JP2004503202A - 結晶性TNF−α変換酵素およびその使用 - Google Patents

結晶性TNF−α変換酵素およびその使用 Download PDF

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Abstract

腫瘍壊死因子−α変換酵素(TACE)が、産生、精製および結晶化される。結晶の三次元座標がX線回折によって得られる。座標はコンピュータ可読媒体またはビデオメモリの一部に記録可能であり、それらはTACEを研究するためのシステムの一部として用いうる。座標は、TACEと会合する化合物の設計、スクリーニングおよび開発にも用いられる。

Description

【0001】
関連出願に関する情報
本出願は、1998年2月4日に提出された米国仮特許出願第60/073,709号、1998年3月30日に提出された米国特許出願第09/050,083号(1999年1月27日に提出された請願に従って米国仮出願に変更される予定)、および1999年1月27日に提出された「結晶性TNF−α変換酵素およびその使用」と題する米国仮特許出願による優先権を主張する。
【0002】
発明の背景
サイトカインである腫瘍壊死因子−α(TNFα)は、炎症反応において一定の役割を果たすほか、腫瘍細胞に対する細胞傷害性をもつことが知られている。しかし、TNFαは過剰に産生されると、最終的には多臓器不全および死に至るような重篤な障害を人体にもたらすことがある。ビーメルマンス(Bemelmans)ら、「腫瘍壊死因子:機能、放出および排出(Tumor Necrosis Factor:Function、ReleaseおよびClearance)」、Crit. Rev. Immun. 16:1〜11(1996)を参照のこと。
【0003】
腫瘍壊死因子−αは、単核食細胞、T細胞、B細胞、マスト細胞およびNK細胞などの活性化細胞によって産生される。TNFαには2つの存在形態がある:1つは相対分子質量が26kDのII型膜蛋白質であり、もう1つは膜型蛋白質の分解によって生じる可溶性17kD型である。TNFα膜蛋白質は223アミノ酸からなる膜アンカー型前駆体から合成される。可溶性TNFαは膜アンカー型プロテイナーゼによって膜結合型前駆体から放出される。最近、このプロテイナーゼは、TNFα変換酵素(TACE)と呼ばれる多ドメイン型メタロプロテイナーゼとして同定された。ブラック(Black)ら、「細胞から腫瘍壊死因子−αを放出させるメタロプロテイナーゼであるディスインテグリン(A metalloproteinase disintigrin that releases tumor−necrosis factor−α from cells)」、Nature 385:729〜733(1997)、モス(Moss)ら、「腫瘍壊死因子−α前駆体のプロセシングを行うディスインテグリン・メタロプロテイナーゼのクローニング(Cloning of a disintigrin metalloproteinase that processes precursor tumor−necrosis factor−α)」、Nature 385:733〜736(1997)参照のこと。TACEは最近、N末端シグナルペプチド、プロドメイン、フリン(furin)切断部位(211〜214残基)の前に位置する263残基の触媒ドメイン(TCD)、ディスインテグリンドメイン、EGF様ドメインおよびクランビン(crambin)様ドメインを含む細胞外ドメイン、膜貫通ヘリックスと思われる部分、ならびに細胞内C末端尾部からなるジンクエンドペプチダーゼとして同定された。腫瘍壊死因子−α変換酵素(TACE)は、ポリヌクレオチド配列を含め、刊行されたPCT出願・国際公開公報第96/41624号に詳細に記載されており、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0004】
上記の通り、TNFαの過剰産生または無秩序な産生は、生理的に重大な脅威をもたらす。これは、慢性関節リウマチ、悪液質および内毒素ショックなどの種々の有害な生理的疾患に関与するとみなされている。また、これが最終的に臓器不全および死に至ることもある。このため、TNFαの循環系への放出を抑制または遮断する手法が必要である。TACEがTNFαの変換に関与することから、TACEの阻害、修飾または調節は、TNFαの循環系への放出に影響を及ぼすと考えられる。メタロプロテイナーゼの阻害物質、および構造に基づくその設計は、ザスク(Zask)ら、「マトリックスメタロプロテイナーゼの阻害:構造に基づく設計(Inhibition of Matrix Metalloproteinase:Structure Based Design)」、Current Pharmaceutical Design、2:624〜661(1996)に記載されている。したがって、阻害物質、受容体または修飾物質(modulator)などのTACEと会合する化合物は、腫瘍壊死因子−αの過剰産生または無秩序な産生に伴う有害作用から患者を保護するために有用と考えられる。
【0005】
発明の概要
本発明の1つの局面によれば、ポリペプチドがTNF−α変換酵素ポリペプチドである、結晶形状にあるポリペプチドを含む組成物が提供される。1つの態様において、TNF−α変換酵素ポリペプチドはTNF−α変換酵素の触媒ドメインを含む。もう1つの態様において、TNF−α変換酵素ポリペプチドは、TNF−α変換酵素のプロドメインおよび触媒ドメインをコードするポリヌクレオチドの発現産物である。1つのさらなる態様において、TNF−α変換酵素ポリペプチドは、TNF−α変換酵素のアミノ酸残基1〜477位をコードするポリヌクレオチドの発現産物である。さらにもう1つの態様において、ポリヌクレオチドはアミノ酸残基Ser266がAlaに変化し、アミノ酸残基Asn542がGlnに変化するように置換され、配列Gly−Ser−(His)をコードする第2のポリヌクレオチドはC末端と融合される。
【0006】
本発明のもう1つの局面によれば、上記の組成物は、TNF−α変換酵素ポリペプチドとの共結晶化(co−crystallization)に適した結合パートナー(binding partner)をさらに含む。1つの態様において、結合パートナーはヒドロキサム酸に基づく結合パートナーである。もう1つの態様において、結合パートナーはN−{D,L−2−(ヒドロキシアミノカルボニル)メチル−4−メチルペンタノイル}−L−3−アミノ−2−ジメチルブタノイル−L−アラニン,2−(アミノ)エチルアミド(N−{D,L−2−(hydroxyaminocarbonyl)methyl−4−methylpentanoyl}−L−3−amino−2−dimethylbutanoyl−L−alanine,2−(amino)ethyl amide)である。
【0007】
さらなる態様によれば、上記の組成物は、2.0Åで回折し、単斜晶系であって、結晶学的に独立した4つのTNF−α変換酵素触媒ドメイン(TCD)分子を含む単位格子を有し、TCD分子が非対称格子内にあり、ならびに/または単斜空間群P2であって、格子定数がa=61.38A、b=126.27A、c=81.27Aおよびβ=107.41゜である、結晶構造を有する。
【0008】
本発明のさらにもう1つの態様において、上記のポリペプチドは、表1による構造座標またはその実質的部分を特徴とする。
【0009】
本発明の1つのさらなる局面によれば、(A)TACEポリペプチドおよび結合パートナーを含む溶液を結晶化緩衝液と混合する段階、ならびに(B)結晶性沈殿物を形成させるためにドロップ蒸気拡散法(drop vapor diffusion)によって段階(A)の混合物を結晶化させる段階を含む、TNF−α変換酵素ポリペプチドの結晶化のための方法が提供される。1つの態様において、本方法はさらに、(C)ドロップ蒸気拡散法によって形成された結晶性沈殿物からの種(seed)および結晶化促進物質を、TACEポリペプチドおよび結合パートナー基質を含む濃縮溶液と結晶化緩衝液との混合物中に移す段階、ならびに(D)結晶を形成させるためにドロップ蒸気拡散法によって段階(C)の混合物を結晶化させる段階を含む。もう1つの態様において、結晶化緩衝液は0.1Mクエン酸ナトリウム(pH 5.4)、20%w/v PEG 4000および20%v/vイソプロパノールである。さらにもう1つの態様において、結合パートナーはN−{D,L−2−(ヒドロキシアミノカルボニル)メチル−4−メチルペンタノイル}−L−3−アミノ−2−ジメチルブタノイル−L−アラニン,2−(アミノ)エチルアミドである。さらにもう1つの態様において、結晶化は4〜20℃の範囲の温度で行われる。もう1つの態様において、TACEポリペプチドおよび阻害物質を含む溶液は、緩衝液中に約5mg/mLから約12mg/mLまでの濃度である。1つのさらなる態様において、TACEポリペプチドおよび結合パートナーを含む溶液は結晶化緩衝液と1:1の比で混合される。
【0010】
本発明のさらにもう1つの局面によれば、TNF−α変換酵素ポリペプチドと共結晶化基質との共結晶化によって作られる腫瘍壊死因子−α(TNF−α)変換酵素結晶が提供される。
【0011】
本発明のさらにもう1つの局面によれば、TNF−α変換酵素の触媒ドメインまたはその一部に関するX線結晶学的座標データが記録されたコンピュータ可読媒体(computer−readable medium)が提供される。1つの態様において、コンピュータ可読媒体上には、表1に示すX線結晶学的座標データまたはその一部が記録される。もう1つの態様において、媒体はフロッピーディスク、ハードディスク、コンピュータテープ、RAM、ROM、CD、DVD、磁気ディスクおよび光ディスクからなる群から選択される。さらにもう1つの態様において、データ利用のための指示がプログラムされた装置とともに用いた場合にTNF−α変換酵素ポリペプチドまたはその一部の三次元画像表示用の画像シグナルを生成しうるコンピュータ可読媒体であるようなコンピュータ可読媒体上に、機械可読データが記録される。
【0012】
本発明の1つのさらなる局面によれば、TNF−α変換酵素ポリペプチドを研究するためのシステムであって、(a)TNF−α変換酵素ポリペプチドの少なくとも一部を表す情報を記憶しうるメモリであって、前記メモリが三次元空間における位置を特定する一組の空間座標を含む少なくとも1つの第1種の記憶領域と、複数のアミノ酸のうち1つの特徴を表す方法を含む少なくとも1つの第2種の記憶領域とを含み、前記第2種の記憶領域が前記三次元空間における前記TNF−α変換酵素ペプチドの少なくとも一部の少なくとも1つの特徴の幾何学的配置を表すために前記メモリにおいて前記第1種の記憶領域と論理的に関連づけられているようなメモリ、(b)前記第1種の記憶領域および前記第2種の記憶領域にアクセスするために前記メモリと連結されたプロセッサであって、前記メモリからのデータに基づいて前記三次元空間における前記TNF−α変換酵素ポリペプチドの少なくとも一部の少なくとも1つの特徴の三次元像を表す画像を描写するための画像シグナルを生成するプロセッサ、ならびに(c)前記画像シグナルを受け取るために前記プロセッサと連結されたディスプレイであって、前記画像シグナルに基づく前記三次元空間における前記TNF−α変換酵素ポリペプチドの少なくとも一部の少なくとも1つの特徴の三次元画像を描写するディスプレイ、を含むシステムが提供される。本発明の1つの態様において、画像シグナルには、前記三次元空間における前記TNFα変換酵素ポリペプチドの少なくとも一部のリボン構造の三次元画像を描写するためのシグナルが含まれる。本発明のもう1つの態様において、画像シグナルには、前記三次元空間における前記TNF−α変換酵素ポリペプチドの少なくとも一部のソリッドモデル表示による画像を描写するためのシグナルが含まれる。本発明のさらにもう1つの態様において、画像シグナルには、 前記三次元空間における前記TNF−α変換酵素ポリペプチドの少なくとも一部の静電表面ポテンシャル(electrostatic surface potential)の三次元画像を描写するためのシグナルが含まれる。本発明のさらにもう1つの態様において、画像シグナルには、前記三次元空間における前記TNF−α変換酵素ポリペプチドの少なくとも一部の三次元立体画像を描写するためのシグナルが含まれる。本発明の1つのさらなる態様において、システムはさらに、前記TNF−α変換酵素ポリペプチド以外の組成物の特徴の幾何学的配置を表すデータを記憶しうる記憶装置、およびオペレータからの指示を受け取るためのオペレータ・インターフェースであって、前記プロセッサが前記記憶装置および前記オペレータ・インターフェースと連結され、オペレータ・インターフェースからの指示に基づいて前記ディスプレイ上に前記TNF−α変換酵素ポリペプチドの少なくとも一部の少なくとも1つの特徴の前記三次元画像と対比して前記組成物の前記特徴の前記幾何学的配置を描写するための付加的な画像シグナルを生成するような、記憶装置およびオペレータ・インターフェースを含む。1つの態様において、記憶装置は前記メモリの一部である。もう1つの態様において、システムは複数の第1種および第2種の記憶領域を含む。
【0013】
本発明のもう1つの局面によれば、TNF−α変換酵素ポリペプチドの少なくとも一部の表示画面を生成するための情報を記憶しうるビデオメモリであって、以下の特徴を備えるビデオメモリが提供される:(a)それぞれが三次元空間における位置を特定する一組の空間座標を含む、少なくとも1つの第1種の記憶領域、および(b)それぞれが複数のアミノ酸のうち1つの特徴を画像表示するための情報を含む、少なくとも1つの第2種の記憶領域であって、前記三次元空間における前記TNF−α変換酵素ポリペプチドの少なくとも一部の少なくとも1つの特徴の幾何学的配置を表すための前記ビデオメモリにおいて前記第1種の記憶領域と論理的に関連づけられている第2種の記憶領域。1つの態様において、第2種の記憶領域は、前記三次元空間における前記TNF−α変換酵素ポリペプチドの触媒ドメイン部分の少なくとも1つの特徴の幾何学的配置を表すための前記ビデオメモリにおいて前記第1種の記憶領域と論理的に関連づけられている。もう1つの態様において、第1種の記憶領域および前記第2種の記憶領域は半導体メモリの領域である。さらにもう1つの態様において、第1種の記憶領域および前記第2種の記憶領域は光ディスクの領域である。さらにもう1つの態様において、第1種の記憶領域および前記第2種の記憶領域は磁気メモリの領域である。1つのさらなる態様において、ビデオメモリは複数の第1種および第2種の記憶領域を含む。
【0014】
本発明のさらにもう1つの局面において、TNF−α変換酵素と会合する化合物を同定する方法であって、(A)TNF−α変換酵素ポリペプチド結晶のX線回折座標に基づく、TNF−α変換酵素触媒ドメインと結合を形成する前記ポリペプチドに対する会合性化合物の設計、(B)前記化合物の合成、および(C)前記化合物の前記TNF−α変換酵素との会合能の決定、を含む方法が提供される。1つの態様において、会合性化合物は阻害物質、修飾物質またはTNF−α変換酵素活性を調節するその他の化合物である。もう1つの態様において、会合性化合物は競合的阻害物質、不競合的阻害物質または非競合的阻害物質である。さらにもう1つの態様において、座標は表1の座標またはその実質的部分である。1つのさらなる態様において、TNF−α変換酵素ポリペプチド結晶はTNF−α変換酵素の触媒ドメインを含む。さらにもう1つの態様において、TNF−α変換酵素ポリペプチドはTNF−α変換酵素のプロドメインおよび触媒ドメインをコードするポリヌクレオチドの発現産物である。さらにもう1つの態様において、TNF−α変換酵素ポリペプチドはTNF−α変換酵素のアミノ酸残基1〜477位をコードするポリヌクレオチドの発現産物である。もう1つの態様において、ポリヌクレオチドはアミノ酸残基Ser266がAlaに変化し、アミノ酸残基Asn542がGlnに変化するように置換され、配列Gly−Ser−(His)をコードする第2のポリヌクレオチドはC末端と融合される。1つのさらなる態様において、TNF−α変換酵素ポリペプチド結晶は結合パートナーとともに共結晶化される。さらにもう1つの態様において、結合パートナーは、ヒドロキサム酸に基づく結合パートナーまたはN−{D,L−2−(ヒドロキシアミノカルボニル)メチル−4−メチルペンタノイル}−L−3−アミノ−2−ジメチルブタノイル−L−アラニン,2−(アミノ)エチルアミドである。さらに他の態様において、TNF−α変換酵素ポリペプチド結晶は、2.0Åで回折し、単斜晶系であり、結晶学的に独立した4つのTNF−α変換酵素触媒ドメイン(TCD)分子を含む単位格子を有し、TCD分子が非対称格子内にあり、ならびに/または単斜空間群P2であって格子の定数がa=61.38Å、b=126.27Å、c=81.27Åおよびβ=107.41゜である、結晶構造を有する。本発明のさらにもう1つの態様において、会合性化合物はTNF−α変換酵素のS1’領域と会合するように設計される。さらにもう1つの態様において、会合性化合物はTNF−α変換酵素のS1’S3’ポケットと会合するように設計される。本発明のさらに他の態様において、会合性化合物は(i)亜鉛をキレート化する部分を組み入れる、(ii)TNF−α変換酵素のLeu348もしくはGly349と水素結合を形成する、(iii)TNF−α変換酵素のS1’ポケットを占有する非極性基を導入する、(iv)TNF−α変換酵素のS1’−S3’ポケットをつなぐ経路(channel)内に位置し、その経路と適切なファンデルワールス接触を行う基を導入する、および/または(v)TNF−α変換酵素の骨格アミド基上のLeu348またはGly349と水素結合を形成するように設計される。
【0015】
本発明の以上およびその他の局面は、本明細書に含まれる教示に鑑みて、当業者には明らかになると考えられる。
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、高度に精製された腫瘍壊死因子−α変換酵素(TACE)ポリペプチド、TACEポリペプチドの製造および精製の方法、TACEポリペプチドの結晶化の方法、ならびにTACEポリペプチド結晶に関する。本発明はさらに、TACEポリペプチド結晶を用いたX線回折法、およびTACEポリペプチドのX線結晶学的構造座標を得る方法、ならびに構造座標それ自体に関する。さらにまた、本発明は、TACEポリペプチドの三次元構造を解明するためのTACEポリペプチドの構造座標の使用、ならびにTACEと会合する化合物の設計および開発に関する。本発明に従って提供される三次元構造および構造座標の知見が得られれば、当業者はTACEと相互作用すると思われる化合物を製造することができる。このような相互作用性化合物は、蛋白質工学(Protein Engineering)(OxenderおよびFox編)(Alan R. Liss, Inc. 1987)に開示されているものを含む、種々の技法および設計基準によって製造することができる。
【0017】
本明細書で用いるTACEとは、26kDの細胞膜結合型TNFαをTNFα蛋白質のC末端156残基を含む可溶性17kD型へと変換しうる一群のポリペプチドを意味する。TACEには、その全体が参照として本明細書に組み入れられるPCT出願・国際公開公報第96/41624号に記載されたアミノ酸配列を有する蛋白質のほか、このような配列とアミノ酸レベルでの相同性がある、好ましくは50%以上、より好ましくは少なくとも80%の相同性、さらにより好ましくは90%の相同性がある蛋白質のうち任意のものが含まれる。さらにTACEは、PCT出願・国際公開公報第96/41624号に開示されたヌクレオチド配列の発現産物のことも指す。TACEにはさらに、生物活性を保持していて分泌可能である、蛋白質の細胞外部分を含む膜結合型蛋白質および可溶性もしくは切断型蛋白質が含まれる。このような蛋白質の例はPCT出願・国際公開公報第96/41624号に記載されている。
【0018】
TACEのアミノ酸配列またはその任意の部分もしくは残基は、ブラック(Black)ら、「細胞から腫瘍壊死因子−αを放出させるメタロプロテイナーゼディスインテグリン(Metalloproteinase disintegrin that releases tumor−necrosis factor−α from Cell)」、Nature 385:729〜733(Feb. 1997)に見いだすことができ、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる。TACEのアミノ酸配列における変形物(variation)も本発明の範囲に含まれる。本明細書に含まれるTACEアミノ酸配列に対する言及はすべて、ブラック(Black)ら、前記における配列に対する言及である。
【0019】
本明細書で用いるTACE触媒ドメイン(TCD)とは、残基215から477位の間、およびその前に位置するフリン(furin)切断部位(残基211〜214位)を含むTACEポリペプチドの部分、またはペプチドPLAQAVRSSSを切断しうるその任意の部分を意味する。
【0020】
TACE ポリペプチドの発現、単離および精製
腫瘍壊死因子−α変換酵素(TACE)は、刊行されたPCT出願・国際公開公報第96/41624号に記載されている。その出願は、TACEまたはTACEの一部をコードする単離された核酸、TACEまたはその一部をコードするcDNAを含む発現ベクター、およびTACEまたはTACEの一部をコードするcDNAを含む発現ベクターによる形質転換またはトランスフェクションを受けた宿主細胞を記載している。その出願はさらに、例えば、TACEを発現するように操作されたトランスフェクト細胞を培養し、続いて組換え的に産生されたTACEまたはその一部を精製することなどにより、TACEおよびその一部を産生させるための工程も記載している。TACEポリペプチドの単離、発現および精製の方法は、刊行されたPCT出願・国際公開公報第96/41624号に詳細に記載されている。PCT(特許協力条約)第96/41624号の全体は参照として本明細書に組み入れられる。
【0021】
本発明によれば、TACEのシグナルペプチド、プロドメイン、および触媒ドメイン、すなわちアミノ酸残基1〜477位をコードするcDNAを適切な発現ベクター中に挿入し、適切な細胞系において発現させる。cDNAは、発現を促進する、または本発明の本質から逸脱しないその他の目的を達成する、隣接領域などのその他の領域を含んでもよい。
【0022】
TACEポリペプチドまたはTCDなどのその機能的部分をコードするcDNAを、付加、置換、欠失または挿入によって変更することも可能である。このような変更は、例えば、グリコシル化の防止、不適切もしくは望ましくないジスルフィド結合の形成の防止、および/または発現増強のために施しうる。このような変更の例は国際公開公報第96/41624号に記載されており、それに記載された方法およびその他の従来の方法によって行うことができる。TACEを複合体化してもよい。このような複合体は、精製および/または同定を容易にするために添加されたペプチドを含むことができる。このようなペプチドには、例えば、ポリHisペプチドが含まれる。複合体化(conjugation)は、米国特許第5,011,912号およびホップ(Hopp)ら、Bio/Technology 6:1204(1988)に記載されている。
【0023】
本発明の1つの態様において、cDNAは、TACEのシグナルペプチド、プロドメイン、および触媒ドメイン(TCD)、すなわち残基1〜477位を含み、Ser266がAlaに変化し、Asn452がGlnに変化したTNF−α変換酵素ポリペプチドをコードする。これらの置換は、N結合型グリコシル化の防止に有用である。さらに、配列Gly−Ser(His)をC末端に付加してもよい。配列Gly−Ser(His)は、Ni−NTA樹脂などの金属キレート親和性樹脂を用いるポリペプチドの精製を容易にする。
【0024】
TACEまたはその一部をコードするヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターは、よく知られた方法を用いて調製しうる。TACEポリペプチドの発現のために適した宿主細胞には、原核細胞、酵母細胞およびより高等な真核細胞が含まれる。本発明における使用に適したベクターおよび宿主細胞は、国際公開公報第96/41624号に記載されている。本発明による組換えTACEの発現に用いうる適切な発現系のさらなる例には、昆虫細胞におけるバキュロウイルス系(LuckowおよびSummers、Bio/Technology 6:47(1988)参照のこと)およびCOS−7細胞などの哺乳動物細胞系(Gluzmanら、Cell 23:175(1981))を含む、哺乳動物または昆虫宿主細胞の培養発現系が含まれる。 他の例も当技術分野で知られており、これには国際公開公報第96/41624号に記載されたものが含まれる。本発明の1つの態様において、TACEポリペプチドはCHO細胞内で発現される。この態様において、細胞はVal212およびArg215に始まるTACEポリペプチドの混合物を分泌する。
【0025】
1つの態様においては、ベクターを取り込んでいない細胞を死滅させる薬物の存在下で細胞を培養することによって、安定的発現を行う細胞を選択しうる。適した選択法の例は、例えば、カウフマン(Kaufman, R.J.)、「哺乳動物細胞における異種遺伝子の選択および共増幅(Selection and coamplification of heterologous genes in mammalian cells)」、Methods in Enzymology、185:537〜566(1990)に記載されている。
【0026】
発現されたTACEポリペプチドの精製は、国際公開公報第96/41624号に記載されたものなどの任意の適した手段によって行いうる。本発明の1つの局面によれば、結晶化のために適したTACEポリペプチドを入手することが好ましい。結晶化のために適したTACEポリペプチドの入手に際しては、TACEポリペプチドを精製するための工程が、適切な結晶化が起こる程度に純粋なポリペプチドを得る上で十分であることが重要である。
【0027】
好ましい精製方法の一つは、TACE分泌細胞の培養物から得た適切な量の培地から始まる。この培地は一般に培養物の上清である。培地は精製しようとするTACEポリペプチドを含む。好ましくは、TACEポリペプチドは、精製を容易にする1つの複合体または複数の複合体をコードするように改変された配列を有するTACEポリペプチドをコードするDNAを用いて組換え的に産生される。例えば、金属キレート樹脂を用いる精製を容易にするために、Gly−Ser−(His)をコードする配列をC末端に付加してもよい。
【0028】
培地は、例えば透析濾過などによって濃縮される。適した透析濾過ユニットには、ミリポア(Millipore)社のカットオフ値10Kの1ft TFF透析濾過ユニットが含まれる。続いて、適した緩衝液を濃縮培地に添加する。任意の適した緩衝液を用いてよい。このような適した緩衝液の一つは、20mM Tris(pH 7.5)および300mM NaClを含む。
【0029】
試料には多数回にわたって再濃縮および希釈を行う。例えば、試料を再濃縮し、緩衝液で2回目の希釈を行い、さらに再濃縮し、緩衝液で3回目の希釈を行い、最後の再濃縮を行う。透析濾過ユニット中に残った試料を、バックフラッシュ法などの適切な方法によって回収する。回収した材料を続いて適した膜を通して濾過してもよい。適した膜には、例えば、孔径0.45または0.22ミクロンの膜が含まれる。続いてアジ化物を添加する。濾過した試料を約2〜9℃などの低温で一晩保存してもよい。一晩保存した後、濾過した試料に対して、貯蔵水溶液からのイミダゾールおよび貯蔵水溶液からのZnClを添加する。続いて試料を適切なカラムにかける。適切なカラムの一つは、特にTACEポリペプチドを配列Gly−Ser−(His)と結合させる場合には、Ni−NTA樹脂などの金属キレート樹脂である。
【0030】
カラムを、20mM Tris(pH 7.5)、300mM NaCl、5mMイミダゾールおよび5μM ZnClからなる緩衝液などの緩衝液で洗浄する。続いて、イミダゾールの濃度を徐々に高める勾配により、TACEポリペプチドを溶出させる。画分はグリセリン、Tris pH 8の水溶液を入れた管に回収する。グリセリン溶液はカラム処理を行う当日に調製することが好ましい。
【0031】
各画分からのアリコートを膜にスポットとして転写した後にアミドブラックで染色し、どの画分が意味のある量の蛋白質を含むかを判定する。または、各画分から少量、例えば5μlを採取し、クーマシー染色を用いるゲル分析のために用いてもよい。意味のある量の蛋白質がみられた画分をプールし、続いてそのプールを、例えば透析濾過ユニットを用いて濃縮する。
【0032】
場合によっては、ポリペプチドが凝集することもありうる。凝集物を除去し、精製をさらに容易にするために、濃縮した試料に対して、ヒドロキサム酸に基づく阻害物質などのTACEの阻害物質を貯蔵水溶液から添加してもよく、オクチルグルコシド(ベーリンガーマンハイム(Boehringer Mannheim)社の市販品)を貯蔵水溶液から添加してもよい。続いて、試料を室温で15〜24時間インキュベーションする。
【0033】
インキュベーションの後に、試料をサイズ排除カラムにかける。カラムをまず、10mM Tris(pH 7.5)、100mM NaCl、10%グリセリンからなる緩衝液などの適切な緩衝液で平衡化する。適したサイズ排除カラムには、例えば、TSK−G3000SWGまたはSuperdex−200などの類似物が充填されたLKB 2135−365が含まれる。続いて緩衝液をカラムに通す。高度に精製されたTACEポリペプチドは280nmでの吸収によって検出可能である。
【0034】
意味のある蛋白質がみられた全画分に関して、どの画分をプールすべきかを判定するためにゲル分析を行う。サイズ排除クロマトグラフィーのプールは、例えば透析濾過ユニットを用いて濃縮する。
【0035】
続いて、精製した試料に阻害物質などの結合パートナーを添加してもよい。結合パートナーはTACEポリペプチドの安定化に特に有用である。結合パートナーは任意の適した化合物でよい。適した結合パートナーには、例えば、ヒドロキサム酸に基づく阻害物質が含まれる。適した阻害物質の一つは 、N−{D,L−2−(ヒドロキシアミノカルボニル)メチル−4−メチルペンタノイル}−L−3−アミノ−2−ジメチルブタノイル−L−アラニン,2−(アミノ)エチルアミドである。この阻害物質は、その他の阻害物質と並んで、その全体が参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5,594,106号(Blackら)に記載されている。
【0036】
この蛋白質複合体は、例えば約4℃などの低温で保存可能である。
【0037】
TACE 結晶および TACE ポリペプチドの結晶化の方法
本発明の1つの局面は、TACEポリペプチドの結晶化の方法に関する。1つの好ましい方法は、TACEポリペプチドと上記の結合パートナーとの共結晶化を含む。TACEポリペプチドの入手ならびにポリペプチドの精製のための手段の例は先に述べた。
【0038】
結晶は、ドロップ蒸気拡散法、バッチ法、液体ブリッジ法および透析法を含む任意の適した方法により、任意の適した条件下で成長または形成させうる。ドロップ蒸気拡散法による結晶化が好ましいことがしばしばである。さらに、結晶化の条件はさまざまであることを当業者は理解すると思われる。当技術分野ではポリペプチド結晶化のさまざまな方法が一般に知られている。例えば、国際公開公報第95/35367号、国際公開公報第97/15588号、欧州特許646 599 A2号、英国特許第2 306 961 A号および国際公開公報第97/08300号を参照されたい。
【0039】
本発明の1つの態様においては、Ser266がAlaに変化し、Asn452がGlnに変化し、配列Gly−Ser−(His)がC末端に付加されたTACE残基1〜477位を含むDNA構築物をCHO細胞内で発現させる。これらの細胞はプロセシングを受けたTACEの混合物を主として分泌し、その約半分はVal212より始まり、約半分はArg215より始まる。この混合物を上記の通りに精製する。精製されたTACEポリペプチドを、添加した結合パートナーとともに、上記の緩衝液中で保存する。
【0040】
TACEポリペプチドおよび結合パートナーを共結晶化させる。上記のTACE緩衝液におけるポリペプチド濃度が約5mg/mlから約12mg/mlまでの範囲であるTACE/結合パートナー溶液を、適切な結晶化緩衝液と混合し、ドロップ蒸気拡散法などの適切な結晶化法を用いて結晶化させる。適した結晶化緩衝液には、例えば以下のものが含まれる:0.1M酢酸ナトリウム(pH 5.3)、0.2M CaCl、30%v/vエタノール;0.1Mクエン酸ナトリウム(pH 5.0)、40%v/vエタノール;0.1Mクエン酸ナトリウム(pH 8.7)、20%w/v PEG 4000、20%v/vイソプロパノール;および0.1Mクエン酸ナトリウム(pH 5.4)、20%w/v PEG 4000、20%v/vイソプロパノール。試料を約4〜20℃の範囲の温度でインキュベーションする。これにより、結晶性沈殿物が形成される。
【0041】
得られた結晶性沈殿物からの種(seed)を結晶全体または粉砕結晶の懸濁液として、ウサギの毛などの適切な結晶化促進物質とともに、結晶化緩衝液中にある濃縮TACE/基質溶液に添加する。これにより、X線データの収集に適した結晶が形成される。
【0042】
本発明のもう1つの局面は、TACEポリペプチド結晶に関する。このような結晶の一つは、阻害物質とともに共結晶化したTNF−α変換酵素触媒ドメイン(TCD)ポリペプチドを含む。この結晶は約2Aで回折し、単斜晶系空間群P2に属する。この結晶の単位格子は結晶学的に独立した4つのTCD分子を含む。TCD分子は非対称格子内にあり、分離した四量体としてのクラスターは形成せず、無限周期的構造へと統合される。結晶の格子定数は以下の通りである:a=61.38Å(オングストローム)、b=126.27Å、c=81.27Åおよびβ=107.41゜。
【0043】
線回折
本発明のもう1つの局面は、TACEの構造、特にTACE触媒ドメイン(TCD)の構造に関する。TACEの構造は、上記のTACEポリペプチドを含む結晶を用いて決定することができる。本発明によれば、TACE、特にTCDの構造がX線結晶学を用いて決定される。ポリペプチドの三次元構造座標を得るための任意の適したX線回折法を用いうる。三次元構造座標、またはTACE触媒ドメインもしくはペプチドPLAQAVRSSSを切断しうるその一部などの、関心対象のTACEポリペプチドの一部を特徴づけるその任意の部分を、本明細書で説明する通りに用いることができる。
【0044】
TACE 線回折座標の使用方法
本発明は、TACE触媒ドメインに関する上記のX線回折試験から得られた構造座標の使用にも関する。座標は、直接解析により、コンピュータ利用により、またはそれらの組み合わせにより、TACE触媒ドメインの二次および三次構造を含む構造を決定するために利用しうる。TACE触媒ドメインの構造座標は、TACEと会合する化合物の開発、設計および/またはスクリーニングにも用いることができる。本明細書で用いる「会合する」とは、化合物がTACEとイオン的、共有結合的、水素結合、ファンデルワールス相互作用、塩橋、立体相互作用、親水性相互作用および疎水性相互作用によって結合または相互作用することを意味する。さらに、「会合する」という用語は、TACE触媒ドメインの任意の部分との会合を含む。例えば、TACEと会合する化合物は、競合的阻害物質、不競合的阻害物質および非競合的阻害物質として作用する化合物でありうる。TACEと会合する化合物が、メディエーターまたは他の調節性化合物として作用する化合物であってもよい。また、TACEと会合する化合物は、基質のTACEとの化学反応において異性化して短寿命の反応中間体となる化合物であってもよい。特に、TACEと会合するように設計された化合物は、阻害物質、メディエーターおよび他の調節性化合物として治療的に用いうる。
【0045】
他のポリペプチドと会合する化合物の構造決定、分子設計および選択ならびに合成のためのX線座標の使用は、当技術分野で周知である。刊行されたPCT出願・国際公開公報第95/35367号は、酵素の活性部位と会合する化合物の設計、評価、合成および使用のためのX線構造座標の使用を記載している。英国特許出願第2306961A号は、理論的薬剤設計におけるX線座標の使用を記載している。刊行されたPCT出願・国際公開公報第97/15588号は、X線回折パターンを用いたポリペプチドの構造決定、ならびに関心対象のポリペプチドと会合する化合物の探索における座標および三次元構造の使用を記載している。しかし、TACEと会合する化合物の構造決定、分子設計および選択ならびに合成のための、TACEポリペプチドに関するX線座標の使用は本発明によって初めて可能になった。
【0046】
本発明の1つの局面においては、上記の方法によって得られた構造座標を三次元形態表示を含む画像表示として表示してもよく、それに変換してもよい。これは、一組の構造座標から分子またはその一部の表示画像を生成しうる市販のコンピュータプログラムを用いて行いうる。一組の構造座標から分子またはその一部の表示画像を生成しうるコンピュータプログラムの例は、刊行されたPCT出願・国際公開公報第97/08300号に記載されており、これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0047】
本発明のもう1つの局面においては、構造座標および構造を、他のメタロプロテイナーゼなどの他の類似分子と比較する、または重ね合わせることができる。例えば、TACEの構造座標および構造を、アダマリシンIIなどのヘビ毒メタロプロテイナーゼの構造座標または構造と比較する、または重ね合わせることが可能である。TACEの構造座標および構造を、ヒトADAM 10を含むADAM 10などのマトリックスメタロプロテイナーゼの構造座標または構造と比較しても、または重ね合わせてもよい。TACEと画像構造または三次元構造座標が得られた他の分子との比較を、分子類似性におけるアプリケーションであるQUANTA(Molecular Simulations, Inc.、Waltham、MA)などの入手可能なソフトウエアアプリケーションを利用して行うことも可能である。
【0048】
化学的実体(chemical entity)または断片をそれらのTACE、特にTACE触媒ドメインとの会合能に関してスクリーニングおよび選択することにより、TACEと会合する化合物を、コンピュータ計算によって評価および設計することもできる。本発明のこの局面を実現するために用いうる方法はいくつかある。1つの態様においては、本明細書で述べた構造座標に基づくTACE、特に触媒ドメインのコンピュータ生成モデルを画像として検討することができる。続いて、例えばCHARMMまたはAMBERなどの入手可能なプログラムを用い、エネルギー最小化および分子動力学に基づいて、化学的実体および特定の化学的部分のコンピュータ生成モデルを触媒ドメインの内部または周囲に位置づけて評価することが可能である。化学的実体または断片の位置決定は、例えば、QuantaおよびSybylなどのドッキング用ソフトウエアを用いて行いうる。さらに、既知および市販のコンピュータプログラムを、化学的実体または断片の選択に用いることもできる。適した化学的実体または断片がいったん選択されれば、それらを組み合わせて、阻害物質、メディエーターまたはその他の調節性化合物などの単一の化合物を作り出すことができる。既知および市販のモデル作製ソフトウエアは組み立ての一助になると思われる。
【0049】
本発明の1つの局面においては、TACE、特にTACE触媒ドメインと会合する化合物を、特定の化学的部分または化学的実体の組み合わせによるのではなく、全体として設計しうる。この態様は、LUDI(Biosym Technologies、San Diego、CA)、LEGEND(Molecular Simulations、Burlington、MA)およびLeap Frog(Tripos Associates、St. Louis、MO)などのコンピュータプログラムを用いて行いうる。
【0050】
1つの態様において、候補化合物は、これまでに同定された相互作用部位に鑑みて、TACEと候補化合物との望ましい相互作用部位に基づいて選択される。特異的な候補化合物−TACE相互作用がいったん決定されれば、選択された候補化合物とTACEとの予備的に「モデル化された」複合体を得るために、市販のドッキング用ソフトウエアを用いるドッキング試験を行う。
【0051】
拘束的配座解析(constrained conformational analysis)は、例えば、モデル化されたTACE−阻害物質複合体の完全性を検査するために、分子動力学(MD)を用いて行われる。複合体がいったん最も都合のよい立体配座状態に到達したところで、MD試験によって提示された構造の画像解析を行い、測定された結合親和性に基づいて、モデル化された複合体が既知の実験的SAR/QSAR(構造−活性相関/定量的構造−活性相関)と適合することを確かめる。
【0052】
その他のモデリング法を本発明に従って用いることも可能である。これらの技法の例は、コーエン(Cohen)ら、「医薬品化学のための分子モデリングソフトウエアおよび方法(Molecular modeling Software and Methods for Medicinal Chemistry)」、J. Med. Chem. 33:883〜894(1990)、およびナビア(Navia)ら、「薬剤設計における構造情報の使用(The Use of Structural Information in Drug Design)」、Current Opinions in Structural Biology、2:202〜210(1992)に開示されており、これらはその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0053】
TACEと会合するように開発または設計された化合物は、当技術分野で知られた数多くの方法を用いて最適化することもでき、会合効率を検討することも可能である。例えば、変形エネルギーおよび静電相互作用の決定および最適化を行うことができる。既知および市販のソフトウエアおよびハードウエアシステムも用いうる。このようなソフトウエアの例は国際公開公報第95/07619号に開示されている。阻害物質の効力、選択性および物理的薬物様特性を反復的な様式で最適化するための、構造に基づく類似体化(analoging)も、薬剤設計の当業者は行いうる。
【0054】
選択または設計された化合物に対して置換を施してもよい。これらの置換は、化合物の会合特性を改善または変更するために施すことができる。このような置換は、例えば、化合物の側鎖内または特定の原子に施すことができる。一般には、大きさ、形態、電荷およびその他の特徴が本来の基または原子とほぼ同一である保存的置換から始めるべきである。置換された化合物を、上記の通りにさらに解析および最適化してもよい。
【0055】
本発明の1つのさらなる局面においては、このような化合物の合成および試験を実際に行う前に、例えば市販のコンピュータソフトウエアを用いて、化合物に関して予想される阻害、修飾、調節または他の結合効果を解析および評価しうる。この方式により、無効な化合物の合成および試験を行う確率を評価することが可能である。
【0056】
阻害を評価するための手順は当技術分野で一般に知られており、例えばPCT(特許協力条約)第96/41624号に開示されている。このような方法にはペプチド基質との反応に基づくアッセイ法が含まれる。
【0057】
TACE 触媒ドメインの構造
記載した方法を用いて得られたX線回折データに基づいて決定されたTCDの物理的特徴、およびTCDの分子モデルの作製におけるその使用に関して、図面を参照しながらさらに説明する。
【0058】
図1に描かれた本ドメインは、扁平な楕円体の平坦面に刻み目が入った形状をしており、これにより、小さな「下方」のサブドメインを「上方」の分子本体から隔てる比較的小さな活性部位のくぼみが生じている(図2a)。TCDポリペプチド鎖は分子表面(下方の奥の方、図1)から始まり、 Asp217とMet221との間で鎖が明確に規定される(図3参照)。分子の中心には5本の鎖からなるβプリーツシートがあり、ここではβ鎖がsII、sI、sIII、sVおよびsIVの順(奥から手前の順、図1参照)に並び(図3参照)、「辺縁」鎖であるsIVが他のものとは逆平行に走行する。このβシートは大きくねじれており、凸面に2本のαヘリックス(hBおよびhB2)、凹面に2本のヘリックス(hAおよびhC)が隣接している。β鎖sIおよびsIIは、短いαヘリックスhAIおよび長いαヘリックスhA(後方を斜めに走行するヘリックス、図1)によって連結されている。β鎖sIIおよびsIIIは、長い「多ターンループ(multiple−turn loop)」、長い「中間」αヘリックスhB、および隣接する短いαヘリックスhB2によって連結され、これらはすべてβシートの「上方」に並ぶことにより、その中央部をバルク水(bulk water)から完全に遮蔽する(図1)。多ターンループは2カ所で突出し、それぞれ「拍車様(spur−like)」および酸性度の強い突出部を生じる(図2aでは分子の上方に認められる)。sIII−sIVリンカーの終端には、辺縁鎖であるsIVに入る前に短い「突出」がある。sIV−sV連結セグメントには、表面に位置する2つの大きな「耳様」ループがあり、その一方は分子本体に囲まれ(図2a、中央左の「青い」表面を生じる)、もう一方の長いβヘアピンループ(sIIa−slIb)は分子表面から突出している(図1および2の上左)。突出したループは、sVを、分子の中心に位置し、鎖がねじれて下方のサブドメインが生じる部位である厳密に保存されたGly412の箇所で急に終わる「活性部位ヘリックス」hCと結合する。
【0059】
C末端鎖は最後の61個のTCD残基(図3)を含み、これはまず、2つの「狭い」スーパーツイストループによって連結された、短い直線状のほぼ垂直に並んだ3つのセグメントを形成し、強固な「Metターン」Tyr433−Val434−Met435−Tyr436を介して表面に戻り、そこでPro437の箇所でねじれてS1’くぼみのPro437−Ile438−Ala439外「壁」を形成し、幅広いループを経てC末端αヘリックスhDに至ってその中を通過し、N末端に近接した分子の「後方」表面で終わるが、最後の規定された残基Arg473−Ser474は水素結合によって分子本体に固定される。2つの「狭い」ループの1つ目はCys423−Cys453を介してヘリックスhDのN末端とジスルフィド結合し、続いてhDのC末端はCys365−Cys469を介して「耳様」sIV−sVリンカーペプチドに固定される。空間的に隣接したTCDの第3のジスルフィド架橋であるCys225−Cys333はβ鎖sIおよびsIIIのN末端部分同士をつなぐ。インタクトのTACE分子では、Ser474の下流の4残基が、密に伸長したディスインテグリンドメインの必須領域であるCys478の位置にあると考えられる(Saudekら、「最小の活性RGD蛋白質であるエキスタチンの三次元構造(Three−dimensional structure of echistatin, the smallest active RGD protein)」Biochem. 30、7369〜7372(1991))。Ser474およびこのCys478がそれぞれのドメインの中心的箇所であると考えると、この3残基リンカーはディスインテグリンドメインを触媒ドメインの「左側」表面に対して比較的拘束されない形でドッキングさせると考えられる。
【0060】
TACEの活性部位のくぼみ(図2a)は、比較的平坦な左側(非プライム側)にあるが、右側に向かって刻み目が生じている。その中心に位置する触媒性亜鉛はHis405、His409およびHis415の3つのイミダゾールN∈2原子(活性部位ヘリックス、およびそれに続く、保存された亜鉛結合性共通モチーフHEXXHXXGXXHを含む「下行」鎖によって提供される)、ならびに阻害物質のヒドロキサム酸部分のカルボニルおよびヒドロキシル酸素により五配位を受ける(図1、2aおよび4参照)。この亜鉛−イミダゾール集団は、メトジンシンクラン(metzincin clan)に関するMetターン特徴部分にある、厳密に保存されたMet435の末端にあるε−メチル硫黄部分に基づく(Bodeら、「アスタシン、セラリシン、ヘビ毒およびマトリックスメタロプロテイナーゼは同一の亜鉛結合環境(HEXXHXXGXXHおよびMetターン)およびトポロジーを示し、共通のファミリー「メトジンシン」に分類されるべきである(Astacins、serralysins、snake venom and matrix metalloproteinases exhibit identical zinc binding environments(HEXXHXXGXXH and Met−turn)and topologies and should be grouped into a common family, the ’metzincins’)FEBS Lett. 331、134〜140(1993)、ステッカー(Stocker)ら、「メトジンシン:アスタシン、アダマリシン、セラリシンおよびマトリキシン(コラゲナーゼ)とのトポロジー的および配列上の関係から、ジンクペプチダーゼの1つのスーパーファミリーが規定される(The metzincins:Topological and sequential relations between the astacins、adamalysins、serralysins and matrixins(collagenases)define a superfamily of zinc−peptidases)」Protein Sci. 4、823〜840(1995))。His405の亜鉛配位性イミダゾールと辺縁鎖との間に入り込んだ「触媒性」Glu406の2つのカルボン酸酸素(触媒の際に一般的な塩基として作用する)(Gramsら、「ヒドロキサム酸ペプチドおよびペプチドチオール阻害物質と複合体を形成したヒト好中球コラゲナーゼのX線構造:基質結合および理論的薬剤設計に対する意義(X−ray structures of human neutrophil collagenase complexed with peptide hydroxamate and peptide thiol inhibitors:Implications for substrate binding and rational drug design)」Eur. J. Biochem. 228、830〜841(1995))はいずれも、ヒドロキサム酸のヒドロキシル基およびN−H基と水素結合を形成する(図4参照)。触媒性亜鉛の右側には深いS1’ポケットが開いており、これはS1’壁形成セグメント(下、図1および2a)のほか、His405およびGlu406の側鎖(左)、sIV主鎖およびLeu345側鎖(上)ならびにVal440側鎖(後方)およびAla439(右)が境界をなしている。Ala439の右には第2の(S3’)ポケットが開いており、これは分子内でS1’ポケットと融合し、Ala439およびLeu348の対向性側鎖から形成される小さな架橋が生じている(図2a)。
【0061】
阻害物質の(偽)ペプチド部分は、活性部位のくぼみの刻み目の入った右側に伸長した形状で入り込み、生産的結合を生じたペプチド基質のプライム化残基との相互作用を模倣する(図2a)。これは上方の短い突出であるGly346−Thr347−Leu348とは逆平行に、S1’壁形成セグメントであるPro437−Ile438−Ala439とは平行に走行し、それぞれ2つずつの主鎖間水素結合を形成する。主な分子間相互作用は、阻害物質のP1’イソブチル(偽ロイシル)側鎖および本質的に疎水性であるS1’ポケットによって生じるが、これは大きいため、部分的に規則化した3つの溶媒分子をさらに収容する。P2’のt−ブチル側鎖は酵素から離れるように伸長するが、酵素の隆起によって形成される上記の疎水性キャノピーに囲まれて位置する。P3’ Ala側鎖は負に荷電した大きなS3’ポケット内に入るが、小さすぎるために最適な接触は起こらない。C末端のジアミノエチル基は4つの分子において異なる立体配座をとる。
【0062】
結合型プロTNFαのP1’〜P3’セグメントであるVal77−Arg78−Ser79は、おそらく同様の様式で、おそらくはさらに高い適合度で下部のくぼみと結合すると思われる。その際、前に位置するP3〜P1残基Ala74−Gln75−Ala76は辺縁鎖に対してほぼ確実に逆平行に並び、それらの側鎖はそれぞれ(部分的に荷電した)S3ポケット内および(負に荷電した)浅いS2陥凹内に伸長し、中心のくぼみから突出すると考えられる。TACEのプライム化サブサイトおよび周囲の分子表面は主として負に荷電し、非プライム化サブサイトは本質的には疎水性である(図2a)。さらに距離を隔てた相互作用もプロTNFαのプロセシングに関するTACEの特異性に関与すると思われる。プロTNFα切断部位を含む12残基の基質もMMPの一部によって切断可能であるが、特異性および有効性は落ちる(Blackら、「マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の特異性の低さ、およびTIMPが腫瘍壊死因子−α(TNF−α)産生に対する反応性をもたないことは、主要なTNF−α変換酵素がMMPでない可能性を示唆する(Relaxed specificity of matrix metalloproteinases(MMPs)and TIMP intensity of tumor necroris factor−α(TNF−α)production suggest the major TNF−α converting enzyme is not an MMP)」Biochem. Biophys. Res. Commun. 225、400〜405(1996))。したがって、(おそらくは三量体である)(Tangら、「ヒトプロ腫瘍壊死因子はホモ三量体である(Human pro−tumor necrosis factor is a homotrimer」Biochem. 35、8216〜8225(1996a)、Tangら、「ヒトプロ腫瘍壊死因子のリンキングドメインの長さが切断プロセシングを決定する(Length of the linking domain of human pro−tumor necrosis factor determines the cleavage processing)」Biochem. 35、8226〜8233(1996b))膜結合型プロTNFαがインビボで優先的プロセシングを受けることは、一部には組み立て(assembling)の補正による、すなわちプロTNFα切断セグメントがTACE活性部位に対してアンカー膜から一定の距離をもって適切に提示されるためであると考えられる。いくつかの実験的証拠(Tangら、Biochem. 35、8216〜8225(1996a)、Tangら、Biochem. 35、8226〜8233(1996b))からは、切断部位が切断配列のみによって決定されるのではなく、TNFα三分子が会合したC末端セグメントによって形成される密な円錐体(Jonesら、「腫瘍壊死因子の構造(Structure of tumor necrosis factor)」Nature 338、225〜228(1989))の基部との距離も一定の役割を果たす可能性が示唆されている。生産的なTACE−プロTNFα複合体の場合には、このTNFα三量体円錐体(その内部に不規則なN末端が入り込む)の基部は、TACE触媒ドメインの「右」側によって認識され(図2a)、約10残基長のスペーサー(spacer)がプロTNFαAla76〜Val77の切断されやすいペプチド結合をTACEの活性部位内に正しく配置させる。
【0063】
ポリペプチドのトポロジー、特に触媒性亜鉛の表面提示により、TACEの触媒ドメインが典型的なメトジンシンであることが証明される(Bodeら、「アスタシン、セラリシン、ヘビ毒およびマトリックスメタロプロテイナーゼは同一の亜鉛結合環境(HEXXHXXGXXHおよびMetターン)およびトポロジーを示し、共通のファミリー「メトジンシン」に分類されるべきである(Astacins、serralysins、snake venom and matrix metalloproteinases exhibit identical zinc binding environments(HEXXHXXGXXH and Met−turn)and topologies and should be grouped into a common family, the ’metzincins’)FEBS Lett. 331、134〜140(1993)、ステッカー(Stocker)ら、「メトジンシン:アスタシン、アダマリシン、セラリシンおよびマトリキシン(コラゲナーゼ)とのトポロジー的および配列上の関係から、ジンクペプチダーゼの1つのスーパーファミリーが規定される(The metzincins:Topological and sequential relations between the astacins、adamalysins、serralysins and matrixins(collagenases)define a superfamily of zinc−peptidases)」Protein Sci. 4、823〜840(1995))。しかし、他のメトジンシンとの重ね合わせにより、そのトポロジーは、アダマリシンIIなどのヘビ毒メタロプロテイナーゼの触媒ドメインのものと最も類似することが示された(図5)(Gomis−Ruthら、「ヘビ毒メタロプロテイナーゼの最初の構造:マトリックスメタロプロテイナーゼ/コラゲナーゼのプロトタイプ(First structure of a snake venome metalloproteinases:prototype for matrix metalloproteinases/collagenases)」EMBO J. 12、4151〜4157(1993)、Zhangら、「天然および合成型の阻害物質とヘビ毒メタロプロテイナーゼ、アストロリシンC(d型)との構造的相互作用(Structural interaction of natural and synthetic inhibitors with the venom metalloproteinase、atrolysin C(form d))」Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91、8447〜8451(1994)、Kumasakaら、「ハブ毒由来のH2プロテイナーゼの結晶構造(Crystal structure of H2−proteinase from the venom of Trimeresurus flavoviridis)」J. Biochem. 119、49〜57(1996))。この密接な相同性は、中心シートおよび大きなヘリックスの同時重ね合わせが極めて優れることを反映するが、特にTACEがアダマリシンのみと共有する以下の一連の構造的特徴も反映する:長いヘリックスhBおよびその前にあるβシートの上部に並んだ多ターンループ、典型的な配置および形状を有するC末端ヘリックスhC、ならびに後方表面に位置する伸長したC末端。TACEの263個、アダマリシンの201個のα原子のうち約175個はトポロジー的に等価である(rms偏差は1.3Åであり、そのうち39個は同一の側鎖を有する)(図3)。これらの数値は、異なるメトジンシンファミリーに属するメンバー間の比較によって得られた値と近い(Stockerら、前記)。さらに、以下の詳細な構造的特徴から、TACEがアダマリシンと密接な関係にあることが証明される:比較的保存されているコア構造、固定されずに並んだN末端、同一の分子間水素結合相互作用に関与する特徴的なAsp416(亜鉛結合性共通モチーフの直後に位置する、図3)、第1の狭いループをC末端ヘリックスhD(TACEはこれをアダマリシンIIとは共有しないが、ハブ毒H2プロテイナーゼとは共有する)(Kumasakaら、前記)とつなぐ隣接ジスルフィド架橋Cys423−Cys453、sIV−sVリンカーをC末端ヘリックスhDと連結するジスルフィド結合Cys365−Cys469、S1’ポケットおよびその他のプライム化サブサイトにおいて特に高い類似性が認められる類似した形態の活性部位のくぼみ。
【0064】
TACEの触媒ドメイン(TCD)には、以下のいくつかの点でアダマリシンIIとの違いもある:263残基であって連鎖がはるかに長いこと、TACEの付加的残基の大部分がクラスター化し、より突出したhA−sIIターン、多ターンループの2つの表面隆起、sIV−sVリンカーの2つの「耳」およびより突出したsV−hC連結部(図3および図5参照)を生じること、TACEにはカルシウム結合部位は存在しないが第3のジスルフィド架橋Cys225−Cys333が存在し、いずれの要素もN末端鎖を鎖sIIIに固定するという同じ機能を果たすこと、TACEの非常に深いS3’ポケットはS1’ポケットと融合していること、プライム化サブサイトの内部および周辺の荷電パターンがほとんど反対であり、アダマリシンでは正の荷電が完全に主であること。
【0065】
以上から、その配列およびおそらくはその三次元構造によれば、TACE触媒ドメインは哺乳動物ADAM(アダマリシンと極めて相同性の高い触媒ドメインを有する膜結合型細胞表面蛋白質のファミリー(Wolfsbergら、「受精および発生におけるADAMs(ADAMs in Fertilization and Development)」Developm. Biol. 180、389〜401(1996)))の典型的なメンバーではない。TACEはおそらくはその「アウトサイダー」的な役割を、同じく若干のTACE様活性を示す上に(Lunnら、「ウシ脾臓からのTNFα転換酵素としてのADAM 10の精製(Purification of ADAM 10 from bovine spleen as a TNFα convertase)」、FEBS Lett. 400、333〜335(1997))、そのショウジョウバエでの相当物(kuz)がNotch受容体のプロセシングを行うことが最近示された(Rookeら、Science 273、1227〜1231(1996))、(ウシ)ADAM 10(図3)と共有すると考えられる。ADAM 10にもおそらくTACEに典型的な伸長型hA−sIIループおよび2つの「耳」は認められるものの、多ターン中間物の大きさはTACEとアダマリシンとの中間であると思われる(図3参照)。ADAM 10の触媒ドメイン残基のうち90個がTACEと同一であることも密接な相同性をさらに裏づけるものであるが(図3参照)、その他の哺乳動物ADAMはおそらくはアダマリシンIIとはるかに類似性が高いと思われる(Gomis−Ruthら、「ヘビ毒ジンクエンドペプチダーゼであるアダマリシンIIの精密化された2.0A結晶構造(Refined 2.0A crystal structure of snake venom zinc endopeptidase adamalysin II)」J. Md. Bid. 239、513〜544(1994))。
【0066】
TACEのMMPとの構造的相同性は著しく低い。共通の二次構造要素の相対的配置はさらに異なり(トポロジー的に等価な約120個のCα原子のrms偏差が1.6Åと有意に大きいことに反映される)、MMPには特徴的なTACE/アダマリシン構造要素(中間ヘリックスhBおよび多ターンループ、第3の亜鉛結合性ヒスチジンの後方にあるAsp残基など)がないか、またはTACEには認められない典型的な決定要因(構造性亜鉛、およびカルシウムイオンの組み込みなど)が認められる。しかし、二次構造の差はあるものの、TACEの活性部位のくぼみはMMPのものと若干類似していて、非プライム化(左)側は平坦であり、狭いプライム化側は深いS1’ポケットの中心に位置する(図2b)。このMMPとのサブサイトの類似性は、種々のMMPの阻害のために本来設計された合成ヒドロキサム酸阻害物質に対してTNFα転換酵素の部分的感受性が認められていることの説明となる(DiMartinoら、「マトリックスメタロプロテイナーゼおよびTNFαプロセシングに対するヒドロキサム酸に基づく偽ペプチド阻害物質の抗関節炎活性(Anti−arthritic activity of hydroxamic acid−based pseudopeptide inhibitors of matrix metalloproteinases and TNFα processing)」Inflamm. Res. 46、211〜215(1997))。TIMP−1構造を用いたモデル構築実験(Gomis−Rtithら、「ヒトマトリックスメタロプロテイナーゼであるストロメライシン−1のTIMP−1による阻害の機序(Mechanism of inhibition of the human matrix metalloproteinase stromelysin−1 by TIMP−1)」Nature 389、77〜81(1997))では、TACEの活性部位領域内に明らかな障害物は認められず、このことから、TIMPによる遮断に対する抵抗性が容易に説明されると考えられる。
【0067】
以上の通り、このTCD結晶構造から、TACEの触媒ドメインがアダマリシン/ADAMのそれとトポロジー的に類似しており、その基質結合部位がMMPのものと共通するという科学的根拠が得られた。しかし、TACEは、表面輪郭、荷電および形状の点でいくつか特殊性があり、このために強力な選択的合成阻害物質の設計が容易となる。
【0068】
阻害物質、メディエーターおよび生物的意義のある活性を有するその他の化合物などの、TACEと会合する化合物の設計および開発に際しては、TACE触媒ドメインに特有の表面輪郭、荷電および形状ならびに他の物理的特徴を標的とする化合物を選択することが望ましい。一般に、この種の化合物はTACEと物理的および構造的に会合しうることに加えて、そのTACEとの会合を許容するような立体配座をとりうる。上記の特徴は当業者をこの点に関して指向させると考えられる。特に直鎖状官能基を備えた化合物は特に適すると思われる。このような化合物は、TACE触媒ドメインの深いポケットを考慮すれば特に適すると考えられる。
【0069】
TACEと会合する化合物を、例えば、TACEのS1’領域またはS1’S3’ポケットと会合するように設計してもよい。TACEと会合する化合物を(i)亜鉛をキレート化する部分が組み入れられるように設計することも可能である。例となるさらなる化合物には、TACEのLeu348またはGly349と水素結合を形成するように、(ii)TACEのS1’ポケットを占有する非極性基の導入、(iii)TACEのS1’−S3’ポケットをつなぐ経路の内部に位置し、経路と適切なファンデルワールス接触を生じる基の導入、および(iv)TNF−α変換酵素の骨格アミノ基上のLeu348もしくはGly349との水素結合の形成、または(v)上記の任意の組み合わせが設計された化合物が含まれる。
【0070】
コンピュータ可読媒体
本発明は、結晶性TACEポリペプチドのX線回折構造座標が記録されたコンピュータ可読媒体にも関する。本発明のコンピュータ可読媒体は、TACE構造座標の保存、転送およびソフトウエアによる利用のために有用である。コンピュータ可読媒体は、フロッピーディスク、ハードディスク、コンピュータ型ランダムアクセスメモリ、読み出し専用メモリ、 フラッシュメモリ、CD−ROM、記録可能および書換可能CD、記録可能および書換可能DVD、光磁気ディスク、ZIPドライブ、JAZドライブ、シクィスト(Syquist)ドライブ、デジタルテープドライブなどを非制限的に含む、任意の適したデータ記憶材料であってよい。その他の適した媒体は当業者に周知であると考えられる。
【0071】
1つの態様において、コンピュータ可読媒体は表1の座標またはその実質的部分を含む。コンピュータ可読媒体は、TACEポリペプチドまたはその任意の部分の三次元画像表示のための、明細書の全体を通じて特定された1つまたは複数のプログラムがロードされたコンピュータなどの、媒体上に記録されたデータを用いる指示によってプログラムされた機器とともに用いてもよい。
【0072】
コンピュータを用いたシステム
図6は、TACEポリペプチドを検討するためのシステム1000を示している。本システムは、TACEポリペプチドの少なくとも一部を表す情報を記憶するビデオメモリ110を含む。メモリは、三次元空間における位置を特定する一組の空間座標が記録された少なくとも1つの第1種の記憶領域112、および複数のアミノ酸のうち1つの特徴を表す情報が記録された少なくとも1つの第2種の記憶領域114を含む。第2種の記憶領域は、三次元空間におけるTACEポリペプチドの少なくとも一部の少なくとも1つの特徴の幾何学的配置を表すためにビデオメモリ110内で第1種の記憶領域と論理的に関連づけられている。メモリ112および114は、例えば、表1に示されたデータなどを含みうる。システム1000は、メモリ110からのデータに基づいて三次元空間におけるTACEポリペプチドの少なくとも一部の少なくとも1つの特徴の三次元画像を表示するための画像シグナルを生成することを目的として、第1種の記憶領域112および第2種の記憶領域114にアクセスするために連結されたプロセッサも含む。プロセッサは、CPU、レジスタ、メモリなどを備えた任意の汎用プロセッサであってよい。ディスプレイ130は、画像データに基づいて三次元空間におけるTACEポリペプチドの少なくとも一部の少なくとも1つの特徴の三次元画像をスクリーン132上に表示するために、画像シグナルを受け取る回線125を介してプロセッサ120と連結される。
【0073】
本発明の1つの態様において、画像データには、図1に示されたものなどの、三次元空間におけるTACEポリペプチドの少なくとも一部のリボン構造の三次元画像を表示するためのデータが含まれる。もう1つの態様において、画像データには、図2に示されたものなどの、三次元空間における前記TACEポリペプチドの少なくとも一部のソリッドモデル表示による三次元画像を表示するためのデータが含まれる。さらにもう1つの態様において、画像データには、図2に示されたものなどの、三次元空間におけるTACEポリペプチドの少なくとも一部の静電表面ポテンシャルの三次元画像を表示するためのデータが含まれる。さらにもう1つの態様において、画像データには、図4に示されたものなどの、三次元空間におけるTACEポリペプチドの少なくとも一部の三次元立体画像を表示するためのデータが含まれる。
【0074】
本発明のシステム1000は、TACEポリペプチド以外の組成物の特徴の幾何学的配置を表すデータを記憶するための記憶装置145、およびオペレータからの指示を受け取るためのマウス135などのオペレータ・インターフェースをさらに含む。記憶装置145は、例えば、他の化学的実体に関する三次元X線座標データを含みうる。プロセッサ120は、記憶装置145および前記オペレータ・インターフェース 135に連結され、オペレータ・インターフェースからの指示に基づいて、TACEポリペプチドの少なくとも一部の少なくとも1つの特徴の前記三次元画像に対する組成物の特徴の幾何学的配置をスクリーン132上に表示するための付加的な画像データを生成する。図6の態様において、記憶装置145はメモリ110の一部である。
【0075】
第1種の記憶領域112および前記第2種の記憶領域114は、例えば、半導体メモリ、光ディスクの領域または磁気メモリの領域などの領域である。
【0076】
1つの態様において、プロセッサ120およびビデオメモリ110は、シリコングラフィックス(Silicon Graphics)社、サンマイクロシステムズ(Sun Microsystems)社およびIBM社などから販売されている、UNIXまたはVAXコンピュータ形式である。しかし、本発明はこの特定のハードウエアおよびソフトウエアの使用に限定されない。
【0077】
以下の例示的な実施例において、本発明をさらに詳しく説明する。実施例は本発明の主な態様のみを表すものに過ぎないと思われるが、以下の実施例は例示的であって制限的ではないことが理解される必要がある。
【0078】
実施例 TACE ポリペプチドの発現、単離および精製
ブラック(Black)ら、「細胞から腫瘍壊死因子−αを放出させるメタロプロテイナーゼであるディスインテグリン(A metalloproteinase disintigrin that releases tumor−necrosis factor−α from cells)」、Nature 385:729〜733(1997年2月)に開示された通りの、TACEのシグナルペプチド、プロドメイン、および触媒ドメインであるアミノ酸残基1〜477位においてSer266がAlaに変化し、Asn452がGlnに変化し、配列Gly−Ser−(His)がC末端に付加されたものをコードするcDNAを、CHO細胞用の発現ベクター中に挿入した。TACEポリペプチドをCHO細胞内で発現させたところ、Val212またはArg215で始まるTACEポリペプチドの混合物が分泌された。ベクターを取り込んでいない細胞を死滅させる薬物であるメトトレキサートの存在下で細胞を培養した。
【0079】
発現されたTACEポリペプチドを次に精製した。精製は、発現されたTACEポリペプチドを含む5リットルの培地を用いて開始した。ミリポア(Millipore)社のカットオフ値10Kの1ftTFF透析濾過ユニットを用いて培地を約200mLに濃縮した。排出速度は50〜100mL/分とした。続いて、20mM Tris(pH 7.5)および300mM NaClからなる緩衝液(緩衝液E)2リットルを試料に添加した。
【0080】
試料を上記の通りに再濃縮し、2リットルの緩衝液Eで2回目の希釈を行い、再び再濃縮し、2リットルの緩衝液Eで3回目の希釈を行った後に約100mLに再濃縮した。.透析濾過ユニット内に残った試料をバックフラッシュ法によって回収した。続いて、この材料を0.45μmで濾過し、アジ化物を0.05%となるように添加した。濾過した試料を4℃で一晩保存した。
【0081】
濾過した試料を一晩保存した後に、イミダゾールを200mMの貯蔵水溶液から5mMとなるように添加し、ZnClを1Mの貯蔵水溶液から5μMとなるように添加した。続いて試料を2.2mLのキアゲン(Qiagen)Ni−NTAスーパーフロー(Superfiow)樹脂(カタログ番号30430)に対して流速3mL/分で通過させた(カラムサイズ7.5×50mm)。
【0082】
20mM Tris(pH 7.5)、300mM NaCl、5mMイミダゾールおよび5μM ZnClからなる緩衝液(緩衝液A)100mLにより、カラムを流速5mL/分で洗浄した。続いて、緩衝液A中にて1分間で最大200mMまでイミダゾールの濃度を高める勾配を加え(総容積5mL)、続いて200mMイミダゾールを35mL流すことにより、TACEポリペプチドを溶出させた。2mLずつの画分を回収したが、TACEは一般に約6mLから溶出する。画分は、500μlの50%グリセリン水溶液および200μlの1M Tris pH 8を含む管に回収した。グリセリン水溶液はカラム処理の当日に調製した。
【0083】
各画分からの3μlのドットブロットをアミドブラックで染色し、どの画分が意味のある量の蛋白質を含むかを判定した。意味のある量の蛋白質がみられた画分をプールした。続いてそのプールをカットオフ値10Kのアミコンセントリプレップ(Amicon Centriprep)濃縮装置で1〜2mLに濃縮した。
【0084】
この濃縮試料に対して、阻害物質N−{D,L−2−(ヒドロキシアミノカルボニル)メチル−4−メチルペンタノイル}−L−3−アミノ−2−ジメチルブタノイル−L−アラニン,2−(アミノ)エチルアミドを50mMの貯蔵水溶液から1mMとなるように添加し、オクチルグルコシドを10%貯蔵水溶液から1%となるように添加した。続いて、試料を室温で15〜24時間インキュベーションした。
【0085】
インキュベーションの後に試料を、TSK−G3000SWGを充填し、10mM Tris(pH 7.5)、100mM NaCl、10%グリセリンで平衡化した21.5×600mmのサイズ排除カラムLKB 2135−365にかけた。続いてこの緩衝液をカラムに流速2.5mL/分で100分間通した。溶出液中のTACEポリペプチドは280nmでの吸収によって検出した。除外した材料は一般に約38分後に溶出した。TACEは一般に約78分後またはそれ以後に溶出した。
【0086】
どの画分をプールすべきかを判定するために、意味のある蛋白質がみられた全画分を15μlずつ用いてゲル分析を行った。サイズ排除クロマトグラフィーのプールを、カットオフ値10Kのアミコンセントリプレップ濃縮装置で約1mLに濃縮した。
【0087】
続いて、この精製試料に対して、阻害物質N−{D,L−2−(ヒドロキシアミノカルボニル)メチル−4−メチルペンタノイル}−L−3−アミノ−2−ジメチルブタノイル−L−アラニン,2−(アミノ)エチルアミドを1mMの濃度となるように添加した。蛋白質は4℃で保存可能である。
【0088】
実施例 ―蛋白質の結晶化
ヒトTACEのプロドメインおよび触媒ドメイン(残基1〜477位)を含むDNA構築物を、Ni−NTAアフィニティーカラムによる蛋白質の精製が容易になるように配列Gly−Ser−(His)と融合させた。蛋白質の発現にはチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)を用いた。この細胞は、Val212またはArg215のいずれかで始まる成熟型TACEの混合物を分泌した。Ni−NTAカラムから得られたTACE含有画分を、オクチルグルコシドおよび結合パートナーN−{D,L−2−(ヒドロキシアミノカルボニル)メチル−4−メチルペンタノイル}−L−3−アミノ−2−ジメチルブタノイル−L−アラニンを含む緩衝液中でインキュベーションした。最終的な精製段階はゲル濾過カラムで行った。精製されたTACEを、10mM Tris/HCL(pH 7.5)、100mM NaCl、10%グリセリンおよび1mMの阻害物質を含む緩衝液(TACE緩衝液)中で保存した。
【0089】
結晶化実験は、TACE(TACE緩衝液中)を以下に列挙する結晶化緩衝液と1:1の比で混合することによってTACE濃度を約5mg/mLとし、シッティングドロップ蒸気拡散法を用いて行った。実験は2回ずつ行い、インキュベーションは約4℃または20℃のいずれかで行った。結晶性沈殿物は20℃で以下の結晶化緩衝液中に得られた:
緩衝液A) 0.1M酢酸ナトリウム(pH 5.3)、0.2M CaCI、30%v/vエタノール
緩衝液B) 0.1Mクエン酸ナトリウム(pH 5.0)、40%v/vエタノール
緩衝液C) 0.1Mクエン酸ナトリウム(pH 8.7)、20%w/v PEG 4000、20%v/vイソプロパノール
【0090】
結晶性沈殿物からの種を、ウサギ毛とともに、TACE濃縮試料(12mg/mL、TACE緩衝液中)と緩衝液BまたはCのいずれかとの1:1混合物中に移したところ、小さな結晶が得られた。緩衝液Cをさらに改良した結果、緩衝液Dが得られ、これによってX線データの収集に適した結晶の作製が可能となった。
緩衝液D) 0.1Mクエン酸ナトリウム(pH 5.4)、20%w/v PEG 4000、20%v/vイソプロパノール
【0091】
第1のデータセットは、グラファイトで単色化されたCuKα放射線が得られる5.4kWで動作させた理学電機(Rigaku−Denki)トータリングCu陽極線発生装置に装着したMAR300イメージングプレートスキャナーを用いて、分解能2.5Åで測定した。データ処理にはMOSFLM v. 5.23プログラムおよびCCP4パッケージソフト(suite)のルーチンを用いた。アダマリシンII、アダマリシンIIの全アラニンモデルおよび生成されたモデルを用いる分子置換法によって構造を解明しようとの試みではいずれもフェージングのための有用な開始点は得られなかった。このため、異常差に関するパターソン合成を利用して、独立した4つの亜鉛原子の位置を決定した。MADデータを測定するために結晶を液体窒素中で急速冷凍した。このためには、適切なサイズの絹糸ループを利用して結晶を冷凍緩衝液(17%v/vグリセリンを含む80%v/v緩衝液D)中に移し、約10秒間浸漬した後に90K゜で直ちに急速冷凍した。
【0092】
得られた結晶は単斜晶系空間群P2に属し、格子定数はa=61.38Å(オングストローム)、b=126.27Å、c=81.27Å、β=107.41゜であり、非対称格子内に4分子を含む。
【0093】
実施例 線回折
実施例2で述べた結晶を用いて、第1のデータセットを、グラファイトで単色化されたCuKα放射線が得られる5.4kWで動作させた理学電機(Rigaku−Denki)トータリングCu陽極線発生装置に装着したMAR300イメージングプレートスキャナーを用いて、分解能2.5Åで測定した。データ処理にはMOSFLM v. 5.23プログラムおよびCCP4パッケージソフトのルーチンを用いた。
【0094】
アダマリシンII、アダマリシンIIの全アラニンモデルおよびその他のモデルを用いる分子置換法によって構造を解明しようとの試みではいずれもフェージングのための有用な開始点は得られなかった。
【0095】
このため、異常差に関するパターソン合成を利用して、独立した4つの亜鉛原子の位置を決定した。MADデータを測定するために、液体窒素の温度まで冷却した窒素気流中で結晶を急速冷凍した。80%v/v緩衝液Dである冷凍緩衝液(0.1Mクエン酸ナトリウム(pH 5.4)、20%w/v PEG 4000、20%v/vイソプロパノール)に17%v/vグリセリンを含むものの中に結晶をまず移した。冷凍緩衝液への移行には適切なサイズの絹糸ループを用いた。結晶を冷凍緩衝液中に約10秒間浸漬した後、90K゜で直ちに急速冷凍した。
【0096】
分解能2.0Åまでの異常回折データを、ドリス(DORIS)(DESY、Hamburg、Germany)のBW6ウィグラービームライン装置に装着したMAR345イメージングプレートスキャナーにより、亜鉛のK吸収端である最大f’’(1.2769Å)および最小f’’(1.2776Å)の波長、ならびに隔たった波長(1.060Å)の単色X線放射線を用いて、90Kで収集した。データのスキャニングおよび評価はDENZO/SCALEPACKを用いて行い、1051836回の測定で77653個の独立した反射が得られた(完全性96.9%、R融合(R−merge)強度0.031)。
【0097】
MADフェーズの精密化および算出は、解像度2.0Åまでのすべての測定データを含め、MLPHAREを用いて行った。平均性能示数(mean−figure−of−merit) の初期値は0.53であり、DMを用いる溶媒フラットニング/ヒストグラムマッチング法によって0.76に高まった。この密度により、4つの独立したTACE触媒ドメインおよび結合したヒドロキサム酸基質の完全鎖をSGIシステム上でTURBO−FRODOを用いて構築することが可能となった。このモデルをXPLORおよびCCP4ルーチンを用いて結晶学的に精密化し、解像度12.0から2Åまでの独立した79400個の反射を用いて、結晶学的R因子を18.6%(Rfree 27.4%)とした。
【0098】
4つの独立したTACE分子は周期的配置を生じる。
【0099】
分子1および2、ならびに3および4はそれぞれAsp219およびMet221からSer474までと定義される。
【0100】
実施例 線回折
分解能2.0Åまでの異常回折データを、ドリス(DORIS)社(DESY、Hamburg、Germany)のウィグラービームライン装置に装着したMAR345イメージングプレートスキャナーにより、亜鉛のK吸収端である最大f’(1.2797Å)および最小f’(1.2804Å)の波長、ならびに隔たった波長(1.060Å)の単色X線放射線を用いて、100Kで収集した。これらのデータの評価およびスキャニングはDENZO/SCALEPACKを用いて行い、77,653個の独立した反射を得た(完全性96.9%、R融合強度0.031)。
【0101】
得られた構造座標を表1に転載する。
【表1】
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【0102】
実施例 TACE 阻害物質の設計
TACEのX線回折座標をSybyl v.6.3(Tripos Associates)ソフトウエアパッケージにて読み取り、X線構造の画像解析を行った。本来のX線座標内部の領域をキラリティーおよび原子の種類に関して補正した。補正されたTACEのX線モデルに対して、すべてのTACE構造パラメーターが平衡または最適値に達するまでエネルギー最小化を行った。エネルギー最小化が得られた構造を本来の構造と比較し、異常がないことを確かめた。
【0103】
TACEと共結晶化された阻害物質との間の特異的相互作用の部位を同定した。続いて、阻害物質をX線複合体モデルから除去し、TACE構造モデルのみが残るようにした。
【0104】
候補阻害物質は、共結晶化された阻害物質に関して以前に同定された相互作用部位に鑑み、TACEと候補阻害物質との相互作用部位に基づいて選択した。特異的な候補阻害物質−TACE相互作用が決定されたところで、選択された候補化合物とTACEとの予備的に「モデル化された」複合体を得るために、市販のドッキング用ソフトウエアを用いるドッキング試験を行った。
【0105】
モデル化されたTACE−阻害物質複合体の完全性を検査するために、分子動力学(MD)を用いて拘束的配座解析(constrained conformational analysis)を行った。複合体が最も都合のよい立体配座状態に到達したところで、MD試験によって提示された構造の画像解析を行い、測定された結合親和性に基づいて、モデル化された複合体が既知の実験的SAR/QSARと適合することを確かめた。
【0106】
モデル化された候補阻害物質−TACE複合体を解析した。少量の溶媒に露出された経路(channel)を含むTACEのS1’領域と会合する複合体の領域を、修飾のための標的領域として選択した。コンピュータ計算および合成化学の原理に基づき、1つのベンジル基が標的領域内部に埋め込まれるようになる単独の修飾を選択した。このベンジル基を、S1’ S3’ポケット内に入り込むように適切な亜鉛キレーターコアに対して配向させた。この修飾により、一般にMMP選択性であった阻害物質がTACE選択性となった。ベンジル修飾を加えた阻害物質に関するIC50データから、この選択性が裏づけられた。
【0107】
阻害物質の効力、選択性および物理的薬物様特性の最適化のための構造に基づく類似体化(analoging)を、反復的な様式で行った。
【0108】
実施例 TACE 阻害の測定
250μMのペプチド基質(Ac−SPLAQAVRSSSR−NH)を、10mM TRIS HCl、pH 7.4、10%グリセリンを含む25℃の緩衝液中で3.7U/μLのTACEとともにインキュベーションした。2時間後に1%TFA(最終濃度)によって反応を停止させた。ヒューレットパッカード(Hewlett−Packard)1150を用いるHPLCによって反応混合物を分離した。産物の形成は220nmでの吸光度によってモニターした。
【0109】
反応の線形性が確認された(r>0.85)。対照速度の平均値(x±sem)を算出し、ダネットの多重比較検定(Dunnett’s multiple comparison test)を用いて、統計学的有意性(p<0.05)に関して薬物試験時の速度と比較した。複数の投薬量を用いて用量反応関係を検討し、線形回帰を用いて、IC50値を95%CIとともに推定した。
【0110】
以上の説明および実施例により、当業者は本発明の本質的な特徴を確認することができ、本発明の範囲または精神を逸脱することなく、さまざまな用途および条件に適合するように本発明に変更、修正および変化を加えることができる。さらに、米国仮特許出願第60/073,709号および米国特許出願第09/050,083号を含む、上記に言及されたすべての刊行物および特許出願の開示は、それぞれが参照として組み込まれるように個別に示されている場合と同程度にそれらの全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】TACE触媒ドメイン(TCD)のリボン図(ribbon diagram)である。鎖は左下の奥の方から始まり、構造要素sI、hAI、hA、sII、hB、hB2、sIII、IV、IVa、sIVb、sV、hC、MetターンおよびhDを経て、左上の奥で終わる。3つのジスルフィド結合を結線として示し、硫黄を小球として表している。触媒性亜鉛(中央の球)はHis405、His409およびHis415という3つのイミダゾール基、ならびに阻害物質のヒドロキサム酸基のヒドロキシルおよびカルボニル酸素原子による配位を受ける。ペプチド基質のプライム化部位残基の相互作用を模倣する阻害物質の全体を示している。図1はSETORを用いて作成した。エバンス(Evans, S.)「SETOR:ハードウエア照光による巨大分子の三次元ソリッドモデル表示(SETOR:Hardware Lighted Three−Dimensional Solid Model Representations of Macromolecules)」J. Mol. Graph. 11:134〜138(1993)を参照されたい。
【図2aおよび2b】TACE(TCD)(図2a)およびMMP−3(図2b)の触媒ドメインのソリッドサーフェス(solid surface)表示である。静電表面ポテンシャルを−15(濃い赤)から15(濃い青)kT/eまで色分けしている。活性部位のくぼみ(cleft)は両方とも左から右に延び、触媒性亜鉛原子(球)が中央に位置する。TACEの内部に結合した阻害物質の全体構造が示されており、イソブチル(P1’)およびAla(P3’)側鎖がS1’および新規S3’ポケットの深部に結合している。配向は図1と類似している。図2aおよび2bはGRASPを用いて作成した。ニコリス(Nicolls, A.)、バラドワジ(Bharadwaj, R.)およびフイグ(Houig, B.)、「Grasp―表面特性の画像表示および解析(Grasp−Graphical representation and analysis of surface properties)」、Biophys. 64、A166(1993)。
【図3】アダマリシン(adamalysin)II(ADAM_CROAD)、TACEおよびヒトADAM 10(hADAM10)の触媒ドメイン配列を、それらのトポロジー的同等性および配列類似性に従ってそれぞれ整列化したものである。残基数は一般的なTACEの番号付けによる。矢印および中括弧は、TACEにおけるβ鎖およびαヘリックスを表す。
【図4】触媒性亜鉛(中央の大きな球)の周囲の最終的な2.0Å電子密度の立体断片図を最終的なTACEモデルと重ね合わせたものである。亜鉛に配位するHis405(上)、His409(左)およびHis415(下)の3つのイミダゾール環、「触媒性」Glu406ならびに阻害物質のヒドロキサム酸部分が認められる。配向は図1と類似している。図4はTURBO−FRODOを用いて作成した。ルーセル(Roussel, A.)およびカンベロー(Cambilleau, C.)、「シリコングラフィックス式形態におけるTurbo−Frodo(Turbo−Frodo in Silicon Graphics Geometry)」、Partners Directory、Silicon Graphics、Mountain View、CA(1989)。
【図5】TACE(明)およびアダマリシン(暗)の触媒ドメインのリボン図を重ね合わせたものである。TACEの触媒性亜鉛(球)ならびに3つ(TACE)および2つの(アダマリシン)ジスルフィド架橋も示されている。配向は図1と類似している。図5はGRASPを用いて作成した。
【図6】TNF−α変換酵素の少なくとも一部の表示画面を生成するための情報を記憶するビデオメモリを含む、TNF−α変換酵素を研究するためのシステムを示している。

Claims (63)

  1. ポリペプチドがTNF−α変換酵素ポリペプチドである、結晶形状にあるポリペプチドを含む組成物。
  2. TNF−α変換酵素ポリペプチドがTNF−α変換酵素触媒ドメインを含む、請求項1記載の組成物。
  3. TNF−α変換酵素ポリペプチドがTNF−α変換酵素のプロドメインおよび触媒ドメインをコードするポリヌクレオチドの発現産物である、請求項1記載の組成物。
  4. TNF−α変換酵素ポリペプチドがTNF−α変換酵素のアミノ酸残基1〜477位をコードするポリヌクレオチドの発現産物である、請求項1記載の組成物。
  5. ポリヌクレオチドのアミノ酸残基Ser266がAlaに変化し、アミノ酸残基Asn542がGlnに変化するように置換され、配列Gly−Ser−(His)をコードする第2のポリヌクレオチドがC末端と融合される、請求項4記載の組成物。
  6. TNF−α変換酵素ポリペプチドとの共結晶化のために適した結合パートナー(binding partner)をさらに含む、請求項1記載の組成物。
  7. 結合パートナーがヒドロキサム酸に基づく結合パートナーである、請求項6記載の組成物。
  8. 結合パートナーがN−{D,L−2−(ヒドロキシアミノカルボニル)メチル−4−メチルペンタノイル}−L−3−アミノ−2−ジメチルブタノイル−L−アラニン,2−(アミノ)エチルアミド(N−{D,L−2−(hydroxyaminocarbonyl)methyl−4−methylpentanoyl}−L−3−amino−2−dimethylbutanoyl−L−alanine,2−(amino)ethyl amide)である、請求項6記載の組成物。
  9. 結晶が2.0Åで回折する結晶構造を有する、請求項1記載の組成物。
  10. 結晶が単斜晶系である、請求項1記載の組成物。
  11. 結晶の単位格子が結晶学的に独立した4つのTNF−α変換酵素触媒ドメイン(TCD)分子を含む、請求項1記載の組成物。
  12. TCD分子が非対称格子内にある、請求項11記載の組成物。
  13. 結晶が単斜空間群P2であり、格子定数がa=61.38A、b=126.27A、c=81.27Aおよびβ=107.41゜である、請求項1記載の組成物。
  14. ポリペプチドが表1による構造座標またはその実質的部分を特徴とする、請求項1記載の組成物。
  15. 以下の段階を含む、TNF−α変換酵素ポリペプチドの結晶化のための方法:
    (A)TACEポリペプチドおよび結合パートナーを含む溶液を結晶化緩衝液と混合する段階、ならびに
    (B)結晶性沈殿物を形成させるためにドロップ蒸気拡散法(drop vapor diffusion)によって段階(A)の混合物を結晶化させる段階。
  16. 以下の段階をさらに含む、請求項15記載の方法:
    (C)ドロップ蒸気拡散法によって形成された結晶性沈殿物からの種(seed)、および結晶化促進物質を、TACEポリペプチドおよび結合パートナー基質を含む濃縮溶液と結晶化緩衝液との混合物中に移す段階、ならびに
    (D)結晶を形成させるためにドロップ蒸気拡散法により段階(C)の混合物を結晶化させる段階。
  17. 結晶化緩衝液が0.1Mクエン酸ナトリウム(pH 5.4)、20%w/v PEG 4000および20%v/vイソプロパノールである、請求項15または16記載の方法。
  18. 結合パートナーがN−{D,L−2−(ヒドロキシアミノカルボニル)メチル−4−メチルペンタノイル}−L−3−アミノ−2−ジメチルブタノイル−L−アラニン,2−(アミノ)エチルアミドである、請求項15または16記載の方法。
  19. 結晶化が4〜20℃の範囲の温度で行われる、請求項15または16記載の方法。
  20. TACEポリペプチドおよび阻害物質を含む溶液が、緩衝液中に約5mg/mLから約12mg/mLまでの濃度である、請求項15または16記載の方法。
  21. TACEポリペプチドおよび結合パートナーを含む溶液が結晶化緩衝液と1:1の比で混合される、請求項20記載の方法。
  22. TNF−α変換酵素ポリペプチドと共結晶化基質との共結晶化によって製造される腫瘍壊死因子−α(TNF−α)変換酵素結晶。
  23. TNF−α変換酵素の触媒ドメインまたはその一部に関するX線結晶学的座標データが記録されたコンピュータ可読媒体。
  24. 表1に示すX線結晶学的座標データまたはその一部が記録されたコンピュータ可読媒体。
  25. 媒体がフロッピーディスク、ハードディスク、コンピュータテープ、RAM、ROM、CD、DVD、磁気ディスクおよび光ディスクからなる群から選択される、請求項23または24記載のコンピュータ可読媒体。
  26. 記録された機械可読データを有する記録されたコンピュータ可読媒体であって、データ利用のための指示がプログラムされた装置とともに用いた場合にTNF−α変換酵素ポリペプチドまたはその一部の三次元画像表示用の画像シグナルを生成しうるコンピュータ可読媒体。
  27. 以下の特徴を有する、TNF−α変換酵素ポリペプチドを研究するためのシステム:
    (a)TNF−α変換酵素ポリペプチドの少なくとも一部を表す情報を記憶しうるメモリであって、該メモリが三次元空間における位置を特定する一組の空間座標を含む少なくとも1つの第1種の記憶領域と、複数のアミノ酸のうち1つの特徴を表す情報を含む少なくとも1つの第2種の記憶領域とを含み、該第2種の記憶領域が該三次元空間における該TNF−α変換酵素ペプチドの少なくとも一部の少なくとも1つの特徴の幾何学的配置を表すために、該メモリにおいて該第1種の記憶領域と論理的に関連づけられているようなメモリ、
    (b)該第1種の記憶領域および該第2種の記憶領域にアクセスするために該メモリと連結されたプロセッサであって、該メモリからのデータに基づいて該三次元空間における該TNF−α変換酵素ポリペプチドの少なくとも一部の少なくとも1つの特徴の三次元像を表す画像を描写するための画像シグナルを生成するプロセッサ、ならびに
    (c)該画像シグナルを受け取るために該プロセッサと連結されたディスプレイであって、該画像シグナルに基づく該三次元空間における該TNF−α変換酵素ポリペプチドの少なくとも一部の少なくとも1つの特徴の三次元画像を描写するディスプレイ。
  28. 画像シグナルが、三次元空間におけるTNFα変換酵素ポリペプチドの少なくとも一部のリボン構造の三次元画像を描写するためのシグナルを含む、請求項27記載のシステム。
  29. 画像シグナルが、三次元空間におけるTNF−α変換酵素ポリペプチドの少なくとも一部のソリッドモデル表示による画像を描写するためのシグナルを含む、請求項27記載のシステム。
  30. 画像シグナルが、三次元空間におけるTNF−α変換酵素ポリペプチドの少なくとも一部の静電表面ポテンシャルの三次元画像を描写するためのシグナルを含む、請求項27記載のシステム。
  31. 画像シグナルが、三次元空間におけるTNF−α変換酵素ポリペプチドの少なくとも一部の三次元立体画像を描写するためのシグナルを含む、請求項27記載のシステム。
  32. 以下の特徴をさらに含む、請求項27記載のシステム:
    TNF−α変換酵素ポリペプチド以外の組成物の特徴の幾何学的配置を表すデータを記憶しうる記憶装置、および
    オペレータからの指示を受け取るためのオペレータ・インターフェースであって、プロセッサが、オペレータ・インターフェースからの指示に基づいてディスプレイ上に該TNF−α変換酵素ポリペプチドの少なくとも一部の少なくとも1つの特徴の該三次元画像と対比して該組成物の特徴の幾何学的配置を描写するための付加的な画像シグナルを生成するような、記憶装置およびオペレータ・インターフェースに連結される、オペレータ・インターフェース。
  33. 記憶装置がメモリの一部である、請求項32記載のシステム。
  34. 複数の第1種および第2種の記憶領域を含む、請求項27記載のシステム。
  35. 以下の特徴を有する、TNF−α変換酵素ポリペプチドの少なくとも一部の表示画面を生成するための情報を記憶しうるビデオメモリ:
    (a)それぞれが三次元空間における位置を特定する一組の空間座標を含む、少なくとも1つの第1種の記憶領域、および
    (b)それぞれが複数のアミノ酸のうち1つの特徴を画像表示するための情報を含む、少なくとも1つの第2種の記憶領域であって、三次元空間におけるTNF−α変換酵素ポリペプチドの少なくとも一部の少なくとも1つの特徴の幾何学的配置を表すための該ビデオメモリにおいて該第1種の記憶領域と論理的に関連づけられている、第2種の記憶領域。
  36. 第2種の記憶領域が、三次元空間におけるTNF−α変換酵素ポリペプチドの触媒ドメイン部分の少なくとも1つの特徴の幾何学的配置を表すためにビデオメモリにおいて第1種の記憶領域と論理的に関連づけられている、請求項35記載のビデオメモリ。
  37. 第1種の記憶領域および第2種の記憶領域が半導体メモリの領域である、請求項35記載のビデオメモリ。
  38. 第1種の記憶領域および第2種の記憶領域が光ディスクの領域である、請求項35記載のビデオメモリ。
  39. 第1種の記憶領域および第2種の記憶領域が磁気メモリの領域である、請求項35記載のビデオメモリ。
  40. 複数の第1種および第2種の記憶領域を含む、請求項35記載のビデオメモリ。
  41. 以下の段階を含む、TNF−α変換酵素と会合する化合物を同定する方法:
    (A)TNF−α変換酵素ポリペプチド結晶のX線回折座標に基づく、TNF−α変換酵素触媒ドメインと結合を形成するポリペプチドに対する会合性化合物の設計、
    (B)該化合物の合成、および
    (C)該化合物の該TNF−α変換酵素との会合能の決定。
  42. 会合性化合物が阻害物質、修飾物質またはTNF−α変換酵素活性を調節するその他の化合物である、請求項41記載の方法。
  43. 会合性化合物が競合的阻害物質、不競合的阻害物質または非競合的阻害物質である、請求項42記載の方法。
  44. 座標が表1の座標またはその実質的部分である、請求項41記載の方法。
  45. TNF−α変換酵素ポリペプチド結晶がTNF−α変換酵素の触媒ドメインを含む、請求項41記載の方法。
  46. TNF−α変換酵素ポリペプチドがTNF−α変換酵素のプロドメインおよび触媒ドメインをコードするポリヌクレオチドの発現産物である、請求項41記載の方法。
  47. TNF−α変換酵素ポリペプチドがTNF−α変換酵素のアミノ酸残基1〜477位をコードするポリヌクレオチドの発現産物である、請求項41記載の方法。
  48. ポリヌクレオチドのアミノ酸残基Ser266がAlaに変化し、アミノ酸残基Asn542がGlnに変化するように置換され、配列Gly−Ser−(His)をコードする第2のポリヌクレオチドがC末端と融合される、請求項47記載の方法。
  49. TNF−α変換酵素ポリペプチド結晶が結合パートナーとともに共結晶化される、請求項41記載の方法。
  50. 結合パートナーがヒドロキサム酸に基づく結合パートナーである、請求項49記載の方法。
  51. 結合パートナーがN−{D,L−2−(ヒドロキシアミノカルボニル)メチル−4−メチルペンタノイル}−L−3−アミノ−2−ジメチルブタノイル−L−アラニン,2−(アミノ)エチルアミドである、請求項49記載の方法。
  52. TNF−α変換酵素ポリペプチド結晶が2.0Åで回折する結晶構造を有する、請求項41記載の方法。
  53. TNF−α変換酵素ポリペプチド結晶が単斜晶系である、請求項41記載の方法。
  54. TNF−α変換酵素ポリペプチド結晶が結晶学的に独立した4つのTNF−α変換酵素触媒ドメイン(TCD)分子を含む単位格子を有する、請求項41記載の方法。
  55. TCD分子が非対称格子内にある、請求項54記載の方法。
  56. TNF−α変換酵素ポリペプチド結晶が単斜空間群P2であり、格子定数がa=61.38Å、b=126.27Å、c=81.27Åおよびβ=107.41゜である、請求項41記載の方法。
  57. 会合性化合物がTNF−α変換酵素のS1’領域と会合するように設計される、請求項41記載の方法。
  58. 会合性化合物がTNF−α変換酵素のS1’S3’ポケットと会合するように設計される、請求項41記載の方法。
  59. 会合性化合物が亜鉛をキレート化する部分を組み入れるように設計される、請求項41記載の方法。
  60. 会合性化合物がTNF−α変換酵素のLeu348またはGly349と水素結合を形成するように設計される、請求項41記載の方法。
  61. 会合性化合物がTNF−α変換酵素のS1’ポケットを占有する非極性基を導入するように設計される、請求項41記載の方法。
  62. 会合性化合物がTNF−α変換酵素のS1’−S3’ポケットをつなぐ経路(channel)内に位置し、その経路と適切なファンデルワールス接触を行う基を導入するように設計される、請求項41記載の方法。
  63. 会合性化合物がTNF−α変換酵素の骨格アミド基上のLeu348またはGly349と水素結合を形成するように設計される、請求項41記載の方法。
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