JP2007169800A - 消臭・難燃性ポリエステル系繊維構造物およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
本発明の目的は、かかる従来技術の背景に鑑み、消臭性・難燃性およびその耐久性に優れたポリエステル系繊維からなる繊維構造物およびその製造方法を提供することにある
【解決手段】
ポリエステル系繊維からなる繊維構造物にハロゲン系難燃性化合物が固着および/または繊維内部に拡散してなり、該繊維表面にチタンとケイ素を含む複合酸化物と吸着型消臭剤が、ポリエステル系バインダーを介して固着していることを特徴とするものである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、従来にない耐久性のある消臭性、着臭防止性、難燃性などの優れた機能性を有するカチオン可染型ポリエステル系繊維を含む繊維構造物に関する。さらに詳しくは、衣料、シート材または寝具などのインテリア、または自動車などの車内内装材などに広く応用できる繊維構造物に関する。
近年、国民の生活水準の向上に伴い、健康および衛生に関する意識も高まっており、衣食住の各分野において、消臭加工を施した製品や技術が実用化されている。例えば、繊維に対して消臭加工を施す場合は、消臭剤の原糸への練り込み、紡績工程に於ける付与、染色時及び染色後の付与が行われている(特許文献1参照)。
これらに使用されている消臭剤は、活性炭、シリカなどに代表される無機系化合物や、植物系化合物や、ポリカルボン酸系ポリマー、アミン系ポリマーなどの有機系化合物である。これらの大部分は、中和もしくは吸着作用により消臭を行うため、持続性のある消臭機能を発揮しうるものではない。
酸や塩基を用いた中和作用による消臭方法では、消臭性能が飽和する問題があり、飽和すると消臭効果を発揮しなくなるのである。また、活性炭やシリカなどに代表される吸着作用を利用した消臭剤も知られている。これらは、悪臭成分を消臭剤に集めて吸着することで周囲の悪臭濃度を低下させるが、依然として悪臭成分は消臭剤中に残り、いったん捕捉した悪臭成分が再放出される場合もあるので、その消臭効果には限界がある。
最近、光触媒の酸化力によって悪臭成分を分解する技術が脚光を浴び、繊維派の応用も活発に行われている。光触媒は、紫外線などの光エネルギーにより悪臭成分を酸化分解するので、酸性臭、塩基性臭、中性臭などをバランスよく消臭する特徴がある(特許文献2,3,4参照)。
一方で、用途によっては難燃性能を必須とするものがあり、優れた耐久性のために消臭剤をバインダー樹脂で繊維表面に固着することが一般に知られているが、多くの場合、難燃性能を阻害することがある。
また、ポリエステル系繊維構造物における難燃加工には、ヘキサブロモシクロドデカンのようなハロゲン元素を含む化合物で処理する方法(特許文献5参照)が古くから実施されているが、燃焼時にはハロゲン化ガスが発生する。そのため、近年の環境保護の観点からハロゲン元素を含まないリン系化合物による処理が提案されている(特許文献6,7参照)。
しかしながら、難燃剤がブリードしたり、風合いが硬化したり、堅牢度が低下するなどの問題がある。
特開平10−670778号公報 特開2001−181964号公報 特開2002−153545号公報 特開2002−153547号公報 特公昭53−8840号公報 特開2000−328445号公報 特開2000−154465号公報
そこで本発明の目的は、かかる背景に鑑み、耐久性の優れた消臭性能および難燃性能を両方兼ね備えたポリエステル系繊維からなる繊維構造物およびその製造方法を提供することにある。
本発明は、上記課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
(1) ポリエステル系繊維を含んで構成されている繊維構造物に非ハロゲン系難燃性化合物が固着および/または繊維構造物の繊維内部に拡散してなり、該繊維表面にチタンとケイ素を含む複合酸化物と吸着型消臭剤が、ポリエステル系バインダーを介して固着していることを特徴とする消臭・難燃性ポリエステル系繊維構造物。
(2) 該ポリエステル系繊維がカチオン可染型であり、かつ、極限粘度が0.55以下のものを含んでいることを特徴とする上記(1)記載の消臭・難燃性ポリエステル系繊維構造物。
(3) 該非ハロゲン系難燃性化合物が、下記一般式1〜4で示される燐系化合物から選ばれた少なくとも1種類であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の消臭・難燃性ポリエステル系繊維構造物。
Figure 2007169800
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(4) 該吸着型消臭剤が、二酸化ケイ素および酸化亜鉛からなる非晶性物質であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の消臭・難燃性ポリエステル系繊維構造物。
(5) 該吸着型消臭剤が該複合酸化物に対して、10〜500重量%の割合で含有されていることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の消臭・難燃性ポリエステル系繊維構造物。
(6) 該複合酸化物が繊維構造物に対して0.05〜30重量%の割合で固着していることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の消臭・難燃性ポリエステル系繊維構造物。
(7) 該複合酸化物および吸着型消臭剤が、繊維表面上10〜1000m/gの比表面積を占める範囲において設けられていることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の消臭・難燃性ポリエステル系繊維構造物。
(8) 該複合酸化物および吸着型消臭剤が、0.1〜100μmの平均粒子径を有するものであることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の消臭・難燃性ポリエステル系繊維構造物。
(9) 該繊維構造物が、白衣、手術衣、看護衣、介護衣、寝間着、防護服、ユニフォーム、肌着、シーツ、布団、カーテン、カーペット、マット、タオル、帽子、マスクおよびエアフィルターからなる群から選ばれたものである上記(1)〜(8)記載のいずれかに記載の消臭・難燃性ポリエステル系繊維構造物。
(10) ポリエステル系繊維を含むポリエステル系繊維構造物を、染色と同時に前記非ハロゲン難燃化合物を含む浴中で加工処理し、洗浄後、チタンとケイ素を含む複合酸化物と吸着型消臭剤を、ポリエステル系バインダーを介して、繊維表面に付与し、乾燥し、さらに150〜210℃の乾燥処理を行うことを特徴とする抗菌・難燃性ポリエステル系繊維構造物の製造方法。
本発明によれば、耐久性の優れた消臭性および難燃性能を有するポリエステル系繊維含有繊維構造物を安定して供給することができる。本発明の機能を有する繊維構造物は、一般衣料用途、寝装用途、産業用途などに有効に使用できるものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられるポリエステル系繊維構造物としては、芳香族成分を含むポリエステル繊維や脂肪族ポリエステル繊維が挙げられる。芳香族成分を含むポリエステル繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートあるいはこれらと第三成分、例えばイソフタル酸、イソフタル酸イソフタル酸スルホネート、アジピン酸およびポリエチレングリコールなどが共重合またはブレンドしたものを例示することができる。また、脂肪族ポリエステル繊維としては、ポリL乳酸、ポリD乳酸およびD、L乳酸からなるホモポリマー、またはポリ乳酸-グリコール酸共重合体などを例示することができる。
本発明のポリエステル系繊維に難燃性化合物が共重合またはブレンドされていてもかまわない。
本発明で用いられるポリエステル系繊維は、原糸糸条の製造工程や加工工程での生産性や特性改善のために、通常、使用されている各種添加剤を含んでいてもよい。例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、平滑剤、可塑剤、抗菌剤、防かび剤および消臭剤などの添加剤をポリエステル系繊維に含有させることができる。
本発明では、これらのポリエステル系繊維を単独あるいは2種以上混合して使用することができるもので、短繊維、長繊維またはこれらを混合してもよい。
本発明では難燃性を付与しにくいカチオン可染型ポリエステル系繊維において、効果的であり好ましく用いられる。具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレングリコール、ポリブチレンテレフタレートなどを主たる構成成分とし、さらにカチオン可染化のために-SO3 M基(Mはアルカリまたはアルカリ土類金属で、アルカリ土類金属の場合1/2価を表す)やスルホン酸ホスホニウム基のような極性基を有し、かつエステル形成能を有する官能基を1個以上持つ化合物が共重合されていることが好ましい。このカチオン可染型ポリエステル系繊維は、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするものが、また上記共重合成分として好ましいスルホネート化合物としては、5-ナトリウムスルホイソフタル酸およびそのエステル誘導体、5-リチウムスルホイソフタル酸およびそのエステル誘導体、5-(テトラアルキル)ホスホニウムスルホイソフタル酸およびその誘導体、p-ヒドロキシエトキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、2,5-ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンスルホン酸カリウムなどが挙げられる。
該スルホネート化合物の共重合率は,成分に対して0.5〜6.0モル%、好ましくは1.0〜4.0モル%であり、さらに好ましくは1.3〜2.0モル%である。該カチオン可染型ポリエステルに分子量400〜6000のポリアルキレンオキシドグリコール成分が共重合されているものも使用することができる。また、カチオン可染型ポリエステル繊維には難燃性化合物が共重合あるいはブレンドされていてもよい。
カチオン可染型ポリエステル系繊維の極限粘度が0.55以下の場合、特に難燃効果が発揮されるため好ましい。かかる極限粘度の繊維を製造する方法としては、ポリマー製造時の重合度を調整して糸条にする方法と糸条を形成するのに適した極限粘度で、例えば、極限粘度0.65以上のポリマーを用いて糸条化してから、該繊維を後処理で所望の極限粘度に調整する方法がある。後者の方法が自在に極限粘度を変更できるので好ましい。
例えば、カチオン可染型ポリエステルの極限粘度は、ポリマー分子量に相関するのでpH4以下の酸性下でカチオン可染型ポリエステルを加水分解することにより分子量を下げることができ、その結果、極限粘度を0.55以下などに所望に応じて下げることができる。
なお、本発明における極限粘度とは、温度25℃においてオルソクロロフェノール10mlに対して試料0.10gを溶解し、オストワルド粘度計を用いて測定した値をいう。試料は繊維構造物から任意に取り出せばよい。
後処理で極限粘度を調整する方法としては、pH4以下、好ましくはpH3.5以下の水浴中で、120℃以上の温度で、好ましくは130℃以上の温度で処理するのがよい。処理水浴のpH、処理温度、処理時間は目的に応じて設定することができる。ただし、本発明者らの知見によれば、該処理水浴のpHの下限値は2程度までとするのがよく、処理水浴の好ましいpH範囲は、2以上、4以下である。また、処理水浴の温度は、好ましくは120℃以上140℃以下の範囲内である。
本発明のpH4以下の水浴中には、1価の陽イオンと2価の陰イオンからなる塩の少なくとも一種を添加することができる。かかる塩の添加は、目的とする極限粘度の繊維を安定して得るのに好ましい。該塩としては硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が例示できる。特定の塩の添加量は、ポリエステル系繊維構造物の重量に対して0.01〜15%、さらに好ましくは0.1〜7%である。
カチオン可染型ポリエステル系繊維は、原糸糸条の製造工程や加工工程での生産性や特性改善のために、通常使用されている各種添加剤を含んでいてもよい。例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、平滑剤、可塑剤、抗菌剤、防かび剤および消臭剤などの添加剤を含有させることができる。本発明では、これらのカチオン可染型ポリエステル系繊維を単独あるいは2種以上混合して使用することができるもので、短繊維、長繊維またはこれらを混合してもよい。
本発明の繊維構造物は、上記カチオン可染型ポリエステル系繊維を単独またはカチオン可染型ポリエステル系繊維とポリエステル系繊維を混用したものを使用することができる。
また、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の繊維、例えば、木綿、羊毛、絹および麻などの天然繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリルなどの合成繊維を混合して使用することができる。
本発明のポリエステル系繊維構造物としては、織物、編物および不織布などの布帛状物や、糸、紐、ロープなどの糸条物の形態のものを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
本発明において、チタンとケイ素を含む複合酸化物は、主に光触媒としての作用効果を発揮する。ここで、光触媒とは、紫外線より励起され、強い酸化力によって有機物を酸化分解する特性を有するものであり、具体的には、アナターゼ型、ルチル型と呼ばれている結晶型の構造を持つものが含まれる。この光触媒は、酸化分解作用によって、消臭性能を有する。
光触媒による消臭では、酢酸、イソ吉草酸といった酸性臭、アンモニアなどの塩基性臭、トリメチルアミン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドなどの中性臭がバランスよく消臭される。光触媒は長時間かけて環境の悪臭成分を少しづつ消していき、また、通常の消臭剤と違って飽和点がないため、長時間にわたって性能劣化が起こらないのが特徴である。
かかる複合酸化物は微粒子状であることが好ましく、特に、多孔質である場合、表面積が大きくなり被分解物との接触面積も多くなるため好ましい。すなわち、具体的には、平均粒子径が、0.1〜100μmで、比表面積が10〜1000m/gであるものが好ましく使用される。かかる平均粒子径が大きすぎたり、比表面積が小さすぎたりすると、有機分解速度が低下する傾向がある。
ここで、かかる比表面積は、QUANTA CHROME社製QUANTASORB OS−8の装置を用い、比表面積測定方法に従い測定する。
かかる複合酸化物の繊維構造物に対する付着量は、繊維構造物に対して0.05〜30重量%が好ましく、0.05〜20重量%がより好ましく、0.08〜10重量%がさらに好ましい。少なすぎると有機物の分解速度が低下し、十分な性能が得られなかったり、また多すぎると、難燃性能を阻害するおそれがある。
本発明においてチタンとケイ素とを含む複合酸化物の製造方法としては、例えば、特公平5−55184号公報に記載された方法が挙げられる。一般に、チタンとケイ素からなる二元系複合酸化物は、例えば、「触媒」(第17巻、No.3、72頁1975年)に記載されているように、固体酸として知られ、構成するおのおの単独の酸化物には見られない顕著な酸性を示し、また、高表面積を有する。すなわち、チタンとケイ素とを含む複合酸化物は、酸化チタンと酸化ケイ素を単に混合したものでなく、チタンとケイ素がいわゆる二元系酸化物を形成することにより、その特異な特性が発現するものと認めることができるものである。さらに、複合酸化物は、消臭の効果を効率的にする点でX線回析による分析で原子の配列が全く周期性を持たない非晶質もしくはほぼ非晶質に近い微細構造を有していることが好ましい。チタンとケイ素の割合は、モル比でチタンが20〜95モル%、ケイ素が5〜80モル%の範囲にあることが好ましい。その場合、酸化ケイ素の割合が多くなると、酸化チタンの光触媒活性力が弱まる傾向があるので、使用目的により両者の最適割合を決めるのが好ましい。
チタンとケイ素を含む複合酸化物の好ましい製造方法としては、四塩化チタンをシリカゾルと共に混合し、その中にアンモニア水を滴下添加して、沈殿を生成せしめ、この沈殿物を濾過、洗浄、乾燥後300〜650℃で焼成する。この方法によれば、一般的に知られている酸化チタン光触媒と比較して、有機物の酸化分解特性に優れているものを提供することができる。
本発明において、吸着型消臭剤をチタンとケイ素を含む複合酸化物と組み合わせると繊維構造物の消臭性能が飛躍的に向上する。
本発明でいう吸着型消臭剤は、消臭作用が主として吸着作用によって消臭する形を採るものである。かかる吸着型消臭剤は、短時間で悪臭成分を吸着する特徴があり光触媒の小量持続型消臭とはスタイルが異なる。この吸着型消臭剤と光触媒の2者を組み合わせることにより、初めて、環境中の悪臭成分を素早く吸着除去し、吸着型消臭剤に吸着した悪臭成分を光触媒がゆっくりと分解して無臭化するという、本発明の効果が発揮されるのである。
かかる吸着型消臭剤としては、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、ゼオライト、シリカゲル、活性炭などの多孔質物質が、消臭性との兼ね合いから好ましく使用される。これらの多孔質物質のなかでも、特に二酸化ケイ素および酸化亜鉛の非晶性物質が、好ましく用いられる。また、比表面積が10〜1000m/g、好ましくは50〜700m/g程度のものを使用するのがよい。
本発明の吸着型消臭剤は、チタンとケイ素の複合酸化物に対して10〜500重量%の割合で用いるのが好ましく、80〜400重量%の割合がより好ましい、10重量%より少ないと、吸着型消臭剤の特色である短時間での消臭が生かされず、500重量%より多いと、難燃性能を阻害するおそれがある。
かかる吸着型消臭剤と光触媒の2者を繊維に固着させ、難燃性能を維持するために、本発明では、バインダーとしてポリエステル系樹脂が好ましく使用される。化学的に活性な成分を持つバインダー樹脂を用いると、光触媒の酸化作用により分解を受け、耐久性が低くなったり、難燃性能を阻害するおそれがあるので注意深く選定する必要がある。
かかるポリエステル系バインダーとしては、一般に市販されているポリエステル系化合物とポリエチレングリコールのブロック共重合体が好ましく用いられる。
本発明の難燃性ポリエステル系繊維構造物においては、昨今の環境保護の観点から、ハロゲン元素を含まない燐系化合物が好ましく使用される。
燐系化合物としては、下記一般式1〜4で示される化合物の中から1種または2種以上の混合物として使用することができる。
Figure 2007169800
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該難燃性化合物の好ましい含有量は、カチオン可染型ポリエステルの極限粘度、ポリエステル系繊維との混用量により決定されるものであるが、繊維構造物の重量に対し、0.01〜10.0%であり、好ましくは0.1〜5.0%である。
本発明における難燃性化合物の付与方法は、浴中に混合して、難燃性化合物の吸尽、吸着させる方法を採用することができる。
本発明のチタンとケイ素を含む複合酸化物と吸着型消臭剤の付与方法としては、各々の剤の水分散液を作成し、これらをそれぞれ水で希釈して混合し、さらにはポリエステル系バインダーを水で希釈し混合する。これらを所定の濃度に合わせて加工液とする。固形分換算として、チタンとケイ素を含む複合酸化物は0.05〜0.5%、吸着型消臭剤は0.005〜2.5%、ポリエステル系バインダーは0.05〜2.0%程度水中に含まれているのが望ましい。
次いで、この加工液に前記繊維構造物を含浸させた後、10〜200%の絞り率でマングルロールで絞り、ドライ−キュアの工程を経るか、あるいは、この加工液を10〜100000cps程度の粘度に調整して、ナイフコーターやグラビアロールコーター、捺染などで塗布した後、200℃以下の温度で固定する。
本発明の繊維構造物は、白衣、手術衣、看護衣、介護衣、寝間着、防護服、ユニフォーム、肌着、シーツ、布団、カーテン、カーペット、マット、タオル、帽子、マスクおよびエアフィルター等の用途に好適に用いられる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、実施例中の品質評価は、次の方法で実施した。
実施例1〜16、比較例1〜5
<極限粘度>
温度25℃においてオルソクロロフェノール10mlに対して試料0.10gを溶解し、オストワルド粘度計を用いて測定した。
<比表面積測定>
QUANTA CHROME社製 QUANTA SORB OS−8を用いて測定した。
測定条件:DET−1点法、流通法、TDC検出
前処理条件:N2下 250℃×15分
<平均粒子径測定>
JIS R1629「ファインセラミックス原料のレーザ回析・散乱法による粒子径分布測定方法」に基づいて測定した。
<難燃性>
JIS L 1091 A-1法(ミクロバーナー法)およびJIS L 1091 D法(コイル法)に準じて測定した。
<アンモニア臭の消臭性評価>
試料を3g入れた500mlの容器に初期濃度が300ppmになるようにアンモニアガスをいれて密閉し、30分間放置後、ガス検知管で残留アンモニア濃度を測定した。そして下記の式に従い従い消臭率(%)として算出した。消臭率が90%以上のものを合格とした。
消臭率(%)=[1−(ガス検知管測定濃度)/(初期濃度)]×100
<洗濯耐久性>
水洗濯はJIS L 1042に準じて、ドライクリーニングはJIS L 1018に準じてそれぞれ5回の洗濯を実施した後、難燃性・消臭性の測定を行った。
<染色堅牢度>
JIS L 0849に規定される方法で、乾摩擦堅牢度と湿摩擦堅牢度の試験を行い、汚染用グレースケールを用いて級判定した。
(織物)
織物A:ジメチルテレフタレート、エチレングリコールを原料に重合ポリマーを合成、糸条化し130デシテックス、40フィラメントのポリエチレンテレフタレートからなる仮撚り加工糸を得た。
この加工糸をタテ糸とヨコ糸に使用して平織物とし、常法により95℃の温度で精練し、130℃で乾燥し、180℃でヒートセットし、目付180g/m2 の織物とした。該織物を構成するタテ糸とヨコ糸の極限粘度はともに0.62であった。
織物B:ジメチルテレフタレート、ジメチル(5-ナトリウムスルホ)イソフタル酸、エチレングリコールを原料に重合し、該スルホネート化合物の共重合率が酸成分に対して1.5モル%であるポリマーとし、糸条化し、カチオン可染型ポリエステルからなる130デシテックス40フィラメントの仮撚り加工糸を得た。
この加工糸をタテ糸とヨコ糸に使用して平織物とし、常法により95℃の温度で精練し、130℃で乾燥し、180℃でヒートセットし、目付180g/m2 の織物とした。該織物を構成するタテ糸とヨコ糸の極限粘度はともに0.68であった。
織物C:織物Aで使用した加工糸をタテ糸に、織物Bで使用した加工糸をヨコ糸に使用
して平織物とし、常法により95℃の温度で精練し、130℃で乾燥し、180℃でヒー
トセットし、目付180g/m2 の織物とした。
該織物中に占めるカチオン可染型ポリエステル繊維の重量は、目付当たり38%であった。また、該織物を構成するタテ糸の極限粘度は0.62であり、ヨコ糸の極限粘度は0.68であった。
(難燃性化合物)
化合物A:次の一般式6に示す化合物を40重量%の濃度で含有する水分散液を使用した。
Figure 2007169800
化合物B:次の一般式7に示す化合物を40重量%の濃度で含有する水分散液を使用した。
Figure 2007169800
化合物C:次の一般式8に示す化合物を40重量%の濃度で含有する水分散液を使用した。
Figure 2007169800
化合物D:次の一般式9に示す化合物を40重量%の濃度で含有する水分散液を使用した。
Figure 2007169800
(光触媒加工剤)
平均一次粒子径が7nm、平均比表面積が150m2/gであるチタンとケイ素の複合酸化物を水分散化(固形分20%)し、平均粒子径0.3μmとしたものを使用した。
(吸着型消臭剤)
平均比表面積が250m/gである二酸化ケイ素及び酸化亜鉛の非晶物質を水分散化(固形分35%)し、平均粒子径を12μmとしたものを使用した。
(処理方法)
表1に示す織物に対し、以下に示す条件で液流染色機を用い、浴比1/20で130℃で60分の処理を行い、次いで80℃で20分湯洗し水洗を10分行い、120℃で乾燥し170℃でヒートセットした。
(a)pH調整は燐酸を使用した。
(b)硫酸ナトリウムを必要に応じて0.4〜4%添加した。
(c)難燃剤は前記化合物A、B、C、Dを添加した。
(d)染料はポリエチレンテレフタレート繊維用には分散染料スミカロンブルーE-RP
Dを繊維重量に対し0.3%の濃度で使用した。カチオン可染型ポリエステル繊維用には
カチオン染料カヤクリルブルーGSL-EDを繊維重量に対して0.3%の濃度で使用し
た。
(e)得られた織物を乾燥工程後、上記の光触媒加工剤を0.8重量%、吸着型消臭剤を1.6重量%、ポリエステル系バインダー(高松油脂製TO−SR−1)を2.0重量%含有する加工液に浸漬し、絞り率約60重量%のマングルで均一に絞った後、120℃の温度の乾燥機内で2分間予備乾燥し、さらに180℃の温度に設定したテンターで30秒間熱処理し、光触媒を含む繊維構造物を得た。比較例2としてバインダー樹脂としてシリコン樹脂を使用したものを示す。
Figure 2007169800
表1から明らかなように、本発明によるものは優れた消臭性能および難燃性能を有意している。

Claims (10)

  1. ポリエステル系繊維を含んで構成されている繊維構造物に非ハロゲン系難燃性化合物が固着および/または繊維構造物の繊維内部に拡散してなり、該繊維表面にチタンとケイ素を含む複合酸化物と吸着型消臭剤が、ポリエステル系バインダーを介して固着していることを特徴とする消臭・難燃性ポリエステル系繊維構造物。
  2. 該ポリエステル系繊維がカチオン可染型であり、かつ、極限粘度が0.55以下のものを含んでいることを特徴とする請求項1記載の消臭・難燃性ポリエステル系繊維構造物。
  3. 該非ハロゲン系難燃性化合物が、下記一般式1〜4で示される燐系化合物から選ばれた少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1または2記載の消臭・難燃性ポリエステル系繊維構造物。
    Figure 2007169800
    Figure 2007169800
    Figure 2007169800
    Figure 2007169800
  4. 該吸着型消臭剤が、二酸化ケイ素および酸化亜鉛からなる非晶性物質であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の消臭・難燃性ポリエステル系繊維構造物。
  5. 該吸着型消臭剤が該複合酸化物に対して、10〜500重量%の割合で含有されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の消臭・難燃性ポリエステル系繊維構造物。
  6. 該複合酸化物が繊維構造物に対して0.05〜30重量%の割合で固着していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の消臭・難燃性ポリエステル系繊維構造物。
  7. 該複合酸化物および吸着型消臭剤が、繊維表面上10〜1000m/gの比表面積を占める範囲において設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の消臭・難燃性ポリエステル系繊維構造物。
  8. 該複合酸化物および吸着型消臭剤が、0.1〜100μmの平均粒子径を有するものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の消臭・難燃性ポリエステル系繊維構造物。
  9. 該繊維構造物が、白衣、手術衣、看護衣、介護衣、寝間着、防護服、ユニフォーム、肌着、シーツ、布団、カーテン、カーペット、マット、タオル、帽子、マスクおよびエアフィルターからなる群から選ばれたものである請求項1〜8記載のいずれかに記載の消臭・難燃性ポリエステル系繊維構造物。
  10. ポリエステル系繊維を含むポリエステル系繊維構造物を、染色と同時に前記非ハロゲン難燃化合物を含む浴中で加工処理し、洗浄後、チタンとケイ素を含む複合酸化物と吸着型消臭剤を、ポリエステル系バインダーを介して、繊維表面に付与し、乾燥し、さらに150〜210℃の乾燥処理を行うことを特徴とする抗菌・難燃性ポリエステル系繊維構造物の製造方法。
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JP2012102444A (ja) * 2010-11-12 2012-05-31 Daikyo Kagaku Kk ポリエステル系繊維ニット用精練剤組成物とこれを用いる精練方法
JP2014136848A (ja) * 2013-01-18 2014-07-28 Nicca Chemical Co Ltd 消臭抗菌性繊維の製造方法及び繊維用消臭抗菌剤

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