JP2004360084A - 繊維構造物 - Google Patents

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Aya Haseyama
彩 長谷山
Katsuya Okajima
克也 岡嶋
Takaharu Okamoto
敬治 岡本
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Abstract

【課題】本発明は、使用に際して持続性のある消臭性と抗ピリング性を同時に満足する、優れた機能を有する繊維構造物を提供せんとするものである。
【解決手段】本発明の繊維構造物は、チタンとケイ素を含む複合酸化物と吸着型消臭剤とが、ケイ素系樹脂およびフッ素系樹脂から選ばれた少なくとも1種のバインダーを介して、繊維上に固着されていることを特徴とするものである。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、従来なかった耐久性のある消臭性、着臭防止性、抗ピリング性などの優れた機能性を有する繊維構造物に関する。さらに詳しくは、衣料、シート材または寝具などのインテリア、または自動車などの車内内装材などに広く応用できる繊維構造物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、国民の生活水準の向上に伴い、健康および衛生に関する意識も高まっており、衣食住の各分野において、消臭加工を施した製品や技術が実用化されている。例えば、繊維に対して消臭加工を施す場合は、消臭剤の原糸への練り込み、紡績工程における付与、染色時および染色後の付与が行われている(特許文献2参照)。
【0003】
これらに使用されている消臭剤は、活性炭、シリカなどに代表される無機系化合物や、植物系化合物や、ポリカルボン酸系ポリマー、アミン系ポリマーなどの有機系化合物がある。これらの大部分は、中和もしくは吸着作用により消臭を行うため、持続性のある消臭機能を発揮し得るものではない。
【0004】
酸や塩基を用いた中和作用による消臭方法では、消臭性能が飽和する問題があり、飽和すると消臭効果を発揮しなくなるのである。また、活性炭やシリカなどに代表される吸着作用を利用した消臭剤も知られている。これらは、悪臭成分を消臭剤に集めて吸着することで、周囲の悪臭濃度を低下させるが、依然として悪臭成分は消臭剤中に残り、いったん捕捉した悪臭成分が再放出される場合もあるので、その消臭効果には限界がある。
【0005】
また悪臭成分が消臭剤に捕捉されている繊維上で、悪臭成分が化学変性して更にくさい成分となったり、悪臭成分が再放出されたりして、生地近くに悪臭が漂う場合もある。このことから、消臭加工した繊維そのものが臭わないという着臭防止加工は、技術的な難度が高いのである。
【0006】
最近、光触媒の酸化力によって悪臭成分を分解する技術が脚光を浴び、繊維への応用も活発に行われている。光触媒は、紫外線などの光エネルギーにより悪臭成分を酸化分解するので、酸性臭、塩基性臭、中性臭などをバランスよく消臭する特徴がある(特許文献3、4,5参照)。
【0007】
一方、光触媒の繊維用途への応用は、消臭、抗菌、防汚の性能に着目したものが知られているが、抗ピリング性に着目したものは、これまでに例がない。
【0008】
繊維への抗ピリング加工は、毛焼加工、脆化加工、樹脂加工が一般的である(特許文献1参照)。しかし、毛焼加工はポリエステルなどの合成繊維に行うと、溶融玉が繊維表面に残って風合いが粗硬になる欠点があり、また脆化加工では、抗ピリング性と繊維強度維持の両立が難しかった。
【0009】
【特許文献1】特開平9−170171号公報
【0010】
【特許文献2】特開平10−60778号公報
【0011】
【特許文献3】特開2001−181964号公報
【0012】
【特許文献4】特開2002−153545号公報
【0013】
【特許文献5】特開2002−153547号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、使用に際して持続性のある消臭性と抗ピリング性を同時に満足する、優れた機能を有する繊維構造物を提供せんとするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の繊維構造物は、チタンとケイ素を含む複合酸化物と吸着型消臭剤とが、ケイ素系樹脂およびフッ素系樹脂から選ばれた少なくとも1種のバインダーを介して、繊維上に固着されていることを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、前記課題、つまり、使用に際して持続性のある消臭性と抗ピリング性を同時に満足する、優れた機能を有する繊維構造物について、鋭意検討し、酸化分解機能を持つチタンとケイ素を含む複合酸化物と、消臭機能をもつ吸着型消臭剤とを、ケイ素系樹脂およびフッ素系樹脂から選ばれた少なくとも1種のバインダーを介して繊維上に固着してみたところ、意外にもかかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0017】
本発明において、チタンとケイ素を含む複合酸化物は、主に光触媒としての作用効果を発揮する。ここで、光触媒とは、紫外線により励起され、強い酸化力によって有機物を酸化分解する特性を有するものであり、具体的には、アナターゼ型、ルチル型と呼ばれる結晶型の構造をもつものが含まれる。この光触媒は、酸化分解作用によって、消臭性能と、抗ピリング性能を有する。
【0018】
光触媒による消臭では、酢酸、イソ吉草酸といった酸性臭、アンモニアなどの塩基性臭、トリメチルアミン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドなどの中性臭などがバランスよく消臭される。光触媒は長時間かけて環境の悪臭成分を少しずつ消していき、また、通常の消臭剤と違って飽和点がないため、長期間に渡って性能劣化が起こらない特徴がある。
【0019】
光触媒による抗ピリング性は、繊維の脆化作用に由来し、繊維表面の細い毛羽を酸化分解により脆化・脱落させる。ピリングは毛羽同士が絡んで大きくなったものであり、光触媒の酸化分解作用で毛羽が脱落すると、ピリングの発生が抑えられる。毛羽は細いため表面積が大きく、また外部に突き出ていていることから、光を受けて光触媒が活発に作用し、消臭作用に加えて毛羽脆化が促進される。一方、繊維構造物では、毛羽に比較して重量当たりの表面積が小さく、光が当たらない部分も多いため、光触媒作用はもっぱら消臭のみに働き、繊維脆化までは起こらないのである。
【0020】
かかる複合酸化物微粒子状であることが好ましく、特に、多孔質である場合、表面積が大きくなり被分解物との接触面積も多くなるため好ましい。すなわち、具体的には、平均粒子径が、0.1〜100μmで、比表面積が10〜1000m /gであるものが好ましく使用される。かかる平均粒子径が大きすぎたり、比表面積が小さすぎたりすると、有機物分解速度が低下する傾向がある。
【0021】
ここで、かかる比表面積は、QUANTA CHROME社製 QUANTASORB OS−8の装置を用い、比表面積測定方法に従い測定する。
【0022】
かかる複合酸化物の繊維構造物に対する付着量は、繊維構造物に対して0.05〜30重量%が好ましく、0.05〜20重量%がより好ましく、0.08〜10重量%がさらに好ましい。少なすぎると有機物の分解速度が低下し、十分な性能が得られなかったり、また多すぎると、繊維布帛の風合いが粗硬なものになり実用に不向きとなる。
【0023】
本発明においてチタンとケイ素とを含む複合酸化物の製造方法としては、例えば、特公平5−55184号公報に記載された方法が挙げられる。一般に、チタンとケイ素からなる二元系複合酸化物は、例えば、「触媒」(第17巻,No.3、72頁1975年)に記載されているように、固体酸として知られ、構成するおのおの単独の酸化物には見られない顕著な酸性を示し、また、高表面積を有する。すなわち、チタンとケイ素とを含む複合酸化物は、酸化チタンと酸化ケイ素を単に混合したものではなく、チタンとケイ素がいわゆる二元系酸化物を形成することにより、その特異な特性が発現するものと認めることのできるものである。さらに、複合酸化物は、消臭の効果を効率的にする点で、X線回析による分析で、原子の配列が全く周期性を持たない非晶質もしくはほぼ非晶質に近い微細構造を有していることが好ましい。チタンとケイ素の割合は、モル比でチタンが20〜95モル%、ケイ素が5〜80モル%の範囲にあることが好ましい。その場合、酸化ケイ素の割合が多くなると、酸化チタンの光触媒活性力が弱まる傾向があるので、使用目的により両者の最適割合を決めるのが好ましい。
【0024】
チタンとケイ素を含む複合酸化物の好ましい製造方法としては、四塩化チタンをシリカゾルと共に混合し、その中にアンモニア水を滴下添加して、沈殿を生成せしめ、この沈殿物を濾過、洗浄、乾燥後300〜650℃で焼成する。この方法によれば、一般的に知られている酸化チタン光触媒と比較して、有機物の酸化分解特性に優れているものを提供することができる。
【0025】
本発明において、吸着型消臭剤をチタンとケイ素を含む複合酸化物と組み合わせると、繊維構造物の消臭性能、抗ピリング性能が飛躍的に向上する。
【0026】
本発明でいう吸着型消臭剤は、消臭作用が主として吸着作用によって消臭する形を採るものである。かかる吸着型消臭剤は、短時間で悪臭成分を吸着する特徴があり、光触媒の少量持続型消臭とはスタイルが異なる。この吸着型消臭剤と光触媒の2者を組み合わせることにより、初めて、環境中の悪臭成分を素早く吸着除去し、吸着型消臭剤に吸着した悪臭成分を光触媒がゆっくりと分解して無臭化するという、本発明の効果が発揮されるのである。
【0027】
また、微粒子となった吸着型消臭剤を用いることで、抗ピリング性を高めることができる。ピリングは、毛羽が引き出されて絡まりが大きくなると目に見える形となるが、吸着型消臭剤の微粒子は、糸同士の滑りを悪くして糸ズレを阻害し、毛羽の引き出しを防止するのである。かかる吸着型消臭剤の形状は、球に近いものが好ましく、その平均粒子径としては、0.01〜100μmのものが好ましく用いられる。
【0028】
かかる吸着型消臭剤としては、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、ゼオライト、シリカゲル、活性炭などの多孔質物質が、消臭性との兼ね合いから好ましく使用される。これらの多孔質物質のなかでも、特に二酸化ケイ素および酸化亜鉛の非晶性物質が、好ましく用いられる。また、比表面積が10〜1000m /g、好ましくは50〜700m /g程度のものを使用するのがよい。
【0029】
本発明の吸着型消臭剤は、チタンとケイ素の複合酸化物に対して10〜500重量%の割合で用いるのが好ましく、80〜400重量%の割合がより好ましい。10重量%より少ないと、吸着型消臭剤の特色である短時間での消臭が生かされず、500重量%より多いと、光触媒の特色である毛羽脱落が少なくなり、毛羽同士が絡まりピリングができ易くなる。
【0030】
かかる吸着型消臭剤と光触媒の2者を繊維に固着させるために、本発明では、バインダーとして、ケイ素系樹脂およびフッ素系樹脂から選ばれた少なくとも1種が好ましく使用される。化学的に活性な成分を持つバインダー樹脂を用いると、光触媒の酸化作用により分解を受け、耐久性が低くなったり、悪臭を放ったりするので注意深く選定するが必要である。かかるバインダー樹脂としては、ケイ素系樹脂、フッ素系樹脂などの化学的に安定な樹脂の他にも、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂、メラミン系樹脂などの比較的酸化分解されにくいものなどを混合して用いてもよい。
【0031】
かかるケイ素系樹脂としては、シリコーン系樹脂、アルキルシリケート系樹脂などを使用することができるが、これらに限定されない。
【0032】
また、かかるシリコーン系樹脂としては、シリコーンレジンもしくはシリコーンワニスという分類に属する縮合架橋型樹脂を使用することができ、かかる樹脂は、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシランなどの縮合架橋型樹脂を、単独または数種の配合物を縮合して得ることができるものが含まれる。これらは、3次元構造の樹脂を形成し、シリコーン樹脂の中でも、最も耐熱性や耐薬品性に優れたものであるので好ましく使用される。また、テトライソプロポキシシランやテトラエトキシシランをアルコール/水混合溶剤中で強酸により加水分解して得られる酸化ケイ素のゾルを乾燥したものも好ましく用いられ、これによればガラス質の被膜が得られる。このようなゾル/ゲル法で得られる構造物は無機質に近いもので、本発明にはより好ましい構造物である。
【0033】
また、アルキルシリケート系樹脂としては、主にSi−Oの結合部分と直鎖または分岐のある飽和炭化水素基から成り、その両端にOH基をもつもの、たとえば次式のようなものが好ましく使用される。
【0034】
OH−(Si−O)−R−OH
式中、Rは、炭素数1〜10の直鎖または分岐のある飽和炭化水素基であり、nは1以上の整数を意味し、好ましくは無機性を高めるために1000〜10000の範囲のものがよい。
【0035】
かかる直鎖または分岐のある飽和炭化水素基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、イソブテンなどの直鎖または分岐のある飽和炭化水素基が用いられる。これらアルキルシリケートは1種、2種の混合物でもよい。これらの化合物は、熱の存在下で容易に脱水反応を起こして、ポリシロキサン被膜を形成する特徴がある。アルキルシリケートは、水溶性であり、繊維構造物をこれらの水溶液に含浸させて加熱処理すると、繊維表面上に薄い被膜を形成するものである。
【0036】
また、フッ素系樹脂としては、ビニルエーテルおよび/またはビニルエステルと、フルオロオレフィン重合性化合物が、耐熱性、耐薬品性の点で非常に優れた特性を持っていて好ましく使用される。例えば、ポリフッ化ビニルやポリ四フッ化エチレン、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエステルやビニルエステル−フルオロオレフィンなどが好ましく使用される。
【0037】
本発明で用いるかかるバインダー樹脂に架橋剤を添加すると、該バインダー樹脂と繊維との接着性が高まるので好ましい。かかる架橋剤としては、シランカップリング剤、ブロックイソシアネートなどが用いられるが、中でもシランカップリング剤は無機物と有機物の接着性に優れており好ましく用いられる。これにより有機物である繊維やバインダー樹脂と、無機物である複合酸化物の相互間に化学的結合力が働き、洗濯耐久性の向上につながるのである。
【0038】
次に、本発明の繊維構造物の製造方法の一例について説明する。
【0039】
まず分散剤を用いて、チタンとケイ素を含む複合酸化物の水分散液、吸着型消臭剤の水分散液を作製する。これらをそれぞれ水で希釈して混合し、さらにケイ素系樹脂およびフッ素系樹脂から選ばれた少なくとも1種のバインダー樹脂を水で希釈してから混合する。さらに架橋剤を水で希釈した液を加えることも好ましく行われる。これらを所定濃度に合わせて加工液とする。固形分に換算して、チタンとケイ素を含む複合酸化物は0.05〜0.5%、吸着型消臭剤は0.005〜2.5%、バインダー樹脂は0.05〜2.0%、架橋剤は0.01〜0.5%程度水中に含まれているのが望ましい。
【0040】
次いで、この加工液に繊維構造物を含浸させた後、10〜200%の絞り率でマングルロールで絞り、ドライ−キュアの工程を経るか、あるいは、この加工液を10〜100000cps程度の粘度に調整して、ナイフコーターやグラビアロールコーター、捺染などで塗布した後、200℃以下の温度で固定する。
【0041】
本発明の繊維構造物を構成する繊維としては、合成繊維、天然繊維等、特に限定することなく用いることができる。中でも、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維が好ましく用いられる。
【0042】
ポリエステル系繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレートなどが好ましく使用される。また、他成分と共重合したものも好ましく用いられ、他成分としては、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、メトオキシポリオキシエチレングリコールなどが好ましく使用される。さらに、ポリエステル系繊維とともに、たとえばポリアミド、アクリル等の合成繊維、アセテート、レーヨン等の半合成繊維、羊毛、絹、木綿、麻等の天然繊維を用いることも好ましい。
【0043】
一般にポリエステル系繊維やアクリル系繊維といった合成繊維は繊維の強度が強いため毛玉が脱落しにくく、ピリングが目立つ傾向にあるが、本発明を実施することで抗ピリング性能を付与することができるのである。
【0044】
本発明でいう繊維構造物とは、布帛状物はもちろん、帯状物、紐状物、糸状物、わた状物など、その構造、形状はいかなるものであってもさしつかえない。好ましくは合成繊維を主体とした布帛状のもの、すなわち織物、編物、不織布が好ましく使用されるが、かかる繊維と樹脂との複合材料であってもよい。
【0045】
かくして従来になかった耐久性のある消臭性、着臭防止性、抗ピリング性に優れた機能性を有する繊維構造物を提供することができるものである。
【0046】
本発明によれば、衣料やカーテン、壁装材、シート材、寝具などのインテリア、また自動車などの車内内装材などに広く応用できる。
【0047】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
【0048】
実施例中での品質評価は次の方法を用いた。
(比表面積測定)
QUANTA CHROME社製 QUANTA SORB OS−8を用いて測定した。
【0049】
測定条件:DET−1点法、流通法、TDC検出
前処理条件:N下 250℃×15分
(平均粒子径測定)
JIS R1629「ファインセラミックス原料のレーザ回折・散乱法による粒子径分布測定方法」に基づいて測定した。
(洗濯)
自動反転渦巻き式電気洗濯機VH−3410(東芝(株)製)を用い、市販洗剤0.2%、温度40±2℃、浴比1:50で5分間強反転で洗濯し、その後、排水、オーバーフローさせながらすすぎを2分間行う操作を2回繰り返しこれを洗濯1回とした。
(光触媒に起因する有機物分解臭の確認)
10cm四方の正方形に切った試料を、500mlの蓋付き容器に入れて蓋をし、直射日光の当たる窓際に1日間放置した。
【0050】
5人により、次の方法で官能評価を行った。容器内の残臭について下記臭気強度による評価を実施し、その平均値を算出した。
【0051】
5:強烈な臭い
4:強い臭い
3:楽に感知できる
2:何の臭いかわかる弱い臭い
1:やっと感知できる臭い
0:無臭
(イソ吉草酸臭による着臭防止性の臭覚評価)
汗臭を代表する臭いとしてイソ吉草酸を取り上げ、これについて官能による評価を行った。
【0052】
0.01%のイソ吉草酸水溶液をマイクロシリンジにて5μl秤量し、これを10cm×10cmの大きさに切り取った試料の中央部に5点滴下した。滴下の方法は布帛中央部に1点、続いて中央部の1点を取り囲むようにちょうどサイコロの五の目を成すがごとく4点滴下した。この布帛を蛍光灯下に3時間放置後、5人により、試料の臭いに対し臭気強度評価を実施し、その平均値を出した。
(アンモニア臭の消臭性評価)
試料を3g入れた500mlの容器に初期濃度が300ppmになるようにアンモニアガスをいれて密閉し、30分間放置後、ガス検知管で残留アンモニア濃度を測定した。そして下記の式に従い消臭率(%)として算出した。
【0053】
消臭率(%)
=〔1−(ガス検知管測定濃度)/(初期濃度)〕×100
(抗ピリング性の評価方法)
JIS L 1076「織物および編物のピリング試験方法」に基づいて級判定による評価を行った。
【0054】
5級:ピリングの発生がほとんどないもの
4級:ピリングの発生が少々あるもの
3級:ピリングの発生がかなりあるもの
2級:ピリングの発生が多いもの
1級:ピリングの発生が著しく多いもの
(試供布)
試供布Aとして、タテ糸に34番手のポリエステル65%綿35%の糸、ヨコ糸に34番手のポリエステル65%綿35%の糸と167dtex−48Fのポリエステル糸を用いた平織物を、通常の加工条件により精練、乾燥、中間セット、染色したものを用いた。
【0055】
試供布Bとして、タテ糸に62dtex−40Fのナイロン糸、ヨコ糸に49dtex−34Fのナイロン糸と108dtex−24Fのナイロン仮より糸を用いた二重織り織物を、通常の加工条件により精練、乾燥、中間セット、染色したものを用いた。
【0056】
実施例1
平均一次粒子径が7nm、平均比表面積が150m/gであるチタンとケイ素の複合酸化物を水分散化(固形分20%)し、平均粒子径を0.3μmとしたものを光触媒加工剤とした。また、平均比表面積が250m/gである二酸化ケイ素および酸化亜鉛の非晶質物質を水分散化(固形分35%)し、平均粒子径を12μmとしたものを吸着型消臭剤Aとした。これらを用い、下記成分を水で希釈したものを加工液とした。
【0057】
Figure 2004360084
これに試供布Aを浸し、マングルロールでピックアップ80重量%で絞り、120℃で2分乾燥した後、180℃で1分間熱処理し、繊維表面に光触媒を含む構造物を得た。この繊維布帛について、分解臭確認、消臭性、抗ピリング性の評価を行い、結果を表1に示した。
【0058】
実施例2
実施例1の加工液に下記成分を加えたものを加工液とした。
【0059】
Figure 2004360084
試供布Aに対して、上記加工液を用いて実施例1と同様に加工を行った。この繊維布帛について、分解臭確認、消臭性、抗ピリング性の評価を行い、結果を表1に示した。
【0060】
実施例3
下記成分からなる加工液の水溶液を作成した。
【0061】
Figure 2004360084
試供布Bに対して、上記加工液を用いて実施例1と同様に加工を行った。この繊維布帛について、分解臭確認、消臭性、抗ピリング性の評価を行い、結果を表1に示した。
【0062】
実施例4
平均比表面積が600m/gである銀ゼオライトを水分散化(固形分20%)し、平均粒子径を2.5μmとしたものを吸着型消臭剤Bとした。下記成分からなる水溶液を調整し、加工液とした。
【0063】
Figure 2004360084
試供布Bに対して、上記加工液を用いて実施例1と同様に加工を行った。この繊維布帛について、分解臭確認、消臭性、抗ピリング性の評価を行い、結果を表1に示した。
【0064】
比較例1
試供布Aについて、消臭性、抗ピリング性の評価を行い、結果を表1に示した。
【0065】
比較例2
試供布Bについて、消臭性、抗ピリング性の評価を行い、結果を表1に示した。
【0066】
比較例3
下記成分からなる水溶液を調整し、加工液とした。
【0067】
Figure 2004360084
試供布Aに対して上記加工液を用いて実施例1と同様に加工を行った。この繊維布帛について、分解臭確認、消臭性、抗ピリング性の評価を行い、結果を表1に示した。
【0068】
比較例4
下記成分からなる水溶液を調整し、加工液とした。
【0069】
Figure 2004360084
試供布Bに対して上記加工液を用いて実施例1と同様に加工を行った。この繊維布帛について、分解臭確認、消臭性、抗ピリング性の評価を行い、結果を表1に示した。
【0070】
比較例5
下記成分からなる水溶液を調製し、加工液とした。
【0071】
Figure 2004360084
試供布Bに対して上記加工液を用いて実施例1と同様に加工を行った。この繊維布帛について、分解臭確認、消臭性、抗ピリング性の評価を行い、結果を表1に示した。
【0072】
【表1】
Figure 2004360084
【0073】
表1から明らかなように、実施例1〜4のものでは、分解臭もなく、消臭性・抗ピリング性も共に良好であったが、吸着型消臭剤を欠いている比較例3、複合酸化物を欠いている比較例4は、分解臭は発生しないものの、消臭性能は実施例1〜4に比して弱く、また抗ピリング性も1級前後と悪いことがわかる。また、バインダー樹脂がケイ素系樹脂でもフッ素系樹脂でもない比較例5では、消臭性能は実施例1〜4と同等であるものの、抗ピリング性は2級も悪くなり、更に分解臭が発生するので実用に適さないものであった。
【0074】
また、繊維上に複合酸化物も吸着型消臭剤も(バインダーも)付着していない比較例1,2では、生地の消臭効果はほとんどないことが分かる。
【0075】
【発明の効果】
本発明によれば、衣料やカーテン、壁装材、シート材、寝具などのインテリア、また自動車などの車内内装材などに広く応用できる機能性を有する繊維構造物を提供することができる。

Claims (9)

  1. チタンとケイ素を含む複合酸化物と吸着型消臭剤とが、ケイ素系樹脂およびフッ素系樹脂から選ばれた少なくとも1種のバインダーを介して、繊維上に固着されていることを特徴とする繊維構造物。
  2. 該吸着型消臭剤が、二酸化ケイ素および酸化亜鉛からなる非晶性物質であることを特徴とする、請求項1に記載の繊維構造物。
  3. 該吸着型消臭剤が、該複合酸化物に対して、10〜500重量%の割合で含有されていることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維構造物。
  4. 該複合酸化物が、繊維構造物に対して0.05〜30重量%の割合で固着していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の繊維構造物。
  5. 該複合酸化物および吸着型消臭剤が、10〜1000m/gの比表面積を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の繊維構造物。
  6. 該複合酸化物および吸着型消臭剤が、0.1〜100μmの平均粒子径を有するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の繊維構造物。
  7. 該ケイ素系樹脂が、シリコーン系樹脂およびアルキルシリケート系樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の繊維構造物。
  8. 該バインダーが、さらに架橋剤を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の繊維構造物。
  9. 該繊維構造物が、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維およびアクリル系繊維の少なくとも1種を含むものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の繊維構造物。
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