JP2005017753A - 定着装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】定着加圧部を通過した後の定着ベルトと記録用紙との間における剥離ブリスターの発生を防止でき、かかる剥離ブリスターに起因した光沢ムラ等の定着不良や紙しわの発生も防止することができる定着装置を提供する。
【解決手段】定着ベルト(10)における加圧回転体(30,31)の定着加圧部(N)よりも回転方向上流側となる位置でそのベルト内周面に接触するように固定配置される板状部材(50)と、この板状部材に接触している定着ベルトの外周面に圧接して回転する押圧ロール(55)とを設け、この押圧ロールと定着ベルトの外周面との間に定着対象のトナー像(T)を担持する記録用紙(P)を導き入れるように構成した。
【選択図】 図1
【解決手段】定着ベルト(10)における加圧回転体(30,31)の定着加圧部(N)よりも回転方向上流側となる位置でそのベルト内周面に接触するように固定配置される板状部材(50)と、この板状部材に接触している定着ベルトの外周面に圧接して回転する押圧ロール(55)とを設け、この押圧ロールと定着ベルトの外周面との間に定着対象のトナー像(T)を担持する記録用紙(P)を導き入れるように構成した。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、定着対象のトナー像を担持する記録用紙を、加熱されて回転する無端状の定着ベルトに圧接させて密着させたままの状態で搬送した後に剥離するタイプの定着装置に係り、特に、定着時に記録用紙から水蒸気が発生して定着ベルトとの間に介在することに起因した定着不良や紙しわの発生を防止することが可能な定着装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真方式、静電記録方式等を利用してトナー(現像工程に使用される着色粉体)からなる画像を最終的に記録用紙に形成するプリンタ、複写機、複合機等の画像形成装置において、そのトナー像を記録用紙に定着させるために使用される定着装置として、以下に示すように、加熱されて一定の方向に回転する無端状の定着ベルトの外周面に定着対象のトナー像を担持する記録用紙を圧接させて定着を行うタイプのものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、このタイプの定着装置は、まず、その定着ベルトを加熱ロールを含む複数のロールに張架して一定の方向に回転させる一方で、その加熱ロールにより加熱された定着ベルトに加圧ロールや加圧ベルトを押し当てるように配置して定着(加熱)加圧部を形成したものである。しかも、このタイプの定着装置は、定着対象のトナー像を担持する記録用紙を、その定着加圧部に導き入れて通過させるとともにその通過後も定着ベルトの外周面に密着させた状態で所定の距離だけ搬送してトナー像を冷却させてから剥離するように構成されている。
【0004】
そして、このタイプの定着装置によれば、記録用紙上のトナー像が定着ベルトの平滑面にそって固化することになるため、そのトナー像の表面も平滑なものとなって光沢感に優れた定着画像が得られるという利点がある。また、トナーが冷却固化されることにより、そのトナーの凝集力がトナーと定着ベルト間の接着力よりも大きくなった状態で定着ベルトから剥離されることになるため、トナーが定着ベルトに残留付着してしまういわゆるホットオフセットの現象も発生しにくくなるという利点もある。
【0005】
ところが、このような定着装置においては、記録用紙に含まれる水分が定着時の加熱により気化膨張して用紙の外部に抜けて定着ベルトとの間に水蒸気として溜まり、その水蒸気の蒸気圧の作用を受けて記録用紙が定着ベルトから剥離することがあり(以下、この現象を「剥離ブリスター」と呼ぶ)、この現象によりトナー像が冷却固化する前に定着ベルトから剥離してしまうと、次のような定着不良の1種でもある光沢の低下や光沢むらが発生する。また、特に上記定着加圧部を通過した後に記録用紙を定着ベルト側に押し付けるように保持する部材が存在する場合には、次にような紙しわが発生する。
【0006】
つまり、剥離ブリスターにより定着ベルトから剥離したトナー像部分は、そのベルトの平滑面にならって固化せずトナー像表面が本来もつ凹凸感が残ることとなり、この結果、かかる剥離が起こらないトナー像部分に比べると、その光沢感が低下したものとなったり、あるいは、その剥離したトナー像部分がトナー像全体の一部である場合に光沢感が異なる部分が混在するという光沢むらになる。また、剥離ブリスターにより定着ベルトから剥離して局部的に浮いた記録用紙部分は、その浮いた状態の用紙部分が寄せ集められて前記したような保持部材を通過する際に座屈して折れ曲がってしわとなる。
【0007】
なお、上記タイプの定着装置とは異なるタイプ(定着対象のトナー像を担持する記録用紙を定着加圧部の通過直後に剥離させるタイプ)の定着装置ではあるものの、次のような構成からなる定着装置が提示されている。
【0008】
その1つは、加熱ローラと従動ローラとの間に張架された無端状の定着ベルトと、その従動ローラに対向して設けた加圧ローラとを備えた定着装置であって、その従動ローラに支持された定着ベルトと加圧ローラの間に形成される定着ニップ部の入口の上流側に定着ベルトに圧接する補助ロールを設けたものである(特許文献2)。
【0009】
もう1つは、第1定着ローラと発熱ローラとの間に張架されたベルト部材と、その第1定着ローラとの間でニップ部を形成する第2定着ローラとを備えた定着装置であり、そのベルト部材の内側より当接してそのベルト部材を加熱する面状の発熱体を設け、そのベルト部材に転写材を静電的に密着させて予備加熱を行うとともに、そのニップ部にて記録用紙上のトナー像を定着するようにしたものである(特許文献3)。
【0010】
しかしながら、これら従来の定着装置は、そのいずれも定着ニップ部等を通過した直後に記録用紙を剥離させるものであって、記録用紙を定着ベルトの外周面に圧接させる定着加圧部を通過させた後もそのベルト外周面に密着させた状態で搬送するものではないため、前述したような剥離ブリスターが発生することがなく、この結果、その剥離ブリスターに起因した光沢ムラ等の定着不良や紙しわが発生することもない。
【0011】
また、上記従来の定着装置は、その定着ニップ部の上流側で補助ローラまたは面状加熱体を配置したベルト部分においてトナーと記録用紙を予備加熱するものであるが、その予備加熱の目的が、定着温度を低くすることを可能にしてホットオフセットの発生を防止するようにしたり、あるいは、ベルト部材のウォーミングアップ時間の短縮化や連続プリント時のベルト温度の安定化または均一化を図ることにあり、前記剥離ブリスターの発生に着目してその発生を防止することを目的にはしていない。さらに、記録用紙を定着ベルトに強固に圧接させるものではないため、その用紙と高温の定着ベルトとの密着性を十分に得ることができない。
【0012】
【特許文献1】特開平5−72926号公報(請求項1、図1など)
【特許文献2】特開平9−281822号公報(請求項1、図1など)
【特許文献3】特開2001−166617号公報(請求項1、図3など)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述したような問題点を解消するためになされたものであり、その主な目的とするところは、定着加圧部を通過した後の定着ベルトと記録用紙との間における剥離ブリスターの発生を容易に防止することができ、かかる剥離ブリスターに起因した光沢ムラ等の定着不良や紙しわの発生も防止することができる定着装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の定着装置は、複数のロールに張架されて一定の方向に回転する無端状の定着ベルトと、この定着ベルトを加熱する加熱手段と、この加熱手段で加熱された定着ベルトをその外周面および内周面の両側から加圧した状態で挟んでそのベルト外周面との間に定着対象のトナー像を担持する記録用紙を導き入れて加圧するための定着加圧部を形成するように対向配置される加圧回転体と、この加圧回転体による定着加圧部を通過した後も前記記録用紙を定着ベルトの外周面に密着させた状態で所定の距離だけ搬送してから剥離する剥離手段とを備えた定着装置において、
前記定着ベルトにおける前記加圧回転体の定着加圧部よりも回転方向上流側となる位置でそのベルト内周面に接触するように固定配置される板状部材と、この板状部材に接触している定着ベルトの外周面に圧接して回転する押圧ロールとを設け、この押圧ロールと定着ベルトの外周面との間に前記定着対象のトナー像を担持する記録用紙を導き入れることを特徴とするものである。
【0015】
ここで、上記板状部材は、記録用紙を加熱された定着ベルトに確実に圧接させて加熱させるためのものである。このため、この板状部材は、その部材に接触して回転する定着ベルトの走行性の支障とならず、しかもそのベルト外周面の平滑性を保持できるようなものであればよい。また、この板状部材は、そのベルト回転方向に沿う長さを、定着ベルトによる記録用紙の予備加熱を十分に行うに足る寸法になる等の観点から適宜設定することができる。この板状部材は、1枚構成のものに限らず、複数枚に分割された板状の分割部材を一体化した構成のものであってもよい。一方、上記押圧ロールは、板状部材に接触して支持されている加熱状態の定着ベルトに対して記録用紙を確実に押し付けるようにするためのものである。
【0016】
この板状部材と押圧ロールとの間に至る定着ベルトは、上記加熱手段等によりトナー像が溶融軟化する程度の温度以上に加熱することが好ましい。その定着ベルトの加熱は、具体的には、少なくとも100℃以上の温度となるように行うことが好ましく、その記録用紙の含水率を効率よく減少させることができる等の観点からすると130℃以上の温度となるように行うことが更に好ましい。
【0017】
また、上記加圧回転体は、対向して配置されるロール形態どうしのものが好ましいが、特にその形態のものに限定されない。この加圧回転体における定着加圧部は、定着対象のトナー像を担持する記録用紙に対して、少なくとも定着に必要な加圧を行うことができるものであればよい。さらに、上記剥離手段は、例えば、定着ベルトを記録用紙の搬送方向とは急激に離れる方向に曲げて移動走行させるようにロールで支持し、その用紙が自身のこしの強さにより自力でその曲がって移動走行する定着ベルト部分から剥離するように構成したものであってもよい。また、上記所定の距離は、主にトナー像が冷却されて固化されるに足る搬送距離であり、その冷却性能や搬送速度などによって適宜設定される。
【0018】
このような定着装置によれば、定着対象のトナー像を担持する記録用紙は、定着加圧部に導き入れられる前に、加熱されて板状部材に内周面から支持された状態にある定着ベルトの外周面に対して押圧ロールにより圧接されることにより加熱加圧される。
【0019】
これにより、記録用紙に含まれる水分は、加圧下において確実に加熱されて気化し、水蒸気となって、その用紙の定着ベルトとは反対側の面から主に発散される。また、記録用紙は、押圧ロールによる圧接部を通過した後も定着ベルトのタック力あるいはトナーの粘着力により定着ベルトに密着しつづけて加熱される。この結果、記録用紙の含水率が定着加圧部に突入する前に減少し、その定着加圧部を通過した後における水蒸気の発生が抑えられるようになる。
【0020】
また、この際、その水蒸気の一部は、用紙と定着ベルトとの間に介在しようとするが、かかる水蒸気は押圧ロール(複数ある場合には、特にその下流側の押圧ロール)により定着ベルトを介して板状部材との間に形成される圧接部に堰き止められて通過することができず、その圧接部の入口で絞り出されるようにして排出される。この結果、記録用紙が水蒸気の介在によって定着ベルトから浮き上がれるように剥離される現象が発生せず、むらなく予備加熱されるようになるとともに、定着加圧部への導入の際に紙しわが発生するというおそれがなくなる。
【0021】
さらに、この際、加圧下での予備加熱によりトナー像は溶融し始めて記録用紙に圧接されるため記録用紙に仮定着され、定着加圧部での通常の定着時における温度での加熱が不要となる。この結果、定着加圧部における加熱温度を定着温度よりも低い温度に低下させることが可能になる。
【0022】
そして、上記定着装置においては、押圧ロールを、定着ベルトの回転方向に対して前後するように複数設けるとよい。その各押圧ロールのベルト回転方向に沿う間隔については、定着ベルトの加熱設定温度あるいは回転(プロセス)速度によって記録用紙から発生する水蒸気により記録用紙の定着ベルトからの浮きの発生速度が変化するので当該浮きによる用紙の予備加熱むらが発生しないような観点から任意に設定することもできるが、等間隔に設定することがより好ましい。
【0023】
この場合には、記録用紙を板状部材に接触支持されている加熱状態にある定着ベルトに確実に押し付けるとともに当接させておくことができ、しかも、その複数の押圧ロールの数だけ上記したような圧接部が存在して水蒸気を絞り出すように排出させる効果がより確実に得られるようになる。
【0024】
また、上記各定着装置においては、板状部材を加熱する加熱手段を設けるとよい。この加熱手段は、その加熱方式等について特に限定されるものではないが、所定の温度に加熱できるように加熱動作を制御する構成を採用することが好ましい。この板状部材の加熱温度は、記録用紙を過剰に加熱することによってその用紙から水蒸気を急激に発生させることを避けるような温度に設定することが望ましく、例えば130℃以下の温度に設定するとよい。
【0025】
この場合には、板状部材自身が加熱された状態にあるため、定着動作時において加熱された定着ベルトの熱量が板状部材との接触により予定外に奪われたり、あるいは、その熱量が記録用紙側に多く奪われたりして記録用紙への予備加熱を所望の温度で行うことができなくなることを回避することができるようになる。また、定着開始時や定着ベルトの熱量が奪われて所定の加熱温度を下回った時に、その対応策として定着ベルトを空回転させて所定の温度に加熱させる動作を行う必要がなくなる。
【0026】
また、上記各定着装置においては、押圧ロールを加熱する加熱手段を設けるとよい。この加熱手段は、その加熱方式等について特に限定されるものではないが、そのロール表面の温度を検知手段で検知し、その検知結果に基づいて加熱動作を制御する構成を採用することが好ましい。
【0027】
この場合には、定着開始時における定着ベルトが十分にまたは均一に加熱されないことや、室温に近い温度の記録用紙が接触して定着ベルトやロールの温度が低下することにより、記録用紙を所望の温度で加熱できなくなることを回避することができる。
【0028】
さらに、上記各定着装置において、押圧ロールは、そのロール表面側に弾性層を形成してなるものを使用することが好ましい。弾性層としては、例えば、ゴム層、スポンジ層が適用可能であり、好ましくは離型性を有するものを適用する。
【0029】
このようなロールを使用した場合には、記録用紙の定着ベルト外周面に対する良好な密着性を確保することができる。また、離型性を有する弾性層を形成した場合には、記録用紙の表裏両面に画像を形成するときにおいて、その用紙の第2面目のトナー像を定着する際、その第1面目の定着済のトナー像が押圧ロールに接してもトナーオフセットが発生しにくくなる。
【0030】
以上の各定着装置において、記録用紙は、定着装置内を搬送してトナー像の定着が可能なものであればよく、通常の普通紙に限らず、塗工紙、OHPシート、ハガキ、封筒等のような部材を含むものである。また、加圧回転体の定着加圧部と剥離手段との間には、必要に応じて、その定着加圧部を通過した後の定着ベルトひいては記録用紙とトナー像とを迅速かつ確実に冷却するための冷却手段を設置するとよい。さらに、加圧回転体の少なくとも一方にそのものを冷却する冷却手段を設けてもよい。この場合には、その冷却手段で冷却された加圧回転体を介して定着ベルトや記録用紙等が間接的に冷却されるため、定着加圧部を通過する際に記録用紙が高温で加熱されることがなく、その記録用紙からの水蒸気の発生を抑制することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
《実施の形態1》
図1は、本発明の実施の形態1に係る定着装置を示す概略構成図である。この定着装置1は、プリンタ、複写機等の画像形成装置における定着手段として使用されるものである。図中の実線矢印は主な回転部品の回転方向を示す。
【0032】
定着装置1は、回転する無端状の定着ベルト10と、この定着ベルトを張架するとともに加熱する加熱ロール20、21と、この加熱ロール20、21により加熱された定着ベルト10を挟むような状態で対向して圧接配置される一対の加圧ロール30、31と、この一対の加圧ロールのうち定着ベルト10の外周面側に配置される第2加圧ロール31にも支持されつつ定着ベルト10と所定の距離だけ当接して同じ方向に移動するように回転する加圧ベルト35と、加圧ロール30、31を通過した後の定着ベルト10の内周面側に接触するように配置されて定着ベルト等を冷却する冷却装置40等を具備するものである。図中の符号Pは記録用紙、Tはその記録用紙に担持されるトナー像である。また、矢付一点鎖線は記録用紙Pの搬送経路を示す。
【0033】
定着ベルト10は、カーボングラックを含有させたポリイミド等からなる厚さ50μm程度のベルト基材上に、厚さ60μm程度のシリコーン共重合体(硬度:例えば24°)等からなる弾性層をこの順に形成した構造のものである。また、このベルト10は、その周長が約1300mm、その幅が約360mmである。さらに、定着ベルト10は、第1加熱ロール20、第2加熱ロール21、第1加圧ロール30、および複数のベルト支持ロール15〜16に張架されており、駆動ロールとして兼用されている支持ロール16によって矢印A方向に回転するようになっている。
【0034】
ベルト支持ロール15は、定着ベルト10を急激に曲がった状態で移動走行させるように支持し、これにより定着ベルト10に密着して搬送される記録用紙Pをそれ自身のこしの強さにより自力で剥離させる役割を果たす剥離用ロールとして機能する。
【0035】
第1加熱ロール20は、外径が80〜100mmからなる円筒状の金属製ロールの内部にハロゲンランプ等の加熱源22を配置した構造からなるものであり、定着ベルト10をその外周面側から加熱する。一方、第2加熱ロール31には、外径が50〜60mmからなる円筒状の金属(アルミニウム等)製ロールの内部にハロゲンランプ等の加熱源23を配置した構造からなるものであり、定着ベルト10をその内周面側から加熱する。加熱源22、23は、その加熱ロール20、21の各表面温度を検知するために設置される温度検知センサ24の検知結果に基づいて、その加熱動作(電源の供給)がそれぞれ制御されるようになっている。第1加熱ロール20のように定着ベルト10の外周面から加熱する加熱手段を使用する場合には、定着ベルト10として比較的厚いものを使用しても、その厚めの定着ベルトの外周面を所望の温度まで容易に加熱することができる。
【0036】
第1加熱ロール20は、そのロール表面に接して清掃を行うための巻取りウエブ方式のクリーニング装置25が配置されている。特にこのクリーニング装置25は、そのクリーニング用ウエブ26としてシリコーンオイル等の離型剤を含浸させたものを使用し、かかるウエブ26を送り出しロールから所定量ずつ送り出して巻取りロールに巻き取らせる過程で押圧ロール27によって加熱ロール21の表面に押し当てている。これにより、定着ベルト10上のトナー等が加熱ロール20に転移付着したものなどを除去して清掃するとともに、その加熱ロール21の表面に微量の離型剤を塗布して定着ベルト10の外周面に転移供給するようになっている。
【0037】
加圧ロール30、31はいずれも、外径が80mm、肉厚が6mmからなる円筒形の金属(アルミニウム等)製ロール基体に、シリコーンゴム(硬度:例えば17°程度)等からなる厚さ6mm程度の耐熱弾性層を形成した構造のものである。また、加圧ロール30、31は、その一方(30)が固定した状態で回転可能に支持され、その他方(31)が図示しない加圧機構により所定の加圧力(例えばニップ圧力が約1500N程度の荷重)でもって固定支持された側のロールに対して(定着ベルト10を介して)圧接されるとともに、その定着ニップ部Nの幅(ロール回転方向の寸法)が20mm程度となるように設置されている。さらに、第2加圧ロール31は、ウォーミングアップ時には加圧ベルト35とともに定着ベルト10から離間した位置に変位するように支持されている。
【0038】
さらに、加圧ロール30、31では、その内部空間にハロゲンランプ等の加熱源32、33を配し、このロールを定着動作時の温度まで上昇させるいわゆるウォームアップ時のみの加熱を行う(定着動作時には加熱しない)ようにしている。加熱源32、33は、各加圧ロール30、31の表面温度を検知するために設置された温度検知センサ34の検知結果に基づいて、その各加熱動作(電源の供給)がそれぞれ制御されるようになっている。
【0039】
加圧ベルト35は、ポリイミド等からなる厚さ50μm程度のベルト基材上に、シリコーンゴム等からなる厚さ60μm程度の弾性層をこの順に積層形成した構造のものである。また、加圧ベルト35は、第2加圧ロール31、駆動ロール36、ベルト支持ロール37に張架されており、駆動ロール36によって矢印B方向に回転するようになっている。この加圧ベルト35は、第2加圧ロール31とベルト支持ロール37の所定の区間で定着ベルト10の外周面と接して同じ方向に回転移動する。
【0040】
冷却装置40は、放熱部材と空冷機構とで構成されている。すなわち、この冷却装置40は、第1加圧ロール30とベルト支持ロール15との間の所定間隔内で定着ベルト10の内周面に接する放熱基板41aと、その放熱基板41aの片面に立設される複数枚の放熱フィン41bとからなる放熱部材であるヒートシンクを備えている。また、その放熱フィン41aに図示しない空調ダクトを介して送風ファンから送風(または排気)を行って空冷する空冷機構とを備えている。
【0041】
そして、この定着装置1においては、図1や図2に示すように、定着ベルト10および加圧ベルト35を挟んだ状態で第1加圧ロール30と第2加圧ロール31との間に形成される定着ニップ部Nよりもベルト回転方向Aの上流側となる位置で、その定着ベルト10の内周面に接触する加熱板50を位置的に固定した状態で配置しているとともに、その加熱板50に接触している定着ベルト10の外周面に圧接する複数の押圧ロール55を回転可能に配置している。
【0042】
加熱板50は、定着ベルト10に接触する側の面がそのベルト回転方向AにそってR900程度の曲率からなる湾曲鏡面に形成された厚さ3mm程度のアルミニウム基板51と、その定着ベルト10が接触しない側の面に配置したラバーヒータ51とで構成されている。また、加熱板50は、その定着ベルト10の回転方向Aに沿う長さLが200〜400mm程度のものであり、第2加熱ロール21を通過した近傍位置から定着ニップ部Nの手前側の近傍位置までの定着ベルト領域に配置されている。この加熱板50は、ラバーヒータ51により所定の温度(例えば90〜130℃程度)に加熱される。
【0043】
複数の押圧ロール55は、そのいずれも外径が12mmの金属製ロール芯材にシリコーンゴム等からなる厚さが4mm程度の弾性層を形成したものであり、バネ等を利用した公知の加圧機構により所定の荷重(例えば20N)で加熱板50に定着ベルト10を介して圧接されている。また、この押圧ロール55はいずれも加熱板50に対して接離可能となるように公知の変位機構により支持されており、例えばウォームアップ時において前記した第2加圧ロール31とともに定着ベルト10から離間した位置に変位するようになっている。
【0044】
また、複数の押圧ロール55(A〜C)は、加熱板50のベルト回転方向Aに沿う前後における所定の位置に適宜配分して設置することができる。特に最上流側の位置に配置する押圧ロール55Aや最下流側の位置に配置する押圧ロール55Cは、加熱板50からみてその各押圧ロール55A,55Cによるニップ部が加熱板50の端部から約10mm内側となるような条件を満たすように配置している。さらに、その回転方向Aの最上流側となる位置に配置される押圧ロール55Aその定着ベルトの回転方向Aの前後に対して所定の間隔E1,E2をあけた状態で配置されている。その間隔E1,E2は互いに異なったものであってもよいが、記録用紙Pから発生する水蒸気による定着ベルト10と用紙P間の浮きの成長速度がほぼ同一である等の観点からすると、同等であることが好ましい。
【0045】
このような加熱板50および押圧ロール55を設けた定着装置1では、その最上流側の位置に配置される押圧ロール55Aと加熱板50に接触支持される定着ベルト10の間に形成される押圧ニップ部Mの間に、定着対象のトナー像Tを担持する記録用紙Pを導き入れるようになっている。
【0046】
また、このように記録用紙Pが導き入れられる際には、その定着ベルト10が第1加熱ロール20と第2加熱ロール21とにより100℃以上の温度、好ましくは130〜190℃の温度に加熱されるように設定されている。特にこの定着装置1では、前述したように定着時には定着ニップ部Nにおいて加圧ロール30、31による定着のための加熱を行わない構成になっているため、定着ベルト10は少なくとも定着に必要な温度(定着温度)以上の温度まで加熱するようになっている。
【0047】
このような定着装置1では、画像形成装置の作像部側においてトナー像Tが転写された記録用紙Pに対して以下のごとき定着が行われる。
【0048】
すなわち、まずトナー画像Tが転写された記録用紙Pが、搬送導入ガイド12等を通してそのトナー像担持面を定着ベルト10の外周面に当接させる姿勢で、押圧ニップ部Mの最上流押圧ロール55Aと加熱板50にて接触支持される定着ベルト10の外周面との間に導き入れられる。このとき定着ベルト10は、第1加熱ロール20および第2加熱ロール21により130℃以上の温度に加熱された状態で押圧ニップ部Mに到達する。また、このとき定着ベルト10は加熱板50によっても加熱保持される。
【0049】
押圧ニップ部Mに導入された記録用紙Pは、図3に示すように、130℃以上の高温に加熱されて加熱板50に支持された状態にある定着ベルト10に押圧ロール55Aにより圧接された状態下で加熱される。このときの記録用紙Pは、特に押圧ロール55が弾性層を形成したロールであるため、加熱板50(金属基板51)に支持されている定着ベルト10の外周面に対して密着性良好に圧接される。また、定着が連続して行われ、温度の低い記録用紙Pが連続して触れることにより定着ベルト10やその押圧ロール55の温度が低下しても、加熱板50による加熱が行われるため、その温度低下を防止することができ、もって記録用紙Pを高温で安定して加熱することができる。
【0050】
そして、最上流の押圧ロール55Aによる押圧ニップ部Mを通過した後の記録用紙Pは、その下流側に配置される押圧ロール55B,55Cによる定着ベルト10との押圧ニップ部を次々と通過するように搬送される。また、この際、記録用紙Pは、そのトナー像Tが上記加熱により溶融し始めた状態になることにもよって定着ベルト10に付着した状態で加熱板50に支持される領域を搬送された後、定着ニップ部Nにおける定着ベルト10の外周面と第2加圧ロール31に支持される加圧ベルト35の外周面との間に導き入れられる。
【0051】
これにより、記録用紙Pは加圧下で高温加熱されるため、その用紙中の水分が高温で確実に加熱されて気化し、主に押圧ニップ部Mを通過して圧接状態から開放された後に水蒸気(点線矢印S)として用紙の定着ベルト10とは反対側の面から主に発散される。しかも、その下流側の位置に配置される押圧ロール55B,55Cによる押圧ニップ部を通過するごとに、記録用紙Pと定着ベルト10との間に介在しようとする水蒸気も、その各ニップ部で堰き止められて絞り出されるようにして発散される。この結果、記録用紙Pは、その含水率が定着ニップ部Nに突入する前に大幅に減少する。また、この用紙裏面側からの水蒸気Sの発散により、記録用紙Pは定着ベルト10から剥がれにくい状態におかれる。
【0052】
また、記録用紙P上のトナー像Tは、押付けニップ部Mにおいて外側押付けロール51により加圧された状態で加熱されるため溶融して記録用紙Pに仮定着されるようになり、定着ニップ部Nでの通常の定着時における温度条件にもとづく加熱が不要となる(この例では定着時に加圧ロール30、31による加熱は行っていない)。この結果、定着ニップ部Nにおいて定着温度による加熱を行う必要がなく、そのニップ部Nでの加熱温度を低下させることができる。
【0053】
続いて、定着ニップ部Nに突入した記録用紙Pは、加圧ロール30、31により定着に必要な荷重で強く加圧される。この際、記録用紙Pは、定着ベルト10の余熱により加熱されるが、加圧ロール30、31(の加熱源)により加熱されることはない。
【0054】
定着ニップ部Nを通過した記録用紙Pは、定着ベルト10と加圧ベルト35とに挟持されて定着ベルト10に密着した状態で搬送されるとともに、冷却装置40の放熱作用により熱が奪われる第1金属板41を通過する際にトナー像Tと一緒に所定の温度(例えば90℃以下の温度)になるまで冷却される。
【0055】
この冷却によりトナー像Tが固化されるとともに冷却装置40の放熱部材41における基板41aを通過した記録用紙Pは、ベルト支持ロール15で構成される用紙剥離手段において紙自身の腰の強さにより自力で定着ベルト10から、トナー画像とともに剥離される(図1の矢付き一点鎖線の先端部で示される状態となる)。この剥離された記録用紙Pは定着装置外に排出される。これによりトナー像Tが記録用紙Pに定着される。
【0056】
このようにして定着された画像は、特に定着ベルト10の平滑な表面にならい平滑化された光沢感に富む画像として得られる。
【0057】
また、特にこの定着装置1では、前述したように対着対象のトナー像Tを担持する記録用紙Pが加熱板50で支持された定着ベルト10と複数の押圧ロール55との間を通過した後に定着ニップ部Nに導き入れられることにより、その記録用紙Pの含水率が定着ニップ部Nに突入する前に大幅に減少し、しかも、その記録用紙Pが定着ニップ部Nで改めて定着温度に加熱されることがない。このため、その定着ニップ部Nを通過した後の冷却工程での水蒸気の発生が抑えられるようになる。また、定着ベルト10も定着ニップ部Nで必要以上に加熱されることがなくなり、定着ニップ部Nを通過した後に冷却装置40によって効率よく冷却されるようになる。
【0058】
この結果、定着ニップ部Nを通過した後に水蒸気が発生して記録用紙Pが定着ベルト10から剥離する剥離ブリスターの発生が抑制される。これにより、従来技術のごとき、剥離ブリスターに起因した光沢ムラ等の定着不良や紙しわの発生も防止され、良好な定着を行うことが可能となる。
【0059】
<評価試験>
次に、このような定着装置1の性能を評価するために行った試験について説明する。
【0060】
上記定着装置1について以下のような条件に設定した。まず、加熱板50は、その搬送方向長さLを240mmとするとともに、130℃程度の温度となるように加熱した。また、押圧ロール55として、外径が20mm、ローラ長が340mmの金属製ロール芯材にシリコーンゴム等からなる厚さが5mm程度の弾性層を形成した5つのものを使用し、その5つの押圧ロールを上記加熱板50のベルト回転方向に沿う前後に対してロール間隔Eが55mmの等間隔となるように配置した。これらの押圧ロール55の加熱板50に対する荷重はいずれも150Nに設定した。第2加圧ロール31の第1加圧ロール30に対する荷重は、2000Nに設定した。
【0061】
そして、このような条件に設定した定着装置を、その第1加熱ロール20および第2加熱ロール21により加熱して定着ベルト10の押圧ニップ部Mの手前における表面温度が図4に示すような各温度となるように加熱したうえで、公知のカラープリンタにて一定のテスト用トナー像を形成した記録用紙Pをそれぞれお導入して定着動作を実行し、定着度、カラー発色性、剥離ブリスターおよび紙しわについてそれぞれ調べた。押圧ニップ部Mの手前における定着ベルト10の温度については、放射温度計(ジャバンセンサー製:TMZ51−500)を用いて測定した。
【0062】
また、この定着時において定着ベルト10は350mm/secのプロセススピードで回転させた。また、冷却装置40は、記録用紙Pの剥離部に相当するベルト支持ロール15に到達するときの定着ベルト10の表面温度と、ベルト支持ロール37に到達するときの加圧ベルト35の表面温度とがいずれも90℃以下の温度になるまで冷却するように設定した。
【0063】
上記定着度は以下のようにして調べた。まず、図5に示すような諧調パターンからなる試験用トナー像Tを記録用紙P(王子製紙製:OKトップコートN;127.9gsmと、富士ゼロックスオフィスサプライ製:J紙)に形成したものを定着し、その定着後の用紙に面積率が100%のパッチ画像内を通過するような折り目(図5中の点線Z。画像が内側になるように折り曲げたもの)をつける。折り目をつける際の荷重は10Nとした。続いて、その折り目のついたパッチ画像部分を脱脂綿で軽く拭き、そのときのトナーの剥がれ具合を調べて以下の基準で評価した。
○:実用上問題とならない程度の剥がれ具合であった。
×:実用上画質不良となる程度の剥がれ具合であった。
【0064】
上記試験用トナー像Tは、図5中の左側から順にK(ブラック)、プロセスブラックPB(Y,M,Cで形成される黒色)、B(M,Cで形成される青色)、G(Y,Cで形成される緑色)、R(Y,Mで形成される赤色)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の各色からなる四角形のパッチ像であり、これら各色のパッチ像について、その面積率を段階的に異ならせたものを縦方向に複数個段階別に並べたパターン像である。
【0065】
上記カラー発色性は以下のようにして調べた。まず、上記密着度に関する試験の場合と同様に、図5に示すような諧調パターンからなる試験用トナー像Tを記録用紙P(王子製紙製:OKトップコートN;127.9gsm)に形成したものを定着した。続いて、その定着後の用紙上部にある各色の面積率100%のパッチ像を測定器(日本平版機材製:X−Rite)にて測色した後、その測色結果についてL*a*b*表色系におけるマンセル色相およびマンセル彩度を求めて発色しているか否かを調べ、以下の基準で評価した。
○:発色している。
×:発色していない。
【0066】
上記剥離ブリスターは以下のように調べた。まず、上記カラー発色性に関する試験の場合と同様に、図5に示すような諧調パターンからなる試験用トナー像Tを記録用紙Pに形成したものを定着した。この各定着後の記録用紙を観察し、剥離ブリスターが発生した場合において発生する定着トナー像中のスポット状あるいは帯状からなる低光沢度部の存在の有無を調べ、以下の基準で評価した。
○:発生しない。
×:発生した。
【0067】
上記紙しわは以下のようにして調べた。まず、図6aに示すように、記録用紙P(富士ゼロックスオフィスサプライ製:J紙)の中央部に長辺方向に伸びる帯状のベタトナー像T1を形成したものを定着した。次いで、この定着が終了した後に3分間が経過してから記録用紙Pの反対面の一端部に、図6bに示すような短辺方向に沿うベタトナー像T2を形成したものを定着した。そして、この両面への定着が終了した後の記録用紙Pにしわが発生しているか否かを目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:発生しない。
×:発生した。
【0068】
以上の各評価項目の結果を図4に併せて示す。また、比較のため、上記試験用の定着装置(実施例)において加熱板50および押圧ロール55を設けない定着装置(比較例)を用意し、前記したような評価試験を同じ条件下で行った。比較例の定着装置は、加熱板50などを設けない分、第2加熱ロール21と定着ニップ部Nとの間が縮まって接近した構造になっている。また、比較例では、定着ニップ部N直前における定着ベルト10の温度を100〜150℃としたときの試験を行っていない(図4の空欄部分)。これは、予備加熱を行わない関係から、定着ベルトの加熱温度が160℃を下回る温度(定着温度よりも低い温度)では定着自体を行うことができないという理由によるものである。また、図4中の「−」を付した欄は、得られたトナー像が未定着状態であったため評価ができないという結果を示すものである。
【0069】
図4に示す結果から明らかなように、実施例では、定着ベルトの表面温度が100〜190℃の温度範囲であれば剥離ブリスターの発生がなく、また、定着ベルトの表面温度が100〜210℃の全温度範囲において紙しわが発生することがないことが確認できた。ただし、その表面温度が120℃以下になると、カラー画像の定着を行う場合には、その発色性が悪くなる。このことから、例えば、定着ベルトの表面温度を130〜190℃の温度範囲に設定すれば、すべての評価項目を満たすような良好な定着を行うことができることがわかる。
【0070】
ちなみに、実施の形態1に係る定着装置1では、記録用紙Pの表裏両面にトナー像Tを形成する場合(両面プリントなどを行う場合)に、その第2面目のトナー像の定着についても、その第1面目の定着と同様に行われる。その際、第1面目の定着済のトナー像は、押圧ロール55に接触しながら通過するが、かかる押圧ロール55には前記したように弾性層が形成されているため、そのトナー像のトナーが押圧ロール側にオフセットすることがなく、その画像が乱されるおそれはない。
【0071】
また、実施の形態1に係る定着装置1では、必要に応じて、押圧ロール55の内部に電熱ヒータ等の加熱源を設置してそのロールを加熱するように構成することができる。この場合には、特にウォーミングアップ時の加熱時間の短縮や連続した定着を行う場合における定着ベルト等の温度低下の防止が可能となり、有利である。また、押圧ベルト55については、100mm/sec以下のような低速で定着を行う場合には、複数でなく1つのみであってもよい。
【0072】
《他の実施の形態》
実施の形態1に係る定着装置1では、図7に示すように、第1加熱ロール20の設置を省略して、第2加熱ロール21のみを設置するように構成することができる。この場合には、定着ニップ部Nの位置を基準にしてみると、定着ベルト10の巻き回したときの上下方向の寸法(高さ)を小さく(低く)することができ、定着装置の小型化(薄型化)を実現するうえで有利となる。なお、この構成では、第2加熱ロール21が駆動ロールとして機能するように構成される。
【0073】
また、このように構成したときの定着ベルト10の加熱は、主にその第2加熱ロール21のみによるものとなるため、かかる加熱能力を高めるため、第2加熱ロール21のロール外径を増大化させたり、あるいはその加熱源22の発熱能力を増大化させればよい。その他にも、図7に示すように、押圧ロール55に電熱ヒータ等の加熱源56を設置するように構成してもよい。この場合には、そのロール表面の温度を検知する温度センサ57を設置し、その検知結果に基づいて加熱源56の加熱動作を制御することにより、かかる加熱機能を備えた押圧ロール55によって定着ベルト10を所定の加熱温度に保つようにそのベルト外周面から適切に加熱するように構成するとよい。
【0074】
また、実施の形態1に係る定着装置1では、図8に示すように、加熱ロール20、21を取り除き、その代わりに、加熱板50として、最上流の押圧ロール55Aにて形成される押圧ニップ部Mよりもベルト回転方向Aの上流側に更に延長した形態(図中の50Aが延長した部分を示す)の大型加熱板53を設置するように構成することができる。なお、この場合においては、加熱ロールの設置を省略した関係により、定着ベルト10を支持するベルト支持ロール17を新たに設置している。
【0075】
このような大型加熱板53を適用した場合には、定着ベルト10を主に加熱する加熱手段が大型加熱板53のみに集約させることができるため、装置の簡素化ができる。また、この場合であっても、必要に応じて、押圧ロール55に電熱ヒータ等の加熱源56を設置することは有効である。
【0076】
また、実施の形態1に係る定着装置1では、必要に応じて、冷却装置40の設置を省略することが可能である。この場合には、定着ニップ部Nを通過した後の記録用紙Pを定着ベルト10に密着した状態で自然冷却されるように剥離部までの距離等を確保することが必要である。その他、その冷却装置40として、前記放熱部材と空冷機構からなるものを使用する代わりに、ヒートパイプを利用した熱循環器を適用することも可能である。
【0077】
さらに、実施の形態1に係る定着装置1では、必要に応じて、加圧ベルト35を設けることを省略してもよい。この場合は、その加圧ベルト35を張架して回転させるための各ロール36〜39も不要となる。また、定着ベルト10を加熱する手段としては、加熱ロール20、21に代えて、加熱板等の他の加熱手段を適用してもよい。さらに、
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の定着装置によれば、定着加圧部を通過した後の定着ベルトと記録用紙との間における剥離ブリスターの発生を防止することができる。従って、この定着装置を使用した場合には、その剥離ブリスターに起因した光沢ムラ等の定着不良や紙しわの発生のない、光沢感に優れた定着画像を安定して得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1に係る定着装置を示す概略構成図。
【図2】図1の定着装置における加熱板および押圧ロールとその周辺部の構成を示す要部拡大図。
【図3】加熱板および押圧ロールのある定着ベルト部分を通過させて行う定着動作時の状態を示す要部説明図。
【図4】評価試験の結果を示す図表。
【図5】評価試験で用いたテスト用トナー像(諧調パターン)を示す説明図。
【図6】評価試験(紙しわ)で用いたテスト用トナー像を示す説明図であり、(a)は記録用紙の片面に形成するテスト用トナー像を示し、(b)はその用紙の他面に形成するテスト用トナー像を示す。
【図7】図1の定着装置の一部を変形した構成例を示す要部拡大図。
【図8】図1の定着装置の一部を変形した他の構成例を示す要部拡大図。
【符号の説明】
1…定着装置、10…定着ベルト、15〜17…ベルト支持ロール、20,21…加熱ロール(加熱手段)、30、31…加圧ロール(加圧回転体)、35…加圧ベルト(支持ベルト)、50,53…加熱板(板状部材)、52…ラバーヒタ(加熱手段)、55…押圧ロール、56…加熱源(加熱手段)、T…定着対象のトナー像、P…記録用紙、N…定着ニップ部(定着加圧部)。
【発明の属する技術分野】
本発明は、定着対象のトナー像を担持する記録用紙を、加熱されて回転する無端状の定着ベルトに圧接させて密着させたままの状態で搬送した後に剥離するタイプの定着装置に係り、特に、定着時に記録用紙から水蒸気が発生して定着ベルトとの間に介在することに起因した定着不良や紙しわの発生を防止することが可能な定着装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真方式、静電記録方式等を利用してトナー(現像工程に使用される着色粉体)からなる画像を最終的に記録用紙に形成するプリンタ、複写機、複合機等の画像形成装置において、そのトナー像を記録用紙に定着させるために使用される定着装置として、以下に示すように、加熱されて一定の方向に回転する無端状の定着ベルトの外周面に定着対象のトナー像を担持する記録用紙を圧接させて定着を行うタイプのものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、このタイプの定着装置は、まず、その定着ベルトを加熱ロールを含む複数のロールに張架して一定の方向に回転させる一方で、その加熱ロールにより加熱された定着ベルトに加圧ロールや加圧ベルトを押し当てるように配置して定着(加熱)加圧部を形成したものである。しかも、このタイプの定着装置は、定着対象のトナー像を担持する記録用紙を、その定着加圧部に導き入れて通過させるとともにその通過後も定着ベルトの外周面に密着させた状態で所定の距離だけ搬送してトナー像を冷却させてから剥離するように構成されている。
【0004】
そして、このタイプの定着装置によれば、記録用紙上のトナー像が定着ベルトの平滑面にそって固化することになるため、そのトナー像の表面も平滑なものとなって光沢感に優れた定着画像が得られるという利点がある。また、トナーが冷却固化されることにより、そのトナーの凝集力がトナーと定着ベルト間の接着力よりも大きくなった状態で定着ベルトから剥離されることになるため、トナーが定着ベルトに残留付着してしまういわゆるホットオフセットの現象も発生しにくくなるという利点もある。
【0005】
ところが、このような定着装置においては、記録用紙に含まれる水分が定着時の加熱により気化膨張して用紙の外部に抜けて定着ベルトとの間に水蒸気として溜まり、その水蒸気の蒸気圧の作用を受けて記録用紙が定着ベルトから剥離することがあり(以下、この現象を「剥離ブリスター」と呼ぶ)、この現象によりトナー像が冷却固化する前に定着ベルトから剥離してしまうと、次のような定着不良の1種でもある光沢の低下や光沢むらが発生する。また、特に上記定着加圧部を通過した後に記録用紙を定着ベルト側に押し付けるように保持する部材が存在する場合には、次にような紙しわが発生する。
【0006】
つまり、剥離ブリスターにより定着ベルトから剥離したトナー像部分は、そのベルトの平滑面にならって固化せずトナー像表面が本来もつ凹凸感が残ることとなり、この結果、かかる剥離が起こらないトナー像部分に比べると、その光沢感が低下したものとなったり、あるいは、その剥離したトナー像部分がトナー像全体の一部である場合に光沢感が異なる部分が混在するという光沢むらになる。また、剥離ブリスターにより定着ベルトから剥離して局部的に浮いた記録用紙部分は、その浮いた状態の用紙部分が寄せ集められて前記したような保持部材を通過する際に座屈して折れ曲がってしわとなる。
【0007】
なお、上記タイプの定着装置とは異なるタイプ(定着対象のトナー像を担持する記録用紙を定着加圧部の通過直後に剥離させるタイプ)の定着装置ではあるものの、次のような構成からなる定着装置が提示されている。
【0008】
その1つは、加熱ローラと従動ローラとの間に張架された無端状の定着ベルトと、その従動ローラに対向して設けた加圧ローラとを備えた定着装置であって、その従動ローラに支持された定着ベルトと加圧ローラの間に形成される定着ニップ部の入口の上流側に定着ベルトに圧接する補助ロールを設けたものである(特許文献2)。
【0009】
もう1つは、第1定着ローラと発熱ローラとの間に張架されたベルト部材と、その第1定着ローラとの間でニップ部を形成する第2定着ローラとを備えた定着装置であり、そのベルト部材の内側より当接してそのベルト部材を加熱する面状の発熱体を設け、そのベルト部材に転写材を静電的に密着させて予備加熱を行うとともに、そのニップ部にて記録用紙上のトナー像を定着するようにしたものである(特許文献3)。
【0010】
しかしながら、これら従来の定着装置は、そのいずれも定着ニップ部等を通過した直後に記録用紙を剥離させるものであって、記録用紙を定着ベルトの外周面に圧接させる定着加圧部を通過させた後もそのベルト外周面に密着させた状態で搬送するものではないため、前述したような剥離ブリスターが発生することがなく、この結果、その剥離ブリスターに起因した光沢ムラ等の定着不良や紙しわが発生することもない。
【0011】
また、上記従来の定着装置は、その定着ニップ部の上流側で補助ローラまたは面状加熱体を配置したベルト部分においてトナーと記録用紙を予備加熱するものであるが、その予備加熱の目的が、定着温度を低くすることを可能にしてホットオフセットの発生を防止するようにしたり、あるいは、ベルト部材のウォーミングアップ時間の短縮化や連続プリント時のベルト温度の安定化または均一化を図ることにあり、前記剥離ブリスターの発生に着目してその発生を防止することを目的にはしていない。さらに、記録用紙を定着ベルトに強固に圧接させるものではないため、その用紙と高温の定着ベルトとの密着性を十分に得ることができない。
【0012】
【特許文献1】特開平5−72926号公報(請求項1、図1など)
【特許文献2】特開平9−281822号公報(請求項1、図1など)
【特許文献3】特開2001−166617号公報(請求項1、図3など)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述したような問題点を解消するためになされたものであり、その主な目的とするところは、定着加圧部を通過した後の定着ベルトと記録用紙との間における剥離ブリスターの発生を容易に防止することができ、かかる剥離ブリスターに起因した光沢ムラ等の定着不良や紙しわの発生も防止することができる定着装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の定着装置は、複数のロールに張架されて一定の方向に回転する無端状の定着ベルトと、この定着ベルトを加熱する加熱手段と、この加熱手段で加熱された定着ベルトをその外周面および内周面の両側から加圧した状態で挟んでそのベルト外周面との間に定着対象のトナー像を担持する記録用紙を導き入れて加圧するための定着加圧部を形成するように対向配置される加圧回転体と、この加圧回転体による定着加圧部を通過した後も前記記録用紙を定着ベルトの外周面に密着させた状態で所定の距離だけ搬送してから剥離する剥離手段とを備えた定着装置において、
前記定着ベルトにおける前記加圧回転体の定着加圧部よりも回転方向上流側となる位置でそのベルト内周面に接触するように固定配置される板状部材と、この板状部材に接触している定着ベルトの外周面に圧接して回転する押圧ロールとを設け、この押圧ロールと定着ベルトの外周面との間に前記定着対象のトナー像を担持する記録用紙を導き入れることを特徴とするものである。
【0015】
ここで、上記板状部材は、記録用紙を加熱された定着ベルトに確実に圧接させて加熱させるためのものである。このため、この板状部材は、その部材に接触して回転する定着ベルトの走行性の支障とならず、しかもそのベルト外周面の平滑性を保持できるようなものであればよい。また、この板状部材は、そのベルト回転方向に沿う長さを、定着ベルトによる記録用紙の予備加熱を十分に行うに足る寸法になる等の観点から適宜設定することができる。この板状部材は、1枚構成のものに限らず、複数枚に分割された板状の分割部材を一体化した構成のものであってもよい。一方、上記押圧ロールは、板状部材に接触して支持されている加熱状態の定着ベルトに対して記録用紙を確実に押し付けるようにするためのものである。
【0016】
この板状部材と押圧ロールとの間に至る定着ベルトは、上記加熱手段等によりトナー像が溶融軟化する程度の温度以上に加熱することが好ましい。その定着ベルトの加熱は、具体的には、少なくとも100℃以上の温度となるように行うことが好ましく、その記録用紙の含水率を効率よく減少させることができる等の観点からすると130℃以上の温度となるように行うことが更に好ましい。
【0017】
また、上記加圧回転体は、対向して配置されるロール形態どうしのものが好ましいが、特にその形態のものに限定されない。この加圧回転体における定着加圧部は、定着対象のトナー像を担持する記録用紙に対して、少なくとも定着に必要な加圧を行うことができるものであればよい。さらに、上記剥離手段は、例えば、定着ベルトを記録用紙の搬送方向とは急激に離れる方向に曲げて移動走行させるようにロールで支持し、その用紙が自身のこしの強さにより自力でその曲がって移動走行する定着ベルト部分から剥離するように構成したものであってもよい。また、上記所定の距離は、主にトナー像が冷却されて固化されるに足る搬送距離であり、その冷却性能や搬送速度などによって適宜設定される。
【0018】
このような定着装置によれば、定着対象のトナー像を担持する記録用紙は、定着加圧部に導き入れられる前に、加熱されて板状部材に内周面から支持された状態にある定着ベルトの外周面に対して押圧ロールにより圧接されることにより加熱加圧される。
【0019】
これにより、記録用紙に含まれる水分は、加圧下において確実に加熱されて気化し、水蒸気となって、その用紙の定着ベルトとは反対側の面から主に発散される。また、記録用紙は、押圧ロールによる圧接部を通過した後も定着ベルトのタック力あるいはトナーの粘着力により定着ベルトに密着しつづけて加熱される。この結果、記録用紙の含水率が定着加圧部に突入する前に減少し、その定着加圧部を通過した後における水蒸気の発生が抑えられるようになる。
【0020】
また、この際、その水蒸気の一部は、用紙と定着ベルトとの間に介在しようとするが、かかる水蒸気は押圧ロール(複数ある場合には、特にその下流側の押圧ロール)により定着ベルトを介して板状部材との間に形成される圧接部に堰き止められて通過することができず、その圧接部の入口で絞り出されるようにして排出される。この結果、記録用紙が水蒸気の介在によって定着ベルトから浮き上がれるように剥離される現象が発生せず、むらなく予備加熱されるようになるとともに、定着加圧部への導入の際に紙しわが発生するというおそれがなくなる。
【0021】
さらに、この際、加圧下での予備加熱によりトナー像は溶融し始めて記録用紙に圧接されるため記録用紙に仮定着され、定着加圧部での通常の定着時における温度での加熱が不要となる。この結果、定着加圧部における加熱温度を定着温度よりも低い温度に低下させることが可能になる。
【0022】
そして、上記定着装置においては、押圧ロールを、定着ベルトの回転方向に対して前後するように複数設けるとよい。その各押圧ロールのベルト回転方向に沿う間隔については、定着ベルトの加熱設定温度あるいは回転(プロセス)速度によって記録用紙から発生する水蒸気により記録用紙の定着ベルトからの浮きの発生速度が変化するので当該浮きによる用紙の予備加熱むらが発生しないような観点から任意に設定することもできるが、等間隔に設定することがより好ましい。
【0023】
この場合には、記録用紙を板状部材に接触支持されている加熱状態にある定着ベルトに確実に押し付けるとともに当接させておくことができ、しかも、その複数の押圧ロールの数だけ上記したような圧接部が存在して水蒸気を絞り出すように排出させる効果がより確実に得られるようになる。
【0024】
また、上記各定着装置においては、板状部材を加熱する加熱手段を設けるとよい。この加熱手段は、その加熱方式等について特に限定されるものではないが、所定の温度に加熱できるように加熱動作を制御する構成を採用することが好ましい。この板状部材の加熱温度は、記録用紙を過剰に加熱することによってその用紙から水蒸気を急激に発生させることを避けるような温度に設定することが望ましく、例えば130℃以下の温度に設定するとよい。
【0025】
この場合には、板状部材自身が加熱された状態にあるため、定着動作時において加熱された定着ベルトの熱量が板状部材との接触により予定外に奪われたり、あるいは、その熱量が記録用紙側に多く奪われたりして記録用紙への予備加熱を所望の温度で行うことができなくなることを回避することができるようになる。また、定着開始時や定着ベルトの熱量が奪われて所定の加熱温度を下回った時に、その対応策として定着ベルトを空回転させて所定の温度に加熱させる動作を行う必要がなくなる。
【0026】
また、上記各定着装置においては、押圧ロールを加熱する加熱手段を設けるとよい。この加熱手段は、その加熱方式等について特に限定されるものではないが、そのロール表面の温度を検知手段で検知し、その検知結果に基づいて加熱動作を制御する構成を採用することが好ましい。
【0027】
この場合には、定着開始時における定着ベルトが十分にまたは均一に加熱されないことや、室温に近い温度の記録用紙が接触して定着ベルトやロールの温度が低下することにより、記録用紙を所望の温度で加熱できなくなることを回避することができる。
【0028】
さらに、上記各定着装置において、押圧ロールは、そのロール表面側に弾性層を形成してなるものを使用することが好ましい。弾性層としては、例えば、ゴム層、スポンジ層が適用可能であり、好ましくは離型性を有するものを適用する。
【0029】
このようなロールを使用した場合には、記録用紙の定着ベルト外周面に対する良好な密着性を確保することができる。また、離型性を有する弾性層を形成した場合には、記録用紙の表裏両面に画像を形成するときにおいて、その用紙の第2面目のトナー像を定着する際、その第1面目の定着済のトナー像が押圧ロールに接してもトナーオフセットが発生しにくくなる。
【0030】
以上の各定着装置において、記録用紙は、定着装置内を搬送してトナー像の定着が可能なものであればよく、通常の普通紙に限らず、塗工紙、OHPシート、ハガキ、封筒等のような部材を含むものである。また、加圧回転体の定着加圧部と剥離手段との間には、必要に応じて、その定着加圧部を通過した後の定着ベルトひいては記録用紙とトナー像とを迅速かつ確実に冷却するための冷却手段を設置するとよい。さらに、加圧回転体の少なくとも一方にそのものを冷却する冷却手段を設けてもよい。この場合には、その冷却手段で冷却された加圧回転体を介して定着ベルトや記録用紙等が間接的に冷却されるため、定着加圧部を通過する際に記録用紙が高温で加熱されることがなく、その記録用紙からの水蒸気の発生を抑制することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
《実施の形態1》
図1は、本発明の実施の形態1に係る定着装置を示す概略構成図である。この定着装置1は、プリンタ、複写機等の画像形成装置における定着手段として使用されるものである。図中の実線矢印は主な回転部品の回転方向を示す。
【0032】
定着装置1は、回転する無端状の定着ベルト10と、この定着ベルトを張架するとともに加熱する加熱ロール20、21と、この加熱ロール20、21により加熱された定着ベルト10を挟むような状態で対向して圧接配置される一対の加圧ロール30、31と、この一対の加圧ロールのうち定着ベルト10の外周面側に配置される第2加圧ロール31にも支持されつつ定着ベルト10と所定の距離だけ当接して同じ方向に移動するように回転する加圧ベルト35と、加圧ロール30、31を通過した後の定着ベルト10の内周面側に接触するように配置されて定着ベルト等を冷却する冷却装置40等を具備するものである。図中の符号Pは記録用紙、Tはその記録用紙に担持されるトナー像である。また、矢付一点鎖線は記録用紙Pの搬送経路を示す。
【0033】
定着ベルト10は、カーボングラックを含有させたポリイミド等からなる厚さ50μm程度のベルト基材上に、厚さ60μm程度のシリコーン共重合体(硬度:例えば24°)等からなる弾性層をこの順に形成した構造のものである。また、このベルト10は、その周長が約1300mm、その幅が約360mmである。さらに、定着ベルト10は、第1加熱ロール20、第2加熱ロール21、第1加圧ロール30、および複数のベルト支持ロール15〜16に張架されており、駆動ロールとして兼用されている支持ロール16によって矢印A方向に回転するようになっている。
【0034】
ベルト支持ロール15は、定着ベルト10を急激に曲がった状態で移動走行させるように支持し、これにより定着ベルト10に密着して搬送される記録用紙Pをそれ自身のこしの強さにより自力で剥離させる役割を果たす剥離用ロールとして機能する。
【0035】
第1加熱ロール20は、外径が80〜100mmからなる円筒状の金属製ロールの内部にハロゲンランプ等の加熱源22を配置した構造からなるものであり、定着ベルト10をその外周面側から加熱する。一方、第2加熱ロール31には、外径が50〜60mmからなる円筒状の金属(アルミニウム等)製ロールの内部にハロゲンランプ等の加熱源23を配置した構造からなるものであり、定着ベルト10をその内周面側から加熱する。加熱源22、23は、その加熱ロール20、21の各表面温度を検知するために設置される温度検知センサ24の検知結果に基づいて、その加熱動作(電源の供給)がそれぞれ制御されるようになっている。第1加熱ロール20のように定着ベルト10の外周面から加熱する加熱手段を使用する場合には、定着ベルト10として比較的厚いものを使用しても、その厚めの定着ベルトの外周面を所望の温度まで容易に加熱することができる。
【0036】
第1加熱ロール20は、そのロール表面に接して清掃を行うための巻取りウエブ方式のクリーニング装置25が配置されている。特にこのクリーニング装置25は、そのクリーニング用ウエブ26としてシリコーンオイル等の離型剤を含浸させたものを使用し、かかるウエブ26を送り出しロールから所定量ずつ送り出して巻取りロールに巻き取らせる過程で押圧ロール27によって加熱ロール21の表面に押し当てている。これにより、定着ベルト10上のトナー等が加熱ロール20に転移付着したものなどを除去して清掃するとともに、その加熱ロール21の表面に微量の離型剤を塗布して定着ベルト10の外周面に転移供給するようになっている。
【0037】
加圧ロール30、31はいずれも、外径が80mm、肉厚が6mmからなる円筒形の金属(アルミニウム等)製ロール基体に、シリコーンゴム(硬度:例えば17°程度)等からなる厚さ6mm程度の耐熱弾性層を形成した構造のものである。また、加圧ロール30、31は、その一方(30)が固定した状態で回転可能に支持され、その他方(31)が図示しない加圧機構により所定の加圧力(例えばニップ圧力が約1500N程度の荷重)でもって固定支持された側のロールに対して(定着ベルト10を介して)圧接されるとともに、その定着ニップ部Nの幅(ロール回転方向の寸法)が20mm程度となるように設置されている。さらに、第2加圧ロール31は、ウォーミングアップ時には加圧ベルト35とともに定着ベルト10から離間した位置に変位するように支持されている。
【0038】
さらに、加圧ロール30、31では、その内部空間にハロゲンランプ等の加熱源32、33を配し、このロールを定着動作時の温度まで上昇させるいわゆるウォームアップ時のみの加熱を行う(定着動作時には加熱しない)ようにしている。加熱源32、33は、各加圧ロール30、31の表面温度を検知するために設置された温度検知センサ34の検知結果に基づいて、その各加熱動作(電源の供給)がそれぞれ制御されるようになっている。
【0039】
加圧ベルト35は、ポリイミド等からなる厚さ50μm程度のベルト基材上に、シリコーンゴム等からなる厚さ60μm程度の弾性層をこの順に積層形成した構造のものである。また、加圧ベルト35は、第2加圧ロール31、駆動ロール36、ベルト支持ロール37に張架されており、駆動ロール36によって矢印B方向に回転するようになっている。この加圧ベルト35は、第2加圧ロール31とベルト支持ロール37の所定の区間で定着ベルト10の外周面と接して同じ方向に回転移動する。
【0040】
冷却装置40は、放熱部材と空冷機構とで構成されている。すなわち、この冷却装置40は、第1加圧ロール30とベルト支持ロール15との間の所定間隔内で定着ベルト10の内周面に接する放熱基板41aと、その放熱基板41aの片面に立設される複数枚の放熱フィン41bとからなる放熱部材であるヒートシンクを備えている。また、その放熱フィン41aに図示しない空調ダクトを介して送風ファンから送風(または排気)を行って空冷する空冷機構とを備えている。
【0041】
そして、この定着装置1においては、図1や図2に示すように、定着ベルト10および加圧ベルト35を挟んだ状態で第1加圧ロール30と第2加圧ロール31との間に形成される定着ニップ部Nよりもベルト回転方向Aの上流側となる位置で、その定着ベルト10の内周面に接触する加熱板50を位置的に固定した状態で配置しているとともに、その加熱板50に接触している定着ベルト10の外周面に圧接する複数の押圧ロール55を回転可能に配置している。
【0042】
加熱板50は、定着ベルト10に接触する側の面がそのベルト回転方向AにそってR900程度の曲率からなる湾曲鏡面に形成された厚さ3mm程度のアルミニウム基板51と、その定着ベルト10が接触しない側の面に配置したラバーヒータ51とで構成されている。また、加熱板50は、その定着ベルト10の回転方向Aに沿う長さLが200〜400mm程度のものであり、第2加熱ロール21を通過した近傍位置から定着ニップ部Nの手前側の近傍位置までの定着ベルト領域に配置されている。この加熱板50は、ラバーヒータ51により所定の温度(例えば90〜130℃程度)に加熱される。
【0043】
複数の押圧ロール55は、そのいずれも外径が12mmの金属製ロール芯材にシリコーンゴム等からなる厚さが4mm程度の弾性層を形成したものであり、バネ等を利用した公知の加圧機構により所定の荷重(例えば20N)で加熱板50に定着ベルト10を介して圧接されている。また、この押圧ロール55はいずれも加熱板50に対して接離可能となるように公知の変位機構により支持されており、例えばウォームアップ時において前記した第2加圧ロール31とともに定着ベルト10から離間した位置に変位するようになっている。
【0044】
また、複数の押圧ロール55(A〜C)は、加熱板50のベルト回転方向Aに沿う前後における所定の位置に適宜配分して設置することができる。特に最上流側の位置に配置する押圧ロール55Aや最下流側の位置に配置する押圧ロール55Cは、加熱板50からみてその各押圧ロール55A,55Cによるニップ部が加熱板50の端部から約10mm内側となるような条件を満たすように配置している。さらに、その回転方向Aの最上流側となる位置に配置される押圧ロール55Aその定着ベルトの回転方向Aの前後に対して所定の間隔E1,E2をあけた状態で配置されている。その間隔E1,E2は互いに異なったものであってもよいが、記録用紙Pから発生する水蒸気による定着ベルト10と用紙P間の浮きの成長速度がほぼ同一である等の観点からすると、同等であることが好ましい。
【0045】
このような加熱板50および押圧ロール55を設けた定着装置1では、その最上流側の位置に配置される押圧ロール55Aと加熱板50に接触支持される定着ベルト10の間に形成される押圧ニップ部Mの間に、定着対象のトナー像Tを担持する記録用紙Pを導き入れるようになっている。
【0046】
また、このように記録用紙Pが導き入れられる際には、その定着ベルト10が第1加熱ロール20と第2加熱ロール21とにより100℃以上の温度、好ましくは130〜190℃の温度に加熱されるように設定されている。特にこの定着装置1では、前述したように定着時には定着ニップ部Nにおいて加圧ロール30、31による定着のための加熱を行わない構成になっているため、定着ベルト10は少なくとも定着に必要な温度(定着温度)以上の温度まで加熱するようになっている。
【0047】
このような定着装置1では、画像形成装置の作像部側においてトナー像Tが転写された記録用紙Pに対して以下のごとき定着が行われる。
【0048】
すなわち、まずトナー画像Tが転写された記録用紙Pが、搬送導入ガイド12等を通してそのトナー像担持面を定着ベルト10の外周面に当接させる姿勢で、押圧ニップ部Mの最上流押圧ロール55Aと加熱板50にて接触支持される定着ベルト10の外周面との間に導き入れられる。このとき定着ベルト10は、第1加熱ロール20および第2加熱ロール21により130℃以上の温度に加熱された状態で押圧ニップ部Mに到達する。また、このとき定着ベルト10は加熱板50によっても加熱保持される。
【0049】
押圧ニップ部Mに導入された記録用紙Pは、図3に示すように、130℃以上の高温に加熱されて加熱板50に支持された状態にある定着ベルト10に押圧ロール55Aにより圧接された状態下で加熱される。このときの記録用紙Pは、特に押圧ロール55が弾性層を形成したロールであるため、加熱板50(金属基板51)に支持されている定着ベルト10の外周面に対して密着性良好に圧接される。また、定着が連続して行われ、温度の低い記録用紙Pが連続して触れることにより定着ベルト10やその押圧ロール55の温度が低下しても、加熱板50による加熱が行われるため、その温度低下を防止することができ、もって記録用紙Pを高温で安定して加熱することができる。
【0050】
そして、最上流の押圧ロール55Aによる押圧ニップ部Mを通過した後の記録用紙Pは、その下流側に配置される押圧ロール55B,55Cによる定着ベルト10との押圧ニップ部を次々と通過するように搬送される。また、この際、記録用紙Pは、そのトナー像Tが上記加熱により溶融し始めた状態になることにもよって定着ベルト10に付着した状態で加熱板50に支持される領域を搬送された後、定着ニップ部Nにおける定着ベルト10の外周面と第2加圧ロール31に支持される加圧ベルト35の外周面との間に導き入れられる。
【0051】
これにより、記録用紙Pは加圧下で高温加熱されるため、その用紙中の水分が高温で確実に加熱されて気化し、主に押圧ニップ部Mを通過して圧接状態から開放された後に水蒸気(点線矢印S)として用紙の定着ベルト10とは反対側の面から主に発散される。しかも、その下流側の位置に配置される押圧ロール55B,55Cによる押圧ニップ部を通過するごとに、記録用紙Pと定着ベルト10との間に介在しようとする水蒸気も、その各ニップ部で堰き止められて絞り出されるようにして発散される。この結果、記録用紙Pは、その含水率が定着ニップ部Nに突入する前に大幅に減少する。また、この用紙裏面側からの水蒸気Sの発散により、記録用紙Pは定着ベルト10から剥がれにくい状態におかれる。
【0052】
また、記録用紙P上のトナー像Tは、押付けニップ部Mにおいて外側押付けロール51により加圧された状態で加熱されるため溶融して記録用紙Pに仮定着されるようになり、定着ニップ部Nでの通常の定着時における温度条件にもとづく加熱が不要となる(この例では定着時に加圧ロール30、31による加熱は行っていない)。この結果、定着ニップ部Nにおいて定着温度による加熱を行う必要がなく、そのニップ部Nでの加熱温度を低下させることができる。
【0053】
続いて、定着ニップ部Nに突入した記録用紙Pは、加圧ロール30、31により定着に必要な荷重で強く加圧される。この際、記録用紙Pは、定着ベルト10の余熱により加熱されるが、加圧ロール30、31(の加熱源)により加熱されることはない。
【0054】
定着ニップ部Nを通過した記録用紙Pは、定着ベルト10と加圧ベルト35とに挟持されて定着ベルト10に密着した状態で搬送されるとともに、冷却装置40の放熱作用により熱が奪われる第1金属板41を通過する際にトナー像Tと一緒に所定の温度(例えば90℃以下の温度)になるまで冷却される。
【0055】
この冷却によりトナー像Tが固化されるとともに冷却装置40の放熱部材41における基板41aを通過した記録用紙Pは、ベルト支持ロール15で構成される用紙剥離手段において紙自身の腰の強さにより自力で定着ベルト10から、トナー画像とともに剥離される(図1の矢付き一点鎖線の先端部で示される状態となる)。この剥離された記録用紙Pは定着装置外に排出される。これによりトナー像Tが記録用紙Pに定着される。
【0056】
このようにして定着された画像は、特に定着ベルト10の平滑な表面にならい平滑化された光沢感に富む画像として得られる。
【0057】
また、特にこの定着装置1では、前述したように対着対象のトナー像Tを担持する記録用紙Pが加熱板50で支持された定着ベルト10と複数の押圧ロール55との間を通過した後に定着ニップ部Nに導き入れられることにより、その記録用紙Pの含水率が定着ニップ部Nに突入する前に大幅に減少し、しかも、その記録用紙Pが定着ニップ部Nで改めて定着温度に加熱されることがない。このため、その定着ニップ部Nを通過した後の冷却工程での水蒸気の発生が抑えられるようになる。また、定着ベルト10も定着ニップ部Nで必要以上に加熱されることがなくなり、定着ニップ部Nを通過した後に冷却装置40によって効率よく冷却されるようになる。
【0058】
この結果、定着ニップ部Nを通過した後に水蒸気が発生して記録用紙Pが定着ベルト10から剥離する剥離ブリスターの発生が抑制される。これにより、従来技術のごとき、剥離ブリスターに起因した光沢ムラ等の定着不良や紙しわの発生も防止され、良好な定着を行うことが可能となる。
【0059】
<評価試験>
次に、このような定着装置1の性能を評価するために行った試験について説明する。
【0060】
上記定着装置1について以下のような条件に設定した。まず、加熱板50は、その搬送方向長さLを240mmとするとともに、130℃程度の温度となるように加熱した。また、押圧ロール55として、外径が20mm、ローラ長が340mmの金属製ロール芯材にシリコーンゴム等からなる厚さが5mm程度の弾性層を形成した5つのものを使用し、その5つの押圧ロールを上記加熱板50のベルト回転方向に沿う前後に対してロール間隔Eが55mmの等間隔となるように配置した。これらの押圧ロール55の加熱板50に対する荷重はいずれも150Nに設定した。第2加圧ロール31の第1加圧ロール30に対する荷重は、2000Nに設定した。
【0061】
そして、このような条件に設定した定着装置を、その第1加熱ロール20および第2加熱ロール21により加熱して定着ベルト10の押圧ニップ部Mの手前における表面温度が図4に示すような各温度となるように加熱したうえで、公知のカラープリンタにて一定のテスト用トナー像を形成した記録用紙Pをそれぞれお導入して定着動作を実行し、定着度、カラー発色性、剥離ブリスターおよび紙しわについてそれぞれ調べた。押圧ニップ部Mの手前における定着ベルト10の温度については、放射温度計(ジャバンセンサー製:TMZ51−500)を用いて測定した。
【0062】
また、この定着時において定着ベルト10は350mm/secのプロセススピードで回転させた。また、冷却装置40は、記録用紙Pの剥離部に相当するベルト支持ロール15に到達するときの定着ベルト10の表面温度と、ベルト支持ロール37に到達するときの加圧ベルト35の表面温度とがいずれも90℃以下の温度になるまで冷却するように設定した。
【0063】
上記定着度は以下のようにして調べた。まず、図5に示すような諧調パターンからなる試験用トナー像Tを記録用紙P(王子製紙製:OKトップコートN;127.9gsmと、富士ゼロックスオフィスサプライ製:J紙)に形成したものを定着し、その定着後の用紙に面積率が100%のパッチ画像内を通過するような折り目(図5中の点線Z。画像が内側になるように折り曲げたもの)をつける。折り目をつける際の荷重は10Nとした。続いて、その折り目のついたパッチ画像部分を脱脂綿で軽く拭き、そのときのトナーの剥がれ具合を調べて以下の基準で評価した。
○:実用上問題とならない程度の剥がれ具合であった。
×:実用上画質不良となる程度の剥がれ具合であった。
【0064】
上記試験用トナー像Tは、図5中の左側から順にK(ブラック)、プロセスブラックPB(Y,M,Cで形成される黒色)、B(M,Cで形成される青色)、G(Y,Cで形成される緑色)、R(Y,Mで形成される赤色)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の各色からなる四角形のパッチ像であり、これら各色のパッチ像について、その面積率を段階的に異ならせたものを縦方向に複数個段階別に並べたパターン像である。
【0065】
上記カラー発色性は以下のようにして調べた。まず、上記密着度に関する試験の場合と同様に、図5に示すような諧調パターンからなる試験用トナー像Tを記録用紙P(王子製紙製:OKトップコートN;127.9gsm)に形成したものを定着した。続いて、その定着後の用紙上部にある各色の面積率100%のパッチ像を測定器(日本平版機材製:X−Rite)にて測色した後、その測色結果についてL*a*b*表色系におけるマンセル色相およびマンセル彩度を求めて発色しているか否かを調べ、以下の基準で評価した。
○:発色している。
×:発色していない。
【0066】
上記剥離ブリスターは以下のように調べた。まず、上記カラー発色性に関する試験の場合と同様に、図5に示すような諧調パターンからなる試験用トナー像Tを記録用紙Pに形成したものを定着した。この各定着後の記録用紙を観察し、剥離ブリスターが発生した場合において発生する定着トナー像中のスポット状あるいは帯状からなる低光沢度部の存在の有無を調べ、以下の基準で評価した。
○:発生しない。
×:発生した。
【0067】
上記紙しわは以下のようにして調べた。まず、図6aに示すように、記録用紙P(富士ゼロックスオフィスサプライ製:J紙)の中央部に長辺方向に伸びる帯状のベタトナー像T1を形成したものを定着した。次いで、この定着が終了した後に3分間が経過してから記録用紙Pの反対面の一端部に、図6bに示すような短辺方向に沿うベタトナー像T2を形成したものを定着した。そして、この両面への定着が終了した後の記録用紙Pにしわが発生しているか否かを目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:発生しない。
×:発生した。
【0068】
以上の各評価項目の結果を図4に併せて示す。また、比較のため、上記試験用の定着装置(実施例)において加熱板50および押圧ロール55を設けない定着装置(比較例)を用意し、前記したような評価試験を同じ条件下で行った。比較例の定着装置は、加熱板50などを設けない分、第2加熱ロール21と定着ニップ部Nとの間が縮まって接近した構造になっている。また、比較例では、定着ニップ部N直前における定着ベルト10の温度を100〜150℃としたときの試験を行っていない(図4の空欄部分)。これは、予備加熱を行わない関係から、定着ベルトの加熱温度が160℃を下回る温度(定着温度よりも低い温度)では定着自体を行うことができないという理由によるものである。また、図4中の「−」を付した欄は、得られたトナー像が未定着状態であったため評価ができないという結果を示すものである。
【0069】
図4に示す結果から明らかなように、実施例では、定着ベルトの表面温度が100〜190℃の温度範囲であれば剥離ブリスターの発生がなく、また、定着ベルトの表面温度が100〜210℃の全温度範囲において紙しわが発生することがないことが確認できた。ただし、その表面温度が120℃以下になると、カラー画像の定着を行う場合には、その発色性が悪くなる。このことから、例えば、定着ベルトの表面温度を130〜190℃の温度範囲に設定すれば、すべての評価項目を満たすような良好な定着を行うことができることがわかる。
【0070】
ちなみに、実施の形態1に係る定着装置1では、記録用紙Pの表裏両面にトナー像Tを形成する場合(両面プリントなどを行う場合)に、その第2面目のトナー像の定着についても、その第1面目の定着と同様に行われる。その際、第1面目の定着済のトナー像は、押圧ロール55に接触しながら通過するが、かかる押圧ロール55には前記したように弾性層が形成されているため、そのトナー像のトナーが押圧ロール側にオフセットすることがなく、その画像が乱されるおそれはない。
【0071】
また、実施の形態1に係る定着装置1では、必要に応じて、押圧ロール55の内部に電熱ヒータ等の加熱源を設置してそのロールを加熱するように構成することができる。この場合には、特にウォーミングアップ時の加熱時間の短縮や連続した定着を行う場合における定着ベルト等の温度低下の防止が可能となり、有利である。また、押圧ベルト55については、100mm/sec以下のような低速で定着を行う場合には、複数でなく1つのみであってもよい。
【0072】
《他の実施の形態》
実施の形態1に係る定着装置1では、図7に示すように、第1加熱ロール20の設置を省略して、第2加熱ロール21のみを設置するように構成することができる。この場合には、定着ニップ部Nの位置を基準にしてみると、定着ベルト10の巻き回したときの上下方向の寸法(高さ)を小さく(低く)することができ、定着装置の小型化(薄型化)を実現するうえで有利となる。なお、この構成では、第2加熱ロール21が駆動ロールとして機能するように構成される。
【0073】
また、このように構成したときの定着ベルト10の加熱は、主にその第2加熱ロール21のみによるものとなるため、かかる加熱能力を高めるため、第2加熱ロール21のロール外径を増大化させたり、あるいはその加熱源22の発熱能力を増大化させればよい。その他にも、図7に示すように、押圧ロール55に電熱ヒータ等の加熱源56を設置するように構成してもよい。この場合には、そのロール表面の温度を検知する温度センサ57を設置し、その検知結果に基づいて加熱源56の加熱動作を制御することにより、かかる加熱機能を備えた押圧ロール55によって定着ベルト10を所定の加熱温度に保つようにそのベルト外周面から適切に加熱するように構成するとよい。
【0074】
また、実施の形態1に係る定着装置1では、図8に示すように、加熱ロール20、21を取り除き、その代わりに、加熱板50として、最上流の押圧ロール55Aにて形成される押圧ニップ部Mよりもベルト回転方向Aの上流側に更に延長した形態(図中の50Aが延長した部分を示す)の大型加熱板53を設置するように構成することができる。なお、この場合においては、加熱ロールの設置を省略した関係により、定着ベルト10を支持するベルト支持ロール17を新たに設置している。
【0075】
このような大型加熱板53を適用した場合には、定着ベルト10を主に加熱する加熱手段が大型加熱板53のみに集約させることができるため、装置の簡素化ができる。また、この場合であっても、必要に応じて、押圧ロール55に電熱ヒータ等の加熱源56を設置することは有効である。
【0076】
また、実施の形態1に係る定着装置1では、必要に応じて、冷却装置40の設置を省略することが可能である。この場合には、定着ニップ部Nを通過した後の記録用紙Pを定着ベルト10に密着した状態で自然冷却されるように剥離部までの距離等を確保することが必要である。その他、その冷却装置40として、前記放熱部材と空冷機構からなるものを使用する代わりに、ヒートパイプを利用した熱循環器を適用することも可能である。
【0077】
さらに、実施の形態1に係る定着装置1では、必要に応じて、加圧ベルト35を設けることを省略してもよい。この場合は、その加圧ベルト35を張架して回転させるための各ロール36〜39も不要となる。また、定着ベルト10を加熱する手段としては、加熱ロール20、21に代えて、加熱板等の他の加熱手段を適用してもよい。さらに、
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の定着装置によれば、定着加圧部を通過した後の定着ベルトと記録用紙との間における剥離ブリスターの発生を防止することができる。従って、この定着装置を使用した場合には、その剥離ブリスターに起因した光沢ムラ等の定着不良や紙しわの発生のない、光沢感に優れた定着画像を安定して得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1に係る定着装置を示す概略構成図。
【図2】図1の定着装置における加熱板および押圧ロールとその周辺部の構成を示す要部拡大図。
【図3】加熱板および押圧ロールのある定着ベルト部分を通過させて行う定着動作時の状態を示す要部説明図。
【図4】評価試験の結果を示す図表。
【図5】評価試験で用いたテスト用トナー像(諧調パターン)を示す説明図。
【図6】評価試験(紙しわ)で用いたテスト用トナー像を示す説明図であり、(a)は記録用紙の片面に形成するテスト用トナー像を示し、(b)はその用紙の他面に形成するテスト用トナー像を示す。
【図7】図1の定着装置の一部を変形した構成例を示す要部拡大図。
【図8】図1の定着装置の一部を変形した他の構成例を示す要部拡大図。
【符号の説明】
1…定着装置、10…定着ベルト、15〜17…ベルト支持ロール、20,21…加熱ロール(加熱手段)、30、31…加圧ロール(加圧回転体)、35…加圧ベルト(支持ベルト)、50,53…加熱板(板状部材)、52…ラバーヒタ(加熱手段)、55…押圧ロール、56…加熱源(加熱手段)、T…定着対象のトナー像、P…記録用紙、N…定着ニップ部(定着加圧部)。
Claims (5)
- 複数のロールに張架されて一定の方向に回転する無端状の定着ベルトと、
この定着ベルトを加熱する加熱手段と、
この加熱手段で加熱された定着ベルトをその外周面および内周面の両側から加圧した状態で挟んでそのベルト外周面との間に定着対象のトナー像を担持する記録用紙を導き入れて加圧するための定着加圧部を形成するように対向配置される加圧回転体と、
この加圧回転体による定着加圧部を通過した後も前記記録用紙を定着ベルトの外周面に密着させた状態で所定の距離だけ搬送してから剥離する剥離手段と
を備えた定着装置において、
前記定着ベルトにおける前記加圧回転体の定着加圧部よりも回転方向上流側となる位置でそのベルト内周面に接触するように固定配置される板状部材と、この板状部材に接触している定着ベルトの外周面に圧接して回転する押圧ロールとを設け、
この押圧ロールと定着ベルトの外周面との間に前記定着対象のトナー像を担持する記録用紙を導き入れることを特徴とする定着装置。 - 前記押圧ロールを、定着ベルトの回転方向に対して前後するように複数設けた請求項1に記載の定着装置。
- 前記板状部材を加熱する加熱手段を設けた請求項1に記載の定着装置。
- 前記押圧ロールを加熱する加熱手段を設けた請求項1に記載の定着装置。
- 前記押圧ロールは、そのロール表面側に弾性層を形成してなる請求項1に記載の定着装置。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2017156621A (ja) * | 2016-03-03 | 2017-09-07 | 富士ゼロックス株式会社 | 定着装置及び画像形成装置 |
-
2003
- 2003-06-26 JP JP2003183101A patent/JP2005017753A/ja not_active Withdrawn
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CN107153346A (zh) * | 2016-03-03 | 2017-09-12 | 富士施乐株式会社 | 定影装置和图像形成设备 |
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