JP2010119970A - 消臭性繊維およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた光触媒性能を有し、長期間の使用や繰返しの洗濯等によっても初期の性能や強度劣化が少なく、初期消臭性能の高い繊維とその製造方法を提供することにある。
【解決手段】光触媒粒子を含む消臭繊維であって、下記要件を満足することを特徴とする消臭繊維。
a)光触媒粒子を繊維全重量あたり0.5〜4重量部含むこと。
b)単糸繊度が0.5dtex〜3dtexであること。
c)光触媒粒子により繊維表面に凸部が形成され、該凸部が繊維長さ1μmあたり0.1個以上存在すること。
d)光触媒粒子の平均粒子径が0.1〜2μmであること。
【選択図】なし

Description

本発明は、優れた光触媒の機能を発現可能な光触媒含有消臭性繊維に関する。更に詳しくは光触媒機能を効果的に発現すると共に優れた強度を有し、かつ長期間に亘る使用においても繊維強度の低下が少ない消臭性繊維およびその製造方法に関するものである。
近年、快適生活を指向する生活環境の多様化に伴い、家庭だけでなく、オフィスや病院などにおいても種々の臭いに対する関心が高くなってきている。また、住宅の気密性の向上に伴い、顕在化してきた問題として、住居内における悪臭や有害な成分、例えばホルムアルデヒドのような成分への対応が迫られてきている。
このような状況において、消臭性能を有する繊維構造物を使用して悪臭を取り除く試みが種々提案されており、単なる吸着機能だけでなく、光触媒など分解機能も有しているものが永続的な消臭性能を発揮し続けることができるものとして提案されている。
従来、光触媒消臭性能の繊維構造物への付与方法は、例えば繊維構造物に後加工を施して消臭性分を付着させる方法(特開2001−254281号公報など)が提案されているが、この方法では消臭性能を有する機能剤粒子が繊維表面に存在する為に機能剤粒子の脱落が起こりやすく、付着の為にバインダーを用いる為繊維布帛そのものの風合いが硬くなるなどの問題を有している。
これらの耐久性や風合いの問題を解決する為に、光触媒を繊維中に練り込んだものが種々提案されている(特開2005−220471号公報など)。しかしこの方法では光触媒が繊維に埋没する為、臭い成分と光触媒の反応が繊維構成ポリマーによって制限され、光触媒の性能が発揮され難いという問題を有する。また、光触媒自身による基材の劣化により繊維強度が経時的に低下するという問題があった。その対策として、特開2004−169217号公報などの様に、芯鞘型複合繊維の鞘部にのみ光触媒を担持させ、芯部で強度を確保する方法が提案されている。
しかしこの方法では強度の問題は解決されるものの、光触媒が鞘部に埋没し機能が発現しにくい問題があった。これらの問題を解決する為に、光触媒を練り込んだ剥離分割型複合繊維を分割することにより、繊維表面への光触媒の露出割合を増やし、性能の発現を容易にする方法が提案されている(特開平10−204727号公報)。この方法により露出割合は増加するが、依然として埋没している光触媒は存在し、また、分割極細化する為に複合繊維は互いに非相溶性のポリマーに限定され、さらには極細化することによる糸条強力の大幅な低下が起こるなどの問題がある他、光触媒自身による繊維基材の分解も同時に促進され、長期間に亘る強度保持に劣るという問題があった。
特開2001−254281号公報 特開2005−220471号公報 特開2004−169217号公報 特開平10−204727号公報
本発明の目的は、従来技術の有する課題を克服し、優れた消臭性能を有し、長期間の使用や繰返しの洗濯等によっても初期の消臭性能や強度劣化が少ない繊維とその製造方法を提供することにある。
本発明者等は、このような問題を解決するため検討した結果、本発明に到達したものであり、
即ち本発明によれば、
光触媒粒子を含む消臭繊維であって、下記要件を満足することを特徴とする消臭繊維、a)光触媒粒子を繊維全重量あたり0.5〜4重量部含むこと。
b)単糸繊度が0.5dtex〜3dtexであること。
c)光触媒粒子により繊維表面に凸部が形成され、該凸部が繊維長さ1μmあたり0.1個以上存在すること。
d)光触媒粒子の平均粒子径が0.1〜2μmであること。
また、繊維を構成するポリマーが、平均粒子径が0.1〜2μmの光触媒を含有する状態で紡糸し、延伸して0.5dtex〜3dtexとすることにより繊維表面に光触媒粒子による凸部を特定量以上形成する消臭性繊維の製造方法、
が提供される。
本発明により、光触媒機能を効果的に発現できると共に優れた強度を有し、かつ長期間に亘る使用においても繊維強度の低下が少ない繊維およびその製造方法を提供することができる。
本発明の消臭性繊維を構成するポリマーは、繊維形成能を有する結晶性熱可塑性ポリマーであれば特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミドなどを挙げることができ、なかでも汎用的に用いられ、コスト面や性能のバランスのとれたポリエチレンテレフタレートを使用することが好ましい。
本発明の消臭性繊維は平均粒子径が0.1μm〜2μmの光触媒粒子を0.5重量部〜4重量部含有してなる単糸繊度0.5dtex〜3dtexの繊維である。この組み合わせで紡糸、延伸することにより、繊維表面に光触媒粒子に基づく凸部が形成されてなることが重要である。
平均粒子径が0.1μmより小さくなると繊維表面の凸部が形成されず、2μmより大きいと単糸強度が著しく低下、あるいは単糸切れする。ここで粒子径とは1次粒子径であってもよく、2次粒子径であっても良く、好ましくは2次粒子径である。
また、光触媒含有量も同様であり、0.5重量部より少ないと、繊維表面の凸部の存在数が減少し、消臭性能が低下し、4重量部より多いと単糸強度が著しく低下し、単糸切れが生じる。単糸繊度としては、0.5dtexより小さいと単糸強度が著しく低下し、単糸切れが生じ、3dtexより大きいと、繊維表面の凸部が形成されにくくなる。一般的に光触媒は光を吸収して性能を発揮するが、繊維に練り込むと繊維を構成するポリマー自身が光の吸収、および分解対象物と光触媒の接触を妨げ、効率が落ちてしまう。そこで本発明においては、光触媒の効率を上げるために、凸部形状は光触媒がむき出し、あるいは非常に薄く繊維を形成するポリマーによって被覆されている状態であり、繊維中に埋没している従来の光触媒練り込み型繊維と比較して圧倒的に消臭効率が向上する。
凸部は繊維長さ1μm当たり0.1個以上存在することが必要である。0.1個未満であると消臭機能が十分に発現できない。好ましくは0.5個/1μmである。
本発明の消臭性繊維は、光触媒粒子を含むポリマーによる中実繊維であるが、繊維の断面形状は特に限定されず異形断面でも良い。異形断面の具体例としてはT字形、U字形、V字形、H字形、Y字形、W字形、3〜14葉型、多角形等を挙げることができるが、本発明においてはこれらの形状に限定されるものではない。また、中空繊維であってもよい。
本発明で使用される光触媒は、紫外線等の光線の照射により活性ラジカルを生成させ、多くの有害物、悪臭物を酸化分解し、光酸化触媒として機能するものをいう。そのために、光触媒は酸化性光触媒の範疇に属する場合が多い。このような光触媒を用いると、単なる吸着作用ではなく、触媒的な分解を利用して消臭できるため、消臭または脱臭効果が長期間に亘り持続できる。さらに、この光触媒は有害物、悪臭物を分解するだけでなく、殺菌作用、抗菌作用等も有している。
光触媒としては、無機、有機を問わず、種々の光半導体が使用できるが、無機光半導体である場合が多い。光触媒としては、たとえば硫化半導体(CdS、ZnS、In、PbS、CuS、MoS、WS、Sb、Bi、ZnCdS等)、金属カルコゲナイト(CdSe、InSe、WSe、HgSe、PbSe、CdSe等)、酸化物半導体(TiO、ZnO、WO、CdO、In、AgO,MnO、CuO、Fe、V、SnO等)などが挙げられ、硫化物と酸化物以外の半導体として、GaAs、Si、Se、CdP、Zn等も含まれる。これらの光触媒は単独または2種以上の組合わせで使用できる。
これらの光触媒のうち、CdS、ZnS等の硫化物半導体、TiO、ZnO、SnO、WO等の酸化物半導体が好ましく、特に酸化物半導体であるTiOが好ましい。前述の光触媒を構成する光半導体の結晶構造はとくに制限されない。たとえばTiOはアナターゼ型、ブルカイト型、ルチル型、アモルファス型等のいずれであってもよい。とくに好ましいTiOにはアナターゼ型酸化チタンが含まれる。
光触媒はゾルやゲル状で使用できると共に粉粒状で使用してもよい。光触媒を粉粒状で使用する場合、光触媒の平均粒子径は、0.1〜2μmであることが好ましく、繊維の細さと凸部形成能から選択することができる。粒子径は好ましくは0.2〜1.5μmである。粒子径が2μを越えると、たとえば溶融紡糸時にフィルター詰まりや毛羽断糸が生じ易くなり、延伸時の糸切れも増大しやすくなる。ここで粒子径とは1次粒子径であっても2次粒子径であってもよいが好ましくは2次粒子径である。
光触媒は単独で使用できるが、吸着剤または消臭剤などと混合して使用してもよい。吸着剤や消臭剤としては特に限定しないが、無機系が好ましく、水澤化学製“ミズカナイト”、ライオン製“ライオナイト”、協和化学工業製“ハイドロタルサイト類化合物”、東亞合成製“ケスモン”、ラサ工業製“KD-211GF”、チタン工業製“TZ-100”、“SZ-100S”などから選ばれる一種以上を混合して使用可能である。
これらの剤を鞘成分に含有させる方法としては、
1.繊維のベースポリマーの重合時または重合直後に光触媒を添加含有させる方法、
2.繊維のベースポリマーをベースとする光触媒を含有するマスターバッチを作製しておき、それを使用する方法、
3.紡糸するまでの任意の段階(例えば、ポリマーのペレットの作製段階、溶融紡糸段階など)でこれらの剤を添加させる方法
などを挙げることができるが重合時の触媒活性による副反応の防止などの観点からマスターバッチ添加法が好ましく用いられる。
本発明の消臭性繊維は公知の方法により製糸することができる。例えば、消臭性繊維として溶融状態で繊維状に押出し、それを500〜3500m/分の速度で溶融紡糸後、一旦巻き取らず直接延伸、熱処理する方法などが挙げられる。その他1000〜5000m/分の速度で溶融紡糸し延伸する方法、5000m/分以上の高速で溶融紡糸し、用途によっては延伸工程を省略する方法などが好ましく挙げられ、細繊度の繊維の生産性、安定性に優れたものとできる。
本発明の消臭性繊維は、繊維の長さ方向の形態が特に制限されるものではない。すなわち、繊維の長さ方向に程同じ直径を有する繊維であってもよく、太細を有するシックアンドシン繊維であってもよく、それ以外の繊維であってもよい。さらに繊維は短繊維または長繊維のいずれであってもよく、繊維製品が糸である場合、紡績糸、マルチフィラメント糸、短繊維と長繊維との複合糸であってもよい。さらに本発明の繊維には、用途や繊維の種類に応じて、仮撚加工、インターレース加工などの空気絡合処理、捲縮加工、防縮処理、防皺処理、親水加工、防水加工、防染加工などの任意の加工・処理が施されてもよい。本発明の消臭性繊維は上述の消臭剤の他に、繊維の種類に応じて繊維に用いられている各種の添加剤、たとえば酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、抗菌剤、防虫・防ダニ剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、艶消剤等を含有してもよい。
また本発明の消臭性繊維は種々の繊維製品として利用することができ、糸、織布、編布、不織布等の布帛、パイル織物、パイル編物等のパイル布帛、これらのものから形成された衣類やその他の身体着用品、インテリア製品類、寝具類、食品用包装材などを挙げることができる。具体的には下着、セーター、ジャケット、パジャマ、浴衣、白衣、スラックス、靴下、手袋、ストッキング、エプロン、マスク、タオル、ハンカチ、サポーター、ヘッドハンド、帽子、靴のインソール、芯地等の衣類や身体着用品;各種カーペット、カーテン、のれん、壁紙、障子紙、襖、繊維製ブラインド、人工観葉植物、椅子等の布張用生地、テーブルクロス、電気製品カバー、畳、布団の中詰材(詰綿等)、布団の側地、シーツ、毛布、布団カバー、枕、枕カバー、ベッドカバー、ベッドの中詰材、マット、衛生材料、便座カバー、ワイピングクロス、空気清浄機やエアーコンディショナー等のフィルターなどを挙げることができる。
本発明の消臭性繊維および該繊維を用いた繊維製品の性能として、例えば、太陽光、蛍光灯、紫外線ランプ等の照射下あるいは無光下において、アンモニア、アミン類等の塩基性臭気成分、酢酸等の酸性臭気成分、ホルマリン、アセトアルデヒド等の中性臭気成分などの多くに臭気成分を速やかに、しかも長期に亘り吸着およびまたは分解し、無臭化することができる。そのため、多数の臭気成分を含むたばこ臭等であっても効率よく除去でき、室内や車内の消臭に有効である。また家具や新建材などから発生するホルマリン、アセトアルデヒド等のアルデヒド類の消臭に対しても有効である。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例における各項目は下記の方法で測定した。
(1)消臭性能
光触媒、吸着剤、消臭剤の消臭性能は下記の測定法により消臭率で評価した。
臭気成分の初期濃度をアンモニア100ppmとした総量3リットル分を、試料量1g/リットルとした筒網状試料と共にテドラーバッグ内に封入し、紫外線ランプを1.2mW/cm2・hrの強度で照射し、24hr後の容器中の臭気成分の残存濃度を検知管を用いて測定して求めた。
(2)単位長さ当たりの凸部の量
延伸糸の側面を走査型電子顕微鏡にて2000倍にて撮影し、明らかに粒子によって突起状に生じている繊維表面の箇所を凸部とし、10μm当たりの個数をn=10にて測定し、長さ1μm当たりの平均値として算出した。
(3)繊維強度
20℃、65%RHの雰囲気下で、引張試験機により、試料長20cm、速度20cm/分の条件で破断時の強度を測定した。測定数は10とし、その平均をそれぞれの強度とした。
(4)強度保持率
1.2mW/cm2・hrの紫外線ランプを繊維を筒網状とした布帛に400hr照射し、照射後のサンプルから繊維を抜き取って繊維強度を測定し、初期の繊維強度に対する強度の保持率として算出した。
(5)光触媒の平均粒子径
光触媒の平均粒子径は各種測定法により測定することができる。一例を挙げれば、動的光散乱式粒度分布測定装置によって測定することができ、この動的光散乱式粒度分布測定装置としては、例えば、日機装株式会社製 MICROTRAC UPA(model:9340−UPA150)が挙げられる。
[実施例1]
固有粘度0.64(35℃、オルソクロロフェノール中)のポリエチレンテレフタレートに対し、このポリマーをベースポリマーとし、日機装株式会社製 MICROTRAC UPA(model:9340−UPA150)を用いて測定した平均粒子径が1.2μmの光触媒粒子(石原産業株式会社製、光触媒酸化チタンST−01)10重量%のマスターバッチを作成した。上記ベースポリマーに対してマスターバッチを20重量%チップブレンドし、溶融温度275℃で押出機にて溶融し、36孔の円形の吐出孔を有する口金を用い、紡糸速度1000m/分にて引き取った後、一旦巻き取ることなく、予熱温度90℃、熱セット温度140℃、延伸倍率3.7倍で延伸し、3700m/分の速度で巻き取った。得られたポリエステルマルチフィラメントは、繊度40dtex、単糸繊度1.1dtex、強度4.1cN/dtex、伸度28%であった。この繊維の側面を観察したところ、凸部が多数形成されており、筒網として消臭性、強度保持率の評価をおこなったところ、表1に示す通り共に優れた性能を有することが確認された。
[実施例2〜3、比較例1〜2]
実施例1において、使用するマスターバッチを10重量%としたものを実施例2、2重量%としたものを比較例1、紡糸時に72孔の口金を用いたものを実施例3、吐出量を増やし、繊度を144dtex(単糸繊度4dtex)としたものを比較例2とし、上記変更点以外は実施例1と同様の方法で繊維を得た。得られた消臭性繊維の物性を表1に示す。
本発明の範囲内である実施例2、3においては、繊維強度も高く、消臭性、強度保持率を両立する優れたものを得ることができたが、光触媒の含有量の少ない比較例1、単糸繊度の太い比較例2においては繊維表面にみられる凸部の量が少なく、消臭性に劣るものとなった。
Figure 2010119970
耐久性を有する光触媒性能(消臭、抗菌等)を有し、かつ強度や風合いにも優れるポリエステル布帛として、スポーツ用、カジュアル用、紳士婦人スーツ等の衣料用途をはじめ、メディカル用途、インテリア用途、などの用途に対しても有用である。

Claims (3)

  1. 光触媒粒子を含む消臭繊維であって、下記要件を満足することを特徴とする消臭繊維。a)光触媒粒子を繊維全重量あたり0.5〜4重量部含むこと。
    b)単糸繊度が0.5dtex〜3dtexであること。
    c)光触媒粒子により繊維表面に凸部が形成され、該凸部が繊維長さ1μmあたり0.1個以上存在すること。
    d)光触媒粒子の平均粒子径が0.1〜2μmであること。
  2. 光触媒が酸化チタンを主たる成分とするものである請求項1記載の消臭性繊維。
  3. 請求項1記載の消臭性繊維の製造方法であって、繊維を構成するポリマーに平均粒子径が0.1〜2μmの光触媒を含有させた後紡糸延伸し単糸繊度を0.5dtex〜3dtexとし、繊維表面に該光触媒粒子による凸部を繊維長さ1μmあたり0.1個以上形成させることを特徴とする消臭性繊維の製造方法。
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