JP2005300982A - 定着装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 定着加圧部を通過した後の剥離ブリスターの発生やその剥離ブリスターに起因した定着不良および紙しわの発生を防止できることに加え、トナー像の先端部における像ずれ現象の発生なども抑制することができる定着装置を提供する。
【解決手段】 加熱された定着ベルトの外周面に圧接して定着加圧部を形成し、その定着加圧部に定着対象のトナー像が担持された記録用紙を導入して定着ベルトの外周面に圧接させる加圧回転体と、この加圧回転体で形成される定着加圧部に進入する付近の定着ベルト部分の内周面に面接触してそのベルト部分を支持する支持体と、この支持体で支持される定着ベルトの領域内でその外周面から圧接し、定着加圧部に導入される前の記録用紙をその定着ベルト領域内の外周面に押し付ける押圧体とを備えた定着装置であって、その押圧体により記録用紙を押し付けている押付時間が70ミリ秒以上となるように設定した。
【選択図】 図1
【解決手段】 加熱された定着ベルトの外周面に圧接して定着加圧部を形成し、その定着加圧部に定着対象のトナー像が担持された記録用紙を導入して定着ベルトの外周面に圧接させる加圧回転体と、この加圧回転体で形成される定着加圧部に進入する付近の定着ベルト部分の内周面に面接触してそのベルト部分を支持する支持体と、この支持体で支持される定着ベルトの領域内でその外周面から圧接し、定着加圧部に導入される前の記録用紙をその定着ベルト領域内の外周面に押し付ける押圧体とを備えた定着装置であって、その押圧体により記録用紙を押し付けている押付時間が70ミリ秒以上となるように設定した。
【選択図】 図1
Description
本発明は、定着対象のトナー像が担持された記録用紙を、加熱されて回転する無端状の定着ベルトに密着させた状態で搬送した後に剥離することにより定着処理を行うタイプの定着装置に関するものである。
近年、電子写真方式、静電記録方式等の画像形成方式を利用したプリンタ、複写機、複合機等の画像形成装置に使用される定着装置として、回転する張架状態の定着ベルトを使用し、その定着ベルトを加熱しつつそのベルト外周面に対して未定着のトナー像が担持された記録用紙を圧接させ、その定着ベルトに密着させた状態のままで冷却しながら搬送し、最後に定着ベルトから剥離させることでトナー像を定着させるタイプのベルト定着装置が提案されている(特許文献1、2)。
このタイプの定着装置によれば、記録用紙上のトナー像が定着ベルトの平滑な表面にならって表面平滑な状態で冷却固化された後に定着ベルトから剥離されるため、特に光沢感に優れた定着画像が得られるようになる。また、記録用紙の定着ベルトからの剥離はトナーが冷却固化された後に行われるため、トナーが定着ベルトに転移付着するオフセットも発生しにくくなる利点がある。
ところが、このような定着装置においては、記録用紙に含まれる水分が定着時の加熱により気化膨張して用紙の外部に抜けて定着ベルトとの間に水蒸気として溜まり、その水蒸気の蒸気圧の作用を受けて記録用紙が定着ベルトから剥離することがあり(以下、この現象を「剥離ブリスター」と呼ぶ)、この現象によりトナー像が冷却固化する前に定着ベルトから剥離してしまうと、次のような定着不良の1種でもある光沢の低下や光沢むらが発生する。また、特に上記定着加圧部(記録用紙が定着ベルトに最初に強く圧接させる部位)を通過した後に記録用紙を定着ベルト側に押し付けるように保持する部材が存在する場合には、次のような紙しわが発生する。
つまり、剥離ブリスターにより定着ベルトから剥離したトナー像部分は、そのベルトの平滑面にならって固化せずにトナー像表面が本来もつ凹凸感が残ることとなり、この結果、かかる剥離が起こらないトナー像部分に比べると、その光沢感が低下したものとなったり、あるいは、その剥離したトナー像部分がトナー像全体の一部である場合に光沢感が異なる部分が混在するという光沢むらになる。また、剥離ブリスターにより定着ベルトから剥離して浮いた記録用紙の部分は、その浮いた状態の用紙部分が寄せ集められて前記したような保持部材を通過する際に座屈して折れ曲がることでしわとなる。
これに対し、従来においても、上記タイプの定着装置とは異なるタイプ(定着対象のトナー像が担持された記録用紙を定着加圧部の通過直後に剥離させるタイプ)の定着装置ではあるものの、次のような構成からなる定着装置が知られている。
その1つは、加熱ローラと従動ローラとの間に張架された無端状の定着ベルトと、その従動ローラに対向して設けた加圧ローラとを備えた定着装置であって、その従動ローラに支持された定着ベルトと加圧ローラの間に形成される定着ニップ部の入口の上流側に定着ベルトに圧接する補助ロールを設けたものである(特許文献3)。そして、この定着装置では、ホットオフセット現象が発生することなく、予熱工程において定着ベルトと未定着トナー像を十分に接近させる必要がなく、その未定着トナー像が定着ベルトに接触して画像乱れが発生することがなくなる等の効果が得られるとしている。
もう1つは、第1定着ローラと発熱ローラとの間に張架されたベルト部材と、その第1定着ローラとの間でニップ部を形成する第2定着ローラとを備えた定着装置であり、そのベルト部材の内側より当接してそのベルト部材を加熱する面状の発熱体を設け、そのベルト部材に転写材を静電的に密着させて予備加熱を行うとともに、そのニップ部にて記録用紙上のトナー像を定着するようにしたものである(特許文献4)。そして、この定着装置では、ベルト部材のウォーミングアップ時間の短縮化や連続プリント時のベルト温度の安定化または均一化を図ることができる等の効果が得られるとしている。
しかしながら、この2つの異なるタイプの定着装置は、そのいずれも定着ニップ部等を通過した直後に記録用紙を剥離させるものであって、記録用紙を定着ベルトの外周面に圧接させる定着加圧部を通過させた後もそのベルト外周面に密着させた状態で搬送するものではないため、前述したようなタイプの定着装置における剥離ブリスターが発生することがなく、この結果、その剥離ブリスターに起因した光沢ムラ等の定着不良や紙しわが発生することもない。従って、この定着装置は、前述した定着加圧部の通過後における剥離ブリスターの発生とは無縁のものである。
また、このタイプの定着装置は、その定着ニップ部の上流側で補助ローラまたは面状加熱体を配置したベルト部分においてトナーと記録用紙を予備加熱するものであるが、その予備加熱の目的が、前記定着加圧部の通過後における剥離ブリスターの発生を防止するものではない。しかも、その予熱加熱工程は、記録用紙を内周面側に支持部材がない定着ベルトに補助ローラで圧接させるか、あるいは、記録用紙を面状の固定発熱体で加熱した定着ベルトに静電的に密着させる程度であるため、記録用紙を定着ベルトとの間で強固に挟持した状態で圧接させるものではなく、このため、その用紙と加熱状態の定着ベルトとの密着性を十分に得ることができず、未定着トナー像の中途半端な定着ベルトとの圧接や予備加熱で発生する水蒸気等により像乱れなどが発生するおそれがある。
本発明は、上述したような問題点を解消するためになされたものであり、少なくとも、定着加圧部を通過した後の定着ベルトと記録用紙との間における剥離ブリスターの発生を防止することができ、しかも、かかる剥離ブリスターに起因した光沢ムラ等の定着不良や紙しわの発生を防止することもできる定着装置を提供するものである。そして、本発明は、上記剥離ブリスターの発生やその剥離ブリスターに起因した定着不良および紙しわの発生を防止できることに加え、たとえば後述するようなトナー像の先端部における像ずれ現象の発生なども抑制することができる定着装置を提供するものである。
本発明の定着装置は、循環するように回転する無端状の定着ベルトと、この定着ベルトを加熱する加熱装置と、この加熱装置で加熱された定着ベルトの外周面に圧接して定着加圧部を形成し、その定着加圧部に定着対象のトナー像が担持された記録用紙を導入して定着ベルトの外周面に圧接させる加圧回転体と、この加圧回転体で形成される前記定着加圧部に進入する付近の前記定着ベルト部分の内周面に面接触してそのベルト部分を支持する支持体と、この支持体で支持される前記定着ベルトの領域内でその外周面から圧接し、前記定着加圧部に導入される前の前記記録用紙をその定着ベルト領域内の外周面に押し付ける押圧体とを備え、かつ、前記押圧体により記録用紙を押し付けている押付時間が70ミリ秒以上となるように設定されていることを特徴とするものである。
前記押付時間は、より好ましくは、210ミリ秒以上となるように設定する。
前記押圧体は、特に限定されるものではないが、たとえば、回転する弾性ロールである。また、前記押圧体としては、複数の支持ロールに張架されて回転する押圧ベルトであり、その複数の支持ロールのうち2以上の支持ロールを前記支持体で支持される定着ベルト領域内にその押圧ベルトを介した状態で回転可能に圧接させるように設置するものであってもよい。
また、上記定着装置においては、前記支持体および押圧体の少なくとも一方に、その支持体および押圧体を加熱する加熱装置を設置してもよい。
本発明の定着装置によれば、定着対象のトナー像を担持する記録用紙が、定着加圧部に導き入れられる前に少なくとも支持体で支持されて加熱された状態にある定着ベルト領域の外周面に対して押圧体により70ミリ秒(以下「ms」とも略記する)以上の押付時間でもって圧接されるので、支持体で支持されて加熱状態にある定着ベルトに強固に圧接されてそのトナー像が加圧下で予熱されることで像乱れの発生のおそれもなく仮定着されたような状態になり、しかる後に定着ベルトと加圧回転体とが圧接する定着加圧部に導き入れられることとなる。
これにより、記録用紙の含水率が定着加圧部に突入する前にわずかながら減少し、その分、定着加圧部を通過した後における記録用紙からの水蒸気の発生が抑えられるようになるため、定着加圧部を通過した後の剥離ブリスターの発生が低減されるようになる。また、上記トナー像の仮定着がなされることにより、定着加圧部を通過した後の剥離ブリスターの発生を抑える観点から、定着加圧部などにおける(本定着のための)加熱温度を低めに設定することも可能となる。
従って、この定着装置を使用した場合には、その剥離ブリスターに起因した光沢ムラ等の定着不良や紙しわの発生もない、光沢感に優れた定着画像を安定して得ることが可能となる。
また、上記押付時間を210ミリ秒以上に設置した場合には、定着加圧部に導き入れられる前の記録用紙をより多くかつ的確に定着ベルトに圧接させた状態で加熱することができるため、その分、定着加圧部を通過した後の剥離ブリスターの発生をより確実に防止できるようになる。
また、前記押圧体を回転する弾性ロールとした場合には、上記したような押付時間(特に70ミリ秒以上の時間)を容易に確保することができる。しかも、支持体で支持される領域で押圧体による定着ベルトの回転負荷が増大することがなく、トナー像の仮定着を良好に行うことができる。
また、前記押圧体を前記したような複数の支持ロールに張架されて回転する押圧ベルトとした場合には、上記したような押付時間(70ミリ秒以上は勿論のこと特に210ミリ秒以上の時間)を容易に確保することができる。しかも、その押圧ベルトで定着ベルトに圧接される記録用紙から発生する水蒸気をその用紙内に閉じ込めてその記録用紙の押圧ベルトとの密着性を維持してトナー像をむらなく予熱することが可能となり、トナー像の良好な仮定着を行ううえで有利となる。また、後述する先端像ずれの発生を抑制するうえでも有利となる。さらに、この押圧ベルトによる押付区間を通過する際の記録用紙は、支持体で支持される定着ベルト領域内にその押圧ベルトを介した状態で回転可能に圧接している2以上の支持ロールによる押圧を受けて定着ベルト側に強固に圧接されるようになり、これにより上記押付区間内において記録用紙から発生する水蒸気の圧力によって記録用紙が定着ベルトから浮くことを抑制することができ、記録用紙がむらなく加熱されることとなる。
さらに、支持体および押圧体の少なくとも一方に、その支持体および押圧体を加熱する加熱装置を設置した場合には、その加熱装置で加熱される押圧体および支持体の少なくとも一方により定着ベルトを加熱することができる。これにより、たとえば、大量の連続した定着を行った場合や記録用紙として厚紙等を使用した場合に、その連続して通過する記録用紙や厚紙等を押圧体による押付領域を通過させた際に定着ベルトの熱が記録用紙側に大幅に奪われて定着ベルトの温度が急激に低下することに起因した定着不良の発生を防止することができる。
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る定着装置の要部を示す概略構成図である。この定着装置1Aは、トナー像を形成して記録用紙に転写し得るプリンタ、複写機等の画像形成装置における定着手段として使用される。
図1は、本発明の実施形態1に係る定着装置の要部を示す概略構成図である。この定着装置1Aは、トナー像を形成して記録用紙に転写し得るプリンタ、複写機等の画像形成装置における定着手段として使用される。
定着装置1Aは、矢印方向Aに回転する無端状の定着ベルト10と、この定着ベルト10を主に加熱する加熱板20と、この加熱板20により加熱された定着ベルト10を挟むような状態で対向して圧接配置される一対の加圧ロール30、31と、この一対の加圧ロールのうち定着ベルト10の外周面側に配置される第2加圧ロール31にも支持されつつ定着ベルト10と所定の距離だけ当接して同じ方向に移動するように回転する加圧ベルト35と、加圧ロール30、31を通過した後の定着ベルト10の内周面側に接触するように配置されて定着ベルト等を冷却する冷却装置40と、ベルト支持板50と、このベルト支持板50に支持される定着ベルト10の領域に圧接される押圧体としての押圧ベルト60等を具備するものである。図中の符号Pは記録用紙、Tはその記録用紙Pに担持されるトナー像である。また、図中の実線矢印は主な回転部品の回転方向を示し、矢付一点鎖線は記録用紙Pの搬送経路を示す。
定着ベルト10は、カーボンブラック等の導電材を含有させたポリイミド等からなる厚さ50μm程度のベルト基材上に、厚さ60μm程度のシリコーン共重合体等からなる弾性層と、さらにフッ素ゴム等からなる表面離型層をこの順に積層形成した3層構造のものである。この定着ベルト10は、駆動ロール15、加熱ロール25、ベルト支持ロール16、第一加圧ロール30、剥離ロール17、テンションロール18等の複数の支持ロールに張架されており、図示しない駆動モータ等を備えた駆動源と接続された駆動ロール15によって矢印A方向に回転するようになっている。
駆動ロール15は、前記した駆動機能のほかに、そのロールの一端側が所定の方向に変位して定着ベルト10の蛇行走行を矯正する機能(ステアリング機能)も発揮するように構成されている。剥離ロール17は、定着ベルト10を急激に曲がった状態で移動走行させるように支持し、これにより定着ベルト10に密着して搬送される記録用紙Pをそれ自身の腰の強さ(剛性)を利用してその急激に曲がって走行する定着ベルト10から自力で剥離させる機能を果たすようになっている。テンションロール18は、定着ベルト10に所定の張力を付与して、そのベルトの張りを整えて回転駆動の安定化を図るようになっている。
加熱板20は、定着ベルト10と接触する側の面がそのベルト回転方向Aにそって所定の曲率(たとえばR900mm程度)からなる湾曲鏡面に形成された基板(たとえばアルミニウム基板)21と、その基板21の定着ベルト10が接触しない側の面に設置した面状ヒータ22とで構成されている。加熱ロール25は、円筒状の金属(アルミニウム等)製ロールの内部にハロゲンランプ等の加熱源を配置した構造からなるものであり、定着ベルト10をその内周面側から加熱する。この加熱板20と加熱ロール25における加熱温度は、100〜150℃の温度範囲内に設定される。また、加熱板20と加熱ロール25の加熱温度は、同じ温度、異なる温度のいずれであっても構わない。
加圧ロール30、31はいずれも、円筒形からなる外径が90mm程度の金属(アルミニウム等)製ロール基体にシリコーンゴム(たとえば硬度17°程度)等からなる厚さ6mm程度の耐熱弾性層を形成した構造のものである。また、この一対の加圧ロール30,31は、図示しない加圧機構により所定の加圧力(例えばニップ圧力が2.5×105Pa程度になる圧力)でもって圧接し、そのニップ幅が20mm程度となるように設置されている。また、この加圧ロール30、31は、その内部空間にハロゲンランプ等の加熱源を配しており、これにより、各加圧ロール30,31を定着動作時に必要な温度(好ましくは通常の定着加熱温度よりも少し低めの温度)に保たれるように加熱するように設定されている。
加圧ベルト35は、ポリイミド等からなる厚さ50μm程度のベルト基材上にシリコーンゴム等からなる厚さ60μm程度の弾性層と、さらにシリコーン樹脂等からなる厚さ10μm程度の表面離型層をこの順に積層形成した3層構造のものである。また、この加圧ベルト35は、第2加圧ロール31、複数のベルト支持ロール36〜39に張架されており、第1加圧ロール30と第2加圧ロール31の間に挟まれて第1加圧ロール30の回転動力が伝達されることによって矢印B方向に回転するようになっている。この加圧ベルト35は、第2加圧ロール31とベルト支持ロール39の所定の区間で定着ベルト10の外周面と接して同じ方向に回転移動する。この加圧ベルト35と定着ベルト10との接触区間は、記録用紙Pをその定着ベルト10に圧接させた状態で搬送するための定着加圧部となる。ベルト支持ロールのうちロール38は、その回転軸の一端側が所定の方向に所定量だけ変位することにより加圧ベルト35の蛇行走行を矯正するステアリングロールとして機能するように構成されている。
冷却装置40は、第1加圧ロール30とベルト支持ロール17との間で定着ベルト10の内周面に接する放熱板41と、この放熱板41を空冷する空冷装置42とで構成されている。放熱板41は、アルミニウム等の金属にて形成される板状の基板と、定着ベルトと接する側と反対側の面に立設させた図示しない複数枚の放熱フィンとからなるヒートシンクである。この放熱板41では、その基板の定着ベルトと接触する接触面が少なくとも外側に突出しかつベルト走行方向に対し緩やかに湾曲した湾曲面に形成されている。空冷装置42は、送風ファンと、その送風ファンで発生する空気流を放熱板(主にその放熱フィン)41に接触させるように送る(排気する)ためのダクト(通気管)とで構成されている。この冷却装置40は、定着ベルト10に密着した状態で搬送される記録用紙Pをそのトナー像Tが冷却固化される状態になる程度に冷却できるように設定される。
支持板50は、図1や図2に示すように、定着ベルト10が前記定着加圧部に進入する前のベルト領域(換言すれば、第一加圧ロール30よりもベルト回転方向Aの上流側でかつベルト支持ロール16よりもベルト回転方向Aの下流側となる区間内のベルト領域)をその内周面側から面接触する状態で支持する。この支持板50としては、定着ベルト10と接触するベルト接触面がそのベルト回転方向Aにそって所定の曲率(たとえばR900mm程度)からなる湾曲鏡面に形成された所定の厚さの板部材(たとえばアルミニウム基板)が使用される。また、この支持板50は、ベルト回転方向Aに沿う長さが200〜400mm程度に形成されている。さらに、この実施形態における支持板50は、そのベルト接触面とは反対側の面に支持板50自体を加熱するための面状ヒータ52を設置しており、定着ベルト10の加熱板としても機能し得るように構成されている。この支持板50を加熱板として機能するように構成した場合、その加熱温度については、たとえば100〜130℃程度に設定される。
押圧ベルト60は、ポリイミド等からなる所定の厚さ(たとえば130μm程度)の無端状ベルト基材上にシリコーンゴムまたはシリコーン樹脂等からなる所定の厚さ(たとえば5〜20μm程度)の弾性層を積層形成した2層構造のものである。また、この押圧ベルト60は、3つの押圧ロール61,62,63と1つのテンションロール64に張架されており、支持板50で支持される定着ベルト10領域内にその押圧ベルト10を介した状態で回転可能に圧接される3つの押圧ロール61,62,63により定着ベルト外周面に押圧された状態で矢印方向Cに従動回転するようになっている。つまり、押圧ベルト60は、第一押圧ロール61と第三押圧ロール63との区間(最終的には押圧ベルトの押付区間)Eにおいて定着ベルト10の外周面に接して同じ方向に回転移動することになる。この区間Eの(ベルト回転方向A,Cに沿う)長さについては、押圧ベルト60による記録用紙に対する所要の押付時間を満たすような観点から設定される。
3つの押圧ロール61,62,63はいずれも、同じ外径の金属製ロール芯材にシリコーンゴム等からなる所定の厚さの弾性層を形成した弾性ロールであり、バネ部材を利用した図示しない加圧機構により所定の加圧力でもって圧接し、定着ベルト10の前記支持領域との間におけるニップ幅が所定の幅となるように設置されている。また、この3つの押圧ロール61,62,63は、ベルト回転方向B(C)にそって等間隔となるように設置されている。
また、この定着装置1Aでは、その定着に際しては、定着対象のトナー像Tが担持された記録用紙Pを、上記押圧ベルト60と定着ベルト10が圧接した状態で回転移動する間(前記押付区間E)にむけて図示しない搬送ガイド等により導き入れるように構成されている。
そして、このような定着装置1Aでは、画像形成装置の作像部側においてトナー像Tが転写された記録用紙Pに対して以下のごとき定着が行われる。
まず、トナー画像Tが転写された記録用紙Pが、図示しない用紙搬送ベルト、搬送ガイド等を通してそのトナー像担持面を定着ベルト10の外周面に当接させる姿勢で搬送され、定着ベルト10と押圧ベルト60との間で形成される押付区間E(図2)の間(入り口側)に導き入れられる。この際、定着ベルト10は、加熱板20と加熱ロール25により予め所定の温度に加熱された状態で上記押付区間Eに達して進入する。また、定着ベルト10は、面状ヒータ52が設置された支持板50によっても加熱される。
押付区間Eの定着ベルト10の外周面と押圧ベルト60との間に導入された記録用紙Pは、支持板50で支持されて所定の温度以上に加熱された状態にある定着ベルト10に対し、3つの押圧ロール61〜63を通過する押圧ベルト60により圧接されて搬送されるとともに加熱される。
これにより、記録用紙Pは加圧下で高温加熱される。この加熱により用紙中の水分が水蒸気となって発生し始めるが、かかる水蒸気のほとんどは支持板50に支持された定着ベルト10の領域と押圧ベルト60との間に挟持された状態におかれる記録用紙Pの内部に閉じ込められた状態となる。このため、その水蒸気の発生により記録用紙Pが定着ベルト10から浮き上がることもなく、その定着ベルト10との密着性を維持しながら搬送されるようになるため、そのトナー像がむらなく予熱されて記録用紙P上に十分な接着強度をもって仮定着されるようになる。
この押付区間Eを通過した後の記録用紙Pは、定着ベルト10にて搬送されてその定着ベルト10と加圧ベルト35が圧接する定着加圧部に導入される。ちなみに、押付区間Eから排出されて定着加圧部に導入される前の区間における記録用紙Pは、押圧ベルト60による押圧作用を受けなくなるため一時的に定着ベルト10から剥がれやすい状態になるが、実際にはその時間はごくわずかなものであるため問題なくスムーズに定着加圧部に導入されるようになる。
定着加圧部に導入された記録用紙Pは、その突入当初は加圧ロール30、31により定着に必要な荷重で強く加圧されるとともに、主に定着ベルト10の予熱により加熱される。また、この定着装置では、加圧ロール30,31が加熱源により加熱されているため、その加圧ロール30,31によっても加熱されるようになる。ただし、この加圧ロール30,31による加熱は、前述したように通常の定着温度よりも低めの温度で行われる。
続いて、定着加圧部を通過する記録用紙Pは、定着ベルト10と加圧ベルト35とに挟持されて定着ベルト10に密着した状態で搬送されるとともに、冷却装置40の放熱板41にある定着ベルト10の領域(冷却区間)を通過する際に冷却作用を受けてトナー像Tと一緒に所定の温度(例えば55〜85℃)になるまで冷却される。この冷却装置による冷却は、定着ベルト10から剥離されるときの記録用紙の表面温度がトナーの軟化点よりも低温となるような条件を満たすように行うことが好ましい。
この冷却によりトナー像Tが凝集固化されるとともに冷却装置40の放熱板41を通過した記録用紙Pは、剥離用ロール17で構成される用紙剥離手段において紙自身の腰の強さにより自力で定着ベルト10から、トナー画像とともに剥離される(図1の矢付き一点鎖線の先端部で示される状態となる)。この剥離された記録用紙Pは定着装置外に排出される。これによりトナー像Tが記録用紙Pに定着される。
このようにして定着された画像は、特に定着ベルト10の平滑な表面にならい平滑化された光沢感に富む画像として得られる。
特にこの定着装置1Aでは、前述したように対着対象のトナー像Tを担持する記録用紙Pが押圧ベルト60による押付区間Eを通過した後に定着加圧部に導き入れられることにより、定着ベルト10に強固に圧接された状態で加熱されて仮定着された状態となり、しかも、その記録用紙Pが定着加圧部では少し低めの温度で加熱されるようになる。このため、その定着加圧部を通過した後において記録用紙からの水蒸気の発生が抑えられるようになる。
この結果、定着加圧部を通過した後に水蒸気が発生して記録用紙Pが定着ベルト10から剥離するという剥離ブリスターの発生が抑制される。また、これにより、その剥離ブリスターの発生に起因した光沢ムラ等の定着不良や紙しわの発生も防止され、良好な定着を行うことが可能となる。
また、この定着装置1Aでは、特に押圧ベルト60が弾性層を形成したものであり、しかも押圧ロール61〜63も弾性層を形成したロールであるため、記録用紙Pは支持板50に支持されている定着ベルト10の外周面に密着性良く圧接される。これにより、記録用紙Pは押付区間Eにおいてむらなく良好に加熱されるようになる。また、押圧ロール61〜63が3つ設置されているため、押圧ベルト60による記録用紙の押付(加圧)を強くすることができるため、押圧ベルト60で押し付けられている記録用紙の水蒸気発生による定着ベルト10からの剥がれを効果的に抑制することができる。この観点からは、押圧ベルト60を支持するロールのうち定着ベルト10側に圧接するロールの数は複数にするとよい。
さらに、支持板50が面状ヒータ52で加熱されているため、厚紙等の記録用紙を使用した連続する定着が行われて、温度の低い記録用紙が定着ベルト10や押圧ベルト60に触れてその温度低下を招きやすい状態が発生するおそれがあっても、その支持板50により定着ベルト10等が加熱され続けるため、その温度低下が防止されて記録用紙Pを高温で安定して加熱することができる。
次に、この定着装置1Aにおける押圧ベルト60や押圧ロール61〜63に関する構成を検討するための行った各試験について説明する。
<試験1>
この試験1では、図3および図4に示すように、前記定着装置1Aにおける押圧ベルト60およびテンションロール64を取り除いた以外はその定着装置1Aと同じ構成からなる定着装置1Bを用意した。
この試験1では、図3および図4に示すように、前記定着装置1Aにおける押圧ベルト60およびテンションロール64を取り除いた以外はその定着装置1Aと同じ構成からなる定着装置1Bを用意した。
この定着装置1Bは、基本的に前記定着装置1Aと同様に動作するものであるが、特に、定着対象のトナー像Tが担持された記録用紙Pを、定着ベルト10とそのベルト回転方向Aの最上流側に配置される第一押圧ロール61との間に導入して通過させた後、その第一ロール61よりベルト回転方向Aの下流側に設置された第二押圧ロール62および第三押圧ロール63と定着ベルト10との間を順次通過させるように構成されている。
そして、この定着装置1Bについて以下のような条件に設定したうえで、公知のカラープリンタにて一定のテスト用トナー像を形成した種々の記録用紙Pを導入して定着動作を行い、そのときに得られた記録用紙における剥離ブリスターに起因した光沢むらや紙しわの発生状況について調べた。光沢むらや紙しわの発生状況については、目視観察をして発生の有無で評価した。
その条件は次のとおりである。支持板50として、ベルト接触面が前記した曲率の湾曲曲面からなり、ベルト回転方向Aに沿う長さが240mm、厚さが3mm程度のアルミニウム板を使用し、それを面状ヒータ52により100〜160℃の温度になるように加熱した。テスト用トナー像としては、記録用紙上の未定着トナー重量が4g/m2のときを濃度100%とし、100%、90%、80%、…、20%、10%というように10%刻みの濃度で20×20mmサイズからなるパッチ像を、シアンおよびマゼンタ色のトナーを用いて用紙の先端部から25mmあけた位置からその色別に順次1列状に並べるように形成してなる像を用いた。
また、3つの押圧ロール61〜63はいずれも、外径が12mmの金属製ロール芯材にシリコーンゴムからなる厚さが4mmの弾性層を形成した弾性ロールであり、そのニップ圧力が2.5×104Pa程度になる圧力で加圧して定着ベルト10とのニップ幅が3mmとなるように設置した。しかも、この押圧ロール61,62,63は、図4に示すように、支持板50で支持されている定着ベルト10の領域内において、そのベルト回転方向Aの上流端部からその下流側に60mm離れた位置に第一押圧ロール61を設置し、その下流側に同じく60mmずつそれぞれ離れた位置に第二押圧ロール62と第三押圧ロール63を順次配置した。この場合、記録用紙Pの定着ベルト10への押付区間Eは、各押圧ロール61,62,63の定着ベルト10との各ニップ部の幅領域(E1,E2,E3)となる。
さらに、定着ベルト10は、加熱板20および加熱ロール25により100〜130℃の温度になるように加熱した。また、定着ベルト10(加圧ベルト35も含む)は350mm/sの速度で回転駆動させた。冷却装置40は、加圧ベルト35のベルト支持ロール39から剥離用ロール17の間における記録用紙Pの表面温度が90℃以下の温度になるまで冷却されるように設定した。記録用紙Pとしては、高鏡面タイプのコート紙(王子製紙社製:OKトップコートN、坪量127.9gsm)と、普通紙(富士ゼロックスオフィスサプライ社製:J紙、坪量81gsm)と、マット面タイプのコート紙(Modo社製:Silver Blade Matte、坪量115gsm)をそれぞれ使用した。
このような条件設定からなる定着装置1Bを用いた試験1の結果は、いずれの記録用紙Pを使用した場合であっても、剥離ブリスターに起因した光沢むらや紙しわの発生は認められなかった。
しかし、各定着後の記録用紙上における定着画像を観察したところ、その画像の先端部(定着時の先頭側となる部分)がずれた状態で定着される現象(先端像ずれ)が発生していることが確認された。
本発明者らの研究によれば、この先端像ずれは次のようなメカニズムによって発生しているものと考えられている。
まず、その定着時における記録用紙Pは、定着ベルト10と3つの押圧ロール61〜63との間の各押付区間E1〜E3をそれぞれ通過して定着ベルト10と加圧ベルト35の間の定着加圧部に導入させるまでの段階において、上流側の押付区間を通過した後に下流側に位置する次の押付区間に導入されるまでの間または最終の押付区間E3を通過した後に定着加圧部に導入されるまでの間に、前述したように記録用紙P(の特に先頭部)が定着ベルト10から一時的に離れることが起こり得る。この離れる現象は、定着ベルト10と記録用紙Pとの表面状態の違いやトナー像の面積や形成位置の違い等によって、定着ベルト10と記録用紙Pとの密着性が異なる場合に発生しやすい。そして、この一時的に離れる最初の段階において、記録用紙P上のトナー像の一部が分断されて定着ベルト10側に転移した状態となり、その後、定着加圧部に突入して記録用紙Pが再び定着ベルト10に圧接する際に、記録用紙P上のトナー像と定着ベルト10側に転移したトナー像部分とが完全に一致せず少しずれた状態で合わせられることにより発生していると考えられる。
また、この先端像ずれにおけるトナー像の分断は、以下に説明するように、支持体50で支持される定着ベルト10への押圧ロール61〜63等による記録用紙Pの押付時間の違いによって異なるメカニズムで発生しているもの考えられる。
つまり、その押付時間が比較的短い場合には、その押付区間でトナー像が十分に加熱されず十分に溶融もされないため、記録用紙にほとんど浸み込むこと(仮定着されること)もなく、その定着ベルト10と接している側のトナーが記録用紙側にあるトナーから分離されて定着ベルト側に転移してしまう、いわゆるコールドオフセットが発生しているものと考えられる。反対に、その押付時間が比較的長い場合には、その押付区間でトナー像が十分に加熱されて溶融されることで記録用紙に浸み込み始めるが、その定着ベルト10と接している側に存在して過剰に溶融されて記録用紙に浸み込む前のトナーがそのまま記録用紙側のトナーから分離して定着ベルト側に転移してしまう、いわゆるホットオフセットが発生しているものと考えられる。
そして、この先端像ずれは、上記した3種の記録用紙Pの違いによっても発生状況が異なることが確認された。すなわち、上記定着装置1Bにおいて定着ベルト10の加熱温度を100〜160℃の範囲内で10℃単位ごとに異ならせて設定したうえで、その各加熱温度における上記3種の記録用紙Pを使用して定着を行い、そのときの先端像ずれの様子を観察するとともにそのずれ量を測定した。先端像ずれのずれ量の測定は顕微鏡で観察して行った。結果を図5に示す。
図5に示されるように、高鏡面タイプのコート紙は、その表面の鏡面性が高く定着ベルトとの密着性が高いコート紙に該当するものであるが、このコート紙の場合、定着ベルトの加熱温度が120℃までの温度範囲では記録用紙から発生する水蒸気圧の力よりも用紙と定着ベルトとの密着力が勝っているため先端像ずれが発生せず、その温度が130℃以上の範囲になると先端像ずれが発生し始めるという傾向がある。
また、普通紙は、その表面の鏡面性が低く定着ベルトとの密着性が低い記録用紙に該当するものであるが、この普通紙の場合、定着ベルトの加熱温度が120℃までの温度範囲では高鏡面タイプのコート紙の場合と異なり先端像ずれが発生する一方で、その温度が130℃以上の範囲になっても、コート層がないため水蒸気が排出されやすくなるため温度が高くなっても像ずれのずれ量が比例して大きくなることがないという傾向がある。
さらに、マット面タイプのコート紙は、そのマット面(粗面)であるがゆえに定着ベルト10との密着性が低く、しかもコート層の存在により水蒸気を外部に排出させにくいため、定着ベルトの加熱温度が120℃までの温度範囲での先端像ずれが発生するだけにとどまらず、その温度が130℃を超える温度範囲になると先端像ずれのずれ量が急激に増大するという傾向にある。
<試験2>
試験2では、図6に示すように前記定着装置1Bの一部をその支持板50に支持されている定着ベルト10の領域に記録用紙Pを押し付ける押付時間を種々変更できるように改造したうえで、その各押付時間の違いによる定着ベルト10へのトナーの転移(オフセット)の発生状況について調べた。また、試験2は、その押付時間と併せて、定着ベルト10の加熱温度についても120〜190℃の範囲内で10℃単位ごとに適宜変更して行った。
試験2では、図6に示すように前記定着装置1Bの一部をその支持板50に支持されている定着ベルト10の領域に記録用紙Pを押し付ける押付時間を種々変更できるように改造したうえで、その各押付時間の違いによる定着ベルト10へのトナーの転移(オフセット)の発生状況について調べた。また、試験2は、その押付時間と併せて、定着ベルト10の加熱温度についても120〜190℃の範囲内で10℃単位ごとに適宜変更して行った。
定着装置1Bの改造部分は、図6に示すように、前記3つの押圧ロール61〜63に変えて、支持板50に支持されている定着ベルト10とのニップ部の幅(押付区間Ex)を変更できる1つの押圧ロール66を使用するとともに、その押圧ロール66を通過させた後の記録用紙Pを定着加圧部に導入される前に定着ベルト10から強制的に剥がして排出させるようにしたものである(矢付き一点鎖線を参照)。
押圧ロール66については、外径が32mmの金属製ロール芯材にシリコーンゴムからなる厚さが4mmの弾性層を形成した弾性ロールを使用し、支持板50で支持されている定着ベルト10の領域のうちでベルト回転方向Aに沿う中央位置に対して図示しない加圧機構により加圧して圧接するように設置した。そして、押圧ロール66は、その加圧力を5.7×104Paとし、定着ベルト10の回転速度を調整することでその押付時間を変更するようにした。一方、記録用紙の強制的な剥離は、たとえば押圧ロール66を通過した用紙の先端部を手でつかんで定着ベルト10から剥がす方向に引っ張ることにより対応した。また、この記録用紙を剥離した直後に定着ベルト10の回転を停止させた。
そして、この試験2では、上記条件下で各定着を行ったとき、記録用紙Pを強制的に剥離した後の定着ベルト10の表面を観察し、定着ベルト10へのトナーの付着状況について調べた。この結果を図7に示す。トナーの付着状況については、記録用紙を剥離した後の定着ベルト10に定着対象のトナーがオフセットして残留付着しているか否か調べ、以下の基準で評価した。
○:オフセットトナーが発生せず。
△:オフセットトナーがわずかに発生している。
×:オフセットトナーが発生している。
○:オフセットトナーが発生せず。
△:オフセットトナーがわずかに発生している。
×:オフセットトナーが発生している。
また、図7中のかっこ書きをした「(Cold)」とはトナーの付着が前記したコールドオフセットにより発生していることを意味し、具体的には押付ロール66の押付により定着対象のトナー像が十分に加熱溶融されない状態においてそのトナー像の一部(表面層など)が定着ベルトに付着している場合を示している。また、「(Hot)」とはトナーの付着が前記したホットオフセットにより発生していることを意味し、具体的には、押付ロール66の押付により定着対象のトナー像が過剰に加熱溶融された状態においてそのトナー像の一部(表面層など)が付着している場合を示す。このコールドオフセットによるトナー付着とホットオフセットによるトナー付着の違いは、トナーが用紙との界面で分断していると観察された場合にはコールドオフセットによるトナー付着であり、トナーがトナー間で分断していると観察された場合にはホットオフセットによるトナー付着であると判別するようにした。
なお、図7において「−」を付した欄については、「○」の評価につづく欄部分はその評価が得られる条件について確認できれば十分であり、それ以上の条件(定着ベルトの加熱温度)での試験結果が不要であるとした場合を示す。また、「×」の評価につづく欄部分は、その評価につづく条件下の結果が同じ評価(×)になることが予測されるため、それ以上の評価は不要であるとした場合を示す。
図7に示されるように、押付時間が60msの場合は、定着ベルト10の加熱温度に関係なくオフセットが発生して押圧ロール66の押付による仮定着が可能となる条件がなく、先端像ずれの発生も防止できないことが予測できる。また、この押付時間の結果から、定着ベルト10の加熱温度が180℃以下ではコールドオフセットによるトナー付着が発生する一方、それよりも高温(190℃)にするとホットオフセットによるトナー付着が発生することがわかる。
そして、押付時間が70ms以上になると、定着ベルト10の加熱温度をそれぞれ適切な温度に設定することにより、定着ベルトへのトナー付着が発生せず、押圧ロール66の押付による仮定着が可能になる場合が存在することが確認された。
また、この場合においても定着ベルト10の加熱温度を比較的高めに設定する必要がある場合(押付時間が比較的短い場合)には、記録用紙から発生する水蒸気圧により押圧ロール66を抜け出た記録用紙Pの定着ベルト10との密着性が低下し、剥がれやすくなる傾向がある。しかし、この点については、図7の結果からも明らかなように、その押付時間を次第に長くすることにより、トナー付着の発生を防止できる定着ベルト10の加熱温度が次第に低い温度になる傾向があり、これによって記録用紙からの水蒸気の発生が抑制されてその記録用紙の定着ベルト10からの剥がれやすさも抑制されるようになることが予測できる。
特に、押付時間を210ms以上に設定した場合には、定着ベルト10の加熱温度を120℃や130℃の低めの温度にしても良好な結果が得られるようになる。このため、仮に押圧ロール66による押付を通過した後に記録用紙が定着ベルト10から瞬間的にわずかに剥がれた状態になろうとしても、その記録用紙上のトナー像の一部が分断して定着ベルト10側に転移することがなくなり、この結果、先端像ずれの発生を抑制できることが予測できる。
以上の試験結果を踏まえて、前記した定着装置1Aにおける構成の一部に関して次のように条件設定した。
まず、押圧ベルト60としては、ポリイミドからなる厚さ130μmの無端状ベルト基材上にシリコーンゴムからなる厚さ10μmの弾性層を積層形成した2層構造のものを使用した。また、3つの押圧ロール61,62,63としていずれも、外径が12mmの金属製ロール芯材にシリコーンゴムからなる厚さが4mm程度の弾性層を形成した弾性ロールを使用し、それらを図示しない加圧機構により5.7×104Paの加圧力で圧接し、定着ベルト10との間のニップ幅が3mm程度となるように設置した。
そして、定着ベルト10の回転速度を350mm/sとした場合、押圧ベルト60による押付時間を210ms以上になるためには、押圧ベルト60の定着ベルト10との接触長さを66mm以上にする必要がある。この点と、定着ベルト10の加熱温度を可能な限り低めの温度に設定して押圧ベルト60の押付区間において記録用紙からの水蒸気の発生を抑制して良好な仮定着を実現するという観点から、押圧ベルト60の定着ベルト10との接触長さ(押付区間E)を長めの120mmに設定した(これは押付時間に換算すると340ms程度となる)。実際には、このベルトの接触長さを確保するため、第一押圧ロール61と第三押圧ロール63とをベルト回転方向Aに沿う軸間距離が120mmとなるように設置した。第二押圧ロール62は、第一押圧ロール61と第三押圧ロール63の中間位置に設置した。
また、この場合において、加熱板20、加熱ロール25および支持板50の加熱温度をいずれも130℃に設定した。また、第一加圧ロール30の加熱温度100℃、第二加圧ロール31の加熱温度を70℃に設定した。さらに、冷却装置40の動作条件を、定着動作時における剥離用ロール16の温度が70℃程度に保たれるように設定した。
このように設定した定着装置1Aにより前記3種の記録用紙を使用して定着を行ったところ、前述したように剥離ブリスターに起因した光沢むらや紙しわの発生がないばかりか、先端像ずれの発生も抑制された良好な定着を行うことが可能であった。また、先端像ずれの抑制効果については、定着対象のトナー像の画像濃度、画像面積率などを変更した場合であっても良好に得ることができた。
[他の実施の形態]
前記実施の形態1では、記録用紙Pを支持板50に支持されている定着ベルト10に押し付ける押圧体として、複数の支持ロールに張架された押圧ベルト60を使用した場合について例示したが、その押圧体としては、押圧ベルト60を使用せず、押圧ロール61〜63のみからなるものであってもよい。また、この場合、押圧体としての押圧ロールは、複数設置することが好ましいが、所要の押付時間を確保できる限りにおいては1つであっても構わない。押圧体としては、定着ベルト10の回転や記録用紙Pの通過に支障がなければ、固定設定される押圧物を採用することも可能である。
前記実施の形態1では、記録用紙Pを支持板50に支持されている定着ベルト10に押し付ける押圧体として、複数の支持ロールに張架された押圧ベルト60を使用した場合について例示したが、その押圧体としては、押圧ベルト60を使用せず、押圧ロール61〜63のみからなるものであってもよい。また、この場合、押圧体としての押圧ロールは、複数設置することが好ましいが、所要の押付時間を確保できる限りにおいては1つであっても構わない。押圧体としては、定着ベルト10の回転や記録用紙Pの通過に支障がなければ、固定設定される押圧物を採用することも可能である。
この他、押圧ベルト、押圧ロール等の押圧体の定着ベルトおよび記録用紙と接する接触面には、トナーが付着しにくい材料からなる離型層を形成することも可能である。この場合には、たとえば両面画像形成時において記録用紙の第2面へのトナー像の定着を行う場合、その第一面の定着済みのトナー画像のトナーが押圧体の接触面に転移付着の発生を抑制することが可能となる。
また、前記実施の形態1では、支持板50に面状ヒータ52を設置した構成について説明したが、その面状ヒータ52は設置しなくてもかまわない。また、支持板50に面状ヒータ52を設置する代わりに、または面状ヒータ52を設置することに加えて、押圧ベルト60を加熱する装置を設置してもよい。その加熱装置としては、押圧ロール61〜63の少なくとも1つを加熱ロールとして構成したものや、押圧ベルト60の外周面に接して回転する加熱ロールで構成したものや、押圧ベルト60を非接触で加熱できるヒータで構成したもの採用することができる。
支持板50および押圧ベルト60を加熱する加熱装置の動作については、定着動作時に常に加熱動作するように構成してもよいが、必要により、所定枚数以上の連続定着を行う場合や、厚紙を使用した定着を行う場合などのように特定の定着動作を行うときにのみ加熱動作するように構成してもよい。このような加熱装置を設置した場合には、その構成内容に如何にかかわらず、記録用紙が接することで発生する定着ベルト10の温度低下を補足するため、その定着ベルト10を加熱する装置(前記加熱板、加熱ロールなど)の温度設定を変更する必要がなくなるという利点がある。しかも、多種多様な記録用紙を使用した定着や、その連続した定着についても十分に対応することが可能となる。
また、前記実施の形態1では、定着ベルト10を支持する支持体としてその全体が板形態の支持板50を使用する場合を例示したが、特にその支持体における全体形態について、少なくとも定着ベルト10の定着加圧部に進入する手前付近となる領域の内周面に対して面接触する接触面を有する形態であればよく、特に限定されない。
さらに、前記実施の形態1では、定着ベルト10との間で定着加圧部を形成する加圧回転体として加圧ベルト35を使用する場合について例示したが、その加圧回転体としては、たとえば前記したような加圧ベルト35を使用せず、一対の加圧ロール30,31のみで構成したものを採用することも可能である。この場合は、その加圧ロール30、31の間に挟まれる定着ベルト10とその第二加圧ロール31との間に形成される定着加圧部を通過した後の記録用紙がその定着ベルト10に密着した状態のままで冷却装置40により冷却されながら搬送され、最後に剥離用ロール16に達した定着ベルト10から剥離されるようになる。なお、冷却装置40の冷却方式は他の方式であってもかまわない。また、自然冷却が可能であれば、冷却装置40は必ずしも設置する必要はない。
この発明の定着装置は、各種画像情報に基づくトナー(乾式現像剤)からなる像を形成して記録用紙に転写し得る画像形成装置の定着手段として使用することができる。また、この定着装置に適用される記録用紙は、定着装置内を搬送してトナー像の定着が可能なものであればよく、たとえば、通常の用紙やコート紙(塗工紙)に限らず、OHPシート、ハガキ、封筒等のような部材を含むものである。
1A,1B…定着装置、10…定着ベルト、20…加熱板(加熱装置)、25…加熱ロール(加熱装置)、30,31…加圧ロール(加圧回転体)、35…加圧ベルト(加圧回転体)、50…支持板(支持体)、52…面状ヒータ(加熱装置)、60…押圧ベルト(押圧体)、61〜63…押圧ロール(または支持ロール)、64…テンションロール(支持ロール)、T…トナー像、P…記録用紙、E…押付区間。
Claims (5)
- 循環するように回転する無端状の定着ベルトと、
この定着ベルトを加熱する加熱装置と、
この加熱装置で加熱された定着ベルトの外周面に圧接して定着加圧部を形成し、その定着加圧部に定着対象のトナー像が担持された記録用紙を導入して定着ベルトの外周面に圧接させる加圧回転体と、
この加圧回転体で形成される前記定着加圧部に進入する付近の前記定着ベルト部分の内周面に面接触してそのベルト部分を支持する支持体と、
この支持体で支持される前記定着ベルトの領域内でその外周面から圧接し、前記定着加圧部に導入される前の前記記録用紙をその定着ベルト領域内の外周面に押し付ける押圧体とを備え、
かつ、前記押圧体により記録用紙を押し付けている押付時間が70ミリ秒以上となるように設定されていることを特徴とする定着装置。 - 前記押付時間が210ミリ秒以上となるように設定されている請求項1に記載の定着装置。
- 前記押圧体が回転する弾性ロールである請求項1に記載の定着装置。
- 前記押圧体が複数の支持ロールに張架されて回転する押圧ベルトであり、その複数の支持ロールのうち2以上の支持ロールを前記支持体で支持される定着ベルト領域内にその押圧ベルトを介した状態で回転可能に圧接させるように設置している請求項1に記載の定着装置。
- 前記支持体および押圧体の少なくとも一方に、その支持体および押圧体を加熱する加熱装置を設置した請求項1に記載の定着装置。
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Cited By (1)
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WO2009031702A1 (ja) * | 2007-09-06 | 2009-03-12 | Canon Kabushiki Kaisha | 像加熱装置 |
-
2004
- 2004-04-13 JP JP2004118031A patent/JP2005300982A/ja not_active Withdrawn
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CN101796461B (zh) * | 2007-09-06 | 2012-07-18 | 佳能株式会社 | 图像加热设备 |
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