JP2004529960A - 下剤組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、便秘の緩和あるいは予防のため、および胃腸管を洗浄するために有用な新規な下剤組成物に関する。該組成物は排便を誘発するのに有効量の下記部分構造(I)を含むハロゲン化生理活性脂質を含む。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、便秘の緩和あるいは予防のため、および胃腸管の洗浄のために有用な新規な下剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
便秘は、弛緩性便秘、痙攣性便秘、直腸性便秘のような機能性便秘、腸疾患や手術後の癒着による狭窄等の原因で生じる器質性便秘および薬物誘発性便秘等に分類される。
【0003】
これらの便秘の症状を軽減するために従来から用いられている下剤としては、例えば、1)大腸刺激性のアントラキノン系下剤、2)小腸刺激性のヒマシ油、3)カルボキシメチルセルロースを始めとする膨張性下剤、4)硫酸マグネシウムを始めとする塩類下剤、5)糖アルコール等の糖類下剤がある。しかしながら、これらの下剤は、いずれも腸を刺激することによる強制的な活性化によって排便を行うものであるため、下痢状の排便となり、排便時に腹痛を伴うなどの副作用がある。
【0004】
また、内視鏡検査の準備のための、および大腸・結腸内視鏡術、バリウム注腸X線造影、静脈内腎盂尿管造影法、緊急の処置、例えば、毒物除去等のための緊急の胃腸洗浄、などの診断および外科的な処置の準備のために、排便を促すことによって胃腸管を洗浄する方法が行われている。
【0005】
腸を洗浄するための方法として、従来、等張の電解質のみを含む多量の水の摂取により下痢を誘導し、これによって腸の清浄を行う電解質洗浄法が一般的に用いられていた。しかしながら、この方法では多量の水を摂取するため、腎疾患や心臓疾患あるいは高血圧の患者には使用できなかった。近年では、1980年に、デイビスら(Davis et al.)によって報告された、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム及び水と結合したポリエチレングリコール(PEG)で構成されるPEG/電解質洗浄剤組成物が最も多用されている。しかしながら、このPEG/電解質洗浄剤組成物についても、通常2〜4Lという大容量の液を摂取する必要があり、また、塩辛い、油臭い、ぬめり感があるなど服用しにくいため、相当の苦痛を我慢しながら長時間かけて所定量を飲む必要がある。そこで、より低容量で所定の効果を有し、服用しやすい薬物の開発が求められている。
【0006】
一方、生理活性脂質は、例えば、アラキドン酸代謝物、血小板活性化因子、リゾホスファチジン酸、脂溶性ビタミン、エンドトキシンなど、細胞の分化と増殖、生体防御や神経機能の調節に深く関わっている生理学的に活性な脂質の一群である。例えば、アラキドン酸に由来する一群の生理活性脂質としては、プロスタグランジン類、トロンボキサンなどが挙げられる。
【0007】
プロスタグランジン類(以後PG(類)として示す)はヒトおよび他の哺乳類の組織または器官に含有され、広範囲の生理学的活性を示す有機カルボン酸の一群である。天然に存在するPG類(天然PG類)は一般に、式(A)に示すプロスタン酸骨格を有する。
【化1】
Figure 2004529960
【0008】
一方天然PG類の幾つかの合成類似体は修飾された骨格を持っている。天然PG類は5員環部分の構造特性によって、PGA類、PGB類、PGC類、PGD類、PGE類、PGF類、PGG類、PGH類、PGI類およびPGJ類に分類され、さらに炭素鎖部分の不飽和結合の数と位置によって、以下の3つのタイプに分類される:
下付1:13,14−不飽和−15−OH
下付2:5,6−および13,14−ジ不飽和−15−OH
下付3:5,6−、13,14−および17,18−トリ不飽和−15−OH。
【0009】
さらに、PGF類は9位の水酸基の配置によってα(水酸基がアルファー配置である)およびβ(水酸基がベータ配置である)に分類される。
【0010】
PG類が種々の薬理学的、生物学的活性を有することは知られており、例えば、血管拡張、起炎作用、血小板凝集作用、子宮筋刺激作用、腸管筋刺激作用、抗潰瘍作用などが知られている。また、PGE類あるいはPGF類の腸管刺激作用に伴う腸管収縮作用は強いがエンテロプーリング作用が軽微であるため、PGE類あるいはPGF類を下剤として使用することは腸管収縮に伴う腹痛などの副作用のため、不可能である。
【発明の概要】
【0011】
本発明は便秘の緩和あるいは予防のため、および胃腸管を洗浄するために有用な新規な下剤組成物に関する。
【0012】
本発明はまた、便秘の緩和または予防方法および胃腸管の洗浄方法にも関する。
【0013】
本発明者は生理活性脂質について、その薬理学的検討を行った結果、少なくとも下記部分構造を有するハロゲン化生理活性脂質が顕著な排便作用を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、排便を誘発する必要がある患者に対して、排便を誘発するのに有効量の下記部分構造(I)を含むハロゲン化生理活性脂質を投与することを含む排便効果を提供するための方法に関する:
【化2】
Figure 2004529960
[上記構造中、Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
Zは、
【化3】
Figure 2004529960
(RおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシあるいはヒドロキシ(低級)アルキル、但しRおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシとなることはない);
XおよびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、XおよびXの基のうちの少なくとも1つはハロゲン);]。
【0015】
特に、本発明は、排便を誘発する必要がある患者に対して、排便を誘発するのに有効量の式(II)で表されるハロゲン化生理活性脂質を投与することを含む排便効果を提供するための方法に関する。
【化4】
Figure 2004529960
[式中、L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
Zは、
【化5】
Figure 2004529960
(RおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシあるいはヒドロキシ(低級)アルキル、但しRおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシとなることはない);
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;
XおよびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、XおよびXの基のうちの少なくとも1つはハロゲン);そして、
Raは、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシで置換された、飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基;シクロ(低級)アルキル基;シクロ(低級)アルキルオキシ基;アリール基;アリールオキシ基;複素環基;複素環オキシ基]。
【0016】
また、本発明は、排便作用有効量の上記部分構造(I)を含むハロゲン化生理活性脂質を含む下剤組成物に関する。
【0017】
特に、本発明は、排便作用有効量の上記式(II)によって示されるハロゲン化生理活性脂質を含む下剤組成物に関する。
【0018】
さらに、本発明は、下剤組成物を製造するための上記部分構造(I)を含むハロゲン化生理活性脂質の使用に関する。
【0019】
特に、本発明は、下剤組成物を製造するための上記式(II)で示されるハロゲン化生理活性脂質の使用に関する。
【0020】
本発明の生理活性脂質の一つであるPG化合物の命名に際しては、前記式(A)に示したプロスタン酸の番号を用いる。
【0021】
前記式(A)はC−20の基本骨格のものであるが、本発明では炭素数がこれによって限定されるものではない。即ち、式(A)において、PG化合物の基本骨格を構成する炭素の番号はカルボン酸を1とし5員環に向かって順に2〜7までをα鎖上の炭素に、8〜12までを5員環の炭素に、13〜20までをω鎖上に付しているが、炭素数がα鎖上で減少する場合、2位から順次番号を抹消し、α鎖上で増加する場合、2位にカルボキシル基(1位)に代わる置換基がついたものとして命名する。同様に、炭素数がω鎖上で減少する場合、20位から炭素の番号を順次減じ、ω鎖上で増加する場合、21番目以後の炭素原子は置換基として命名する。また、立体配置に関しては、特に断りのない限り、上記式(A)の基本骨格の有する立体配置に従うものとする。
【0022】
また、例えばPGD、PGE、PGFは、9位および/または11位に水酸基を有するPG化合物をいうが、本発明では、9位および/または11位の水酸基に代えて他の置換基を有するものも包含する。これらの化合物を命名する場合、9−デヒドロキシ−9−置換−PG化合物あるいは11−デヒドロキシ−11−置換−PG化合物の形で命名する。なお、水酸基の代わりに水素を有するPG化合物は、単に9−あるいは11−デヒドロキシ化合物と称する。
【0023】
前述のように、本発明ではプロスタグランジン化合物の命名はプロスタン酸骨格に基づいて行うが、化合物がプロスタグランジンと類似の部分構造を有する場合には、簡略化のため「PG」の略名を利用することがある。この場合、α鎖の骨格炭素数が2個延長されたPG化合物、即ち、α鎖の骨格炭素数が9であるPG化合物は、2−デカルボキシ−2−(2−カルボキシエチル)−PG化合物と命名する。同様にα鎖の骨格炭素数が11であるPG化合物は、2−デカルボキシ−2−(4−カルボキシブチル)−PG化合物と命名する。また、ω鎖の骨格炭素数が2個延長されたPG化合物、すなわちω鎖の骨格炭素数が10であるPG化合物は、20−エチル−PG化合物と命名する。なお、命名はこれをIUPAC命名法に基づいて行うことも可能である。
【0024】
本発明において用いられるPG化合物は15位に水酸基を有し、16位に少なくとも一つのハロゲン原子を有するあらゆるPGの誘導体あるいはアナログであり得、13,14位に1つの2重結合を有するPGタイプ1化合物類、13−14位と5−6位に2つの2重結合を有するPGタイプ2化合物類、5−6位、13−14位および17−18位に3つの2重結合を有するPGタイプ3化合物類、あるいはこれらの化合物の13−14位の2重結合が単結合となった13,14−ジヒドロ−PG化合物類などが例示される。
【0025】
本発明に用いられる代表的な化合物の例は、PGタイプ1、PGタイプ2、PGタイプ3、13,14−ジヒドロ−PGタイプ1、13,14−ジヒドロ−PGタイプ2、13,14−ジヒドロ−PGタイプ3等およびそれらの誘導体あるいはアナログである。
【0026】
アナログ(置換体を含む)または誘導体の例は、上記PG化合物のα鎖末端のカルボキシル基がエステル化された化合物、α鎖末端の骨格炭素数が延長された化合物、生理学的に許容し得る塩、2−3位の炭素結合が2重結合あるいは5−6位の炭素結合が3重結合である化合物、3位、5位、6位、16位、17位、18位、19位および/または20位の炭素に置換基を有する化合物、9位および/または11位の水酸基の代りに低級アルキル基またはヒドロキシ(低級)アルキル基を有する化合物等である。
【0027】
本発明において3位、17位、18位および/または19位の炭素原子に結合する好適な置換基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基があげられ、特にメチル基、エチル基があげられる。16位の炭素原子に結合する好適な置換基としては、例えばメチル基、エチル基などの低級アルキル基、水酸基、あるいは塩素、フッ素などのハロゲン原子、トリフルオロメチルフェノキシ等のアリールオキシ基が挙げられる。但し、本発明によると、16位の少なくともひとつの置換基はハロゲン原子によって置換されている。17位の炭素原子の好適な置換基としては、例えばメチル基、エチル基などの低級アルキル基、水酸基あるいは塩素、フッ素等のハロゲン原子、トリフルオロメチルフェノキシ等のアリールオキシ基が挙げられる。20位の炭素原子に結合する好適な置換基としては、C1−4アルキルのような飽和または不飽和の低級アルキル基、C1−4アルコキシのような低級アルコキシ基、C1−4アルコキシ−C1−4アルキルのような低級アルコキシアルキルを含む。5位の炭素原子の好適な置換基としては、塩素、フッ素などのハロゲン原子を含む。6位の炭素原子の好適な置換基としては、カルボニル基を形成するオキソ基を含む。9位および/または11位の炭素原子にヒドロキシ基、低級アルキルまたはヒドロキシ(低級)アルキル置換基を有する場合のPG類の立体配置はα,βまたはそれらの混合物であってもかまわない。
【0028】
さらに、上記誘導体およびアナログは、ω鎖が天然のPG類より短い化合物のω鎖末端にアルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、フェノキシ基、フェニル基等の置換基を有するものであってもよい。
【0029】
本発明において用いられる、特に好ましい化合物の一群としては、式(III)で示されるものである:
【化6】
Figure 2004529960
[式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
Zは、
【化7】
Figure 2004529960
(RおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシあるいはヒドロキシ(低級)アルキル、但しRおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシとなることはない);
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;
XおよびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、XおよびXの基のうちの少なくとも1つはハロゲン);
は、単結合または低級アルキレン;そして、
は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ]。
【0030】
特に式(II)の化合物であって、Bが−CH−CH−、XおよびXが同じであっても異なっていてもよいハロゲン原子である化合物、即ち式(IV)で表される化合物は、新規化合物であり、本発明の好適な化合物である。
【化8】
Figure 2004529960
[式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
B’は、−CH−CH−;
Zは、
【化9】
Figure 2004529960
(RおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシあるいはヒドロキシ(低級)アルキル、但しRおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシとなることはない);
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;
X’およびX’は、同じであっても異なっていてもよいハロゲン原子;
は、単結合または低級アルキレン;そして、
は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ]。
【0031】
上記式中、RおよびRaにおける「不飽和」の語は、主鎖および/または側鎖の炭素原子間の結合として、少なくとも1つまたはそれ以上の2重結合および/または3重結合を孤立、分離または連続して含むことを意味する。通常の命名法に従って、連続する2つの位置間の不飽和は若い方の位置番号を表示することにより示し、連続しない2つの位置間の不飽和は両方の位置番号を表示して示す。
【0032】
「低〜中級脂肪族炭化水素」の語は、炭素数1〜14の直鎖または分枝鎖(ただし、側鎖は炭素数1〜3のものが好ましい)を有する炭化水素を意味し、好ましくは炭素数1〜10、特に1〜8の炭化水素である。
【0033】
「ハロゲン」の語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。
【0034】
「低級」の語は、特にことわりのない限り炭素原子数1〜6を有する基を包含するものである。
【0035】
「低級アルキル」の語は、炭素原子数1〜6の直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。
【0036】
「低級アルキレン」の語は、炭素原子数1〜6の直鎖また分岐鎖の2価の飽和炭化水素基、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、t−ブチレン、ペンチレンおよびヘキシレンを含む。
【0037】
「低級アルコキシ」の語は、低級アルキルが上述と同意義である低級アルキル−O−を意味する。
【0038】
「ヒドロキシ(低級)アルキル」の語は、少なくとも1つのヒドロキシ基で置換された上記のような低級アルキルを意味し、例えばヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチルおよび1−メチル−1−ヒドロキシエチルである。
【0039】
「低級アルカノイルオキシ」の語は、式RCO−O−(ここで、RCO−は上記のような低級アルキルが酸化されて生じるアシル、例えばアセチル)で示される基を意味する。
【0040】
「シクロ(低級)アルキル」の語は、炭素原子3個以上を含む上記のような低級アルキル基が閉環して生ずる環状基であり、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを含む。
【0041】
「シクロ(低級)アルキルオキシ」の語は、シクロ(低級)アルキルが上述と同意義であるシクロ(低級)アルキル−O−を意味する。
【0042】
「アリール」の語は、非置換または置換されていてもよい芳香族炭化水素環基を包含し、好ましくは単環性の、例えばフェニル、トリル、キシリルが例示される。置換基としては、ハロゲン、ハロゲン置換低級アルキル基(ここで、ハロゲン原子および低級アルキル基は前記の意味)が含まれる。
【0043】
「アリールオキシ」の語は、式ArO−(ここで、Arは上記のようなアリール基)で示される基を意味する。
【0044】
「複素環」としては、置換されていてもよい炭素原子および炭素原子以外に窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1種または2種のヘテロ原子を1乃至4個、好ましくは1乃至3個含む、5乃至14員、好ましくは5乃至10員の、単環式乃至3環式、好ましくは単環式の複素環基が例示される。複素環基としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、2−ピロリニル基、ピロリジニル基、2−イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、2−ピラゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、インドリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、プリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズイミダゾリニル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基などが例示される。置換基としてはハロゲン、ハロゲン置換低級アルキル基(ここで、ハロゲン原子および低級アルキル基は前記の意味)が例示される。
【0045】
「複素環オキシ」の語は、式HcO−(ここでHcは上記のような複素環基)で示される基を意味する。
【0046】
Aの「官能性誘導体」の語は、塩(好ましくは、医薬上許容し得る塩)、エーテル、エステルおよびアミド類を含む。
【0047】
適当な「医薬上許容し得る塩」としては、慣用される非毒性塩を含み、無機塩基との塩、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩、有機塩基との塩、例えばアミン塩(例えばメチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン塩、モノメチル−モノエタノールアミン塩、プロカイン塩、カフェイン塩等)、塩基性アミノ酸塩(例えばアルギニン塩、リジン塩等)、テトラアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩類は、例えば対応する酸および塩基から常套の反応によってまたは塩交換によって製造し得る。
【0048】
エーテルの例としてはアルキルエーテル、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、t−ブチルエーテル、ペンチルエーテル、1−シクロプロピルエチルエーテル等の低級アルキルエーテル、オクチルエーテル、ジエチルヘキシルエーテル、ラウリルエーテル、セチルエーテル等の中級または高級アルキルエーテル、オレイルエーテル、リノレニルエーテル等の不飽和エーテル、ビニルエーテル、アリルエーテル等の低級アルケニルエーテル、エチニルエーテル、プロピニルエーテル等の低級アルキニルエーテル、ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシイソプロピルエーテルのようなヒドロキシ(低級)アルキルエーテル、メトキシメチルエーテル、1−メトキシエチルエーテル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエーテル、および例えばフェニルエーテル、トシルエーテル、t−ブチルフェニルエーテル、サリチルエーテル、3,4−ジメトキシフェニルエーテル、ベンズアミドフェニルエーテル等の所望により置換されたアリールエーテル、ベンジルエーテル、トリチルエーテル、ベンズヒドリルエーテル等のアリール(低級)アルキルエーテルが挙げられる。
【0049】
エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、1−シクロプロピルエチルエステル等の低級アルキルエステル、ビニルエステル、アリルエステル等の低級アルケニルエステル、エチニルエステル、プロピニルエステル等の低級アルキニルエステル、ヒドロキシエチルエステルのようなヒドロキシ(低級)アルキルエステル、メトキシメチルエステル、1−メトキシエチルエステル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエステルのような脂肪族エステルおよび例えばフェニルエステル、トリルエステル、t−ブチルフェニルエステル、サリチルエステル、3,4−ジメトキシフェニルエステル、ベンズアミドフェニルエステル等の所望により置換されたアリールエステル、ベンジルエステル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステル等のアリール(低級)アルキルエステルが挙げられる。
【0050】
Aのアミドとしては、式−CONR’R’’で表される基を意味する。ここで、R’およびR’’はそれぞれ水素原子、低級アルキル、アリール、アルキル−あるいはアリール−スルホニル、低級アルケニルおよび低級アルキニルであり、例えば、メチルアミド、エチルアミド、ジメチルアミド、ジエチルアミド等の低級アルキルアミド、アニリドおよびトルイジドのようなアリールアミド、メチルスルホニルアミド、エチルスルホニルアミドおよびトリルスルホニルアミド等のアルキル−もしくはアリール−スルホニルアミド等が挙げられる。
【0051】
好ましいLおよびMの例は、ヒドロキシ、オキソであり、特に好ましくはMがヒドロキシでありLがオキソであり、いわゆるPGEタイプと称される5員環構造を有するものである。
【0052】
好ましいAの例は、−COOH、その医薬上許容し得る塩、エステル、アミドである。
【0053】
好ましいBの例は、−CH−CH−であり、いわゆる13,14−ジヒドロタイプ化合物である。
【0054】
好ましいXおよびX、あるいは、X’およびX’はフッ素であり、いわゆる16,16−ジフルオロタイプ化合物である。
【0055】
好ましいRは炭素原子数1〜10、好ましくは6〜10の炭化水素残基であり、さらに脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子が酸素、窒素または硫黄によって任意に置換されたものである。
【0056】
の具体例としては、例えば、次のものが挙げられる。
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH=CH−
−CH−C≡C−CH−CH−CH
−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
−CH−CH−CH−CH−O−CH−、
−CH−CH=CH−CH−O−CH−、
−CH−C≡C−CH−O−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
など。
【0057】
好ましいRaは、炭素数1〜10の炭化水素であり、特に好ましくは炭素数1〜8の炭化水素であり、更に炭素数1の側鎖を1または2有していてもよい。
【0058】
上記式(II)(III)および(IV)中、環、αおよび/またはω鎖の配置は、天然のPG類の配置と同様かまたは異なっていてもよい。また、本発明は、天然の配置を有する化合物および非天然の配置を有する化合物の混合物も包含する。
【0059】
本発明の典型的な化合物の例は、13,14−ジヒドロ−16−モノまたはジフルオロ−PGE化合物およびその誘導体あるいはアナログである。
【0060】
本発明においては、個々の互変異性体、その混合物または光学異性体、その混合物、ラセミ体、その他の立体異性体等の異性体も、同じ目的に使用することが可能である。
【0061】
本発明により処置される対象はヒトを含むいずれの哺乳類対象であってもよい。
【0062】
本発明によると、排便を誘発するのに有効な投与量は、動物またはヒト等のような対象の種類、年齢、体重、処置されるべき対象の症状、所望の治療効果、投与方法、処置期間等により変化するが、通常1日1〜4分割用量または持続形態で全身投与する場合、1日あたり0.00001〜100mg/kgの投与量で満足な効果が得られる。
【0063】
本発明によると、本方法は、本発明の組成物を用いて行うことができる。該組成物は、全身的あるいは局所的に投与できる。通常、該組成物は、経口投与、静脈内注射(点滴を含む)、皮下投与、直腸内投与、膣内投与などの方法で投与される。
【0064】
本発明の下剤組成物は、経口投与薬、注射薬、点滴薬、外用薬、錠剤、舌下剤、座薬および膣座薬等の組成物として製剤できる。
【0065】
本発明の組成物はさらに生理学的に許容される適当な添加剤と併用しても良く、この明細書では添加剤としては、賦形剤、希釈剤、増量剤、溶剤、滑沢剤、補助剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、カプセル化剤、軟膏基材、座薬用基材、エアゾール剤、乳化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、保存剤、抗酸化剤、矯味剤、芳香剤、着色剤、機能性素材(例えばシクロデキストリン、生体内分解高分子など)など、通常生理活性脂質と共に使用される成分を総称して用いる。これらの添加剤の詳細については製剤学に関する一般書籍に記載されているものから剤形に応じて適宜選択すればよい。
【0066】
本発明の組成物に配合される部分構造(I)を有する化合物の量は組成物の剤形にもよるが、通常0.0001〜10.0重量%、より好ましくは0.001〜1.0重量%である。
【0067】
本発明による経口投与のための固体組成物としては、錠剤、トローチ、舌下錠、カプセル、丸剤、散剤、顆粒剤等が含まれる。このような固体組成物においては、1つまたはそれ以上の有効成分が少なくとも1つの不活性な希釈剤と混合される。組成物は不活性な希釈剤以外に添加剤、例えば、滑沢剤、崩壊剤、安定剤を含んでいてもよい。錠剤または丸剤は必要により胃溶性あるいは腸溶性物質のフィルムで被覆してもよいし、2以上の層で被覆してもよい。また、徐放性材料に吸着してもよく、あるいはマイクロカプセル化してもよい。更にゼラチンのような容易に崩壊され得る物質のカプセル剤としてもよい。脂肪酸およびそのモノ、ジあるいはトリグリセライドなどの適当な溶媒に溶解してソフトカプセルとすることもできる。速効性を必要とするときは、舌下錠としてもよい。
【0068】
経口投与のための液体組成物としては、乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等が例示される。一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水、エタノール等を含んでいてもよい。該組成物は不活性な希釈剤以外に湿潤剤、懸濁化剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0069】
本発明の組成物としては、1つまたはそれ以上の有効成分を含み、それ自体公知の方法により処方されるスプレー剤が含まれる。
【0070】
本発明による非経口投与のための注射剤としては、無菌の水性または非水性の液剤、懸濁剤、乳剤を包含する。水性の液剤、懸濁剤用媒体としては、例えば注射用蒸留水、生理食塩水およびリンゲル液が含まれる。非水性の液剤、懸濁剤用媒体としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート等がある。このような組成物は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤のような添加剤を含んでいてもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合、ガス滅菌または放射線滅菌によって無菌化される。注射剤はまた無菌の粉末組成物として提供し、使用前に無菌の注射用溶媒に溶解して使用することもできる。
【0071】
本発明の組成物の別の形態は坐薬または膣坐薬である。これらの坐薬はカカオ脂等の体温で軟化する基剤に有効成分を混合して作ることができ、適当な軟化温度を有する非イオン界面活性剤を用いて吸収性を向上させてもよい。
【0072】
本発明において、「処置」の語は、予防、治療、症状の軽減、症状の減退、進行停止等、あらゆる管理が含まれる。
【0073】
本発明の化合物は、極めて強いエンテロプーリング作用を有し、腸管輸送能の促進作用も顕著であり、実際には動物やヒトにおいても顕著な排便作用を有すため、本発明の組成物は、便秘の緩和あるいは予防などに、および胃腸管を洗浄するために有効である。
【0074】
本発明において処置される便秘の種類としては、特に限定されないが、弛緩性便秘、痙攣性便秘、直腸性便秘のような機能性便秘、腸疾患や手術後の癒着による狭窄等の原因で生じる器質性便秘およびオピオイドなどの薬物により誘発される便秘などが挙げられる。さらに下痢症状からの回復も速やかであるので、本発明の化合物は、緩下剤、峻下剤などの下剤組成物として有用である。
【0075】
また、本発明の組成物は、便秘の緩和あるいは予防のみならず、ヘルニアや心臓血管系の疾患を有する患者が排便時に息まないために、あるいは直腸肛門疾患を有する患者の便を軟らかくするために用いることもできる。さらに、内視鏡検査の準備のための胃腸洗浄するために、あるいは結腸内視鏡術、バリウム注腸エックス線撮影、静脈内腎盂尿管造影法、および緊急の処置、たとえば毒物除去等のための胃腸洗浄、などの診断および外科的な処置の準備のための胃腸洗浄をするために用いることができる。
【0076】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、これはこの発明を限定するものではない。
【合成例】
【0077】
(1)化合物1のt-ブチルジメチルシリル化
【化10】
Figure 2004529960
【0078】
化合物1 180mg(0.337mmol)を無水DMF0.38mLに溶解し、イミダゾール100.8mg(1.481mmol)を加えた。次いでt-ブチルジメチルシリルクロリド111.7mg(0.741mmol)を溶液に加え、室温で3時間、37℃で14.5時間攪拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水0.5mLを加え、反応混合物を酢酸エチル5mLで3回抽出した。有機層を混合し、飽和食塩水5mLで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラムで精製した。(富士シリシア化学 BW-300 20g、展開溶媒:酢酸エチル/n-ヘキサン=1/3→1/1)
収量: 145.3mg;66% ; 無色油
【0079】
化合物2の1H-NNR スペクトル (200MHz/CDCl3)
δ: 5.11-5.01(m,1H), 4.63-4.51(m,1H), 4.00-3.60(m,3H), 3.67(s,3H), 3.56-3.40(m,1H), 2.40-2.10(m,1H), 2.30(t,J =7.4Hz,2H), 2.04(s,3H), 2.00-1.08(m,29H), 0.99-0.85(m,12H), 0.08(s,6H)
【0080】
(2)化合物2の加水分解
【化11】
Figure 2004529960
【0081】
化合物2 145.3mg(0.224mmol)をエタノール6.3mLに溶解し、1N-水酸化ナトリウム0.67mL(0.67mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。1N-水酸化ナトリウム0.45mL(0.45mmol)を溶液に追加し、室温で16時間攪拌した。溶液に水1mLを加え、1N-塩酸 0.79mLで酸性化(pH4)した後、飽和食塩水1.5mLを加えた。反応混合物を酢酸エチル10mLで3回抽出し、有機層を混合して無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラムで精製した。(富士シリシア化学 FL-60D(15%含水) 7g、展開溶媒:酢酸エチル)
収量: 130.6mg ; 98%; 淡黄色油
【0082】
化合物3の1H-NNR スペクトル (200MHz/CD3OD)
δ: 4.76-4.60(m,1H), 4.23-3.65(m,6H), 3.65-3.23(m,1H), 2.40-1.05(m,32H), 1.03-0.90(m,12H), 0.20-0.03(m,6H)
【0083】
(3)化合物3のDess-Martin酸化
【化12】
Figure 2004529960
【0084】
アルゴン雰囲気下、化合物3 41.5mg(0.07mmol)を無水ジクロロメタン0.56mLに溶解し、Dess-Martin試薬118.8mg(0.28mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。TLCで反応状況をモニターしたところ、反応が完全に終了していなかったため、更に、Dess-Martin試薬59.4mg(0.14mmol)及び無水ジクロロメタン0.2mLを溶液に加え、室温で2.5時間攪拌した。再びDess-Martin試薬59.4mg(0.14mmol)及び無水ジクロロメタン0.7mLを溶液に加え、室温で2.5時間攪拌後、さらにDess-Martin試薬89.1mg(0.21mmol)及び無水ジクロロメタン0.7mLを加え、室温で13時間攪拌した。飽和チオ硫酸ナトリウム水20mLを溶液に加えて3分間攪拌した後、反応混合物を酢酸エチル40mLで2回抽出した。有機層を混合し、飽和重曹水及び飽和食塩水それぞれ8mLで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラムで精製した。(富士シリシア化学 FL-60D(15%含水) 7g 、展開溶媒:酢酸エチル/n-ヘキサン=1/2→酢酸エチル)
収量: 37.9mg ;92%; 淡黄色油
【0085】
化合物4の1H-NNR スペクトル (200MHz/CDCl3)
δ: 4.73-4.60(m,1H), 4.16(q, J =7.0Hz 3/5H), 4.00-3.61(m,12/5H), 3.61-3.43(m,1H), 2.83-2.60(m,4/5H), 2.43-1.05(m,146/5H), 2.35(t,J =7.2Hz,2H), 1.00-0.83(m,12H), 0.09(m,6H)
【0086】
(4)化合物4の脱テトラヒドロピラニル化及び脱t-ブチルジメチルシリル化
【化13】
Figure 2004529960
【0087】
化合物4 37.9mg(0.064mmol)をアセトニトリル3.26mLに溶かした後、0℃に冷却し、フッ化水素酸/アセトニトリル混合溶液(3.26mL,アセトニトリル:46%フッ化水素酸=10:1)を加え、0℃で3時間攪拌した。TLCで反応状況をモニターした所、反応が完全に終了していなかったため、反応溶液を15時間冷蔵庫に静置した。しかし、反応が完全に終了していなかったため、反応溶液を10℃〜13℃で3時間攪拌後、23℃でさらに2時間攪拌した。飽和重曹水を加えて溶液を中和(pH4)後、飽和食塩水1mLを加え、反応混合物を酢酸エチル25mLで3回抽出した。有機層を混合し、飽和食塩水1mLで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラムで精製し、化合物5を得た。(富士シリシア化学 FL-60D(15%含水) 5g、展開溶媒:酢酸エチル/n-ヘキサン=1/1→3/2→7/3→ 4/1)
収量: 4.4mg ;17.5% ; 無色油
【0088】
化合物5の1H-NNR スペクトル (200MHz/CDCl3)
δ:4.25 - 4.08 (1 H, m, 11-H), 3.88 - 3.64 (1 H, m, 15-H), 2.83 - 2.60 (1 H, m, 10-Hβ), 2.35 (2 H, t, J = 7.2 Hz, 2-H2), 2.31 - 2.10 (1 H, m, 10-Hα), 2.10 - 1.20 (22 H, m, 3-H2, 4-H2, 5-H2, 6-H2, 7-H2, 8-H, 12-H, 13-H2, 14-H2, 17-H2, 18-H2, 19-H2), 0.93 (3 H, t, J = 7.1 Hz, CH3)
【0089】
(5)化合物5のエピマーへの分離
化合物5 64.5 mg を以下の条件でHPLC分取した。
【0090】
[分取条件]
カラム: Merck Hibar Lichrosorb DIOL (7μm) 25×250mm (ロット.600008)
移動相: ヘキサン/IPA=90/10
溶離様式: 定組成溶離
検出: UV-294nm
流速: 30mL/分
注入量: 約 30mg (2mL 注入)/ショット
【0091】
化合物6粗精製品 24 mg (回収率46%,無色油) と 化合物7粗精製品 19 mg(回収率36.5%,無色油)を得た。
【0092】
化合物6粗精製品を再度シリカゲルカラムで精製し(富士シリシア化学 BW-300 5.2 g 、展開溶媒:酢酸エチル/n-ヘキサン=1/1→3/2→7/3→4/1→5/1)、化合物6精製品 19 mg (回収率79%,無色油)を得た。
【0093】
化合物7粗精製品を再度HPLCで精製し、化合物7精製品 15.4mg(回収率81%,無色油)を得た。
【0094】
化合物6の1H-NMR スペクトル (200 MHz, CDCl3)
δ:4.23 - 4.09 (1 H, m, 11-H), 3.84 - 3.63 (1 H, m, 15-H), 2.73 (1 H, dd, J = 18.2, 7.0 Hz, 10-Hβ), 2.35 (2 H, t, J = 7.2 Hz, 2-H2), 2.25 (1 H, dd, J = 18.4, 7.8 Hz, 10-Hα), 2.20 - 1.20 (22 H, m, 3-H2, 4-H2, 5-H2, 6-H2, 7-H2, 8-H, 12-H, 13-H2, 14-H2, 17-H2, 18-H2, 19-H2), 0.94 (3 H, t, J = 7.2 Hz, CH3)
【0095】
化合物7の1H-NMR スペクトル (200 MHz, CDCl3)
δ:4.25 - 4.09 (1 H, m, 11-H), 3.88 - 3.65 (1 H, m, 15-H), 2.72 (1 H, dd, J = 18.3, 6.8 Hz, 10-Hβ), 2.35 (2 H, t, J = 7.2 Hz, 2-H2), 2.23 (1 H, dd, J = 18.5, 7.5 Hz, 10-Hα), 2.13 - 1.20 (22 H, m, 3-H2, 4-H2, 5-H2, 6-H2, 7-H2, 8-H, 12-H, 13-H2, 14-H2, 17-H2, 18-H2, 19-H2), 0.93 (3 H, t, J = 7.1 Hz, CH3)
【試験例】
【0096】
(エンテロプーリング作用)
雄性ウィスターラット (Crj Wistar Rat, 体重180g〜200g) を用いた。水のみを与えて24時間絶食した動物に、経口投与の場合(p.o.)、被験薬(化合物5、PGEまたはPGE)を溶解した蒸留水を5 mL/kgの投与容量で、静脈内投与の場合(i.v.)、被験薬(化合物5)を溶解した生理食塩水を2 mL/kgの投与容量で投与した。投与30分後に頸椎脱臼法により安楽死させた後、開腹し、腸管内液を集めてその容量を測定した。媒体のみを投与したコントロール群の腸管内液量を50%増量せしめた被験薬の投与量をED50値とした。
結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
Figure 2004529960
【0098】
化合物5:13,14−ジヒドロ−15RS−ヒドロキシ−16,16−ジフルオロ−PGE
【0099】
上記結果より、本発明の化合物が強いエンテロプーリング作用を有することが示された。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は化合物5のHPLCパターンを示す。該化合物はエピマーへと分離された(化合物6および7)。

Claims (31)

  1. 排便を誘発する必要がある患者に対して、排便を誘発するのに有効量の下記部分構造(I)を含むハロゲン化生理活性脂質を投与することを含む排便効果を提供するための方法:
    Figure 2004529960
    [上記構造中、Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
    Zは、
    Figure 2004529960
    (RおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシあるいはヒドロキシ(低級)アルキル、但しRおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシとなることはない);
    XおよびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、XおよびXの基のうちの少なくとも1つはハロゲン)]。
  2. ハロゲン化生理活性脂質が、式(II)で表される化合物である請求項1記載の方法:
    Figure 2004529960
    [式中、L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
    Aは、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
    Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
    Zは、
    Figure 2004529960
    (RおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシあるいはヒドロキシ(低級)アルキル、但しRおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシとなることはない);
    は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;
    XおよびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、XおよびXの基のうちの少なくとも1つは、ハロゲン);そして、
    Raは、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシで置換された、飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基;シクロ(低級)アルキル基;シクロ(低級)アルキルオキシ基;アリール基;アリールオキシ基;複素環基;複素環オキシ基]。
  3. 化合物が16−モノまたはジハロゲン−プロスタグランジン化合物である、請求項2記載の方法。
  4. 化合物が13,14−ジヒドロ−16−モノまたはジハロゲン−プロスタグランジン化合物である、請求項2記載の方法。
  5. 化合物が16−モノまたはジフルオロ−プロスタグランジン化合物である、請求項2記載の方法。
  6. 化合物が13,14−ジヒドロ−16−モノまたはジフルオロ−プロスタグランジン化合物である、請求項2記載の方法。
  7. 化合物が16−モノまたはジハロゲン−プロスタグランジンE化合物である、請求項2記載の方法。
  8. 化合物が13,14−ジヒドロ−16,16−ジフルオロ−プロスタグランジンEである、請求項2記載の方法。
  9. 便秘の緩和あるいは予防のためである請求項1記載の方法。
  10. 胃腸管を洗浄するためである請求項1記載の方法。
  11. 下記式(IV)で示される新規化合物:
    Figure 2004529960
    [式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
    Aは、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
    B’は、−CH−CH−;
    Zは、
    Figure 2004529960
    (RおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシあるいはヒドロキシ(低級)アルキル、但しRおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシとなることはない);
    は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;
    X’およびX’は、同じであっても異なっていてもよいハロゲン原子;
    は、単結合または低級アルキレン;そして、
    は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ]。
  12. 排便を誘発するのに有効量の下記部分構造(I)を含むハロゲン化生理活性脂質を含む下剤組成物:
    Figure 2004529960
    [上記構造中、Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
    Zは、
    Figure 2004529960
    (RおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシあるいはヒドロキシ(低級)アルキル、但しRおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシとなることはない);
    XおよびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、XおよびXの基のうちの少なくとも1つはハロゲン;)]。
  13. ハロゲン化生理活性脂質が下記式(II)によって示される化合物である請求項12記載の組成物:
    Figure 2004529960
    [式中、L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
    Aは、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
    Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
    Zは、
    Figure 2004529960
    (RおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシあるいはヒドロキシ(低級)アルキル、但しRおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシとなることはない);
    は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;
    XおよびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、XおよびXの基のうちの少なくとも1つは、ハロゲン);そして、
    Raは、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシで置換された、飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基;シクロ(低級)アルキル基;シクロ(低級)アルキルオキシ基;アリール基;アリールオキシ基;複素環基;複素環オキシ基]。
  14. 化合物が16−モノまたはジハロゲン−プロスタグランジン化合物である、請求項13記載の組成物。
  15. 化合物が13,14−ジヒドロ−16−モノまたはジハロゲン−プロスタグランジン化合物である、請求項13記載の組成物。
  16. 化合物が16−モノまたはジフルオロ−プロスタグランジン化合物である、請求項13記載の組成物。
  17. 化合物が13,14−ジヒドロ−16−モノまたはジフルオロ−プロスタグランジン化合物である、請求項13記載の組成物。
  18. 化合物が16−モノまたはジハロゲン−プロスタグランジンE化合物である、請求項13記載の組成物。
  19. 化合物が13,14−ジヒドロ−16,16−ジフルオロ−プロスタグランジンEである、請求項13記載の組成物。
  20. 便秘の緩和あるいは予防のためのものである請求項12記載の組成物。
  21. 胃腸管を洗浄するためのものである請求項12記載の組成物。
  22. 下剤組成物を製造するための下記部分構造(I)を含むハロゲン化生理活性脂質の使用:
    Figure 2004529960
    [上記構造中、Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
    Zは、
    Figure 2004529960
    (RおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシあるいはヒドロキシ(低級)アルキル、但しRおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシとなることはない);
    XおよびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、XおよびXの基のうちの少なくとも1つはハロゲン)]。
  23. ハロゲン化生理活性脂質が、式(II)で表される化合物である請求項22記載の使用:
    Figure 2004529960
    [式中、L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
    Aは、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
    Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
    Zは、
    Figure 2004529960
    (RおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシあるいはヒドロキシ(低級)アルキル、但しRおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシとなることはない);
    は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;
    XおよびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、XおよびXの基のうちの少なくとも1つは、ハロゲン);そして、
    Raは、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシで置換された、飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基;シクロ(低級)アルキル基;シクロ(低級)アルキルオキシ基;アリール基;アリールオキシ基;複素環基;複素環オキシ基]。
  24. 化合物が16−モノまたはジハロゲン−プロスタグランジン化合物である、請求項23記載の使用。
  25. 化合物が13,14−ジヒドロ−16−モノまたはジハロゲン−プロスタグランジン化合物である、請求項23記載の使用。
  26. 化合物が16−モノまたはジフルオロ−プロスタグランジン化合物である、請求項23記載の使用。
  27. 化合物が13,14−ジヒドロ−16−モノまたはジフルオロ−プロスタグランジン化合物である、請求項23記載の使用。
  28. 化合物が16−モノまたはジハロゲン−プロスタグランジンE化合物である、請求項23記載の使用。
  29. 化合物が13,14−ジヒドロ−16,16−ジフルオロ−プロスタグランジンEである、請求項23記載の使用。
  30. 組成物が便秘の緩和あるいは予防のためである請求項22記載の使用。
  31. 組成物が胃腸管を洗浄するためである請求項22記載の使用。
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