以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
以下では、シート矯正装置を備える液体吐出方式の印刷装置を一例として、実施形態を説明する。
<印刷装置1の全体構成例>
実施形態に係る印刷装置1の全体構成について、図1を参照して説明する。図1は、印刷装置1の全体構成の一例を説明する図である。図1に示すように、印刷装置1は、搬入部100と、印刷部200と、乾燥部300と、実施形態に係るシート矯正装置で構成されたシート矯正部600と、搬出部400とを備えている。
印刷装置1は、搬入部100から搬入されるシートPに対し、印刷部200で液体を付与して所要の印刷を行う。その後、乾燥部300でシートPに付着した液体を乾燥させた後、シートPに生じたコックリング等の変形をシート矯正部600で矯正し、シートPを搬出部400に排出する。
搬入部100は、複数枚のシートPが積載される搬入トレイ101と、搬入トレイ101からシートPを1枚ずつ分離して送り出す給送装置102と、シートPを印刷部200へ送り込むレジストローラ対130とを備えている。
給送装置102には、ローラやコロを用いた装置や、エア吸引を利用した装置等のあらゆる給送装置を用いることが可能である。給送装置102により搬入トレイ101から送り出されたシートPは、その先端がレジストローラ対130に到達した後、レジストローラ対130が所定のタイミングで駆動されることにより、印刷部200へ送り出される。
印刷部200は、シートPを外周面に担持して搬送する担持ドラム210と、担持ドラム210に担持されたシートPに向けて液体を吐出する液体吐出部220とを備えている。また、印刷部200は、送り込まれたシートPを受け取って担持ドラム210へ渡す渡し胴201と、担持ドラム210によって搬送されたシートPを乾燥部300へ受け渡す受け渡し胴202とを備えている。
搬入部100から印刷部200へ搬送されてきたシートPは、渡し胴201の表面に設けられたシートグリッパによって先端が把持され、渡し胴201の回転に伴って搬送される。渡し胴201により搬送されたシートPは、担持ドラム210との対向位置で担持ドラム210へ受け渡される。
担持ドラム210の表面にもシートグリッパが設けられており、シートPの先端がシートグリッパによって把持される。担持ドラム210の表面には、複数の吸引孔が分散して形成されており、各吸引孔には吸引装置211によって担持ドラム210の内側へ向かう吸い込み気流が発生する。
そして、渡し胴201から担持ドラム210へ受け渡されたシートPは、シートグリッパによって先端が把持されるとともに、吸い込み気流によって担持ドラム210の表面に吸着され、担持ドラム210の回転に伴って搬送される。
液体吐出部220は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色の液体(インク)を吐出して画像を印刷するものであり、液体の色毎に個別の液体をシートPに付与する液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kを備えている。なお、必要に応じて、白色、金色、銀色等の特殊な液体を吐出する液体吐出ヘッド、表面コート液等の処理液を吐出する液体吐出ヘッドを設けることもできる。
液体吐出部220の液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kは、印刷情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。担持ドラム210に担持されたシートPが液体吐出部220に対向する領域を通過するときに、液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kから各色の液体が吐出され、印刷情報に応じた画像が印刷される。ここで、液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kのそれぞれは、液体付与部の一例である。
乾燥部300は、印刷部200から搬送されてくるシートPを吸着して搬送する吸引搬送ベルト301と、吸引搬送ベルト301で搬送されるシートPに対して液体を乾燥させるための温風を吹き付ける温風吹付け部302とを備えている。吸引搬送ベルト301は、例えば駆動ローラ303と従動ローラ304との間に掛け回され、駆動ローラ303を駆動することで周回走行する。
印刷部200から搬送されてきたシートPは、吸引搬送ベルト301に受け取られた後、温風吹付け部302を通過するように搬送され、シート矯正部600に受け渡され、シート矯正部600から搬出部400へ受け渡される。
温風吹付け部302を通過するとき、シートP上の液体には乾燥処理が施される。これにより液体中の水分等の液分が気化(蒸発)し、シートP上に液体中に含まれる着色剤が定着する。
乾燥後のシートPがシート矯正部600を通過することで、シートPで生じたコックリング等の変形が矯正される。
搬出部400は、複数のシートPが積載される排出トレイ410を備えている。シート矯正部600から搬送されてくるシートPは、排出トレイ410上に順次積み重ねられて保持される。
なお、印刷装置1には、シートPに対して前処理を行う前処理部を印刷部200の上流側に配置したり、液体が付与されたシートPに対して後処理を行う後処理部をシート矯正部600と搬出部400との間に配置したりすることもできる。
前処理部としては、液体と反応して滲みを抑制するための処理液をシートPに塗布する先塗り処理を行うもの等が挙げられる。また、後処理部としては、印刷部200で印刷されたシートを反転させて再び印刷部200へ送ってシートPの両面に印刷するためのシート反転搬送処理や、複数枚のシートを綴じる処理を行うもの等が挙げられる。
ここで、乾燥部300は、シートを加熱する加熱装置の一例である。また、加熱装置で構成された乾燥部300と、シート矯正部600とを備えるシステムは、搬送システムの一例である。
実施形態に係る「印刷装置」は、インクジェット記録装置に限らず、シートに向けて液体を吐出する液体吐出ヘッドを備え、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではなく、例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するものも含まれる。
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。
より具体的には、水や有機溶剤等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、等を含む溶液、懸濁液、エマルジョン等であり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液等の用途で用いることができる。
また、「印刷装置」には、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置等が含まれる。
また、「液体吐出ヘッド」とは、吐出孔(ノズル)から液体を吐出・噴射する機能部品である。液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子又は薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータ等の吐出エネルギー発生手段を使用することができるが、使用する吐出エネルギー発生手段が限定されるものではない。
[第1実施形態]
<シート矯正装置601の構成例>
次に、シート矯正部600を構成している第1実施形態に係るシート矯正装置601について、図2及び図3を参照して説明する。図2はシート矯正装置601の構成の一例を説明する図であり、図3はシート加熱ローラ603(603A、603B)部分の構成の一例を説明する図である。
シート矯正装置601は、シートPを挟んで搬送する無端状の上ベルト611と下ベルト612とで構成されるベルト対602を備えている。ベルト対602は、上ベルト611と下ベルト612とが互いに対向(対面)する対向領域G内で、シートPを挟む構成となっている。ここで、上ベルト611は、「第一のベルト」の一例であり、下ベルト612は、「第二のベルト」の一例である。上ベルト611上の対向領域Gとは、図2に示すように、上ベルト611のベルト表面上の領域のうち、下ベルト612のベルト表面の少なくとも一部に直接対向している領域である。同様に、下ベルト612上の対向領域Gとは、図2に示すように、下ベルト612のベルト表面上の領域のうち、上ベルト611のベルト表面の少なくとも一部に直接対向している領域である。
この対向領域GにシートPが進入する入口部608は、入口ローラ625Aと入口ローラ625Bとを含んで構成されている。入口ローラ625Aと入口ローラ625Bは、シートPの搬送方向(矢印Y方向、以下「搬送方向Y」という。)における対向領域Gの開始位置で、対向して設けられている。
入口ローラ625Aと入口ローラ625Bのそれぞれが設けられた位置では、上ベルト611と下ベルト612は対向している。そのため、入口ローラ625Aは対向領域Gで上ベルト611を支持するローラであり、入口ローラ625Bは対向領域Gで下ベルト612を支持するローラである。
ここで、対向領域Gは、入口部608から出口部609に至る、上ベルト611および下ベルト612上の領域である。
また、シート加熱ローラ603は、第一のベルトと第二のベルトとが互いに対向する対向領域Gで、第一のベルトと第二のベルトのうちの少なくとも一方のベルトを加熱する第一加熱部材の一例である。
入口ローラ625A及び625Bのそれぞれは、モータ等の駆動部に接続されておらず、走行するベルト対602に従って従動回転(連れ回り)する従動ローラである。
また、対向領域GをシートPが抜け出る出口部609は、出口ローラ621Aと出口ローラ621Bとを含んで構成されている。出口ローラ621Aと出口ローラ621Bは、搬送方向Yにおける対向領域Gの終了位置で、対向して設けられている。
出口ローラ621Aと出口ローラ621Bのそれぞれが設けられた位置では、上ベルト611と下ベルト612は対向している。そのため、出口ローラ621Aは対向領域Gで上ベルト611を支持するローラであり、出口ローラ621Bは対向領域Gで下ベルト612を支持するローラである。
出口ローラ621A及び621Bのそれぞれは、モータ等の駆動部に接続され、回転駆動される搬送ローラである。上ベルト611は、出口ローラ621Aとベルトの内側で接触することで駆動力を伝達され、出口ローラ621Aの回転に伴って、矢印で示した走行方向611aの方向に周回走行する。下ベルト612は、出口ローラ621Bとの接触により駆動力を伝達され、出口ローラ621Bの回転に伴って、矢印で示した走行方向612aの方向に周回走行する。
ここで、上ベルト611と下ベルト612は、対向領域Gの開始位置で必ずしも接触していなくてもよい。図2の例では、上ベルト611と下ベルト612は対向領域Gの開始位置で接触しておらず、第1押し付け部材606が設けられた位置から、上ベルト611と下ベルト612は接触し始めている。
同様に、上ベルト611と下ベルト612は、対向領域Gの終了位置で必ずしも接触しなくてもよいが、図2の例では、上ベルト611と下ベルト612は、対向領域Gの終了位置で接触している。
対向領域G内の挟持領域Hで、ベルト対602は、入口部608から対向領域Gに進入したシートPを挟んで搬送する。ここで、挟持領域Hとは、ベルト対602において、上ベルト611と下ベルト612がシートPを挟んで搬送する領域をいう。搬送方向Yに沿って、上ベルト611と下ベルト612とが接触を開始する位置から終了する位置までの領域で、上ベルト611と下ベルト612がシートPを挟んで搬送する領域が、挟持領域Hに該当する。
ここで、上ベルト611と下ベルト612とが接触を開始する位置は、搬送方向Yに沿って搬送されるシートPが挟持領域Hに進入する位置であり、入口位置の一例である。また、上ベルト611と下ベルト612とが接触を終了する位置は、搬送方向Yに沿って搬送されるシートPが挟持領域Hから抜け出る位置であり、出口位置の一例である。
図2の例では、搬送方向Yの最も上流側で、第1押し付け部材606とシート加熱ローラ603Aとで形成されるニップ部Nsが入口位置に対応する。また、出口ローラ621Aと出口ローラ621Bとで形成されるニップ部Neが出口位置に対応する。
上ベルト611は、走行方向611aにおける出口部609から入口部608までの領域で、ステアリングコントロールローラ622A、テンションローラ623A、及びベルト加熱ローラ624Aにより支持されている。なお、本実施形態においては、ベルトを支持するローラとは、ベルトの内表面に接触してベルトを支持するローラおよびベルトの外表面に接触してベルトを支持するローラの双方を含む。
ここで、走行方向611aにおける出口部609から入口部608までの領域は、上ベルト611と下ベルト612が対向していない領域である対向領域G以外の領域に該当する。従って、ステアリングコントロールローラ622A、テンションローラ623A、及びベルト加熱ローラ624Aは、対向領域G以外の領域で上ベルト611を支持している。テンションローラ623Aは、対向領域G以外の領域で上ベルト611の外表面に接触して上ベルト611を支持している。
下ベルト612は、走行方向612aにおける出口部609から入口部608までの間で、ステアリングコントロールローラ622B、テンションローラ623B、及びベルト加熱ローラ624Bにより支持されている。走行方向612aにおける出口部609から入口部608までの領域は、上記の対向領域G以外の領域に該当する。従って、ステアリングコントロールローラ622B、テンションローラ623B、及びベルト加熱ローラ624Bは、対向領域G以外の領域で下ベルト612を支持している。
ステアリングコントロールローラ622Aは、ローラの角度を変えて上ベルト611の走行方向611aを変えることで、ベルト対602によるシートPの搬送方向を変更することができる。ステアリングコントロールローラ622Bは、ローラの角度を変えて下ベルト612の走行方向612aを変えることで、ベルト対602によるシートPの搬送方向を変更することができる。
テンションローラ623A及び623Bは、ベルト対602のシートPを挟み持つベルト面が、搬送方向Yの上流側と下流側とに引っ張られる方向に作用する張力を、ベルト対602の上ベルト611及び下ベルト612のそれぞれに付与する。ここで、テンションローラ623A及び623Bのそれぞれは、張力付与部材の一例である。
ベルト加熱ローラ624Aは、上ベルト611にベルトの内側から接触して、上ベルト611に従動回転する従動ローラである。また、ベルト加熱ローラ624Aは、ヒータ626を内蔵し、上ベルト611を内側から所定の温度に加熱できる。なお、ベルト加熱ローラ624Aによる加熱温度は、80〜140度等の範囲で設定される。
ベルト加熱ローラ624Aは、対向領域G以外の領域で、上ベルト611と下ベルト612のうちの少なくとも一方のベルトである上ベルト611と接触し、上ベルト611を加熱するローラであり、第二加熱部材の一例である。ここで、上ベルト611におけるベルトの内側は、上ベルト611において挟持領域HでシートPが接触する側とは反対側である。
図2に示すように、ベルト加熱ローラ624Aは、対向領域G以外の領域で上ベルト611を支持するステアリングコントロールローラ622A、テンションローラ623A、及びベルト加熱ローラ624Aのうち、上ベルト611の走行方向611aにおける下流側で、挟持領域Hの出口位置に対応するニップ部Neから最も遠くに設けられている。換言すると、ベルト加熱ローラ624Aは、上ベルト611と下ベルト612のうちの少なくとも一方のベルトを対向領域G以外の領域で支持する複数の支持部材のうち、挟持領域Hの出口位置に対応するニップ部Neからみて最も遠くに設けられた支持部材である。
また、ベルト加熱ローラ624Aは、対向領域G以外の領域で上ベルト611を支持するステアリングコントロールローラ622A、テンションローラ623A、及びベルト加熱ローラ624Aのうち、上ベルト611の走行方向611aにおける上流側で、挟持領域Hの入口位置に対応するニップ部Nsの最も近くに設けられている。換言すると、ベルト加熱ローラ624Aは、上ベルト611と下ベルト612のうちの少なくとも一方のベルトを対向領域G以外の領域で支持する複数の支持部材のうち、挟持領域Hの入口位置に対応するニップ部Nsからみて最も近くに設けられた支持部材である。
また、図1で説明したように、搬送方向Yにおけるシート矯正装置601の上流側(図2の右方)には乾燥部300が設けられている。そのため、ベルト加熱ローラ624Aは、対向領域G以外の領域で上ベルト611を支持するステアリングコントロールローラ622A、テンションローラ623A、及びベルト加熱ローラ624Aのうち、乾燥部300の最も近くに設けられている。換言すると、ベルト加熱ローラ624Aは、上ベルト611と下ベルト612のうちの少なくとも一方のベルトを対向領域G以外の領域で支持する複数の支持部材のうち、乾燥部300の最も近くに設けられたローラである。
一方、ベルト加熱ローラ624Bは、下ベルト612にベルトの内側から接触して、下ベルト612に従動回転する従動ローラである。また、ベルト加熱ローラ624Bは、ヒータ626を内蔵し、下ベルト612を内側から所定の温度に加熱できる。なお、ベルト加熱ローラ624Bによる加熱温度は、80〜140度等の範囲で設定される。
ベルト加熱ローラ624Bは、対向領域G以外の領域で下ベルト612を支持し、下ベルト612の対向領域G以外の領域の部分を加熱するローラであり、第二加熱部材の一例である。ここで、下ベルト612におけるベルトの内側は、下ベルト612において挟持領域HでシートPが接触する側とは反対側である。
図2に示すように、ベルト加熱ローラ624Bは、対向領域G以外の領域で下ベルト612を支持するステアリングコントロールローラ622B、テンションローラ623B、及びベルト加熱ローラ624Bのうち、下ベルト612の走行方向612aにおける下流側で、挟持領域Hの出口位置に対応するニップ部Neからみて最も遠くに設けられている。換言すると、ベルト加熱ローラ624Bは、上ベルト611と下ベルト612のうちの少なくとも一方のベルトを対向領域G以外の領域で支持する複数の支持部材のうち、挟持領域Hの出口位置に対応するニップ部Neからみて最も遠くに設けられた支持部材である。
また、ベルト加熱ローラ624Bは、対向領域G以外の領域で下ベルト612を支持するステアリングコントロールローラ622B、テンションローラ623B、及びベルト加熱ローラ624Bのうち、下ベルト612の走行方向612aにおける上流側で、挟持領域Hの入口位置に対応するニップ部Nsの最も近くに設けられている。換言すると、ベルト加熱ローラ624Bは、上ベルト611と下ベルト612のうちの少なくとも一方のベルトを対向領域G以外の領域で支持する複数の支持部材のうち、挟持領域Hの入口位置に対応するニップ部Nsからみて最も近くに設けられた支持部材である。
また、ベルト加熱ローラ624Bは、対向領域G以外の領域で下ベルト612を支持するステアリングコントロールローラ622B、テンションローラ623B、及びベルト加熱ローラ624Bのうち、乾燥部300の最も近くに設けられている。換言すると、ベルト加熱ローラ624Bは、上ベルト611と下ベルト612のうちの少なくとも一方のベルトを対向領域G以外の領域で支持する複数の支持部材のうち、乾燥部300の最も近くに設けられた支持部材である。
ここで、シート矯正装置601は、挟持領域Hにおいて、ベルト対602の上ベルト611又は下ベルト612の少なくとも一方に接触し、搬送方向Yに沿って配置されている複数(ここでは、3個)のシート加熱ローラ603(603A、603B)を備えている。シート加熱ローラ603は、ベルト対602の一部を湾曲形状に変形(湾曲変形)させている。
シート加熱ローラ603は、ヒータ604を内蔵しており、ベルト対602に接触してベルト対602を加熱する。シート加熱ローラ603は、ベルト対602を介してシート加熱ローラ603に押し付けられて湾曲変形しているシートPの領域を加熱する。これにより、シートPに生じたコックリング等の変形を矯正する。
図2の例では、挟持領域H内において、シート加熱ローラ603Aとシート加熱ローラ603Bとを、搬送方向Yにおいて交互に配置している。ベルト対602の下ベルト612側をシート加熱ローラ603Aの周面603a(図3参照)に押し付けることで、ベルト対602は上方に凸形状となるように湾曲変形される。また、ベルト対602の上ベルト611側をシート加熱ローラ603Bの周面603aに押し付けることで、ベルト対602は下方に凸形状となるように湾曲変形される。
つまり、シートPの搬送方向Yにおいて、シートPの一面側が凸形状になる方向に湾曲変形させるシート加熱ローラ603Aと、シートPの他面側が凸形状になる方向に湾曲変形させるシート加熱ローラ603Bとが交互に配置されている。なお、シート加熱ローラ603Bを最上流側にしてシート加熱ローラ603Aとシート加熱ローラ603Bとを交互に配置することもできる。
そして、シート加熱ローラ603の周面(曲面)に対向し、ベルト対602をシート加熱ローラ603の周面に押し付けるためのローラ状の第1押し付け部材606と、同じくローラ状の第2押し付け部材607とが搬送方向Yに沿って配置されている。ここで、相対的に、第1押し付け部材606は搬送方向Yの上流側に配置され、第2押し付け部材607は搬送方向Yの下流側に配置されている。
第1押し付け部材606は、ベルト対602がシート加熱ローラ603の周面603aに接触を開始する押し付け開始位置(巻き付け開始位置)を決めている。第2押し付け部材607は、ベルト対602がシート加熱ローラ603の周面603aから離間する押し付け終了位置(巻き付け終了位置)を決めている。
ここで、搬送方向Yで隣り合うシート加熱ローラ603の内の、上流側のシート加熱ローラ603に対向する第2押し付け部材607と下流側のシート加熱ローラ603に対向する第1押し付け部材606部材との間は離れている。また、上流側のシート加熱ローラ603と下流側のシート加熱ローラ603は、上流側の第2押し付け部材607と下流側の第1押し付け部材606との間でベルト対602が湾曲しない状態になる間隔で配置されている。
これにより、シート加熱ローラ603の周面に倣って一旦湾曲したベルト対602の応力を解放することができ、次段のシート加熱ローラ603に対する密着性を向上させることができる。
<シート加熱ローラ603の作用効果>
次に、シート加熱ローラ603の作用効果について図4も参照して説明する。図4は、シート加熱ローラ603の作用を説明する図であり、シート加熱ローラ603の部分の斜視図である。なお、図4では、ベルト対602を透視して示している。
図4に示すように、シートPにコックリング(波打ち)Cが残った状態であるとき、シートPをシート加熱ローラ603の周面603a等の湾曲面に張力をかけながら巻き付けると、巻き付いている間は、波打ちが消える。これは、液体が付与されて膨潤している部分と液体が付与されていない部分のシートPの長さを強制的に同じ長さにできるためである。
しかしながら、湾曲面に張力をかけながら巻き付けただけでは、張力がなくなると波打ちが元に戻り矯正されない。
そこで、シートPをシート加熱ローラ603で加熱してシートP内の水分や有機溶剤を飛ばしながらしごくことで、液体が付与された部分と液体が付与されていない部分の長さを同じにでき、シートPのコックリング等の変形を矯正することができる。
つまり、図3に示すように、シートPを2つの上ベルト611と下ベルト612との間に挟み持ち、この状態で、ベルト対602をシート加熱ローラ603の周面603aに押し付けることで、ベルト対602はシートPを挟持したまま湾曲状に変形される。
このとき、上ベルト611及び下ベルト612には、テンションローラ623A、623Bによって、シート加熱ローラ603の周面603aに押し付けられる方向(図3で矢印B方向)に力が加わるように張力が付与されている。
そして、上ベルト611と下ベルト612に挟まれたシートPには、上ベルト611及び下ベルト612とシートPとの間の摩擦力によって矢印B方向に張力がかかっている状態で、シート加熱ローラ603の周面603a(湾曲面)に押し付けられる。
これにより、シートPはシート加熱ローラ603によって加熱され、シート加熱ローラ603の周面603aに倣うことによって、液体が付与された部分と液体が付与されていない部分の長さが同じになってシートPのコックリング等の波打ち変形が矯正される。
このように、シートPを加熱した状態で、シートPに張力を付与しながらシート加熱ローラ603に押し付けて湾曲変形させることで、効率的にシートの変形を矯正することができる。
そして、本実施形態では、図2に示すように、上ベルト611と下ベルト612の挟持領域Hに接触し、搬送方向Yに沿って、複数のシート加熱ローラ603(603A、603B)を配置している。
つまり、上述したように、シートPをシート加熱ローラ603で加熱してシートP内の水分を飛ばしながらしごくことで、液体が付与された部分と液体が付与されていない部分の長さを同じにでき、シートPのコックリング等の波打ち変形を矯正することができる。
この場合、1つのシート加熱ローラ603の周面に大きな巻き付け角度で巻き付けるよりも、複数のシート加熱ローラ603に小さな巻き付け角で複数回巻き付ける方が、矯正効果が大きくなる。
例えば、φ80のローラにシートPを1回で90度の巻き付け角θで巻きつけた場合よりも、30度の巻き付け角θによる巻きつけを3回行った場合の方が、シートPの変形に対する矯正効果が大きくなる。
そして、本実施形態では、ベルト対602を上方に凸形状となるように湾曲させるシート加熱ローラ603Aと、ベルト対602を下方に凸形状となるように湾曲させるシート加熱ローラ603Bとを交互に配置している。
これによって、シートPは上下方向に交互に凸形状になるように両面がシート加熱ローラ603に押し付けられるため、カールの発生を抑制しながら、より確実にシートの変形(コックリング)を矯正することができる。
<ベルト加熱ローラ624(624A、624B)の作用効果>
次に、ベルト加熱ローラ624の作用効果について図5も参照して説明する。図5は、ベルト加熱ローラ624Aの作用を説明する図であり、ベルト加熱ローラ624Aの近傍を拡大して示す図である。
なお、ベルト加熱ローラ624Aとベルト加熱ローラ624Bでは、ベルト加熱ローラ624Aは上ベルト611を加熱し、ベルト加熱ローラ624Bは下ベルト612を加熱する点を除き、作用効果は同様である。そのため、以下ではベルト加熱ローラ624Aの作用効果を代表して説明し、ベルト加熱ローラ624Bの作用効果の重複する説明を省略する。
ここで、シートPの変形を矯正するために、挟持領域Hでシート加熱ローラ603によりシートPを加熱すると、シートP内の水分や有機溶剤が加熱により気化する。そして、気化した水分や有機溶剤を含む空気(以下、湿潤空気という)がベルト対602のベルト面の表面近傍に滞留し、その後、ベルト対602が走行する過程で冷却されることで、ベルト面で結露が生じる場合がある。
ベルト対602に結露した水分や有機溶剤は、挟持領域Hでシート加熱ローラ603がベルト対602を加熱した際に熱量を奪うため、挟持領域Hにおけるベルト対602の加熱効率を低下させる。また、結露した水分や有機溶剤が、シートPに印刷された画像に付着すると、液体の滲み等の画像不良を生じさせる場合がある。さらに、結露した水分や有機溶剤が電気回路や配線等に付着して短絡等で故障を生じさせる場合もある。
このような結露を防ぐために、対向領域Gで上ベルト611を支持する入口ローラ625A等のローラに加熱機能を備えさせ、上ベルト611を加熱して、結露を防止することも考えられる。しかし、対向領域Gでは上ベルト611に対向して下ベルト612が配置されているため、気化した水分や有機溶剤が対向するベルト間で滞留して外部に拡散しにくい。その結果、湿潤空気がベルト面近傍に滞留し、結露が生じやすくなる場合がある。
これに対し、本実施形態では、ベルト加熱ローラ624Aが対向領域G以外の領域で上ベルト611を支持し、上ベルト611の対向領域G以外の領域の部分を加熱する。対向領域G以外の領域では、上ベルト611に下ベルト612が対向していないため、湿潤空気をベルト間で滞留させることなく、外部に拡散させることができる。これにより、ベルト面での結露を防止できる。結露を防止することで、結露した水分や有機溶剤に起因するシート加熱ローラ603の伝熱効率の低下を抑えて上ベルト611を効率よく加熱できる。加熱効率を上げることでシートPの変形を適切に矯正することができる。
また、結露を防止することで、結露した水分や有機溶剤がシートPに付着することによる画像不良を防止できる。さらに、結露した水分や有機溶剤が電気回路等に付着することによる故障を防止できる。
また、本実施形態では、ベルト加熱ローラ624Aのローラ径は入口ローラ625Aのローラ径よりも大きい。これにより、ベルト加熱ローラ624Aとして径の大きなものを用いることで上ベルト611の加熱効率を高めることができ、かつ、入口ローラ625Aとして径の小さいものを用いることで装置を小型にできる。
なお、ベルト加熱ローラ624Aによる上ベルト611の加熱温度は、湿潤空気を拡散させるために十分な温度を実験又はシミュレーションで予め定めておき、該温度で加熱すると好適である。
また、本実施形態では、上ベルト611を内側から加熱することで、上ベルト611の外側のベルト面近傍の湿潤空気を、図5に破線の矢印で示した外側方向に向けて拡散させる。これにより、上ベルト611の内側方向に向けて拡散させる場合と比較して、湿潤空気をより広い空間に拡散させ、湿潤空気の滞留を抑制できる。
一方、上述したように、結露は、出口部609から入口部608までの間を上ベルト611が走行する過程で、上ベルト611のベルト面近傍に滞留した湿潤空気が冷却されて生じる場合がある。挟持領域Hの出口位置から抜け出た後、走行距離が長くなるほど、ベルトの冷却が進み、結露が生じやすくなる。
そこで、本実施形態では、上ベルト611を対向領域G以外の領域で支持する複数のローラのうち、挟持領域Hの出口位置に対応するニップ部Neから最も遠くに設けられたベルト加熱ローラ624Aにより、上ベルト611を加熱する。これにより、長い距離を走行した後の上ベルト611を加熱して、冷却を抑制することができ、ベルト面での結露を防止できる。
また、テンションローラ623Aは、上ベルト611の外側のベルト面に接触するローラであるため、上ベルト611の外側のベルト面に対する冷却作用が大きい。
そのため、本実施形態では、テンションローラ623Aの下流側で、ベルト加熱ローラ624Aが上ベルト611を加熱する。これにより、テンションローラ623Aによって冷却された上ベルト611を、すぐに加熱することができ、結露を好適に防止できる。
一方で、上ベルト611は、挟持領域Hで加熱された後、出口部609から入口部608までの間を走行する過程で冷却されることで、上ベルト611の温度が下がり、挟持領域Hで上ベルト611を効率的に再加熱できない場合がある。
これに対し、本実施形態では、上ベルト611を対向領域G以外の領域で支持する複数のローラのうち、挟持領域Hの入口位置に対応するニップ部Nsの最も近くに設けられたベルト加熱ローラ624Aにより、上ベルト611を加熱する。
挟持領域Hのより近くで上ベルト611を加熱するため、出口部609から入口部608までの間を走行する過程で冷却した上ベルト611の温度を、挟持領域Hの入口位置付近で再上昇させることができる。これにより、温度を十分に上げた状態で上ベルト611を挟持領域Hに送り込むことができ、挟持領域Hで上ベルト611を効率的に再加熱できる。
また、シート矯正装置601の上流側で、乾燥部300により、シートPに付与された液体を加熱して乾燥させるため、加熱により生じた湿潤空気が乾燥部300からシート矯正装置601に流れ、上ベルト611のベルト面等で結露する場合がある。
これに対し、本実施形態では、上ベルト611を対向領域G以外の領域で支持する複数のローラのうち、乾燥部300の最も近くに設けられたベルト加熱ローラ624Aにより、上ベルト611を加熱する。これにより、乾燥部300の最も近くの結露しやすい位置で、上ベルト611の冷却を抑制でき、結露を防止できる。
(第1変形例)
<シート矯正装置601aの構成例>
次に、第1変形例に係るシート矯正装置601aについて、図6及び図7を参照して説明する。図6はシート矯正装置601aの構成の一例を説明する図であり、図7は湾曲部材633(633A、633B)部分の構成の一例を説明する図である。
本変形例では、挟持領域Hで、ベルト対602の上ベルト611又は下ベルト612に接触し、湾曲面633aを有する、断面が略半円形状の複数の湾曲部材633(633A、633B)を配置している。湾曲部材633はヒータ部634を備え、シートPを湾曲変形させるとともに加熱することができる。
本変形例においても、挟持領域Hで上ベルト611又は下ベルト612の少なくとも一方に接触する湾曲部材633Aと湾曲部材633Bとを、搬送方向Yにおいて交互に配置している。
そして、ベルト対602の下ベルト612側を湾曲部材633Aの湾曲面633aに押し付けることで、ベルト対602は上方に凸形状になる方向に湾曲変形される。また、ベルト対602の上ベルト611側を湾曲部材633Bの湾曲面633aに押し付けることで、ベルト対602は下方に凸形状となる方向に湾曲変形される。
つまり、搬送方向Yにおいて、シートPの一面側が凸形状になるように湾曲変形させる湾曲部材633Aと、シートPの他面側が凸形状になる方向に湾曲変形させる湾曲部材633Bとが交互に配置されている。なお、湾曲部材633Bを最上流側にして湾曲部材633Aと湾曲部材633Bとを交互に配置することもできる。
そして、本変形例でも、第1押し付け部材606と、第2押し付け部材607とが搬送方向Yに沿って配置されている。
第1押し付け部材606は、ベルト対602が湾曲部材633の湾曲面633aに接触を開始する押し付け開始位置(巻き付け開始位置)を決めている。第2押し付け部材607は、ベルト対602が湾曲部材633の湾曲面633aから離間する押し付け終了位置(巻き付け終了位置)を決めている。
ここで、搬送方向Yで隣り合う湾曲部材633、633の内の、上流側の湾曲部材633に対向する第2押し付け部材607と下流側の湾曲部材633に対向する第1押し付け部材606部材との間は離れている。また、上流側の湾曲部材633と下流側の湾曲部材633は、上流側の第2押し付け部材607と下流側の第1押し付け部材606との間でベルト対602が湾曲しない状態になる間隔で配置されている。
これにより、湾曲部材633の湾曲面633aに倣うことで一旦湾曲したベルト対602の応力を解放することができ、次段の湾曲部材633に対する密着性を向上することができる。
また、上述した第1実施形態と同様の押し付け第1押し付け部材606及び第2押し付け部材607を湾曲部材633に対向して移動可能に配置している。
本変形例の構成においても、図7に示すように、上ベルト611と下ベルト612に挟まれたシートPには、上ベルト611及び下ベルト612とシートPとの間の摩擦力によって矢印B方向に張力がかかっている状態で、湾曲部材633の湾曲面633aに押し付けられる。
これにより、シートPは湾曲部材633によって加熱され、湾曲部材633の湾曲面633aに倣うことによって、液体が付与された部分と液体が付与されていない部分の長さが同じになってシートPのコックリング等の波打ち変形が矯正される。
(第2変形例)
<シート矯正装置601bの構成例>
次に、第2変形例に係るシート矯正装置601bについて、図8を参照して説明する。図8はシート矯正装置601bの構成の一例を説明する図である。
図8に示すように、シート矯正装置601bは、挟持領域Hで、ベルト対602の上ベルト611に接触するシート加熱ローラ635Bと、下ベルト612に接触するシート加熱ローラ635Aとを備えている。シート加熱ローラ635A及び635Bのそれぞれが、複数(ここでは3個)ずつ搬送方向Yに沿って交互に配置されている。シート加熱ローラ635(635A、635B)は、ベルト対602の一部を湾曲形状に変形(湾曲変形)させることができる。
シート加熱ローラ635A及び635Bのそれぞれは、ヒータ637を内蔵しており、ベルト対602を介してシート加熱ローラ635に押し付けられて湾曲変形しているシートPの領域を加熱する。これにより、シートPに生じたコックリング等の変形を矯正する。
換言すると、本変形例では、第1実施形態に係るシート矯正装置601の構成から第1押し付け部材606と第2押し付け部材607とを除き、これらに代えてシート加熱ローラ635Bを設けている。これにより、挟持領域H内でのベルト対602の加熱領域を増加させている。また、シート矯正装置601におけるシート加熱ローラ603と比較して、シート加熱ローラ635を小径化することで、シートPをしごく効果を向上させている。
[第2実施形態]
<シート矯正装置601cの構成例>
次に、第2実施形態に係るシート矯正装置601cについて、図9を参照して説明する。図9はシート矯正装置601cの構成の一例を説明する図である。
図9に示すように、シート矯正装置601cは、挟持領域Hにおいて、ベルト対602の上ベルト611に接触するシート加熱ローラ636を備えている。複数(ここでは3個)のシート加熱ローラ636は、搬送方向Yに沿って配置されている。シート加熱ローラ636は、ベルト対602の一部を湾曲形状に変形(湾曲変形)させることができる。
シート加熱ローラ636は、ヒータ638を内蔵しており、ベルト対602を介してシート加熱ローラ636に押し付けられて湾曲変形しているシートPの領域を加熱して、シートPに生じたコックリング等の変形を矯正する。図9の例では、挟持領域H内において、シート加熱ローラ636とシート加熱ローラ635Aが、搬送方向Yに沿って交互に配置されている。
また、シート加熱ローラ636は、シート加熱ローラ636を昇降させる昇降モータ(図示を省略)に機械的に接続されている。昇降モータの駆動によりシート加熱ローラ636を一体にして、図9に破線の矢印で示す636a方向に昇降可能(移動可能)になっている。シート加熱ローラ636を636a方向に昇降させることで、シート加熱ローラ635Aに対する下ベルト612の巻き付け角度と、シート加熱ローラ636に対する上ベルト611の巻き付け角度をそれぞれ所定の角度に変化させることができる。
ここで、図10は、シート加熱ローラ636の昇降による巻き付け角度の変化を説明する図であり、(a)は下降させた場合を説明する図、(b)は上昇させた場合を説明する図である。
図10(a)に示すように、シート加熱ローラ636を一点鎖線の矢印方向に下降させると、ベルト対602はシート加熱ローラ635Aに押し付けられ、巻き付け角度がより大きくなるように作用する。この場合の巻き付け角度をθ1とする。一方、シート加熱ローラ636を図10(a)の状態から二点鎖線の矢印方向に上昇させると、ベルト対602のシート加熱ローラ635Aへの押し付け力は弱まり、巻き付け角度が小さくなるように作用する。この場合の巻き付け角度はθ1より小さいθ2となる。
このように巻き付け角度を変化させることで、シート加熱ローラ635AによるシートPの加熱領域を変化させ、シート矯正装置601cによるシートPの矯正量を変化させることができる。なお、図9及び図10では、シート加熱ローラ636を昇降させる例を示したが、シート加熱ローラ635Aを昇降させてもよい。また、シート加熱ローラ636とシート加熱ローラ635Aの両方を昇降させてもよい。但し、シート矯正装置601cの動作を安定化させるためには、可動部をできるだけ少なくし、ヒータに接続された電気ケーブルができるだけ動かないようにすることが好ましい。
図10では2通りの巻き付け角度の例を示したが、シート加熱ローラ636の昇降量を任意に変化させることで、巻き付け角度を多様に変化させることもできる。昇降量と巻き付け角度との関係を示す情報は、実験やシミュレーション等で予め取得されており、該情報に基づきシート加熱ローラ636を昇降させることで、巻き付け角度を所定の角度に変化させることができる。
また、シート加熱ローラ636の昇降量に応じたベルト対602の巻き付け角度は、シート加熱ローラ635Aとシート加熱ローラ636でほぼ等しくなるように、シート加熱ローラ635A及び636に対するベルト対602の位置が予め調整されている。
なお、シート加熱ローラ636を昇降させる駆動部は、駆動力を付与するものであれば、モータに限定されるものではない。また、シート加熱ローラ636を鉛直方向に昇降させる例を示したが、搬送方向Yが水平方向以外の場合には、鉛直方向以外の方向にシート加熱ローラ636を移動させてもよい。
<制御部110の機能構成例>
次に、シート矯正装置601cに備えられ、昇降モータの駆動制御等を行う制御部110の機能構成を説明する。図11は、制御部110の機能構成の一例を説明するブロック図である。図11に示すように、制御部110は、シート種類情報取得部111と、液体付与量情報取得部112と、巻き付け角度可変部113とを備える。
これらの機能は何れも電子回路で実現される。但し、これに限定されるものではなく、一部又は全部の機能を、CPU(Central Processing Unit)が所定のソフトウェアを実行することで実現してもよい。また、複数の回路又は複数のソフトウェアの組合せによって実現してもよい。
上記に示したもののうち、シート種類情報取得部111は、シート矯正装置601cで変形を矯正するシートPの種類を識別するための識別情報を取得する。シートPの種類には、普通紙やコート紙、厚紙等が挙げられる。また、シートPの坪量やサイズ等のシートPの特性情報が識別情報に含まれてもよい。シート種類情報取得部111は、印刷装置1による印刷を制御するプリンタコントローラから識別情報を取得し、取得結果を巻き付け角度可変部113に出力する。
また、液体付与量情報取得部112は、シートPに付与される液体付与量情報を取得する。シートPへの液体の付与量は、シートPに印刷される画像や印刷条件等の印刷情報に応じて異なる。液体付与量情報取得部112は、プリンタコントローラから液体付与量情報を取得し、取得結果を巻き付け角度可変部113に出力する。
巻き付け角度可変部113は、上記の識別情報又は液体付与量情報の少なくとも一方に基づき、昇降モータ114を駆動制御してシート加熱ローラ636を昇降させ、ベルト対602のシート加熱ローラ635A及び636への巻き付け角度を所定の角度に変化させる。識別情報及び液体付与量情報のそれぞれとシート加熱ローラ636の昇降量との関係を示す情報は、実験やシミュレーション等で予め取得されている。巻き付け角度可変部113は、該情報に基づき昇降モータ114を駆動制御して、巻き付け角度を所定の角度に変化させることができる。
<制御部110による処理例>
図12は、制御部110による処理の一例を説明するフローチャートである。
まず、ステップS121において、制御部110は、矯正対象となるシートPの種類を変更するか否かを判定する。
ステップS121で、シートPの種類を変更すると判定された場合は(ステップS121、Yes)、ステップS122において、シート種類情報取得部111は、シートPの識別情報を取得して、取得結果を巻き付け角度可変部113に出力する。一方、ステップS121で、シートPの種類を変更しないと判定された場合は(ステップS121、No)、処理はステップS123に移行する。
続いて、ステップS123において、制御部110は印刷情報を変更するか否かを判定する。
ステップS123で、印刷情報を変更すると判定された場合は(ステップS123、Yes)、ステップS124において、液体付与量情報取得部112は、液体付与量情報を取得して、取得結果を巻き付け角度可変部113に出力する。一方、ステップS123で、シートPの種類を変更しないと判定された場合は(ステップS123、No)、処理はステップS125に移行する。
続いて、ステップS125において、巻き付け角度可変部113は、識別情報又は液体付与量情報の少なくとも一方に基づき、昇降モータ114を駆動制御してシート加熱ローラ636を昇降させ、ベルト対602のシート加熱ローラ635A及び636への巻き付け角度を所定の角度に変化させる。なお、シートPの種類及び印刷情報を何れも変更しない場合は、昇降モータ114の昇降量はゼロとなって巻き付け角度は変化しない。
このようにして、制御部110は、シートPの種類又は液体付与量の少なくとも一方に基づき巻き付け角度を変化させることができる。
<シート矯正装置601cの作用効果>
以上説明したように、本実施形態では、シートPの種類、又はシートPへの液体の付与量の少なくとも一方に基づき、ベルト対602における少なくとも一方のベルトのシート加熱ローラ636への巻き付け角度を所定の角度に変化させる。巻き付け角度に応じて、少なくとも一方のベルトのシート加熱ローラ636への接触面積が変わるため、シート加熱ローラ636による加熱量を変化させることができる。そして、加熱量を変化させることでシートPの変形の矯正量を変化させることができ、シートPの種類又はシートPへの液体付与量に応じて、シートPの変形の矯正を適切に行うことができる。
また、シートPが厚紙である場合には、巻き付け角度を浅くすることで、挟持領域HにおけるシートPの搬送を安定化させることができる。
なお、上述した例では、シート矯正装置601cが制御部110を備えるものを説明したが、これに限定されるものではなく、印刷装置1における印刷部200等の他の構成部が制御部110を備えても良い。
また、上述した以外の効果は、第1実施形態で説明したものと同様である。
[第3実施形態]
<シート矯正装置601dの構成例>
次に、第3実施形態に係るシート矯正装置601dについて、図13を参照して説明する。図13はシート矯正装置601dの構成の一例を説明する図である。
図13に示すように、シート矯正装置601dは、シート加熱ローラ635の温度を検出するローラ温度センサ639と、ベルト加熱ローラ624の温度を検出するベルト温度センサ627(627A、627B)とを備えている。6個のシート加熱ローラ635毎に6個のローラ温度センサ639が設けられ、2個のベルト加熱ローラ624毎に2個のベルト温度センサ627が設けられている。
ローラ温度センサ639は、複数のシート加熱ローラ635のそれぞれの外周面において、上ベルト611に接触する位置とは反対側の位置の温度を検出するように配置されている。但し、これに限定されるものではなく、ローラ温度センサ639は、シート加熱ローラ635の外周面における任意の位置の温度を検出してもよい。
ベルト温度センサ627Aは、上ベルト611の走行方向611aにおけるベルト加熱ローラ624Aの下流側に設けられ、この位置での上ベルト611の外側におけるベルト面の温度を検出する。ベルト温度センサ627Bは、下ベルト612の走行方向612aにおけるベルト加熱ローラ624Bの下流側に設けられ、この位置での下ベルト612の外側におけるベルト面の温度を検出する。
ここで、上ベルト611及び下ベルト612のそれぞれの外側の面は、挟持領域HでシートPが接触する側の面である。また、ベルト温度センサ627A及び627Bのそれぞれは、温度検出部の一例である。
また、ベルト対602によりシートPを搬送する際の基準位置は、シート加熱ローラ635の幅方向における中央であるため、ローラ温度センサ639は、シート加熱ローラ635の幅方向における中央の温度を検出することが好ましい。但し、シート加熱ローラ635の幅方向における位置毎で、中央(基準位置)での温度との関係を予め把握しておけば、ローラ温度センサ639は、シート加熱ローラ635の幅方向における任意の位置の温度を検出してもよい。この点は、ベルト温度センサ627がベルト対602の幅方向における温度を検出する位置に関しても同様である。
<制御部120の機能構成例>
次に、シート矯正装置601dに備えられ、シート加熱ローラ635及びベルト加熱ローラ624による温度制御等を行う制御部120の機能構成を説明する。図14は、制御部120の機能構成の一例を説明するブロック図である。図14に示すように、制御部120は、ローラ温度制御部121と、ベルト温度制御部122とを備えている。これらの機能は何れも電子回路で実現される。但し、これに限定されるものではなく、一部又は全部の機能を、CPUが所定のソフトウェアを実行することで実現してもよい。
ここで、ローラ温度制御部121は温度可変部の一例であり、ベルト温度制御部122は温度制御部の一例である。
上記に示したもののうち、ローラ温度制御部121は、シート種類情報取得部111から入力したシートPの識別情報、又は液体付与量情報取得から入力した液体付与量情報の少なくとも一方に基づき、ヒータ637を動作させて、シート加熱ローラ635の温度を所定のローラ温度に変化させる。
識別情報及び液体付与量情報のそれぞれとシート加熱ローラ635の温度との関係を示す情報は、実験やシミュレーション等で予め取得されている。ローラ温度制御部121は、当該情報に基づきヒータ637を動作させて、シート加熱ローラ635の温度を所定のローラ温度に変化させる。
また、ローラ温度制御部121は、シート加熱ローラ635の温度を設定する際に、ローラ温度センサ639から入力した温度の検出値に基づき、シート加熱ローラ635の温度をフィードバック制御することができる。ローラ温度制御部121は、複数のシート加熱ローラ635のそれぞれを個別に温度制御すると、それぞれの温度をより高精度に制御できるため、より好適である。
ベルト温度制御部122は、ベルト温度センサ627から入力した温度の検出値に基づき、ヒータ626を動作させて、上ベルト611及び下ベルト612のそれぞれの温度が所定のベルト温度になるようにフィードバック制御する。この所定のベルト温度は、挟持領域Hで上ベルト611及び下ベルト612を効率的に再加熱するために十分な温度であり、予め実験やシミュレーション等で定められた温度である。
<シート矯正装置601dの作用効果>
以上説明したように、本実施形態では、上ベルト611の走行方向611aにおけるベルト加熱ローラ624Aの下流側で、上ベルト611の温度を検出し、ベルト加熱ローラ624Aの温度が所定のベルト温度になるように制御する。また、下ベルト612の走行方向612aにおけるベルト加熱ローラ624Bの下流側で、下ベルト612の温度を検出し、ベルト加熱ローラ624Bの温度が所定のベルト温度になるように制御する。
これにより、挟持領域Hのより近くで上ベルト611及び下ベルト612のそれぞれを所定のベルト温度に設定することができる。そして、温度を十分に上げた状態で上ベルト611及び下ベルト612を挟持領域Hに送り込むことができ、挟持領域Hで上ベルト611及び下ベルト612を効率的に再加熱できる。
また、ベルト加熱ローラ624は対向領域G以外の領域に設けられているため、ベルト対602の少なくとも一方のベルトの走行方向におけるベルト加熱ローラ624の下流側に、ベルト温度センサ627を配置するスペースを確保できる。また、この下流側は、ベルト加熱ローラ624A及び624Bによる温度制御の直後のベルト温度を監視できる位置である。そのため、ベルト温度センサ627による検出値に基づいて、上ベルト611及び下ベルト612の温度を制御することで、ベルト対602の少なくとも一方のベルトの温度をより高精度に制御できる。
また、ベルト対602の少なくとも一方のベルトの走行方向におけるベルト加熱ローラ624A及び624Bのそれぞれの下流側は、挟持領域Hにより近い位置である。従って、この位置で上ベルト611及び下ベルト612の温度を制御することで、上ベルト611及び下ベルト612の温度をより精度よく所定の温度に維持でき、挟持領域Hで上ベルト611及び下ベルト612を効率的に再加熱できる。
また、ベルト温度センサ627Aは、上ベルト611における外側のベルト面の温度を検出し、ベルト温度センサ627Bは、下ベルト612における外側のベルト面の温度を検出する。そのため、ベルト温度センサ627を配置するスペースを確保しやすい。また、上ベルト611及び下ベルト612における外側のベルト面は、それぞれ挟持領域HでシートPが接触する側の面である。そのため、シートPが接触する側のベルト面の温度に基づき、挟持領域Hに送り込む上ベルト611及び下ベルト612のそれぞれの温度をより適切に制御できる。
さらに、本実施形態では、シートPの種類又はシートPへの液体付与量の少なくとも一方に基づき、シート加熱ローラ635の温度を所定のローラ温度に変化させ、シートPの変形の矯正量を変化させる。これにより、シートPの種類又はシートPへの液体付与量に応じて、シートPの変形の矯正を適切に行うことができる。
なお、上述した例では、ベルト温度制御部122がベルト温度センサ627から入力した温度の検出値に基づき、ベルト対602の温度をフィードバック制御する例を説明したが、これに限定されるものではない。ベルト温度とベルト加熱ローラ624の表面温度との関係をあらかじめ把握しておき、ベルト加熱ローラ624の表面温度をベルト温度センサ627検出して、ベルト温度とベルト加熱ローラ624の表面温度との関係を参照してベルト温度を制御してもよい。
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳述したが、本発明はこれらの実施形態及び実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
ベルト加熱ローラ624を上ベルト611及び下ベルト612の両方の内部に設ける構成に替えて、ベルト加熱ローラ624を上ベルト611または下ベルト612のいずれか一方の内部に設ける構成としてもよい。ベルト加熱ローラ624に替えてプレート状の加熱部材を設けても良い。また、シート加熱ローラ603を上ベルト611及び下ベルト612の両方の内部に設ける構成に替えて、シート加熱ローラ603を上ベルト611または下ベルト612のいずれか一方の内部に設ける構成としてもよい。シート加熱ローラ603に替えてプレート状の加熱部材を設けてもよい。
例えば、上述した実施形態では、液体吐出方式の印刷装置を説明したが、電子写真方式の印刷装置にも適用可能である。この場合は、シートに含まれる水分が定着装置による加熱で気化して生じる結露が防止され、また、カールやしわ等のシート変形が矯正される。
また、上述した実施形態では乾燥部300を備える印刷装置を説明したが、乾燥部300を備えない印刷装置にも適用可能である。