JP2004339616A - 特殊断面繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】臭気成分を効率的、また長期に亘って除去でき、抗菌性・ワイピング性をも有し、非衣料用として有効な機能を発現する繊維、衣料として良好な風合を有する繊維を提供する。
【解決手段】繊維中に、四価金属のリン酸塩、二価金属の水酸化物および光触媒を含有し、繊維横断面の重心点から繊維外周部の一番遠い点までの直線距離をAとしたときに、トータル繊維外周長がAの10倍以上の周長を有する横断面であり、しかもトータル繊維外周長をBとしたときに繊維表面へBの50分の1位以下の巾でかつ該巾の2倍以上の深さを有する溝を20個以上形成している繊維。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、従来の熱可塑性ポリマーからなる繊維の製造技術では形成し得なかった表面構造を有し、マスク、カーペット、カーテン、病院用シーツ、おしめ、ワイピングクロス、衣料用素材等、臭気を嫌う用途に使用可能な消臭・抗菌繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
合成繊維の中でポリエステル繊維、ポリアミド繊維等は優れた寸法安定性、耐薬品性、強度、耐久性等の点から衣料素材のみならず、生活資材素材として不可欠なものとなっている。しかしながら、使用用途によってはさらに特殊機能の付与が望まれていた。たとえば、家庭、オフィス、病院等の生活環境において様々な悪臭に対する関心が高まり、カーペット、カーテン、病院用シーツ、おしめ等、悪臭を嫌う用途ではできるだけ原因となる悪臭(アンモニア、アミン類等の窒素含有化合物、硫化水素、メチルメルカプタン等の硫黄含有化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、吉草酸等の低級脂肪酸類などが含まれる)を軽減させる性能を保持している繊維および繊維製品が望まれていた。
【0003】
しかしながら、生活環境には前記窒素含有化合物等の塩基性臭気成分、硫黄含有化合物、アルデヒド等の中性臭気成分、低級脂肪酸等の酸性臭気成分などの種々の臭気成分が存在し、種類の異なる複数の成分を有効に除去することは困難であった。これらの臭気成分を除去するために、種々の消臭繊維が提案されている。たとえば、天然の針葉樹、広葉樹からの抽出物あるいは緑茶からの抽出物等を後加工により繊維製品の表面に付着させる方法が提案されているが、後加工により機能を付与せしめるために耐久性に問題があった。とくに繰り返し洗濯を実施した場合、あるいは繊維製品に染色処理を施した場合など消臭性能が極端に低下する問題があった。
【0004】
また、吸着剤を繊維に担持させた消臭繊維も提案されている。しかし、このような消臭繊維では吸着剤の吸着容量に限界があるので、臭気成分の吸着量が飽和吸着量に達すると消臭できなくなり、消臭性能の持続性に問題があった。また、金属フタロシアニンを担持した消臭繊維により触媒的に悪臭成分を分解する技術も提案されている(特許文献1、2参照)が、金属フタロシアニンの触媒活性が小さいために消臭効果は十分ではなかった。
【0005】
さらに、耐久性を向上させる目的で、樹脂中に練り込む消臭剤として鉄の二価イオン化合物とL−アスコルビン酸を併合させたものがあるが、耐熱性が不十分であったり、悪臭成分を脱臭した後に変色を生じたりして繊維素材として特定の用途にしか使用できないという問題点があった。その他、消臭性成分としてリン酸ジルコニウム粒子を繊維中に練り込んだ消臭繊維(特許文献3参照)、酸化亜鉛と二酸化ケイ素とで構成されたアモルファス構造のケイ酸亜鉛粒子を繊維中に練り込んだ消臭繊維(特許文献4参照)、TiとZnの水和酸化物系の白色微粉末を繊維中に練り込んだ消臭繊維(特許文献5参照)が提案されている。さらに四価金属の水不溶性リン酸塩、二価金属の水酸化物を含有する吸着性組成物を繊維中に複合または配合した消臭繊維も提案されている(特許文献6、7参照)。しかし、これらの消臭繊維は酸性臭気成分、塩基性臭気成分および中性臭気成分のすべての臭気成分に対して優れた消臭性能を示すものではない。
【0006】
また、ある程度の消臭性能を具備していても、臭気成分を含んでいる空気との接触面積が少ないと臭気成分を完全に消臭することができず、臭いに敏感な人にとって臭気(悪臭)が残るものとなり、不快感を拭いきれない。
【0007】
従来、ある程度消臭性能を具備していて、空気との接触面積を多くするために極細繊維を利用したタイプが提案されているが(特許文献8参照)、元来繊維径が極めて細いために極細繊維が切断されやすくなり、所望の引張り強度を持つ極細繊維が得られにくいのである。さらに布帛にした場合の張り腰が不足していたため、他の繊維との混合が必要であった。
これら過去の多くの提案は、更に高品質なものを望む現代の消費者の要求を満たすには十分なレベルとはいえない状況となってきた
【0008】
【特許文献1】特開昭62−6985号公報 特許請求の範囲
【特許文献2】特開昭62−6986号公報 特許請求の範囲
【特許文献3】特開昭63−29571号公報 特許請求の範囲
【特許文献4】特開平2−91209号公報 特許請求の範囲
【特許文献5】特開平2−80611号公報 特許請求の範囲
【特許文献6】特表平5−504091号公報 特許請求の範囲
【特許文献7】特開平6−47276号公報 特許請求の範囲
【特許文献8】特開平10−204727公報 特許請求の範囲
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、塩基性臭気成分、中性臭気成分、酸性臭気成分等の種々の臭気成分を極めて効率的、また長期に亘って除去できる繊維であって、かつ微量の臭気成分をも除去できる消臭繊維を提供することにある。あわせて、抗菌性・ワイピング性も有した消臭繊維を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は四価金属のリン酸塩、二価金属の水酸化物および光触媒を含有する熱可塑性ポリマーからなり、繊維の長さ方向に沿って、繊維表面に20個以上の溝を有する繊維であって、該繊維の横断面の重心点から繊維外周部の一番遠い点までの直線距離をAとするとき、繊維横断面の外周長Bが該直線距離Aの10倍以上になっており、該溝の巾は外周長Bの50分の1以下であり、溝の巾の2倍以上の溝の深さを有していることを特徴とする繊維。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明においては、特に言及しない限り、光触媒および吸着剤の練り込みによる繊維への含有及び後加工による繊維表面への担持を含めて『含有』という。また周期表の族番号は、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry )無機化学命名法委員会命名規則1970年版による。前述のように、四価金属のリン酸塩および二価金属の水酸化物で構成される組成物を単に「吸着剤」と称する場合があるとともに、該吸着剤と必要に応じて他の吸着剤とで構成される組成物を単に「吸着剤成分」と称する場合がある。また、光触媒と該吸着剤を合わせて「消臭剤」と称する場合がある。
【0012】
本発明の繊維の構造を図面により説明する。図1は本発明の繊維の一形態を示す写真である。図2は、本発明の繊維の横断面の形状を示す模式図である。
本発明において、第一の要件は、消臭剤を含有するX成分が繊維横断面の重心点(G)から繊維横断面の外周の一番遠い点までの直線距離をAとしたときに、繊維横断面の外周長BがAの10倍以上となっていることが重要である。外周長Bをこのように設定することにより、臭気成分を極めて効率よく除去でき、また消臭剤の使用量を低減することができ、少ない消臭剤量で大きな消臭効果を奏することができる。
さらに、本発明においては、用途に応じて繊維断面を異形断面や中空断面にすることも可能である。
【0013】
なお、本発明において、繊維横断面の重心Gは、繊維断面の拡大写真を用いてコンピュータ上でマスプロパティ計算によって求めることができる。また、単純な断面形状であれば拡大写真を繊維断面形状に沿って切り取り、例えば、針などの上に載せ、おおよそバランスする点を重心Gとして簡便的に求め、そこより繊維外周の一番遠い点までの直線距離をAとしてもよい。また繊維外周長Bについても同上の拡大写真を用い、繊維断面の外周に沿って適当な糸を重ねてトータルの糸長を簡便的に外周長Bとし、AとBとの比を求めることができる。
【0014】
本発明の繊維の第二の要件は、繊維横断面の外周長Bの50分1以下の巾を持ち、かつ該巾の2倍以上、好ましくは3倍以上の深さを有する溝が繊維表面に多数存在していることである。かかる大きさの溝を繊維表面に形成させることにより、臭気成分を極めて効率よく除去できる。溝巾Cが外周長Bの50分の1を超える場合や、溝深さDが溝巾Cの2倍未満である場合は、即効性の高い消臭性能を得ることは困難である。かかる観点から、本発明においては、溝巾Cは外周長Bの100分の1以下、より好ましくは200分の1以下、さらに好ましくは、250分の1以下であることが好ましい。下限値は特に制限されないが、例えば、10000分の1以上であることが好ましい。
また、溝深さDは、溝巾Cの3倍以上であることが好ましく、上限としては30倍以下、より好ましくは20倍以下、特には15倍以下とすることが好ましい。
なお、溝巾Cと溝深さDとの比は、図2の拡大図で示しているように溝巾Cの直線部分の中心点から溝の一番深い点まで下した垂線の直線距離を溝深さDとして求めるものである。
本発明においては、前記第1の要件と第2の要件とが相俟って目的とする性能が相乗的に発現されるものである。
【0015】
本発明における第3の要件は、上記のような大きさの溝構造が繊維横断面に20個以上形成されていることである。溝数が20個未満の場合は、即効性の高い消臭性能が十分でなく結果的に目的とする性能が十分に発揮されない。従って、溝の数は好ましくは25個以上、より好ましくは45個以上であることが好ましい。溝の数の上限は特に制限されないが、好ましくは200個以下、より好ましくは150個以下、さらに好ましくは100個以下である。
【0016】
本発明の繊維を構成するポリマーは、基本的には熱可塑性ポリマーであれば使用することが可能であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル系ポリマー、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等の脂肪族ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルなどのビニル系ポリマー、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタンなどの縮合系ポリマー、ポリアリレート等の溶融液晶性ポリマーなどが適用可能であるが、好ましくは、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系、重縮合系ポリマーの熱可塑性結晶性ポリマーが好適である。
【0017】
本発明で使用されるポリマーとしては、消臭効果の点からガラス転移温度(Tg)65℃以下が好ましい。ポリエステル系ポリマーについて詳しく説明すると、変性ポリエステル(共重合ポリエステルと称することもある)の場合、変性種としては、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸が挙げられ、変性量は該ポリエステルを構成する全酸成分に対して3mol%〜15mol%が好ましい、更に好ましくは、7mol%〜10mol%である。変性量が3mol%未満の場合、ガラス転移温度(Tg)が65℃以下に到達せず目的の消臭性能を発揮することが困難となり、15mol%を越える場合、繊維化工程性が悪化する。さらに、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ乳酸、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステルが使用され、好ましくはポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸であり、特にポリブチレンテレフタレートが好ましい。PBTは、テレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位及び1,4−ブタンジオール単位を主体とするジオール単位から主としてなり、その代表例としてはテレフタル酸単位と1,4−ブタンジオール単位のみからなるポリブチレンテレフタレート(以下「PBT」ということがある)を挙げることができる。
【0018】
ポリエステルはアンモニアの消臭に有効なスルホネート基を含有する芳香族ジカルボン酸によってさらに変性されていることが好ましい。スルホネート基含有化合物の具体例としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルエステル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジエチルエステル、5−カリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸ジメチルエステル、5−カリウムスルホイソフタル酸ジエチルエステル、5−リチウムスルホイソフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸ジメチルエステル、2−ナトリウムスルホテレフタル酸等の金属スルホネート基を有するベンゼンジカルボン酸またはその低級アルキルエステル;4−ナトリウムスルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸、4−ナトリウムスルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル、6−ナトリウムスルホ−1,4−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホ−1,4−ナフタレンジカルボン酸等の金属スルホネート基を有するナフタレンジカルボン酸またはその低級アルキルエステルなどが挙げられる。かかるスルホン酸塩基含有化合物は1種のみでも、2種類以上を用いてもよいが、該化合物の含有率は、該共重合ポリエステルを構成する全酸成分に対して0.5モル%〜7.0モル%の範囲内となる量が好ましく、さらには1.2モル%〜5.0モル%の範囲内の量、特に1.5モル%〜3.0モル%の範囲内の量であることが好ましい。該化合物成分が0.5モル%未満である場合、アンモニアの消臭性能が不十分となる傾向にあり、一方7.0モル%を越える場合は得られる繊維の繊維物性が低下する傾向にある。
【0019】
本発明の好適なポリマーとして用いられるポリアミド系ポリマーについて述べると、脂肪族ポリアミドとしては、前述したナイロン6、ナイロン66、メタキシレンジアミンナイロン、ナイロン12を主成分とするポリアミドが好ましい。目的によっては融点又はガラス転移点が高いポリアミドを用いることもよく、その場合、熱可塑性を有する半芳香族系ポリアミドが好ましく用いられる。そのようなポリアミドとしては、例えば、ジカルボン酸とジアミン成分とからなり、ジカルボン酸成分の60モル%以上が芳香族ジカルボン酸で、ジアミン成分の60モル%以上が炭素数6〜12の脂肪族アルキレンジアミンであるポリアミドが挙げられる。
【0020】
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸が好ましく、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、ジ安息香酸、4,4‘−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4‘−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸を1種類、または2種類以上併用して使用することもできる。かかる芳香族ジカルボン酸の含有量はジカルボン酸成分の60モル%以上であることがこのましく、さらには75モル%以上であることが好ましい。
【0021】
上記芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としてはマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3−ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸を挙げることができ、これらの酸は1種類のみならず2種類以上を用いることができる。なかでもポリマーのガラス転移点を上げるためにはジカルボン酸成分が100%芳香族ジカルボン酸であることとが好ましい。
さらにトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸を繊維化が容易な範囲内で含有させることもできる。
【0022】
また、ジアミン成分の60モル%以上は炭素数が6〜12の脂肪族アルキレンジアミンで構成されることが好ましく、かかる脂肪族アルキレンジアミンとしては、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の脂肪族ジアミンを挙げることができる。なかでも繊維化工程性と目的とする糸品質の点で1,9−ノナンジアミン単独または1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンとの併用が好ましい。
この脂肪族アルキレンジアミンの含有量はジアミン成分の60モル%以上であることが好ましく、より好ましくは75モル%以上、とくに90モル%以上であることが、繊維化工程性と糸品質の点から好ましい。
【0023】
上述の脂肪族アルキレンジアミン以外のジアミンとしてはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン等の脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルジアミン、トリシクロデカンジメチルジアミン等の脂環式ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4‘−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4‘−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミン、あるいはこれらの混合物を挙げることができ、これらは1種類のみならず2種類以上を用いることができる。
【0024】
本発明においては、その効果を損なわない範囲であれば、上記ポリアミド成分に銅化合物等の安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、結晶加速度遅延剤を重合反応時またはその後の工程で添加することができる。特に熱安定剤としてヒンダードフェノール等の有機系安定剤、ヨウ化銅等のハロゲン化銅化合物、ヨウ化カリウム等のハロゲン化アルカリ金属化合物を添加すると、繊維化の際の溶融滞留安定性が向上するので好ましい。
【0025】
光触媒と吸着剤とからなる消臭剤を変性ポリエステルに含有させる方法としては、▲1▼変性ポリエステルの重合時または重合直後に消臭剤を添加含有させる方法、▲2▼変性ポリエステル中に消臭剤を添加してマスターバッチを作製しておき、それを使用する方法、▲3▼変性ポリエステルが紡糸されるまでの任意の段階(たとえば、ポリマーのペレットの作製段階、溶融紡糸段階など)で消臭剤を添加させる方法などがある。このうち、▲1▼方法では、繊維形成性ポリマーの原料スラリーに消臭剤を添加する方法、プレポリマーを製造した後に該プレポリマーをさらに重縮合させる直前に消臭剤を添加する方法、繊維形成性ポリマーの重合直後であって、未だ液状である間に消臭剤を添加する方法などを採用し得るが、本発明で使用する消臭剤は触媒活性が非常に高いのでポリマーの種類によっては重合反応が進行する場合があり注意が必要である。
【0026】
また、消臭剤は微粒子状態のものとして添加するが、粒子をそのままポリマー中に添加すると粒子の凝集により繊維化が困難となったり、繊維化できても強度の低いものしか得られない場合があるので、適当な分散媒に分散させたスラリー状態でポリマー中に添加することが好ましい。
【0027】
本発明で使用される消臭剤を構成する光触媒は、紫外線等の光線の照射により活性ラジカルを生成させ、多くの有害物、悪臭物を酸化分解し、光酸化触媒として機能するものをいう。そのために、光触媒は酸化性光触媒の範疇に属する場合が多い。このような光触媒を用いると、単なる吸着作用ではなく、触媒的な分解を利用して消臭できるため、消臭または脱臭効果が長期間に亘り持続できる。さらに、この光触媒は有害物、悪臭物を分解するだけでなく、殺菌作用、抗菌作用等も有している。
【0028】
光触媒としては、無機、有機を問わず、種々の光半導体が使用できるが、無機光半導体である場合が多い。光触媒としては、たとえば硫化半導体(CdS、ZnS、In 、PbS、Cu S、MoS 、WS 、Sb 、Bi、ZnCdS等)、金属カルコゲナイト(CdSe、InSe 、WSe 、HgSe、PbSe、CdSe等)、酸化物半導体(TiO 、ZnO、WO 、CdO、In 、AgO,MnO 、CuO、Fe 、V 、SnO等)などが挙げられ、硫化物と酸化物以外の半導体として、GaAs、Si、Se、CdP 、Zn等も含まれる。これらの光触媒は単独または2種以上の組合わせで使用できる。
【0029】
これらの光触媒のうち、CdS、ZnS等の硫化物半導体、TiO 、ZnO、SnO 、WO等の酸化物半導体が好ましく、特に酸化物半導体、たとえばTiO 、ZnO等が好ましい。前述の光触媒を構成する光半導体の結晶構造はとくに制限されない。たとえばTiOはアナターゼ型、ブルカイト型、ルチル型、アモルファス型等のいずれであってもよい。とくに好ましいTiOにはアナターゼ型酸化チタンが含まれる。
【0030】
光触媒はゾルやゲル状で使用できると共に粉粒状で使用してもよい。光触媒を粉粒状で使用する場合、光触媒の平均粒子径は、光活性および脱臭効率を損なわない範囲で選択でき、たとえば0.05〜5μm、好ましくは0.05〜1μmである。粒子径が5μmを越えると、たとえば溶融紡糸時にフィルター詰まりや毛羽断糸が生じ易くなる。とくに、本発明の繊維を各種衣料用繊維素材として使用する場合には、単糸繊度が1dtex前後の細繊度糸も必要とされ、光触媒の粒子径が大きくなると延伸時の糸切れが激しくなりやすい。
【0031】
該光触媒の使用量は、繊維の構造に応じて触媒活性を損なわない広い範囲から選択でき、たとえば繊維全体に対して0.1〜25質量%、好ましくは0.3〜20質量%、さらに好ましくは0.5〜15質量%の範囲であり、特に0.5〜10質量%の範囲が好ましい。
【0032】
一方、消臭剤を構成する吸着剤(四価金属のリン酸塩、二価金属の水酸化物)について説明する。リン酸塩を形成する四価金属は、四価の金属である限り、周期表における族はとくに制限されない。四価金属には周期表4族元素、たとえば、4A族元素(チタン、ジルコニウム、ハフニウム、トリウム等)、4B族元素(ゲルマニウム、錫、鉛等)が含まれる。これらの金属のうち、周期表4A族元素に属する金属、たとえばチタン、ジルコニウム、ハフニウムや、4B族元素、たとえば錫が好ましい。とくに、チタンおよびジルコニウムが好ましい。
【0033】
リン酸塩を構成するリン酸には種々のリン酸、たとえばオルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等が含まれる。リン酸はオルトリン酸、メタリン酸またはピロリン酸である場合が多い。また、リン酸塩にはオルトリン酸水素塩等のリン酸水素塩も含まれる。なお、本明細書において、とくに言及しないかぎりリン酸とはオルトリン酸を意味する。
【0034】
これらの四価金属リン酸塩は、通常、水不溶性または難溶性である。さらに、前記リン酸塩は結晶質塩であってもよいが、好ましくは非晶質塩である。これらの四価金属リン酸塩は単独または2種以上を組合わせて使用できる。
【0035】
水酸化物を形成する二価金属は周期表の族の如何を問わず二価の金属であればよい。二価金属には、たとえば銅等の周期表1B族元素、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2A族元素、亜鉛、カドミウム等の周期表2B族元素、クロム、モリブデン等の周期表6A族元素、マンガン等の周期表7A族元素、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム等の周期表8族元素などが挙げられる。これらの二価金属の水酸化物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0036】
好ましい二価金属には遷移金属、たとえば銅等の周期表1B族元素、亜鉛などの周期表2B族元素、マンガン等の周期表7A族元素、鉄、コバルト、ニッケル等の周期表8族元素が含まれる。好ましくは銅、亜鉛、鉄、コバルト、ニッケルである。
【0037】
これら二価金属の水酸化物は、通常、弱酸性〜弱アルカリ性領域(pH4〜10)で水不溶性または難溶性である。また該水酸化物は結晶質であってもよいが、非晶質である場合が多い。
【0038】
四価金属のリン酸塩と二価金属の水酸化物との割合は、触媒活性、臭気成分に対する吸着能や脱臭能を損なわない範囲で選択でき、たとえば金属原子比換算で、金属原子比(二価金属/四価金属)=0.1〜10、好ましくは0.2〜7、さらに好ましくは0.2〜5の範囲である。なお、複数のリン酸塩および/または水酸化物を組合わせて用いる場合には、それぞれの金属の総和量に基づく金属原子比が上述の範囲内であればよい。また、四価金属のリン酸塩と二価金属の水酸化物とで構成された組成物は、混合ゲル等のように共沈などにより複合化していてもよい。とくに四価金属のリン酸塩と二価金属の水酸化物とを組合わせて構成された吸着剤と、前述の光触媒とを混合または共沈などにより複合化して用いると、高い触媒活性を示し、長期間に亘り効率よく臭気成分などの種々の化合物を除去することができる。
【0039】
吸着剤の使用量も光触媒の使用量と同様に繊維の構造に応じて適宜選択でき、たとえば繊維全体に対して0.1〜25質量%、好ましくは0.5〜20質量%、さらには1〜10質量%の範囲が好ましい。なお、光触媒の量は、吸着剤100質量部に対して1〜1000質量部、好ましくは10〜750質量部、さらには20〜500質量部の範囲が好ましい。
【0040】
上述の消臭剤はさらに他の吸着剤(以下、付加的吸着剤と称する)を含有していてもよい。かかる付加的吸着剤として無機系吸着剤、有機系吸着剤のいずれであってもよく、黒色系であってもよいが、非黒色系吸着剤、好ましくは青色などの淡色ないし白色または無色の吸着剤を用いる場合が多い。無機系吸着剤には酸化アルミニウム(アルミナ)、シリカ(二酸化ケイ素)、酸化銅、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル等の金属酸化物;シリカゲル、シリカゾル、ゼオライト等のケイ酸塩;モンモリロナイト、アロフェン、セピオライト等の粘土鉱物などが挙げられる。他の吸着剤はこれらの成分が共沈などにより複合化した吸着剤であってもよい。有機系吸着剤にはカルボキシル基、スルホン基、アミノ基などのイオン交換性官能基を有する各種のイオン交換樹脂や前記酸性官能基を有する有機酸系吸着剤、多孔質ポリエチレン、多孔質ポリプロピレン、多孔質ポリスチレン、多孔質ポリメタクリル酸メチル等の多孔質樹脂を挙げることができる。
【0041】
付加的吸着剤の種類は繊維の用途や臭気成分に対応させて適宜選択でき、たとえば繊維の製造過程または使用時に高温に晒される場合には、無機系吸着剤の使用が好ましい。また付加的な吸着剤は単独でまたは2種以上組合わせて使用でき、光触媒、四価金属のリン酸塩、二価金属の水酸化物から選択された少なくとも1つの成分と混合、または共沈などにより複合化していてもよい。
【0042】
上述の消臭剤を構成する吸着剤は比表面積を増加させ、吸着容量を高める上で有用な二酸化ケイ素とを組合わせてもよい。二酸化ケイ素としては、それ自体が高分子量化した無機高分子、二酸化ケイ素と四価金属リン酸塩との複合化合物などが挙げられる。また二酸化ケイ素は含水二酸化ケイ素であってもよい。このような二酸化ケイ素は結晶質であってもよいが、非晶質であることが好ましい。二酸化ケイ素の含有量は、光触媒の触媒活性や吸着性能が低下しない範囲で選択でき、たとえば吸着剤に対して金属原子比換算で、ケイ素/吸着剤の金属=0.2〜10、好ましくは0.5〜8、さらには1〜7の範囲が好ましい。
【0043】
上述の消臭剤は、前記付加的吸着剤とともに、または付加的吸着剤を含むことなく、さらに抗菌性金属成分(たとえば銀、銅、亜鉛、鉛等)、とくに銀成分を含んでいてもよい。抗菌性金属成分のうち銀成分を含む組成物は高い抗菌性能を有しているとともに、幅広い抗菌スペクトルをも有している。銀成分は金属銀であってもよく、AgCl、AgF、AgF等のハロゲン化銀、AgO、AgO等の酸化銀、AgS等の硫化物、AgSO、AgCrO、AgPO、AgCO、Ag等の酸素酸塩などの無機化合物であってもよい。銀成分は吸着剤、付加的吸着剤との複合化物であってもよい。また銀成分は水可溶性であってもよいが、水不溶性または水難溶性であることが好ましい。これらの銀成分は1種または2種以上組合わせて使用できる。なお、銀成分は慣用の方法、たとえばイオン交換法、共沈法等により光触媒、吸着剤、付加的吸着剤等に容易に導入できる。銀成分の含有量は消臭剤および付加的吸着剤全体に対して金属銀換算で0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜8質量%、さらには0.5〜7質量%の範囲が好ましい。
【0044】
本発明において消臭剤、必要に応じて添加される付加的吸着剤や銀成分などの総量は、繊維の特性、繊維化工程性を損なわない範囲、たとえば繊維全体に対して0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜25質量%、さらには1〜20質量%の範囲が好ましい。
【0045】
消臭性成分は慣用の種々の方法により得ることができる。たとえば四価金属リン酸塩、二価金属の水酸化物および光触媒を、必要に応じてさらに付加的な吸着剤(二酸化ケイ素等)および/または銀成分とともに混合するすることにより、消臭性成分を簡便に得ることができる。前記混合に際しては粉砕等により得られたそれぞれの粉粒状成分を混合してもよい。
【0046】
光触媒の調整は慣用の方法、たとえば光触媒に対応する金属イオンを含有する水溶液から水不溶性沈殿物を生成させる方法、金属アルコキシドから調整する方法、高温で酸化させる気相法等にしたがって行うことができる。
【0047】
光触媒の製造に際しては、触媒に対応する成分を含む化合物を用いることができる。酸化チタンを例にとって説明する。このような成分としてTiCl、TiF、TiBr等のハロゲン化チタン、Ti(SO、TiOSO等の硫酸塩、(CHO)Ti、[CH(CH)O]Ti、[(CHCHO]Ti、[CH(CHO]Ti、[(CHCHCHO]Ti等のC1−6アルコキシチタン等が使用できる。また予め調整された酸化チタンゾル等を用いてもよい。
【0048】
また、消臭性成分は四価金属イオン、二価金属イオンおよび光触媒に対応する成分を含む溶液や、これらの金属イオンのうち2種類以上の金属イオンを含む水溶液を使用して、それらの水不溶性物質の混合沈殿物を生成させる方法によっても得ることができる。この方法で得られた混合沈殿物は、通常ゲル状であり、乾燥により非晶質構造の混合物となる。なお、この方法において、光触媒に対応する成分は予め適切な結晶構造に調整して水溶液に添加することが好ましい。
【0049】
四価金属イオン、二価金属イオンおよび銀イオンを含む水溶液の調整には、各種の水溶液金属化合物が用いられる。このような二価金属、四価金属および銀の水溶性金属化合物としては、各種の金属塩、金属アルコキシド等を挙げることができる。金属塩としては、通常の金属塩(正塩)のほか、酸性塩、オキシ塩、さらに他の複塩、錯塩の形態の金属塩を用いてもよい。また、金属塩は水溶液のpHが中性付近で不溶性の化合物であっても、酸性溶液中で溶解する化合物であればよい。具体的には次のような化合物を挙げることができる。
【0050】
(1)金属のフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物、(2)硫酸塩、硫酸アンモニウム塩、その他の硫酸塩(無機酸塩)、(3)硝酸塩(無機酸塩)、(4)塩素酸塩、過塩素酸塩、チオシアン酸塩、ジアンミン銀硫酸塩、ジアンミン硝酸塩、クロム酸塩等のその他の各種無機酸塩、(5)酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩等の有機酸塩、(6)オキシ金属塩(ハロゲン化物、無機酸塩、有機酸塩の形態のオキシ金属塩)、(7)金属アルコキシド類などを挙げることができる。
【0051】
これらの金属のうち、無機酸塩、とくに硫酸塩や硝酸塩等の強酸塩を用いる場合が多い。なお、四価金属化合物のうちチタン化合物やジルコニウム化合物としてはオキシ金属塩を用いる場合が多い。
【0052】
二酸化ケイ素のためのケイ酸イオンの供給源である水可溶性ケイ酸塩化合物としてはケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸アルカリ金属塩、ケイ酸カルシウム、カイ酸バリウム等のケイ酸のアルカリ土類金属塩、ケイ酸アンモニウム等を例示することができる。また、二酸化ケイ素は水可溶性である必要はなく、たとえば、二酸化ケイ素のキセロゲル(シリカゲル)、ヒドロゾルやヒドロゲルを原料として使用することも可能である。ケイ酸イオン源としては、通常、アルカリケイ酸塩、好ましくはケイ酸アルカリ金属塩、ヒドロゾル、ヒドロゲルが使用され、とくにケイ酸ナトリウムは価格、取扱性の点で好ましい。
【0053】
四価金属のリン酸塩および二価金属の水酸化物を生成するには、四価金属のリン酸塩と二価金属イオンの共存下に二価金属の水酸化物を生成させればよい。たとえば、(i)四価金属イオンおよび二価金属イオンが共存する水溶液中で四価金属のリン酸塩を生成し、ついで二価金属の水酸化物を生成してもよく、また(ii)二価金属イオンを含有しない水溶液中で予め四価金属のリン酸塩を生成した後、二価金属イオンを含む水溶液を加え、二価金属の水酸化物を生成させてもよい。
【0054】
前記(i)の方法において、四価金属イオンおよび二価金属イオンが共存する水溶液を用いて組成物を生成させる場合、四価金属化合物および二価金属化合物を含む水溶液を撹拌しながら二価金属の不溶性水酸化物の生成を抑制しつつ、リン酸またはリン酸塩を添加して四価金属のリン酸塩の沈殿物を生成させればよい。この方法において、四価金属化合物および二価金属化合物を含む水溶液のpHは通常、酸性域、たとえばpHが0〜6の範囲であり、必要であれば二価金属水酸化物の生成を抑制するために酸を添加して酸性域であるpH4以下に調整し、リン酸またはリン酸塩を添加してもよい。
【0055】
前記水溶液のpHを調整する場合、適当なアルカリや酸を使用できる。アルカリとしてはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等)、アンモニア等の無機塩基、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機塩基が使用できる。酸としては塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、酢酸、トリクロロ酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、シュウ酸等の有機酸が使用できる。
【0056】
不溶性リン酸塩の生成に使用されるリン酸またはリン酸塩としては、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸およびそれらのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)やアンモニウム塩が例示される。具体的にはリン酸塩には第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム[以下、これらを単にリン酸ナトリウムと称する]、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等が含まれる。
【0057】
前記(i)の方法において、通常、生成した四価金属のリン酸塩を熟成より十分に析出させる場合が多い。熟成方法には、慣用の方法、たとえば、室温で長時間放置する方法、100℃以下に加熱した状態で長時間放置する方法、加熱還流する方法等が利用できる。
【0058】
熟成終了後、アルカリの添加によりpHを中性域、たとえばpH4〜12に調整すると、二価金属の水酸化物を生成させることができる。なお、上記水酸化物の生成は、アルカリと、熟成終了後の四価金属のリン酸塩と二価金属イオンを含む溶液とを中性域、たとえばpH4〜12の範囲で並行して液中に添加することにより行ってもよい。前記のようなpH領域では二価金属の水酸化物からなる沈殿物が生成し、生成した水酸化物の沈殿物と四価金属の不溶性リン酸塩の沈殿物とが沈殿または析出混合物または共沈混合物として生成する。二価金属の水酸化物の生成において、常温での反応が遅い場合には反応系を加温してもよい。また必要に応じて加圧下に100℃以上の温度で反応させてもよい。また撹拌は空気を用いたバブリングにより行ってもよい。
【0059】
前記(ii)の方法において、四価金属のリン酸塩の沈殿物と二価金属の水酸化物とは上記(i)の方法に準じて生成させることができる。すなわち、前記四価金属イオンを含み二価金属イオンを含まない水溶液にリン酸またはリン酸塩を添加して予めリン酸塩を生成させる。生成したリン酸塩を必要により熟成した後、必要によりpHを4以下の酸性域に調整し、二価金属イオンを含む水溶液(たとえば金属塩を含有する水溶液)を添加して混合し、前記と同様にpHを4以上の中性域に調整することにより混合沈殿物を生成させてもよい。この方法では四価金属のリン酸塩の熟成は比較的短時間であってもよい。
【0060】
光触媒は四価金属のリン酸塩および二価金属の水酸化物を生成させる反応系に、たとえば粉粒状で添加していてもよく、前記四価金属のリン酸塩および/または二価金属の水酸化物を生成させた後、反応系または生成した沈殿物に添加してもよい。
【0061】
さらに、光触媒は四価金属のリン酸塩および/または二価金属の水酸化物の生成とともに同時に生成させてもよい。光触媒の生成には、上記(i)および(ii)の方法が利用できる。たとえば酸化チタンを生成させる場合、塩化チタン等のハロゲン化チタン、無機酸塩(硫酸チタン等の硫酸塩)やアルコキシドを必要に応じて前記反応系に添加し、反応系のpHを中性またはアルカリ性に調整することにより生成させることができる。
【0062】
二酸化ケイ素を含む組成物を調整する場合には、前記沈殿物生成反応の少なくともいずれか1つの工程で、二酸化ケイ素および/またはケイ酸イオン種を添加してもよく、光触媒成分等を含む生成した沈殿物と二酸化ケイ素を混合してもよい。なお、前記沈殿物の生成とともに二酸化ケイ素を生成させる場合、アルカリ性ケイ酸塩溶液(たとえばケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等)をアルカリの代わりに使用することができる。ケイ酸イオン種を用いる場合、二価金属の水酸化物の生成とともに、pH4〜12の中性域に調整すると含水二酸化ケイ素を生成させることができる。
【0063】
さらに、銀成分に関し、前記二酸化ケイ素と同様に、沈殿生成物反応の少なくとも1つの工程で銀成分、たとえば銀の水不溶性化合物および/または銀イオン種を添加することにより銀成分を含む消臭成分を得ることができる。また銀イオン等の銀成分はイオン交換法、含浸法等の慣用の方法により、前記光触媒、リン酸塩、水酸化物、二酸化ケイ素やこれらの成分が少なくとも1種または2種以上の成分に容易に担持できる。
【0064】
このようにして得られた沈殿物は、必要に応じて慣用の方法により精製してもよい。たとえば、前記混合沈殿物等の沈殿物を含む反応液を濾過し、温水または水等の洗浄溶媒を用いて洗浄し、金属塩のアニオン種等の不純物を除去し、乾燥することにより、精製した消臭成分を得ることができる。前記濾過は濾紙や濾布等を用い、常温常圧下、減圧下または加圧下で行うことができ、遠心分離法、真空濾過法等を利用して行ってもよい。また、洗浄に際しては、傾斜洗浄法等を利用してもよい。前記乾燥操作は慣用の方法、たとえば風乾で行ってもよく、消臭性成分の分解温度未満の温度、たとえば約400℃以下、好ましくは200℃以下の温度に加熱した加温度下で行ってもよい。
【0065】
本発明の消臭繊維は、繊維の太さはとくに制限されるものではなく、繊維の長さ方向の形態も制限されるものではない。すなわち、繊維の長さ方向に程同じ直径を有する繊維であってもよく、太細を有するシックアンドシン繊維であってもよく、それ以外の繊維であってもよい。さらに繊維は短繊維または長繊維のいずれであってもよく、繊維製品が糸である場合、紡績糸、マルチフィラメント糸、短繊維と長繊維との複合糸であってもよい。さらに本発明の繊維には、用途や繊維の種類に応じて、仮撚加工、インターレース加工やタスラン(ヘバライン ファイバー テクノロジー Inc 登録商標)加工等の空気絡合処理、捲縮加工、防縮処理、防皺処理、親水加工、防水加工、防染加工などの任意の加工・処理が施されてもよい。本発明の消臭繊維は上述の消臭剤の他に、繊維の種類に応じて繊維に用いられている各種の添加剤、たとえば酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、抗菌剤、防虫・防ダニ剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、艶消剤等を含有してもよい。
【0066】
また本発明の消臭繊維は種々の繊維製品として利用することができ、糸;織布、編布、不織布等の布帛;パイル織物、パイル編物等のパイル布帛;これらのものから形成された衣類やその他の身体着用品;インテリア製品類;寝具類;食品用包装材などを挙げることができる。具体的には下着、セーター、ジャケット、パジャマ、浴衣、白衣、スラックス、靴下、手袋、ストッキング、エプロン、マスク、タオル、ハンカチ、サポーター、ヘッドハンド、帽子、靴のインソール、芯地等の衣類や身体着用品;各種カーペット、カーテン、のれん、壁紙、障子紙、襖、繊維製ブラインド、人工観葉植物、椅子等の布張用生地、テーブルクロス、電気製品カバー、畳、布団の中詰材(詰綿等)、布団の側地、シーツ、毛布、布団カバー、枕、枕カバー、ベッドカバー、ベッドの中詰材、マット、衛生材料、便座カバー、ワイピングクロス、空気清浄機やエアーコンディショナー等のフィルターなどを挙げることができる。
【0067】
本発明の消臭繊維および該繊維を用いた繊維製品は、太陽光、蛍光灯、紫外線ランプ等の照射下、アンモニア、アミン類等の塩基性臭気成分、酢酸等の酸性臭気成分、ホルマリン、アセトアルデヒド等の中性臭気成分などの多くに臭気成分を速やかに、しかも長期に亘り分解し、無臭化することができる。そのため、多数の臭気成分を含むたばこ臭等であっても効率よく除去でき、室内や車内の消臭に有効である。また家具や新建材などから発生するホルマリン、アセトアルデヒド等のアルデヒド類の消臭に対しても有効である。
【0068】
さらに消臭成分を含有する消臭性繊維は光を照射しなくても酸性臭気成分、塩基性消臭成分等を吸着して効果的に消臭し、太陽光や蛍光灯、紫外線ランプ等の光照射下においては光触媒の酸化分解作用と吸着剤の高い吸着作用との相乗効果により、酸性臭気成分や塩基性臭気成分に対する消臭性能を高めるだけでなく、アルデヒド類等の中性臭気成分に対しても高い消臭効果を示し、しかもその効果は長期に亘り持続する。また光触媒の作用により生成する酸化分解生成物(たとえばアセトアルデヒドの場合には酢酸が生成する)が一部放出され、新たな臭気の原因となる場合があったとしても、吸着剤を併用することにより酸化分解生成物を吸着することができる。そのため酸化分解生成物の放出または脱離を防止し、消臭効率をさらに高めることができるとともに、吸着剤に吸着された物質は光触媒によりさらに分解されるので消臭効果が長期に亘り持続するのである。
【0069】
なお光照射においては光触媒に応じた波長の光線が利用できる。この光線の波長は光触媒を励起する波長であればよいが、通常、紫外線を含む光線である場合が多い。光触媒として酸化チタンを用いた場合、太陽光や蛍光灯の光でも十分その触媒機能を有効に働かせることができる。なお、光照射は、通常、酸素、空気等の酸素含有基体の存在下で行われる。
【0070】
さらに、本発明においては光触媒を用いることにより、抗菌性能をも奏するのである。すなわち、酸化チタン等の光触媒にそのバンドギャップエネルギーを有する光で照射すると価電子帯から電子が励起され伝導体に電子が、価電子帯に正孔が生成する。これらの電子と正孔はそれぞれ反応性に富んだ還元能と酸化能を有しており、該触媒表面で触媒反応を喚起することができる。この高い還元能と酸化能とを利用して種々の有害物質を酸化分解して無害化すること、殺菌を行うことができる。
【0071】
本発明の消臭繊維は上述の消臭剤により長期に亘り消臭効果を持続することができる。ただ、該消臭剤のみでは、濃度の高い臭気成分をある程度まで低減することは可能であっても、濃度の低い臭気成分を完全に『ゼロ』にまで抑制することはできず、繊維の断面構造を特定化することと、四価金属のリン酸塩、二価金属の水酸化物および光触媒を含有することによりはじめて、低濃度の臭気成分を効率的にほとんど『ゼロ』にまで除去することができるのである。
【0072】
次に本発明の繊維の製造方法について説明する。図3の繊維の横断面写真は、本発明繊維を製造するための中間体繊維となる複合繊維の一例を示したものである。この例では、ポリマー成分Xよりなる繊維本体(図3中の灰色部)と、この成分Xよりも溶解性又は分解性の大きいポリマー成分Y(図3中の鋭いくさび状の白色部)とが繊維断面において放射状に複合されている。そしてこの複合繊維から成分Yを所定量溶解又は分解除去することにより、繊維本体は、毬栗状の断面を有する本発明の繊維となる。なお、毬栗状とは、例えば図2の模式図で示したような形状であることを意味している。
【0073】
繊維本体を形成しているポリマー成分Yとしては、ポリマー成分Xと比べて相対的に溶媒や薬剤に対して溶解又は分解しやすいものであれば、どのようなものでも採用できる。いま、Y成分にポリエステル系ポリマーを使用する場合、Y成分はX成分よりアルカリ溶解速度が5倍以上、好ましくは10倍以上速いポリエステルを用いることが好ましい。例えば、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を1〜5モル%と、ポリアルキレングリコールを5〜30質量%と従来用いられているジオール成分及びジカルボン酸成分とを共重合してなる共重合ポリエステル等を採用することができる。
【0074】
本発明において、溝深さDのコントロールは、ポリマー成分Yの除去率を変更することや、溶解・分解速度の異なるポリマーの組み合わせを適切に設定することにより任意に可能である。溝巾Cのコントロールは、ポリマー成分Xとポリマー成分Yとの複合比率を変更したり、くさび部分の数を変更したノズル部品を使用することなどにより、任意にコントロールすることが可能である。
【0075】
ポリマー成分Yとしては、アルカリ溶解速度の速いポリエステルの代りに、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールを用いても本発明の繊維を得ることができる。用いるポリビニルアルコール重合体は、粘度平均重合度が200〜500、けん化度が90〜99.99モル%、融点が160〜230℃のポリビニルアルコールが好ましく、ホモポリマーであっても共重合体であってもよいが、溶融紡糸性、水溶性、繊維物性の観点からは、エチレン、プロピレンなど炭素数が4以下のα−オレフィンなどで0.1〜20モル%変成された共重合ポリビニルアルコールを用いることが好ましい。この場合、図3で示すような放射状複合繊維を製造した後、熱水処理をすることによりポリビニルアルコール成分を溶解除去し、本発明繊維を得ることができる。
また、本発明の中間体となる複合繊維は、ポリマー成分Xおよびポリマー成分Yの組み合わせさえ決定されれば、複合繊維化については従来公知の複合紡糸装置を用いて繊維化することが可能である。但し、溝の数を多くするほど安定した紡糸が困難になるので、紡糸パックの構造や紡糸条件などを慎重に設定することが好ましい。
【0076】
本発明においては、図2に示したようなくさび状の溝を多数形成させた丸断面形状の繊維とすること以外に、本発明の規定を満たす範囲内のものであれば、異形断面形状であってもよい。具体的には、仮撚捲縮加工等の高次加工により繊維断面が5角形、6角形に類似した形状に変化したものや、紡糸時に異形断面ノズルを用いることによって3葉形、T型、4葉形、5葉形、6葉形等の多葉形や一孔中空、二孔中空以上の多孔中空等の中空形状など、各種の断面形状としても何ら差し支えない。
【0077】
本発明の繊維の単繊維繊度は特に制限されないが、0.5〜10dtexのものが好ましい。また、長繊維のみならず短繊維としても用いることができる。
【0078】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部及び%は断りのない限り質量に関するものである。
【0079】
(1)消臭性試験
a.初期性能
通常の白熱蛍光灯光照射下(500ルクス)、15cmに静置したテドラーバッグ(容積3リットル)に試料3gを入れて密封し、ついでシリンジを用いて所定の濃度の臭気成分を含む空気を、全ガス量3リットルとなるようにテドラーバッグ内に注入した。該注入ガスはアンモニア40ppm、硫化水素15ppm、(酢酸40ppm)、アセトアルデヒド50ppmであった。ガスを注入して特定時間経過後にテドラーバッグ内のガスをマイクロシリンジでサンプリングし、硫化水素、酢酸、アセトアルデヒドのガス濃度をガスクロマトグラフィ(島津製作所社製GC−7A型)にて測定し、臭気成分の除去率を下記式により算出した。アンモニアはガス検知管(北川社製、アンモニア用)を用い、直接テドラーバッグ内のガス濃度を測定し、臭気成分の除去率を算出した。同様にして遮光下での測定も行った。
除去率(%)=[(C−C)/C]×100
:初期ガス濃度
C:1時間後のガス濃度
【0080】
(2)抗菌性能評価
試料に試験菌の菌液を滴下し、光照射(30W2本の蛍光灯下30cm)または遮光下で35℃×8時間培養後、生菌数を測定した。対照布として標準ナイロン布を用いた。
【0081】
実施例1
ポリマー成分Xとして、二軸押出機にて上記消臭剤5質量%添加した5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルエステル2.5mol%共重合ポリブチレンテレフタレート(PBT)を用い、一方、ポリマー成分Yとして熱溶融性の変性ポリビニルアルコール(クラレ製、ケン化度:98.5、エチレン含有量8.0モル%、重合度:380)を用い、成分Xと成分Yとの複合比を3:1の質量比とし、それぞれを別々の押出し機で溶融させ、図3に示す横断面で成分Yで形成されるくさび形状を50個有する放射状複合繊維を複合紡糸ノズルより吐出させた。ついで紡糸口金より吐出された糸条を長さ1.0mの横吹付け型冷却風装置により糸条を冷却した後、連続して紡糸口金直下から1.3mの位置に設置した長さ1.0m、内径30mmのチューブヒーター(内壁温度180℃)に導入してチューブヒーター内で延伸した後、チューブヒーターから出てきた繊維に油剤を付与し、引き続いてローラーを介して3500m/分の引取り速度で巻き取って、111dtex/24フィラメントの放射状複合繊維を製造した。
繊維化工程性は良好で問題なかった。得られた複合繊維を経糸及び緯糸として、経糸密度90本/25.4mm、緯糸密度85本/25.4mmの平織物を作成した。この平織物に精練を施した後、熱水中で織物に40分間処理を実施し、所定の溝深さになるように成分Yを選択的に溶解除去した。
その後、消臭性能および抗菌性能を評価した。結果を表2に示す。高い除去率で臭気成分は除去されていた。また、抗菌性能も優れたものであった。なお、同じ織物を、アンモニア18ppmの雰囲気中に静置して消臭効果を測定したところ(光照射下)、12時間でアンモニアは完全に消臭されていた。18ppmという低い濃度の臭気成分をも完全に除去することができた。
【0082】
実施例2〜3
繊維の表面溝形状及び繊維の断面形状を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして繊維化並びに織物の作成、評価を行なった。
【0083】
実施例4〜6
消臭剤種・添加量と、繊維の表面溝形状及び繊維の断面形状を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして繊維化並びに織物の作成、評価を行なった。
【0084】
実施例7、8
ポリマー成分Xをセバシン酸10mol%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルエステル1.7mol%共重合ポリエステルに変更し、消臭剤種・添加量と繊維の表面溝形状及び繊維の断面形状を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして繊維化並びに織物の作成、評価を行なった。
【0085】
実施例9
ポリマーY成分に分子量2000のポリエチレングリコール8質量%と5−ナトリウムスルホイソフタル酸を5モル%共重合した〔η〕0.52のポリエチレンテレフタレートを用い、紡糸油剤としては、水を含む制電剤成分と平滑剤成分からなるものを用い、繊維の表面溝形状及び繊維の断面形状を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の方法で繊維化を実施し、同様の方法で織物を作成した。その後か性ソーダ20g/l、浴比1:30のアルカリ水溶液(液温100℃)中に浸漬し、ポリマー成分Yを溶解除去した。
【0086】
実施例10
ポリマー成分Xをナイロン6に変更し、繊維の表面溝形状及び繊維の断面形状を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして繊維化並びに織物の作成、評価を行なった。
【0087】
比較例1〜4
表1に示す表面溝構造を形成させるように設定したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施した。得られた織物は十分な良好な風合を有していなかった。
【0088】
比較例5,6
比較例5はポリマー成分Xとしてナイロン6を用い、表面構造を表1に示す構造に設定したこと以外は実施例18と同様に実施した。比較例6はポリマー成分Xとしてポリプロピレンを用い、表面構造を表1に示す構造に設定したこと以外は実施例19と同様に実施した。いずれも得られた編物を用いたワイピング性能は不十分なものであった。
【0089】
【表1】
Figure 2004339616
【0090】
【表2】
Figure 2004339616
【0091】
【発明の効果】
本発明の繊維は、表面溝構造に起因するさまざまな特徴を発揮し、高濃度の臭気成分の消臭のみならず、低濃度の臭気成分をほとんど完全に消臭することができ、さらに抗菌性能・ワイピング性をも合わせ持った繊維を提供することができる。また、衣料用としては良好なキシミ風合を有する。したがって、本発明の繊維は衣料用素材・生活資材素材など様々な用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の繊維の形態を示す電子顕微鏡写真。
【図2】本発明の繊維の横断面の一例を示す模式図。
【図3】本発明の繊維を得るための複合繊維の形態の一例を示す繊維断面写真。

Claims (3)

  1. 四価金属のリン酸塩、二価金属の水酸化物および光触媒を含有する熱可塑性ポリマーからなり、繊維の長さ方向に沿って、繊維表面に20個以上の溝を有する繊維であって、該繊維の横断面の重心点から繊維外周部の一番遠い点までの直線距離をAとするとき、繊維横断面の外周長Bが該直線距離Aの10倍以上になっており、該溝の巾Cは外周長Bの50分の1以下であり、溝の巾の2倍以上の溝の深さDを有していることを特徴とする繊維。
  2. 熱可塑性ポリマーがガラス転移温度(Tg)65℃以下である請求項1に記載の繊維
  3. 熱可塑性ポリマーが金属スルホネート基を含有するジカルボン酸成分を少なくとも0.5モル%〜7.0モル%共重合されている変性ポリエステルからなる請求項1に記載の繊維。
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