JP2004356264A - 受動部品内蔵基板及びそれを用いた高周波回路モジュール - Google Patents
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Abstract
【課題】実用的な値を持つ受動部品の内蔵が可能で、かつ薄型化及び小型化が可能な受動部品内蔵基板及びそれを用いた高周波回路モジュールを提供すること。
【解決手段】複数の誘電体層20〜22,30及び31を積層してなる多層基板を具備し、多層基板の表面を有する誘電体層20に接する誘電体層30の誘電率は誘電体層20よりも高く、かつ、厚さは誘電体層20よりも薄く、誘電体層20と誘電体層30の間に容量極板61bが配置され、誘電体層30の容量極板61bが配置されている面とは反対側の面に接地導体72aが配置される。容量極板61bと接地導体72aと誘電体層20とで容量性部品が形成され、容量極板61bは、貫通孔50hを介して多層基板表面の導体パターン40bに接続される。
【選択図】 図3
【解決手段】複数の誘電体層20〜22,30及び31を積層してなる多層基板を具備し、多層基板の表面を有する誘電体層20に接する誘電体層30の誘電率は誘電体層20よりも高く、かつ、厚さは誘電体層20よりも薄く、誘電体層20と誘電体層30の間に容量極板61bが配置され、誘電体層30の容量極板61bが配置されている面とは反対側の面に接地導体72aが配置される。容量極板61bと接地導体72aと誘電体層20とで容量性部品が形成され、容量極板61bは、貫通孔50hを介して多層基板表面の導体パターン40bに接続される。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動体通信端末で使用される多層基板及びそれを用いた高周波回路モジュールに関し、特に受動部品を基板に内蔵して多層基板を小型化、薄型化する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話等の移動体通信端末の小型化、薄型化に伴い、該端末に搭載される高周波回路モジュール及び高周波回路基板の小型化及び薄型化に対する要求が強くなってきている。しかし、例えば高周波用電力増幅器モジュールについては、小型化の要求があるものの、モジュール基板の表面に実装する受動部品(チップ容量、チップインダクタ)の小型化は停滞しており、そのような受動部品を多数表面に実装するモジュール基板の小型化が律速されている。そのため、モジュール基板表面に実装する受動部品の一部をモジュール基板或いは半導体素子に内蔵することにより、モジュールを小型化することが必須となっている。
【0003】
そのような要求に応えるべく能動部品や受動部品を内蔵した基板の一例が特許文献1に開示されている。この例では、配線パターンを表面に形成した2枚の電気絶縁層でコア層を挟み、同コア層に配線パターンを形成すると共にその一部の上に能動部品や受動部品を実装することによって、能動部品や受動部品が内蔵される。なお、コア層は、無機質フィラーと熱硬化性樹脂の複合されたコンポジット材料による電気絶縁層からなる。また、上面の配線パターンとコア層の配線パターンがインナービアによって接続される。
【0004】
他の一例が特許文献2に開示されている。この例では、複数の絶縁体層の間にコンデンサ構成層が配置される。各層の間並びに上面及び下面に導体パターンによる電極部が備えられ、各層間の電極部の相互接続がビアホールによって行なわれる。特にコンデンサ構成層において、互いに対向するコンデンサ電極の間の領域のみが誘電体層により形成される。誘電体層の形成は、絶縁体よりなるコンデンサ構成層の該当部分にパンチにより孔を空け、その中に誘電体層を挿入することによって行なわれる。このようにして、コンデンサ内蔵多層基板が構成される。
【0005】
更に他の一例が、特許文献3に開示されている。この例では、2層の誘電体層の外側の両面に接地導体が設けられ、2層の誘電体層の中央より接地導体に近い位置に、容量導体が設けられる。接地導体と容量導体の間には、上記誘電体層の一部、即ち厚さが薄い誘電体層が介在する。この構造により、厚さが薄い誘電体層を挟んで容量導体が接地導体と対向し、誘電体層の中にコンデンサが内蔵される。また、同特許文献3には、その他に、容量ランド(容量導体)を2枚の基板の中央に設け、容量ランドとは反対側の基板の面に接地導体を設ける例が記載されている。基板を介して2枚の接地導体が容量ランドを挟む構造となる。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−261449号公報(第9頁、図1)
【特許文献2】
特開平6−69663号公報(第3頁、図1)
【特許文献3】
特開平7−193401号公報(第2頁〜第3頁、図1及び図5)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1によって開示された技術では、チップ部品を基板内層に埋没させるため、基板の厚さがチップ部品の厚さに律速され、基板の薄型化が困難である。
【0008】
また、特許文献2によって開示された技術では、コンデンサ誘電体層即ち容量膜が基板内部に配置されるので、特許文献1に開示された技術に比べて多層基板の薄型化は容易となる。しかし、容量膜が基板の一部分に配置されるため、基板の各部分での密度、熱膨張率が不均一となり、基板の反りが生じやすい。更に、容量膜が基板内層に部分的に形成されるため、容量膜厚が一容量内においてばらつきを生じ易く、容量値のばらつきが大きくなることが避けられない。また更に、コンデンサ構成層は、厚さを薄くすることに限度があり、そのため内蔵容量値或いは容量密度を実用レベル(20pF/mm2程度)まで大きくすることが困難である。
【0009】
また、特許文献3によって開示された技術では、均一な誘電体層を容量膜として用いているため、特許文献2に開示された技術において懸念される基板の反りは低減される。しかしながら、多層基板の上面にコンデンサが占有する面を置くことになるので、小型化の効果が低く、また、高い誘電率を持たない基板である誘電体層の一部が容量膜となるので、内蔵容量値或いは容量密度を実用レベルまで大きくすることができない。更に、基板内蔵容量のトリミングは不可能であり、量産化が困難であった。
【0010】
本発明の主たる目的は、実用的な値を持つ受動部品の内蔵が可能で、かつ薄型化及び小型化が可能な受動部品内蔵基板及びそれを用いた高周波回路モジュールを提供することにある。
【0011】
本発明の付帯的な目的は、量産化の容易な受動部品内蔵基板及びそれを用いた高周波回路モジュールを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記主たる目的を達成するために、本発明の受動部品内蔵基板は、複数の誘電体層を積層してなる多層基板を具備し、複数の誘電体層の内の第1の誘電体層は多層基板の表面を有し、第1の誘電体層に接する第2の誘電体層の誘電率は第1の誘電体層よりも高く、かつ厚さは第1の誘電体層よりも薄く、第1の誘電体層と第2の誘電体層の間に第1の容量極板が配置され、第2の誘電体層の、第1の容量極板が配置されている面とは反対側の面に接地導体が配置され、第1の容量極板と接地導体と第2の誘電体層とで容量性部品が形成されていることを特徴とする。
【0013】
誘電率が高くかつ厚さが薄い第2の誘電体層が容量膜になるので、実用的な値を持つコンデンサの実現が可能になると共に、受動部品内蔵基板の薄型化が可能になる。また、容量極板は、基板となる第1の誘電体層により多層基板の表面と隔てられるので、表面にコンデンサが占有する面を設けることは無く、その表面部分に例えば導体パターンを配置しても差し支えなく、表面の有効利用面積は削減されない。即ち、受動部品内蔵基板を小型化が可能になる。
【0014】
上記付帯的な目的を達成するために、本発明の受動部品内蔵基板は、更に、上記多層基板の表面に第2の導体パターンが配置され、第1の容量極板と第2の導体パターンの間に第1の容量極板と第2の導体パターンを電気的に接続するための第2の貫通孔を備え、加えて、多層基板の表面に第3の導体パターンが配置され、第2の導体パターンと第3の導体パターンとがボンディングワイヤを介して接続されていることを特徴とする。
【0015】
ボンディングワイヤのボンディング工程は簡単であり、また、ボンディングワイヤの設置位置を比較的に自由に選ぶことができるので、受動部品内蔵基板の量産化が容易となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る受動部品内蔵基板及びそれを用いた高周波回路モジュールを図面に示した幾つかの発明の実施の形態を参照して更に詳細に説明する。なお、発明の実施の形態を説明するための全図において、同一或いは類似の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明を省略する。
【0017】
本発明は、高周波回路一般や移動体通信端末等に適用可能であるが、以下の発明の実施の形態1〜7では説明の便宜上、移動体通信端末に用いられる一段増幅構成の高周波電力増幅器モジュールを例に、本発明の実施形態の構造、動作、効果及び製造方法を説明する。
【0018】
(発明の実施の形態1)
図1は、高周波電力増幅器モジュールの各導体層を、多層の各誘電体層の図示を省略して示した斜視層構成図であり、図2は、図1におけるA−A線に沿って切断したモジュールを各誘電体層を含めて示した断面図であり、図3は、図1におけるB−B線に沿って切断したモジュールを各誘電体層を含めて示した断面図であり、図4は、モジュールに搭載した高周波電力増幅器の回路図である。
【0019】
図1において、1は高周波電力増幅器モジュール、10は表面導体層、11〜13は内層導体層、15は裏面導体層である。続いて、40a〜40eは表面導体層10に形成された表層導体パターン、43a及び43bは内層導体層13に形成された内層導体パターン、50a〜50hは貫通孔、61a及び61bは内層導体層11に形成された基板内蔵容量極板、72aは内層導体層12に形成された接地導体、75は裏面導体層15に形成された接地導体、100は表面導体層10に実装された半導体素子、110a〜110eは同じく表面導体層10に実装された受動部品、120a〜120dはボンディングワイヤである。更に、45a〜45dは、裏面導体層15に形成されたそれぞれ電力入力端子、電力出力端子、利得制御電源端子及び駆動電源端子である。
【0020】
図2及び図3において、20,21及び22は誘電体層であり、30及び31は高誘電率誘電体層である。高誘電率誘電体層30を挟んだ基板内蔵容量極板61a,61bと接地導体72aとの間に基板内蔵容量が形成され、受動部品内蔵基板が構成される。後で詳述する図4において、130a及び130bがそれぞれ容量極板61a,61bによる基板内蔵容量である。
【0021】
先ず、本実施形態の高周波電力増幅器モジュールの構造を説明する。基板表面ソルダーレジスト(図示せず)、表面導体層10、誘電体層20、内層導体層11、高誘電率誘電体層30、内層導体層12、誘電体層21、内層導体層13、高誘電率誘電体層31、誘電体層22、裏面導体層15及び基板裏面ソルダーレジスト(図示せず)が上下に積層され、多層基板が形成される。
【0022】
表面導体層10上に半導体素子100が銀ペーストなどの熱伝導性の良い導電性ペーストを用いて実装され、半導体素子100表面に形成された電極部(図示せず)と表面導体層10に形成された各表面導体パターン40a,40b及び40cとがボンディングワイヤ120a,120b及び120cを介して接続され、表面導体層10に形成された表面導体パターン40bと表面導体パターン40eとがボンディングワイヤ120dを介して接続され、表面導体層10上に複数の受動部品110が半田などの導電性ペーストを用いて実装される。
【0023】
そして、表面導体層10を樹脂封止(図示せず)で封止することにより、高周波電力増幅器モジュール1が完成する。封止は、その他に樹脂キャップ或いは金属キャップを用いて行なうことも可能である。
【0024】
裏面導体層15に形成された電力入力端子45aは、貫通孔50aを介して内層導体層13に形成された内層導体パターン43aに接続され、内層導体パターン43aは、貫通孔50b及び表面導体層10上に実装された受動部品110aを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40aに接続され、表面導体パターン40aは、ボンディングワイヤ120aを介して半導体素子100表面に形成された電力入力電極部(図示せず)に接続される。
【0025】
半導体素子100表面に形成された電力出力電極部(図示せず)は、ボンディングワイヤ120bを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40bに接続され、表面導体パターン40bは、表面導体層10に実装された受動部品110b及び貫通孔50cを介して裏面導体層15に形成された出力電極端子45bに接続される。
【0026】
裏面導体層15に形成された利得制御電源端子45cは、貫通孔50dを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40cに接続され、表面導体パターン40cは、ボンディングワイヤ120cを介して半導体素子100表面に形成された利得制御電源電極部(図示せず)に接続される。
【0027】
更に、裏面導体層15に形成された駆動電源端子45dは、貫通孔50eを介して内層導体層13に形成された内層導体パターン43bに接続され、内層導体パターン43bは、貫通孔50fを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40dに接続され、表面導体パターン40dは、表面導体層10上に実装された受動部品110cを介して表面導体パターン40bに接続される。
【0028】
半導体素子100を実装するために表面導体層10に形成された表面導体パターン(符号なし)は、複数の貫通孔(符号なし)を介して裏面導体層15に形成された接地導体75に熱的及び電気的に接続される。
【0029】
内層導体層11に形成された基板内蔵容量極板61aと、内層導体層12に形成された接地導体72aと、基板内蔵容量極板61a及び接地導体72aの間に配置された高誘電率誘電体層30とにより基板内蔵容量130aが形成される。基板内蔵容量極板61aは、貫通孔50gを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40eに接続され、表面導体パターン40eは、ボンディングワイヤ120dを介して表面導体パターン40bに接続され、シャント容量を形成する。
【0030】
同様に、内層導体層11に形成された基板内蔵容量極板61bと、内層導体層12に形成された接地導体72aと、基板内蔵容量極板61b及び接地導体72aとの間に配置された高誘電率誘電体層30とにより基板内蔵容量130bが形成される。基板内蔵容量極板61bは、貫通孔50hを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40bに接続され、シャント容量を形成する。
【0031】
一般に、接地導体72aは、内層導体層12の形成可能な領域に形成され、表面導体層10に形成された表面導体パターン40a及び40bの基準接地電位面となり、従って、表面導体パターン40a及び40bはマイクロストリップ線路となる。
【0032】
本実施形態の高周波電力増幅器モジュールにおいて、誘電体層20,21及び22は、比誘電率が約4.0のガラスエポキシ、エポキシ、アラミド不織布などの樹脂を主成分として構成される。誘電体層20及び22は、厚さが150μmであり、誘電体層21は厚さが200μmである。この誘電体層20及び22の厚さは、表面導体層10に形成される表面導体パターン40a及び40bの幅を導体損失が小さい0.3mmとした場合に表面導体パターン40a及び40bの特性インピーダンスが50Ω以上になる誘電体厚と、貫通孔50の接続信頼性が確保できる誘電体厚のトレードオフにより決定される。また、誘電体層21の厚さは、多層基板製造の容易性を考慮して決定される。
【0033】
また、高誘電率誘電体層30及び31は、セラミックなどの高誘電率無機材料粉末をエポキシなどの樹脂と混合した、比誘電率が約45のコンポジット材から構成される。高誘電率誘電体層30及び31の厚さは実用的な容量密度を考慮して20μmと、基板となる誘電体層20〜22の厚さよりも大幅に薄くしていることを特徴とする。この場合、基板内蔵容量の容量密度は約20pF/mm2となる。
【0034】
なお、誘電体層20,21及び22の比誘電率は約4.0としたが、用途に応じて4.0以上或いは4.0以下であっても構わない。更に、誘電体層20、21及び22、高誘電率誘電体層30及び31はともに樹脂を主成分とする材料からなる構成としたが、セラミックを主成分とする材料であっても構わない。
【0035】
また、誘電体層20及び22の厚さは150μmとしたが、用途に応じて150μm以上或いは150μm以下であっても構わない。同様に誘電体層21の厚さも、200μm以上或いは200μm以下であっても構わない。
【0036】
更に、説明の簡便上、誘電体層を5層、導体層を5層としたが、この層数以外の任意の層数であっても構わない。
【0037】
次に、本実施形態の高周波電力増幅器モジュールの動作を図4を参照して説明する。図4において、101は半導体素子100を構成するトランジスタであり、102a及び102bは半導体素子100に形成された受動部品である。トランジスタ101としてバイポーラトランジスタが用いられる。
【0038】
電力入力端子45aより入力された高周波信号は、内層導体パターン43a、受動部品110a、表面導体パターン40a及び受動部品102aを介して半導体素子100に形成されたトランジスタ101のベースに伝送され、トランジスタ101において増幅され、表面導体パターン40b及び受動部品110bを介して電力出力端子45bより出力される。
【0039】
トランジスタ101の利得制御電圧或いは利得制御電流は、利得制御電源端子45cに印加され、表面導体パターン40c及び受動部品102bを介してトランジスタ101のベースに印加される。トランジスタ101の駆動電圧或いは駆動電流は、駆動電源端子45dに印加され、内層導体パターン43b、表面導体パターン40d、受動部品110c及び表面導体パターン40bを介してトランジスタ101のコレクタに印加される。トランジスタ101のエミッタは接地される。
【0040】
トランジスタ101のベースと電力入力端子45aとの間は、直列の受動部品110a及び102a、導体パターン43a及び40a、シャント受動部品(符号なし)などにより、インピーダンス整合が実現される。同様に、トランジスタ101のコレクタと電力出力端子45bとの間は、直列の受動部品110b、導体パターン40b、及びシャント受動部品120d,130a及び130bなどにより、インピーダンス整合が実現され、高周波電力増幅器モジュールとして機能する。
【0041】
なお、説明の簡便上、利得制御電源端子45cとトランジスタ101のベースとの間には導体パターン40c及び受動部品102bのみを直列に接続したが、利得制御回路などを構成する能動素子を直列に挿入しても構わない。また、トランジスタ101のエミッタを接地した回路方式としたが、ベース接地或いはエミッタフォロアなどの回路方式であっても構わない。
【0042】
更に、トランジスタ101のバイポーラトランジスタは、小型化、高性能化の観点から、GaAs,InP或いはSiGeなどの化合物半導体から構成されるHBT(Heterojunction Bipolar Transistor)が望ましいが、HEMT(High Electron Mobility Transistor)或いはMOSFET(Metal Oxide Silicon Field Effect Transistor)などの電界効果トランジスタであっても構わない。
【0043】
次に、本実施形態の高周波電力増幅器モジュールの基板内蔵容量に関する効果を説明する。便宜的に、高周波電力増幅器モジュールを送信周波数が2GHzの移動体通信端末に用いた場合を例として挙げる。
【0044】
まず、基板内蔵容量130bを形成する部分の効果を図5を用いて説明する。比較のため、図4における容量130bを容量部品(チップ容量)で構成した従来の例を図5aに示す。容量部品110fの一端が誘電体層520の表面に形成された表面導体パターン540に接続され、容量部品110fの他端が誘電体層520の表面に形成された接地導体パターン570a及び貫通孔550を介して誘電体層520の裏面に形成された接地導体571に接続される。このような構造により、図5cの等価回路図に示したようなシャント容量回路が完成する。
【0045】
次に、基板内蔵容量130bの部分を改めて図5bに示す。先に述べたように、内層導体層11に形成された基板内蔵容量極板61bは、貫通孔50hを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40bに接続され、内層導体層11の下面に設けた高誘電率誘電体層30を介して同層の下面に形成された接地導体72aに対向する。この構造において、基板内蔵容量極板61b、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより基板内蔵容量130bが形成され、図5cの等価回路図に示したようなシャント容量回路が完成する。従って、図5a及び図5bに示した構造は、同等の回路である。
【0046】
送信周波数(基本波周波数)が2GHzの高周波電力増幅器モジュールの整合回路に用いられるシャント容量部品(伝送線路と接地導体パターンとを接続する容量)は、一般に1〜5pF程度である。現在一般的に使用されている容量部品の大きさは、長さ0.6mm×幅0.3mmであり、図5aのように実装した場合、最低0.3mm2の実装面積が必要となる。
【0047】
一方、本実施形態では、基板内蔵容量の容量密度は前述した通り約20pF/mm2であるので、例えば5pFを形成する基板内蔵容量極板61bの面積は0.25mm2となり、例えば長さ0.4mm×幅0.625mmの長方形で実現される。
【0048】
表面導体パターン40bは、一般的に特性インピーダンスが50Ω以上かつ低導体損失を有するマイクロストリップ線路で設計するため、幅が約0.3mmに設計される。このような構造により、内蔵容量極板61bは殆ど表面導体パターン40bの直下に配置されることになり、従って基板内蔵容量130bを形成するために表面導体層10の部分が使われることはなく、表面導体層10の有効利用面積は削減されない。
【0049】
また、表面導体パターン40bをマイクロストリップ線路とするために、接地導体72aは一般的に内層導体層12の可能な限り全ての部分に形成される。それ故、接地導体72aの一部を基板内蔵容量極板61bの対向極板としても、それによって内層導体層12の有効利用面積が減少することはない。
【0050】
以上の受動部品を多層基板に内蔵する本発明により、高周波電力増幅器モジュールの小型化が可能となる。
【0051】
ところで、高誘電率誘電体層30の厚さは20μmであり、比誘電率が誘電体層20の厚さ150μmに比べ十分に薄い。そのため、高誘電率誘電体層30の表面導体層10側(内層導体層11が形成される面)が接地導体とみなされる。従って、高誘電率誘電体層30の有無による表面導体パターン40bの特性インピーダンスは、誘電体層20の厚さ及び表面導体パターン40bの幅でほぼ決定され、多層基板の一内層全面に高誘電率誘電体層が配置されることによる表面導体パターン40bの設計値との相違は、無視できるほど小さい。
【0052】
一方、基板内蔵容量極板61bと貫通孔50hを介して接続される表面導体パターン40bの接続部とが同電位であるため、直下に基板内蔵容量極板61bがある表面導体パターン40bの部分は、表面導体パターン40bのそれ以外の部分とは異なり、マイクロストリップ線路とは異なる設計が必要になる。
【0053】
そのことから、基板内蔵容量130bの容量部分を拡大して示した図6において、基板内蔵容量極板61bの形状が長方形である場合、表面導体パターン40bの高周波信号伝送方向に平行方向の長さをLと定義し、垂直方向の幅をWと定義すると、W≧Lである方が望ましい。このようにすることにより、異なる設計が必要になる部分を少なくすることができる。しかし、W≦Lであっても、高周波電力増幅器モジュールの小型化に対する効果が失われることはないため、構わない。
【0054】
次に、基板内蔵容量130aを形成する部分の効果を図7を用いて説明する。比較のため、図4における基板内蔵容量130aを容量部品(チップ容量)で構成した従来の例を図7aに示す。容量部品110fの一端が誘電体層520の表面に形成された表面導体パターン540に接続され、容量部品110fの他端が誘電体層520の表面に形成された接地導体パターン570b及び貫通孔550を介して誘電体層520の裏面に形成された接地導体571に接続される。このような構造により、図7cの等価回路図に示したようなシャント容量回路が完成する。
【0055】
続いて、基板内蔵容量130aの部分を改めて図7bに示す。先に述べたように、内層導体層11に形成された基板内蔵容量極板61aは、貫通孔50gを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40eに接続され、内層導体層11の下面に設けた高誘電率誘電体層30を介して同層の下面に形成された接地導体72aに対向する。また、表面導体パターン40eは、ボンディングワイヤ120dを介して表面導体パターン40bに接続される。この構造において、基板内蔵容量極板61a、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより基板内蔵容量130aが形成され、図7cの等価回路図に示したようなシャント容量回路が完成する。従って、図7a及び図7bに示した構造は、同等の回路である。
【0056】
一般に、高周波電力増幅器モジュールを量産する場合、従来は、モジュール上に実装する受動部品などのばらつき、多層基板特性のばらつきを吸収するため、受動部品を実装する位置(マイクロストリップ線路への接続位置)が変えられるように設計が行なわれる。例えば、図7に示される等価回路のような、シャント容量回路を形成する場合、接地導体パターン570bは、表面導体パターン540に沿うように広く形成される。そして、容量部品110fを実装する位置の調整が行なわれる。この理由は、量産時に受動部品を実装するコスト、時間を考慮すると、受動部品の実装可能角度が表面導体パターン540に平行或いは垂直の2通りに制限されることによる。
【0057】
一方、本実施形態では、貫通孔50gを介して基板内蔵容量極板61aと接続される表面導体パターン40eと、表面導体パターン40bとをボンディングワイヤ120d−1、120d−2或いは120d−3を介して接続することにより、シャント容量の表面導体パターン40bへの接続点を変えることが容易となる。また、表面導体パターン40eの面積は、従来の場合の表面導体パターン570bよりも小さくすることが可能である。
【0058】
以上の受動部品を多層基板に内蔵する本発明により、高周波電力増幅器モジュールの小型化が可能となる。また、ボンディングワイヤ120dの形成角度を任意に設定することができるため、量産化が容易となる。更に、ボンディングワイヤ120dは、受動部品に比べ安価であるため、量産コスト低減が可能となる。
【0059】
なお、表面導体パターン40e、基板内蔵容量極板61a及び貫通孔50gの組合せを複数形成し、ボンディングワイヤ120dを介して表面導体パターン40bとを接続する表面導体パターン40eを選択することにより、基板内蔵容量の容量値の調整が可能となる。
【0060】
図8は、本実施形態の高周波電力増幅器モジュールを構成する基板内蔵容量の効果の説明図である。図8において、グラフ横軸は周波数(単位:GHz)であり、グラフ縦軸は回路の利得(単位:dB)である。
【0061】
さて、電力増幅器においては、基本波周波数の整数倍の周波数の高調波が発生することがある。発生した高調波は、妨害波となる。そのため、高周波電力増幅器モジュールを設計する上で、高調波に減衰を与えるフィルタ回路の設置が必要になる。
【0062】
送信周波数(基本波周波数)が2GHzの電力増幅器では、例えば周波数が2倍の高調波に対しては、図8に示すような4GHzで減衰を持つ(通過損失の大きい)フィルタ特性が採用される。
【0063】
従来、一般的に、上記フィルタ回路は、容量性部品と誘導性部品を直列に配置して接地し、上記容量性部品の容量値及び誘導性部品のインダクタンス値を調整し、直列共振周波数を4GHzに設定することにより実現されていた。
【0064】
一方、本発明においては、上記容量性部品として基板内蔵容量極板61a、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aによって形成される基板内蔵容量130aを用い、上記誘導性部品としてボンディングワイヤ120dを用いることによって上記フィルタ回路を形成する。誘導性部品のインダクタンス値は、ボンディングワイヤ120dの本数、長さにより容易に調整が可能である。
【0065】
更に、容量性部品が多層基板に内蔵されているため、先に図7を用いて説明したように、受動部品を多層基板表面に実装する従来の場合に比べて小型化が可能である。従って、本発明の高周波電力増幅器モジュールでは、フィルタ回路である高調波電力低減回路を容易に形成しかつ、モジュールの小型化が可能となる。
【0066】
なお、ボンディングワイヤの材質は、低抵抗である金を主成分とするのが望ましいが、用途によってはアルミニウムやその他の導体を主成分としても構わない。また、ボンディングワイヤの太さは用途により任意に設定可能である。
【0067】
再び図2及び図3に戻り、本実施形態では、高誘電率誘電体層30に加えて、高誘電率誘電体層31が誘電体層22の上面に形成される。このように、高誘電率誘電体層30及び31を多層基板面内一様に配置することにより、多層基板の反りを低減することが可能である。
【0068】
また、高誘電率誘電体層30及び31を誘電体層21の上下対称の位置に配置することにより、多層基板の反りを一層低減することが可能である。ただし、用途、コスト、多層基板製造方法によっては、必ずしも高誘電率誘電体層30及び31を誘電体層21の上下対称の位置に配置しなくても良い。また、高誘電率誘電体層30及び31のうちいずれか一方のみを配置しても構わない。
【0069】
次に、本実施形態の高周波電力増幅器モジュールを構成する多層基板の製造方法を説明する。多層基板は、ビルドアップ法、シート積層法或いは印刷法などの一般的な多層基板製造方法により容易に作製可能であるが、便宜的に樹脂を主成分する誘電体を用いた多層基板製造方法について説明する。
【0070】
まず、銅箔厚3μm、板厚0.2mmの両面銅箔張ガラスエポキシ積層板に所望のドリル穴明けを行なう。この基板に超音波洗浄とアルカリ過マンガン酸液で炭化した樹脂カスを除去後、触媒付与、密着促進後無電解銅めっきを行ない、ドリル穴内壁と銅箔表面に約15μmの無電解銅めっき層を形成する。この基板表面に次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする黒化処理と、ジメチルアミノボランを主成分とする還元処理によって、粗化処理を行なう。
【0071】
この基板のドリル穴内にスクリーン印刷によりペーストタイプの熱硬化型絶縁材料を充填し、170℃で60分間の熱処理により硬化させることにより誘電体層21の貫通孔が形成される。
【0072】
続いて、基板をバフブラシにより研磨し、余分な絶縁材料を除去する。この基板に触媒付与、密着促進後無電解銅めっきを行ない、基板表面に約15μmの無電解銅めっき層を形成する。次いで、同基板表面に所望のエッチングレジストを形成し、不要な銅をエッチング除去して、基板内蔵容量の極板を含む回路パターン(内層導体層12及び13)を有する回路板が作製される。
【0073】
この回路板表面にロールコータを用いてペーストタイプの熱硬化型絶縁材料を基板絶縁層表面から約40μm、回路パターン表面から約5μm塗布し、170℃で60分間の熱処理により硬化さる。
【0074】
硬化後の基板をバフブラシにより回路パターン表面が現れるまで研磨し、余分な絶縁材料を除去する。このときに回路板表面の凹凸は3μm以下である。この回路板の回路表面に次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする黒化処理と、ジメチルアミノボランを主成分とする還元処理によって、粗化処理を行なう。
【0075】
粗化処理後の回路板の片面に18μm銅箔の付いた高誘電率樹脂接着剤を温度170℃、圧力1.5MPa、加熱加圧時間60分のプレス条件で積層一体化することにより高誘電率誘電体層30及び31が形成される。この高誘電率樹脂接着剤は、1MHzの比誘電率が45のエポキシ樹脂系接着剤である。この基板の表面に所望のエッチングレジストを形成し、不要な銅箔をエッチング除去して、コンデンサの極板を含む回路パターン(内層導体層11)を形成する。
【0076】
この回路板の回路表面に、次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする黒化処理と、ジメチルアミノボランを主成分とする還元処理を施すことによって、粗化処理を行なう。
【0077】
続いて、(1)35μmキャリア銅箔付き厚み3μmの銅箔、(2)厚み80μmのフィラー入りガラスエポキシプリプレグを2枚、(3)回路板、(4)厚み80μmのフィラー入りガラスエポキシプリプレグを2枚、(5)35μmキャリア銅箔付き厚み3μmの銅箔の順に重ね、温度170℃、圧力1.5MPa、加熱加圧時間60分のプレス条件で積層一体化する。
【0078】
次いで、キャリア銅箔を剥がし、不要な基板端部を切断後、この基板の表面に所望のエッチングレジストを形成し、不要な銅箔をエッチング除去して、所望の箇所にφ0.15mmの窓穴を形成する。
【0079】
この基板表面に設けた窓穴の箇所に炭酸ガスレーザを用いて、出力パワー26mJ、パルス幅100μs、ショット数6回の条件でレーザ穴明けを行なう。
【0080】
超音波洗浄とアルカリ過マンガン酸液で炭化した樹脂カスを除去後、洗浄触媒付与、密着促進後無電解銅めっきを行ない、レーザ穴内壁と銅箔表面に約20μmの無電解銅めっき層を形成することにより誘電体層20及び22の貫通孔が形成される。この基板表面のパッドや回路パターンなど必要な箇所にエッチングレジストを形成し、不要な銅をエッチング除去して、外層回路(表面導体層10及び裏面導体層15)を形成する。
【0081】
次いで、この基板表面にソルダーレジストをロールコータで30μm塗布、乾燥後に露光・現像して所望の箇所にソルダーレジストを形成する。その後、3μmの無電解ニッケルめっきと0.1μmの無電解金めっきを外層回路パターン露出部表面層に形成して、基板内蔵容量を有する多層基板が得られる。
【0082】
(発明の実施の形態2)
図9に、図1及び図7におけるボンディングワイヤ120dを細長い表面導体パターンに代えて構成した実施形態を示す。図9aは、表面導体層10及び内層導体層11を多層基板上面側から見た透視図であり、図9bは、図9aにおけるC−C線に沿って切断した断面図である。
【0083】
図9において、40h及び40iは細長い表面導体パターン、50l及び50kは貫通孔、61eは基板内蔵容量極板である。基板内蔵容量極板61e、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより基板内蔵容量が形成される。基板内蔵容量極板61eは、表面導体パターン40hに貫通孔50kを介して接続されると同時に、表面導体パターン40iに貫通孔50lを介して接続され、表面導体パターン40h及び40iは、表面導体パターン40bの互いに異なる位置に接続される。
【0084】
実施形態1ではボンディングワイヤ120dと表面導体パターン40eを介して基板内蔵容量極板61aを表面導体パターン40bに接続することにより、基板内蔵容量と表面導体パターン40bとの接続部分を可変可能としたが、本実施形態では表面導体パターン40h及び40iを介して基板内蔵容量極板61eを表面導体パターン40bに接続し、表面導体パターン40h或いは40iをレーザーカットなどの手法を用いて切断することにより基板内蔵容量と表面導体パターン40bとの接続部分を可変可能としている。実施形態1のようにボンディングワイヤを用いた場合、ボンディングワイヤは半田による侵食を受けるため、ボンディング領域は他の受動部品実装領域との間にソルダーレジストが必要であるのに対し、本実施形態ではソルダーレジストの必要がないため、実施形態1より小型化が可能となる。
【0085】
本実施形態の高周波電力増幅器モジュールを構成する多層基板の製造方法は、実施形態1の場合と同様である。
【0086】
(発明の実施の形態3)
図10に、基板内蔵容量をトリミング(調整)可能にした実施形態を示す。図10aは、表面導体層10及び内層導体層11を多層基板上面側から見た透視図であり、図10bは、図10aにおけるD−D線に沿って切断した断面図である。
【0087】
図10において、40jは表面導体パターン、50m及び50nは貫通孔、61f及び61gは基板内蔵容量極板である。基板内蔵容量極板61f、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより基板内蔵容量が形成され、基板内蔵容量極板61fは表面導体パターン40bに貫通孔50mを介して接続される。基板内蔵容量極板61g、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aによりトリミング用の基板内蔵容量が形成され、基板内蔵容量極板61gは表面導体パターン40jに貫通孔50nを介して接続される。表面導体パターン40jは表面導体パターン40bに接続される。基板内蔵容量極板61fは、基板内蔵容量極板61gに比べて面積が等しいか或いは大きいことを特徴とする。
【0088】
実施形態1及び実施形態2にて説明した図5、図7或いは図9に示される構造では、基板内蔵容量の容量値がトリミングできないのに対し、本実施形態では、基板内蔵容量極板61gをトリミング用とするので、場合に応じて表面導体パターン40jをレーザーカットなどの手法を用いて切断することにより、容量値のトリミングが可能である。
【0089】
本実施形態の高周波電力増幅器モジュールを構成する多層基板の製造方法は、実施形態1の場合と同様である。
【0090】
(発明の実施の形態4)
図11に、2個のトリミング用基板内蔵容量極板を有する実施形態を示す。図11aは、表面導体層10及び内層導体層11を多層基板上面側から見た透視図であり、図11bは、図11aにおけるE−E線に沿って切断した断面図である。
【0091】
図11において、40kは表面導体パターン、50oは貫通孔、61hは基板内蔵容量極板である。基板内蔵容量極板61f、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより基板内蔵容量が形成され、基板内蔵容量極板61fは表面導体パターン40bに貫通孔50mを介して接続される。基板内蔵容量極板61g、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより一方のトリミング用の基板内蔵容量が形成される。基板内蔵容量極板61gは表面導体パターン40jに貫通孔50nを介して接続され、表面導体パターン40jは表面導体パターン40bに接続される。基板内蔵容量極板61h、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより他方のトリミング用の基板内蔵容量が形成される。基板内蔵容量極板61hは表面導体パターン40kに貫通孔50oを介して接続され、表面導体パターン40kは表面導体パターン40bに接続される。基板内蔵容量極板61fは基板内蔵容量極板61g及び61hに比べて面積が等しいか或いは大きいことを特徴とする。また、表面導体パターン40jと40b、表面導体パターン40kと40bとの接続部分は、互いに貫通孔50mに対して反対側であることを特徴とする。
【0092】
実施形態3ではトリミング用基板内蔵容量極板が1個であるのに対し、本実施形態では基板内蔵容量極板61g及び61hとトリミング用基板内蔵容量極板を2個としたため、容量値のより精密なトリミングが可能となる。
【0093】
本実施形態の高周波電力増幅器モジュールを構成する多層基板の製造方法は、実施形態1の場合と同様である。
【0094】
(発明の実施の形態5)
図12に、2個のトリミング用基板内蔵容量極板を有する別の実施形態を示す。図12aは、表面導体層10及び内層導体層11を多層基板上面側から見た透視図であり、図12bは、図12aにおけるF−F線に沿って切断した断面図である。
【0095】
図12において、40l及び40mは表面導体パターン、50p及び50qは貫通孔、61i及び61jは基板内蔵容量極板である。基板内蔵容量極板61f、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより基板内蔵容量が形成され、基板内蔵容量極板61fは表面導体パターン40bに貫通孔50mを介して接続される。基板内蔵容量極板61i、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより一方のトリミング用基板内蔵容量が形成される。基板内蔵容量極板61iは表面導体パターン40lに貫通孔50pを介して接続され、表面導体パターン40lは表面導体パターン40bに接続される。基板内蔵容量極板61j、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより他方のトリミング用基板内蔵容量が形成される。基板内蔵容量極板61jは表面導体パターン40mに貫通孔50qを介して接続され、表面導体パターン40mは表面導体パターン40bに接続される。基板内蔵容量極板61fは基板内蔵容量極板61i及び61jに比べて面積が等しいか或いは大きいことを特徴とする。
【0096】
本実施形態では、表面導体パターン40lと40b、表面導体パターン40mと40bとの接続部分は、互いに貫通孔50mに対して同じ側であることを特徴とする。本実施形態も基板内蔵容量極板61i及び61jとトリミング用基板内蔵容量極板を2個としたため、実施形態4の場合と同様、容量値のより精密なトリミングが可能となる。
【0097】
本実施形態の高周波電力増幅器モジュールを構成する多層基板の製造方法は、実施形態1の場合と同様である。
【0098】
(発明の実施の形態6)
図13に、2個の基板内蔵容量極板を有する実施形態を示す。図13aは、表面導体層10及び内層導体層11を多層基板上面側から見た透視図であり、図13bは、図13aにおけるG−G線に沿って切断した断面図である。
【0099】
図13において、基板内蔵容量極板61g、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより一方の基板内蔵容量が形成される。基板内蔵容量極板61gは表面導体パターン40jに貫通孔50nを介して接続され、表面導体パターン40jは表面導体パターン40bに接続される。基板内蔵容量極板61h、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより、他方の基板内蔵容量が形成される。基板内蔵容量極板61hは表面導体パターン40kに貫通孔50oを介して接続され、表面導体パターン40kは表面導体パターン40bに接続される。表面導体パターン40jと40b、表面導体パターン40kと40bとの接続部分は互いに貫通孔50mに対して反対側であることを特徴とする。
【0100】
本実施形態のトリミングに関する効果は実施形態3と同様であるが、レーザーカットなどによるトリミングを行なわない場合は、表面導体パターン40bの両側に同程度の大きさの基板内蔵容量が接続されることにより、回路の高周波特性の向上が可能となる。
【0101】
本実施形態の高周波電力増幅器モジュールを構成する多層基板の製造方法は、実施形態1の場合と同様である。
【0102】
(発明の実施の形態7)
図14及び図15に、多層基板上面側の高誘電率誘電体層に加えて、多層基板裏面側の高誘電率誘電体層にも基板内蔵容量極板を形成した実施形態を示す。図14は、本実施形態の斜視層構成図であり、図15は、図14におけるH−H線に沿って切断した断面図である。
【0103】
図14及び図15において、14は内層導体層、50r、50s、50t及び50uは貫通孔、63a及び63bは、内層導体層13に形成された基板内蔵容量極板、64a及び64bは、内層導体層14に形成された基板内蔵容量極板である。
【0104】
本実施形態の積層構造は、高誘電率誘電体層31と誘電体層22との間に内層導体層14を有し、受動部品110a及び110bを有さない点を除いて、上記実施の形態1と基本的に同様である。
【0105】
また、本実施形態の高周波電力増幅器モジュールの構造は次の点を除いて、実施形態1と基本的に同様である。基板内蔵容量極板63a、高誘電率誘電体層31及び基板内蔵容量極板64aにより一方の新たな基板内蔵容量が形成され、基板内蔵容量極板63b、高誘電率誘電体層31及び基板内蔵容量極板64bにより他方の新たな基板内蔵容量が形成される。
【0106】
裏面導体層15に形成された高周波電力入力端子45aは、貫通孔50rを介して基板内蔵容量極板64aに接続され、基板内蔵容量極板63aは、貫通孔50sを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40aに接続される。この接続により、電力入力端子45aと表面導体パターン40aの間に上記の一方の新たな基板内蔵容量が図4における受動部品(容量性部品)110aに代わって接続されることになる。なお、表面導体パターン40aは、ボンディングワイヤ120aを介して半導体素子100表面に形成された電力入力電極部(図示せず)に接続される。
【0107】
半導体素子100表面に形成された電力出力電極部(図示せず)は、ボンディングワイヤ120bを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40bに接続される。表面導体パターン40bは、貫通孔50tを介して基板内蔵容量極板63bに接続され、基板内蔵容量極板64bは、貫通孔50uを介して裏面導体層15に形成された電力出力端子45bに接続される。この接続により、表面導体パターン40bと電力出力端子45bの間に上記の他方の新たな基板内蔵容量が図4における受動部品(容量性部品)110bに代わって接続されることになる。
【0108】
本実施形態において、高誘電率誘電体層31は、高誘電率誘電体層30より比誘電率が同等以上であることを特徴とする。
【0109】
本実施形態の高周波電力増幅器モジュールの動作は、実施形態1と基本的に同様である。
【0110】
本実施形態の効果は、上記実施の形態1により得られる効果に加え、次の効果がある。即ち、本実施形態では、実施形態1において表面導体層10上に実装された受動部品110a及び110bを基板内蔵容量としているため、更なるモジュールの小型化が可能である。
【0111】
送信周波数(基本波周波数)が2GHzの高周波電力増幅器モジュールの整合回路に用いられる直流電流遮断用の直列容量部品は、一般に10〜20pF程度である。高誘電率誘電体層31の比誘電率が約45であり、容量密度が約20pF/mm2とすると、例えば20pFの容量を形成する基板内蔵容量極板63a(63b)の面積は1.0mm2となり、例えば1.0mm×1.0mmの正方形で実現される。しかし、一般的に直列容量は、整合回路に用いられるシャント容量(伝送線路と接地導体パターンとを接続する容量)に比べ容量値精度が低くても高周波電力増幅器モジュールの性能を低下させることが殆どないため、高誘電率誘電体層31には、誘電率にばらつきがありながらも高い誘電率が得られる誘電体を用いることが望ましく、従って、高誘電率誘電体層31の容量密度は、高誘電率誘電体層30と同等以上であることが望ましい。
【0112】
なお、利得制御電源端子に配置されているシャント容量(バイパス容量)は一般的に100pF程度以上であるが、上記の直列容量の場合と同様に、整合回路に用いられるシャント容量に比べ容量値精度が低くても高周波電力増幅器モジュールの性能を低下させることは殆どない。
【0113】
ところで、基板内蔵容量極板63bと表面導体パターン40bとを接続する貫通孔50tのような2枚の誘電体層を通る貫通孔の有するインダクタンス値は一般的に約0.1nHであり、抵抗値は約0.1Ωである。このような貫通孔を数pFの基板内蔵容量と直列に配置すると、貫通孔の有するインダクタンス値及び抵抗値の影響を考慮することが必要になってくる。
【0114】
一方、直列容量やバイパス容量のように10pF程度以上の基板内蔵容量と直列に配置しても、貫通孔の有するインダクタンス値の影響は殆ど無視することができる。従って、数pFの容量を必要とする整合回路のシャント用基板内蔵容量は貫通孔が短くなる多層基板表面側に配置し、10pF程度以上の基板内蔵容量は多層基板裏面側に配置することが望ましい。
【0115】
従って、本実施形態では、受動部品を多層基板の複数の層に内蔵しかつ、多層基板表面側の高誘電率誘電多層の容量密度を多層基板裏面側の高誘電率誘電多層より大きくすることにより、モジュールの更なる小型化が可能となる。
【0116】
本実施形態の高周波電力増幅器モジュールを構成する多層基板の製造方法は、実施形態1の場合と同様である。
【0117】
(発明の実施の形態8)
図16は、本発明を移動体通信端末に適用した実施形態の回路図であり、図17は、同移動体通信端末の一部分の断面図である。
【0118】
図16において、200はマイクロホン、210はベースバンド信号処理装置、220は局部発信器、230a及び230bはミキサ、240は利得可変増幅器、250a及び250bはフィルタ、260はダイプレクサ、270はアンテナ、280は低雑音増幅器、290はスピーカである。また、利得可変増幅器240、高周波電力増幅器モジュール1及びフィルタ250aにより送信の高周波回路2が構成される。高周波電力増幅器モジュール1は、実施形態1〜7のいずれでも良い。
【0119】
図17において、420、421及び422は誘電体層、430及び431は高誘電率誘電体層、443aは内層導体パターン、461a、461b、462a及び462bは基板内蔵容量極板、450a、450b、450c、450d及び450eは貫通孔である。
【0120】
本実施形態では、多層基板で構成される高周波電力増幅器モジュール1を初め、図16に示す各部が大型の多層基板の上に搭載されている。そのような大型の多層基板はマザーボードとなるものであるが、その積層構造は、実施形態1〜7の多層基板と基本的に同様である。以下に、本実施形態の移動体通信端末を構成するマザーボードの高周波回路2の部分の構造を説明する。
【0121】
図17において、基板内蔵容量極板462a、高誘電率誘電体層430及び基板内蔵容量極板461aにより一方の基板内蔵直列容量が形成され、同様に、基板内蔵容量極板461b、高誘電率誘電体層430及び基板内蔵容量極板462bにより他方の基板内蔵直列容量が形成される。
【0122】
利得可変増幅器240の電力出力端子(符号なし)は貫通孔450a、内層導体パターン443a及び貫通孔450bを介して上記一方の基板内蔵直列容量に接続され、基板内蔵容量極板461aは貫通孔450cを介して高周波電力増幅器モジュール1の電力入力端子(符号なし)に接続される。
【0123】
高周波電力増幅器モジュール1の電力出力端子(符号なし)は、貫通孔450dを介して上記他方の基板内蔵直列容量に接続され、基板内蔵容量極板462bは、貫通孔450eを介してフィルタ250aの電力入力端子(符号なし)に接続される。
【0124】
なお、本実施形態の移動体通信端末を構成するマザーボードは、マザーボード表面上に実装された高周波電力増幅器モジュール1などの高周波部品の直下を含む部分に少なくとも1個以上の基板内蔵容量極板を有することを特徴とする。
【0125】
次に、本実施形態の移動体通信端末の動作を説明する。マイクロホン200を介して入力された音声は、ベースバンド信号処理装置210にて変換され、局部発信器220で生成された局部発振信号とミキサ230aで合成され、利得可変増幅器240を介して高周波電力増幅器モジュール1に入力される。高周波電力増幅器モジュール1で増幅された信号はフィルタ250aを介してダイプレクサ260に入力され、アンテナ270を介して電波として送信される。
【0126】
一方、アンテナ260を介して受信された電波は、信号としてダイプレクサ260に入力され、フィルタ250bを介して低雑音増幅器280に入力される。低雑音増幅器280から出力された信号は、局部発信器220で生成された局部発振信号とミキサ230bで合成され、ベースバンド信号処理装置210にて変換されてスピーカ290から音声として出力される。
【0127】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態の移動体通信端末を構成するマザーボードでは、高周波電力増幅器モジュール1の電力入力端子と利得可変増幅器240とを一方の基板内蔵直列容量を介して接続し、高周波電力増幅器モジュール1の電力出力端子とフィルタ250aとを他方の基板内蔵直列容量を介して接続しているため、高周波電力増幅器モジュール1の入力整合回路及び出力整合回路に配置される直列電流遮断用の直列容量(実施形態1の場合は、図4における受動部品110a及び110b)が必要なくなり、高周波電力増幅器モジュール1の小型化が可能となる。
【0128】
更に、上記直列電流遮断用の直列容量が基板内蔵直列容量としてマザーボードのうち高周波電力増幅器モジュール1が実装される部分の直下を含む部分に形成されるため、マザーボード表面導体層の有効利用面積を削減することなく、送信の高周波回路2の面積を小にすることが可能となる。
【0129】
なお、本実施形態のマザーボードでは、マザーボード上に実装される高周波部品間を接続する直列電流遮断用の直列容量のみならず、マザーボード上に実装される高周波部品内に配置される任意の受動部品、例えばバイパス容量などを基板内蔵容量とすることも可能である。そのように構成することにより、上記と同等の効果が得られることは言うまでもない。
【0130】
本実施形態の移動体通信端末を構成する多層基板の製造方法は、実施形態1の場合と同様である。
【0131】
(発明の実施の形態9)
図18に、自動利得制御装置を備えた移動体通信端末の実施形態を示す。図19は、同移動体通信端末の一部分の断面図である。
【0132】
図18において、300はカプラ、310は自動利得制御装置、3は高周波電力増幅器モジュール1及びカプラ300より構成される高周波回路である。
【0133】
図19において、440a、440b及び440cは表面導体パターン、461c及び462cは基板内蔵容量極板、450f、450g及び450hは貫通孔である。
【0134】
本実施形態を構成する多層基板(マザーボード)の積層構造は、上記実施の形態1乃至実施の形態8と基本的に同様である。
【0135】
本実施形態の移動体通信端末を構成するマザーボードの構造を説明する。図19において、基板内蔵容量極板461c、高誘電率誘電体層430及び基板内蔵容量極板462cにより基板内蔵容量が形成される。高周波電力増幅器モジュール1の電力出力端子(符号なし)は貫通孔450fを介して基板内蔵容量極板461cに接続され、基板内蔵容量極板461cは貫通孔450gを介して表面導体パターン440bに接続され、表面導体パターン440bはフィルタ250aの電力入力端子(図示せず)に接続される。
【0136】
一方、基板内蔵容量極板462cは貫通孔450hを介して表面導体パターン440cに接続され、表面導体パターン440cは自動利得制御装置310の信号入力端子(図示せず)に接続される。このようにして、カプラ300の容量が上記の基板内蔵容量によって構成される。
【0137】
なお、本実施形態を構成するマザーボードは、マザーボード表面上に実装された高周波電力増幅器モジュール1などの高周波部品の直下を含む部分に少なくとも1個以上の基板内蔵容量極板を有することを特徴とする。
【0138】
次に、本実施形態の移動体通信端末の動作を説明する。マイクロホン200を介して入力された音声はベースバンド信号処理装置210にて変換され、局部発信器220で生成された局部発振信号とミキサ230aで合成され、利得可変増幅器240を介して高周波電力増幅器モジュール1に入力される。高周波電力増幅器モジュール1で増幅された信号はカプラ300に入力され、フィルタ250aを介してダイプレクサ260に入力され、アンテナ270を介して電波として送信される。
【0139】
一方、カプラ300を構成する容量を介して出力される信号は、自動利得制御装置310を介して利得可変増幅器240に入力され、高周波電力増幅器モジュール1の出力電力に応じて帰還をかけ、アンテナ270から送信される電波の電力を調整する。
【0140】
また、アンテナ270を介して受信された電波は、信号としてダイプレクサ260に入力され、フィルタ250bを介して低雑音増幅器280に入力される。低雑音増幅器280から出力された信号は、局部発信器220で生成された局部発振信号とミキサ230bで合成され、ベースバンド信号処理装置210にて変換されてスピーカ290から音声として出力される。
【0141】
次に、本実施形態の移動体通信端末の効果を説明する。本実施形態の移動体通信端末は、実施形態8に加えてカプラ300及び自動利得制御装置310による帰還ループを有することにより、アンテナ270から送信される電波の電力を調整することが可能となる。更に、カプラ300は基板内蔵直列容量としてマザーボードのうち高周波電力増幅器モジュール1或いは他の高周波部品が実装される部分の直下を含む部分に形成されるため、マザーボード表面導体層の有効利用面積を削減することなく、高周波電力増幅器モジュール1及びカプラ300より構成される高周波回路3の実現が可能となる。即ち、本実施形態の移動体通信端末では、カプラ300の容量を基板内蔵容量としてマザーボード内に形成するため、マザーボード表面導体層の有効利用面積を削減することなく、高機能化が可能となる。
【0142】
本実施形態の移動体通信端末を構成する多層基板の製造方法は、実施形態1の場合と同様である。
【0143】
以上に説明した各実施形態では、本発明の受動素子内蔵基板と、それを用いた、移動体通信用端末に用いられる高周波電力増幅器モジュール及び移動体通信端末を構成する高周波回路部分を採り上げた。本発明の受動素子内蔵基板の適用は、それらモジュールや回路に限定されるものではなく、高周波で動作するルータなどの回路或いはCPU(Central Processing Unit)などに適応することが可能である。
【0144】
【発明の効果】
本発明によれば、多層基板の表面の有効利用面積を削減することなく受動素子が多層基板に内蔵されるので、受動素子内蔵基板の小型化が可能になる。更に、受動素子が薄い高誘電率誘電体層を挟んで形成されるので受動素子内蔵基板の薄型化が可能になる。また、接続位置の調整或いはトリミングが可能になるので、本発明の受動素子内蔵基板及びそれを用いた高周波回路モジュールの量産化が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る受動素子内蔵基板及びそれを用いた高周波回路の第1の発明の実施の形態を説明するための斜視層構成図。
【図2】図1の第1の実施形態をA−A線に沿って切断した断面図。
【図3】図1の第1の実施形態をB−B線に沿って切断した断面図。
【図4】第1の実施形態の高周波回路を説明するための回路図。
【図5】第1の実施形態における基板内蔵容量の効果の説明するための図。
【図6】第1の実施形態における基板内蔵容量の効果の説明するための別の図。
【図7】第1の実施形態における基板内蔵容量の効果の説明するための更に別の図。
【図8】第1の実施形態における基板内蔵容量の効果の説明するための曲線図。
【図9】本発明の第2の発明の実施の形態を説明するための構造図。
【図10】本発明の第3の発明の実施の形態を説明するための構造図。
【図11】本発明の第4の発明の実施の形態を説明するための構造図。
【図12】本発明の第5の発明の実施の形態を説明するための構造図。
【図13】本発明の第6の発明の実施の形態を説明するための構造図。
【図14】本発明の第7の発明の実施の形態を説明するための斜視層構成図。
【図15】図14の第7の実施形態をH−H線に沿って切断した断面図。
【図16】本発明の第8の発明の実施の形態を説明するための回路図。
【図17】本発明の第8の発明の実施の形態を説明するための断面図。
【図18】本発明の第6の発明の実施の形態を説明するための回路図。
【図19】本発明の第6の発明の実施の形態を説明するための断面図。
【符号の説明】
1…高周波電力増幅器モジュール、2,3…高周波回路、10…表面導体層、11〜14…内層導体層、15…裏面導体層、20〜22…誘電体層、30,31…高誘電率誘電体層、40…表面導体パターン、43…内層導体パターン、45a…電力入力端子、45b…電力出力端子、45c…利得制御電源端子、45d…駆動電源端子、50…貫通孔、61,63,64…基板内蔵容量極板、72,75…接地導体、100…半導体素子、101…トランジスタ、102,110…受動部品、120…ボンディングワイヤ、130…基板内蔵容量。
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動体通信端末で使用される多層基板及びそれを用いた高周波回路モジュールに関し、特に受動部品を基板に内蔵して多層基板を小型化、薄型化する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話等の移動体通信端末の小型化、薄型化に伴い、該端末に搭載される高周波回路モジュール及び高周波回路基板の小型化及び薄型化に対する要求が強くなってきている。しかし、例えば高周波用電力増幅器モジュールについては、小型化の要求があるものの、モジュール基板の表面に実装する受動部品(チップ容量、チップインダクタ)の小型化は停滞しており、そのような受動部品を多数表面に実装するモジュール基板の小型化が律速されている。そのため、モジュール基板表面に実装する受動部品の一部をモジュール基板或いは半導体素子に内蔵することにより、モジュールを小型化することが必須となっている。
【0003】
そのような要求に応えるべく能動部品や受動部品を内蔵した基板の一例が特許文献1に開示されている。この例では、配線パターンを表面に形成した2枚の電気絶縁層でコア層を挟み、同コア層に配線パターンを形成すると共にその一部の上に能動部品や受動部品を実装することによって、能動部品や受動部品が内蔵される。なお、コア層は、無機質フィラーと熱硬化性樹脂の複合されたコンポジット材料による電気絶縁層からなる。また、上面の配線パターンとコア層の配線パターンがインナービアによって接続される。
【0004】
他の一例が特許文献2に開示されている。この例では、複数の絶縁体層の間にコンデンサ構成層が配置される。各層の間並びに上面及び下面に導体パターンによる電極部が備えられ、各層間の電極部の相互接続がビアホールによって行なわれる。特にコンデンサ構成層において、互いに対向するコンデンサ電極の間の領域のみが誘電体層により形成される。誘電体層の形成は、絶縁体よりなるコンデンサ構成層の該当部分にパンチにより孔を空け、その中に誘電体層を挿入することによって行なわれる。このようにして、コンデンサ内蔵多層基板が構成される。
【0005】
更に他の一例が、特許文献3に開示されている。この例では、2層の誘電体層の外側の両面に接地導体が設けられ、2層の誘電体層の中央より接地導体に近い位置に、容量導体が設けられる。接地導体と容量導体の間には、上記誘電体層の一部、即ち厚さが薄い誘電体層が介在する。この構造により、厚さが薄い誘電体層を挟んで容量導体が接地導体と対向し、誘電体層の中にコンデンサが内蔵される。また、同特許文献3には、その他に、容量ランド(容量導体)を2枚の基板の中央に設け、容量ランドとは反対側の基板の面に接地導体を設ける例が記載されている。基板を介して2枚の接地導体が容量ランドを挟む構造となる。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−261449号公報(第9頁、図1)
【特許文献2】
特開平6−69663号公報(第3頁、図1)
【特許文献3】
特開平7−193401号公報(第2頁〜第3頁、図1及び図5)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1によって開示された技術では、チップ部品を基板内層に埋没させるため、基板の厚さがチップ部品の厚さに律速され、基板の薄型化が困難である。
【0008】
また、特許文献2によって開示された技術では、コンデンサ誘電体層即ち容量膜が基板内部に配置されるので、特許文献1に開示された技術に比べて多層基板の薄型化は容易となる。しかし、容量膜が基板の一部分に配置されるため、基板の各部分での密度、熱膨張率が不均一となり、基板の反りが生じやすい。更に、容量膜が基板内層に部分的に形成されるため、容量膜厚が一容量内においてばらつきを生じ易く、容量値のばらつきが大きくなることが避けられない。また更に、コンデンサ構成層は、厚さを薄くすることに限度があり、そのため内蔵容量値或いは容量密度を実用レベル(20pF/mm2程度)まで大きくすることが困難である。
【0009】
また、特許文献3によって開示された技術では、均一な誘電体層を容量膜として用いているため、特許文献2に開示された技術において懸念される基板の反りは低減される。しかしながら、多層基板の上面にコンデンサが占有する面を置くことになるので、小型化の効果が低く、また、高い誘電率を持たない基板である誘電体層の一部が容量膜となるので、内蔵容量値或いは容量密度を実用レベルまで大きくすることができない。更に、基板内蔵容量のトリミングは不可能であり、量産化が困難であった。
【0010】
本発明の主たる目的は、実用的な値を持つ受動部品の内蔵が可能で、かつ薄型化及び小型化が可能な受動部品内蔵基板及びそれを用いた高周波回路モジュールを提供することにある。
【0011】
本発明の付帯的な目的は、量産化の容易な受動部品内蔵基板及びそれを用いた高周波回路モジュールを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記主たる目的を達成するために、本発明の受動部品内蔵基板は、複数の誘電体層を積層してなる多層基板を具備し、複数の誘電体層の内の第1の誘電体層は多層基板の表面を有し、第1の誘電体層に接する第2の誘電体層の誘電率は第1の誘電体層よりも高く、かつ厚さは第1の誘電体層よりも薄く、第1の誘電体層と第2の誘電体層の間に第1の容量極板が配置され、第2の誘電体層の、第1の容量極板が配置されている面とは反対側の面に接地導体が配置され、第1の容量極板と接地導体と第2の誘電体層とで容量性部品が形成されていることを特徴とする。
【0013】
誘電率が高くかつ厚さが薄い第2の誘電体層が容量膜になるので、実用的な値を持つコンデンサの実現が可能になると共に、受動部品内蔵基板の薄型化が可能になる。また、容量極板は、基板となる第1の誘電体層により多層基板の表面と隔てられるので、表面にコンデンサが占有する面を設けることは無く、その表面部分に例えば導体パターンを配置しても差し支えなく、表面の有効利用面積は削減されない。即ち、受動部品内蔵基板を小型化が可能になる。
【0014】
上記付帯的な目的を達成するために、本発明の受動部品内蔵基板は、更に、上記多層基板の表面に第2の導体パターンが配置され、第1の容量極板と第2の導体パターンの間に第1の容量極板と第2の導体パターンを電気的に接続するための第2の貫通孔を備え、加えて、多層基板の表面に第3の導体パターンが配置され、第2の導体パターンと第3の導体パターンとがボンディングワイヤを介して接続されていることを特徴とする。
【0015】
ボンディングワイヤのボンディング工程は簡単であり、また、ボンディングワイヤの設置位置を比較的に自由に選ぶことができるので、受動部品内蔵基板の量産化が容易となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る受動部品内蔵基板及びそれを用いた高周波回路モジュールを図面に示した幾つかの発明の実施の形態を参照して更に詳細に説明する。なお、発明の実施の形態を説明するための全図において、同一或いは類似の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明を省略する。
【0017】
本発明は、高周波回路一般や移動体通信端末等に適用可能であるが、以下の発明の実施の形態1〜7では説明の便宜上、移動体通信端末に用いられる一段増幅構成の高周波電力増幅器モジュールを例に、本発明の実施形態の構造、動作、効果及び製造方法を説明する。
【0018】
(発明の実施の形態1)
図1は、高周波電力増幅器モジュールの各導体層を、多層の各誘電体層の図示を省略して示した斜視層構成図であり、図2は、図1におけるA−A線に沿って切断したモジュールを各誘電体層を含めて示した断面図であり、図3は、図1におけるB−B線に沿って切断したモジュールを各誘電体層を含めて示した断面図であり、図4は、モジュールに搭載した高周波電力増幅器の回路図である。
【0019】
図1において、1は高周波電力増幅器モジュール、10は表面導体層、11〜13は内層導体層、15は裏面導体層である。続いて、40a〜40eは表面導体層10に形成された表層導体パターン、43a及び43bは内層導体層13に形成された内層導体パターン、50a〜50hは貫通孔、61a及び61bは内層導体層11に形成された基板内蔵容量極板、72aは内層導体層12に形成された接地導体、75は裏面導体層15に形成された接地導体、100は表面導体層10に実装された半導体素子、110a〜110eは同じく表面導体層10に実装された受動部品、120a〜120dはボンディングワイヤである。更に、45a〜45dは、裏面導体層15に形成されたそれぞれ電力入力端子、電力出力端子、利得制御電源端子及び駆動電源端子である。
【0020】
図2及び図3において、20,21及び22は誘電体層であり、30及び31は高誘電率誘電体層である。高誘電率誘電体層30を挟んだ基板内蔵容量極板61a,61bと接地導体72aとの間に基板内蔵容量が形成され、受動部品内蔵基板が構成される。後で詳述する図4において、130a及び130bがそれぞれ容量極板61a,61bによる基板内蔵容量である。
【0021】
先ず、本実施形態の高周波電力増幅器モジュールの構造を説明する。基板表面ソルダーレジスト(図示せず)、表面導体層10、誘電体層20、内層導体層11、高誘電率誘電体層30、内層導体層12、誘電体層21、内層導体層13、高誘電率誘電体層31、誘電体層22、裏面導体層15及び基板裏面ソルダーレジスト(図示せず)が上下に積層され、多層基板が形成される。
【0022】
表面導体層10上に半導体素子100が銀ペーストなどの熱伝導性の良い導電性ペーストを用いて実装され、半導体素子100表面に形成された電極部(図示せず)と表面導体層10に形成された各表面導体パターン40a,40b及び40cとがボンディングワイヤ120a,120b及び120cを介して接続され、表面導体層10に形成された表面導体パターン40bと表面導体パターン40eとがボンディングワイヤ120dを介して接続され、表面導体層10上に複数の受動部品110が半田などの導電性ペーストを用いて実装される。
【0023】
そして、表面導体層10を樹脂封止(図示せず)で封止することにより、高周波電力増幅器モジュール1が完成する。封止は、その他に樹脂キャップ或いは金属キャップを用いて行なうことも可能である。
【0024】
裏面導体層15に形成された電力入力端子45aは、貫通孔50aを介して内層導体層13に形成された内層導体パターン43aに接続され、内層導体パターン43aは、貫通孔50b及び表面導体層10上に実装された受動部品110aを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40aに接続され、表面導体パターン40aは、ボンディングワイヤ120aを介して半導体素子100表面に形成された電力入力電極部(図示せず)に接続される。
【0025】
半導体素子100表面に形成された電力出力電極部(図示せず)は、ボンディングワイヤ120bを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40bに接続され、表面導体パターン40bは、表面導体層10に実装された受動部品110b及び貫通孔50cを介して裏面導体層15に形成された出力電極端子45bに接続される。
【0026】
裏面導体層15に形成された利得制御電源端子45cは、貫通孔50dを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40cに接続され、表面導体パターン40cは、ボンディングワイヤ120cを介して半導体素子100表面に形成された利得制御電源電極部(図示せず)に接続される。
【0027】
更に、裏面導体層15に形成された駆動電源端子45dは、貫通孔50eを介して内層導体層13に形成された内層導体パターン43bに接続され、内層導体パターン43bは、貫通孔50fを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40dに接続され、表面導体パターン40dは、表面導体層10上に実装された受動部品110cを介して表面導体パターン40bに接続される。
【0028】
半導体素子100を実装するために表面導体層10に形成された表面導体パターン(符号なし)は、複数の貫通孔(符号なし)を介して裏面導体層15に形成された接地導体75に熱的及び電気的に接続される。
【0029】
内層導体層11に形成された基板内蔵容量極板61aと、内層導体層12に形成された接地導体72aと、基板内蔵容量極板61a及び接地導体72aの間に配置された高誘電率誘電体層30とにより基板内蔵容量130aが形成される。基板内蔵容量極板61aは、貫通孔50gを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40eに接続され、表面導体パターン40eは、ボンディングワイヤ120dを介して表面導体パターン40bに接続され、シャント容量を形成する。
【0030】
同様に、内層導体層11に形成された基板内蔵容量極板61bと、内層導体層12に形成された接地導体72aと、基板内蔵容量極板61b及び接地導体72aとの間に配置された高誘電率誘電体層30とにより基板内蔵容量130bが形成される。基板内蔵容量極板61bは、貫通孔50hを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40bに接続され、シャント容量を形成する。
【0031】
一般に、接地導体72aは、内層導体層12の形成可能な領域に形成され、表面導体層10に形成された表面導体パターン40a及び40bの基準接地電位面となり、従って、表面導体パターン40a及び40bはマイクロストリップ線路となる。
【0032】
本実施形態の高周波電力増幅器モジュールにおいて、誘電体層20,21及び22は、比誘電率が約4.0のガラスエポキシ、エポキシ、アラミド不織布などの樹脂を主成分として構成される。誘電体層20及び22は、厚さが150μmであり、誘電体層21は厚さが200μmである。この誘電体層20及び22の厚さは、表面導体層10に形成される表面導体パターン40a及び40bの幅を導体損失が小さい0.3mmとした場合に表面導体パターン40a及び40bの特性インピーダンスが50Ω以上になる誘電体厚と、貫通孔50の接続信頼性が確保できる誘電体厚のトレードオフにより決定される。また、誘電体層21の厚さは、多層基板製造の容易性を考慮して決定される。
【0033】
また、高誘電率誘電体層30及び31は、セラミックなどの高誘電率無機材料粉末をエポキシなどの樹脂と混合した、比誘電率が約45のコンポジット材から構成される。高誘電率誘電体層30及び31の厚さは実用的な容量密度を考慮して20μmと、基板となる誘電体層20〜22の厚さよりも大幅に薄くしていることを特徴とする。この場合、基板内蔵容量の容量密度は約20pF/mm2となる。
【0034】
なお、誘電体層20,21及び22の比誘電率は約4.0としたが、用途に応じて4.0以上或いは4.0以下であっても構わない。更に、誘電体層20、21及び22、高誘電率誘電体層30及び31はともに樹脂を主成分とする材料からなる構成としたが、セラミックを主成分とする材料であっても構わない。
【0035】
また、誘電体層20及び22の厚さは150μmとしたが、用途に応じて150μm以上或いは150μm以下であっても構わない。同様に誘電体層21の厚さも、200μm以上或いは200μm以下であっても構わない。
【0036】
更に、説明の簡便上、誘電体層を5層、導体層を5層としたが、この層数以外の任意の層数であっても構わない。
【0037】
次に、本実施形態の高周波電力増幅器モジュールの動作を図4を参照して説明する。図4において、101は半導体素子100を構成するトランジスタであり、102a及び102bは半導体素子100に形成された受動部品である。トランジスタ101としてバイポーラトランジスタが用いられる。
【0038】
電力入力端子45aより入力された高周波信号は、内層導体パターン43a、受動部品110a、表面導体パターン40a及び受動部品102aを介して半導体素子100に形成されたトランジスタ101のベースに伝送され、トランジスタ101において増幅され、表面導体パターン40b及び受動部品110bを介して電力出力端子45bより出力される。
【0039】
トランジスタ101の利得制御電圧或いは利得制御電流は、利得制御電源端子45cに印加され、表面導体パターン40c及び受動部品102bを介してトランジスタ101のベースに印加される。トランジスタ101の駆動電圧或いは駆動電流は、駆動電源端子45dに印加され、内層導体パターン43b、表面導体パターン40d、受動部品110c及び表面導体パターン40bを介してトランジスタ101のコレクタに印加される。トランジスタ101のエミッタは接地される。
【0040】
トランジスタ101のベースと電力入力端子45aとの間は、直列の受動部品110a及び102a、導体パターン43a及び40a、シャント受動部品(符号なし)などにより、インピーダンス整合が実現される。同様に、トランジスタ101のコレクタと電力出力端子45bとの間は、直列の受動部品110b、導体パターン40b、及びシャント受動部品120d,130a及び130bなどにより、インピーダンス整合が実現され、高周波電力増幅器モジュールとして機能する。
【0041】
なお、説明の簡便上、利得制御電源端子45cとトランジスタ101のベースとの間には導体パターン40c及び受動部品102bのみを直列に接続したが、利得制御回路などを構成する能動素子を直列に挿入しても構わない。また、トランジスタ101のエミッタを接地した回路方式としたが、ベース接地或いはエミッタフォロアなどの回路方式であっても構わない。
【0042】
更に、トランジスタ101のバイポーラトランジスタは、小型化、高性能化の観点から、GaAs,InP或いはSiGeなどの化合物半導体から構成されるHBT(Heterojunction Bipolar Transistor)が望ましいが、HEMT(High Electron Mobility Transistor)或いはMOSFET(Metal Oxide Silicon Field Effect Transistor)などの電界効果トランジスタであっても構わない。
【0043】
次に、本実施形態の高周波電力増幅器モジュールの基板内蔵容量に関する効果を説明する。便宜的に、高周波電力増幅器モジュールを送信周波数が2GHzの移動体通信端末に用いた場合を例として挙げる。
【0044】
まず、基板内蔵容量130bを形成する部分の効果を図5を用いて説明する。比較のため、図4における容量130bを容量部品(チップ容量)で構成した従来の例を図5aに示す。容量部品110fの一端が誘電体層520の表面に形成された表面導体パターン540に接続され、容量部品110fの他端が誘電体層520の表面に形成された接地導体パターン570a及び貫通孔550を介して誘電体層520の裏面に形成された接地導体571に接続される。このような構造により、図5cの等価回路図に示したようなシャント容量回路が完成する。
【0045】
次に、基板内蔵容量130bの部分を改めて図5bに示す。先に述べたように、内層導体層11に形成された基板内蔵容量極板61bは、貫通孔50hを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40bに接続され、内層導体層11の下面に設けた高誘電率誘電体層30を介して同層の下面に形成された接地導体72aに対向する。この構造において、基板内蔵容量極板61b、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより基板内蔵容量130bが形成され、図5cの等価回路図に示したようなシャント容量回路が完成する。従って、図5a及び図5bに示した構造は、同等の回路である。
【0046】
送信周波数(基本波周波数)が2GHzの高周波電力増幅器モジュールの整合回路に用いられるシャント容量部品(伝送線路と接地導体パターンとを接続する容量)は、一般に1〜5pF程度である。現在一般的に使用されている容量部品の大きさは、長さ0.6mm×幅0.3mmであり、図5aのように実装した場合、最低0.3mm2の実装面積が必要となる。
【0047】
一方、本実施形態では、基板内蔵容量の容量密度は前述した通り約20pF/mm2であるので、例えば5pFを形成する基板内蔵容量極板61bの面積は0.25mm2となり、例えば長さ0.4mm×幅0.625mmの長方形で実現される。
【0048】
表面導体パターン40bは、一般的に特性インピーダンスが50Ω以上かつ低導体損失を有するマイクロストリップ線路で設計するため、幅が約0.3mmに設計される。このような構造により、内蔵容量極板61bは殆ど表面導体パターン40bの直下に配置されることになり、従って基板内蔵容量130bを形成するために表面導体層10の部分が使われることはなく、表面導体層10の有効利用面積は削減されない。
【0049】
また、表面導体パターン40bをマイクロストリップ線路とするために、接地導体72aは一般的に内層導体層12の可能な限り全ての部分に形成される。それ故、接地導体72aの一部を基板内蔵容量極板61bの対向極板としても、それによって内層導体層12の有効利用面積が減少することはない。
【0050】
以上の受動部品を多層基板に内蔵する本発明により、高周波電力増幅器モジュールの小型化が可能となる。
【0051】
ところで、高誘電率誘電体層30の厚さは20μmであり、比誘電率が誘電体層20の厚さ150μmに比べ十分に薄い。そのため、高誘電率誘電体層30の表面導体層10側(内層導体層11が形成される面)が接地導体とみなされる。従って、高誘電率誘電体層30の有無による表面導体パターン40bの特性インピーダンスは、誘電体層20の厚さ及び表面導体パターン40bの幅でほぼ決定され、多層基板の一内層全面に高誘電率誘電体層が配置されることによる表面導体パターン40bの設計値との相違は、無視できるほど小さい。
【0052】
一方、基板内蔵容量極板61bと貫通孔50hを介して接続される表面導体パターン40bの接続部とが同電位であるため、直下に基板内蔵容量極板61bがある表面導体パターン40bの部分は、表面導体パターン40bのそれ以外の部分とは異なり、マイクロストリップ線路とは異なる設計が必要になる。
【0053】
そのことから、基板内蔵容量130bの容量部分を拡大して示した図6において、基板内蔵容量極板61bの形状が長方形である場合、表面導体パターン40bの高周波信号伝送方向に平行方向の長さをLと定義し、垂直方向の幅をWと定義すると、W≧Lである方が望ましい。このようにすることにより、異なる設計が必要になる部分を少なくすることができる。しかし、W≦Lであっても、高周波電力増幅器モジュールの小型化に対する効果が失われることはないため、構わない。
【0054】
次に、基板内蔵容量130aを形成する部分の効果を図7を用いて説明する。比較のため、図4における基板内蔵容量130aを容量部品(チップ容量)で構成した従来の例を図7aに示す。容量部品110fの一端が誘電体層520の表面に形成された表面導体パターン540に接続され、容量部品110fの他端が誘電体層520の表面に形成された接地導体パターン570b及び貫通孔550を介して誘電体層520の裏面に形成された接地導体571に接続される。このような構造により、図7cの等価回路図に示したようなシャント容量回路が完成する。
【0055】
続いて、基板内蔵容量130aの部分を改めて図7bに示す。先に述べたように、内層導体層11に形成された基板内蔵容量極板61aは、貫通孔50gを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40eに接続され、内層導体層11の下面に設けた高誘電率誘電体層30を介して同層の下面に形成された接地導体72aに対向する。また、表面導体パターン40eは、ボンディングワイヤ120dを介して表面導体パターン40bに接続される。この構造において、基板内蔵容量極板61a、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより基板内蔵容量130aが形成され、図7cの等価回路図に示したようなシャント容量回路が完成する。従って、図7a及び図7bに示した構造は、同等の回路である。
【0056】
一般に、高周波電力増幅器モジュールを量産する場合、従来は、モジュール上に実装する受動部品などのばらつき、多層基板特性のばらつきを吸収するため、受動部品を実装する位置(マイクロストリップ線路への接続位置)が変えられるように設計が行なわれる。例えば、図7に示される等価回路のような、シャント容量回路を形成する場合、接地導体パターン570bは、表面導体パターン540に沿うように広く形成される。そして、容量部品110fを実装する位置の調整が行なわれる。この理由は、量産時に受動部品を実装するコスト、時間を考慮すると、受動部品の実装可能角度が表面導体パターン540に平行或いは垂直の2通りに制限されることによる。
【0057】
一方、本実施形態では、貫通孔50gを介して基板内蔵容量極板61aと接続される表面導体パターン40eと、表面導体パターン40bとをボンディングワイヤ120d−1、120d−2或いは120d−3を介して接続することにより、シャント容量の表面導体パターン40bへの接続点を変えることが容易となる。また、表面導体パターン40eの面積は、従来の場合の表面導体パターン570bよりも小さくすることが可能である。
【0058】
以上の受動部品を多層基板に内蔵する本発明により、高周波電力増幅器モジュールの小型化が可能となる。また、ボンディングワイヤ120dの形成角度を任意に設定することができるため、量産化が容易となる。更に、ボンディングワイヤ120dは、受動部品に比べ安価であるため、量産コスト低減が可能となる。
【0059】
なお、表面導体パターン40e、基板内蔵容量極板61a及び貫通孔50gの組合せを複数形成し、ボンディングワイヤ120dを介して表面導体パターン40bとを接続する表面導体パターン40eを選択することにより、基板内蔵容量の容量値の調整が可能となる。
【0060】
図8は、本実施形態の高周波電力増幅器モジュールを構成する基板内蔵容量の効果の説明図である。図8において、グラフ横軸は周波数(単位:GHz)であり、グラフ縦軸は回路の利得(単位:dB)である。
【0061】
さて、電力増幅器においては、基本波周波数の整数倍の周波数の高調波が発生することがある。発生した高調波は、妨害波となる。そのため、高周波電力増幅器モジュールを設計する上で、高調波に減衰を与えるフィルタ回路の設置が必要になる。
【0062】
送信周波数(基本波周波数)が2GHzの電力増幅器では、例えば周波数が2倍の高調波に対しては、図8に示すような4GHzで減衰を持つ(通過損失の大きい)フィルタ特性が採用される。
【0063】
従来、一般的に、上記フィルタ回路は、容量性部品と誘導性部品を直列に配置して接地し、上記容量性部品の容量値及び誘導性部品のインダクタンス値を調整し、直列共振周波数を4GHzに設定することにより実現されていた。
【0064】
一方、本発明においては、上記容量性部品として基板内蔵容量極板61a、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aによって形成される基板内蔵容量130aを用い、上記誘導性部品としてボンディングワイヤ120dを用いることによって上記フィルタ回路を形成する。誘導性部品のインダクタンス値は、ボンディングワイヤ120dの本数、長さにより容易に調整が可能である。
【0065】
更に、容量性部品が多層基板に内蔵されているため、先に図7を用いて説明したように、受動部品を多層基板表面に実装する従来の場合に比べて小型化が可能である。従って、本発明の高周波電力増幅器モジュールでは、フィルタ回路である高調波電力低減回路を容易に形成しかつ、モジュールの小型化が可能となる。
【0066】
なお、ボンディングワイヤの材質は、低抵抗である金を主成分とするのが望ましいが、用途によってはアルミニウムやその他の導体を主成分としても構わない。また、ボンディングワイヤの太さは用途により任意に設定可能である。
【0067】
再び図2及び図3に戻り、本実施形態では、高誘電率誘電体層30に加えて、高誘電率誘電体層31が誘電体層22の上面に形成される。このように、高誘電率誘電体層30及び31を多層基板面内一様に配置することにより、多層基板の反りを低減することが可能である。
【0068】
また、高誘電率誘電体層30及び31を誘電体層21の上下対称の位置に配置することにより、多層基板の反りを一層低減することが可能である。ただし、用途、コスト、多層基板製造方法によっては、必ずしも高誘電率誘電体層30及び31を誘電体層21の上下対称の位置に配置しなくても良い。また、高誘電率誘電体層30及び31のうちいずれか一方のみを配置しても構わない。
【0069】
次に、本実施形態の高周波電力増幅器モジュールを構成する多層基板の製造方法を説明する。多層基板は、ビルドアップ法、シート積層法或いは印刷法などの一般的な多層基板製造方法により容易に作製可能であるが、便宜的に樹脂を主成分する誘電体を用いた多層基板製造方法について説明する。
【0070】
まず、銅箔厚3μm、板厚0.2mmの両面銅箔張ガラスエポキシ積層板に所望のドリル穴明けを行なう。この基板に超音波洗浄とアルカリ過マンガン酸液で炭化した樹脂カスを除去後、触媒付与、密着促進後無電解銅めっきを行ない、ドリル穴内壁と銅箔表面に約15μmの無電解銅めっき層を形成する。この基板表面に次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする黒化処理と、ジメチルアミノボランを主成分とする還元処理によって、粗化処理を行なう。
【0071】
この基板のドリル穴内にスクリーン印刷によりペーストタイプの熱硬化型絶縁材料を充填し、170℃で60分間の熱処理により硬化させることにより誘電体層21の貫通孔が形成される。
【0072】
続いて、基板をバフブラシにより研磨し、余分な絶縁材料を除去する。この基板に触媒付与、密着促進後無電解銅めっきを行ない、基板表面に約15μmの無電解銅めっき層を形成する。次いで、同基板表面に所望のエッチングレジストを形成し、不要な銅をエッチング除去して、基板内蔵容量の極板を含む回路パターン(内層導体層12及び13)を有する回路板が作製される。
【0073】
この回路板表面にロールコータを用いてペーストタイプの熱硬化型絶縁材料を基板絶縁層表面から約40μm、回路パターン表面から約5μm塗布し、170℃で60分間の熱処理により硬化さる。
【0074】
硬化後の基板をバフブラシにより回路パターン表面が現れるまで研磨し、余分な絶縁材料を除去する。このときに回路板表面の凹凸は3μm以下である。この回路板の回路表面に次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする黒化処理と、ジメチルアミノボランを主成分とする還元処理によって、粗化処理を行なう。
【0075】
粗化処理後の回路板の片面に18μm銅箔の付いた高誘電率樹脂接着剤を温度170℃、圧力1.5MPa、加熱加圧時間60分のプレス条件で積層一体化することにより高誘電率誘電体層30及び31が形成される。この高誘電率樹脂接着剤は、1MHzの比誘電率が45のエポキシ樹脂系接着剤である。この基板の表面に所望のエッチングレジストを形成し、不要な銅箔をエッチング除去して、コンデンサの極板を含む回路パターン(内層導体層11)を形成する。
【0076】
この回路板の回路表面に、次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする黒化処理と、ジメチルアミノボランを主成分とする還元処理を施すことによって、粗化処理を行なう。
【0077】
続いて、(1)35μmキャリア銅箔付き厚み3μmの銅箔、(2)厚み80μmのフィラー入りガラスエポキシプリプレグを2枚、(3)回路板、(4)厚み80μmのフィラー入りガラスエポキシプリプレグを2枚、(5)35μmキャリア銅箔付き厚み3μmの銅箔の順に重ね、温度170℃、圧力1.5MPa、加熱加圧時間60分のプレス条件で積層一体化する。
【0078】
次いで、キャリア銅箔を剥がし、不要な基板端部を切断後、この基板の表面に所望のエッチングレジストを形成し、不要な銅箔をエッチング除去して、所望の箇所にφ0.15mmの窓穴を形成する。
【0079】
この基板表面に設けた窓穴の箇所に炭酸ガスレーザを用いて、出力パワー26mJ、パルス幅100μs、ショット数6回の条件でレーザ穴明けを行なう。
【0080】
超音波洗浄とアルカリ過マンガン酸液で炭化した樹脂カスを除去後、洗浄触媒付与、密着促進後無電解銅めっきを行ない、レーザ穴内壁と銅箔表面に約20μmの無電解銅めっき層を形成することにより誘電体層20及び22の貫通孔が形成される。この基板表面のパッドや回路パターンなど必要な箇所にエッチングレジストを形成し、不要な銅をエッチング除去して、外層回路(表面導体層10及び裏面導体層15)を形成する。
【0081】
次いで、この基板表面にソルダーレジストをロールコータで30μm塗布、乾燥後に露光・現像して所望の箇所にソルダーレジストを形成する。その後、3μmの無電解ニッケルめっきと0.1μmの無電解金めっきを外層回路パターン露出部表面層に形成して、基板内蔵容量を有する多層基板が得られる。
【0082】
(発明の実施の形態2)
図9に、図1及び図7におけるボンディングワイヤ120dを細長い表面導体パターンに代えて構成した実施形態を示す。図9aは、表面導体層10及び内層導体層11を多層基板上面側から見た透視図であり、図9bは、図9aにおけるC−C線に沿って切断した断面図である。
【0083】
図9において、40h及び40iは細長い表面導体パターン、50l及び50kは貫通孔、61eは基板内蔵容量極板である。基板内蔵容量極板61e、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより基板内蔵容量が形成される。基板内蔵容量極板61eは、表面導体パターン40hに貫通孔50kを介して接続されると同時に、表面導体パターン40iに貫通孔50lを介して接続され、表面導体パターン40h及び40iは、表面導体パターン40bの互いに異なる位置に接続される。
【0084】
実施形態1ではボンディングワイヤ120dと表面導体パターン40eを介して基板内蔵容量極板61aを表面導体パターン40bに接続することにより、基板内蔵容量と表面導体パターン40bとの接続部分を可変可能としたが、本実施形態では表面導体パターン40h及び40iを介して基板内蔵容量極板61eを表面導体パターン40bに接続し、表面導体パターン40h或いは40iをレーザーカットなどの手法を用いて切断することにより基板内蔵容量と表面導体パターン40bとの接続部分を可変可能としている。実施形態1のようにボンディングワイヤを用いた場合、ボンディングワイヤは半田による侵食を受けるため、ボンディング領域は他の受動部品実装領域との間にソルダーレジストが必要であるのに対し、本実施形態ではソルダーレジストの必要がないため、実施形態1より小型化が可能となる。
【0085】
本実施形態の高周波電力増幅器モジュールを構成する多層基板の製造方法は、実施形態1の場合と同様である。
【0086】
(発明の実施の形態3)
図10に、基板内蔵容量をトリミング(調整)可能にした実施形態を示す。図10aは、表面導体層10及び内層導体層11を多層基板上面側から見た透視図であり、図10bは、図10aにおけるD−D線に沿って切断した断面図である。
【0087】
図10において、40jは表面導体パターン、50m及び50nは貫通孔、61f及び61gは基板内蔵容量極板である。基板内蔵容量極板61f、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより基板内蔵容量が形成され、基板内蔵容量極板61fは表面導体パターン40bに貫通孔50mを介して接続される。基板内蔵容量極板61g、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aによりトリミング用の基板内蔵容量が形成され、基板内蔵容量極板61gは表面導体パターン40jに貫通孔50nを介して接続される。表面導体パターン40jは表面導体パターン40bに接続される。基板内蔵容量極板61fは、基板内蔵容量極板61gに比べて面積が等しいか或いは大きいことを特徴とする。
【0088】
実施形態1及び実施形態2にて説明した図5、図7或いは図9に示される構造では、基板内蔵容量の容量値がトリミングできないのに対し、本実施形態では、基板内蔵容量極板61gをトリミング用とするので、場合に応じて表面導体パターン40jをレーザーカットなどの手法を用いて切断することにより、容量値のトリミングが可能である。
【0089】
本実施形態の高周波電力増幅器モジュールを構成する多層基板の製造方法は、実施形態1の場合と同様である。
【0090】
(発明の実施の形態4)
図11に、2個のトリミング用基板内蔵容量極板を有する実施形態を示す。図11aは、表面導体層10及び内層導体層11を多層基板上面側から見た透視図であり、図11bは、図11aにおけるE−E線に沿って切断した断面図である。
【0091】
図11において、40kは表面導体パターン、50oは貫通孔、61hは基板内蔵容量極板である。基板内蔵容量極板61f、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより基板内蔵容量が形成され、基板内蔵容量極板61fは表面導体パターン40bに貫通孔50mを介して接続される。基板内蔵容量極板61g、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより一方のトリミング用の基板内蔵容量が形成される。基板内蔵容量極板61gは表面導体パターン40jに貫通孔50nを介して接続され、表面導体パターン40jは表面導体パターン40bに接続される。基板内蔵容量極板61h、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより他方のトリミング用の基板内蔵容量が形成される。基板内蔵容量極板61hは表面導体パターン40kに貫通孔50oを介して接続され、表面導体パターン40kは表面導体パターン40bに接続される。基板内蔵容量極板61fは基板内蔵容量極板61g及び61hに比べて面積が等しいか或いは大きいことを特徴とする。また、表面導体パターン40jと40b、表面導体パターン40kと40bとの接続部分は、互いに貫通孔50mに対して反対側であることを特徴とする。
【0092】
実施形態3ではトリミング用基板内蔵容量極板が1個であるのに対し、本実施形態では基板内蔵容量極板61g及び61hとトリミング用基板内蔵容量極板を2個としたため、容量値のより精密なトリミングが可能となる。
【0093】
本実施形態の高周波電力増幅器モジュールを構成する多層基板の製造方法は、実施形態1の場合と同様である。
【0094】
(発明の実施の形態5)
図12に、2個のトリミング用基板内蔵容量極板を有する別の実施形態を示す。図12aは、表面導体層10及び内層導体層11を多層基板上面側から見た透視図であり、図12bは、図12aにおけるF−F線に沿って切断した断面図である。
【0095】
図12において、40l及び40mは表面導体パターン、50p及び50qは貫通孔、61i及び61jは基板内蔵容量極板である。基板内蔵容量極板61f、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより基板内蔵容量が形成され、基板内蔵容量極板61fは表面導体パターン40bに貫通孔50mを介して接続される。基板内蔵容量極板61i、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより一方のトリミング用基板内蔵容量が形成される。基板内蔵容量極板61iは表面導体パターン40lに貫通孔50pを介して接続され、表面導体パターン40lは表面導体パターン40bに接続される。基板内蔵容量極板61j、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより他方のトリミング用基板内蔵容量が形成される。基板内蔵容量極板61jは表面導体パターン40mに貫通孔50qを介して接続され、表面導体パターン40mは表面導体パターン40bに接続される。基板内蔵容量極板61fは基板内蔵容量極板61i及び61jに比べて面積が等しいか或いは大きいことを特徴とする。
【0096】
本実施形態では、表面導体パターン40lと40b、表面導体パターン40mと40bとの接続部分は、互いに貫通孔50mに対して同じ側であることを特徴とする。本実施形態も基板内蔵容量極板61i及び61jとトリミング用基板内蔵容量極板を2個としたため、実施形態4の場合と同様、容量値のより精密なトリミングが可能となる。
【0097】
本実施形態の高周波電力増幅器モジュールを構成する多層基板の製造方法は、実施形態1の場合と同様である。
【0098】
(発明の実施の形態6)
図13に、2個の基板内蔵容量極板を有する実施形態を示す。図13aは、表面導体層10及び内層導体層11を多層基板上面側から見た透視図であり、図13bは、図13aにおけるG−G線に沿って切断した断面図である。
【0099】
図13において、基板内蔵容量極板61g、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより一方の基板内蔵容量が形成される。基板内蔵容量極板61gは表面導体パターン40jに貫通孔50nを介して接続され、表面導体パターン40jは表面導体パターン40bに接続される。基板内蔵容量極板61h、高誘電率誘電体層30及び接地導体72aにより、他方の基板内蔵容量が形成される。基板内蔵容量極板61hは表面導体パターン40kに貫通孔50oを介して接続され、表面導体パターン40kは表面導体パターン40bに接続される。表面導体パターン40jと40b、表面導体パターン40kと40bとの接続部分は互いに貫通孔50mに対して反対側であることを特徴とする。
【0100】
本実施形態のトリミングに関する効果は実施形態3と同様であるが、レーザーカットなどによるトリミングを行なわない場合は、表面導体パターン40bの両側に同程度の大きさの基板内蔵容量が接続されることにより、回路の高周波特性の向上が可能となる。
【0101】
本実施形態の高周波電力増幅器モジュールを構成する多層基板の製造方法は、実施形態1の場合と同様である。
【0102】
(発明の実施の形態7)
図14及び図15に、多層基板上面側の高誘電率誘電体層に加えて、多層基板裏面側の高誘電率誘電体層にも基板内蔵容量極板を形成した実施形態を示す。図14は、本実施形態の斜視層構成図であり、図15は、図14におけるH−H線に沿って切断した断面図である。
【0103】
図14及び図15において、14は内層導体層、50r、50s、50t及び50uは貫通孔、63a及び63bは、内層導体層13に形成された基板内蔵容量極板、64a及び64bは、内層導体層14に形成された基板内蔵容量極板である。
【0104】
本実施形態の積層構造は、高誘電率誘電体層31と誘電体層22との間に内層導体層14を有し、受動部品110a及び110bを有さない点を除いて、上記実施の形態1と基本的に同様である。
【0105】
また、本実施形態の高周波電力増幅器モジュールの構造は次の点を除いて、実施形態1と基本的に同様である。基板内蔵容量極板63a、高誘電率誘電体層31及び基板内蔵容量極板64aにより一方の新たな基板内蔵容量が形成され、基板内蔵容量極板63b、高誘電率誘電体層31及び基板内蔵容量極板64bにより他方の新たな基板内蔵容量が形成される。
【0106】
裏面導体層15に形成された高周波電力入力端子45aは、貫通孔50rを介して基板内蔵容量極板64aに接続され、基板内蔵容量極板63aは、貫通孔50sを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40aに接続される。この接続により、電力入力端子45aと表面導体パターン40aの間に上記の一方の新たな基板内蔵容量が図4における受動部品(容量性部品)110aに代わって接続されることになる。なお、表面導体パターン40aは、ボンディングワイヤ120aを介して半導体素子100表面に形成された電力入力電極部(図示せず)に接続される。
【0107】
半導体素子100表面に形成された電力出力電極部(図示せず)は、ボンディングワイヤ120bを介して表面導体層10に形成された表面導体パターン40bに接続される。表面導体パターン40bは、貫通孔50tを介して基板内蔵容量極板63bに接続され、基板内蔵容量極板64bは、貫通孔50uを介して裏面導体層15に形成された電力出力端子45bに接続される。この接続により、表面導体パターン40bと電力出力端子45bの間に上記の他方の新たな基板内蔵容量が図4における受動部品(容量性部品)110bに代わって接続されることになる。
【0108】
本実施形態において、高誘電率誘電体層31は、高誘電率誘電体層30より比誘電率が同等以上であることを特徴とする。
【0109】
本実施形態の高周波電力増幅器モジュールの動作は、実施形態1と基本的に同様である。
【0110】
本実施形態の効果は、上記実施の形態1により得られる効果に加え、次の効果がある。即ち、本実施形態では、実施形態1において表面導体層10上に実装された受動部品110a及び110bを基板内蔵容量としているため、更なるモジュールの小型化が可能である。
【0111】
送信周波数(基本波周波数)が2GHzの高周波電力増幅器モジュールの整合回路に用いられる直流電流遮断用の直列容量部品は、一般に10〜20pF程度である。高誘電率誘電体層31の比誘電率が約45であり、容量密度が約20pF/mm2とすると、例えば20pFの容量を形成する基板内蔵容量極板63a(63b)の面積は1.0mm2となり、例えば1.0mm×1.0mmの正方形で実現される。しかし、一般的に直列容量は、整合回路に用いられるシャント容量(伝送線路と接地導体パターンとを接続する容量)に比べ容量値精度が低くても高周波電力増幅器モジュールの性能を低下させることが殆どないため、高誘電率誘電体層31には、誘電率にばらつきがありながらも高い誘電率が得られる誘電体を用いることが望ましく、従って、高誘電率誘電体層31の容量密度は、高誘電率誘電体層30と同等以上であることが望ましい。
【0112】
なお、利得制御電源端子に配置されているシャント容量(バイパス容量)は一般的に100pF程度以上であるが、上記の直列容量の場合と同様に、整合回路に用いられるシャント容量に比べ容量値精度が低くても高周波電力増幅器モジュールの性能を低下させることは殆どない。
【0113】
ところで、基板内蔵容量極板63bと表面導体パターン40bとを接続する貫通孔50tのような2枚の誘電体層を通る貫通孔の有するインダクタンス値は一般的に約0.1nHであり、抵抗値は約0.1Ωである。このような貫通孔を数pFの基板内蔵容量と直列に配置すると、貫通孔の有するインダクタンス値及び抵抗値の影響を考慮することが必要になってくる。
【0114】
一方、直列容量やバイパス容量のように10pF程度以上の基板内蔵容量と直列に配置しても、貫通孔の有するインダクタンス値の影響は殆ど無視することができる。従って、数pFの容量を必要とする整合回路のシャント用基板内蔵容量は貫通孔が短くなる多層基板表面側に配置し、10pF程度以上の基板内蔵容量は多層基板裏面側に配置することが望ましい。
【0115】
従って、本実施形態では、受動部品を多層基板の複数の層に内蔵しかつ、多層基板表面側の高誘電率誘電多層の容量密度を多層基板裏面側の高誘電率誘電多層より大きくすることにより、モジュールの更なる小型化が可能となる。
【0116】
本実施形態の高周波電力増幅器モジュールを構成する多層基板の製造方法は、実施形態1の場合と同様である。
【0117】
(発明の実施の形態8)
図16は、本発明を移動体通信端末に適用した実施形態の回路図であり、図17は、同移動体通信端末の一部分の断面図である。
【0118】
図16において、200はマイクロホン、210はベースバンド信号処理装置、220は局部発信器、230a及び230bはミキサ、240は利得可変増幅器、250a及び250bはフィルタ、260はダイプレクサ、270はアンテナ、280は低雑音増幅器、290はスピーカである。また、利得可変増幅器240、高周波電力増幅器モジュール1及びフィルタ250aにより送信の高周波回路2が構成される。高周波電力増幅器モジュール1は、実施形態1〜7のいずれでも良い。
【0119】
図17において、420、421及び422は誘電体層、430及び431は高誘電率誘電体層、443aは内層導体パターン、461a、461b、462a及び462bは基板内蔵容量極板、450a、450b、450c、450d及び450eは貫通孔である。
【0120】
本実施形態では、多層基板で構成される高周波電力増幅器モジュール1を初め、図16に示す各部が大型の多層基板の上に搭載されている。そのような大型の多層基板はマザーボードとなるものであるが、その積層構造は、実施形態1〜7の多層基板と基本的に同様である。以下に、本実施形態の移動体通信端末を構成するマザーボードの高周波回路2の部分の構造を説明する。
【0121】
図17において、基板内蔵容量極板462a、高誘電率誘電体層430及び基板内蔵容量極板461aにより一方の基板内蔵直列容量が形成され、同様に、基板内蔵容量極板461b、高誘電率誘電体層430及び基板内蔵容量極板462bにより他方の基板内蔵直列容量が形成される。
【0122】
利得可変増幅器240の電力出力端子(符号なし)は貫通孔450a、内層導体パターン443a及び貫通孔450bを介して上記一方の基板内蔵直列容量に接続され、基板内蔵容量極板461aは貫通孔450cを介して高周波電力増幅器モジュール1の電力入力端子(符号なし)に接続される。
【0123】
高周波電力増幅器モジュール1の電力出力端子(符号なし)は、貫通孔450dを介して上記他方の基板内蔵直列容量に接続され、基板内蔵容量極板462bは、貫通孔450eを介してフィルタ250aの電力入力端子(符号なし)に接続される。
【0124】
なお、本実施形態の移動体通信端末を構成するマザーボードは、マザーボード表面上に実装された高周波電力増幅器モジュール1などの高周波部品の直下を含む部分に少なくとも1個以上の基板内蔵容量極板を有することを特徴とする。
【0125】
次に、本実施形態の移動体通信端末の動作を説明する。マイクロホン200を介して入力された音声は、ベースバンド信号処理装置210にて変換され、局部発信器220で生成された局部発振信号とミキサ230aで合成され、利得可変増幅器240を介して高周波電力増幅器モジュール1に入力される。高周波電力増幅器モジュール1で増幅された信号はフィルタ250aを介してダイプレクサ260に入力され、アンテナ270を介して電波として送信される。
【0126】
一方、アンテナ260を介して受信された電波は、信号としてダイプレクサ260に入力され、フィルタ250bを介して低雑音増幅器280に入力される。低雑音増幅器280から出力された信号は、局部発信器220で生成された局部発振信号とミキサ230bで合成され、ベースバンド信号処理装置210にて変換されてスピーカ290から音声として出力される。
【0127】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態の移動体通信端末を構成するマザーボードでは、高周波電力増幅器モジュール1の電力入力端子と利得可変増幅器240とを一方の基板内蔵直列容量を介して接続し、高周波電力増幅器モジュール1の電力出力端子とフィルタ250aとを他方の基板内蔵直列容量を介して接続しているため、高周波電力増幅器モジュール1の入力整合回路及び出力整合回路に配置される直列電流遮断用の直列容量(実施形態1の場合は、図4における受動部品110a及び110b)が必要なくなり、高周波電力増幅器モジュール1の小型化が可能となる。
【0128】
更に、上記直列電流遮断用の直列容量が基板内蔵直列容量としてマザーボードのうち高周波電力増幅器モジュール1が実装される部分の直下を含む部分に形成されるため、マザーボード表面導体層の有効利用面積を削減することなく、送信の高周波回路2の面積を小にすることが可能となる。
【0129】
なお、本実施形態のマザーボードでは、マザーボード上に実装される高周波部品間を接続する直列電流遮断用の直列容量のみならず、マザーボード上に実装される高周波部品内に配置される任意の受動部品、例えばバイパス容量などを基板内蔵容量とすることも可能である。そのように構成することにより、上記と同等の効果が得られることは言うまでもない。
【0130】
本実施形態の移動体通信端末を構成する多層基板の製造方法は、実施形態1の場合と同様である。
【0131】
(発明の実施の形態9)
図18に、自動利得制御装置を備えた移動体通信端末の実施形態を示す。図19は、同移動体通信端末の一部分の断面図である。
【0132】
図18において、300はカプラ、310は自動利得制御装置、3は高周波電力増幅器モジュール1及びカプラ300より構成される高周波回路である。
【0133】
図19において、440a、440b及び440cは表面導体パターン、461c及び462cは基板内蔵容量極板、450f、450g及び450hは貫通孔である。
【0134】
本実施形態を構成する多層基板(マザーボード)の積層構造は、上記実施の形態1乃至実施の形態8と基本的に同様である。
【0135】
本実施形態の移動体通信端末を構成するマザーボードの構造を説明する。図19において、基板内蔵容量極板461c、高誘電率誘電体層430及び基板内蔵容量極板462cにより基板内蔵容量が形成される。高周波電力増幅器モジュール1の電力出力端子(符号なし)は貫通孔450fを介して基板内蔵容量極板461cに接続され、基板内蔵容量極板461cは貫通孔450gを介して表面導体パターン440bに接続され、表面導体パターン440bはフィルタ250aの電力入力端子(図示せず)に接続される。
【0136】
一方、基板内蔵容量極板462cは貫通孔450hを介して表面導体パターン440cに接続され、表面導体パターン440cは自動利得制御装置310の信号入力端子(図示せず)に接続される。このようにして、カプラ300の容量が上記の基板内蔵容量によって構成される。
【0137】
なお、本実施形態を構成するマザーボードは、マザーボード表面上に実装された高周波電力増幅器モジュール1などの高周波部品の直下を含む部分に少なくとも1個以上の基板内蔵容量極板を有することを特徴とする。
【0138】
次に、本実施形態の移動体通信端末の動作を説明する。マイクロホン200を介して入力された音声はベースバンド信号処理装置210にて変換され、局部発信器220で生成された局部発振信号とミキサ230aで合成され、利得可変増幅器240を介して高周波電力増幅器モジュール1に入力される。高周波電力増幅器モジュール1で増幅された信号はカプラ300に入力され、フィルタ250aを介してダイプレクサ260に入力され、アンテナ270を介して電波として送信される。
【0139】
一方、カプラ300を構成する容量を介して出力される信号は、自動利得制御装置310を介して利得可変増幅器240に入力され、高周波電力増幅器モジュール1の出力電力に応じて帰還をかけ、アンテナ270から送信される電波の電力を調整する。
【0140】
また、アンテナ270を介して受信された電波は、信号としてダイプレクサ260に入力され、フィルタ250bを介して低雑音増幅器280に入力される。低雑音増幅器280から出力された信号は、局部発信器220で生成された局部発振信号とミキサ230bで合成され、ベースバンド信号処理装置210にて変換されてスピーカ290から音声として出力される。
【0141】
次に、本実施形態の移動体通信端末の効果を説明する。本実施形態の移動体通信端末は、実施形態8に加えてカプラ300及び自動利得制御装置310による帰還ループを有することにより、アンテナ270から送信される電波の電力を調整することが可能となる。更に、カプラ300は基板内蔵直列容量としてマザーボードのうち高周波電力増幅器モジュール1或いは他の高周波部品が実装される部分の直下を含む部分に形成されるため、マザーボード表面導体層の有効利用面積を削減することなく、高周波電力増幅器モジュール1及びカプラ300より構成される高周波回路3の実現が可能となる。即ち、本実施形態の移動体通信端末では、カプラ300の容量を基板内蔵容量としてマザーボード内に形成するため、マザーボード表面導体層の有効利用面積を削減することなく、高機能化が可能となる。
【0142】
本実施形態の移動体通信端末を構成する多層基板の製造方法は、実施形態1の場合と同様である。
【0143】
以上に説明した各実施形態では、本発明の受動素子内蔵基板と、それを用いた、移動体通信用端末に用いられる高周波電力増幅器モジュール及び移動体通信端末を構成する高周波回路部分を採り上げた。本発明の受動素子内蔵基板の適用は、それらモジュールや回路に限定されるものではなく、高周波で動作するルータなどの回路或いはCPU(Central Processing Unit)などに適応することが可能である。
【0144】
【発明の効果】
本発明によれば、多層基板の表面の有効利用面積を削減することなく受動素子が多層基板に内蔵されるので、受動素子内蔵基板の小型化が可能になる。更に、受動素子が薄い高誘電率誘電体層を挟んで形成されるので受動素子内蔵基板の薄型化が可能になる。また、接続位置の調整或いはトリミングが可能になるので、本発明の受動素子内蔵基板及びそれを用いた高周波回路モジュールの量産化が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る受動素子内蔵基板及びそれを用いた高周波回路の第1の発明の実施の形態を説明するための斜視層構成図。
【図2】図1の第1の実施形態をA−A線に沿って切断した断面図。
【図3】図1の第1の実施形態をB−B線に沿って切断した断面図。
【図4】第1の実施形態の高周波回路を説明するための回路図。
【図5】第1の実施形態における基板内蔵容量の効果の説明するための図。
【図6】第1の実施形態における基板内蔵容量の効果の説明するための別の図。
【図7】第1の実施形態における基板内蔵容量の効果の説明するための更に別の図。
【図8】第1の実施形態における基板内蔵容量の効果の説明するための曲線図。
【図9】本発明の第2の発明の実施の形態を説明するための構造図。
【図10】本発明の第3の発明の実施の形態を説明するための構造図。
【図11】本発明の第4の発明の実施の形態を説明するための構造図。
【図12】本発明の第5の発明の実施の形態を説明するための構造図。
【図13】本発明の第6の発明の実施の形態を説明するための構造図。
【図14】本発明の第7の発明の実施の形態を説明するための斜視層構成図。
【図15】図14の第7の実施形態をH−H線に沿って切断した断面図。
【図16】本発明の第8の発明の実施の形態を説明するための回路図。
【図17】本発明の第8の発明の実施の形態を説明するための断面図。
【図18】本発明の第6の発明の実施の形態を説明するための回路図。
【図19】本発明の第6の発明の実施の形態を説明するための断面図。
【符号の説明】
1…高周波電力増幅器モジュール、2,3…高周波回路、10…表面導体層、11〜14…内層導体層、15…裏面導体層、20〜22…誘電体層、30,31…高誘電率誘電体層、40…表面導体パターン、43…内層導体パターン、45a…電力入力端子、45b…電力出力端子、45c…利得制御電源端子、45d…駆動電源端子、50…貫通孔、61,63,64…基板内蔵容量極板、72,75…接地導体、100…半導体素子、101…トランジスタ、102,110…受動部品、120…ボンディングワイヤ、130…基板内蔵容量。
Claims (10)
- 複数の誘電体層を積層してなる多層基板を具備し、
該複数の誘電体層の内の第1の誘電体層は該多層基板の表面を有し、該第1の誘電体層に接する第2の誘電体層の誘電率は該第1の誘電体層よりも高く、かつ厚さは該第1の誘電体層よりも薄く、
該第1の誘電体層と該第2の誘電体層の間に第1の容量極板が配置され、
該第2の誘電体層の、該第1の容量極板が配置されている面とは反対側の面に接地導体が配置され、
該第1の容量極板と該接地導体と上記第2の誘電体層とで容量性部品が形成されていることを特徴とする受動部品内蔵基板。 - 上記多層基板の表面に第1の導体パターンが配置され、
上記第1の容量極板と該第1の導体パターンの間に該第1の容量極板と該第1の導体パターンを電気的に接続するための第1の貫通孔を備えていることを特徴とする請求項1に記載の受動部品内蔵基板。 - 該第1の導体パターンと上記接地導体とによりマイクロストリップ線路が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の受動部品内蔵基板。
- 上記多層基板の表面に第2の導体パターンが配置され、
上記第1の容量極板と該第2の導体パターンの間に該第1の容量極板と該第2の導体パターンを電気的に接続するための第2の貫通孔を備えていることを特徴とする請求項1に記載の受動部品内蔵基板。 - 上記多層基板の表面に第3の導体パターンが配置され、
上記第2の導体パターンと該第3の導体パターンとがボンディングワイヤを介して接続されていることを特徴とする請求項4に記載の受動部品内蔵基板。 - 上記多層基板の表面に第3の導体パターンが配置され、
上記第2の導体パターンと該第3の導体パターンとで導体が連続していることを特徴とする請求項4に記載の受動部品内蔵基板。 - 該多層基板の裏面を有する第3の誘電体層と上記第2の誘電体層との間に第4の誘電体層を上記第2の誘電体層側に介在して第5の誘電体層が配置されており、
該第5の誘電体層の誘電率が該第2の誘電体層と同じか又はそれ以上であることを特徴とする請求項1に記載の受動部品内蔵基板。 - 上記第2の誘電体層と上記第5の誘電体層とは、上記積層基板の中心に対して対称の位置に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の受動部品内蔵基板。
- 第2の容量極板及び第3の容量極板が上記第5の誘電体層を挟んで配置され、
該第2の容量極板と該第3の容量極板と該第5の誘電体層とで容量性部品が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の受動部品内蔵基板。 - 複数の誘電体層を積層してなる多層基板を具備し、
該複数の誘電体層の内の第1の誘電体層は該多層基板の表面を有し、該第1の誘電体層に接する第2の誘電体層の誘電率は該第1の誘電体層よりも高く、かつ厚さは該第1の誘電体層よりも薄く、
該第1の誘電体層と該第2の誘電体層の間に容量極板が配置され、
該第2の誘電体層の、該容量極板が配置されている面とは反対側の面に接地導体が配置され、
該容量極板と該接地導体と上記第2の誘電体層とで容量性部品が形成され、
上記多層基板の表面に、高周波信号を扱う半導体素子を含む能動部品が搭載されていることを特徴とする高周波回路モジュール。
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