JP2004536573A - 植物における遺伝子発現を調節するための組換えウイルススイッチ - Google Patents

植物における遺伝子発現を調節するための組換えウイルススイッチ Download PDF

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Abstract

本発明は一方では遺伝子導入植物中の異種DNA配列及び他方では植物ウイルス遺伝子導入ベクター中の異種DNA配列の間の相互作用過程を使用して植物における生化学過程または生化学連鎖を調節する方法を記述している。さらに、この相互作用過程は低分子量成分を必要とする。この相互作用過程はウイルス遺伝子導入ベクターを遺伝子「スイッチ」とするものであり、これは例えば核酸組換え、複製、転写、制限、翻訳、タンパク折り畳み、集合、ターゲティング、翻訳後プロセッシング、または酵素反応のような種々の反応により目的の生化学過程または連鎖のスイッチを入れる。さらに、遺伝子導入植物中における製品の製造方法及びこの方法のための部品のキットが提供されている。

Description

【0001】
発明の分野
本発明は請求項1に記載したように植物における目的とする生化学的反応または生化学的反応連鎖を調節する方法に関するものである。さらに、本発明は目的とする生化学的反応または生化学的反応連鎖を調節する方法を使用して遺伝子導入植物において製品を生産する方法に関するものである。さらに本発明は本発明を実施するための部品のキットにも関係している。植物ではこれまで実現できなかった目的とする生化学反応または生化学反応連鎖を予定した時期に選択的にスイッチをいれて開始することにより、本発明の方法は遺伝子導入植物において導入遺伝子発現の選択的調節を可能にする。
【0002】
発明の背景
植物における調節可能な導入遺伝子発現システム
植物バイオテクノロジーにおける大きな問題の一つは導入遺伝子の信頼し得る調節を行なうことである。導入遺伝子発現の結果生じる生成物が、例えば生物分解性プラスチック(Nawrath, Poirier & Somerville, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci., 91, 12760−12764; John & Keller, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci., 93, 12768−12773; US6103956; US5650555)またはタンパクトキシン(US6140075)のように、成長抑制的であるかまたは毒性がある場合には、遺伝子発現の厳密な調節が必須である。
【0003】
植物における遺伝子発現を調節するための現存する技術は通常組織特異的及び誘導性プロモーターに基づいており、そしてそれらの全ては実際上誘導しないのに存在する、すなわち「漏洩」する発現作用に悩まされている。組織特異的プロモーター(US05955361; WO09828431)は強力な道具であるが、非常に特異な分野に応用が限られている、例えば、無菌植物の作成(WO9839462)または種子における目的遺伝子の発現(WO00068388;US05608152)。誘導性プロモーターはその誘導条件により2種類に分類することが出来る−非生物的因子(温度、光、化学物質)により誘導されるもの及び生物的因子、例えば病原体またはペスト刺激、により誘導し得るもの。最初の分類に属するものは熱誘導性(US05187287)及び寒冷誘導性(US05847102)プロモーター、銅誘導系(Mett et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci., 90, 4567−4571)、ステロイド誘導系(Aoyama & Chua, 1997, Plant J., 11, 605−612; McNellis et al., 1998, Plant J., 14,247−257; US06063985)、エタノール誘導系(Caddick et al., 1997, Nature Biotech., 16, 177−180; WO09321334)、及びテトラサイクリン誘導系(Weinmann et al., 1994, Plant J., 5,559−569)がある。植物における化学誘導系分野の最近の開発例はグルココルチコイド・デキサメサゾンによりスイッチが入り、テトラサイクリンによりスイッチが切れるキメラプロモーターである(Bohner et al., 1999, Plant J., 19, 87−95)。化学誘導系に関する総説はZuo & Chua (2000, Current Opin. Biotechnol., 11, 146−151)を参照。その他の誘導性プロモーターの例は植物における病原性関連(PR)遺伝子の発現を調節するプロモーターである。これらのプロモーターはサリチル酸、病原体の攻撃に応答する植物シグナル伝達系の重要な成分、またはPR遺伝子発現を開始することができるその他の化学物質(ベンゾ−1,2,3−チアジアゾールまたはイソニコチン酸)により植物を処理することにより誘導することが出来る(US05942662)。
【0004】
ウイルス感染により供給されるウイルスRNA/RNAポリメラーゼを使用する導入遺伝子発現系の調節が報告されている(例えば、US6093554; US5919705参照)。これらの系において、組換え植物DNA配列はウイルスRNA/RNAポリメラーゼによって認識されるウイルスゲノムのヌクレオチド配列を含んでいる。これらの系の有効性は、トランスで機能するウイルスポリメラーゼの能力が低く、そしてRNA増幅以外の過程を調節することが出来ないために限られている。
【0005】
上記の系は導入遺伝子発現の望ましいパターンを知る手がかりとしては非常に関心があるが、誘導薬(銅)またはその同族体(ステロイド調節系におけるブラシノステロイド)は残余発現を発生させるに充分な濃度で植物組織内に存在し得るので、それらは発現パターンを厳密に調節することは出来ない。さらに、化学誘導物質として抗生物質及びステロイドの使用は大規模に適用するには好ましくない。導入遺伝子調節手段としてPR遺伝子またはウイルスRNA/RNAポリメラーゼを使用する場合には、偶発的病原体感染またはストレスにより発現を生じることがあるので、導入遺伝子の厳密な調節の条件はやはり充たされていない。組織または器官特異的プロモーターは、その発現が特異な器官または植物発生の時期に限られるので、非常に狭い分野に応用が限られており、また望む時に導入遺伝子のスイッチを入れることが出来ない。
【0006】
応用植物ウイルス学分野における植物ウイルスベクター及びその使用
現在応用植物ウイルス学の領域に大きな3つの異なる分野がある:a)導入遺伝子の過剰発現用ベクターとしてウイルスの使用;b)植物機能ゲノム用ベクターとしてウイルスの使用;及びc)ウイルス抵抗性遺伝子導入植物作成のための植物病理学分野におけるウイルス成分の使用。
【0007】
植物ウイルスは宿主植物種における導入遺伝子の高レベル発現のための有用な道具として使用することが出来る。野外における植物ウイルスの使用による生物安全性上の問題は無いようである。例えば、USDA(米国農務省)の動植物検疫部局は医薬品用の異種遺伝子を含む遺伝的に修飾したTMV(タバコモザイクウイルス)及びタバコエッチウイルスの野外試験の後に明らかな問題を観察しなかった。その結果として、1996年及び1998年に2つは許可された。発現を目的として植物宿主に外来遺伝物質を導入するためのウイルスベクターを開発する分野で仕事は行なわれた(US4885248; US5173410)。植物において遺伝子導入物質を全身的に発現するのに適した最初のウイルスベクターを記載した特許がある(US5316931; US5589367; US5866785)。一般的に、ウイルスタンパクとの翻訳融合体として(US5491076; US5977438)またはドイツ特許出願番号10049587.7に対応する付属文書Aに記載した独立タンパク翻訳用IRES配列を使用する、ここにも使用されている、ポリシストロン性RNAの翻訳融合体として、これらのベクターは他のサブゲノムプロモーター(US5466788; US5670353; US5866785)の外来遺伝子を発現することが出来る。Carrington et al., (US5491076)はウイルスポリプロテインから異種タンパクを切り離すために内在性ウイルスタンパク分解酵素を使用することを記述している。ウイルスベクターを応用するその他の領域は植物機能ゲノムである。Della−Cioppa et al., (WO993651)は内在性遺伝子を抑制する目的で植物cDNAライブラリー発現用のTMV由来ウイルスベクターの使用を記述している。
【0008】
Angell & Baulcombe (1997, EMBO J, 16, 3675−3684; WO9836083)は植物における標的遺伝子の下方調節用に設計した「AmpliconTM」と呼ばれるPVX由来のシステムを記述している。植物において導入遺伝子抑制をはずすHc−Proと組合わせた同じシステム(Pruss et al., 1997, Plant Cell, 9, 859−868; US5939541)が導入遺伝子の過剰発現のために使用されている。US特許5939541は植物におけるいずれの遺伝子の発現も増強するためにポチウイルスの5’中心領域(Hc−Pro遺伝子を含むブースター配列)を使用することに基づく方法を記述している。この配列は植物ゲノムの中に安定的に組込むことができ、またはウイルスによって送り込むことができる。Hc−Proは明らかな多面的効果を有し、そして導入遺伝子及び内在性遺伝子の両者の発現を増強することは注目に値する。したがって、この発現系は存在する方法の中では全タンパク発現について最善の量的改良を提供する。それらは未知の機序によりまた調節が困難な方法でタンパク製造装置の多くの要素に影響している。
【0009】
ウイルス遺伝子またはウイルスRNAの突然変異型の発現によるウイルス抵抗性植物の設計を記述した特許出願を含む文献は大量にある(例えば、US5792926; US6040496)。攻撃ウイルス及び導入ウイルスRNAまたはDNAの間に生じる組換えによる新規ウイルス形成の可能性があるためにそのような植物の使用による環境リスクに言及することは意味がある(Adair & Kearney, 2000, Arch. Virol, 145, 1867−1883)。
【0010】
したがって、本発明の目的は、予定した時期に選択的に過程または連鎖のスイッチを入れることにより、植物中の目的の生化学的過程または生化学的連鎖を調節する環境に安全な方法を提供することにある。
【0011】
本発明のもう一つの目的は、環境に対して安全でそして潜在的に有害な機能の導入遺伝子を環境に放出しない方法によって、植物が望ましい段階まで成長した後に選択的に生成物の生産にスイッチを入れることができる遺伝子導入植物中において生成物を生産する方法を提供することである。
【0012】
その他の本発明の目的はそのような方法を実施するためのキットを提供することである。
【0013】
発明の一般的な説明
これらの目的は請求項1に記述した方法により達成される。より特異的には、これらの目的は、植物中における目的とする生化学過程または生化学連鎖を調節する方法により達成され、該方法は以下の段階を含むことが特徴である:
(a) 植物の核ゲノム中に一つまたはそれ以上の第一異種DNA配列を導入する、
(b) 自身のゲノム中に一つまたはそれ以上の第二異種DNA配列を含む少なくとも一つのウイルス導入ベクターに植物を感染させる、このようにして植物中において下記の間の相互作用過程を開始し
(i) 核ゲノムの一つまたはそれ以上の第一異種DNA配列及び/または第一異種DNA配列の発現生成物、及び
(ii) 遺伝子導入ベクターの一つまたはそれ以上の第二異種DNA配列及び/または第二異種DNA配列の発現生成物、及び
(iii) さらに外部から加えた一つまたはそれ以上の低分子量化合物、
このようにして該相互作用の以前には生じなかった目的の生化学過程または連鎖のスイッチを入れる。望ましくは、上記方法における該第一異種DNA配列は非植物ウイルス起源のものである、すなわち植物ウイルスに由来しない。
【0014】
さらに本発明は、本発明に従って植物中の目的とする生化学過程または生化学連鎖を調節する方法を含む遺伝子導入植物における生成物の生産方法を提供する。特に、この方法はさらに以下の段階を含む:
(a) 遺伝子導入植物を望む段階に成長させる、次いで
(b) 一つまたはそれ以上のベクターに植物を感染させ、そして追加して一つまたはそれ以上の低分子量化合物と接触させて、該過程または連鎖は該相互作用の以前には作動しない、生成物を生産するために必要な生化学過程または連鎖のスイッチを入れ、そして
(c) 植物中で生成物を生産する、
この該ベクターは望ましくはウイルストランスフェクションベクターである。
【0015】
さらにその遺伝子導入植物または種子及びウイルス由来ベクターを含む上記方法に使用するキットが提供される。また、遺伝子導入植物及び、一つまたはそれ以上のウイルストランスフェクションベクターを植物中において発生することができる、一つまたはそれ以上のベクターを含むキットが提供される。該遺伝子導入植物は本発明の段階(a)の第一異種DNA配列を含むことが望ましい。
【0016】
さらに、本発明の方法の段階(b)を実施するためのベクター及び本発明の方法により得たまたは得られる植物が提供される。
【0017】
本発明により、一つまたはそれ以上のウイルストランスフェクションベクターに遺伝子導入植物を感染させることにより遺伝子導入植物における生化学過程または生化学連鎖に選択的にスイッチを入れることが可能である。生化学過程または連鎖は、生化学過程または連鎖を行なうために必要な必須配列または機能が欠如しているためにウイルスベクターに感染する以前には遺伝子導入植物中において作動しない。必須配列は、例えば、プロモーター、RNAポリメラーゼ、転写因子などである。必須機能は、例えば、発現すべき下流配列とプロモーターの機能的結合が欠如しているために作動しない転写、翻訳または酵素作用である。生化学過程または連鎖は感染により開始する相互作用の過程により作動するようになる。植物内における相互作用の過程は、核ゲノムの一つまたはそれ以上の第一異種DNA配列及び/または第一異種DNA配列の発現生成物、及びトランスフェクションベクターの一つまたはそれ以上の第二異種DNA配列及び/または第二異種DNA配列の発現生成物、及びさらに一つまたはそれ以上の外部から加えた低分子量化合物を必要とする。望ましくは目的とする生化学過程または連鎖にスイッチを入れる相互作用過程は一つの核ゲノムの第一異種DNA配列及び/または第一異種DNA配列の発現生成物、及び一つのトランスフェクションベクターの第二異種DNA配列及び/または第二DNA配列の発現生成物を必要とする。
【0018】
本発明に従って使用されるDNA配列はRNA配列を使用することにより得ることも出来る。特に、段階(a)または(b)のDNA配列はRNA配列の、例えばRNAウイルスの、発現生成物のこともある。
【0019】
相互作用の過程に必要な第一及び第二異種DNA配列または第一及び第二異種DNA配列の発現生成物のいずれか一つが存在しない場合には、第一及び第二異種DNA配列、第一及び第二異種DNA配列の発現生成物または外部から加えた低分子量化合物のどれも、単独または組合せで、目的の生化学過程または連鎖のスイッチを入れることができない。さらに、目的の生化学過程または連鎖は、低レベルでは作動し続けることができる転写後遺伝子抑制のような機序による抑制過程ではない。目的の生化学過程または生化学連鎖は対応するウイルストランスフェクションベクターの感染の以前及び低分子量化合物の追加以前には作動しない。さらに、本発明のウイルストランスフェクションベクターは本発明に必要な対応する第一異種DNA配列を持たない植物においては目的の生化学過程または生化学連鎖のスイッチを入れることはできない。最後に、目的の生化学過程または連鎖は、本発明の目的の過程または連鎖にスイッチを入れるのに必要な第一及び第二異種DNA配列または発現生成物が存在しない場合には、植物を低分子量化合物と接触させても植物においてスイッチを入れることができない。
【0020】
本発明の方法はこれまで達成できなかった精度と環境安全性をもって生化学過程または連鎖の調節を提供する。これによる植物バイオテクノロジーにおける新規な応用は、その植物における基礎的導入遺伝子発現作用を必要とする従来の技術では、特に毒性物質または生物分解性ポリマーの製造の際に、解決できない問題を解決するのに有用である。
【0021】
さらに、本発明による正確な調節は、植物の成長を遅延させる基礎的発現作用による植物に対する負荷をかけることなく、目的の生化学過程または連鎖を開始するのに適した望ましい段階まで遺伝子導入植物を成長させることを可能にする。一度目的の生化学過程または連鎖を有効に実施する準備が整えば、目的の生化学過程または連鎖のスイッチを入れ、そして効率よく実施する。したがって、本発明の方法は遺伝子導入植物の成長期と生産期を分離することを可能にする。
【0022】
さらに、一つまたはそれ以上の過程または連鎖のスイッチを選択的に入れることができるような、目的とする多数の過程または連鎖に対する多成分システムを設計することが可能である。
【0023】
最初の態様において、システムは、ウイルストランスフェクションベクターによりコードされる目的生成物の発現を調節するのに必要な発現生成物を提供する異種DNA配列を含む遺伝子導入植物からなる。このシステムはさらに遺伝子導入植物内において発現される異なる生成物をそれぞれコードする異なるウイルスベクターを含んでいる。したがって、使用したウイルスベクターによって異なる生成物の生産に同一の遺伝子導入植物を安全に使用することが可能である。ウイルスベクターの調製は数週間で行なえるが、安定した遺伝子導入植物を得るには数年を要することを考慮するとこのシステムの利点は明らかである。
【0024】
第二の態様において、遺伝子導入植物は、目的とする種々の遺伝子産物をコードする多数の異種DNA配列を含んでいる。多数の異種DNA配列は異なるウイルスベクターにより調節することができる。したがって、対応するウイルスベクターを選択することにより、遺伝子導入植物の異種DNA配列を選択的に調節することが可能である。
【0025】
さらに、第三の態様において、目的とする生化学過程または連鎖にスイッチを入れる相互作用過程が1以上のウイルスベクターによる感染及び一つまたはそれ以上の外部から加えた低分子量成分の追加適用を必要とするようなシステム、これにより本技術が安全に作動する、を設計することが可能である。
【0026】
本発明により調節される生化学過程または連鎖は生きた植物系において行われる過程または連鎖のいずれでも良い。望ましい生化学過程または連鎖は植物中において製品の生産に至るものである。本発明の方法により得られる目的の製品の例は、一次産物としてのポリペプチドまたはタンパク、(翻訳後)修飾またはその他の処理を受けた酵素のようなタンパク、必要な糖化様式のタンパク、非タンパク性低分子量産物及び炭水化物または生物分解性プラスチックのようなオリゴマー生成物などである。最も望ましいのは医薬用ポリペプチドである。
【0027】
該生化学過程または連鎖、特にタンパクの発現はサブゲノムRNA、特にウイルストランスフェクションベクターの生成を必要とするであろう。
【0028】
生化学過程または連鎖の調節方法には少なくとも次の2成分が必要である:
(1)望ましくは植物ウイルス由来でない第一異種DNA配列を含む遺伝子導入植物及び
(2)第二異種DNA配列を含むウイルストランスフェクションベクター。
【0029】
本発明の目的には、異種DNA配列は、使用した植物種中に天然には存在しないしまたウイルスベクターの起源である野生型ウイルス中にも存在しない配列である。しかし、その配列は異種部分の他に使用した植物及び/またはウイルスが元来持つ配列部分を含んでいるであろう。該異種DNA配列は1以上の機能配列を含んでいるであろう。そのような機能配列の例としてはプロモーター、エンハンサー、転写終結領域、コード領域、非翻訳スペーサー領域、翻訳開始領域、IRES(内部リボソーム侵入部位)領域、停止コドンなど、及びそれらの部分がある。
【0030】
該第一異種DNA配列は該宿主植物に対して異種であることが望ましい。該第一異種DNA配列はウイルス由来であろう。しかし、望ましくは該第一異種DNA配列は非植物ウイルス由来である、すなわち植物ウイルス起源でない。該第二異種DNA(またはRNA)配列はウイルスベクターが由来したウイルスに対して異種であることが望ましい。該第二異種DNA配列は植物由来であろう。
【0031】
遺伝子導入植物(1)のウイルスベクター(2)による感染により少なくとも該第一及び第二異種DNA配列またはその発現生成物の相互作用過程を開始し、これにより目的の生化学過程または連鎖のスイッチがはいる。少なくとも二つの要素(1)及び(2)が必要であるという事実は、該要素の相互作用が該生化学過程または連鎖のスイッチを入れるための必要条件であることを意味している。該相互作用の以前には、該生化学過程は作動せず、それによる導入遺伝子の「漏洩」発現は起こり得ない。先行技術では、導入遺伝子の発現は、低いレベルであるが既に存在する発現を量的に増加または増強することによってのみ誘導することができる。本発明は量的な増加のみならず、従来作動させることができなかった過程または連鎖を作動するようにする質的変化も提供する。目的の生化学過程または連鎖が、毒性があったり成長抑制がある産物を生成する場合には、本発明の利点が特に重要である。本発明によれば、植物の成長と、該生成物の生産を完全に分離することが可能であり、それにより成長しつつある植物における目的産物の存在による成長の阻害及び遅延を回避する。したがって、バイオマスの蓄積段階及び目的産物の生産段階は分離することができる。
【0032】
本発明の遺伝子導入植物及び遺伝子導入ベクターは、対応する異種DNA配列を含まないウイルスまたは植物のいずれでも生化学過程または生化学連鎖の調節機能を持たない。したがって、本発明は植物バイオテクノロジーにおける生物学的安全性に関して著しい進歩を示している。
【0033】
遺伝子導入植物のウイルスベクターによる感染で開始し、そして生化学過程のスイッチを入れることになる該相互作用過程は、DNA組換え、DNA複製、転写、制限、結合、ハイブリダイゼーション、RNA複製、逆転写、RNAプロセッシング、スプライシング、翻訳、タンパク折り畳み、集合、ターゲティング、翻訳後プロッセシング、酵素作用である。該第一または該第二異種DNA配列の該発現産物はRNA,特にmRNA,及びポリペプチドまたはタンパクである。
【0034】
該第一及び該第二異種配列(及びさらに追加の配列)間の該相互作用過程はウイルス機能または感染性ウイルスベクターの相補性(遺伝子の再構築)を含まないことが望ましい。
【0035】
本発明は望ましくは多細胞植物に関するものである。重要な植物種の例はコムギ、トウモロコシ、コメ、オオムギ、エンバク、アワなどの単子葉植物またはアブラナ、キャノーラ、テンサイ、ダイズ、エンドウ、アルファルファ、ワタ、ヒマワリ、ジャガイモ、トマト、タバコなどの双子葉植物である。これらの植物のそれぞれに特異的なウイルスが存在することが本発明の広範な多能性と応用性に役立ている。本発明に使用されるウイルストランスフェクションベクターは植物特異的ウイルスのいずれかから誘導することができる。ウイルスベクターはRNA又はDNA二本鎖又は一本鎖ウイルスに基づいている。ウイルストランスフェクションベクターの特異的例は下記及び付属文書A及び付属文書Bに示されている。
【0036】
段階(a)において、植物は天然植物または遺伝子を修飾された植物であり得る。遺伝子修飾は植物の核ゲノムかまたは色素体のような細胞小器官ゲノムまたはミトコンドリアゲノムのいずれかの中に存在する。段階(a)において異種配列は核ゲノム中に導入され、そして望ましくは適当なゲノム修飾が施される。段階(a)は1以上の異種DNA配列を導入するために1回以上行なうことができる。このようにして、例えば生化学経路全体を操作するために、いくつかの異種機能を標的植物に導入することができる。
【0037】
段階(b)において、段階(a)により得られた遺伝子導入植物をウイルストランスフェクションベクターに感染させる。感染は植物に集合ウイルス粒子または感染性ウイルス核酸を与えることにより、または予め植物ゲノム内に組込んでおいたウイルス核酸の放出によるトランスフェクション過程の活性化により行なうことができる。集合ウイルス粒子はRNAを含むことができ、そして感染性ウイルス核酸はRNAであり得る、特にそれらがRNAウイルス由来であるならば(例2及び3参照)。
【0038】
1以上のベクターを目的の生化学過程または生化学連鎖を調節するために使用することができる。方法の再現性の理由から、必要な異種配列を含む一つのベクターのみを使用することが望ましい。感染はウイルスベクターと該遺伝子導入植物を接触させることにより行なう。望ましくは、葉またはその他の植物組織をこすったりまたは引っかいたりするような機械的刺激を感染促進のために使用することができる。感染は宿主植物のゲノムの中に予め組込んでおいたウイルスベクターを活性化させることにより行なうこともできる。植物全体を感染することができるウイルスベクターが望ましい。
【0039】
段階(b)における植物の感染は、該植物の細胞中への核酸配列のアグロバクテリウム介在輸送を含んでいる。アグロバクテリウム介在輸送は、例えば宿主植物のゲノム中に配列を組込むために使用することができる。ウイルスベクターは植物ゲノム中に組込まれたそのような配列から活性化することができる。RNAウイルス由来のベクターは、例えば該ウイルスのcDNAコピーを転写する、特にゲノムの中に組込まれたcDNAコピーを転写することにより活性化することができる。しかし、アグロバクテリウム介在輸送により植物細胞中に導入された配列の組み込みはゲノム中に組込む必要はない。アグロバクテリウム介在輸送はT−DNAに隣接する遺伝子の一過性発現を生じることができる。特に、Ti−プラスミド上にある配列はゲノムに組込まれること無くまたはそれ以前に本発明の方法における機能を発揮することができる。もし1以上のベクターが段階(b)において導入されるならば、同一または異なる方法をこれらのベクターに対して使用することができる。特に、1以上のベクターを、異なるアグロバクテリウム株を同時に(例えば、アグロバクテリウム混合物を使用して)または続けて使用するアグロバクテリウム介在輸送により導入することができる。
【0040】
本発明の一態様において、本発明の方法の段階(b)において該ウイルス感染ベクターに加えてその他のベクターを導入することができる。該その他のベクターはウイルストランスフェクションベクターのこともありまたはそうでないこともある。該その他のベクターは本発明の該生化学過程のスイッチを入れるための必要条件としてのその他の核酸配列となり得るものである(例6参照)。
【0041】
本発明のその他の態様において、段階(b)における植物の感染は該植物の細胞中に1またはそれ以上のベクターを導入することにより行われる、これによって該ベクターは該植物の細胞中におけるウイルストランスフェクションベクターを発生させる過程を進行させられるようになる。この態様において3、4またはそれ以上のベクターを該植物の細胞中に導入することができる。望ましくは、2ベクターが導入される。該ベクターはウイルストランスフェクションベクターでもあるし、またはそうでないこともある。望ましくは、該ベクターの少なくとも一つはウイルストランスフェクションベクターである(例6参照)。しかし、この態様の方法にしたがうと、ウイルストランスフェクションベクターはウイルストランスフェクションベクターでない導入ベクターから発生させることもできる。該生化学過程または経路は、本発明の方法の段階(a)及び(b)により開始する該過程により植物細胞中にウイルストランスフェクションベクターが集合及び出現することによりスイッチが入る。
【0042】
本発明の方法の段階(a)及び(b)は同一の植物で行うことができる。しかし、安定した植物系は、少なくとも一つの目的の第一異種DNA配列は段階(a)により導入された植物から従来の方法に従って得られことが望ましい。次いで遺伝子導入植物は安定した遺伝子導入植物の種子から成長させ、そして該生化学過程の開始が必要な時期に段階(b)による感染を行なうことができる。段階(b)は温室内で実施することが望ましい。
【0043】
ウイルストランスフェクションベクターは核酸(RNAまたはDNA)または核タンパクであり、これらは野生型または遺伝子操作宿主に侵入して該宿主の細胞中で複製または増幅することができ、そして目的の異種配列の増幅及び/または発現をすることができる。望ましくは、該ウイルストランスフェクションベクターはさらに細胞から細胞へ移動することができる。さらに望ましいのは、ウイルスベクターは長距離移動、ウイルス粒子の構築または感染性のようなウイルスの能力を保持していることである。本発明の方法において、ウイルスベクターは上記性質の全ては保有しないが、そのような機能は宿主細胞に関連する別の場所に提供することができる。望ましいウイルストランスフェクションベクターは移動タンパクをコードしそして発現する。さらに、それらはウイルス特異的DNAまたはRNAポリメラーゼ(レプリカーゼ)をコードしている;RNA依存RNAポリメラーゼ(RdRp)が望ましい。
【0044】
本発明の最初の特異的態様において、目的の生化学過程は目的の異種DNA配列の発現である。この過程は一次生化学過程と呼ぶことができる。この一次過程によりRNAまたはポリペプチド分子を生じる。単純な場合には、RNAまたはポリペプチド分子の一つが目的の生産物である。生化学連鎖において、その一次過程の産物が、例えば、その触媒作用により、または他の生化学過程を調節することにより二次生化学過程を生じ、そのような各過程が先行する生化学過程に依存する1以上の生化学過程が発生する。この態様において該調節またはスイッチは望ましくは該一次生化学過程を指向している。
【0045】
最初の特異的態様において、発現される目的の異種DNA配列は植物核ゲノムの第一異種DNA配列であるかまたは該ウイルストランスフェクションベクターの第二異種DNA(またはRNA)配列のいずれかであり得る。
【0046】
本発明の第二の特異的態様において、目的の生化学過程はその植物による目的の非タンパク性化合物の生産である。
【0047】
本発明のその他の特異的態様において、植物における生化学過程(II)または生化学連鎖(III)の調節過程が提供され、該過程は以下の段階を含むことが特徴である:
(a) 植物の核ゲノム中へ1またはそれ以上の第一異種核酸配列の導入、
(b) そのゲノム中に1またはそれ以上の第二異種核酸配列を含む少なくとも1つのベクターによる植物の感染、
こうして下記の間の相互作用の過程(I)を開始し
(i) 核ゲノムの1またはそれ以上の第一異種核酸配列及び/または第一核酸配列の発現産物、および
(ii) トランスフェクションベクターの1またはそれ以上の第二異種核酸配列及び/または第二異種核酸配列の発現産物、及び
(iii) 追加の1またはそれ以上の外部から加えた低分子量成分、
これによりウイルストランスフェクションベクターが該植物の細胞中に発生し、こうして該相互作用の以前には作動しない目的の生化学過程(II)または生化学連鎖(III)のスイッチが入る。
さらに、本段階の特異的態様は、適用可能な場合は、上記した通りである。
【0048】
発明の詳細な説明
図1Aに示すように、本発明は植物中における目的の生化学過程または生化学連鎖を調節する方法を提供し、これによる方法は相互作用の過程(I)、目的の生化学過程のスイッチを入れ(II)、その過程は翻って目的の生化学連鎖の原因となり得る(III)。相互作用の過程は続くDNA,RNA及びタンパクの反応またはそれらの組合せのいずれか一つを含んでいる。本発明に包含されるDNA反応は制限、組換え、複製、転移、増幅、及び転写である。本発明に包含されるRNA反応はRNAプロセッシング、複製、逆転写、ハイブリダイゼーション、及び翻訳である。本発明に包含されるタンパク反応はタンパクプロッセシング、折り畳み、集合、翻訳後修飾、活性化、ターゲティング、結合活性修飾、シグナル伝達である。過程(III)はある場合もあり、無い場合もある。製品の生産は本発明の方法の望ましい結果である。
【0049】
図1Bに示すように、相互作用の可能な過程は図に示された相互作用の1またはそれ以上の形に属するであろう。図の中では、ウイルストランスフェクションベクターに感染した遺伝子導入植物細胞は図形化して示されている。組換え植物ゲノムは、1またはそれ以上の発現産物を生じることになる1またはそれ以上の異種DNA配列を含んでいる。ウイルストランスフェクションベクターのゲノムは、1またはそれ以上の発現産物を生じることになる1またはそれ以上の異種DNA配列を含んでいる。遺伝子導入植物は、細胞に入り込むことができる1またはそれ以上の低分子量の成分と接触させることができる。生化学過程または生化学連鎖のスイッチを入れる相互作用の過程において、図1B中において矢印で示した以下の相互作用が生じるであろう。1またはそれ以上の組換え植物ゲノムの異種DNA配列は、1またはそれ以上のウイルストランスフェクションベクターの異種DNA配列と相互作用することができる。1またはそれ以上の組換え植物ゲノムの異種DNA配列は、1またはそれ以上のウイルストランスフェクションベクターの異種DNA配列の発現産物と相互作用することができる。1またはそれ以上の組換え植物ゲノムの異種DNA配列の発現産物は、1またはそれ以上のウイルストランスフェクションベクターの異種DNA配列の発現産物と相互作用することができる。発現産物はRNAまたはポリペプチドであり得る。またこれらの相互作用のいずれも外部から感染遺伝子導入植物細胞に加えられる1またはそれ以上の低分子量成分の存在を伴うかまたは必要とする。この低分子量成分は目的の生化学過程または生化学連鎖のスイッチを入れたり、または推進するために必要であるかまたは望ましいであろう。この低分子量成分は、ウイルストランスフェクションベクターまたは植物の核ゲノム中に異種DNA配列が存在しない場合には目的の過程または連鎖にスイッチを入れることができない。
【0050】
本発明の最初の特異的態様によると、安定的に植物中に組込まれた導入遺伝子の発現または遺伝子導入植物宿主の中にあるウイルスベクターの遺伝子の発現に対するトランスフェクションに基づく信頼し得る調節を行なうための新規方法が提供される。この方法は、ウイルスベクターの感染過程が始まった時にのみ開始する少なくとも二つの異種DNA配列またはその発現産物の相互作用を利用する。これらの配列の一つは植物核ゲノム中に安定的に取込むことができ、そしてもう一つは該ウイルスベクターにより供給される。そのようなスイッチを入れることができる2成分発現系は、例えば、限定するものではないが、DNA組換え、複製、転写、制限、RNA複製、逆転写、プロッセシング、翻訳、タンパク折り畳み、集合、ターゲティング、翻訳後プロッセシング、酵素作用、などのような相互作用を開始することにより、種々のレベルで調節することができる生化学過程または連鎖を調節するために使用することができる。
【0051】
この方法は少なくとも遺伝子導入植物中の異種DNA及び異種DNAまたはRNAを含む組換えウイルス由来ベクターを必要とする。この方法の一般的図式を図1に示す。その核ゲノム中に1またはそれ以上の安定的に組込まれた目的の異種DNA配列を含む遺伝子導入植物は標準的な転写または翻訳ベクター及び標準的形質転換プロトコールを使用して作製することができる。安定な植物形質転換のための転写ベクター構築は多数の著者により記述されている(総説としては、Hansen & Wright, 1999, Trends in Plant Science, 4, 226−231; Gelvin, S.B., 1998, Curr. Opin. Biotech., 9, 227−232参照)。これらの構築全ての基本的原理は同一である:植物特異的プロモーター、目的の遺伝子の構造部分及び転写終結部を5’から3’の方向に含む完全機能転写単位を植物細胞中に導入し、そして目的遺伝子の発現を行なうためにゲノム中に安定的に組込まなければならない。翻訳植物ベクターの構築はドイツ特許出願番号100 49 587.7及び10061150.8(付属文書A及び付属文書B)に記述されている。転写ベクターの主要な相違は、翻訳ベクターは目的の遺伝子の発現に転写プロモーターを必要とせず、植物ゲノム中に組み込まれている植物の転写機構に依存していることである。
【0052】
植物細胞中に発現ベクターを輸送するために、微小弾丸の発射、電気穿孔またはプロトプラストのPEG介在形質転換の方法により該ベクターを細胞中に直接導入するような種々の方法を使用することができる。アグロバクテリウム介在植物形質転換もまたベクター輸送の有効な方法である。こうして、アグロバクテリウムにより運ばれるTi−プラスミドベクターによる(US 5,591,616; US 4,940,838; US 5,464,763)、粒子または微小弾丸発射による(US 05100792; EP 00444882B1; EP 00434616B1)ような種々の適当な技術によりDNAを植物細胞中に導入することができる。アグロバクテリウムは安定な核形質転換のみならず、目的の遺伝子の一過性発現のためのT−DNAの有効な輸送にも使用することができる。このアグロインフィルトレーションと呼ばれる方法は最初外来遺伝子発現及び植物における遺伝子抑制を分析するために開発された(Kaplia et al., 1997, Plant Science, 122, 101−108; Schob et al., 1997, Mol. Gen. Genet., 256, 581−588)。
【0053】
原則として、他の植物形質転換方法も使用することができる、例えば、微小注射(WO 09209696; WO 09400583A1; EP 175966B1)、電気穿孔(EP 00564595B1; EP 00290395B1; WO 08706614A1)など。形質転換方法の選択は形質転換する植物による。例えば、微小弾丸発射は単子葉植物の形質転換に適しており、一方双子葉植物にはアグロバクテリウム介在形質転換が一般的に良い結果を生じる。
【0054】
植物中における非ウイルス遺伝子発現のための植物ウイルス構築はいくつかの文献に記述されており(Dawson et al., 1989, Virology, 172, 285−293; Brisson et al., 1986, Methods in Enzymology, 118, 659; MacFarlane & Popovich, 2000, Virology, 267, 29−35; Gopinath et al., 2000, Virology, 267, 159−173; Voinnet et al., 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96, 14147−14152)、そして当業者によって容易に実施することができる。
【0055】
本発明の一特異的態様において、植物ゲノム中の導入遺伝子は充分長いDNA挿入によりそのプロモーターから分離され、該導入遺伝子の転写を阻止している。(図2,3)。該DNA挿入は、例えば、非自律転移配列または部位特異的DNA組換え酵素により認識される一方向部位に挟まれたDNAフラグメントであり得る。適当なトランスポゼースまたは部位特異的DNA組換え酵素は、ベクタースイッチとして機能するウイルスベクターによって輸送され得る(図2,3)。該ベクターがコードするトランスポゼースまたは組換え酵素の発現の後、その酵素の触媒作用によりプロモーターを導入遺伝子から分離していたDNA挿入またはフラグメントが除去され、導入遺伝子の発現にスイッチが入る(図6)。
【0056】
バクテリオファージ及びイーストの部位特異的組換え酵素/インテグラーゼはインビトロ及び植物中におけるDNA操作に広く使用されている。本発明に使用するための望ましい組換え酵素−組換え部位は下記のようなものである:Cre組換え酵素−LoxP組換え部位、FLP組換え酵素−FRT組換え部位、R組換え酵素−RS組換え部位、など。トランスポゾンは植物における遺伝子機能の発見のために広く使用される。本発明に使用する望ましいトランスポゾンはAc/Ds,En/Spm,「マリナー」ファミリーに属するトランスポゾン、などである。
【0057】
本発明のその他の態様において、遺伝子導入植物は二つの逆向きloxP部位に挟まれたプロモーターの無い導入遺伝子配列を持つことがある(図4)。そのような組換えの方向は、Cre組換え酵素に遭遇すると、挟まれたDNA配列の逆転を生じ得る。そのような逆転の結果として、nosターミネーターを持つプロモーターの無い遺伝子は構成的プロモーターに対してアンチセンスから正しい方向に置かれるであろう。例4はnosターミネーターを持つプロモーターの無いGUS遺伝子を使用する方法を示している。
【0058】
本発明のその他の態様は、インビボにおいて操作植物細胞中において機能的ウイルスベクター構築を組み立てる可能性を記述している。ウイルスベクター(前駆体)の配列を必要とするこの手段は2(図7)またはそれ以上の構築によって別々に植物細胞中に輸送される。例えば、部位特異的DNA組換え酵素(図8)を発現する前駆体を植物細胞中へAgrobacterium tumefaciensにより輸送した後、部位特異的組換えにより目的の導入遺伝子を発現する機能的ウイルスベクターを構築させることができる(例6、図9)。
【0059】
異種転写因子及びRNAポリメラーゼもまた導入遺伝子スイッチとして使用することができる。この方法は例5に示されており、この中では遺伝子導入植物はバクテリオファージT7プロモーターの調節下にあるGUS遺伝子を持っている(図5参照)。原核プロモーターを認識しない植物RNAポリメラーゼのような構築を含む遺伝子導入ArabidopsisにおいてはGUS発現は検出することができない。バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼのウイルス輸送によりGUS遺伝子の発現は開始する(図5)。
【0060】
ウイルスベクターにより輸送される対応DNA/RNAポリメラーゼを有するバクテリオファージプロモーター(例えば、T3,T7,SP6,K11)の調節下にある植物導入遺伝子の発現は、本発明に包含される導入遺伝子スイッチ開発のもう一つの有効な方法であり得る。もう一つの有用な方法は異種またはキメラまたはその活性化に異種または操作した転写因子を必要とするその他の人工的プロモーターを使用することであろう。ある場合には、導入遺伝子発現のために存在する誘導システムを使用することができる。例としては銅調節(Mett et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 90, 4567−4571)及びエタノール調節遺伝子発現システム(Caddick et al., 1998, Nature Biotech., 16, 177−180)があり、これは転写因子(銅誘導に対してACE 1またはエタノール誘導に対してALCR)がウイルス輸送によりトランスに供給されるように修飾され、これにより発現システムの漏洩を減少させている。そのほかに、異種転写因子は転写因子を活性状態にするのにリガンド誘導活性化を必要としないように修飾することもできる。
【0061】
本発明に包含されるその他の態様はDNA制限及び/またはDNA複製のような開始反応を含む。制限により開始できる生化学連鎖の例は2成分系であり、その中で複製の起点を含みそして核ゲノムの中に組込まれているDNA配列は特異的に切り出されそしてウイルスベクターによって運ばれる少量切断制限酵素により常染色体複製プラスミドの中に変換され、こうして連鎖を開始する。その他には、複製開始の修飾系を持つDNAウイルスベクターは問題の修飾ウイルスベクターの有効な複製ができる遺伝子導入宿主中において一つの因子の存在下にのみ作動するようにすることができる。
【0062】
本発明の連鎖の有効な開始装置として使用することができるRNA分子に影響する多くの反応がある。これらは、なかんずく、RNA複製、逆転写、編集、サイレンシング、または翻訳のような反応を含む。例えば、ウイルスRNAベクターから由来したDNAは遺伝子導入宿主によってDNAの中に逆転写され、これは翻って核ゲノム中へのDNA組み込みまたはDNA介在突然変異誘起のような過程に関与することができる。
【0063】
本発明に包含されるその他の組換えウイルススイッチは1またはそれ以上の導入遺伝子発現産物の翻訳後修飾による過程である。ポリペプチド折り畳み、多量体形成、ターゲティングシグナルの除去、プロ酵素の酵素への変換、酵素作用の阻害、などのような調節段階により作動するようなスイッチに可能な道具立ては多くある。例えば、ウイルス発現ベクターからポリペプチドの発現は、遺伝子操作宿主がプロ酵素を切り離し、そしてそれを活性酵素に変換した時、ターゲティングモチーフを切り離すか修飾する宿主の能力により生成物が特別な細胞局所に到達した時、または特異的結合配列の除去により生成物が特異的に可動になった時にのみ、目的とする生化学過程を開始することができる。
【0064】
本発明の方法は少なくとも2成分の相互作用に基づいているが、宿主核ゲノム中または1以上のウイルストランスフェクションベクター中の1以上の異種DNA間の相互作用に基づく多成分系もやはり包含される。上記2成分(宿主植物中の異種DNAまたはその産物及びウイルスベクター中の異種DNAまたはその産物)に加えて植物染色体に組込まれていない低分子量作用物質または核酸またはタンパクのような追加成分を含む多成分系についても同じことが言える。その低分子量成分は分子量5kD以下の非タンパク性分子またはイオンとして定義される。ここに包含される組換えスイッチシステムの最終的目的は、目的とする生化学経路または生化学反応連鎖のような植物生産システムにおける過程を作動的に調節することである。経路または生化学連鎖は、完結した時に特定の生成物、効果または特徴を生じる宿主生産システム内の生化学反応の連鎖のことである。
【0065】
ここに記述した方法は、万能でありそして漏洩の無い遺伝子スイッチであることに加えて、有効な生産調節方法を提供する。上記の2成分過程は本質的に「キーロック」システムであり、これによってトランスフェクションスイッチ成分の販売により企業は生産開始を有効に調節することができる。
【0066】

以下の例中に使用されている特定のベクター及び構築の追加開示に関しては、付属文書A及び付属文書Bに引用されている。
【0067】
例1
DNA組換えに必要な遺伝子:Acトランスポゼース及びCre組換え酵素を持つ植物感染用ウイルスベクターの構築
DNA組換えに必要な遺伝子を持つ一連のcrTMV由来ウイルス発現ベクターは標準的分子生物学プロトコールに従って構築された(Maniatis et al., 1982, Molecular cloning: a Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory, New York)。この例及び以下の例に使用される一般的に使用されているベクター、遺伝子及び遺伝子フラグメントに関する詳細な情報は一般公開データベースで見ることができる。2段階クローニング方法が全ての構築に使用された。最初に、中間構築が作製され、目的の遺伝子(GUS)と適当なIRES配列及びcrTMV(シュードノット及びt−RNA様構造)の3’−非翻訳領域(NTR)と融合した。IRESmp75CR及びIREScp148CR−融合(Skulachev et al. 1999, Virology 263, 139−154)のために、目的の遺伝子(GUS)をプラスミドplC766(IRESmp75CR−GUS−3’−NTR in pBS(SK+)及びプラスミドplC751(IREScp148CR−GUS−3’−NTR in pBS(SK+)中にそれぞれ再クローン化した。目的の遺伝子の5’−末端のNco I及び BamH I−または3’−末端のXba Iのような、再クローニング用の便利な制限部位を必要があればPCRにより導入した。DNA配列分析を行ない構築のPCR増幅部分全てについて確認した。
【0068】
クローニングの最終段階において、IRES/GUS/3’−NTR−フラグメントをさらにウイルス発現ベクターplC797(pUC19中のウイルスCP遺伝子 (RdRp−MP−CP−HindIII−IRESmp228CR−GUS−3’−NTR)−Notl−XbaI−SpeI−BamHIに続くGUS遺伝子を持つT7プロモーター−crTMV cDNA)中にHindIII/Notlフラグメントとして再クローニングした。この目的のために、プラスミドplC797はSacII及びNotIで消化し、大きなフラグメントをゲル精製し、同じプラスミドの1.3 kb SacII/HindIIIフラグメント及び中間構築(Cre組換え酵素用のplC2251)のHindIII/NotI−フラグメントと結合した。Ac−トランスポゼースの場合にはAc遺伝子のコード部分にHindIII−制限サイトが存在したために4フラグメント結合が必要であった。最終的構築(Acトランスポゼース用のplC1111及びplC1123;Cre組換え酵素用のplC2541及びplC2531)を図2及び4にそれぞれ示す。
【0069】
例2
ウイルスベクター構築のインビトロ転写
プラスミドplC1111,plC1123,plC2541及びplC2531(それぞれ図2及び4)をNot I制限エンドヌクレアーゼで消化することにより直線化した。直線化プラスミドをDawson et al.( 1986, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 83, 1832−1836)の記述に従ってインビトロで転写した。全長RNA転写物の質及び量をアガロースゲル電気泳動(Maniatis et al., 1982, Molecular cloning: a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)により分析した。
【0070】
例3
植物ゲノム中に安定的に組み込まれた導入遺伝子のウイルス輸送Acトランスポゼースによる活性化
プラスミドpSLJ744(J.Jones,Sainsbury Laboratory,JIC,Norwich,UKから入手)(図2)のT−DNAをBent et al., (1994, Science, 285, 1856−1860)の記述に従ってArabidopsis thaliana (CoI−0)植物に導入した。バキューム−インフィルトレーションの後3週間で種子を採取し、消毒し、50 mg/Lのカナマイシンを含むGM+1%グルコース培地上で形質転換体の検索を行なった(Valvekens et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 5536−5540)。5週齢のArabidopsis形質転換体のロゼッタ葉に機械的に傷を付けることにより例2で得た全長転写RNAを接種した。この目的のために、RNAを3xGKP−緩衝液(50 mMグリシン、30 mM KHPO, 3%セライト、3%ベントナイト)と混合し、葉の上側に付けて穏やかに引っかいた。プラスミドSLJ744のT−DNAはCaMV 35SプロモーターとGUS遺伝子の間に挿入された非自律的Ds配列を含んでいた(図2)。ウイルスに輸送されたAcトランスポゼースの作用により生じたDs配列の除去はGUS遺伝子の発現を生じ、これは接種葉の組織化学的な染色により容易に監視することができる(Jefferson, 1987, Plant Mol. Biol. Reporter, 5, 387−405)。接種葉を全長転写RNAでトランスフェクションした後9−14日に採取した。検体をX−グルコース溶液を使用して浸潤した(Jefferson, 1987, Plant Mol. Biol Reporter, 5, 387−405)。37℃で終夜培養した後、葉は70%エタノールで脱色し、光学顕微鏡で検査した。GUS染色組織の大きな範囲が主として接種葉に観察された。蒸留水を接種した対照遺伝子導入植物ではGUS染色は認められなかった。結果を図6に示す。GUS染色の範囲は最初に接種した葉のウイルス感染の範囲と一致している。これはこの方法の高い有効性の証拠である:Ds除去及び、その結果として、GUS発現は感染細胞の全てに生じた。これと比較して、ゲノム中に安定的に組み込まれているAc導入遺伝子のコピーを持つ植物において常に存在するAcトランスポゼースのDs除去を受ける範囲は植物組織の小部分に過ぎない(結果は示していない)。
【0071】
例4
植物ゲノム中に安定的に組み込まれた導入遺伝子のウイルス輸送Cre組換え酵素による活性化
loxP−組換え部位を伴う二つの異なる構築plC2561及びplC1641(それぞれ図3及び4)をCre−介在組換えの標的として設計した。plC2561の構築において、3’NOS転写終結シグナルを持つGUS遺伝子は二つの直列loxP−部位に挟まれている。このフラグメントはCaMV 35Sプロモーター及び合成GFP遺伝子(sGFP)の間に挿入した。ウイルス輸送Cre組換え酵素に遭遇すると、二つのloxP部位の間の組換えによりGUS遺伝子の除去を生じる。この結果はGFP発現及び接種葉におけるGUS活性の欠如により容易に監視することができる。
【0072】
プラスミドplC2561を構築するために、SLJ4K1(Jones et al. 1992, Transgenic Research 1, 285−292)GUS遺伝子をloxP部位を持つプライマーで増幅し、そしてCla1(5’CCG ATC GAT ATA ACT TCG TAT AGC ATA CAT TAT ACG AAG TTA TAT GTT ACG TCC TGT AGA AAC CC3’)及びNco1(5’GGC CAT GGA TAA CTT CGT ATA ATG TAT GCT ATA CGA AGT TAT TGC ATG CCT GCA GGT CGA TCT AGT AAC3’)制限部位を遺伝子の5’末端及び3’末端にそれぞれ導入した。該PCR産物はCla1及びNco1制限酵素で消化し、プラスミドplC591(pHBT:Cla/NcoI−sGFP−3’NOS)のNco1−Cla1部位中に再クローニングした。この中間構築のHBTプロモーター(Sheen, J. 1995, EMBO J., 12, 3497−3505)(Arabidopsis中では機能しない)はSLJ4K1の(35Sプロモーター)の1.4 kb EcoR1/Klenow−Cla1フラグメントを持つゲル精製した大きなHindIII/Klenow−Cla1フラグメントと結合することによりCaMV 35Sプロモーターで置換した。機能的クローンはplC1422(HBTプロモーターに調節されるcre組換え酵素)のDNAと共に微小弾丸発射実験により確認した。さらにバイナリーベクターplCBV1(Icon Genetics AG,ミュンヘン、ドイツ、の独占開発権、しかし他のバイナリーベクターはどれも同様に適する)、plCBV1−DNAをEcoRI及びEcI136II制限酵素で消化し、ゲル精製し、そして該機能的中間クローンの大きなXho1/Klenow−EcoR1フラグメント(p35S:−loxP−GUS−3’OCS−loxP−sGFP−3’NOS)と結合した。最終構築plC2561のT−DNA領域を図3に示す。
【0073】
二つの逆向きloxPに挟まれたGUS遺伝子を持つ第二の構築を図4に示す。この構築を作るために、18 bbの相補性3’末端を持つ二つのPCRプライマー(5’CTG AAG CTT ATA ACT TCG TAT AGC ATA CAT TAT ACG AAG TTA TAC CAT GG CTG CAG ATA ACT TCG TAT3’ and 5’GCC TCG AGA TAA CTT CGT ATA ATG TAT GCT ATA CGA AG TT ATC TGC AGC CAT GGT ATA ACT TCG TA3’)を設計し、DNAポリメラーゼIのKlenowフラグメントとアニール処理しそして補充した。
【0074】
最終的DNAフラグメントは、Pst1、Nco1により分離され、Xho1(Pst1側から)及びHind111制限部位に挟まれた二つの逆向きloxP部位を含んでいる。Xho1−Hind111消化の後、フラグメントはpSLJ4D4(Jones et al., 1992, Transgenic Research, 1, 285−292)の大きなXho1−Hind111フラグメントと結合する。生成したプラスミドをPst1−Nco1で消化し、ゲル精製しそしてpSLJ4D4の2.6kb Nco1−Pst1フラグメントを結合した。
【0075】
クローニングの最終段階として、全カセット(CaMV p35S−loxP−3’nos−GUS−loxP)をHindIII/EcoRI−フラグメントとしてバイナリーベクターpBIN19(Bevan, M. 1984, Nucl. Acid Research, 12, 8711−8721)中に再クローニングした。この構築(plC1641)のT−DNAを図4に示す。遺伝子導入Arabidopsis系統は、Bent et al.(1994, Science, 265, 1856−1859)の改良真空浸潤プロトコールによってAgrobacterium tumefaciensを形質転換することにより得た。隔離したT1集団における導入遺伝子の存在はPCR分析により確認した。
【0076】
ウイルスcDNAクローン(plC2531)の転写及び遺伝子導入Arabidopsis系統のウイルスRNA接種はそれぞれ例2及び3の記述に従って実施した。
【0077】
GFP及びGUSの検出
GFP発現の監視のためにLEICA立体蛍光顕微鏡を使用した(450−490 nmで励起、500−550 nmで発光)。我々の実験に使用したsGFPは青及びUV光線により励起した。GUSの検出は例3の記述に従って実施した。
【0078】
例5
植物ゲノム中に安定的に組み込まれた導入遺伝子のウイルス輸送T7 RNAポリメラーゼによる活性化
ベクターの構築
T7プロモーターによって調節されるGUS遺伝子レポーターを持つ植物形質転換用バイナリーベクターは以下のように作製した。T7プロモーター−GUS遺伝子構築を持つplC057のゲル精製2kb BssH11/T4ポリメラーゼ−Sal1フラグメントをSma1−Sal1消化した発現ベクターplC056と結合し、GUS遺伝子の3’末端に35S転写終結シグナルを加えた。得られた構築plC2641をSac1及びXho1で消化し、ベクター骨格からゲル生成し、そしてSac1/Sal1消化pBIN19と結合した。最終構築物pIC2651(図5)を前期のようにArabidopsisの形質転換に使用した。T7ポリメラーゼを発現するウイルスベクターは次ぎのように作製した。プラスミドplC2603をSph1及びSal1で消化し、そしてT7ポリメラーゼ遺伝子を持つゲル精製2.8kbフラグメントをplC1018の大きなNco1−Sal1フラグメントと結合した。生成したプラスミドplC2621は5’末端のIRESmp75CR及び3’末端のcrTMVの3’非翻訳領域(NTR)に挟まれたT7遺伝子を持っている。最終クローニング段階はplC2621の小さなHind111−Not1フラグメントとplC1087の大きなSac11−Not1及び小さなSac11−Hind111フラグメントの結合を含んでいた。crTMVウイルスベクター中にT7ポリメラーゼ遺伝子を含む最終構築plC2631(図5)は例2及び3にそれぞれ記述したように転写及び植物トランスフェクションに使用した。
【0079】
例6
ウイルス増幅単位前駆体からの導入遺伝子の活性化
ベクターの構築
Cre組換え酵素により認識されるLoxP部位を基本構築に導入するために、使いやすい制限部位(プライマー1:5’−TATCTGCAGG AGCTCATAAC TTCGTATAAT GTATGCTATA CGAAGTTATA AGCTTCTGGC CGTCGTTTTA C−3’、プライマー2:5’−CTCCTGCAGA TAACTTCGTA TAATGTATGC TATACGAAGT TATCTCGAGG AATTCGGCGT AATCATGGTC A−3’)に逆方向に挟まれたLoxP部位を含むプライマーでIPCRを行なった。IPCR反応において全プラスミドを増幅するために、これらのプライマーをpUC119のマルチクローニング部位にアニール処理させた。プライマーの重複配列はPstI制限部位を含んでいた。IPCR産物をPstIで制限及び再結合した後、中間構築plCH1212(付図1)を得た。
【0080】
天然の翻訳終結シグナルの前の翻訳終結コドン25 AAを含むMP−遺伝子のXho1−EcoR1フラグメントをplCH1212のXho1−EcoR1大フラグメントと結合した。生成した構築plCH3431(付図2)において、3’−MP部分はLoxP−部位の次に位置している。このMp−LoxP配列をベクター中のArabidopsisアクチン2プロモーター及びRdRp−ポリメラーゼも含んでいるMp−遺伝子の5’−部分に融合するために、plCH3431のMP−LoxP配列をEcoRI−Ecl136IIフラグメントとしてEcoRI及びNotIで切断したプラスミドplCH3301(付図3)中に再クローニングし、プラスミドplCH3461(付図4)を生成した。NtoI制限部位は再クローニングの前にDNAポリメラーゼのKlenowフラグメントで処理した。生成したベクターの5’−末端にあるKpnI−XhoI及びXho−HindIIIフラグメントはさらにKpn1及びHindIII処理バイナリーベクターplCBV10(plCBV10のT−DNA領域を付図5に示す)中にクローニングするために3フラグメント結合反応に使用した。最終構築plCH4371を図7に示した。
【0081】
ウイルスベクター前駆体の3’−末端を作製するために、構築plCH2744(付図6)のオメガ−リーダー配列の隣りにLoxP部位を含むXhoI−NcolフラグメントをプラスミドplCH1721(付図7)中に再クローニングし、3’−末端に3’NTR−配列が結合するsGFP−遺伝子の5’−末端にLoxP−部位/オメガ−リーダー配列を融合した(構築plCH3421,付図8)このORFにノパリン合成酵素転写終結シグナルを加えるために、プラスミドplCH3421をKpnI及びNotIで切断し、そして生成した小フラグメントを構築plCH3441(付図9)中に生成するプラスミドplCH3232中にクローニングした。Agrobacterium tumefaciensによる輸送のために、ウイルス前駆体ベクターのこの3’−末端を更にバイナリーベクターplCBV10(付図5)中にKpnI/HindIIIフラグメントとして再クローニングした。最終構築plCH4461を図7に示す。
【0082】
Cre組換え酵素構築plCH529(コムギヒストンH4プロモーター−LoxP−Cre組換え酵素−NOSターミネーター、付図10参照)を修飾し、Cre組換え酵素をNicotianaの核形質転換をするために使用されるバイナリーベクター中にクローニングした。最初に、構築plC04(イントロンの無いArabidopsisのアクチン2プロモーター、図示せず)のEcl136II/PstI−フラグメントをHindIII(感度が低い)及びPstIで消化したplCH529中に再クローニングすることによりコムギH4プロモーターをArabidopsisのアクチン2プロモーターに置換した。この結果構築plCH1262(付図11)を得た。5’−末端においてLoxM組換え酵素部位と隣接するOCS−ターミネーターによりNOS−ターミネーターを置換するために、OCS−ターミネーターをプラスミドplCH495(NOSプロモーター−BAR遺伝子−OCSターミネーター、図示せず)からPCR増幅し、そしてさらにSphI/SacIフラグメントとしてプラスミドplCH1262中に再クローニングして、構築plCH1321(図示せず)を作製した。この増幅に使用した促進プライマー(5’−CGGCATGCAT AACTTCGTAT AATCTATACT ATACGAAGTT AGGATCGATC CTAGAGTCCT GC−3’)の配列はSphI−制限部位及びLoxM−組換え部位を含んでいた。PCR産物の3’−末端にあるSacI−制限部位は逆プライマー(5’−CGGAGCTCGT CAAGGTTTGA CCTGCACTTC−3’)の配列により導入した。最終的に、生成した構築(アクチン2プロモーター−LoxP−Cre組換え酵素−LoxM−OCSターミネーター)をさらにバイナリーベクターplC00015中にNotI/SacIフラグメントとして再クローニングし、構築plCH1754(図8)を得た。このフラグメントをバイナリーベクター中にクローニングするために、このフラグメントのNotI部位及びEcoRI部位をバイナリーベクターのポリリンカー中に組込む必要があった。
【0083】
タバコ葉ディスクの形質転換
plCH1754のT−DNAを含む遺伝子導入Nicotiana系統(tabacum及びbenthamiana種)はHorsch et al., (1985, Science, 227, 129−131)の記述に従って葉ディスクのアグロバクテリウム介在形質転換により得た。葉ディスクを構築plCH1754で形質転換したアグロバクテリウムGV3101株と30分間インキュベートした。選択薬無しで培地(MS−培地 0.1 mg/l NAA, 1 mg/l BAP)上で3日間インキュベートした後、100 mg/Lカナマイシンを添加した同じMS−培地上で形質転換体の選別を行なった。アグロバクテリウムの増殖を抑制するために、培地には300 mg/Lカルベニシリン及び300 mg/Lセファタキシムも添加した。再生したものをホルモンを含まず同量の選択薬を添加したMS−培地上でインキュベートし、発根を誘導した。分離したT2−集団における導入遺伝子の存在はPCR分析により確認した。
【0084】
アグロ浸潤によるウイルスベクター前駆体の輸送
遺伝子導入タバコ植物のアグロ浸潤はYang et al., 2000, Plant Journal,22(6), 543−551により記述されている改良プロトコールに従って実施した。構築(plCH4371及びplCH4461)でそれぞれ形質転換されたAgrobacterium tumefaciens GV3101株をリファンピシン50 mg/l,カルベニシリン50 mg/l及び100μMアセトシリンゴンを添加したLB−培地中28℃で増殖した。終夜培養したアグロバクテリウム細胞(5 ml)を遠心分離(10分間、4500 g)により採取し、10 mM MgSO及び100μMアセトシリンゴンを添加した10 mM MES(pH 5.5)緩衝液に再懸濁した。細菌懸濁は0.8の最終的OD600に調節した。数種の構築を輸送する場合には、浸潤の前に異なる構築を持つアグロバクテリウムクローンを混合した。
【0085】
アグロ浸潤は植物本体に生着しほぼ完全に展開した葉の上で実施した。細菌懸濁を5 mlシリンジで浸潤させた。各スポット(典型的に3−4 cmの浸潤面積)に細菌懸濁100μlを適用し、一枚のタバコ葉上に葉脈により分離された8から16個のスポットを置いた。浸潤の後植物を22℃及び16時間照明の条件の温室内でさらに育成した。
【0086】
浸潤16日後、構築plCH4371及びplCH4461を浸潤させた遺伝子導入タバコ植物(plCH1754、Nicotiana tabacum)の葉は育成植物上にUV光線により観察することができる強いGFP発現部分を示した。同じアグロバクテリウム懸濁混合物で浸潤した非形質転換タバコの葉にはGFP発現は認められなかった。
【0087】
付属文書A
植物のベクターシステム
発明の分野
本発明は植物における遺伝子の増幅及び発現及び/または抑制ができるベクター、並びにその使用、及び該ベクターを発生させる方法及びプロベクターに関するものである。
【0088】
発明の背景
遺伝子操作用の植物ベクターはタンパクの生産用に、宿主植物に新しい特徴を付与するために、宿主植物の遺伝子を抑制するために、または遺伝子、特にゲノミックスにより発見された遺伝子の機能を特定するために、非常に望まれている。
【0089】
植物の遺伝子操作用のベクター、特にウイルスベクターは既知である。これらは遺伝子発現または抑制のための少なくとも一つの配列を有すると共に感染、増幅及び植物内の移動(細胞間及び長距離のいずれも)ができなければならない。先行技術のベクターは転写因子をサブゲノムプロモーターに依存している。サブゲノムプロモーターは、遺伝子導入植物細胞において、ベクター核酸配列の転写は該サブゲノムプロモーターの部分で開始し、植物翻訳機構により該プロモーターの遺伝子下流の翻訳ができるような短いRNAを発生する作用を有している。次いで翻訳はキャップに依存して進行することができる。そのような多重転写は複製酵素の能力の浪費のために動力学的に不利である。
【0090】
そのようなベクターはさらに多くの欠点がある。ベクター配列へのウイルスサブゲノムプロモーターの導入は該配列を長くはするが、効率は落ちる。さらに、宿主における転写に良く適する同一または類似のいくつかのサブゲノムプロモーターが存在するとしばしば組換え反応を生じ、そして配列の部分的欠失による不安定性を生じる。一方、もし著しく異なるサブゲノムプロモーターを使用するならば、組換えは抑制されるがそのプロモーターは余りにも異なっているので転写システムによって有効に認識されず、有効性の消失を意味する。さらに、ベクターは通常配列中に密に詰め込まれたいくつかの相互に依存する配列または遺伝子を高度に集積したものである。これがある異種遺伝子などに対するベクターの作動性が若干特異的でありそしてしばしば、特に感染性及び発現に関して予想し難い結果を生じる理由である。さらに、もし上流遺伝子と配列重複が存在するならば、プロモーター用の有効配列空間は通常制約されている。
【0091】
したがって、本発明の目的は宿主植物中において有効にして安定な作動をすることができる植物遺伝子操作用の新規ベクターを提供することである。その他の目的は植物中において高レベルの発現を可能にするベクターを提供することである。
【0092】
植物中の遺伝子の増幅及び発現をすることができる少なくとも一つの発現される非ウイルス遺伝子を有するかまたは少なくとも一つのその下流遺伝子の翻訳に必要なIRES配列をコードする核酸を含むベクターによりこれらの目的を達成し得ることを驚くことに発見した。
【0093】
(宿主ゲノム中に組み込まれた後に)遺伝子発現の機能のみを有する組換えDNA分子中に植物IRES配列を使用することは既に示されていた(WO 98/54342)。しかし、発現レベルは低い。この低い発現レベルの正確な理由は不明である。とにかく、発現は形質転換植物細胞に限られており、植物全体の総合的効率は極めて低い。
【0094】
植物細胞中に導入した時に、遺伝子発現の能力のみならず、増幅に必要な全ての追加機能を持ち、総合効率が極めて高くなるように植物全体に分布する植物ベクターを構築することが可能であることを驚くべきことに発見した。これらの機能には感染、増幅、細胞間移動及び長距離移動が含まれる。ベクター上の機能的及び構造的配列の高度な集積は該ベクターの遺伝子発現を障害しないことは驚くべきことである。
【0095】
該ベクターのIRES配列はその翻訳を直接支援するために発現する該非ウイルス遺伝子の上流に位置させることができる。その他に、該IRES配列は、該ベクターの感染、増幅及び細胞間または長距離移動の群から選択された該ベクターの機能に必須な別の遺伝子翻訳の直接支援により発現する該遺伝子の翻訳を間接的に支援することができる。
【0096】
その他の目的は植物中において遺伝子の有効な抑制をすることができるベクターを提供することである。この目的は植物中において、該ベクターの増幅に必要でありそして該IRES配列の下流に位置する遺伝子の翻訳に必要な少なくとも一つのIRES配列を持つかまたはコードする核酸を含む増幅ができるベクターにより達成することができる、該ベクターはさらに宿主植物のゲノムを抑制するために宿主植物ゲノムの配列の少なくとも部分をアンチセンスの方向に含んでいる。
【0097】
その他の望ましい態様はサブクレーム中に明示する。
【0098】
ここで、植物活性翻訳(IRES)配列に基づく最初の植物発現及び増幅ベクターを記述する。動物ウイルスから単離した現存するIRES配列は植物細胞中では翻訳を支援しない。したがって、動物発現システムにおいて蓄積された知識は植物に応用できない。動物IRES配列は残余プロモーター作用のような他の機能的性質を試験されていなかったので、本発明は、その下流遺伝子の発現に必要なサブゲノムプロモーターによる転写よりも翻訳に優先的に依存する植物における遺伝子発現の最初の望ましい例を開示する。
【0099】
本発明のベクターは、キャップ依存翻訳を抑制することにより植物中の目的の遺伝子の調節及び優先的発現を可能にする。その他の望ましい態様において、非常に短い同種または人工的IRES配列が使用され、そのため生成したベクターの安定性が増加する。
【0100】
この方法の望ましい利点は、IRES遺伝子、例えば、下流外来遺伝子またはウイルス遺伝子、それぞれの翻訳をキャップ非依存内部リボソーム侵入経路により生じ得るようなタバコモザイクウイルスのコートタンパク遺伝子、をウイルス遺伝子の上流または下流に挿入することができることである。この様に、外来遺伝子の該キャップ非依存的翻訳は2シストロン性または/及び多シストロン性RNAにより生じる。
【0101】
一般的問題及び定義
ウイルスによる植物の感染に際してウイルス感染の初期現象(侵入及びゲノムの脱殻)を生じる。次いでウイルスはそのゲノムを発現しそして複製する作用を発揮しなければならない。ウイルスゲノムは一つの(モノパータイル)または複数の(マルチパータイル)RNAまたはDNA部分から成り立っており、これらの部分のそれぞれはある条件下において感染細胞中で複製することができる。ウイルスレプリコンは「ウイルスの増殖サイクルの間に宿主細胞中で複製されるウイルス配列のポリヌクレオチド」と定義されている(Huisman et al., 1992, ”Genetic engineering with plant viruses”, T.M.A. Wilson and J.W. Davies eds., 1992, CRC Press, Inc.)。本発明において我々は、(i)野生型植物ウイルスにとって非天然外来配列を含みそして発現でき、(ii)それ自身またはヘルパーウイルスの補助により複製するかまたは遺伝子導入植物宿主の生産物により複製する全長ウイルスゲノムまたはウイルスRNAまたはDNAのフラグメントを特定するために、用語「増幅に基づく発現システム」を使用する。この用語「増幅に基づく発現システム」及び「組換えウイルスベクター」は極めて近似している。これらのシステムはウイルスゲノムに対して同種(自身の)または外来、異種(自身のでない)追加の配列を含む組換え核酸を意味している。用語「自身のものでない」とは、この核酸配列がそのウイルスの野生型ゲノム中に天然には認められずそして他のウイルスから由来するかまたは人工的に合成されたヌクレオチド配列であることを意味する。そのようなウイルス配列から由来する増幅に基づくシステムは、正常または/及び遺伝子修飾遺伝子導入宿主植物において、複製することができ、そして多くの場合に細胞間並びに長距離移動をすることができる。後の場合に、遺伝子導入植物は、ある機能を消失したベクターのウイルス成分を補足しなければならない、すなわち、ベクター複製及び/またはその遺伝子の発現または長距離輸送に必須な導入遺伝子の生産物は遺伝子導入植物によって供給されなければならない。
【0102】
モノパータイト(例えば、タバコモザイクウイルス、TMV)またはマルチパータイト(例えば、Bromoviridae科に属するもの)ゲノムから由来する植物ウイルス増幅に基づくベクターは宿主植物中に外来遺伝子を発現することが示されている(総説として、”Genetic engineering with plant viruses”, T.M.A. Wilson and J.W. Davies eds., 1992, CRC Press, Inc.参照)。
【0103】
既知植物ウイルスの大部分(約80%)は遊離RNAの形でビリオンから単離した時に感染性を持つ(+)一本鎖RNA(ssRNA)ゲノムを含んでいる。これはウイルス複製サイクルの最初の段階においてゲノムRNAは、非感染植物には存在せず、したがってウイルスRNA複製には必須であるウイルス特異的RNA−依存RNAポリメラーゼ(レプリカーゼ)を作るために翻訳されなければならないということを意味する(総説として、Y. Okada, 1999, Philosoph. Transact. of Royal Soc., B, 354, 569−582参照)。ゲノム発現に使用される翻訳方法において(+)ssRNAウイルスは異なることに言及する必要がある:いわゆるピコルナ様ウイルスのゲノムはリボソームによって大きなポリタンパクに翻訳される一つの連続オープンリーディングフレーム(ORF)であり、このポリタンパクは次いでタンパク分解的に処理されて機能的に作用するウイルス−コードタンパクになる。ウイルス特異的タンパク分解酵素はポリタンパクのプロセシングに必要である。ピコルナ様ウイルスの第二の特徴は、そのゲノムRNAは、キャップ構造の代わりに、小さなウイルスタンパクをゲノムの5’−末端に共有結合していることである。
【0104】
本発明において、多くの植物ウイルス、特に、Tobamovirus属に1ダース以上のウイルスが属している所謂Sindbis様上科のウイルスに非常に期待して注目した(総説として、A. Gibbs, 1999, Philosoph. Transact. of Royal Soc., B, 354, 593−602参照)。この技術は外来遺伝子のキャップ非依存及びウイルスプロモーター非依存発現を保証する。
【0105】
トバモウイルス(TMV U1はタイプメンバー)のゲノムは4つの大きなORFを含んでいる。レプリカーゼの2成分(130−kDa及びその読み過ごし183−kDaタンパク)はゲノムRNAの5’−近位領域によってコードされており、そしてゲノムRNAによって直接翻訳される。TMV U1の180−kDaタンパク遺伝子の3’−末端15ヌクレオチドはTMV感染の細胞間移動に対応する30−kDaタンパク(移動タンパク、MP)をコードするORFと重複している。TMV U1においてこの遺伝子は、204ヌクレオチド(TMV U1では)からなる3’−近位非翻訳領域(3’−NTR)の上流に位置する17−kDaコートタンパク(CP)をコードする最後の遺伝子の開始コドンの前2ヌクレオチドで終結している。
【0106】
トバモウイルスのRNAの翻訳は真核性mRNAの大部分に共通のリボソーム走査機構により生じる(総説として、Kozak, 1989, J. Mol. Biol. 108, 229−241; Pain, 1996; Merrick and Hershey, 1996, In ”Translational control”, eds. Hershey, Matthews and Sonenberg, Cold Spring Harbour Press, pp. 31−69; Sachs and Varani, 2000, Nature Structural Biology 7, 356−360参照)。この機構に従って、構造的ポリシストトン性トバモウイルスRNAは機能的にはモノシストロン性である、すなわち、複製可能なタンパク(130−kDaタンパク及びその読み過ごし産物)をコードする5’−近位ORFのみが全長ゲノムRNAから翻訳される(Palukaitis and Zaitlin, 1986, In ”The Plant Viruses”, van Regermortel and Fraenkel−Conrat eds., vol.2, pp. 105−131, Plenum Press, NYによる総説)。オメガ(Ω)と命名されたTMV U1の68−ヌクレオチド5’−末端非翻訳リーダー配列は5’−末端近位ORFの翻訳を促進する有効な翻訳エンハンサーの役割を演ずることが示されている。
【0107】
5’−遠位MP及びCP遺伝子は全長TMV U1 RNA中では翻訳に対してサイレントであるが、サブゲノムRNA(sgRNA)に関係する別のmRNAから翻訳される。明らかに、トバモウイルスsgRNAはネガティブセンスゲノムRNAから転写されそして共通の3’−末端を持っている。sgRNAから翻訳されるTMV遺伝子の発現は量的にそして時期的にも独立して調節されている:MPは感染の初期段階のうちに一過性に生産されそして比較的低レベルに蓄積する(総植物タンパクの約1%)が、一方CPは総植物タンパク合成の70%を占めそしてCPは全細胞タンパクの10%に達する蓄積をすることがある(Fraser, 1987, In ”Biochemistry of virus−infected plants”, pp. 1−7, Research Studies Press Ltd., Letchworth, England)。
【0108】
各sgRNAの生成は「サブゲノムmRNAプロモーター」(sgPR)と呼ばれる異なるシス作動性配列によって調節されていることは明らかである。一般的に、この用語は、sgRNAを生産するための内部に存在するsgPRからの転写を開始するレプリカーゼ複合体により認識され得るウイルスゲノム(多分マイナスセンスRNAコピー)の領域を示している。しかし、便宜上、用語「サブゲノムプロモーター」により我々はコード配列及びsgRNAの開始点の上流に通常位置するプラスウイルスRNA中のヌクレオチド配列を通常意味し、そしてそれはsgRNA合成を開始するのに機能的に必要である。しかし、一部のsgPRは調節されるウイルス遺伝子の上流のみならず、この遺伝子と重なり合うこともある(Balmori et al., 1993, Biochimie (Paris) 75, 517−521)。
【0109】
各sgPRはTMVゲノムの異なる位置をコピーする。TMVのsgPRのいずれも正確にマップされていないが、CP遺伝子の上流の250ヌクレオチドはCP sgRNAの合成を促進することが示されている(Dawson et al., 1989, Virology 172, 285−292)。
【0110】
Lehto et al. (1990, Virology 174, 145−157)は、CP sgPRの大きさを推定するために、TMVゲノム中(MP遺伝子の前に)にCP遺伝子に先行する配列(253及び49ヌクレオチド)を挿入した。この挿入は元来のMP sgPRを除去しなかったが、それをMP ORFから分離した。挿入された253ntプロモーター領域を持つ変異体(KK6と呼ばれる)は安定的に複製し、そして感染植物全体に移動した。KK6変異体において挿入がMP sgRNAリーダーの長さを変えたことは予想しないことであった(Lehto et al., 1990, Virology 174, 145−157)(図18参照)。KK6 MP sgRNAリーダーは、CP sgRNAでは9 b.p.であったのに対し、24ヌクレオチドであった。
【0111】
これに対して、プロモーター領域の49−ntフラグメントを挿入した変異体は一過性に複製したのみで、挿入が除去された野生型ウイルスの子孫と交代した。さらに、CP sgPRに由来する96−ntを使用した場合にはCP sgRNAの生成の減少が示された(Meshi et al., 1987, EMBO J., 6, 2557−2563)。CP遺伝子の上流49−96nt配列はTMV U1 CP遺伝子の全sgPRを含まず、一方250−nt配列は完全なsgPRを含むことが結論された。TMV MP遺伝子の発現を調節するsgPRの構造及びマッピングに関する情報は少ない。理論的MP sgPR配列は183−kDaレプリカーゼタンパクと重なり合っているため、MP sgPRの突然変異分析は複雑である。最近W.Dawson及び共同研究者は予備的成績からTMV U1の最小及び全長MP sgPRの範囲を概説した(Grdzelishvili et al., 2000, Virology 276, 印刷中)。MP遺伝子の上流領域のコンピューター上の折り畳みによりMP遺伝子のAUGコドンに先行する75−nt領域に5’−近位に位置する二つのステムループ構造が明らかとなった。
【0112】
ゲノムRNA及びCP sgRNAとは対照的に、MP遺伝子のsgRNA(所謂I sgRNA)はキャップ構造が無い(総説として、Okada, 1999, Philosoph. Transact. of Royal Soc., B, 354, 569−582)。本発明はTMV U1及び crTMV両者のI sgRNAにキャップ構造が無いことを確認した結果を提供する(図16)。
【0113】
ベクターウイルスからの外来遺伝子発現に影響する重要な要因はウイルスゲノムの3’−末端に対する外来遺伝子の相対的位置であることがW. Dawson及び共同研究者により示されている:遺伝子が3’−末端に近くに位置しているほど、発現の効率は劇的に増加した(Culver et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 2055−2059)。最高に発現した遺伝子は、tRNA−様構造に続く3個のシュードノットを(TMV U1 RNA中に)含む3’−NTRに隣接しているCP遺伝子である。3−末端よりもシュードノットに近い遺伝子の方が外来遺伝子の発現を増加する主な要因であることが示されている(Shivprasad et al., 1999, Virology 355, 312−323)。TMV sgPR構造の多くの重要な局面がW. Dawsonのグループの努力により解明されたが、しかし、これらの著者の一般的結論は「我々はまだベクター構築の経験的段階にいる」というものである(Shivprasad et al., 1999,Virology 355, 312−323)。
【0114】
TMVゲノムの5’−遠位遺伝子の発現には、これらの遺伝子が全長RNA中では翻訳にサイレントであるので、sgRNAの合成が必須であることを上記は示している。サブゲノム化による遺伝子自律化の機構は真核リボソームではポリシストロン性mRNAから5’−遠位遺伝子の翻訳ができないことを克服するためにTMVによって使用される方法であると見なすことができる。従来のリボソーム走査モデルにしたがうと(Kozak, 1999, Gene 234,187−208)、ポリシストロン性真核mRNAの内部遺伝子はリボソームに接近することができない。
【0115】
最近、我々はOleracia officinalis L.植物から十字花科植物感染トバモウイルス(crTMV)を単離した。crTMVの特徴はBrassicaseae科に属するもの全てに感染することができることであった。さらに、このウイルスはSolanaceae科及びその他のTMV U1に感受性の植物全てに感染することができた。crTMVのゲノム(6312ヌクレオチド)は配列分析され(Dorokhov et al., 1994, FEBS Letters 350, 5−8)そして122−kDa(ORF−1),178−kDa(ORF−2),122−kDaタンパクの読み過ごし産物、30−kDa MP(ORF3),及び17−kDa CP(ORF4)のタンパクをコードする4個の古典的ORFを含むことが示された。crTMV RNAの独特の構造的特徴は、他のトバモウイルスと異なり、crTMVのMP及びCP遺伝子のコード領域は75ヌクレオチド重なり合っている、すなわち、CPコード領域の5’−近位部分はMPのC−末端部分もコードしている。
【0116】
そのような用語で示される範囲を含め、明細書及び請求項を明確にしまたその理解を一致させるために、以下の定義を提供する:
隣接:ヌクレオチド配列中の特定の配列に直接接している3’または5’の位置。
増幅ベクター:宿主細胞中に導入された時にその中で複製することができる遺伝子ベクターの一種。
アンチセンス機構:細胞内に少なくとも翻訳されるmRNAの部分に相補的なRNA分子の存在により、mRNAをタンパクに翻訳する速度を調節することに基づいた遺伝子調節の一種。
キメラ配列または遺伝子:少なくとも二つの異種部分から誘導されたヌクレオチド配列。配列はDNAまたはRNAを含み得る。
コード配列:転写または翻訳された時に、細胞性ポリペプチドを生成するかまたは、翻訳された時に、細胞性ポリペプチドを生成するリボヌクレオチド配列を生成するデオキシリボヌクレオチド配列。
適合:システムの他の成分と共に作動できること。宿主に適合するベクターまたは植物ウイルスはその宿主中において複製できるものである。ウイルスヌクレオチド配列に適合するコートタンパクはそのウイルス配列をキャプシドで被うことができるものである。
遺伝子:個別の細胞生産物に対応する個別のヌクレオチド配列。
発現される遺伝子:発現される技術的目的の遺伝子。
宿主:ベクターまたは植物ウイルス核酸を複製することができる細胞、組織または生物体であり、またそれはウイルスベクターまたは植物ウイルス核酸を含むウイルスに感染することができる。この用語は、適宜、原核及び真核細胞、器官、組織または生物体を含むことを意図している。
宿主植物ゲノム:この用語は望ましくは宿主植物細胞のゲノムを意味するが、ミトコンドリアまたはクロロプラストDNAも含むことがある。
感染:核酸を宿主に移転するまたは宿主中に核酸を導入し、その中でウイルス核酸またはベクターが複製し、ウイルスタンパクが合成され、そして新しいウイルス粒子が組み立てられる、ウイルスまたは増幅用ベクターの能力。これに関係して、用語「伝播」と「感染」はここでは互換的に使用される。
内部リボソーム侵入部位(IRES)配列、またはIRES:翻訳の段階において内部から開始するためのウイルス、細胞または合成のヌクレオチド配列。
その下流遺伝の翻訳に必要なIRES配列:そのIRES配列無しにはこの遺伝子の技術的に意味のある翻訳が生じないという意味において、該遺伝子の翻訳に有効なIRES配列。
非ウイルス遺伝子:ウイルスの生命循環には機能しない遺伝子。
表現型特徴:遺伝子の発現により生じる観察し得る特徴。
植物細胞:プロトプラスト及び細胞壁からなる、植物の構造的及び生理的単位。
植物器官:例えば根、幹、葉または胚のように、明らかにそして可視的に識別される植物の部分。
植物組織:プランターまたは培養中の植物の組織。この用語は植物全体、植物細胞、植物器官、プロトプラスト、細胞培養、または構造的及び機能的単位に組織されている植物細胞の群を含むことを意図している。
生産細胞:ベクターまたはウイルスベクターを複製することができる組織または生物体の細胞であるが、ウイルスの宿主である必要はない。この用語は、細菌、イースト、菌及び植物組織のような原核及び真核細胞、器官、組織または生物体を含むことを意図している。
プロモーター:コード配列の上流にありそしてそれに作動的に接続している、コード配列の転写を開始するのに必要な5’−非コード配列。
プロトプラスト:細胞培養または完全な植物に再生する能力を持つ、細胞壁の無い単離植物細胞。
組換え植物ウイルス核酸:天然に無い核酸配列を含むように修飾された植物ウイルス核酸。
組換え植物ウイルス:組換え植物ウイルス核酸を含む植物ウイルス。
レポーター遺伝子:容易に検出し得る遺伝子産物を提供する遺伝子。
サブゲノムプロモーター(sgPR):ベクターまたはウイルス核酸のサブゲノムmRNAのプロモーター。
実質的配列相同性:実質上機能的に相互に同等であるような相同性のヌクレオチド配列を示す。実質的配列相同性を持つ配列間のヌクレオチドの相違は、そのような配列によってコードされている遺伝子産物またはRNAの機能への影響は少ない。
転写:DNA配列の相補的コピーとしてRNAポリメラーゼによるRNAの生産。
翻訳:(多くはメッセンジャーRNAを走査することによる)リボソームによるポリペプチドの生産。
ベクター:宿主細胞を遺伝的に修飾することができる核酸。ベクターは1本鎖(ss)(+)、ss(−)または二本鎖(ds)のことがある。
ウイルス:タンパクのカプシドに覆われた核酸からなる感染物質。ウイルスにはモノ−、ジ−、トリ−またはマルチ−パータイトウイルスがある。
【0117】
本発明の利点
本発明は、外来(異種、非天然)遺伝子発現のために、これらの遺伝子の翻訳が内部リボソーム侵入機構によりポリシストロン性RNAから及び/またはIRES介在キャップ非依存内部リボソーム侵入機構により感染細胞中でベクターから生産されたビ−及びマルチ−シストロン性sgRNAから生じることができるような、増幅に基づくベクターを構築する新規方法を提供する。いずれにしても、IRES配列は遺伝子の翻訳に必要である。この方法の一つの利点はsgPRに関する特別な操作を必要としないことである:ベクターに挿入するべき唯一の配列は翻訳する遺伝の上流のIRES配列(天然または/及び非天然)である。結果として、下流遺伝子の翻訳は挿入したIRES配列により促進される、すなわちキャップ非依存である。IRES配列を含む配列部分は技術的意味がある程度にはサブゲノムプロモーターとして機能しないことが望ましい。このことは、この配列部分が対応するサブゲノムRNAの検出できるような生産を行なわないし、また、該配列部分の残余サブゲノムプロモーター活性により生成した場合でも、そのサブゲノムRNAを翻訳するために下流遺伝子の翻訳にはこのIRES配列がなお必要であることを意味する。したがって、特別な場合に、ベクターによって生産された一次組換えRNAは、望ましくはウイルス起源の一つまたはそれ以上の構造遺伝子、該IRES配列、IRESの下流に位置する目的の(外来)遺伝子及び3’−NTRを含む。この方法はそれぞれが分離したIRESによって調節される2(またはそれ以上)の外来遺伝子の直列挿入による1以上の外来遺伝子の同時発現を可能にすることは重要である。本発明は、ウイルスゲノムまたはそのサブゲノムRNAまたは非天然(外来)核酸配列のキャップ非依存発現により特徴づけられ、そして追加の植物特異的IRES配列によりその外来配列を宿主植物中全体に発現できる核酸及び組換えウイルスに向けられることが望ましい。
【0118】
最初の望ましい態様において、その中のウイルス核酸から天然コートタンパクコード配列及び天然CPサブゲノムプロモーターが削除され、そして宿主植物中においてキャップ非依存発現を可能にする植物ウイルスIRES配列を持つ非天然植物ウイルスコートタンパクコード配列が上流に挿入され、組換え植物ウイルス核酸の構造及び組換え植物ウイルス核酸によるその後の宿主全体の感染は維持されているような植物ウイルス核酸が提供される。
【0119】
組換え植物ウイルス核酸は、翻訳配列として機能しそして転写作用を持たない、つまり、サブゲノムプロモーターとして有効に機能することができない、1またはそれ以上の追加の天然または非天然IRES配列を含むことができる。各天然または非天然IRES配列は、宿主植物において隣接遺伝子または核酸配列のキャップ非依存発現を行なうことができる。
【0120】
第二の望ましい態様において、外来核酸配列の上流に位置する天然または非天然植物ウイルスIRES配列が天然コートタンパク遺伝子の下流に挿入されている増幅及び発現ベクターが提供される。挿入された植物ウイルスIRESは宿主植物における隣接遺伝子のキャップ非依存発現を指令することができる。望む生成物を合成するためにIRES配列の翻訳調節の下に宿主植物中において該配列が発現するように非天然核酸配列をIRES配列に隣接して挿入することができる。
【0121】
第三の望ましい態様において、下流に位置する外来核酸配列をもつ天然または非天然植物ウイルスIRES配列が天然コートタンパクサブゲノムプロモーター及びコートタンパク遺伝子の上流に挿入されていることを除いて、第二の態様におけると同様に組換えベクター核酸が提供される。
【0122】
第四の望ましい態様において、天然または非天然植物ウイルスIRES配列がウイルスゲノムの5’末端にまたは下流遺伝子の翻訳をキャップ非依存にするようにウイルスサブゲノムRNA中に使用されている組換えベクター核酸が提供される。
【0123】
第五番目の態様において、キャップ依存翻訳の抑制が該ベクターからのキャップ非依存翻訳のレベルを増加させるために使用される。
【0124】
ウイルス由来増幅ベクターは組換え植物ウイルスを産生する組換え植物ウイルス核酸によってコードされているコートタンパクにより覆われている。組換え植物ウイルス核酸は宿主中において複製し、宿主全体に拡散し、そして外来遺伝子のキャップ非依存発現または目的とする生産物を生産するために全ウイルスゲノムまたはサブゲノムRNAのキャップ非依存発現を行なうことができる。その生産物は、例えば、これに限定しないが、酵素、2分子複合体、またはポリペプチドまたは特性またはアンチセンスRNA生成により得られる産物のような医療用及びその他の有用なポリペプチドまたはタンパクを含んでいる。望ましい導入特性の例は除草剤抵抗性、耐昆虫性、抗菌性、ウイルス耐性、細菌耐性、抗生ストレス耐性、及びエネルギー及び物質利用効率改善である。望ましい生産物特性の例は、改良炭水化物、改良多糖類、改良脂質、改良アミノ酸組成及び量、改良二次代謝物、及び酵素、抗体、抗原などを含む医療用タンパクである。特性調節成分の例は、遺伝子スイッチ、遺伝子発現の調節、交雑種子生産の調節、及びアポミクシスの調節である。
【0125】
本発明は、植物細胞(そして多分さらにイーストまたは動物細胞)中において目的遺伝子のキャップ非依存及びプロモーター非依存発現を行なう人工的、非天然IRES配列(生きている生物体から単離したIRESに対するものとして)を創り出す方法も指向している。IRESを取出すことができる生きた生物体の例は動物ウイルス及び植物ウイルスである。動物ウイルスの例はC型肝炎ウイルス、感染性気管支炎ウイルス、ポリオウイルス及び脳心筋炎ウイルスのようなピコルナウイルス、及びモロニーネズミ白血病ウイルスのようなレトロウイルス、及びハーベイネズミ肉腫ウイルスである。植物ウイルスの例はポテトウイルスX、ポテトウイルスY及びカブモザイクウイルス、十字花感染トバモウイルスのようなトバモウイルス、及びササゲモザイクウイルスのようなコモウイルスである。その他に、天然IRESは、アンテナペディアホメオティック遺伝子、人繊維芽細胞増殖因子2、及び翻訳開始因子elF−4Gから由来する細胞性メッセンジャーRNAから単離することができる。
【0126】
第六の望ましい態様において、人工的、非天然IRESは、イースト、動物及び植物を含む真核細胞の18S rRNAに対する相補性に基づいて創出される。
【0127】
第七の望ましい態様において、人工的、非天然IRESはアデノシン/グアノシン塩基の短い鎖の反復に基づいて創出される。
【0128】
本発明の第八の望ましい態様において、ウイルス由来増幅ベクターの操作及び使用方法が示され、その中において植物細胞中においてウイルスゲノムの発現は植物特異的人工的転写プロモーターの調節の下に生じる。
【0129】
本発明の第九の望ましい態様において、ウイルス由来増幅ベクターの構築及び使用方法が示され、そのベクターは一次核転写処理の結果として植物細胞内に生成したレプリコンからの発現を可能にする。
【0130】
本発明の第十の望ましい態様において、植物中において外来遺伝子をキャップ非依存的に発現するために環状1本鎖ウイルス由来増幅ベクターを使用する方法が記述される。
【0131】
本発明の第十一の望ましい態様において、キャップ非依存翻訳に好ましい条件下で細胞中において目的の遺伝子を発現することを可能にする方法が示される。一例において、増幅ベクターに感染した細胞はキャップ依存翻訳を抑制する化合物で処理される。別の例では、ベクター自身が遺伝子、その生成物が宿主中においてキャップ依存翻訳に対して抑制作用を有するかまたは該機能を持つアンチセンス配列を有している。
【0132】
本発明の第十二の態様において、インビボ遺伝子選択を使用することにより、目的の遺伝子または発現ベクター中のレポーター遺伝子のキャップ非依存的発現をするIRES配列を同定することを可能にする方法が記述される。
【0133】
発明の詳細な説明
本発明の第一の目的は、その遺伝子の翻訳がIRES介在キャップ非依存内部リボソーム結合機構により、増幅ベクター、望ましくは植物細胞においてウイルスベクター、によって生産されたポリシストロン性ゲノムウイルスRNAから及び/またはビ−及びマルチシストロン性sgRNAから生じるような、外来(異種、非天然)遺伝子発現用の増幅に基づくベクターを構築する方法を提供することである。
【0134】
組換え植物ウイルスRNAの構築及び植物中において外来遺伝子の導入及び発現をするための増幅に基づくベクターの創製は種々の分類学上の群に属するウイルスのゲノムを使用して多数の著者により提示されている(総説として、”Genetic Engineering With Plant Viruses”, 1992, eds. Wilson and Davies, CRC Press, Inc.参照)。トバモウイルスはウイルスベクターの構築に便利な材料と考えられている。Donson et al.,(U.S. Patents No. 5,316,931; 5,589,367及び5,866,785)は宿主植物において種々の外来遺伝子を発現することができるTMV由来ベクターを創製した。このようにして、ネオマイシンリン酸転移酵素、a−トリコサンチン及びその他数種の外来遺伝子がTMV CPのサブゲノムプロモーター(sgPR)に隣接して挿入された。Donson et al.,(1993, PCT WO 93/03161)はトバモウイルスに基づいて「該非天然植物ウイルスサブゲノムプロモーターは宿主植物中の隣接核酸配列の転写を開始することができそして組換え植物ウイルス核酸サブゲノムプロモーターとの組換えができずそして組換え植物ウイルス核酸は宿主植物全体に感染することができるような、天然植物ウイルスサブゲノムプロモーター、少なくとも一つの非天然植物ウイルスサブゲノムプロモーター及び植物ウイルスコートタンパクをコードする配列を含む組換え植物ウイルス核酸」を開発した。
【0135】
Donson et al.,の技術とは異なり、本発明はウイルスレプリコンに基づく植物発現システムを構築するためにsgPRに関係していない。sgPRの代わりに、我々の技術は種々の起源(ウイルスにとって固有または非固有)のIRES配列、有効なsgPR作用のない、すなわち、sgRNA生成を促進することができない配列、を扱う。したがって、このIRES配列はsgPRの機能しない部分である場合でもsgPRと見なすべきではない。
【0136】
cDNAクローンのインビトロ転写後に得られる全長ウイルスRNAのキャップの無い転写物は一般的に完全植物及び単離プロトプラストに対する感染性はない、と一般的に考えられている。したがって、ウイルス発現ベクターRNA転写物のキャップ付加がインビトロ転写物感染のために予め必要であると一般に考えられている。キャップ付加RNA転写物は植物にウイルスベクターRNAを導入するために広く使用される。ある場合にはウイルスRNAは簡単なインビトロ集合方法を使用してコートタンパクによりキャプシドで被うことができる。このように、ベクターRNAを含むTMVビリオン並びに擬ビリオンを容易にCP及びインビトロ転写物または精製真正ウイルスRNAから作製することができる。約15年前、Meshi et al., (1986, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 5043−5047) により、(1)インビトロで作製された全長TMV RNAのキャップの無い転写物はキャップ同族体が無いのに感染性であり、しかし固有感染性は非常に低いことが示された。
【0137】
本発明において、TMV CPと再構成したキャップの無い発現ベクターRNAはその低感染性を克服するために植物の接種のために使用することができる。本発明に記述されている少なくとも1つの追加の方法はキャップ非依存植物ウイルスベクターによる植物感染の技術的可能性を開示する。これは適当なDNAプロモーターの調節下にウイルスベクターの全長1本鎖(ss)DNAコピーの挿入方法である。宿主植物に組換えウイルスDNAを接種した後、複製しそして植物中に拡散することができる植物ウイルスベクターの感染性全長RNAが生産される。言い換えると、これらの方法は、IRESにより促進される外来遺伝子のキャップ非依存発現を利用して、両過程、つまり宿主植物接種及び外来遺伝子発現を完全にキャップ非依存にする。
【0138】
本発明の重要な望ましい目的はCP遺伝子及び3’−NTRの間に挿入された「IRES−外来遺伝子」ブロックを持つ一連のcrTMVゲノム由来ウイルスベクターを創製することである。種々のIRES及び対照配列は二つの異なるレポーター遺伝子(GUS及びGFP)と組合わせて使用された(図11参照)。本発明の独特の特徴は、ベクターによって生産されたゲノム及びsgRNAの3’−近位位置からウイルスsgPR配列の外側に位置する外来遺伝子がキャップ非依存的に感染植物中において発現したことである。特に、crTMV sgRNA Iの5’−非翻訳リーダー配列の3’−末端部分であるIRESMP,75 CR配列は、ウイルスベクターに感染した植物における3’−近位の外来遺伝子のキャップ非依存発現を有効に仲介した。該crTMV由来ウイルスベクターは感染植物中に3型のウイルス(+)ssRNAを生産する、それらは:i)全長ゲノムRNA、ii)トリシストロン性I sgRNA (我々のデータは全長RNAとは逆に後のsgRNAはキャップが無いことを示している)、及びiii)第一CP遺伝子及び第二外来遺伝子を含むビシストトン性sgRNA。したがって、これらのRNAは全て3’−共通末端でありそしてキャップのある(全長及びビシストロン性)またはキャップの無い(トリシストロン性)RNAのいずれの3’−近位遺伝子のキャップ非依存翻訳も先行するIRES配列によって促進される。
【0139】
ウイルス由来ベクターの重要な特性はその安定性である。しかし、外来遺伝子を持つTMV由来ベクターは通常野生型ウイルスには全身感染する植物の篩管を通じて有効に移動しない。これは組換えウイルスRNAの長さが増加したことによる及び/または野生型への復帰を生じる組換え及び削除をすることができる反復配列の存在によるであろう。後継集団の野生型ウイルスへの変換が全体的に感染した葉において生じる。
【0140】
ウイルス由来ベクターの重要な特性は外来タンパク遺伝子の発現レベル及びタンパク蓄積のレベルである。このベクターはSDS−PAGE中において容易に認め得る染色されたGUSバンドを生産することができる。
【0141】
宿主植物中において外来配列を発現することができる増幅に基づくベクターを構築するのに適した技術は種々のウイルスゲノムに基づいて開発されてきた(例えば、G. Della−Cioppa et al., 1999, PCT WO 99/36516参照)。これらの発明者の中心的特徴は、組換え植物ウイルス核酸が「宿主植物中において隣接する核酸配列を転写または発現することができる1またはそれ以上の非天然サブゲノムプロモーターを含むことであった。組換え植物ウイルス核酸はさらに修飾されて、天然コートタンパクコード配列の全部または一部が削除され、そして天然または一つの非天然宿物ウイルスサブゲノムプロモーターの調節を受ける非天然コートタンパクコード配列を含むか、または天然コートタンパクコード配列を非天然植物ウイルスサブゲノムプロモーターの調節下に置く」。言い換えると、その発明の最も重要な配列は、ウイルスベクターによる人工的sgRNA生産に使用される天然及び非天然sgPR配列である。我々によって提出された発明の重要な特徴は、WO 99/36516によると、外来遺伝子は必然的にsgPR配列のすぐ下流に位置しなければならない、すなわち、宿主植物中においてウイルスベクターにより生産されたキメラsgRNAの5’−近位位置に局在しなければならないとする他の発明とは区別される。これに対して、我々の発明は、該外来遺伝子が3’−近位に存在するかまたはベクターによって作られた機能的に活性なキメラsgRNAの内部に局在するように、外来遺伝子はsgPR(もし存在すれば)から少なくとも1(またはそれ以上)のウイルス遺伝子で分離されている。この様に、外来遺伝子発現は野生型ウイルスの天然または非天然IRES配列によって促進される。
【0142】
本発明の次の望ましい目的は新しい型の非天然IRES配列、つまり真核ポリシストロン性mRNAから5’−遠位遺伝子のキャップ非依存翻訳をすることができる人工的、非天然合成IRESを構築することである。我々は、種々の長さ及び組成の18S rRNAに相補的なシストロン間スペーサーがビシストロン性H−GFP−IRES−GUS mRNAの3’−近位GUS遺伝子のキャップ非依存翻訳を仲介することができることを示す(図22)。
【0143】
本発明により提供される最後のしかし最小でない利点は、増幅に基づくベクターゲノム中の天然または非天然IRES配列に先行する2以上の外来遺伝子それぞれの反復を結合する可能性である。「IRES−外来遺伝子」のカセットの発現はベクターによる2以上の外来タンパクの同時生産を可能にするであろう。
【0144】
異なる分類群に属するウイルスを本発明の原理に従ってウイルス由来ベクターの構築に使用することができる。これはRNA−及びDNA−含有ウイルスのいずれにも当てはまり、その例を以下に示す(この文書を通して、各型種の名称はそれが属す目、科及び属の名称の順に示す。目、科及び属の名称は、それがICTVにより承認されていれば、イタリック体で表示する。引用譜中の分類名(及びイタリック体でない)はこの分類が国際ICTV承認の名称でないことを示す。種(俗称)名は標準体で示される。正式な属または科の分類がされていないウイルスはその旨示される):
【0145】
DNAウイルス:
環状dsDNAウイルス:
科:Caulimoviridae,属:Badnavirus,型種:commelina yellow mottle virus,属:Caulimovirus,型種:cauliflower mosaic virus,属 ”SbCMV−like viruses”,型種:Soybean chloroticmottle virus,属 ”CsVMV−like viruses”,型種:Cassava vein mosaicvirus,属 ”RTBV−like viruses”,型種:Rice tungro bacilliformvirus,属:”Petunia vein clearing−like viruses”,型種:Petunia vein clearing virus;
【0146】
環状ssDNAウイルス:科:Geminiviridae,属:Mastrevirus (亜属 I Geminivirus),型種:maize streak virus,属:Curtovirus (亜属II Geminivirus),型種:beet curly top virus,属:Begomovirus (亜属III Geminivirus),型種:bean golden mosaic virus;
【0147】
RNAウイルス:
ssRNAウイルス:科:Bromoviridae,属:Alfamovirus,型種:alfalfa mosaic virus,属:Ilarvirus,型種:tobacco streak virus,属:Bromovirus,型種:brome mosaic virus,属:Cucumovirus,型種:cucumber mosaic virus;
科:Closteroviridae,属:Closterovirus,型種:beet yellows virus,属:Crinivirus,型種:Lettuce infectious yellows virus,科:Comoviridae,属:Comovirus,型種:cowpea mosaic virus,属:Fabavirus,型種:broad bean wilt virus 1,属:Nepovirus,型種:tobacco ringspot virus;
科:Potyviridae,属:Potyvirus,型種:potato virus Y,属:Rymovirus,型種:ryegrass mosaic virus,属:Bymovirus,型種:barley yellow mosaic virus;
科:Sequiviridae,属:Sequivirus,型種:parsnip yellow fleck virus,属:Waikavirus,型種:rice tungro spherical virus;
科:Tombusviridae,属:Carmovirus,型種:carnation mottle virus,属:Dianthovirus,型種:carnation ringspot virus,属:Machlomovirus,型種:maize chlorotic mottle virus,属:Necrovirus,型種:tobacco necrosis virus,属:Tombusvirus,型種:tomato bushy stunt virus,属が特定されないssRNAウイルス、
属:Capillovirus,型種;apple stem grooving virus;
属:Carlavirus,型種:carnation latent virus;
属:Enamovirus,型種:pea enation mosaic virus,
属:Furovirus,型種:soil−born wheat mosaic virus,属:Hordeivirus,型種:barley stripe mosaic virus,属:Idaeovirus,型種:raspberry bushy dwarf virus;
属:Luteovirus,型種:barley yellow dwarf virus;
属:Marafivirus,型種:maize rayado fino virus;
属:Potexvuirus,型種:potato virus X;
属:Sobemovirus,型種:Southern bean mosaic virus, 属:Tenuivirus, 型種:rice stripe virus,
属:Tobamovirus,型種:tobacco mosaic virus,
属:Tobravirus,型種:tobacco rattle virus,
属:Trichovirus,型種:apple cholotic leaf spot virus,
属:Tymovirus,型種:turnip yellow mosaic virus,
属:Umbravirus,型種:carrot mottle virus;
【0148】
(−)ssRNAウイルス:目:Mononegavirales,科:Rhabdoviridae,属:Cytorhabdovirus,型種:lettuce necrotic yellows virus,属:Nucleorhabdovirus,型種:potato yellow dwarf virus;
(−)ssRNAウイルス:科:Bunyaviridae,属:Tospovirus,型種:tomato spotted wilt virus;
【0149】
dsRNAウイルス:科:Partitiviridae,属:Alphacryptovirus,型種:white clover cryptic virus 1,属:Betacryptovirus,型種:white clover cryptic virus 2,科:Reoviridae,属:Fijivirus,型種:Fiji disease virus,属:Phytoreovirus,型種:wound tumor virus,属:Oryzavirus,型種:rice ragged stunt virus;
【0150】
分類されていないウイルス:ゲノムssDNA:種banana bunchy top virus,種coconut foliar decay virus,種subterranean clover stunt virus,
ゲノムdsDNA、種cucumber vein yellowing virus,
ゲノムdsRNA、種tobacco stunt virus,
ゲノムssRNA、種Garlic virus A, B, C, D,種grapevine fleck virus,種maize white line mosaic virus,種olive latent virus 2,種ourmia melon virus,種Pelargonium zonate spot virus;
【0151】
サテライト及びウイロイド:サテライト:ssRNAサテライトウイルス;亜群2サテライトウイルス、型種:tobacco necrosis satellite,
サテライトRNA、亜群2 B型mRNAサテライト、亜群3 C型線状RNAサテライト、亜群4 D型環状RNAサテライト、
ウイロイド、型種:potato spindle tuber viroid。
【0152】
特に、本発明の方法は、望ましくはTobamovirus属またはBromoviridae科またはPotyviridae科に属するプラス鎖ssRNAウイルス並びにDNA含有ウイルスの組換えゲノムを使用してウイルスレプリコン由来ベクターの構築に望ましく適用することができる。後の場合には外来遺伝子は望ましくはウイルス遺伝子の下流に存在すべきでありそしてその発現はゲノム転写プロモーターのDNA依存RNAポリメラーゼによって転写されたビシストロン性またはポリシストロン性mRNAのIRES配列により仲介され得る。
【0153】
本発明の別の望ましい態様は、ssDNA由来ベクターの構築に本発明の方法を適用することに関係している。IRES配列の調節下に外来遺伝子を発現するジェミニウイルス由来ベクターはこの態様を代表することができる。ジェミニウイルスは、双球形準20面体粒子のモノパルタイトまたはビパルタイト環状ssDNAの植物ウイルス群である(総説:Hull and Davies, 1983, Adv. Virus Res. 28, 1−45; Mullineaux et al., 1992, ”Genetic engineering with plant viruses”, Wilson and Davies, eds., 1992, CRC Press, Inc.)。ビパルタイトジェミニウイルスの2個のssDNA成分はそれぞれ4及び2タンパクをコードするA及びBと呼ばれる。DNA AはCP遺伝子及びDNA複製に必要な3遺伝子を含み、一方DNA Bはウイルス移動に必須な2タンパクをコードしている。トマト金色モザイクウイルス(TGMV)及びマメ金色モザイクウイルス(BGMV)のようなBegomovirus属に属するビパルタイトジェミニウイルスのゲノムはCP遺伝子が欠失しているにもかかわらず複製しそしてある植物全体に拡散することができる(Gardiner et al., 1988, EMBO J. 7, 899−904; Jeffrey et al., 1996, Virology 223, 208−218; Azzam et al., 1994, Virology 204, 289−296)。BGMVを含む一部のbegomovirusは篩管限定を示し、管系の細胞に限定される。この様にBGMVは篩管限定的であるが、TGMVは感染した葉全体の中葉組織に侵入することができる(Petty and Morra, 2000, Abstracts of 19th Annual meeting of American Society for Virology, p.127)。本発明はビパルタイトジェミニウイルスゲノム中に二つの方法により外来遺伝子を挿入することを提案する:(i)その(例えば、BGMV)遺伝子、特にCP ORFが完全であるかまたは3’−短縮があるようなCP遺伝子、の一つの下流でそして外来遺伝子の上流にIRES配列が挿入されている。したがって、mRNA転写は固有のDNAプロモーターにより進行し、第一ウイルス遺伝子(またはその一部)、IRES配列及び3’−近位外来遺伝子のIRES仲介発現を含むビシストロン性キメラmRNAを生成する。その他に、(ii)ウイルスベクターのRNAゲノムの全長DNAコピーをCP遺伝子プロモーターの調節下にCP欠失ビパルタイトジェミニウイルスのDNA中に挿入することができる。RNAベクターウイルスのRNAゲノムは、組換えDNA A及び非修飾DNA Bの混合物を接種された植物細胞中におけるDNA Aの転写の結果として生産される。本方法の利点は、ジェミニウイルスが一次接種細胞へベクターを輸送するためにのみ使用される担体として必要であることである:その他の全ての段階、細胞性RNAポリメラーゼによるジェミニウイルスベクターDNAの転写の後のIRES含有ベクターRNAの生産、その複製、翻訳及び宿主植物全体への拡散及び外来遺伝子の発現、はトバモウイルスベクター自身によって実行されるであろう。ssDNAベクターの創製に関するその他の可能性として、ウイルスcDNA及び外来遺伝子のファージミドベクターへのクローニング及び標準的方法によるssDNAの作製について言及することができる。
【0154】
トバモウイルス由来IRES配列は動物細胞において機能的作用をもつことが示されている(我々の以前の特許出願)ことを考慮して、本発明の方法は組換えウイルスRNAの構築及び植物ウイルス由来IRES配列の調節の下に外来遺伝子を発現する新規ベクターを作製するために動物ウイルス、例えば、科Togaviridae, Caliciviridae, Astroviridae, Picornaviridae, Flaviviridaeに属するウイルスを基にしたウイルスベクターの作製、に使用することができる。植物及び動物のためのそのような動物ウイルス由来ベクターはワクチン生産分野または遺伝子治療に有用であり得る。
【0155】
しかし、Tobamovirusの桿状ビリオン及び、特に、Potexvirus,Carlavirus,Potyvirus及びClosterovirusの柔軟なそして長いビリオンは本発明方法を実現する最良のモデルを提供する。
【0156】
本発明の次の望ましい目的は、ウイルス由来増幅ベクターがその5’−NTRの中にIRESを含むようにIRESを使用することである。IRES配列の挿入はウイルス複製を阻害せずに、ゲノムベクターRNAの転写物の有効なキャップ非依存翻訳を保証すると考えられている。したがって該構築は以下を含むことができる:(i)5’−非翻訳リーダー配列の中または下流にある該ウイルスベクターにとって固有または非固有でありそしてウイルス5’−近位遺伝子(RdRp)のキャップ非依存発現を促進するIRES配列、及び(ii)1またはそれ以上のウイルス構造遺伝子の下流及びそのキャップ非依存翻訳を促進するために外来遺伝子の上流に位置する少なくとも一つの天然または非天然IRES配列。本方法によると、キャップの無い全長ベクター転写物の固有感染性は一次接種細胞における親RNA分子の有効な5’−IRES仲介翻訳のために増加するであろう。
【0157】
本発明のさらに他の望ましい目的は、モノまたはポリシストロン性mRNA配列から外来遺伝子を導入しそして該外来遺伝子の上流に位置する植物特異的IRES配列により仲介される発現をさせることに基づいて植物細胞において目的の1個または数個のタンパクを生産する方法である。本方法の特徴は、ある化学物質の助けにより細胞性キャップ依存mRNA翻訳のスイッチを選択的に切ることができる方法をこの技術が含んでいることである。しかし、この方法は植物細胞に人工的に導入したmRNAのキャップ非依存IRES仲介翻訳には影響しないので、キャップ非依存発現を調節及び増強することが可能である。
【0158】
その他に、キャップのある細胞性mRNAの翻訳を抑制する方法をキャップ非依存様式で外来遺伝子を発現する該ウイルスベクター自身を感染させた植物に適用することができる。キャップのある細胞性mRNAの翻訳が抑制される条件下において該ウイルスベクターの外来遺伝子の選択的発現が生じる。
【0159】
本発明のベクターはRNAまたはDNAベクターであり得る。ss(+), ss(−)またはdsであろう。既知のウイルス増幅様式のいずれかを示すであろう。これにはベクター核酸の増幅及び追加してコートタンパクの生産及び細胞間移動または長距離移動のためのタンパクの生産が含まれる。必要な複製及び/またはコート及び/または移動のための遺伝子は全体的にまたは部分的に適当に操作された宿主植物中にコードすることができる。この様にして、相互に適合したベクター及び宿主植物からなるシステムが創られる。
【0160】
ベクターは修飾によりウイルスから誘導されるかまたは新しく合成することができる。それはサブゲノムプロモーター作用を有効に排除したIRES配列のみを持つことができる。しかし、プロモーターの数よりもシストロンの数が大きくなるように、ベクターは1個または数個のサブゲノムプロモーターとサブゲノムプロモーター機能を有効に排除したIRES配列の1個または数個とを結合することができる。
【0161】
1個のIRES配列の最も簡単な場合を考えると、該配列は直接該IRES配列によって発現される目的の(外来)遺伝子の上流にそしてさらにIRES非依存的に発現される(複製という)ために(ウイルス)遺伝子の下流に位置させることができる。その他には、目的の遺伝子はIRES配列の上流に存在し、そしてIRES非依存発現されそして下流ウイルス遺伝子の発現に対してIRES配列として役立つことができる。この最も単純なケースは勿論より複雑なベクターに一つまたは多数組込むことができる。
【0162】
ベクターは宿主遺伝子を抑制するためにアンチセンス方向に配列を含むことができる。抑制機能は単独にまたは目的の(外来)遺伝子の発現と組合わせて存在することができる。特に望ましい場合は、宿主植物の翻訳機構が完全にベクター遺伝子の翻訳に使用されるように、キャップ依存翻訳に必須な遺伝子、例えば、キャップ依存性翻訳に関連する翻訳開始因子(例えば、elF4)の遺伝子、の抑制を必要とする。この場合に、ベクターは完全にキャップ非依存でなければならない。勿論、ベクターは植物細胞内で植物核酸プロセッシング機構、例えば、イントロンスプライシングによりプロベクターから発生することができる。
【0163】
IRES配列は植物ウイルス起源であり得る。その他には、植物細胞中における作動性の要求を充たす限り、その他のいずれのウイルス起源であっても良い。さらに、植物細胞中において作動するIRES配列は合成的または人工的配列であっても良い。合成は宿主植物の18S rRNAの配列、つまり、IRES結合に作動的部分、に続けて行われる。それに充分相補的でなければならない。相補性の程度はIRES機能を試験することにより簡単に調べることができる。この意味における相補性はGC,AU及びある程度はGU塩基のペアリングに関係している。さらに、そのIRES配列は有効性を増加させるためにその相補配列の多量体になっていることがある。多量体は同一の本質的相補性配列単位からかまたは異なる本質的相補性配列単位から構成される。さらに、高い翻訳効率及びサブゲノムプロモーター作用を全く持たない人工的IRES配列は直接発生の方法により作製することができる(例えばUS 6,096,548またはUS 6,117,679に記述されているように)。これは、それ自体既知であるランダム化したIRES配列を持つベクター集団のインビトロ細胞培養において実施することができる。潜在的なIRES配列と作動的に結合したレポーター遺伝子を発現するクローンをそれ自体既知の方法により選択する。サブゲノムプロモーター作用を示すクローンを除去する。さらに、ランダム化及び選択の循環を続けることができる。
【0164】
本発明のベクターのIRES配列はプロモーター作用を有効に除去すことができる。これはIRES配列に作動的に結合した遺伝子の発現は残るサブゲノムプロモーター作用によって生じているのではないことを意味する。この作用様式は、ノーザンブロット、プライマー伸長分析(Current Protocols in Molecular Biology, Ed. By F. Ausubel et al., 1999, John Wiley & Sons)、5’RACE技術 (GibcoBRL, USA)などのような標準的分子生物学的方法により決定することができる。検出可能なサブゲノムプロモーター作用を示すが本質的には転写よりは翻訳配列として作動するIRES配列も我々の発明の対象であることは付け加える必要がある。その識別は、例えば、二つの型のmRNAの相対的量をノーザンブロット上で定量的に測定することにより、すなわち短いmRNAはsgPR作用が原因であり、長いmRNAはsgPR作用が原因ではない事から導かれる。もしIRES配列が残余ウイルスサブゲノムプロモーターとして本質的に作動しないならば、短mRNAに相当する相対的量は短および長mRNAの合計の20%以下、望ましくは10%以下そして最も望ましいのは5%以下でなければならない。このように我々は望ましい態様として、該遺伝子の発現が本質的に分子生物学の標準的方法により測定された時に該IRES配列の転写よりも翻訳の性質から引き出されるという条件付きで、発現される少なくとも一つの非ウイルス遺伝子を持ちそして該植物中の該遺伝子の翻訳に必要な少なくとも一つのIRES配列を持つかまたはコードする核酸を含む植物中において遺伝子の増幅をすることができるベクターを提供する。
【0165】
本発明の新規ベクターは植物の遺伝子修飾に新しい道を開くものである。最初の可能性として我々は植物の構造遺伝子の機能決定のために使用することを示す。これはゲノミクスにとって特に重要である。したがって、ゲノムが配列分析された植物は特に重要である。これは小規模(植物毎)な応用である。本発明のベクターは、目的の遺伝子の抑制及び/または遺伝子の過剰発現をして発見すべき遺伝子機能を強調した形で引き出すことができるので、この応用に高い有効性を示す。
【0166】
大規模な応用においてベクターを宿主植物中における特性の付加またはタンパクの生産のために使用することができる。ベクターによる植物の感染は非修飾植物を予め植えた農場において行なうことができる。これは最初に農場における植物の遺伝子修飾を可能にするので、これにより農民は望むタンパクまたは特性を生産するために種々の資源から種子及びベクターを選択することに関して最大の自由度を持てる。
【0167】
本発明の応用のために重要な植物種の例は、コムギ、トウモロコシ、コメ、オオムギ、エンバク、アワ、などの単子葉植物またはアブラナ種子、キャノーラ、サトウダイコン、ダイズ、エンドウマメ、アルファルファ、ワタ、ヒマワリ、ジャガイモ、トマト、タバコなどのような双子葉植物である。
【0168】
以下に、個別例をひいてさらに本発明を記述する。標準的分子生物学的技術はSambrook et al.(1989, Molecular Cloning: a Laboratory Manual. 2nd edn. Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York)に従って行なった。本発明に使用したプラスミドは全て当業者が容易に入手し得る原料を使用し、過度の実験を行なうことなく、明細書の指示に従って当事者により調製することが出来る。
【0169】
例1
アブラナ科植物に感染するトバモウイルスベクターの構築
アブラナ科植物全体に感染することができるアブラナ科トバモウイルス(crTMV)と呼ばれる既知トバモウイルスのビリオンはモザイク症状のあるOlearacia officinalis L.から単離した。TMV宿主範囲試験の結果を表1に示す。
【0170】
プラスミド構築
CrTMV cDNAはジデオキシヌクレオチド配列分析により分析した(Dorokhov et al., 1994 FEBS Letters 350, 5−8)。全長T7 RNAポリメラーゼプロモーター由来感染性crTMV cDNAクローンをオリゴヌクレオチドcrTMV1−Kpn 5’−gcatggtaccccttaatacgactcactataGTTTTAGTTTTATTGCAACAACAACAA、(この中でイタリック太字はKpnI部位の配列であり、下線付きの小文字はT7 RNAポリメラーゼプロモーターのヌクレオチド配列であり、大文字はcrTMV cDNAの5’−末端からのものである);及びcrTMV2 5’−gcatgcggccgcTGGGCCCCTACCCGGGGTTAGGG(下流)、(この中でイタリック太字はNotI部位であり、小文字はcrTMV cDNAの3’−末端からのものでありそしてpUC19のKpnI及びBamHI制限部位の間にクローニングする(図10))を使用してcrTMV RNAからRT−PCRにより得た。
【0171】
全長SP6 RNAポリメラーゼプロモーター由来感染性crTMV cDNAクローンはオリゴヌクレオチドcrTMV1−SP6 5’−gcatggtaccatttaggtgacactatagaactcGTTTTAGTTTTATTGCAACAACAACAA(上流)、(この中でイタリック太字はKpnI部位の配列であり、下線付き小文字はT7 RNAポリメラーゼプロモーターのヌクレオチド配列であり、大文字はcrTMV cDNAの5’−末端からのものである);及びcrTMV2 5’−gcatgcggccgcTGGGCCCCTACCCGGGGTTAGGG(下流)、(この中でイタリック太字はNotI部位であり、小文字はcrTMV cDNAの3’−末端からのものでありそしてpUC19のKpnI及びBamHI制限部位の間にクローニングする(図10))を使用してcrTMV RNAからRT−PCRにより得た。
【0172】
全長crTMV cDNAクローンはジデオキシヌクレオチド配列分析により分析した。crTMV感染性転写物のNicotiana及びアブラナ種に対する全体感染の能力はそれぞれNicotiana tabacum var. Samsun及びArabidopsis thalianaにおける感染試験により確認した。
Figure 2004536573
【0173】
例2
Nicotiana及びcrucifer植物におけるウイルスIRESによるGUS遺伝子発現用トバモウイルスベクターの構築
一連のIRES仲介発現ベクターT7/crTMV/GUSは以下のように構築した。最初に、Hind III及びXba I部位をT7/crTMVベクター(図10)のSac II/Not IフラグメントのCP遺伝子の末端にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び2対の特異的プライマーにより挿入した。二番目に、Skulachev et al. (1999, Virology 263, 139−154)に記述されているIRESMP,75 CR−GUS, IRESMP,75 UI−GUS, IRESMP,228 CR−GUS, IRESCP,148 CR−GUS, IRESCP,148 UI−GUS, PL−GUS cDNAを、T7/crTMVベクターのSac II/Not Iフラグメントを含むHind III及びXba Iに挿入し、Sac I−IRESMP,75 CR−GUS−Not I, Sac II−IRESMP,75 UI−GUS−Not I, Sac II−IRESMP,228 CR−GUS−Not I, Sac II−IRESCP,148 CR−GUS−Not I, Sac II−IRESCP,148 UI−GUS−Not I, Sac II−PL−GUS−Not I cDNAをそれぞれ得た。三番目に、T7/crTMVベクターのSac II−Not I cDNAフラグメントをSac I−IRESMP,75 CR−GUS−Not Iまたは Sac II−IRESMP,75 UI−GUS−Not Iまたは Sac II−IRESMP,228 CR−GUS−Not Iまたは Sac II−IRESCP,148 CR−GUS−Not Iまたは Sac II−IRESCP,148 UI−GUS−Not Iまたは Sac II−PL−GUS−Not I cDNAで置換し、それぞれベクターT7/crTMV/IRESMP,75 CR−GUS(図11),ベクターT7/crTMV/IRESMP,75 UI−GUS(図11),ベクターT7/crTMV/IRESMP,228 CR−GUS(図11),ベクターT7/crTMV/IRESCP,148 CR−GUS(図11), ベクターT7/crTMV/IRESCP,148 UI−GUS(図11)及びベクターT7/crTMV/PL−GUS(図11)を得た。
【0174】
例3
感染Nicotiana及びcrucifer植物におけるウイルスIRESによるGUS遺伝子の発現
この例はcrTMV由来ベクター:T7/crTMV/IRESMP,75 CR−GUS(図11),ベクターT7/crTMV/IRESMP,75 UI−GUS(図11),ベクターT7/crTMV/IRESMP,228 CR−GUS(図11),ベクターT7/crTMV/IRESCP,148 CR−GUS(図11), ベクターT7/crTMV/IRESCP,148 UI−GUS(図11)及びベクターT7/crTMV/PL−GUS(図11)、に感染したNicotiana benthamiana及びArabidopsis thaliana植物におけるGUS遺伝子のトバモウイルスIRES仲介発現を明示するものである。
【0175】
インビトロ転写
プラスミドT7/crTMV/IRESMP,75 CR−GUS(図11),ベクターT7/crTMV/IRESMP,75 UI−GUS(図11),ベクターT7/crTMV/IRESMP,228 CR−GUS(図11),ベクターT7/crTMV/IRESCP,148 CR−GUS(図11), ベクターT7/crTMV/IRESCP,148 UI−GUS(図11)及びベクターT7/crTMV/PL−GUS(図11)、をNot Iにより直線化した。組換えプラスミドをインビトロにおいてDawson et al. (1986, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83, 1832−1836)の記述のように転写した。RNA転写物のアガロースゲル電気泳動によりそれらが完全であることを確認した。RNA濃度はアガロースゲル電気泳動及び分光測定により定量化した。
【0176】
GUS検出
キャップのある全長転写物で感染した10−14日後に接種葉を採集した。IRES作用は既に記述されているように(Jefferson, 1987, Plant Molecular Biology Reporter 5, 387−405)GUS発現を組織化学的に検出することにより監視した。検体を比色分析用GUS基質を使用して検体を浸漬したが、反応中間生成物の核酸を制限するために方法(De Block and Debrouwer, 1992, Plant J. 2, 261−266)を改良した:5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロニド(X−Gluc)600μg/ml; 3 mMフェリシアンカリウム; 10 mM EDTAを含む0.115 Mリン酸緩衝液, pH 7.0。終夜37℃でインキュベートした後、葉を70%エタノール中で脱色しそして光学顕微鏡で検査した。
【0177】
例4
IRESMP,75 CRはMPサブゲノムプロモーターとしては機能しないが、TMV−感染植物中においてキャップ非依存内部開始翻訳によりMP遺伝子発現をもたらす。この例は目的の遺伝子のキャップ非依存発現のためのウイルスベクターに使用されたIRESMP,75 CRの可能性を確認する別の方法を使用する。
【0178】
CrTMV MPサブゲノムRNAは125−ntの長さの5’−非翻訳領域(5’NTR)を有しまた翻訳抑制ステムループ二次構造を含む。
TMV UI及び crTMV MPサブゲノムRNA (I sgRNA) 5’NTRの長さ及びヌクレオチド配列を決定するために、Lehto et al.(1990, Virology 174, 145−157)により記述されているプライマー伸長実験のプロトコールを次のように変更した:(i)AMV逆転写酵素(RT); (ii)RT反応45℃以下; (iii)GC−リッチプライマー; (iv)増加したdNTP濃度; (v)二次構造を回避するためのdITP。crTMV I sgRNAの5’UTR配列は125ヌクレオチドからなることが示された(図12)。この結果は直接5’UTR RT配列分析により確認された。図12Bは、crTMV 5’NTRが安定したヘアピン−ループ構造を含むことを示している。人工的転写物のMP遺伝子のすぐ上流に配置されることにより、インビトロにおけるMP遺伝子翻訳を抑制することができる(図13)。このことは、5’HI CR及びMP遺伝子の間に位置するIRESMP,75 CRは有効な翻訳のキャップ非依存内部開始を生じることができることを意味する。図14は、5’HI CR及び理論的翻訳抑制ヘアピン−ループ構造の同族体がその他のトバモウイルスのMP遺伝子の上流125−nt配列中に認められることを示している。
【0179】
CrTMV及びTMV UI MPサブゲノムRNAはキャップがない。
crTMVの30K移動タンパク(MP)遺伝子をコードするサブゲノムRNAの5’−末端の構造を調べるために、活性モチーフによって与えられる”Jump−Start”法を使用した。Jump−StartTMはRNAタグを特異的にキャップされたmRNAの5’末端に化学的に結合する方法である。逆転写の間に、既知配列のリボ−オリゴヌクレオチドタグは第一鎖cDNAの3’−末端に組込まれる。これはPCRに適する既知開始部位を創る。
【0180】
初めに、キャップされたRNAの5’−末端2’−3’−シス−グリコール基を過ヨウ素酸ナトリウム酸化により反応性のジアルデヒドに変換した。被検RNA(1μg/μl)の1−2μlを14μlの純水及び1μlの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)と混合し、次いで4μlの0.1 M過ヨウ素酸ナトリウムを加え、そして反応混合物を1時間インキュベートした。
【0181】
次いで、3’−アミノアルキル化合成リボ−オリゴヌクレオチドタグをナトリウムシアノボロヒドリドの存在下に還元的アミノ化により酸化RNAのジアルデヒド末端に化学的に結合した。5μlの次亜リン酸ナトリウムを加えそして反応混合物を10分間インキュベートした。次いで23μlの水、1μlの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)及び2μlのリボ−オリゴヌクレオチドタグ 5’−CTAATACGACTCACTATAGGG(28.5 pmol/μl)を反応混合物に加えそして15分間インキュベートした。次いで10μlのナトリウムシアノボロヒドリドを加えそして2時間インキュベートした。次いで400μlの2%過塩素酸リチウム/アセトンを加え、15分間−20℃でインキュベートし、そして5分間遠心分離した。ペレットをアセトンで2回洗い、次いで20μlの水に溶解した。
【0182】
過剰のRNAタグを除くために、0.3 M NaClの存在下にCTAB沈殿を使用した。CTABは強いカチオン界面活性剤であり、核酸と結合して不溶性複合体を形成する。複合体形成は塩濃度に影響される:塩濃度が1 M以上であれば複合体は形成されない;0.2 M以下であれば、全ての核酸は複合体中に含まれる;そして0.3 Mから0.4 Mの間であれば、小さな1本鎖核酸の複合体への取り込みは非常に効率が悪い(Belyavsky et al., 1989, Nucleic Acids Res. 25, 2919−2932; Bertioli et al., 1994, Bio Techniques 16, 1054−1058)。10μlの1.2 M NaCl(最終濃度0.4 M)及び3μlの10%CTAB(最終濃度1%)を加え、反応混合物を15分間室温でインキュベートし、次いで5分間遠心分離した。ペレットを10μlのNaClに懸濁し、20μlの水及び3μl 10%CTABを加えそして反応混合物を15分間室温でインキュベートし、次いで5分間遠心分離した。ペレットを30μlの1.2 M NaCl、80μlの96%エタノールを加え、そして反応混合物を終夜−20℃でインキュベートした。次いで5分間遠心分離し、70%エタノールで洗った。次いでタグ付きRNAのペレットを24μlの水に溶解した。
【0183】
最後に、3’−特異的プライマーを逆転写することにより第一鎖cDNAの3’−末端に5’−タグの組み込みが生じる。逆転写には、12μlのタグ付きRNA、1μlの特異的3’−末端プライマー、250 mM Tris−HCl (pH 8.3), 375 mM KCl, 15 mM MgClを含む5x SuperScriptTMII(Gibco BRL Life Technologies)用緩衝液の4μlを混合し、30秒間95℃に加熱し、次いで氷上で冷却した。次いでこの反応混合物に0.5μlのDTT(最終濃度1 mM)、2μlの10 mM dNTP、0.5μlのRNAsine、0.5μlのSuperScriptTMIIを加えて1時間42℃でインキュベートした。次いで1μlの40 mM MnClを加えて、反応混合物を15分間42℃でインキュベートした。反応混合物中にMnClが存在することにより逆転写の際にSuperScriptTMがキャップ構造をより効率よく乗り越えることを可能にする:3 mM MgCl及び 2 mM MnClを使用した場合には、逆転写酵素は異常に高いキャップ依存転位酵素活性を現すことが示され、そして典型的にこの酵素は5’−キャップmRNA鋳型の存在下に優先的に3または4個のシトシン残基を追加した(Chenchik et al., 1998, Gene cloning and analysis by RT−PCR, edited by Paul Siebert and James Larrick, Bio Techniques Books, Natick, MA; Schmidt and Mueller, 1999, Nucleic Acids Res. 27, 331)。
【0184】
PCR反応には、2セットのプライマーを各被検RNA−3’−特異的/5’−特異的プライマー及び3’−特異的/タグ−特異的プライマーに使用した(図15)。
【0185】
既知タグ配列を持つRNAを特異的にウイルスRNAのキャップ構造に化学的に結合する方法を使用し得るか否かを調べるために、キャップがあることが既知である(Dunigan and Zaitlin, 1990, J. Biol. Chem. 265, 7779−7786)タバコモザイクウイルス(TMV)U1株のゲノムRNAを対照として使用した。特異的プライマー、U1−Spn及びRNA−タグに対応するプライマー779をPCR反応に使用した場合に、それぞれのPCRバンドが検出された(表2、図16)。
Figure 2004536573
【0186】
対照として、TMV(U1)の完全cDNAクローンのキャップの無いRNA−転写物を使用して、キャップ構造は予想通り認められなかった(表2、図16)。
【0187】
次いでcrTMVのゲノムRNAの5’−末端におけるキャップ構造の存在を調べた。この実験に、特異的PCRプライマーK5,2PM及びRNA−タグに対応するプライマー779が選ばれた(表1、図16)。興味あることに、プライマー779及び2PMによって認められたPCRバンドは予想より高かった(図16)。これはcrTMVのゲノムRNAの5’−末端における強い二次構造の存在を反映するものであろう(Dorokhov et al., 1994, FEBS Letters 350, 5−8)。この二次構造は関連TMVの5’−末端部分には存在しない(Goelet at al., 1982, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79, 5818−5822)。TMVの完全cDNAクローンのキャップの無い転写物を用いた対照実験では、予想通り、相当するPCRバンドは認められなかった。
【0188】
TMV(U1)MP遺伝子をコードするサブゲノムRNAに対して、5’−末端のキャップ構造が無いことを提案した。我々はそれぞれのsgRNAを特異的プライマー2211,UM50−54及びRNA−タグに対応するプライマー779を用いて試験した。キャップ構造は認められなかった(表2、図16)。
【0189】
このトバモウイルスのサブゲノムRNAの5’−末端にはキャップ構造が存在しないことを示す同じ結果がcrTMVそれぞれのサブゲノムRNA(表2、図16)について得られた。
【0190】
MP遺伝子発現ができないTMV U1由来ベクターKK6にIRESMP,75 CRを挿入することにより有効なキャップ非依存MP遺伝子発現を生じる。
KK6ベクター(Lehto et al., 1990, Virology 174, 145−157)は2個のCPサブゲノムプロモーター(sgPr)を含んでいる。第一のCP sgPr−1は適当な場所、CP遺伝子の上流にあるが、第二のCP sgPr−2はMP遺伝子の上流に存在する。MP遺伝子は固有のMP sgPrでなくCP sgPr−2によって発現することが示されている。この挿入の結果として、KK6は効率の良い細胞間移動の能力を失う。分析の結果ではI sgRNAは5’−非翻訳リーダー中にIRESMP,75 CR配列を含んでいない。IRESMP,75 CRを失ったKK6 I sgRNAはMP遺伝子を効率よく発現することはできないといわれていた。このことを確かめるために、IRESMP,75 CRをKK6のCP sgPr−2及びMP遺伝子の間に挿入し、我々は後代中において安定なKK6− IRESMP,75を得ることができた(図17)。KK6− IRESMP,75はcrTMV IRESMP,75を含むI sgRNAの合成を生じることが示された(図18)。
【0191】
KK6− IRESMP,75 sgRNAの開始はKK6と比較して変わらないことが認められ、このことはIRESMP,75がMP sgPrとして働いていないことを意味する。
【0192】
この挿入は細胞間移動を劇的に改善する。KK6はSamsun植物全体に感染するが、最初の症状は野生型TMV(TMV304)(約7日)に比較してゆっくり(15−17日)生じる。KK6感染植物の上部葉の症状は異なっている:野生型TMVによって生じるモザイク症状に対して黄色斑点。
【0193】
KK6ウイルスの後継者は野生型TMV UIにより誘導される病気よりも遅く発症する多くの病気をN. glutinosaに生じる。KK6により誘発される局所症状の平均的大きさは、TMV UI(1.1mm)により誘発されるものに比較して、約0.1 mmである。
【0194】
KK6− IRESMP,75を接種した植物はKK6感染Samsun植物に似ているが:(i)最初の全体的症状はより速やかに(約10日)発生しそして(ii)黄色斑点及びモザイクを含めて非常に明るい。KK6とは逆にN. glutinosaにおけるK86により誘発された局所症状の平均的大きさは0.6−0.7 mmに増加した。MP蓄積の時間経過を調べたところ、KK6− IRESMP75 MPは接種葉においてKK6 MPよりも早期に検出されることが認められた(図19)。これらの結果から、KK6 MP遺伝子の上流にIRESMP75 CRを挿入することにより細胞間及び長距離輸送に関してKK6が失った移動性を部分的に回復すると結論することができる。
【0195】
TMV cDNAベクターのキャップ非依存MP遺伝子発現及びトバモウイルスの生命循環におけるIRESの本質的役割のその他の証拠を得るために、一連の追加のKK6由来ベクターを構築した(図17)。KK6− IRESMP125は天然ヘアピン構造を有し、これはI sgRNAのWT crTMV 5’リーダー(図13)及びIRESMP75 の存在下にインビトロにおけるMP遺伝子の翻訳を抑制することができる。KK6−H−PLは天然ヘアピン構造及び72−nt人工的ポリリンカー配列を含んでいる。KK6−PLはポリリンカー領域のみを含んでいる。Nicotiana tabacum cv. Samsun植物(全体宿主)における試験結果を表3に示す。
【0196】
図20はKK6由来ベクターに感染したタバコ葉におけるCP蓄積を試験したウエスタンブロットの結果を示す。IRESMP75 CRを機能の無いPL−配列で置換するとベクターの増幅は劇的に阻害された。
Figure 2004536573
【0197】
例5
サブゲノムプロモーター作用の無い人工的、非天然IRES配列の創製により真核細胞中において目的の遺伝子のキャップ非依存発現を生じる。
この例の目的は、真核細胞中において目的遺伝子のキャップ非依存発現を生じる、サブゲノムプロモーター作用の無い人工的、非天然IRES配列を創製する方法を示すことである。
【0198】
IRESMP,75 CRの18−nt部分に基づく人工的、非天然IRES配列の構築
IRESMP,75 CR核酸配列の分析により、多量体構造をとりそして配列(−72)GUUUGCUUUUUG(−61)の変形である4個のヌクレオチド配列を含みそしてA. thaliana 18S rRNAに高度な相補性を有している(図21)。人工的、非天然IRESを設計するために、18−nt配列CGUUUGCUUUUUGUAGUAを選択した。
【0199】
4個のオリゴを合成した:
MP1(+):
5’−CGCGCAAGCTTTGCTTTTTGTAGTACGTTTGCTTTTTGTAGTACTGCAGGCGGG−3’
MP1(−):
5’−CCCGCCTGCAGTACTACAAAAAGCAAACGTACTACAAAAAGCAAAGCTTGCGCG−3’
MP2(+):
5’−GGCGGCTGCAGTTTGCTTTTTGTAGTACGTTTGCTTTTTGTAGTAGAATTCGG−GC−3’
MP2(−):
5’−GCCCGAATTCTACTACAAAAAGCAAACGTACTACAAAAAGCAAACTGCAGCCG−CC−3’
【0200】
プライマーMP1(+)及びMP1(−)は相互にアニール処理し、dsDNAフラグメントAを生成した:
CGCGCAAGCTTTGCTTTTTGTAGTACGTTTGCTTTTTGTAGTACTGCAGGCGGGGCGCGTTCGAAACGAAAAACATCATGCAAACGAAAAACATCATGACGTCCGCCC
HindIII PstI
【0201】
プライマーMP2(+)及びMP2(−)は相互にアニールし、dsDNAフラグメントBを生成した:
GGCGGCTGCAGTTTGCTTTTTGTAGTACGTTTGCTTTTTGTAGTAGAATTCGGGCCCGCCGACGTCAAACGAAAAACATCATGCAAACGAAAAACATCATCTTAAGCCCG
PstI EcoRI
【0202】
両フラグメントをPstIで消化し、そして相互に結合した。次いで結合生成物A+Bをアガロース電気泳動を使用して抽出し、HindIII及びEcoRIで消化し次いでSkulachev et al.(1999, Virology 263, 139−154)により記述されているhGFP−GUSベクターにHindIII及びEcoRIクローニング部位を使用して結合した(図22)。
【0203】
結果
図22に示した転写物をウサギ網状赤血球分解物(RRL)中でSkulachev et al.(1999, Virology 263, 139−154)により記述されているように翻訳し、そして合成生成物をゲル電気泳動により分析した。図22に示した結果は、IRESMP,75 CRの18−nt部分に基づく人工的、非天然配列は3’−近位局在GUS遺伝子発現を生じることを示している。これは、二つの特徴、つまり18S rRNAに対する相補性及び多量体構造がIRESMP,75 CRの機能及び有効性に必須であることを意味している。
【0204】
18−nt部分の4量体はIRESMP,75 CRの活性レベルには達しないが、人工的、非天然IRES配列の活性を18S rRNAに相補的な12−nt部分GCUUGCUUUGAGを使用して改良する方法がある。
【0205】
IRESCP,148 CRの19−nt部分を使用する人工的、非天然IRESの構築
IRESCP,148 CRの活性に必須な構造配列の分析により(図23−26)、ポリプリン(PP)部分がIRESCP,148 CRの機能に決定的であることが示された。PP地区の重要な配列として、19−nt配列:5’−AAAAGAAGGAAAAGAAGG中の9−nt直列反復(直列反復(DR)と呼ばれる)を人工的IRESの構築に使用した。DRの4量体を得るために以下のプライマーを使用した:
CP1(+):
5’−CGCGCAAGCTTAAAAGAAGGAAAAAGAAGGAAAAGAAGGAAAAAGAAGGCT−GCAGGCGGG−3’
CP1(−):
5’−CCCGCCTGCAGCCTTCTTTTTCCTTCTTTTCCTTCTTTTTCCTTCTTTTAAGCT−TGCGCG−3’
CP2(+):
5’−GGCGGCTGCAGAAAAGAAGGAAAAAGAAGGAAAAGAAGGAAAAAGAAGGAA−TTCGGGC−3’
CP2(−)
5’−GCCCGAATTCCTTCTTTTTCCTTCTTTTCCTTCTTTTTCCTTCTTTTCTGCAGC−CGCC−3’
【0206】
上記の実験方法に従って、次のIRES配列をシストロン間スペーサーとして使用した:
5’−CGCGCAAGCUUAAAAGAAGGAAAAAGAAGGAAAAGAAGGAAAAAGAAGGCU−GCAGAAAAGAAGGAAAAAGAAGGAAAAGAAGGAAAAAGAAGGAAUUCAUG−3’
【0207】
結果
図22に示した転写物をウサギ網状赤血球分解物(RRL)中でSkulachev et al.(1999, Virology 263, 139−154)により記述されているように翻訳し、そして合成生成物をゲル電気泳動により分析した。図22に示した結果はIRESCP,148 CRの反復19−nt部分に基づく人工的、非天然配列は3’−近位に局在するGUS遺伝子の効率の良い発現を生じることを示している。
【0208】
例6
キャップ非依存様式により感染細胞中においてレプリカーゼ遺伝子を発現するTMV cDNA転写ベクターの構築
この例の主要な目的はキャップ非依存様式によりレプリカーゼ遺伝子を発現させる修飾5’UTRを有する2個の新規TMV U1由来ウイルスを得ることである:
1)TMVのオメガ−リーダーを完全にIRESMP,75 CRで置換する
GUUCGUUUCGUUUUUGUAGUAUAAUUAAAUAUUUGUCAGAUAAGAGAUUGGUUAGAGAUUUGUUCUUUGUUUGACCAUG
2)TMV 5’UTRの最初の8ヌクレオチドはウイルス複製に必須であると考えられているので(Watanabe et al., 1996, J. Gen. Virol. 77, 2353−2357)、IRESMP,75 CRを最初の8ヌクレオチドを完全に残したTMVに挿入した:
GUAUUUUUGUAGUAUAAUUAAAUAUUUGUCAGAUAAGAGAUUGGUUAGAGAUUUGUUCUUUGUUUGACCAUG
【0209】
次のプライマーを使用した:
a)SP6−IRES−1(最初の変異体の場合)
XbaI SP6プロモーター IRESMP,75 CR
GGGTCTAGATTTAGGTGACACTATAGTTCGTTTCGTTTTTGTAGTA
b)SP6−IRES−2(二番目の変異体の場合)
XbaI SP6プロモーター IRESMP,75 CR
GGGTCTAGATTTAGGTGACACTATAGTATTTTTGTAGTATAATTAAATATTTGTC
c)IRES−NcoI(3’末端にNcoI部位を持つIRESを得るための逆プライマー)
GGGCCATGGTCAAACAAAGAACAAATCTCTAAAC
d)TMV−NcoI(NcoI部位から開始する、TMVポリメラーゼを得るための直列プライマー)
NcoI
GGGCCATGGCATACACACAGACAGCTAC
e)TMV−Xho(AUGからSphI部位までのレプリカーゼの5’−部分を得るための逆プライマー)
XhoI
ATGTCTCGAGCGTCCAGGTTGGGC
【0210】
クローニング方法:
PCRフラグメントAは鋳型としてオリゴSP6−IRES1及びIRES−NcoI及びcrTMVクローンを使用して得た。PCRフラグメントBはオリゴTMV−NcoI及びTMV−XhoI及びTMV−304Lクローンを使用して得た。フラグメントA及びBを同時にpBluscriptSK+ベクター中にXbaI及びXhoI部位を使用してクローニングした(フラグメントはNcoI部位を介して共に結合された)。同じ方法をSP6−IRES2オリゴを使用して第二のウイルス変異体を得るために応用した。
次の段階において、ウイルスゲノムを復元するために全TMV cDNAを得られたベクター中にSphI及びKpnI部位を使用してクローニングした(図27)。
【0211】
例7
アクチン2転写プロモーターに基づくトバモウイルスベクターAct2/crTMV及びAct2/crTMV IRESMP,75 CR−GUSの構築
この例の主要な目的は新規crTMV由来ベクターの構築方法を示すことであり、これによる植物細胞中のウイルスゲノム発現は有効なアクチン2転写プロモーターの調節下に生じる。植物中における遺伝子発現にベクターAct2/crTMV/IRESMP,75 CR−GUSを使用することができる。
【0212】
pUC19中へAct2のクローニング
Act2転写プロモーター(約1000 bp)をKpnI及びPstにより消化してプラスミドpACRS029から切り出し、KpnI及びPstIで消化したpUC19中にクローニングした。
【0213】
プラスミドT7/crTMV(図10参照)のcrTMVゲノム開始の上流にPstI部位の創製
直列プライマー ATGCTGCAGGTTTTAGTTTTATTGCAACAACAA(PstI部位は下線付き)及び逆プライマー ATGCGATCGAAGCCACCGGCCAAGGAGTGCA(PvuI部位は下線付き)を使用するPCRにより得られたcrTMVゲノムの5’−末端部分の334−nt cDNAフラグメントをPvuI及びPstIで消化し、そしてcrTMVゲノムの部分(PvuI−SpeIフラグメント)と共にpUC19Act2中に挿入した。
【0214】
最終構築と共にゲノムの残部のクローニング
構築を含むAct2をKpnI/SpeIで消化した後プラスミドT7/crtMV中に挿入した。
【0215】
追加の配列の無いcrTMV 5’−末端のAct2転写開始への融合
この段階はAct2及びcrTMVに特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して部位指向性突然変異誘起により行ない、最終構築Act2/crTMVを得た(図28)。
【0216】
ベクターAct/crTMV/IRESMP,75 CR−GUS(図28)を得るために、Act2/crTMV(図28)のSpeI−NotI cDNAフラグメントを、IRESMP,75 CRの調節を受けるGUS遺伝子を含むT7/crTMV/IRESMP,75 CR−GUS構築(図11)のSpeI−NotI DNAフラグメントにより置換した。
【0217】
例8
環状1本鎖トバモウイルスベクターKS/Act2/crTMV/IRESMP,75 CR−GUS(図30)の構築
この例の主要な目的は植物における外来遺伝子の発現に環状1本鎖DNAベクターを使用し得ることを示すことにある。
【0218】
KS/crTMV/IRESMP,75 CR−GUS(図30)を構築するために、ベクターAct2/crTMV/I RESMP,75 CR−GUSの9.2 kb KpnI−NotI cDNAフラグメントをKpnI−SalIで消化し、ファージf1複製起点を含むプラスミドpBluescriptII KS+(Stratagene)に挿入した。ベクターKS/Act2/crTMV/IRESMP,75 CR−GUSの一本鎖DNAはSambrook et al., 1989 (Molecular Cloning: a Laboratory Manual, 2nd edn. Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York)に従って調製した。
【0219】
例9
Arabidopsis thalianaのオレオシンイントロンを含むトバモウイルスベクターKS/Act2/crTMV−Int/IRESMP,75 CR−GUSの構築
この例の主要な目的は、転写操作の後に除去されるArabidopsis thalianaのオレオシン遺伝子イントロンを含むベクターKS/Act2/crTMV/IRESMP,75 CR−GUSを創製することである(図31)。
【0220】
クローニン方法は以下の段階を含む:
1. A. thalianaオレオシン遺伝子イントロンのクローニング。
A. thalianaオレオシン遺伝子イントロンはA. thalianaゲノムDNA及び特異的プライマー:A. th./Int(直列)ATGCTGCAGgttttagttCAGTAAGCACACATTTATCATC(PstI部位は下線付き、小文字はcrTMV 5’末端配列を表す)及びA. th./Int(逆)ATGAGGCCTGGTGCTCTCCCGTTGCGTACCTA(StuIは下線付き)を使用するPCRにより得た。
【0221】
2. A. thalianaオレオシン遺伝子イントロンのcrTMV cDNAの334−nt 5’−末端フラグメントへの挿入。
A. thalianaオレオシン遺伝子イントロンを含むcDNAをPstI/StuIで消化しそしてcrTMVゲノムの10−334位置に対応するプライマーを使用するPCRにより得たDNAフラグメントと結合した:atgAGGCCTTTATTGCAACAACAACAACAAATTA(StuI部位は下線付き)及びATGCGATCGAAGCCACCGGCCAAGGAGTGCA(PvuI部位は下線付き)。
次の段階は例7に記述した通り。
【0222】
例10
ビシストロン性転写ベクター、35S/CP/IRESMP,75 CR/GUS(図32)及び35S/GUS/IRESMP,75 CR/CP(図33)を含むIRESMP,75 CRを遺伝子導入したタバコプロトプラストにおけるGUS遺伝子の発現に対するキャップ依存翻訳開始抑制薬としてのラパマイシンの影響
この例の目的は、目的の遺伝子のIRES仲介キャップ非依存翻訳の効率を増加させるためにキャップ依存翻訳の抑制薬が原理的に使用できることを示すことにある。
【0223】
キャップ依存翻訳開始の抑制薬としてラパマイシンを選択した。最近、4E−BP1(elF−4E結合タンパク1)またはPHAS−1と命名された、キャップ仲介翻訳の新規リプレッサーが検討されている(Lin et al., 1994, Science 266, 653−656; Pause et al., Nature 371, 762−767)。4E−BP1は熱及び酸に安定なタンパクであり、その活性はリン酸化により調節されている(Lin et al., 1994, Science 266, 653−656; Pause et al., Nature 371, 762−767)。4EBP1とelF−4Eの相互作用は、インビトロ及びインビボのいずれにおいても、キャップ依存翻訳の特異的抑制を生じる(Pause et al., Nature 371, 762−767)。ラパマイシンは脱リン酸化及び続く4E−BP1の活性化を誘導することが示されている(Beretta et al., 1996, EMBO J. 15, 658−664)。
【0224】
IRES−及びGUS遺伝子−含有ベクター35S/CP/IRESMP,75 CR/GUS(図32)、35S/GUS/IRESMP,75 CR/CP(図33)構築及びタバコプロトプラストへ35S由来cDNAの遺伝子導入はSkulachev et al.(1999, Virology 263, 139−154)によって記述されている。ラパマイシン処理及び3’−及び5’−近位局在GUS遺伝を持つビシストロン性cDNAを遺伝子導入したタバコプロトプラストにおいてGUS遺伝子発現を比較したところ、GUS遺伝子のIRES仲介キャップ非依存翻訳を増加する可能性を示している。
【0225】
例11
ビシストロン性転写ベクター、35S/CP/IRESMP,75 CR/GUS(図32)及び35S/CP−VPg/IRESMP,75 CR/GUSを含むIRESMP,75 CRを遺伝子導入したタバコプロトプラストにおけるGUS遺伝子の発現に対するキャップ依存翻訳開始抑制薬としてのポチウイルスVPgの影響
この例はキャップ依存翻訳を抑制するために遺伝子産物が原理的に使用できることを示す(図34)。最近、カブモザイクポチウイルス(TuMV)のゲノム(VPg)に結合したウイルスタンパクとArabidopsis thalianaの真核翻訳抑制因子elF(iso)4Eの相互作用が報告された(Wittman et al., 1997, Virology 234, 84−92)。VPgの相互作用は35アミノ酸の範囲にマップされそしてこの領域内のアスパラギン酸残基の置換は相互作用を完全に消失する。mGTP、GTPではない、類似のキャップ構造はVPg−elF(iso)4E複合体形成を抑制し、VPg及び細胞性mRNAはelF(iso)4E結合を競合していることを示している(Leonard et al., 2000, J. Virology 74, 7730−7737)。
【0226】
VPgのelF(iso)4Eに結合する能力をキャップ依存翻訳の抑制に使用することができる。我々はCPがポチウイルスポテトウイルスAのVPgと融合しているベクター35S/CP−VPg/IRESMP,75 CR/GUS(図34)を使用することを提案する。35S/CP−VPg/IRESMP,75 CR/GUSまたは35S/CP/IRESMP,75 CR/GUSを導入されたプロトプラストにおけるGUS遺伝子の発現を比較すると、IRESに仲介されそしてキャップ非依存GUS遺伝子発現を増加させることができるであろう。
【0227】
例12
IRES配列またはTMVベクターに使用するサブゲノムプロモーターのインビボ遺伝子選択
この実験は、サブゲノムプロモーターまたはウイルスベクター中の目的の遺伝子のキャップ非依存発現を生じるIRES配列のインビボ遺伝子選択または対数濃縮によるリガンドの系統的発生(SELEX)を使用できることを示す。この方法は多数のランダム配列の並列選択並びに配列発生を使用するものである(Ellington and Szostak, 1990, Nature 346, 818−822; Tuerk and Gold, 1990, Science 249, 505−510; Carpenter and Simon, 1998, Nucleic Acids Res. 26, 2426−2432)。
【0228】
このプロジェクトは以下を包含する:
下記配列を含むcrTMV由来欠陥干渉性(DI)転写物のインビトロ合成(5’ から3’方向);(i)T7転写プロモーター、(ii)ウイルスゲノム相補性(マイナス鎖)合成に必要な配列を持つcrTMVゲノムの5’−末端部分、(iii)ウイルスレプリカーゼのN−末端部分、(iv)75−ntランダム化塩基を含む配列、(v)ネオマイシンリン酸転移酵素II(NPT II)遺伝子、(vi)集合のcrTMV起点(Oa)、及び(vii)マイナス鎖ゲノムプロモーター配列を持つcrTMVゲノムの3’−末端部分(図35)。
【0229】
crTMVゲノムRNAと共に転写物によりタバコプロトプラストを共遺伝子導入(図10)。プロトプラストは成長し、カナマイシンを含む培地中で再生する。カナマイシン存在下にプロトプラストの生存及び再生を生じるIRESまたはサブゲノムプロモーターを選択及び単離。
【0230】
付属文書B
遺伝子導入植物を作製するための方法及びベクター
発明の分野
本発明は遺伝子導入植物並びにそれによって得られる植物細胞を作製するための方法及びベクターに関するものである。
【0231】
発明の背景
導入遺伝子の望ましいそして安定した遺伝パターンを達成するには植物バイオテクノロジー上一つの大きな問題が残されている。標準的方法はベクター中に完全に独立した転写単位の部分として導入遺伝子を導入することであり、この場合導入遺伝子は植物特異的異種または同種プロモーター及び転写終結配列の転写調節の下にある(例えば、US 05,591,605; US 05,977,441; WO 0053762A2; US 05,352,605など参照)。しかし、ゲノムDNA中に組込んだ後に、植物ゲノムDNA中に外来DNAをランダムに挿入するために、その転写ベクターからの遺伝子発現は多くの異なる宿主因子による影響を受けるようになる。これらの因子は導入遺伝子発現を不安定化し、予想し難くし、そしてしばしば後継者における導入遺伝子不活性化を生じる(Matzke & Matzke, 2000, Plant Mol Biol., 43, 401−415; S.B. Gelvin, 1998, Curr. Opin. Biotechnol., 9, 227−232; Vaucheret et al., 1998, Plant J., 16, 651−659)。植物における導入遺伝子不活化の例は詳細に文書化されており、転写時(TGS)及び転写後遺伝子不活化(PTGS)の段階がある。最近の知見は、TGSにおけるメチル化及びクロマチン構造及びPTGSにおけるRNA依存RNAポリメラーゼ及びヌクレアーゼの必要性の間に密接な関係があることを明らかにしている(Meyer, P., 2000, Plant Mol. Biol., 43, 221−234; Ding, S.W., 2000, Curr. Opin. Biotechnol., 11, 152−156; Iyer et al., Plant Mol. Biol., 2000, 43, 323−346)。例えば、TGSにおいて、導入遺伝子のプロモーターは往々にして安定した導入遺伝子発現には好ましくないクロマチン構造を持つ多数の組み込み部位にメチル化を行なう。結果として、既存方法を実施するには、これらが目的とする安定した発現パターンを持つことを確認するために多数の遺伝子導入植物を作製し数世代に亘って分析を行なう必要がある。さらに、数世代に亘って安定した導入遺伝子発現パターンを表す植物であってもストレスまたは病原体攻撃のような自然発生条件によりその後不活化することがある。転写単位を挟むスカフォールド付着領域(Allen, G.C., 1996, Plant Cell, 8, 899−913; Clapham, D., 1995, J. Exp. Bot., 46, 655−662; Allen, G.C., 1993, Plant Cell, 5, 603−613)の使用のような、発現調節の改良を目的とした既存方法は所謂「位置効果変異」の影響を減少することにより導入遺伝子の独立性及び安定性を増加させる可能性がある(Matzke & Matzke, 1998, Curr. Opin. Plant Biol., 1,142−148; S.B. Gelvin, 1998, Curr. Opin. Biotechnol., 9, 227−232; WO 9844 139 A1; WO 006757 A1; EP 1005 560 A1; AU 00,018,331 A1)。しかし、それらは導入遺伝子の必要な発現パターンを持つ植物を設計するのに存在する問題の部分的解決を提供するに過ぎない。
【0232】
遺伝子不活化はウイルスに感染した植物による植物防御機構として生じることがある(Ratcliff et ala., 1997, Science, 276, 1558−1560; Al−Kaff et al., 1998, Science, 279, 2113−2115)。遺伝子導入をしていない植物においては、そのような不活化は病原体に向けられるが、遺伝子導入植物においては、特に導入遺伝子が病原体と類似性を持つ場合には、導入遺伝子を不活化することがある。特に転写ベクターの設計にウイルス起源の多数の配列が使用する場合に、これが問題となる。代表的な例はAl−Kaff及び共同研究者による最近の発表がある(Al−Kaff et al., 2000, Nature Biotech., 18, 995−999)、彼らは遺伝子導入植物のCaMV(カリフラワーモザイクウイルス)感染はCaMV由来35Sプロモーターの調節下にあるBAR遺伝子を不活化することを示した。
【0233】
この数年間に、シス調節配列のセットは著しく増加し、そして現在導入遺伝子の精巧な空間的及び時間的調節の道具になっている。これらは種々のプロモーター及び転写ターミネーターのようないくつかの転写配列並びに遺伝子発現の翻訳調節配列/エンハンサーである。一般的に、翻訳エンハンサーは、細胞性トランス作動性因子と共同して、mRNAの翻訳を促進するシス作動性配列として定義することができる。真核細胞における翻訳は一般的にキャップされたmRNAの5’末端からリボゾーム走査により開始される。しかし、翻訳の開始はキャップ構造に依存しない機構によっても生じることがある。この場合に、リボソームは内部リボソーム侵入部位(IRES)配列により翻訳開始コドンに導かれる。最初ピコルナウイルスにおいて発見された(Jackson & Kaminski, 1995, RNA, 1, 985−1000)この配列は他のウイルスにおいても同定され、そして細胞性真核mRNAであった。IRESはシス作動性配列であり、他の細胞性トランス作動性因子と共にmRNAの内部開始コドンにおいてリボソーム複合体の集合を促進する。このIRES配列の特徴は、動物または昆虫細胞におけるポリシストロン性転写単位から2以上のタンパクを発現させるベクターにおいて利用されてきた。現在では、それらは動物系のビシストロン性発現ベクターに広く使用されており、その中で第一遺伝子はキャップ依存様式で翻訳され、そして第二遺伝子はIRES配列の調節下に翻訳される(Mountford & Smith, 1995, Trends Genet., 4, 179−184; Martines−Salas, 1999, Curr Opin Biotech., 19, 458−464)。通常IRESの調節下における遺伝子の発現は著しく変動し、第一遺伝子のキャップ依存発現に比較して6−100%の範囲内である(Mizuguchi et al., 2000, Mol. Ther., 1, 376−382)。これらの知見はIRESの使用に関して重要な意味がある、例えば、ビシストロン性ベクターにおける第一遺伝子としていずれの遺伝子を使用すべきか決める場合に。発現ベクター中にIRESが存在することにより、正常な条件の下のみならず、キャップ依存翻訳が抑制されているような条件の下においても、選択的翻訳を生じる。これは通常ストレス条件下(ウイルス感染、熱ショック、成長抑制、など)に、正常ではトランス作動性因子が存在しないために、起こる(Johannes & Sarnow, 1998, RNA, 4, 1500−1513; Sonenberg & Gingras, 1998, Cur. Opin. Cell Biol., 10, 268−275)。
【0234】
翻訳に基づくベクターは最近動物細胞系を使用している研究者の注目を引いている。マウスのcre組換え酵素の組織特異的発現をするためのIRES−Cre組換え酵素カセットの使用に関係する一報告がある(Michael et al., 1999, Mech. Dev., 85, 35−47)。この研究では、新規IRES−Creカセットを、発生の早期に発現するタンパクチロシンキナーゼのEph受容体をコードするEphA2遺伝子のエクソン配列中に導入した。宿主DNAの転写調節に依存する動物細胞における導入遺伝子の組織特異的発現のために翻訳ベクターを使用することを最初に示したものであるので、この研究は特に関心がある。その他の重要なIRESの応用例は挿入突然変異誘起のためのベクターに使用したものである。そのベクターにおいて、レポーターまたは選択マーカー遺伝子はIRES配列の調節下にあり、そしてそれを転写活性遺伝子の転写領域内に挿入した時にのみ発現することができる(Zambrowich et al., 1998, Nature, 392, 608−611; Araki et al., 1999, Cell Mol. Biol., 45, 737−750)。しかし、動物系においてIRESの応用に関して進歩があったが、これらの系のIRES配列は植物細胞中では機能しない。さらに、植物細胞における部位指定または相同組換えは極めて稀であり、実用性がないので、植物細胞での類似の方法は考えられない。
【0235】
植物特異的IRES配列に関するデータは極めて少ない。しかし、最近植物においても活性があるIRESがいくつかトバモウイルスcrTMV(Cruciferae植物に感染するTMVウイルス)の中に発見され(Ivanov et al, 1997, Virology, 232, 32−43; Skulachev et al., 1999, Virology, 263, 139−154; WO 98/54342)、そして他の植物ウイルスにおけるIRES翻訳調節が示されている(Hefferon et al., 1997, J. Gen Virol., 78, 3051−3059; Niepel & Gallie, 1999, J. Virol., 73, 9080−9088)。IRES技術は遺伝子導入植物及び既存のベクターの便利な代替品となる植物ウイルスベクター中に使用できる大きな可能性を有している。今日まで、安定した核形質転換用植物IRES配列の唯一の既知応用例はビシストロン性構築中の目的遺伝子の発現のためにIRESを使用することに関連している(WO 98/54342)。問題の構築は、5’から3’方向に、転写プロモーター、該転写プロモーターに結合した第一遺伝子、第一遺伝子の3’に位置するIRES配列及びIRES配列の3’に位置する第二遺伝子を含む、つまり、転写調節配列の完全な組合せを含んでいる。
【0236】
驚くべきことに、我々は、自身の転写調節エレメントを除去しそして植物宿主の転写活性ゲノムへDNAの挿入に完全に依存する翻訳ベクターが目的の遺伝子を発現する多くの形質転換体を回収できるようにすることを発見した。さらに驚くべきことに、その形質転換体は、コムギのようなそのゲノム中に非常に低い比率の転写活性DNAを持つ宿主植物においても容易に検出することができる。この発明は、宿主植物の転写機構により完全に調節される、したがって導入遺伝子不活化を生じることが知られている外来遺伝子DNAの量を減少する、導入遺伝子発現の設計を可能にする方法の基礎である。これはまた新規な方法、キャップ依存対キャップ非依存翻訳の比率を調節すること、による導入遺伝子発現の調節を可能にする。
【0237】
発明の詳細な説明
本発明の主な目的は植物ゲノム中に組込まれた導入遺伝物質の安定した発現のために遺伝子導入植物を作製する方法またはベクターを提供することである。
【0238】
この目的は、翻訳開始の機能を形成するように植物細胞質性リボソームと結合するための配列及び、その下流に、該導入遺伝子コード配列を転写物中に含むベクターを核ゲノム中に導入することにより宿主核プロモーターの転写調節下に目的の導入遺伝子コード配列を発現することができる遺伝子導入植物または植物細胞を作製し、次いで該導入遺伝子コード配列を発現する植物細胞または植物を選択する方法により達成される。目的の遺伝子は、これに限定はしないが、IRESのような、翻訳シグナルの調節下にあり、それに作動的に結合したプロモーターを持たない。そのベクターは宿主ゲノムの転写活性DNAへの導入遺伝子の挿入に依存している。
【0239】
さらに、宿主細胞中におけるプロセッシングの後にさらに、その転写物中に翻訳を開始する機能を形成する形で植物細胞質性リボソームと結合するための配列及び、その下流に、コード配列を含む植物細胞を形質転換するための新規ベクター、該ベクターは該コード配列の転写のためのプロモーター機能を持たない、が提供される。
【0240】
望ましい態様はサブクレーム中に明示する。
【0241】
植物の安定した形質転換をするためのベクターの構築は多数の著者により記述されている(総説として、Hansen & Wright, 1999, Trends in Plant Science, 4, 226−231; Gelvin, S.B., 1998, Curr, Opin. Biotech., 9, 227−232参照)。これらの構築全ての基本的原理は同じである−5’から3’方向に、植物特異的プロモーター、目的の遺伝子の構造部分及び転写ターミネーターを含む完全な機能の転写単位が植物細胞に導入されそして目的の遺伝子の発現を行なうためにゲノム中に安定的に組込まれなければならない。
【0242】
我々は植物の安定な核形質転換体を得る別の方法を開発した。我々の発明は宿主植物転写機構が形質転換植物細胞中において目的の導入遺伝子からmRNAの生成を促進し得るという驚くべき発見によるものである。提案する方法は該ベクター中のプロモーターに作動的に結合していない目的の遺伝子を持つベクターを使用する。と言うより、それらは翻訳配列のみの調節下にある目的の遺伝子のコード領域を含んでいる。該翻訳配列は、望ましくは転写後に、植物細胞質リボソームと結合しそしてその下流にあるコード配列を翻訳することを可能にするための配列である。望ましくは、該翻訳配列は植物中のリボソーム侵入部位機能を持ち、より望ましくは植物特異的IRES配列、特に植物ウイルス起源、植物起源、非植物起源のIRES配列または人工的に設計したIRES配列である。
【0243】
そのベクターDNAは、固有の植物遺伝子の転写領域中に組込まれた後、キメラmRNAを生じ、そして次いで植物細胞質リボソームに結合するための該配列からの翻訳開始により目的のタンパクに翻訳される(図36)。我々の知る限りでは、安定な植物核転写物を作るためのこの方法に関する先行技術はない。大部分の植物ゲノムにおいて転写活性DNAの比率は低いことを考慮すると、本発明中に記述されている翻訳ベクターを使用する形質転換実験において目的の遺伝子を発現する多数の形質転換体を生じたことは、非常に驚きであった。
【0244】
我々の発明は信頼性のある導入遺伝子発現の差し迫った問題に対処するものである。我々の発明方法を使用する宿主ゲノムへの導入遺伝子の組み込みは、宿主固有の遺伝子の転写調節配列の全てまたは殆どを含む転写機構に依存しており、それにより通常異種遺伝子DNA配列により生じる導入遺伝子不活化を減少する。
【0245】
導入遺伝子輸送のためのベクターは種々の方法で作ることができる。最も簡単なものは翻訳シグナルを持つ目的遺伝子のコード領域またはその部分のみから構成される(基本的翻訳ベクター)。望ましいベクターでは、翻訳停止シグナルは植物細胞質リボソームを結合するための該配列の上流に供給される。停止シグナルは例えば少なくとも一つの停止コドン及び/またはRNAヘアピン2次構造などであろう。この停止シグナルは上流の翻訳を無効にする。さらに進化したものは目的の(遺伝子の)コード領域がこれに続いている植物特異的IRES配列を含むであろう。翻訳ベクターの進化したものは部位特異的組換え酵素を含み(総説として、Corman & Bullock, 2000, Curr Opin Biotechnol., 11, 455−460参照)、既存導入遺伝子の置換または宿主DNAの転写領域中への目的の追加遺伝子の組み込みのいずれも可能にする。バクテリオファージ及びイーストの部位特異的組換え酵素/インテグラーゼはインビトロ及び植物におけるDNA操作に広く使用されている。本発明における使用のための組換え酵素−組換え部位の例は以下である:cre組換え酵素−LoxP組換え部位、FLP組換え酵素−FRT組換え部位、R組換え酵素−RS組換え部位、phiC31インテグラーゼ−attP/attB組換え部位など。
【0246】
翻訳ベクターへのスプライシング部位の導入はプロセッシングを受けた転写物中への導入遺伝子組み込みの確率を増加することがある。
【0247】
このベクターはさらに植物細胞質リボソームを結合するための該配列及び該コード配列の間にターゲティングシグナルペプチドをコードする配列を含む。そのシグナルペプチドの望ましい例はプラスチドトランシットペプチド、ミトコンドリアトランシットペプチド、核ターゲティングシグナルペプチド、空胞ターゲティングペプチド、及び分泌シグナルペプチドを含む。
【0248】
翻訳ベクターを植物細胞中に輸送するために、微小弾丸発射法、電気穿孔法またはプロトプラストのPEG処理による植物細胞へ該ベクターを直接導入することを含めて種々の方法を使用することができる。アグロバクテリウム仲介植物形質転換も翻訳ベクター輸送の効果的な方法を提供する。正しいT−DNA境界の近くに結合したプロモーターの無いレポーターAPH(3’)II遺伝子によるArabidopsis及びNicotianaにおけるT−DNA挿入突然変異誘起は、全挿入の少なくとも30%に転写及び翻訳遺伝子融合を誘導することを示した(Koncz et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci., 86, 8467−8471)。
【0249】
翻訳ベクターは転移性配列中にもクローニングすることができ、適当な転写領域の探索を促進しそして導入遺伝子発現の構成的または組織/器官特異的パターンのいずれも生じる。転移性配列は不活化に基づく遺伝子タグの目的で良く使用されている(Pereira & Aarts, 1998, Methods Mol Biol., 82, 329−338; Long & Coupland, 82, 315−328; Martin GB., 1998, Curr Opin Biotechnol., 9, 220−226)。トランスポゾンタグシステムの種々の改良型が開発された。最も簡単なものでは、トランスポゾンは非自律転移配列を作製するために、多分、欠失またはフレームシフト以外の修飾のない挿入突然変異誘起のために使用される。さらに精巧なものでは、追加の遺伝子がトランスポゾン配列に挿入される、例えば、再挿入マーカー、レポーター遺伝子、プラスミド−レスキューベクター(Carroll et al., 1995, Genetics, 13, 407−420; Tissier et al., 1999, Plant Cell, 11, 1841−1852)。所謂エンハンサートラップ及び遺伝子トラップシステムがある(Sundaresan et al., 1995, Genes Dev., 9, 1797−810; Fedorov & Smith, 1993, Plant J., 3, 273−89)。そのようなシステムにおける転移性配列はプロモーターの無いレポーター遺伝子または最小プロモーターの調節下にあるレポーター遺伝子を備えている。最初の場合には、レポーター遺伝子は、宿主プロモーターの直後に宿主DNAの転写領域に挿入するかまたは宿主遺伝子のコード領域に挿入しそして宿主遺伝子転写物と「インフレーム」融合をすることにより、発現することができる。
【0250】
「インフレーム」融合の成功の確率はレポーター遺伝子の前に3個の読み枠全てに対するスプライシングドナー及びアクセプターのセットを置くことにより有意に増加することができる(Nussaume et al., 1995, Mol Gen Genet., 249, 91−101)。第二の場合には、レポーター遺伝子の転写は活性宿主プロモーターに近い挿入に続く最小プロモーターにより活性化されるであろう(Klimyuk et al., 1995, Mol Gen Genet., 249, 357−65)。そのようなトランスポゾンタグの方法の成功により、目的の遺伝子の前にIRES配列を持つ翻訳ベクターに対して類似の方法を使用することは支持されている。
【0251】
上記の方法は全て導入遺伝子を、挿入を生じた固有遺伝子の発現調節の下に置くシステムの設計を目的としている。これは特定の業務及び場合には好都合である。多くの場合に、導入遺伝子の発現パターンの修飾は望ましいものであろう。そのような目的のために、翻訳ベクターは導入遺伝子の発現パターンを変更することができるエンハンサーのような転写活性配列を備えることができる。エンハンサー配列は数千塩基対離れた位置にあるプロモーターの強さに影響することができる(Mueller, J., 2000, Current Biology, 10, R241−R244)。そのような方法の実現可能性は、T−DNA局在35Sエンハンサーが固有遺伝子の発現パターンを変えた、Arabidopsisにおける活性化タグの実験において(Weigel et al., 2000, Plant Physiol., 122, 1003−1013)、また上記のエンハンサートラップトランスポゾンタグにおいて実証された。後者の例では、固有遺伝子エンハンサーがレポーター導入遺伝子の発現パターンを決定する。この方法は、例えば、植物形質転換の初期段階において、あるいは形質転換の後に導入遺伝子の発現パターンの変更が必要になった時に有用であろう。応用の必要に応じた配列特異的組換えシステム(挿入、置換または除去)によりエンハンサー配列を容易に操作することができる。
【0252】
我々の方法は植物細胞中で機能する種々のIRES配列に基づく構築のセットを望むように作ることであった。この構築はIRESに続いて植物選択マーカー遺伝子及び転写/翻訳終結シグナルを含んでいる。これらの構築はIRES配列の前の5’末端から直線化した後植物細胞形質転換に直接使用するかまたはAgrobacterium仲介DNA転移用のT−DNA中にクローニングすることができる。対照として使用した別の構築のセットはプロモーターの無い遺伝子(陰性対照)または単子葉または双子葉細胞中で機能する構成的プロモーターの調節下にある選択遺伝子(陽性対照)を含んでいた。DNAは、Agrobacteriumによって運ばれるTi−プラスミド(US 5,591,616; US 4,940,838; US 5,464,763)、粒子または微小弾丸発射(US 05100792; EP 00444882B1; EP 00434616B1)のような適当な技術を使用して植物細胞中に遺伝子導入した。原理的には、その他の植物形質転換法を使用することができるであろう、例えば、限定はしないが、マイクロインジェクション(WO 09209696; WO 09400583A1; EP 175966B1)、電気穿孔(EP 00564595B1; EP 00290395B1; WO 08706614A1)。
【0253】
形質転換方法は形質転換する植物の種類による。我々の例示は、単子葉(例えば、Triticum monococcum)及び双子葉(例えば、Brassica napus, Orichophragmus violaceous)植物種の代表例における形質転換効率のデータを含んでおり、これにより異なる植物遺伝子起源の及び種ゲノム内の転写領域の密度が異なる植物種に対する我々の方法の実現性を立証している。ベクター中の導入遺伝子コード配列は目的の遺伝子の部分に過ぎないであろうから、その遺伝子は部位特異的または相同組換えの結果として機能的長さに再構成される。目的の配列の翻訳はキャップ非依存的であることが望ましい。宿主はキャップ依存翻訳を抑制(または増強)するかまたはキャップ非依存翻訳を増強(または抑制)するように修飾されるであろう。これは外来性薬物による処理またはその発現が望ましい効果を示す配列をベクター中または該植物中に含ませることにより達成することができる。
【0254】

例1
IRES含有ベクターの構築
一連のIRES仲介発現ベクターは標準的分子生物学技術を使用して構築した(Maniatis et al., 1982, Molecular cloning: a Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory, New York)。ベクターpIC1301(図37)はプラスミドpIC501(p35S−GFP− IRESMP,75 CR−BAR−35SターミネーターのpUC120)をHindIIIで消化し、大きなゲル精製フラグメントを再結合することにより作製した。IRESMP,75 CRはアブラナ(CR)−感染トバモウイルスの移動タンパク(MP)のサブゲノムRNAの5’−非翻訳リーダー配列の3’末端75塩基を示す。
【0255】
ベクターpIC1521(図38)は3段階のクローニングにより作製した。第一段階においてpIC1311は、pIC032の小HindIII−NcoIフラグメントを持つpIC031の大HindIII−PstIフラグメント及びpIC018の小BspHI−PstIフラグメントの結合により構築した。得られた35Sプロモーターの調節下にあるBAR遺伝子を含む構築pIC1311(図示せず)を形質転換実験における比較対照として使用した。プラスミドpIC1311をHindIII−NruIで消化し、そしてDNAポリメラーゼIのクレノーフラグメントで処理して平滑末端とした。大制限フラグメントをゲル精製し、再結合してpIC1451(プロモーターの無いBAR−35ターミネーター;図39参照)を生成した。pIC033の小SacI−NcoIフラグメントを持つpIC1451の大Sac1−Pst1フラグメント及びpIC018の小BspHI−PstIフラグメントの結合によりpIC1521(図38)を生成した。この構築はIRESCP,148 CR(CPはコートタンパクを意味する)配列の前に「ヘアピン」を含む。「ヘアピン」構造はBluescript IISK+ポリリンカーのKpnI−EcoRI及びCIaI−KpnIフラグメントにより形成された逆方向直列反復の存在により形成される。
【0256】
ベクターは全て形質転換実験に使用するためにSacI(pIC1521;pIC1451)またはHindIII(pIC1311;pIC1301)制限酵素の消化により直線化し、そして消化されないベクターから分離するためにゲル精製を行なった。
【0257】
例2
Brassica napusのPEG介在プロトプラスト形質転換
プロトプラストの単離
Brassicaプロトプラストの単離は以前に記述されているプロトコールに基づいている(Glimelius K., 1984, Physiol Plant., 61, 38−44; Sundberg & Glimelius, 1986, Plant Science, 43, 155−162及びSundberg et al., 1987, Theor. Appl. Genet., 75, 96−104)。
【0258】
滅菌した種子(補遺参照)を0.3% Gelriteを含む1/2MS培地を入れた90 mmペトリ皿中において発芽させた。種子を相互に若干離して数列にして置いた。ペトリ皿をシールし、45°の角度に傾け、そして6日間28℃で暗所に置いた。胚軸を鋭利なかみそり刃で1−3 mmの長さに細切した。試料の分解を避けるために刃をしばしば交換した。細胞の原形質分離をするために胚軸の細片をTVL溶液(補遺参照)中に入れた。試料を室温で1−3時間処理した。この前処理は完全なプロトプラストの収量を著しく改善する。前原形質分離溶液を8−10 mlの酵素溶液(補遺参照)に置換した。酵素溶液は試料全体を被わなければならないが、過剰に使用してはならない。試料を少なくとも15時間暗所において20−25℃でインキュベートした。ペトリ皿をロータリーシェーカー上に置き非常に穏やかに振とうした。
【0259】
プロトプラスト及び細胞破片の混合物を70 mmメッシュサイズのフィルターを通して濾過した。ペトリ皿を5−10 mlのW5溶液で洗い(Menczel et al., 1981, Theor. Appl. Genet., 59, 191−195)(補遺も参照)、これは濾過せずに残りの懸濁と合併した。プロトプラスト懸濁を40 ml滅菌Falcon試験管に移し、7分間120 gで遠心分離することによりプロトプラストをペレットとした。上清を除去し、プロトプラストのペッレトを0.5 Mスクロースに再懸濁した。懸濁を滅菌した10 ml遠心分離試験管に入れ(試験管当たり8 ml)、そして2 mlのW5溶液を加えた。10分間190 gで遠心分離した後完全なプロトプラストをパスツールピペットで中間層から採取した。それを新しい遠心分離試験管に移し、10 mM CaClを含む0.5 Mマンニトールに再懸濁し、そして5分間120 gでペレットにした。
【0260】
PEG処理
プロトプラストを形質転換緩衝液(補遺参照)に再懸濁した。プロトプラスト濃度を計数チャンバーで測定し、そして1−1.5x10プロトプラスト/mlに調節した。この懸濁の100μlを傾斜した6−cmペトリ皿の低い隅に置き、そして数分間放置してプロトプラストを落ち着かせた。次いでプロトプラストを50−100μlのDNA溶液(Qiagenで精製し、1 mg/mlの濃度に溶解)と穏やかに混合した。次いで200μlのPEG溶液(補遺参照)を滴下してプロトプラスト/DNA混合物に加えた。15−30分後形質転換緩衝液(またはW5溶液)を少量ずつ加え(滴下し)、皿を殆ど充たした(〜6 ml)。懸濁を1−5時間静置した。次いでプロトプラストを遠心分離試験管に移し、W5溶液に再懸濁し、5−7分間120gでペレットにした。
【0261】
プロトプラスト培養及び形質転換体の選別
プロトプラストを8pM培地(Kao & Michayluk, 1975, Planta, 126, 105−110; 補遺も参照)に移し、0.5または1.5 mlの培地を入れた2.5 cmまたは5.0 cmペトリ皿中25℃で弱い照明下にインキュベートした。プロトプラスト密度は2.5×10プロトプラスト/mlであった。最初のプロトプラスト分裂の直後にホルモンを含まない8pM培地3倍量を加えた。細胞を1日16時間強い光でインキュベートした。
【0262】
10−14日後0.1 Mスクロース、0.13%アガロース、5−15 mg/LのPPT及び8pM培地よりも4倍少ない濃度のホルモンを含むK3培地(Nagy & Maliga, 1976, Z. Pflanzenphysiol., 78, 453−455)に細胞を移した。新鮮な培地への移行を促進するために、細胞を滅菌した濾紙上に置き薄い層になるように広げた。細胞を1日16時間強い光の中に置いた。細胞コロニーが直径約0.5 cmに達した後分別培地K3を入れたペトリ皿に細胞コロニーを移した。
【0263】
例3
微小弾丸発射によるTriticum monococcumの形質転換
植物細胞培養
T. monococcum L.の細胞系の懸濁を回転振とう機上の250 mlフラスコ中MS2(MS塩(Murashige & Skoog, 1962 Physiol. Plant., 15, 473−497), 0.5 mg/Lチアミン HCl, 100 mg/Lイノシット, 30 g/Lスクロース, 200 mg/L Bacto−Tryptone, 2 mg/L 2,4−D)培地で25℃、160 rpmで増殖させ毎週継代した。継代培養4日後細胞を0.5 Mスクロースを含むgelrite−固形化(4 g/L)MS2上の50 mm滅菌円盤濾紙上に展開した。
【0264】
微小弾丸発射法
微小弾丸発射はBiolistic PDS−1000/He Particle Delivery System (Bio−Rad)を使用して行なった。900−1100 psi, マクロキャリア発射点から停止膜までの距離15 mmそして停止膜から標的組織までの距離60 mmで細胞を射撃した。破裂ディスクとマクロキャリアの発射点の間の距離は12 mmであった。浸透圧前処理の4時間後に細胞を射撃した。
【0265】
本来のBio−Radのプロトコール(Sanford et al., 1993, In: Methods in Enzymology ,ed. R. Wu, 217, 483−509)によるDNA−金コーティングは次のように行なった:50%グリセロール(60 mg/ml)中の25μlの金粉(0.6,1.0 mm)を5μlのプラスミドDNA(0.2μg/μl)、25μlのCaCl(2.5 M)及び10μlの0.1 Mスペルミジンと混合した。混合物を2分間渦巻き状に攪拌し、次いで室温30分インキュベートし、遠心分離(2000rpm,1分間)、70%及び99.5%エタノールで洗った。ペレットを30μlの99.5%エタノール(6μl/ショット)に再懸濁した。
【0266】
新規のDNA−金コーティング法(PEG/Mg)は次のように行なった:25μlの金懸濁(50%グリセロール中60 mg/ml)を5μlのプラスミドDNAとエッペンドルフ試験管中で混合しそして続いて30μlの1.0 M MgCl中40% PEGを添加した。混合物を2分間渦巻き状に攪拌し、次いで攪拌せずに室温30分間インキュベートした。遠心分離(2000rpm,1分間)の後ペレットを1mlの70%エタノールで2回、1mlの99.5%エタノールで1回洗い、そして最終的に30μlの99.5%エタノールに分散した。DNA−金のエタノール懸濁の一部(6μl)をマクロキャリアディスクにつけ、5−10分間乾燥した。
【0267】
プラスミドDNA標品
プラスミドはE. coli DH10B株に遺伝子導入し、マキシ標品をLB培地で増殖し、そしてDNAをQiagenキットを使用して精製した。
【0268】
選別
安定した形質転換実験のために、処理細胞を付けた濾紙を滅菌選別試薬(150 mg/LヒグロマイシンB、Duchefa);10 mg/L bialaphos(Duchefa)を含む固形MS2培地上に移した。プレートを暗所26℃でインキュベートした。
【0269】
例4
微小弾丸発射によるOrychophragmus violaceusの形質転換
懸濁培養の調製
O. violaceusの植物をMS培地、0.3%Gelrite(または、1/2MS, 2%スクロース及び0.8%寒天)上インビトロ、24℃、16/8明暗照明時間で3−4週間育成した。4−6枚の葉(大きさによる)を細片に切り、30 mlのカルス誘導培地(CIM)(補遺参照)を入れたマゼンタボックスに移した。試料を4−5週間薄明かり(または暗所)で24℃に保ち、激しく攪拌した。この間に新鮮CIM培地を加えてマゼンタボックス中の植物組織を液で覆われるように維持した。マゼンタボックスの壁の中に刺さった細胞はボックスを激しく反転及び揺することにより培地中に放出した。
【0270】
微小弾丸発射法のための植物試料の調製
細胞懸濁の分割液をペトリ皿の固形CIM培地に支持されている滅菌濾紙状に注意して置いた。植物試料を入れたペトリ皿を5−7日間暗所に置いた。操作の4時間前に、細胞のついた濾紙を10%スクロースを含む新鮮CIMに移した。微小弾丸発射は例3に記述したように実施した。発射の14時間後試料を3%スクロースを含むCIM培地に移し、暗所に維持した。
【0271】
形質転換体の選別
発射の2−4日後に、細胞のついた濾紙を適当な選別試薬(10−15μg/ml PPT)を添加したCIMを入れたプレートに移した。7日毎に試料を新鮮選別培地に移した。プレートを暗所に維持し、約6週間後植物試料を、適当な選別試薬(10−15μg/ml PPT)を添加した形質形成誘導培地(MIM)(補遺参照)に移した。プレートを16時間照明の強い光度でインキュベートした。
【0272】
例5
プロモーターの無いloxP−HPT遺伝子によるTriticum monococcumの形質転換
構築pIC052(図41)をHindIII制限酵素の消化により直線化し、ゲル精製して非消化物質を分離し、そして上記のように(例3参照)、微小弾丸発射法に使用した。直線化ベクターはpUC19ポリリンカー(57 bp)に続いてHPT遺伝子の5’末端のloxP部位を含んでいる。一般的に、HPT遺伝子の翻訳開始コドンの5’末端には約100 bpが存在する。34プレートが形質転換され、そしてヒグロマイシン含有培地上における1.5ヶ月の選別(例3)の後、3個のヒグロマイシン耐性コロニーが回収された。組み込み部位の配列はIPCRにより再生され、3個の形質転換体の非依存性が確認された。
【0273】
例6
プロモーターの無いIRESMP,75 CR−AHASによるOrychophragmus葉の形質転換
植物アセトヒドロキシ酸合成酵素(AHAS)は核にコードされ、クロロプラスト標的タンパクであり、分枝アミノ酸の生合成の第一段階を触媒する。これはこれらのアミノ酸によりアロステリック調節を受けており、数クラスの除草剤により抑制されることがある。構築PIC06−IRESは、pIC06中のArabidopsis AHAS(Ser653−Asn)遺伝子(1.3 Kb PstI−NcoIフラグメント)のプロモーターをIRESMP,75 CR配列で置換することにより作製される。この最終構築は(図41)、イミダゾール除草剤ファミリーに対する耐性を付与する1 アミノ酸置換(Ser653Asn)を持つArabidopsisアセトヒドロキシ酸合成酵素(AHAS)遺伝子の変異体を含んでいる(Sathasivan, Haughn & Murai, 1991, Plant Physiol, 97, 1044−1050)。プラスミドはSaII制限酵素で処理して直線化し、そして新しく作製したO. violaceous懸濁培養の微小弾丸発射に使用した。滅菌O. violaceousの葉を細かく切りそしてロータリー振とう機上のマジェンタボックス中の液体高オーキシン培地(HAM)にいれ懸濁培養した。7−14日後懸濁培養を滅菌濾紙で被ったグリーニング培地(GM)を入れたペトリ皿に移した(補遺参照)。3日後細胞がついた濾紙を0.4 Mスクロースを添加したGM上に移した。4時間後細胞を例3で記述したように、pIC06−IRESの直線化したDNAによる微小弾丸発射に使用した。14時間後細胞がついた濾紙をGM,3%スクロース、に移した。2日後細胞を0.7μM イマゼタピル(AC263,499またはPursuit,American Cyanamid)を含むGMに移した。細胞は7−10日毎に継代培養した。約4−6週後に推定事象の確認をおこない、形質転換体を、1日16時間、強い光度の下で1−2μMイマゼタピルを含む再生培地(RM)上で選別した。
【0274】
例7
翻訳ベクターを使用する2−DOG−6−Pの発現
この例の目的は、配列特異的組換え部位を持つ翻訳ベクターを既に含む遺伝子導入植物を操作できることを示すことにある。
【0275】
ベクターpIC052で形質転換したヒグロマイシン耐性T. monococcum細胞(例5)を2種のプラスミド、pIC−DOG及びpIC−CRE(図42)による微小弾丸共発射に使用した。プラスミドpIC−DOGは2個のloxP部位に挟まれたプロモーターの無い2−デオキシグルコース−6−リン酸(2−DOG−6−P)リン酸化酵素cDNA(特許WO 98/45456)を含む。pIC052を含む形質転換体のloxP部位へ2−DOG−6−PのCre仲介組み込みにより固有プロモーターによる2−DOG−6−Pの発現を生じる。この発現は2−デオキシグルコース(2−DOG)に対する耐性を付与する。耐性コロニーは例3に記述したように選別したが、選択試薬として0.075−0.1%の2−DOGを使用した。
【0276】
例8
トランスポゾンを組み込んだ翻訳ベクター
この例の目的は、宿主ゲノム中の目的とする転写部位に翻訳ベクターを指向させる直接形質転換の別の方法を示すことにある。
【0277】
図43に示した構築によりO. violaceous細胞を共形質転換し、そして例4に記述したように形質転換体の選別をおこなった。非自律的転移性dSpm配列はIRESMP,75 CRの5’末端に先行するプロモーターの無いBAR遺伝子を含んでいる。Spmトランスポゼースにより誘導される転移は、該宿主ゲノム中の目的発現パターン(この場合には−構成的)を持つ転写活性領域の探索を促進するので、一次形質転換体の回収数を増加する。実際、形質転換体の数はIRESMP,75 CR−BAR遺伝子(pIC1301、図37)のみによるよりも3−4倍高かった。
【0278】
補遺
種子の滅菌
種子を1%PPM溶液に少なくとも2時間(終夜が望ましい)浸す。種子を70%エタノール中で1分間次いで0.01%SDSまたはTween 20を含む10%塩素溶液中ロータリー振とう機上の250 ml振とうフラスコ中で洗う。種子を0.5Lの滅菌水で洗う。
Figure 2004536573
Figure 2004536573
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【図面の簡単な説明】
【図1】
1Aは本発明の方法の説明図である。
1Bは感染植物細胞における相互作用の可能性のある組合せの説明図である。
【図2】
IREScp,148 CR−Acトランスポゼース及びIRESmp,75 CR−Acトランスポゼースをそれぞれ含むcrTMV由来ベクターplC1111及びplC1123を示す。p35S::Ds::GUS−3’ocsを含むバイナリーベクターpSLJ744のT−DNA領域も示す。
【図3】
IREScp,148 CR−Cre組換え酵素及びIRESmp,75 CR−Cre組換え酵素をそれぞれ含むcrTMV由来ベクターplC2541及びplC2531を示す。直列方向に二つのloxPサイトに挟まれたGUS遺伝子を含むバイナリーベクターplC2561のT−DNA領域も示す。
【図4】
二つの逆転したloxPサイトに挟まれたGUS遺伝子を含むバイナリーベクターplC1641のT−DNA領域と組合わせたcrTMV由来ベクターplC2541及びplC2531(図3も参照)を示す。
【図5】
T7プロモーターの調節を受けるGUS遺伝子を持つバイナリーベクターplC2691のT−DNA領域及びT7ポリメラーゼ遺伝子を含むcrTMV由来plC2631を示す。
【図6】
pSLJ744で形質転換した遺伝子導入Arabidopsis植物の葉のX−gluc染色を示す。GUS遺伝子の転写はDs配列の挿入により阻止されている。
A−plC1123の転写物を接種した葉。
B−plC1111の転写物を接種した葉。
C−水を接種した葉。
【図7】
TMV由来プロベクターplCH4371及びプロベクターのplCH4461末端を示す(RdRp:RNA依存RNAポリメラーゼ;MP:移動タンパク;sGFP:合成緑色蛍光タンパク;3’NTR:TMVの3’非翻訳領域;sgp:サブゲノムプロモーター)。
【図8】
Cre組換え酵素発現カセットを提供するバイナリーベクターplCH1754のT−DNAを示す。
【図9】
Cre組換え酵素の存在下にプロベクターからウイルスベクターの形成を図示する。
補足図1から11は例6に使用されたベクター及び構築物を示す。
【図10】
ベクターT7/crTMV及びSp6/crTMVを示す。
【図11】
ベクターT7/crTMV/IRESMP,75 CR−GUS,T7/crTMV/IRESMP,75 UI−GUS,
T7/crTMV/IRESMP,228 CR−GUS,T7/crTMV/IRESCP,148 CR−GUS,
T7/crTMV/SPACERCP,148 UI−GUS及びT7/crTMV/PL−GUSを示す
【図12】
プライマー伸長によるcrTMV I sgRNAの5’末端のマッピング(A)及びI sgRNA 5’NTRの理論的2次構造。
【図13】
crTMV 12 sgRNA 5’NTRは翻訳抑制ヘアピン構造を含んでいる。
(A)−コムギ胚芽抽出物(WGE)中におけるインビトロ翻訳に使用される人工的転写物を示す;
(B)−WGE中で合成される翻訳産物を示す。
【図14】
トバモウイルスはMP遺伝子の上流に理論的翻訳抑制ヘアピン構造を含む。
【図15】
キャップのあるmRNAの特異的検出方法。A,B.既知配列のRNA−タグを被検RNAのキャップに特異的に結合する。C. 3’−特異的プライマーによる逆転写及びcDNAの第一鎖の合成。タグ配列はcDNA配列に含まれる。D.タグ特異的及び3’−特異的プライマーによるPCR.それぞれのPCRバンドの現われ方により被検RNA中のキャップ構造の存在が示される。E. 5’−特異的及び3’−特異的プライマーによるPCR。PCRバンドの現われ方はPCR反応の調節に役立ちそして反応中の特定の被検RNAの存在を示す。F.得られたPCRバンドの長さの相対的比較。
【図16】
16a及び16b。2%アガロースゲルにおけるウイルスRNAの5’−末端におけるキャップ構造存在の検出。矢印はそれぞれのPCRバンドを示す。
【図17】
KK6−由来TMVベクターを示す。
【図18】
KK6及びKK6−IRESMP,75 CRsgRNAの5’NTRのヌクレオチド配列。
【図19】
KK6−IRESMP,75 CR(K86)、KK6及びTMV U1を接種した葉におけるCP及びMP蓄積の時間経過。
【図20】
KK6,KK6−IRESMP,75 CR, KK6−IRESMP,125 CR,及びKK6−H−PL及びKK6−PLに感染したタバコにおけるCP蓄積。
【図21】
crTMV IRESmp多量体構造及び18S rRNAに対する相補性。
【図22】
IRESMP,75 CRを含むビシストロン性転写物、IRESCP,148 CRの18−nt部分の4量体、IRESMP,75 CRの19−nt部分、シストロン間スペーサーとしてのポリリンカー(PL)及びRRLにおける翻訳産物を示す。
【図23】
IRESCP,148 CR構造を示す。
【図24】
インビトロ及びインビボにおいてIRESCP,148 CR配列試験に使用した構築を示す。
【図25】
図30に示されている転写物の翻訳後のWGEにおけるGUS作用の試験。
【図26】
図30に示されているものと類似の35Sプロモーター由来構築を導入したタバコプロトプラストにおけるGUS作用試験。
【図27】
5’NTRにIRESMP,75 CRを含む2種の感染性TMVベクターのクローニングの図解を示す。
【図28】
ベクターAct2/crTMVを示す。
【図29】
pUC−由来ベクターAct2/crTMV/IRESMP,75 CR−GUSを示す。
【図30】
環状1本鎖ベクターKS/Act2/crTMV/IRESMP,75 CR−GUSを示す。
【図31】
ベクターKS/Act2/crTMV/IRESMP,75 CR−GUSを示す。
【図32】
構築35S/CP/IRESMP,75 CR/GUSを示す。
【図33】
構築35S/GUS/IRESMP,75 CR/CPを示す。
【図34】
構築35S/CP−VPg/IRESMP,75 CR/GUSを示す。
【図35】
発現ベクター中におけるウイルスサブゲノムプロモーターまたは目的とする遺伝子のキャップ非依存発現を行なうIRES配列を同定するためにインビボ遺伝子選択をするための構築を示す。
【図36】
多数の可能な翻訳ベクター変異体のうちの4個からの導入遺伝子発現を示す。
A−ベクターは翻訳エンハンサー及び翻訳停止コドンを含む;
B−ベクターは翻訳エンハンサーとしてIRESをそして転写終結領域を含む;
C−IRESが3個の読み枠全てに対する翻訳停止コドンより先行している以外はBにおけると同じ;
D−ベクターはイントロン/エクソン境界領域(3’I−5’E及び3’E−5’I)により挟まれエクソンの特徴を示し、そしてスプライスされたmRNA中に取込まれることを促進する以外はCと同じ。
【図37】
IRESMP,75 CR,BAR及び35Sターミネーターを含むベクターpIC1301を示す。
【図38】
「ヘアピン」、IRESMP,75 CR,BAR及び35Sターミネーターを含むベクターpIC1521を示す。「ヘアピン」構造は翻訳停止コドンの代替物として働き、翻訳融合生成物の形成を防ぐ。
【図39】
プロモーターの無いBAR遺伝子及び35Sターミネーターを含むベクターpIC1451を示す。
【図40】
loxP,HPT及びnosターミネーターを含むベクターpIC052を示す。
【図41】
IRESMP,75 CR,AHAS遺伝子を含むベクターpIC06−IRESを示す、このAHASはイミダゾリン除草剤耐性を生じるArabidopsisのアセトヒドロキシ酸合成酵素遺伝子の突然変異株である。
【図42】
イースト2−デオキシグルコース−6−リン酸(2−DOG−6−P)リン酸化酵素及びコメアクチンプロモーターに調節されるcre組換え酵素、それぞれのコード配列を含むベクターpIC−DOG及びpIC−CREを示す。
【図43】
トランスポゼースを含むトランスポゾンを組込んだ翻訳ベクターpIC−dSpm及びベクターpIC1491を示す。pHBTはコムギC4PPDK遺伝子の基本部分に融合したp35Sエンハンサーからなるキメラプロモーターである。

Claims (31)

  1. (a) 1またはそれ以上の第一異種DNA配列を植物の核ゲノム中に導入し、
    (b) 自身のゲノム中に1またはそれ以上の第二異種DNAまたはRNA配列を含む少なくとも一つのウイルス遺伝子導入ベクターを植物に感染させること、により
    (i) 核ゲノムの1またはそれ以上の第一異種DNA配列及び/またはその第一異種DNA配列の発現産物、及び
    (ii) 遺伝子導入ベクターの1またはそれ以上の第二異種DNAまたはRNA配列及び/またはその第二異種DNAまたはRNA配列の発現産物、及び
    (iii) さらに1またはそれ以上の外部から加えた低分子量化合物、
    の間の相互作用過程(I)を開始して、該相互作用の以前には作動しない目的の生化学過程(II)または生化学連鎖(III)のスイッチを入れる上記段階を含むことを特徴とする植物中における目的の生化学過程(II)または生化学連鎖(III)を調節する方法。
  2. 相互作用過程が植物の核ゲノム中に安定的に組み込まれた第一異種DNA配列の発現産物を必要とする請求項1に記載の方法。
  3. 該相互作用が該遺伝子導入ベクターの第二異種DNAまたはRNAの発現産物を必要とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 段階(b)おける植物の感染が集合ウイルス粒子または感染性ウイルス核酸によるか、または植物ゲノム中に予め組み込まれたウイルス核酸の放出による遺伝子導入過程の活性化により行われる請求項1から3のいずれか一つに記載の方法。
  5. 該集合ウイルス粒子または該感染性ウイルス核酸がRNAであるかまたはRNAを含む請求項4に記載の方法。
  6. 段階(b)における植物の感染が該植物の細胞中への核酸配列のアグロバクテリウム仲介輸送を含む請求項1から3のいずれか一つに記載の方法。
  7. 段階(b)においてさらに別のベクターが導入されそして該別のベクターの配列及び/または発現産物が該相互作用過程に必要である請求項1から6のいずれか一つに記載の方法。
  8. 段階(b)における植物の感染が該植物の細胞中へ1またはそれ以上のベクターが導入されることにより行われ、そして該ベクターが該植物の細胞中において該ウイルス遺伝子導入ベクターを発生する過程を行なうように順応させられている請求項1から7のいずれか一つに記載の方法。
  9. 該相互作用過程がウイスル遺伝子導入ベクター発生過程である請求項1から8の一つに記載の方法。
  10. 相互作用過程がDNA転移を必要とする請求項1から9のいずれか一つに記載の方法。
  11. 相互作用過程がDNA組換えを必要とする請求項1から10のいずれか一つに記載の方法。
  12. 目的の生化学過程または連鎖が該相互作用過程において構成的プロモーターに対して正方向に置かれるプロモーターの無い遺伝子をアンチセンス方向に含有する第一または第二DNAまたはRNA配列の発現を含む請求項11に記載の方法。
  13. 相互作用過程が異種RNAポリメラーゼによる異種プロモーターの認識を必要とする請求項1から9のいずれか一つに記載の方法。
  14. 該第一または該第二DNAまたはRNA配列が植物RNAポリメラーゼによって認識されない異種プロモーターの調節下に発現され、そしてそれぞれ該第二及び該第一DNA配列によりコードされている該プロモーターとそれと共に機能するRNAポリメラーゼの相互作用により発現される該配列の転写のスイッチが入る請求項13に記載の方法。
  15. 該RNAポリメラーゼがバクテリオファージRNAポリメラーゼでありそして該異種プロモーターがバクテリオファージプロモーターである請求項14に記載の方法。
  16. 相互作用過程がDNA複製、結合、ハイブリダイゼーション、転写、またはDNA制限のようなDNA反応を必要とする請求項1から15のいずれか一つに記載の方法。
  17. 相互作用過程が複製、プロセッシング、スプライシング、逆転写、ハイブリダイゼーションまたは翻訳のようなRNA反応、またはそれらの活性化、抑制または修飾を含む請求項1から16の一つに記載の方法。
  18. 相互作用過程がタンパク折り畳み、集合、活性化、翻訳後修飾、ターゲティング、結合、酵素作用またはシグナルトランスダクションのような酵素反応、またはその活性化、抑制または修飾を含む請求項1から17のいずれか一つに記載の方法。
  19. (i) 目的の生化学過程または連鎖が第一または第二DNA配列の転写を抑制することができるDNA挿入によりそのプロモーターから分離されている第一及び第二DNA配列の発現を含み、そして
    (ii) 段階(b)において開始する相互作用過程がDNA挿入の除去を生じ、それによって第一または第二DNA配列が発現される
    請求項1から11の一つに記載の方法。
  20. DNA挿入が
    (i) 核ゲノムに挿入するためのウイルスベクター上の第二DNA配列によってコードされている、または
    (ii) ウイルスベクターに挿入するための核ゲノム中の第一DNA配列によってコードされている、
    トランスポゼースによって除去される非自律的転移配列である請求項19に記載の方法。
  21. DNA挿入が
    (i) 核ゲノムに挿入するためのウイルスベクター上の第二DNA配列によってコードされている、かまたは
    (ii) ウイルスベクターに挿入するための核ゲノム中の第一DNA配列によってコードされている、
    部位特異的DNA組換え酵素により認識される一方向部位に挟まれている請求項19に記載の方法。
  22. 該プロモーターは天然の植物転写因子及び第二または第一DNA配列によりそれぞれコードされている該異種または操作した転写因子によって認識されず、該第一または第二DNA配列の目的の異種遺伝子に作動的に結合した異種または操作したまたはキメラプロモーターを認識することができる異種または操作した転写因子により第一または第二DNA配列の転写のスイッチが入る請求項1から9の一つに記載の方法。
  23. 転写因子が外部から適用した低分子量化合物により誘導される請求項22に記載の方法。
  24. 段階(a)の該第一異種DNA配列が植物ウイルス起源でない請求項1から23の一つに記載の方法。
  25. 段階:
    (a) 1またはそれ以上の第一異種核酸配列を植物の核ゲノム中に導入し、
    (b) 自身のゲノム中に1またはそれ以上の第二異種核酸配列を含む少なくとも一つのベクターを植物に感染させること、により
    (i) 核ゲノムの1またはそれ以上の第一異種核酸配列及び/またはその第一異種核酸配列の発現産物、及び
    (ii) 遺伝子導入ベクターの1またはそれ以上の第二異種核酸配列及び/またはその第二異種核酸配列の発現産物、及び
    (iii) さらに1またはそれ以上の外部から加えた低分子量化合物、
    の間の相互作用過程(I)を開始して、該相互作用の以前には作動しない目的の生化学過程(II)または生化学連鎖(III)のスイッチを入れる上記段階を含むことを特徴とする植物における目的の生化学過程(II)または生化学連鎖(III)を調節する方法。
  26. 請求項2から24の一つに記載した特徴をさらに追加した請求項25に記載の方法。
  27. 請求項1から26の一つに記載した方法の段階を含む遺伝子導入植物における製品の製造方法。
  28. 以下の方法:
    (a) 望む段階まで植物を育成する、次いで
    (b) 1以上のウイルス遺伝子導入ベクターに植物を感染させ、そしてさらに植物を1以上の低分子量化合物と接触させ、こうして該相互作用以前には作動しない製品の製造に必要な生化学過程または生化学連鎖のスイッチを入れ、そして
    (c) 植物中において製品を製造すること
    をさらに含む請求項27に記載の方法。
  29. (i) 遺伝子導入植物またはその種子、及び
    (ii) ベクター、特にウイルス遺伝子導入ベクター
    を含む請求項1から28の一つに記載の方法を実施するための部品のキット。
  30. 請求項1から26の一つに記載の段階(b)を実施するためのベクター。
  31. 請求項27または28に記載の方法により得たまたは得ることができる植物。
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