JP3816605B2 - 熱融着性繊維 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明はオムツ、病院用手術衣、カウンタ−クロス等、悪臭を嫌う不織布用途に使用するのに適した消臭性能を有する熱融着性繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
融点の異なる2成分からなる複合繊維のウエッブを熱処理し、その低融点成分の融着により繊維接点を固定化することが可能であるため、接着剤結合による場合のような乾燥を必要とせず、エネルギ−消費量が少なく経済的であり、またホルマリン等人体に有害な物質の含有を忌避することができるので多用されている。このような熱融着法に使用する複合繊維として、結晶性ポリプロピレン/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレ−ト/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレ−ト/共重合体ポリエチレンテレフタレ−ト等の組み合わせのものが知られている。
【0003】
とくに、ベビ−オムツやオムツライナ−、整理用品等の衛生材料分野、外食産業向けのカウンタ−クロス、台所用品の流し台の水切り袋等の非衛生材料分野、シップ薬の基布や固定用シ−ト、病院用手術衣、マスク等のメディカル分野などに不織布が広く使用されてきている。
同時に本来の取扱性等の機能性とともに、用途によってはさらに特殊な機能の付与が望まれている。たとえば、最近では家庭、病院等の生活環境において様々な悪臭に対する関心が高くなり、ベビ−オムツやオムツライナ−等の悪臭を嫌う用途ではできるだけ原因となる悪臭(アンモニア、アミン類等の窒素含有化合物、硫化水素、メチルメルカプタン等の硫黄含有化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、吉草酸等の低級脂肪酸類などが含まれる。)を軽減させる性能を保持している繊維製品が要求されている。
【0004】
しかしながら、かかる生活環境には前記低級脂肪酸等の酸性臭気成分、窒素含有化合物等の塩基性臭気成分、硫黄含有化合物、アルデヒド等の中性臭気成分ナドの種々の臭気成分が存在し、種類の異なる複数の成分を有効に除去することは困難であった。たとえば、これらの物質を除去するために天然の針葉樹、広葉樹からの抽出物あるいは緑芽からの抽出物等を後加工することにより繊維製品表面に付着させたもの等が一部使用されているが、耐久性が不十分等の欠点があった。
また、吸着剤を繊維に担持させた消臭繊維が提案されているが、かかる消臭繊維では吸着量の吸着容量に限界があるので、臭気成分の吸着量が飽和吸着量に達すると消臭できなくなる。また、特開昭62−6985号公報、特開昭62−6986号公報には金属フタロシアニンを担持した消臭性繊維により、触媒的に悪臭成分を分解することが開示されている。しかるに、金属フタロシアニンの触媒活性が小さいため消臭効果は十分ではない。
【0005】
さらに耐久性を向上させる目的で樹脂中に練り込む消臭剤タイプとして、鉄の二価イオン化合物とL−アスコルビン酸を併用したものが提案されているが、耐熱性が不十分であったり、あるいは繊維製品となった時に悪臭物質を脱臭した後に変色してしまい、繊維素材としては特定の用途しか使用できないなどの問題点があった。
【0006】
また、特開昭63−295711号公報には消臭成分としてリン酸ジルコニウム粒子を繊維中に練り込んだ消臭性繊維が提案され、特開平2−91209号公報には酸化亜鉛と二酸化ケイ素とからなるアモルファス構造のケイ酸亜鉛粒子を繊維中に練り込んだ消臭性繊維が提案され、特開平2−80611号公報にはチタン金属と亜鉛金属との水和酸化物系の白色微粉末を繊維中に練り込んだ消臭性繊維が提案されている。
さらに、特表平5−504091号公報や特開平6−47276号公報には四価金属の水不溶性リン酸塩および二価金属の水酸化物を含有する吸着性組成物を繊維中に複合または含有した消臭性繊維が提案されている。
しかしながら、これらの消臭性繊維は酸性臭気成分、塩基性臭気成分および中性臭気成分のすべての臭気を消臭する性能には欠けていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、熱融着性繊維に消臭機能を付与すべく検討したものである。すなわち、熱融着性でありながら、酸性臭気成分、塩基性臭気成分、中性臭気成分すべての臭気成分に対する消臭効果を長期間有する熱融着性繊維を得ようと検討したものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、四価金属のリン酸塩と、二価金属の水酸化物および光触媒を含有するポリオレフィン系ポリマ−(A)と、繊維形成性熱可塑性ポリマ−(B)とからなり、ポリマ−(A)が繊維周長の30%以上を占める複合繊維であって、下記条件を満足し、かつカ−ボンフェ−ド照射100時間後の繊維強度保持率が50%以上であることを特徴とする熱融着性繊維である。
【0009】
Amp≦180℃ ・・・・・・・・(1)
Bmp−Amp≧30℃ ・・・・・・・・(2)
ただし、Ampはポリマ−(A)の融点(℃)、Bmpはポリマ−(B)の融点(℃)を示す。
【0010】
本発明を構成するポリオレフィン系ポリマ−(A)について説明する。
ポリオレフィン系ポリマ−(A)としてはエチレン、プロピレン、ブテン−1、ぺンテン−1等のα−オレフィンを主成分としたポリマ−、エチレン−プロピレン共重合体などを挙げることができる。
具体的には高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、結晶化ポリプロピレンポリ−4メチルペンテン−1などを挙げることができるがこれらに限定されるものではなく、式(1)に示すように、その融点が180℃以下のポリオレフィン系ポリマ−であればよい。融点が180℃を越えるポリマ−を使用するとポリマ−(B)との融点差が式(2)を満足せず、たとえ満足できても、熱融着温度が高くなり、不織布が作成できたとしても風合の堅いものしか得られないことになる。
たとえば、メチル分岐を有する高密度ポリエチレンであってもよいし、上述のα−オレフィンを主成分としたポリマ−と、カルボキシル基、水酸基、エステル基、エポキシ基等の極性基を有するα−オレフィンを主成分としたポリマ−との混合物であってもよい。
【0011】
かかるポリマ−(A)のメルトインデックス(190℃、2160gf、ASTM D−1238に準拠して測定)は5〜35g/10分、とくに10〜25g/10分であることが好ましい。該メルトインデックスが小さいと紡糸の際、ポリマ−導管内での圧損が大きくなる、あるいは曵糸性に劣ることとなり安定な紡糸を行うことができにくい。とくにポリマ−(A)には消臭剤を含有させるので、注意が必要である。一方、メルトインデックスが大きすぎるとポリマ−の流動性は良好ではあるが、繊維形成性熱可塑性ポリマ−(B)との粘度バランスがくずれて所望の複合形態が得られず、断糸が多発する場合がある。
【0012】
この場合、メルトインデックスとは紡糸前の繊維を構成するポリマ−(A)のメルトインデックスである。紡糸時に熱分解等で重合度の低下が生じる場合は、その分を見込んだやや高めの重合度のポリマ−を用いて繊維化しなければならないことは言うまでもないことである。
【0013】
また、ポリマ−(A)の結晶配向度は50%以上、とくに60%以上であることが好ましい。該結晶配向度が小さすぎると、ポリマ−(A)の機械的強度が低下し、後述するポリマ−(B)で強度を保持したとしても、繊維全体の強度が低下し実用性が低下する。該結晶配向度も紡糸後の繊維を構成するポリマ−(A)の結晶配向度であり、このような結晶配向度を有する繊維はポリマ−(A)およびポリマ−(B)の吐出量、延伸条件を適宜設定することにより得られる。
【0014】
ポリマ−(A)としてメチル分岐を有する高密度ポリエチレンを使用する場合は熱融着温度が低く、低い温度で不織布を作成することができる。メチル分岐とはポリエチレン主鎖より直接分岐したメチル基を示し、エチル分岐の末端メチル基のような主鎖に直接結合していないメチル基は含まず、その数は分子中の炭素原子1000個当たり1.5個以上であるとが好ましい。
【0015】
次に繊維形成性熱可塑性ポリマ−(B)について説明する。
ポリマ−(B)とはポリエステル、結晶化ポリプロピレン等を挙げることができる。
ポリエステルは繊維原料として一般に用いられる熱可塑性ポリエステルであり、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト、あるいはこれらのポリエステルに第3成分を共重合させたポリエステルを挙げることができる。
かかる第3成分としてはイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の芳香族、脂肪族ジカルボン酸またはこれらの低級アルキルエステル等の酸成分;ヒドロキシ安息香酸、ω−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸;ジエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノ−ル、1,6ヘキサンジオ−ル、トリメチレングリコ−ル等のグリコ−ル類;ポリアルキレングリコ−ル、ビスヒドロキシフェニルプロパン、ビスヒドロキシフェニルスルホン等のジヒドロキシ化合物を挙げることができる。
【0016】
また得られるポリエステルが実質的に線状である範囲内でグリセリン、ペンタエリスリト−ル、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多官能成分を共重合させてもさしつかえない。
また、該ポリエステルの極限粘度は0.5〜1.1が好ましく、0.55〜0.70であることがとくに好ましい。かかる極限粘度が小さすぎると繊維全体の強度が不十分であり、該繊維をバインダ−繊維とする不織布が耐圧縮性に劣り、風合に問題が生じる場合がある。一方、かかる極限粘度が大きすぎると紡糸時のポリマ−の流動性が悪く、溶融粘度を高くする必要があり、このためポリマ−の分解や熱劣化が生じることになる。
なお、極限粘度とは、紡糸後の繊維を構成するポリマ−(B)の極限粘度であり、紡糸時に熱分解、加水分解等で重合度低下が生じる場合は、その分を見込んだやや高めの重合度のポリエステルを使用することが好ましいことはいうまでもないことである。
【0017】
結晶性ポリプロピレンとはプロピレンの単独重合体、プロピレンを主成分とし、これとエチレン、ブテン−1等のα−オレフィンとの共重合体であって、メルトインデックスが5〜40g/10分、とくに10〜30g/10分であるものが好ましく用いられる。
【0018】
このようなポリマ−(B)はポリマ−(A)よりその融点が30℃以上となるように、適宜選択することができる。ポリマ−(A)とポリマ−(B)との融点差が30℃未満の場合には、熱融着温度でポリマ−(A)のみが融着せず、ポリマ−(B)まで軟化してしまい、不織布にした場合に寸法安定性あるいは不織布強度(裂断長)に劣るという問題が発生する。したがって、ポリマ−(A)とポリマ−(B)との融点差は40℃以上であることが好ましい。
【0019】
上述のポリマ−(A)に含有すべき四価金属のリン酸塩、二価金属の水酸化物および光触媒について説明する。
該光触媒には、光半導体、たとえば酸化チタン等の酸化物半導体が含まれ、光触媒と併用される四価金属のリン酸塩、二価金属の水酸化物は消臭効果を発現する吸着剤としての働きを有するが、本発明においてはこの他に吸着剤としての働きを示すケイ酸塩化合物等の無機吸着剤を含有していてもよい。
【0020】
なお、本明細書においてはとくに言及しない限り、光触媒および吸着剤の練り込みによる繊維への含有、後加工による担持を含めて『含有』という。また周期表の族番号は、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry )無機化学命名法委員会命名規則1970年版による。
【0021】
前述のように、四価金属のリン酸塩および二価金属の水酸化物で構成される組成物を単に「吸着剤」と称する場合があるとともに、該吸着剤と必要に応じて他の吸着剤とで構成される組成物を単に「吸着剤成分」と称する場合がある。また、光触媒と該吸着剤を合わせて「消臭剤」と称する場合がある。
まず、消臭剤を構成する光触媒について説明する。
かかる光触媒とは、紫外線等の光線の照射により活性ラジカルを生成させ、多くの有害物、悪臭物を酸化分解し、光酸化触媒として機能するものをいう。そのために、光触媒は酸化性光触媒の範疇に属する場合が多い。このような光触媒を用いると、単なる吸着作用ではなく、触媒的な分解を利用して消臭できるため、消臭または脱臭効果が長期間に亘り持続できる。さらに、この光触媒は有害物、悪臭物を分解するだけでなく、殺菌作用、抗菌作用等も有している。
【0022】
光触媒としては、無機、有機を問わず、種々の光半導体が使用できるが、無機光半導体である場合が多い。光触媒としては、たとえば硫化半導体(CdS、ZnS、In2 S3 、PbS、Cu2 S、MoS3 、WS2 、Sb3 S3 、Bi3S3 、ZnCdS2 等)、金属カルコゲナイト(CdSe、In2 Se3 、WSe3 、HgSe、PbSe、CdSe等)、酸化物半導体(TiO2 、ZnO、WO3 、CdO、In2 O3 、Ag2 O,MnO2 、Cu2 O、Fe2 O3 、V2 O5 、SnO2 等)などが挙げられ、硫化物と酸化物以外の半導体として、GaAs、Si、Se、CdP3 、Zn2 P3 等も含まれる。これらの光触媒は単独または2種以上の組合わせで使用できる。
【0023】
これらの光触媒のうち、CdS、ZnS等の硫化物半導体、TiO2 、ZnO、SnO2 、WO3 等の酸化物半導体が好ましく、特に酸化物半導体、たとえばTiO2 、ZnO等が好ましい。前述の光触媒を構成する光半導体の結晶構造はとくに制限されない。たとえばTiO2 はアナタ−ゼ型、ブルカイト型、ルチル型、アモルファス型等のいずれであってもよい。とくに好ましいTiO2 としてアナタ−ゼ型を挙げることができる。
【0024】
光触媒はゾルやゲル状で使用できると共に粉粒状で使用してもよい。光触媒を粉粒状で使用する場合、光触媒の平均粒子径は、光活性および脱臭効率を損なわない範囲で選択でき、たとえば0.05〜5μm、好ましくは0.05〜1μmである。粒子径が5μmを越えると、たとえば溶融紡糸時にフィルタ−詰まりや毛羽断糸が生じ易くなる。小さすぎても二次凝集が起こり易くなり、フィルタ−詰まり等の問題を生じる可能性がある。
【0025】
該光触媒の使用量は、触媒活性を損なわない広い範囲から選択でき、たとえば繊維全体に対して0.1〜25重量%、好ましくは0.3〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜15重量%の範囲であり、一般に0.5〜10重量%の範囲である場合が多い。
【0026】
次に、消臭剤を構成する吸着剤(四価金属のリン酸塩、二価金属の水酸化物)について説明する。
リン酸塩を形成する四価金属は、四価の金属である限り、周期表における族はとくに制限されず、四価金属には周期表4族元素、たとえば、4A族元素(チタン、ジルコニウム、ハフニウム、トリウム等)、4B族元素(ゲルマニウム、錫、鉛等)が含まれる。これらの金属のうち、周期表4A族元素に属する金属、たとえばチタン、ジルコニウム、ハフニウムや、4B族元素、たとえば錫が好ましく、とくに、チタンおよびジルコニウムが好ましい。
【0027】
リン酸塩を構成するリン酸には種々のリン酸、たとえばオルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等が含まれる。リン酸はオルトリン酸、メタリン酸またはピロリン酸である場合が多い。また、リン酸塩にはオルトリン酸水素塩等のリン酸水素塩も含まれる。なお、本明細書において、とくに言及しないかぎりリン酸とはオルトリン酸を意味する。
【0028】
これらの四価金属リン酸塩は、通常、水不溶性または難溶性である。さらに、前記リン酸塩は結晶質塩であってもよいが、好ましくは非晶質塩である。これらの四価金属リン酸塩は単独または2種以上を組合わせて使用できる。
【0029】
水酸化物を形成する二価金属は周期表の族の如何を問わず二価の金属であればよい。二価金属には、たとえば銅等の周期表1B族元素、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2A族元素、亜鉛、カドミウム等の周期表2B族元素、クロム、モリブデン等の周期表6A族元素、マンガン等の周期表7A族元素、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム等の周期表8族元素などが挙げられる。これらの二価金属の水酸化物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0030】
好ましい二価金属には遷移金属、たとえば銅等の周期表1B族元素、亜鉛などの周期表2B族元素、マンガン等の周期表7A族元素、鉄、コバルト、ニッケル等の周期表8族元素が含まれる。好ましくは銅、亜鉛、鉄、コバルト、ニッケルである。
【0031】
これら二価金属の水酸化物は、通常、弱酸性〜弱アルカリ性領域(pH4〜10)で水不溶性または難溶性である。また該水酸化物は結晶質であってもよいが、非晶質である場合が多い。
【0032】
四価金属のリン酸塩と二価金属の水酸化物との割合は、触媒活性、臭気成分に対する吸着能や脱臭能を損なわない範囲で選択でき、たとえば金属原子比換算で、金属原子比(二価金属/四価金属)=0.1〜10、好ましくは0.2〜7、さらに好ましくは0.2〜5の範囲である。なお、複数のリン酸塩および/または水酸化物を組合わせて用いる場合には、それぞれの金属の総和量に基づく金属原子比が上述の範囲内であればよい。また、四価金属のリン酸塩と二価金属の水酸化物とで構成された組成物は、混合ゲル等のように共沈などにより複合化していてもよい。
とくに四価金属のリン酸塩と二価金属の水酸化物とを組合わせて構成された吸着剤と、前述の光触媒とを混合または共沈などにより複合化して用いると、高い触媒活性を示し、長期間に亘り効率よく臭気成分などの種々の化合物を除去することができる。
【0033】
吸着剤の使用量も光触媒の使用量と同様に適宜選択でき、たとえば繊維全体に対して0.1〜25重量%、好ましくは0.5〜20重量%、さらには1〜10重量%の範囲が好ましい。
なお、光触媒の量は、吸着剤100重量部に対して1〜1000重量部、好ましくは10〜750重量部、さらには20〜500重量部の範囲が好ましい。
【0034】
上述の消臭剤はさらに他の吸着剤、たとえば無機系吸着剤、有機系吸着剤のいずれをも併用することができる。かかる吸着剤は黒色系であってもよいが、非黒色系吸着剤、好ましくは青色などの淡色ないし白色または無色の吸着剤を用いる場合が多い。具体的には、無機系吸着剤として酸化アルミニウム(アルミナ)、シリカ(二酸化ケイ素)、酸化銅、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、シリカゲル、シリカゾル、ゼオライト、モンモリロナイト、アロフェン、セピオライトなどが挙げられ、有機系吸着剤としてはカルボキシル基、スルホン基、アミノ基などのイオン交換性官能基を有する各種のイオン交換樹脂や前記酸性官能基を有する有機酸系吸着剤、多孔質ポリエチレン、多孔質ポリプロピレン、多孔質ポリスチレン、多孔質ポリメタクリル酸メチル等の多孔質樹脂を挙げることができる。
【0035】
上述の消臭剤を構成する吸着剤は比表面積を増加させ、吸着容量を高める上で有用な二酸化ケイ素とを組合わせてもよい。二酸化ケイ素としては、それ自体が高分子量化した無機高分子、二酸化ケイ素と四価金属リン酸塩との複合化合物などが挙げられる。また二酸化ケイ素は含水二酸化ケイ素であってもよい。このよな二酸化ケイ素は結晶質であってもよいが、非晶質であることが好ましい。
二酸化ケイ素の含有量は、光触媒の触媒活性や吸着性能が低下しない範囲で選択でき、たとえば吸着剤に対して金属原子比換算で、ケイ素/吸着剤の金属=0.2〜10、好ましくは0.5〜8、さらには1〜7の範囲が好ましい。
【0036】
上述の消臭剤は、抗菌性金属成分(たとえば銀、銅、亜鉛、鉛等)、とくに銀成分を含んでいてもよい。抗菌性金属成分のうち銀成分を含む組成物は高い抗菌性能を有しているとともに、幅広い抗菌スペクトルをも有している。
銀成分は金属銀であってもよく、AgCl、AgF、AgF2 等のハロゲン化銀、Ag2 O、AgO等の酸化銀、AgS2 等の硫化物、Ag2 SO4 、Ag2CrO4 、Ag3 PO4 、Ag2 CO3 、Ag2 O3 等の酸素酸塩などの無機化合物であってもよい。銀成分は吸着剤、付加的吸着剤との複合化物であってもよい。また銀成分は水可溶性であってもよいが、水不溶性または水難溶性であることが好ましい。これらの銀成分は1種または2種以上組合わせて使用できる。
なお、銀成分は慣用の方法、たとえばイオン交換法、共沈法等により光触媒、吸着剤等に容易に導入できる。
銀成分の含有量は消臭剤全体に対して金属銀換算で0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜8重量%、さらには0.5〜7重量%の範囲が好ましい。
【0037】
本発明において消臭剤、必要に応じて添加される他の吸着剤や銀成分などの総量は、繊維の特性、繊維化工程性を損なわない範囲、たとえば繊維全体に対して0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜25重量%、さらには1〜20重量%の範囲が好ましい。
【0038】
上述の消臭剤は非晶質、とくに共沈により生成する共沈物質であることが好ましい。共沈により生成する非晶性消臭剤は、通常、10〜1000m2 /g、好ましくは30〜1000m2 /g、さらに好ましくは50〜1000m2 /gのBET比表面積を有している。そのため、このような消臭性成分を含有する繊維は高い吸着性を有する吸着性繊維として機能するとともに、臭気成分を含めて種々の有機化合物または無機化合物の分解除去するための脱臭繊維または消臭繊維としても機能し、さらには抗菌性能をも合わせ持つのである。
【0039】
消臭剤は慣用の種々の方法により得ることができる。たとえば四価金属リン酸塩、二価金属の水酸化物および光触媒を、必要に応じてさらに他の吸着剤(二酸化ケイ素等)および/または銀成分とともに混合するすることにより、消臭剤を簡便に得ることができる。前記混合に際しては粉砕等により得られたそれぞれの粉粒状成分を混合してもよい。
【0040】
光触媒の調整は慣用の方法、たとえば光触媒に対応する金属イオンを含有する水溶液から水不溶性沈殿物を生成させる方法、金属アルコキシドから調整する方法、高温で酸化させる気相法等にしたがって行うことができる。
【0041】
光触媒の製造に際しては、触媒に対応する成分を含む化合物を用いることができる。酸化チタンを例にとって説明する。このような成分としてTiCl4 、TiF4 、TiBr4 等のハロゲン化チタン、Ti(SO4 )2 、TiOSO4 等の硫酸塩、(CH3 O)4 Ti、(C2 H5 O)4 Ti、[CH3 (CH2 )O]4 Ti、[(CH3 )2 CHO]4 Ti、[CH3 (CH2 )3 O]4 Ti、[(CH3 )2 CHCH2 O]4 Ti等のC1-6 アルコキシチタン等が使用できる。また予め調整された酸化チタンゾル等を用いてもよい。
【0042】
また、消臭剤は四価金属イオン、二価金属イオンおよび光触媒に対応する成分を含む溶液や、これらの金属イオンのうち2種類以上の金属イオンを含む水溶液を使用して、それらの水不溶性物質の混合沈殿物を生成させる方法によっても得ることができる。この方法で得られた混合沈殿物は、通常ゲル状であり、乾燥により非晶質構造の混合物となる。なお、この方法において、光触媒に対応する成分は予め適切な結晶構造に調整して水溶液に添加することが好ましい。
【0043】
四価金属イオン、二価金属イオンおよび銀イオンを含む水溶液の調整には、各種の水溶液金属化合物が用いられる。このような二価金属、四価金属および銀の水溶性金属化合物としては、各種の金属塩、金属アルコキシド等を挙げることができる。金属塩としては、通常の金属塩(正塩)のほか、酸性塩、オキシ塩、さらに他の複塩、錯塩の形態の金属塩を用いてもよい。また、金属塩は水溶液のpHが中性付近で不溶性の化合物であっても、酸性溶液中で溶解する化合物であればよい。これらの金属のうち、無機酸塩、とくに硫酸塩や硝酸塩等の強酸塩を用いる場合が多い。なお、四価金属化合物のうちチタン化合物やジルコニウム化合物としてはオキシ金属塩を用いる場合が多い。
【0044】
四価金属のリン酸塩および二価金属の水酸化物を生成するには、四価金属のリン酸塩と二価金属イオンの共存下に二価金属の水酸化物を生成させればよい。たとえば、(i)四価金属イオンおよび二価金属イオンが共存する水溶液中で四価金属のリン酸塩を生成し、ついで二価金属の水酸化物を生成してもよく、また (ii)二価金属イオンを含有しない水溶液中で予め四価金属のリン酸塩を生成した後、二価金属イオンを含む水溶液を加え、二価金属の水酸化物を生成させてもよい。
【0045】
光触媒は四価金属のリン酸塩および二価金属の水酸化物を生成させる反応系に、たとえば粉粒状で添加していてもよく、前記四価金属のリン酸塩および/または二価金属の水酸化物を生成させた後、反応系または生成した沈殿物に添加してもよい。
【0046】
さらに、光触媒は四価金属のリン酸塩および/または二価金属の水酸化物の生成とともに同時に生成させてもよい。光触媒の生成には、上記(i)および(ii)の方法が利用できる。たとえば酸化チタンを生成させる場合、塩化チタン等のハロゲン化チタン、無機酸塩(硫酸チタン等の硫酸塩)やアルコキシドを必要に応じて前記反応系に添加し、反応系のpHを中性またはアルカリ性に調整することにより生成させることができる。
【0047】
二酸化ケイ素を含む組成物を調整する場合には、前記沈殿物生成反応の少なくともいずれか1つの工程で、二酸化ケイ素および/またはケイ酸イオン種を添加してもよく、光触媒成分等を含む生成した沈殿物と二酸化ケイ素を混合してもよい。なお、前記沈殿物の生成とともに二酸化ケイ素を生成させる場合、アルカリ性ケイ酸塩溶液(たとえばケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等)をアルカリの代わりに使用することができる。ケイ酸イオン種を用いる場合、二価金属の水酸化物の生成とともに、pH4〜12の中性域に調整すると含水二酸化ケイ素を生成させることができる。
【0048】
さらに、銀成分に関し、前記二酸化ケイ素と同様に、沈殿生成物反応の少なくとも1つの工程で銀成分、たとえば銀の水不溶性化合物および/または銀イオン種を添加することにより銀成分を含む消臭成分を得ることができる。また銀イオン等の銀成分はイオン交換法、含浸法等の慣用の方法により、前記光触媒、リン酸塩、水酸化物、二酸化ケイ素やこれらの成分の少なくとも1種または2種以上の成分に容易に担持できる。
【0049】
このようにして得られた沈殿物は、必要に応じて慣用の方法により精製してもよい。たとえば、前記混合沈殿物等の沈殿物を含む反応液を濾過し、温水または水等の洗浄溶媒を用いて洗浄し、金属塩のアニオン種等の不純物を除去し、乾燥することにより、精製した消臭剤を得ることができる。
前記濾過は濾紙や濾布等を用い、常温常圧下、減圧下または加圧下で行うことができ、遠心分離法、真空濾過法等を利用して行ってもよい。また、洗浄に際しては、傾斜洗浄法等を利用してもよい。
前記乾燥操作は慣用の方法、たとえば風乾で行ってもよく、消臭剤の分解温度未満の温度、たとえば約400℃以下、好ましくは200℃以下の温度に加熱した加温度下で行ってもよい。
【0050】
上述のポリマ−(A)に光触媒と吸着剤とからなる消臭剤を含有させる方法としては、▲1▼ポリマ−(A)に消臭剤を添加してマスタ−バッチを作製しておき、それを使用する方法、▲2▼ポリマ−(A)が紡糸されるまでの任意の段階(たとえば、ポリマ−のペレットの作製段階、溶融紡糸段階など)で消臭剤を添加させる方法などがある。
このうち、▲1▼の方法では、ポリマ−(A)の原料スラリ−に消臭剤を添加する方法、プレポリマ−を製造した後に該プレポリマ−をさらに重縮合させる直前に消臭剤を添加する方法、ポリマ−(A)の重合直後であって、未だ液状である間に消臭剤を添加する方法などを採用し得るが、本発明で使用する消臭剤は触媒活性が非常に高いのでポリマ−の種類によっては重合反応が進行する場合があり注意が必要である。工程を考慮すると上述の▲2▼の方法が好ましい。
【0051】
上記消臭剤を含有するポリマ−(A)とポリマ−(B)とは前者が繊維周長の30%以上を占める複合形態で複合紡糸される。具体的にはポリマ−(A)を鞘部、ポリマ−(B)を芯部としてなる芯鞘型(同芯、偏芯を含む);ポリマ− (A)とポリマ−(B)とを並列してなるサイドバイサイド型;ポリマ−(A)とポリマ−(B)との交互多層貼合型;ポリマ−(A)とポリマ−(B)とが単繊維間でランダムな複合形態をとるランダムミックス型等を挙げることができる。
【0052】
一例として芯鞘型および多層貼合型について説明する。
芯鞘型複合繊維において、ポリマ−(A)とポリマ−(B)との複合割合は紡糸性、延伸性、繊維の機械的強度、熱的性能から芯成分/鞘成分=30/70〜70/30、とくに40/60〜60/40であることが好ましい。芯成分が多くなると熱融着性成分であるポリマ−(A)が少なくなって不織布の接着強力が低下する場合があり、逆に鞘成分が多くなると不織布の機械的強度に問題が生じてくる。
【0053】
このような芯鞘型複合繊維を得るには従来公知の複合紡糸口金を用いて紡糸することができる。また溶融紡糸時のポリマ−(A)の溶融温度はゲル化防止、紡糸調子の向上のために150〜280℃の範囲が好ましく、180〜250℃の範囲がより好ましい。芯成分であるポリマ−(B)の溶融温度は芯成分の融点より20〜50℃高い温度が紡糸調子の向上のために好ましい。
それぞれのポリマ−は異なる温度で別々に導管内を輸送され、パック内で紡糸直前に複合されることが好ましい。紡糸温度は芯成分であるポリマ−(B)の紡糸温度に設定することが好ましい。吐出された糸条は口金直下でより急速冷却することが膠着防止、紡糸調子向上のためには好ましい。紡糸速度は350〜3000m/分の範囲が紡糸調子の点から好ましい。
そして得られた未延伸糸はトウにした後、60〜95℃の温度で1.5〜5.0倍の延伸倍率で延伸され、ついで押し込みクリンパ−で捲縮が施された後、必要に応じて熱処理、切断してステ−プルファイバ−となる。
【0054】
多層貼合型複合繊維においても、ポリマ−(A)とポリマ−(B)との複合形態は前者が繊維周長の30%以上を占めることが必要であり、そして、ポリマ−(A)とポリマ−(B)との複合割合は紡糸性、延伸性、繊維の機械的強度、熱的性能からポリマ−(A)/ポリマ−(B)=20/80〜70/30、とくに30/70〜60/40であることが好ましい。ポリマ−(A)の割合が少なくなると本発明の目的である消臭効果が激減するので好ましくない。また逆に多すぎると不織布にした場合の強度が低下するという問題がある。
【0055】
また、上述の多層貼合型複合繊維およびランダムミックス型複合繊維はポリマ−(A)とポリマ−(B)の種類によっては分割が可能である。分割手段としては該繊維を物理的/化学的方法で分割フィブリル化する方法、1種類のポリマ−を溶解・分解させて除去させる方法などが挙げられる。
具体的にはポリマ−(B)としてポリエステルを使用する場合、該繊維をポリエステルの加水分解剤であるアルカリ水溶液で処理する方法、不織布ウエッブを水流絡合で処理する方法などを挙げることができる。
【0056】
このようにして得られた繊維はカ−ボンフェ−ド照射100時間後の繊維強度保持率が40%以上、とくに50%以上と高く、不織布に使用した場合、優れた消臭、抗菌性能を保持し、長期に亘る繰り返し使用にもその性能は消失しないという利点がある。
【0057】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれら実施例により何等限定されるものではない。なお、実施例中の物性値は以下の方法により測定・算出したものである。
(1)ポリエステルの極限粘度(dl/g)
フェノ−ル/テトラクロロエタン等重量混合溶液を使用し、30℃で測定した。
(2)ポリオレフィンのメルトインデックス
ASTM D 1238に準拠し、190℃、2160gで測定した。
(3)比表面積(cm2 /g)
湯浅アイオニクス製カンタソ−ブQS−13(C0301型)を用い、BET法により測定算出した。
【0058】
(4)消臭性能評価
a.初期性能
通常の白熱蛍光灯光照射下(500ルクス)、15cmに静置したテドラ−バッグ(容積3リットル)に試料3gを入れて密封し、ついでシリンジを用いて所定の濃度の臭気成分を含む空気を、全ガス量3リットルとなるようにテドラ−バッグ内に注入した。該注入ガスはアンモニア40ppm、硫化水素15ppm、酢酸40ppmであった。
ガスを注入して特定時間経過後にテドラ−バッグ内のガスをマイクロシリンジでサンプリングし、硫化水素、酢酸のガス濃度をガスクロマトグラフィ(島津製作所社製GC−7A型)にて測定し、臭気成分の除去率を下記式により算出した。アンモニアはガス検知管(北川社製、アンモニア用型)を用い、直接テドラ−バッグ内のガス濃度を測定し、臭気成分の除去率を算出した。同様にして遮光下での測定も行った。
除去率(%)=[(C0 −C)/C0 ]×100
C0 :初期ガス濃度
C :1時間後のガス濃度
b.繰り返し消臭性能
通常の白熱蛍光灯光照射下(500ルクス)、15cmに静置したテドラ−バッグ(容積3リットル)に試料3gを入れて密封し、ついでシリンジを用いて所定の濃度の臭気成分を含む空気を、全ガス量3リットルとなるようにテドラ−バッグ内に注入した。該注入ガスは酢酸40ppmであった。
ガスを注入して1時間後のガス濃度をガスクロマトグラフィにより測定するとともに、酢酸40ppmを含む空気をテドラ−バッグ内に注入した。
ガス濃度の測定と酢酸の注入を1時間ごとに繰り返し行った。
c.洗濯耐久性
洗濯50回繰り返した試料を用い、aの方法でアンモニアの消臭評価を行った。
【0059】
(5)カ−ボンフェ−ド照射後の強度保持率(%)
JIS L 0842に準拠して63℃でカ−ボンフェ−ドを50時間および100時間照射した。照射前後の強度(g/デニ−ル)をJIS L1015に準拠して測定し、照射後の強度保持率を算出した。
(6)抗菌性能評価
試料に大腸菌の菌液を滴下し、光照射(30W2本の蛍光灯下30cm)または遮光下で35℃×18時間培養後、生菌数を測定した。対照布として標準ナイロン布を用いた。
(7)風合
カット長51mmの熱融着性繊維とポリエチレンテレフタレ−トからなるステ−プルファイバ−とを重量比50/50になるように混綿し、カ−ディング後、熱風循環型の熱処理機にて140℃で2分間熱処理し目付30g/cm2 の接着ウエッブを作成し、得られた不織布の触感を5人のパネラ−が判定した。
◎:全員がとくに良好と判定した。
○:全員が良好と判定した。
△:3〜4人は良好と判定した。
×:3人以上が不良と判定した。
【0060】
《消臭剤の調整》
以下の方法により消臭剤[Cu(II)−Ti(IV)−SiO2 −TiO2 ]を調整した。
硫酸銅の結晶(CuSO4 ・5H2 O、和光純薬製試薬特級)43.9gを蒸留水1リットルに溶解し、得られた水溶液に硫酸チタン溶液(約30重量%濃度、和光純薬製試薬)60gを添加した。この混合液はCu(II)0.175モル、Ti(IV)イオン0.075モル含んでいる。前記混合液のpHは約1であった。室温下で混合液を撹拌しながら15重量%のリン酸溶液約110gを滴下したところ、白色沈殿物が生成した。沈殿物が生成した混合液をそのまま一昼夜撹拌した。
上記沈殿物を含有する液(A液)とケイ酸ナトリウムを含む水溶液(B液)471gとを別々のビ−カ−中で撹拌しながら、蒸留水500mlを入れた容器中へ平行して滴下したところ、Cu(II)−Ti(IV)−SiO2 を含む青白色の混合沈殿物が生成した。A液とB液との混合時のpHは常に約7となるようにA液とB液の滴下量を調整した。なお、B液はケイ酸ナトリウム(和光純薬製試薬)を蒸留水で30重量%に希釈し(SiO2 としては0.86モル含有)、15重量%の水酸化ナトリウム水溶液30mlを添加することにより調整した。
【0061】
A液とB液の混合液を室温下、さらに2時間撹拌した後、青白色混合沈殿物を吸引ろ過し、加温した脱イオン水で十分洗浄した後、40℃で乾燥した。乾燥物を乳鉢で120μm以下に粉砕し、Cu(II)−Ti(IV)−SiO2 を含む青白色の粉末を得た。
該粉末80重量部に対して酸化チタン粉末(石原産業(株)製、MC−90)20重量部を混合し、ジェットミルで粉砕し消臭剤を調整した。
【0062】
実施例1
芯部用ポリマ−(B)として極限粘度が0.65のポリエチレンテレフタレ−ト(融点:258℃、以下、PETと略称する)を用い290℃で溶融し、鞘部用ポリマ−(A)として、上記で得られた消臭剤を5重量%含有した、メルトインデックスが20g/10分の高密度ポリエチレン(密度:0.956g/cm3 、融点:135℃)を用い230℃で溶融し孔数1000孔を有する芯鞘型複合紡糸口金を用い、芯/鞘複合比=50/50(重量比)、紡糸温度290℃で紡糸し、速度900m/分で巻き取り、6000デニ−ル/1000フィラメントの未延伸糸を得た。
ついで得られた未延伸糸を180万デニ−ルのトウにした後、90℃の温水にて3.0倍に延伸し、単繊維繊度2デニ−ルの延伸糸とした。この延伸糸をスタッフィング型捲縮機で捲縮を付与した後、100℃で弛緩処理を施して51mmの長さに切断した。得られた繊維の評価を行い結果を表1に示す。
この繊維とPET繊維(混合重量比50/50)とをカ−ド機に通し、目付30g/m2 のウエッブとし、このウエッブをサクションドライヤ−を用いて140℃の温度で2分間熱処理して不織布とした。この不織布の風合を判定したところ、パネラ−全員が非常に良好と判定した。
【0063】
実施例2〜3
実施例1において、複合形態および複合割合を11層縦割貼合わせ型断面形状、ポリマ−(A)/ポリマ−(B)=1/2(実施例2)、スタチックミキサ−(8エレメント)使用によるランダムミックス型断面形状、ポリマ−(A)/ポリマ−(B)=1/2(実施例3)にした以外は同様にして5000デニ−ル/800フィラメントの未延伸糸を得た。
ついで得られた未延伸糸を180万デニ−ルのトウにした後、90℃の温水にて3.1倍に延伸し、単繊維繊度2デニ−ルの延伸糸とした。この延伸糸をスタッフィング型捲縮機で捲縮を付与した後、100℃で弛緩処理を施して51mmの長さに切断した。得られた繊維の評価を行い結果を表1に示す。
これらの繊維を水流絡合処理することにより、ポリマ−(A)からなる繊維とポリマ−(B)からなる繊維に分割し、ついで分割後の繊維を用い実施例1と同様にして不織布を作成し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
実施例4〜5
実施例1において、鞘部ポリマ−(A)として、低密度ポリエチレン(融点:105℃、メルトインデックス30g/10分、住友化学工業社製)を用いて210℃で溶融紡糸し(実施例4)、また結晶性ポリプロピレン(融点:168℃、メルトインデックス12g/10分、住友化学工業社製)を用い270℃で溶融紡糸(実施例5)した以外は同様にして6000デニ−ル/1000フィラメントの未延伸糸を得た。
ついで得られた未延伸糸を180万デニ−ルのトウにした後、90℃の温水にて3倍に延伸し、単繊維繊度2デニ−ルの延伸糸とした。この延伸糸をスタッフィング型捲縮機で捲縮を付与した後、100℃で弛緩処理を施して51mmの長さに切断した。得られた繊維の評価を行い結果を表1に示す。
この繊維を用い実施例1と同様にして不織布を作成し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
実施例6
実施例1において、鞘部ポリマ−(A)として、変性ポリプロピレン(融点:138℃、メルトインデックス28.5g/10分、グランドポリマ−社製)を用い220℃で溶融紡糸し、芯部ポリマ−(B)として結晶生ポリプロピレン (融点168℃、メルトインデックス12g/10分、住友化学工業社製)を用い270℃で溶融紡糸した以外は同様にして6000デニ−ル/1000フィラメントの未延伸糸を得た。
ついで得られた未延伸糸を180万デニ−ルのトウにした後、90℃の温水にて3倍に延伸し、単繊維繊度2デニ−ルの延伸糸とした。この延伸糸をスタッフィング型捲縮機で捲縮を付与した後、100℃で弛緩処理を施して51mmの長さに切断した。得られた繊維の評価を行い結果を表1に示す。
この繊維を用い実施例1と同様にして不織布を作成し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
実施例7
実施例2において、ポリマ−(A)として変性ポリプロピレン(融点:138℃、メルトインデックス28.5g/10分、グランドポリマ−社製)を用い、290℃で溶融紡糸した以外は同様にして5000デニ−ル/800フィラメントの未延伸糸を得た。
ついで得られた未延伸糸を180万デニ−ルのトウにした後、90℃の温水にて3.1倍に延伸し、単繊維繊度2デニ−ルの延伸糸とした。この延伸糸をスタッフィング型捲縮機で捲縮を付与した後、100℃で弛緩処理を施して51mmの長さに切断した。得られた繊維の評価を行い結果を表1に示す。
この繊維を水流絡合処理することにより、ポリマ−(A)からなる繊維とポリマ−(B)からなる繊維に分割し、ついで分割後の繊維を用い実施例1と同様にして不織布を作成し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
比較例1
実施例1で使用した消臭剤5重量%含有した高密度ポリエチレンのみを用い、240℃で溶融紡糸し、6000デニ−ル/1000フィラメントの未延伸糸を得た。
この未延伸糸を実施例1と同様にして延伸を施し、ついで捲縮、弛緩処理を行い51mm長の繊維とした。得られた繊維の評価を行い、結果を表1に示す。
カ−ボンフェ−ド照射後の強度が非常に低く、長期に亘る使用が困難であった。
【0068】
比較例2
実施例5で使用した消臭剤5重量%含有した結晶性ポリプロピレンのみを用い、270℃で溶融紡糸し、6000デニ−ル/1000フィラメントの未延伸糸を得た。
この未延伸糸を実施例1と同様にして延伸を施し、ついで捲縮、弛緩処理を行い51mm長の繊維とした。得られた繊維の評価を行い、結果を表1に示す。
カ−ボンフェ−ド照射後の強度が非常に低く、長期に亘る使用が非常に困難であった。
【0069】
比較例3
実施例1において、鞘部ポリマ−(A)中に消臭剤を添加しなかった以外は同様にして未延伸糸を紡糸し、ついで延伸、捲縮、弛緩処理を施し51mm長の繊維に切断した。繊維の評価を行い、結果を表1に示す。消臭効果、抗菌効果はほとんどなく、機能性を付与した不織布として使用できないものであった。
【0070】
比較例4
実施例5において、鞘部ポリマ−(A)中に消臭剤を添加しなかった以外は同様にして未延伸糸を紡糸し、ついで延伸、捲縮、弛緩処理を施し51mm長の繊維に切断した。繊維の評価を行い、結果を表1に示す。消臭効果、抗菌効果はほとんどなく、機能性を付与した不織布として使用できないものであった。
【0071】
比較例5
実施例2において、ポリマ−(A)中に消臭剤を添加しなかった以外は同様にして未延伸糸を紡糸し、ついで延伸、捲縮、弛緩処理を施し51mm長の繊維に切断した。繊維の評価を行い、結果を表1に示す。消臭効果、抗菌効果はほとんどなく、風合は優れるものの機能性不織布としては使用できないものであった。
【0072】
比較例6
実施例1において、消臭剤を5重量%芯部ポリマ−(B)に添加させた以外は同様にして未延伸糸を紡糸し、ついで延伸、捲縮、弛緩処理を施し51mm長の繊維に切断した。繊維の評価を行い、結果を表1に示す。
消臭効果、抗菌効果はほとんどなく、カ−ボンフェ−ド照射後の強度保持率は25%で長期間の使用に耐えないものであった。
【0073】
【表1】
【0074】
【発明の効果】
本発明により得られる熱融着繊維は熱融着性でありながら、すべての臭気成分に対する優れた消臭効果を有し、しかも抗菌性能まで合わせ持ち、これらの効果が長期に亘り持続するので、オムツ、病院用手術衣、カウンタ−クロス等、悪臭を嫌う不織布用途に使用するのに非常に適している。
Claims (3)
- 四価金属のリン酸塩と、二価金属の水酸化物および光触媒を含有するポリオレフィン系ポリマ−(A)と、繊維形成性熱可塑性ポリマ−(B)とからなり、ポリマ−(A)が繊維周長の30%以上を占める複合繊維であって、下記条件を満足し、かつカ−ボンフェ−ド照射100時間後の繊維強度保持率が50%以上であることを特徴とする熱融着性繊維。
Amp≦180℃ ・・・・・・・・(1)
Bmp−Amp≧30℃ ・・・・・・・・(2)
ただし、Ampはポリマ−(A)の融点(℃)、Bmpはポリマ−(B)の融点(℃)を示す。 - ポリマ−(A)が鞘部、ポリマ−(B)が芯部を構成してなる芯鞘複合形態であることを特徴とする請求項1記載の熱融着性繊維。
- ポリマ−(A)とポリマ−(B)とが交互に貼り合わされている分割型複合形態であることを特徴とする請求項1記載の熱融着性繊維。
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