JP2006225780A - 抗菌性繊維 - Google Patents

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和彦 田中
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清司 平川
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均 中塚
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Abstract

【課題】繊維に対する付着耐久性に優れ、かつ環境と生物に優しい抗菌性繊維を提供する。
【解決手段】炭素炭素二重結合を末端に有する炭素数10〜14の脂肪族または脂環族アルデヒド化合物のアルデヒド基(−CHO)と繊維形成ポリマー中の水酸基(−OH)との反応により形成される基を有することを特徴とする抗菌性繊維。
【選択図】なし

Description

本発明は、繊維に対する付着耐久性に優れた抗菌性繊維を提供するものである。同時に環境と生物に優しい抗菌性繊維を提供するものである。
繊維に抗菌性を付与する従来技術の代表例に、抗菌剤をバインダー樹脂を介して繊維あるいは布帛表面に付着させる技術がある(特開平11−279952号、特開平10−325075号、特開平9−13279号、特開2000−7511号)。この技術の欠点は、磨耗や洗濯によってバインダー樹脂と共に抗菌剤が脱落して加工繊維の抗菌性能が早期に失われやすいこと及びバインダー樹脂を付与することにより布や繊維の風合いが損なわれることである。
別の方法として、そのような抗菌剤を溶融性合成繊維に練り込んだものがある(特開平7−238421号、特開平7−3527号、特開2004−360091)。またビスコースレーヨンに練り込んだものもある(特開平10−37018号)。この方法の欠点は、合成繊維、特に溶融紡糸の紡糸の際の熱で抗菌剤が分解しやすいことや、紡糸に使用する薬剤で抗菌剤の酸化などが生じ、抗菌性を失うこと、さらに抗菌剤によっては繊維が変色しやすいことである。
また、抗菌剤に繊維と反応する反応基を付与し、それを介して繊維と化学的に結合させる試みもある(特開2004−210665)。しかし、その様な反応基を付与すること自体煩雑であると同時に、反応基を導入する時に抗菌活性基をも失活させてしまう欠点がある。また、繊維と結合させる手段も、UV架橋、電子線架橋などの煩雑なものとなりやすい。
さらに、抗菌剤が天然由来でなく新規に化学的に合成された物質である場合は、被処理繊維が廃棄焼却されるときに思いがけない副生成物を生じ、環境を汚染することも懸念される。
特開平11−279952号公報 特開平10−325075号公報 特開平9−13279号公報 特開2000−7511号公報 特開平7−238421号公報 特開平7−3527号公報 特開2004−360091公報 特開平10−37018号公報 特開2004−210665公報
天然由来の抗菌剤を繊維に付与する試みは古くから見られ、最近の環境やエコロジーへの関心の高まりからその動きあるいは要望は高まっている。天然由来の抗菌剤には、天然由来の精油(天然に産出するものと合成により得るものの双方を包含する)あるいは精油から容易に改変される化合物がある。
しかしながら、それら天然由来の抗菌剤は繊維に親和性が乏しいので、繊維にバインダーを介して付着する方法が取られているが(特開2003−253559、特開2002−60309)、前述したように、洗濯や磨耗によって容易に脱落すること、さらに天然由来の抗菌剤は耐熱性、耐酸化分解性、耐紫外線分解性などに難点を抱えている。
本発明は、それら天然由来の抗菌剤のうち、特定の繊維と結合性を有するものを選定し、簡単な操作で該繊維に半永久的に固着あるいは化学結合させるものであり、その結果、繊維に対する付着耐久性に優れた抗菌性繊維を提供するものである。同時に環境と生物に優しい抗菌性繊維を提供するものである。
本発明は、炭素炭素二重結合を末端に有する炭素数10〜14の脂肪族または脂環族アルデヒド化合物のアルデヒド基(−CHO)と繊維形成ポリマー中の水酸基(−OH)との反応により形成される基を有することを特徴とする抗菌性繊維である。
好ましくは、上記の炭素炭素二重結合を末端に有する脂肪族または脂環族のアルデヒド化合物が10−ウンデセナールあるいはペリラアルデヒドである場合である。また、好ましくは、上記水酸基含有繊維形成ポリマーが、エチレンビニルアルコール共重合ポリマーである場合である。また、好ましくは、水酸基含有繊維形成ポリマーに脂肪族または脂環族アルデヒドが1〜10重量%結合している場合である。
従来は、天然由来の抗菌性化合物を繊維に付与しても耐久抗菌性が乏しいものしか得られなかったが、本発明のように、抗菌性を有するアルデヒド化合物を繊維の水酸基と反応させることにより、耐久性に優れ、安全性に優れた抗菌繊維を提供できる。
このような、繊維形成ポリマーの水酸基(−OH)とアルデヒド化合物とが反応した抗菌性繊維は、該アルデヒド化合物を必要に応じて乳化し、さらに必要に応じてpH調整用の酸とともに、乳化液含有水系浴中で温度70℃〜130℃にて該繊維を数分〜数時間処理することにより、アルデヒド化合物のアルデヒド基(−CHO)と繊維の水酸基(−OH)を反応させる方法により製造される。
さらに、繊維が、エチレンビニルアルコール共重合ポリマーを繊維構成ポリマーの少なくとも一部としている場合には、アルデヒド化合物、乳化剤、pH調整用の酸、架橋剤を含む水系浴において、温度70℃〜130℃で該繊維を数分〜数時間浸漬処理することにより、繊維に耐熱性を確保すると共にアルデヒド基と繊維の水酸基を反応させ、抗菌性繊維を得ることができる。
アルデヒド基は水酸基と反応してヘミアセタールとなり、さらにもう一つの水酸基と反応してアセタールとなることが知られている。この反応は繊維上の水酸基であっても起こる。最も簡単なアルデヒドであるホルムアルデヒドが綿の水酸基やポリビニルアルコールの水酸基と反応することが知られ、広く採用されている。
水酸基を有する繊維形成性ポリマーとしては、綿、麻、レーヨン、キュプラ、リヨセル、アセテート等のセルロースあるいはその水酸基の一部を置換したポリマー、ポリビニルアルコール、エチレンとビニルアルコールとの共重合体などが挙げられる。これらポリマーの水酸基はアルデヒド基と反応性を有している。すなわち、酸性領域でアルデヒド基を含む水溶液、乳化液あるいは懸濁液中で繊維と接触させることで反応は生じる。この際、液の温度を60℃以上の高温にするのが、反応を早く進める上で好ましい。
本発明において、繊維に抗菌性を付与するために、炭素炭素二重結合を末端に有する炭素数10〜14の脂肪族または脂環族アルデヒド化合物を使用する。このようなアルデヒド化合物の例として、10−ウンデセナール、ペリラアルデヒド、(E)−9,11−ドデカジエナール、(E)‐11、13‐テトラデカジエナール等が挙げられる。本発明において、これらアルデヒド化合物の結合量は、水酸基含有繊維形成ポリマーの重量に対する割合として1%以上10%以下が好ましいが、より好ましくは2〜10%、さらに好ましくは3〜8%である。重量割合が1%未満の場合には、十分な抗菌性が得られず、抗菌性繊維と言えるレベルを有しておらず、逆に10%を超える場合には、繊維の性能が損なわれる。
本発明において、アルデヒド化合物として、10−ウンデセナールとペリラアルデヒドを用いることが得られる繊維に優れた抗菌性をもたらすことから、これら2つの化合物が推奨される。これら炭素炭素二重結合を末端に有する炭素数10〜14の脂肪族または脂環族アルデヒド化合物は抗菌性を有する。特に10−ウンデセナールは、ウンデシレン酸を還元して得られ(C1120O)、香料成分として使用されている。天然には、イラガ類の誘引フェロモンとしての存在が確認されている。
本発明により10−ウンデセナールを繊維に反応させた場合、得られる繊維は明確な抗菌効果を有することを本発明者らは見出した。
10−ウンデセナールの抗菌性については、そのメカニズムは明確ではない。しかしながら、アルデヒド基がカルボン酸基に置き換わったウンデシレン酸には広汎なスペクトラムの抗菌性があることが知られている。この事実から、ウンデシレン酸の抗菌性は、末端2重結合に由来することが推測される。本発明は、アルデヒド化合物のアルデヒド基は、繊維上の水酸基との反応で消費されるので、温存された末端2重結合が抗菌性の原因であるとする説を支持するものとなっている。
本発明では、10−ウンデセナールがアルデヒド基を介して繊維上の水酸基に結合するので、結合後は10−ウンデセナール残基はヘミアセタール構造あるいはアセタール構造によって繊維上に固定化されている。このような残基がなぜ抗菌性を有するかについては必ずしも明確ではないが、疎水性の大きい炭素炭素二重結合を末端に有する適度な炭素数の炭化水素とヘミアセタール基あるいはアセタール基の親水性が適度なバランスを取った場合に、微生物の細胞膜に対する界面活性作用をもたらし、細胞膜破壊などを招来するものと推測される。
また、ペリラアルデヒドは炭素数10のモノテルペンアルデヒドであり、末端に炭素炭素二重結合を有しており、紫蘇の香気主成分として知られている。ペリラアルデヒドは環状構造を有しており、繊維の水酸基と反応は、10−ウンデセナールに比べ反応性が低い。これは環状構造による立体障害であると推測される。それでもペリラアルデヒドは繊維の水酸基と反応させると優れた抗菌性を示すことを本発明者等は見出した。
(E)−9,11−ドデカジエナールは炭素数12のアルデヒドで、末端の11位に炭素炭素二重結合を有し、天然にはイラガ類の誘引フェロモンとして存在する。このアルデヒドも繊維上の水酸基と反応し、得られる繊維は抗菌性を示す。
また、(E)‐11、13‐テトラデカジエナールは炭素数14のアルデヒドで末端の13位に炭素炭素二重結合を有し、天然にはハマキ蛾などに誘引フェロモンとして存在する。このアルデヒドの場合も、繊維上の水酸基と反応して、得られる繊維は抗菌性を示す。
一方、炭素数が14を超えて多くなると抗菌性が微弱になる。その理由として疎水性が大きくなり過ぎることが考えられる。炭素数が9以下でも抗菌性が微弱である。それは、親水性が勝ちすぎることが原因であると推測される。したがって炭素数は10〜14の一方の末端に炭素炭素二重結合を有し、他の一端にアルデヒド基を有するような脂肪族または脂環族アルデヒドが好ましい。もちろん、これらのアルデヒド化合物は、一旦、メタノールやエチレングリコールなどで代表される低級アルコールによりアルデヒド基がアセタール化されていてもよく、アセタール化されている場合には、反応条件下でアルデヒド化合物は一旦アセタール結合が外れてフリーのアルデヒド基となり、繊維の水酸基と結合することとなる。なお、該アルデヒド化合物が低級アルコールでアセタール化されている場合には、この低級アルコールの炭素数は本発明で規定する、炭素数10〜14のアルデヒド化合物のこの炭素数の中に数えない。
本発明において、アルデヒド化合物を繊維上の水酸基と反応させる方法としては、アルデヒド化合物を含む酸性浴中で繊維を加熱処理することが簡便である。
炭素数10〜14のアルデヒド化合物は水不溶であるので、乳化剤によってこれを乳化して使用することが好ましい。具体的には乳化剤とアルデヒド化合物を充分混練したものに水を注加して乳化懸濁液を調製すればよい。
水酸基とアルデヒド化合物の反応は酸性下に進行するので、酸によりpHを1.0〜5.0に、より好ましくは3.0〜4.0に調整するのがよい。酸としては蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、フマル酸などの脂肪族有機酸が比較的安全で使いやすく好ましい。
処理温度は、70℃〜130℃の高温で処理することが反応速度を速めることができることから好ましい。綿、麻、レーヨン、キュプラ、リヨセル等は耐熱水性があるので、70℃〜130℃の範囲が適用できるが、より好ましくは90℃〜110℃である。アセテートは70℃〜110℃と上記に比べて低目の温度に設定するのが好ましく、一層好ましくは80℃〜100℃である。ビニロン繊維と、エチレン−ビニルアルコール共重合繊維にあっては、70℃〜110℃が好ましく、より好ましくは80℃〜100℃である。なお、ここで言う処理温度は最高温度であり、実際には20℃〜40℃の低温から徐々に温度を高めていき、処理温度に達したのちに、適度な時間その温度をキープし、その後温度を下げて処理を完了する方法を用いるのが好ましい。
処理時間は数分〜数時間を要するが、処理温度に反比例することは言うまでもない。70℃であれば1〜3時間を要す。130℃であれば数分〜十数分で反応は完結する。しかしながら均一な反応を得るためには30分〜60分程度をかけて処理することが好ましい。
繊維の形態と処理工程は、原綿でオーバーマイヤー型の染色機で実施、糸の状態でカセ染めで実施、糸の状態でチーズ染色で実施、織・編地の状態で液流染色機やウインスあるいはパドル染色機で実施、縫製品の状態でパドル染色機で実施などのいずれの方式でもよい。これらの方法はいずれも吸尽法であるが、連続法で行うことも可能である。連続法の場合としては、パッド(薬液の含浸)−ニップ(絞り)−キュアー(加熱反応進行)により行うことができる。キュアーの媒体としては、乾熱空気、加熱水蒸気、過熱水蒸気、マイクロ波加熱などが使用できる。
水酸基を繊維表面に有する合成繊維は少ないが、エチレン−ビニルアルコール共重合ポリマーを含んでいる繊維は、−(CH−CH)m−(CH−CHOH)n−で表される化学構造を有しており(但し、mとnは、単にエチレン単位とビニルアルコール単位のモル比を意味しており、エチレン単位及びビニルアルコール単位がそれぞれm個、n個連続して存在することを意味するものではない)、反応性に富む水酸基を有している。そのため多官能性化合物を用いて架橋し耐熱性を付与する技術が知られている(特開平10−158926号公報)。
本発明において、特に繊維が、エチレン−ビニルアルコール共重合ポリマーを含んでおり、かつ繊維表面の少なくとも一部が該共重合ポリマーにより覆われている場合において優れた抗菌性を有する。
エチレン−ビニルアルコール共重合ポリマーからなる繊維としては、繊維を構成するエチレン−ビニルアルコール共重合ポリマーのエチレン含量が25〜70モル%であること(すなわち、ビニルアルコールの含量とビニルアルコールにケン化されずに残存しているビニルエステル含量の合計含量が75〜30モル%であること)が製糸性、糸物性の観点で好ましい。この繊維は、構成するポリマーの全量がエチレン−ビニルアルコール共重合ポリマーであっても良いが、芯成分に異なるポリマーをテンションメンバーとして使用し、鞘成分としてエチレン−ビニルアルコール共重合ポリマーを用いた芯鞘型複合繊維であっても良い。この代表例として、芯成分にポリエチレンテレフタレート系ポリマー、鞘成分にエチレン−ビニルアルコール共重合ポリマーを用いた芯鞘タイプの複合繊維が挙げられるが、これに限定されることはなく、芯成分は、ポリブチレンテレフタレート系ポリマー、ポリ乳酸系ポリマー、ポリトリメチレンテレフタレート系ポリマー、ナイロン系ポリマー等であってもよい。芯鞘の比率は、重量比で、芯:鞘が20:80〜80:20の範囲が良いが、より好ましくは40:60〜60:40の範囲である。また、エチレン−ビニルアルコール共重合ポリマーと他の繊維形成性ポリマーが交互に層状に積層されているような多層積層タイプの複合繊維であってもよい。
マルチフィラメント糸である場合には、単繊維の太さとして0.1〜5デシテックスで、マルチフィラメントとしてのトータル太さとしては10〜2,000デシテックスが好ましい。一方、紡績糸にあっては、単繊維デシテックスは0.3〜3.0の範囲が好ましい。紡績方法は、リング紡績、牽切紡績など既存の紡績手法を任意に使用してよい。紡績糸の番手も任意に選択できる。
紐、テグスなどの特殊な用途には、単繊維デシテックスが5〜30の範囲が好ましい。この場合マルチフィラメント、モノフィラメントのいずれでもよい。
繊維の形態としては、上記した芯鞘複合のみならず、エチレン−ビニルアルコール共重合ポリマーと上記鞘成分として用いることのできるポリマーとをサイドバイサイドに貼り付けた、いわゆる貼り合わせ断面、海島型複合断面、多層積層型断面、さらには放射型の多層積層型断面のいずれであっても良い。
これらの繊維の場合、抗菌処理前あるいは処理後に繊維を分割、あるいは一成分を除去して極細繊維としても良い。もちろん、最終繊維製品において、繊維表面の少なくとも一部は、該アルデヒド化合物を反応させた繊維形成性ポリマーで覆われていることが必要である。
具体的な処理条件は、アルデヒドを乳化剤と混練したものに水を注加してエマルジョンとしたものを処理浴に添加し、pH調整剤として例えばマレイン酸を1g/Lとなるように加え、これに耐熱架橋剤Bis(ethylenedioxy)nonane(例えば明成化学のメイスターTM21の場合、繊維重量の10%〜20%を適量とする)を加えて、90℃で60分間処理する。
反応量は、処理前後の重量増加で知ることが出来る。すなわち、まず、反応前の繊維を1mmHgの真空状態で60℃で18時間保持して絶乾状態として、繊維の重量を測定する。一方、反応後の繊維を該アルデヒド化合物の良溶媒を用いて常温で充分漱いで、未反応のアルデヒド化合物を除去する。そして、それら繊維を1mmHgの真空状態で60℃で18時間保持して絶乾状態として、繊維の重量を測定する。そして、この繊維の重量増加量から反応量が分かる(但し、上記耐熱架橋剤を併用した場合には、この方法ではその合計反応量が求められることとなるので、後述する実施例において採用されているように、予め該耐熱架橋剤単独を用いて同一条件下で架橋処理して、その重量増加量を求めておき、合計反応量から、予め求めておいた耐熱架橋剤による重量増加量を差し引くことにより該アルデヒド化合物の反応量が得られる)。
本発明の繊維は、繊維の状態で、さらにはこの繊維を使用した糸、織物、編物、不織布などの形態にして、各種の用途に使用できる。具体的用途としては、抗菌性の求められる用途であれば特に限定なく使用できるが、特に好適な用途として、肌着、スポーツウェア、ワーキングウェア、パジャマ、靴下で代表される衣類、カーテン、シャワーカーテン、毛布、間仕切り、壁紙、障子紙、襖紙、ソファー、ベッド、カーペット等で代表されるインテリア製品、包装紙、風呂敷、ハンカチ、めがね拭き、ロープ、釣り糸、紐、テープ、ベルト、魚網、たわし、排水ネット、ごみ袋、ごみネット、綿棒、マスク、床マット、椅子張り、畳のヘム、汗取りパッド、縫い糸、ガーゼ、包帯、湿布材基布、ばんそうこう、病院等で使用される白衣や手術衣や患者衣、シーツ、枕カバー、タオル、布団カバー、ナプキン、手袋、生理用品、食品包装、食品包装における吸汁材、フィルター、蒸気発生器の給水布、自動販売機の給水布、人工毛髪用基布、毛皮の基布などに適している。
実施例1
エチレン−ビニルアルコール共重合ポリマーを鞘成分、芯成分としてポリエチレンテレフタレートを用いた芯鞘型複合繊維(株式会社クラレ製ソフィスタ:芯鞘重量比率=45:55)84デシテックス−24フィラメントを仮撚加工し、編地(28ゲージの天竺)となし、界面活性剤を含む60℃の温水でソーピング後、100℃で熱風乾燥し、次いで150℃で1分間プレセットした。これ(以下、加工下生地と呼ぶ)をその後の処理に使用した。
(処理浴の構成)
加工下生地の重量は10gで統一した。10−ウンデセナールを、1.0%〜8%omfの範囲内で濃度を適宜振った。比較対照として0%もおこなった。耐熱架橋剤メイスターTM21(明成化学)を濃度10%〜15%omfで適宜振り,乳化剤としてサンモールHS−5(日華化学)を1g/Lとなる量を10−ウンデセナールと予め混練して使用した。酸としてマレイン酸を1g/Lとした。浴比は1:30で固定した。温度・時間は、常温から徐々に高め、95℃で40分間保ち、その後冷却して室温に戻した。
(洗浄)
処理後、100℃の熱水で充分洗浄し、次いで40℃の温水で充分水洗し、100℃で熱風乾燥後150℃で熱風セットした。次いで染色工程に移行した。なお、反応量の測定にはこの段階のものをサンプルとして使用しておこなった。
(染色条件)
浴比1:30で分散染料Dianix Tuxedo Black conc.を8%omf使用し, pH調整剤としてウルトラレベルMTを1g/L使用し、均染剤としてディスパーTLを1g/L使用し、130℃で40分間染色した。
(還元洗浄)
80℃に降温の後、排液し、40℃の新鮮な温水を加え、苛性ソーダ1g/L、ハイドロサルファイト3g/Lを添加し、温度を上げて還元洗浄を80℃で20分、浴比1:30で実施した。終了後、充分水洗したのち、100℃で熱風乾燥後160℃で2分間熱風セットして全工程を終了した。
(抗菌性の測定方法)
JAFET(繊維製品新機能評価協議会)の抗菌防臭加工の評価方法により、黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureus ATCC 6538P)を用いた菌液吸収法によった。評価の指標は静菌活性値を用いた。静菌活性値とは接種した菌数をA、培養後の菌数をAとした場合、静菌活性値=log(A/A)とする。たとえば接種菌数が10で培養後が10であれば、静菌活性値は2.0である。したがって静菌活性値は数値が大きいほど抗菌性が高いことになる。これを初期性能と洗濯10回後の性能を評価した。洗濯条件はJIS L 0217で定める103法で、JAFETの標準洗剤を使用しておこなった。
(抗菌性の結果)
結果を表1に示す。この表1の値から明らかなように、130℃という高温染色と引き続くアルカリ還元洗浄条件での洗浄にも10−ウンデセナール残基が耐えて抗菌性能を保持していることが分かる。また、耐熱架橋剤と10−ウンデセナールは繊維上の水酸基を取り合うと考えられるが、耐熱架橋剤を10%から15%に増量しても抗菌性能はさしたる低下が見られないことから、水酸基を取り合うことは殆どないことが分かる。なお試験No1〜10の全てにおいて、130℃染色によって大きな収縮や硬化が発生しなかったことから、充分な耐熱性が付与されていることも判る。さらに洗濯耐久性にも優れていることが明らかである。
(反応率の測定)
反応処理前重量が10gの各処理試料を10−ウンデセナールの良溶媒のエタノール500mlが入った1Lのエルレンマイヤーフラスコ中で5分振盪し、ついで新鮮なエタノールで同様に再度振盪をおこない、試料を取り出して風乾した。それらを1mmHgの真空状態において、60℃で18時間保持して絶乾となして重量を測定した。10−ウンデセナールを使用しない試料(試験No1、No8)の重量に対し増加分を10−ウンデセナールの反応固着量とした。結果を表−2に示す。これから判るように、10-ウンデセナールはほぼ定量的に反応していると判断できる。
Figure 2006225780
Figure 2006225780
比較例1
この比較例は、10−ウンデセナールをバインダーで繊維に付着させただけでは抗菌性能、特に耐久抗菌性が乏しいことを示すものである。すなわち、実施例1で使用した加工下生地に10−ウンデセナールを乳化剤で水乳化(10−ウンデセナールの濃度は50g/Lである)した液90mlと、アクリルエマルジョンバインダー(スミテックスレジンAMH−2000(住友))を200g/L含む水溶液10mlを混合した液をパディングし絞り率100%及び200%で搾液し付着量を調整した。100℃で熱風乾燥後、140℃で2分キュアリングした。これらを原布とし、原布と洗濯10回後の抗菌性を測定した。結果を表3に示す。絞り率100%の加工布には4.5%omf、絞り率200%の加工布には9.0%omfの10−ウンデセナールが付着している。これよりバインダーを介して付与した場合には、性能が本発明の方法に比べて低く、且つ、洗濯耐久性がないことが明らかである。
Figure 2006225780
実施例2〜4
上記実施例1試験No.6において、使用したアルデヒド化合物を10−ウンデセナールから、ペリラアルデヒドに変更(実施例2)、(E)−9,11−ドデカジエナールに変更(実施例3)、(E)‐11、13‐テトラデカジエナールに変更(実施例4)する以外は実施例1と同様に行い、繊維表面にこれらアルデヒド化合物を結合させた。得られた繊維への、これらアルデヒド化合物の結合量及び抗菌性能を表4に示す。
Figure 2006225780
実施例5
使用する繊維を、ビニロン繊維(株式会社クラレ製)1,000デシテックス600フィラメントに変更して上記実施例1No.6と同一の方法により処理して、抗菌性ビニロン繊維を製造した。得られた繊維へのアルデヒド化合物の結合量及び抗菌性能を表5に示す。
Figure 2006225780

Claims (5)

  1. 炭素炭素二重結合を末端に有する炭素数10〜14の脂肪族または脂環族アルデヒド化合物のアルデヒド基(−CHO)と繊維形成ポリマー中の水酸基(−OH)との反応により形成される基を有することを特徴とする抗菌性繊維。
  2. 脂肪族アルデヒド化合物が10−ウンデセナールである請求項1記載の抗菌性繊維。
  3. 脂環族アルデヒド化合物がペリラアルデヒドである請求項1記載の抗菌性繊維。
  4. 繊維形成ポリマーが、エチレンとビニルアルコールとの共重合ポリマーである請求項1〜3のいずれかに記載の抗菌性繊維。
  5. 水酸基含有繊維形成ポリマーに脂肪族または脂環族アルデヒドが1〜10重量%結合している請求項1記載の抗菌性繊維。
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