材を含むものである。なかでも特に塗工紙を使用した場合に有効である。また、加圧回転体の定着加圧部と剥離手段との間には、必要に応じて、その定着加圧部を通過した後の定着ベルトひいては記録用紙とトナー像とを迅速かつ確実に冷却するための冷却手段を設置するとよい。
【0028】
【発明の実施の形態】
《実施の形態1》
図1は、本発明の実施の形態1に係る定着装置の要部を示す概略構成図である。この定着装置1は、プリンタ、複写機等の画像形成装置における定着手段として使用されるものである。図中の実線矢印は主な回転部品の回転方向を示す。
【0029】
定着装置1は、回転する無端状の定着ベルト10と、この定着ベルトを張架するとともに加熱する加熱ロール20、21と、この加熱ロール20、21により加熱された定着ベルト10を挟むような状態で対向して圧接配置される一対の加圧ロール30、31と、この一対の加圧ロールのうち定着ベルト10の外周面側に配置される第2加圧ロール31にも支持されつつ定着ベルト10と所定の距離だけ当接して同じ方向に移動するように回転する加圧ベルト35と、加圧ロール30、31を通過した後の定着ベルト10の内周面側に接触するように配置されて定着ベルト等を冷却する冷却装置40等を具備するものである。図中の符号Pは記録用紙、Tはその記録用紙に担持されるトナー像である。また、矢付一点鎖線は記録用紙Pの搬送経路を示す。
【0030】
定着ベルト10は、カーボングラックを含有させたポリイミド等からなる厚さ50μm程度のベルト基材上に、厚さ60μm程度のシリコーン共重合体(硬度:例えば24°)等からなる弾性層を、さらに必要に応じて離型性を示す合成樹脂等からなる厚さ1〜100μm程度の表面離型層をこの順に形成した構造のものである。また、このベルト10は、その周長が約1300mm、その幅が約360mmである。さらに、定着ベルト10は、第1加熱ロール20、第2加熱ロール21、第1加圧ロール30、および複数のベルト支持ロール15〜18に張架されており、駆動ロールとして兼用されている第1加熱ロール20によって矢印A方向に回転するようになっている。
【0031】
ベルト支持ロール17は、定着ベルト10を急激に曲がった状態で移動走行させるように支持し、これにより定着ベルト10に密着して搬送される記録用紙Pをそれ自身のこしの強さにより自力で剥離させる役割を果たす剥離用ロールとして機能する。
【0032】
第1加熱ロール20は、外径が50〜60mmからなる円筒状の金属(アルミニウム等)製ロールの内部にハロゲンランプ等の加熱源22を配置した構造からなるものであり、定着ベルト10をその内周面側から加熱する。第2加熱ロール21は、外径が80〜100mmからなる円筒状の金属製ロールの内部にハロゲンランプ等の加熱源23を配置した構造からなるものであり、定着ベルト10をその外周面側から加熱する。
【0033】
第2加熱ロール31には、そのロール表面に接して清掃を行うための巻取りウエブ方式のクリーニング装置25が配置されている。特にこのクリーニング装置25は、そのクリーニング用ウエブ26にシリコーンオイル等の離型剤を含浸させたものとし、かかるウエブ26によって加熱ロール21の表面を清掃するとともに、その加熱ロール21の表面に微量の離型剤を塗布して定着ベルト10の外周面に転移供給するようになっている。
【0034】
加圧ロール30、31はいずれも、外径が80mm等からなる円筒形の金属(アルミニウム等)製ロール基体に、シリコーンゴム(硬度:例えば17°程度)等からなる厚さ6mm程度の耐熱弾性層を形成した構造のものである。また、加圧ロール30、31は、その一方が固定した状態で回転可能に支持され、その他方が図示しない加圧機構により所定の加圧力(例えばニップ圧力が約1500N程度の荷重)でもって固定支持された側のロールに対して(定着ベルト10を介して)圧接されるとともに、その定着ニップ部Nの幅(ロール回転方向の寸法)が20mm程度となるように設置されている。さらに、加圧ロール30、31では、その内部空間にハロゲンランプ等の加熱源32、33を配し、このロールを定着動作時の温度まで上昇させるいわゆるウォームアップ時のみの加熱を行う(定着動作時には加熱しない)ようにしている。
【0035】
加圧ベルト35は、ポリイミド等からなる厚さ80μm程度のベルト基材上に、シリコーンゴム等からなる厚さ45μm程度の弾性層を、さらに必要に応じてシリコーン樹脂等からなる表面離型層をこの順に積層形成した構造のものである。また、加圧ベルト35は、第2加圧ロール31、駆動ロール36、複数のベルト支持ロール37〜39等に張架されており、駆動ロール36によって矢印B方向に回転するようになっている。この加圧ベルト40は、第2加圧ロール31とベルト支持ロール39の所定の区間で定着ベルト10の外周面と接して同じ方向に回転移動する。
【0036】
冷却装置40は、熱循環器で構成されている。すなわち、この冷却装置は、第1加圧ロール30とベルト支持ロール15との間の所定間隔内で定着ベルト10の内周面に接する第1金属板41と、ベルト支持ロール15と第1加熱ロール20の間で定着ベルト10の内周面と接する第2金属板42と、その第1金属板41と第2金属板42に結合されて第1金属板41の熱を第2金属板42に移動させて循環させる熱輸送体43とで構成されている。
【0037】
金属板41、42はいずれもアルミニウム等の金属にて形成される板状のものであり、そのベルト接触面が少なくとも外側に突出しかつベルト走行方向に緩やかに湾曲した湾曲面(所定の曲率半径からなる曲面)に形成されている。熱輸送体43としては、管のなかに液体を減圧して封入し、熱抵抗が非常に小さく、小さな温度差でも多くの熱を低温側に高速で輸送できる複数本のヒートパイプを使用している。そのヒートパイプは、各金属板41、42の内面側にそれぞれ触れて通過しながら各板間を循環するようなほぼ四角形の環状形状に組んで使用している。
【0038】
この熱循環器からなる冷却装置40は、第1金属板41が加熱された状態にある定着ベルト10から熱を奪うと、その熱が熱輸送体43としてのヒートパイプの熱伝導作用により、第1金属板41に比べて低温状態にある第2金属板42側に伝えられる。これにより、第1金属板41が接する定着ベルト部分を吸熱して所定の温度まで冷却する一方、第2金属板42が接する定着ベルト部分を所定の温度になるまで加熱する仕組みになっている。
【0039】
この定着装置1では、熱循環器からなる冷却装置40の第1金属板42と、第1加熱ロール20と、第2加熱ロール21とからなる3つの加熱手段によりこの順で定着動作時における定着ベルト10の加熱が行われる。また、第1加熱ロール20と第2加熱ロール21については、その各ロール表面に温度センサを設置し、その温度センサで検出されるロール表面温度の情報に基づいて各加熱源22、23の加熱動作を制御することによって定着ベルト10を所定の温度に加熱するようになっている。
【0040】
そして、この定着装置1においては、図1や図2に示すように、定着ベルト10と加圧ベルト35とを、加圧ロール30,31の定着ニップ部Nからその回転方向A(B)の上流側となる位置でその各ベルト10、35の外周面どうしが対面した状態となるように各ベルト10、35の内周面からロール50、51でそれぞれ支持するように構成している。しか、その両ベルト10、35が対面し始める部位(Q)から定着対象のトナー像Tを担持する記録用紙Pを導き入れるようにしている。
【0041】
定着ベルト10の内周面に当接する側の第1支持ロール50は、前記ベルト支持ロール16をそのまま使用しており、外径が12mmの金属製ロール芯材にシリコーンゴム等からなる厚さが4mm程度の弾性層を形成したものである。一方、加圧ベルト35の内周面に当接する側の第2支持ロール51は、前記ベルト支持ロール38をそのまま使用しており、このロール51も第1支持ロール50と同じロール構造になっている。
【0042】
また、第1支持ロール50は固定した状態で支持されているのに対し、第2支持ロール51は図示しない公知の加圧機構(加圧バネ等を利用した機構)により第1支持ロール50に対して100Nの荷重で圧接されてベルト対面開始部Qが形成されている。
【0043】
さらに、この支持ロール50、51は、その間に形成するベルト対面開始部位Qと前記定着ニップ部Nとの用紙搬送距離Lが50mm以上、好ましくは70mm〜400mmの範囲内に設定される。この用紙搬送距離Lが50mm未満になると、記録用紙を加熱する効果が十分に得られない等の不具合がある。また、この両支持ロ−ル50、51は、そのロール内部(中空部)にロール自体を加熱する電熱ヒータ等の加熱源52、53がそれぞれ内蔵されており、定着時において定着ベルト10および加圧ベルト35や記録用紙Pを補助的に加熱するようになっている。
【0044】
また、この定着装置1においては、上記ベルト対面開始部位Qにおける定着ベルト10と加圧ベルト35の外周面との間に、定着対象のトナー像Tを担持する記録用紙Pを導き入れる。そして、記録用紙Pが導き入れられる際には、その定着ベルト10が第1加熱ロール20と第2加熱ロール21とにより100℃以上の温度、好ましくは140℃以上の温度に加熱されるように設定されている。また、第1支持ロール50と第2支持ロール51は、その加熱源52、53により140℃程度にそれぞれ加熱される。特にこの定着装置1では、前述したように定着時には定着ニップ部Nにおいて加圧ロール30、31による定着のための加熱を行わない構成になっているため、定着ベルト10は少なくとも定着に必要な温度(定着温度)以上の温度まで加熱するようになっている。
【0045】
このような定着装置1では、画像形成装置の作像部側においてトナー像Tが転写された記録用紙Pに対して以下のごとき定着が行われる。
【0046】
すなわち、まずトナー画像Tが転写された記録用紙Pが、図示しない用紙搬送ベルト、搬送ガイド等を通してそのトナー像担持面を定着ベルト10の外周面に当接させる姿勢で、対の支持ロール50、51にて支持されて形成される前記ベルト対面開始部位Qにおける定着ベルト10の外周面と加圧ベルト35の外周面との間に導き入れられる。このとき定着ベルト10は、第1加熱ロール20および第2加熱ロール21により100℃以上の温度に加熱された状態でベルト対面開始部位Qに到達する。また、このとき各支持ロール50、51も加熱源52、53により100℃以上の温度に加熱される。
【0047】
このベルト対面開始部位Qで両ベルト10、35の外周面との間に導入された記録用紙Pは、図3に示すように、その両ベルト10、35によって挟まれた状態に保持されたうえで、主に100℃以上の高温に加熱された定着ベルト10によって加熱される。このときの記録用紙Pは、第1支持ロール50と第2支持ロール51の双方が弾性層を形成したロールであるため、両両ベルト10、35の外周面に対してそれぞれ密着性良好に圧接される。また、定着が連続して行われることがあっても、定着ベルト10と加圧ベルト35の双方が各支持ロール50、51でそれぞれ加熱されているため、温度の低い記録用紙Pが触れることによる定着ベルト10や加圧ベルト35の温度低下を素早く回復させることができ、記録用紙Pを高温で安定して加熱することができる。
【0048】
そして、ベルト対面開始部位Qを通過した後の記録用紙Pは、定着ベルト10と加圧ベルト35とで挟持された状態で搬送距離Lだけ搬送された後、定着ニップ部Nにおける定着ベルト10の外周面と第2加圧ロール31に支持される加圧ベルト35の外周面との間に導き入れられる。
【0049】
これにより、記録用紙Pは、両支持ベルト10、35とに挟まれた状態で100℃を超える高温で加熱されることになるため、その用紙中の水分が高温で確実に加熱されて気化し、水蒸気(点線矢印S)となって両支持ベルト10、35の両脇における隙間や用紙Pを挟んでいる部位の周囲(前後左右の非挟持領域)の隙間から主に発散される。この結果、記録用紙Pは、その含水率が定着ニップ部Nに突入する前に大幅に減少する。また、このときの記録用紙Pは、そのトナー像担持面とは反対側の面(裏面)が加圧ベルト35で支持されて定着ベルト10から剥がれにくい状態におかれる。
【0050】
また、記録用紙P上のトナー像Tは、ベルト対面開始部位Qから両支持ベルト10、35で挟持されて搬送される間に定着ベルト35等によって加熱されるため溶融して記録用紙Pに仮定着されるようになり、定着ニップ部Nでの通常の定着時における温度での加熱が不要となる(この例では定着時に加圧ロール30、31による加熱は行っていない)。この結果、定着ニップ部Nにおいて定着温度による加熱を行う必要がなく、そのニップ部Nでの加熱温度を低下させることができる。
【0051】
続いて、定着ニップ部Nに突入した記録用紙Pは、加圧ロール30、31により定着に必要な荷重で強く加圧される。この際、記録用紙Pは、定着ベルト10の余熱により加熱されるが、加圧ロール30、31(の加熱源)により加熱されることはない。
【0052】
定着ニップ部Nを通過した記録用紙Pは、定着ベルト10と加圧ベルト35とに挟持されて定着ベルト10に密着した状態で搬送されるとともに、冷却装置40の熱循環器の熱循環により熱が奪われる第1金属板41を通過する際にトナー像Tと一緒に所定の温度(例えば55〜85℃)になるまで冷却される。
【0053】
この冷却によりトナー像Tが固化されるとともに冷却装置40の熱循環器における第1金属板41を通過した記録用紙Pは、ベルト支持ロール17で構成される用紙剥離手段において紙自身の腰の強さにより自力で定着ベルト10から、トナー画像とともに剥離される(図1の矢付き一点鎖線の先端部で示される状態となる)。この剥離された記録用紙Pは定着装置外に排出される。これによりトナー像Tが記録用紙Pに定着される。
【0054】
このようにして定着された画像は、特に定着ベルト10の平滑な表面にならい平滑化された光沢感に富む画像として得られる。
【0055】
特にこの定着装置1では、前述したように対着対象のトナー像Tを担持する記録用紙Pがベルト対面開始部位Qから両支持ベルト10、35によって挟持搬送された後に定着ニップ部Nに導き入れられることにより、その記録用紙Pの含水率が定着ニップ部Nに突入する前に大幅に減少し、しかも、その記録用紙Pが定着ニップ部Nで改めて定着温度に加熱されることがない。このため、その定着ニップ部Nを通過した後の冷却工程での水蒸気の発生が抑えられるようになる。また、定着ベルト10も定着ニップ部Nで必要以上に加熱されることがなくなり、定着ニップ部Nを通過した後に冷却装置40によって効率よく冷却されるようになる。
【0056】
この結果、定着ニップ部Nを通過した後に水蒸気が発生して記録用紙Pが定着ベルト10から剥離する剥離ブリスターの発生が抑制される。また、これにより、従来技術のごとき、剥離ブリスターに起因した光沢ムラ等の定着不良や紙しわの発生も防止され、良好な定着を行うことが可能となる。
【0057】
図4は、この定着装置1におけるベルト対面開始部位Qから定着ニップ部N手前までのベルト挟持加熱搬送部Eと定着ニップ部Nとを順次通過するときの記録用紙Pの温度が変化する状態を模式的に示すものである。
【0058】
図4に示すように、定着対象の記録用紙Pを定着ニップ部Nに直接導き入れる従来の方式では、室温状態にある記録用紙Pが定着ニップ部Nを通過するまでの間に定着温度まで急激に加熱されるため、そのニップ部Nを通過した頃に水蒸気が発生し得る温度に到達し、その用紙中の水分が水蒸気として発生するものと考えられる。
【0059】
一方、この定着装置1(実施例)では、室温状態にある記録用紙Pがまずベルト挟持搬送部Eを通過することにより急激に水蒸気が発生し得るような高い温度まで加熱され、これにより、その用紙中の水分が水蒸気となって発散される。次いで、その記録用紙Pが定着ニップ部Nを通過する際には、高温で加熱されることがないため、そのニップNを通過する時点ではすでに温度の低下が始まり水蒸気が発生する温度よりも低い温度になっているものと考えられる。これにより、定着ニップ部Nを通過した後の冷却装置40による冷却工程では、水蒸気が発生しにくい状態になっているものと推測される。
【0060】
ちなみに、実施の形態1に係る定着装置1では、記録用紙Pの表裏両面にトナー像Tを形成する場合(両面プリントなどを行う場合)に、その第2面目のトナー像の定着についても、その第1面目の定着と同様に行われる。その際、第1面目の定着済のトナー像は、ベルト対面開始部位Qから記録用紙Pが剥離されるまで加圧ベルト35の外周面に接触した状態に置かれるため、その画像が乱れるおそれはない。
【0061】
《他の実施の形態》
実施の形態1に係る定着装置1では、図5に示すように、定着ベルト10と加圧ベルト35を対面した状態となるようにそれぞれ支持する支持ロール50、51どうしを、その各ベルト10、35の外周面との間が記録用紙Pの厚さ(d)に相当する距離(J)だけ離れた状態となるように設置することができる。この際、各支持ロール50、51としては、前述した弾性層を形成したものをそのまま使用できるほか、その弾性層を形成しないものを使用することもできる。
【0062】
例えば、定着ベルト10として厚さが110μm程度のものを、加圧ベルト35としての厚さが130μm程度のものをそれぞれ使用し、記録用紙Pとして厚さdが50〜300μmの範囲のものを使用する場合には、その両ベルト10、35の外周面どうしの離間距離Jは、少なくとも300μm以上(好ましくは800μm以下)の値になるように設定する。
【0063】
このように構成した場合には、対面する定着ベルト10と加圧ベルト35とがベルト挟持加熱搬送部Eにおいて全面的に対面接触するのではなく僅かに離れた領域が存在する状態に維持されるため(なお、この場合でも、両ベルト10、35は定着ニップ部Nに近づくにつれて対面接触した状態になる)、前述した記録用紙から発生する水蒸気がベルト挟持搬送部Eにおいても効率よく排出されるようになり、記録用紙Pの含水率を定着ニップ部Nの手前で確実に低下させることができる。
【0064】
実施の形態1に係る定着装置1では、図6に示すように、ベルト対面開始部位Qから定着ニップ部Nの間(ベルト挟持加熱搬送部E)に、そのベルト挟持加熱搬送部Eを通過中の記録用紙Pを定着ベルト10の外周面に対して押し付けるように支持する押付け補助ロール55を加圧ベルト35に接した状態で設けることができる。
【0065】
このような押付け補助ロール55を設けた場合には、ベルト対面開始部位Qを通過した後の記録用紙Pが押付け補助ロール55により加圧ベルト35を介して定着ベルト10に押し付けられた状態で支持されながら定着ニップ部Nにむけて搬送される。これにより、ベルト対面開始部位Qを通過した後の記録用紙Pが例えば水蒸気の発生によりベルト挟持加熱搬送部Eの搬送中に定着ベルト10から剥がれようとする挙動を確実に防止することができ、その記録用紙Pの定着ニップ部Nへの良好な導入を実現することが可能となる。
【0066】
また、実施の形態1に係る定着装置1では、図6に示すように、第2加圧ロール31を冷却する冷却装置45を設けることができる。この冷却装置45としては、例えば冷却ファン等の空冷式のものが使用可能である。この冷却装置45による冷却は、定着ニップ部Nの温度がそのニップ部Nを通過する記録用紙Pに含まれる水分が気化しない程度の低温になるように行うとよい。
【0067】
このような冷却装置45を設けた場合には、定着ニップ部Nにおいて、その冷却装置45で冷却される第2加圧ロール31を介して加圧ベルト35や定着ベルト10、記録用紙P等が間接的に冷却される。このため、定着ニップ部Nを通過する際に記録用紙Pが高温(例えば水蒸気が発生し得るような温度)で加熱されることがなく、その定着ニップ部Nを通過する記録用紙Pからの水蒸気の発生を抑制することができる。
【0068】
また、実施の形態1に係る定着装置1では、図7に示すように、加圧ベルト35をベルト対面開始部位Qよりも記録用紙Pの導入方向Cの上流側となる位置まで伸ばした状態となるように、例えばベルト支持ロール34等の追加により設置することもできる。
【0069】
このように加圧ベルト35を延長した状態で設置した場合には、ベルト対面開始部位Qから突出する加圧ベルト35の突出領域Hが存在し、その突出領域Hを定着対象のトナー像Tを担持する記録用紙Pをベルト対面開始部位Qに導入する前の誘導部として利用することができ、この結果、その記録用紙Pのベルト対面開始部位Qへの導入を良好で安定して実現することができる。この場合においても、必要に応じて、前述した補助ロール55や冷却装置45を同様に設置することが可能である(図6参照)。
【0070】
さらに、実施の形態1に係る定着装置1では、必要に応じて、定着ベルト10を加熱する手段として、加熱ロール20、21に代えて、加熱板等の他の加熱手段を適用してもよい。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の定着装置によれば、定着加圧部を通過した後の定着ベルトと記録用紙との間における剥離ブリスターの発生を防止することができる。従って、この定着装置を使用した場合には、その剥離ブリスターに起因した光沢ムラ等の定着不良や紙しわの発生のない、光沢感に優れた定着画像を安定して得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1に係る定着装置を示す概略構成図。
【図2】図1の定着装置における押付けニップ部とその周辺部の構成を示す要部拡大図。
【図3】押付けニップ部を通過させて行う定着動作時の状態を示す要部説明図。
【図4】図1の定着装置による定着動作時の用紙温度の変化状態を示す説明図。
【図5】図1の定着装置の一部を変更した構成例を示す要部拡大図。
【図6】図1の定着装置の一部を変更した他の構成例を示す要部拡大図。
【図7】図1の定着装置の一部を変更した更に他の構成例を示す要部拡大図。
【符号の説明】
1…定着装置、10…定着ベルト、15〜18…ベルト支持ロール、20,21…加熱ロール(加熱手段)、30、31…加圧ロール(加圧回転体)、35…加圧ベルト(支持ベルト)、45…冷却装置(冷却手段)、50,51…支持ロール(支持するロール)、52,53…加熱源(加熱手段)、T…定着対象のトナー像、P…記録用紙、N…定着ニップ部(定着加圧部)、Q…ベルト対面開始部位、J…ベルト外周面の離間距離。
【発明の属する技術分野】
本発明は、定着対象のトナー像を担持する記録用紙を、加熱されて回転する無端状の定着ベルトに圧接させて密着させたままの状態で搬送した後に剥離するタイプの定着装置に係り、特に、定着時に記録用紙から水蒸気が発生して定着ベルトとの間に介在することに起因した定着不良や紙しわの発生を防止することが可能な定着装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真方式、静電記録方式等を利用してトナー(現像工程に使用される着色粉体)からなる画像を最終的に記録用紙に形成するプリンタ、複写機、複合機等の画像形成装置において、そのトナー像を記録用紙に定着させるために使用される定着装置として、以下に示すように、加熱されて一定の方向に回転する無端状の定着ベルトの外周面に定着対象のトナー像を担持する記録用紙を圧接させて定着を行うタイプのものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、このタイプの定着装置は、まず、その定着ベルトを加熱ロールを含む複数のロールに張架して一定の方向に回転させる一方で、その加熱ロールにより加熱された定着ベルトに加圧ロールや加圧ベルトを押し当てるように配置して定着(加熱)加圧部を形成したものである。しかも、このタイプの定着装置は、定着対象のトナー像を担持する記録用紙を、その定着加圧部に導き入れて通過させるとともにその通過後も定着ベルトの外周面に密着させた状態で所定の距離だけ搬送してトナー像を冷却させてから剥離するように構成されている。
【0004】
そして、このタイプの定着装置によれば、記録用紙上のトナー像が定着ベルトの平滑面にそって固化することになるため、そのトナー像の表面も平滑なものとなって光沢感に優れた定着画像が得られるという利点がある。また、トナーが冷却固化されることにより、そのトナーの凝集力がトナーと定着ベルト間の接着力よりも大きくなった状態で定着ベルトから剥離されることになるため、トナーが定着ベルトに残留付着してしまういわゆるホットオフセットの現象も発生しにくくなるという利点もある。
【0005】
ところが、このような定着装置においては、記録用紙に含まれる水分が定着時の加熱により気化膨張して用紙の外部に抜けて定着ベルトとの間に水蒸気として溜まり、その水蒸気の蒸気圧の作用を受けて記録用紙が定着ベルトから剥離することがあり(以下、この現象を「剥離ブリスター」と呼ぶ)、この現象によりトナー像が冷却固化する前に定着ベルトから剥離してしまうと、次のような定着不良の1種でもある光沢の低下や光沢むらが発生する。また、特に上記定着加圧部を通過した後に記録用紙を定着ベルト側に押し付けるように保持する部材が存在する場合には、次にような紙しわが発生する。
【0006】
つまり、剥離ブリスターにより定着ベルトから剥離したトナー像部分は、そのベルトの平滑面にならって固化せずトナー像表面が本来もつ凹凸感が残ることとなり、この結果、かかる剥離が起こらないトナー像部分に比べると、その光沢感が低下したものとなったり、あるいは、その剥離したトナー像部分がトナー像全体の一部である場合に光沢感が異なる部分が混在するという光沢むらになる。また、剥離ブリスターにより定着ベルトから剥離して浮いた記録用紙部分は、その浮いた状態の用紙部分が寄せ集められて前記したような保持部材を通過する際に座屈して折れ曲がってしわとなる。
【0007】
なお、上記タイプの定着装置とは異なるタイプ(定着対象のトナー像を担持する記録用紙を定着加圧部の通過直後に剥離させるタイプ)の定着装置ではあるものの、次のような構成からなる定着装置が提示されている。
【0008】
その1つは、加熱ローラと従動ローラとの間に張架された無端状の定着ベルトと、その従動ローラに対向して設けた加圧ローラとを備えた定着装置であって、その従動ローラに支持された定着ベルトと加圧ローラの間に形成される定着ニップ部の入口の上流側に定着ベルトに圧接する補助ロールを設けたものである(特許文献2)。
【0009】
もう1つは、第1定着ローラと発熱ローラとの間に張架されたベルト部材と、その第1定着ローラとの間でニップ部を形成する第2定着ローラとを備えた定着装置であり、そのベルト部材の内側より当接してそのベルト部材を加熱する面状の発熱体を設け、そのベルト部材に転写材を静電的に密着させて予備加熱を行うとともに、そのニップ部にて記録用紙上のトナー像を定着するようにしたものである(特許文献3)。
【0010】
しかしながら、これら従来の定着装置は、そのいずれも定着ニップ部等を通過した直後に記録用紙を剥離させるものであって、記録用紙を定着ベルトの外周面に圧接させる定着加圧部を通過させた後もそのベルト外周面に密着させた状態で搬送するものではないため、前述したような剥離ブリスターが発生することがなく、この結果、その剥離ブリスターに起因した光沢ムラ等の定着不良や紙しわが発生することもない。
【0011】
また、上記従来の定着装置は、その定着ニップ部の上流側で補助ローラまたは面状加熱体を配置したベルト部分においてトナーと記録用紙を予備加熱するものであるが、その予備加熱の目的が、定着温度を低くすることを可能にしてホットオフセットの発生を防止するようにしたり、あるいは、ベルト部材のウォーミングアップ時間の短縮化や連続プリント時のベルト温度の安定化または均一化を図ることにあり、前記剥離ブリスターの発生に着目してその発生を防止することを目的にはしていない。さらに、記録用紙を定着ベルトに強固に圧接させるものではないため、その用紙と高温の定着ベルトとの密着性を十分に得ることができない。特に記録用紙としてコート紙(塗工紙)を用いる場合には、定着ベルトとの間に水蒸気が発生することによって密着性が阻害され、その塗工紙を十分に加熱するに至らない。
【0012】
【特許文献1】特開平5−72926号公報(請求項1、図1など)
【特許文献2】特開平9−281822号公報(請求項1、図1など)
【特許文献3】特開2001−166617号公報(請求項1、図3など)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述したような問題点を解消するためになされたものであり、その主な目的とするところは、定着加圧部を通過した後の定着ベルトと記録用紙との間における剥離ブリスターの発生を防止することができ、かかる剥離ブリスターに起因した光沢ムラ等の定着不良や紙しわの発生も防止することができる定着装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の定着装置は、複数のロールに張架されて一定の方向に回転する無端状の定着ベルトと、この定着ベルトを加熱する加熱手段と、この加熱手段で加熱された定着ベルトをその外周面および内周面の両側から加圧した状態で挟んでそのベルト外周面との間に定着対象のトナー像を担持する記録用紙を導き入れて加圧するための定着加圧部を形成するように対向配置される加圧回転体と、この加圧回転体による定着加圧部を通過した後も前記記録用紙を定着ベルトの外周面に密着させた状態で所定の距離だけ搬送してから剥離する剥離手段と、前記加圧回転体のうち前記定着ベルトの外周面側に配置される加圧回転体と他のロールに張架されて前記定着加圧部を通過した後の記録用紙を定着ベルトの外周面に密着させた状態で保持して搬送するように回転する無端状の支持ベルトとを備えた定着装置において、
前記定着ベルトおよび支持ベルトを、前記加圧回転体の定着加圧部からその回転方向上流側となる位置でその各ベルトの外周面どうしが対面した状態となるように各ベルトの内周面からロールでそれぞれ支持し、その両ベルトが対面し始める部位から前記定着対象のトナー像を担持する記録用紙を導き入れることを特徴とするものである。
【0015】
ここで、上記定着ベルトおよび支持ベルトをその内周面から支持するロールは、その各ベルトを張架して支持するための支持ロールをそのまま使用することも可能である。また、両ベルトが対面した状態とは、対面して完全に接触している状態か、または対面接触している領域と僅かに離れている領域(特に両ベルトが対面し始める側の領域)とが混在している状態にあることをいう。上記加熱手段による定着ベルトの加熱は、少なくとも100℃以上の温度、その記録用紙の含水率を効率よく減少させることができる等の観点からすると好ましくは150℃以上の温度となるように構成するとよい。また、このロールとしては、定着対象となる記録用紙の幅(送り幅)以上の長さのものが使用される。
【0016】
また、上記加圧回転体は、対向して配置されるロール形態どうしのものが好ましいが、特にその形態のものに限定されない。この加圧回転体における定着加圧部は、定着対象のトナー像を担持する記録用紙に対して、少なくとも定着に必要な加圧を行うことができるものであればよい。
【0017】
さらに、上記剥離手段は、例えば、定着ベルトを記録用紙の搬送方向とは急激に離れる方向に曲げて移動走行させるようにロールで支持し、その用紙が自身のこしの強さにより自力でその曲がって移動走行する定着ベルト部分から剥離するように構成したものであってもよい。また、上記所定の距離は、主にトナー像が冷却されて固化されるに足る搬送距離であり、その冷却性能や搬送速度などによって適宜設定される。
【0018】
このような定着装置によれば、定着対象のトナー像を担持する記録用紙が定着加圧部に導き入れられる前に、加熱された定着ベルトの外周面と支持ベルトの外周面とがロールで支持された状態で対面し始める部位に対して導入されて加熱された後に、その両ベルトに挟まれた状態のままで定着加圧部に導き入れられる。
【0019】
これにより、記録用紙に含まれる水分は高温で確実に加熱されて気化し、水蒸気となって、ロールによる支持を通過した定着ベルトと支持ベルトに挟まれた状態において主にその両ベルトの両脇部や搬送方向前後部(用紙先端および後端側)に存在する隙間を通して発散される。この結果、記録用紙の含水率が定着加圧部に突入する前に減少し、その定着加圧部を通過した後における水蒸気の発生が抑えられるようになる。
【0020】
またこの際、上記の予備加熱によりトナー像は溶融し始めて記録用紙にある程度圧接されるため記録用紙に仮定着され、定着加圧部での通常の定着時における温度での加熱が不要となる。この結果、定着加圧部における加熱温度を定着温度よりも低い温度に低下させることが可能になる。
【0021】
そして、上記各定着装置においては、定着ベルトおよび支持ベルトを対面した状態となるようにそれぞれ支持するロールの少なくとも一方が、そのロールの表面側に弾性層を形成してなるものを使用することが好ましい。弾性層としては、例えば、ゴム層、樹脂発泡層などが適用可能である。
【0022】
このようなロールを使用した場合には、記録用紙の定着ベルト外周面に対する良好な密着性を確保することができる。
【0023】
また、上記各定着装置においては、定着ベルトおよび支持ベルトを対面した状態となるようにそれぞれ支持するロールの少なくとも一方に、そのロールを加熱する加熱手段を設けるとよい。この加熱手段は、好ましくは支持ベルト側のロールに設け、より好ましくは双方のロールに設けるようにする。
【0024】
この場合には、室温に近い温度の記録用紙が接触して定着ベルトや支持ベルトの温度が低下することにより記録用紙を所望の温度で加熱できなくなることを回避することができる。支持ベルトを支持するロールに加熱手段を設けた場合には、記録用紙をその表裏両面側から確実に加熱することができる。
【0025】
また、上記各定着装置においては、上記定着ベルトと支持ベルトとを対面した状態となるようにそれぞれ支持するロールどうしを、その各ベルトの外周面との間が記録用紙の厚さに相当する距離だけ離れた状態となるように設置するとよい。この場合には、前述した記録用紙からの水蒸気が、定着加圧部の手前において定着ベルトと支持ベルトに挟まれた状態にあってもその両ベルトの隙間や用紙後端側から効率よく排出されるようになる。
【0026】
さらに、上記各定着装置においては、加圧回転体の少なくとも一方を定着時に冷却する冷却手段を設けるとよい。この場合には、その冷却手段で冷却された加圧回転体を介して定着ベルトや記録用紙等が間接的に冷却されるため、定着加圧部を通過する際に記録用紙が高温で加熱されることがなく、その記録用紙からの水蒸気の発生を抑制することができる。
【0027】
以上の各定着装置において、記録用紙は、定着装置内を搬送してトナー像の定着が可能なものであればよく、通常の普通紙に限らず、塗工紙、OHPシート、ハガキ、封筒等のような部材を含むものである。なかでも特に塗工紙を使用した場合に有効である。また、加圧回転体の定着加圧部と剥離手段との間には、必要に応じて、その定着加圧部を通過した後の定着ベルトひいては記録用紙とトナー像とを迅速かつ確実に冷却するための冷却手段を設置するとよい。
【0028】
【発明の実施の形態】
《実施の形態1》
図1は、本発明の実施の形態1に係る定着装置の要部を示す概略構成図である。この定着装置1は、プリンタ、複写機等の画像形成装置における定着手段として使用されるものである。図中の実線矢印は主な回転部品の回転方向を示す。
【0029】
定着装置1は、回転する無端状の定着ベルト10と、この定着ベルトを張架するとともに加熱する加熱ロール20、21と、この加熱ロール20、21により加熱された定着ベルト10を挟むような状態で対向して圧接配置される一対の加圧ロール30、31と、この一対の加圧ロールのうち定着ベルト10の外周面側に配置される第2加圧ロール31にも支持されつつ定着ベルト10と所定の距離だけ当接して同じ方向に移動するように回転する加圧ベルト35と、加圧ロール30、31を通過した後の定着ベルト10の内周面側に接触するように配置されて定着ベルト等を冷却する冷却装置40等を具備するものである。図中の符号Pは記録用紙、Tはその記録用紙に担持されるトナー像である。また、矢付一点鎖線は記録用紙Pの搬送経路を示す。
【0030】
定着ベルト10は、カーボングラックを含有させたポリイミド等からなる厚さ50μm程度のベルト基材上に、厚さ60μm程度のシリコーン共重合体(硬度:例えば24°)等からなる弾性層を、さらに必要に応じて離型性を示す合成樹脂等からなる厚さ1〜100μm程度の表面離型層をこの順に形成した構造のものである。また、このベルト10は、その周長が約1300mm、その幅が約360mmである。さらに、定着ベルト10は、第1加熱ロール20、第2加熱ロール21、第1加圧ロール30、および複数のベルト支持ロール15〜18に張架されており、駆動ロールとして兼用されている第1加熱ロール20によって矢印A方向に回転するようになっている。
【0031】
ベルト支持ロール17は、定着ベルト10を急激に曲がった状態で移動走行させるように支持し、これにより定着ベルト10に密着して搬送される記録用紙Pをそれ自身のこしの強さにより自力で剥離させる役割を果たす剥離用ロールとして機能する。
【0032】
第1加熱ロール20は、外径が50〜60mmからなる円筒状の金属(アルミニウム等)製ロールの内部にハロゲンランプ等の加熱源22を配置した構造からなるものであり、定着ベルト10をその内周面側から加熱する。第2加熱ロール21は、外径が80〜100mmからなる円筒状の金属製ロールの内部にハロゲンランプ等の加熱源23を配置した構造からなるものであり、定着ベルト10をその外周面側から加熱する。
【0033】
第2加熱ロール31には、そのロール表面に接して清掃を行うための巻取りウエブ方式のクリーニング装置25が配置されている。特にこのクリーニング装置25は、そのクリーニング用ウエブ26にシリコーンオイル等の離型剤を含浸させたものとし、かかるウエブ26によって加熱ロール21の表面を清掃するとともに、その加熱ロール21の表面に微量の離型剤を塗布して定着ベルト10の外周面に転移供給するようになっている。
【0034】
加圧ロール30、31はいずれも、外径が80mm等からなる円筒形の金属(アルミニウム等)製ロール基体に、シリコーンゴム(硬度:例えば17°程度)等からなる厚さ6mm程度の耐熱弾性層を形成した構造のものである。また、加圧ロール30、31は、その一方が固定した状態で回転可能に支持され、その他方が図示しない加圧機構により所定の加圧力(例えばニップ圧力が約1500N程度の荷重)でもって固定支持された側のロールに対して(定着ベルト10を介して)圧接されるとともに、その定着ニップ部Nの幅(ロール回転方向の寸法)が20mm程度となるように設置されている。さらに、加圧ロール30、31では、その内部空間にハロゲンランプ等の加熱源32、33を配し、このロールを定着動作時の温度まで上昇させるいわゆるウォームアップ時のみの加熱を行う(定着動作時には加熱しない)ようにしている。
【0035】
加圧ベルト35は、ポリイミド等からなる厚さ80μm程度のベルト基材上に、シリコーンゴム等からなる厚さ45μm程度の弾性層を、さらに必要に応じてシリコーン樹脂等からなる表面離型層をこの順に積層形成した構造のものである。また、加圧ベルト35は、第2加圧ロール31、駆動ロール36、複数のベルト支持ロール37〜39等に張架されており、駆動ロール36によって矢印B方向に回転するようになっている。この加圧ベルト40は、第2加圧ロール31とベルト支持ロール39の所定の区間で定着ベルト10の外周面と接して同じ方向に回転移動する。
【0036】
冷却装置40は、熱循環器で構成されている。すなわち、この冷却装置は、第1加圧ロール30とベルト支持ロール15との間の所定間隔内で定着ベルト10の内周面に接する第1金属板41と、ベルト支持ロール15と第1加熱ロール20の間で定着ベルト10の内周面と接する第2金属板42と、その第1金属板41と第2金属板42に結合されて第1金属板41の熱を第2金属板42に移動させて循環させる熱輸送体43とで構成されている。
【0037】
金属板41、42はいずれもアルミニウム等の金属にて形成される板状のものであり、そのベルト接触面が少なくとも外側に突出しかつベルト走行方向に緩やかに湾曲した湾曲面(所定の曲率半径からなる曲面)に形成されている。熱輸送体43としては、管のなかに液体を減圧して封入し、熱抵抗が非常に小さく、小さな温度差でも多くの熱を低温側に高速で輸送できる複数本のヒートパイプを使用している。そのヒートパイプは、各金属板41、42の内面側にそれぞれ触れて通過しながら各板間を循環するようなほぼ四角形の環状形状に組んで使用している。
【0038】
この熱循環器からなる冷却装置40は、第1金属板41が加熱された状態にある定着ベルト10から熱を奪うと、その熱が熱輸送体43としてのヒートパイプの熱伝導作用により、第1金属板41に比べて低温状態にある第2金属板42側に伝えられる。これにより、第1金属板41が接する定着ベルト部分を吸熱して所定の温度まで冷却する一方、第2金属板42が接する定着ベルト部分を所定の温度になるまで加熱する仕組みになっている。
【0039】
この定着装置1では、熱循環器からなる冷却装置40の第1金属板42と、第1加熱ロール20と、第2加熱ロール21とからなる3つの加熱手段によりこの順で定着動作時における定着ベルト10の加熱が行われる。また、第1加熱ロール20と第2加熱ロール21については、その各ロール表面に温度センサを設置し、その温度センサで検出されるロール表面温度の情報に基づいて各加熱源22、23の加熱動作を制御することによって定着ベルト10を所定の温度に加熱するようになっている。
【0040】
そして、この定着装置1においては、図1や図2に示すように、定着ベルト10と加圧ベルト35とを、加圧ロール30,31の定着ニップ部Nからその回転方向A(B)の上流側となる位置でその各ベルト10、35の外周面どうしが対面した状態となるように各ベルト10、35の内周面からロール50、51でそれぞれ支持するように構成している。しか、その両ベルト10、35が対面し始める部位(Q)から定着対象のトナー像Tを担持する記録用紙Pを導き入れるようにしている。
【0041】
定着ベルト10の内周面に当接する側の第1支持ロール50は、前記ベルト支持ロール16をそのまま使用しており、外径が12mmの金属製ロール芯材にシリコーンゴム等からなる厚さが4mm程度の弾性層を形成したものである。一方、加圧ベルト35の内周面に当接する側の第2支持ロール51は、前記ベルト支持ロール38をそのまま使用しており、このロール51も第1支持ロール50と同じロール構造になっている。
【0042】
また、第1支持ロール50は固定した状態で支持されているのに対し、第2支持ロール51は図示しない公知の加圧機構(加圧バネ等を利用した機構)により第1支持ロール50に対して100Nの荷重で圧接されてベルト対面開始部Qが形成されている。
【0043】
さらに、この支持ロール50、51は、その間に形成するベルト対面開始部位Qと前記定着ニップ部Nとの用紙搬送距離Lが50mm以上、好ましくは70mm〜400mmの範囲内に設定される。この用紙搬送距離Lが50mm未満になると、記録用紙を加熱する効果が十分に得られない等の不具合がある。また、この両支持ロ−ル50、51は、そのロール内部(中空部)にロール自体を加熱する電熱ヒータ等の加熱源52、53がそれぞれ内蔵されており、定着時において定着ベルト10および加圧ベルト35や記録用紙Pを補助的に加熱するようになっている。
【0044】
また、この定着装置1においては、上記ベルト対面開始部位Qにおける定着ベルト10と加圧ベルト35の外周面との間に、定着対象のトナー像Tを担持する記録用紙Pを導き入れる。そして、記録用紙Pが導き入れられる際には、その定着ベルト10が第1加熱ロール20と第2加熱ロール21とにより100℃以上の温度、好ましくは140℃以上の温度に加熱されるように設定されている。また、第1支持ロール50と第2支持ロール51は、その加熱源52、53により140℃程度にそれぞれ加熱される。特にこの定着装置1では、前述したように定着時には定着ニップ部Nにおいて加圧ロール30、31による定着のための加熱を行わない構成になっているため、定着ベルト10は少なくとも定着に必要な温度(定着温度)以上の温度まで加熱するようになっている。
【0045】
このような定着装置1では、画像形成装置の作像部側においてトナー像Tが転写された記録用紙Pに対して以下のごとき定着が行われる。
【0046】
すなわち、まずトナー画像Tが転写された記録用紙Pが、図示しない用紙搬送ベルト、搬送ガイド等を通してそのトナー像担持面を定着ベルト10の外周面に当接させる姿勢で、対の支持ロール50、51にて支持されて形成される前記ベルト対面開始部位Qにおける定着ベルト10の外周面と加圧ベルト35の外周面との間に導き入れられる。このとき定着ベルト10は、第1加熱ロール20および第2加熱ロール21により100℃以上の温度に加熱された状態でベルト対面開始部位Qに到達する。また、このとき各支持ロール50、51も加熱源52、53により100℃以上の温度に加熱される。
【0047】
このベルト対面開始部位Qで両ベルト10、35の外周面との間に導入された記録用紙Pは、図3に示すように、その両ベルト10、35によって挟まれた状態に保持されたうえで、主に100℃以上の高温に加熱された定着ベルト10によって加熱される。このときの記録用紙Pは、第1支持ロール50と第2支持ロール51の双方が弾性層を形成したロールであるため、両両ベルト10、35の外周面に対してそれぞれ密着性良好に圧接される。また、定着が連続して行われることがあっても、定着ベルト10と加圧ベルト35の双方が各支持ロール50、51でそれぞれ加熱されているため、温度の低い記録用紙Pが触れることによる定着ベルト10や加圧ベルト35の温度低下を素早く回復させることができ、記録用紙Pを高温で安定して加熱することができる。
【0048】
そして、ベルト対面開始部位Qを通過した後の記録用紙Pは、定着ベルト10と加圧ベルト35とで挟持された状態で搬送距離Lだけ搬送された後、定着ニップ部Nにおける定着ベルト10の外周面と第2加圧ロール31に支持される加圧ベルト35の外周面との間に導き入れられる。
【0049】
これにより、記録用紙Pは、両支持ベルト10、35とに挟まれた状態で100℃を超える高温で加熱されることになるため、その用紙中の水分が高温で確実に加熱されて気化し、水蒸気(点線矢印S)となって両支持ベルト10、35の両脇における隙間や用紙Pを挟んでいる部位の周囲(前後左右の非挟持領域)の隙間から主に発散される。この結果、記録用紙Pは、その含水率が定着ニップ部Nに突入する前に大幅に減少する。また、このときの記録用紙Pは、そのトナー像担持面とは反対側の面(裏面)が加圧ベルト35で支持されて定着ベルト10から剥がれにくい状態におかれる。
【0050】
また、記録用紙P上のトナー像Tは、ベルト対面開始部位Qから両支持ベルト10、35で挟持されて搬送される間に定着ベルト35等によって加熱されるため溶融して記録用紙Pに仮定着されるようになり、定着ニップ部Nでの通常の定着時における温度での加熱が不要となる(この例では定着時に加圧ロール30、31による加熱は行っていない)。この結果、定着ニップ部Nにおいて定着温度による加熱を行う必要がなく、そのニップ部Nでの加熱温度を低下させることができる。
【0051】
続いて、定着ニップ部Nに突入した記録用紙Pは、加圧ロール30、31により定着に必要な荷重で強く加圧される。この際、記録用紙Pは、定着ベルト10の余熱により加熱されるが、加圧ロール30、31(の加熱源)により加熱されることはない。
【0052】
定着ニップ部Nを通過した記録用紙Pは、定着ベルト10と加圧ベルト35とに挟持されて定着ベルト10に密着した状態で搬送されるとともに、冷却装置40の熱循環器の熱循環により熱が奪われる第1金属板41を通過する際にトナー像Tと一緒に所定の温度(例えば55〜85℃)になるまで冷却される。
【0053】
この冷却によりトナー像Tが固化されるとともに冷却装置40の熱循環器における第1金属板41を通過した記録用紙Pは、ベルト支持ロール17で構成される用紙剥離手段において紙自身の腰の強さにより自力で定着ベルト10から、トナー画像とともに剥離される(図1の矢付き一点鎖線の先端部で示される状態となる)。この剥離された記録用紙Pは定着装置外に排出される。これによりトナー像Tが記録用紙Pに定着される。
【0054】
このようにして定着された画像は、特に定着ベルト10の平滑な表面にならい平滑化された光沢感に富む画像として得られる。
【0055】
特にこの定着装置1では、前述したように対着対象のトナー像Tを担持する記録用紙Pがベルト対面開始部位Qから両支持ベルト10、35によって挟持搬送された後に定着ニップ部Nに導き入れられることにより、その記録用紙Pの含水率が定着ニップ部Nに突入する前に大幅に減少し、しかも、その記録用紙Pが定着ニップ部Nで改めて定着温度に加熱されることがない。このため、その定着ニップ部Nを通過した後の冷却工程での水蒸気の発生が抑えられるようになる。また、定着ベルト10も定着ニップ部Nで必要以上に加熱されることがなくなり、定着ニップ部Nを通過した後に冷却装置40によって効率よく冷却されるようになる。
【0056】
この結果、定着ニップ部Nを通過した後に水蒸気が発生して記録用紙Pが定着ベルト10から剥離する剥離ブリスターの発生が抑制される。また、これにより、従来技術のごとき、剥離ブリスターに起因した光沢ムラ等の定着不良や紙しわの発生も防止され、良好な定着を行うことが可能となる。
【0057】
図4は、この定着装置1におけるベルト対面開始部位Qから定着ニップ部N手前までのベルト挟持加熱搬送部Eと定着ニップ部Nとを順次通過するときの記録用紙Pの温度が変化する状態を模式的に示すものである。
【0058】
図4に示すように、定着対象の記録用紙Pを定着ニップ部Nに直接導き入れる従来の方式では、室温状態にある記録用紙Pが定着ニップ部Nを通過するまでの間に定着温度まで急激に加熱されるため、そのニップ部Nを通過した頃に水蒸気が発生し得る温度に到達し、その用紙中の水分が水蒸気として発生するものと考えられる。
【0059】
一方、この定着装置1(実施例)では、室温状態にある記録用紙Pがまずベルト挟持搬送部Eを通過することにより急激に水蒸気が発生し得るような高い温度まで加熱され、これにより、その用紙中の水分が水蒸気となって発散される。次いで、その記録用紙Pが定着ニップ部Nを通過する際には、高温で加熱されることがないため、そのニップNを通過する時点ではすでに温度の低下が始まり水蒸気が発生する温度よりも低い温度になっているものと考えられる。これにより、定着ニップ部Nを通過した後の冷却装置40による冷却工程では、水蒸気が発生しにくい状態になっているものと推測される。
【0060】
ちなみに、実施の形態1に係る定着装置1では、記録用紙Pの表裏両面にトナー像Tを形成する場合(両面プリントなどを行う場合)に、その第2面目のトナー像の定着についても、その第1面目の定着と同様に行われる。その際、第1面目の定着済のトナー像は、ベルト対面開始部位Qから記録用紙Pが剥離されるまで加圧ベルト35の外周面に接触した状態に置かれるため、その画像が乱れるおそれはない。
【0061】
《他の実施の形態》
実施の形態1に係る定着装置1では、図5に示すように、定着ベルト10と加圧ベルト35を対面した状態となるようにそれぞれ支持する支持ロール50、51どうしを、その各ベルト10、35の外周面との間が記録用紙Pの厚さ(d)に相当する距離(J)だけ離れた状態となるように設置することができる。この際、各支持ロール50、51としては、前述した弾性層を形成したものをそのまま使用できるほか、その弾性層を形成しないものを使用することもできる。
【0062】
例えば、定着ベルト10として厚さが110μm程度のものを、加圧ベルト35としての厚さが130μm程度のものをそれぞれ使用し、記録用紙Pとして厚さdが50〜300μmの範囲のものを使用する場合には、その両ベルト10、35の外周面どうしの離間距離Jは、少なくとも300μm以上(好ましくは800μm以下)の値になるように設定する。
【0063】
このように構成した場合には、対面する定着ベルト10と加圧ベルト35とがベルト挟持加熱搬送部Eにおいて全面的に対面接触するのではなく僅かに離れた領域が存在する状態に維持されるため(なお、この場合でも、両ベルト10、35は定着ニップ部Nに近づくにつれて対面接触した状態になる)、前述した記録用紙から発生する水蒸気がベルト挟持搬送部Eにおいても効率よく排出されるようになり、記録用紙Pの含水率を定着ニップ部Nの手前で確実に低下させることができる。
【0064】
実施の形態1に係る定着装置1では、図6に示すように、ベルト対面開始部位Qから定着ニップ部Nの間(ベルト挟持加熱搬送部E)に、そのベルト挟持加熱搬送部Eを通過中の記録用紙Pを定着ベルト10の外周面に対して押し付けるように支持する押付け補助ロール55を加圧ベルト35に接した状態で設けることができる。
【0065】
このような押付け補助ロール55を設けた場合には、ベルト対面開始部位Qを通過した後の記録用紙Pが押付け補助ロール55により加圧ベルト35を介して定着ベルト10に押し付けられた状態で支持されながら定着ニップ部Nにむけて搬送される。これにより、ベルト対面開始部位Qを通過した後の記録用紙Pが例えば水蒸気の発生によりベルト挟持加熱搬送部Eの搬送中に定着ベルト10から剥がれようとする挙動を確実に防止することができ、その記録用紙Pの定着ニップ部Nへの良好な導入を実現することが可能となる。
【0066】
また、実施の形態1に係る定着装置1では、図6に示すように、第2加圧ロール31を冷却する冷却装置45を設けることができる。この冷却装置45としては、例えば冷却ファン等の空冷式のものが使用可能である。この冷却装置45による冷却は、定着ニップ部Nの温度がそのニップ部Nを通過する記録用紙Pに含まれる水分が気化しない程度の低温になるように行うとよい。
【0067】
このような冷却装置45を設けた場合には、定着ニップ部Nにおいて、その冷却装置45で冷却される第2加圧ロール31を介して加圧ベルト35や定着ベルト10、記録用紙P等が間接的に冷却される。このため、定着ニップ部Nを通過する際に記録用紙Pが高温(例えば水蒸気が発生し得るような温度)で加熱されることがなく、その定着ニップ部Nを通過する記録用紙Pからの水蒸気の発生を抑制することができる。
【0068】
また、実施の形態1に係る定着装置1では、図7に示すように、加圧ベルト35をベルト対面開始部位Qよりも記録用紙Pの導入方向Cの上流側となる位置まで伸ばした状態となるように、例えばベルト支持ロール34等の追加により設置することもできる。
【0069】
このように加圧ベルト35を延長した状態で設置した場合には、ベルト対面開始部位Qから突出する加圧ベルト35の突出領域Hが存在し、その突出領域Hを定着対象のトナー像Tを担持する記録用紙Pをベルト対面開始部位Qに導入する前の誘導部として利用することができ、この結果、その記録用紙Pのベルト対面開始部位Qへの導入を良好で安定して実現することができる。この場合においても、必要に応じて、前述した補助ロール55や冷却装置45を同様に設置することが可能である(図6参照)。
【0070】
さらに、実施の形態1に係る定着装置1では、必要に応じて、定着ベルト10を加熱する手段として、加熱ロール20、21に代えて、加熱板等の他の加熱手段を適用してもよい。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の定着装置によれば、定着加圧部を通過した後の定着ベルトと記録用紙との間における剥離ブリスターの発生を防止することができる。従って、この定着装置を使用した場合には、その剥離ブリスターに起因した光沢ムラ等の定着不良や紙しわの発生のない、光沢感に優れた定着画像を安定して得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1に係る定着装置を示す概略構成図。
【図2】図1の定着装置における押付けニップ部とその周辺部の構成を示す要部拡大図。
【図3】押付けニップ部を通過させて行う定着動作時の状態を示す要部説明図。
【図4】図1の定着装置による定着動作時の用紙温度の変化状態を示す説明図。
【図5】図1の定着装置の一部を変更した構成例を示す要部拡大図。
【図6】図1の定着装置の一部を変更した他の構成例を示す要部拡大図。
【図7】図1の定着装置の一部を変更した更に他の構成例を示す要部拡大図。
【符号の説明】
1…定着装置、10…定着ベルト、15〜18…ベルト支持ロール、20,21…加熱ロール(加熱手段)、30、31…加圧ロール(加圧回転体)、35…加圧ベルト(支持ベルト)、45…冷却装置(冷却手段)、50,51…支持ロール(支持するロール)、52,53…加熱源(加熱手段)、T…定着対象のトナー像、P…記録用紙、N…定着ニップ部(定着加圧部)、Q…ベルト対面開始部位、J…ベルト外周面の離間距離。
Claims (6)
- 複数のロールに張架されて一定の方向に回転する無端状の定着ベルトと、
この定着ベルトを加熱する加熱手段と、
この加熱手段で加熱された定着ベルトをその外周面および内周面の両側から加圧した状態で挟んでそのベルト外周面との間に定着対象のトナー像を担持する記録用紙を導き入れて加圧するための定着加圧部を形成するように対向配置される加圧回転体と、
この加圧回転体による定着加圧部を通過した後も前記記録用紙を定着ベルトの外周面に密着させた状態で所定の距離だけ搬送してから剥離する剥離手段と、
前記加圧回転体のうち前記定着ベルトの外周面側に配置される加圧回転体と他のロールに張架されて前記定着加圧部を通過した後の記録用紙を定着ベルトの外周面に密着させた状態で保持して搬送するように回転する無端状の支持ベルトとを備えた定着装置において、
前記定着ベルトおよび支持ベルトを、前記加圧回転体の定着加圧部からその回転方向上流側となる位置でその各ベルトの外周面どうしが対面した状態となるように各ベルトの内周面からロールでそれぞれ支持し、その両ベルトが対面し始める部位から前記定着対象のトナー像を担持する記録用紙を導き入れることを特徴とする定着装置。 - 前記定着ベルトおよび支持ベルトを対面した状態となるようにそれぞれ支持するロールの少なくとも一方が、そのロールの表面側に弾性層を形成してなる請求項1に記載の定着装置。
- 前記定着ベルトおよび支持ベルトを対面した状態となるようにそれぞれ支持するロールの少なくとも一方に、そのロールを加熱する加熱手段を設けた請求項1に記載の定着装置。
- 前記定着ベルトと支持ベルトとを対面した状態となるようにそれぞれ支持するロールどうしを、その各ベルトの外周面との間が記録用紙の厚さに相当する距離だけ離れた状態となるように設置されている請求項1に記載の定着装置。
- 前記加圧回転体を定着時に冷却する冷却手段を設けた請求項1に記載の定着装置。
- 前記加熱手段により前記定着ベルトを少なくとも100℃以上の温度に加熱する請求項1〜5のいずれかに記載の定着装置。
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-
2003
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