JP2004283514A - ワイピングクロスおよびその製造方法 - Google Patents

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Wataru Abe
渡 阿部
Etsuo Kiyomura
清村  悦央
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Abstract

【課題】本発明は、吸水性と保水性に優れ、拭取面に拭き跡や水滴を残すことなく拭き取ることができる極めて優れた拭取性を有する上に、消臭性、着臭防止性、抗菌性、防汚性を有する拭取布帛およびその製造方法を提供せんとするものである。
【解決手段】単繊維繊度が0.1〜3.0デシテックスのポリアミドと0.01〜2.0デシテックスのポリエステルからなる複合繊維を含む総繊度30〜400デシテックス、撚り数400〜800回/mのフィラメント糸条で構成された編織物からなるワイピングクロスであって、且つチタンとケイ素を含む複合酸化物と、アルキルシリケート系樹脂、シリコーン系樹脂およびフッ素系樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂とを含有することを特徴とするワイピングクロス。
【選択図】なし。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はワイピング特性に優れているとともに、吸水性、保水性、手触りならびに風合いに優れ、耐久性のある消臭性、着臭防止性、抗菌性、防カビ性、防汚性などの優れた機能性を有し、かつワイピング面の毛羽脱落のない特に乾・湿両方の用途で好適なワイピングクロスおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、国民の生活水準の向上に伴い、健康および衛生に関する意識も高まっており、衣食住の各分野において、消臭、抗菌、防カビおよび防汚加工を施した製品や技術が実用化されている。
【0003】
一方、眼鏡拭きなどのワイピングクロスは、拭いた後ポケットや眼鏡ケースに収納するため、臭いが残るなどの経験をする。ワイピングクロスは人間の手で拭き取るために、このようなときには不快感を与えることになる。また、ワイピングクロスを長持ちさせるために防汚性が要求されることもある。
【0004】
さらに、キッチン、洗面所、風呂場周りなど濡れた部分のワイパーは、一般に綿製のものが多く使われており、簡単な手洗いはするものの、使用後は、乾かすことなく濡れたまま放置するため、汚れがワイピングクロスに蓄積し、不快臭を与えることもある。
【0005】
特開2000−265341号公報では、ポリアミド系繊維とポリエステル系繊維から構成される織編物に、ピリジン系抗菌剤を含む抗菌加工処理を施したワイピングクロスが提案されている。しかしながら、この織編物では、菌の増殖を抑制することは出来ても、布帛自身から発せられる不快臭を抑制することは出来なかった。
【0006】
また、従来の技術では、これらのワイイピングクロスに対して消臭、抗菌および防汚加工を施す場合は、原糸への練り込み、紡績工程における付与、染色時および染色後の付与が行われている。しかし、この方法では、繊維全体に対して消臭、抗菌、防カビ性、防汚性を満足する加工を施すためには、加工剤を多く付与する必要があり、生産性が悪くなる場合があった。また、付着量が増えるために風合いが硬くなったり、加工剤によっては色味が白くなって見栄えが悪くなることがあった。
【0007】
セラミックやガラスなどの無機物の表面に固定されて用いられている光触媒を繊維に固定すれば、消臭性、抗菌性、防カビ性および防汚性などの機能を付与し得ることは予想できるが、光触媒を繊維に固着させるためには、何らかのバインダー樹脂が必要であり、従来使用していたアクリル系樹脂やウレタン系樹脂のバインダー樹脂は、有機質の炭化水素を含む樹脂であるため、光触媒の強い酸化分解力によりバインダー樹脂が分解して、着色したり、悪臭がするなどの問題が生じる。
【0008】
さらに、光触媒が付与された繊維は、繊維自体が劣化し、着色、強度低下、低分子量の分解物生成により、悪臭の発生などの問題が生じるのであった。セラミックやガラスなどの無機物では、酸化により分解されることがないので、かかる問題を生じることなく利用されている。
【0009】
光触媒の繊維への適用におけるこれらの問題を解決するために、例えば繊維表面に過酸化チタンからなる層を中間層として設け、その上に光触媒とバインダーからなる層を設ける方法があるが、光触媒の洗濯耐久性が乏しく、風合い粗硬化、コストアップ等の問題がある。
【0010】
したがって、繊維と光触媒が直接接触している消臭等の機能が付与された技術は、未だ実用化されてはいない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、使用に際して変色や劣化がなく、持続性のある消臭、抗菌、防カビおよび防汚性を同時に満足するとともに、ワイピング特性、吸水性、手触り、風合などに優れ、かつワイピング面の毛羽脱落のない特に乾・湿両方の用途で好適なワイピングクロスおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次の手段を採用するものである。すなわち、
(1)単繊維繊度が0.1〜3.0デシテックスのポリアミド系繊維と、単繊維繊度が0.01〜2.0デシテックスのポリエステルフィラメント系繊維を含む総繊度が30〜400デシテックス、撚り数が400〜800回/mのフィラメント糸条で構成された編織物からなり、かつ該編織物上表面にチタンとケイ素を含む複合酸化物と、アルキルシリケート系樹脂、シリコーン系樹脂およびフッ素系樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂とを有することを特徴とするワイピングクロス。
(2)前記ポリアミド系繊維が、フィラメント糸条全体の10〜90重量%を占めることを特徴とする前記(1)に記載のワイピングクロス。
(3) 前記編織物の吸水速度が1秒以下であることを特徴とする前記(1)〜(2)のいずれかに記載のワイピングクロス。
(4)前記編織物の保水性が200重量%以上であることを特徴とする前記(1) 〜(3)のいずれかに記載のワイピングクロス。
(5) 前記編織物上に、さらにゼオライトを有することを特徴とする前記(1) 〜(4)のいずれかに記載のワイピングクロス。
(6)前記編織物上に、さらにカップリング剤を有することを特徴とする前記 (1)〜(5)のいずれかに記載のワイピングクロス。
(7)前記編織物上に、さらに吸水剤を有することを特徴とする前記(1)〜(請 求項1〜6のいずれかに記載のワイピングクロス。
(8)前記複合酸化物が、100〜300m/gの比表面積を有する微粒子であ ることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載のワイピングクロス。
(9)前記複合酸化物が、平均一次粒子径が1〜20nmの範囲に請求項1〜ある微粒子であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載のワイピングクロス。
(10)前記複合酸化物の重量割合が、ワイピングクロスに対して0.05〜30重量%であることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれかに記載のワイピングクロス。
(11)細繊度化処理後の単繊維繊度が0.1〜3.0デシテックスのポリアミド系成分と細繊度化処理後の単繊維繊度が0.01〜2.0デシテックスのポリエステル系成分からなる複合繊維に撚り数400〜800回/mの撚りをかけて得られるフィラメント糸条を用いて編織物を形成した後、該編織物に細繊度化処理を施して前記複合繊維をポリアミド系成分とポリエステル系成分とに細繊度化し、次いで該編織物上表面にチタンとケイ素を含む複合酸化物と、アルキルシリケート系樹脂、シリコーン系樹脂およびフッ素系樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂とを熱固着することを特徴とするワイピングクロスの製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明において、光触媒とは、紫外線により励起され、強い酸化力によって有機物を酸化分解する特性を有するものであり、具体的には、アナターゼ型、ルチル型と呼ばれる結晶型の構造をもつものが含まれる。
【0014】
本発明は、かかる光触媒機能を発揮するチタンとケイ素を含む複合酸化物が、消臭性、着色物分解除去性(防汚性)、殺菌性(抗菌、防カビ)を有するという事実に着目し、これを繊維構造物に付与して生かしたものである。
【0015】
たとえば消臭性機能を持つ加工技術は、これまでに数多く紹介されてきたが、従来の消臭技術では、ある特定の臭気のみ消臭し、臭気が残ったり、持続性、耐久性に乏しいという問題があった。
【0016】
しかし、本発明のチタンとケイ素を含む複合酸化物を用いた場合、これまで困難とされてきたタバコ臭や汗臭などの体臭をバランスよく消臭し、しかも、かかる臭気を酸化分解する機能も有するので、着臭防止という、これまでにない非常に優れた効果も達成するものである。また、タバコのヤニなどの着色物を分解除去する機能を有するので、着色物に対する防汚効果も達成することができるものである。さらに、本発明のチタンとケイ素を含む複合酸化物は、その酸化力により、MRSA菌、大腸菌、黄色ブドウ状球菌などに対する殺菌力を有するので、抗菌、防カビの効果も達成することができるものである。
【0017】
かかる複合酸化物の形状としては、消臭の効果を効率的にする等の点で、粒子状であることが好ましく、特に、多孔質である場合、その消臭などの効果を効率的に発揮するため好ましい。その粒子径が大きすぎたり、比表面積が小さすぎたりすると、有機物、特に細菌に対する分解速度が低下する傾向がある。また消臭反応は、悪臭成分が触媒に吸着し、その後紫外線酸化分解を受ける過程を経ると考えられ、悪臭成分の吸着の良し悪しが消臭効率に大きく影響を与えると考えられるので、平均一次粒子径としては1〜20nm、比表面積が100〜300m/gであるものが好ましく使用される。
【0018】
ここで、平均一次粒子径は、島津製作所 レーザー回析式粘土分布計 SALD−2000Jを用いて測定する。また、比表面積はQUANTA CHROME社製 QUANTA SORB OS−8の装置を用いて測定する。それぞれ、測定はN=3で行い、平均値を出す。
【0019】
かかる複合酸化物の繊維構造物(ワイピングクロス)に対する付着量は、少なすぎると悪臭成分などの有機物の分解速度が低下し、十分な性能が得られなかったり、また多すぎると、繊維布帛の複合酸化物による劣化を起こしたり、風合いが硬化なものになり、実用的なものでなくなり、さらに光触媒の酸化分解による繊維自体やバインダー等の分解によって発生する悪臭が発生する傾向があるなるため、繊維構造物に対する光触媒の付着量は0.05〜30重量%が好ましく、0.05〜20重量%がより好ましく、0.08〜10重量%がさらに好ましい。
【0020】
本発明においてチタンとケイ素とを含む複合酸化物の製造方法としては、例えば、特公平5−55184号公報に記載された方法が挙げられる。一般に、チタンとケイ素からなる二元系複合酸化物は、例えば、触媒(第17巻,No.3、72頁1975年)に記載されているように、固体酸として知られ、構成するおのおの単独の酸化物には見られない顕著な酸性を示し、また、高表面積を有する。すなわち、チタンとケイ素とを含む複合酸化物は、酸化チタンと酸化ケイ素を単に混合したものではなく、チタンとケイ素がいわゆる二元系酸化物を形成することにより、その特異な特性が発現するものと認めることのできるものである。さらに、複合酸化物は、消臭の効果を効率的にする点で、X線回析による分析で、非晶質もしくはほぼ非晶質に近い微細構造を有していることが好ましい。チタンとケイ素の割合は、モル比でチタンが20〜95モル%、ケイ素が5〜80モル%の範囲にあることが好ましい。酸化ケイ素の割合が多くなると、酸化チタンの光触媒活性力が弱まる傾向で、使用目的により最適割合を決めればよい。
【0021】
チタンとケイ素を含む複合酸化物の好ましい製造方法として、四塩化チタンをシリカゾルと共に混合し、その中にアンモニア水を滴下添加して、沈殿を生成せしめ、この沈殿物を濾過、洗浄、乾燥後300〜650℃で焼成する。一般的に知られている酸化チタン光触媒と比較して、有機物の酸化分解特性に優れており、前記の如き抗菌、消臭、着臭防止、防汚性に優れているという特徴を有するものである。
【0022】
本発明においては、チタンとケイ素とを含む複合酸化物をアルキルシリケート系樹脂、シリコーン系樹脂およびフッ素系樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂とともに繊維(編織物)表面上に付与する。チタンとケイ素とを含む複合酸化物は、強烈な酸化力を有しており、紫外線の照射で有機物の分解がおこり、繊維構造物やバインダー等の樹脂が分解着色を起こすことがあり、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などとともに共存させ、紫外線照射を行うと、有機物の分解による着色や臭気が発生する。
【0023】
本発明においては、アルキルシリケート系樹脂、シリコーン系樹脂およびフッ素系樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂を用いることにより、有機系樹脂特有の光触媒の酸化による分解、着色、臭気の発生を防止することができる。この組合せであれば、繊維と光触媒を含む樹脂との間に過酸化チタン等の無機物の中間層は不要となり、光触媒の洗濯耐久性、製品の風合い、コスト等が中間層のあるものに比べ飛躍的に改善される。
【0024】
本発明に用いられるアルキルシリケートは、主にSi−Oの結合部分と直鎖または分岐のある飽和炭化水素基から成り、その両端にOH基をもつことを特徴とするものである。すなわち下記に示される構造を含むものである。
【0025】
OH−(Si−O)−R−OH
式中、Rは、炭素数1〜10の直鎖または分岐のある飽和炭化水素基であり、nは1以上の整数を意味し、好ましくは無機性を高めるために1000〜10000の範囲である。
【0026】
かかる直鎖または分岐のある飽和炭化水素基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、イソブテンなどの直鎖または分岐のある飽和炭化水素基が用いられる。これらアルキルシリケートは1種、2種の混合物でもよい。これらの化合物は、熱の存在下で容易に脱水反応を起こして、ポリシロキサン被膜を形成する特徴がある。アルキルシリケートは、水溶性であり、繊維構造物をこれらの水溶液に含浸させた後、マングルロールで絞り、200℃以下で処理すると、繊維表面上に薄い被膜を形成するものである。
【0027】
かかるアルキルシリケートとチタンとケイ素とを含む複合酸化物を直接繊維構造物の表面上に付着させることも可能である。
【0028】
また、シリコーン系樹脂やフッ素系樹脂を混合させ、付着させてもよい。これらの樹脂は、上記したように、耐熱性、耐光性、耐薬品性に優れており、本発明の複合酸化物による酸化力に対しても、優れた耐久性を有する。
【0029】
ここでいうシリコーン樹脂としては、シリコーンレジンもしくはシリコーンワニスという分類に属する縮合架橋型樹脂を使用することができ、かかる樹脂は、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシランなどの縮合架橋型樹脂を、単独または数種の配合物を縮合して得ることができるものが含まれる。これらは、3次元構造の樹脂を形成し、シリコーン樹脂の中でも、最も耐熱性や耐薬品性に優れたものである。また、テトライソプロポキシシランやテトラエトキシシランをアルコール/水混合溶剤中で強酸により加水分解して得られる酸化ケイ素のゾルを乾燥したものも好ましく用いられ、ガラス質の被膜が得られる。このようなゾル/ゲル法で得られる構造物は無機質に近いもので、本発明にはより好ましい構造物である。
【0030】
また、フッ素系樹脂としては、中でも、ビニルエーテルおよび/またはビニルエステルと、フルオロオレフィン重合性化合物が、耐熱性、耐薬品性の点で非常に優れた特性を持っていて好ましく使用される。例えば、ポリフッ化ビニルやポリ四フッ化エチレン、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエステルやビニルエステル−フルオロオレフィンなどが分解、劣化が少ないので好ましく使用される。
【0031】
かかるシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂と、通常よく使用されるアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの有機樹脂との違いは、熱や薬品の作用で分解されやすい炭化水素基をほとんど含まず、シリコーン系樹脂は、Si−O結合、フッ素系樹脂は、F−C結合を主体に構成されており、末端基や側鎖に少量のメチル基やフェニル基が炭化水素として含まれる程度であるところにある。
【0032】
かかる樹脂またはこれを付与されて成る繊維構造物全体が吸水性を有することが好ましく、吸水性を付与する方法としては、親水性を有する水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、アミノ基(−NH)およびアミド基(−CONH)から選ばれた少なくとも1種をもつ吸水性シリコーン系樹脂や、エチレングリコールを多数付加した吸水性シリコーン系樹脂や、ポリエチレンオキサイド基含有化合物や、セルロース系化合物などの親水化加工剤を、バインダーに混合したり、該布帛全体に付与する手段を採用することができる。後者の親水化加工剤の中では、好ましくはポリアルキレングリコール−ポリエステルブロック共重合体を主成分とする親水性ポリエステル樹脂がよい。また、前者の吸水性シリコーン系樹脂は、それ単独をバインダーとして使用することができる。
【0033】
かかる親水化加工剤を吸水剤として用いることで、シリコーン系樹脂により例えば、セルロース系繊維含有布帛などの特有の吸水性が阻害されたのを回復することが可能となる。有機系吸水剤樹脂または親水化加工剤の使用に際しては、該本発明に適用する複合酸化物による酸化に起因する分解、着色、臭気が惹起しない範囲で使用するのが好ましい。
【0034】
次に、本発明に適用する樹脂にカップリング剤をさらに添加することにより、無機物と有機物の接着力を向上でき、好ましい。これにより繊維、樹脂、複合酸化物の相互間に化学的結合力が働き、洗濯耐久性の向上につながる。
【0035】
また、ゼオライトをさらに添加することは、臭い成分の吸着力の向上と構造物中の無機系成分比を増加させ、光触媒による分解を抑制する効果がある。また、ゼオライトに、金、白金、銀、パラジウム等の貴金属を0.01〜5重量%の範囲で担持したものも好ましく用いることもできる。これによりさらに抗菌効果が向上する。
【0036】
次に、本発明のワイピングクロスを構成する織物または編物(これらを総称して編織物という)である繊維構造物の製造方法の一例について説明する。
【0037】
アルキルシリケート系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂の少なくとも1種をバインダーとし、好ましくはこれにゼオライト微粒子を添加する。この場合、消臭性、抗菌性の向上のため上述した金などの貴金属を0.01〜5重量%担持させたものを添加することがより好ましい。好ましくはさらにカップリング剤を添加し、次いでチタンとケイ素の複合酸化物の水分散液を混合し、これを加工液とする。
【0038】
次いで、この加工液に繊維構造物を含浸させた後、マングルロールで絞り、ドライ−キュアの工程を経るか、あるいは、この加工液を適当な粘度に調整して、ナイフコーターやグラビアロールコーター、捺染などで塗布した後、200℃以下の温度で固定する。
【0039】
かくして従来になかった耐久性のある消臭性、抗菌性、防カビ性および防汚性を満足すると共に着臭防止効果に優れた機能性を有するワイピングクロスを提供することができるものである。
【0040】
本発明のワイピングクロスを構成するフィラメント糸条は、単繊維繊度が0.1〜3.0デシテックスのポリアミド系繊維と、単繊維繊度が0.01〜2.0デシテックスのポリエステル系繊維からなるフィラメント糸条を用いる。ポリアミド系繊維の単繊維繊度は好ましくは0.2〜2.0デシテックスであり、さらに好ましくは、0.3〜1.0デシテックスである。0.1デシテックスを下回る場合には、柔らかくなりすぎるため、手にまとわりついて拭く取り作業性が劣り、3.0デシテックスを上回る場合には単繊維繊度が大きくなりすぎるため、拭き取り性能が劣る。一方、ポリエステル系繊維の単繊維繊度は0.01〜2.0デシテックスであり、好ましくは0.05〜1.0デシテックスであり、より好ましくは0.1〜0.5デシテックスである。0.01デシテックスを下回る場合には、拭き取り/洗濯を繰り返したときに単糸切れが多発し、すぐに品位の劣り、2.0デシテックスを上回る場合には、ワイパーの硬さが硬くなるため、絞りきれない問題がある。
【0041】
上記の単繊維繊度を有するポリアミド系繊維とポリエステル系繊維は、例えば、剥離分割などの手段により細繊度化可能なポリアミド系樹脂成分とポリエステル系樹脂成分を有する複合繊維によるものが好ましい。この複合繊維の詳細については後述する。
【0042】
ポリアミド系繊維とポリエステル系繊維の断面形状は、特に限定されないが、できれば一個以上の鋭角な断面を有する方が撚糸後、編織物とし、ポリアミドとポリエステルを剥離分割などの手段により細繊度化した際に両素材間の空隙が多くなるため水含みや汚れをトラップしやすく、拭き取り性能も向上することになる。
【0043】
また、かかるポリアミド系繊維とポリエステル系繊維の該拭取り布帛に含有される割合は、それを作るときの複合繊維の複合比率によるが、ポリアミド系繊維成分が占める割合は、該複合繊維全体の好ましくは10〜90重量%であり、さらに好ましくは20〜80重量%、特に好ましくは30〜70重量%であり、残りがポリエステル系繊維成分である。かかるポリアミド系繊維成分が10重量%を下回る場合には、ポリエステル系繊維成分が多くなりすぎるため、全体として硬い風合いとなり、その結果として拭取り性能、作業性とも、十分な効果が得られない。一方、ポリアミド系繊維成分が90重量%を上回る場合には、ポリアミド系繊維成分が多くなりすぎるため、寸法安定性に欠け、腰のない、タラタラの風合いとなり、拭取り性能、作業性とも十分な効果が得られない。
【0044】
かかるポリアミド系繊維とポリエステル系繊維の配置は、該拭取り布帛の断面において、表裏面の外側層に該ポリエステル系繊維が多く存在している方が、拭取り性の上から好ましく、かかる形態は、前記複合繊維、好ましくは割繊型複合繊維で製編織された織編物を染色処理する段階の熱履歴によって、例えばポリアミド系繊維を軸に、ポリエステル系繊維がその周りを取り囲む形で形成されるものである。このように拭取り布帛の表面に、ポリエステル系繊維が、表面に分散して露出していることで拭取り性をより効果的に発揮させることが出来る。
【0045】
ポリアミドとポリエステルからなる複合繊維を含む総繊度は布帛の嵩高性、風合いおよび拭取性の点から30〜400デシテックスであり、好ましくは70〜350デシテックスさらに、布帛の嵩高性、風合いおよび拭取性を特に良くするためには100〜300デシテックスであることが好ましい。本発明ではさらに布帛表面に適度に繊維を分散させるために、これに400〜800回/mの撚りをかけることが好ましい。総繊度が小さくなりすぎると、布帛の嵩高性が小さくなり、吸水量が十分得られない。また、総繊度が大きくなりすぎると、布帛が硬くなり作業性が悪くなる。
【0046】
本発明の拭取布帛においては、総繊度の異なる2種類以上のフィラメント糸条を高編織することができる。例えば、タテ糸に110デシテックスのフィラメント糸条を、またヨコ糸に297デシテックスのフィラメント糸条を用いて、交織することができる。
【0047】
加えて本発明のフィラメント糸条では、撚数が400回/mよりも少なくなると、マルチフィラメント糸条がまっすぐに並んで布帛を縦横に分断するため、布帛表面の拭取面積が小さくなり、また、拭き跡が残り易い。一方、撚り数が800回/mより多くなると、マルチフィラメント糸条がその撚りによって拘束され、単糸同志がばらけることなく一塊りになるため、拭取性が悪くなる。撚り数が本発明のように400〜800回/mであれば、撚りトルクによってマルチフィラメント糸条に捻れを生じ、さらに単糸同志がばらけて別々の挙動を示し、隣り合う糸と糸の隙間を埋めるように分散するので、拭取面積が大きくなる。また、布帛表面が吸盤のように拭取面に吸い付くので、わずかな隙間に入った汚れも掻き出すことができる。より好ましい撚り数は500〜700回/mである。
【0048】
本発明において、ポリエステル繊維は編織物の表面に現れていることが好ましく、表面に分散して露出していることで拭取性をより効果的にできる。
【0049】
本発明において、布帛の形態は編物、織物どちらでももよいが、一般に寸法安定性が良いとされる織物がより好ましい。
【0050】
織物組織は拭取作業性や嵩高性を確保するために、厚さ方向にふくらみを有する組織、たとえば二重織り組織が好ましい。ここでいう二重織り組織とは、表組織と裏組織を部分的に表糸と裏糸が交錯してなる織物であって、その交錯点の数は10〜40コ/cm であることが好ましい。交錯点が40コ/cm より多いと表組織と裏組織の間に隙間がなくなる、必要なふくらみが得られないだけでなく、板状の硬い織物となって、拭取性、拭取作業性、絞り性および保水性を考慮すれば、交錯点は20〜30コ/cm であることがより好ましい。
【0051】
また、本発明において布帛の嵩高性を確保するための組織としては、上記二重織りに限らず、パイル織物や蜂巣織物などであっても、なんら問題はない。
【0052】
また、本発明の編織物は、拭取性能に関わる特性として、吸水速度が0.3〜1秒の範囲、保水量が200〜400重量%の範囲であることが好ましい。
【0053】
吸水が1秒を上回る場合、使用初期段階において、濡れ性が不足し、ワイパーとしての機能が不足する。また、保水量が200重量%以下である場合には濡れた部分を拭いた際に水分を保持する量が少ないため、結果として、汚れを十分に拭くことができない。
【0054】
次に、本発明の拭取布帛の製造方法の一例について述べる。
まず、複合繊維として、海島型、剥離分割型および特殊ブレンド型などの後で分割可能な複合繊維からなるマルチフィラメント糸を用意し、両者を引き揃え、必要に応じて糸長差を付与して複合糸条形態とする。複合糸条とする手段としては引き揃え、撚糸および交絡などの手段を用いることができる。得られた複合糸条は加撚され、編織物用糸条となる。
【0055】
次に、この複合糸条を用いて製編織し、得られた編織物に分割処理を施して細繊度化した編織物とする。細繊度化処理としては、化学的剥離、物理的剥離、一成分の溶解除去等の手段がある。例えば、剥離型複合繊維を用いた場合は、化学薬品中に浸漬しながら揉むことによって、海島型複合繊維を用いた場合には、海成分を溶解除去することによって細繊度化できる。
【0056】
次いで、細繊度化された編織物は染色/乾燥後、繊維上表面にチタンとケイ素を含む複合酸化物と、アルキルシリケート系樹脂、シリコーン系樹脂およびフッ素系樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂を熱固定する。
【0057】
本発明の拭取布帛は、一般家庭や病院などの窓ガラス、鏡、などのガラス、洗面所や台所のシンク周り、風呂の浴槽、テーブルなど乾湿の両方のあらゆる素材に使用でるが特にシンク周りや風呂まわりなど濡れた部分の拭き上げに好適に使用することができ、さらには例えば台所周りで使用したあと簡単な手絞り洗浄後、乾かすことなく濡れたまま放置しても悪臭の発生しないワイピングクロスである。
【0058】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
(加工液の調合例)
アルキルシリケート系樹脂(濃度20%)
共栄社化学(株)製
“CLG−520” 0.5重量%
シリコーン系樹脂(濃度45%)
東レダウコーニングシリコーン(株)製
“BY22−826” 2.0重量%
シランカップリング剤(濃度100%)
東芝シリコーン(株)製
“TSL−8350” 0.2重量%
貴金属担持型ゼオライト(濃度20%)
(株)シナネンゼオミック製
“ゼオミックWAW10NS” 0.2重量%
チタンとケイ素の複合酸化物(濃度20%)
大京化学(株)製
“TR−T2” 0.8重量%
(洗濯)
自動反転渦巻き式電気洗濯機VH−3410(東芝(株)製)を用い、市販洗剤0.2%、温度40±2℃、浴比1:50で5分間強反転で洗濯し、その後、排水、オーバーフローさせながらすすぎを2分間行う操作を2回繰り返しこれを洗濯1回とした。
(検知管法による消臭性評価)
試料を10g入れた500mlの容器に初期濃度が200ppmになるようにアンモニアガスをいれて密閉し、1時間放置後、ガス検知管で残留アンモニア濃度を測定した。そして下記の式に従い消臭率(%)として算出した。
【0059】
消臭率(%)=〔1−(ガス検知管測定濃度)/(初期濃度)〕×100
同様な方法でアセトアルデヒド200ppm、1時間後、メチルメルカプタン60ppm、3時間後の残留ガス濃度を測定し、各気体の消臭率を算出した。測定はN=3で行い、平均値を出した。
【0060】
アンモニア臭をA臭、アセトアルデヒド臭をB臭、メチルメルカプタン臭をC臭とし、数値が大きい方が消臭効果が大きいことを示す。
(タバコ臭に対する消臭性の臭覚評価)
500mlのガラス製三角フラスコを入り口を下にして、入り口の直下に発煙している紙巻きタバコを5秒間置いた後、すばやく三角フラスコを横にして試料3gを投入し、ガラス栓で密閉した。1時間放置後、ガラス栓を開け、10人の人に残臭を嗅いで官能評価した。その時の臭気を下記評価点数で評価し、平均値を出した。
【0061】
5:強烈な臭い
4:強い臭い
3:楽に感知できる
2:何の臭いかわかる弱い臭い
1:やっと感知できる臭い
0:無臭
(イソ吉草酸臭による着臭防止性の臭覚評価)
0.01%のイソ吉草酸水溶液をマイクロシリンジにて5μl秤量し、これを10cm×10cmの大きさに切り取った布帛中央部に5点滴下した。滴下の方法は布帛中央部に1点、続いて中央部の1点を取り囲むようにちょうどサイコロの五の目を成すがごとく4点滴下した。この布帛を蛍光灯下に3時間放置後、10人の人に布帛の臭いを嗅いで官能評価した。その時の臭気を下記評価点数で評価し、平均値を出した。
【0062】
5:強烈な臭い
4:強い臭い
3:楽に感知できる
2:何の臭いかわかる弱い臭い
1:やっと感知できる臭い
0:無臭
(抗菌評価方法)
評価方法は、統一試験法を採用し、試験菌体は黄色ブドウ状球菌臨床分離株を用いた。試験方法は、滅菌試験布に上記試験菌を注加し、18時間培養後の生菌数を計測し、殖菌数に対する菌数を求め、次の基準にしたがった。
【0063】
log(B/A)>1.5の条件下、log(B/C)を菌数増減値差とし、2.2以上を合格とした。
【0064】
ただし、Aは無加工品の接種直後分散回収した菌数、Bは無加工品の18時間培養後分散回収した菌数、Cは加工品の18時間培養後分散回収した菌数を表す。評価はN=3で行い、平均値を出した。
(吸水速度)
JIS L−1096 の規定に基づいて吸水時間を測定した。数値が小さいほど、吸水性が良好なことを示す。測定はN=3で行い、平均値を出した。
(防汚性評価方法)
手順1:ポリエチレン袋(20リットル)に100℃×2時間乾燥させた表1に示す組成の汚染物0.2gとタテ10cm、ヨコ16cmのサンプルとICIピリング用ゴム管を1本入れる。20℃×65%RHの空気で袋を膨らませ(約10リットルにする)輪ゴムで止める。
手順2:手順1のポリエチレン袋をICI試験器の箱の中にいれ、1時間回転させる。その後サンプルを取り出す。
手順3:処理サンプルを標準洗濯条件で1回洗濯する。手順1〜3をさらに2回繰り返す。
手順4:上記のとおり汚染剤付着・洗濯を3回繰り返したサンプルと未処理のサンプルのL値を測色計で測定し、その差である△L値を計算する。測定はN=3で行い、平均値を出した。
(保水性の評価方法)
手順1:試料の重量をはかる。
手順2:2分間水に浸漬する。
手順3:引き上げて1分間ドリップ後、重量をはかる。
手順4:以下の計算式で重量%を計算する。
【0065】
保水量(%)=100×(ドリップ後の試料重量−濡らす前の試料重量)/濡らす前の試料重量
測定はN=3で行い、平均値を出した。
(乾いた試料の拭取性評価方法)
シリコーンオイルSH200(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)を注射針で約5mgガラス板上に落とし、径45mm、重さ1kgの円柱状おもりの一端面に厚さ約1mm相当の織物(クッション材)を介して輪ゴムにより固定したワイピングクロス試料をガラス板上に乗せて1m/分の速度で移動させ、シリコーンオイルを拭き取る。次に乾式複写機用トナーをガラス板上に振りかけ、そのトナーを庄縮空気で吹き飛ばす。次にガラス板表面にセロテープ(登録商標)(積水化学工業(株)製)を粘り着けて、ガラス板上の残留トナーを剥ぎ取り、セロテープ(登録商標)(積水化学工業(株)製)に付着したトナーの程度を白紙上で肉眼観察により判定する。
トナーがほとんど観察されないものを5級、トナーがきわめて多量に観察されるものを1級として5段階で評価した。
【0066】
評価はN=3で行い、平均値を出した。
【0067】
実施例1
細繊度化可能な複合繊維として、0.83dの八葉星芒形ポリアミド1個と、それを取り巻く0.264デシテックスの三角型ポリエステル8個からなる単繊維断面を有する、55デシテックス、18フィラメントのマルチフィラメント糸条を、4本引き揃えて、500回/m合撚し、レピア織機で、タテ密度83本/in、ヨコ密度63本/inの平二重織物を製織して生機とした。
【0068】
この生機を、水酸化ナトリウムの水溶液で処理して、ポリアミドとポリエステルとを剥離分割した。得られた織物を構成するフィラメント糸条の総繊度は213.4デシテックスであり、ポリアミドの単繊維繊度は0.913デシテックスであり、ポリエステルの単繊維繊度は0.253デシテックスであり、ポリアミドが占める割合は全体の約34%であった。
【0069】
次に、該繊維布帛を上記調合液に浸し、マングルロールでピックアップ80重量%で絞り、120℃で2分乾燥した後、180℃で1分間熱処理し、繊維表面に光触媒を含む構造物を得た。この複合酸化物の平均一次粒子径は8μm(島津製作所製レーザー回析式 粘度分布計 SALD−2000Jにて測定)であった。
【0070】
この繊維布帛について、消臭性、抗菌性、防汚性、吸水性などの評価を行った。
【0071】
得られた織物は、しなやかで寸法安定性に優れ、拭取性能および拭取作業性が良く、3種の臭気において消臭率が85%以上、洗濯前後のタバコ消臭性2.4以下、着臭防止性が1.0以下、抗菌性が5.8、防汚性が9.2と消臭、着臭防止、抗菌、防汚性に優れた耐久性性能を発揮するものであった。結果を表1に示す。
【0072】
実施例2
細繊度化可能な複合繊維として、0.913デシテックスの八葉星芒形ポリアミド1個と、それを取り巻く0.264デシテックスの三角型ポリエステル8個からなる単繊維断面を有する、55デシテックス、18フィラメントのマルチフィラメント糸条を、4本引き揃えて、600回/m合撚し、レピア織機で、タテ密度65本/in、ヨコ密度44本/inの平二重織物を製織して生機とした。
【0073】
この生機を、水酸化ナトリウムの水溶液で処理し、ポリアミドとポリエステルとを剥離分割した。得られた織物を構成するフィラメント糸条の総繊度は213.4デシテックスであり、ポリアミドの単繊維繊度は0.913デシテックスであり、ポリエステルの単繊維繊度は0.253デシテックスであり、ポリアミドが占める割合は全体の約34%であった。
【0074】
該繊維布帛を上記調合液に浸し、マングルロールでピックアップ80重量%で絞り、120℃で2分乾燥した後、180℃で1分間熱処理し、繊維表面に光触媒を含む構造物を得た。この複合酸化物の平均一次粒子径は8μm(島津製作所製レーザー回析式 粘度分布計 SALD−2000Jにて測定)であった。
【0075】
この繊維布帛について、消臭性、抗菌性、防汚性、吸水性などの評価を行った。 得られた織物は、しなやかで寸法安定性に優れ、拭取性能および拭取作業性が良く、3種臭気において、消臭率が86%以上、タバコ消臭性2.0以下、着臭防止性が1.1以下、抗菌性が5.0以上、防汚性が9.2と消臭、着臭防止、抗菌、防汚性に優れた耐久性性能を発揮するものであった。結果を表1に示す。
【0076】
比較例1
細繊度化可能な複合繊維として、0.913デシテックスの八葉星芒形ポリアミド1個と、それを取り巻く0.264デシテックスの三角型ポリエステル8個からなる単繊維断面を有する、55デシテックス、18フィラメントのマルチフィラメント糸条を、4本引き揃えて、50回/m合撚し、レピア織機で、タテ密度65本/in、ヨコ密度44本/inの平二重織物を製織して生機とした。
【0077】
この生機を、水酸化ナトリウムの水溶液で処理し、ポリアミドとポリエステルとを剥離分割した。得られた織物を構成するフィラメント糸条の総繊度は213.4デシテックスであり、ポリアミドの単繊維繊度は0.913デシテックスであり、ポリエステルの単繊維繊度は0.253デシテックスであり、ポリアミドが占める割合は全体の約34%であった。
【0078】
得られた布帛は、二重織物にもにもかかわらず、ふくらみがなく、薄い扁平な布帛となり、吸水量も少なく、拭取対象物に対して滑りが悪く、拭取性、拭取作業性、取り扱い性など拭取布帛としての性能に欠けるものであった。
【0079】
得られた織物をそのまま評価した結果、3種の臭気の消臭率が64%以下、洗濯前後のタバコ消臭性4.4以上、着臭防止性が4.7以上、抗菌性が1.3以下、防汚性が21.5と消臭、着臭防止、抗菌、防汚性の劣るものであった。
【0080】
比較例2
細繊度化可能な複合繊維として、0.83dの八葉星芒形ポリアミド1個と、それを取り巻く0.264デシテックスの三角型ポリエステル8個からなる単繊維断面を有する、55デシテックス、18フィラメントのマルチフィラメント糸条を、4本引き揃えて、1000回/m合撚し、レピア織機で、タテ密度83本/in、ヨコ密度64本/inの平二重織物を製織して生機とした。
【0081】
この生機を、水酸化ナトリウムの水溶液で処理し、ポリアミドとポリエステルとを剥離分割した。得られた織物を構成するフィラメント糸条の総繊度は213.4デシテックスであり、ポリアミドの単繊維繊度は0.913デシテックスであり、ポリエステルの単繊維繊度は0.253デシテックスであり、ポリアミドが占める割合は全体の約34%であった。
【0082】
得られた布帛は、拭取対象物に対して滑りは良いものの、ふくらみがなく、拭取跡の残るものであった。得られた織物をそのまま評価した結果、3種の消臭率が63%以下、洗濯前後のタバコ消臭性4.3以上、着臭防止性が4.6以上、抗菌性が1.4以下、防汚性が21.1と消臭、着臭防止、抗菌、防汚性の劣るものであった。結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
Figure 2004283514
【0084】
【発明の効果】
本発明によれば、ワイピング特性に優れているとともに、吸水性、保水性、手触りならびに風合に優れ、かつワイピング面の毛羽脱落のないワイピングクロスを提供する。また、拭取面に拭き跡や水滴を残すことなく拭き取ることができる優れた拭取性、拭取作業性を有し、さらに工業洗濯耐久性に優れた耐久性のある消臭性、着臭防止性、抗菌性、防汚性を有する拭取布帛を安定して提供することができ、一般家庭や病院などのガラス、金属、プラスチック、および家具や洗面所のシンク周り、風呂の浴槽、テーブルなどあらゆる素材、特にそれらの濡れた部分にも、好適に使用され、かつ、優れた拭取り性を示すものを提供することができる。

Claims (11)

  1. 単繊維繊度が0.1〜3.0デシテックスのポリアミド系繊維と、単繊維繊度が0.01〜2.0デシテックスのポリエステルフィラメント系繊維を含む総繊度が30〜400デシテックス、撚り数が400〜800回/mのフィラメント糸条で構成された編織物からなり、かつ該編織物上表面にチタンとケイ素を含む複合酸化物と、アルキルシリケート系樹脂、シリコーン系樹脂およびフッ素系樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂とを有することを特徴とするワイピングクロス。
  2. 前記ポリアミド系繊維が、フィラメント糸条全体の10〜90重量%を占めることを特徴とする請求項1に記載のワイピングクロス。
  3. 前記編織物の吸水速度が1秒以下であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のワイピングクロス。
  4. 前記編織物の保水性が200重量%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のワイピングクロス。
  5. 前記編織物上に、さらにゼオライトを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のワイピングクロス。
  6. 前記編織物上に、さらにカップリング剤を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のワイピングクロス。
  7. 前記編織物上に、さらに吸水剤を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のワイピングクロス。
  8. 前記複合酸化物が、100〜300m/gの比表面積を有する微粒子であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のワイピングクロス。
  9. 前記複合酸化物が、平均一次粒子径が1〜20nmの範囲にある微粒子であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のワイピングクロス。
  10. 前記複合酸化物の重量割合が、ワイピングクロスに対して0.05〜30重量%であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のワイピングクロス。
  11. 細繊度化処理後の単繊維繊度が0.1〜3.0デシテックスのポリアミド系成分と細繊度化処理後の単繊維繊度が0.01〜2.0デシテックスのポリエステル系成分からなる複合繊維に撚り数400〜800回/mの撚りをかけて得られるフィラメント糸条を用いて編織物を形成した後、該編織物に細繊度化処理を施して前記複合繊維をポリアミド系成分とポリエステル系成分とに細繊度化し、次いで該編織物上表面にチタンとケイ素を含む複合酸化物と、アルキルシリケート系樹脂、シリコーン系樹脂およびフッ素系樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂とを熱固着することを特徴とするワイピングクロスの製造方法。
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